(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 123/20 20060101AFI20231212BHJP
C09J 123/08 20060101ALI20231212BHJP
C09J 11/00 20060101ALI20231212BHJP
C09J 131/04 20060101ALI20231212BHJP
C09J 123/14 20060101ALI20231212BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C09J123/20
C09J123/08
C09J11/00
C09J131/04
C09J123/14
C09J11/08
(21)【出願番号】P 2021524658
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 JP2019049936
(87)【国際公開番号】W WO2020246063
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2019105977
(32)【優先日】2019-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100221992
【氏名又は名称】篠田 真由美
(72)【発明者】
【氏名】高橋 譲
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/179609(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/061061(WO,A1)
【文献】特開2004-284575(JP,A)
【文献】特開2009-126991(JP,A)
【文献】特開2019-011422(JP,A)
【文献】特開2018-076454(JP,A)
【文献】特表2001-523285(JP,A)
【文献】特表2017-538803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 123/20
C09J 123/08
C09J 11/00
C09J 131/04
C09J 123/14
C09J 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-ブテンホモポリマーと、融点80℃未満のエチレン系重合体と、融点80℃以上のα-オレフィン共重合体と、粘着付与樹脂と、ワックスと、液状軟化剤とを含有し、
前記エチレン系重合体が、エチレン・α-オレフィン共重合体及びエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の共重合体を含む、ホットメルト接着剤組成物。
【請求項2】
前記エチレン系重合体の融点が、65℃以下である、請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項3】
前記融点80℃以上のα-オレフィン共重合体が、融点80℃以上のプロピレン・α-オレフィン共重合体を含む、請求項1又は2に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項4】
前記粘着付与樹脂が、水添系粘着付与樹脂を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項5】
前記ワックスが、ポリプロピレン系ワックスを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項6】
180℃での溶融粘度が100Pa・s以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物を含むホットメルト接着剤層と、自動車内装用表皮材とを備える、自動車内装用のプレコート表皮材。
【請求項8】
請求項7に記載の自動車内装用のプレコート表皮材と、自動車内装用成形品とが少なくとも接着されている、自動車内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車内装材であるドア、インストルメントパネル、天井材、リアトレイ、ピラー等は、一般的に成形品と表皮材とから構成されている。成形品としては、主にポリオレフィン成形品が使用される。表皮材としては、ポリウレタン発泡体、ポリウレタン発泡体付きファブリック、ポリオレフィン発泡体付きシート等の表皮材が使用されている。これら成形品と表皮材とは、接着剤を介して、プレス成形工法、真空成形工法等で接着される。
【0003】
自動車内装用接着剤としては、特に耐熱クリープ特性を満足するために、溶剤型の一液反応系接着剤が使用されている(例えば、特許文献1及び2参照)。しかしながら、環境対応への要求水準が高まり、溶剤型接着剤から無溶剤型接着剤への切り替えが望まれている。
【0004】
無溶剤型接着剤としては、ホットメルト接着剤が挙げられる。ホットメルト接着剤の中でも反応型ホットメルト接着剤は、耐熱性に優れるという特長を有するが、養生時間と塗布作業時及び貯蔵時の安定性とのバランスが得難いという短所を有する。被着体がポリオレフィン成形品である場合の接着性を考慮すると、ポリオレフィンをシラン変性した反応型ホットメルト接着剤が用いることができる(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、このような反応型ポリオレフィン接着剤は、養生時の加水分解反応によって雰囲気中に有機溶剤を放出してしまい、環境対応型接着剤として懸念点を有する。
【0005】
一方、非反応型ホットメルト接着剤は、原材料及び加水分解反応由来の有機溶剤が揮発する懸念が無いため、環境対応型接着剤として有望である。非反応型であるため、接着剤を被着体と貼り合わせた後の養生時間が不要であり、塗布作業時及び貯蔵時の安定性も高く、使い勝手がよい。例えば、特許文献4には、非反応型ホットメルト接着剤を、自動車内装表皮材の裏面に予め塗布してなる自動車内装材用プレコート表皮材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-140522号公報
【文献】特開2005-290339号公報
【文献】特開2013-216724号公報
【文献】特開2004-284575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
冬季の倉庫での保管、寒冷地での輸送等で、表皮材に塗布された接着剤が十分な柔軟性を維持できず、プレコート表皮材を折り曲げた際に接着剤が表皮材もろとも割れしてしまうことがある。そのため、低温環境下では、プレコート表皮材をロール状で保管すること、プレコート表皮材の取り扱い作業等に制約がある。そこで、自動車内装用のホットメルト接着剤には、耐熱性に優れるだけなく、低温下での柔軟性に優れることが求められる。
【0008】
本発明は、良好な接着性及び耐熱性を有し、低温下での柔軟性に優れるホットメルト接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るホットメルト接着剤組成物は、1-ブテンホモポリマーと、融点80℃未満のエチレン系重合体と、融点80℃以上のα-オレフィン共重合体と、粘着付与樹脂と、ワックスと、液状軟化剤とを含有し、エチレン系重合体が、エチレン・α-オレフィン共重合体及びエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の共重合体を含む。
【0010】
エチレン系重合体の融点は、65℃以下であってよい。融点80℃以上のα-オレフィン共重合体は、プロピレン・α-オレフィン共重合体を含んでよい。粘着付与樹脂は、水添系粘着付与樹脂を含んでよい。ワックスは、ポリプロピレン系ワックスを含んでよい。上記接着剤組成物の180℃での溶融粘度は、100Pa・s以下であってよい。
【0011】
本発明に係る自動車内装用のプレコート表皮材は、上記ホットメルト接着剤組成物を含むホットメルト接着剤層と、自動車内装用表皮材とを備える。本発明に係る自動車内装材は、自動車内装用のプレコート表皮材と、自動車内装用成形品とが少なくとも接着されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、良好な接着性及び耐熱性を有し、低温下での柔軟性に優れるホットメルト接着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではない。
【0014】
[ホットメルト接着剤組成物]
本実施形態に係る接着剤組成物は、1-ブテンホモポリマー(以下、「(A)成分」という場合がある。)と、融点80℃未満のエチレン系重合体(以下、「(B)成分」という場合がある。)と、融点80℃以上のα-オレフィン共重合体(以下、「(C)成分」という場合がある。)と、粘着付与樹脂(以下、「(D)成分」という場合がある。)と、ワックス(以下、「(E)成分」という場合がある。)と、液状軟化剤(以下、「(F)成分」という場合がある。)と、を含有する。本実施形態に係る接着剤組成物は、非反応型及び無用剤型のホットメルト接着剤である。
【0015】
以下、接着剤組成物に含まれる各成分について詳述する。本実施形態に係る各成分の含有量は、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)及び(F)成分((A)~(F)成分)の総量100質量部を基準とした割合である。
【0016】
((A)成分)
(A)成分である1-ブテンホモポリマーは、ホモポリマー由来の結晶性により、接着剤組成物に耐熱性を付与することができる。(A)成分のメルトフローレート(MFR)は特に限定されない。接着剤組成物の180℃での溶融粘度を考慮すると、(A)成分のMFRは、190℃、荷重2.16kgの条件下で50g/10分以上、100g/10分以上、又は150g/10分以上であってよい。(A)成分のMFR(190℃、2.16kg)の上限値は、例えば、1000g/10分以下、800g/10分以下、又は500g/10分以下であってよい。
【0017】
接着剤組成物の耐熱性を考慮すると、(A)成分の融点は、80℃以上、100℃以上、又は120℃以上であってよい。(A)成分の融点の上限値は、例えば、150℃以下又は140℃以下であってよい。(A)成分の融点は、(A)成分が溶融状態から固化して10日後の示差走査熱量(DSC)を測定し、融解ピークの頂点の温度である。(A)成分の市販品としては、例えば、ライオンデルバセル社製の商品名「PB0800M」及び「PB0801M」が挙げられる。(A)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0018】
(A)成分の含有量は、接着剤組成物の耐熱性の観点から10質量部以上であってよく、接着剤組成物の固化後の柔軟性を向上する観点から、30質量部以下であってよい。(A)成分の含有量は、好ましくは12~28質量部であり、より好ましくは15~25質量部である。
【0019】
((B)成分)
(B)成分である融点80℃未満のエチレン系重合体は、接着剤組成物に低温下での耐クラック性を付与することができる。(B)成分がポリエチレン構造を有することで、低温下での柔軟性が向上すると推測される。(B)成分は、エチレン・α-オレフィン共重合体及びエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の共重合体を含むことで、接着剤組成物は低温下での柔軟性に優れる。
【0020】
低温下での耐クラック性をより向上することから、(B)成分の融点は、75℃以下、70℃以下、65℃以下、又は60℃以下であってよい。(B)成分の融点の下限値は、例えば、0℃以上、10℃以上、又は20℃以上であってよく、(B)成分は融点を有しなくともよい。(B)成分の融点は、(A)成分の融点と同様の方法で測定することができる。
【0021】
エチレン・α-オレフィン共重合体を構成するα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-オクテン等の炭素数3~8のα-オレフィンが挙げられ、炭素数3又は4のα-オレフィンがより好ましい。
【0022】
エチレン・α-オレフィン共重合体の市販品としては、例えば、三井化学株式会社製の商品名「タフマーDF605」、「タフマーDF610」、「タフマーDF640」、「タフマーDF710」、「タフマーDF740」、「タフマーDF7350」、「タフマーDF810」、「タフマーDF840」、「タフマーDF8200」、「タフマーDF940」及び「タフマーDF9200」(「タフマー」は登録商標)が挙げられる。エチレン・α-オレフィン共重合体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0023】
エチレン・酢酸ビニル共重合体の市販品としては、例えば、東ソー株式会社製の商品名「ウルトラセン635」、「ウルトラセン640」、「ウルトラセン634」、「ウルトラセン680」、「ウルトラセン681」、「ウルトラセン684」、「ウルトラセン685」、「ウルトラセン751」、「ウルトラセン710」、「ウルトラセン720」、「ウルトラセン722」、「ウルトラセン725」「ウルトラセン735」「ウルトラセン750」「ウルトラセン752」及び「ウルトラセン760」(「ウルトラセン」は登録商標);三井・デュポンポリケミカル株式会社製の商品名「エバフレックスEV 45X」、「エバフレックスEV 45LX」、「エバフレックスEV 40W」、「エバフレックスEV 40LX」、「エバフレックスV5774ETWR」、「エバフレックスV5772ETR」、「エバフレックスV5773W」、「エバフレックスEV 150」、「エバフレックスEV 205WR」、「エバフレックスEV 210」、「エバフレックスEV 210ETR」、「エバフレックスEV 220」、「エバフレックスEV 220ETR」、「エバフレックスEV 250」、「エバフレックスEV 260」、「エバフレックスEV 310」、「エバフレックスEV 360」、「エバフレックスV577」、「エバフレックスEV 410」及び「エバフレックスEV 420」(「エバフレックス」は登録商標)が挙げられる。エチレン・酢酸ビニル共重合体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0024】
(B)成分の含有量は、低温下での耐クラック性をより向上する観点から、1質量部以上、2質量部以上、又は3質量部以上であってよい。(B)成分の含有量は、耐熱性をより向上する観点から、20質量部以下、10質量部以下、又は5質量部以下であってよい。
【0025】
((C)成分)
(C)成分である融点80℃以上のα-オレフィン共重合体は、接着剤組成物の溶融時にタックを付与することができると共に、接着剤組成物の固化後の耐熱性を向上することができる。(C)成分は、接着剤組成物の柔軟性、粘着性及び耐熱性の向上に寄与することができる。
【0026】
(C)成分の融点は、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは110℃以上であり、更に好ましくは120℃以上である。(C)成分の融点の上限値は、特に限定されず、160℃以下又は150℃以下であってもよい。(C)成分の融点は、(A)成分の融点と同様の方法で測定することができる。
【0027】
(C)成分の23℃における引張弾性率は、柔軟性の観点から、150MPa以下、100MPa以下、又は50MPa以下であってよい。引張弾性率は、ASTM D638に準拠し、引張試験機を用いて測定することができる。
【0028】
(C)成分の23℃における貯蔵弾性率(E’)は、柔軟性の観点から、150MPa以下、100MPa以下、又は50MPa以下であってよい。(C)成分のE’(23℃)の下限値は特に限定されず、例えば、1MPa以上であってもよい。E’(23℃)は、接着剤組成物を0.5mm厚みのシート状に形成したサンプルを用いて、ひずみ0.05%、周波数1Hz、-70℃から昇温速度3℃/分で行う引張モードでの動的粘弾性測定により測定することができる。
【0029】
α-オレフィン共重合体は、2種以上のα-オレフィンモノマーの共重合体、又はα-オレフィンとα-オレフィン以外のモノマーとの共重合体であってよい。α-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-オクテン等の炭素数3~8のα-オレフィンが挙げられ、炭素数3又は4のα-オレフィンが好ましい。α-オレフィン以外のモノマーとしては、例えば、エチレン、酢酸ビニル等のビニル化合物、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸化合物が挙げられる。(C)成分は、プロピレン・α-オレフィン共重合体(プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体)を含むことが好ましい。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味する。
【0030】
(C)成分の市販品としては、例えば、三井化学株式会社製の商品名「タフマーBL2491M」、「タフマーBL3450M」、「タフマーBL3110M」、「タフマーPN-2070」、「タフマーPN-3560」、「タフマーPN-2060」、「タフマーPN-20300」、及び「タフマーPN-0040」(「タフマー」は登録商標)が挙げられる。(C)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0031】
(C)成分の含有量は、粘着性の観点から7~27質量部、9~25質量部、又は12~22質量部であってよい。
【0032】
((D)成分)
(D)成分である粘着付与樹脂としては、例えば、石油樹脂、ピュアモノマー系石油樹脂、水添石油樹脂、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジン樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、クマロン・インデン樹脂、アルキルフェノール樹脂及びキシレン樹脂が挙げられる。接着剤組成物の溶融時にタックを付与するために、(D)成分は、水添石油樹脂、水添ロジン樹脂、水添テルペン樹脂等の水添系粘着付与樹脂を含んでもよい。
【0033】
(D)成分の市販品としては、例えば、荒川化学株式会社製の商品名「アルコンM90」、「アルコンM100」、「アルコンM115」、「アルコンM135」、「アルコンP90」、「アルコンP100」、「アルコンP115」、「アルコンP125」及び「アルコンP140」(「アルコン」は登録商標);ヤスハラケミカル株式会社製の商品名「YSポリスターT80」、「YSポリスターT100」、「YSポリスターT115」、「YSポリスターT130」、「YSポリスターT145」、「YSポリスターT160」、「YSポリスターS145」、「YSポリスターG125」、「YSポリスターG150」、「クリアロンP85」、「クリアロンP105」、「クリアロンP115」、「クリアロンP125」、「クリアロンP135」及び「クリアロンP150」(「クリアロン」は登録商標);イーストマンケミカル社製の商品名「Eastotac C-100R」、「Eastotac C-100L」、「Eastotac C-100W」、「Eastotac C-115R」、「Eastotac C-115L」、「Eastotac C-115W」、「Eastotac H-100R」、「Eastotac H-100L」、「Eastotac H-100W」、「Eastotac H-115R」、「Eastotac H-115L」、「Eastotac H-115W」、「Eastotac H-130R」、「Eastotac H-130L」、「Eastotac H-130W」、「Eastotac H-142R」、「Eastotac H-142W」、「Regalite R1090」、「Regalite R1100」、「Regalite S1100」、「Regalite R1125」、「Regalite R9100」、「Regalite R7100」、「Regalite S7125」、「Regalite C6100」、「Regalite S5100」、「Regalrez 1085」、「Regalrez 1094」、「Regalrez 1126」、「Regalrez 1128」、「Regalrez 1139」、「Regalrez 6108」及び「Regalrez 3102」が挙げられる。(D)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0034】
(D)成分の軟化点は、90℃以上、100℃以上、115℃以上、又は125℃以上であってよい。(D)成分の軟化点の上限値は、特に限定されず、160℃以下、150℃以下、又は140℃以下であってもよい。該軟化点は、環球法軟化点である。
【0035】
(D)成分の含有量は、粘着性の観点から10~50質量部、15~45質量部、又は20~40質量部であってよい。
【0036】
((E)成分)
(E)成分であるワックスは、接着剤組成物の加熱溶融時の粘度低減効果による被着体への濡れ性付与に加え、接着剤組成物の冷却固化後の耐熱性の発現にも寄与する。(E)成分の軟化点及び/又は融点は、100℃以上、120℃以上、又は140℃以上であってよい。(E)成分の融点(A)成分の融点と同様の方法で測定することができる。接着剤組成物のポリプロピレンへの接着性を考慮すると、(E)成分は、ポリプロピレン構造を有するポリプロピレン系ワックスを含むことが好ましい。
【0037】
(E)成分の市販品としては、例えば、三洋化成工業株式会社製の商品名「ビスコール660-P」及び「ビスコール550-P」(「ビスコール」は登録商標)が挙げられる。(E)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0038】
(E)成分の含有量は、耐熱性の観点から4質量部以上であってよく、柔軟性の観点から26質量部以下であってよい。(E)成分の含有量は、好ましくは8~22質量部であり、より好ましくは10~20質量部である。
【0039】
((F)成分)
(F)成分である液状軟化剤は、常温で液状であるため、接着剤組成物の加熱溶融時に粘着性をより増強することで、被着体への密着性を高め、接着剤組成物の固化後に形成される被膜に柔軟性を与える。
【0040】
(F)成分としては、例えば、流動パラフィン、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、酸無水物変性液状炭化水素、液状ポリイソプレン等の液状ゴム、及び液状ポリブテンが挙げられる。他の成分との良好な相溶性を考慮すると、(F)成分は、液状ポリブテン等の液状炭化水素を含むことが好ましい。
【0041】
(F)成分の100℃での動粘度は、3mm2/s以上、30mm2/s以上、50mm2/s以上、又は100mm2/s以上であってよい。(F)成分の100℃での動粘度の上限値は、1500mm2/s以下、1000mm2/s以下、又は800mm2/s以下であってよい。動粘度は、JIS K2283に準拠して測定することができる。
【0042】
(F)成分の市販品としては、例えば、日油株式会社製の商品名「日油ポリブテン200N」、「日油ポリブテン30N」、「日油ポリブテン10N」及び「日油ポリブテン3N」;三井化学株式会社製「ルーカントHC-2000」、「ルーカントHC-600」及び「ルーカントHC100」(「ルーカント」は登録商標)が挙げられる。(F)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0043】
(F)成分の含有量は、密着性及び柔軟性の観点から5質量部以上であってよく、耐熱性の観点から30質量部以下であってよい。(F)成分の含有量は、好ましくは10~25質量部であり、より好ましくは13~22質量部である。
【0044】
(その他の成分)
本実施形態に係る接着剤組成物は、必要に応じ、酸化防止剤、安定剤、着色剤、相溶化剤、ブロッキング防止剤等の添加剤を更に含有してもよい。添加剤の含有量は、(A)~(F)成分の総量100質量部に対して、20質量部以下、10質量部以下、又は5質量部以下であってよい。
【0045】
塗布性及び耐熱性の観点から、接着剤組成物の180℃での溶融粘度は、100Pa・s以下、10~100Pa・s、又は15~80Pa・sであってよい。溶融粘度は、JIS K6862に準拠し、B型粘度計を用いて測定することができる。
【0046】
溶融可能温度及び耐熱性の観点から、接着剤組成物の軟化点は、115~170℃、125~160℃、又は135~150℃であってよい。軟化点は、JIS K6863に準拠し、環球法にて測定することができる。
【0047】
本実施形態に係る接着剤組成物は、例えば、以下の工程で作製することができる。まず、180℃に設定したニーダーで、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を混練して完全に溶融した後、(A)成分を添加し混練して完全に溶融させる。次に、(E)成分及び(F)成分を添加し混練して溶融物を得る。得られた溶融物は、離型箱等に充填され、又はペレット状等にカットされ、冷却固化して接着剤組成物が作製される。
【0048】
本実施形態に係る接着剤組成物は、非反応型ホットメルト接着剤であり、良好な接着性及び耐熱性を有し、低温下での柔軟性に優れている。該接着剤組成物は、低温下で優れた耐クラック性を付与できると共に、被着体同士を接着した後の成形品に、優れた耐熱クリープ特性を付与することができる。
【0049】
本実施形態に係る被着体の接着方法は、上記接着剤組成物を第1の被着体に塗布してホットメルト接着剤層を形成する工程と、ホットメルト接着剤層を再活性化する工程と、再活性化されたホットメルト接着剤層を介して、第1の被着体と第2の被着体とを圧着する工程と、を含んでよい。接着剤組成物の第1の被着体への塗布量は、例えば、10~300g/m2であってよい。
【0050】
[プレコート表皮材]
本実施形態に係る接着剤組成物は、環境問題を配慮した無溶剤型接着剤であり、塗布後の取り扱い制約が少ない。該接着剤組成物は、ポリオレフィン等の成形品に対して優れた接着性を示す自動車内装用接着剤として使用することができる。接着剤組成物を自動車内装用表皮材に塗布してホットメルト接着剤層を形成することで、自動車内装用のプレコート表皮材を作製することができる。本実施形態に係るプレコート表皮材は、自動車内装用表皮材と、該表皮材に形成された本実施形態に係るホットメルト接着剤層と、を備えることができる。プレコート表皮材のホットメルト接着剤層を介して、自動車内装用成形品を接着することで、自動車内装材を作製することができる。本実施形態に係る自動車内装材は、自動車内装用のプレコート表皮材と、自動車内装用成形品とが少なくとも接着されている。
【0051】
本実施形態に係るプレコート表皮材は、ロールコーター等の塗布装置を用いて、ポリウレタン発泡体、ポリウレタン発泡体付きファブリック、ポリオレフィン発泡体付きシート等の表皮材に、上述の接着剤組成物を塗布して、ホットメルト接着剤層を形成することで作製することができる。プレコート表皮材は、例えば、0℃以下の低温雰囲気で折り曲げてもクラックが発生しない。そのため、プレコート表皮材の保管及び運搬時の制約が少ない。プレコート表皮材を加熱し、ホットメルト接着剤層が溶融した後に、プレス成形又は真空成形によりポリオレフィン成形品と接着させて自動車内装材を得ることができる。本実施形態に係る自動車内装材を、80℃、荷重100gで24時間の耐熱クリープ試験を行った際の剥離長さは、10mm以下とすることができる。すなわち、本実施形態に係る接着剤組成物は、自動車内装用接着剤として、良好な接着性及び耐熱性を有し、低温下での柔軟性に優れる。
【実施例】
【0052】
実施例及び比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0053】
下記(A)~(F)成分及び酸化防止剤を準備した。
((A)成分:1-ブテンホモポリマー)
1-ブテンホモポリマー:ライオンデルバセル社製の商品名「PB0800M」(融点124℃、MFR(l90℃、2.16kg荷重)200g/10分)
【0054】
((B)成分:融点80℃未満のエチレン系重合体)
α-オレフィン共重合体(1):三井化学株式会社製の商品名「タフマーDF7350」(エチレン・α-オレフィン共重合体、融点55℃、MFR(l90℃、2.16kg荷重)35g/10分、引張弾性率(23℃)10MPa、E’(23℃)9MPa)
α-オレフィン共重合体(2):三井化学株式会社製の商品名「タフマーDF640」(エチレン・α-オレフィン共重合体、融点39℃、MFR(l90℃、2.16kg荷重)3.6g/10分、引張弾性率(23℃)5MPa、E’(23℃)4MPa)
EVA(1):東ソー株式会社製の商品名「ウルトラセン735」(エチレン・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含量28質量%、融点67℃、MFR(l90℃、2.16kg荷重)1000g/10分)
EVA(2):東ソー株式会社製の商品名「ウルトラセン710」(エチレン・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含量28質量%、融点69℃、MFR(l90℃、2.16kg荷重)18g/10分)
【0055】
((C)成分:融点80℃以上のα-オレフィン共重合体)
α-オレフィン共重合体(3):三井化学株式会社製の商品名「タフマーBL3450M」(1-ブテン・α-オレフィン共重合体、融点:100℃、MFR(l90℃、2.16kg荷重):4.0g/10分、引張弾性率(23℃):250MPa、E’(23℃):200MPa)
α-オレフィン共重合体(4):三井化学株式会社製の商品名「タフマーPN-2070」(プロピレン・α-オレフィン共重合体、融点:140℃、MFR(230℃、2.16kg荷重):7.0g/10分、引張弾性率(23℃):14MPa、E’(23℃):15MPa)
【0056】
((D)成分:粘着付与樹脂)
粘着付与樹脂(1):荒川化学株式会社製の商品名「アルコンP140」(水添石油樹脂、軟化点:140℃)
粘着付与樹脂(2):荒川化学株式会社製の商品名「アルコンP125」(水添石油樹脂、軟化点:125℃)
【0057】
((E)成分:ワックス)
ポリプロピレンワックス:三洋化成工業株式会社製の商品名「ビスコール660-P」(融点:145℃)
【0058】
((F)成分:液状軟化剤)
液状ポリブテン:日油株式会社製の商品名「日油ポリブテン30N」(動粘度(100℃):670mm2/秒)
【0059】
(酸化防止剤)
ヒンダードフェノール系酸化防止剤:BASFジャパン株式会社製の商品名「Irganox 1010」
リン系酸化防止剤:BASFジャパン株式会社製の商品名「Irgafos 168」
【0060】
[接着剤組成物の作製]
(実施例1)
180℃に設定した内容積2Lのニーダーで、原材料仕込み量合計が1kgとなるように、ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.5質量部と、リン系酸化防止剤0.5質量部と、α-オレフィン共重合体(1)3.0質量部と、α-オレフィン共重合体(4)17.0質量部と、粘着付与樹脂(2)30.0質量部を混練し、完全に溶融した後、1-ブテンホモポリマー19.0質量部を添加し混練して完全に溶融させた。次に、ポリプロピレンワックス14.0質量部及び液状ポリブテン17.0質量部を添加し混練し溶融させた。得られた溶融物を離型箱に充填して、接着剤組成物を得た。
【0061】
(実施例2)
α-オレフィン共重合体(1)をα-オレフィン共重合体(2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を得た。
【0062】
(実施例3)
α-オレフィン共重合体(1)をEVA(1)に変更した以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を得た。
【0063】
(実施例4)
α-オレフィン共重合体(1)をEVA(2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を得た。
【0064】
(実施例5)
粘着付与樹脂(2)の量を27.0質量部に変更し、ポリプロピレンワックスの量を17.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を得た。
【0065】
(実施例6)
粘着付与樹脂(2)30.0質量部を粘着付与樹脂(1)27.0質量部に変更し、ポリプロピレンワックスの量を17.0質量部に変更した以外は、実施例2と同様にして、接着剤組成物を得た。
【0066】
(比較例1)
1-ブテンホモポリマーの量を22.0質量部に変更し、α-オレフィン共重合体(1)を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を得た。
【0067】
(比較例2)
α-オレフィン共重合体(1)をα-オレフィン共重合体(3)に変更した以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を得た。
【0068】
(比較例3)
1-ブテンホモポリマーの量を36.0質量部に変更し、α-オレフィン共重合体(4)の量を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を得た。
【0069】
(比較例4)
1-ブテンホモポリマーを添加せず、α-オレフィン共重合体(4)の量を36.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を得た。
【0070】
(比較例5)
ポリプロピレンワックスの量を31.0質量部に変更し、液状ポリブテンを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を得た。
【0071】
(比較例6)
ポリプロピレンワックスを添加せず、液状ポリブテンの量を31.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を得た。
【0072】
[評価]
実施例及び比較例で作製した接着剤組成物について、以下の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0073】
(1)軟化点測定
JIS K6863に準拠し、接着剤組成物の軟化点を環球法にて測定した。
【0074】
(2)粘度測定
JIS K6862に準拠し、接着剤組成物の180℃での溶融粘度を、B型粘度計を用いて測定した。
【0075】
(3)試験片の作製
表皮材として、ポリプロピレン発泡体付きTPOシート(ポリプロピレン発泡体層厚み:2.0mm、TPOシート厚み:0.5mm、ポリプロピレン発泡体の発泡倍率:20倍)を準備し、ポリオレフィン成形品として、イソプロピルアルコールで脱脂処理したポリプロピレン成形品(日立化成株式会社製、商品名「コウベポリシートPP」の成形板、厚み:2.0mm)を準備した。190℃に設定したロールコーターを使用して、ポリプロピレン発泡体付きTPOシートのポリプロピレン発泡体層側に、接着剤組成物を100g/m2塗布し、ホットメルト接着剤層を有するプレコート表皮材を作製した。プレコート表皮材を25℃で24時間放置した後、遠赤外線ヒーターでホットメルト接着剤層を加熱し、ホットメルト接着剤層の表面温度が160℃になったところで、遠赤外線ヒーターから、プレコート表皮材を25℃雰囲気中に取り出した。次いで、ホットメルト接着剤の表面温度が120℃になる瞬間に、プレコート表皮材と25℃のポリプロピレン成形品とをプレス成形(0.05MPa、10秒間)により圧着して試験片を作製した。比較例4の接着剤組成物は、粘度が著しく大きくなりロールコーターで塗布することができなかったため、試験片を作製できなかった。
【0076】
(4)耐熱クリープ
試験片を作製してから24時間後に、80℃雰囲気中で試験片の表皮材の一端に垂直方向100g/25mmの荷重をかけ、24時間のクリープ試験を行い、剥離長さを測定した。表1及び2において、「A」はポリプロピレン成形品側からの界面破壊、「B」は表皮材の材質破壊、「C」は接着剤層の凝集破壊を示す。比較例3及び5の接着剤組成物の試験片は、クラックが発生したため、耐熱クリープを評価しなかった。
【0077】
(5)剥離接着強さ
試験片を作製してから24時間後に、23℃雰囲気中で引張試験機による180°剥離接着強さを測定した(引張り速度:200mm/分、測定試験片幅:25mm)。表1及び2において、「A」はポリプロピレン成形品側からの界面破壊、「B」は表皮材の材質破壊、「C」は接着剤層の凝集破壊を示す。比較例3及び5の接着剤組成物の試験片は、クラックが発生したため、剥離接着強さを評価しなかった。
【0078】
(6)耐クラック性
プレコート表皮材を23℃雰囲気中で48時間放置した後、100×50mmサイズに切り出したプレコート表皮材を低温槽内に放置した。プレコート表皮材を低温槽内で30分間放置した後、プレコート表皮材の中央部に、低温槽と同じ温度の直径20mmの丸棒を押しあて、プレコート表皮材を巻き付けるようにして3秒間のうちに180°折り曲げ、クラックの有無を目視で確認した。耐クラック性試験は、丸棒に押し当てる面が接着剤層側の場合と、表皮材側の場合とで実施した。両方の試験でクラックが発生していない場合を耐クラック性が「OK」とし、少なくとも片方の試験でクラックが発生した場合を耐クラック性が「NG」と判定した。
【0079】
【0080】