(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】積層体、プリント基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/082 20060101AFI20231212BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20231212BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20231212BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B32B15/082 B
B32B27/30 D
B32B15/08 J
H05K1/03 630D
(21)【出願番号】P 2020548406
(86)(22)【出願日】2019-09-11
(86)【国際出願番号】 JP2019035758
(87)【国際公開番号】W WO2020059606
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2018173428
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019008497
(32)【優先日】2019-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019041110
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山邊 敦美
(72)【発明者】
【氏名】細田 朋也
(72)【発明者】
【氏名】笠井 渉
(72)【発明者】
【氏名】寺田 達也
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/008876(WO,A1)
【文献】特開2016-023294(JP,A)
【文献】国際公開第2018/212285(WO,A1)
【文献】特開2017-002115(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131805(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/142747(WO,A1)
【文献】特開2018-002115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む樹脂材料と、ポリアミドイミド、
熱可塑性ポリイミド、熱硬化性ポリイミド、ポリアミック酸、及び(メタ)アクリレートポリマーからなる群より少なくとも1つ選択される結着樹脂とを含み、且つ前記結着樹脂の割合がテトラフルオロエチレン系ポリマーに対して25質量%以下であり、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む樹脂材料のパウダーを含むパウダー分散液が前記金属箔の表面において焼成された第1の樹脂層、フッ素含有量が0~40質量%のマトリックス樹脂を含むプリプレグに由来する第2の樹脂層をこの順に有し、前記第1の樹脂層の厚さが1.0~20μmである、積層体。
【請求項2】
前記第1の樹脂層の少なくとも一部と前記第2の樹脂層の少なくとも一部が接している、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記第2の樹脂層が、フッ素原子を有さない硬化性マトリックス樹脂を含むプリプレグの硬化物からなる層である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの融点が、260~320℃である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記第1の樹脂層の厚さに対する前記第2の樹脂層の厚さの比が1以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記第1の樹脂層の厚さに対する金属箔の厚さの比が1以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
前記第1の樹脂層の厚さが、2~18μmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
前記金属箔の表面粗さRzJISが、1μm未満である、請求項1~7のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項9】
前記金属箔の厚さが、2~30μmである、請求項1~8のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の積層体の金属箔をエッチング処理して伝送回路を形成してプリント基板を得る、プリント基板の製造方法。
【請求項11】
金属材料からなる伝送回路、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む樹脂材料と、ポリアミドイミド、
熱可塑性ポリイミド、熱硬化性ポリイミド、ポリアミック酸、及び(メタ)アクリレートポリマーからなる群より少なくとも1つ選択される結着樹脂とを含み、且つ前記結着樹脂の割合がテトラフルオロエチレン系ポリマーに対して25質量%以下であり、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む樹脂材料のパウダーを含むパウダー分散液が前記伝送回路の表面において焼成された第1の樹脂層、フッ素含有量が0~40質量%のマトリックス樹脂を含むプリプレグに由来する第2の樹脂層をこの順に有し、前記第1の樹脂層の厚さが1.0~20μmである、プリント基板。
【請求項12】
請求項11に記載のプリント基板から形成されたアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属箔を有する積層体、プリント基板、及び積層体を用いたプリント基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属箔の表面に絶縁樹脂層を有する金属箔/絶縁樹脂積層体は、金属箔をエッチング等によって加工して伝送回路を形成することによってプリント基板として用いられる。高周波信号の伝送に用いられるプリント基板には優れた伝送特性が要求されており、絶縁樹脂層に用いられる絶縁樹脂として比誘電率及び誘電正接が低い、ポリテトラフルオロエチレン等のフルオロポリマーが注目されている。また、電子機器の高密度化に伴い、プリプレグ等を介したプリント基板同士の接合によるプリント基板の多層化が検討されている。
【0003】
フルオロポリマーを絶縁樹脂層とする金属箔/絶縁樹脂積層体から形成されたプリント基板を多層化する試みとして、プリント基板の絶縁樹脂層上にケイ素原子、窒素原子又は硫黄原子を有するシランカップリング剤の被覆層を設け、被覆層と特定のフルオロポリマーを主成分とするプリプレグとを熱圧着により接合させて多層基板とする提案がされている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、本質的に低粘着性のフルオロポリマーを含む絶縁樹脂層と、フルオロポリマーを含まないプリプレグとを加熱加圧して、寸法安定性と熱安定性とを具備する積層体(プリント基板)を製造するのは容易ではない。具体的には、プリント基板の実装工程におけるはんだリフロー工程(プリント基板にはんだペーストを載せて加熱する工程)における加熱によって絶縁樹脂層とプリプレグから形成された繊維強化樹脂層との界面に膨れが発生したり、加熱によってプリント基板に反りが生じ、反りによって金属箔と絶縁樹脂層との界面に剥離が生じたりする。
【0006】
本発明は、加熱によるテトラフルオロエチレン系ポリマーを含む樹脂層とプリプレグから形成された繊維強化樹脂層との界面の膨れや金属箔と樹脂層との界面の剥離が抑えられた積層体及びプリント基板を提供する。
本発明は、加熱によるテトラフルオロエチレン系ポリマーを含む樹脂層とプリプレグから形成された繊維強化樹脂層との界面の膨れや金属箔と樹脂層との界面の剥離が抑えられたプリント基板を製造できる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の態様を有する。
[1]金属箔、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む樹脂材料に由来する第1の樹脂層、フッ素含有量が0~40質量%のマトリックス樹脂を含むプリプレグに由来する第2の樹脂層をこの順に有し、前記第1の樹脂層の厚さが1.0~20μmである、積層体。
[2]前記第1の樹脂層の少なくとも一部と前記第2の樹脂層の少なくとも一部が接している、[1]に記載の積層体。
[3]前記第2の樹脂層が、フッ素原子を有さない硬化性マトリックス樹脂を含むプリプレグの硬化物からなる層である、[1]又は[2]に記載の積層体。
[4]前記第1の樹脂層が、さらに結着樹脂を含む前記樹脂材料に由来する樹脂層である、[1]~[3]のいずれかに記載の積層体。
[5]前記結着樹脂を含む樹脂材料における前記結着樹脂の割合が、テトラフルオロエチレン系ポリマーに対して25質量%以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の積層体。
【0008】
[6]前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの融点が、260~320℃である、[1]~[5]のいずれかに記載の積層体。
[7]前記第1の樹脂層が、テトラフルオロエチレン系ポリマーを溶融して形成された層に由来する層である、[1]~[6]のいずれかに記載の積層体。
[8]前記第1の樹脂層の厚さに対する前記第2の樹脂層の厚さの比が1以上である、[1]~[7]のいずれかに記載の積層体。
[9]前記第1の樹脂層の厚さに対する金属箔の厚さの比が1以上である、[1]~[8]のいずれかに記載の積層体。
[10]前記第1の樹脂層の厚さが、2~18μmである、[1]~[9]のいずれかに記載の積層体。
【0009】
[11]前記金属箔の表面粗さが、1μm未満である、[1]~[10]のいずれかに記載の積層体。
[12]前記金属箔の厚さが、2~30μmである、[1]~[11]のいずれかに記載の積層体。
[13]前記[1]~[12]のいずれかに記載の積層体の金属箔をエッチング処理して伝送回路を形成してプリント基板を得る、プリント基板の製造方法。
[14]金属材料からなる伝送回路、テトラフルオロエチレン系ポリマーに由来する第1の樹脂層、フッ素含有量が0~40質量%のマトリックス樹脂を含むプリプレグに由来する第2の樹脂層をこの順に有し、前記第1の樹脂層の厚さが1.0~20μmである、プリント基板。
[15]前記[14]に記載のプリント基板から形成されたアンテナ。
【発明の効果】
【0010】
本発明の積層体においては、加熱による第1の樹脂層と第2の樹脂層との界面の膨れや金属箔と第1の樹脂層との界面の剥離が抑えられる。
本発明のプリント基板においては、加熱による第1の樹脂層と第2の樹脂層との界面の膨れや金属箔と第1の樹脂層との界面の剥離が抑えられる。
本発明のプリント基板の製造方法によれば、加熱による第1の樹脂層と第2の樹脂層との界面の膨れや金属箔と第1の樹脂層との界面の剥離が抑えられたプリント基板を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の用語は、以下の意味を有する。
「ポリマーの貯蔵弾性率」は、ISO 6721-4:1994(JIS K 7244-4:1999)に基づき測定される値である。
「ポリマーの溶融粘度」は、ASTM D1238に準拠し、フローテスター及び2Φ-8Lのダイを用い、予め測定温度にて5分間加熱しておいたポリマーの試料(2g)を0.7MPaの荷重にて測定温度に保持して測定した値である。
「ポリマーの融点」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定した融解ピークの最大値に対応する温度である。
「パウダーのD50」は、レーザー回折・散乱法によって求められる体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
「パウダーのD90」は、レーザー回折・散乱法によって求められる体積基準累積90%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が90%となる点の粒子径である。
「積層体の反り率」は、積層体から180mm角の四角い試験片を切り出し、試験片についてJIS C 6471:1995(IEC 249-1:1982)に規定される測定方法にしたがって測定される値である。
「比誘電率(20GHz)及び誘電正接(20GHz)」は、SPDR(スプリットポスト誘電体共振器)法により、23℃±2℃、50±5%RHの範囲内の環境下にて、周波数20GHzで測定される値である。
「算術平均粗さRa」及び「最大高さRz」は、Oxford Instruments社製の原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、下記測定条件にて1μm
2範囲の表面について測定する。
プローブ:AC160TS-C3(先端R:<7nm、バネ定数:26N/m)、測定モード:AC-Air、Scan Rate:1Hz。
「Rz
JIS」は、JIS B 0601:2013の附属書JAで規定される十点平均粗さ値である。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの総称である。
図1における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。
【0013】
本発明において、テトラフルオロエチレン系ポリマー(以下、「TFE系ポリマー」とも記す。)を含む樹脂材料に由来する第1の樹脂層とは、TFE系ポリマーを含む樹脂材料の層やフィルムが積層過程における加熱加圧を経て形成された樹脂層を意味する。
本発明において、プリプレグに由来する第2の樹脂層とは、プリプレグが積層過程における加熱加圧を経て形成された樹脂層を意味する。
【0014】
本発明の積層体において、加熱による第1の樹脂層と第2の樹脂層との界面の膨れや金属箔と第1の樹脂層との界面の剥離が抑えられる理由は、必ずしも明確ではないが、以下の様に考えられる。
本発明における第1の樹脂層は、耐熱性に優れるTFE系ポリマーを含むため、はんだリフロー工程における短時間かつ局所的な加熱の際には、断熱層としての役割を果たす。つまり、第1の樹脂層の厚さが1.0μm以上であることで、はんだリフロー工程にて第2の樹脂層の加熱が抑えられ、第1の樹脂層と第2の樹脂層との界面の膨れが抑えられる。
一方で、TFE系ポリマーは収縮性が高いため、第1の樹脂層を有する積層体は、はんだリフロー工程における加熱に対する寸法安定性が低下しやすい。積層体の寸法安定性が低下すると、加熱時の反りが発生し、金属箔と樹脂層との界面が剥離しやすくなる。本発明の積層体においては、第1の樹脂層の厚さが20μm以下であることで、積層体の寸法安定性の低下を抑えている。そのため、加熱による積層体の反りが抑えられ、金属箔と第1の樹脂層との界面の剥離が抑えられる。
【0015】
本発明の積層体は、金属箔、第1の樹脂層、第2の樹脂層をこの順に有する。本発明の積層体の層構成としては、例えば、金属箔/第1の樹脂層/第2の樹脂層、金属箔/第1の樹脂層/第2の樹脂層/第1の樹脂層/金属箔が挙げられる。「金属箔/第1の樹脂層/第2の樹脂層」とは、金属箔、第1の樹脂層、第2の樹脂層がこの順に積層されていることを示し、他の層構成も同様である。
【0016】
図1は、本発明の積層体の一例を示す断面図である。積層体10は、金属箔12と、金属箔12に接する第1の樹脂層14と、第1の樹脂層14に接する第2の樹脂層16とを有する。
本発明の積層体においては、第1の樹脂層の少なくとも一部と第2の樹脂層の少なくとも一部が接していることが好ましく、第1の樹脂層の片面の全体と第2の樹脂層の片面の全体とが接していることがより好ましい。
【0017】
金属箔の厚さは、2~30μmであることが好ましく、3~25μmであることが特に好ましい。
第1の樹脂層の厚さは、2μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。第1の樹脂層の厚さは、20μm以下であり、18μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、10μm未満であることがさらに好ましい。第1の樹脂層の厚さが前記下限値以上であれば、加熱による第1の樹脂層と第2の樹脂層との界面の膨れが抑えられる。また、特に第1の樹脂層の厚さが2μm以上であれば、第2の樹脂層の構造(厚さ等。)や種類に異存することなく、高周波領域における伝送損失が大幅に改善される。第1の樹脂層の厚さが前記上限値以下であれば、加熱による積層体の反りが抑えられ、金属箔と第1の樹脂層との界面の剥離が抑えられる。
第2の樹脂層の厚さとしては、30~2000μmが好ましく、10~1000μmがより好ましく、100~500μmが特に好ましい。
【0018】
第1の樹脂層の厚さに対する金属箔の厚さの比は、1以上であることが好ましく、2~10であることが特に好ましい。前記比が前記下限値以上であれば、加熱による積層体の反りがさらに抑えられ、金属箔と第1の樹脂層との界面の剥離がさらに抑えられる。前記比が前記上限値以下であれば、プリント基板としての伝送特性がさらに優れる。
第1の樹脂層の厚さに対する第2の樹脂層の厚さの比は、1以上であることが好ましく、2~1000であることが特に好ましい。前記比が前記下限値以上であれば、加熱による積層体の反りがさらに抑えられ、金属箔と第1の樹脂層との界面の剥離がさらに抑えられる。前記比が前記上限値以下であれば、加熱による第1の樹脂層と第2の樹脂層との界面の膨れがさらに抑えられる。また、プリント基板としての伝送特性がさらに優れる。
【0019】
本発明の積層体の反り率は、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることが特に好ましい。この場合、加熱による金属箔と第1の樹脂層との界面の剥離がさらに抑えられる。また、積層体をプリント基板に加工する際のハンドリング性と、得られるプリント基板の伝送特性に優れる。
【0020】
積層体の基板部分(第1の樹脂層及び第2の樹脂層)の比誘電率(20GHz)としては、5.5以下が好ましく、3.6以下が特に好ましい。基板部分の誘電正接(20GHz)としては、0.02以下が好ましく、0.003以下が特に好ましい。この範囲において、基板部分の電気特性(低比誘電率、低誘電正接等)及び接合性の双方が優れ、優れた伝送特性が求められるプリント基板等に積層体を好適に使用できる。
【0021】
本発明の積層体における金属箔の材質としては、銅、銅合金、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル合金(42合金も含む)、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金等が挙げられる。
金属箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられる。金属箔の表面には、防錆層(クロメート等の酸化物皮膜等)、耐熱層等が形成されていてもよい。
金属箔の表面はシランカップリング剤により処理されていてもよい。この場合、金属箔の表面の全体がシランカップリング剤により処理されていてもよく、金属箔の表面の一部がシランカップリング剤により処理されていてもよい。
金属箔の表面の十点平均粗さとしては、0.01μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.7μm以上がさらに好ましい。十点平均粗さとしては、4μm以下が好ましく、1.5μm以下がより好ましく、1.2μm以下がさらに好ましい。この場合、第1の樹脂層との接合性が良好となり、伝送特性に優れたプリント配線板が得られやすい。
【0022】
本発明における第1の樹脂層は、TFE系ポリマーを含む樹脂材料に由来する樹脂の層である。本発明の積層体の製造に用いられる、後述の予備積層体(樹脂付金属箔等)におけるTFE系ポリマーを有する層やTFE系ポリマーを有するフィルムは、TFE系ポリマーのみから構成されていてもよく、TFE系ポリマー以外の樹脂や添加剤を含んでいてもよい。TFE系ポリマーを有する層やフィルムは、TFE系ポリマーを80~100質量%含むことが好ましい。
TFE系ポリマーを有する層やフィルムがTFE系ポリマー以外の樹脂として硬化性樹脂を含む場合、第1の樹脂層は該硬化性樹脂の硬化物とTFE系ポリマーを含む。添加剤についても同様に、積層時の加熱加圧により変化する添加剤の場合は、第1の樹脂層は変化後の添加剤を含む。同様に、本発明の積層体の製造に用いられる後述の樹脂付金属箔において、その樹脂が加熱処理を経て形成される場合、加熱処理前の樹脂がTFE系ポリマー以外の樹脂として硬化性樹脂を含むときは得られた樹脂付金属箔における樹脂は硬化性樹脂の硬化物を含む。
【0023】
本発明におけるTFE系ポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)に基づく単位(以下、「TFE単位」とも記す。)を有するポリマーである。TFE系ポリマーは、TFEのホモポリマーであってもよく、TFEと、TFEと共重合可能な他のモノマー(以下、「コモノマー」とも記す。)とのコポリマーであってもよい。TFE系ポリマーは、ポリマーを構成する全単位に対して、TFE単位を90~100モル%有するのが好ましい。
TFE系ポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、TFEとエチレンとのコポリマー、TFEとプロピレンとのコポリマー、TFEとペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)とのコポリマー、TFEとヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー、TFEとフルオロアルキルエチレン(FAE)とのコポリマー、TFEとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマー等が挙げられる。
【0024】
TFE系ポリマーとしては、0.1~5.0MPaの貯蔵弾性率を示す温度領域を260℃以下に有するポリマーが好ましい。TFE系ポリマーが示す貯蔵弾性率は、0.5~3.0MPaであることが好ましい。また、TFE系ポリマーがかかる貯蔵弾性率を示す温度領域としては、180~260℃が好ましく、200~260℃が特に好ましい。この場合、はんだリフロー工程における温度領域において第1の樹脂層が適度に柔らかくなり、加熱による積層体の反りがさらに抑制されやすい。また、前記温度領域においてTFE系ポリマーが弾性に基づく粘着性を効果的に発現しやすい。
【0025】
TFE系ポリマーのフッ素含有量は、70~76質量%であることが好ましく、72~76質量%であることが特に好ましい。この場合、第1の樹脂層が断熱層としての役割を充分に果たしやすく、第1の樹脂層の耐薬品性(エッチング耐性)にも優れる。また、プリント基板としての伝送特性がさらに優れる。また、金属箔と第1の樹脂層との界面の剥離がさらに抑制されやすく、TFE系ポリマーの溶融成形性に優れる。
【0026】
TFE系ポリマーの融点としては、260~320℃が好ましい。前記融点が前記下限値以上であれば、はんだリフロー工程における加熱の際、第1の樹脂層が断熱層としての役割を充分に果たす。前記融点が前記上限値以下であれば、金属箔と第1の樹脂層との界面の剥離がさらに抑制されやすい。また、TFE系ポリマーの溶融成形性に優れる。
【0027】
TFE系ポリマーとしては、380℃における溶融粘度が1×102~1×106Pa・sであるものが好ましく、340℃における溶融粘度が1×102~1×106Pa・sであるものがより好ましく、300℃における溶融粘度が1×102~1×106Pa・sであるものが特に好ましい。この場合、後述するパウダー分散液を金属箔の表面に塗布して焼成した際に、パウダーが密にパッキングして、非多孔質の高平滑性の第1の樹脂層を形成しやすい。かかる第1の樹脂層は、はんだリフロー工程における加熱の際には、断熱層としての役割を充分に果たす。そのため、第1の樹脂層と第2の樹脂層との界面の膨れがさらに抑制されやすい。
【0028】
TFE系ポリマーの好適な態様としては、低分子量のPTFEが挙げられる。低分子量のPTFEは、ポリマー全体として380℃における溶融粘度が1×102~1×106Pa・sであるPTFEだけでなく、コア部分とシェル部分からなるコア-シェル構造においてシェル部分のみが前記範囲の溶融粘度を満たすPTFE(国際公開第2016/170918号等)であってもよい。
低分子量のPTFEは、高分子量のPTFE(溶融粘度が1×109~1×1010Pa・s程度であるもの。)に放射線を照射して得られるPTFE(国際公開第2018/026017号等)であってもよく、TFEを重合してPTFEを製造する際の連鎖移動剤の作用により得られるPTFE(国際公開第2010/114033号等)であってよい。
なお、低分子量のPTFEは、TFEを単独で重合して得られたポリマーであってもよく、TFEとコモノマーとを共重合して得られたコポリマーであってもよい(国際公開第2009/20187号等)。コポリマーとしては、ポリマーを構成する全単位に対して、TFE単位が99.5モル%以上のコポリマーが好ましく、99.9モル%以上のコポリマーが特に好ましい。コモノマーとしては、後述するフルオロモノマーが挙げられ、HFP、PAVE及びFAEが好ましい。
低分子量のPTFEの標準比重(以下、「SSG」とも記す。)としては、2.14~2.22が好ましく、2.16~2.20が特に好ましい。SSGは、ASTM D4895-04に準拠して測定できる。
【0029】
TFE系ポリマーの好適な態様としては、TFEとコモノマーとのコポリマーであり、コポリマーに含まれる全単位に対して、コモノマーに基づく単位を0.5モル%超有するフルオロポリマー(以下、「ポリマーF」とも記す。)も挙げられる。ポリマーFとしては、TFEとエチレンとのコポリマー(ETFE)、TFEとHFPとのコポリマー(FEP)、TFEとPAVEとのコポリマー(PFA)等が挙げられる。ポリマーFとしては、電気特性(低比誘電率、低誘電正接等)及び耐熱性の点から、PFA及びFEPがより好ましく、PFAが特に好ましい。
【0030】
TFE系ポリマーとしては、第1の樹脂層と金属箔との接合性が優れる点から、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基(以下、「官能基」とも記す。)を有するTFE系ポリマーが好ましい。官能基はプラズマ処理等により付与してもよい。
官能基は、TFE系ポリマー中の単位に含まれていてもよく、ポリマーの主鎖の末端基に含まれていてもよい。後者のポリマーとしては、官能基を、重合開始剤、連鎖移動剤等に由来する末端基として有するポリマーが挙げられる。
ポリマーFとしては、官能基を有する単位とTFE単位とを有するポリマーが好ましい。また、この場合のポリマーFとしては、さらに他の単位(後述するPAVE単位、HFP単位等)を有するものが好ましい。
官能基としては、第1の樹脂層と金属箔の接合性の点から、カルボニル基含有基が好ましい。カルボニル基含有基としては、カーボネート基、カルボキシ基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基、酸無水物残基、脂肪酸残基等が挙げられ、カルボキシ基及び酸無水物残基が好ましい。
官能基を有する単位としては、官能基を有するモノマーに基づく単位が好ましい。
【0031】
カルボニル基含有基を有するモノマーとしては、酸無水物残基を有する環状モノマー、カルボキシ基を有するモノマー、ビニルエステル及び(メタ)アクリレートが好ましく、酸無水物残基を有する環状モノマーが特に好ましい。
前記環状モノマーとしては、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(別称:無水ハイミック酸。以下、「NAH」とも記す。)及び無水マレイン酸が好ましい。
官能基を有する単位及びTFE単位以外の他の単位としては、HFPに基づく単位、PAVEに基づく単位及びFAEに基づく単位が好ましい。
PAVEとしては、CF2=CFOCF3、CF2=CFOCF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF3(以下、「PPVE」とも記す。)、CF2=CFOCF2CF2CF2CF3、CF2=CFO(CF2)8F等が挙げられ、PPVEが好ましい。
FAEとしては、CH2=CH(CF2)2F、CH2=CH(CF2)3F、CH2=CH(CF2)4F、CH2=CF(CF2)3H、CH2=CF(CF2)4H等が挙げられ、CH2=CH(CF2)4F及びCH2=CH(CF2)2Fが好ましい。
【0032】
ポリマーFとしては、官能基を有する単位と、TFE単位と、PAVE単位又はHFP単位とを有するポリマーが好ましい。かかるポリマーFの具体例としては、国際公開第2018/16644号に記載された重合体(X)が挙げられる。
ポリマーFにおけるTFE単位の割合は、ポリマーFを構成する全単位に対して、90~99モル%であることが好ましい。
ポリマーFにおけるPAVE単位の割合は、ポリマーFを構成する全単位に対して、0.5~9.97モル%であることが好ましい。
ポリマーFにおける官能基を有する単位の割合は、ポリマーFを構成する全単位に対して、0.01~3モル%であることが好ましい。
【0033】
第1の樹脂層を形成するためのTFE系ポリマーを含む樹脂材料は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて無機フィラー、TFE系ポリマー以外の樹脂、添加剤等を含んでいてもよい。
上記樹脂材料は、結着樹脂を含むことが好ましい。
樹脂材料が結着樹脂を含めば、後述の予備積層体の製造においてパウダーの粉落ちが抑制され、第1の樹脂層の均一性及び表面平滑性がより向上して、その線膨張性が平準化されるため耐熱性がより向上しやすいやすい。
樹脂材料が結着樹脂を含む場合、その含有割合は、TFE系ポリマーに対して、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
【0034】
樹脂材料に含まれる結着樹脂は、TFE系ポリマーとは異なるポリマーであり、熱可塑性であってもよく、熱硬化性であってもよい。予備積層体の樹脂に含まれる結着樹脂は、結着樹脂自体であってもよく、結着樹脂の反応物(硬化性の結着樹脂の硬化物等。)であってもよい。結着樹脂が硬化性の結着樹脂である場合には、第1の樹脂層にはその硬化物が含まれる。結着性樹脂が熱可塑性であれば、結着樹脂の流動性により第1の樹脂層の密着性がより向上しやすく、耐熱性が向上しやすい。
結着性樹脂は、ポリアミドイミド、ポリイミド又は(メタ)アクリレートポリマーであることが好ましい。結着樹脂の具体例としては、「アドバンセル」シリーズ(積水化学社製)、「アロン」シリーズ(東亞合成社製)、「オリコックス」シリーズ(共栄社化学社製)、「フォレット」シリーズ(綜研化学社製)、「ディックファイン」シリーズ(DIC社製)等の(メタ)アクリレートポリマー、「HPC」シリーズ(日立化成社製)等のポリアミドイミド、「ネオプリム」シリーズ(三菱ガス化学社製)、「スピクセリア」シリーズ(ソマール社製)、「Q-PILON」シリーズ(ピーアイ技術研究所製)、「PAID」シリーズ(荒川化学工業社製)、「WINGO」シリーズ(ウィンゴーテクノロジー社製)、「トーマイド」シリーズ(T&K TOKA社製)、「KPI-MX」シリーズ(河村産業社製)、「ユピア-AT」シリーズ(宇部興産社製)等のポリイミドが挙げられる。
【0035】
第1の樹脂層は、樹脂材料中のTFE系ポリマーを溶融して形成された層が好ましい。後述の予備積層体における樹脂層も樹脂材料中のTFE系ポリマーを溶融して形成された層であってもよい。これらの場合、第1の樹脂層が非多孔質の膜となるため、はんだリフロー工程における加熱の際には、断熱層としての役割を充分に果たす。そのため、加熱による第1の樹脂層と第2の樹脂層との界面の膨れがさらに抑えられる。また、第1の樹脂層の耐薬品性(エッチング耐性)にも優れる。
【0036】
本発明における第2の樹脂層は、フッ素含有量が0~40質量%のマトリックス樹脂を含むプリプレグから形成される層である。第2の樹脂層は、マトリックス樹脂が硬化性であれば第2の樹脂層における樹脂としてその硬化物を含み、マトリックス樹脂が非硬化性であれば第2の樹脂層の樹脂としてその樹脂自体を含む。第2の樹脂層としては、フッ素含有量が40質量%以下の硬化性マトリックス樹脂を含むプリプレグの硬化物からなる層、フッ素原子を有さない硬化性マトリックス樹脂を含むプリプレグの硬化物からなる層が挙げられる。
【0037】
マトリックス樹脂のフッ素含有量としては、0~25質量%が好ましく、0~10質量%がより好ましい。マトリックス樹脂は、2種以上の樹脂から構成されていてもよい。
マトリックス樹脂の好適な態様としては、フッ素原子を有さないマトリックス樹脂のみからなる態様(I)、フッ素原子を有さないマトリックス樹脂とフッ素原子を有するマトリックス樹脂とからなり樹脂総量中のフッ素含有量が0~40質量%である態様(II)、フッ素含有量40質量%以下のフッ素原子を有するマトリックス樹脂のみからなる態様(III)が挙げられる。
態様(II)における後者のマトリックス樹脂及び態様(III)におけるマトリックス樹脂としては、TFE系ポリマー、フッ素原子を有する熱可塑性ポリイミド、フッ素原子を有するポリイミド前駆体等の硬化性ポリイミド、フッ素原子を有するエポキシ樹脂が挙げられる。
【0038】
プリプレグとしては、強化繊維シートに、フッ素含有量が0~40質量%のマトリックス樹脂が含浸されたプリプレグが挙げられる。
強化繊維シートとしては、複数の強化繊維からなる強化繊維束、該強化繊維束を織成したクロス、複数の強化繊維が一方向に引き揃えられた一方向性強化繊維束、該一方向性強化繊維束から構成された一方向性クロス、これらを組み合わせたもの、複数の強化繊維束を積み重ねたもの等が挙げられる。
強化繊維としては、長さが10mm以上の連続した長繊維が好ましい。強化繊維は、強化繊維シートの長さ方向の全長または幅方向の全幅にわたり連続している必要はなく、途中で分断されていてもよい。
【0039】
強化繊維としては、無機繊維、金属繊維、有機繊維等が挙げられる。
無機繊維としては、炭素繊維、黒鉛繊維、ガラス繊維、シリコンカーバイト繊維、シリコンナイトライド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維等が挙げられる。
金属繊維としては、アルミニウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維等が挙げられる。
有機繊維としては、芳香族ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維等が挙げられる。
強化繊維は、表面処理が施されているものであってもよい。
強化繊維は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
プリント基板用途では、強化繊維としては、ガラス繊維が好ましい。
【0040】
フッ素原子を有さないマトリックス樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。フッ素原子を有さないマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂としては、後述するパウダー分散液の説明で挙げられた熱硬化性樹脂と同じものが挙げられ、熱硬化性ポリフェニレンエーテルが好ましい。熱硬化性ポリフェニレンエーテルとしては、ビニル基を有するポリフェニレンエーテルが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、後述するパウダー分散液の説明で挙げられた熱可塑性樹脂と同じものが挙げられる。
フッ素原子を有さないマトリックス樹脂は、2種以上から構成されていてもよい。
プリプレグ中のマトリックス樹脂としては、加工性の点から、エポキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンエーテル及びポリブタジエンが好ましい。
また、プリプレグ中のマトリックス樹脂が熱硬化性樹脂である場合、プリプレグとしては、硬化剤を含むものが好ましく、硬化物の硬度と耐熱性の点から、1分子中に硬化性基(イソシアネート基、ブロックイソシアネート基等。)を3以上有する硬化剤を含むものが特に好ましい。プリプレグが熱硬化性樹脂と硬化剤を含む場合、第2の樹脂層における樹脂は、熱硬化性樹脂と硬化剤の反応生成物である硬化した樹脂である。
【0041】
本発明におけるプリプレグ中のマトリックス樹脂の含有量としては、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が特に好ましい。前記含有量としては、90質量%以下が好ましい。この場合、比誘電率と誘電正接により優れた積層体やプリント基板が得られやすい。例えば、本発明の積層体が、金属箔、第1の樹脂層、マトリックス樹脂に由来する第2の樹脂を60質量%以上含む第2の樹脂層をこの順に有し、第1の樹脂層の厚さが5~15μmであると、基板部分の比誘電率が3.6以下(好ましくは3.4以下。)であり、かつ誘電正接が0.003以下(好ましくは0.002以下。)である積層体やプリント基板を調整し易い。
かかる態様の本発明の積層体は、はんだリフロー耐性等の耐熱加工性に加え、柔軟性や屈曲性に優れ、電気特性にも優れるため、種々の形態のプリント基板(後述する多層プリント回路基板等。)に容易に加工できる。
【0042】
プリプレグとしては、以下の商品名のものが挙げられる。
パナソニック社製のメグトロン(MEGTRON) GXシリーズのR-G520、R-1410W、R-1410A、R-1410E、MEGTRONシリーズのR-1410W、R-1410A、R-1410E、MEGTRONシリーズのR-5680、R-5680(J)、R-5680(NJ)、R-5670、R-5670(N)、R-5620S、R-5620、R-5630、R-1570、HIPERシリーズノR-1650V、R-1650D、R-1650M、R-1650E、R-5610、CR-5680、CR-5680(N)、CR-5680(J)。
日立化成工業社製のGEA-770G、GEA-705G、GEA-700G、GEA-679FG、GEA-679F(R)、GEA-78G、TD-002、GEA-75G、GEA-67、GEA-67G。
住友ベークライト社製のEI-6765、panasonic社製のR-5785。
三菱ガス化学社製のGEPL-190T、GEPL-230T、GHPL-830X TypeA、GHPL-830NS、GHPL-830NSR、GHPL-830NSF。
DOOSAN CORPORATION社製のGEPL-190T、GEPL-230T、GHPL-830X TypeA、GHPL-830NS、GHPL-830NSR、GHPL-830NSF。
GUANDONG Shengyi SCI. TECH社製のSP120N、S1151G、S1151GB、S1170G、S1170GB、S1150G、S1150GB、S1140F、S1140FB、S7045G、SP175M、S1190、S1190B、S1170、S0701、S1141KF、S0401KF、S1000-2M、S1000-2MB、S1000-2、S1000-2B、S1000、S1000B、S1000H、S1000HB、S7136H、S7439、S7439B。
SHANGHAI NANYA社製のNY1135、NY1140、NY1150、NY1170、NY2150、NY2170、NY9135、NY9140、NY9600、NY9250、NY9140HF、NY6200、NY6150、NY3170LK、NY6300、NY3170M、NY6200、NY3150HF CTI600、NY3170HF、NY3150D、NY3150HF、NY2170H、NY2170、NY2150、NY2140、NY1600、NY1140、NY9815HF、NY9810HF、NY9815、NY9810。
ITEQ CORPORATION社製のIT-180GN、IT-180I、IT-180A、IT-189、IT-180、IT-258GA3、IT-158、IT-150GN、IT-140、IT-150GS、IT-150G、IT-168G1、IT-168G2、IT-170G、IT-170GRA1、IT-958G、IT-200LK、IT-200D、IT-150DA、IT-170GLE、IT-968G、IT-968G SE、IT-968、IT-968 SE。
NANYA PLASTICS社製のUV BLOCK FR-4-86、NP-140 TL/B、NP-140M TL/B、NP-150 R/TL/B、NP-170 R/TL/B、NP-180 R/TL/B、NPG R/TL/B、NPG-151、NPG-150N、NPG-150LKHD、NPG-170N、NPG-170 R/TL/B、NPG-171、NPG-170D R/TL/B、NPG-180ID/B、NPG-180IF/B、NPG-180IN/B、NPG-180INBK/B(BP)、NPG-186、NPG-200R/TL、NPG-200WT、FR-4-86 PY、FR-140TL PY、NPG-PY R/TL、CEM-3-92、CEM-3-92PY、CEM-3-98、CEM-3-01PY、CEM-3-01HC、CEM-3-09、CEM-3-09HT、CEM-3-10、NP-LDII、NP-LDIII、NP-175R/TL/B、NP-155F R/TL/B、NP-175F R/TL/B、NP-175F BH、NP-175FM BH。
TAIWAN UNION TECHNOLOGY社製のULVP series、LDP series。
ISOLA GROUP社製のA11、R406N、P25N、TerraGreen、I-Tera MT40、IS680 AG、IS680、Astra MT77、G200、DE104、FR408、ED130UV、FR406、IS410、FR402、FR406N、IS420、IS620i、370TURBO、254、I-Speed、FR-408HR、IS415、370HR。
PARK ELECTROCHEMICAL社製のNY9000、NX9000、NL9000、NH9000、N9000-13 RF、N8000Q、N8000、N7000-1、N7000-2 HTスラッシュ-3、N7000-3、N5000、N5000-30、N-5000-32、N4000-12、N4000-12SI、N4000-13、N4000-13SI、N4000-13SI、N4000-13EP、N4000-13EP SI、N4350-13RF、N4380-13RF、N4800-20、N4800-20SI、Meteorwave1000、Meteorwave2000、Meteorwave3000、Meteorwave4000、Mercurywave9350、N4000-6、N4000-6FC、N4000-7、N4000-7SI、N4000-11、N4000-29。
ROGERS CORPORATION社製のRO4450B、RO4450F、CLTE-P、3001 Bonding Film、2929 Bondply、CuClad 6700 Bonding Film、ULTRALAM 3908 Bondply、CuClad 6250 Bonding Film。
利昌工業社製のES-3329、ES-3317B、ES-3346、ES-3308S、ES-3310A、ES-3306S、ES-3350、ES-3352、ES-3660、ES-3351S、ES-3551S、ES-3382S、ES-3940、ES-3960V、ES-3960C、ES-3753、ES-3305、ES-3615、ES-3306S、ES-3506S、ES-3308S、ES-3317B、ES-3615。
【0043】
本発明の積層体は、金属箔と、プリプレグと、第1の樹脂層を形成しうる積層材料とを使用して製造される。第1の樹脂層を形成しうる積層材料としてTFE系ポリマーを含む樹脂材料から形成されたフィルムを使用し、このフィルムと金属箔とプリプレグとを任意の順に積層すれば、本発明の積層体を製造できる。
第1の樹脂層の層厚が20μm以下と薄いため、TFE系ポリマーを含む樹脂材料から形成された樹脂層を有する予備積層体とプリプレグを積層する方法により、本発明の積層体を製造することが好ましい。予備積層体の樹脂層を形成する方法としては、TFE系ポリマーを含む塗工液を塗布する方法が好ましい。
以下、前者の予備積層体(以下、「樹脂付金属箔」とも記す。)を用いた本発明の本発明の積層体の製造方法を説明する。
【0044】
本発明の積層体は、TFE系ポリマーを含む樹脂材料から形成された樹脂層及び金属箔を有する樹脂付金属箔と、プリプレグとを熱プレス法により積層させて製造されることが好ましい。
本発明の積層体における第1の樹脂層の厚さが20μm以下であるため、樹脂付金属箔における樹脂層はその厚さに対応する厚さを有し、本質的に熱伸縮性であるTFE系ポリマーを樹脂層としながらも、寸法安定性を損なうことなく、熱プレス法によりプリプレグと接合できる。樹脂付金属箔における樹脂層は、積層体の第1の樹脂層における樹脂と同じ樹脂であってもよく、積層体の製造過程を経て第1の樹脂層における樹脂となる樹脂(例えば、熱硬化性樹脂の未硬化物を含む樹脂)であってもよい。
【0045】
樹脂付金属箔を製造する方法としては、金属箔の表面に、TFE系ポリマーを含む塗工液を塗布する方法が好ましい。具体的には、TFE系ポリマーを含む樹脂材料のパウダーと、液状媒体と、分散剤とを含むパウダー分散液を金属箔の表面に塗布し、100~300℃の温度領域にて金属箔を保持し、前記温度領域超の温度領域にてTFE系ポリマーを焼成させることにより、金属箔の表面にTFE系ポリマーを含む樹脂層を形成する方法が挙げられる。
【0046】
TFE系ポリマーを含む樹脂材料のパウダー(以下、「Fパウダー」とも記す。)は、本発明の効果を損なわない範囲において、TFE系ポリマー以外の成分を含んでいてもよいが、TFE系ポリマーを主成分とするのが好ましい。FパウダーにおけるTFE系ポリマーの含有量は、80質量%以上であることが好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
FパウダーのD50としては、0.05~6.0μmが好ましく、0.1~3.0μmがより好ましく、0.2~3.0μmが特に好ましい。この範囲において、Fパウダーの流動性と分散性が良好となり、樹脂付金属箔におけるTFE系ポリマーの電気特性(低比誘電率等)や耐熱性が最も発現しやすい。
FパウダーのD90としては、0.3~8μmが好ましく、0.8~5μmが特に好ましい。この範囲において、Fパウダーの流動性と分散性が良好となり、第1の樹脂層の電気特性(低比誘電率等)や耐熱性が最も発現しやすい。
Fパウダーの製造方法としては、国際公開第2016/017801号に記載の方法を採用できる。なお、Fパウダーは、所望のパウダーの市販品を用いてもよい。
【0047】
液状媒体としては、パウダー分散液に含まれる液状媒体以外の成分よりも低沸点であり、Fパウダーと反応しない化合物が好ましい。
液状媒体としては、瞬間的に揮発せずに、100~300℃の温度領域に保持中に揮発する化合物が好ましく、沸点80~275℃の化合物が好ましく、沸点125~250℃の化合物が特に好ましい。沸点がこの範囲であれば、金属箔の表面に塗布したパウダー分散液を100~300℃の温度領域に保持した際に、液状媒体の揮発と分散剤の部分的な分解及び流動とが効果的に進行し、分散剤が表面偏析しやすい。
【0048】
液状媒体としては、有機化合物が好ましく、シクロヘキサン(沸点:81℃)、2-プロパノール(沸点:82℃)、1-プロパノール(沸点:97℃)、1-ブタノール(沸点:117℃)、1-メトキシ-2-プロパノール(沸点:119℃)、N-メチルピロリドン(沸点:202℃)、γ-ブチロラクトン(沸点:204℃)、シクロヘキサノン(沸点:156℃)及びシクロペンタノン(沸点:131℃)がより好ましく、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン及びシクロペンタノンが特に好ましい。
【0049】
分散剤は、樹脂層の表面性状に接合性を付与する観点から、疎水部位と親水部位を有する化合物(界面活性剤)が特に好ましい。
分散剤としては、ポリオール、ポリオキシアルキレングリコール及びポリカプロラクタムが好ましく、ポリマー状ポリオールがより好ましい。ポリマー状ポリオールとしては、ポリビニール、ポリブチラール及びフルオロポリオールが特に好ましく、フルオロポリオールが最も好ましい。ただし、フルオロポリオールとは、TFE系ポリマーではない、水酸基とフッ素原子とを有するポリマーである。また、フルオロポリオールとしては、水酸基の一部が化学修飾され、変性されていてもよい。
【0050】
フルオロポリオールとしては、ポリフルオロアルキル基又はポリフルオロアルケニル基を有する(メタ)アクリレート(以下、「(メタ)アクリレートF」とも記す。)とポリオキシアルキレンモノオール基を有する(メタ)アクリレート(以下、「(メタ)アクリレートAO」とも記す。)とのコポリマー(以下、「分散ポリマーF」とも記す。)が特に好ましい。
【0051】
(メタ)アクリレートFの具体例としては、CH2=CHC(O)O(CH2)4OCF(CF3)(C(CF(CF3)2)(=C(CF3)2)、CH2=CHC(O)O(CH2)4OC(CF3)(=C(CF(CF3)2)(CF(CF3)2)、CH2=C(CH3)C(O)O(CH2)2NHC(O)OCH(CH2OCH2CH2(CF2)6F)2、CH2=C(CH3)C(O)O(CH2)2NHC(O)OCH(CH2OCH2CH2(CF2)4F)2、CH2=C(CH3)C(O)O(CH2)2NHC(O)OCH(CH2OCH2(CF2)6F)2、CH2=C(CH3)C(O)O(CH2)2NHC(O)OCH(CH2OCH2(CF2)4F)2、CH2=C(CH3)C(O)O(CH2)3NHC(O)OCH(CH2OCH2(CF2)6F)2、CH2=C(CH3)C(O)O(CH2)3NHC(O)OCH(CH2OCH2(CF2)4F)2が挙げられる。
【0052】
(メタ)アクリレートAOの具体例としては、CH2=CHC(O)O(CH2CH2O)8H、CH2=CHC(O)O(CH2CH2O)10H、CH2=CHC(O)O(CH2CH2O)12H、CH2=C(CH3)C(O)OCH2CH2O(CH2CH(CH3)O)8H、CH2=C(CH3)C(O)OCH2CH2O(CH2CH(CH3)O)12H、CH2=C(CH3)C(O)OCH2CH2O(CH2CH(CH3)O)16Hが挙げられる。
分散ポリマーFを構成する全単位に対する(メタ)アクリレートFに基づく単位の割合は、20~60モル%であることが好ましく、20~40モル%あることが特に好ましい。
分散ポリマーFを構成する全単位に対する(メタ)アクリレートAOに基づく単位の割合は、40~80モル%あることが好ましく、60~80モル%あることが特に好ましい。
分散ポリマーFは、(メタ)アクリレートFに基づく単位と(メタ)アクリレートAOに基づく単位のみからなっていてもよく、さらに他の単位を有してもよい。
【0053】
パウダー分散液は、本発明の効果を損なわない範囲で、TFE系ポリマー及び分散剤以外の樹脂(以下、「他の樹脂」とも記す。)を含んでいてもよい。他の樹脂は、パウダー分散液に溶解してもよく、溶解しなくてもよい。
他の樹脂は、非硬化性樹脂であってもよく、硬化性樹脂であってもよい。
非硬化性樹脂としては、熱溶融性樹脂、非溶融性樹脂が挙げられる。熱溶融性樹脂としては、熱可塑性ポリイミド等が挙げられる。非溶融性樹脂としては、硬化性樹脂の硬化物等が挙げられる。
パウダー分散液は、上記の他の樹脂を結着樹脂として含むことが好ましい。結着樹脂として含まれる場合の他の樹脂としては、第1の樹脂層を形成する樹脂材料において結着樹脂として具体例に挙げた結着樹脂が好ましい。
【0054】
硬化性樹脂としては、反応性基を有するポリマー、反応性基を有するオリゴマー、低分子化合物、反応性基を有する低分子化合物等が挙げられる。反応性基としては、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸、硬化性アクリル樹脂、フェノール樹脂、硬化性ポリエステル、硬化性ポリオレフィン、硬化性ポリフェニレンエーテル、硬化性ポリブタジエン、多官能シアン酸エステル樹脂、多官能マレイミド-シアン酸エステル樹脂、多官能性マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、プリント基板の用途に有用な点から、熱硬化性ポリイミド、ポリイミド前駆体、エポキシ樹脂、硬化性アクリル樹脂、ビスマレイミド樹脂又は硬化性ポリフェニレンエーテルが好ましく、エポキシ樹脂及び硬化性ポリフェニレンエーテルが特に好ましい。
【0055】
エポキシ樹脂の具体例としては、ナフタレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ化合物、フェノールとフェノール性ヒドロキシ基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノールのグリシジルエーテル化物、アルコールのジグリシジルエーテル化物、トリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0056】
ビスマレイミド樹脂としては、特開平7-70315号公報に記載される、ビスフェノールA型シアン酸エステル樹脂とビスマレイミド化合物とを併用した樹脂組成物(BTレジン)、国際公開第2013/008667号に記載の発明、その背景技術に記載のものが挙げられる。
ポリアミック酸は、通常、TFE系ポリマーの官能基と反応しうる反応性基を有している。
ポリアミック酸を形成するジアミン、多価カルボン酸二無水物としては、例えば、特許第5766125号公報の[0020]、特許第5766125号公報の[0019]、特開2012-145676号公報の[0055]、[0057]等に記載のものが挙げられる。なかでも、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等の芳香族ジアミンと、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族多価カルボン酸二無水物との組合せからなるポリアミック酸が好ましい。
【0057】
熱溶融性樹脂としては、熱可塑性ポリイミド等の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂の熱溶融性の硬化物が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリエステル、ポリオレフィン、スチレン樹脂、ポリカーボネート、熱可塑性ポリイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリルスルホン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶性ポリエステル、ポリフェニレンエーテル等が挙げられ、熱可塑性ポリイミド、液晶性ポリエステル又はポリフェニレンエーテルが好ましい。
【0058】
パウダー分散液は、本発明の効果を損なわない範囲で、TFE系ポリマー、分散剤及び他の樹脂以外の材料(以下、「他の材料」とも記す。)を含んでいてもよい。
他の材料としては、チキソ性付与剤、消泡剤、無機フィラー、反応性アルコキシシラン、脱水剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、表面処理剤、粘度調節剤、難燃剤等が挙げられる。
【0059】
パウダー分散液中のFパウダーの割合としては、5~60質量%が好ましく、35~45質量%が特に好ましい。この範囲において、第1の樹脂層の比誘電率及び誘電正接を低く制御しやすい。また、パウダー分散液の均一分散性が高く、第1の樹脂層の機械的強度に優れる。
パウダー分散液中の分散剤の割合としては、0.1~30質量%が好ましく、5~10質量%が特に好ましい。この範囲において、Fパウダーの均一分散性が高く、また第1の樹脂層の電気特性と接合性とをバランスさせやすい。
パウダー分散液中の液状媒体の割合としては、15~65質量%が好ましく、25~50質量%が特に好ましい。この範囲において、パウダー分散液の塗布性が優れ、かつ第1の樹脂層の外観不良が起こりにくい。
【0060】
パウダー分散液を金属箔の表面に塗布する際の塗布方法としては、塗布後の金属箔の表面にパウダー分散液からなる安定したウェット膜が形成される方法であればよく、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、グラビアオフセット法、ナイフコート法、キスコート法、バーコート法、ダイコート法、ファウンテンメイヤーバー法、スロットダイコート法等が挙げられる。
【0061】
後述の保持温度にウェット膜付き金属箔を供する前に、前記温度領域未満の温度にて金属箔を加熱して、ウェット膜の状態を調整してもよい。調整は、液状媒体が完全に揮発しない程度にて行われ、50質量%以下の液状媒体を揮発させる程度に通常は行われる。
パウダー分散液を金属箔の表面に塗布した後に、100~300℃の温度領域(以下、「保持温度」とも記す。)にて金属箔を保持することが好ましい。保持温度は、雰囲気の温度である。
パウダー分散液を金属箔の表面に塗布して保持温度に保持すると、液状媒体の揮発と分散剤の分解とが進行しながら、Fパウダーが密にパッキングした平滑性の高い被膜が形成される。この際、分散剤は、Fパウダーに弾かれやすくなり、表面に流動しやすくなると考えられる。つまり、この保持により、分散剤が表面に偏析した状態が形成されるとも考えられる。
保持は、1段階で実施してもよく、異なる温度にて2段階以上で実施してもよい。
保持の方法としては、オーブンを用いる方法、通風乾燥炉を用いる方法、赤外線等の熱線を照射する方法等が挙げられる。
【0062】
保持における雰囲気は、常圧下、減圧下のいずれの状態であってよい。また、保持における雰囲気は、酸化性ガス雰囲気、還元性ガス雰囲気、不活性ガス雰囲気のいずれであってもよい。
不活性ガスとしては、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、窒素ガス等が挙げられ、窒素ガスが好ましい。
還元性ガスとしては、水素ガスが挙げられる。
酸化性ガスとしては、酸素ガスが挙げられる。
【0063】
保持における雰囲気は、分散剤の分解が促され、樹脂層の接合性がより向上する点からは、酸素ガスを含む雰囲気が好ましい。
酸素ガスを含む雰囲気における酸素ガス濃度(体積基準)としては、0.5×103~1×104ppmが好ましい。この範囲において、分散剤の分解促進と、金属箔の酸化抑制とをバランスさせやすい。
保持温度は、100~200℃の温度領域であるか又は200~300℃の温度領域であることがより好ましく、160~200℃の温度領域であるか又は220~260℃の温度領域であることが特に好ましい。この範囲において、分散剤の部分的な分解及び流動が効果的に進行し、分散剤をより表面偏析させやすい。
保持温度に保持する時間は、0.5~5分間であることが特に好ましい。
【0064】
本発明においては、さらに、保持温度超の温度領域(以下、「焼成温度」とも記す。)にてTFE系ポリマーを焼成させて金属箔の表面に樹脂層を形成することが好ましい。焼成温度は、雰囲気の温度である。
焼成においては、Fパウダーが密にパッキングし、分散剤が効果的に表面偏析した状態でTFE系ポリマーの融着が進行するため、平滑性及び接合性に優れた樹脂層が形成される。なお、焼成が行われた場合、パウダー分散液が熱溶融性樹脂を含めばTFE系ポリマーと溶解性樹脂との混合物からなる樹脂層が形成され、パウダー分散液が熱硬化性樹脂を含めばTFE系ポリマーと熱硬化性樹脂の硬化物とからなる樹脂層が形成される。
【0065】
焼成の方法としては、オーブンを用いる方法、通風乾燥炉を用いる方法、赤外線等の熱線を照射する方法等が挙げられる。樹脂層の表面の平滑性を高めるために、加熱板、加熱ロール等で加圧してもよい。焼成の方法としては、短時間で焼成でき、遠赤外線炉が比較的コンパクトである点から、遠赤外線を照射する方法が好ましい。焼成においては、赤外線加熱と熱風加熱とを組み合わせてもよい。
遠赤外線の有効波長帯は、TFE系ポリマーの均質な融着を促す点から、2~20μmが好ましい。
【0066】
焼成における雰囲気は、常圧下、減圧下のいずれの状態であってよい。また、焼成における雰囲気は、酸素ガス等の酸化性ガス雰囲気、水素ガス等の還元性ガス雰囲気、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気のいずれであってもよく、金属箔及び樹脂層の酸化劣化を抑える点からは、還元性ガス雰囲気又は不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
【0067】
焼成における雰囲気は、不活性ガスから構成され、酸素ガス濃度が低い雰囲気であることが好ましく、窒素ガスから構成され、酸素ガス濃度(体積基準)が500ppm未満の雰囲気であることが特に好ましい。また、酸素ガス濃度(体積基準)は、通常、1ppm以上である。この範囲において、分散剤のさらなる酸化分解が抑えられ、樹脂層の接合性を向上させやすい。
焼成温度としては、300℃超が好ましく、330~380℃が特に好ましい。この場合、TFE系ポリマーが、緻密な樹脂層をより形成しやすい。
焼成温度に保持する時間としては、30秒~5分間が好ましい。
【0068】
樹脂付金属箔においては、樹脂層の線膨張係数を制御したり、樹脂層の接合性をさらに改善したりするために、樹脂層の表面を表面処理してもよい。
表面処理としては、アニール処理、コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理、真空プラズマ処理、UVオゾン処理、エキシマ処理、ケミカルエッチング、シランカップリング処理、微粗面化処理等が挙げられる。
アニール処理における、温度、圧力及び時間は、この順に、80~190℃、0.001~0.030MPa、10~300分間であることが好ましい。
【0069】
プラズマ処理におけるプラズマ照射装置としては、高周波誘導方式、容量結合型電極方式、コロナ放電電極-プラズマジェット方式、平行平板型、リモートプラズマ型、大気圧プラズマ型、ICP型高密度プラズマ型等が挙げられる。
プラズマ処理に用いるガスとしては、酸素ガス、窒素ガス、希ガス(アルゴン等)、水素ガス、アンモニアガス等が挙げられ、希ガス及び窒素ガスが好ましい。プラズマ処理に用いるガスの具体例としては、アルゴンガス、水素ガスと窒素ガスの混合ガス、水素ガスと窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスが挙げられる。
プラズマ処理における雰囲気としては、希ガス又は窒素ガスの体積分率が70体積%以上の雰囲気が好ましく、100体積%の雰囲気が特に好ましい。この範囲において、樹脂層の表面のRaを2.5μm以下に調整して、樹脂付金属箔の樹脂層の表面に微細凹凸を形成しやすい。
【0070】
樹脂付金属箔における樹脂層の表面のRaとしては、2nm~2.5μmが好ましく、5nm~1μmが特に好ましい。樹脂層の表面のRzとしては、15nm~2.5μmが好ましく、50nm~2μmが特に好ましい。この範囲において、樹脂付金属箔とプリプレグとの接合性と、樹脂層の表面の加工のしやすさとをバランスさせやすい。
【0071】
樹脂付金属箔の樹脂層の表面にプリプレグを積層して積層体とする方法としては、樹脂付金属箔とプリプレグとを熱プレスする方法が挙げられる。
プレス温度としては、TFE系ポリマーの融点以下が好ましく、160~220℃が特に好ましい。この範囲において、樹脂の熱劣化を抑えつつ、第1の樹脂層と第2の樹脂層とを強固に接合できる。
【0072】
熱プレスは、20kPa以下の真空度で行うことが特に好ましい。この範囲において、積層体における金属箔、第1の樹脂層、第2の樹脂層のそれぞれの界面への気泡混入と酸化による劣化とを抑制できる。
また、熱プレス時は前記真空度に到達した後に昇温することが好ましい。前記真空度に到達する前に昇温すると、第1の樹脂層が軟化した状態、すなわち一定程度の流動性、密着性がある状態にて圧着されてしまい、気泡の原因となる。
熱プレスにおける圧力としては、0.2~10MPaが好ましい。この範囲において、プリプレグの破損を抑えつつ、第1の樹脂層と第2の樹脂層とを強固に接合できる。
【0073】
本発明の積層体は、電気特性、耐薬品性(エッチング耐性)等の物性に優れたTFE系ポリマーを第1の樹脂層の材料とするため、本発明の積層体は、フレキシブル銅張積層板やリジッド銅張積層板として、プリント基板の製造に用いることができる。
例えば、本発明の積層体の金属箔をエッチング処理して所定のパターンの導体回路(伝送回路)に加工する方法や、本発明の積層体の金属箔を電解めっき法(セミアディティブ法(SAP法)、モディファイドセミアディティブ法(MSAP法)等)によって伝送回路に加工する方法によって、本発明の積層体からプリント基板を製造できる。
【0074】
本発明の積層体から製造されたプリント基板は、金属材料からなる伝送回路(すなわち、本発明の積層体の金属箔の一部が除去されてなる層)、第1の樹脂層、第2の樹脂層をこの順に有する。本発明のプリント基板の層構成としては、伝送回路/第1の樹脂層/第2の樹脂層、伝送回路/第1の樹脂層/第2の樹脂層/第1の樹脂層/伝送回路が挙げられる。
プリント基板の製造においては、伝送回路を形成した後に、伝送回路上に層間絶縁膜を形成し、層間絶縁膜上にさらに伝送回路を形成してもよい。層間絶縁膜は、例えば、本発明におけるパウダー分散液によっても形成できる。
プリント基板の製造においては、伝送回路上にソルダーレジストを積層してもよい。ソルダーレジストは、本発明におけるパウダー分散液によって形成できる。
プリント基板の製造においては、伝送回路上にカバーレイフィルムを積層してもよい。カバーレイフィルムは、本発明におけるパウダー分散液によっても形成できる。
【0075】
プリント基板の具体的な態様としては、本発明の積層体構造を多層化した多層プリント回路基板が挙げられる。
多層プリント回路基板の好適な態様としては、多層プリント回路基板の最外層が第1の樹脂層であり、金属材料からなる伝送回路(すなわち、本発明の積層体の金属箔の一部が除去されてなる層)、第1の樹脂層、第2の樹脂層がこの順に積層された構成を1以上有する態様が挙げられる。また、第1の樹脂層と第2の樹脂層の間に、伝送回路が配置されていてもよい。
【0076】
前記態様の多層プリント回路基板は、最外層に第1の樹脂層を有しており耐熱性に優れており、具体的には、288℃においても、第1の樹脂層と第2の樹脂層の界面膨れや伝送回路と第1の樹脂層の界面剥離が発生しにくい。特に、金属箔の一部が除去されて露出した第1の樹脂層と第2の樹脂層との接触面を有する場合、かかる傾向が顕著になり易い。金属箔の表面粗さが第1の樹脂層の表面に転写されて生じた第1の樹脂層の表面粗さが、第2の樹脂層との接触においてアンカー効果を発現するためと考えられる。その結果、プラズマ処理等の親水化処理を施すことなく、それぞれの界面が強固に接合し、加熱時にも界面膨れや界面剥離、特に最外層における膨れや剥離が抑制されたと考えられる。
【0077】
多層プリント回路基板の好適な態様としては、多層プリント回路基板の最外層が第2の樹脂層であり、伝送回路、第1の樹脂層、第2の樹脂層がこの順に積層された構成を1以上有する態様も挙げられる。また、第1の樹脂層と第2の樹脂層の間に、伝送回路が配置されていてもよい。
【0078】
前記態様の多層プリント回路基板は、最外層に第2の樹脂層を有していても耐熱性に優れており、具体的には、300℃においても、第1の樹脂層と第2の樹脂層の界面膨れや伝送回路と第1の樹脂層の界面剥離が発生しにくい。特に、伝送回路を形成している場合、つまり、金属箔の一部が除去されて露出した第1の樹脂層と第2の樹脂層との接触面を有する場合、かかる傾向が顕著になり易い。金属箔の表面粗さが第1の樹脂層の表面に転写されて生じた第1の樹脂層の表面粗さが、第2の樹脂層との接触においてアンカー効果を発現するためと考えられる。その結果、プラズマ処理等の親水化処理を施すことなく、それぞれの界面が強固に接合し、加熱時にも界面膨れや界面剥離、特に最外層における膨れや剥離が抑制されたと考えられる。
これらの態様における多層プリント回路基板は、はんだリフロー耐性に優れたプリント基板として有用である。
【実施例】
【0079】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
各種測定方法を以下に示す。
【0080】
(ポリマーの融点)
示差走査熱量計(セイコーインスツル社製、DSC-7020)を用い、TFE系ポリマーを10℃/分の速度で昇温させて測定した。
(ポリマーの貯蔵弾性率)
ISO 6721-4:1994(JIS K 7244-4:1999)に基づき、動的粘弾性測定装置(SIIナノテクノロジー社製、DMS6100)を用い、周波数10Hz、静的力0.98N、動的変位0.035%の条件にて、ポリマーの温度を2℃/分の速度で20℃から上昇させ、260℃における貯蔵弾性率を測定した。
(パウダーのD50及びD90)
レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA-920測定器)を用い、パウダーを水中に分散させて測定した。
(反り率)
積層体から180mm角の四角い試験片を切り出した。この試験片について、JIS C 6471:1995に規定される測定方法にしたがって反り率を測定した。
(剥離強度)
積層体から、長さ100mm、幅10mmの矩形状の試験片を切り出した。試験片の長さ方向の一端から50mmの位置まで、樹脂付銅箔とプリプレグの硬化物とを剥離した。次いで、試験片の長さ方向の一端から50mmの位置を中央にして、引張り試験機(オリエンテック社製)を用いて、引張り速度50mm/分で90度剥離し、最大荷重を剥離強度(N/cm)とした。
(はんだ耐熱性試験)
積層体を288℃のはんだ浴に5秒間、5回浮かべた後、第1の樹脂層とプリプレグの硬化物層との界面の膨れの有無、及び金属箔と第1の樹脂層との界面の剥離の有無を確認した。
【0081】
使用した材料を以下に示す。
銅箔1:超低粗度電解銅箔(福田金属箔粉工業社製、CF-T4X-SV、厚さ:18μm、RzJIS:1.2μm)。
パウダー1:TFE単位の97.9モル%、NAH単位の0.1モル%及びPPVE単位の2.0モル%を有するポリマー1(融点300℃、フッ素含有量75.7質量%、260℃における貯蔵弾性率:1.1MPa)からなるパウダー(D50:1.7μm、D90:3.8μm)。
ポリイミド前駆体溶液1:宇部興産社製、U-ワニスST(固形分18重量%)。
ポリイミド1:非反応型の熱可塑性ポリイミド(5%重量減少温度:300℃以上、ガラス転移点:260℃)
分散剤1:CH2=CHC(O)O(CH2)4OCF(CF3)C(CF(CF3)2)(=C(CF3)2)とCH2=CHC(O)O(CH2CH2O)10Hとのコポリマー。
プリプレグ1:FR-4(パナソニック社製。銅箔をエッチングしたR1755C 0.6mmをコアとし、R1650CG 0.1tを2重に重ねあわせてコアの両面に重ねたプリプレグ)。
プリプレグ2:パナソニック社製。R-5670 0.2mm。
プリプレグ3:パナソニック社製。R-5680 0.2mm。
プリプレグ4:パナソニック社製。R-1650C 0.2mm。
なお、プリプレグ1~4は、いずれもフッ素原子を有さない熱硬化性マトリックス樹脂を含むプリプレグである。なお、以下、これらプリプレグを加熱加圧して形成した第2の樹脂をプリプレグ硬化物という。
【0082】
(例1)
パウダー1の50質量部、分散剤1の5質量部及びN-メチルピロリドンの45質量部を含むパウダー分散液を、銅箔1の表面にダイコーターを用いて塗布した。パウダー分散液が塗布された銅箔1を通風乾燥炉(雰囲気温度:230℃、雰囲気ガス:酸素ガス濃度8000ppmの窒素ガス)に通して1分間保持し、遠赤外線炉(温度:380℃、ガス:酸素ガス濃度100ppm未満の窒素ガス)にさらに通して3分間焼成した。銅箔1の表面に厚さ5μmの第1の樹脂層を有する樹脂付銅箔を得た。さらに、樹脂付銅箔の第1の樹脂層の表面を真空プラズマ処理して樹脂付銅箔1を得た。プラズマ処理条件は、出力:4.5kW、導入ガス:アルゴンガス、導入ガス流量:50cm3/分、圧力:6.7Pa、処理時間:2分間とした。
樹脂付銅箔1の第1の樹脂層の表面に、プリプレグ1を重ね、プレス温度:185℃、プレス圧力:3.0MPa、プレス時間:60分間の条件にて、真空熱プレスして、銅箔1、第1の樹脂層、プリプレグ硬化物層をこの順に有する、積層体1を得た。プリプレグ硬化物層の厚さは1200μmであり、積層体1の反り率は0.3%であり、剥離強度は12N/cmであった。積層体をはんだ浴に浮かべるはんだ耐熱性試験において、積層体1は288℃のはんだに5秒間、5回浮かべても、第1の樹脂層とプリプレグ硬化物の界面に膨れは発生せず、銅箔の第1の樹脂層からの浮きも発生しなかった。
【0083】
(例2)
積層体1の銅箔をエッチング処理し、酸素ガスと水素ガスとアルゴンガスと窒素ガスの混合ガスを用いてドライデスミア処理した。第1の樹脂層の表面に、プリプレグ1を重ね、例1と同様に真空熱プレスして積層体2を得た。積層体2についてはんだ耐熱性試験を実施した。第1の樹脂層とプリプレグ硬化物層との界面に膨れは発生せず、銅箔と第1の樹脂層との界面の剥離も発生しなかった。
(例3)
第1の樹脂層の厚さを0.8μmとした以外は例1と同様にして積層体3を得た。積層体3についてはんだ耐熱性試験を実施した。288℃のはんだに5秒間、2回浮かべた段階で、第1の樹脂層とプリプレグ硬化物層との界面に膨れが発生した。
(例4)
第1の樹脂層の厚さを25μmとした以外は例1と同様にして積層体4を得た。積層体4についてはんだ耐熱性試験を実施した。288℃のはんだに5秒間、5回浮かべると、銅箔と第1の樹脂層との界面の剥離が発生した。
【0084】
(例5)
樹脂付銅箔1の第1の樹脂層の表面にプリプレグ2を重ね、プリプレグ2の両面を樹脂付銅箔1で挟んだ状態にて、195℃、3.5MPaの加圧条件にて、75分間、真空熱プレスして積層体5を得た。積層体5の剥離強度は8N/cmであった。
(例6)
樹脂付銅箔1の第1の樹脂層の表面にプリプレグ3を重ね、プリプレグ3の両面を樹脂付銅箔1で挟んだ状態にて、195℃、3.5MPaの加圧条件にて、75分間、真空熱プレスして積層体6を得た。積層体6の剥離強度は9N/cmであった。
(例7)
樹脂付銅箔1の第1の樹脂層の表面にプリプレグ4を重ね、プリプレグ4の両面を樹脂付銅箔1で挟んだ状態にて、175℃、3.0MPaの加圧条件にて、60分間、真空熱プレスして積層体7を得た。積層体7の剥離強度は10N/cmであった。
【0085】
(例8)
パウダー1の40質量部、ポリイミド前駆体溶液1の10重量部、分散剤1の5質量部及びN-メチルピロリドンの45質量部を含むパウダー分散液を調製した。このパウダー分散液を使用する以外は、例1と同様にして樹脂付銅箔を得た。この樹脂付銅箔の第1の樹脂層をプラズマ処理することなく、その表面にプリプレグ1を重ね、例1と同様に真空熱プレスして、積層体8を得た。積層体8は、硬化物層の厚さが1200μmであり、反り率は0.1%であり、剥離強度は8N/cmであった。
積層体8は、はんだ浴に浮かべるはんだ耐熱性試験において、288℃のはんだ浴に5秒間、5回浮かべても、第1の樹脂層とプリプレグ硬化物層の界面に膨れは発生せず、第1の樹脂層から銅箔が浮く現象も発生しなかった。
【0086】
(例9)
パウダー1の45質量部、ポリイミド1の1重量部、分散剤1の5質量部及びN-メチルピロリドンの49質量部を含むパウダー分散液を調製した。このパウダー分散液を使用する以外は、例1と同様にして樹脂付銅箔を得た。この樹脂付銅箔の第1の樹脂層をプラズマ処理することなく、その表面にプリプレグ1を重ね、例1と同様に真空熱プレスして、積層体9を得た。この積層体9は、プリプレグ硬化物層の厚さが1200μmであり、反り率は0.1%であり、剥離強度は12N/cmであった。
この積層体9は、はんだ浴に浮かべるはんだ耐熱性試験において、288℃のはんだ浴に5秒間、5回浮かべても、第1の樹脂層とプリプレグ硬化物層の界面に膨れは発生せず、第1の樹脂層から銅箔が浮く現象も発生しなかった。
【0087】
(例10)積層体の伝送損失評価
プリント基板としての高周波信号の伝送特性を評価するため、積層体に伝送線路を形成してプリント基板とし、その信号伝送損失を測定した。
積層体としては、積層体5(第1の樹脂層の厚さ:5μm)、積層体51(第1の樹脂層の厚さを12μmとする以外は積層体5と同様にして作製された積層体。)、積層体50(第1の樹脂層を設けない以外は積層体5と同様にして作製された積層体。)をそれぞれ用いた。
測定系としては、2GHz~40GHzの信号をベクトルネットワークアナライザー(キーサイトテクノロジー社製、E8361A)を用いて処理し、GSGの高周波コンタクトプローブ(Picoprobe社製、250μmピッチ)によって測定した。
プリント基板に形成する伝送線路は、背面導体付のコプレナー導波路(Conductor Backed Co-Planar Waveguide)を用いた。
線路の特性インピーダンスは、50Ωとした。
プリント基板の導体である銅の表面には金フラッシュめっきを施した。
校正方法はTRL校正(Thru-Reflect-Line校正)を用いた。
線路の長さは50mmとし、単位長さあたりの伝送損失を測定した。
伝送損失の尺度としては、高周波電子回路や高周波電子部品の特性を表すために使用される回路網パラメータの一つである「S-parameter」(以下、S値とも記す。)を使用した。S値は、その値が0に近い程、伝送損失が小さいことを意味する。
【0088】
周波数28GHzにおける、積層体50、積層体5、積層体51のS値は、この順に-1.76、-1.64、-1.51であった。積層体5は積層体50に対して7%、積層体51は積層体50に対して14%の、S値の改善率を示した。この改善率は、周波数(2~40GHz)によらず、一定であった。
なお、積層体5における銅箔1を別の銅箔(三井金属鉱業社製のHS1-VSP、三井金属鉱業社製のHS2-VSP、福田金属箔粉工業社製のCF-T9DA-SV。)に変更しても、同じ改善効果が得られた。さらに、積層体5におけるプリプレグ2を別のプリプレグ(プリプレグ3、プリプレグ4)に変更しても、同じ改善効果が得られた。
【0089】
積層体5、積層体50、積層体51のそれぞれに関して、アンテナ特性をシミュレーション評価した。シミュレーションに際しては、電磁界解析シミュレータ(ダッソー・システムズ社製、CST MICROWAVE STUDIO)を用い、積層体をモデリングし、積層体に28GHz帯の4素子パッチアレイアンテナを形成して、その放射特性を解析した。積層体50、積層体5、積層体51の28GHzにおける利得は、この順に、12.1dBi、12.2dBi、12.4dBiであり、積層体5は積層体50に対して1%、積層体51は積層体50に対して3%の改善率を示した。
所定の厚さの第1の樹脂層を有する積層体(積層体5、51)から形成されるアンテナは、前記第1の樹脂層を有さない積層体(積層体50)のそれに比較して、アンテナ特性が向上していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の積層体は、プリント基板の材料として有用である。
なお、2018年09月18日に出願された日本特許出願2018-173428号、2019年01月22日に出願された日本特許出願2019-008497号及び2019年03月07日に出願された日本特許出願2019-041110号の明細書、特許請求の範囲、要約書および図面の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0091】
10 積層体、
12 金属箔、
14 第1の樹脂層、
16 第2の樹脂層。