IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニコンの特許一覧

<>
  • 特許-加工システム及び加工方法 図1
  • 特許-加工システム及び加工方法 図2
  • 特許-加工システム及び加工方法 図3
  • 特許-加工システム及び加工方法 図4
  • 特許-加工システム及び加工方法 図5
  • 特許-加工システム及び加工方法 図6
  • 特許-加工システム及び加工方法 図7
  • 特許-加工システム及び加工方法 図8
  • 特許-加工システム及び加工方法 図9
  • 特許-加工システム及び加工方法 図10
  • 特許-加工システム及び加工方法 図11
  • 特許-加工システム及び加工方法 図12
  • 特許-加工システム及び加工方法 図13
  • 特許-加工システム及び加工方法 図14
  • 特許-加工システム及び加工方法 図15
  • 特許-加工システム及び加工方法 図16
  • 特許-加工システム及び加工方法 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】加工システム及び加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/70 20140101AFI20231212BHJP
【FI】
B23K26/70
【請求項の数】 46
(21)【出願番号】P 2021504708
(86)(22)【出願日】2019-03-13
(86)【国際出願番号】 JP2019010259
(87)【国際公開番号】W WO2020183649
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(72)【発明者】
【氏名】川井 秀実
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-077328(JP,A)
【文献】米国特許第03982206(US,A)
【文献】特開平05-005804(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103612017(CN,A)
【文献】特開平11-010371(JP,A)
【文献】特開2005-261606(JP,A)
【文献】特開昭60-115391(JP,A)
【文献】特開平9-323182(JP,A)
【文献】特開2016-52681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に物体を収容し、光が通過可能である開口が形成されたハウジングと、
前記物体を加工する加工ビームを照射する照射装置と、
前記加工ビームのうち前記開口を介して前記ハウジングの外部へ向かうエネルギビームの一部を反射して、入射する前記エネルギビームよりも強度が低減した第1エネルギビームを射出する第1部材と、
前記第1部材を介した前記第1エネルギビームの一部を吸収して、入射する前記第1エネルギビームよりも強度が低減した第2エネルギビームを射出する第2部材と
を備える
加工システム。
【請求項2】
前記第1部材の反射率は、50%より大きく且つ100%以下の反射率である
請求項1に記載の加工システム。
【請求項3】
前記第1部材の反射率は、90%以上の反射率である
請求項1又は2に記載の加工システム。
【請求項4】
前記第1部材の反射率は、99%以上の反射率である
請求項3に記載の加工システム。
【請求項5】
前記第2部材の吸収率は、50%より大きく且つ100%以下の吸収率である
請求項1から4のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項6】
前記第2部材の吸収率は、90%以上の吸収率である
請求項1から5のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項7】
前記第2部材の吸収率は、99%以上の吸収率である
請求項6に記載の加工システム。
【請求項8】
前記第1エネルギビームの強度は、前記第1部材に入射する前記エネルギビームの強度よりも低く、
前記第2エネルギビームの強度は、前記第1エネルギビームの強度よりも低い
請求項1から7のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項9】
前記第1部材に入射する前記エネルギビームのうち、前記第1部材により反射される成分の強度は、前記第1部材を通過する成分の強度よりも大きい
請求項1から8のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項10】
前記第1部材に入射する前記エネルギビームは、前記物体に照射された前記加工ビームの前記物体による反射成分を含む
請求項1から9のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項11】
前記第1部材の少なくとも一部は、可視光の波長帯域のうち少なくとも一部の波長帯域の光に対して透明である
請求項1から10のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項12】
可視光の波長帯域のうち少なくとも一部の波長帯域の光の前記第1部材における透過率は、前記エネルギビームの波長帯域における前記第1部材の透過率よりも高い
請求項1から11のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項13】
前記第2部材の少なくとも一部は、可視光の波長帯域のうち少なくとも一部の波長帯域の光に対して透明である
請求項1から12のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項14】
前記第2部材における可視光の波長帯域のうち少なくとも一部の波長帯域の光の透過率は、前記エネルギビームの波長帯域における前記第2部材の透過率よりも高い
請求項1から13のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項15】
前記開口を介して、前記ハウジングの内部の情報を前記ハウジングの外部で取得可能であり、
前記情報は、前記第1部材及び前記第2部材を介して取得可能である
請求項1から14のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項16】
前記第1部材と前記第2部材とを用いて前記エネルギビームの強度を低減することにより、前記ハウジングの外部に放出される前記エネルギビームの単位時間当たりのエネルギ量を、IEC(International Electrotechnical Commission)60825-1に規定されたクラス1の安全基準を満たす所定量以下にする
請求項1から15のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項17】
前記第1部材は、基材と、基材に形成された反射膜とを含み、
前記反射膜は、前記エネルギビームの一部を反射する
請求項1から16のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項18】
前記反射膜は、前記基材のうち前記第2部材とは反対側に向いた面に形成されている
請求項17に記載の加工システム。
【請求項19】
前記反射膜は、前記基材のうち前記第2部材側に向いた面に形成されている
請求項17又は18に記載の加工システム。
【請求項20】
前記基材は、無機材料を含む
請求項17から19のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項21】
前記第1部材の耐熱温度は、前記第2部材の耐熱温度よりも高い
請求項1から20のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項22】
前記第2部材は、有機材料を含む
請求項1から21のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項23】
前記第2部材は、前記第1部材からの前記エネルギビームの少なくとも一部を反射する
請求項1から22のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項24】
前記第1部材は、前記第1部材に入射する前記エネルギビームの少なくとも一部を吸収し、
前記第1部材の前記エネルギビームに対する吸収係数は、前記第2部材の前記エネルギビームに対する吸収係数とは異なる
請求項1から23のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項25】
前記第1部材の前記エネルギビームに対する吸収係数は、前記第2部材の前記エネルギビームに対する吸収係数よりも小さい
請求項24に記載の加工システム。
【請求項26】
前記第1部材の配置位置における前記エネルギビームの進行方向に沿った前記第1部材のサイズは、前記第2部材の配置位置における前記エネルギビームの進行方向に沿った前記第2部材のサイズとは異なる
請求項24又は25に記載の加工システム。
【請求項27】
前記第1部材の配置位置における前記エネルギビームの進行方向に沿った前記第1部材のサイズは、前記第2部材の配置位置における前記エネルギビームの進行方向に沿った前記第2部材のサイズよりも大きい
請求項24から26のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項28】
前記第1部材内における前記エネルギビームの吸収による、単位長さ当たりの発熱量は、前記第2部材内における前記エネルギビームの吸収による、単位長さ当たりの発熱量以下である
請求項24から27のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項29】
前記第1部材に対して前記第2部材の反対側に配置される内部部材を備える
請求項1から28のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項30】
前記ハウジングの内部に存在する物質が前記第1部材に接触することを防止するカバー部材を備える
請求項1から29のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項31】
内部に物体を収容し、光が通過可能である観察部材が形成されたハウジングと、
前記物体に加工ビームを照射する照射装置と、
前記観察部材と空間を隔てた位置で前記ハウジングの内部に、前記ハウジングの内部に存在する物質の前記観察部材への接触を防止するカバー部材と
を備え、
前記観察部材は、前記加工ビームのうち前記ハウジングの外部へ向かうエネルギビームが入射する部材であって、入射した前記エネルギビームの強度を低減する加工システム。
【請求項32】
前記観察部材は、前記エネルギビームの一部を反射して、入射する前記エネルギビームよりも強度が低減した第1エネルギビームを射出する第1部材を備える
請求項31に記載の加工システム。
【請求項33】
前記観察部材は、前記第1部材を介した前記第1エネルギビームの一部を吸収して、入射する前記第1エネルギビームよりも強度が低減した第2エネルギビームを射出する第2部材を備える
請求項32に記載の加工システム。
【請求項34】
前記観察部材は、外部から、前記ハウジングの内部を観察可能な観察窓である
請求項31から33のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項35】
前記ハウジングの内部に存在する物質は、溶融した材料を含む
請求項31から34のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項36】
前記ハウジングの内部に存在する物質は、ヒュームを含む
請求項31から35のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項37】
前記カバー部材における前記エネルギビームの透過率は、前記観察部材における前記エネルギビームの透過率よりも高い
請求項31から36のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項38】
前記観察部材を介して前記ハウジングの外部に向かう、可視光に含まれる波長帯域のうちの少なくとも一部の波長帯域の光は、前記カバー部材の少なくとも一部を通過可能である
請求項31から37のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項39】
前記カバー部材の少なくとも一部は、可視光に含まれる波長帯域のうちの少なくとも一部の波長帯域の光に対して透明である
請求項31から38のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項40】
前記エネルギビームは、前記照射装置から前記開口に直接向かう前記加工ビームのビーム成分と、前記照射装置から照射され、前記物体に反射されてから前記開口を介して前記ハウジングの外部へ向かう前記加工ビームのビーム成分との少なくとも一方を含む
請求項1から30のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項41】
前記エネルギビームは、前記照射装置から前記観察部材に直接向かう前記加工ビームのビーム成分と、前記照射装置から照射され、前記物体に反射されてから前記観察部材を介して前記ハウジングの外部へ向かう前記加工ビームのビーム成分との少なくとも一方を含む
請求項31から39のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項42】
請求項1から41のいずれか一項に記載の加工システムを用いて前記物体を加工する加工方法。
【請求項43】
光が通過可能である開口が形成されたハウジングの内部に収容された物体に加工ビームを照射することと、
前記加工ビームのうち前記開口を介して前記ハウジングの外部へ向かうエネルギビームの一部を第1部材により反射することで、前記第1部材に入射するエネルギビームの強度よりも、前記第1部材を透過して第2部材へ向かう第1エネルギビームの強度を小さくすることと、
前記第2部材により前記第1部材を介した前記第1エネルギビームの一部を吸収することで、前記第2部材に入射する、前記第1部材からの第1エネルギビームの強度よりも、前記第2部材を透過する第2エネルギビームの強度を小さくすることと
を含む加工方法。
【請求項44】
光が通過可能である観察部材が配置されたハウジングの内部に収容された物体に加工ビームを照射することと、
記ハウジングの外部へ向かうエネルギビームの強度を、前記観察部材を用いて低減することと、
前記観察部材と空間を隔てた位置で前記ハウジングの内部に配置されたカバー部材を用いて、前記ハウジングの内部に存在する物質の前記観察部材への接触を防止することと
を含む加工方法。
【請求項45】
前記エネルギビームは、照射装置から前記開口に直接向かう前記加工ビームのビーム成分と、前記照射装置から照射され、前記物体に反射されてから前記開口を介して前記ハウジングの外部へ向かう前記加工ビームのビーム成分との少なくとも一方を含む
請求項43に記載の加工方法。
【請求項46】
前記エネルギビームは、照射装置から前記観察部材に直接向かう前記加工ビームのビーム成分と、前記照射装置から照射され、前記物体に反射されてから前記観察部材を介して前記ハウジングの外部へ向かう前記加工ビームのビーム成分との少なくとも一方を含む
請求項44に記載の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、エネルギビームを用いて物体を加工する加工システム及び加工方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、粉状の材料をエネルギビームで溶融した後に、溶融した材料を固化させることで物体を加工する加工装置が記載されている。このような加工装置では、エネルギビームの影響を受けることなく物体が加工される加工空間の状態を観察することが技術的課題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第5,038,014号
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によれば、内部に物体を収容し、光が通過可能である部分が形成されたハウジングと、前記物体を加工する加工ビームを照射する照射装置と、前記部分を介して前記ハウジングの外部へ向かう前記照射装置からのエネルギビームが入射する第1部材と、前記第1部材を介した前記エネルギビームが入射する第2部材とを備え、前記第1部材は、前記第1部材に入射した前記エネルギビームの強度を低減し、前記第2部材は、前記第1部材から前記第2部材に入射した前記エネルギビームの強度を低減する加工システムが提供される。
【0005】
第2の態様によれば、内部に物体を収容し、光が通過可能である部分が形成されたハウジングと、前記物体を加工する加工ビームを照射する照射装置と、前記部分を介して前記ハウジングの外部へ向かう前記照射装置からのエネルギビームが入射する第1部材と、前記第1部材を介した前記エネルギビームが入射する第2部材とを備え、前記第1部材に入射する、前記エネルギビームの強度よりも、前記第1部材を透過して前記第2部材へ向かうエネルギビームの強度は小さく、前記第2部材に入射する、前記第1部材からのエネルギビームの強度よりも、前記第2部材を透過するエネルギビームの強度は小さい加工システムが提供される。
【0006】
第3の態様によれば、内部に物体を収容し、光が通過可能である部分が形成されたハウジングと、前記物体に加工ビームを照射する照射装置と、前記部分を介して前記ハウジングの外部へ向かう前記照射装置からのエネルギビームが入射する部材であって、前記部材に入射した前記エネルギビームの強度を低減する前記部材と、前記ハウジングの内部に存在する物質の前記部材への接触を防止する接触防止装置とを備える加工システムが提供される。
【0007】
第4の態様によれば、上述した第1の態様から第3の態様のいずれか一つによって提供される加工システムを用いて前記物体を加工する加工方法が提供される。
【0008】
第5の態様によれば、光が通過可能である部分が形成されたハウジングの内部に収容された物体に加工ビームを照射することと、前記部分を介して前記ハウジングの外部へ向かう前記照射装置からのエネルギビームの強度を、第1部材を用いて低減することと、前記第1部材によって強度が低減された前記エネルギビームの強度を、第2部材を用いて低減することとを含む加工方法が提供される。
【0009】
第6の態様によれば、光が通過可能である部分が形成されたハウジングの内部に収容された物体に加工エビームを照射することと、前記部分を介して前記ハウジングの外部へ向かう、前記照射装置から第1部材に入射するエネルギビームの強度よりも、前記第1部材を透過して第2部材へ向かうエネルギビームの強度を小さくすることと、前記第2部材に入射する、前記第1部材からのエネルギビームの強度よりも、前記第2部材を透過するエネルギビームの強度を小さくすることとを含む加工方法が提供される。
【0010】
第7の態様によれば、光が通過可能である部分が形成されたハウジングの内部に収容された物体に加工ビームを照射することと、前記部分を介して前記ハウジングの外部へ向かうエネルギビームの強度を、部材を用いて低減することと、前記ハウジングの内部に存在する物質の前記部材への接触を防止することとを含む加工方法が提供される。
【0011】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態の加工システムの構造を示す断面図である。
図2図2は、第1実施形態の観察窓の構造を示す断面図である。
図3図3は、第1実施形態の観察窓を介してチャンバ空間から外部空間に伝搬するエネルギビームの様子の構造を示す断面図である。
図4図4(a)から図4(e)のそれぞれは、ワーク上のある領域において光を照射し且つ造形材料を供給した場合の様子を示す断面図である。
図5図5(a)から図5(c)のそれぞれは、3次元構造物を形成する過程を示す断面図である。
図6図6(a)及び図6(b)のそれぞれは、変形例における観察窓の構造を示す断面図である。
図7図7は、変形例における観察窓の構造を示す断面図である。
図8図8は、第2実施形態の観察窓の構造を示す断面図である。
図9図9は、第3実施形態の観察窓の構造を示す断面図である。
図10図10は、第4実施形態の観察窓の構造を示す断面図である。
図11図11は、第5実施形態の観察窓の構造を示す断面図である。
図12図12は、第6実施形態の観察窓の構造を示す断面図である。
図13図13は、第7実施形態の観察窓の構造を示す断面図である。
図14図14は、第8実施形態の加工システムのうち筐体の開口付近の構造を示す断面図である。
図15図15は、ガス供給装置を用いて物質の観察窓への付着を防止する様子を示す断面図である。
図16図16は、第9実施形態の加工システムの構造を示す断面図である。
図17図17は、開口とは異なる位置に配置される観察窓を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、加工システム及び加工方法の実施形態について説明する。以下では、物体の一例であるワークWに付加加工を行う加工システムSYSを用いて、加工システム及び加工方法の実施形態を説明する。特に、以下では、レーザ肉盛溶接法(LMD:Laser Metal Deposition)に基づく付加加工を行う加工システムSYSを用いて、加工システム及び加工方法の実施形態を説明する。レーザ肉盛溶接法に基づく付加加工は、ワークWに供給した造形材料Mを加工ビームPLで溶融することで、ワークWと一体化された又はワークWから分離可能な3次元構造物STを形成する付加加工である。尚、レーザ肉盛溶接法(LMD)は、ダイレクト・メタル・デポジション、ディレクテッド・エナジー・デポジション、レーザクラッディング、レーザ・エンジニアード・ネット・シェイピング、ダイレクト・ライト・ファブリケーション、レーザ・コンソリデーション、シェイプ・デポジション・マニュファクチャリング、ワイヤ-フィード・レーザ・デポジション、ガス・スルー・ワイヤ、レーザ・パウダー・フージョン、レーザ・メタル・フォーミング、セレクティブ・レーザ・パウダー・リメルティング、レーザ・ダイレクト・キャスティング、レーザ・パウダー・デポジション、レーザ・アディティブ・マニュファクチャリング、レーザ・ラピッド・フォーミングと称してもよい。
【0014】
また、以下の説明では、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸から定義されるXYZ直交座標系を用いて、加工システムSYSを構成する各種構成要素の位置関係について説明する。尚、以下の説明では、説明の便宜上、X軸方向及びY軸方向のそれぞれが水平方向(つまり、水平面内の所定方向)であり、Z軸方向が鉛直方向(つまり、水平面に直交する方向であり、実質的には上下方向)であるものとする。また、X軸、Y軸及びZ軸周りの回転方向(言い換えれば、傾斜方向)を、それぞれ、θX方向、θY方向及びθZ方向と称する。ここで、Z軸方向を重力方向としてもよい。また、XY平面を水平方向としてもよい。
【0015】
(1)第1実施形態の加工システムSYSa
初めに、第1実施形態の加工システムSYS(以降、第1実施形態の加工システムSYSを、“加工システムSYSa”と称する)について説明する。
【0016】
(1-1)第1実施形態の加工システムSYSaの構造
初めに、図1を参照しながら、第1実施形態の加工システムSYSaの構造について説明する。図1は、第1実施形態の加工システムSYSaの構造の一例を示す断面図である。但し、図1は、説明の便宜上、加工システムSYSaの構成要素(具体的には、後述する材料供給装置1、光源4、ガス供給装置5及び制御装置7)については、その断面を示していない。
【0017】
加工システムSYSaは、3次元構造物ST(つまり、3次元方向のいずれの方向においても大きさを持つ3次元の物体であり、立体物)を形成可能である。加工システムSYSaは、3次元構造物STを形成するための基礎となるワークW上に、3次元構造物STを形成可能である。このワークWを基材又は台座と称してもよい。加工システムSYSaは、ワークWに付加加工を行うことで、3次元構造物STを形成可能である。ワークWが後述するステージ31である場合には、加工システムSYSaは、ステージ31上に、3次元構造物STを形成可能である。ワークWがステージ31によって支持されている既存構造物である場合には、加工システムSYSaは、既存構造物上に、3次元構造物STを形成可能である。この場合、加工システムSYSaは、既存構造物と一体化された3次元構造物STを形成してもよい。既存構造物と一体化された3次元構造物STを形成する動作は、既存構造物に新たな構造物を付加する動作と等価とみなせる。尚、既存構造物は例えば欠損箇所がある要修理品であってもよい。加工システムSYSaは、要修理品の欠損箇所を埋めるように、要修理品に3次元構造物を形成してもよい。或いは、加工システムSYSaは、既存構造物と分離可能な3次元構造物STを形成してもよい。尚、図1は、ワークWが、ステージ31によって支持されている既存構造物である例を示している。また、以下でも、ワークWがステージ31によって支持されている既存構造物である例を用いて説明を進める。
【0018】
上述したように、加工システムSYSaは、レーザ肉盛溶接法により3次元構造物STを形成可能である。つまり、加工システムSYSaは、積層造形技術を用いて物体を形成する3Dプリンタであるとも言える。尚、積層造形技術は、ラピッドプロトタイピング(Rapid Prototyping)、ラピッドマニュファクチャリング(Rapid Manufacturing)、又は、アディティブマニュファクチャリング(Additive Manufacturing)とも称される。
【0019】
3次元構造物STを形成するために、加工システムSYSaは、図1に示すように、材料供給装置1と、加工装置2と、ステージ装置3と、光源4と、ガス供給装置5と、筐体6と、制御装置7とを備える。加工装置2とステージ装置3とは、筐体6の内部のチャンバ空間63IN内に収容されている。
【0020】
材料供給装置1は、加工装置2に造形材料Mを供給する。材料供給装置1は、加工装置2が3次元構造物STを形成するために単位時間あたりに必要とする分量の造形材料Mが加工装置2に供給されるように、当該必要な分量に応じた所望量の造形材料Mを供給する。
【0021】
造形材料Mは、所定強度以上の加工ビームPLの照射によって溶融可能な材料である。このような造形材料Mとして、例えば、金属性の材料及び樹脂性の材料の少なくとも一方が使用可能である。但し、造形材料Mとして、金属性の材料及び樹脂性の材料とは異なるその他の材料が用いられてもよい。造形材料Mは、粉状の又は粒状の材料である。つまり、造形材料Mは、粉粒体である。但し、造形材料Mは、粉粒体でなくてもよく、例えばワイヤ状の造形材料やガス状の造形材料が用いられてもよい。
【0022】
加工装置2は、材料供給装置1から供給される造形材料Mを用いて3次元構造物STを形成する。造形材料Mを用いて3次元構造物STを形成するために、加工装置2は、加工ヘッド21と、駆動系22とを備える。更に、加工ヘッド21は、照射光学系211と、材料ノズル(つまり造形材料Mを供給する供給系)212とを備えている。加工ヘッド21と、駆動系22とは、チャンバ空間63IN内に収容されている。
【0023】
照射光学系211は、射出部213から加工ビームPLを射出するための光学系(例えば、集光光学系)である。具体的には、照射光学系211は、加工ビームPLを発する光源4と、光ファイバやライトパイプ等の不図示の光伝送部材を介して光学的に接続されている。照射光学系211は、光伝送部材を介して光源4から伝搬してくる加工ビームPLを射出する。照射光学系211は、加工ビームPLがチャンバ空間63INを進むように加工ビームPLを射出する。照射光学系211は、照射光学系211から下方(つまり、-Z側)に向けて加工ビームPLを照射する。照射光学系211の下方には、ステージ31が配置されている。ステージ31にワークWが支持されている場合には、照射光学系211は、ワークWに向けて加工ビームPLを照射する。具体的には、照射光学系211は、加工ビームPLが照射される(典型的には、集光される)領域としてワークW上に設定される照射領域EAに加工ビームPLを照射可能である。更に、照射光学系211の状態は、制御装置7の制御下で、照射領域EAに加工ビームPLを照射する状態と、照射領域EAに加工ビームPLを照射しない状態との間で切替可能である。尚、照射光学系211から射出される加工ビームPLの方向は真下(つまり、-Z軸方向と一致)には限定されず、例えば、Z軸に対して所定の角度だけ傾いた方向であってもよい。
【0024】
材料ノズル212は、造形材料Mを供給する供給アウトレット214を有する。材料ノズル212は、供給アウトレット214から造形材料Mを供給する(例えば、噴射する、噴出する、又は、吹き付ける)。材料ノズル212は、造形材料Mの供給源である材料供給装置1と、不図示のパイプ等を介して物理的に接続されている。材料ノズル212は、パイプを介して材料供給装置1から供給される造形材料Mを供給する。材料ノズル212は、パイプを介して材料供給装置1から供給される造形材料Mを圧送してもよい。即ち、材料供給装置1からの造形材料Mと搬送用の気体(例えば、窒素やアルゴン等の不活性ガス)とを混合してパイプを介して材料ノズル212に圧送してもよい。尚、図1において材料ノズル212は、チューブ状に描かれているが、材料ノズル212の形状は、この形状に限定されない。材料ノズル212は、チャンバ空間63INに向けて造形材料Mを供給する。材料ノズル212は、材料ノズル212から下方(つまり、-Z側)に向けて造形材料Mを供給する。材料ノズル212の下方には、ステージ31が配置されている。ステージ31にワークWが搭載されている場合には、材料ノズル212は、ワークWに向けて造形材料Mを供給する。尚、材料ノズル212から供給される造形材料Mの進行方向はZ軸方向に対して所定の角度(一例として鋭角)だけ傾いた方向であるが、-Z側(つまり、真下)であってもよい。
【0025】
第1実施形態では、材料ノズル212は、照射光学系211が加工ビームPLを照射する照射領域EAに向けて造形材料Mを供給するように、照射光学系211に対して位置合わせされている。つまり、材料ノズル212が造形材料Mを供給する領域としてワークW上に設定される供給領域MAと照射領域EAとが一致する(或いは、少なくとも部分的に重複する)ように、材料ノズル212と照射光学系211とが位置合わせされている。尚、照射光学系211から射出された加工ビームPLによって形成される溶融池MPに、材料ノズル212が造形材料Mを供給するように位置合わせされていてもよい。
【0026】
駆動系22は、加工ヘッド21を移動させる。駆動系22は、例えば、チャンバ空間63IN内で加工ヘッド21を移動させる。駆動系22は、X軸、Y軸及びZ軸の少なくとも一つに沿って加工ヘッド21を移動させる。加工ヘッド21がX軸及びY軸の少なくとも一方に沿って移動すると、照射領域EAは、ワークW上をX軸及びY軸の少なくとも一方に沿って移動する。更に、駆動系22は、X軸、Y軸及びZ軸の少なくとも一つに加えて、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つの回転方向に沿って加工ヘッド21を移動させてもよい。言い換えると、ヘッド駆動系22は、X軸、Y軸及びZ軸の少なくとも一つの軸回りに加工ヘッド21を回転させてもよい。ヘッド駆動系22は、X軸、Y軸及びZ軸の少なくとも一つの軸回りに加工ヘッド21の姿勢を変えてもよい。駆動系22は、例えば、モータ等のアクチュエータを含む。尚、駆動系22は、照射光学系211と材料ノズル212とを別々に移動させてもよい。具体的には、例えば、駆動系22は、射出部213の位置、射出部213の向き、供給アウトレット214の位置及び供給アウトレット214の向きの少なくとも一つを調整可能であってもよい。この場合、照射光学系211が加工ビームPLを照射する照射領域EAと、材料ノズル212が造形材料Mを供給する供給領域MAとが別々に制御可能となる。
【0027】
ステージ装置3は、ステージ31を備えている。ステージ31は、チャンバ空間63INに収容される。ステージ31は、ワークWを支持可能である。尚、ここで言う「ステージ31がワークWを支持する」状態は、ワークWがステージ31によって直接的に又は間接的に支えられている状態を意味していてもよい。ステージ31は、ワークWを保持可能であってもよい。つまり、ステージ31は、ワークWを保持することでワークWを支持してもよい。或いは、ステージ31は、ワークWを保持可能でなくてもよい。この場合、ワークWは、ステージ31に載置されていてもよい。つまり、ステージ31は、ステージ31に載置されたワークWを支持してもよい。このとき、ワークWは、クランプレスでステージ31に載置されていてもよい。従って、本実施形態における「ステージ31がワークWを支持する」状態は、ステージ31がワークWを保持する状態及びワークWがステージ31に載置される状態をも含んでいてもよい。ステージ31がチャンバ空間63INに収容されるため、ステージ31が支持するワークWもまた、チャンバ空間63INに収容される。更に、ステージ31は、ワークWが保持されている場合には、保持したワークWをリリース可能である。上述した照射光学系211は、ステージ31がワークWを支持している期間の少なくとも一部において加工ビームPLを照射する。更に、上述した材料ノズル212は、ステージ31がワークWを支持している期間の少なくとも一部において造形材料Mを供給する。尚、材料ノズル212が供給した造形材料Mの一部は、ワークWの表面からワークWの外部へと(例えば、ステージ31の周囲へと)散乱する又はこぼれ落ちる可能性がある。このため、加工システムSYSaは、ステージ31の周囲に、散乱した又はこぼれ落ちた造形材料Mを回収する回収装置を備えていてもよい。尚、ステージ31は、ワークWを保持するために、機械的なチャックや真空吸着チャック等を備えていてもよい。
【0028】
ステージ31は、図1では不図示のステージ駆動系によって移動可能であってもよい。この場合、ステージ駆動系は、例えば、チャンバ空間63IN内でステージ31を移動させてもよい。ステージ駆動系は、X軸、Y軸及びZ軸の少なくとも一つに沿ってステージ31を移動させてもよい。ステージ31がX軸及びY軸の少なくとも一方に沿って移動すると、照射領域EAは、ワークW上をX軸及びY軸の少なくとも一方に沿って移動する。更に、ステージ駆動系は、X軸、Y軸及びZ軸の少なくとも一つに加えて、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つの回転方向に沿ってステージ31を移動させてもよい。ステージ駆動系31は、例えば、モータ等のアクチュエータを含む。
【0029】
光源4は、例えば、赤外光及び紫外光のうちの少なくとも一つを、加工ビームPLとして射出する。但し、加工ビームPLとして、その他の波長の光、例えば可視域の波長の光が用いられてもよい。加工ビームPLは、レーザ光である。この場合、光源4は、半導体レーザ等のレーザ光源を含んでいてもよい。レーザ光源の一例としては、レーザダイオード(LD:Laser Diode)、ファイバ・レーザ、COレーザ、YAGレーザ及びエキシマレーザ等の少なくとも一つがあげられる。但し、加工ビームPLはレーザ光でなくてもよいし、光源4は任意の光源(例えば、LED(Light Emitting Diode)及び放電ランプ等の少なくとも一つ)を含んでいてもよい。
【0030】
ガス供給装置5は、チャンバ空間63INをパージするためのパージガスの供給源である。パージガスは、不活性ガスを含む。不活性ガスの一例として、窒素ガス又はアルゴンガスがあげられる。ガス供給装置5は、チャンバ空間63INにパージガスを供給する。その結果、チャンバ空間63INは、パージガスによってパージされた空間となる。尚、ガス供給装置5は、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスが格納されたボンベであってもよい。不活性ガスが窒素ガスである場合には、ガス供給装置5は、大気を原料として窒素ガスを発生する窒素ガス発生装置であってもよい。
【0031】
筐体6は、筐体6の内部空間であるチャンバ空間63INに少なくとも加工装置2を収容する収容装置である。筐体6は、チャンバ空間63INを規定する隔壁部材61を含む。隔壁部材61は、チャンバ空間63INと、筐体6の外部空間64OUTとを隔てる部材である。尚、外部空間64OUTは、加工システムSYSaのオペレータが立ち入り可能な空間であってもよい。隔壁部材61は、その内壁611を介してチャンバ空間63INに面し、その外壁612を介して外部空間64OUTに面する。この場合、隔壁部材61によって囲まれた空間(より具体的には、隔壁部材61の内壁611によって囲まれた空間)が、チャンバ空間63INとなる。尚、隔壁部材61には、開閉可能な扉が設けられていてもよい。この扉は、ワークWをステージ31に載置する際、およびステージ31からワークW及び/又は造形物(或いは、3次元構造物ST)を取り出す際に開かれ、且つ造形中には閉じられていてもよい。尚、筐体6をハウジングと称してもよい。ハウジングは箱形に限定されず、他の形状をしていてもよい。
【0032】
隔壁部材61には、開口62が形成されている。開口62は、内壁611から外壁612に向けて隔壁部材61を貫通する貫通孔である。従って、開口62を介して、チャンバ空間63INと外部空間64OUTが接続可能である。なお、隔壁部材61に開閉可能な扉が設けられている場合、開口62は当該開閉可能な扉に設けられてもよい。開口62が貫通孔であるがゆえに、開口62は、光が通過可能な部分となる。つまり、開口62を介して、チャンバ空間63INから外部空間64OUTへと又は外部空間64OUTから内部空間63INへと光が通過可能である。但し、第1実施形態では、開口62には、観察窓65が配置されている。つまり、チャンバ空間63INと外部空間64OUTとの間には、観察窓65が配置される。このため、チャンバ空間63INと外部空間64OUTとは、観察窓65によって隔てられる。その結果、材料ノズル212からチャンバ空間63INに供給された造形材料Mが、開口62を介してチャンバ空間63INから外部空間64OUTに漏出することはない。更に、ガス供給装置5からチャンバ空間63INに供給されたパージガスが、開口62を介してチャンバ空間63INから外部空間64OUTに漏出することはない。この場合、観察窓65は、造形材料M及び/又はパージガスの漏出を防止する装置として機能してもよい。観察窓65は、隔壁部材61の少なくとも一部として機能してもよい。
【0033】
尚、造形材料M及び/又はパージガスの漏出を適切に防止するために、観察窓65と隔壁部材61との間に造形材料M及び/又はパージガスが漏出する隙間が形成されないように、観察窓65が隔壁部材61(特に、開口62を規定する壁部分)に対して密着していてもよい。観察窓65と隔壁部材61(特に、開口62を規定する壁部分)との間の隙間にシール部材が形成されていてもよい。
【0034】
観察窓65の少なくとも一部は、可視光の波長帯域のうちの少なくとも一部である観察波長帯域の光に対して透明である。ここで、「観察窓65の少なくとも一部が観察波長帯域の光に対して透明である」ことは、「観察波長帯域の光が、観察窓65の少なくとも一部を透過可能である(つまり、通過可能である)」ことを意味していてもよい。このため、観察波長帯域の光は、観察窓65を介して、チャンバ空間63INから外部空間64OUTに伝搬可能(つまり、通過可能)である。同様に、観察波長帯域の光は、観察窓65を介して、外部空間64OUTからチャンバ空間63INに伝搬可能である。その結果、外部空間64OUTにいる観察者(例えば、加工システムSYSaのオペレータ)は、観察窓65の少なくとも一部を介して、チャンバ空間63INの状態を外部空間64OUTにおいて観察可能である。ここで、チャンバ空間63INの状態を観察することは、チャンバ空間63INに収容されている物体(例えば、加工装置2、ステージ装置3、ワークW及び3次元構造物STの少なくとも一つ)の状態を観察することを含む。外部空間64OUTにいる観察者は、観察窓65の少なくとも一部を透過した観察波長帯域の光を介して、チャンバ空間63INの状態を外部空間64OUTにおいて観察可能である。外部空間64OUTにいる観察者は、開口62を介して、チャンバ空間63INの状態を外部空間64OUTから観察可能である。外部空間64OUTにいる観察者は、観察窓65の少なくとも一部を透過した観察波長帯域の光を介して、チャンバ空間63IN内の情報(例えば、チャンバ空間63INの状態に関する情報)を外部空間64OUTにおいて取得可能である。ここでチャンバ空間63IN内の情報を取得することは、チャンバ空間63INに収容されている加工装置2、ステージ装置3、ワークW、3次元構造物STの情報を取得することを含む。観察窓65の少なくとも一部を透過した観察波長帯域の光を受光可能な受光装置(例えば観察波長帯域の光の像を撮像可能な撮像装置)等を加工システムSYSaが備えている場合には、制御装置7は、受光装置の受光結果を解析することで、チャンバ空間63IN内の情報を外部空間64OUTにおいて取得可能である。この場合、開口62は、主として、外部空間64OUTからチャンバ空間63INの状態を観察する目的で形成されているとも言える。観察窓65は、外部空間64OUTからチャンバ空間63INの状態を観察するための観察装置として機能してもよい。
【0035】
上述したように、照射光学系211は、ワークWに向けて加工ビームPLを射出する。従って、ワークWと観察窓65との位置関係にもよるが、照射光学系211が射出した加工ビームPLが照射光学系211から観察窓65に向かって直接的に伝搬してくる可能性は相対的に小さい。一方で、ワークWに照射された加工ビームPLは、ワークWによって反射する可能性がある。その結果、図3に示すように、ワークWが反射した加工ビームPL(つまり、ワークWからの加工ビームPL)が、観察窓65に向かって伝搬してくる可能性がある。或いは、ワークWに限らず、チャンバ空間63IN内の任意の物体に加工ビームPL(例えば、照射光学系211からの及び/又はワークWからの加工ビームPL)が照射された場合には、当該任意の物体が反射した加工ビームPLが、観察窓65に向かって伝搬してくる可能性がある。例えば、ステージ31に加工ビームPLが照射される場合には、ステージ31が反射した加工ビームPL(つまり、ステージ31からの加工ビームPL)が、観察窓65に向かって伝搬してくる可能性がある。例えば、造形中の3次元構造物STに加工ビームPLが照射される場合には、造形中の3次元構造物STが反射した加工ビームPL(つまり、造形中の3次元構造物STからの加工ビームPL)が、観察窓65に向かって伝搬してくる可能性がある。以下、照射光学系211から直接観察窓65に向かって伝搬してくる加工ビームPL(つまり、加工ビームPLのうち、照射光学系211から直接観察窓65に向かって伝搬してくるビーム成分)と、ワークW又はチャンバ空間63IN内の任意の物体に反射されてから観察窓65に向かって伝搬してくる加工ビームPL(つまり、加工ビームPLのうち、ワークW又はチャンバ空間63IN内の任意の物体に反射されてから観察窓65に向かって伝搬してくるビーム成分)の両方ともを、“エネルギビームEL”と称する。このような状況でワークWからのエネルギビームEL(或いは、任意の物体からのエネルギビームEL、以下同じ)の強度が低減することなく観察窓65を通過すると、許容量を超えた強度を有するエネルギビームELが、観察窓65を介してチャンバ空間63INから外部空間64OUTに射出されてしまう可能性がある。例えば、造形材料Mを溶融させるほどに高い強度を有するエネルギビームELが、外部空間64OUTに射出(言い換えれば、放出)されてしまう可能性がある。
【0036】
そこで、第1実施形態では、観察窓65は、エネルギビームELを減衰する。つまり、観察窓65は、観察窓65を介して外部空間64OUTへ向かうエネルギビームELを減衰する。観察窓65は、開口62を介して外部空間64OUTへ向かうエネルギビームELを減衰する。第1実施形態では、エネルギビームELの減衰は、エネルギビームELの強度の低減を意味する。この場合、観察窓65は、チャンバ空間63INから観察窓65に入射した後に観察窓65を透過して外部空間64OUTに向かうエネルギビームELの強度を低減する。具体的には、観察窓65は、チャンバ空間63INから観察窓65に入射するエネルギビームELの強度よりも、エネルギビームELを透過して外部空間64OUTに向かうエネルギビームELの強度を小さくする(つまり、低減する)。例えば、観察窓65は、ワークWからのエネルギビームELの強度を低減して、許容量を超えた強度を有するエネルギビームELがチャンバ空間63INから外部空間64OUTに射出されることを防止する。尚、許容量は、外部空間64OUTにいる観察者に対してエネルギビームELが及ぼす影響に基づいて設定されてもよい。許容量は、外部空間64OUTにいる観察者の安全を確保することができるように設定されてもよい。例えば、許容量は、外部空間64OUTに射出されるエネルギビームELの単位時間当たりのエネルギ量を所定量以下にするように設定されてもよい。例えば、許容量は、IEC(International Electrotechnical Commission)60825-1に規定されたクラス1の安全基準が満たされるように設定されてもよい。例えば、許容量は、外部空間64OUTに射出されるエネルギビームELの単位時間当たりのエネルギ量を、IEC60825-1に規定されたクラス1の安全基準を満たす所定量以下にするように設定されてもよい。
【0037】
具体的には、観察窓65は、観察窓65を介して、許容量未満の強度を有するエネルギビームELがチャンバ空間63INから外部空間64OUTに射出されるように、ワークWからのエネルギビームELの強度を低減してもよい。この場合、例えば、観察窓65は、観察窓65を介して外部空間64OUTに射出されるエネルギビームELの強度が、チャンバ空間63INから観察窓65に向けて射出されるエネルギビームELの強度よりも小さくなり且つ許容量よりも小さくなるように、ワークWからのエネルギビームELの強度を低減してもよい。或いは、観察窓65は、そもそもエネルギビームELがチャンバ空間63INから外部空間64OUTに射出されなくなるように、ワークWからのエネルギビームELの強度を低減してもよい。つまり、観察窓65は、エネルギビームELを遮光する遮光装置として機能してもよい。但し、観察窓65がエネルギビームELを遮光する遮光装置として機能する場合であっても、観察窓65は、観察波長帯域の光が観察窓65の少なくとも一部を透過可能である(つまり、観察窓65の少なくとも一部が観察波長帯域の光に対して透明である)という特性を有している。
【0038】
観察波長帯域の光を透過可能な観察窓65がエネルギビームELの強度を低減する場合、典型的には、観察窓65におけるエネルギビームELの透過率は、観察窓65における観察波長帯域の光の透過率と異なっていてもよい。より具体的には、観察窓65におけるエネルギビームELの透過率は、観察窓65における観察波長帯域の光の透過率よりも低くてもよい。つまり、観察窓65における観察波長帯域の光の透過率は、観察窓65におけるエネルギビームELの透過率よりも高くてもよい。この場合、観察窓65におけるエネルギビームELの透過率が観察窓65における観察波長帯域の光の透過率と同一である場合と比較して、観察窓65は、エネルギビームELの強度を低減するという特性、及び、観察波長帯域の光を透過させるという特性の双方を両立しやすくなる。
【0039】
エネルギビームELの波長帯域は、観察波長帯域と重複していなくてもよい。この場合、エネルギビームELの波長帯域が観察波長帯域と少なくとも部分的に重複している場合と比較して、観察窓65は、エネルギビームELの強度を低減するという特性、及び、観察波長帯域の光を透過させるという特性の双方を両立しやすくなる。但し、エネルギビームELの波長帯域が観察波長帯域と少なくとも部分的に重複していてもよい。
【0040】
第1実施形態では、観察窓65は、ワークWからのエネルギビームELを反射し且つ吸収することで、ワークWからのエネルギビームELの強度を低減する。つまり、観察窓65は、エネルギビームELの反射という光学現象及びエネルギビームELの吸収という光学現象の双方を利用して、ワークWからのエネルギビームELの強度を低減する。以下、図2を参照しながら、第1実施形態の観察窓65について更に説明する。図2は、第1実施形態の観察窓65の構造の一例を示す断面図である。
【0041】
図2に示すように、観察窓65は、反射部材651と、吸収部材652とを備えている。観察窓65の少なくとも一部が観察波長帯域の光に対して透明であるため、反射部材651及び吸収部材652のそれぞれの少なくとも一部もまた、観察波長帯域の光に対して透明である。観察波長帯域の光が観察窓65の少なくとも一部を透過可能であるため、観察波長帯域の光は、反射部材651及び吸収部材652のそれぞれの少なくとも一部もまた透過可能である。観察波長帯域の光が観察窓65を介して、チャンバ空間63INから外部空間64OUTに及び外部空間64OUTからチャンバ空間63INに伝搬可能であるため、観察波長帯域の光は、反射部材651及び吸収部材652のそれぞれの少なくとも一部を介して、チャンバ空間63INから外部空間64OUTに及び外部空間64OUTからチャンバ空間63INに伝搬可能である。このため、外部空間64OUTにいる観察者は、反射部材651及び吸収部材652のそれぞれの少なくとも一部を介して、チャンバ空間63INの状態を外部空間64OUTにおいて観察可能である。外部空間64OUTにいる観察者は、反射部材651及び吸収部材652のそれぞれの少なくとも一部を透過した観察波長帯域の光を介して、チャンバ空間63INの状態を外部空間64OUTにおいて観察可能である。外部空間64OUTにいる観察者は、反射部材651及び吸収部材652のそれぞれの少なくとも一部を透過した観察波長帯域の光を介して、チャンバ空間63IN内の情報(例えば、チャンバ空間63INの状態に関する情報)を外部空間64OUTにおいて取得可能である。反射部材651及び吸収部材652のそれぞれの少なくとも一部を透過した観察波長帯域の光を受光可能な受光装置(例えば観察波長帯域の光の像を撮像可能な撮像装置)等を加工システムSYSaが備えている場合には、制御装置7は、受光装置の受光結果を解析することで、チャンバ空間63IN内の情報を外部空間64OUTにおいて取得可能である。
【0042】
上述したように観察窓65における観察波長帯域の光の透過率が観察窓65におけるエネルギビームELの透過率よりも高い場合には、反射部材651における観察波長帯域の光の透過率は、反射部材651におけるエネルギビームELの透過率よりも高くてもよい。上述したように観察窓65における観察波長帯域の光の透過率が観察窓65におけるエネルギビームELの透過率よりも高い場合には、吸収部材652における観察波長帯域の光の透過率は、吸収部材652におけるエネルギビームELの透過率よりも高くてもよい。
【0043】
反射部材651は、吸収部材652と比較して、チャンバ空間63INにより近い位置に配置される。反射部材651は、チャンバ空間63INに面していてもよい。吸収部材652は、反射部材651と比較して、チャンバ空間63INからより遠い位置に配置される。吸収部材652とチャンバ空間63INとの間には、反射部材651が配置される。反射部材651は、吸収部材652と比較して、外部空間64OUTからより遠い位置に配置される。吸収部材652は、反射部材651と比較して、外部空間64OUTにより近い位置に配置される。吸収部材652は、外部空間64OUTに面していてもよい。反射部材651と外部空間64OUTとの間には、吸収部材652が配置される。反射部材651と吸収部材652とチャンバ空間63INと外部空間64OUTがこのような位置関係を有しているため、チャンバ空間63INから観察窓65に入射するエネルギビームELは、まずは、反射部材651に入射する。つまり、開口62を介して外部空間64OUTへと向かうエネルギビームELは、まずは、反射部材651に入射する。その後、反射部材651を透過したエネルギビームEL(つまり、反射部材651によって反射されなかったエネルギビームEL)が、吸収部材652に入射する。その後、吸収部材652を透過したエネルギビームELが、外部空間64OUTに射出される。反射部材651のチャンバ空間63INに面する面は内壁611より外部空間64OUT側に配置されてもよい。この場合、ワークW(或いは、チャンバ空間63IN内の任意の物体)が反射部材651に接触(言い換えれば、衝突)して反射部材651が破損されることが防止される。吸収部材652の外部空間64OUTに面する面は外壁612よりチャンバ空間63IN側に配置されてもよい。この場合、任意の物体が吸収部材652に接触(言い換えれば、衝突)して吸収部材652が破損されることが防止される。
【0044】
反射部材651と吸収部材652との間には、間隙(つまり、空間)が確保されていてもよい。つまり、反射部材651と吸収部材652とは、互いに離れた位置に配置されていてもよい。反射部材651と吸収部材652とは、チャンバ空間63INから外部空間64に向かう方向に沿って互いに離れた位置に配置されていてもよい。この場合、反射部材651を透過したエネルギビームELは、反射部材651と吸収部材652との間の間隙を介して吸収部材652に入射する。或いは、反射部材651と吸収部材652との間には、間隙が確保されていなくてもよい。つまり、反射部材651と吸収部材652とは互いに接触するように配置されていてもよい。反射部材651と吸収部材652とは、一体化されていてもよい。この場合、反射部材651を透過したエネルギビームELは、反射部材651と吸収部材652との間の間隙を介することなく吸収部材652に入射する。
【0045】
反射部材651は、チャンバ空間63INから反射部材651に入射してくるエネルギビームELの少なくとも一部を反射する。反射部材651は、チャンバ空間63INから反射部材651に入射してくるエネルギビームELの少なくとも一部を反射することで、エネルギビームELの強度を低減する。つまり、反射部材651は、エネルギビームELの反射という光学現象を利用して、エネルギビームELの強度を低減する。この場合、反射部材651は、チャンバ空間63INから反射部材651に入射した後に反射部材651を透過して吸収部材652に向かうエネルギビームELの強度を低減する。具体的には、反射部材651は、チャンバ空間63INから反射部材651に入射するエネルギビームELの強度よりも、反射部材651を透過して吸収部材652に向かうエネルギビームELの強度を小さくする(つまり、低減する)。
【0046】
反射部材651は、反射部材651におけるエネルギビームELの反射率が所定反射率以上になるという特性を有している。所定反射率は、例えば、50%より大きく且つ100%以下任意の反射率であってもよい。この場合、反射部材651は、反射部材651に入射したエネルギビームELのうち反射部材651が反射した光成分の強度が、反射部材651に入射したエネルギビームELのうち反射部材651を透過した光成分の強度よりも大きくなるように、エネルギビームELを反射すると言える。所定反射率は、例えば、90%以上の任意の反射率であってもよい。この場合、所定反射率が90%未満の任意の反射率である場合と比較して、反射部材651によるエネルギビームELの強度の低減効率が向上する。所定反射率は、例えば、99%以上の任意の反射率であってもよい。この場合、所定反射率が99%未満の任意の反射率である場合と比較して、反射部材651によるエネルギビームELの強度の低減効率が向上する。
【0047】
反射部材651は、基材6511と、反射膜6512とを備えている。基材6511は、例えば無機材料から構成される部材であるが、その他の材料(例えば、有機材料)から構成される部材であってもよい。無機材料の一例として、ガラス、バイコール、石英ガラス、ネオセラム、及び、テンパックスの少なくとも一つがあげられる。反射膜6512は、単一の反射層を含む反射膜であってもよいし、複数の反射層が積層された反射膜であってもよい。複数の反射層が積層された反射膜の一例として、二酸化ケイ素及び五酸化タンタルを含む積層膜があげられる。反射膜6512は、基材6511のうちチャンバ空間63IN側を向いた面に形成されている。反射膜6512は、基材6511のうちチャンバ空間63INに面する面に形成されている。このため、チャンバ空間63INから反射部材651に入射するエネルギビームELは、まずは、反射膜6512に入射する。その後、反射膜6512を透過したエネルギビームEL(つまり、反射膜6512によって反射されなかったエネルギビームEL)が、吸収部材652に入射する。
【0048】
吸収部材652は、反射部材651から吸収部材652に入射してくるエネルギビームELの少なくとも一部を吸収する。吸収部材652は、反射部材651から吸収部材652に入射してくるエネルギビームELの少なくとも一部を吸収することで、エネルギビームELの強度を低減する。つまり、吸収部材652は、エネルギビームELの吸収という光学現象を利用して、エネルギビームELの強度を低減する。この場合、吸収部材652は、反射部材651から吸収部材652に入射した後に吸収部材652を透過して外部空間64OUTに向かうエネルギビームELの強度を低減する。具体的には、吸収部材652は、反射部材651から吸収部材652に入射するエネルギビームELの強度よりも、吸収部材652を透過して外部空間64OUTに向かうエネルギビームELの強度を小さくする(つまり、低減する)。
【0049】
吸収部材652は、吸収部材652によるエネルギビームELの吸収率が所定吸収率以上になるという特性を有している。所定吸収率は、例えば、50%から100%の間の任意の吸収率であってもよい。所定吸収率は、例えば、90%以上の任意の吸収率であってもよい。所定吸収率は、例えば、99%以上の任意の吸収率であってもよい。
【0050】
尚、ここで言う「吸収率」は、吸収部材652に入射したエネルギビームELのエネルギ量に対して吸収部材652が吸収したエネルギビームELのエネルギ量の割合を示すパラメータである。このような吸収率は、吸収部材652内におけるエネルギビームELの経路の長さと、吸収部材652の吸収係数(例えば、エネルギビームELの単位経路長当たりの、入射したエネルギビームELのエネルギ量に対して吸収されるエネルギビームELのエネルギ量の割合)とに応じて定まる。吸収部材652内におけるエネルギビームELの経路の長さは、吸収部材652内におけるエネルギビームELの進行方向(つまり、吸収部材652の配置位置におけるエネルギビームELの進行方向)に沿った吸収部材652のサイズ(典型的には、吸収部材652の厚み)と透過である。吸収部材652の吸収係数は、吸収部材652がエネルギビームELを吸収しやすくなるほど大きくなるパラメータである。典型的には、吸収部材652の吸収係数は、吸収部材652内をエネルギビームELが単位長だけ伝搬している間における吸収部材652によるエネルギビームELの吸収量が多くなるほど大きくなるパラメータである。
【0051】
基材6511の耐熱温度は、反射膜6512の形成温度よりも高い。他方、吸収部材652の耐熱温度は、反射膜6512の形成温度よりも高くなくてもよい。このため、吸収部材652の耐熱温度は、反射部材651の耐熱温度よりも低くてもよい。吸収部材652には、反射部材651を透過したエネルギビームEL(つまり、反射部材651によって強度が低減されたエネルギビームEL)が入射する。このため、吸収部材652を透過するエネルギビームELの強度は、反射部材651を透過するエネルギビームELの強度よりも低い。従って、エネルギビームELから吸収部材652に対して伝達される熱量もまた、エネルギビームELから反射部材651に対して伝達される熱量よりも低くなる。このため、吸収部材652の耐熱温度(例えば、融点)は、反射部材651の耐熱温度よりも低くてもよい。例えば、上述したように反射部材651がガラス等の無機材料から構成される部材である場合には、吸収部材652は、一般的には無機材料よりも耐熱温度が低い有機材料から構成される部材であってもよい。有機材料の一例として、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)、アクリル樹脂、ポリカーボネート、及び、ポリオレフィン系樹脂の少なくとも一つがあげられる。但し、吸収部材652の耐熱温度は、反射部材651の耐熱温度よりも高くてもよいし、同じであってもよい。基材6511を構成する材料の一例として前述したバイコール、石英ガラス、ネオセラム、及び、テンパックスの耐熱温度は、それぞれ、900℃、900℃、700℃、450℃である。吸収部材652を構成する材料の一例として前述したPMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)、アクリル樹脂、ポリカーボネート、及び、ポリオレフィン系樹脂の耐熱温度は、それぞれ、100℃、91~110℃、130℃、90~160℃である。反射膜6512の一例として、前述した二酸化ケイ素及び五酸化タンタルを含む積層膜の形成温度は例えば200~400℃である。
【0052】
なお、反射部材651の基材6511及び/又は吸収部材652の内部にアルミニウムや銅などの熱伝導率が高い材料からなる部材を網状や格子状にして配置してもよい。当該熱伝導率が高い材料からなる部材は、開口62を規定する壁部分に熱的に接続されるように配置されてもよい。この場合、エネルギビームELの吸収によって生じた熱が、当該熱伝導率が高い材料からなる部材によって、反射部材651の基材6511及び/又は吸収部材652の外へ伝導して排出やすくなる。
【0053】
続いて、図3を参照しながら、観察窓65を介してチャンバ空間63INから外部空間64OUTに伝搬するエネルギビームELの様子(つまり、観察窓65によるエネルギビームELの減衰の様子)について説明する。図3は、第1実施形態の観察窓65を介してチャンバ空間63INから外部空間64OUTに伝搬するエネルギビームELの様子を示す断面図である。
【0054】
図3に示すように、観察窓65には、ワークW(或いは、チャンバ空間63IN内の任意の物体)からのエネルギビームELが入射する。以降、観察窓65に入射するエネルギビームELを、“エネルギビームEL1”と称する。この場合、反射部材651(特に、反射膜6511)は、エネルギビームEL1のうちの少なくとも一部の光成分(具体的には、反射部材651の反射率に応じて定まる少なくとも一部の光成分)を反射する。図3では、反射部材651が反射したエネルギビームEL1を、“エネルギビームEL1r”と称する。一方で、エネルギビームEL1のうち反射部材651によって反射されなかった残りの光成分は、反射部材651を透過する。尚、エネルギビームEL1が反射部材651を透過する過程で、エネルギビームEL1の少なくとも一部が反射部材651(特に、基材6511)によって吸収されてもよいし、吸収されなくてもよい。図3では、反射部材651を透過したエネルギビームEL1を、“エネルギビームEL2”と称する。その結果、エネルギビームEL2の強度は、エネルギビームEL1の強度に対して反射部材651の反射率に応じた低減率を乗じた値にまで小さくなる。例えば、反射部材651の反射率が99.9%である場合には、エネルギビームEL2の強度は、エネルギビームEL1の強度に対して0.1%(=100%-反射部材651の反射率=100%-99.9%)を乗じた値にまで小さくなる。
【0055】
その後、吸収部材652には、反射部材651を通過したエネルギビームEL2が入射する。この場合、吸収部材652は、エネルギビームEL2のうちの少なくとも一部の光成分(具体的には、吸収部材652の吸収率に応じて定まる少なくとも一部の光成分)を吸収する。一方で、エネルギビームEL2のうち吸収部材652によって吸収されなかった残りの光成分は、吸収部材652を透過する。図3では、吸収部材652を透過したエネルギビームEL2を、“エネルギビームEL3”と称する。その結果、エネルギビームEL3の強度は、エネルギビームEL2の強度に対して吸収部材652の吸収率に応じた低減率を乗じた値にまで小さくなる。例えば、吸収部材652の吸収率が99.9%である場合には、エネルギビームEL3の強度は、エネルギビームEL2の強度に対して0.1%(=100%-吸収部材652の吸収率=100%-99.9%)を乗じた値にまで小さくなる。
【0056】
吸収部材652を透過したエネルギビームEL3は、外部空間64OUTに射出される(つまり、放出される)。その結果、観察窓65を介して外部空間64OUTに射出されたエネルギビームEL3の強度は、観察窓65に入射するエネルギビームEL1の強度に対して反射部材651の反射率に応じた低減率及び吸収部材652の吸収率に応じた低減率を乗じた値にまで小さくなる。例えば、反射部材651の反射率が99.9%であり且つ吸収部材652の吸収率が99%である場合には、エネルギビームEL3の強度は、エネルギビームEL1の強度に対して0.01%(=反射部材651の低減率×吸収部材652の低減率=0.1%×0.1%)を乗じた値にまで小さくなる。
【0057】
上述したように観察窓65は、エネルギビームEL3の強度が許容量未満になるように、エネルギビームEL1を減衰する。このため、反射部材651の特性(例えば、反射率)及び吸収部材652の特性(例えば、吸収率)のそれぞれは、エネルギビームEL3の強度が許容量未満になるという条件を満たすことが可能な適切な値に設定される。
【0058】
再び図1において、制御装置7は、加工システムSYSaの動作を制御する。制御装置7は、例えば、CPU(Central Processing Unit)(或いは、CPUに加えて又は代えてGPU(Graphics Processing Unit))と、メモリとを含んでいてもよい。制御装置7は、CPUがコンピュータプログラムを実行することで、加工システムSYSaの動作を制御する装置として機能する。このコンピュータプログラムは、制御装置7が行うべき後述する動作を制御装置7(例えば、CPU)に行わせる(つまり、実行させる)ためのコンピュータプログラムである。つまり、このコンピュータプログラムは、加工システムSYSaに後述する動作を行わせるように制御装置7を機能させるためのコンピュータプログラムである。CPUが実行するコンピュータプログラムは、制御装置7が備えるメモリ(つまり、記録媒体)に記録されていてもよいし、制御装置7に内蔵された又は制御装置7に外付け可能な任意の記憶媒体(例えば、ハードディスクや半導体メモリ)に記録されていてもよい。或いは、CPUは、実行するべきコンピュータプログラムを、ネットワークインタフェースを介して、制御装置7の外部の装置からダウンロードしてもよい。
【0059】
例えば、制御装置7は、照射光学系211による加工ビームPLの射出態様を制御してもよい。射出態様は、例えば、加工ビームPLの強度及び加工ビームPLの射出タイミングの少なくとも一方を含んでいてもよい。加工ビームPLがパルス光である場合には、射出態様は、例えば、パルス光の発光時間の長さ、パルス光の発光時間と消光時間との比(いわゆる、デューティ比)を含んでいてもよい。また、射出態様は、例えば、パルス光の発光時間の長さそのものや、発光周期そのものを含んでいてもよい。更に、制御装置7は、駆動系22による加工ヘッド21の移動態様を制御してもよい。移動態様は、例えば、移動量、移動速度、移動方向及び移動タイミングの少なくとも一つを含んでいてもよい。更に、制御装置7は、材料ノズル212による造形材料Mの供給態様を制御してもよい。供給態様は、例えば、供給量(特に、単位時間当たりの供給量)及び供給タイミングの少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0060】
制御装置7は、加工システムSYS1の内部に設けられていなくてもよく、例えば、加工システムSYS1外にサーバ等として設けられていてもよい。この場合、制御装置7と加工システムSYS1とは、有線及び/又は無線のネットワーク(或いは、データバス及び/又は通信回線)で接続されていてもよい。有線のネットワークとして、例えばIEEE1394、RS-232x、RS-422、RS-423、RS-485及びUSBの少なくとも一つに代表されるシリアルバス方式のインタフェースを用いるネットワークが用いられてもよい。有線のネットワークとして、パラレルバス方式のインタフェースを用いるネットワークが用いられてもよい。有線のネットワークとして、10BASE-T、100BASE-TX及び1000BASE-Tの少なくとも一つに代表されるイーサネット(登録商標)に準拠したインタフェースを用いるネットワークが用いられてもよい。無線のネットワークとして、電波を用いたネットワークが用いられてもよい。電波を用いたネットワークの一例として、IEEE802.1xに準拠したネットワーク(例えば、無線LAN及びBluetooth(登録商標)の少なくとも一方)があげられる。無線のネットワークとして、赤外線を用いたネットワークが用いられてもよい。無線のネットワークとして、光通信を用いたネットワークが用いられてもよい。この場合、制御装置7と加工システムSYS1とはネットワークを介して各種の情報の送受信が可能となるように構成されていてもよい。また、制御装置7は、ネットワークを介して加工システムSYS1にコマンドや制御パラメータ等の情報を送信可能であってもよい。加工システムSYS1は、制御装置7からのコマンドや制御パラメータ等の情報を、上記ネットワークを介して受信する受信装置を備えていてもよい。
【0061】
尚、制御装置7は、一部が加工システムSYSaの内部に設けられ、他の一部が加工システムSYSaの外部に設けられていてもよい。
【0062】
尚、CPUが実行するコンピュータプログラムを記録する記録媒体としては、CD-ROM、CD-R、CD-RWやフレキシブルディスク、MO、DVD-ROM、DVD-RAM、DVD-R、DVD+R、DVD-RW、DVD+RW及びBlu-ray(登録商標)等の光ディスク、磁気テープ等の磁気媒体、光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ、及び、その他プログラムを格納可能な任意の媒体の少なくとも一つが用いられてもよい。記録媒体には、コンピュータプログラムを記録可能な機器(例えば、コンピュータプログラムがソフトウェア及びファームウェア等の少なくとも一方の形態で実行可能な状態に実装された汎用機器又は専用機器)が含まれていてもよい。更に、コンピュータプログラムに含まれる各処理や機能は、制御装置7(つまり、コンピュータ)がコンピュータプログラムを実行することで制御装置7内に実現される論理的な処理ブロックによって実現されてもよいし、制御装置7が備える所定のゲートアレイ(FPGA、ASIC)等のハードウェアによって実現されてもよいし、論理的な処理ブロックとハードウェアの一部の要素を実現する部分的ハードウェアモジュールとが混在する形式で実現してもよい。
【0063】
(1-2)加工システムSYSaによる加工動作
続いて、加工システムSYSaによる加工動作(つまり、3次元構造物STを形成するための動作)について説明する。上述したように、加工システムSYSaは、レーザ肉盛溶接法により3次元構造物STを形成する。このため、加工システムSYSaは、レーザ肉盛溶接法に準拠した既存の加工動作(この場合、造形動作)を行うことで、3次元構造物STを形成してもよい。以下、レーザ肉盛溶接法を用いて3次元構造物STを形成する加工動作の一例について簡単に説明する。
【0064】
加工システムSYSaは、形成するべき3次元構造物STの3次元モデルデータ(例えば、CAD(Computer Aided Design)データ)等に基づいて、ワークW上に3次元構造物STを形成する。3次元モデルデータとして、加工システムSYSa内に設けられた不図示の計測装置で計測された立体物の計測データ、及び、加工システムSYSaとは別に設けられた3次元形状計測機の計測データの少なくとも一方を用いてもよい。3次元形状計測機の一例として、ワークWに対して移動可能でワークWに接触可能なプローブを有する接触型の3次元座標測定機があげられる。3次元形状計測機の一例として、非接触型の3次元計測機があげられる。非接触型の3次元計測機の一例として、パターン投影方式の3次元計測機、光切断方式の3次元計測機、タイム・オブ・フライト方式の3次元計測機、モアレトポグラフィ方式の3次元計測機、ホログラフィック干渉方式の3次元計測機、CT(Computed Tomography)方式の3次元計測機、及び、MRI(Magnetic resonance imaging)方式の3次元計測機等の少なくとも一つがあげられる。尚、3次元モデルデータとしては、例えばSTL(Stereo Lithography)フォーマット、VRML(Virtual Reality Modeling Language)フォーマット、AMF(Additive Manufacturing File Format)、IGES(Initial Graphics Exchange Specification)フォーマット、VDA-FS(Association of German Automotive Manufactures-Surfaces Interface)フォーマット、HP/GL(Hewlett-Packard Graphics Language)フォーマット、ビットマップフォーマット等を用いることができる。
【0065】
加工システムSYSaは、3次元構造物STを形成するために、例えば、Z軸方向に沿って並ぶ複数の層状の部分構造物(以下、“構造層”と称する)SLを順に形成していく。例えば、加工システムSYSaは、3次元構造物STをZ軸方向に沿って輪切りにすることで得られる複数の構造層SLを1層ずつ順に形成していく。その結果、複数の構造層SLが積層された積層構造体である3次元構造物STが形成される。以下、複数の構造層SLを1層ずつ順に形成していくことで3次元構造物STを形成する動作の流れについて説明する。
【0066】
まず、各構造層SLを形成する動作について図4(a)から図4(e)を参照して説明する。加工システムSYSaは、制御装置7の制御下で、ワークWの表面又は形成済みの構造層SLの表面に相当する造形面CS上の所望領域に照射領域EAを設定し、当該照射領域EAに対して照射光学系211から加工ビームPLを照射する。尚、照射光学系211から照射される加工ビームPLが造形面CS上に占める領域を照射領域EAと称してもよい。第1実施形態においては、加工ビームPLのフォーカス位置(つまり、集光位置)が造形面CSに一致している。その結果、図4(a)に示すように、照射光学系211から射出された加工ビームPLによって造形面CS上の所望領域に溶融池(つまり、加工ビームPLによって溶融した金属のプール)MPが形成される。更に、加工システムSYSaは、制御装置7の制御下で、造形面CS上の所望領域に供給領域MAを設定し、当該供給領域MAに対して材料ノズル212から造形材料Mを供給する。ここで、上述したように照射領域EAと供給領域MAとが一致しているため、供給領域MAは、溶融池MPが形成された領域に設定されている。このため、加工システムSYSaは、図4(b)に示すように、溶融池MPに対して、材料ノズル212から造形材料Mを供給する。その結果、溶融池MPに供給された造形材料Mが溶融する。加工ヘッド21の移動に伴って溶融池MPに加工ビームPLが照射されなくなると、溶融池MPにおいて溶融した造形材料Mは、冷却されて固化(つまり、凝固)する。その結果、図4(c)に示すように、固化した造形材料Mが造形面CS上に堆積される。つまり、固化した造形材料Mの堆積物による造形物が形成される。
【0067】
このような加工ビームPLの照射による溶融池MPの形成、溶融池MPへの造形材料Mの供給、供給された造形材料Mの溶融及び溶融した造形材料Mの固化を含む一連の造形処理が、図4(d)に示すように、造形面CSに対して加工ヘッド21をXY平面に沿って相対的に移動されながら繰り返される。つまり、造形面CSに対して加工ヘッド21が相対的に移動すると、造形面CSに対して照射領域EAもまた相対的に移動する。従って、一連の造形処理が、造形面CSに対して照射領域EAをXY平面に沿って(つまり、二次元平面内において)相対的に移動されながら繰り返される。この際、加工ビームPLは、造形面CS上において造形物を形成したい領域に設定された照射領域EAに対して選択的に照射される一方で、造形面CS上において造形物を形成したくない領域に設定された照射領域EAに対して選択的に照射されない(造形物を形成したくない領域には照射領域EAが設定されないとも言える)。つまり、加工システムSYSaは、造形面CS上を所定の移動軌跡に沿って照射領域EAを移動させながら、造形物を形成したい領域の分布の態様に応じたタイミングで加工ビームPLを造形面CSに照射する。尚、造形物を形成したい領域の分布の態様を分布パターンとも構造層SLのパターンとも称してもよい。その結果、溶融池MPもまた、照射領域EAの移動軌跡に応じた移動軌跡に沿って造形面CS上を移動することになる。具体的には、溶融池MPは、造形面CS上において、照射領域EAの移動軌跡に沿った領域のうち加工ビームPLが照射された部分に順次形成される。更に、上述したように照射領域EAと供給領域MAとが一致しているため、供給領域MAもまた、照射領域EAの移動軌跡に応じた移動軌跡に沿って造形面CS上を移動することになる。その結果、図4(e)に示すように、造形面CS上に、凝固した造形材料Mによる造形物の集合体に相当する構造層SLが形成される。つまり、溶融池MPの移動軌跡に応じたパターンで造形面CS上に形成された造形物の集合体に相当する構造層SL(つまり、平面視において、溶融池MPの移動軌跡に応じた形状を有する構造層SL)が形成される。なお、造形物を形成したくない領域に照射領域EAが設定されている場合、加工ビームPLを照射領域EAに照射するとともに、造形材料Mの供給を停止してもよい。また、造形物を形成したくない領域に照射領域EAが設定されている場合に、造形材料Mを照射領域EAに供給するとともに、溶融池MPができない強度の加工ビームPLを照射領域EAに照射してもよい。
【0068】
尚、上述の説明では、加工システムSYSaは、造形面CSに対して加工ヘッド21を移動させる(即ち、加工ビームPLを移動させる)ことにより、造形面CSに対して照射領域EAを移動させている。しかしながら、加工システムSYSaは、造形面CSに対して加工ヘッド21を移動させることに加えて又は代えて、加工ヘッド21に対してステージ31を移動させる(即ち、造形面CSを移動させる)ことで、造形面CSに対して照射領域EAを移動させてもよい。
【0069】
加工システムSYSaは、このような構造層SLを形成するための動作を、制御装置7の制御下で、3次元モデルデータに基づいて繰り返し行う。具体的には、まず、3次元モデルデータを積層ピッチでスライス処理してスライスデータを作成する。尚、加工システムSYSaの特性に応じてこのスライスデータを一部修正したデータを用いてもよい。加工システムSYSaは、ワークWの表面に相当する造形面CS上に1層目の構造層SL#1を形成するための動作を、構造層SL#1に対応する3次元モデルデータ、即ち構造層SL#1に対応するスライスデータに基づいて行う。その結果、造形面CS上には、図5(a)に示すように、構造層SL#1が形成される。その後、加工システムSYSaは、構造層SL#1の表面(つまり、上面)を新たな造形面CSに設定した上で、当該新たな造形面CS上に2層目の構造層SL#2を形成する。構造層SL#2を形成するために、制御装置7は、まず、加工ヘッド21がZ軸に沿って移動するように駆動系22を制御する。具体的には、制御装置7は、駆動系22を制御して、照射領域EA及び供給領域MAが構造層SL#1の表面(つまり、新たな造形面CS)に設定されるように、+Z側に向かって加工ヘッド21を移動させる。これにより、加工ビームPLのフォーカス位置が新たな造形面CSに一致する。その後、加工システムSYSaは、制御装置7の制御下で、構造層SL#1を形成する動作と同様の動作で、構造層SL#2に対応するスライスデータに基づいて、構造層SL#1上に構造層SL#2を形成する。その結果、図5(b)に示すように、構造層SL#2が形成される。以降、同様の動作が、ワークW上に形成するべき3次元構造物STを構成する全ての構造層SLが形成されるまで繰り返される。その結果、図5(c)に示すように、複数の構造層SLが積層された積層構造物によって、3次元構造物STが形成される。
【0070】
(1-3)加工システムSYSaの技術的効果
以上説明したように、第1実施形態の加工システムSYSaによれば、ワークWに対して適切に付加加工を行うことができる。
【0071】
加工システムSYSaは、筐体6の開口62に配置された観察窓65を備えている。観察窓65の少なくとも一部は、観察波長帯域の光に対して透明であるため、外部空間64OUTにいる観察者は、観察窓65の少なくとも一部を介して、チャンバ空間63INの状態を適切に観察することができる。その一方で、観察窓65は、観察窓65を介して外部空間64OUTに射出されるエネルギビームELの強度が許容量未満になるように、エネルギビームELの強度を低減する。このため、外部空間64OUTにいる観察者は、観察窓65の少なくとも一部を介して、チャンバ空間63INの状態を安全に観察することができる。
【0072】
第1実施形態では更に、観察窓65は、反射部材651と吸収部材652との双方を備えている。この場合、反射部材651の費用コストと比較して吸収部材652の費用コストが一般的には低いがゆえに、反射部材651を複数備える第1比較例の観察窓と比較して、観察窓65の費用コストが低減可能である。
【0073】
第1実施形態では更に、ワークWからのエネルギビームEL1は、反射部材651を介して吸収部材652に入射する。つまり、吸収部材652には、反射部材651が強度を低減したエネルギビームEL1が入射する。言い換えれば、吸収部材652には、造形材料Mを溶融させるほどに高い強度を有するエネルギビームELが入射することがない。このため、ワークWからのエネルギビームEL1が反射部材651を介することなく吸収部材652に入射する第2比較例の観察窓と比較して、エネルギビームELの吸収に起因した吸収部材652の発熱量が少なくなる。なぜならば、第2比較例の観察窓が備える吸収部材652に入射するエネルギビームEL1の強度と比較して、第1実施形態の観察窓65が備える吸収部材652に入射するエネルギビームEL2の強度が小さいからである。その結果、発熱に起因して吸収部材652が溶融する(つまり、破壊される)可能性が小さくなる(或いは、なくなる)。つまり、観察窓65は、吸収部材652が溶融する可能性を小さくしつつ(或いは、なくしつつ)、エネルギビームELの強度を低減することができる。
【0074】
(1-4)加工システムSYSaの変形例
上述した説明では、観察窓65は、単一の反射部材651を備えている。しかしながら、変形例における観察窓65を示す断面図である図6(a)及び図6(b)に示すように、観察窓65は、複数の反射部材651を備えていてもよい。この場合、図6(a)に示すように、吸収部材652は、複数の反射部材651の全てと比較して、チャンバ空間63INからより遠い位置に配置されていてもよい。つまり、吸収部材652とチャンバ空間63INとの間には、複数の反射部材651の全てが配置されていてもよい。或いは、図6(b)に示すように、吸収部材652は、複数の反射部材651のうちの一部と比較して、チャンバ空間63INからより遠い位置に配置される一方で、複数の反射部材651のうちの他の一部と比較して、チャンバ空間63INにより近い位置に配置されていてもよい。つまり、複数の反射部材651のうちの少なくとも2つの反射部材651の間に吸収部材652が配置されていてもよい。
【0075】
上述した説明では、観察窓65は、単一の吸収部材652を備えている。しかしながら、変形例における観察窓65を示す断面図である図7に示すように、観察窓65は、複数の吸収部材652を備えていてもよい。この場合、図7に示すように、複数の吸収部材652は、反射部材651と比較して、チャンバ空間63INからより遠い位置に配置されている。但し、複数の吸収部材652のうちの少なくとも一つが、反射部材651と比較して、チャンバ空間63INにより近い位置に配置されていてもよい。
【0076】
上述した説明では、反射部材651は、エネルギビームELの少なくとも一部を反射することでエネルギビームELの強度を低減している。しかしながら、反射部材651は、エネルギビームELの少なくとも一部を反射することに加えて、エネルギビームELの少なくとも一部を吸収することでエネルギビームELの強度を低減してもよい。上述した説明では、吸収部材652は、エネルギビームELの少なくとも一部を吸収することでエネルギビームELの強度を低減している。しかしながら、吸収部材652は、エネルギビームELの少なくとも一部を吸収することに加えて、エネルギビームELの少なくとも一部を反射することでエネルギビームELの強度を低減してもよい。観察窓65は、反射部材651及び吸収部材652の少なくとも一方に加えて又は代えて、エネルギビームELの少なくとも一部を反射し且つ吸収することでエネルギビームELの強度を低減する部材を備えていてもよい。
【0077】
(2)第2実施形態の加工システムSYSb
続いて、第2実施形態の加工システムSYS(以降、第2実施形態の加工システムSYSを、“加工システムSYSb”と称する)について説明する。第2実施形態の加工システムSYSbは、上述した第1実施形態の加工システムSYSaと比較して、観察窓65に代えて観察窓65bを備えているという点で異なる。加工システムSYSbのその他の特徴は、加工システムSYSaのその他の特徴と同一であってもよい。従って、以下では、図8を参照しながら、第2実施形態の観察窓65bについて説明する。図8は、第2実施形態の観察窓65bの構造の一例を示す断面図である。尚、以降の説明では、既に説明済みの構成要件については、同一の参照符号を付してその詳細な説明については省略する。
【0078】
図8に示すように、第2実施形態の観察窓65bは、上述した第1実施形態の観察窓65と比較して、反射部材651に代えて反射部材651bを備えているという点で異なる。観察窓65bのその他の特徴は、観察窓65のその他の特徴と同一であってもよい。反射部材651bは、基材6511のうち外部空間64OUT側(つまり、チャンバ空間63INとは反対側)を向いた面に反射膜6512が形成されているという点で、基材6511のうちチャンバ空間63IN側を向いた面に反射膜6512が形成されている反射部材651とは異なる。反射部材651bのその他の特徴は、反射部材651のその他の特徴と同一であってもよい。
【0079】
以上説明した第2実施形態の加工システムSYSbによれば、第1実施形態の加工システムSYSaが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。
【0080】
(3)第3実施形態の加工システムSYSc
続いて、第3実施形態の加工システムSYS(以降、第3実施形態の加工システムSYSを、“加工システムSYSc”と称する)について説明する。第3実施形態の加工システムSYScは、上述した第1実施形態の加工システムSYSaと比較して、観察窓65に代えて観察窓65cを備えているという点で異なる。加工システムSYScのその他の特徴は、加工システムSYSaのその他の特徴と同一であってもよい。従って、以下では、図9を参照しながら、第3実施形態の観察窓65cについて説明する。図9は、第3実施形態の観察窓65cの構造の一例を示す断面図である。
【0081】
図9に示すように、第3実施形態の観察窓65cは、上述した第1実施形態の観察窓65と比較して、反射部材651に代えて反射部材651cを備えているという点で異なる。観察窓65cのその他の特徴は、観察窓65のその他の特徴と同一であってもよい。反射部材651cは、複数の反射膜6512(図9に示す例では、2つの反射膜6512-1及び6512-2)を備えているという点で、複数の反射膜6512を備えていなくてもよい反射部材651とは異なる。複数の反射膜6512のうちの第1の反射膜6512-1は、基材6511のうちチャンバ空間63IN側を向いた面に形成されている。複数の反射膜6512のうちの第2の反射膜6512-2は、基材6511のうち外部空間64OUT側(つまり、チャンバ空間63INとは反対側)を向いた面に反射膜6512が形成されている。尚、反射部材651cが3つ以上の反射膜6512を備えている場合には、複数の反射膜6512のうちの第3の反射膜6512が、基材6511の内部(つまり、第1の反射膜6512と第2の反射膜6512との間)に形成されていてもよい。反射部材651cのその他の特徴は、反射部材651のその他の特徴と同一であってもよい。
【0082】
以上説明した第3実施形態の加工システムSYSbによれば、第1実施形態の加工システムSYSaが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。更に、第3実施形態では、反射部材651cが複数の反射膜6512を備えているため、反射部材651cの反射率が、複数の反射膜6512を備えていなくてもよい上述した反射部材651の反射率よりも高くなる可能性がある。このため、反射部材651cは、反射部材651よりも効率的にエネルギビームELを反射することができる可能性がある。その結果、反射部材651cは、反射部材651よりも効率的にエネルギビームELの強度を低減することができる可能性がある。つまり、観察窓65cによるエネルギビームELの強度の低減効率は、上述した観察窓65によるエネルギビームELの強度の低減効率よりも高くなる可能性がある。このため、観察窓65cは、観察窓65と比較して、外部空間64OUTに射出されるエネルギビームELの強度が許容量未満になるように、エネルギビームELをより効率的に減衰することができる可能性がある。
【0083】
(4)第4実施形態の加工システムSYSd
続いて、第4実施形態の加工システムSYS(以降、第4実施形態の加工システムSYSを、“加工システムSYSd”と称する)について説明する。第4実施形態の加工システムSYSdは、上述した第1実施形態の加工システムSYSaと比較して、観察窓65に代えて観察窓65dを備えているという点で異なる。加工システムSYSdのその他の特徴は、加工システムSYSaのその他の特徴と同一であってもよい。従って、以下では、図10を参照しながら、第4実施形態の観察窓65dについて説明する。図10は、第4実施形態の観察窓65dの構造の一例を示す断面図である。
【0084】
図10に示すように、第4実施形態の観察窓65dは、上述した第1実施形態の観察窓65と比較して、吸収部材652に代えて反射部材653dを備えているという点で異なる。つまり、観察窓65dは、反射部材651と反射部材653dとを備えているという点で、反射部材651と吸収部材652とを備える観察窓65とは異なる。このため、観察窓65dは、エネルギビームELの反射という光学現象を利用して、ワークWからのエネルギビームELの強度を低減する。観察窓65dのその他の特徴は、観察窓65のその他の特徴と同一であってもよい。
【0085】
反射部材653dは、反射部材651と同様の構造及び特性を有していてもよい。従って、反射部材653dは、基材6511と同様の構造及び特性を有する基材6531dと、反射膜6512と同様の構造及び特性を有する反射膜6532dとを備えている。このため、反射部材653dは、反射部材651と同様に、エネルギビームELを反射することでエネルギビームELの強度を低減する。更に、観察波長帯域の光は、反射部材651及び反射部材653dのそれぞれの少なくとも一部を介して、チャンバ空間63INから外部空間64OUTに及び外部空間64OUTからチャンバ空間63INに伝搬可能である。
【0086】
但し、反射部材653dは、その配置位置が反射部材651とは異なる。具体的には、反射部材653dは、反射部材653dと反射部材651との位置関係が、上述した吸収部材652と反射部材651との位置関係と同様になるように配置される。従って、第4実施形態では、反射部材653dには、反射部材651を通過したエネルギビームEL(具体的には、図3に示すエネルギビームEL2)が入射する。この場合、反射部材653dは、エネルギビームEL2のうちの少なくとも一部の光成分(具体的には、反射部材653dの反射率に応じて定まる少なくとも一部の光成分)を反射する。一方で、エネルギビームEL2のうち反射部材653dによって反射されなかった残りの光成分は、反射部材653dを透過する。尚、エネルギビームEL2が反射部材653dを透過する過程で、エネルギビームEL2の少なくとも一部が反射部材653d(特に、基材6531d)によって吸収されてもよいし、吸収されなくてもよい。反射部材653dを透過して外部空間64OUTに射出されたエネルギビームEL2の強度は、反射部材653dに入射するエネルギビームEL2の強度に対して反射部材653dの反射率に応じた低減率を乗じた値にまで小さくなる。その結果、観察窓65dを介して外部空間64OUTに射出されたエネルギビームELの強度は、観察窓65に入射するエネルギビームELの強度に対して反射部材651の反射率に応じた低減率及び反射部材653dの反射率に応じた低減率を乗じた値にまで小さくなる。このため、反射部材651及び653dのそれぞれの特性(例えば、反射率)は、外部空間64OUTに射出されたエネルギビームELの強度が許容量未満になるという条件を満たすことが可能な適切な値に設定される。
【0087】
以上説明した第4実施形態の加工システムSYSdによれば、ワークWに対して適切に付加加工を行うことができる。更に、外部空間64OUTにいる観察者は、観察窓65dの少なくとも一部を介して、チャンバ空間63INの状態を適切に且つ安全に観察することができる。なぜならば、観察窓65dの少なくとも一部は観察波長帯域の光に対して透明であると共に、観察窓65dがエネルギビームELを減衰するからである。
【0088】
第4実施形態では更に、観察窓65dは、エネルギビームELの吸収に起因して発熱すると共に当該発熱に起因して溶融する可能性がある吸収部材652を備えていなくてもよい。このため、観察窓65dに対しては、吸収部材652の溶融に備えた対策が施されていなくてもよい。その結果、観察窓65dは、吸収部材652の溶融に備えた対策を必要とすることなく、エネルギビームELの強度を低減することができる。但し、上述したように吸収部材652の費用コストと比較して反射部材651及び653dのそれぞれの費用コストが高いがゆえに、第4実施形態の観察窓65dの費用コストは、第1実施形態の観察窓65の費用コストよりも高くなる可能性がある。
【0089】
尚、第4実施形態において、第2実施形態と同様に、反射部材651は、基材6511のうち外部空間64OUT側を向いた面に反射膜6512が形成されている部材であってもよい。反射部材653dは、基材6531dのうち外部空間64OUT側を向いた面に反射膜6532dが形成されている部材であってもよい。第4実施形態において、第3実施形態と同様に、反射部材651は、複数の反射膜6512を備える部材であってもよい。反射部材653dは、複数の反射膜6532dを備える部材であってもよい。
【0090】
観察窓65dは、反射部材651及び653dに加えて、反射部材651及び653dの少なくとも一つと同様の構造及び特性を有するその他の反射部材を備えていてもよい。つまり、観察窓65dは、3つ以上の反射部材を備えていてもよい。
【0091】
(5)第5実施形態の加工システムSYSe
続いて、第5実施形態の加工システムSYS(以降、第5実施形態の加工システムSYSを、“加工システムSYSe”と称する)について説明する。第5実施形態の加工システムSYSeは、上述した第1実施形態の加工システムSYSaと比較して、観察窓65に代えて観察窓65eを備えているという点で異なる。加工システムSYSeのその他の特徴は、加工システムSYSaのその他の特徴と同一であってもよい。従って、以下では、図11を参照しながら、第5実施形態の観察窓65eについて説明する。図11は、第5実施形態の観察窓65eの構造の一例を示す断面図である。
【0092】
図11に示すように、第5実施形態の観察窓65eは、上述した第1実施形態の観察窓65と比較して、反射部材651及び吸収部材652に代えて、2つの吸収部材652e-1及び652e-2を備えているという点で異なる。このため、観察窓65eは、エネルギビームELの吸収という光学現象を利用して、ワークWからのエネルギビームELの強度を低減する。観察窓65eのその他の特徴は、観察窓65のその他の特徴と同一であってもよい。
【0093】
吸収部材652e-1及び652e-2のそれぞれは、吸収部材652と同様の構造及び特性を有していてもよい。従って、吸収部材652e-1及び652e-2のそれぞれは、吸収部材652と同様に、エネルギビームELを吸収することでエネルギビームELの強度を低減する。更に、観察波長帯域の光は、吸収部材652e-1及び652e-2のそれぞれの少なくとも一部を介して、チャンバ空間63INから外部空間64OUTに及び外部空間64OUTからチャンバ空間63INに伝搬可能である。
【0094】
第5実施形態では特に、吸収部材652e-1のエネルギビームELに対する吸収係数は、吸収部材652e-2のエネルギビームELに対する吸収係数とは異なる。具体的には、チャンバ空間63INに相対的に近い吸収部材652e-1の吸収係数は、チャンバ空間63INから相対的に遠い吸収部材652e-2の吸収係数よりも小さくなる。つまり、吸収部材652e-1及び652e-2のそれぞれの吸収係数は、チャンバ空間63INに相対的に近い吸収部材652e-1が、チャンバ空間63INから相対的に遠い吸収部材652e-2の吸収係数よりもエネルギビームELを吸収しにくくなるように設定されている。
【0095】
第5実施形態では、吸収部材652e-1の吸収係数が吸収部材652e-2の吸収係数よりも小さくなるがゆえに、吸収部材652e-1内におけるエネルギビームELの吸収による単位長あたりの発熱量は、吸収部材652e-2内におけるエネルギビームELの吸収による単位長あたりの発熱量以下になる。具体的には、吸収部材652e-1の吸収係数が小さくなるほど、吸収部材652e-1がエネルギビームELを相対的に吸収しにくくなるがゆえに、エネルギビームELの吸収に起因した吸収部材652e-1の発熱量が少なくなる。このため、仮に造形材料Mを溶融させるほどに高いエネルギ量を有するエネルギビームELが吸収部材652e-1に入射しても、吸収部材652e-1の発熱に起因して吸収部材652e-1が溶融する可能性が小さくなる。一方で、吸収部材652e-2には、吸収部材652e-1が減衰したエネルギビームELが入射する。このため、吸収部材652e-2の吸収係数が吸収部材652e-1の吸収係数よりも大きかったとしても、吸収部材652e-2に入射するエネルギビームELの強度が吸収部材652e-1に入射するエネルギビームELの強度よりも小さいがゆえに、エネルギビームELの吸収に起因した吸収部材652e-2の発熱量が多くなりすぎる可能性は相対的に小さい。このため、吸収部材652e-2の発熱に起因して吸収部材652e-2が溶融する可能性は相対的に小さい。従って、吸収部材652e-1の吸収係数が吸収部材652e-2の吸収係数よりも小さくなる場合には、観察窓65eは、吸収部材652e-1及び652e-2のそれぞれが溶融する可能性を小さくしつつ(或いは、なくしつつ)、エネルギビームELの強度を低減することができる。つまり、観察窓65eは、費用コストが相対的に高い反射部材651を備えていなくても、吸収部材652e-1及び652e-2のそれぞれが溶融する可能性を小さくしつつ(或いは、なくしつつ)のおそれを低減しながら、エネルギビームELの強度を低減することができる。
【0096】
他方で、吸収部材652e-1の吸収係数が小さくなるほど、吸収部材652e-1によるエネルギビームELの吸収率が小さくなってしまう。その結果、エネルギビームELの吸収率が所定吸収率以上になるという特性を吸収部材652e-1が有することができなくなる可能性が相対的に大きくなりかねない。一方で、吸収部材652e-2の吸収係数が大きくなるほど、吸収部材652e-2によるエネルギビームELの吸収率が大きくなる。このため、エネルギビームELの吸収率が所定吸収率以上になるという特性を吸収部材652e-2が有することができなくなる可能性は相対的に小さい。そこで、第5実施形態では、吸収部材652によるエネルギビームELの吸収率が、吸収部材652内におけるエネルギビームELの経路の長さと吸収部材652の吸収係数とに応じて定まることに着目し、吸収係数が相対的に小さい吸収部材652e-1内におけるエネルギビームELの経路の長さが、吸収係数が相対的に大きい吸収部材652e-2内におけるエネルギビームELの経路の長さとは異なる長さに設定される。具体的には、吸収係数が相対的に小さい吸収部材652e-1内におけるエネルギビームELの経路の長さは、吸収係数が相対的に大きい吸収部材652e-2内におけるエネルギビームELの経路の長さよりも長くなるように設定される。吸収部材652e-1内におけるエネルギビームELの経路が長くなるほど、吸収部材652e-1によるエネルギビームELの吸収率が大きくなるがゆえに、エネルギビームELに対する吸収率が所定吸収率以上になるという特性を吸収部材652e-1が有することができなくなる可能性は小さくなる。従って、観察窓65eは、吸収部材652e-1及び652e-2を用いて、エネルギビームELの強度を適切に低減することができる。
【0097】
吸収部材652e-1内におけるエネルギビームELの経路の長さは、吸収部材652e-1内におけるエネルギビームELの進行方向に沿った吸収部材652e-1のサイズ(典型的には、厚み)D1eに依存する。吸収部材652e-2内におけるエネルギビームELの経路の長さは、吸収部材652e-2内におけるエネルギビームELの進行方向に沿った吸収部材652e-2のサイズ(典型的には、厚み)D2eに依存する。このため、サイズD1eは、サイズD2eとは異なるサイズに設定されてもよい。具体的には、図11に示すように、サイズD1eは、サイズD2eよりも長くなるように設定されてもよい。
【0098】
このような第5実施形態では、ワークWからのエネルギビームELは、まずは、吸収部材652e-1に入射する。この場合、吸収部材652e-1は、エネルギビームELのうちの少なくとも一部の光成分(具体的には、吸収部材652e-1の吸収率に応じて定まる少なくとも一部の光成分)を吸収する。一方で、エネルギビームELのうち吸収部材652e-1によって吸収されなかった残りの光成分は、吸収部材652e-1を透過する。その結果、吸収部材652e-2には、吸収部材652e-1を透過したエネルギビームELが入射する。この場合、吸収部材652e-2もまた、吸収部材652e-1と同様に、吸収部材652e-2に入射したエネルギビームEL2のうちの少なくとも一部の光成分(具体的には、吸収部材652e-2の吸収率に応じて定まる少なくとも一部の光成分)を吸収する。一方で、吸収部材652e-2に入射したエネルギビームELのうち吸収部材652e-2によって吸収されなかった残りの光成分は、吸収部材652e-2を透過する。その結果、観察窓65eを介して外部空間64OUTに射出されたエネルギビームELの強度は、観察窓65eに入射するエネルギビームELの強度に対して吸収部材652e-1の吸収率に応じた低減率及び吸収部材652e-2の吸収率に応じた低減率を乗じた値にまで小さくなる。このため、吸収部材652e-1及び652e-2のそれぞれの特性(例えば、吸収率であり、吸収率を定めるサイズ及び吸収係数)は、外部空間64OUTに射出されたエネルギビームELの強度が許容量未満になるという条件を満たすことが可能な適切な値に設定される。
【0099】
以上説明した第5実施形態の加工システムSYSeによれば、ワークWに対して適切に付加加工を行うことができる。更に、外部空間64OUTにいる観察者は、観察窓65eの少なくとも一部を介して、チャンバ空間63INの状態を適切に且つ安全に観察することができる。なぜならば、観察窓65eの少なくとも一部は観察波長帯域の光に対して透明であると共に、観察窓65eがエネルギビームELの強度を低減するからである。
【0100】
第5実施形態では更に、観察窓65eは、費用コストが相対的に高い反射部材651を備えていなくてもよい。この場合であっても、チャンバ空間63INに相対的に近い吸収部材652e-1の吸収係数が相対的に小さくなっているため、エネルギビームELの吸収に起因した発熱によって吸収部材652e-1が溶融する可能性が相対的に小さくなる。つまり、観察窓65eは、吸収部材652e-1及び652e-2が溶融する可能性を小さくしつつ(或いは、なくしつつ)、エネルギビームELの強度を低減することができる。それでいて、チャンバ空間63INに相対的に近い吸収部材652e-1内におけるエネルギビームELの経路の長さが相対的に長くなるがゆえに、吸収係数が相対的に小さい吸収部材652e-1によるエネルギビームELの吸収率が、エネルギビームELの強度の低減効率の大幅な悪化を引き起こすほどに低下することは殆どない。従って、観察窓65eは、エネルギビームELの強度の低減効率の大幅な減少を引き起こすことなく、エネルギビームELの強度を相対的に効率的に低減することができる。
【0101】
尚、吸収部材652e-1のエネルギビームELに対する吸収係数は、吸収部材652e-2のエネルギビームELに対する吸収係数と同一であってもよい。吸収部材652e-1内におけるエネルギビームELの経路の長さが、吸収部材652e-2内におけるエネルギビームELの経路の長さと同じ長さに設定されていてもよい。この場合であっても、外部空間64OUTにいる観察者は、観察窓65eの少なくとも一部を介して、チャンバ空間63INの状態を適切に且つ安全に観察することができることに変わりはない。但し、この場合には、吸収部材652e-1及び652e-2の特性は、吸収部材652e-1及び652e-2が溶融する可能性が小さくなる(或いは、なくなる)状態を実現可能な適切な値に設定されていてもよい。
【0102】
(6)第6実施形態の加工システムSYSf
続いて、第6実施形態の加工システムSYS(以降、第6実施形態の加工システムSYSを、“加工システムSYSf”と称する)について説明する。第6実施形態の加工システムSYSfは、上述した第5実施形態の加工システムSYSeと比較して、観察窓65eに代えて観察窓65fを備えているという点で異なる。加工システムSYSfのその他の特徴は、加工システムSYSeのその他の特徴と同一であってもよい。従って、以下では、図12を参照しながら、第6実施形態の観察窓65fについて説明する。図12は、第6実施形態の観察窓65fの構造の一例を示す断面図である。
【0103】
図12に示すように、第6実施形態の観察窓65fは、3つ以上の吸収部材652fを備えているという点で、2つの吸収部材652e-1及び652e-2を備えている(つまり、3つ以上の吸収部材652eを備えていなくてもよい)上述した第5実施形態の観察窓65eとは異なる。図12に示す例では、観察窓65fは、3つの吸収部材652f-1から652f-3を備えている。以下では、説明の便宜上、3つの吸収部材652f-1から652f-3を備えている観察窓65fについて説明する。観察窓65fのその他の特徴は、観察窓65fのその他の特徴と同一であってもよい。
【0104】
吸収部材652f-1から652f-3のそれぞれは、吸収部材652と同様の構造及び特性を有していてもよい。従って、吸収部材652f-1から652f-3のそれぞれは、吸収部材652と同様に、エネルギビームELを吸収することでエネルギビームELの強度を低減する。更に、観察波長帯域の光は、吸収部材652f-1から652f-3のそれぞれの少なくとも一部を介して、チャンバ空間63INから外部空間64OUTに及び外部空間64OUTからチャンバ空間63INに伝搬可能である。
【0105】
第6実施形態では特に、複数の吸収部材652fのエネルギビームELに対する吸収係数は互いに異なる値になるように設定される。具体的には、吸収部材652fの吸収係数は、吸収部材652fの配置位置がチャンバ空間63INに近ければ近いほど小さくなるように設定されていてもよい。つまり、吸収部材652fの吸収係数は、チャンバ空間63INに近い位置に配置されている吸収部材652fほどエネルギビームELを吸収しにくくなるように設定されている。図12に示す例では、吸収部材652f-1から652f-3の吸収係数は、チャンバ空間63INに最も近い位置に配置されている吸収部材652f-1の吸収係数<チャンバ空間63INに2番目に近い位置に配置されている吸収部材652f-2の吸収係数<チャンバ空間63INから最も遠い位置に配置されている吸収部材652f-3の吸収係数という関係が満たされるように設定されている。その結果、第6実施形態においても、第5実施形態と同様に、観察窓65fは、吸収部材652f-1から652f-3のそれぞれが溶融する可能性を小さくしつつ(或いは、なくしつつ)、エネルギビームELの強度を低減することができる。つまり、観察窓65fは、費用コストが相対的に高い反射部材651を備えていなくても、吸収部材652f-1から652f-3のそれぞれが溶融する可能性を小さくしつつ(或いは、なくしつつ)、エネルギビームELの強度を低減することができる。
【0106】
第6実施形態では更に、吸収部材652f-1内におけるエネルギビームELの経路の長さ、吸収部材652f-2内におけるエネルギビームELの経路の長さ、及び、吸収部材652f-3内におけるエネルギビームELの経路の長さが互いに異なる長さになるように設定される。具体的には、吸収部材652f内におけるエネルギビームELの経路の長さは、吸収部材652fの配置位置がチャンバ空間63INに近ければ近いほど長くなるように設定される。図12に示す例では、吸収部材652f-1から652f-3のそれぞれの内部におけるエネルギビームELの経路の長さは、チャンバ空間63INに最も近い位置に配置されている吸収部材652f-1内におけるエネルギビームELの経路の長さ>チャンバ空間63INに2番目に近い位置に配置されている吸収部材652f-2内におけるエネルギビームELの経路の長さ>チャンバ空間63INから最も遠い位置に配置されている吸収部材652f-3内におけるエネルギビームELの経路の長さという関係が満たされるように設定されている。その結果、第6実施形態においても、第5実施形態と同様に、エネルギビームELに対する吸収率が所定吸収率以上になるという特性を吸収部材652f-1から652f-3が有することができなくなる可能性は小さくなる。従って、観察窓65fは、吸収部材652f-1から652f-3を用いて、エネルギビームELの強度を適切に低減することができる。
【0107】
第5実施形態で説明したように、吸収部材652f内におけるエネルギビームELの経路の長さは、吸収部材652f内におけるエネルギビームELの進行方向に沿った吸収部材652fのサイズDfに依存する。このため、吸収部材652f-1内におけるエネルギビームELの進行方向に沿った吸収部材652f-1のサイズD1fと、吸収部材652f-2内におけるエネルギビームELの進行方向に沿った吸収部材652f-2のサイズD2fと、吸収部材652f-3内におけるエネルギビームELの進行方向に沿った吸収部材652f-3のサイズD3fとは、互いに異なるサイズに設定されてもよい。具体的には、図12に示すように、サイズD1fは、サイズD2fよりも長くなるように設定されてもよいし、サイズD2fは、サイズD3fよりも長くなるように設定されてもよい。
【0108】
このような第6実施形態では、ワークWからのエネルギビームELは、まずは、吸収部材652f-1に入射する。この場合、吸収部材652f-1は、エネルギビームELのうちの少なくとも一部の光成分(具体的には、吸収部材652f-1の吸収率に応じて定まる少なくとも一部の光成分)を吸収する。一方で、エネルギビームELのうち吸収部材652f-1によって吸収されなかった残りの光成分は、吸収部材652f-1を透過する。その結果、吸収部材652f-2には、吸収部材652f-1を透過したエネルギビームELが入射する。この場合、吸収部材652f-2もまた、吸収部材652f-1と同様に、吸収部材652f-2に入射したエネルギビームEL2のうちの少なくとも一部の光成分(具体的には、吸収部材652f-2の吸収率に応じて定まる少なくとも一部の光成分)を吸収する。一方で、吸収部材652f-2に入射したエネルギビームELのうち吸収部材652f-2によって吸収されなかった残りの光成分は、吸収部材652f-2を透過する。その結果、吸収部材652f-3には、吸収部材652f-2を透過したエネルギビームELが入射する。この場合、吸収部材652f-3もまた、吸収部材652f-1と同様に、吸収部材652f-3に入射したエネルギビームEL2のうちの少なくとも一部の光成分(具体的には、吸収部材652f-3の吸収率に応じて定まる少なくとも一部の光成分)を吸収する。一方で、吸収部材652f-3に入射したエネルギビームELのうち吸収部材652f-3によって吸収されなかった残りの光成分は、吸収部材652f-3を透過する。その結果、観察窓65fを介して外部空間64OUTに射出されたエネルギビームELの強度は、観察窓65fに入射するエネルギビームELの強度に対して、吸収部材652f-1の吸収率に応じた低減率、吸収部材652f-2の吸収率に応じた低減率及び吸収部材652f-3の吸収率に応じた低減率を乗じた値にまで小さくなる。このため、吸収部材652f-1から652f-3のそれぞれの特性(例えば、吸収率であり、吸収率を定めるサイズ及び吸収係数)は、外部空間64OUTに射出されたエネルギビームELの強度が許容量未満になるという条件を満たすことが可能な適切な値に設定される。
【0109】
以上説明した第6実施形態の加工システムSYSfによれば、第5実施形態の加工システムSYSeが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。例えば、観察窓65fは、3つ以上の吸収部材652fが溶融する可能性を小さくしつつ(或いは、なくしつつ)、エネルギビームELの強度を低減することができる。更に、観察窓65eは、エネルギビームELの強度の低減効率の大幅な減少を引き起こすことなく、エネルギビームELの強度を相対的に効率的に低減することができる。
【0110】
尚、複数の吸収部材652fのうちの少なくとも2つのエネルギビームELに対する吸収係数が互いに同一であってもよい。複数の吸収部材652fのうちの少なくとも2つの内部におけるエネルギビームELの経路の長さが互いに同一であってもよい。この場合であっても、外部空間64OUTにいる観察者は、観察窓65fの少なくとも一部を介して、チャンバ空間63INの状態を適切に且つ安全に観察することができることに変わりはない。但し、この場合には、複数の吸収部材652fの特性は、複数の吸収部材652fが溶融する可能性が小さくなる(或いは、なくなる)状態を実現可能な適切な値に設定されていてもよい。
【0111】
(7)第7実施形態の加工システムSYSg
続いて、第7実施形態の加工システムSYS(以降、第7実施形態の加工システムSYSを、“加工システムSYSg”と称する)について説明する。第7実施形態の加工システムSYSgは、上述した第1実施形態の加工システムSYSaと比較して、観察窓65に代えて観察窓65gを備えているという点で異なる。加工システムSYSgのその他の特徴は、加工システムSYSaのその他の特徴と同一であってもよい。従って、以下では、図13を参照しながら、第7実施形態の観察窓65gについて説明する。図13は、第7実施形態の観察窓65gの構造の一例を示す断面図である。
【0112】
図13に示すように、第7実施形態の観察窓65gは、上述した第1実施形態の観察窓65と比較して、反射部材651及び吸収部材652の配置位置が異なるという点で異なる。観察窓65gは、上述した第1実施形態の観察窓65と比較して、反射部材651と吸収部材652とチャンバ空間63INと外部空間64OUTとの間の位置関係が異なるという点で異なる。観察窓65gのその他の特徴は、観察窓65のその他の特徴と同一であってもよい。
【0113】
具体的には、吸収部材652は、反射部材651と比較して、チャンバ空間63INにより近い位置に配置される。吸収部材652は、チャンバ空間63INに面していてもよい。反射部材651は、吸収部材652と比較して、チャンバ空間63INからより遠い位置に配置される。反射部材651とチャンバ空間63INとの間には、吸収部材652が配置される。吸収部材652は、反射部材651と比較して、外部空間64OUTからより遠い位置に配置される。反射部材651は、吸収部材652と比較して、外部空間64OUTにより近い位置に配置される。反射部材651は、外部空間64OUTに面していてもよい。吸収部材652と外部空間64OUTとの間には、反射部材651が配置される。反射部材651と吸収部材652とチャンバ空間63INと外部空間64OUTがこのような位置関係を有しているため、チャンバ空間63INから観察窓65gに入射するエネルギビームELは、まずは、吸収部材652に入射する。その後、吸収部材652を透過したエネルギビームEL(つまり、吸収部材652によって反射されなかったエネルギビームEL)が、反射部材651に入射する。その後、反射部材651を透過したエネルギビームELが、外部空間64OUTに射出される。
【0114】
以上説明した第7実施形態の加工システムSYSgによれば、第1実施形態の加工システムSYSaが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。但し、第7実施形態では、ワークWからのエネルギビームELは、反射部材651を介することなく吸収部材652に入射する。このため、吸収部材652の特性は、反射部材651を介することなくエネルギビームELが吸収部材652に入射する場合であっても吸収部材652が溶融しない状態を実現可能な適切な値に設定されていてもよい。例えば、吸収部材652は、図11に示す第5実施形態の吸収部材652e-1(つまり、チャンバ空間63INに最も近い吸収部材652e)と同様の特性を有していてもよい。例えば、吸収部材652は、図12に示す第6実施形態の吸収部材652f-1(つまり、チャンバ空間63INに最も近い吸収部材652f)と同様の特性を有していてもよい。その結果、ワークWからのエネルギビームELが反射部材651を介することなく吸収部材652に入射する第7実施形態においても、観察窓65gは、吸収部材652が溶融する可能性を小さくしつつ(或いは、なくしつつ)、エネルギビームELの強度を低減することができる。
【0115】
(8)第8実施形態の加工システムSYSh
続いて、図14を参照しながら、第8実施形態の加工システムSYS(以降、第8実施形態の加工システムSYSを、“加工システムSYSh”と称する)について説明する。図14は、第8実施形態の加工システムSYShのうち筐体6の開口62付近の構造を示す断面図である。
【0116】
図14に示すように、第8実施形態の加工システムSYShは、上述した第1実施形態の加工システムSYSaと比較して、カバー部材66hを更に備えているという点で異なる。加工システムSYShのその他の特徴は、加工システムSYSaのその他の特徴と同一であってもよい。
【0117】
カバー部材66hは、観察窓65とチャンバ空間63INとの間に配置される。カバー部材66hは、反射部材651に対して吸収部材652の反対側に配置される。反射部材651は、カバー部材66hと吸収部材652との間に配置される。図14に示す例では、カバー部材66hは、開口62に配置されている。しかしながら、カバー部材66hは、開口62の外部に配置されていてもよい。つまり、カバー部材66hは、チャンバ空間63INに配置されていてもよい。このようにカバー部材66hが配置される場合、チャンバ空間63INからのエネルギビームELは、カバー部材66hを介して反射部材651に入射する。つまり、反射部材651は、カバー部材66hを介して反射部材651に入射するエネルギビームELの強度を低減する。
【0118】
尚、カバー部材66hは、カバー部材66hに入射するエネルギビームELの強度を低減してもよいし、低減しなくてもよい。このため、カバー部材66hにおけるエネルギビームELの透過率はどのような値であってもよい。但し、上述したように反射部材651及び吸収部材652のそれぞれがエネルギビームELの強度を低減するがゆえに、典型的には、カバー部材66hにおけるエネルギビームELの透過率は、反射部材651及び吸収部材652のそれぞれにおけるエネルギビームELの透過率よりも高くなる。但し、カバー部材66hにおけるエネルギビームELの透過率は、反射部材651及び吸収部材652の少なくとも一方におけるエネルギビームELの透過率よりも低くてもよいし、同じであってもよい。
【0119】
チャンバ空間63INと観察窓65とは、カバー部材66hによって隔てられる。その結果、材料ノズル212からチャンバ空間63INに供給された造形材料Mが、開口62を介してチャンバ空間63INから観察窓65が位置する空間(つまり、カバー部材66hよりも外部空間64OUT側に位置する空間)に漏出することはない。更には、材料ノズル212からチャンバ空間63INに供給された造形材料Mが、観察窓65(特に、チャンバ空間63INに最も近い位置に位置する観察窓65の部材であり、図14に示す例では、反射部材651)に接触することはない。具体的には、材料ノズル212からチャンバ空間63INに供給された造形材料Mが観察窓65に付着することはない。材料ノズル212からチャンバ空間63INに供給された造形材料Mが観察窓65に衝突することはない。つまり、本実施形態における造形材料Mの観察窓65への接触は、造形材料Mの観察窓65への付着及び造形材料Mの観察窓65への衝突の双方を含んでいてもよい。この場合、カバー部材66hは、造形材料Mの漏出を防止する装置として機能してもよい。カバー部材66hは、造形材料Mの観察窓65への接触を防止する装置として機能してもよい。
【0120】
チャンバ空間63INには、材料ノズル212から供給された造形材料Mに加えて又は代えて、エネルギビームELの照射に起因して造形面CSから発生する物質が存在する可能性がある。このような物質の一例として、溶融した造形材料Mの微粒子及び溶融したワークWを構成する材料の微粒子の少なくとも一方を含むヒュームがあげられる。この場合、このようなヒューム等の物質が、開口62を介してチャンバ空間63INから観察窓65が位置する空間(つまり、カバー部材66hよりも外部空間64OUT側に位置する空間)に漏出することはない。更には、ヒューム等の物質が、観察窓65(特に、チャンバ空間63INに最も近い位置に位置する観察窓65の部材であり、図14に示す例では、反射部材651)に付着することはない。この場合、カバー部材66hは、ヒューム等の物質の漏出を防止する装置として機能してもよい。カバー部材66hは、ヒューム等の物質の観察窓65への付着を防止する装置として機能してもよい。
【0121】
カバー部材66hの少なくとも一部は、観察波長帯域の光に対して透明である。つまり、観察波長帯域の光は、カバー部材66hの少なくとも一部を通過可能である。このため、観察波長帯域の光は、カバー部材66hを介して、チャンバ空間63INから外部空間64OUTに伝搬可能である。同様に、観察波長帯域の光は、カバー部材66hを介して、外部空間64OUTからチャンバ空間63INに伝搬可能である。その結果、外部空間64OUTにいる観察者は、カバー部材66hの少なくとも一部を介して、チャンバ空間63INの状態を観察可能である。外部空間64OUTにいる観察者は、開口62を介して、チャンバ空間63INの状態を観察可能である。
【0122】
以上説明した第8実施形態の加工システムSYShによれば、第1実施形態の加工システムSYSaが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。更に、第8実施形態では、カバー部材66hによって造形材料及びヒュームの少なくとも一方を含む物質の観察窓65への付着が防止される。その結果、物質の観察窓65への付着に起因して、観察窓65によるエネルギビームELの強度の低減効率が悪化する可能性が小さくなる。更に、観察窓65に物質が付着しないがゆえに、観察窓65の清掃が容易になるという利点も享受できる。特に、観察窓65の表面(特に、チャンバ空間63INに面する面であって、図14に示す例では、反射部材651の表面)に対してコーティング処理が施されている場合には、コーティングを痛める(例えば、物質によって傷を付けることなく)観察窓65を清掃することができるという利点も享受できる。
【0123】
尚、カバー部材66hは、観察窓65を保護する装置としても機能してもよい。例えば、カバー部材66hは、チャンバ空間63INに存在する物体が観察窓65に接触する(言い換えれば、衝突する)ことを防止するように観察窓65を保護してもよい。例えば、カバー部材66hは、チャンバ空間63INに存在する物体による観察窓65の破損を防止するように観察窓65を保護してもよい。チャンバ空間63INに存在する物体は、チャンバ空間63IN内において移動する物体であってもよい。チャンバ空間63IN内において移動する物体の一例として、加工ヘッド21及びステージ31の少なくとも一方があげられる。
【0124】
第2実施形態から第8実施形態の加工システムSYSもまた、カバー部材66hを備えていてもよい。
【0125】
上述した説明では、カバー部材66hが、造形材料M及び/又はヒューム等の物質の観察窓65への付着を防止する装置として機能している。しかしながら、加工システムSYSh(或いは、上述した第1実施形態から第8実施形態の加工システムSYS)は、造形材料M及び/又はヒューム等の物質の観察窓65への付着を防止する装置(つまり、付着防止装置)として、カバー部材66hとは異なる装置を備えていてもよい。例えば、ガス供給装置5(或いは、ガス供給装置5とは異なる任意の気体供給装置)が、付着防止装置として用いられてもよい。具体的には、ガス供給装置5を用いて物質の観察窓65への付着を防止する様子を示す断面図である図15に示すように、ガス供給装置5から内部空間63INに供給されるパージガス(或いは、気体供給装置から内部空間63INに供給される気体、以下同じ)によって、物質の観察窓65への付着が防止されてもよい。つまり、内部空間63INを流れるパージガスによって、物質の観察窓65への付着が防止されてもよい。この場合、ガス供給装置5から供給されるパージガスが、いわゆるエアカーテンとして用いられてもよい。ガス供給装置5から供給されるパージガスによって、観察窓65に付着した物質が吹き飛ばされてもよい。
【0126】
(9)第9実施形態の加工システムSYSi
続いて、図16を参照しながら、第9実施形態の加工システムSYS(以降、第9実施形態の加工システムSYSを、“加工システムSYSi”と称する)について説明する。図16は、第9実施形態の加工システムSYSiの構造を示す断面図である。
【0127】
図16に示すように、第9実施形態の加工システムSYSiは、上述した第1実施形態の加工システムSYSa(或いは、上述した第2実施形態の加工システムSYSbから第8実施形態の加工システムSYShの少なくとも一つ)と比較して、計測装置8iを更に備えているという点で異なる。加工システムSYSiのその他の特徴は、加工システムSYSa(或いは、上述した第2実施形態の加工システムSYSbから第8実施形態の加工システムSYShの少なくとも一つ)のその他の特徴と同一であってもよい。
【0128】
計測装置8iは、チャンバ空間63INに収容されているが、その他の位置(例えば、外部空間64OUT)に配置されていてもよい。計測装置8iは、制御装置7の制御下で、計測対象物を計測可能である。計測対象物は、例えばワークW(更には、生成中の3次元構造物ST、以下同じ)を含む。例えば、計測装置8iは、ワークWの状態を計測可能な装置であってもよい。ワークWの状態は、ワークWの位置を含んでいてもよい。ワークWの位置は、ワークWの表面の位置を含んでいてもよい。ワークWの表面の位置は、ワークWの表面を細分化した各面部分のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の少なくとも一つにおける位置を含んでいてもよい。ワークWの状態は、ワークWの形状(例えば、3次元形状)を含んでいてもよい。ワークWの形状は、ワークWの表面の形状を含んでいてもよい。ワークWの表面の形状は、上述したワークWの表面の位置に加えて又は代えて、ワークWの表面を細分化した各面部分の向き(例えば、各面部分の法線の向きであり、X軸、Y軸及びZ軸の少なくとも一つに対する各面部分の傾斜量と実質的に等価)を含んでいてもよい。ワークWの状態は、ワークWのサイズ(例えば、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の少なくとも一つにおけるサイズ)を含んでいてもよい。
【0129】
第9実施形態では、ステージ31は、加工装置2による付加加工が行われる位置である加工位置と、計測装置8iによる計測が行われる位置である計測位置との間を移動可能であってもよい。ステージ31は、ワークWを支持したまま、加工位置と計測位置との間を移動してもよい。ステージ31が加工位置に位置する場合には、加工装置2は、ステージ31が支持するワークWに対して付加加工を行う。ステージ31が計測位置に位置する場合には、計測装置8iは、ステージ31が支持するワークWを計測する。但し、計測装置8iは、ステージ31が加工位置に位置している状態でワークWを計測可能であってもよい。この場合、加工位置と計測位置とが少なくとも部分的に重複しているとも言える。
【0130】
計測装置8iの計測結果は、制御装置7に出力される。制御装置7は、計測装置8iの計測結果に基づいて、加工システムSYSiの動作を制御してもよい。
【0131】
以上説明した第9実施形態の加工システムSYSiによれば、第1実施形態の加工システムSYSaが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。更に、加工システムSYSiは、計測装置8iの計測結果に基づいて、適切な付加加工を行うことができる。
【0132】
(10)その他の変形例
上述した説明では、エネルギビームELを減衰可能な観察窓65は、開口62に配置されている。つまり、開口62に配置される観察窓65が、開口62に到達したエネルギビームELを減衰している。しかしながら、エネルギビームELを減衰可能な観察窓65は、開口62に配置されていなくてもよい。例えば、図17に示すように、観察窓65は、開口62よりも手前のエネルギビームELの光路上に配置されていてもよい。この場合、観察窓65は、開口62に到達する前のエネルギビームELを減衰し、観察窓65が減衰したエネルギビームELが、開口62を介して外部空間64OUTへ向かう。但し、観察窓65が開口62に配置されない場合には、開口62には、チャンバ空間63INと外部空間64OUTと隔てるための隔壁部材61の少なくとも一部として用いられ、且つ、観察波長帯域の光に対して透明である別の観察窓65’が配置されていてもよい。この別の観察窓65’は、観察窓65とは異なり、エネルギビームELを減衰可能でなくてもよい。
【0133】
上述した説明では、加工装置2は、造形材料Mに加工ビームPLを照射することで、造形材料Mを溶融させている。しかしながら、加工装置2は、任意のビームを造形材料Mに照射することで、造形材料Mを溶融させてもよい。この場合、加工装置2は、照射光学系211に加えて又は代えて、任意のビームを照射可能なビーム照射装置を備えていてもよい。任意のビームは、限定されないが、電子ビーム、イオンビーム等の荷電粒子ビーム又は電磁波を含む。
【0134】
上述した説明では、加工システムSYSは、レーザ肉盛溶接法により3次元構造物STを形成可能である。しかしながら、加工システムSYSは、造形材料Mに加工ビームPL(或いは、任意のビーム)を照射することで3次元構造物STを形成可能なその他の方式により造形材料Mから3次元構造物STを形成してもよい。その他の方式として、例えば、粉末焼結積層造形法(SLS:Selective Laser Sintering)等の粉末床溶融結合法(Powder Bed Fusion)、結合材噴射法(Binder Jetting)又は、レーザメタルフュージョン法(LMF:Laser Metal Fusion)があげられる。或いは、加工システムSYSは、造形材料Mに加工ビームPL(或いは、任意のビーム)を照射することで3次元構造物STを形成可能な方式とは異なる、付加加工のための任意の方式により3次元構造物STを形成してもよい。
【0135】
或いは、加工システムSYSは、付加加工に加えて又は代えて、ワークW等の物体に加工ビームPL(或いは、任意のビーム)を照射して物体の少なくとも一部を除去可能な除去加工を行ってもよい。或いは、加工システムSYSは、付加加工及び除去加工の少なくとも一方に加えて又は代えて、ワークW等の物体に加工ビームPL(或いは、任意のビーム)を照射して物体の少なくとも一部にマーク(例えば、文字、数字又は図形)を形成可能なマーキング加工を行ってもよい。この場合であっても、上述した効果が享受可能である。
【0136】
上述した説明では、加工システムSYSは、照射光学系211が加工光ELを照射する照射領域EAに向けて材料ノズル212から造形材料Mを供給することで、3次元構造物STを形成している。しかしながら、加工システムSYSは、照射光学系211から加工光ELを照射することなく、材料ノズル212から造形材料Mを供給することで3次元構造物STを形成してもよい。例えば、加工システムSYSは、材料ノズル212から、造形面MSに対して造形材料Mを吹き付けることで、造形面MSにおいて造形材料Mを溶融させると共に、溶融した造形材料Mを固化させることで、3次元構造物STを形成してもよい。例えば、加工システムSYSは、材料ノズル212から造形面MSに対して造形材料Mを含む気体を超高速で吹き付けることで、造形面MSにおいて造形材料Mを溶融させると共に、溶融した造形材料Mを固化させることで、3次元構造物STを形成してもよい。例えば、加工システムSYSは、材料ノズル212から造形面MSに対して加熱した造形材料Mを吹き付けることで、造形面MSにおいて造形材料Mを溶融させると共に、溶融した造形材料Mを固化させることで、3次元構造物STを形成してもよい。このように照射光学系211から加工光ELを照射することなく3次元構造物STを形成する場合には、加工システムSYS(特に、加工ヘッド21)は、照射光学系211を備えていなくてもよい。
【0137】
上述の各実施形態の構成要件の少なくとも一部は、上述の各実施形態の構成要件の少なくとも他の一部と適宜組み合わせることができる。上述の各実施形態の構成要件のうちの一部が用いられなくてもよい。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態で引用した全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【0138】
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う加工システム及び加工方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0139】
1 材料供給装置
2 加工装置
21 加工ヘッド
211 照射光学系
212 材料ノズル
6 筐体
61 隔壁部材
62 開口
63IN チャンバ空間
64OUT 外部空間
65 観察窓
651 反射部材
652 吸収部材
SYS 加工システム
W ワーク
M 造形材料
SL 構造層
CS 造形面
EA 照射領域
MA 供給領域
MP 溶融池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17