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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】ホットメルト弾性接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 153/02 20060101AFI20231212BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C09J153/02
C09J11/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020538422
(86)(22)【出願日】2019-08-21
(86)【国際出願番号】 JP2019032576
(87)【国際公開番号】W WO2020040175
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2018156292
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 雄太
(72)【発明者】
【氏名】橋本 貞治
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0005834(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
CAplus/REGISTRY (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック共重合体を含有するホットメルト弾性接着剤であって、
前記ブロック共重合体のメルトフローレートが、40~200g/10分であり、
前記ブロック共重合体が芳香族ビニル重合体ブロックおよび共役ジエン重合体ブロックを含有し、
前記ブロック共重合体が、下記一般式(A)で表されるブロック共重合体Aを含有し、
一般式(A):Ar1 -D -Ar2
(式中、Ar1 は、重量平均分子量が5000~20000の芳香族ビニル重合体ブロック、Ar2 は、重量平均分子量が22000~400000の芳香族ビニル重合体ブロック、D は、共役ジエン重合体ブロックを表し、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1 )と芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2 )との重量平均分子量の比((Ar1 ):(Ar2 ))は、1:1.5~1:13である)
前記ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の含有量が、前記ブロック共重合体を構成する全単量体単位に対して、30~80重量%であり、
前記ブロック共重合体のショアーA硬度が、65以下である
ホットメルト弾性接着剤。
【請求項2】
前記ブロック共重合体として、末端ブロックと中間ブロックとを有しており、前記末端ブロックが、前記芳香族ビニル重合体ブロックにより構成されているブロック共重合体を含有する請求項1に記載のホットメルト弾性接着剤。
【請求項3】
前記ブロック共重合体として、末端ブロックと中間ブロックとを有しており、前記中間ブロックが、前記共役ジエン重合体ブロックにより構成されているブロック共重合体を含有する請求項1または2に記載のホットメルト弾性接着剤。
【請求項4】
前記共役ジエン重合体ブロックが、イソプレン単位を含有する請求項1~3のいずれかに記載のホットメルト弾性接着剤。
【請求項5】
前記ブロック共重合体として、
一般式(B):(Ar-D-X
(Arは、重量平均分子量が5000~20000の芳香族ビニル重合体ブロック、Dは、共役ジエン重合体ブロック、Xは単結合またはカップリング剤の残基であり、nは2以上の整数を表す)で表されるブロック共重合体Bをさらに含有する請求項1~4のいずれかに記載のホットメルト弾性接着剤。
【請求項6】
一般式(B)において、Xは単結合であり、nは2を表し、2個の前記共役ジエン重合体ブロックD の重量平均分子量の合計は、前記ブロック共重合体Aの前記共役ジエン重合体ブロックD の重量平均分子量と実質的に等しい請求項5に記載のホットメルト弾性接着剤。
【請求項7】
粘着付与樹脂をさらに含有する請求項1~6のいずれかに記載のホットメルト弾性接着剤。
【請求項8】
紙おむつに用いる請求項1~7のいずれかに記載のホットメルト弾性接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト弾性接着剤に関し、さらに詳しくは、クリープレジスタンスおよび接着力に優れたホットメルト弾性接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト粘接着剤は、短時間で固化することから、種々の製品を効率的に接着させることが可能であり、しかも、溶剤を必要としないことから、人体への安全性が高い粘接着剤であるので、様々な分野で用いられている。たとえば、食品、衣料、電子機器、化粧品などの紙、ダンボール、フィルムの包装用の封緘用接着剤、紙おむつや生理用品などの衛生用品を製造する際には、それらを構成するための部材を接着させるための接着剤として、また、粘着テープやラベルの粘着層を構成する粘着剤として、ホットメルト粘接着剤が使用されている。
【0003】
ホットメルト粘接着剤として、たとえば、特許文献1では、下記の一般式(A)で表されるブロック共重合体Aおよび下記の一般式(B)で表されるブロック共重合体Bからなるブロック共重合体組成物と、粘着付与樹脂とを含有してなるホットメルト粘接着剤組成物であって、ブロック共重合体組成物におけるブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとの重量比(A/B)が10/90~90/10であり、粘着付与樹脂の芳香族単量体単位含有量が1~70重量%である、ホットメルト粘接着剤組成物が提案されている。
Ar1-D-Ar2 (A)
(Ar-D)n-X (B)
(一般式(A)および(B)において、Ar1およびArは、それぞれ、重量平均分子量が6000~20000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、Ar2は、重量平均分子量が22000~400000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、DおよびDは、それぞれ、ビニル結合含有量が1~20モル%の共役ジエン重合体ブロックであり、Xは単結合またはカップリング剤の残基であり、nは2以上の整数である。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-254983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、紙おむつや生理用品などの衛生用品を製造する際に用いられるホットメルト粘接着剤には、優れた接着力が求められることはもちろんのこと、従来よりも優れた弾性が求められるようになってきた。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、クリープレジスタンスおよび接着力に優れるホットメルト弾性接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、メルトフローレート、芳香族ビニル単量体単位の含有量、および、ショアーA硬度を適切に調整したブロック共重合体を用いることによって、得られるホットメルト弾性接着剤が、クリープレジスタンスに優れており、接着力にも優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、ブロック共重合体を含有するホットメルト弾性接着剤であって、前記ブロック共重合体のメルトフローレートが、40~200g/10分であり、前記ブロック共重合体が芳香族ビニル重合体ブロックおよび共役ジエン重合体ブロックを含有し、前記ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の含有量が、前記ブロック共重合体を構成する全単量体単位に対して、30~80重量%であり、前記ブロック共重合体のショアーA硬度が、65以下であるホットメルト弾性接着剤が提供される。
【0009】
本発明のホットメルト弾性接着剤は、前記ブロック共重合体として、末端ブロックと中間ブロックとを有しており、前記末端ブロックが、前記芳香族ビニル重合体ブロックにより構成されているブロック共重合体を含有することが好ましい。
本発明のホットメルト弾性接着剤は、前記ブロック共重合体として、末端ブロックと中間ブロックとを有しており、前記中間ブロックが、前記共役ジエン重合体ブロックにより構成されているブロック共重合体を含有することが好ましい。
本発明のホットメルト弾性接着剤において、前記共役ジエン重合体ブロックが、イソプレン単位を含有することが好ましい。
本発明のホットメルト弾性接着剤は、前記ブロック共重合体として、
一般式(A):Ar1-D-Ar2
(式中、Ar1は、重量平均分子量が5000~20000の芳香族ビニル重合体ブロック、Ar2は、重量平均分子量が22000~400000の芳香族ビニル重合体ブロック、Dは、共役ジエン重合体ブロックを表す)で表されるブロック共重合体Aを含有することが好ましい。
本発明のホットメルト弾性接着剤は、前記ブロック共重合体として、
一般式(B):(Ar-D-X
(Arは、重量平均分子量が5000~20000の芳香族ビニル重合体ブロック、Dは、共役ジエン重合体ブロック、Xは単結合またはカップリング剤の残基であり、nは2以上の整数を表す)で表されるブロック共重合体Bをさらに含有することが好ましい。
本発明のホットメルト弾性接着剤は、粘着付与樹脂をさらに含有することが好ましい。
本発明のホットメルト弾性接着剤は、紙おむつに好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クリープレジスタンスおよび接着力に優れるホットメルト弾性接着剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のホットメルト弾性接着剤は、ブロック共重合体を含有する。
【0012】
(ブロック共重合体)
本発明のホットメルト弾性接着剤に含有されるブロック共重合体のメルトフローレートは、40~200g/10分であり、好ましくは42.5~175g/10分であり、より好ましくは45~150g/10分である。ブロック共重合体のメルトフローレートが上記範囲内にあることにより、本発明のホットメルト弾性接着剤は、クリープレジスタンスおよび接着力に優れる。ブロック共重合体のメルトフローレートが小さすぎると、十分なクリープレジスタンスが得られない。
【0013】
本発明において、メルトフローレートは、ISO 1133(G条件)に準拠して、200℃、5kgの条件で求める。ブロック共重合体のメルトフローレートは、ブロック共重合体の重量平均分子量などを調整することにより、調整することができる。
【0014】
本発明のホットメルト弾性接着剤に含有されるブロック共重合体のショアーA硬度は、65以下であり、好ましくは64以下であり、より好ましくは63以下であり、40以上であってよい。ブロック共重合体のショアーA硬度が上記範囲内にあることにより、本発明のホットメルト弾性接着剤は、クリープレジスタンスおよび接着力に優れる。ショアーA硬度が高すぎると、十分な接着力が得られない。
【0015】
本発明において、ショアーA硬度は、ISO 7619に準拠して求める。ブロック共重合体のショアーA硬度は、ブロック共重合体の芳香族ビニル単量体単位の含有量、ブロック共重合体中の芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量などを調整することにより、調整することができる。
【0016】
本発明のホットメルト弾性接着剤に含有されるブロック共重合体は、芳香族ビニル重合体ブロックおよび共役ジエン重合体ブロックを含有する。
【0017】
芳香族ビニル重合体ブロックは、芳香族ビニル単量体を重合して得られる芳香族ビニル単量体単位を主たる繰り返し単位として構成される重合体ブロックである。
【0018】
ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の含有量は、ブロック共重合体を構成する全単量体単位に対して、30~80重量%であり、好ましくは31~70重量%であり、より好ましくは32~65重量%である。ブロック共重合体の芳香族ビニル単量体単位の含有量が上記範囲内にあることにより、本発明のホットメルト弾性接着剤は、クリープレジスタンスおよび接着力に優れる。ブロック共重合体の芳香族ビニル単量体単位の含有量が少なすぎると、十分なクリープレジスタンスが得られない。本発明のホットメルト弾性接着剤は、このように、芳香族ビニル単量体単位の含有量が比較的多いにも関わらず、ショアーA硬度が小さいブロック共重合体を含有する。
【0019】
芳香族ビニル重合体ブロックの芳香族ビニル単量体単位を構成するために用いられる芳香族ビニル単量体は、芳香族ビニル化合物であれば特に限定されないが、たとえば、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン、4-ブロモスチレン、2-メチル-4,6-ジクロロスチレン、2,4-ジブロモスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。これらのなかでも、スチレンを用いることが好ましい。これらの芳香族ビニル単量体は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、複数の芳香族ビニル重合体ブロックが存在する場合は、各々、同じ芳香族ビニル単量体単位により構成されていてもよいし、異なる芳香族ビニル単量体単位により構成されていてもよい。
【0020】
また、芳香族ビニル重合体ブロックは、芳香族ビニル単量体単位が主たる繰り返し単位となる限りにおいて、それ以外の単量体単位を含んでいてもよい。芳香族ビニル重合体ブロックに含まれ得る芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、たとえば、1,3-ブタジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)などの共役ジエン単量体、α,β-不飽和ニトリル単量体、不飽和カルボン酸または酸無水物単量体、不飽和カルボン酸エステル単量体、非共役ジエン単量体などが挙げられる。芳香族ビニル重合体ブロックにおける芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位の含有量は、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、実質的に0重量%であることが特に好ましい。すなわち、芳香族ビニル重合体ブロックは、実質的に、1種または2種以上の芳香族ビニル単量体単位のみからなるものであることが好ましく、スチレン単位のみからなるものであることが特に好ましい。
【0021】
芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量は、好ましくは5000~400000であり、より好ましくは6000~350000であり、さらに好ましくは7000~300000であり、特に好ましくは8000~300000であり、最も好ましくは8500~200000である。
【0022】
なお、本発明において、各重合体ブロックの重量平均分子量およびブロック重合体全体の重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフィの測定による、ポリスチレン換算の値として求めるものとする。
【0023】
また、各重合体ブロックの重量平均分子量およびブロック重合体全体の重量平均分子量は、重合反応によってブロック共重合体を得る際に用いる、各重合体ブロックを形成するための各単量体の使用量や、重合開始剤の量を調節することにより、調整することができる。
【0024】
共役ジエン重合体ブロックは、共役ジエン単量体を重合して得られる共役ジエン単量体単位を主たる繰り返し単位として構成される重合体ブロックである。
【0025】
共役ジエン重合体ブロックの共役ジエン単量体単位を構成するために用いられる共役ジエン単量体は、共役ジエン化合物であれば特に限定されないが、たとえば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、ミルセン、ファルネセンなどが挙げられる。これらのなかでも、1,3-ブタジエンおよび/またはイソプレンを用いることが好ましく、イソプレンを用いることが特に好ましい。これらの共役ジエン単量体は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、共役ジエン重合体ブロックの不飽和結合の一部に対し、水素添加反応が行われていてもよい。
【0026】
また、共役ジエン重合体ブロックは、共役ジエン単量体単位が主たる繰り返し単位となる限りにおいて、それ以外の単量体単位を含んでいてもよい。共役ジエン重合体ブロックに含まれ得る共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、スチレン、α-メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体、α,β-不飽和ニトリル単量体、不飽和カルボン酸または酸無水物単量体、不飽和カルボン酸エステル単量体、非共役ジエン単量体が例示される。共役ジエン重合体ブロックにおける共役ジエン単量体単位以外の単量体単位の含有量は、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、実質的に0重量%であることが特に好ましい。すなわち、共役ジエン重合体ブロックは、実質的に、1種または2種以上の共役ジエン単量体単位のみからなるものであることが好ましく、イソプレン単位のみからなるものであることが特に好ましい。
【0027】
共役ジエン重合体ブロックのビニル結合含有量(共役ジエン重合体ブロック中の全共役ジエン単量体単位において、1,2-ビニル結合単位と3,4-ビニル結合単位が占める割合)は、特に限定されないが、1~20モル%であることが好ましく、2~15モル%であることがより好ましく、3~10モル%であることが特に好ましい。ビニル結合含有量が多すぎると、ブロック共重合体の柔軟性が損なわれる傾向がある。
【0028】
共役ジエン重合体ブロックの重量平均分子量は、好ましくは20000~400000であり、より好ましくは22500~350000であり、さらに好ましくは25000~300000であり、特に好ましくは30000~200000である。
【0029】
本発明のホットメルト弾性接着剤に含有されるブロック共重合体は、1種または2種以上のブロック共重合体を含有することができるが、少なくとも、末端ブロックと中間ブロックとを有しており、末端ブロックが、芳香族ビニル重合体ブロックにより構成されているブロック共重合体を含有することが好ましい。すなわち、上記ブロック共重合体は、芳香族ビニル重合体ブロックを、重合体鎖の末端に有するブロック共重合体を含有することが好ましい。ブロック共重合体として、末端ブロックが芳香族ビニル重合体ブロックにより構成されているブロック共重合体を含有する場合、ホットメルト弾性接着剤は、クリープレジスタンスおよび接着力により一層優れる。本発明のホットメルト弾性接着剤においては、クリープレジスタンスおよび接着力により一層優れることから、ブロック共重合体の一部の末端ブロックが芳香族ビニル重合体ブロックにより構成されていることが好ましく、ブロック共重合体の全部の末端ブロックが芳香族ビニル重合体ブロックにより構成されていることがより好ましい。なお、本明細書において、末端ブロックとは、少なくとも3つのブロックを有するブロック共重合体において、共重合体鎖の末端を構成するブロックを意味しており、共重合体鎖が直鎖である場合、末端ブロック数は2である。また、中間ブロックとは、少なくとも3つのブロックを有するポリマーにおける、末端ブロック以外のブロックを意味している。
【0030】
本発明のホットメルト弾性接着剤に含有されるブロック共重合体は、1種または2種以上のブロック共重合体を含有することができるが、少なくとも、末端ブロックと中間ブロックとを有しており、中間ブロックが、共役ジエン重合体ブロックにより構成されているブロック共重合体を含有することが好ましい。ブロック共重合体として、中間ブロックが共役ジエン重合体ブロックにより構成されているブロック共重合体を含有する場合、ホットメルト弾性接着剤は、クリープレジスタンスおよび接着力により一層優れる。本発明のホットメルト弾性接着剤においては、クリープレジスタンスおよび接着力により一層優れることから、ブロック共重合体の一部の中間ブロックが共役ジエン重合体ブロックにより構成されていることが好ましく、ブロック共重合体の全部の中間ブロックが共役ジエン重合体ブロックにより構成されていることがより好ましい。また、共役ジエン重合体ブロックは、イソプレン単位を含有することが好ましく、イソプレン単位のみからなるものであることが特に好ましい。
【0031】
(ブロック共重合体A)
本発明のホットメルト弾性接着剤は、より一層優れたクリープレジスタンスおよび接着力が得られることから、ブロック共重合体として、ブロック共重合体Aを含有することが好ましい。ブロック共重合体Aは、下記の一般式(A)で表される共重合体である。
一般式(A):Ar1-D-Ar2
(式中、Ar1は、重量平均分子量が5000~20000の芳香族ビニル重合体ブロック、Ar2は、重量平均分子量が22000~400000の芳香族ビニル重合体ブロック、Dは、共役ジエン重合体ブロックを表す)
【0032】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)は、芳香族ビニル単量体を重合して得られる芳香族ビニル単量体単位を主たる繰り返し単位として構成される重合体ブロックである。
【0033】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)の芳香族ビニル単量体単位を構成するために用いられる芳香族ビニル単量体は、芳香族ビニル化合物であれば特に限定されないが、たとえば、上述した芳香族ビニル重合体ブロックと同様のものが挙げられる。
【0034】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)は、芳香族ビニル単量体単位が主たる繰り返し単位となる限りにおいて、それ以外の単量体単位を含んでいてもよく、芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、たとえば、上述した芳香族ビニル重合体ブロックと同様のものが挙げられ、その含有量も、同様とすればよい。また、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)も、実質的に、1種または2種以上の芳香族ビニル単量体単位のみからなるものであることが好ましく、スチレン単位のみからなるものであることが特に好ましい。
【0035】
ブロック共重合体Aにおいて、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)と芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)とは、重量平均分子量が異なる。本発明のホットメルト弾性接着剤が、このような非対称のブロック共重合体Aを含有する場合、本発明のホットメルト弾性接着剤は、クリープレジスタンスおよび接着力により一層優れる。また、従来のホットメルト粘接着剤は、芳香族ビニル単量体単位の含有量が比較的多いブロック共重合体中を含有すると、硬度が高くなって、接着力が劣る傾向があった。本発明のホットメルト弾性接着剤がこのような非対称であって、極めて限定された重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)を有するブロック共重合体Aを含有する場合、本発明のホットメルト弾性接着剤は、一層優れたクリープレジスタンスを示すと同時に、一層高い接着力を示す。
【0036】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)の重量平均分子量は、5000~20000であり、より好ましくは6000~18000であり、さらに好ましくは7000~16000である。
【0037】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)の重量平均分子量は、22000~400000であり、より好ましくは25000~300000であり、さらに好ましくは30000~200000である。
【0038】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)と芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)との重量平均分子量の比((Ar1):(Ar2))は、好ましくは1:1~1:15であり、より好ましくは1:1.5~1:13であり、更に好ましくは1:4~1:10である。
【0039】
共役ジエン重合体ブロック(D)は、共役ジエン単量体を重合して得られる共役ジエン単量体単位を主たる繰り返し単位として構成される重合体ブロックである。
【0040】
共役ジエン重合体ブロック(D)の共役ジエン単量体単位を構成するために用いられる共役ジエン単量体は、共役ジエン化合物であれば特に限定されないが、たとえば、上述した共役ジエン重合体ブロックと同様のものが挙げられる。
【0041】
また、共役ジエン重合体ブロック(D)は、共役ジエン単量体単位が主たる繰り返し単位となる限りにおいて、それ以外の単量体単位を含んでいてもよく、共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、たとえば、上述した共役ジエン重合体ブロックと同様のものが挙げられ、その含有量およびビニル結合含有量も同様とすればよい。また、共役ジエン重合体ブロック(D)も、実質的に、1種または2種以上の共役ジエン単量体単位のみからなるものであることが好ましく、イソプレン単位のみからなるものであることが特に好ましい。
【0042】
共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量は、好ましくは40000~400000であり、より好ましくは45000~350000であり、さらに好ましくは50000~300000である。
【0043】
ブロック共重合体Aの重量平均分子量(すなわち、ブロック共重合体A全体の重量平均分子量)は、好ましくは65000~800000であり、より好ましくは70000~700000であり、さらに好ましくは75000~650000である。
【0044】
ブロック共重合体Aの芳香族ビニル単量体単位の含有量は、ブロック共重合体Aを構成する全単量体単位に対して、好ましくは30重量%以上であり、より好ましくは30~87重量%であり、さらに好ましくは35~85重量%であり、特に好ましくは35~80重量%である。
【0045】
ブロック共重合体Aは、芳香族ビニル単量体、共役ジエン単量体、次いで芳香族ビニル単量体の順に逐次的に重合して重合体ブロックを形成する製造方法により得られたものであることが好ましい。したがって、ブロック共重合体Aは、カップリング剤の残基を含まないことが好ましい。このような製造方法の詳細は後述する。
【0046】
(ブロック共重合体B)
本発明のホットメルト弾性接着剤は、より一層優れたクリープレジスタンスおよび接着力が得られることから、ブロック共重合体Aに加えて、ブロック共重合体Bをさらに含有することが好ましい。ブロック共重合体Bは、下記の一般式(B)で表される共重合体である。
一般式(B):(Ar-D-X
(Arは、重量平均分子量が5000~20000の芳香族ビニル重合体ブロック、Dは、共役ジエン重合体ブロック、Xは単結合またはカップリング剤の残基であり、nは2以上の整数を表す)
【0047】
ブロック共重合体Bは、直接単結合で、または、カップリング剤の残基(X)を介して、n個のジブロック体(Ar-D)がお互いに結合した構造を有する。一般式(B)におけるnは、ブロック共重合体B中の分岐数を表す。ブロック共重合体Bは、異なる数でジブロック体が結合した2種以上のブロック共重合体の混合物であってもよい。nは、2以上の整数であり、好ましくは2~8の整数であり、より好ましくは2~4の整数であり、さらに好ましくは2である。カップリング剤の残基(X)は、n価のカップリング剤の残基であれば特に限定されないが、ケイ素原子含有カップリング剤の残基であることが好ましく、ハロゲン化シランまたはアルコキシシランの残基であることがより好ましい。カップリング剤の残基を構成するカップリング剤の例としては、後述するものが挙げられる。
【0048】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)は、芳香族ビニル単量体を重合して得られる芳香族ビニル単量体単位を主たる繰り返し単位として構成される重合体ブロックである。
【0049】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)の芳香族ビニル単量体単位を構成するために用いられる芳香族ビニル単量体は、芳香族ビニル化合物であれば特に限定されないが、たとえば、上述した芳香族ビニル重合体ブロックと同様のものが挙げられる。
【0050】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)は、芳香族ビニル単量体単位が主たる繰り返し単位となる限りにおいて、それ以外の単量体単位を含んでいてもよく、芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、たとえば、上述した芳香族ビニル重合体ブロックと同様のものが挙げられ、その含有量も、同様とすればよい。また、ブロック共重合体Bにおける各々の芳香族ビニル重合体ブロックは、同じ芳香族ビニル単量体単位により構成されていてもよいし、異なる芳香族ビニル単量体単位により構成されていてもよい。また、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)も、実質的に、1種または2種以上の芳香族ビニル単量体単位のみからなるものであることが好ましく、スチレン単位のみからなるものであることが特に好ましい。
【0051】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)の重量平均分子量は、5000~20000であり、より好ましくは6000~18000であり、さらに好ましくは7000~16000である。
【0052】
ブロック共重合体Bが複数有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)の重量平均分子量は、上記の範囲内であれば、それぞれ等しいものであっても、互いに異なるものであってもよいが、実質的に等しいものであることが好ましい。また、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)の重量平均分子量は、ブロック共重合体Aの比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)の重量平均分子量と、実質的に等しいことが好ましい。
【0053】
共役ジエン重合体ブロック(D)は、共役ジエン単量体を重合して得られる共役ジエン単量体単位を主たる繰り返し単位として構成される重合体ブロックである。
【0054】
共役ジエン重合体ブロック(D)の共役ジエン単量体単位を構成するために用いられる共役ジエン単量体は、共役ジエン化合物であれば特に限定されないが、たとえば、上述した共役ジエン重合体ブロックと同様のものが挙げられる。また、ブロック共重合体Bにおける各々の共役ジエン重合体ブロックは、同じ共役ジエン単量体単位により構成されていてもよいし、異なる共役ジエン単量体単位により構成されていてもよい。
【0055】
また、共役ジエン重合体ブロック(D)は、共役ジエン単量体単位が主たる繰り返し単位となる限りにおいて、それ以外の単量体単位を含んでいてもよく、共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、たとえば、共役ジエン重合体ブロックと同様のものが挙げられ、その含有量およびビニル結合含有量も同様とすればよい。また、共役ジエン重合体ブロック(D)も、実質的に、1種または2種以上の共役ジエン単量体単位のみからなるものであることが好ましく、イソプレン単位のみからなるものであることが特に好ましい。
【0056】
共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量は、好ましくは20000~200000であり、より好ましくは22500~175000であり、さらに好ましくは25000~150000である。
【0057】
ブロック共重合体Bがカップリング剤の残基を含有する場合、複数の共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量は、上記の範囲内であれば、それぞれ等しいものであっても、互いに異なるものであってもよいが、実質的に等しいものであることが好ましい。また、ブロック共重合体Bがカップリング剤の残基を含有しない場合、すなわち、2個のジブロック体(Ar-D)が単結合を介してお互いに結合している場合、2個の共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量の合計は、ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量と、実質的に等しいことが好ましい。
【0058】
なお、ブロック共重合体Bとして、カップリング剤を使用せずに製造した芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体を用いる場合、それに含まれる共役ジエン重合体ブロックは全ての単量体単位が直接結合したものとなり、実体上、2つの共役ジエン重合体ブロック(D)からなるものであるとは言えない。但し、本発明では、そのような共役ジエン重合体ブロックであっても、概念上、実質的に等しい重量平均分子量を有する2つの共役ジエン重合体ブロック(D)が単結合で結合されたものであるとして、取扱うものとする。したがって、例えば、カップリング剤を使用せずに製造した芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体であるブロック共重合体Bにおいて、共役ジエン重合体ブロックが全体として100000の重量平均分子量を有する場合、その重量平均分子量は、50000であるとして取扱うものとする。
【0059】
ブロック共重合体Bの重量平均分子量(すなわち、ブロック共重合体B全体の重量平均分子量)は、好ましくは65000~800000であり、より好ましくは70000~700000である。
【0060】
ブロック共重合体Bの芳香族ビニル単量体単位の含有量は、ブロック共重合体Bを構成する全単量体単位に対して、好ましくは10~35重量%であり、より好ましくは12~32重量%であり、さらに好ましくは15~30重量%である。
【0061】
ブロック共重合体Bは、芳香族ビニル単量体、共役ジエン単量体、次いで芳香族ビニル単量体の順に逐次的に重合して重合体ブロックを形成する製造方法により得られたものであってもよいし、芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とを重合してジブロック鎖を形成し、ジブロック鎖とカップリング剤とを反応させてカップリングを行う製造方法により得られたものであってもよい。したがって、ブロック共重合体Bは、カップリング剤の残基を含まないものであってもよいし、カップリング剤の残基を含むものであってもよい。
【0062】
しかしながら、より一層優れたクリープレジスタンスおよび接着力が得られることから、ブロック共重合体Bは、芳香族ビニル単量体、共役ジエン単量体、次いで芳香族ビニル単量体の順に逐次的に重合して重合体ブロックを形成する製造方法により得られたものであることが好ましい。したがって、ブロック共重合体Bは、カップリング剤の残基を含まないことが好ましい。このような製造方法の詳細は後述する。
【0063】
(ブロック共重合体C)
本発明の組成物は、ブロック共重合体として、ブロック共重合体Cをさらに含有してもよい。ブロック共重合体Cは、下記の一般式(C)で表される共重合体である。
一般式(C):Ar-D
(式中、Arは、芳香族ビニル重合体ブロック、Dは、共役ジエン重合体ブロックを表す)
【0064】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)は、芳香族ビニル単量体を重合して得られる芳香族ビニル単量体単位を主たる繰り返し単位として構成される重合体ブロックである。
【0065】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)の芳香族ビニル単量体単位を構成するために用いられる芳香族ビニル単量体は、芳香族ビニル化合物であれば特に限定されないが、たとえば、上述した芳香族ビニル重合体ブロックと同様のものが挙げられる。
【0066】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)は、芳香族ビニル単量体単位が主たる繰り返し単位となる限りにおいて、それ以外の単量体単位を含んでいてもよく、芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、たとえば、上述した芳香族ビニル重合体ブロックと同様のものが挙げられ、その含有量も、同様とすればよい。また、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)も、実質的に、1種または2種以上の芳香族ビニル単量体単位のみからなるものであることが好ましく、スチレン単位のみからなるものであることが特に好ましい。
【0067】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)の重量平均分子量は、好ましくは5000~20000であり、より好ましくは6000~18000であり、さらに好ましくは7000~16000である。
【0068】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)の重量平均分子量は、ブロック共重合体Aの芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)の重量平均分子量と、実質的に等しいことが好ましい。
【0069】
共役ジエン重合体ブロック(D)は、共役ジエン単量体を重合して得られる共役ジエン単量体単位を主たる繰り返し単位として構成される重合体ブロックである。
【0070】
共役ジエン重合体ブロック(D)の共役ジエン単量体単位を構成するために用いられる共役ジエン単量体は、共役ジエン化合物であれば特に限定されないが、たとえば、上述した共役ジエン重合体ブロックと同様のものが挙げられる。
【0071】
また、共役ジエン重合体ブロック(D)は、共役ジエン単量体単位が主たる繰り返し単位となる限りにおいて、それ以外の単量体単位を含んでいてもよく、共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、たとえば、上述した共役ジエン重合体ブロックと同様のものが挙げられ、その含有量およびビニル結合含有量も同様とすればよい。また、共役ジエン重合体ブロック(D)も、実質的に、1種または2種以上の共役ジエン単量体単位のみからなるものであることが好ましく、イソプレン単位のみからなるものであることが特に好ましい。
【0072】
共役ジエン重合体ブロック(D)のビニル結合含有量は、ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロック(D)のビニル結合含有量と実質的に等しいことが好ましい。
【0073】
共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量は、好ましくは20000~400000であり、より好ましくは25000~350000であり、さらに好ましくは30000~300000である。
【0074】
共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量は、ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量と実質的に等しいことが好ましい。
【0075】
ブロック共重合体Cの重量平均分子量(すなわち、ブロック共重合体C全体の重量平均分子量)は、好ましくは65000~800000であり、より好ましくは70000~700000である。
【0076】
ブロック共重合体Cの芳香族ビニル単量体単位の含有量は、ブロック共重合体Cを構成する全単量体単位に対して、好ましくは10~35重量%であり、より好ましくは12~32重量%であり、さらに好ましくは15~30重量%である。
【0077】
本発明のホットメルト弾性接着剤は、ブロック共重合体として、ブロック共重合体Aを含有することが好ましく、ブロック共重合体Aと、ブロック共重合体BおよびCからなる群より選択される少なくとも1種とを含有することがより好ましく、ブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとを含有することがさらに好ましい。
【0078】
本発明のホットメルト弾性接着剤で用いるブロック共重合体中のブロック共重合体Aの含有量は、ブロック共重合体の全重量に対して、好ましくは10~100重量%であり、より好ましくは20~100重量%であり、さらに好ましくは30~100重量%である。
【0079】
また、本発明のホットメルト弾性接着剤で用いるブロック共重合体において、ブロック共重合体Aと、ブロック共重合体BおよびCからなる群より選択される少なくとも1種との含有割合は、重量比(A/B+C)で、好ましくは10~90/90~10であり、より好ましくは20~80/80~20であり、さらに好ましくは30~75/70~25である。
【0080】
ブロック共重合体は、常法にしたがって製造することが可能であり、最も一般的な製造法としては、アニオンリビング重合法により、芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とを重合して重合体ブロックを形成し、必要に応じて、カップリング剤を反応させてカップリングを行う方法を挙げることができる。また、芳香族ビニル単量体、共役ジエン単量体、次いで芳香族ビニル単量体の順に逐次的に重合して重合体ブロックを形成する方法を用いてもよい。
【0081】
また、本発明では、市販のブロック共重合体を用いることも可能であり、例えば、「クインタック(登録商標)」(日本ゼオン社製)、「KRATON(登録商標)」(クレイトンポリマーズ社製)、「JSR-SIS(登録商標)」(JSR社製)、「Vector(登録商標)」(DEXCO polymers社製)、「アサプレン(登録商標)」・「タフプレン(登録商標)」・「タフテック(登録商標)」(旭化成ケミカルズ社製)、「セプトン(登録商標)」(クラレ社製)などを使用することができる。
【0082】
また、ブロック共重合体A~Cのいずれか2種以上を含有するブロック共重合体の製造方法は、特に限定されない。例えば、従来の重合法に従って、それぞれの重合体を別個に製造し、必要に応じて、他の重合体成分などを配合した上で、それらを混練や溶液混合などの常法に従って混合することにより、製造することができる。ブロック共重合体Aと、ブロック共重合体BおよびCからなる群より選択される少なくとも1種とを、後述する製造方法により同時に製造することも可能である。
【0083】
ブロック共重合体Aを含有するブロック共重合体は、芳香族ビニル単量体、共役ジエン単量体、次いで芳香族ビニル単量体の順に逐次的に重合して重合体ブロックを形成する方法により、製造することが好ましい。
【0084】
より詳細には、ブロック共重合体Aは、以下の製造方法により、製造することが好ましい。すなわち、
溶媒中で、重合開始剤の存在下で、芳香族ビニル単量体を含む単量体を重合することで、芳香族ビニル重合体ブロック鎖を含有する溶液を得る第1重合工程と、
芳香族ビニル重合体ブロック鎖を含有する溶液に、共役ジエン単量体を含む単量体を添加し、重合することで、ジブロック鎖を含有する溶液を得る第2重合工程と、
ジブロック鎖を含有する溶液に、芳香族ビニル単量体を含む単量体を添加し、重合することで、ブロック共重合体Aを含有する溶液を得る第3重合工程と
を備える製造方法が好ましい。
【0085】
上記の製造方法では、まず、溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を主成分として含む単量体を重合する(第1重合工程)。用いられる重合開始剤としては、一般的に芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とに対し、アニオン重合活性があることが知られている有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物、有機ランタノイド系列希土類金属化合物などを用いることができる。有機アルカリ金属化合物としては、分子中に1個以上のリチウム原子を有する有機リチウム化合物が特に好適に用いられ、その具体例としては、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム、ジアルキルアミノリチウム、ジフェニルアミノリチウム、ジトリメチルシリルアミノリチウムなどの有機モノリチウム化合物や、メチレンジリチウム、テトラメチレンジリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、イソプレニルジリチウム、1,4-ジリチオ-エチルシクロヘキサンなどの有機ジリチウム化合物、さらには、1,3,5-トリリチオベンゼンなどの有機トリリチウム化合物などが挙げられる。これらのなかでも、有機モノリチウム化合物が特に好適に用いられる。
【0086】
重合開始剤として用いる有機アルカリ土類金属化合物としては、たとえば、n-ブチルマグネシウムブロミド、n-ヘキシルマグネシウムブロミド、エトキシカルシウム、ステアリン酸カルシウム、t-ブトキシストロンチウム、エトキシバリウム、イソプロポキシバリウム、エチルメルカプトバリウム、t-ブトキシバリウム、フェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ステアリン酸バリウム、エチルバリウムなどが挙げられる。また、他の重合開始剤の具体例としては、ネオジム、サマリニウム、ガドリニウムなどを含むランタノイド系列希土類金属化合物/アルキルアルミニウム/アルキルアルミニウムハライド/アルキルアルミニウムハイドライドからなる複合触媒や、チタン、バナジウム、サマリニウム、ガドリニウムなどを含むメタロセン型触媒などの有機溶媒中で均一系となり、リビング重合性を有するものなどが挙げられる。なお、これらの重合開始剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0087】
重合開始剤の使用量は、目的とする分子量に応じて決定すればよく、特に限定されないが、使用する全単量体100gあたり、好ましくは0.01~20ミリモル、より好ましくは0.05~15ミリモル、さらに好ましくは0.1~10ミリモルである。
【0088】
重合に用いる溶媒は、重合開始剤に不活性なものであれば特に限定されるものではなく、たとえば、鎖状炭化水素溶媒、環式炭化水素溶媒またはこれらの混合溶媒が使用される。鎖状炭化水素溶媒としてはn-ブタン、イソブタン、1-ブテン、イソブチレン、トランス-2-ブテン、シス-2-ブテン、1-ペンテン、トランス-2-ペンテン、シス-2-ペンテン、n-ペンタン、イソペンタン、neo-ペンタン、n-ヘキサンなどの、炭素数4~6の鎖状アルカンおよびアルケンを例示することができる。また、環式炭化水素溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素化合物;を挙げることができる。これらの溶媒は、1種類を単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
【0089】
重合に用いる溶媒の量は、特に限定されないが、最終的に得られるブロック共重合体の溶液におけるブロック共重合体の濃度が、好ましくは5~60重量%の範囲、より好ましくは10~55重量%の範囲、特に20~50重量%の範囲になるように設定することが好ましい。
【0090】
また、各重合体ブロックの構造を制御するために、重合に用いる反応器にルイス塩基化合物を添加してもよい。ルイス塩基化合物としては、たとえば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジンなどの第三級アミン類;カリウム-t-アミルオキシド、カリウム-t-ブチルオキシドなどのアルカリ金属アルコキシド類;トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類;などが挙げられる。これらのルイス塩基化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられ、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。
【0091】
重合反応時にルイス塩基化合物を添加する時期は特に限定されず、目的とする各ブロック共重合体の構造に応じて適宜決定すればよい。たとえば、重合を開始する前に予め添加してもよいし、一部の重合体ブロックを重合してから添加してもよく、さらには、重合を開始する前に予め添加した上で一部の重合体ブロックを重合した後さらに添加してもよい。
【0092】
重合反応温度は、好ましくは10~150℃、より好ましくは30~130℃、さらに好ましくは40~90℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、通常、48時間以内、好ましくは0.5~10時間である。重合圧力は、上記重合温度範囲で単量体および溶媒を液相に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されない。
【0093】
以上のような条件で、溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を主成分として含む単量体を重合することにより、芳香族ビニル重合体ブロック鎖を含有する溶液を得ることができる。なお、重合により得られる芳香族ビニル重合体ブロック鎖は、通常、活性末端を有するものとなる。また、得られる芳香族ビニル重合体ブロック鎖は、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)を形成することとなるものであるため、この第1重合工程において用いる単量体の量は、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)の重量平均分子量に応じて決定すればよい。
【0094】
次いで、第1重合工程において得られた芳香族ビニル重合体ブロック鎖を含有する溶液に、共役ジエン単量体を主成分として含む単量体を添加し、重合を行う(第2重合工程)。これにより、ジブロック鎖を含有する溶液を得ることができる。なお、重合により得られるジブロック鎖は、通常、活性末端を有するものとなる。また、第2重合工程において得られるジブロック鎖は、上記第1重合工程において得られた芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)を形成することとなる重合体鎖に、共役ジエン重合体ブロック(D)を形成することとなる重合体鎖がさらに結合されたものとなるため、この第2重合工程において用いる単量体の量は、共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量に応じて決定すればよい。また、重合反応温度は、重合時間、重合圧力は、上記第1重合工程と同様の範囲内で制御すればよい。
【0095】
次いで、第2重合工程において得られたジブロック鎖を含有する溶液に、芳香族ビニル単量体を主成分として含む単量体を添加し、重合を行う(第3重合工程)。これにより、一般式(A):Ar1-D-Ar2で表されるブロック共重合体Aを含有する溶液を得ることができる。第3重合工程において得られるブロック共重合体Aは、上記第2重合工程において得られた芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および共役ジエン重合体ブロック(D)を形成することとなる重合体鎖に、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)を形成することとなる重合体鎖がさらに結合されたものとなるため、この第3重合工程において用いる単量体の量は、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)の重量平均分子量に応じて決定すればよい。また、重合反応温度は、重合時間、重合圧力は、上記第1重合工程と同様の範囲内で制御すればよい。
【0096】
第3重合工程の後、ブロック共重合体Aを含有する溶液から、重合体成分を回収してもよい(回収工程)。回収の方法は、常法に従えばよく、特に限定されない。たとえば、反応終了後に、必要に応じて、水、メタノール、エタノール、プロパノール、塩酸、クエン酸などの重合停止剤を添加し、さらに必要に応じて、酸化防止剤などの添加剤を添加してから、溶液に直接乾燥法やスチームストリッピングなどの公知の方法を適用することにより、回収することができる。スチームストリッピングなどを適用して、重合体成分がスラリーとして回収される場合は、押出機型スクイザーなどの任意の脱水機を用いて脱水して、所定値以下の含水率を有するクラムとし、さらにそのクラムをバンドドライヤーあるいはエクスパンション押出乾燥機などの任意の乾燥機を用いて乾燥すればよい。以上のようにして得られるブロック共重合体は、常法に従い、ペレット形状などに加工してから使用に供してもよい。
以上のようにして、ブロック共重合体Aを含有するブロック共重合体を製造することができる。
【0097】
また、第3重合工程を次のように実施することで、ブロック共重合体Aに加えて、ブロック共重合体Bをさらに含有するブロック共重合体を製造することができる。すなわち、第3重合工程を、
第2重合工程で得られたジブロック鎖を含有する溶液に、芳香族ビニル単量体を含む単量体を添加し、重合することで、トリブロック鎖を含有する溶液を得る第3-1重合工程と、
トリブロック鎖を含有する溶液に、トリブロック鎖が有する活性末端に対して1モル当量未満となる量で重合停止剤を添加し、活性末端の一部を失活させて、ブロック共重合体Bおよびトリブロック鎖を含有する溶液を得る停止工程と、
トリブロック鎖およびブロック共重合体Bを含有する溶液に、芳香族ビニル単量体を含む単量体を添加し、重合することで、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bを含有する溶液を得る第3-2重合工程と、
を備える製造方法により実施する。
【0098】
第3-1重合工程では、第2重合工程において得られたジブロック鎖を含有する溶液に、芳香族ビニル単量体を主成分として含む単量体を添加し、重合を行う。これにより、トリブロック鎖を含有する溶液を得ることができる。なお、重合により得られるトリブロック鎖は、通常、活性末端を有するものとなる。また、第3-1重合工程において得られるトリブロック鎖は、上記第2重合工程において得られた芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)または芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および共役ジエン重合体ブロック(D)または共役ジエン重合体ブロック(D)を形成することとなる重合体鎖に、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)の一部、または、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)を形成することとなる重合体鎖がさらに結合されたものとなるため、この第3-1重合工程において用いる単量体の量は、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)の重量平均分子量に応じて決定すればよい。また、重合反応温度は、重合時間、重合圧力は、上記第1重合工程と同様の範囲内で制御すればよい。
【0099】
次いで、第3-1重合工程において得られたトリブロック鎖を含有する溶液に、トリブロック鎖が有する活性末端に対して1モル当量未満となる量で重合停止剤を添加する(停止工程)。これにより、トリブロック鎖が有する活性末端の一部が失活して、活性末端が失活したブロック共重合体が得られる。このブロック共重合体が、一般式(B):(Ar-D-Xで表されるブロック共重合体Bのうち、Xが単結合であり、nが2であるブロック共重合体Bとなる。
【0100】
重合停止剤は、活性末端と反応して活性末端を失活させることができ、1つの活性末端と反応した後は別の活性末端と反応しないものであれば特に限定されないが、得られる組成物の吸湿を抑制する観点からは、ハロゲン原子を含有しない化合物である重合停止剤であることが好ましく、なかでも、活性末端と反応した際に金属アルコキシド、金属アリールオキシド、または金属水酸化物を生じさせる重合停止剤が特に好ましい。重合停止剤として特に好ましく用いられる化合物としては、水、メタノールやエタノールなどの1価アルコール、フェノールやクレゾールなどの1価フェノール類が挙げられる。
【0101】
重合停止剤の使用量は、ブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとの重量比に応じて決定され、トリブロック鎖が有する活性末端に対して1モル当量未満となる量であれば特に限定されないが、通常、活性末端に対して重合停止剤が0.18~0.91モル当量となる範囲であり、0.35~0.80モル当量となる範囲であることが好ましい。
【0102】
以上のようにして、活性末端を有するトリブロック鎖を含有する溶液に、その活性末端に対して1モル当量未満となる量で重合停止剤を添加すると、活性末端を有するトリブロック鎖のうちの一部の活性末端が失活し、その活性末端が失活した重合体は、ブロック共重合体Bとなる。そして、重合停止剤と反応しなかった活性末端を有するトリブロック鎖の残りの一部は、未反応のまま溶液中に残ることとなる。
【0103】
次いで、停止工程において得られたトリブロック鎖およびブロック共重合体Bを含有する溶液に、芳香族ビニル単量体を主成分として含む単量体を添加し、重合を行う(第3-2重合工程)。これにより、一般式(A):Ar1-D-Ar2で表されるブロック共重合体A、および、ブロック共重合体Bを含有する溶液を得ることができる。第3-2重合工程において得られるブロック共重合体Aは、上記第3-1重合工程において得られたトリブロック鎖の活性末端に、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)の一部を形成することとなる重合体鎖がさらに結合されたものとなるため、この第3-2重合工程において用いる単量体の量は、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)の重量平均分子量に応じて決定すればよい。また、重合反応温度は、重合時間、重合圧力は、上記第1重合工程と同様の範囲内で制御すればよい。
【0104】
第3-2重合工程の後、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bを含有する溶液から、重合体成分を回収してもよい(回収工程)。回収の方法は、上述したとおりである。
以上のようにして、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bを含有するブロック共重合体を製造することができる。
【0105】
また、上記の製造方法は、第2重合工程で得られたジブロック鎖を含有する溶液に、ジブロック鎖が有する活性末端に対して1モル当量未満となる量で重合停止剤を添加し、活性末端の一部を失活させて、ブロック共重合体Cおよびジブロック鎖を含有する溶液を得る停止工程、をさらに備えることもできる。これにより、ジブロック鎖が有する活性末端の一部が失活して、活性末端が失活したブロック共重合体が得られる。このブロック共重合体が一般式(C):Ar-Dで表されるブロック共重合体Cとなり、最終的に、ブロック共重合体Aに加えて、ブロック共重合体Cをさらに含有するブロック共重合体を製造することができる。
【0106】
重合停止剤は、上述したものを用いることができる。重合停止剤の使用量は、ブロック共重合体Aとブロック共重合体Cとの重量比に応じて決定され、ジブロック鎖が有する活性末端に対して1モル当量未満となる量であれば特に限定されないが、通常、活性末端に対して重合停止剤が0.18~0.91モル当量となる範囲であり、0.35~0.80モル当量となる範囲であることが好ましい。
【0107】
以上のようにして、活性末端を有するジブロック鎖を含有する溶液に、その活性末端に対して1モル当量未満となる量で重合停止剤を添加すると、活性末端を有するジブロック鎖のうちの一部の活性末端が失活し、その活性末端が失活した重合体は、ブロック共重合体Cとなる。そして、重合停止剤と反応しなかった活性末端を有するジブロック鎖の残りの一部は、未反応のまま溶液中に残ることとなる。
【0108】
また、上記の製造方法は、第2重合工程で得られたジブロック鎖を含有する溶液に、ジブロック鎖が有する活性末端に対して1モル当量未満となる量でカップリング剤を添加して、ブロック共重合体Bおよびジブロック鎖を含有する溶液を得るカップリング工程、をさらに備えることもできる。これにより、ジブロック鎖が有する活性末端と、カップリング剤とが反応して、2以上のジブロック鎖がカップリング剤の残基を介して結合し、一般式(B):(Ar-D-Xで表されるブロック共重合体Bのうち、Xがカップリング剤の残基であり、nが2以上の整数であるブロック共重合体Bが形成される。そして、最終的に、ブロック共重合体Aに加えて、ブロック共重合体Bをさらに含有するブロック共重合体を製造することができる。
【0109】
カップリング剤は、ジブロック鎖が有する活性末端と反応し得る官能基を1分子中に2個以上有するものであれば特に限定されないが、ジブロック鎖が有する活性末端と反応し得る官能基を1分子中に2~4個有するカップリング剤が好ましい。また、カップリング剤は、ケイ素原子を含有することが好ましく、ハロゲン化シランおよびアルコキシシランがより好ましい。
【0110】
ジブロック鎖が有する活性末端と反応し得る官能基を1分子中に2個有するカップリング剤(2官能のカップリング剤)としては、例えば、ジクロロシラン、モノメチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシランなどの2官能性ハロゲン化シラン;ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどの2官能性アルコキシシラン;ジクロロエタン、ジブロモエタン、メチレンクロライド、ジブロモメタンなどの2官能性ハロゲン化アルカン;ジクロロスズ、モノメチルジクロロスズ、ジメチルジクロロスズ、モノエチルジクロロスズ、ジエチルジクロロスズ、モノブチルジクロロスズ、ジブチルジクロロスズなどの2官能性ハロゲン化スズ;ジブロモベンゼン、安息香酸、CO、2-クロロプロペンなどを用いることができる。これらのなかでも、2官能性ハロゲン化シランまたは2官能性アルコキシシランが特に好ましく用いられる。これらの2官能のカップリング剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0111】
ジブロック鎖が有する活性末端と反応し得る官能基を1分子中に3個有するカップリング剤(3官能のカップリング剤)としては、例えば、トリクロロエタン、トリクロロプロパンなどの3官能性ハロゲン化アルカン;メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシランなどの3官能性ハロゲン化シラン;メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどの3官能性アルコキシシラン;などが挙げられる。これらの3官能のカップリング剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0112】
ジブロック鎖が有する活性末端と反応し得る官能基を1分子中に4個有するカップリング剤(4官能のカップリング剤)としては、例えば、四塩化炭素、四臭化炭素、テトラクロロエタンなどの4官能性ハロゲン化アルカン;テトラクロロシラン、テトラブロモシランなどの4官能性ハロゲン化シラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどの4官能性アルコキシシラン;テトラクロロスズ、テトラブロモスズなどの4官能性ハロゲン化スズ;などが挙げられる。これらの4官能のカップリング剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0113】
ブロック共重合体Bのnの数、すなわちブロック共重合体Bの分岐数は、カップリング剤の種類、使用量、添加のタイミング、ルイス塩基化合物の使用量などを調整することにより、調整することができる。また、メタノールなどの反応停止剤を用いて、カップリング率を調整して、ブロック共重合体Bの分岐数を調整することもできる。また、ジブロック鎖が有する活性末端と反応し得る官能基の数が異なる2種以上のカップリング剤を組み合わせて用いることにより、ブロック共重合体Bの分岐数を調整することもできる。さらに、これらの手段によって、第2重合工程で得られたジブロック鎖を未反応のまま残留させ、最終的にブロック共重合体Cとして回収してもよい。
【0114】
カップリング剤の使用量は、目的とするブロック共重合体Bの分岐数に応じて、適切な量に調整される。カップリング剤の使用量としては、ジブロック鎖が有する活性末端に対して、好ましくは0.05~0.9モル当量であり、より好ましくは0.20~0.70モル当量である。
【0115】
反応温度は、好ましくは10~150℃、より好ましくは30~130℃、さらに好ましくは40~90℃である。反応に要する時間は条件によって異なるが、通常、48時間以内、好ましくは0.5~10時間である。
【0116】
以上のようにして、活性末端を有するジブロック鎖を含有する溶液に、その活性末端に対して1モル当量未満となる量でカップリング剤を添加すると、活性末端を有するジブロック鎖のうちの一部がカップリング剤と反応し、ブロック共重合体Bとなる。そして、重合停止剤と反応しなかった活性末端を有するジブロック鎖の残りの一部は、未反応のまま溶液中に残ることとなる。
【0117】
(粘着付与樹脂)
本発明のホットメルト弾性接着剤は、粘着付与樹脂をさらに含有する。粘着付与樹脂としては、特に限定されないが、従来公知の粘着付与樹脂が使用できる。
【0118】
粘着付与樹脂としては、たとえば、ロジン;水素添加ロジン、不均化ロジン、二量化ロジンなどの変性ロジン類;グリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールとロジンまたは変性ロジン類とのエステル化物;α-ピネン系、β-ピネン系、ジペンテン(リモネン)系などのテルペン系樹脂;脂肪族系、芳香族系、脂環族系または脂肪族-芳香族共重合系の炭化水素樹脂またはこれらの水素化物;フェノール樹脂;クマロン-インデン樹脂などが挙げられる。これらのなかでも、ブロック共重合体との相溶性のよい脂肪族系または脂肪族-芳香族共重合系の炭化水素樹脂が好適に用いられる。粘着付与樹脂は、単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0119】
炭化水素樹脂としては、芳香族モノオレフィンを含有する炭化水素単量体混合物を重合して得られる炭化水素樹脂やその水素化物が挙げられる。
【0120】
炭化水素樹脂を得るために用いられる炭化水素単量体混合物に含有される芳香族モノオレフィンの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、イソプロペニルトルエン、ビニルトルエン、インデンが挙げられ、これらのなかでも、スチレンが特に好ましく用いられる。また、この炭化水素単量体混合物には、芳香族モノオレフィン以外の成分として、炭素数4~8の脂肪族モノオレフィンおよび炭素数4~5の脂肪族ジオレフィンが含有されることが好ましい。炭素数4~8の脂肪族モノオレフィンの具体例としては、ブテン類、ペンテン類、メチルブテン類、メチルペンテン類、ジイソブチレン類などの鎖状モノオレフィン、およびシクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロペンテン類などの環状モノオレフィンが挙げられる。また、炭素数4~5の脂肪族ジオレフィンの具体例としては、1,3-ブタジエン、イソプレンおよび1,3-ペンタジエンなどの鎖状ジオレフィン、およびシクロペンタジエン等の環状ジオレフィンが挙げられる。
【0121】
このような炭化水素単量体混合物は、一般に-20~60℃のナフサ分解留分として得ることができるが、この留分に脂肪族モノオレフィン留分および/または芳香族モノオレフィン留分を添加したものを炭化水素単量体混合物として用いてもよい。炭化水素単量体混合物の重合方法は特に限定されないが、通常は、塩化アルミニウムなどの酸性ハロゲン化金属触媒を用いて重合される。
【0122】
粘着付与樹脂の芳香族単量体単位含有量は、好ましくは1~70重量%であり、より好ましくは2~60重量%であり、さらに好ましくは5~50重量%である。
【0123】
また、本発明のホットメルト弾性接着剤においては、粘着付与樹脂として、芳香族単量体単位含有量が1重量%未満であるいわゆる非芳香族系の粘着付与樹脂を併用することも可能である。非芳香族系の粘着付与樹脂の具体例としては、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、脂肪族系粘着付与樹脂、脂環族系粘着付与樹脂、およびこれらの水素化物が挙げられる。なお、非芳香族系の粘着付与樹脂を併用する場合には、粘着付与樹脂全体としての芳香族単量体単位含有量を前述の範囲とすればよい。
【0124】
粘着付与樹脂の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、通常300~6000の範囲であり、好ましくは500~5000の範囲である。また、粘着付与樹脂の軟化点も特に限定されるものではないが、通常50~160℃の範囲であり、好ましくは60~120℃の範囲である。
【0125】
本発明のホットメルト弾性接着剤における粘着付与樹脂の含有量は、特に限定されないが、ブロック共重合体100重量部当り、通常30~400重量部であり、好ましくは50~350重量部であり、より好ましくは70~300重量部である。
【0126】
本発明のホットメルト弾性接着剤は、さらに軟化剤を含有してもよい。軟化剤としては従来公知の軟化剤が使用できる。具体的には、芳香族系、パラフィン系またはナフテン系の伸展油(エクステンダーオイル);ポリブテン、ポリイソブチレンなどの液状重合体などを使用することができる。軟化剤の使用量は、特に限定されないが、ブロック共重合体100重量部当り、500重量部以下であり、好ましくは10~350重量部であり、より好ましくは30~250重量部である。なお、軟化剤は1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0127】
本発明のホットメルト弾性接着剤は、酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールなどのヒンダードフェノール系化合物;ジラウリルチオプロピオネートなどのチオジカルボキシレートエステル類;トリス(ノニルフェニル)ホスファイトなどの亜燐酸塩類;を使用することができる。酸化防止剤の含有量は、特に限定されないが、ブロック共重合体100重量部当り、通常10重量部以下であり、好ましくは0.5~5重量部である。なお、酸化防止剤は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0128】
また、本発明のホットメルト弾性接着剤は、さらに、熱安定剤、紫外線吸収剤、充填剤など、その他の配合剤を含有することができる。なお、本発明のホットメルト弾性接着剤は、溶剤を含まない、無溶剤の組成物であることが好ましい。
【0129】
本発明のホットメルト弾性接着剤を得るにあたり、ブロック共重合体と粘着付与樹脂や各種添加剤とを混合する方法は特に限定されず、例えば、各成分を溶剤に溶解し均一に混合した後、溶剤を加熱などにより除去する方法、各成分をニーダーなどで加熱溶融混合する方法を挙げることができる。
【0130】
本発明のホットメルト弾性接着剤を用いるにあたり、各種部材への塗布方法は特に限定されないが、例えば、Tダイコーティング、ロールコーティング、マルチビードコーティング、スプレーコーティング、フォームコーティングなどの手法により、塗布を行なうことができる。
【0131】
本発明のホットメルト弾性接着剤は、比較的に低温での塗工が容易であり、クリープレジスタンスおよび接着力に優れるものである。したがって、本発明のホットメルト弾性接着剤は、種々の部材の接着に簡便に適用することが可能であり、しかも、省エネルギーで、生産性よく、保持力の高い接着を行なうことができる。
【0132】
本発明のホットメルト弾性接着剤は、種々の用途に適用することが可能であり、その用途は限定されるものではないが、比較的に低温での塗工性が良好であることから、高温下での燃焼や劣化のおそれがある部材のホットメルト接着に好適に使用され、特に、使い捨ておむつ(紙おむつ)や生理用ナプキンの製造において、それらの構成部材である熱可塑性樹脂シートや不織布の接着に好適に使用することができる。さらに、本発明のホットメルト弾性接着剤は、クリープレジスタンスおよび接着力に優れ、比較的に低温での塗工性が良好であることから、各種の粘着テープやラベルの粘着剤としても好適に使用され、省エネルギーかつ高生産性で、保持力やタック性に優れた粘着テープやラベルを与えることができる。
【実施例
【0133】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。以下において、特記しない限り「部」は重量基準である。なお、試験、評価は以下によった。
【0134】
〔各ブロック共重合体の重量平均分子量〕
流速0.35ml/分のテトラヒドロフランをキャリアとする高速液体クロマトグラフィによりポリスチレン換算分子量として、重量平均分子量を求めた。装置は、東ソー社製HLC8320、カラムは昭和電工社製Shodex KF-404HQを3本連結したもの(カラム温度40℃)、検出器は示差屈折計および紫外検出器を用い、分子量の較正は東ソー社製の標準ポリスチレン(500から300万)の12点で実施した。
【0135】
〔ブロック共重合体組成物における各ブロック共重合体の重量比〕
上記の高速液体クロマトグラフィにより得られたチャートの各ブロック共重合体に対応するピークの面積比から求めた。
【0136】
〔各ブロック共重合体のスチレン重合体ブロックの重量平均分子量〕
Rubber Chem. Technol.,45,1295(1972)に記載された方法に従い、ブロック共重合体をオゾンと反応させ、水素化リチウムアルミニウムで還元することにより、ブロック共重合体のイソプレン重合体ブロックを分解した。具体的には、以下の手順で行なった。すなわち、モレキュラーシーブで処理したジクロロメタン100mlを入れた反応容器に、試料を300mg溶解した。この反応容器を冷却槽に入れ-25℃としてから、反応容器に170ml/minの流量で酸素を流しながら、オゾン発生器により発生させたオゾンを導入した。反応開始から30分経過後、反応容器から流出する気体をヨウ化カリウム水溶液に導入することにより、反応が完了したことを確認した。次いで、窒素置換した別の反応容器に、ジエチルエーテル50mlと水素化リチウムアルミニウム470mgを仕込み、氷水で反応容器を冷却しながら、この反応容器にオゾンと反応させた溶液をゆっくり滴下した。そして、反応容器を水浴に入れ、徐々に昇温して、40℃で30分間還流させた。その後、溶液を攪拌しながら、反応容器に希塩酸を少量ずつ滴下し、水素の発生がほとんど認められなくなるまで滴下を続けた。この反応の後、溶液に生じた固形の生成物をろ別し、固形の生成物は、100mlのジエチルエーテルで10分間抽出した。この抽出液と、ろ別した際のろ液とをあわせ、溶媒を留去することにより、固形の試料を得た。このようにして得られた試料につき、上記の重量平均分子量の測定法に従い、重量平均分子量を測定し、その値をスチレン重合体ブロックの重量平均分子量とした。
【0137】
〔各ブロック共重合体のイソプレン重合体ブロックの重量平均分子量〕
それぞれ上記のようにして求められた、ブロック共重合体の重量平均分子量から、対応するスチレン重合体ブロックの重量平均分子量を引き、その計算値に基づいてイソプレン重合体ブロックの重量平均分子量を求めた。
【0138】
〔各ブロック共重合体のイソプレン重合体ブロックのビニル結合含有量〕
プロトンNMRの測定に基づき求めた。
【0139】
〔各ブロック共重合体のスチレン単位含有量〕
上記の高速液体クロマトグラフィの測定における、示差屈折計と紫外検出器との検出強度比に基づいて求めた。なお、予め、異なるスチレン単位含有量を有する共重合体を用意し、それらを用いて、検量線を作成した。
【0140】
〔ブロック共重合体のメルトフローレート〕
ISO 1133(G条件、200℃、5kg)に準拠して測定した。
【0141】
〔ブロック共重合体のショアーA硬度〕
ISO 7619に準拠して求めた。詳細は以下のとおりである。
ブロック共重合体組成物15gを170℃に温度設定したプレス成型機に入れ、0.1~0.5MPa加圧化で1分間予備溶融させたのち、20MPaの圧力を掛け、シート状に成形した。この操作を2~3回繰り返し、均一なシートを作成した。
得られたシートを4cm×4cmの大きさに折り畳んだのち、厚さ2mmの型枠を使用して再度プレス成型機に入れ、0.1~0.5MPa加圧化で1分間予備溶融させたのち、10MPaの圧力を掛け、厚さ2mmの板状に成形した。
得られた板状サンプルを3cm×4cmの大きさにカットし、これを3毎重ねたものを硬度測定用サンプルとした。
測定にはデュロメーター(タイプA)を使用した。硬度測定用サンプルを所定の場所に置き、サンプル上に測定針をゆっくりとおろし、針をおろしてから10秒後の指示値を読み取った。測定位置を変えて5回測定し、それらの平均値を算出した。
【0142】
〔クリープレジスタンス〕
・塗工サンプル作製
Vスリット塗工でホットメルト弾性接着剤を糸ゴムに塗布し、糸ゴムを延伸させて不織布に貼り合せたものを塗工サンプルとした。塗工温度は140℃とした。塗布量は30gsmであった。糸ゴムの延伸倍率は1.5倍であった。
・クリープレジスタンス評価
糸ゴムを不織布に貼り合せたものをサンプルとし、このサンプルを250mm~300mmの長さにカットし、完全に延伸させた状態でダンボール板に貼り付けた。次いで、貼り付けた試験体のゴム長さが200mmとなるような任意の2点に油性ペンで印をつけ、この印のところでゴムをカットし37.7℃で4時間放置した。
4時間後、ゴム長さを測定し、クリープレジスタンスを算出した。クリープレジスタンスを算出する式を以下に示す。
クリープレジスタンス(%)=(200-4時間後の糸ゴム長さ)/200×100
クリープレジスタンスの値が小さいほど、試験時に糸ゴムが不織布からずれることが少なく、弾性保持力に優れることを示す。
【0143】
〔接着力〕
常温での剥離接着強さ(N/m)を、23℃で、被着体として硬質ポリエチレン板を使用してPSTC-1(米国粘着テープ委員会による180°剥離接着試験)に準じて測定することにより、接着力を評価した。値が大きいものほど、接着力に優れる。
【0144】
〔製造例1〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(以下、「TMEDA」と称する)2.2ミリモル、およびスチレン1.20kgを添加した。全容を40℃で攪拌しながら、n-ブチルリチウム148.1ミリモルを添加した。添加終了後、50℃に昇温して1時間重合反応を行った。このときのスチレンの重合転化率は100重量%であった。
引き続き、50~60℃を保つように温度制御しながら、反応器に、イソプレン6.50kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合反応を行った。このときのイソプレンの重合転化率は100%であった。
次いで、50~60℃を保つように温度制御しながら、スチレン1.20kgを1時間にわたり連続的に添加した。スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合反応を行うことで、活性末端を有するトリブロック鎖を含有する液を得た。このときのスチレンの重合転化率は100%であった。
次いで、重合停止剤として、メタノール110.3ミリモルを添加して、混合することにより、トリブロック鎖のうちの一部の活性末端を失活させて、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体Bを形成させた。
この後、さらに引き続き50~60℃を保つように温度制御しながら、スチレン1.10kgを1時間にわたり連続的に添加した。スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合反応を行い、活性末端を有するトリブロック鎖を含有する溶液を得た。このときのスチレンの重合転化率は100%であった。
最後に、重合停止剤として、メタノール296.2ミリモルを添加して、混合することにより、トリブロック鎖の活性末端を全て失活させて、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体Aを形成させた。
反応に用いた各試剤の量を表1にまとめて示す。また、以上のようにして得られたブロック共重合体組成物(1)を含有する反応液の一部を取り出し、上記測定方法に従ってブロック共重合体組成物(1)を評価した。結果を表2に示す。
【0145】
以上のようにして得られた反応液100部(重合体成分を30部含有)に、酸化防止剤として、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール0.3部を加えて混合し、混合溶液を少量ずつ85~95℃に加熱された温水中に滴下して溶媒を揮発させて析出物を得て、この析出物を粉砕し、85℃で熱風乾燥することにより、ブロック共重合体組成物(1)を回収した。
【0146】
〔製造例2〕
重合に用いた各試剤の量を、それぞれ、表1に示すように変更したこと以外は製造例1と同様にして、反応液およびブロック共重合体組成物(2)を得た。結果を表2に示す。
【0147】
〔製造例3〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、TMEDA1.9ミリモルおよびスチレン1.52kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n-ブチルリチウム127.4ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100%であった。
引き続き、50~60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレン6.50kgを1時間にわたり連続的に添加した。
イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合し、この後、反応器に重合停止剤としてメタノールを51ミリモル添加して1時間重合停止反応を行い、活性末端を有するジブロック鎖の一部の活性末端を失活させることにより、スチレン-イソプレンジブロック共重合体Cを形成させた。
この後、50~60℃を保つように温度制御しながら、スチレン1.98kgを1時間にわたり連続的に添加した。スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合し、トリブロック鎖を形成させた。スチレンの重合転化率は100%であった。この後、重合停止剤としてメタノール254.8ミリモルを添加して、混合することにより、トリブロック鎖の活性末端を全て失活させて、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体Aを形成させた。
反応に用いた各試剤の量を表1にまとめて示す。また、以上のようにして得られたブロック共重合体組成物(3)を含む反応液の一部を取り出し、上記測定方法に従ってブロック共重合体組成物(3)を評価した。結果を表2に示す。
また、製造例1と同様にして、ブロック共重合体組成物(3)を回収した。
【0148】
〔製造例4〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(以下、TMEDAと称する)2.6ミリモルおよびスチレン1.83kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n-ブチルリチウム175.7ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100重量%であった。
引き続き、50~60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレン5.20kgを1時間にわたり連続的に添加した。
イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。次いで、カップリング剤としてジメチルジクロロシラン60.7ミリモルを添加して2時間カップリング反応を行い、スチレン-イソプレン-スチレンカップリングブロック共重合体Bを形成させた。
この後、50~60℃を保つように温度制御しながら、スチレン2.97kgを1時間にわたり連続的に添加した。スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合し、活性末端を有するトリブロック鎖を形成させた。スチレンの重合転化率は100%であった。この後、重合停止剤としてメタノール351.4ミリモルを添加して、混合することにより、トリブロック鎖の活性末端を全て失活させて、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体Aを形成させた。
反応に用いた各試剤の量を表1にまとめて示す。また、以上のようにして得られたブロック共重合体組成物(4)を含む反応液の一部を取り出し、上記測定方法に従ってブロック共重合体組成物(4)を評価した。結果を表2に示す。
また、製造例1と同様にして、ブロック共重合体組成物(4)を回収した。
【0149】
【表1】
【0150】
【表2】
【0151】
また、後述する比較例2~7で用いた市販のブロック共重合体組成物(5)~(8)の評価結果についても、表3に示す。
ブロック共重合体組成物(5)
商品名「Vector 4411」、DEXCO polymers社製
ブロック共重合体組成物(6)
商品名「Vector 4211」、DEXCO polymers社製
ブロック共重合体組成物(7)
商品名「Vector 4111」、DEXCO polymers社製
ブロック共重合体組成物(8)
商品名「アサプレンT439」、旭化成ケミカルズ社製、リニア型スチレン-ブタジエンブロック共重合体
【0152】
【表3】
【0153】
〔実施例1〕
製造例1で得られたブロック共重合体組成物(1)25部を攪拌翼型混練機に投入し、粘着付与樹脂(商品名「エスコレッツ5300」、軟化点105℃、水添ジシクロペンタジエン系樹脂、エクソンモービル社製)50部、粘着付与樹脂(商品名「エンデックス155」、軟化点155℃、ポリスチレン樹脂、イーストマンケミカル社製)9部、軟化剤(商品名「ダイアナプロセスオイルNS-90S」、ナフテンオイル、出光興産社製)15部および酸化防止剤(商品名「イルガノックス1010」、BASF社製)1部を添加して、系内を窒素ガスで置換したのち、160~180℃で1時間混練することにより、ホットメルト弾性接着剤を調製した。得られたホットメルト弾性接着剤の一部を用いて、上述した方法により、クリープレジスタンスを評価した。また、硬質ポリエチレン板に、160℃に加熱したホットメルト弾性接着剤を塗工し、厚さ30μmの塗膜を形成して、これにより得られた試料について、接着力を評価した。結果を表4に示す。
【0154】
〔実施例2~6〕
表4に示す配合に変更した以外は、実施例1と同様にして、ホットメルト弾性接着剤を調製し、同様に評価した。結果を表4に示す。
【0155】
〔比較例1~7〕
表4に示す配合に変更した以外は、実施例1と同様にして、ホットメルト弾性接着剤を調製し、同様に評価した。結果を表4に示す。
【0156】
【表4】
【0157】
表4の結果が示すように、メルトフローレート、芳香族ビニル単量体単位の含有量、および、ショアーA硬度が適切に調整されたブロック共重合体を含有するホットメルト弾性接着剤は、クリープレジスタンスに優れており、接着力にも優れていた(実施例1~6)。
また、一般式(A):Ar1-D-Ar2で表されるブロック共重合体Aに加えて、一般式(B):(Ar-D-Xで表されるブロック共重合体Bをさらに含有するホットメルト弾性接着剤は、優れた接着力を示すと同時に、クリープレジスタンスに非常に優れていた(実施例1~4および実施例6)。
一方、メルトフローレート、芳香族ビニル単量体単位の含有量、および、ショアーA硬度のうち、1つでも小さすぎたり、大きすぎたりすると、クリープレジスタンスに優れており、接着力にも優れるホットメルト弾性接着剤を得ることができなかった(比較例1~7)。