(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】透明ディスプレイを備える透明ガラス、コントローラー、透明表示機器、及び透明ガラスの用法
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20231212BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20231212BHJP
G02F 1/15 20190101ALI20231212BHJP
【FI】
G09F9/00 324
G09F9/00 366A
G02F1/13 505
G02F1/15 502
(21)【出願番号】P 2020559920
(86)(22)【出願日】2019-11-22
(86)【国際出願番号】 JP2019045749
(87)【国際公開番号】W WO2020121779
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2018231268
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】福井 毅
(72)【発明者】
【氏名】太田 薫
(72)【発明者】
【氏名】大久保 洋常
(72)【発明者】
【氏名】末永 幸太郎
【審査官】中村 直行
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-020959(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0047191(KR,A)
【文献】特開2018-022142(JP,A)
【文献】特開2017-146749(JP,A)
【文献】特表2015-518580(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0259804(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0185129(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00 - 9/46
G09G 3/00 - 5/42
G02F 1/13
G02F 1/1334
G02F 1/15
G02F 1/19
G06F 3/01
G06F 3/0488
H05B 33/00 - 33/28
H05B 44/00
H05B 45/60
H10K 50/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素が自ら発光する透明ディスプレイを備える透明ガラスであって、
前記透明ディスプレイの背後を覆う調光シートをさらに備え、
前記透明ディスプレイに映像を表示中に前記調光シートに印加する電圧の大きさによって前記調光シートの明暗を制御でき、
前記調光シートの明暗の制御は、前記調光シートの透過率が上がることで前記調光シートが明るくなるとともに、前記調光シートの透過率が下がることで前記調光シートが暗くなるものであ
り、
前記調光シートが明るい時、前記透明ガラスの透過率が8%以上80%以下であり、
前記調光シートが暗い時、前記透明ガラスの透過率が0.5%以上60%以下であり、
前記透明ガラスは、明るい時と暗い時との間における透過率の差が20ポイント以上であり、
前記透明ガラスは互いに対向する表示層ガラスと調光層ガラスとを備える複層ガラスであり、
前記表示層ガラスには前記透明ディスプレイが貼り付けられており、
前記調光層ガラスには前記調光シートが貼り付けられており、
前記表示層ガラスと前記調光層ガラスとの間に空間が設けられており、
前記透明ディスプレイと前記調光シートとがそれぞれ前記空間側に設けられており、
前記空間がシールされている、透明ガラス。
【請求項2】
前記表示層ガラスの前記透明ディスプレイとは反対側の表面に設けられたタッチパネルをさらに備える、
請求項
1に記載の透明ガラス。
【請求項3】
前記調光シートの前記透明ディスプレイに対向している部分は領域ごとに分割されているので前記領域ごとにその明暗を制御できる、
請求項1に記載の透明ガラス。
【請求項4】
前記調光シートはSPD(Suspended Particle Device)型、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)型、GHLC(Guest Host Liquid Crystal)型及びエレクトロクロミック型のいずれかである。
請求項1に記載の透明ガラス。
【請求項5】
前記調光シートに電圧を印加すると前記調光シートが明るくなる一方、前記調光シートに電圧を印加しないと前記調光シートが暗くなる、又は
前記調光シートに電圧を印加すると前記調光シートが暗くなる一方、前記調光シートに電圧を印加しないと前記調光シートが明るくなる、
請求項
4に記載の透明ガラス。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれかに記載の透明ガラスに接続されるコントローラーであって、
前記透明ディスプレイに対して外部から受信した映像信号を入力しながら、
さらに外部から受信した制御信号に基づき前記調光シートに印加する電圧を変化させることでその明暗を制御する、
コントローラー。
【請求項7】
前記透明ディスプレイの映像が明るくなると、その背後を前記調光シートで暗くするとともに、
前記透明ディスプレイの映像が暗くなると、その背後を前記調光シートで明るくする、
請求項
6に記載のコントローラー。
【請求項8】
請求項1~
5のいずれかに記載の透明ガラスと、
前記透明ガラスに接続されるコントローラーであって、
前記透明ディスプレイに対して映像信号を入力しながら、
さらに前記調光シートに印加する電圧を変化させることでその明暗を制御する、
コントローラーと、
を備える透明表示機器。
【請求項9】
前記調光シートのさらに背後の照度を測定する照度センサーをさらに備え、
前記照度センサーから前記照度を連続的に又は定期的に取得し、
前記照度が増大すると前記コントローラーが前記調光シートを暗くするとともに、前記照度が減少すると前記コントローラーが前記調光シートを明るくする、
請求項
8に記載の透明表示機器。
【請求項10】
前記コントローラーは、前記調光シートの領域ごとに接続され、ここで前記調光シートの前記透明ディスプレイに対向している部分は領域ごとに分割されており、
前記映像信号には互いに同時に表示される階調表現と無地の図形パターン表現とが含まれ、
前記コントローラーが、前記透明ディスプレイ中の前記階調表現の映像の背後の前記調光シートの領域を、前記透明ディスプレイ中の前記無地の図形パターン表現の映像の背後の前記調光シートの領域よりも暗くする、
請求項
8に記載の透明表示機器。
【請求項11】
前記無地の図形パターン表現には二次元コードが含まれ、
前記コントローラーが、前記透明ディスプレイ中の前記二次元コードの映像の背後の前記領域を例外的に暗くする、
請求項
10に記載の透明表示機器。
【請求項12】
輸送機関における請求項
2に記載の透明ガラスの用法:
(A)
ネットワークを通じて前記輸送機関からサーバーに対して、前記タッチパネルを通じて乗客又は乗員より入力された要求を基礎情報として送信し:
(B)
前記サーバーにて受信した前記基礎情報を解析し、さらに解析結果をもとに乗客又は乗員に提供すべきサービス情報を生成し、さらに前記ネットワークを通じて前記サーバーから前記サービス情報を送信し、
(C)
前記輸送機関にて受信した前記サービス情報を前記透明ディスプレイに映像として表示し、さらに前記映像の背後の明暗を前記サービス情報に基づき決定するとともに前記調光シートによって前記映像の背後の明暗を制御する。
【請求項13】
輸送機関における請求項1
、4及び5のいずれかに記載の透明ガラスの用法:
(A)
ネットワークを通じて前記輸送機関からサーバーに対して、少なくとも以下のいずれかの基礎情報を送信し:
GPS信号の受信又は前記輸送機関の外部の撮影に基づき得られた前記輸送機関の位置;及び
前記輸送機関の内部の撮影に基づき得られた前記輸送機関内の情報であって、乗客又は乗員の情報を含むもの又は含まないもの;
(B)
前記サーバーにて受信した前記基礎情報を解析し、さらに解析結果をもとに乗客又は乗員に提供すべきサービス情報を生成し、さらに前記ネットワークを通じて前記サーバーから前記サービス情報を送信し、
(C)
前記輸送機関にて受信した前記サービス情報を前記透明ディスプレイに映像として表示し、さらに前記映像の背後の明暗を前記サービス情報に基づき決定するとともに前記調光シートによって前記映像の背後の明暗を制御する。
【請求項14】
輸送機関における請求項1
、4及び5のいずれかに記載の透明ガラスの用法:
前記輸送機関内の乗客又は乗員の位置に対して予め前記透明ディスプレイの正面を向けて前記透明ガラスを設置し;
輸送機関に備えられた監視カメラによって前記乗客又は乗員の視線の向きを取得し;
前記透明ディスプレイに表示すべき情報の、前記透明ディスプレイ内の表示位置を、前記乗客又は乗員の視線の向きに基づき決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明ガラスに関し、特に画素が自ら発光する透明ディスプレイを備えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には液晶ディスプレイが上下及び左右の方向に配列された透明な間仕切り壁が開示されている(段落[0106])。液晶ディスプレイは有機ELディスプレイ又は無機ELディスプレイに置き換えることができる(段落[0118])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Kenta Kasuya, Hiroshi Sakamoto, Hitoshi Tsushima, Shinichi Uehara, Yukio Endo and Takashi Fukui, “Visibility Evaluation of Direct‐Bonded Signage Display for Outdoor Use”, The Society for Information Display Technical Digests consist of short papers and poster session content from SID's annual symposium, Display Week., First Published 30 May 2018, 25‐4, p.324-327
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶ディスプレイは画素が自ら発光しない。液晶ディスプレイを備える間仕切り壁の透明化を実現するためにはバックライトを別途、間仕切り壁の内側に設置しなければならない。一態様において間仕切り壁の内側の空間にバックライトの光を拡散させる。一態様において間仕切り壁にサイドエッジ型の透明導光板と拡散板とを導入する。この態様ではバックライトを間仕切り壁の中央にまで届けるのが難しい。間仕切り壁の正面や背後から光が射すと、透明な液晶ディスプレイ上に映し出される映像は鮮明な色を得にくい。映像が鮮明な色を有している場合は、間仕切り壁の透明感が損なわれる。
【0006】
有機ELディスプレイ又は無機ELディスプレイは画素が自ら発光する。画素が自ら発光する透明ディスプレイでは、ディスプレイの後ろ側から明るい光が差すと暗黒の状態の画素も明るくなる。このため透明ディスプレイに表示される映像のコントラストが低下する。画素が自ら発光する透明ディスプレイを備える透明ガラスにおいて同様の課題が生じる。本発明は画素が自ら発光する透明ディスプレイを備える透明ガラスに関して、これに表示される映像のコントラストの低下を抑制する手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1> 画素が自ら発光する透明ディスプレイを備える透明ガラスであって、
前記透明ディスプレイの背後を覆う調光シートをさらに備え、
前記透明ディスプレイに映像を表示中に前記調光シートに印加する電圧の大きさによって前記調光シートの明暗を制御でき、
前記調光シートの明暗の制御は、前記調光シートの透過率が上がることで前記調光シートが明るくなるとともに、前記調光シートの透過率が下がることで前記調光シートが暗くなるものである、透明ガラス。
<2> 前記透明ガラスは互いに対向する表示層ガラスと調光層ガラスとを備え、
前記表示層ガラスには前記透明ディスプレイが貼り付けられており、
前記調光層ガラスには前記調光シートが貼り付けられている、
<1>に記載の透明ガラス。
<3> 前記表示層ガラスと前記調光層ガラスとの間に空間が設けられており
前記透明ディスプレイと前記調光シートとがそれぞれ前記空間側に設けられている、
<2>に記載の透明ガラス。
<4> 前記表示層ガラスと前記調光層ガラスとを備える複層ガラスであって、
前記空間がシールされている、
<3>に記載の透明ガラス。
<5> 前記表示層ガラスの前記透明ディスプレイとは反対側の表面に設けられたタッチパネルをさらに備える、
<3>に記載の透明ガラス。
<6> 前記調光シートの前記透明ディスプレイに対向している部分は領域ごとに分割されているので前記領域ごとにその明暗を制御できる、
<1>に記載の透明ガラス。
<7> 前記調光シートはSPD(Suspended Particle Device)型、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)型、GHLC(Guest Host Liquid Crystal)型及びエレクトロクロミック型のいずれかである、
<1>に記載の透明ガラス。
<8> 前記調光シートに電圧を印加すると前記調光シートが明るくなる一方、前記調光シートに電圧を印加しないと前記調光シートが暗くなる、又は
前記調光シートに電圧を印加すると前記調光シートが暗くなる一方、前記調光シートに電圧を印加しないと前記調光シートが明るくなる、
<7>に記載の透明ガラス。
<9> <1>~<8>のいずれかに記載の透明ガラスに接続されるコントローラーであって、
前記透明ディスプレイに対して外部から受信した映像信号を入力しながら、
さらに外部から受信した制御信号に基づき前記調光シートに印加する電圧を変化させることでその明暗を制御する、
コントローラー。
<10> 前記透明ディスプレイの映像が明るくなると、その背後を前記調光シートで暗くするとともに、
前記透明ディスプレイの映像が暗くなると、その背後を前記調光シートで明るくする、
<9>に記載のコントローラー。
<11> <1>~<8>のいずれかに記載の透明ガラスと、
前記透明ガラスに接続されるコントローラーであって、
前記透明ディスプレイに対して映像信号を入力しながら、
さらに前記調光シートに印加する電圧を変化させることでその明暗を制御する、
コントローラーと、
を備える透明表示機器。
<12> 前記調光シートのさらに背後の照度を測定する照度センサーをさらに備え、
前記照度センサーから前記照度を連続的に又は定期的に取得し、
前記照度が増大すると前記コントローラーが前記調光シートを暗くするとともに、前記照度が減少すると前記コントローラーが前記調光シートを明るくする、
<11>に記載の透明表示機器。
<13> 前記コントローラーは、前記調光シートの領域ごとに接続され、ここで前記調光シートの前記透明ディスプレイに対向している部分は領域ごとに分割されており、
前記映像信号には互いに同時に表示される階調表現と無地の図形パターン表現とが含まれ、
前記コントローラーが、前記透明ディスプレイ中の前記階調表現の映像の背後の前記調光シートの領域を、前記透明ディスプレイ中の前記無地の図形パターン表現の映像の背後の前記調光シートの領域よりも暗くする、
<11>に記載の透明表示機器。
<14> 前記無地の図形パターン表現には二次元コードが含まれ、
前記コントローラーが、前記透明ディスプレイ中の前記二次元コードの映像の背後の前記領域を例外的に暗くする、
<13>に記載の透明表示機器。
<15> 輸送機関における<5>に記載の透明ガラスの用法:
(A)
ネットワークを通じて前記輸送機関からサーバーに対して、前記タッチパネルを通じて乗客又は乗員より入力された要求を基礎情報として送信し:
(B)
前記サーバーにて受信した前記基礎情報を解析し、さらに解析結果をもとに乗客又は乗員に提供すべきサービス情報を生成し、さらに前記ネットワークを通じて前記サーバーから前記サービス情報を送信し、
(C)
前記輸送機関にて受信した前記サービス情報を前記透明ディスプレイに映像として表示し、さらに前記映像の背後の明暗を前記サービス情報に基づき決定するとともに前記調光シートによって前記映像の背後の明暗を制御する。
<16> 輸送機関における<1>~<4>、<7>及び<8>のいずれかに記載の透明ガラスの用法:
(A)
ネットワークを通じて前記輸送機関からサーバーに対して、少なくとも以下のいずれかの基礎情報を送信し:
GPS信号の受信又は前記輸送機関の外部の撮影に基づき得られた前記輸送機関の位置;及び
前記輸送機関の内部の撮影に基づき得られた前記輸送機関内の情報であって、乗客又は乗員の情報を含むもの又は含まないもの;
(B)
前記サーバーにて受信した前記基礎情報を解析し、さらに解析結果をもとに乗客又は乗員に提供すべきサービス情報を生成し、さらに前記ネットワークを通じて前記サーバーから前記サービス情報を送信し、
(C)
前記輸送機関にて受信した前記サービス情報を前記透明ディスプレイに映像として表示し、さらに前記映像の背後の明暗を前記サービス情報に基づき決定するとともに前記調光シートによって前記映像の背後の明暗を制御する。
<17> 輸送機関における<1>~<4>、<7>及び<8>のいずれかに記載の透明ガラスの用法:
前記輸送機関内の乗客又は乗員の位置に対して予め前記透明ディスプレイの正面を向けて前記透明ガラスを設置し;
輸送機関に備えられた監視カメラによって前記乗客又は乗員の視線の向きを取得し;
前記透明ディスプレイに表示すべき情報の、前記透明ディスプレイ内の表示位置を、前記乗客又は乗員の視線の向きに基づき決定する。
【発明の効果】
【0008】
画素が自ら発光する透明ディスプレイを備える透明ガラスにおいて、これに表示される映像のコントラストの低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図9】透明ディスプレイと調光シートの組み合わせの使用
図1。
【
図10】透明ディスプレイと調光シートの組み合わせの使用
図2。
【
図12】透明ディスプレイと調光シートの組み合わせの使用
図3。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に透明ガラス20の斜視図が表されている。透明ガラス20はその正面側に向かって映像を表示することのできるガラスプレートである。図に即すと、透明ガラス20は背面側すなわち図中の右奥側にある物体Obが正面側すなわち図中の左手前側から透けて見える状態を提供できるものである。便宜的に図中の左手前側を透明ガラス20の正面とし、図中の右奥側を透明ガラス20の背面又は背後とする。透明ガラス20はメインプレート21aを備える。メインプレート21aは一態様において透明の板ガラスである。メインプレート21aの表面は正面側も背面側も滑らかである。
【0011】
本明細書においてメインプレート21aは光学的要素である。本明細書において光学的要素は、透明ガラス20の構成要素であって透明ガラス20の透過率に影響を及ぼすあらゆるものである。本明細書において光学的要素は、その背後から外部光が入射し、入射した光がその内部を透過し、透過した光がその正面から出射するものである。光学的要素は光学素子であってもよい。本実施形態では光学的要素の有する可視光の透過率を考慮する。メインプレート21aは所定の透過率をもって可視光を透過する。
【0012】
図1においてメインプレート21aは強化ガラスでもよい。強化ガラスはフロートガラスよりも強度が高いガラスである。強化ガラスの一態様は熱処理によってガラス表面に圧縮応力層が生成されたガラスである。強化ガラスの一態様はイオン交換強化法でガラスの表面を強化したガラスである。
【0013】
図1においてメインプレート21aは合わせガラスでもよい。合わせガラスとは2枚以上のガラスを互いに接着して一体化することで得られるガラスである。メインプレート21aは強化ガラスの合わせガラスでもよい。
【0014】
図1においてメインプレート21aはガラス以外の材料がガラスの基材に対して積層されたものでもよい。ガラス以外の材料は樹脂でもよい。なおガラスコーティングされたガラス以外の材料はメインプレート21aの材料から除外される。
【0015】
図1に示すように透明ガラス20は透明ディスプレイ22をさらに備える。一態様において透明ディスプレイ22はメインプレート21aの背後にある。透明ディスプレイ22は表示面25を備える。透明ディスプレイ22は表示面25から図中の左手前側に対して映像を表示する。透明ディスプレイ22は、表示面25の後ろ側すなわち図中の右奥側にある物体Obが表示面25の前側すなわち図中の左手前側から透けて見える状態を提供できるディスプレイである。本明細書において透明ディスプレイ22は光学的要素である。透明ディスプレイ22は自ら発光するとともに所定の透過率をもって外部から射し込む可視光を透過する。
【0016】
図1において透明ディスプレイ22は自ら発光する画素を有する。本実施形態において「自ら発光する」とは、画素が電気エネルギーを外部から受け取って、これを画素の内部で光エネルギーに変換し、これを画素の外部に放出することをいう。以下、自ら発光する画素を有するディスプレイを自発光型の(透明)ディスプレイという場合がある。自発光型とは呈色をバックライトや外光に依存していないことを表す。自発光型の(透明)ディスプレイは暗闇でも画像を表示できる。
【0017】
透明ディスプレイ22はフルカラーでもよく単色でもよい。透明ディスプレイ22は階調表現のできることが好ましい。透明ディスプレイ22は無地の図形パターンを表現できることが好ましい。透明ディスプレイ22は無地の図形パターンに対する背景を暗黒にできることが好ましい。自発光型の透明ディスプレイにおいて暗黒とは画素が発光していないことである。すなわち暗黒は見た目において透明である。
【0018】
図1において透明ディスプレイ22は透明有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイでもよい。透明有機ELディスプレイはアクティブマトリクス型の有機EL素子からなるものでもよい。アクティブマトリクス型の有機EL素子をAMOLED(active matrics organic light emitting diode)ともいう。AMOLEDはTFT(薄膜トランジスタ)などのアクティブ素子を各画素に配置して駆動する。AMOLEDを含むOLED(organic light emitting diode)は電子・正孔の注入による励起が行われる注入型EL素子である。
【0019】
図1において透明ディスプレイ22に用いられる透明有機ELディスプレイの透明度を高めるための工夫としては、まずEL素子の基板を透明にする必要がある。基板はガラス基板でも樹脂基板でもよい。樹脂基板は樹脂フィルムからなるものでもよい。なおEL素子の基板はメインプレート21aとは区別される。さらに透明度を高めるため、TFT駆動用のドライバー回路は、透明ディスプレイ22の周辺に配置されたプリントフィルムもしくは基板を介して透明ガラス20外に配置されてもよい。これらのプリントフィルムもしくは基板を隠蔽することを目的にメインプレート21aに印刷を施してもよい。印刷はメインプレート21aの正面側及び背面側の両面に配置してもよく、いずれか一方に配置してもよい。透明度を高めるための工夫としては他に、透明ディスプレイ22を、少なくとも接着後に透明である接着材料を用いてメインプレート21aに対して貼りつけることが考えられる。この時、表示面25の全面をメインプレート21aに対して貼り付けることが好ましい。接着材料は樹脂を主成分とするものでもよく、樹脂のみからなるものでもよい。接着後の接着材料の屈折率とメインプレート21aの屈折率との差はメインプレート21aを基準として±8%以内であることが好ましい。このような接着材料は光学接着材若しくは光学樹脂とも呼ばれる。
【0020】
図1において透明ディスプレイ22は透明無機ELディスプレイでもよい。透明無機ELディスプレイは電界による励起が行われる真正EL素子からなるものでもよい。透明無機ELディスプレイとしては商品名:TASEL(Beneq社製)が利用できるが、これに限定されない。
【0021】
図1に示す透明ディスプレイ22からは、例えば数mm角の大きさの画素が2~10cmの間隔で配置されるマクロスケールのディスプレイは除外する。このようなディスプレイは、画素間の隙間を外光が自在に透過する。画素が不透明であっても、画素の大きさが視認できないほど遠くからディスプレイを観察すれば、ディスプレイは実質的に透明に見える。こういったディスプレイは例えば建物の窓に設置されるような野外向けのサイネージに好適である。これに対して本実施形態の透明ガラス20は、より窓に接近した人物に対して細かい表示を提供するものである。透明ディスプレイ22の画素は2cm以下の間隔で密に配列されている。
【0022】
図1に示される透明ディスプレイ22の透過率はJIS R 3106:1998に基づき測定されたものでもよい。透明ディスプレイ22の透過率はISO8478:1996に基づき測定されたものでもよい。本明細書において透明ディスプレイ22及びその他の光学的要素に関する透過率は特に言及しない限り可視光の透過率を表す。本明細書において透明ディスプレイ22及びその他の光学的要素に関する紫外光や赤外光の透過率は任意に設定できる。
【0023】
図1に示すように透明ガラス20は調光シート23をさらに備える。調光シート23が明るい時、透明ディスプレイ22は10~80%の透過率を有することが好ましい。調光シート23が暗い時、透明ディスプレイ22は30~80%の透過率を有することが好ましい。
【0024】
図1に示すように調光シート23は透明ディスプレイ22の背後を覆う。調光シート23は透明ディスプレイ22と同じ大きさでもよく、透明ディスプレイ22よりも大きくてもよい。透明ディスプレイ22と調光シート23との間の間隔は30mm以下であることが好ましい。
【0025】
図1において調光シート23はいわゆる光シャッターである。一態様において調光シート23に印加する電圧の大きさによって調光シート23の明暗を制御できる。印加する電圧は交流でも直流でもよい。調光シート23の明暗の制御は透明ディスプレイ22に映像を表示している間に行うことができる。
【0026】
図1において調光シート23は単なる遮光板ではない。すなわち調光シート23を透明ガラス20に組み入れる前に調光シート23の透過率が制御されるとともに、組み入れられた後はその透過率が固定されるものは、調光シート23に求められる機能を満たしていない。
【0027】
図1において調光シート23の透過率が上がることで調光シート23が明るくなる。さらに調光シート23の透過率が下がることで調光シート23が暗くなる。調光シート23はもっぱら散乱が増えることで透過率が下がるものではなくともよい。調光シート23は透過しようとする散乱光すらも遮るものであってもよい。なお調光シート23が、これを透過しようとする光から散乱光を生じる付随的な機能を有することは、調光シート23の技術的範囲から除外されない。一方で調光シート23による透過率の変化は、調光シート23中での光の拡散現象で起こるものであってもよい。このような材料として色素ドープによるG-H(ゲスト-ホスト)材料がある。ドープされる色素は二色性色素である。二色性色素はゲストである。二色性色素をドープされる物質は液晶である。液晶はホストである。二色性色素は液晶分子の配向に沿って配向する。二色性色素はこの状態で特定の波長の光を吸収する。したがって二色性色素は調光シート23を特定の色に着色する。電圧印加により液晶分子の配向が変化すると、液晶分子につられて二色性色素の配向も変化する。二色性色素はこの状態で先の特定の波長とは異なる波長の光を吸収する。したがって、二色性色素は調光シート23を先の特定の色とは異なる色に着色する。当該材料はヘイズの小さい透明ガラス状の状態と、ヘイズの大きい摺りガラス状の状態との間で変化する。当該材料からなる調光シート23は透過しようとする散乱光を遮らない。当該材料からなる調光シート23はもっぱら散乱が増えることで透過率が下がる。当該材料からなる調光シート23は調光シート23の背面側から透明ディスプレイ22に向かって届く透過光を散乱させるだけであり、これを全く遮断しないものでもよい。当該材料からなる調光シート23は、その透過率が上がることで明るくなる。当該材料からなる調光シート23は、その透過率が下がっても調光シート23が明るいままである。色素ドープによるG-H(ゲスト-ホスト)材料からなる調光シート23の種類は特に限定されない。
【0028】
図1において調光シート23の透過率の変化量の最大値は20~60ポイントの値をとることが好ましい。変化量は30、40及び50ポイントのいずれかでもよい。ここで1ポイントは透過率の差が1%であることを表す。調光シート23はこの区間で自在に明暗を変化させることができることが好ましい。一例において調光シート23の透過率は30%から70%まで変化する。制御下において調光シート23の透過率は明暗の間の中間的な値で維持し続けてもよい。調光シート23が明るい時は、調光シート23の透過率が40%以上あることが好ましい。調光シート23の透過率はJIS R 3106:1998に基づき測定されたものでもよい。調光シート23の透過率はISO8478:1996に基づき測定されたものでもよい。本明細書において調光シート23は光学的要素である。調光シート23は制御によって変化する透過率をもって可視光を透過する。調光シート23は可視光を実質的に透過しないことがあってもよい。
【0029】
図1において調光シート23は一態様において電圧を受けない状態で不透明でもよい。液晶技術の用語を引用すれば調光シート23は「ノーマリーブラック」であってもよい。すなわち調光シート23に電圧を印加すると調光シート23が明るくなる一方、調光シート23に電圧を印加しないと調光シート23が暗くなる。このような調光シート23はSPD(Suspended Particle Device)型及びPDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)型のいずれかでもよい。一例においてSPD型の調光シートは数秒で明暗が切り替わる。調光シート23は、調光シート23に電圧を印加すると調光シート23が透明になり、調光シート23に電圧を印加しないと調光シート23が摺りガラス状になるものでもよい。このような調光シートはGHLC(Guest Host Liquid Crystal)型でもよい。GHLC(Guest Host Liquid Crystal)型の調光シートは色素ドープによるG-H(ゲスト-ホスト)材料からなるものでもよい。一例においてGHLC型の調光シートは0.1秒前後で明暗が切り替わる。調光シート23はバイステーブル型又は記憶型でもよい。バイステーブル型又は記憶型の調光シートの例はエレクトロクロミック型の調光シートである。エレクトロクロミック型の調光シート23に対して、暗状態において電圧を加えると、調光シート23は透明に変化する。バイステーブル型又は記憶型の調光シート23に対して、閾値以上の電圧変化を与えない状態を継続すると、調光シート23が透明であることが維持される。バイステーブル型又は記憶型の調光シート23が透明状態にあるときに、調光シート23に対して電圧を印可すると、調光シート23はより不透明な状態に変化する。バイステーブル型又は記憶型の調光シート23に対して、閾値以上の電圧変化を与えない状態を継続すると、調光シート23がより不透明な状態であることが維持される。一例においてエレクトロクロミック型の調光シートは20~180秒前後で明暗が切り替わる。
【0030】
このとき、調光シート23として、同種もしくは異種の調光シートを複数枚用いてもよい。複数枚の調光シートを用いることで明状態と暗状態の中間状態を実現できる。中間状態となっている部分では十分暗くなっていないし、または十分明るくなっていない。中間状態を用いることでより短時間で明暗の切り替えができる。
【0031】
さらに、調光シート23にセンサーを付加してもよい。センサーを用いることで周囲環境に合わせ自動的に明暗状態を切り替えてもよい。このセンサーによって調光シートの閾値電圧をコントロールしてもよい。閾値電圧がコントロールされる調光シートと、GHLC型、PDLC型、SPD型及びエレクトロクロミック型から選ばれるいずれかの調光シートとを組み合わせることで、明暗の中間状態と、十分暗くなっている状態と、十分明るくなっている状態とを切り替えることができる。この中間状態を用いることで、センサーを用いない場合に比べて、より短時間で明暗の切り替えが可能になる。
【0032】
図1において調光シート23は一態様において電圧を受けない状態で透明でもよい。液晶技術の用語を引用すれば調光シート23は「ノーマリーホワイト」であってもよい。調光シート23に電圧を印加すると調光シート23が暗くなる一方、調光シート23に電圧を印加しないと調光シート23が明るくなる。調光シート23として一般的な液晶シャッターを用いてもよい。一般的な液晶シャッターは、液晶シャッター中に設ける偏向板の方向次第でノーマリーブラックとノーマリーホワイトを入れ替えることができる。その他の液晶シャッターとして例えばAGC製のトランスマートを用いてもよい。トランスマートはヘイズの小さい透明ガラス状の状態と、ヘイズの大きい摺りガラス状の状態との間で変化する。電圧を印加されていない状態においてトランスマートは透明である。
【0033】
図1において調光シート23の明暗はコントローラー(不図示)で制御してもよい。コントローラーは透明ディスプレイ22に対して映像信号を入力しながら、さらに調光シート23に電圧を印加する。コントローラーは電圧を変化させることで調光シート23の明暗を制御する。透明ガラス20にコントローラーを組み合わせることで透明表示機器を提供できる。透明表示機器には様々な通信ユニットやセンサー類やプログラマブルなマイクロコンピューターをさらに付加してもよい。
【0034】
図1に示すように透明ガラス20はサブプレート21bをさらに備えてもよい。一態様においてサブプレート21bは調光シート23の背後に設けられる。サブプレート21bは一態様において透明の板ガラスである。サブプレート21bの表面は正面側も背面側も滑らかである。一例においてメインプレート21aとサブプレート21bとの組の透過率は85~95%である。一例においてメインプレート21aとサブプレート21bとのそれぞれの透過率は互いに等しい。メインプレート21aとサブプレート21bとそれらの組との透過率はISO 9050:2003やJIS R 3106 : 1998に基づき測定してもよい。本明細書においてサブプレート21bは光学的要素である。サブプレート21bは所定の透過率をもって可視光を透過する。
【0035】
図1に示すサブプレート21bの一態様はプライバシーガラスである。このプライバシーガラスは30-70%の可視光透過率を有することが好ましい。このようなプライバシーガラス型のサブプレート21bを用いることで、透明ガラス20の透過率を所定範囲に保ちつつ、映像のコントラストを高められる。プライバシーガラスとしては、着色材料を含むものが好ましく、具体的には、着色材料としてガラス中にFe、Ti、Ce、Co、Se、Cr、Cu、Niのいずれかを含むものが好ましい。
【0036】
他の態様において、サブプレート21b自体が調光シート23と同等の機能を兼ね備える。他の態様においてサブプレート21bと調光シート23とを統合する。一態様において、サブプレート21bは調光機能付きガラスである。一態様において調光機能付きガラスはガラス自体が変色して自身の透過率を変化させることで、プライバシーを確保できるガラスである。サブプレート21bの外側が明るい場合には、サブプレート21bは変色してブラインドやカーテンの役割を果たす。サブプレート21bの外側が暗い場合には、サブプレート21bは自身の透過率を高めることで、観察者の視野を確保する。一態様においてサブプレート21bは自身を照らす日光を吸収することで、そのエネルギーで積極的に室内を温める。
【0037】
一例において調光機能付きガラスは、2枚のガラス板の間に、調光機能材料が挟まれた構造を有する。2枚のガラス板が調光機能材料を外部から保護する。一態様において2枚のガラス板のうち少なくとも一方に調光機能材料をコーティングすることで薄膜とする。他の態様において2枚のガラス板の間に固体又はゲル状の調光機能材料を配置する。調光機能材料としては、例えば、エレクトロクロミック材料が挙げられる。エレクトロクロミック材料は、電気的に引き起こされる可逆的な酸化還元反応によって着色したり消えたりする高分子材料である。エレクトロクロミック材料に電圧を印加することで、その色を変えることができる。調光機能材料は、エレクトロクロミック材料以外の材料でもよい。他の調光機能材料の例として、SPD、液晶及び高分子分散型液晶が挙げられる。
【0038】
透明ディスプレイ22と調光シート23との間に追加的なサブプレート(以下、「他のサブプレート」という)を設けてもよい。この時、調光シート23はサブプレート21bと他のサブプレートとの間に設けられる。この時、透明ディスプレイ22はメインプレート21aと他のサブプレートとの間に設けられる。本明細書において他のサブプレートは光学的要素である。他のサブプレートは所定の透過率をもって可視光を透過する。本明細書において透明ガラス20に含まれる光学的要素はこれまで列挙したものに限定されない。
【0039】
図1においてサブプレート21bはメインプレート21aと同様に強化ガラスでもよく、合わせガラスでもよく、ガラス以外の材料がガラスの基材に対して積層されたものでもよい。メインプレート21a及びサブプレート21bのいずれかはガラス以外の材料の板に置き換えてもよい。ガラス以外の材料は樹脂でもよい。樹脂はポリカーボネートでもよい。
【0040】
図1に示される透明ガラス20の透過率はISO 9050:2003やJIS R 3106 : 1998に基づき測定してもよい。調光シート23が明るい時、透明ガラス20は8~80%の透過率を有することが好ましい。調光シート23が暗い時、透明ガラス20は0.5~60%の透過率を有することが好ましい。透明ガラス20は明と暗との間で透過率の差が20ポイント以上あればよい。ここで1ポイントは透過率の差が1%であることを表す。
【0041】
透明ガラスの透過率Tg(%)の上限及び下限は各光学的要素の透過率を単純に掛け合わせることで得られる。一例において調光シート23の透過率は30%から70%まで変化する。一例においてメインプレート21aとサブプレート21bとの組の透過率は90%である。透明ディスプレイ22の透過率はTd(%)とする。一例においてこれ以外に透明ガラス20には他のサブプレートや他の光学的要素が付加されていない。この時、透明ガラスの透過率Tg(%)の暗から明の範囲を式で表すと0.27Td<Tg<0.63Tdとなる。
図1において透明ディスプレイ22の透過率Td(%)の透過率を変化させると下記表1の通りに透明ガラス20の透過率を設定できる。これらは例示であり何ら発明の限定的解釈を促すものではない。
【0042】
【0043】
図1に示される透明ガラス20は移動体に用いてもよい。移動体は有人の輸送機関でもよい。透明ガラス20は輸送機関の窓に用いてもよい。輸送機関には少なくとも鉄道車両、航空機、船舶、自動車、エレベーター、ピープルムーバー及びロープウェイが含まれる。透明ガラス20は移動体でないものの窓に用いてもよい。移動体ではないものの例としては建築物、定置型の建設機械や作業機械のコックピットが挙げられる。透明ガラス20は壁用の窓に用いてもよく、天窓に用いてもよい。透明ガラス20は窓ではなく、床用のガラスや透明の間仕切りに用いてもよい。地下空間であって外界と室内との間の窓のない空間でも透明ガラスは有効に利用できる。透明ガラス20はサイネージに用いてもよい。サイネージは屋内に設置されるものでも屋外に設置されるものでもよい。透明ガラス20は操作盤に用いてもよい。
【0044】
<例1>
【0045】
図2の左側に透明ガラス20の正面図が示されている。正面図中に一点鎖線と矢印で表したのは切断位置である。かかる切断位置における透明ガラス20の断面図が
図2の右側に示されている。
【0046】
図2に示すように透明ガラス20は複層ガラスである。かかる複層ガラスは表示層ガラスと調光層ガラスとを備える。透明ガラス20は表示層ガラスとしてメインプレート21aを備える。透明ガラス20は調光層ガラスとしてサブプレート21bを備える。メインプレート21aとサブプレート21bとは互いに対向する。
【0047】
図2の断面図に示すようにメインプレート21aには透明ディスプレイ22が貼り付けられている。メインプレート21aの背面に透明ディスプレイ22の表示面25が貼り付けられている。サブプレート21bには調光シート23が貼り付けられている。サブプレート21bの正面側に調光シート23が貼り付けられている。表示面25を含む透明ディスプレイ22の全面が透明な接着材料でメインプレート21aに貼り付けられていてもよい。透明ディスプレイ22の一部を透明な接着材料でメインプレート21aに貼り付けるとともに、他の一部をメインプレート21aには接着しないものとしてもよい。調光シート23の全面が透明な接着材料でサブプレート21bに貼り付けられていてもよい。調光シート23の一部を透明な接着材料でサブプレート21bに貼り付けるとともに、他の一部をサブプレート21bには接着しないものとしてもよい。調光シート23は透明ガラス20内にある他の光学的要素に貼り付けられていても良い。ただし調光シート23が透明ディスプレイ22の背後に位置することを条件とする。例えば調光シート23の正面側に他のサブプレートをさらに貼り付けてもよい。貼り付けは接着により行われてもよい。
【0048】
図2に示すようにメインプレート21aとサブプレート21bとの間に空間Spが設けられている。透明ディスプレイ22はメインプレート21aの空間Spに面する側に設けられている。調光シート23はサブプレート21bの空間Spに面する側に設けられている。透明ディスプレイ22及び調光シート23は空間Sp内に設置されている。
【0049】
図2に示すように透明ガラス20はさらにシール26を備えている。シール26は透明ガラス20中の空間Spを外部から遮断する。透明ガラス20はその内部に封じられた空間Spを有する複層ガラスである。シール26は透明でもよく不透明でもよい。一態様においてシール26はメインプレート21a及びサブプレート21bの外周を隈なく一周するようにシールする。透明ガラス20はシール26を備えていなくてもよい。透明ガラス20は単なる表示層ガラスと調光層ガラスとの向かい合わせ構造であってもよい。
【0050】
図2に示すシール26の材料としては、ブチル系シーリング材や、シリコーン系シーリング材、ポリサルファイド系シーリング材及びポリウレタン系シーリング材が挙げられる。かかる材料はシール性が高く、特に水蒸気の透過率が低い。このようなシーリング材を用いることで、透明ガラス20の気密性を高められる。例えば工事現場等の汚染区域に設置した場合であっても鮮明な映像を表示可能となる。
【0051】
図2において透明ガラス20に対してコントローラー30が電気的に接続する。本明細書において「電気的に接続する」とは、電圧変化や電気信号が伝わるように人為的に接続されていることを表す。したがって「電気的に接続する」とは短絡していることだけを表さない。また寄生容量などに起因する、人為的でない接続はこれに含まれない。
【0052】
図2においてコントローラー30は透明ガラス20の外部に設置される。コントローラー30は透明ディスプレイ22の備えるドライバー回路と電気的に接続する。コントローラー30はさらに調光シート23と電気的に接続する。コントローラー30は透明ディスプレイ22と調光シート23とに駆動電力を供給する。コントローラー30は透明ガラス20の駆動に必要な電力容量を有する。透明ガラス20とコントローラー30とを組み合わせることで透明表示機器を提供できる。
【0053】
図2においてコントローラー30は透明ディスプレイ22に対して映像信号を入力しながら、さらに調光シート23に印加する電圧を変化させる。これにより、透明ディスプレイ22に表示される映像の変化に合わせて調光シート23の明暗を制御できる。透明ガラス20はコントローラー30による制御のもと、表示面25に表示される映像の性質に合わせて、透明ディスプレイ22の背後の明暗を切り替えることができる。コントローラー30は外部から映像信号を受信してもよい。コントローラー30は外部から明暗の制御信号を受信するとともに、制御信号に応じて調光シート23の明暗を制御してもよい。
【0054】
図3には透明ガラス20の正面図が示されている。メインプレート21aの外周に配置されていたシール26は記載が省略されている。コントローラー30による制御により、透明ガラス20の一部が透明でなくなっている。これは調光シート23が暗くなっていることによる。透明ディスプレイ22は何も表示していない。
図2において透明ガラス20越しに見えていた物体Obの姿を、調光シート23が遮る。
図3中では物体Obは完全に見えなくなっている。
【0055】
図4には透明ガラス20の正面図が示されている。コントローラー30が映像信号を透明ディスプレイ22に入力している。このため、表示面25に山の映像が表示されている。
図2において透明ガラス20越しに見えていた物体Obの姿が映像に重畳することは抑制されている。また外光による映像のハレーション(白潰れ)が防がれている。
【0056】
図4において表示面25に表示される映像の種類には制限がない。映像には階調表現のパターンGr1が含まれていてもよい。図に示す映像中の、山や、その手前の木々や、空の雲などはパターンGr1のような階調表現で表現してもよい。パターンGr1のような階調表現には風景などの実写映像が含まれていてもよい。このような階調表現のパターンはコントラストの大きい画像や高解像度の画像であってもよい。
【0057】
図4において映像には映像の右上にある山の記号や文字「52m」のような無地の図形パターン表現が含まれる。表示面25上のパターンPn1はテクスチャーが無地(plain)の図形パターンである。無地の図形パターンでは図形内の各画素が濃さも色味も同一の色で密に(solid)占められている(filled)。無地の図形パターンは、いわゆる非階調的なパターンである。
【0058】
無地の図形パターンで表されるものの例は幾何学図形や記号や文字である。無地の図形パターンの集合で表されるものの例はコンピューターグラフィックス、アニメーション、駅名標などの文字列中心の情報表示、カラーバーのような幾何学模様及びロゴタイプなどがある。本明細書では便宜的に無地の図形パターンの集合で表されるものも無地の図形パターンの一種として取り扱う。集合の中には異なる色を有する図形が含まれていてもよい。ただし、無地の図形パターンの集合で色の濃度勾配(グラディエント)を表現する場合は階調表現として取り扱う。図形パターンであってもその内部が階調表現によってあらわされている場合は階調表現として取り扱う。
【0059】
図4においてパターンPn1は完全に無地のものだけに限定されない。パターンPn1には縁取りや三次元表現のなされた図形も含まれる。パターンPn1の背景はパターンPn1とは濃淡の異なる色で塗りつぶされていてもよい。パターンPn1の背景は暗黒でもよい。
【0060】
図4において、コントローラー30の映像信号にはこれらの階調表現や無地の図形パターン表現の信号が含まれる。このような映像信号はコントローラー30が外部から受け取る。
【0061】
図4においてコントローラー30は透明ディスプレイ22に映像を表示して透明ディスプレイ22を明るくするのに合わせて、その背後を調光シート23で暗くする。また自発光型の透明ディスプレイ22が透明であるということは、透明ディスプレイ22には暗黒の映像が表示されているともいえる(
図2)。例えば透明ディスプレイ22に対して映像信号の入力を開始するときに調光シート23を暗くしてもよい。
【0062】
図4に表されているのは、透明ディスプレイ22の映像が明るくなるのに合わせて、その背後を調光シート23で暗くする制御である。調光シート23を暗くすることと、透明ディスプレイ22を明るくすることとのタイミングは、使用者がコントローラー30を利用して任意に設定できる。例えばこれらは同時に行ってもよい。
【0063】
図4から
図3へ戻り、さらに
図2に戻る行程を逆にたどることもできる。この時、コントローラー30は透明ディスプレイ22の映像が暗くなるのに合わせて、その背後を調光シート23で明るくする。例えば透明ディスプレイ22に対する映像信号の入力を終了するときに調光シート23を明るくしてもよい。結果として
図2に示すように透明ガラス20越しに物体Obが見えるようになる。
【0064】
図5は透明ガラス20の使用図である。透明ガラス20は運行中の鉄道車両の車窓に用いられている。透明ディスプレイの表示面25は車内に向かって映像を表示している。表示面25は透明ガラス20の一部しか占めていない。したがって乗客Psは車窓越しに見える景色を楽しみながら、映像を見ることができる。映像には乗客Psに有益な情報を提示できる。例えば鉄道車両の目的地の風景を透明ガラス20に映すことができる。また鉄道車両の現在地の標高を表示できる。映像表示を止めれば透明ガラス20は元の透明な車窓に戻る。本明細書において乗客Psは乗員に置き換えることができる。乗客Psは輸送機関の中にいて、輸送機関によって運ばれる人の例示である。
【0065】
<例2>
【0066】
図6には透明ディスプレイ22と調光シート33が示されている。図中でメインプレートとサブプレートとは省略されている。調光シート33は領域ごとに分割されている点が上述の調光シートと異なる。調光シート33は領域34a,34b及び34cを備える。これらの領域は調光シート33の上部、中央部及び下部をそれぞれ占めている。上述した通り分割されていない調光シートも透明ガラスに好適に使用できる。これに対して調光シート33はさらに領域ごとにその明暗を制御できる。したがって表示面25の背部の明るさを上部、中央部及び下部ごとに制御できる。分割の方向は縦でもよく、横でもよい。分割は、縦横の組み合わせによってタイル状に行われてもよい。
【0067】
図6において調光シート33の透明ディスプレイ22に対向している部分が領域ごとに分割される。図中では調光シート33の全体が透明ディスプレイ22と対向している部分となっている。したがって調光シート33の全体が分割されている。
【0068】
図6に示すようにコントローラー30は調光シート33の領域ごとに電気的に接続される。コントローラー30は領域34a,34b及び34cにそれぞれと電気的に接続する。コントローラー30は領域34a,34b及び34cのそれぞれの明暗を制御する。
【0069】
図7には調光シート33を使用する様子が示されている。コントローラー30は領域34aを暗くしている。したがって領域34aの背後の景色は領域34a越しに見えない、あるいはほとんど見えない。一方でコントローラー30は領域34b及び34cを明るくしている。したがって領域34b及び34cの背後の景色が領域34b越しに、あるいは34c越しに見える。図中では山と山岳鉄道が見えている。
【0070】
図8には透明ディスプレイ22を使用する様子が示されている。コントローラー30は透明ディスプレイ22と電気的に接続する。コントローラー30が透明ディスプレイ22に映像信号を入力する。映像信号は、互いに同時に表示される階調表現(パターンGr2及びGr3)と無地の図形パターン表現(パターンPn2及びPn3)とを含んでいる。
【0071】
図8に示すように表示面25の上部にはパターンGr2及びGr3とパターンPn2を含む映像が表示されている。表示面25の中央部から下部にかけてはパターンPn3を含む映像が表示されている。これらの映像は一体として表示面25に表示されている。なお映像中の背景は暗黒である。すなわち自発光型の透明ディスプレイ22の背後から射す光は透明ディスプレイ22を透過する。
【0072】
図9には調光シート33と透明ディスプレイ22とが同時に使用されている様子が示されている。領域34aが表示面25の上部の背後を暗く覆っている。したがって、パターンGr2及びGr3とパターンPn2とが一様に暗い背景の中に浮かび上がっている。一方で、領域34b及び34cが表示面25の中央部から下部にかけての透明ディスプレイ22の背後を明るくしている。したがってパターンPn3が明るい景色に重畳している。
【0073】
発明者らは、自発光型の透明ディスプレイに表示された階調表現のパターンが現実の景色に重畳すると、無地の図形パターンが現実の景色に重畳する場合に比べて、当該パターンが見えにくいことを発見した。これは階調表現のパターンが外光によるハレーションに弱いことを示す。
【0074】
本例では
図9に示すように、階調表現の映像、すなわちパターンGr2及びGr3の背後の領域34aは、無地の図形パターン表現の映像、すなわちパターンPn3の背後の領域34b及び34cよりも暗くなっている。なお図中では、領域34aに対して、無地の図形パターン表現の映像、すなわちパターンPn2も重畳している。
【0075】
図9に示すように調光シート33によって、階調表現のパターンを使用する領域に限定して透明ディスプレイ22の背後を暗くできる。したがって階調表現のパターンを使用しない領域では、景色が見えるようにできる。また階調表現のパターンを使用する領域では、景色の明るさに関わらず階調表現のパターンを見やすくできる。
【0076】
図9に示すように、無地の図形パターンであるパターンPn3は、景色の中の対象物に位置合わせして表示できる。図中ではパターンPn3を、景色の中の鉄道車両の走る線路に位置合わせして表示している。
【0077】
<例3>
【0078】
図10には透明ディスプレイ22及び調光シート38が示されている。調光シート38は以下の点を除いて
図9に示した調光シート33と同等である。調光シート38は
図9に記載の領域34cの代わりに、領域34d及び領域34eを備える。領域34eは
図9に記載の領域34cの一部を分割したものである。領域34dはその残りの部分である。
【0079】
図10に示すように、映像にはさらに無地の図形パターンであるパターンPn4が含まれている。パターンPn4は二次元コードの映像である。領域34eは透明ディスプレイ22のパターンPn4の背後の領域である。領域34dは風景の像を透過するために明るくする。領域34eは無地の図形パターンであるパターンPn4の背後となる領域である。したがって、領域34eも本来は明るくしてもよい領域である。しかしながら本例では例外的に領域34eを暗くする。これによりパターンPn4中の二次元コードをより明瞭に表示できる。したがって、映像中に表示された二次元コードをスマートフォンなどの携帯型情報端末でスキャンしやすくなる。
【0080】
<例4>
【0081】
図11は輸送機関Tp内に配置された透明ガラス40の使用図を示す。図には左側面視した透明ガラス40が含まれている。透明ガラス40は
図1~5に示した透明ガラス20と以下の点を除き同一である。なお図中でメインプレート21aとサブプレート21bとを接続するシールは省略されている。
【0082】
図11に示すように透明ガラス40はメインプレート21aの正面側にさらに設けられたタッチパネル28を備える。タッチパネル28はメインプレート21aを挟んで透明ディスプレイ22とは反対側に上に設けられている。タッチパネル28は表示面25に対向する。乗客Psはタッチパネル28に指で触れることができる。タッチパネル28は静電容量方式でもよく、赤外線走査方式でもよく、抵抗膜方式でもよい。タッチパネル28の検出方式はなんら制限されない。
【0083】
図11において透明ガラス40は輸送機関Tp内の間仕切り又は輸送機関Tpの内外を仕切る窓として利用される。ここでは窓として使用する様子を説明する。輸送機関Tp内の乗客Psの位置に対して透明ガラス40の正面が向けられている。透明ガラス40の正面は、表示面25の正面の側である。
【0084】
図11において乗客Psはタッチパネル28を介して乗客Psの要求(request)を入力する。要求の例は輸送機関Tp内で提供されるドリンクやお土産品の発注である。透明ガラス40はネットワークNwを通じて輸送機関Tpからサーバー45に対して基礎情報を送信する。ここで基礎情報とは入力された要求である。
【0085】
図11においてサーバー45は基礎情報を受信する。サーバー45は基礎情報を解析する。サーバー45はさらに解析結果をもとに乗客Psに提供すべきサービス情報を生成する。サービス情報の例は発注された商品の決済用の二次元コードである。サーバー45はネットワークNwを通じてサービス情報を送信する。
【0086】
図11において輸送機関Tpはサービス情報を受信する。輸送機関Tpは受信したサービス情報を透明ディスプレイ22に映像として表示する。サービス情報が二次元コードであれば、透明ディスプレイ22は当該二次元コードを
図10で示したように表示してもよい。この時、表示面25に表示される映像の背後の明暗をサービス情報に基づき決定してもよい。映像の背後の明暗は調光シート23で制御する。サービス情報が二次元コードであれば、調光シート23に代えて
図10に示した調光シート38を用いてもよい。
【0087】
図11においてサーバー45に送信される基礎情報はタッチパネル28を介して入力された要求に限定されない。一態様において輸送機関Tpの現在位置を基礎情報としてもよい。本態様において透明ガラス40にはタッチパネル28が付されていなくてもよい。輸送機関TpはGPS(Global Positioning System)信号の受信機41を備える。輸送機関Tpは信号を受信機41で受信する。受信機41又はその他の装置が信号に対する演算を実行する。輸送機関Tpは演算の結果として輸送機関Tpの現在位置を取得する。
【0088】
一態様において
図11に示すように輸送機関Tpはカメラ42を備えていてもよい。カメラ42は輸送機関Tpの外部を撮影することで画像を得る。輸送機関Tpは画像を分析して輸送機関Tpの現在位置を取得する。
【0089】
図11において輸送機関Tpは輸送機関Tpの現在位置を基礎情報としてネットワークNwを通じてサーバー45に送信する。サーバー45は当該基礎情報を受信する。サーバー45は輸送機関Tpの現在位置に基づきサービス情報として輸送機関Tpから見える風景に関する情報を生成する。サーバー45は当該サービス情報を輸送機関Tpに送信する。輸送機関Tpは当該サービス情報を受信する。輸送機関Tpは当該サービス情報を透明ガラス40に表示する。例えば
図9に示したように透明ディスプレイ22が次の駅をパターンPn2として表示してもよい。
【0090】
図11に示す一態様において基礎情報は輸送機関Tp内の情報であってもよい。本態様において透明ガラス40にはタッチパネル28が付されていなくてもよい。当該基礎情報は乗客Psに関連する情報である。当該基礎情報は輸送機関Tpの内部の撮影に基づき得られたものである。輸送機関Tpはカメラ44を備える。カメラ44は輸送機関Tpの内部を撮影することで画像を得る。輸送機関Tpは画像を分析して乗客Psに関連する情報を取得する。乗客Psに関連する情報の例は乗客Psの位置情報である。ここでは乗客Psが透明ガラス40の前に存在するという情報を例にとる。
【0091】
図11において輸送機関Tpは乗客Psの存在を基礎情報としてネットワークNwを通じてサーバー45に送信する。サーバー45は当該基礎情報を受信する。サーバー45は乗客Psの存在に基づきサービス情報として輸送機関Tpから見える風景に関する情報を生成する。サーバー45は当該サービス情報を輸送機関Tpに送信する。輸送機関Tpは当該サービス情報を受信する。輸送機関Tpは当該サービス情報を透明ガラス40に表示する。例えば
図9に示したように透明ディスプレイ22が鉄道の紹介をパターンPn3として表示してもよい。
【0092】
<例5>
【0093】
図12には輸送機関Tp内での透明ディスプレイ22と調光シート33との使用図が示されている。輸送機関Tpはコンピューター50を備える。コンピューター50はマイクロコンピューターでも汎用コンピューターでもよい。コンピューター50はコントローラー30を介して透明ディスプレイ22に映像信号を送る。コンピューター50はコントローラー30に調光シート33の明暗を制御するための信号を送る。
【0094】
図12において輸送機関Tpは内側センサー51を備える。内側センサー51は透明ディスプレイ22の正面側にある照度センサーである。透明ディスプレイ22の正面は輸送機関Tpの内側である。輸送機関Tpはさらに外側センサー52を備える。外側センサー52は調光シート33のさらに背後の側にある照度センサーである。調光シート33のさらに背後は輸送機関Tpの外側である。
【0095】
図12に示すように、一態様においてコントローラー30はコンピューター50を介して内側センサー51と電気的に接続する。内側センサー51は透明ディスプレイ22の正面の照度を測定する。内側センサー51は測定した照度の値をコンピューター50に送る。コンピューター50は照度の値を連続的に又は定期的に受ける。コンピューター50は照度の値に応じて透明ディスプレイ22に表示する映像の明るさを決める。コンピューター50は映像信号の明るさを調整する。コンピューター50は照度の値に応じて、調光シート33の明るさを決める。調光シート33の明るさは領域34a,34b及び34cのそれぞれについて決定する。コンピューター50は調光シート33の明るさを制御するための制御信号を生成する。コンピューター50は映像信号と制御信号をコントローラー30に送る。コントローラー30は映像信号と制御信号を受ける。コントローラー30は映像信号をさらに透明ディスプレイ22に送る。コントローラー30は制御信号に基づき領域34a,34b及び34cのそれぞれに印加する電圧を決定する。コントローラー30は領域34a,34b及び34cのそれぞれに電圧を印加する、又は印加した電圧を引き下げる。
【0096】
図12に示すように、一態様においてコントローラー30はコンピューター50を介して外側センサー52と電気的に接続する。外側センサー52は調光シート33のさらに背後の照度を測定する。外側センサー52は測定した照度の値をコンピューター50に送る。コンピューター50は照度の値を連続的に又は定期的に受ける。コンピューター50は照度の値に応じて透明ディスプレイ22に表示する映像の明るさを決める。コンピューター50は映像信号の明るさを調整する。コンピューター50は照度の値に応じて、調光シート33の明るさを決める。調光シート33の明るさは領域34a,34b及び34cのそれぞれについて決定する。コンピューター50は調光シート33の明るさを制御するための制御信号を生成する。コンピューター50は映像信号と制御信号をコントローラー30に送る。コントローラー30は映像信号と制御信号を受ける。コントローラー30は映像信号をさらに透明ディスプレイ22に送る。コントローラー30は制御信号に基づき領域34a,34b及び34cのそれぞれに印加する電圧を決定する。コントローラー30は領域34a,34b及び34cのそれぞれに電圧を印加する、又は印加した電圧を引き下げる。
【0097】
図13には調光シート33の使用図が示されている。上段では調光シート33の背後の照度が増大している。コントローラー30は調光シート33を暗くする。領域34aと、領域34b及び34cの組とでは調光シート33の暗さが異なる。領域34aを目いっぱい暗くする。領域34b及び34cの組は明暗を中間的な状態にする。領域34aは
図9で示すように、階調表現のパターンGr2及びGr3の表示に適する。領域34b及び34cの組は
図9で示すように、無地の図形パターン表現のパターンPn3の表示に適する。領域34b及び34cの組はさらに日よけとしてもはたらく。領域34b及び34cの組は調光シート33の背後から正面に向かって射す日光を軽減する。
【0098】
図13の下段では調光シート33の背後の照度が減少している。コントローラー30は調光シート33を明るくする。領域34aと、領域34b及び34cの組とでは調光シート33の暗さが異なる。領域34aは明暗を中間的な状態にする。領域34b及び34cの組を目いっぱい明るくする。領域34aは
図9で示すように、階調表現のパターンGr2及びGr3の表示に適する。領域34b及び34cの組は
図9で示すように、無地の図形パターン表現のパターンPn3の表示に適する。領域34b及び34cの組は採光に働く。
【0099】
<例6>
【0100】
図12に戻る。輸送機関Tpはカメラ54を備える。輸送機関Tp内の乗客Psの位置に対して予め透明ディスプレイ22の正面を向ける。すなわち透明ディスプレイ22の正面は客室に向いている。カメラ54は監視カメラである。カメラ54は乗客Psの視線の向きを監視する。カメラ54は連続的に又は定期的に視線の向きを取得する。カメラ54は視線の向きをコンピューター50に送る。コンピューター50は連続的に又は定期的に視線の向きを取得する。
【0101】
図12において透明ディスプレイ22に表示すべき情報の透明ディスプレイ22内での表示位置を決定する。当該情報の例として図中では無地の図形表現のパターンPn5が示されている。当該表示位置として、透明ディスプレイ22を正面に見て、左から順に位置55a,55b及び55cが示されている。透明ディスプレイ22はパターンPn5を位置55a,55b及び55cのいずれかに表示する。図中では透明ディスプレイ22はパターンPn5中央の位置55bに表示している。
【0102】
図12においてコンピューター50はパターンPn5の表示位置を乗客Psの視線の向きに基づき決定する。図中ではパターンPn5の表示位置を中央としている。コンピューター50は表示位置に基づき映像信号を生成する。コンピューター50は映像信号をコントローラー30に送る。コントローラー30は映像信号を受ける。コントローラー30は映像信号をさらに透明ディスプレイ22に送る。透明ディスプレイ22は映像を表示する。映像中ではパターンPn5が位置55bに位置する。
【0103】
<例7>
【0104】
図9において透明ガラスに表示される無地の図形パターン表現であるパターンPn3はさらに低階調表現に置き換えることができる。低階調表現とは「単色に近い表現」である。「単色」とは透明ディスプレイの発光画素、例えば赤、青、緑の各々、もしくは組合せで、電気的な調整が行われない状態で発光している色のことである。「単色に近い表現」とは単色の定義において、各々の発光素子において、わずかな電気的調整を含んだ発光色である。
【0105】
図9においてパターンPn3はさらに暖色系表現に置き換えることができる。「暖色系表現」とは赤や黄色などの見る人に暖かい感じを印象つける色である。
【0106】
図9においてパターンPn3は低階調表現でありかつ暖色系表現であってもよい。「低階調表現でありかつ暖色系表現である」とは、赤や黄色などの見る人に暖かい感じを印象つける色で、電気的な調整を含んだ色である。
【0107】
図9において透明ガラスに表示される階調表現であるパターンGr2やGr3はさらに高階調表現に置き換えることができる。高階調表現とは「多段階色を含んだ表現」である。「多段階色」とは色や明るさの濃淡を多く含んだ色である。また「多段階色を含んだ表現」とは風景写真や人物写真などのように、単色で表現できない表現である。
【0108】
図9においてパターンGr2やGr3はさらに暗色・寒色系表現に置き換えることができる。「暗色・寒色系表現」とは青系を多く含んだ、視覚から寒い印象を与える表現である。
【0109】
図9においてパターンGr2やGr3は高階調表現でありかつ暗色・寒色系表現であってもよい。「高階調表現でありかつ暗色・寒色系表現である」とは色や明るさの濃淡を多く含んだ、青系で視覚的に寒い印象を与える色である。
【0110】
図9において例えばパターンGr2やGr3が高階調表現で、パターンPn3が低階調表現であってもよい。この時、パターンGr2やGr3の背後の領域34aをパターンPn3の背後の領域34b及び34cの組よりも暗くする。これにより色や明るさの濃淡を含んだ表現のコントラストが良くなるという効果が得られる。
【0111】
図9において例えばパターンGr2やGr3が暗色・寒色系表現で、パターンPn3が暖色系表現であってもよい。この時、パターンGr2やGr3の背後の領域34aをパターンPn3の背後の領域34b及び34cの組よりも暗くする。これにより色や明るさの濃淡を含んだ表現のコントラストが良くなるという効果が得られる。
【0112】
高階調表現と暖色系表現とは対比される。高階調表現と暖色系表現との対比は色の濃淡の数量かつ、もしくは明るさの濃淡の数量、または黒表現の数量を指標にできる。
図9において例えばパターンGr2やGr3が高階調表現で、パターンPn3が暖色系表現であってもよい。この時、パターンGr2やGr3の背後の領域34aをパターンPn3の背後の領域34b及び34cの組よりも暗くする。これにより色や明るさの濃淡を含んだ表現のコントラストが良くなるという効果が得られる。
【0113】
暗色・寒色系表現と低階調表現とは対比される。暗色・寒色系表現と低階調表現との対比は色の濃淡の数量かつ、もしくは明るさの濃淡の数量、または黒表現の数量を指標にできる。
図9において例えばパターンGr2やGr3が暗色・寒色系表現で、パターンPn3が低階調表現であってもよい。この時、パターンGr2やGr3の背後の領域34aをパターンPn3の背後の領域34b及び34cの組よりも暗くする。これにより色や明るさの濃淡を含んだ表現のコントラストが良くなるという効果が得られる。
【0114】
<例8>
【0115】
透明ガラスの映像の評価や較正は例えば非特許文献1に記載のBSCR(Brightness Sense’s Contrast Ratio、知覚コントラスト)を指標として行ってもよい。例えば測定環境は、白色のスクリーンを用いてLED光源を白色スクリーンに照射し、間接光を用いることで屋外輝度の環境を再現し測定できる。視認性の指標としては、明環境における視認性は、明るさを優先するか、色味を優先するかによる感応成分が含まれるため、この感応部分を可能な限り排除するために、輝度を明るくしながら特定の文字もしくは絵柄が見えたポイントを指標とする。
【0116】
この出願は、2018年12月11日に出願された日本出願特願2018-231268を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0117】
20 透明ガラス、21a メインプレート、21b サブプレート、22 透明ディスプレイ、23 調光シート、25 表示面、26 シール、28 タッチパネル、30 コントローラー、33 調光シート、34a-e 領域、38 調光シート、40 透明ガラス、41 受信機、42 カメラ、44 カメラ、45 サーバー、50 コンピューター、51 内側センサー、52 外側センサー、54 カメラ、55a-c 位置、Gr1-3 階調表現のパターン、Nw ネットワーク、Ob 物体、Pn1-5 無地の図形パターン、Ps 乗客、Sp 空間、Tp 輸送機関