(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】電気炉、有価金属の製造方法
(51)【国際特許分類】
C22B 7/00 20060101AFI20231212BHJP
F27B 3/16 20060101ALI20231212BHJP
F27B 3/14 20060101ALI20231212BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C22B7/00 F
C22B7/00 C
F27B3/16
F27B3/14
F27D1/00 D
(21)【出願番号】P 2021139299
(22)【出願日】2021-08-27
【審査請求日】2023-09-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】前場 和也
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/092951(WO,A1)
【文献】特開2016-114317(JP,A)
【文献】特表2008-531971(JP,A)
【文献】特開平5-141868(JP,A)
【文献】特開昭54-150304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 7/00
F27B 3/16
F27B 3/14
F27D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも銅(Cu)を含む有価金属を含有する原料を加熱熔融するための電気炉であって、
炉本体と、
前記炉本体の上部から内部に向かって垂下して設けられる複数の電極と、を備え、
前記炉本体において前記電極に通電することによって前記原料を加熱熔融し、スラグと
前記有価金属を含有するメタルとからなる熔融物を生成するものであり、
前記熔融物において比重分離して下層に形成される前記メタルの層に接する前記炉本体の側壁の総括熱伝達係数が、上層に形成される前記スラグの層に接する前記炉本体の側壁の総括熱伝達係数よりも小さくなるように構成されている、
電気炉。
【請求項2】
前記メタルの層が形成される位置に相当する前記炉本体の側壁には、該メタルを排出するためのメタルホールが設けられており、
前記メタルホールの上端よりも下側における前記炉本体の側壁の総括熱伝達係数が、該メタルホールの上端よりも上側における該炉本体の側壁の総括熱伝達係数よりも小さくなるように構成されている、
請求項1に記載の電気炉。
【請求項3】
前記炉本体の側壁は、少なくとも、その外側から順に、鉄皮と、不定形耐火物又は定形耐火物により形成される第1の耐火物層と、定形耐火物により形成される第2の耐火物層と、で構成されて
おり、
前記メタルの層に接する前記炉本体の側壁には、前記第1の耐火物層と前記鉄皮との間に断熱シート層が設けられている、
請求項1又は2に記載の電気炉。
【請求項4】
廃リチウムイオン電池を含む原料から有価金属を製造するために用いられる、
請求項1乃至3のいずれかに記載の電気炉。
【請求項5】
当該電気炉は、サブマージドアーク炉である、
請求項1乃至4のいずれかに記載の電気炉。
【請求項6】
銅(Cu)を含む有価金属を含有する原料から該有価金属を製造する方法であって、
前記原料を熔融炉に装入し、該原料に対して還元熔融処理を施すことによって、スラグと有価金属を含有するメタルとを含む熔融物を得る還元熔融工程を含み、
前記熔融炉として、請求項1に記載の電気炉を用いる、
有価金属の製造方法。
【請求項7】
前記還元熔融工程では、前記還元熔融処理により得られる熔融物において、比重分離により上層に形成されるスラグの層の厚さを、下層に形成されるメタルの層の厚さで除した値が1以上になる、
請求項
6に記載の有価金属の製造方法。
【請求項8】
前記原料は、廃リチウムイオン電池を含む、
請求項
6又は7に記載の有価金属の製造方法。
【請求項9】
前記還元熔融工程を経て得られる前記メタルは、銅を30質量%以上で含有する、
請求項
6乃至
8のいずれかに記載の有価金属の製造方法。
【請求項10】
前記還元熔融工程では、メタル温度が1300℃以上1400℃以下、スラグ温度が1500℃以上1600℃以下となるように還元熔融処理が施される、
請求項
6乃至
9のいずれかに記載の有価金属の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有価金属を含有する原料を加熱熔融するための電気炉、及びその電気炉を用いた有価金属の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軽量で大出力の二次電池としてリチウムイオン電池が普及している。よく知られているリチウムイオン電池は、外装缶内に負極材と正極材とセパレータと電解液とを封入した構造を有している。
【0003】
例えば、外装缶は、アルミニウム(Al)や鉄(Fe)等の金属からなる。負極材は、負極集電体(銅箔等)に固着させた負極活物質(黒鉛等)からなる。正極材は、正極集電体(アルミニウム箔等)に固着させた正極活物質(ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム等)からなる。セパレータは、ポリプロピレンの多孔質樹脂フィルム等からなる。電解液は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等の電解質を含む。
【0004】
リチウムイオン電池の主要な用途の一つに、ハイブリッド自動車や電気自動車がある。そのため、自動車のライフサイクルにあわせて、搭載されたリチウムイオン電池が将来的に大量に廃棄される見込みとなっている。また、製造中に不良品として廃棄されるリチウムイオン電池がある。このような使用済み電池や製造中に生じた不良品の電池(以下、「廃リチウムイオン電池」と称する)を資源として再利用することが求められている。
【0005】
再利用の手法として、廃リチウムイオン電池を高温炉で全量熔解する乾式製錬プロセスが提案されている。乾式製錬プロセスは、破砕した廃リチウムイオン電池を熔融処理し、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、及び銅(Cu)に代表される回収対象である有価金属と、鉄(Fe)やアルミニウム(Al)に代表される付加価値の低い金属とを、それらの間の酸素親和力の差を利用して分離回収する手法である。この手法では、付加価値の低い金属については極力酸化してスラグとする一方で、有価金属についてはその酸化を極力抑制して合金として回収する。
【0006】
特許文献1には、このような乾式製錬プロセスを用いた技術が開示されている。具体的には、アルミニウム及び炭素を含むリチウムイオンバッテリーからコバルトを回収する方法であって、酸素を注入する手段を備えた浴炉を準備する工程と、スラグ形成剤としてのCaO及びリチウムイオンバッテリーを含む原料を準備する工程と、酸素を注入するとともに原料を炉へ供給し、これによって少なくとも一部のコバルトが還元され、そして金属相中に集められる工程と、湯出しによって金属相中からスラグを分離する工程を含む方法が開示されている(特許文献1の請求項1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
廃リチウムイオン電池には、様々な成分が含まれており、そのうち幾つかの成分は融点が高い。そのため、廃リチウムイオン電池を熔融するには、高温、例えば1500℃以上の温度で処理する必要がある。
【0009】
また、有価金属を効率的に回収するにあたっては、熔融処理時の酸化還元度のコントロールが重要となる。例えば、廃リチウムイオン電池は、炭素(C)、アルミニウム(Al)、フッ素(F)、及びリン(P)等の不純物を多量に含む。このうち炭素(C)は、還元剤として作用するため、これが過剰に残留すると、他の不純物の酸化除去を妨げてしまう。また、過剰に残留した炭素は、合金(メタル)とスラグの分離を妨げる。さらに、リン(P)は、比較的還元されやすい元素である。このため、酸化還元度を厳密にコントロールしないと、有価金属の回収率が低下する。すなわち、還元度が過度に高いと、リンが酸化除去されずに有価金属と共にメタル中に混入してしまう。一方で、還元度が過度に低いと、有価金属まで酸化されてしまい、これを合金(メタル)として回収することができなくなる。
【0010】
このような事情から、従来の廃リチウムイオン電池の熔融処理では、高温に維持でき且つ酸化還元度のコントロールが容易な誘導炉(誘導加熱炉)、特に間接加熱式の誘導炉が用いられてきた。誘導炉は、電磁誘導を利用した加熱炉であり、コイルとこのコイルの内部に設けられた坩堝とから構成されている。誘導炉では、コイルに交流電流を流すと交流磁場が生じ、この交流磁場によって坩堝又はその内部に収容された処理物中に誘導電流が生じる。そして、その誘導電流のジュール熱によって、坩堝又は処理物が加熱される。
【0011】
廃リチウムイオン電池を熔融処理する場合には、黒鉛坩堝の内部に酸化物系坩堝を設置した二重坩堝を用い、酸化物系坩堝の中に廃リチウムイオン電池を装入する。コイルに電流を流すと黒鉛坩堝が誘導加熱され、発生した熱が酸化物系坩堝を介して廃リチウムイオン電池へと伝わっていく。誘導炉では、誘導加熱を利用した外部加熱方式を利用しているため、坩堝内部に黒鉛電極を設ける必要がない。このことから、炭素の混入を極力抑えることができる。また、比較的密閉された雰囲気下で加熱を行うことができるため、雰囲気ガス成分や圧力を調整することで、酸化還元度をコントロールすることができる。
【0012】
しかしながら、誘導炉を用いた熔融処理には問題があった。すなわち、廃リチウムイオン電池等の有価金属を含有する装入物を熔融するには、これを高温、例えば1500℃以上の温度に維持して処理する必要がある。ところが、誘導炉では、外熱方式を利用しているため、伝熱ロスが生じる。例えば、装入物を熔融温度(例えば1500℃以上)に維持するためには、装入物を収容する耐火物(酸化物系坩堝)の温度を、熔融温度以上、具体的には1600℃以上にまで上げ、その温度で保持しなければならない。このような高温では、耐火物へのスラグの浸食が激しくなり、耐火物の熔損を抑制することが困難となる。また、そのために耐火物(坩堝)の寿命も短くなっていた。
【0013】
このような問題点に対して、本発明者らが検討した結果、内部に電極を備えたサブマージドアーク炉(以下、単に「電気炉」ともよぶ)を熔融炉として用い、アーク自体の発熱及びジュール熱によって廃リチウムイオン電池等の原料を熔融することで、誘導炉を用いた場合に比べて耐火物の熔損を著しく抑制できることが分かった。また、電極として黒鉛電極を用いたとしても、電極からの流入量を考慮した上で酸化還元度をコントロールすることで、コバルト等の有価金属を高い回収率で得られると同時に、リンやマンガン等の不純物を効率的に除去できることを確認した。
【0014】
ところが、電気炉を使用して廃リチウムイオン電池等の熔融処理を行ったときにも問題点がある。具体的には、電気炉内に保持するスラグ容量がメタル容量の1倍以上、すなわち形成されるスラグ層の厚さがメタル層の厚さの1倍以上である中で、原料を熔融するための熱は炉体の上面から加わって炉体の側面あるいは底面に向かって流れていくが、このとき、メタル層の温度が上がり難くなり、これを維持するためにはスラグ層の温度を上げざるを得ず、すると、スラグ層とそのスラグ層が位置する領域における炉体耐火物との間に生成するコーチングが出来難くなって、結果としてスラグ層における炉体耐火物の寿命が短くなる、という問題がある。
【0015】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、有価金属を含有する原料を加熱熔融するための電気炉において、炉体耐火物の寿命を延ばして安定的な処理を実行することができる電気炉、またその電気炉を用いた有価金属の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、原料を還元熔融するに際して、内部に電極を備えた電気炉であって、得られる熔融物の下層に形成されるメタル層に接する炉本体の側壁の総括熱伝達係数が、上層に形成されるスラグ層に接する炉本体の側壁の総括熱伝達係数よりも小さくなるように構成された電気炉を用いることで、上述した課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
(1)本発明の第1の発明は、有価金属を含有する原料を加熱熔融するための電気炉であって、炉本体と、前記炉本体の上部から内部に向かって垂下して設けられる複数の電極と、を備え、前記炉本体において前記電極に通電することによって前記原料を加熱熔融し、スラグとメタルとからなる熔融物を生成するものであり、前記熔融物において比重分離して下層に形成される前記メタルの層に接する前記炉本体の側壁の総括熱伝達係数が、上層に形成される前記スラグの層に接する前記炉本体の側壁の総括熱伝達係数よりも小さくなるように構成されている、電気炉である。
【0018】
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明に置いて、前記メタルの層が形成される位置に相当する前記炉本体の側壁には、該メタルを排出するためのメタルホールが設けられており、前記メタルホールの上端よりも下側における前記炉本体の側壁の総括熱伝達係数が、該メタルホールの上端よりも上側における該炉本体の側壁の総括熱伝達係数よりも小さくなるように構成されている、電気炉である。
【0019】
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記炉本体の側壁は、少なくとも、その外側から順に、鉄皮と、不定形耐火物又は定形耐火物により形成される第1の耐火物層と、定形耐火物により形成される第2の耐火物層と、で構成されている、電気炉である。
【0020】
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、廃リチウムイオン電池を含む原料から有価金属を製造するために用いられる、電気炉である。
【0021】
(5)本発明の第5の発明は、銅(Cu)を含む有価金属を含有する原料から該有価金属を製造する方法であって、前記原料を熔融炉に装入し、該原料に対して還元熔融処理を施すことによって、スラグと有価金属を含有するメタルとを含む熔融物を得る還元熔融工程を含み、前記熔融炉として、請求項1に記載の電気炉を用いる、有価金属の製造方法である。
【0022】
(6)本発明の第6の発明は、第5の発明において、前記還元熔融工程では、前記還元熔融処理により得られる熔融物において、比重分離により上層に形成されるスラグの層の厚さを、下層に形成されるメタルの層の厚さで除した値が1以上になる、有価金属の製造方法である。
【0023】
(7)本発明の第7の発明は、第5又は第6の発明において、前記原料は、廃リチウムイオン電池を含む、有価金属の製造方法である。
【0024】
(8)本発明の第8の発明は、第5乃至第7のいずれかの発明において、前記還元熔融工程を経て得られる前記メタルは、銅を30質量%以上で含有する、有価金属の製造方法である。
【0025】
(9)本発明の第9の発明は、第5乃至第8のいずれかの発明において、前記還元熔融工程では、メタル温度が1300℃以上1400℃以下、スラグ温度が1500℃以上1600℃以下となるように還元熔融処理が施される、有価金属の製造方法である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、例えば廃リチウムイオン電池を含む原料から有価金属を製造するに際し、原料に対する熔融処理を行うための炉の損傷を抑制し、効率的な処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】電気炉の側壁(炉壁)の構造の一例を示す図である。
【
図3】廃リチウムイオン電池から有価金属を製造する方法の流れの一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において種々の変更が可能である。
【0029】
≪1.電気炉≫
本実施の形態に係る電気炉は、有価金属を含有する原料を加熱熔融するための電気炉である。例えば、詳しくは後述する、廃リチウムイオン電池を含む原料を加熱熔融して還元し、スラグとその有価金属を含むメタル(合金)とからなる熔融物を得る還元熔融工程での処理に用いることができる。
【0030】
図1は、本実施の形態に係る電気炉の構成の一例を示す図である。
図1に示すように、電気炉1は、炉本体11と、炉本体11の上部から内部に向かって垂下して設けられる複数の電極12と、を備える。また、電気炉1は、熔融対象の原料2を装入(投入)する投原管13を備える。電気炉1は、炉本体1において、電極12に通電することによって装入した原料を加熱熔融し、スラグ3とメタル4とからなる熔融物を生成するものである。
【0031】
なお、
図1では、投原管13より装入される原料2と、その原料2を加熱熔融することでスラグ3とメタル4とからなる熔融物が生成している状態を示す。また、その熔融物においては、比重分離により、上層にスラグ3の層(スラグ層)が、下層にメタル4の層(メタル層)が形成される。
【0032】
そして、本実施の形態に係る電気炉1では、原料2に対する加熱熔融により生成するメタル4の層に接する領域の炉本体11の側壁11Bの総括熱伝達係数が、スラグ3の層に接する領域の炉本体11の側壁11Aの総括熱伝達係数よりも小さくなるように構成されていることを特徴としている。
【0033】
炉本体11の側壁11A,11Bの「総括熱伝達係数」とは、炉内側壁近傍の熔融物から炉外側壁近傍に向けて熱が伝わる程度を示す係数をいい、「W/m2・K」の単位で表すことができる。
【0034】
電気炉1では、内部(炉内)に装入される原料を、電極12に通電してアーク放電による加熱及びジュール熱を発生させて熔融する。このように電気炉1では、炉内の電極12で加熱する内部加熱方式を採用することで、炉本体11の炉壁を構成する耐火物(炉壁耐火物)の熔損を防ぐことができる。すなわち、内部加熱方式では、電極12近傍に位置する熔体(熔融した原料)が最も高温になるため、炉壁は熔体よりも低温に維持されることになる。なお、電気炉を用いた場合に対して、例えば誘導炉を用いた場合では、炉を構成する坩堝からの伝熱によって原料を加熱する外部加熱方式を利用しており、熔体よりも坩堝を高温に維持する必要があるため、坩堝耐火物の熔損が大きいという問題がある。
【0035】
電気炉1としては、サブマージドアーク炉であることが好ましい。サブマージドアーク炉は、アーク炉の一種である。アーク炉は、アーク自体の発熱を利用した炉であり、超高温と高エネルギー密度を利用して局所加熱や急速加熱を達成できる炉である。アーク炉のうち直接アーク炉では、被加熱物の上方に間隙を設けて電極が設けられており、その間隙にアークを発生させて被加熱物を加熱する。また、間接アーク炉では、複数の電極間にアークを発生させ、主として放射熱により被加熱物を加熱する。これに対して、サブマージドアーク炉は、複数の電極が被加熱物中に埋没(サブマージ)しており、アーク放電による加熱と共にジュール熱(電気抵抗熱)を利用した加熱を行う。具体的には、サブマージドアーク炉では、電極先端と被加熱物との間にアーク放電を発生させ、このアークにより被加熱物(原料)を加熱する。またそれと同時に、被加熱物を介して電極~電極間(電極~被加熱物~電極間)に電流が流れ、ジュール熱により被加熱物(スラグ)が発熱する。
【0036】
サブマージドアーク炉は、少ない投入電力で効率的に加熱できるという特徴を有している。直接アーク炉や間接アーク炉では、被加熱物の上方でアーク放電が発生するため、発生した熱量のうち多くが雰囲気中に放出されてしまい、エネルギー損失が大きくなる。また、アークによる衝撃で被加熱物から粉塵が発生し易く、粉塵処理手段を設ける必要がある。さらに、電極が炉壁に近接している場合には、炉壁耐火物が熱損傷を受けやすく、耐火物の耐久性に悪影響を及ぼす場合がある。それに対して、サブマージドアーク炉では、電極が被加熱物に覆われているため、熱量の放出が少ない。また、粉塵の発生及び耐火物への熱損傷が少ないため、粉塵処理のコスト及び耐火物交換のコストを下げることができる。これらの理由から、電気炉1として好ましくはサブマージドアーク炉を用いることで、有価金属の回収を高効率且つ低コストで行うことが可能になる。
【0037】
特に、廃リチウムイオン電池を含む原料を加熱熔融する場合、スラグ発生量は合金(メタル)発生量に対して体積比で約3倍と多くなる。合金を熔融状態に維持する上では、スラグを介した合金への伝熱を確保することが重要となる。また、廃リチウムイオン電池に含まれるリチウム成分はスラグとなるため、高温で耐火物を浸食する作用が大きく、このような浸食を抑えることも重要である。この点において、直接アーク炉や間接アーク炉では、スラグ表面のみがアーク放電により局所的に加熱されるため、合金の全てを熔解するためには、投入電力を大きくする必要がある。これに対して、サブマージドアーク炉では、アーク放電のみならずジュール熱をも利用するため、スラグを介した合金への熱伝導が効果的に行われる。このことから、少ない投入電力でも効率的な加熱が可能である。また、サブマージドアーク炉では、電極先端がスラグに埋没しているため、熱分布が比較的均一であり、ヒートスポットが出来難いため、耐火物熔損を抑えることが可能である。
【0038】
ここで、加熱熔融する対象(有価金属を含有する原料)としては、例えば、廃リチウムイオン電池等の、有価金属として少なくとも銅(Cu)を含有する原料が挙げられる。このような、廃リチウムイオン電池等の銅を含有する原料を加熱熔融するにあたっては、高い温度での操業が必要となり、また、原料中の銅はそのほぼ100%がメタルに分配される。例えば、廃リチウムイオン電池を含む原料を加熱熔融したとき、生成するメタル中に含まれる銅の品位は30質量%以上となる。また、メタルに含まれるその他の成分(ニッケルやコバルト、鉄の鉄族元素等)に比べ、銅の熱伝導率は5倍程度と非常に大きい。
【0039】
そのため、
図1を参照しながら説明すると、銅を含むメタル4は、スラグ3の層から受け取った熱を、そのメタル4の層が接している電気炉1の炉壁面(耐火物面)11Bに容易に渡してしまう。したがって、高温での操業をする中で、メタル4の層の温度を維持するためには、さらにスラグ3の温度を引き上げることが必要となる。しかしながら、スラグ3の温度を引き上げると、そのスラグ3の層に接している側壁11Aの耐火物の損耗が著しくなることに加え、電気炉1で使用する電力コストも著しく増加する。なお、これまでの電気炉を使用する製錬では、得られるメタルとしては、鉄族元素又はこれを含む合金であり、上述したようなメタル温度が維持できないという現象は生じなかった。
【0040】
そこで、本実施の形態に係る電気炉1では、原料2に対する加熱熔融により生成するメタル4の層に接する領域の炉本体11の側壁11Bの総括熱伝達係数が、スラグ3の層に接する領域の炉本体11の側壁11Aの総括熱伝達係数よりも小さくなるように構成されていることを特徴としている。
【0041】
このような側壁構造に施工して構成される電気炉によれば、加熱熔融によりメタルに分配される銅(Cu)を有価金属として含む原料を処理する場合であっても、電気炉を構成する炉壁耐火物の損耗を抑制して寿命を延ばすことができ、安定的な処理を実行することができる。
【0042】
電気炉1において、少なくとも、メタル4の層が形成される位置に相当する炉本体11の側壁に、そのメタル4をタッピングにより排出するためのメタルホール15が設けられている。したがって、そのメタルホール15を基準として、「スラグ3の層に接する側壁」、「メタル4の層に接する側壁」をそれぞれ定義することができる。具体的に、「スラグ3の層に接する側壁」とは、そのメタルホール15の上端15aよりも上側の領域における炉本体11の側壁をいい、「メタル4の層に接する側壁の領域」とは、メタルホール15の上端15aよりも下側の領域における炉本体11の側壁をいう。
【0043】
また、電気炉1においては、スラグ3の層が形成される位置に相当する炉本体11の側壁に、そのスラグ3をタッピングにより排出するためのスラグホール14を設けることができる。この場合において、「スラグ3の層に接する側壁」とは、スラグホール14の下端14aよりも上側の領域における炉本体11の側壁と定義することもできる。また、「メタル4の層に接する側壁」とは、そのスラグホール14の下端14aよりも下側の領域における炉本体11の側壁と定義することもできる。
【0044】
上述のような構造の電気炉1において、メタル4及びスラグ3のそれぞれの層に接する領域の炉本体11の内側側壁は、耐火煉瓦で施工することが好ましい。例えば、
図1に示すように、側壁構造については、少なくとも、その外側から順に、鉄皮111と、不定形耐火物又は定形耐火物により形成される第1の耐火物層112と、定形耐火物により形成される第2の耐火物層113と、で構成される。そして、側壁11A,11Bの総括熱伝達係数の調整は、その側壁構造において、冷却ジャケットや断熱シート等を所定の領域に施工するなどして行うことができる。
【0045】
例えば、
図2は側壁構造の具体例を示すものであり、後述する実施例で用いた電気炉の側壁構造を示している。この電気炉1においては、スラグ3の層に接する炉壁の構造は、炉内側の第2の耐火物層113としてMgO-C煉瓦がライニングされ、第1の耐火物層112としてAl
2O
3―SiO
2煉瓦がライニングされ、次にセラミックシートを施工し、最後に鉄製ジャケットからなる冷却手段が設けられ構成されている。また、メタル4の層に接する炉壁の構造は、炉内側の第2の耐火物層113からMgO-C煉瓦がライニングされ、第1の耐火物層112としてAl
2O
3―SiO
2煉瓦で構成され、次に断熱シートが設けられ構成されている。例えば、このような電気炉1の炉壁構造では、メタル4の層に接する領域の炉本体11の側壁11Bの総括熱伝達係数が、スラグ3の層に接する領域の炉本体11の側壁11Aの総括熱伝達係数よりも小さくなるように構成することができる。
【0046】
なお、側壁構造について、上述したようなメタル4の層での総括熱伝達係数が小さいことは、つまりは熱が溜まることを意味し、耐火物において傷んだ箇所があれば熔体漏れのリスクが大きくなることを意味する。このことから、側壁を、水冷式ジャケット構造や水冷式配管が設けられたメタルブロック構造とすることよりも、耐火物で施工するとともに、少なくともメタル4及びスラグ3の層に接する側壁11A,11Bの内側は、耐火煉瓦で施工することが好ましい。
【0047】
≪2.電気炉を用いた有価金属の製造方法≫
本実施の形態に係る有価金属の製造方法は、廃リチウムイオン電池等の銅(Cu)を含有する原料から、その銅やその他の有価金属(例えば、Ni、Co)を分離回収する方法である。したがって、この方法は、有価金属の回収方法とも言い換えることができる。本実施の形態に係る方法は、主として乾式製錬プロセスによる方法であるが、乾式製錬プロセスと湿式製錬プロセスとから構成されていてもよい。
【0048】
本実施の形態に係る方法は、以下の工程;銅(Cu)を含む原料を準備する工程(準備工程)と、準備した原料を還元加熱熔融して合金とスラグとを含む熔融物(還元物)を得る工程(還元熔融工程)と、得られたスラグを分離して有価金属を含む合金を回収する工程(スラグ分離工程)と、を有する。
【0049】
ここで、還元加熱工程では、原料を加熱熔融する際に、内部に電極を備えた電気炉を用い、その電気炉内に原料を装入する。電気炉内では、例えば、電極の先端がスラグに浸漬した状態でその電極に通電され、アーク放電による加熱及びジュール熱によって原料が加熱熔融される。なお、加熱方式については限定されない。
【0050】
上述したように、本実施の形態に係る方法は、廃リチウムイオン電池等の銅(Cu)を含有する原料から有価金属を製造する方法であり、有価金属は回収対象となるものである。例えば、廃リチウムイオンを含む原料を用いる場合、その回収対象の有価金属は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属又は合金である。
【0051】
[準備工程]
準備工程では、原料を準備する。原料は、有価金属を回収する処理対象であり、少なくとも銅(Cu)を含有する。また、廃リチウムイオン電池を含む原料の場合、有価金属としては、銅、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも一種の有価金属を含有する。原料はこれらの成分(Cu、Ni、Co)を金属又は合金の形態で含んでもよく、あるいは酸化物等の化合物の形態で含んでもよい。また原料はこれらの成分(Cu、Ni、Co)以外の他の無機成分や有機成分を含んでもよい。
【0052】
また、原料は、有価金属を含む限り、その対象は限定されない。一例として、上述したように、廃リチウムイオン電池が挙げられ、また、誘電材料又は磁性材料を含む電子部品、電子機器が挙げられる。また、原料としては、後続する工程での処理に適したものであれば、その形態は限定されない。さらに、当該準備工程において、原料に粉砕処理等の処理を施して適した形態にしてもよく、また、原料に熱処理や分別処理等の処理を施して、水分や有機物等の不要成分を除去してもよい。
【0053】
なお、「廃リチウムイオン電池」とは、使用済みのリチウムイオン電池のみならず、電池を構成する正極材等の製造工程で生じた不良品、製造工程内部の残留物、発生屑等のリチウムイオン電池の製造工程内における廃材を含む概念である。そのため、廃リチウムイオン電池をリチウムイオン電池廃材と言うこともできる。
【0054】
[還元熔融工程]
還元熔融工程では、準備工程で準備した原料を熔融炉に装入し、その熔融炉内において加熱熔融(還元熔融)の処理を施すことによって、メタル(合金)とスラグとを含む還元物を得る。より具体的には、原料を加熱熔融して熔融物にする。この熔融物は、熔融したメタルと熔融したスラグとを含む。熔融したメタルとスラグは、それぞれ比重が異なるため、熔融物において、メタルの層(メタル層)と、そのメタル層の上方に位置するスラグの層とが比重分離して形成される。例えば、熔融物においては、上層に形成されるスラグの層の厚さを、下層に形成されるメタルの層の厚さで除した値が1以上になるように、スラグとメタルとが比重分離する。
【0055】
また、メタルは、有価金属を主として含む。そのため、有価金属とその他の成分を、メタル及びスラグとして分離することが可能である。これは、付加価値の低い成分(Al等)は酸素親和力が高いのに対し、有価金属は酸素親和力が低いことによる。例えば、アルミニウム(Al)、リチウム(Li)、炭素(C)、マンガン(Mn)、リン(P)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、及び銅(Cu)は、一般的に、Al>Li>C>Mn>P>Fe>Co>Ni>Cuの順に酸化される。つまり、アルミニウム(Al)が最も酸化され易く、銅(Cu)が最も酸化されにくい。付加価値の低い成分(Al等)は容易に酸化されてスラグになり、有価金属(例えばCu、Ni、Co)は還元されて金属(合金)になる。このようにして、有価金属と付加価値の低い成分とを、メタル(合金)とスラグとに分離することができる。
【0056】
本実施の形態に係る方法では、熔融炉として、上で説明した特徴的な構造を有する電気炉1を用いることを特徴としている。すなわち、熔融炉として、原料2に対する加熱熔融により生成するメタル4の層に接する領域の炉本体11の側壁11Bの総括熱伝達係数が、スラグ3の層に接する領域の炉本体11の側壁11Aの総括熱伝達係数よりも小さくなるように構成されている電気炉1を用いる(
図1も参照)。なお、電気炉1の詳細な構造についての説明は、上述したとおりであり、ここでは省略する。
【0057】
ここで、還元熔融処理において、内部に電極12を備えた電気炉1の炉内に原料2を投入(装入)し、電極12に通電して加熱することによって原料を熔融する。このように、炉内の電極12で加熱する内部加熱方式を採用することで、炉壁耐火物の熔損を防ぐことができる。すなわち、内部加熱方式では、電極近傍に位置する熔体(熔融した原料)が最も高温になる。そのため、炉壁は熔体よりも低温に維持される。これに対して、誘導炉を用いた従来の手法は、坩堝からの伝熱によって原料を加熱する外部加熱方式を利用しており、外部加熱方式では、熔体よりも坩堝を高温に維持する必要があるため、坩堝耐火物の熔損が大きくなるという問題がある。
【0058】
電気炉1は、好ましくはサブマージドアーク炉である。サブマージドアーク炉は、アーク炉の一種である。アーク炉は、アーク自体の発熱を利用した炉であり、超高温と高エネルギー密度を利用して局所加熱や急速加熱を達成できる。アーク炉のうち直接アーク炉では、被加熱物の上方に間隙を設けて電極が設置されており、この間隙にアークを発生させて被加熱物を加熱する。また、間接アーク炉では、複数の電極間にアークを発生させ、主として放射熱により被加熱物を加熱する。これに対して、サブマージドアーク炉は、複数の電極が被加熱物中に埋没(サブマージ)しており、アーク放電による加熱とともにジュール熱(電気抵抗熱)を利用する。具体的には、電極先端と被加熱物との間にアーク放電が発生して、このアークにより被加熱物(原料)が加熱される。またそれと同時に、被加熱物を介して電極~電極間(電極~被加熱物~電極間)に電流が流れ、ジュール熱によっても被加熱物(スラグ)が発熱する。
【0059】
サブマージドアーク炉には、少ない投入電力で効率的に加熱できるという利点がある。直接アーク炉や間接アーク炉では、被加熱物の上方でアーク放電が発生するため、発生した熱量のうちの多くが雰囲気中に放出されてしまい、エネルギー損失が大きい。また、アークによる衝撃で被加熱物から粉塵が発生し易く、粉塵処理手段を設ける必要がある。さらに、電極が炉壁に近接している場合には、炉壁耐火物が熱損傷を受けやすく、耐火物の耐久性に悪影響を及ぼす場合がある。これに対して、サブマージドアーク炉では、電極が被加熱物に覆われているため、熱量の放出が少ない。また、粉塵の発生及び耐火物への熱損傷が少ないため、粉塵処理のコスト及び耐火物交換のコストを下げることができる。これらの理由から高効率且つ低コストで還元熔融処理を行うことが可能になる。
【0060】
特に、例えば廃リチウムイオン電池を原料に用いる場合、スラグ発生量は、合金発生量に対して体積比で約3倍と多くなる。合金を熔融状態に維持する上で、スラグを介した合金への伝熱を確保することが重要となる。また、廃リチウムイオン電池に含まれるリチウム成分はスラグとなり、高温で耐火物を浸食する作用が大きく、その浸食を抑えることも重要である。この点、直接アーク加熱炉や間接アーク加熱炉では、スラグ表面のみが局所的にアーク放電により加熱されるため、合金の全てを熔解するためには投入電力を大きくする必要がある。これに対して、サブマージドアーク炉では、アーク放電のみならずジュール熱をも利用するため、スラグを介した合金への熱伝導が効果的に行われる。したがって、少ない投入電力でも効率的な加熱が可能となる。また、電極先端がスラグに埋没しているため、熱分布が比較的均一であり、ヒートスポットが出来難いため、耐火物熔損を抑えることができる。
【0061】
原料を加熱熔融するに際しては、生成するメタルの融点に応じて電極12の浸漬深さを調整することが好ましい。メタルの融点がスラグの融点に非常に近い場合、あるいはメタルの融点がスラグの融点より高い場合には、メタルが熔融状態を維持しにくくなる。このような場合には、電極12をスラグ内部の深くにまで浸漬させることにより、電極先端で発生するジュール熱がメタルに伝わりやすくなり、メタルが熔融状態を維持し易くなる。これに対して、メタルの融点が低い場合には、電極12の浸漬深さを浅くしても、メタルを十分に熔融状態に維持することができる。
【0062】
電気炉1において、電極12として黒鉛電極を用いることができる。本発明者らが調べたところ、黒鉛電極を用いた内部加熱であっても、被加熱物(原料)に取り込まれる炭素量はそれほど多くはなく、酸化還元度をコントロールする上で問題にはならない。また、被加熱物に取り込まれる炭素量を予め調べておくことで、電極12から取り込まれる炭素を還元剤として用いることできる。そのため、炭素等の還元剤を添加して還元度を調整する場合に、還元剤の使用量を少なくすることが可能である。
【0063】
必要に応じて、電極12の上下位置を調整するための電極制御装置、すなわち加える電流値が一定となるように電極位置を制御する装置を設けてもよい。これにより、電気炉1の動作中に原料(又はそれが熔融した熔体)の表面位置が上下に変動しても、電極12の先端と被加熱物表面との間隔を一定の距離に、あるいは電極12の先端が被加熱物表面から一定の距離で浸漬した状態を保つことができ、安定した加熱が可能になる。
【0064】
また、原料を加熱熔融するに際して、スラグの上にさらに追加の原料を投入して追加原料からなるカバーリング層を設けること(オープンチョークフィード)が好ましい。これにより、原料の加熱熔融を効率的に行うことができる。すなわち、原料が加熱熔融するときに高温ガスが発生するが、原料カバーリング層をスラグ上面に設けるようにすることで、高温ガスと原料との間で熱交換が起こり、発生した熱を原料の熔融に有効利用できる。
【0065】
また、還元熔融処理においては、原料に還元剤を導入(添加)してもよい。還元剤としては、炭素及び/又は一酸化炭素を用いることが好ましい。炭素は、回収対象である有価金属(例えば、Cu、Ni、Co)を容易に還元する能力がある。例えば1モルの炭素で2モルの有価金属酸化物(銅酸化物、ニッケル酸化物等)を還元することができる。そのため、適量の炭素を導入することで、酸化還元度を厳密に調整することができる。また、炭素や一酸化炭素を用いる還元手法は、金属還元剤を用いる手法(例えば、アルミニウムを用いたテルミット反応法)に比べて安全性が極めて高い。炭素としては、人工黒鉛及び/又は天然黒鉛を使用することができ、また、不純物コンタミネーションの恐れが無ければ石炭やコークス等を使用することもできる。
【0066】
また、還元熔融処理においては、原料にフラックスを導入(添加)してもよい。フラックスを添加することで、熔融処理温度を低温化することができ、またリン(P)の除去をより一層進めることができる。フラックスとしては、不純物元素を取り込んで融点の低い塩基性酸化物を形成する元素を含むものが好ましい。リンは酸化すると酸性酸化物になるため、還元熔融処理で生成するスラグが塩基性になるほど、スラグにリンを取り込ませて除去し易くなる。その中でも、安価で常温において安定なカルシウム化合物を含むものがより好ましい。カルシウム化合物として、例えば酸化カルシウム(CaO)や炭酸カルシウム(CaCO3)を挙げることができる。
【0067】
還元熔融処理における加熱温度は、特に限定されないが、メタル温度で1300℃以上1400℃以下、スラグ温度で1500℃以上1600℃以下がより好ましい。本実施の形態に係る方法では、上述したような側壁構造を有する電気炉1を用いて還元加熱処理を行うようにしていることから、メタル4の層から炉壁への熱の過剰な移動を抑えることで、エネルギーが無駄に消費されることを防ぐことができるとともに、スラグ温度を抑えることができるため、耐火物の消耗を効果的に抑えることができる。
【0068】
[予備加熱工程(酸化焙焼工程)]
本実施の形態に係る方法では、必要に応じて、還元熔融処理(熔融工程での処理)に先立って、原料を予備加熱(酸化焙焼)して予備加熱物(酸化焙焼物)を得る工程(予備加熱工程)を設けることができる。
【0069】
予備加熱工程では、熔融工程に供される原料を予備加熱することによってその原料に含まれる炭素量を減少させる。このような予備加熱工程を設けることで、熔融工程に供される原料が炭素を過剰に含む場合であっても、その炭素を有効に酸化除去することができ、後続する熔融工程での加熱熔融の処理において有価金属の合金一体化を促進させることができる。
【0070】
より具体的には、熔融工程における加熱熔融の処理では、有価金属は還元されて局所的な熔融微粒子になるが、このとき、原料中の炭素が、熔融微粒子(有価金属)が凝集する際の物理的な障害になることがある。熔融微粒子の凝集一体化が妨げられると、生成する合金とスラグの分離を妨げ、有価金属の回収率の低下をもたらすことがある。これに対して、加熱熔融の処理に先立ち予備加熱工程にて原料を予備加熱して炭素を除去しておくことで、熔融微粒子の凝集一体化を効率的に進行させ、有価金属の回収率をより一層に高めることが可能になる。また、リンは比較的還元されやすい不純物元素であるため、原料中に炭素が過剰に存在すると、リンが還元されて有価金属と共に合金に取り込まれるおそれがある。その点においても、予備加熱によって原料中の過剰な炭素を予め除去しておくことで、合金へのリンの混入を防ぐことができる。
【0071】
なお、予備加熱の処理を行って得られる予備加熱物(酸化焙焼物)の炭素量としては1質量%未満となるようにすることが好ましい。
【0072】
また、予備加熱工程を設けることで、酸化のばらつきを抑えることもできる。予備加熱工程での予備加熱の処理は、熔融工程に供される原料に含まれる付加価値の低い金属(Al等)を酸化することが可能な酸化度で処理(酸化焙焼)を行うことが望ましい。一方で、予備加熱の処理温度、時間及び/又は雰囲気を調整することで、酸化度を容易に制御することができる。そのため、予備加熱の処理において、酸化度をより厳密に調整することができ、酸化のばらつきを抑制することができる。
【0073】
なお、酸化度の調整は、次のようにして行う。上述したように、アルミニウム(Al)、リチウム(Li)、炭素(C)、マンガン(Mn)、リン(P)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及び銅(Cu)は、一般的に、Al>Li>C>Mn>P>Fe>Co>Ni>Cuの順に酸化されていく。予備加熱工程では、原料中にアルミニウム(Al)が含まれる場合には、そのAlの全量が酸化されるまで酸化を進行させる。鉄(Fe)の一部が酸化されるまで酸化を促進させてもよいが、コバルト(Co)が酸化されてスラグへ分配されることがない程度に酸化度を留めることが好ましい。
【0074】
予備加熱の処理は、酸化剤の存在下で行うことが好ましい。これにより、不純物元素である炭素(C)の酸化除去を効率的に行うことができる。また、その酸化剤としては、特に限定されないが、取り扱いが容易であるという点で、酸素含有ガス(空気、純酸素、酸素富化ガス等)が好ましい。また、酸化剤の導入量としては、例えば、酸化処理の対象となる各物質の酸化に必要な化学当量の1.2倍程度が好ましい。
【0075】
予備加熱の加熱温度は、700℃以上1100℃以下が好ましい。700℃以上であれば、炭素の酸化効率をより一層に高めることができ、酸化時間を短縮することができる。また、1100℃以下とすることで、熱エネルギーコストを抑制することができ、予備加熱の効率を高めることができる。また、予備加熱温度は、800℃以上であってもよく、900℃以下であってもよい。
【0076】
予備加熱の処理は、公知の焙焼炉を用いて行うことができる。また、後続する熔融工程での処理で使用する熔融炉とは異なる炉(予備炉)を用い、その予備炉内で行うことが好ましい。予備加熱炉として、処理対象の原料を焙焼しながら酸化剤(酸素等)を供給してその内部で酸化処理を行うことが可能な炉である限り、あらゆる形式の炉を用いることができる。一例して、従来公知のロータリーキルン、トンネルキルン(ハースファーネス)が挙げられる。
【0077】
[スラグ分離工程]
スラグ分離工程では、熔融工程での加熱熔融により得られた熔融物からスラグを分離して、有価金属を含むメタル(合金)を回収する。メタルとスラグとでは比重が異なる。メタルに比べて比重の小さいスラグは、そのメタルの上部に集まるため、比重分離により容易にメタルを分離回収することができる。なお、原料を、電気炉1を使用して熔解し、スラグとメタルとを含む熔融物を得た後、スラグはスラグ用の排出経路から、メタルはメタル用の排出経路からそれぞれ排出することができる。すなわち、熔融工程とスラグ分離工程とを同じ炉内で行うことができる。
【0078】
このようなスラグ分離工程での処理の後に、得られたメタルを硫化する硫化工程や、得られた硫化物あるいはメタルを粉砕する粉砕工程を設けてもよい。さらに、このような乾式製錬プロセスを経て得られた有価金属を含むメタル(合金)に湿式製錬プロセスを施してもよい。湿式製錬プロセスにより、不純物成分を除去し、有価金属(例えば、Cu、Ni、Co)を分離精製し、それぞれを回収することができる。湿式製錬プロセスにおける処理としては、中和処理や溶媒抽出処理等の公知の手法が挙げられる。
【0079】
≪3.廃リチウムイオン電池からの有価金属の製造方法≫
図3は、廃リチウムイオン電池から有価金属を製造する方法の流れの一例を示す工程図である。
図3に示すように、この方法は、廃リチウムイオン電池の電解液及び外装缶を除去して廃電池内容物を得る工程(廃電池前処理工程S1)と、廃電池内容物を粉砕して粉砕物とする工程(粉砕工程S2)と、粉砕物を予備加熱して予備加熱物にする工程(予備加熱工程S3)と、予備加熱物を熔融して熔融物にする工程(還元熔融工程S4)と、熔融物からスラグを分離して合金を回収する工程(スラグ分離工程S5)を有する。
【0080】
また、図示していないが、スラグ分離工程S5の後に、得られた合金を硫化する硫化工程や得られた硫化物あるいは合金を粉砕する粉砕工程を設けてもよい。
【0081】
[廃電池前処理工程]
廃電池前処理工程S1は、廃リチウムイオン電池の爆発防止及び無害化を目的に行われる。リチウムイオン電池は密閉系であるため、内部に電解液等を有している。そのため、そのままの状態で粉砕処理を行うと、爆発の恐れがあり危険である。何らかの手法で放電処理や電解液除去処理を施すことが好ましい。このように、廃電池前処理工程S1において電解液を除去することで、安全性を高めた処理を行うことができる。
【0082】
廃電池前処理の具体的な方法は、特に限定されない。例えば、針状の刃先で廃電池を物理的に開孔し、電解液を除去する手法が挙げられる。また、廃電池を加熱して、電解液を燃焼して無害化する手法が挙げられる。
【0083】
[粉砕工程]
粉砕工程S2では、廃リチウムイオン電池の内容物を粉砕して粉砕物を得る。粉砕工程S2での処理は、乾式製錬プロセスでの反応効率を高めることを目的にしている。反応効率を高めることで、有価金属(Cu、Ni、Co)の回収率を高めることができる。具体的な粉砕方法は、特に限定されない。カッターミキサー等の従来公知の粉砕機を用いて粉砕することができる。
【0084】
外装缶を構成する金属であるアルミニウム(Al)や鉄(Fe)を、渦電流を利用したアルミニウム選別機、磁力選別機等により容易に物理選別することができる。また、振とう篩機等により、篩い上として箔状の負極集電体(銅箔等)、あるいは正極集電体(アルミニウム箔等)(以下、「箔状物」ともよぶ)を、篩い下として粉状の負極活物質(黒鉛等)、あるいは正極活物質(ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム等)(以下、「粉状物」ともいう)を得ることができる。
【0085】
なお、廃電池前処理工程と粉砕工程は、これらを併せて先述する準備工程に相当する。
【0086】
[予備加熱工程]
予備加熱工程(酸化焙焼工程)S3では、少なくとも粉砕工程S2で得られた粉状物を予備加熱(酸化焙焼)して予備加熱物(酸化焙焼物)を得る。この工程の詳細は上述したとおりであり、予備加熱工程にて予備加熱を行うことで、還元熔融工程S4に供される原料が炭素を過剰に含む場合であっても、その炭素を有効に酸化除去することができ、加熱熔融の処理において有価金属の合金一体化を促進させることができる。
【0087】
[還元熔融工程]
還元熔融工程S4では、少なくとも予備加熱工程S3で得られた予備加熱物を熔融炉に装入し、加熱熔融することによって、合金(メタル)とスラグとから構成される熔融物を得る。
【0088】
この工程の詳細は上述したとおりであるが、特に、本実施の形態に係る方法では、熔融炉として、上で説明した特徴的な構造を有する電気炉1を用いることを特徴としている。すなわち、熔融炉として、原料2に対する加熱熔融により生成するメタル4の層に接する領域における炉本体11の側壁11Bの総括熱伝達係数が、スラグ3の層に接する領域における炉本体11の側壁11Aの総括熱伝達係数よりも小さくなるように構成されている電気炉1を用いる(
図1も参照)。このような方法によれば、還元熔融処理を行うための電気炉の損耗を効果的に抑制しながら、効果的に有価金属を含む合金を生成させることができる。
【0089】
還元熔融処理では、予備加熱物を電気炉1内に装入したのち、電極12に通電してアーク放電による加熱及び/又はジュール熱によってその予備加熱物(装入物)を熔融する。このように、内部に電極を備えた電気炉を用い、炉内の電極12で加熱する内部加熱方式を採用することで、炉壁を構成する耐火物の熔損を防ぐことができる。なお、内部に電極を備えた電気炉1としては、サブマージドアーク炉を用いることが好ましい。
【0090】
[スラグ分離工程]
スラグ分離工程S5では、還元熔融工程S4で得られた熔融物において、スラグを分離して合金を回収する。この工程の詳細は上述したとおりである。
【0091】
なお、スラグ分離工程後に硫化工程や粉砕工程を設けてもよい。さらに、得られた有価金属からなる合金に対して湿式製錬プロセスを行ってもよい。
【実施例】
【0092】
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0093】
(1)有価金属の製造
≪実施例1≫
廃リチウムイオン電池を原料に用いて有価金属を製造した。原料の加熱熔融に際しては、熔融炉として内部に電極を備えた電気炉を用いた。具体的に、その電気炉は、原料に対する加熱熔融により生成するメタルの層に接する領域における炉本体11の側壁11Bの総括熱伝達係数が、スラグ3の層に接する領域における炉本体11の側壁11Aの総括熱伝達係数よりも小さくなるように構成されているものであった(
図2参照)。
【0094】
[廃電池前処理工程、粉砕工程(準備工程)]
原料の廃リチウムイオン電池を無害化した後に、破砕機を用いてサイズが5mm以下になるまで粗破砕し、外装缶を構成するアルミニウム(Al)とFeを、アルミニウム選別機、磁力選別機を使用して分別、その後、振とう篩機を使用して篩い上である箔状物と、篩い下である粉状物を得た。
【0095】
[予備加熱工程]
得られた粉状物を800℃で予備加熱(酸化焙焼)してカーボンを除去し、予備加熱物(酸化焙焼物)を得た。なお、予備加熱物のカーボン含有量は1質量%未満であった。
【0096】
[還元熔融工程]
得られた予備加熱物と箔状物との合計50kgに、還元剤として黒鉛粉1.14kgを添加し、さらにフラックスとして炭酸カルシウム(CaCO3)7.52kgを添加した。還元剤の添加量は、予備加熱物中の銅(Cu)、ニッケル(Ni)、及びコバルト(Co)を還元するのに適切な量になるように調整した。また、フラックスの添加量は、酸化カルシウムとアルミナとが共晶化してスラグの融点を下げる量になるように調整した。
【0097】
次いで、原料(予備加熱物と還元剤とフラックスとの混合物)を、電気炉に装入してスラグ温度1550℃、メタル温度1350℃で加熱熔融した。還元熔融工程での操業時間は100時間とした。これにより、スラグと合金(メタル)とを得た。このとき、電気炉内において生成したスラグ層の厚さはおよそ160mmであり、メタル層の厚さはおよそ50mmであり、スラグ層の厚さはメタル層の厚さのおよそ3倍であった。
【0098】
なお、電気炉は、その炉の側壁(炉壁)が断熱煉瓦で構築されており、その内径が800mmであった。また、スラグ層に接する電気炉側壁の構造は、炉内側から厚さ110mmのMgO-C煉瓦でライニングされ、次に厚さ130mmのAl2O3―SiO2煉瓦でライニングされ、次にセラミックシート、最後に鉄製ジャケットからなる冷却手段が設けられており、総括熱伝達係数は4.8W/m2Kであった。また、メタル層に接する電気炉側壁の構造は、炉内側から厚さ110mmのMgO-C煉瓦でライニングされ、次に厚さ130mmのAl2O3―SiO2煉瓦でライニングされ、次に10mmの断熱シートが設けられており、総括熱伝達係数は2.6W/m2Kであった。電気炉は、その内部に3本の黒鉛電極を備えており、定格出力199kVA、最大電圧228Vであった。さらに、黒鉛電極の先端が熔融した合金に接触しないように電極を配置した。
【0099】
[スラグ分離工程]
還元熔融処理の後、生成したスラグを分離して合金を回収した。これを回収合金とした。なお、合金の回収は、還元熔融処理に引き続き同じ電気炉で行った。
【0100】
≪比較例1≫
比較例1では、原料の加熱熔融に際し、実施例1で用いた電気炉とは異なる電気炉を用いた。具体的には、生成するメタルの層に接する電気炉の側壁の総括熱伝達係数が、スラグの層に接する電気炉の側壁の総括熱伝達係数と同じである電気炉を用いて行った。なお、メタル温度は1350℃とした。この温度にするため、スラグ温度は1650℃となった。それ以外は実施例と同様にして有価金属を回収した。
【0101】
(2)評価
実施例1及び比較例1について、各種特性の評価を以下に示すとおりに行った。
【0102】
(成分分析)
予備加熱物、及び冷却後の合金とスラグを粉砕し、それぞれについて蛍光X線により成分分析を行った。また、各元素の含有量から、合金及びスラグのそれぞれへの分配率を算出した。
【0103】
(耐火物熔損量)
還元熔融工程での処理に用いた電気炉を構成する耐火物の熔損量を目視にて評価した。
【0104】
(3)結果
下記表1に、実施例1及び比較例1で得られた予備加熱物の組成を示す。予備加熱物は、主として、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、リチウム(Li)、鉄(Fe)及びマンガン(Mn)を含み、それ以外に微量のリン(P)とケイ素(Si)を含んでいた。なお、下記表1の組成は「質量%」での値である。
【0105】
【0106】
下記表2に、実施例1における各元素の合金とスラグへの分配率の結果を示す。表2に示されるように、有価金属である銅(Cu)、ニッケル(Ni)、及びコバルト(Co)は、高い分配率で合金(メタル)へ分配されていた。これに対して、マンガン(Mn)、リン(P)、アルミニウム(Al)、リチウム(Li)、ケイ素(Si)、及びカルシウム(Ca)は、その大部分がスラグへと分配されていた。このことより、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、及びコバルト(Co)の回収率はいずれも高く、またマンガン(Mn)及びリン(P)等の除去したい成分は、合金からほぼ除去できることが確認された。
【0107】
【0108】
下記表3に、実施例1及び比較例1における、合金中リン(P)の含有量、コバルト(Co)の合金への分配率、及び耐火物の熔損量の結果に示す。表3に示されるように、分配率については、実施例1及び比較例1のいずれも良好な結果が得られた。すなわちコバルト(Co)回収率は97%超と高く、また合金中のリン(P)量は0.001質量%未満であった。また、得られたメタル中の銅品位は共に48質量%であった。
【0109】
一方で、耐火物熔損量に関しては、比較例1で用いた電気炉では耐火物であるマグネシアの熔損が16mmであったのに対し、実施例1で用いた電気炉ではマグネシアの熔損が3mm未満と非常に小さいことが確認された。
【0110】
このように、実施例1の方法によれば、還元熔融処理を行うための電気炉の損耗を効果的に抑制しながら、効果的に有価金属を製造することができることがわかった。
【0111】
【符号の説明】
【0112】
1 電気炉
11 炉本体
11A,11B (内側)側壁
111 鉄皮
112 第1の耐火物層
113 第2の耐火物層
12 電極
13 投原管
14 スラグホール
14a (スラグホールの)下端
15 メタルホール
15a (メタルホールの)上端