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特許7400717ブロック共重合体及びその製造方法、ブロック共重合体水素化物、重合体組成物、並びに、成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】ブロック共重合体及びその製造方法、ブロック共重合体水素化物、重合体組成物、並びに、成形体
(51)【国際特許分類】
   C08F 297/04 20060101AFI20231212BHJP
   C08F 8/04 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C08F297/04
C08F8/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020532203
(86)(22)【出願日】2019-06-10
(86)【国際出願番号】 JP2019022970
(87)【国際公開番号】W WO2020021883
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2018138709
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100195017
【弁理士】
【氏名又は名称】水間 章子
(72)【発明者】
【氏名】安 祐輔
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-077913(JP,A)
【文献】特開2006-111650(JP,A)
【文献】特開平02-175705(JP,A)
【文献】特開平09-278844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 297/04
C08F 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック共重合体を水素添加してなるブロック共重合体水素化物であって、
前記ブロック共重合体は、
芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主成分とする重合体ブロック[A]と、脂肪族共役ジエン化合物由来の構造単位を主成分とする重合体ブロック[B]とを含むブロック共重合体であって、
前記重合体ブロック[A]は、芳香族炭化水素単環及び芳香族複素単環からなる群より選択される単環を少なくとも2つ有する多環芳香族ビニル単量体単位を含み、
前記脂肪族共役ジエン化合物は、1,3-ブタジエンであり、
前記ブロック共重合体中の1,2-ビニル結合の含有割合と1,4-付加単位の含有割合との質量比(1,2-ビニル結合/1,4-付加単位)が30/70以上90/10以下であるブロック共重合体である、ブロック共重合体水素化物。
【請求項2】
前記ブロック共重合体中の前記芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有割合が5質量%以上95質量%以下である、請求項1に記載のブロック共重合体水素化物。
【請求項3】
前記ブロック共重合体中の前記脂肪族共役ジエン化合物由来の構造単位の含有割合が5質量%以上95質量%以下である、請求項1または2に記載のブロック共重合体水素化物。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載のブロック共重合体水素化物を含む重合体組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の重合体組成物を成形してなる成形体。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載のブロック共重合体水素化物の製造方法であって、
ランダマイザーの存在下、芳香族ビニル化合物と脂肪族共役ジエン化合物としての1,3-ブタジエンとをブロック共重合させる重合工程を経て得られた前記ブロック共重合体を水素添加する工程を含み、
前記芳香族ビニル化合物は、芳香族炭化水素単環及び芳香族複素単環からなる群より選択される単環を少なくとも2つ有する多環芳香族ビニル化合物を含む、
ブロック共重合体水素化物の製造方法。
【請求項7】
前記ランダマイザーの使用量が、重合触媒1molに対して、0.01mol以上10mol以下である、請求項6に記載のブロック共重合体水素化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック共重合体及びその製造方法、ブロック共重合体水素化物、重合体組成物、並びに、成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ビニルナフタレン等の芳香族炭化水素単環を2つ以上有する単量体単位から構成される重合体ブロックと、脂肪族共役ジエン単量体単位から構成される重合体ブロックとを有するブロック共重合体を水素添加してなる水素添加ブロック共重合体が、光学フィルム等の形成に使用し得る光学特性に優れた材料として注目されている。
【0003】
そして、特許文献1には、特定のビニルナフタレン類と、特定のジエン類とを共重合反応させて得られるA-B-A型トリブロック共重合体に対して金属触媒を用いた水素添加を行うことで水素添加ブロック共重合体を得る方法と、この水素添加ブロック共重合体よりなる光学フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-111650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示のA-B-A型トリブロック共重合体を水素添加してなる水素添加ブロック共重合体は、水素添加反応に一般的に使用される有機溶媒に対して溶解性が低い。そのため、特許文献1に開示の技術には、水素添加反応終了後、水素添加反応に使用した有機溶媒から水素添加ブロック共重合体が析出してしまい、製造プロセス上扱い難いという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、芳香族炭化水素単環を2つ以上有する単量体単位と、脂肪族共役ジエン単量体単位とを含むブロック共重合体を水素添加してなる水素添加ブロック共重合体であって、水素添加反応後の取り扱いが容易なブロック共重合体水素化物を得るための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者は、特定の単量体単位を含む重合体ブロックを含み、1,2-ビニル結合の含有割合が所定の範囲内にあるブロック共重合体を水素添加反応の前駆体として用いることで、有機溶媒への溶解性が高いブロック共重合体水素化物を得ることに着想した。そして、ブロック共重合体中の1,2-ビニル結合の含有割合を調節可能な化合物の存在下、芳香族炭化水素単環を少なくとも2つ有する芳香族ビニル化合物と脂肪族共役ジエン化合物とをブロック共重合して得られるブロック共重合体であれば、有機溶媒への溶解性の高いブロック共重合体水素化物の前駆体になり得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主成分とする重合体ブロック[A]と、脂肪族共役ジエン化合物由来の構造単位を主成分とする重合体ブロック[B]とを含むブロック共重合体であって、前記重合体ブロック[A]は、芳香族炭化水素単環及び芳香族複素単環からなる群より選択される単環を少なくとも2つ有する多環芳香族ビニル単量体単位を含み、前記ブロック共重合体中の1,2-ビニル結合の含有割合と1,4-ビニル結合の含有割合との質量比(1,2-ビニル結合/1,4-ビニル結合)が5/95以上90/10以下であることを特徴とする。このように、重合体ブロック[A]が特定の多環芳香族ビニル単量体単位を含み、且つ、ブロック共重合体中の1,2-ビニル結合の含有割合及び1,4-ビニル結合の含有割合が特定されたブロック共重合体とすれば、該ブロック共重合体を、有機溶媒への溶解性の高いブロック共重合体水素化物の前駆体として提供することができる。なお、本発明において、1,2-ビニル結合の含有割合及び1,4-ビニル結合の含有割合は、H-NMRを用いて測定することができる。
【0009】
ここで、本発明のブロック共重合体において、ブロック共重合体中の前記芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有割合は、5質量%以上95質量%以下であることが好ましい。ブロック共重合体中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有割合が上記下限値以上であれば、ブロック共重合体の機械的強度が安定するからである。また、ブロック共重合体中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有割合が上記上限値以下であれば、該ブロック共重合体を水素添加してなるブロック共重合体水素化物の有機溶媒に対する溶解性が向上するからである。
【0010】
また、本発明のブロック共重合体において、ブロック共重合体中の前記脂肪族共役ジエン化合物由来の構造単位の含有割合は、5質量%以上95質量%以下であることが好ましい。ブロック共重合体中の脂肪族共役ジエン化合物由来の構造単位の含有割合が上記下限値以上であれば、該ブロック共重合体を水素添加してなるブロック共重合体水素化物の有機溶媒に対する溶解性を更に高めることができるからである。また、ブロック共重合体中の脂肪族共役ジエン化合物由来の構造単位の含有割合が上記上限値以下であれば、該ブロック共重合体の機械的強度が向上するからである。
なお、本発明において、構造単位の含有割合は、H-NMRを用いて測定することができる。
【0011】
更に、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のブロック共重合体水素化物は、上記ブロック共重合体を水素添加してなるブロック共重合体水素化物であることを特徴とする。本発明のブロック共重合体を水素添加してなるブロック共重合体水素化物とすれば、有機溶媒に対する溶解性の高いブロック共重合体水素化物を提供することができるからである。
【0012】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の重合体組成物は、上記ブロック共重合体水素化物を含むことを特徴とする。本発明のブロック共重合体水素化物を含む重合体組成物とすれば、各種用途に好適に使用可能な重合体組成物を提供することができる。
【0013】
更に、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の成形体は、上記重合体組成物を成形してなることを特徴とする。本発明の重合体組成物を成形してなる成形体は、例えば、光学フィルム等の光学部品として好適に使用し得る。
【0014】
そして、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のブロック共重合体の製造方法は、ランダマイザーの存在下、芳香族ビニル化合物と脂肪族共役ジエン化合物とをブロック共重合させる重合工程を含み、前記芳香族ビニル化合物は、芳香族炭化水素単環及び芳香族複素単環からなる群より選択される単環を少なくとも2つ有する多環芳香族ビニル化合物を含むことを特徴とする。本発明のブロック共重合体の製造方法によれば、本発明のブロック共重合体を効率的に製造することができる。
【0015】
また、本発明のブロック共重合体の製造方法は、前記ランダマイザーの使用量が、重合触媒1molに対して、0.01mol以上10mol以下であることが好ましい。ランダマイザーの使用量が上記下限値以上であれば、得られるブロック共重合体中の1,2-ビニル結合の量を増加させることができるからである。また、ランダマイザーの使用量が上記上限値以下であれば、得られるトリブロック共重合体の割合を増加させることができるからである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、有機溶媒への溶解性が高いことで水素添加反応後の取り扱いが容易なブロック共重合体水素化物の前駆体となり得るブロック共重合体と、その製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、水素添加反応後の取り扱いが容易なブロック共重合体水素化物と、それを含む重合体組成物を提供することができる。更に、本発明によれば、本発明の重合体組成物を成形してなる成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明のブロック共重合体は、本発明のブロック共重合体水素化物を製造するための前駆体として用いることができる。そして、本発明のブロック共重合体水素化物を含む重合体組成物は、例えば光学フィルム等の成形体を成形するために用いることができる。更に、本発明のブロック共重合体の製造方法によれば、本発明のブロック共重合体を効率的に製造することができる。
【0018】
(ブロック共重合体)
本発明のブロック共重合体は、重合体ブロック[A]と重合体ブロック[B]とを含み、任意に、重合体ブロック[C]を含み得る。そして、本発明のブロック共重合体において、重合体ブロック[A]は、芳香族炭化水素単環及び芳香族複素単環からなる群より選択される単環を少なくとも2つ有する多環芳香族ビニル単量体単位を含み、ブロック共重合体中の1,2-ビニル結合の含有割合と1,4-ビニル結合の含有割合との質量比(1,2-ビニル結合/1,4-ビニル結合)が5/95以上90/10以下である。
【0019】
<重合体ブロック[A]>
ここで、重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主成分とするものである。重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有割合は、通常60質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、通常100質量%以下である。また、重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位以外の成分として、脂肪族共役ジエン化合物由来の構造単位及び/またはその他の化合物由来の構造単位を含むことができる。重合体ブロック[A]中の脂肪族共役ジエン化合物由来の構造単位及び/またはその他の化合物由来の構造単位の含有割合は、通常0質量%以上であり、通常40質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。なお、ブロック共重合体が重合体ブロック[A]を複数含む場合には、重合体ブロック[A]は、上記の範囲を満足すれば互いに同じであっても、異なっていてもよい。そして、重合体ブロック[A]は、芳香族炭化水素単環及び芳香族複素単環からなる群より選択される単環を少なくとも2つ有する多環芳香族ビニル単量体単位を含むことを必要とする。
【0020】
[芳香族ビニル化合物由来の構造単位]
そして、重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位として、多環芳香族ビニル単量体単位を含むことを必要とし、任意に、単環芳香族ビニル単量体単位を更に含み得る。
【0021】
〔多環芳香族ビニル単量体単位〕
ここで、多環芳香族ビニル単量体単位は、芳香族炭化水素単環及び芳香族複素単環からなる群より選択される単環を少なくとも2つ有する単量体単位である。なお、多環芳香族ビニル単量体単位中に2つ以上存在する単環は、互いに独立していてもよく、縮合して縮合環を形成していてもよいが、本発明のブロック共重合体を用いることでブロック共重合体水素化物を効率的に得られる観点から、2つ以上存在する単環は縮合して存在することが好ましい。
【0022】
-芳香族炭化水素単環-
そして、芳香族炭化水素単環としては、例えば、ベンゼン環、及び、置換基を有するベンゼン環等が挙げられる。また、置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、t-ブチル基等のアルキル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基等が挙げられる。
【0023】
-芳香族複素単環-
また、芳香族複素単環としては、例えば、オキサジアゾール環、オキサゾール環、オキサゾロピラジン環、オキサゾロピリジン環、オキサゾロピリダジル環、オキサゾロピリミジン環、チアジアゾール環、チアゾール環、トリアジン環、ピラノン環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピロール環等が挙げられる。
【0024】
そして、多環芳香族ビニル単量体単位を形成する多環芳香族ビニル化合物としては、例えば、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、1,1-ジフェニルエチレン等が挙げられる。これらの中でも、ブロック共重合体を水素添加することで有機溶媒への溶解性に優れたブロック共重合体水素化物を効率的に得ることができることから、多環芳香族ビニル化合物として1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレンが好ましい。
【0025】
〔単環芳香族ビニル単量体単位〕
また、単環芳香族ビニル単量体単位は、上記の芳香族炭化水素単環を1つ有する単量体単位である。そして、単環芳香族ビニル単量体単位を形成する単環芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン等が挙げられ、工業的な入手の容易さからスチレンが特に好ましい。
【0026】
また、重合体ブロック[A]を形成し得る脂肪族共役ジエン化合物としては、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)等の鎖状共役ジエン(直鎖状共役ジエン、分岐鎖状共役ジエン)化合物が挙げられ、重合反応の制御の容易さから1,3-ブタジエンが特に好ましい。
更に、重合体ブロック[A]を形成し得るその他の化合物としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等の不飽和カルボン酸エステル等が挙げられる。
【0027】
[芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有割合]
そして、ブロック共重合体中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有割合は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、95質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。ブロック共重合体中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有割合が上記下限値以上であれば、ブロック共重合体の機械的強度が安定するからである。また、ブロック共重合体中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有割合が上記上限値以下であれば、ブロック共重合体を水素添加してなるブロック共重合体水素化物の有機溶媒に対する溶解性が向上するからである。
【0028】
<重合体ブロック[B]>
そして、重合体ブロック[B]は、脂肪族共役ジエン化合物由来の構造単位を主成分とするものである。重合体ブロック[B]中の脂肪族共役ジエン化合物由来の構造単位の含有割合は、通常60質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、通常100質量%以下である。また、重合体ブロック[B]は、脂肪族共役ジエン化合物由来の構造単位以外の成分として、芳香族ビニル化合物由来の構造単位及び/またはその他の化合物由来の構造単位を含むことができる。重合体ブロック[B]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位及び/またはその他の化合物由来の構造単位の含有割合は、通常0質量%以上であり、通常40質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。なお、ブロック重合体が重合体ブロック[B]を複数含む場合には、重合体ブロック[B]は、上記の範囲を満足すれば互いに同じであっても、異なっていてもよい。
【0029】
そして、重合体ブロック[B]を形成する脂肪族共役ジエン化合物としては、例えば1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)等の鎖状共役ジエン化合物が挙げられる。これらの中でも、ブロック共重合体を水素添加することで、効率よく水素化できる観点から、脂肪族共役ジエン化合物として1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)が好ましい。
【0030】
また、重合体ブロック[B]を形成し得る芳香族ビニル化合物としては、重合体ブロック[A]を形成する芳香族ビニル化合物が挙げられる。更に、重合体ブロック[B]を形成し得るその他の化合物としては、重合体ブロック[A]を形成し得るその他の化合物が挙げられる。
【0031】
[脂肪族共役ジエン化合物由来の構造単位の含有割合]
そして、ブロック共重合体中の脂肪族共役ジエン化合物由来の構造単位の含有割合は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、95質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。ブロック共重合体中の脂肪族共役ジエン化合物由来の構造単位の含有割合が上記下限値以上であれば、本発明のブロック共重合体を水素添加してなるブロック共重合体水素化物の有機溶媒に対する溶解性を更に高めることができるからである。また、ブロック共重合体中の脂肪族共役ジエン化合物由来の構造単位の含有割合が上記上限値以下であれば、ブロック共重合体の機械的強度が向上するからである。そして、ブロック共重合体の機械的強度とブロック共重合体水素化物の有機溶媒に対する溶解性の向上とを両立させる観点から、ブロック共重合体中、芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有割合は、脂肪族共役ジエン化合物由来の構造単位の含有割合よりも高いことが好ましい。
【0032】
〔1,2-ビニル結合および1,4-ビニル結合〕
ここで、本発明のブロック共重合体は、重合体ブロック[B]中に脂肪族共役ジエン化合物に由来する1,2-ビニル結合及び1,4-ビニル結合を含んでいる。なお、1,2-ビニル結合は、脂肪族共役ジエン化合物の1,2-付加に由来するものであり、下記式(1)で示されるように分岐構造を有している。また、1,4-ビニル結合は、脂肪族共役ジエン化合物の1,4-付加に由来するものであり、下記式(2)で表されるように直鎖構造を有している。
【0033】
【化1】
【0034】
-1,2-ビニル結合と1,4-ビニル結合の含有割合-
そして、本発明のブロック共重合体において、ブロック共重合体中の1,2-ビニル結合の含有割合と、1,4-ビニル結合の含有割合の質量比(1,2-ビニル結合/1,4-ビニル結合)は、5/95以上であることを必要とし、30/70以上であることが好ましく、90/10以下であることを必要とする。ブロック共重合体中の1,2-ビニル結合の含有割合と、1,4-ビニル結合の含有割合の質量比(1,2-ビニル結合/1,4-ビニル結合)が5/95以上であることにより、本発明のブロック共重合体は、有機溶媒に対する溶解性に優れたブロック共重合体水素化物の前駆体となり得る。
【0035】
<重合体ブロック[C]>
更に、本発明のブロック共重合体は、任意に、その他の化合物由来の構造単位を主成分とする重合体ブロック[C]を含んでいてもよい。なお、重合体ブロック[C]は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位及び脂肪族共役ジエン化合物由来の構造単位以外の構造単位を有するものであれば、特に限定されるものでない。
【0036】
<ブロック共重合体の形態>
そして、本発明のブロック共重合体の形態は、特に限定されないが、機械的強度に優れるという観点から、鎖状型ブロックであることが好ましい。ブロック共重合体の具体的な形態としては、例えば、重合体ブロック[A]と重合体ブロック[B]とが結合した([A]-[B])型のジブロック共重合体、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合した([A]-[B]-[A])型のトリブロック共重合体、及び、重合体ブロック[A]の両端に重合体ブロック[B]が結合し、更に、該2つの重合体ブロック[B]の他端にそれぞれ重合体ブロック[A]が結合してなる([A]-[B]-[A]-[B]-[A])ペンタブロック共重合体等が挙げられる。中でも、本発明のブロック共重合が、優れた光学特性を有するブロック共重合体水素化物の前駆体となり得るという観点から、ブロック共重合体は、([A]-[B]-[A])型のトリブロック共重合体であることが好ましい。
【0037】
[重量分率の比]
また、全重合体ブロック[A]がブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]がブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの重量分率の比(wA:wB)は、5:95~95:5であることが好ましく、5:95~80:20であることがより好ましく、5:95~60:40であることがさらに好ましく、40:60~60:40であることが特に好ましい。重量分率の比が上記範囲内であれば、ブロック共重合体を、優れた光学特性を有するブロック共重合体水素化物の前駆体として提供することができるからである。なお、wA及びwBは、全重合体ブロック[A]の重量及び全重合体ブロック[B]の重量に基づいて算出することができる。また、全重合体ブロック[A]の重量及び全重合体ブロック[B]の重量は、H-NMRを測定することにより算出することができる。
【0038】
<数平均分子量(Mn)>
更に、本発明のブロック共重合体の数平均分子量は、10000以上であることが好ましく、20000以上であることがより好ましく、30000以上であることがさらに好ましく、400000以下であることが好ましく、200000以下であることがより好ましく、100000以下であることがさらに好ましい。ブロック共重合体の数平均分子量(Mn)が上記範囲内であれば、本発明のブロック共重合体を水素添加することで、高い水素化率のブロック共重合体水素化物を効率的に得ることができるからである。
【0039】
<分子量分布(Mw/Mn)>
また、本発明のブロック共重合体の分子量分布〔重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)〕は、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.5以下であることが更に好ましい。ブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が上記上限値以下であれば、本発明のブロック共重合体を水素添加することで、高い水素化率のブロック共重合体水素化物をより効率的に得ることができるからである。なお、ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフランを展開溶媒とするゲル浸透クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0040】
(ブロック共重合体の製造方法)
そして、本発明のブロック共重合体の製造方法は特に限定されず、例えば、芳香族ビニル化合物と脂肪族共役ジエン化合物とをブロック共重合させることによって得ることができるが、本発明のブロック共重合体の製造方法は、以下の重合工程を含むことが好ましい。
【0041】
<重合工程>
本発明のブロック共重合体の製造方法が含む重合工程では、ランダマイザーの存在下、芳香族ビニル化合物と脂肪族共役ジエン化合物とをブロック共重合させる。その際、芳香族ビニル化合物として、芳香族炭化水素単環及び芳香族複素単環からなる群より選択される単環を少なくとも2つ有する多環芳香族ビニル化合物を用いる。更に、本発明のブロック共重合体の製造方法では、任意に、上記芳香族ビニル化合物および/または上記脂肪族共役ジエン化合物と共重合可能なその他の化合物を単量体として用いてブロック共重合体を行ってもよい。また、重合工程は、特に限定されることなく、有機溶媒中、重合触媒を使用して、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことができる。
【0042】
[ランダマイザー]
ここで、重合工程で使用するランダマイザーは、本発明のブロック共重合体の重合体ブロック[B]中の1,2-ビニル結合及び1,4-ビニル結合の比率を調節する化合物である。
【0043】
そして、ランダマイザーとしては、例えば、1,2-ジメトキシエタン等の鎖状構造を有するエーテル化合物、および、テトラヒドロフラン等の環状構造を有するエーテル化合物、1,2-ジピペリジノエタン、テトラメチルエチレンジアミン等を用いることができる。中でも、少ない使用量でブロック共重合体の重合体ブロック[B]中の1,2-ビニル結合の量を効率的に増やすことができる観点から、ランダマイザーとしては鎖状構造を有するエーテル化合物が好ましく、1,2-ジメトキシエタンが特に好ましい。なお、これらのランダマイザーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0044】
そして、ランダマイザーの使用量は、重合触媒1molに対して、0.01mol以上であることが好ましく、0.02mol以上であることがより好ましく、0.1mol以上であることがさらに好ましく、10mol以下であることが好ましく、1mol以下であることがより好ましく、0.5mol以下であることがさらに好ましい。ランダマイザーの使用量が上記下限値以上であれば、得られるブロック共重合体中の1,2-ビニル結合の量を効率的に増加させることができるからである。また、ランダマイザーの使用量が上記上限値以下であれば、得られるトリブロック共重合体の割合を増加させることができるからである。
【0045】
[芳香族ビニル化合物]
また、重合工程では、芳香族ビニル化合物として、本発明のブロック共重合体において、重合体ブロック[A]中の芳香族炭化水素単環及び芳香族複素単環からなる群より選択される単環を少なくとも2つ有する多環芳香族ビニル化合物を使用することを必要とする。更に、本発明のブロック共重合体の製造方法では、任意に、芳香族ビニル化合物として、本発明のブロック共重合体において単環芳香族ビニル単量体単位を形成する、単環芳香族ビニル化合物を用いてもよい。ここで、重合反応を効率的に進行させる観点から、芳香族ビニル化合物として1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレンを用いることが好ましい。
【0046】
そして、重合工程で使用する芳香族ビニル化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、芳香族ビニル化合物として、多環芳香族ビニル化合物と、単環芳香族ビニル化合物とを併用する場合には、芳香族ビニル化合物中の多環芳香族ビニル化合物と単環芳香族ビニル化合物との含有割合は、質量比(多環芳香族ビニル化合物:単環芳香族ビニル化合物)で1:1とすることが好ましい。
【0047】
そして、芳香族ビニル化合物の使用量は、重合させる全単量体100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、95質量部以下であることが好ましく、90質量部以下であることがより好ましい。芳香族ビニル化合物の使用量が上記範囲内であれば、重合反応を効率的に進行させることができるからである。
【0048】
[脂肪族共役ジエン化合物]
また、重合工程では、脂肪族共役ジエン化合物として、本発明のブロック共重合体において、重合体ブロック[B]を形成する脂肪族共役ジエン化合物を使用する。その際、重合反応を効率的に進行させる観点から、脂肪族共役ジエン化合物として、1,3-ブタジエンを用いることが好ましい。なお、脂肪族共役ジエン化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0049】
そして、脂肪族共役ジエン化合物の使用量は、重合させる単量体全量100質量部に対して、通常は5質量部以上であり、10質量部以上であることが好ましく、通常は95質量部以下であり、60質量部以下であることが好ましい。脂肪族共役ジエン化合物の使用量が上記範囲内であれば、重合反応を効率的に進行させることができるからである。
【0050】
[その他の化合物]
更に、重合工程で使用し得るその他の化合物としては、芳香族ビニル化合物由来の構造単位及び脂肪族共役ジエン化合物由来の構造単位以外の構造単位を形成し得る化合物が挙げられる。その他の化合物としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等の不飽和カルボン酸エステル化合物が挙げられる。なお、その他の化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0051】
[有機溶媒]
さらに、重合工程で使用する有機溶媒としては、特に限定されることなく、例えば、ぺンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル等の含窒素炭化水素系溶媒;又はこれらの混合溶媒が挙げられる。中でも、重合反応を効率的に進行させる観点から、有機溶媒としてトルエンを使用することが好ましい。なお、これらの有機溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0052】
また、有機溶媒の使用量は、重合させる単量体全量100質量部に対して、通常は20質量部以上であり、100質量部以上であることが好ましく、通常は50000質量部以下であり、20000質量部以下であることが好ましい。有機溶媒の使用量が上記下限値以上であれば、重合の進行に伴う粘度変化により共重合反応の制御が難しくなるのを防止することができるからである。また、有機溶媒の使用量が上記上限値以下であれば、有機溶媒からのブロック共重合体の回収が容易となるからである。
【0053】
[重合触媒]
そして、重合工程で使用する重合触媒としては、特に限定されることなく、例えば、アルキル基の炭素数が1~10のアルキルリチウム化合物が挙げられ、具体的には、メチルリチウム、エチルリチウム、ペンチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム等が挙げられる。中でも、重合反応を効率的に進行させる観点から、重合触媒として、n-ブチルリチウムを用いることが好ましい。また、重合触媒の使用量は、目的とするブロック共重合体の分子量に応じて適宜調整すればよい。
【0054】
そして、芳香族ビニル化合物と、脂肪族共役ジエン化合物とをブロック共重合させる方法は、特に限定されず、従来公知のブロック共重合体の製造方法を採用することができる。例えば、([A]-[B]-[A])型のトリブロック共重合体を製造する場合であれば、
(i)芳香族ビニル化合物含む単量体混合物(a1)を重合させて、重合体ブロック[A]を形成する第1の重合工程と、脂肪族共役ジエン化合物を含有する単量体混合物(b1)を重合させて、重合体ブロック[B]を形成する第2の重合工程と、芳香族ビニル化合物を含有する単量体混合物(a2)を重合させて、重合体ブロック[A]を形成する第3の重合工程とを含む方法、
(ii)芳香族ビニル化合物を含有する単量体混合物(a1)を重合させて、重合体ブロック[A]を形成する第1の重合工程と、脂肪族共役ジエン化合物を含有する単量体混合物(b1)を重合させて、重合体ブロック[B’]を形成する第2の重合工程と、重合体ブロック[B’]の末端同士をカップリング剤によりカップリングさせる工程とを含む方法等が挙げられる。なお、上記(ii)の方法において使用するカップリング剤としては、特に限定されることなく、従来公知のカップリング剤を使用することができる。また、カップリング剤の使用量は、目的とするブロック共重合体の分子量に応じて適宜調製すればよい。
【0055】
そして、重合温度は、特に限定されることなく、例えば20℃以上150℃以下とすることができ、25℃以上120℃以下とすることが好ましい。重合温度が上記下限値以上であれば、重合触媒を十分に機能させることができるからである。また、重合温度が上記上限値以下であれば、重合触媒の分解を抑制することができるからである。
【0056】
また、重合時間は特に限定されることなく、例えば1時間以上10時間以下とすることができ、2時間以上8時間以下とすることが好ましい。重合時間が上記下限値以上であれば、重合反応を十分に進行させることができるからである。また、重合時間が上記上限値以下であれば、ブロック共重合体の製造に要する時間を低減することができるからである。
【0057】
そして、重合工程終了後、得られたブロック共重合体の回収方法は特に限定されず、例えば重合溶液としてそのまま回収することができる。なお、重合工程によって得られる反応混合物には、通常、ジブロック共重合体やトリブロック共重合体等のブロック共重合体と、ランダマイザーと、有機溶媒が含まれる。
【0058】
[トリブロック共重合体の純度]
そして、重合工程によって得られる全重合体中、トリブロック共重合体が占める割合をトリブロック共重合体の純度とすると、トリブロック共重合体の純度は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましい。トリブロック共重合体の純度が60%以上であれば、重合工程後に得られる反応混合物を、本発明の重合体組成物を調製するためにそのままの状態で用いることができるからである。
【0059】
そして、重合工程により得られるブロック共重合体としては、例えば、下記式(3)で示されるトリブロック共重合体が挙げられる。
【0060】
【化2】
【0061】
上記式(3)中、Buはブチル基を示し、bはブロック構造を示し、m、n、o、及びpはそれぞれ繰り返し数を示す。
【0062】
そして、重合工程によって得られたブロック共重合体は、そのまま各種材料として用いてもよく、あるいは、ブロック共重合体を水素添加することでブロック共重合体水素化物としてから各種材料として用いてもよい。以下、本発明のブロック共重合体水素化物について説明する。
【0063】
(ブロック共重合体水素化物)
本発明のブロック共重合体水素化物は、本発明のブロック共重合体を水素添加してなるものであり、具体的には、重合体ブロック[B]中の炭素-炭素不飽和二重結合を水素添加してなるものである。なお、水素添加方法については後述する。
【0064】
<水素化率>
そして、ブロック共重合体水素化物の水素化率(「水素添加率」ともいう)は、通常90%以上であり、95%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましい。ブロック共重合体水素化物の水素化率が高いほど、ブロック共重合体水素化物の耐酸化性が向上するからである。なお、ブロック共重合体水素化物の水素化率は、H-NMR測定により求めることができる。
【0065】
<数平均分子量(Mn)>
また、ブロック共重合体水素化物の数平均分子量(Mn)は、40000以上であることが好ましく、50000以上であることがより好ましく、300000以下であることが好ましく、200000以下であることがより好ましい。ブロック共重合体水素化物の数平均分子量(Mn)が上記下限値以上であれば、ブロック共重合体水素化物の機械的強度が向上するからである。また、ブロック共重合体水素化物の数平均分子量(Mn)が上記上限値以下であれば、ブロック共重合体水素化物の成形加工性が良好になるからである。
【0066】
<分子量分布(Mw)/(Mn)>
更に、ブロック共重合体水素化物の分子量分布〔重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)〕は、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.5以下であることが更に好ましい。ブロック共重合体水素化物の分子量分布が上記上限値以下であれば、ブロック共重合体水素化物の機械的強度がより向上するからである。なお、ブロック共重合体水素化物の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフランを展開溶媒とするゲル浸透クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0067】
そして、上記のようにして水素添加してなる本発明のブロック共重合体水素化物は、有機溶媒に対する溶解性に優れている。なお、本発明のブロック共重合体水素化物が有機溶媒に対して高い溶解性を示す理由は明らかでないが、ブロック共重合体水素化物の前駆体であるブロック共重合体において、該ブロック共重合体が1,2-ビニル結合の分岐構造を有することにより結晶性部分が減少していることが、ブロック共重合体水素化物の有機溶媒に対する高い溶解性に寄与しているものと推測される。
【0068】
<ブロック共重合体水素化物の製造方法>
本発明のブロック共重合体水素化物は、本発明のブロック共重合体を水素添加して得ればよい。そして、水素添加によりブロック共重合体の重合体ブロック[B]中の炭素-炭素不飽和二重結合を水素添加する方法や反応形態等は、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率(水素添加化率)を高くでき、重合体鎖切断反応の少ない水素添加方法が好ましい。このような水素添加方法として、例えば、特開昭59-133203号公報、特開平1-275605号公報、特開平5-222115号公報、特開平7-90017号公報等に記載の方法を採用することができる。なお、ブロック共重合体の水素添加は、通常、水素化触媒の存在下、ブロック共重合体を有機溶媒に溶解させて行うことができる。
【0069】
そして、水素化触媒としては、通常の水素添加反応に用いる触媒を用いることができ、具体的には、例えば、ニッケル、パラジウム、白金等の遷移金属触媒が挙げられる。また、水素化試薬として、p-トルエンスルホニルヒドラジドも使用することができる。
【0070】
また、有機溶媒としては、従来の水素添加反応において用いられる有機溶媒を使用することができる。中でも、本発明のブロック共重合体の製造の際に用いた有機溶媒と同様のものを使用することが好ましい。
【0071】
そして、水素添加を行う際の温度は、通常、60℃以上であり、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。上記下限値以上の温度で水素添加を行えば、水素添加反応が効率的に進行するからである。
【0072】
また、水素添加を行う際の圧力は、通常、常圧以上である。常圧下で水素添加を行えば、水素添加反応によりブロック共重合体を十分に水素添加できるからである。
【0073】
更に、水素添加を行う時間は、1時間以上であることが好ましく、24時間以下であることが好ましい。水素添加の時間を上記範囲内とすれば、水素添加反応を十分に進行させることができるからである。
【0074】
そして、本発明のブロック共重合体を前駆体として用いた水素添加反応において、水素添加反応の進行中、ブロック共重合体水素化物は、有機溶媒中に溶解した状態で得られる。更に、上述したように、本発明のブロックと共重合体水素化物は有機溶媒に対する溶解性に優れているため、水素添加反応終了後、有機溶媒を室温(25℃)まで放冷しても、ブロック共重合体水素化物が有機溶媒から析出することはない。したがって、本発明によれば、製造プロセス上扱い易いブロック共重合体水素化物を得ることができる。
【0075】
なお、水素添加反応終了後、有機溶媒中に溶解しているブロック共重合体水素化物は、例えば、重合溶液をアセトンやメタノール等の貧溶媒中に加えてブロック共重合体水素化物を凝固させ、ろ過等の固液分離手段を用いて凝固したブロック共重合体水素化物を分離することにより、回収することができる。
【0076】
そして、回収されたブロック共重合体水素化物は、そのまま成形材料として用いてもよく、更には、ブロック共重合体水素化物を含む重合体組成物として用いてもよい。以下に、本発明の重合体組成物について説明する。
【0077】
(重合体組成物)
本発明の重合体組成物は、本発明のブロック共重合体水素化物を含み、任意に、ランダマイザー、有機溶媒及びその他の成分を更に含み得る。本発明の重合体組成物は、例えば、本発明の成形体を成形するために好適に使用することができる。
【0078】
ここで、重合体組成物中のブロック共重合体水素化物は、本発明のブロック共重合体を水素添加してなるものであれば、特に限定されない。
【0079】
そして、重合体組成物中のブロック共重合体水素化物の含有量は、1質量%以上であることが好ましい。ブロック共重合体水素化物の含有量が上記下限値以上であれば、本発明の重合体組成物を用いて成形体を効率的に製造することができるからである。
【0080】
また、重合体組成物中のランダマイザーとしては、上述したランダマイザーが挙げられる。
【0081】
また、重合体組成物中の有機溶媒は、特に限定されず、例えば、本発明のブロック共重合体やブロック共重合体水素化物の製造に用いた有機溶媒が挙げられる。
【0082】
そして、重合体組成物中の有機溶媒の含有量は、ブロック共重合体水素化物100質量部に対し、30質量部以下であることが好ましい。有機溶媒の含有量が上記上限値以下であれば、本発明の重合体組成物を用いて成形体を成形した際に、成形後に残存する有機溶媒の除去が容易となるからである。
【0083】
更に、重合体組成物中に任意に含まれ得るその他の成分としては、特に限定されず、例えば、本発明のブロック共重合体やブロック共重合体水素化物の製造に用いた重合触媒、水素化触媒等が挙げられる。
【0084】
そして、重合体組成物中のその他の成分の含有量は、ブロック共重合体水素化物100質量部に対し、1質量部以下であることが好ましい。その他の成分の含有量が上記上限値以下であれば、本発明の重合体組成物を用いて成形体を成形する前に、成形に不要なその他の成分の除去が容易となるからである。
【0085】
ここで、本発明の重合体組成物の製造方法は、特に限定されず、上記各成分を公知の方法により混合することで得ることができる。また、本発明のブロック共重合体を水素添加した際に得られた反応混合物を、本発明の重合体組成物として用いてもよい。
【0086】
(成形体)
そして、本発明の成形体は、本発明の重合体組成物を成形してなるものである。ここで、本発明の重合体組成物の成形法は特に限定されず、例えば、射出成形法、押出成形法、キャスト成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法、真空成形法、プレス成形法、圧縮成形法、回転成形法、カレンダー成形法、圧延成形法、切削成形法等によって成形加工し、成形体とすることができる。本発明の成形体は、例えば、光学フィルム等の光学部品として好適に使用し得る。
【実施例
【0087】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。以下に各種物性の測定法を示す。
【0088】
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)>
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、重合体、ジブロック共重合体及びトリブロック共重合体について、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。なお、重合体及びジブロック共重合体については、反応の途中で得られた反応混合物に含まれる状態にて、上記GPCによる測定を行い、数平均分子量及び重量平均分子量を算出した。
その際、測定器としてはHLC-8320(東ソー社製)を用いた。カラムとしてはTSKgelα-M(東ソー社製)二本を直列に連結して用いた。検出器としては示差屈折計RI-8320(東ソー社製)を用いた。そして、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用いて、重合体、ジブロック共重合体及びトリブロック共重合体について、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を標準ポリスチレン換算値として求めた。それから分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
【0089】
<転化率>
重クロロホルムを溶剤とするH-NMRを測定することにより、2-ビニルナフタレンの転化率及び1,3-ブタジエンの転化率を算出した。
【0090】
<1,2-ビニル結合の含有割合と1,4-ビニル結合の含有割合>
得られたジブロック共重合体について重クロロホルムを溶剤とするH-NMR測定を行った。そして、ポリ(1,2-ブタジエン)の二重結合に由来するピークの積分値と、ポリ(1,4-ブタジエン)の二重結合に由来するピークの積分値とから、ジブロック共重合体中の1,2-ビニル結合の含有割合と、1,4-ビニル結合の含有割合を算出した。そして、1,2-ビニル結合の含有割合と1,4-ビニル結合の含有割合との比(質量比)を算出した。
【0091】
<トリブロック共重合体の純度>
トリブロック共重合体の純度について、下記式に基づいて算出した。
トリブロック共重合体の純度(%)=[単離したトリブロック共重合体の質量(g)/反応混合物中に含まれる全重合体の質量(g)]×100
なお、反応混合物中に含まれる各重合体の質量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による面積比に基づいて算出した。
【0092】
<水素化率(水素添加率)>
H-NMRを測定することにより、トリブロック共重合体水素化物の水素化率(水素添加率)を算出した。
【0093】
<重合体ブロックの重量比>
H-NMRを測定することにより、重合体ブロックの重量比を算出した。
【0094】
<溶解性の評価>
トリブロック共重合体水素化物1gに対してトルエンを3g加えて、25℃で撹拌し、トリブロック共重合体水素化物が完全に溶解するまでの時間を測定した。そして、測定結果に基づき、溶解性を次のように評価した。
A:1時間撹拌後、完全に溶解した。
B:2時間撹拌後、完全に溶解した。
C:2時間撹拌後も溶解しなかった。
【0095】
[実施例1]
(ブロック共重合体の製造)
〔第1の重合工程〕
窒素雰囲気下、乾燥し、窒素で置換された耐圧反応器に、有機溶媒としてトルエン20ml、重合触媒としてn-ブチルリチウムの1.6Mヘキサン溶液101μl(162μmol)、及び、ランダマイザーとして1,2-ジピペリジノエタン(以下、「DPE」と略す。)8.8μl(40.6μmol、重合触媒1molに対し、0.25mol)を入れた。その後、上記の耐圧反応器に、芳香族ビニル化合物として2-ビニルナフタレンの25%トルエン溶液8gを添加して25℃で1時間反応させ、一段階目の重合反応を行い、重合体を得た。得られた重合体の数平均分子量(Mn)は14500、重量平均分子量(Mw)は15700、分子量分布(Mw/Mn)は1.08であった。また、2-ビニルナフタレンの転化率は96%であった。
【0096】
〔第2の重合工程〕
一段階目の重合反応の終了後、次いで、上記耐圧反応器中の反応混合物に、鎖状共役ジエン化合物として1,3-ブタジエンの25%トルエン溶液8gを添加し、更に50℃で1時間反応させ、二段階目の重合反応を行った。その結果、反応混合物中に、[2-ビニルナフタレンブロック]-[1,3-ブタジエンブロック]のブロック構成を有するジブロック共重合体を得た。得られたジブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は31300、重量平均分子量(Mw)は34000、分子量分布(Mw/Mn)は1.08であった。また、H-NMR測定より、一段階目の重合反応後に残っていた2-ビニルナフタレンはすべて消費されたことを確認した。また、1,3-ブタジエンの転化率は96%であった。また、得られたジブロック共重合体中、1,2-ビニル結合の含有割合は44質量%であり、1,4-ビニル結合の含有割合は56質量%であった。
【0097】
〔第3の重合工程〕
その後、上記反応混合物に、更に芳香族ビニル化合物として2-ビニルナフタレンの25%トルエン溶液8gを添加して、50℃で1.5時間反応させ、三段階目の重合反応を行った。重合反応終了後、50μLのメタノールを添加して重合反応を停止させた。その結果、反応混合物中に、[2-ビニルナフタレンブロック]-[1,3-ブタジエンブロック]-[2-ビニルナフタレンブロック]のブロック構成を有するトリブロック共重合体を得た。得られたトリブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は45100、重量平均分子量(Mw)は50400、分子量分布(Mw/Mn)は1.11であった。また、得られたトリブロック共重合体の純度は65%であった。また、H-NMR測定より、上記反応混合物には、[2-ビニルナフタレンブロック]-[1,3-ブタジエンブロック]のブロック構成を有するジブロック共重合体が20%、ポリ(2-ビニルナフタレン)が2%、[2-ビニルナフタレンブロック]-[1,3-ブタジエンブロック]-[2-ビニルナフタレンブロック]のブロック構成を有するトリブロック共重合体のカップリング体が12%含まれていることを確認した。また、H-NMR測定より、二段階目の重合反応後に残っていた1,3-ブタジエン、及び、三段階目の重合反応で加えた2-ビニルナフタレンが全て消費されていることを確認した。
【0098】
(ブロック共重合体水素化物の製造)
上記のようにして得られたトリブロック共重合体を濃縮し、トルエンを除去した後、p-キシレン300mlに溶解させてトリブロック共重合体溶液を得た。得られたトリブロック共重合体溶液に、p-トルエンスルホニルヒドラジド34gを添加し、減圧及び窒素置換操作を複数回繰り返すことにより、トリブロック共重合体溶液内の酸素を除いた。それから、温度120℃で6時間反応させ、トリブロック共重合体のブタジエンブロックの炭素-炭素不飽和二重結合に対する水素添加(以下、「水添」と略すこともある。)を行った。水素添加の終了後、大量のアセトンとメタノールを反応溶液に注ぎ、ブロック共重合体水素化物を塊状の生成物6gとして得た。得られたブロック共重合体水素化物において、2-ビニルナフタレン単位と、水添1,3-ブタジエン単位との重量比(2-ビニルナフタレン単位:水添ブタジエン単位)は2:1であった。したがって、得られたトリブロック共重合体水素化物において、[2-ビニルナフタレンブロック]の重量分率は66.7%であり、[水添1,3-ブタジエンブロック]の重量分率は33.3%であった。また、得られたトリブロック共重合体水素化物の水素化率(水素添加化率)は99%を上回っていた。また、得られたトリブロック共重合体水素化物について溶解性を調べたところ、トリブロック共重合体水素化物は、1時間撹拌後、トルエンに完全に溶解したことを確認した。
【0099】
[実施例2]
一段階目の重合反応に用いるランダマイザーとしてのDPEの量を4.4μl(20.3μmol、重合触媒1molに対し、0.125mol)に変更した以外は実施例1と同様の条件で重合反応を行い、[2-ビニルナフタレンブロック]-[1,3-ブタジエンブロック]-[2-ビニルナフタレンブロック]のブロック構成を有するトリブロック共重合体、及び、該トリブロック共重合体を水素添加してなるトリブロック共重合体水素化物を得た。得られたトリブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は46100、重量平均分子量(Mw)は53700、分子量分布(Mw/Mn)は1.16であった。また、得られたトリブロック共重合体の純度は80%であった。また、得られたトリブロック共重合体中、1,2-ビニル結合の含有割合は26%であり、1,4-ビニル結合の含有割合は74%であった。また、得られたトリブロック共重合体水素化物について溶解性を調べたところ、トリブロック共重合体水素化物は、2時間撹拌後、トルエンに完全に溶解したことを確認した。
【0100】
[実施例3]
一段階目の重合反応に用いるランダマイザーとしてのDPEを、テトラメチルエチレンジアミン(以下、「TMEDA」と略す。)6μl(40.6μmol、重合触媒1molに対し、0.25mol)に変更した以外は実施例1と同様の条件で重合反応を行い、[2-ビニルナフタレンブロック]-[1,3-ブタジエンブロック]-[2-ビニルナフタレンブロック]のブロック構成を有するトリブロック共重合体、及び、該トリブロック共重合体を水素添加してなるトリブロック共重合体水素化物を得た。得られたトリブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は38600、重量平均分子量(Mw)は43900、分子量分布(Mw/Mn)は1.13であった。また、得られたトリブロック共重合体の純度は71%であった。また、得られたトリブロック共重合体中、1,2-ビニル結合の含有割合は51%であり、1,4-ビニル結合の含有割合は49%であった。また、得られたトリブロック共重合体水素化物について溶解性を調べたところ、トリブロック共重合体水素化物は、1時間撹拌後、トルエンに完全に溶解したことを確認した。
【0101】
[実施例4]
一段階目の重合反応に用いるランダマイザーとしてのDPEを、TMEDA3μl(20.3μmol、重合触媒1molに対し、0.125mol)に変更した以外は実施例1と同様の条件で重合反応行い、[2-ビニルナフタレンブロック]-[1,3-ブタジエンブロック]-[2-ビニルナフタレンブロック]のブロック構成を有するトリブロック共重合体、及び、該トリブロック共重合体を水素添加してなるトリブロック共重合体水素化物を得た。得られたトリブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は39600、重量平均分子量(Mw)は45400、分子量分布(Mw/Mn)は1.14であった。また、得られたトリブロック共重合体の純度は80%であった。また、得られたトリブロック共重合体中、1,2-ビニル結合の含有割合は33%であり、1,4-ビニル結合の含有割合は67%であった。また、得られたトリブロック共重合体水素化物について溶解性を調べたところ、トリブロック共重合体水素化物は、1時間撹拌後、トルエンに完全に溶解したことを確認した。
【0102】
[実施例5]
一段階目の重合反応に用いるランダマイザーとしてのDPEを、1,2-ジメトキシエタン(以下、「DME」と略す。)4.3μl(40.6μmol、重合触媒1molに対し、0.25mol)に変更した以外は実施例1と同様の条件で重合反応を行い、[2-ビニルナフタレンブロック]-[1,3-ブタジエンブロック]-[2-ビニルナフタレンブロック]のブロック構成を有するトリブロック共重合体、及び、該トリブロック共重合体を水素添加してなるトリブロック共重合体水素化物を得た。得られたトリブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は41000、重量平均分子量(Mw)は46000、分子量分布(Mw/Mn)は1.12であった。また、得られたトリブロック共重合体の純度は70%であった。また、得られたトリブロック共重合体中、1,2-ビニル結合の含有割合は57%であり、1,4-ビニル結合の含有割合は43%であった。また、得られたトリブロック共重合体水素化物について溶解性を調べたところ、トリブロック共重合体水素化物は、1時間撹拌後、トルエンに完全に溶解することを確認した。
【0103】
[実施例6]
一段階目の重合反応に用いるDPEを、DME2.1μl(20.3μmol、重合触媒1molに対し、0.125mol)に変更した以外は実施例1と同様の条件で重合反応を行い、[2-ビニルナフタレンブロック]-[1,3-ブタジエンブロック]-[2-ビニルナフタレンブロック]のブロック構成を有するトリブロック共重合体、及び、該トリブロック共重合体を水素添加してなるトリブロック共重合体水素化物を得た。得られたトリブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は41600、重量平均分子量(Mw)は48200、分子量分布(Mw/Mn)は1.15であった。また、得られたトリブロック共重合体の純度79%であった。また、得られたトリブロック共重合体中、1,2-ビニル結合の含有割合は38%であり、1,4-ビニル結合の含有割合は62%であった。また、得られたトリブロック共重合体水素化物について溶解性を調べたところ、トリブロック共重合体水素化物は、1時間撹拌後、トルエンに完全に溶解したことを確認した。
【0104】
[実施例7]
重合反応に用いる単量体の質量比を、2-ビニルナフタレン:1,3-ブタジエン:2-ビニルナフタレン=2:1:2に変更した。また、一段階目の重合反応に用いるランダマイザーとしてのDPEを、DME2.1μl(20.3μmol、重合触媒1molに対し、0.125mol)に変更した。それ以外は実施例1と同様の条件で重合反応を行い、[2-ビニルナフタレンブロック]-[1,3-ブタジエンブロック]-[2-ビニルナフタレンブロック]のブロック構成を有するトリブロック共重合体、及び、該トリブロック共重合体を水素添加してなるトリブロック共重合体水素化物を得た。得られたトリブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は41700、重量平均分子量(Mw)は47100、分子量分布(Mw/Mn)は1.12であった。また、トリブロック共重合体の純度は68%であった。また、得られたトリブロック共重合体中、1,2-ビニル結合の含有割合は42%であり、1,4-ビニル結合の含有割合は58%であった。また、得られたトリブロック共重合体水素化物について溶解性を調べたところ、トリブロック共重合体水素化物は、1時間撹拌後、トルエンに完全に溶解したことを確認した。
【0105】
[実施例8]
重合反応に用いる単量体の質量比を、2-ビニルナフタレン:1,3-ブタジエン:2-ビニルナフタレン=1:2:1に変更した。また、一段階目の重合反応に用いるDPEを、DME2.1μl(20.3μmol、重合触媒1molに対し、0.125mol)に変更した。それ以外は実施例1と同様の条件で重合反応を行い、[2-ビニルナフタレンブロック]-[1,3-ブタジエンブロック]-[2-ビニルナフタレンブロック]のブロック構成を有するトリブロック共重合体、及び、該トリブロック共重合体を水素添加してなるトリブロック共重合体水素化物を得た。得られたトリブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は45800、重量平均分子量(Mw)は51700、分子量分布(Mw/Mn)は1.12であった。また、得られたトリブロック共重合体の純度は68%であった。また、得られたトリブロック共重合体中、1,2-ビニル結合の含有割合は41%であり、1,4-ビニル結合の含有割合は59%であった。また、得られたブロック共重合体水素化物について溶解性を調べたところ、トリブロック共重合体水素化物は、1時間撹拌後、トルエンに完全に溶解したことを確認した。
【0106】
[実施例9]
一段回目の重合反応、及び、三段階目の重合反応に用いる単量体を、2-ビニルナフタレンとスチレンの1:1混合物に変更した。また、一段階目の重合反応に用いるDPEを、1,2-ジメトキシエタン(DME)2.1μl(20.3μmol、重合触媒1molに対し、0.125mol)に変更した。それ以外は実施例1と同様の条件で重合反応を行い、[2-ビニルナフタレンとスチレンとのブロック]-[1,3-ブタジエンブロック]-[2-ビニルナフタレンとスチレンとのブロック]のブロック構成を有するトリブロック共重合体、及び、該トリブロック共重合体を水素添加してなるトリブロック共重合体水素化物を得た。得られたトリブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は36500、重量平均分子量(Mw)は41600、分子量分布(Mw/Mn)は1.13であった。また、得られたトリブロック共重合体の純度は81%であった。また、得られたトリブロック共重合体中、1,2-ビニル結合の含有割合は40量%であり、1,4-ビニル結合の含有割合は60%であった。また、得られたトリブロック共重合体水素化物について溶解性を調べたところ、トリブロック共重合体水素化物は、1時間撹拌後、トルエンに完全に溶解したことを確認した。
【0107】
[実施例10]
重合反応に用いるn-ブチルリチウムの量を74μl(118μmol)に変更した。また、一段階目の重合反応に用いるDPEを、DME1.2μl(20.3μmol、重合触媒1molに対し、0.125mol)に変更した。それ以外は実施例1と同様の条件で重合反応を行い、[2-ビニルナフタレンブロック]-[1,3-ブタジエンブロック]-[2-ビニルナフタレンブロック]のブロック構成を有するトリブロック共重合体、及び、該トリブロック共重合体を水素添加してなるトリブロック共重合体水素化物を得た。得られたトリブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は76800、重量平均分子量(Mw)は92100、分子量分布(Mw/Mn)は1.19であった。また、得られたトリブロック共重合体の純度は71%であった。また、得られたトリブロック共重合体中、1,2-ビニル結合の含有割合は46%であり、1,4-ビニル結合の含有割合は54%であった。また、得られたトリブロック共重合体水素化物について溶解性を調べたところ、トリブロック共重合体水素化物は、1時間撹拌後、トルエンに完全に溶解したことを確認した。
【0108】
[比較例1]
ランダマイザーとしてのDPEを添加せずに重合反応を行った以外は実施例1と同様の条件で重合反応を行い、[2-ビニルナフタレンブロック]-[1,3-ブタジエンブロック]-[2-ビニルナフタレンブロック]のブロック構成を有するトリブロック共重合体、及び、該トリブロック共重合体を水素添加してなるトリブロック共重合体水素化物を得た。得られたトリブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は41200、重量平均分子量(Mw)は47000、分子量分布(Mw/Mn)は1.14であった。また、得られたトリブロック共重合体の純度は80%であった。また、得られたトリブロック共重合体中、1,2-ビニル結合の含有割合は4%であり、1,4-ビニル結合の含有割合は96%であった。また、得られたトリブロック共重合体水素化物について溶解性を調べたところ、2時間撹拌してもトリブロック共重合体水素化物は膨潤するのみであり、トルエンには全く溶解しなかったことを確認した。
【0109】
[比較例2]
一段回目の重合反応と三段階目の重合反応に用いる単量体を2-ビニルナフタレンとスチレンの1:1混合物に変更した。また、一段階目の重合反応において、ランダマイザーとしてのDPEを添加せずに重合反応を行った。それ以外は実施例1と同様の条件で重合反応を行い、[2-ビニルナフタレンとスチレンとの共重合体ブロック]-[1,3-ブタジエンブロック]-[2-ビニルナフタレンとスチレンとの共重合体ブロック]のブロック構成を有するトリブロック共重合体、及び、該トリブロック共重合体を水素添加してなるトリブロック共重合体水素化物を得た。得られたトリブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は38200、重量平均分子量(Mw)は42000、分子量分布(Mw/Mn)は1.09であった。また、得られたトリブロック共重合体の純度は82%であった。また、得られたトリブロック共重合体中、1,2-ビニル結合の含有割合は4%であり、1,4-ビニル結合の含有割合は96%であった。また、得られたトリブロック共重合体水素化物について溶解性を調べたところ、2時間撹拌してもトリブロック共重合体水素化物は膨潤するのみであり、トルエンには全く溶解しなかったことを確認した。
【0110】
実施例及び比較例の結果を表に示す。
表中、[VN]は[2-ビニルナフタレンブロック]を示し、
[BD]は[1,3-ブタジエンブロック]を示し、
[VN&St]は[2-ビニルナフタレンとスチレンとのブロック]を示す。
また、「VN」は2-ビニルナフタレンを示し、「BD」は1-3ブタジエンを示す。
また、「DPE」は1,2-ジピペリジノエタンを示し、「TMEDA」はテトラメチルエチレンジアミンを示し、「DME」は1,2-ジメトキシエタンを示す。
【0111】
【表1】
【0112】
表1の結果から、ランダマイザーの存在下で重合反応を行った実施例1~10では、得られたブロック共重合体水素化物は、トルエンに対して高い溶解性を示すことが確認された。これに対して、ランダマイザーの不存在下で重合反応を行った比較例1及び比較例2では、得られたブロック共重合体水素化物は、トルエンに不溶であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明によれば、水素添加反応後の取り扱いが容易なブロック共重合体水素化物の前駆体となり得るブロック共重合体を提供することができる。