(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】アーチファクト補償メカニズム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20231212BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20231212BHJP
B41J 2/205 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B41J2/01 205
B41J2/21
B41J2/205
B41J2/01 401
B41J2/01 451
(21)【出願番号】P 2022165107
(22)【出願日】2022-10-14
【審査請求日】2022-10-14
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】ミケル スタニッチ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター エフ ケイリー
(72)【発明者】
【氏名】ニキータ グルダス
(72)【発明者】
【氏名】ズリン ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ブランドン スコーゲン
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-138541(JP,A)
【文献】特開2018-133801(JP,A)
【文献】米国特許第10507647(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補償ロジックを記憶する少なくとも1つの物理メモリデバイスと、
前記少なくとも1つの物理メモリデバイスに接続されて前記補償ロジックを実行して、
ペル形成要素アーチファクトのない複数のカラープレーンの各々についての入力デジタルカウントに対する第1の出力インク量を表す第1のインク堆積関数を生成し、
前記ペル形成要素アーチファクトのある前記複数のカラープレーンの各々についての入力デジタルカウントに対する第2の出力インク量を表す第2のインク堆積関数を生成し、
前記第1のインク堆積関数及び前記第2のインク堆積関数に基づいて前記複数のカラープレーンの各々について補償済みハーフトーンを生成する
1つ以上のプロセッサと、
を備
え、
ペル形成要素アーチファクトは印刷不良を含む、システム。
【請求項2】
前記補償済みハーフトーンは、前記ペル形成要素アーチファクトのうちの1つに隣接するペル形成要素列に対応する1つ以上のハーフトーン閾値を修正することにより、各カラープレーンに対して生成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記補償ロジックは、前記第1のインク堆積関数及び前記第2のインク堆積関数に基づいて前記複数のカラープレーンの各々についてアーチファクト補償逆伝達関数を生成し、前記アーチファクト補償逆伝達関数は前記1つ以上のハーフトーン閾値を修正する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ハーフトーン閾値は、前記ペル形成要素アーチファクトのある修正済みハーフトーン閾値に対応す
る出力インク量と前記ペル形成要素アーチファクトのない未修正ハーフトーン閾値に対応する前記第1の出力インク量とが前記入力デジタルカウントの範囲について実質的に等しくなるように、前記アーチファクト補償逆伝達関数により修正される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記アーチファクト補償逆伝達関数は、前記ペル形成要素アーチファクトに隣接する前記ペル形成要素列に対応する前記1つ以上のハーフトーン閾値を修正するように実装される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1のインク堆積関数は、前記ペル形成要素アーチファクトなしで生成されるインクドロップ分布行列に基づいて生成される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1のインク堆積関数を生成することは、ステップチャートデータを受信することと、前記ステップチャートデータに基づいて前記複数のカラープレーンの各々について第1のインクドロップ分布行列を生成することと、前記複数のカラープレーンの各々について第1のインクドロップ空間分布行列を生成することと、前記第1のインクドロップ分布行列を対応する第1のインクドロップ空間分布行列と畳み込んで前記第1のインク堆積関数を生成することとを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記第2のインク堆積関数を生成することは、ペル形成要素アーチファクトを含めるように前記第1のインクドロップ分布行列を修正して第2のインクドロップ分布行列を生成することと、前記第2のインクドロップ分布行列を対応する第1のインクドロップ空間分布行列と畳み込んで前記第2のインク堆積関数を生成することとを含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記補償ロジックは、前記複数のカラープレーンの各々について画像データに前記補償済みハーフトーンを適用する、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
インク堆積関数は、ペル形成要素列の関数である、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1及び第2のインク堆積関数は、共通のハーフトーン設計に対応する、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
複数のペル形成要素を含む印刷エンジン、をさらに備える請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
ペル形成要素アーチファクトのない複数のカラープレーンの各々についての入力デジタルカウントに対する第1の出力インク量を表す第1のインク堆積関数を生成するステップと、
前記ペル形成要素アーチファクトのある前記複数のカラープレーンの各々についての入力デジタルカウントに対する第2の出力インク量を表す第2のインク堆積関数を生成するステップと、
前記第1のインク堆積関数及び前記第2のインク堆積関数に基づいて前記複数のカラープレーンの各々について補償済みハーフトーンを生成するステップと、
を含
み、
ペル形成要素アーチファクトは印刷不良を含む、方法。
【請求項14】
前記補償済みハーフトーンを生成することは、前記ペル形成要素アーチファクトのうちの1つに隣接するペル形成要素列に対応する1つ以上のハーフトーン閾値を修正することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のインク堆積関数及び前記第2のインク堆積関数に基づいて前記複数のカラープレーンの各々についてアーチファクト補償逆伝達関数を生成するステップであり、前記アーチファクト補償逆伝達関数は前記1つ以上のハーフトーン閾値を修正する、ステップ、をさらに含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ハーフトーン閾値は、前記ペル形成要素アーチファクトのある修正済みハーフトーン閾値に対応す
る出力インク量と前記ペル形成要素アーチファクトのない未修正ハーフトーン閾値に対応する前記第1の出力インク量とが前記入力デジタルカウントの範囲について実質的に等しくなるように、前記アーチファクト補償逆伝達関数により修正される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アーチファクト補償逆伝達関数は、前記ペル形成要素アーチファクトに隣接する前記ペル形成要素列に対応する前記1つ以上のハーフトーン閾値を修正するように実装される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記複数のカラープレーンの各々について画像データに前記補償済みハーフトーンを適用するステップ、をさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項19】
命令を記憶させた少なくとも1つのコンピュータ読取可能媒体であって、前記命令は、1つ以上のプロセッサにより実行されたときに前記プロセッサに、
ペル形成要素アーチファクトのない複数のカラープレーンの各々についての入力デジタルカウントに対する第1の出力インク量を表す第1のインク堆積関数を生成し、
前記ペル形成要素アーチファクトのある前記複数のカラープレーンの各々についての入力デジタルカウントに対する第2の出力インク量を表す第2のインク堆積関数を生成し、
前記第1のインク堆積関数及び前記第2のインク堆積関数に基づいて前記複数のカラープレーンの各々について補償済みハーフトーンを生成する
ことをさ
せ、
ペル形成要素アーチファクトは印刷不良を含む、コンピュータ読取可能媒体。
【請求項20】
前記補償済みハーフトーンを生成することは、前記ペル形成要素アーチファクトのうちの1つに隣接するペル形成要素列に対応する1つ以上のハーフトーン閾値を修正することを含む、請求項19に記載のコンピュータ読取可能媒体。
【請求項21】
1つ以上のプロセッサにより実行されたときに前記プロセッサに、前記第1のインク堆積関数及び前記第2のインク堆積関数に基づいて前記複数のカラープレーンの各々についてアーチファクト補償逆伝達関数を生成し、前記アーチファクト補償逆伝達関数は前記1つ以上のハーフトーン閾値を修正する、ことをさらにさせる命令を記憶させた請求項20に記載のコンピュータ読取可能媒体。
【請求項22】
前記ハーフトーン閾値は、前記ペル形成要素アーチファクトのある修正済みハーフトーン閾値に対応す
る出力インク量と前記ペル形成要素アーチファクトのない未修正ハーフトーン閾値に対応する前記第1の出力インク量とが前記入力デジタルカウントの範囲について実質的に等しくなるように、前記アーチファクト補償逆伝達関数により修正される、請求項21に記載のコンピュータ読取可能媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像再現の分野に関し、特に、均一性補償に関する。
【背景技術】
【0002】
実質的な印刷需要を有するエンティティは、典型的には、ボリューム印刷(例えば、1分あたり100ページ又はそれ以上)のための高速生産プリンタを実装する。生産プリンタは、大きいロールに格納された印刷媒体(又は、紙)のウェブ上に印刷する連続フォームプリンタを含むことがある。生産プリンタは、典型的には、印刷システムの全体的な動作を制御するローカライズされた印刷コントローラと、1つ以上の印刷ヘッドアセンブリを含む印刷エンジンとを含み、各アセンブリは、印刷ヘッドコントローラ及び印刷ヘッド(又は、印刷ヘッドのアレイ)を含む。各印刷ヘッドは、媒体上に印刷するのに適したインク又は任意の着色剤の噴出のための多数のノズル(例えば、インクジェットノズル)を含む。
【0003】
印刷動作を開始する前に、測定された応答差について、及び正しく噴射していない印刷ヘッドノズル(すなわち、不良ノズル)について補償するために、均一性補償が実行されることがある。不良ノズルの補償方法は、ノズルの均一性補償に基づく。しかしながら、様々なノズルがプリンタ動作の間に不良になり、これは、不良ノズルにより引き起こされる噴射出力の望ましくない変化(例えば、ジェットアウト又は逸脱した噴射などのインク堆積アーチファクト)をもたらす可能性がある。
【0004】
現在の均一性補償は、ノズルの光学的測定の複数の反復に依存して隣接するノズルの適切な補償を取得し、正しく噴射していないノズルを補償する。補償の複数の反復を行う必要があることは、それが時間を要し、テストパターンのより多くの印刷を必要とするため、非効率的なプロセスである。
【0005】
したがって、ジェットアウト及び逸脱した噴射に対するノズル補償を実行するための改良されたメカニズムが望まれる。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態において、システムが開示される。このシステムは、補償ロジックを記憶する少なくとも1つの物理メモリデバイスと、少なくとも1つの物理メモリデバイスに接続されて補償ロジックを実行して、ペル形成要素アーチファクトのない複数のカラープレーンの各々についての入力デジタルカウントに対する第1の出力インク量を表す第1のインク堆積関数を生成し、ペル形成要素アーチファクトのある複数のカラープレーンの各々についての入力デジタルカウントに対する第2の出力インク量を表す第2のインク堆積関数を生成し、第1のインク堆積関数及び第2のインク堆積関数に基づいて複数のカラープレーンの各々について補償済みハーフトーンを生成する、1つ以上のプロセッサと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明のより良い理解は、以下の図面と関連して以下の詳細な説明から得ることができる。
【
図1】印刷システムの一実施形態のブロック図である。
【
図2A】印刷コントローラの一実施形態のブロック図である。
【
図2B】ジェットアウトノズル/逸脱噴射ノズルの位置に対する閾値データの列の補償の一実施形態を示す。
【
図4】インク堆積計算ロジックの一実施形態を示す。
【
図5】インク堆積を計算するプロセスの一実施形態を示すフロー図である。
【
図6】インク堆積を計算するプロセスの別の実施形態を示すフロー図である。
【
図8】伝達関数を生成するプロセスの一実施形態を示すフロー図である。
【
図9】補償済みハーフトーンを生成するプロセスの一実施形態を示すフロー図である。
【
図11】検証プロセスの一実施形態を示すフロー図である。
【
図12】検証プロセスの別の実施形態を示すフロー図である。
【
図13】ネットワーク内に実装された補償モジュールの一実施形態を示す。
【
図14】コンピュータシステムの一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
アーチファクト補償メカニズムについて記載する。以下の記載では、説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために多数の特定の詳細が記載されている。しかしながら、当業者には、本発明がこれらの特定の詳細の一部なしに実施され得ることが明らかであろう。他の例では、本発明の基礎をなす原理を分かりにくくすることを避けるために、周知の構造及びデバイスはブロック図形式で示されている。
【0009】
明細書中の「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造、又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。明細書中の様々な箇所におけるフレーズ「一実施形態において」の出現は、必ずしも全て同じ実施形態を参照しているわけではない。
【0010】
図1は、印刷システム130の一実施形態を示すブロック図である。ホストシステム110は、印刷システム130と通信して、プリンタ160(例えば、印刷エンジン)を介して印刷媒体180上にシートイメージ120を印刷する。印刷媒体180は、紙、カードストック、板紙、段ボール、フィルム、プラスチック、合成繊維、テキスタイル、ガラス、複合材料、又は印刷に適した任意の他の有形媒体を含んでもよい。印刷媒体180のフォーマットは、連続フォーム若しくはカットシート、又は印刷に適した任意の他のフォーマットでもよい。プリンタ160は、インクジェット、電子写真方式、又は他の適切なプリンタタイプでもよい。
【0011】
一実施形態において、プリンタ160は、1つ以上の印刷ヘッド162を備え、各々が、印刷媒体にマーキング材料が適用された印刷媒体180上の画素(ペル(pels))の表現を直接的又は間接的に(例えば、中間物を介したマーキング材料の転写により)形成する1つ以上のペル形成要素165を含む。インクジェットプリンタにおいて、ペル形成要素165は、印刷媒体180上にインクを噴出する有形のデバイス(例えば、インクジェットノズル)であり、電子写真(EP)プリンタにおいて、ペル形成要素は、印刷媒体上に印刷されたトナー粒子の位置を決定する有形のデバイス(例えば、EP露光LED又はEP露光レーザ)でもよい。
【0012】
一実施形態によれば、ペル形成要素は、1つ以上の印刷ヘッド上にグループ化されてもよい。ペル形成要素165は、設計上の選択の問題として、(例えば、固定印刷ヘッドの一部として)固定でもよく、あるいは(例えば、印刷媒体180にわたり移動する印刷ヘッドの一部として)移動してもよい。さらなる実施形態において、ペル形成要素165は、マーキング材料のタイプ(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラック(CMYK))に対応する1つ以上のカラープレーンのうちの1つに割り当てられてもよい。これらのタイプのマーキング材料は、原色と呼ばれることがある。
【0013】
プリンタ160は、ペル形成要素165の複数のセットが印刷媒体180上の印刷画像の同じ領域を印刷する、マルチパスプリンタ(例えば、デュアルパス、3パス、4パスなど)でもよい。このような実施形態において、ペル形成要素165のセットは、同じ物理的構造(例えば、インクジェット印刷ヘッド上のノズルのアレイ)又は別個の物理的構造上に配置されてよい。結果として生じる印刷媒体180は、黒と白を含む、カラーにおいて、及び/又は複数のグレー階調のいずれかにおいて印刷され得る(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラック(CMYK)、及び、2つの原色の組み合わせを用いて得られる二次色(例えば、赤、緑、及び青))。ホストシステム110は、パーソナルコンピュータ、サーバ、又はさらにはデジタルイメージングデバイス、例えばデジタルカメラ又はスキャナなどの、任意のコンピューティングデバイスを含んでもよい。
【0014】
シートイメージ120は、印刷媒体180のシート上の画像がどのように印刷されるべきかを記述する任意のファイル又はデータであってよい。例えば、シートイメージ120は、PostScriptデータ、Printer Command Language(PCL)データ、及び/又は任意の他のプリンタ言語データを含んでもよい。印刷コントローラ140は、シートイメージを処理して送信のためのビットマップ150を生成する。ビットマップ150は、印刷媒体180に対して印刷するためのハーフトーン処理された(halftoned)ビットマップ(例えば、補償済み(compensated)ハーフトーンから生成された補償済みハーフトーンビットマップ、又は未補償(un-compensated)ハーフトーンから生成された未補償ハーフトーンビットマップ)でもよい。印刷システム130は、比較的高ボリューム(例えば、1分あたり100ページ超)を印刷するように動作可能な高速プリンタでもよい。
【0015】
印刷媒体180は、連続フォーム紙、カットシート紙、及び/又は印刷に適した任意の他の有形媒体でもよい。印刷システム130は、1つの一般化された形態では、シートイメージ120に基づいて印刷媒体180上にビットマップ150を(例えば、トナー、インク等を介して)描写するプリンタ160を含む。印刷システム130のコンポーネントとして示されているが、他の実施形態が、印刷コントローラ140に通信可能に接続された独立したデバイスとしてのプリンタ160を特徴としてもよい。
【0016】
印刷コントローラ140は、印刷媒体180上への印刷に従うビットマップ150を生成するためにシートイメージ120を変換するように動作可能な任意のシステム、デバイス、ソフトウェア、回路、及び/又は他の適切なコンポーネントでもよい。これに関して、印刷コントローラ140は、処理及びデータ記憶能力を含んでもよい。一実施形態において、測定モジュール190は、印刷媒体180の測定値を取得するために、ハーフトーン補償システムの一部として実装される。測定された結果は、ハーフトーン補償プロセスで使用されるように印刷コントローラ140に伝達される。測定システムは、スタンドアロンプロセスでもよく、あるいは印刷システム130に統合されてもよい。
【0017】
一実施形態によれば、測定モジュール190は、印刷媒体180上の印刷された画像の光学的測定を行うセンサでもよい。測定モジュール190は、測定データを生成し、送信することができる。測定データは、OD(例えば、光学濃度)、知覚的明度(例えば、CIELAB色空間L*a*b*におけるL*)、及び/又は印刷された画像に対応するスキャンされた画像(例えば、RGB)データでもよい。一実施形態において、測定モジュール190は、いくつかの又は全てのペル形成要素165について生成された印刷マーキングの測定を個々に又は全体で行う1つ以上のセンサを含んでもよい。別の実施形態において、測定モジュール190は、カメラシステム、インラインスキャナ、濃度計、又は分光光度計でもよい。
【0018】
さらなる実施形態において、測定データは、測定データの部分(例えば、ODデータ)を、この測定データの部分に寄与した対応するペル形成要素165と相関させるためのマップ情報を含んでもよい。別の実施形態では、テストパターン(例えば、ステップチャート)の印刷命令が、測定データの部分の、この測定データの部分に寄与した対応するペル形成要素への相関を提供する。
【0019】
図2は、印刷コントローラ140の一実施形態を示すブロック図である。印刷コントローラ140は、その一般化された形態では、インタプリタモジュール212、ハーフトーン処理(halftoning)モジュール214、及び補償モジュール216を含む。これらの別個のコンポーネントは、印刷コントローラ140を実装するために使用されるハードウェアを表すことができる。代わりに又はさらに、別個のコンポーネントは、プリンタコントローラ140のプロセッサ内でソフトウェア命令を実行することにより実施される論理ブロックを表してもよい。
【0020】
インタプリタモジュール212は、印刷ジョブの画像(例えば、シートイメージ120などの生のシートサイド(sheetside)イメージ)をシートサイドビットマップに解釈、レンダリング、ラスタライズ、又はその他の方法でコンバートするように動作可能である。各原色についてインタプリタモジュール212により生成されるシートサイドビットマップは各々、フルのシートサイドビットマップとも呼ばれる、印刷ジョブの画像(すなわち、連続階調画像(Continuous Tone Image、CTI))を表すペルの2次元配列である。2次元のペル配列は、ビットマップが画像のためのペルのセット全体を含むため、「フル」シートサイドビットマップと見なされる。インタプリタモジュール212は、複数の生のシートサイドを同時に解釈又はレンダリングするように動作可能であり、それにより、レンダリングのレートは、生産印刷エンジンの画像化のレートに実質的に合致する。一実施形態において、伝達関数が印刷コントローラ140により実装され、印刷の前の画像処理の一部として画像データに直接適用されてもよい。その場合、コントーン(contone)画像データ(CTI)は、ハーフトーン処理の前に伝達関数により変換される。
【0021】
ハーフトーン処理モジュール214は、シートサイドビットマップをインクのハーフトーンパターンとして表現するように動作可能である。例えば、ハーフトーン処理モジュール214は、紙への適用のためにペル(ピクセルとしても知られている)をCMYKインクのハーフトーンパターンにコンバートすることができる。ハーフトーン設計は、ペル位置に基づく、入力ペルグレーレベルの、出力ドロップサイズへの所定のマッピングを含むことができる。
【0022】
一実施形態において、ハーフトーン設計は、ゼロで始まり最大ドロップサイズで終わる連続的に大きくなるドロップサイズの有限集合の間の、遷移閾値の有限セットを含んでもよい。ハーフトーン設計は、シングルビット閾値配列又はマルチビット閾値配列などの閾値配列(例えば、ハーフトーン閾値配列)として実装されてもよい。別の実施形態において、ハーフトーン設計は、全ての含まれるグレーレベル値を有する3次元ルックアップテーブルとして実装されてもよい。
【0023】
さらなる実施形態において、ハーフトーン処理モジュール214は、シートサイドビットマップにおける各ペルのための閾値のセットで構成されるハーフトーン設計を使用してマルチビットハーフトーン処理を実行し、その場合、各々の非ゼロのインクドロップサイズに対して1つの閾値が存在する。ペルは、そのペルの閾値に対応するドロップサイズを用いてハーフトーン処理される。ペルの集合のためのこれらの閾値のセットは、マルチビット閾値配列(MTA)と呼ばれる。
【0024】
マルチビットハーフトーン処理は、ハーフトーンスクリーニング動作であり、その最終的な結果は、印刷エンジンが印刷のために利用することができるドロップサイズのセット全体からの、利用可能な特定のドロップサイズの選択である。単一ペルのコントーン値に基づくドロップサイズ選択は、「点演算(Point Operation)」ハーフトーン処理と呼ばれる。ドロップサイズ選択は、シートサイドビットマップにおけるペル値に基づく。これは、印刷されるペルの付近の複数のペルがドロップサイズを決定するために使用される「近傍演算(Neighborhood Operation)」ハーフトーン処理と対照的である。近傍演算ハーフトーン処理の例には、周知の誤差拡散法が含まれる。
【0025】
マルチビットハーフトーン処理は、二値ハーフトーン処理の拡張であり、この場合、二値ハーフトーン処理は、論理演算と組み合わせられた単一の閾値配列を使用して、ペルのためのコントーンレベルに基づいてドロップが印刷されるかを判断することができる。二値ハーフトーン処理は、非ゼロのドロップサイズにゼロのドロップサイズ(すなわち、インクが噴出されない場合の、無しのドロップサイズ)を加えたものを使用する。マルチビットハーフトーン処理は、二値閾値配列概念を2つ以上の非ゼロのドロップサイズに拡張する。
【0026】
マルチビットハーフトーン処理は、各々の非ゼロのドロップサイズに対して1つの閾値配列の、複数の閾値配列(すなわち、マルチビット閾値配列)を使用することができる。さらに、点演算ロジックは、各ペルのための閾値及び画像コントーンデータを比較することによりドロップサイズを決定するために、より多くの、及びより少ない、又は等しい演算のセットに拡張される。マルチビットは、2のべき乗個のドロップサイズのセットを定義する(例えば、2ビットのハーフトーン設計は、ゼロのドロップサイズを含む、合計4つのドロップを有する)。ドロップの数を定義するために2のべき乗が利用され得るが、これに従わないシステム、例えば、合計3つのドロップのシステムが使用されてもよく、依然としてマルチビットと考えられる。
【0027】
補償モジュール216は、印刷コントローラ140で受け取った未補償ハーフトーン218又は前に生成された均一性補償されたハーフトーン218に対する補償プロセスを実行して、1つ以上の補償済みハーフトーン220を生成する。次いで、補償済みハーフトーン220は、シートサイドビットマップと共にハーフトーン処理モジュール214において受け取られる。一実施形態において、未補償ハーフトーン218は、補償済みハーフトーンを作成するために修正される参照ハーフトーン設計を表す。このような実施形態では、印刷に未補償ハーフトーン218を使用して、測定モジュール190を介してシステム応答の測定値を受信する。
【0028】
一実施形態によれば、補償モジュール216はさらに、不良ペル形成要素165のアーチファクト(例えば、ジェットアウト(jet-out)、逸脱した噴射(deviated jet)等)補償を実行するために実装されてもよい。本明細書で用いられるとき、ジェットアウトは、完全に詰まったインクジェットノズルにより引き起こされる印刷不良(例えば、ペル形成要素アーチファクト)であり、その結果、詰まったインクジェットノズルが射出するように指示されたとき、印刷媒体上にインクが堆積されない。逸脱した噴射は、部分的に詰まったインクジェットノズルにより引き起こされる印刷不良(例えば、ペル形成要素アーチファクト)であり、その結果、インクジェットノズルが射出するように指示されたときに印刷媒体上にインクドロップが堆積されるが、インクドロップは、詰まっていないインクジェットノズルの公称(nominal)堆積位置から相当に逸脱した印刷媒体上の位置に堆積される。
【0029】
さらなる実施形態において、補償モジュール216は、ペル形成要素165のアーチファクトなしで生成されるデータ、及びペル形成要素165のアーチファクトありで生成されるデータにそれぞれ対応する、第1及び第2のインク堆積関数を生成する。インク堆積量は、面積あたりのインク又は着色剤の体積、例えば、平方センチメートルあたりのミリリットルであるように定義される。代替的に、面積あたりのインク又は着色剤の質量、例えば、平方センチメートルあたりのミリグラムを利用することもできる。第1のインク堆積関数は、複数のカラープレーンの各々についての入力デジタルカウント(DC)に対する第1の出力インク量を表し、第2のインク堆積関数は、複数のカラープレーンの各々についての入力デジタルカウントに対する第2の出力インク量を表す。
【0030】
続いて、補償モジュール216は、第1のインク堆積関数及び第2のインク堆積関数に基づいて複数のカラープレーンの各々について伝達関数(例えば、アーチファクト補償伝達関数)を生成する。さらなる実施形態において、伝達関数は、変換済み入力デジタルカウントを含み、変換済み入力デジタルカウントに関連づけられた第2の出力インク量は、未変換入力デジタルカウントの範囲について、未変換入力デジタルカウントに関連づけられた第1の出力インク量に対応する。このような実施形態において、第1及び第2の出力インク量は、未変換入力デジタルカウントの範囲にわたって実質的に等しい(例えば、所定の閾値内である)。伝達関数により定義される入力デジタルカウントの変換は、アーチファクトのいずれかの側の近隣の(例えば、隣接する)列に対応するデータの列に対する画像データに適用される。この場合、列は、ウェブ(web)移動方向、すなわち処理方向に平行な方向にある。画像データの修正は、アーチファクトの各側において1つ、2つ、又はそれ以上の画像データ列に適用されてもよい。したがって、フルの補償は、2つ、4つ、又はそれ以上の画像データ列を含む。画像データの列の対称的な修正が好ましいが、それは必要ではない。したがって、画像データに対する修正は、アーチファクトに隣接する1つ、3つ等の画像データ列にのみ適用されてもよい。
【0031】
代替的な実施形態において、補償モジュール216は、補償済みハーフトーン220を生成することができる。このような実施形態において、補償モジュール216は、第1のインク堆積関数及び第2のインク堆積関数から導出された複数のカラープレーンの各々についての逆伝達関数(例えば、アーチファクト補償逆伝達関数)に基づいて、複数のカラープレーンの各々について補償済みハーフトーン220を生成する。この場合、導出された逆伝達関数は、ペル形成アーチファクト(例えば、アーチファクト)と呼ばれるジェットアウト又は逸脱した噴射の位置付近において、ハーフトーン閾値配列の閾値を変換する(例えば、修正する)ために使用される。このような実施形態において、ハーフトーン閾値は、ペル形成要素アーチファクトのある修正済みハーフトーン閾値に対応する出力インク量とペル形成要素アーチファクトのない未修正ハーフトーン閾値に対応する出力インク量とが入力デジタルカウントの範囲について実質的に等しくなるように、アーチファクト補償逆伝達関数により修正される。換言すれば、アーチファクト逆伝達関数は、それらがハーフトーン閾値を修正するために適用されるとき、ペル形成要素アーチファクトが存在する修正済みハーフトーン閾値に対応する出力インク量とペル形成要素アーチファクトが存在しない未修正ハーフトーン閾値に対応する出力インク量とが入力デジタルカウントの範囲について実質的に等しくなるように生成される。
【0032】
逆伝達関数により定義される閾値変換は、ペル形成要素アーチファクトのいずれかの側の近隣の(例えば、隣接する)ペル形成要素列に対応するデータの1つ以上の列のためのハーフトーン閾値配列における1つ以上の閾値に適用され、ここで、列は、ウェブ移動方向、すなわち処理方向に平行な方向にある。閾値データの修正は、ドロップサイズの各々について、アーチファクトの各側における1つ、2つ、又はそれ以上の閾値データ列に適用されてもよい。したがって、フルの閾値修正は、ドロップサイズの各々についてそれぞれ、2つ、4つ、又はそれ以上の閾値データ列を含む。閾値データの列の対称的な修正が好ましいが、それは必要ではない。したがって、閾値データに対する修正は、アーチファクトに隣接する1つ、3つ等の閾値データ列にのみ適用されてもよい。
【0033】
図2Bは、ジェットアウト/逸脱噴射ノズルの位置に対する閾値データの列の補償の一実施形態を示す。この例において、ジェットアウトは、プロットされたデータの中央に位置する。ジェットアウトアーチファクトにより生じたインク堆積の欠落を補償するために、ジェットアウトの各側に2つ、4つのガウス分布がブーストされている。各デジタルカウント(DC)においてこれらの4つの補償ノズルに適用されるレベルは、第1及び第2のインク堆積関数から生成される伝達関数(TF)から得られる。中央の曲線は、DCレベル217におけるガウス分布の全てからの総インク堆積を示す。この曲線は、ジェットアウト位置での「谷」におけるレベルがジェットアウト領域の外側(例えば、エッジの近く)のインク堆積と等しくなるように、ブーストされた4つのノズルがインク堆積の増加を提供したことを示す。上部における曲線は、ジェットアウトなしでレベル255において生じるインク堆積を示す。ジェットアウト補償なしでは、ガウス分布のセットは全て同じになり、ブーストがないことになる。
【0034】
図3は、補償モジュール216の一実施形態を示す。
図3に示すように、補償モジュール216は、ステップチャートを生成するために実装されたステップチャート生成器310を含む。一実施形態において、ステップチャート生成器310は、未補償ハーフトーン218に基づいて、ジェットアウト又は逸脱した噴射を有さない(又は、これらのない)ペル形成要素165のためのステップチャートを生成する。このような実施形態において、ステップチャートは、ステップチャートを生成するために、補償のない初期の未補償ハーフトーン218閾値配列に関連づけられた閾値配列を使用する。
【0035】
一実施形態において、ステップチャートは、均一な密度の複数のステップ(例えば、バー又はストライプ)を含むCMYKテスト印刷画像(又は、ステップチャート画像)を生成するために、プリンタ160のペル形成要素165により生成され、プリンタにより使用されるインクの各色に対して、少なくとも1つの閾値配列が存在し得る。ストライプのDCレベルは、紙の白色(インクなし)から各インク色の最大DCレベルに及ぶことができる。ストライプ又はバーは、印刷ヘッドのあらゆるセグメント又は部分がインクのあらゆる色及び階調を生成するように構成される。ハーフトーン閾値配列におけるランダムな変動が平均化により除去されるように、十分なペルがバーの高さに含まれる。一実施形態において、ハーフトーン閾値配列内の各行について、各バーに1つの行が存在し、それにより、各バーは、ハーフトーン設計の閾値分布の完全なサンプルを構成する。各バーにおける列の数は、ジェットアウト又は逸脱した噴射のアーチファクトの周囲の領域における印刷を表す。すなわち、この数の列は、アーチファクト領域に隣接するノズルからのインクの寄与の全てを含む。例えば、21列を用いると、エッジ効果を低減させるための、各エッジの近くの5列、アーチファクトにより引き起こされるインク堆積変化を考慮するための、アーチファクトの各側における5列、及びアーチファクトが位置する1列がある。
【0036】
補償モジュール216は、インク堆積計算ロジック320をさらに含む。一実施形態によれば、インク堆積計算ロジック320は、ステップチャート画像を受け取り、ペル形成要素アーチファクトのないコントーン(DC)レベルデータに基づくインク堆積関数(例えば、第1のインク堆積関数)を生成する。
図4は、インク堆積計算ロジック320の一実施形態を示す。
【0037】
図4に示すように、インク堆積計算ロジック320は、画像コンバージョンロジック410、ドロップサイズ生成エンジン420、畳み込み生成エンジン430、及びインク堆積関数生成器440を含む。画像コンバージョンロジック410は、ステップチャート生成器310から取得されるステップチャートデータ401(例えば、ステップチャート画像、ステップチャートコントーン画像など)を受け取り、CMYKステップチャート画像を別個のC、M、Y、及びK画像にコンバートする。さらなる実施形態において、画像コンバージョンロジック410はさらに、受け取った未補償ハーフトーン218を使用して、ステップチャート画像を各色のそれぞれのインク堆積レベルにコンバートする。ステップチャートにおける各ペルは単一のドロップサイズに関連づけられるが、インク堆積ロジック320から得られるインク堆積レベルは、精度を向上させるために、ステップチャートより高い解像度で決定されてもよい。したがって、インク堆積は、サブペル(sub-pel)レベルを提供するために、ステップチャートの解像度より3倍、5倍等大きい解像度で決定されてもよい。これは、ジェットアウトアーチファクトの中心に位置する2つのノズルの間の点における第1及び第2のインク堆積関数を計算することを容易にする。このような実施形態では、未補償ハーフトーン218をマルチビット閾値配列として受け取る。
【0038】
ドロップサイズ生成エンジン420は、C、M、Y、及びKステップチャートデータ401、並びにドロップサイズデータ402を受け取って、各カラープレーンに関連づけられたドロップサイズ行列(例えば、Drop_modulation_matrix(x,y)を生成する。一実施形態において、ドロップサイズ行列は、ステップチャート画像におけるあらゆるペルに対するドロップサイズの行列を含む。したがって、ドロップサイズ生成エンジン420は、CMYKステップチャートデータにおけるコントーンレベルを、各ペルに関連づけられたシンボリックなドロップサイズ値(例えば、無し、小、中、大のドロップサイズ)にコンバートする。コントーンレベルの、シンボリックなドロップサイズへのコンバージョンは、各色に対するそれぞれの閾値配列により定義されるハーフトーン処理を使用して達成され得る。最後、各ペルにおけるあらゆるドロップのシンボリック値は、ドロップサイズデータ402を使用して、各ドロップの質量又は体積の数量である実際のドロップサイズにコンバートされる。その結果、ドロップサイズ行列は、ステップチャートにおけるあらゆるペルのための実際のドロップサイズを有する。ドロップサイズ行列は、以下に説明する畳み込みで使用される畳み込み変調行列を定義する。
【0039】
畳み込みカーネル生成エンジン430は、ガウス分布ドロップ標準偏差データ403(例えば、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)350を介して受け取られる)に基づいて、単一ドロップのための各カラープレーン(C、M、Y、及びK)の畳み込みカーネルを作成する。畳み込みカーネルは、インクの単一の印刷されたドロップの空間分布行列を表す。ガウス分布は、印刷されたドロップのインク堆積がどのようにして中心から離れて徐々に変化するかを記述するために使用され、単一の印刷されたインクドロップの空間分布内の任意の点におけるインク堆積のための閉形式表現を提供する。一実施形態において、以下のように、単一ドロップ質量(TM)が仮定され、インクの楕円ガウス分布が使用され、したがって、
ID(x,y) = Peak_ink_deposition * exp-((x^2)/(2*a^2)+(y^2)/(2*b^2))
である。ID(x,y)は、以下のように、x方向関数及びy方向関数の積として分離可能な形式にコンバートすることができ、したがって、
ID(x,y) = Peak_ink_deposition * (exp-((x^2)/(2*a^2))*(exp-((y^2)/(2*b^2))
である。ここで、Peak_ink_deposition = 面積あたりの最大インク質量 = TM/(2*pi*a*b))であり、x及びyは、X方向及びY方向における距離であり、a及びbは、X方向及びY方向に沿ったガウス分布の標準偏差である。
代替的に、面積あたりの体積の観点からインク堆積を得るために、質量の代わりに、単一ドロップの体積がTMに使用されてもよい。
【0040】
一実施形態によれば、「x」の大きさは、ステップチャートの、ウェブに交差する(cross-web)方向における(例えば、ペル形成要素165に沿った)異なる列の水平位置を表し、「y」は、ステップチャートの処理/ウェブ移動方向における垂直位置測定を表す。畳み込みカーネルの式を定式化するために、前の式が修正される。GaussKernel(x,y) = ink_deposition_Factor * (exp-(((x-deltax)^2)/(2*a^2))*(exp-(((y-deltay)^2)/(2*b^2))であり、ここで、ink_deposition_Factor = 1/(2*pi*a*b))である。この式は、以下に説明する畳み込みで使用される畳み込みカーネルであるガウスカーネルを定義する。deltaxとdeltayは、逸脱した噴射の場合の、畳み込みカーネルの中心の、公称位置からの変位を定義する。公称では、噴射の逸脱なしで、deltax=0、deltay=0である。
【0041】
インク堆積関数生成器440は、畳み込み変調行列(convolution modulation matrices)を畳み込みカーネル(例えば、ガウスカーネル)と畳み込むことにより、各カラープレーンのための第1のインク堆積関数(ID1(x,y))(例えば、ID1_C(x,y)、ID1_M(x,y)、ID1_Y(x,y)、及びID1_K(x,y))を生成し、したがって、
g(x,y) = w * f(x,y)である。ここで、g(x,y)はインク堆積関数であり、wは畳み込みカーネルであり、f(x,y)は畳み込み変調行列であり、*は畳み込み演算を表す。
【0042】
一実施形態において、各カラープレーンのためのインク堆積関数は、インクドロップ空間分布行列(例えば、畳み込み変調行列)を対応するインクドロップ分布行列(例えば、畳み込みカーネル)と畳み込むことにより生成される。したがって、畳み込みは、ステップチャート全体についての総インク堆積行列を生成するために、畳み込み変調行列における各ペルの異なるドロップサイズを考慮し、全てのドロップの寄与を加算する。
【0043】
一実施形態において、畳み込みカーネル及び畳み込み変調行列は、インク堆積関数についてより高い解像度(例えば、サブペル)を得るために、ステップチャートより高い解像度を有し、ノズル間の点に対応する離散列間の点のためのインク堆積関数を達成する。畳み込みカーネルと畳み込み変調行列の解像度は同じである。畳み込み変調行列は、ドロップサイズ行列に基づいて生成され、双方とも、画像(例えば、ステップチャート画像)のインクドロップ分布を表す。一般に、ドロップサイズ行列の各要素は、インパルス堆積(例えば、印刷システムにおける単一ドロップに対するインク堆積応答)を生じるために、より高解像度の畳み込み変調行列の単一要素を定義する。
【0044】
図5は、ペル形成要素アーチファクトのないステップチャートデータ401に基づく第1のインク堆積関数を計算するプロセス500の一実施形態を示すフロー図である。プロセス500は、ハードウェアを含み得る処理ロジック(例えば、回路、専用ロジック、プログラマブルロジック、マイクロコードなど)、処理デバイス上で実行される命令などのソフトウェア、又はこれらの組み合わせにより実行されてもよい。一実施形態において、プロセス500は、補償モジュール216により実行される。
【0045】
処理ブロック510において、ステップチャートデータ401が受信される。処理ブロック520において、ステップチャートデータ401に基づいて生成されたCMYKステップチャート画像が、別個のC、M、Y、及びK画像にコンバートされる。処理ブロック530において、CMYK画像及びドロップサイズデータ402に基づいて畳み込み変調行列が生成される。処理ブロック540において、畳み込みカーネルが生成される。処理ブロック550において、インク堆積関数(例えば、各カラープレーンに対する(ID1(x,y)))が、畳み込み変調行列と畳み込みカーネルを畳み込むことにより生成される。処理ブロック560において、第1のインク堆積関数が送信される。
【0046】
さらなる実施形態において、インク堆積計算ロジック320は、畳み込み変調行列の修正バージョンに基づいて、各カラープレーンについての第2のインク堆積関数(ID2(x,y))(例えば、ID2_C(x,y)、ID2_M(x,y)、ID2_Y(x,y)、及びID2_K(x,y))を生成する。このような実施形態において、第1及び第2の堆積関数は、共通の(又は、同じ)ハーフトーン閾値配列に対応する。第2のインク堆積関数は、ペル形成要素165のアーチファクトを含めるための、生成された畳み込み変調行列の修正を表す。したがって、行列修正ロジック450は、各カラープレーンに関連づけられた畳み込み変調行列を修正するために含まれる。
【0047】
一実施形態において、行列修正ロジック450は、1つ以上のペル形成要素165におけるジェットアウトを含めるように畳み込み変調行列を修正する。一実施形態において、畳み込み変調行列は、ジェットアウトをシミュレートするように修正される。ジェットアウト補償の場合、畳み込み変調行列は、ジェットアウトアーチファクトの位置でのドロップサイズの列全体をゼロの値に定義するように修正される。したがって、この場合、ペルの列全体が噴射しないことになり、この欠落した列/ノズルにより生じるインク堆積寄与が除去されることになる。
【0048】
その後、インク堆積関数生成器440は、修正済み畳み込み変調行列と畳み込みカーネルとを畳み込むことにより、第2のインク堆積関数を生成する。永続的及び安定的であると分かっているか又は決定された逸脱した噴射の場合、畳み込みカーネルを修正して、変位済み(displaced)畳み込みカーネルを決定する。逸脱噴射アーチファクトがその特性において永続的及び/又は安定的でない場合、逸脱した噴射に関連づけられたノズルを無効にすることができ、逸脱噴射アーチファクトに対して、ジェットアウトタイプのアーチファクトに対する補償を代わりに適用してもよい。永続的な安定した逸脱噴射の補償が決定されると、ステップチャート画像における各列に対して1つの畳み込みカーネルで、畳み込みカーネルのセットが計算される。各変位済み畳み込みカーネルは、逸脱した噴射により引き起こされて生じる噴射されたインクの変位を考慮するために、噴射逸脱データ404に基づいて計算される。
【0049】
噴射逸脱データ404は、各インクジェットノズルに対応する印刷媒体上の噴射されたインク(例えば、噴射逸脱)の、公称位置からの位置的な逸脱(例えば、変位)の量を表す。前の式におけるdeltax及びdeltayは、永続的な安定した逸脱噴射の場合に、変位済み畳み込みカーネルを決定するために利用されるx方向及びy方向それぞれにおける噴射逸脱を定義する。
【0050】
永続的及び安定的な逸脱噴射アーチファクトの一例は、同じカラープレーンの隣接する印刷ヘッド(例えば、印刷ヘッドアレイにおける印刷ヘッド)がX方向(例えば、走査方向)で互いに不完全に位置合わせされている場合である。その場合、隣接する印刷ヘッドのうち一方からのノズルは、隣接する印刷ヘッドのうち他方の対応するノズルに関して逸脱噴射アーチファクトを有することになる。理想的には、ノズル冗長性を有さない2つの隣接する印刷ヘッドの場合、それらの物理的な位置合わせは、第1の印刷ヘッドの最後のノズルと第2の印刷ヘッドの最初のノズルとの間の距離が2つの印刷ヘッドの各々の公称のノズル対ノズル間隔(例えば、DPIが印刷ヘッドノズルのインチあたりのドットである場合、1/DPI)と同じである結果をもたらす。
【0051】
インク堆積関数生成器440がインク堆積を決定するとき、単一の列内の全てのペルに対して同じ変位済み畳み込みカーネルが使用される。インク堆積関数を導出するために、公称位置の畳み込みカーネル(deltax=0及びdeltay=0)のセットを使用してインク堆積関数1を計算し、変位済み畳み込みカーネルのセットを使用してインク堆積関数2を計算する。これらのインク堆積関数は、噴射逸脱を補償するための伝達関数又は逆伝達関数を決定するために使用される。伝達関数を決定するために、単一点が選択されてもよい。代替的に、異なる位置で計算されるインク堆積のセットをインク堆積1及び2について決定し、これらの堆積を組み合わせて補償伝達関数又は補償逆伝達関数を決定することができる。ジェットアウトの補償を計算するとき、同じ複数の堆積アプローチが用いられてもよい。ジェットアウトが決定されたとき、噴射位置のセットは、噴射ノズルの公称間隔として定義される。
【0052】
畳み込みカーネルサイズは、ガウス分布プロファイルドロップからの全ての有意な寄与を含むように定義される。したがって、行列は、例えば、ガウス分布ドロッププロファイルの中心から4の標準偏差である値を含む値を有するべきである。ここで、a及びbは、1の標準偏差に対応する値である。逸脱した噴射が、ドロッププロファイルの中心の位置を逸脱の量だけ変位させるため、こうした逸脱は、切り捨てを防止するために、畳み込みカーネルのサイズを決定するときに含まれなければならない。逸脱した噴射に関連づけられた変位済み畳み込みカーネルは、x方向及びy方向における変位を有することができる。
【0053】
図6は、第2のインク堆積関数を計算するプロセス600の一実施形態を示すフロー図である。プロセス600は、ハードウェアを含み得る処理ロジック(例えば、回路、専用ロジック、プログラマブルロジック、マイクロコードなど)、処理デバイス上で実行される命令などのソフトウェア、又はこれらの組み合わせにより実行されてもよい。一実施形態において、プロセス600は、補償モジュール216により実行される。
【0054】
処理ブロック610において、畳み込み変調行列が、ペル要素165のジェットアウトを含むように修正される。逸脱噴射インク堆積が決定されている場合、畳み込み変調行列に対する修正は行われない。処理ブロック620において、変位済み畳み込みカーネルが、ペル要素165の逸脱噴射を含むように生成される。ジェットアウトインク堆積が決定されている場合、変位済み畳み込みカーネルは決定されない。処理ブロック630において、第2のインク堆積関数(例えば、ジェットアウトインク堆積関数)が、修正済み畳み込み変調行列と畳み込みカーネルとを畳み込むことにより生成される。代替的に、処理ブロック630において、第2のインク堆積関数(例えば、逸脱噴射インク堆積関数)が、畳み込み変調行列と変位済み畳み込みカーネルとを畳み込むことにより生成される。処理ブロック640において、第2のインク堆積関数が送信される。第1及び第2のインク堆積は、同じx方向位置を使用して(例えば、ジェットアウトアーチファクトの中央において)決定される。
【0055】
再び
図3を参照すると、補償モジュール216は、第1のインク堆積関数及び第2のインク堆積関数に基づいて補償を実行するように実装された補償エンジン330をさらに含む。
図7は、補償エンジン330の一実施形態を示す。
図7に示すように、補償エンジン330は、第1のインク堆積関数及び第2のインク堆積関数に基づいて各カラープレーンのための伝達関数(TF_X)(例えば、TF_C、TF_M、TF_Y、TF_K)生成することにより補償を実行するために使用される伝達関数生成エンジン710を含む。
【0056】
一実施形態において、伝達関数は、システムについての入力デジタルカウントの、出力デジタルカウントへのマッピングを含み、ここで、デジタルカウントは、ビットマップにおけるペルを表すグレーレベル又は色値である。さらなる実施形態において、伝達関数は、受け取ったインク堆積X方向位置データ701を使用して生成される。インク堆積X方向位置データ701は、生成されたインク堆積関数に対応する1つ以上のX方向位置を示し、対応する生成された伝達関数(又は、逆横断関数)に関連づけられる。さらに、関係データ702(例えば、デジタルカウントデータ)が受信され、コントーン画像データについての位置(y)と関連するデジタルカウントとの間の入力関係を示す。このような実施形態において、伝達関数生成エンジン710は、インク堆積行列における各Y方向ペル位置を、ステップチャートにおけるコントーンレベルに対応するデジタルカウント(例えば、DC)値にコンバートする。これは、伝達関数を生成する前にID(x,y)がID(x,DC)にコンバートされるような関係を提供する。結果として、伝達関数は、デジタルカウントDCに基づいて第1及び第2のインク堆積関数ID1及びID2から導出され、したがって、
ID2_X-1(ID1_X(g_input)) = TF_X(g_input) = g_output
である。ここで、gはグレーレベル(又は、デジタルカウント)を表す。
【0057】
ID(x,y)値は局所的であり、ハーフトーン処理の影響を有するため、ID1(DC)値及びID2(DC)値へのコンバージョンは平滑化を含む。その結果、各DCレベルの単一インク堆積は、コントーン画像チャート内の各ステップにおける平均インク堆積を表す。
【0058】
図8は、補償済み伝達関数を生成するプロセス800の一実施形態を示すフロー図である。プロセス800は、ハードウェアを含み得る処理ロジック(例えば、回路、専用ロジック、プログラマブルロジック、マイクロコードなど)、処理デバイス上で実行される命令などのソフトウェア、又はこれらの組み合わせにより実行されてもよい。一実施形態において、プロセス800は、補償モジュール216により実行される。
【0059】
処理ブロック810において、インク堆積X方向位置データ701が受信される。処理ブロック820において、関係データ702が受信される。上記で論じたように、入力関係データ702は、インク堆積関数において示される各ペル位置測定値をデジタルカウントにコンバートするために実装される。処理ブロック830において、第1及び第2のインク堆積関数が受信される。処理ブロック840において、第1及び第2のインク堆積関数に基づいて、伝達関数及び関連する列位置データが生成される。処理ブロック850において、伝達関数が送信される。プリンタシステム130は、伝達関数を受信し、それらを画像データに直接適用し、あるいは、画像データに適用される前にそれらを他の伝達関数(例えば、均一性伝達関数)とカスケードすることができる。列位置データ(例えば、列補償データ)は、伝達関数と共に、又は別個に送信することができる。
【0060】
列位置データは、画像データに伝達関数が適用されるべき列位置を示す。ジェットアウトが存在する列位置における伝達関数は、このプロセスの一部としてゼロに設定されてもよく、そうすることにより、ジェットアウトに関連づけられたノズルが、それらが補償されている間にインクを噴出せず、それらのインク噴出挙動を予期せず変化させないことを保証し、これらは、望ましくない応答不均一性を結果としてもたらすことになる。別の実施形態において、列位置に関連づけられたノズルが、アーチファクト補償の一部として決定され、射出することを無効にされる。
【0061】
代替的な実施形態において、補償エンジン330は、ハーフトーン生成ロジック720(
図7)を使用することにより補償を実行して、第1及び第2のインク堆積関数に基づいて補償済みハーフトーンを生成する。このような実施形態において、補償済みハーフトーンは、列位置データに基づいてアーチファクトに隣接する特定の列内の閾値を修正することにより、各カラープレーンについて生成される(例えば、HT_C、HT_M、HT_Y、HT_K)。全てのドロップサイズについての閾値配列の各修正済み列は、各カラープレーンについて生成された逆伝達関数(ITF_X)(例えば、ITF_C、ITF_M、ITF_Y、ITF_K)を使用して変換される。同じ逆伝達関数が、列位置データにより定義されるとおり複数の列を修正するために使用される。列は、アーチファクトが位置するノズル位置に対応し得る。
【0062】
逆伝達関数生成エンジン715は、補償済みハーフトーンを生成するために使用される逆伝達関数を生成する。不良ノズルに隣接し又は近いノズルは、このようにして不良ノズルを補償するように調整され、補償済みハーフトーンは、不良ノズルが常にインクを噴出しないことを保証するために使用されてもよく、それにより、不良ノズルの出力が予測可能であり、確実に補償できることが保証される。別の実施形態において、列位置に関連づけられたノズルが、アーチファクト補償の一部として決定され、射出することを無効にされる。
【0063】
一実施形態によれば、逆伝達関数は、補償済みハーフトーンを生成するために、未補償ハーフトーンの閾値配列の特定の列に適用される。逆伝達関数は、伝達関数の反対の(例えば、逆の)適用であり、ここで、伝達関数の出力デジタルカウント値は、逆伝達関数の入力デジタルカウント値を形成し、伝達関数の入力デジタルカウント値は、逆伝達関数の出力デジタルカウント値を形成する。逆伝達関数は、伝達関数の数学的コンバージョンに基づいて生成されてもよい。ITFはさらに、以下のように、ID1及びID2関数から直接導出されてもよい。
ID1_X-1(ID2_X(g_input)) = ITF_X(g_input) = g_output
ここで、gはデジタルカウント閾値を表し、g_inputは未補償ハーフトーンからの初期閾値であり、g_outputは補償ハーフトーンのための補償済み閾値配列値である。
【0064】
図9は、補償済みハーフトーンを生成するプロセス900の一実施形態を示すフロー図である。プロセス900は、ハードウェアを含み得る処理ロジック(例えば、回路、専用ロジック、プログラマブルロジック、マイクロコードなど)、処理デバイス上で実行される命令などのソフトウェア、又はこれらの組み合わせにより実行されてもよい。一実施形態において、プロセス900は、補償モジュール216により実行される。
【0065】
処理ブロック910において、インク堆積X方向位置データ701が受信される。処理ブロック920において、関係データ702が受信される。処理ブロック930において、第1及び第2のインク堆積関数が受信される。処理ブロック940において、逆伝達関数及び関連する列位置データが(例えば、伝達関数に基づいて、又は第1及び第2のインク堆積関数に基づいて)生成される。
【0066】
処理ブロック950において、補償済みハーフトーンが生成される。上記で論じたように、補償済みハーフトーンは、補償済みハーフトーン閾値配列を生成するために実装される未補償ハーフトーン218の列位置データにより定義されるとおり特定の列に逆伝達関数を適用することにより生成される。処理ブロック960において、補償済みハーフトーン(例えば、補償済みハーフトーン閾値配列)が送信される。プリンタシステム130は、補償済みハーフトーンを受信し、それらを印刷プロセスの間に適用することができる。列位置データ(例えば、列補償データ)は、補償済みハーフトーンと共に、又は別個に送信することができる。列位置データは、画像データに補償済みハーフトーンが適用されるべき列位置を示す。
【0067】
列位置データとノズルとの間の対応が確立されなければならない。この目的のために、測定モジュール190を利用して画像データを取得してもよい。不良ノズルの位置は、印刷物のシート間の余白に、又は後に廃棄されるシート上に印刷されたテストパターンをスキャンすることにより決定される。テストパターンは、既知のノズル位置を有する基準特徴を含む。
【0068】
測定により、アーチファクトが存在することと、それが逸脱した噴射又はジェットアウトであるかどうかが決定される。分析により、基準マークの既知の位置に対するアーチファクトの位置が決定される。スキャンされた画像を使用し、不良位置と基準マーク間の補間とにより、不良を特定のノズル位置に正確にローカライズするためのマッピングの作成が可能になる。不良は、インク堆積分析において特定の既知の列位置に挿入される。これは、列間の関係、インク堆積分析におけるX方向の距離、及びノズル位置を形成する。
【0069】
アーチファクトに対応するノズル領域に補償を適用するときに使用される閾値配列又は画像データの列位置データは、この関係から得られる。例えば、スキャン画像分析により、物理的ノズル番号203が噴射していないことが決定されたと仮定する。さらに、列11が、インク堆積分析においてジェットアウトが発生している場所であり、列11の中央においてx=0であると仮定する。したがって、ジェットアウトが発生する列11は、ノズル番号203に対応し、x=0で計算された補償伝達関数が、ノズル201、202、204、及び205のための画像又はハーフトーンデータを補償するために使用される。これは、4ノズル補正が使用されることを仮定している。前に説明したように、ノズル203の伝達関数は、全てゼロであるように定義され、このノズルによる噴射を無効にする。これは、ジェットアウトノズルがその噴射機能を回復した場合に、このノズルがインク堆積に寄与することを防止する。
【0070】
再び
図3を参照すると、検証エンジン340が補償モジュール216内にさらに含まれる。検証エンジン340は、カラープレーンの各々に補償データを適用して、補償済みインク堆積関数(例えば、ID3_C、ID3_M、ID3_Y、ID3_K)を生成する。一実施形態において、検証エンジン340は、生成された伝達関数を画像データに、例えば、複数のカラープレーンの各々についてのステップチャートデータに適用して、補償済みインク堆積関数を生成する。しかしながら、代替的な実施形態において、検証エンジン340は、補償済みハーフトーンを利用して補償済みインク堆積関数を生成する。これは、TF補償又はハーフトーン補償されたアーチファクトを検証する手段を提供する。
【0071】
図10は、補償データを適用するための適用エンジン1010を含む検証エンジン340の一実施形態を示す。
図10に示すように、適用エンジン1010は、入力インク堆積X方向位置データ701、関係データ702、及び第2のインク堆積関数(ID2(x,y))を受信する。伝達関数の実施形態では、生成された伝達関数を受信し、ステップチャート画像データに適用して、補償済みデータを生成する。これは修正済みチャートデータを生じ、それを処理して補償の有効性を決定することができる。この場合、新しいチャートデータは、初期伝達関数を導出するために使用されたチャートデータを完全に置き換える。置き換えチャートデータは、補償TFにより特定の列について変換されるコントーンレベルを有する。
【0072】
図11は、伝達関数を使用する検証プロセス1100の一実施形態を示すフロー図である。プロセス1100は、ハードウェアを含み得る処理ロジック(例えば、回路、専用ロジック、プログラマブルロジック、マイクロコードなど)、処理デバイス上で実行される命令などのソフトウェア、又はこれらの組み合わせにより実行されてもよい。一実施形態において、プロセス1100は、補償モジュール216により実行される。
【0073】
処理ブロック1110において、インク堆積X方向位置データ701が受信される。処理ブロック1120において、関係データ702が受信される。処理ブロック1130において、第2のインク堆積関数が受信される。処理ブロック1140において、生成された伝達関数が受信される。処理ブロック1150において、伝達関数が、1110により定義される列においてステップチャート画像データに適用される。処理ブロック1160において、伝達関数を使用して補償済みインク堆積関数が生成される。処理ブロック1170において、補償済みインク堆積関数が送信される。送信された補償済みインク堆積ID3は、理想的なインク堆積関数ID1と比較することができる。
【0074】
補償済みハーフトーンの実施形態では、生成された補償済みハーフトーンを受信及び使用してステップチャート画像データをレンダリングして、ブロック1210により定義される位置で補償が適用されたインク堆積推定を生成する。ブロック1210で定義されるインク堆積位置は、正確な比較を提供するために、ID1及びID2インク堆積が計算されるときに使用される位置と同じでもよい。
【0075】
図12は、補償済みハーフトーンを使用する検証プロセス1200の一実施形態を示すフロー図である。プロセス1200は、ハードウェアを含み得る処理ロジック(例えば、回路、専用ロジック、プログラマブルロジック、マイクロコードなど)、処理デバイス上で実行される命令などのソフトウェア、又はこれらの組み合わせにより実行されてもよい。一実施形態において、プロセス1200は、補償モジュール216により実行される。
【0076】
処理ブロック1210において、インク堆積X方向位置データ701が受信される。処理ブロック1220において、関係データ702が受信される。処理ブロック1230において、第2のインク堆積関数が受信される。処理ブロック1240において、生成された補償済みハーフトーンが受信される。処理ブロック1250において、補償済みハーフトーンが画像データに適用される。処理ブロック1260において、補償済みハーフトーンを使用して補償済みインク堆積関数が生成される。処理ブロック1270において、補償済みインク堆積関数が送信される。送信された補償済みインク堆積ID3は、理想的なインク堆積関数ID1と比較することができる。
【0077】
印刷コントローラ140のコンポーネントとして示されているが、他の実施形態が、印刷コントローラ140に通信可能に接続された独立したデバイス又はデバイスの組み合わせ内に含まれる補償モジュール216を特徴としてもよい。例えば、
図13は、ネットワーク1600内に実装された補償モジュール216の一実施形態を示す。
図13に示すように、補償モジュール216は、コンピューティングシステム1610内に含まれ、補償済みハーフトーン220及び/又は伝達関数を、クラウドネットワーク1650を介して印刷システム130に送信する。印刷システム130は、補償済みハーフトーン220及び/又は伝達関数を受信する。
【0078】
図14は、印刷システム130及び/又は補償モジュール216が実装され得るコンピュータシステム1700を示す。コンピュータシステム1700は、情報を通信するためのシステムバス1720と、情報を処理するためにバス1720に接続されたプロセッサ1710とを含む。
【0079】
コンピュータシステム1700は、プロセッサ1710により実行される情報及び命令を記憶するためにバス1720に接続されたランダムアクセスメモリ(RAM)又は他の動的ストレージデバイス1725(本明細書においてメインメモリと呼ばれる)をさらに備える。メインメモリ1725はさらに、プロセッサ1710による命令の実行中に一時変数又は他の中間情報を記憶するために使用されてもよい。コンピュータシステム1700はさらに、プロセッサ1710により使用される静的情報及び命令を記憶するためにバス1720に接続された読み取り専用メモリ(ROM)及び/又は他の静的ストレージデバイス1726を含んでもよい。
【0080】
さらに、磁気ディスク又は光ディスク及びその対応するドライブなどのデータストレージデバイス1727が、情報及び命令を記憶するためにコンピュータシステム1700に接続されてもよい。さらに、コンピュータシステム1700は、I/Oインターフェース1730を介して第2のI/Oバス1750に接続することができる。I/Oバス1750に複数のI/Oデバイスを接続することができ、ディスプレイデバイス1724、入力デバイス(例えば、英数字入力デバイス1723及び/又はカーソル制御デバイス1722)が含まれる。通信デバイス1721は、他のコンピュータ(サーバ又はクライアント)にアクセスするためのものである。通信デバイス1721は、モデム、ネットワークインターフェースカード、又は他の周知のインターフェースデバイス、例えば、イーサネット、トークンリング、又は他のタイプのネットワークに接続するために使用されるものなどを含んでもよい。
【0081】
本発明の実施形態は、上記で説明した様々なステップを含むことができる。ステップは、マシン実行可能命令において具現化されてもよい。命令を使用して、汎用又は専用プロセッサに特定のステップを実行させることができる。代替的に、これらのステップは、ステップを実行するためのハードワイヤードロジックを含む特定のハードウェアコンポーネントにより、又はプログラムされたコンピュータコンポーネントとカスタムハードウェアコンポーネントとの任意の組み合わせにより実行されてもよい。
【0082】
本発明の要素はさらに、マシン実行可能命令を記憶するためのマシン読取可能媒体として提供されてもよい。マシン読取可能媒体には、これらに限られないが、フロッピーディスケット、光ディスク、CD-ROM、及び光磁気ディスク、ROM、RAM、EPROM、EEPROM、磁気若しくは光カード、伝搬媒体、又は電子命令を記憶するのに適した他のタイプの媒体/マシン読取可能媒体が含むことができる。例えば、本発明は、通信リンク(例えば、モデム又はネットワーク接続)を介して搬送波又は他の伝搬媒体において具現化されたデータ信号を用いて遠隔コンピュータ(例えば、サーバ)から要求コンピュータ(例えば、クライアント)に転送され得るコンピュータプログラムとしてダウンロードされてもよい。
【0083】
以下の節及び/又は例は、さらなる実施形態又は例に関連する。例における詳細は、1つ以上の実施形態においてどこかで用いることができる。異なる実施形態又は例の様々な特徴は、様々な異なる応用に適するように含まれるいくつかの特徴及び除外される他の特徴と様々に組み合わせることができる。例には、方法、方法の動作を実行する手段、マシンにより実行されたときにマシンに方法の動作を実行させる命令を含む少なくとも1つのマシン読取可能媒体など、又は本明細書に記載される実施形態及び例に従う装置又はシステムの主題事項が含まれ得る。
【0084】
いくつかの実施形態が例1に関連し、例1は、補償ロジックを記憶する少なくとも1つの物理メモリデバイスと、前記少なくとも1つの物理メモリデバイスに接続されて前記補償ロジックを実行して、ペル形成要素アーチファクトのない複数のカラープレーンの各々についての入力デジタルカウントに対する第1の出力インク量を表す第1のインク堆積関数を生成し、前記ペル形成要素アーチファクトのある前記複数のカラープレーンの各々についての入力デジタルカウントに対する第2の出力インク量を表す第2のインク堆積関数を生成し、前記第1のインク堆積関数及び前記第2のインク堆積関数に基づいて前記複数のカラープレーンの各々について補償済みハーフトーンを生成する1つ以上のプロセッサと、を備えるシステムを含む。
【0085】
例2は、例1の対象事項を含み、前記補償済みハーフトーンは、前記ペル形成要素アーチファクトのうちの1つに隣接するペル形成要素列に対応する1つ以上のハーフトーン閾値を修正することにより、各カラープレーンに対して生成される。
【0086】
例3は、例1及び例2の対象事項を含み、前記補償ロジックは、前記第1のインク堆積関数及び前記第2のインク堆積関数に基づいて前記複数のカラープレーンの各々についてアーチファクト補償逆伝達関数を生成し、前記アーチファクト補償逆伝達関数は前記1つ以上のハーフトーン閾値を修正する。
【0087】
例4は、例1~3の対象事項を含み、前記ハーフトーン閾値は、前記ペル形成要素アーチファクトのある修正済みハーフトーン閾値に対応する前記出力インク量と前記ペル形成要素アーチファクトのない未修正ハーフトーン閾値に対応する前記第1の出力インク量とが前記入力デジタルカウントの範囲について実質的に等しくなるように、前記アーチファクト補償逆伝達関数により修正される。
【0088】
例5は、例1~4の対象事項を含み、前記アーチファクト補償逆伝達関数は、前記ペル形成要素アーチファクトに隣接する前記ペル形成要素列に対応する前記1つ以上のハーフトーン閾値を修正するように実装される。
【0089】
例6は、例1~5の対象事項を含み、前記第1のインク堆積関数は、前記ペル形成要素アーチファクトなしで生成されるインクドロップ分布行列に基づいて生成される。
【0090】
例7は、例1~6の対象事項を含み、前記第1のインク堆積関数を生成することは、ステップチャートデータを受信することと、前記ステップチャートデータに基づいて前記複数のカラープレーンの各々について第1のインクドロップ分布行列を生成することと、前記複数のカラープレーンの各々について第1のインクドロップ空間分布行列を生成することと、前記第1のインクドロップ分布行列を対応する第1のインクドロップ空間分布行列と畳み込んで前記第1のインク堆積関数を生成することとを含む。
【0091】
例8は、例1~7の対象事項を含み、前記第2のインク堆積関数を生成することは、ペル形成要素アーチファクトを含めるように前記第1のインクドロップ分布行列を修正して第2のインクドロップ分布行列を生成することと、前記第2のインクドロップ分布行列を対応する第1のインクドロップ空間分布行列と畳み込んで前記第2のインク堆積関数を生成することとを含む。
【0092】
例9は、例1~8の対象事項を含み、前記補償ロジックは、前記複数のカラープレーンの各々について画像データに前記補償済みハーフトーンを適用する。
【0093】
例10は、例1~9の対象事項を含み、インク堆積関数は、ペル形成要素列の関数である。
【0094】
例11は、例1~10の対象事項を含み、前記第1及び第2の堆積関数は、共通のハーフトーン設計に対応する。
【0095】
例12は、例1~11の対象事項を含み、複数のペル形成要素を含む印刷エンジン、をさらに備える。
【0096】
いくつかの実施形態が例13に関連し、例13は、ペル形成要素アーチファクトのない複数のカラープレーンの各々についての入力デジタルカウントに対する第1の出力インク量を表す第1のインク堆積関数を生成するステップと、前記ペル形成要素アーチファクトのある前記複数のカラープレーンの各々についての入力デジタルカウントに対する第2の出力インク量を表す第2のインク堆積関数を生成するステップと、前記第1のインク堆積関数及び前記第2のインク堆積関数に基づいて前記複数のカラープレーンの各々について補償済みハーフトーンを生成するステップと、を含む方法を含む。
【0097】
例14は、例13の対象事項を含み、前記補償済みハーフトーンを生成することは、前記ペル形成要素アーチファクトのうちの1つに隣接するペル形成要素列に対応する1つ以上のハーフトーン閾値を修正することを含む。
【0098】
例15は、例13及び14の対象事項を含み、前記第1のインク堆積関数及び前記第2のインク堆積関数に基づいて前記複数のカラープレーンの各々についてアーチファクト補償逆伝達関数を生成するステップであり、前記アーチファクト補償逆伝達関数は前記1つ以上のハーフトーン閾値を修正する、ステップ、をさらに含む。
【0099】
例16は、例13~15の対象事項を含み、前記ハーフトーン閾値は、前記ペル形成要素アーチファクトのある修正済みハーフトーン閾値に対応する前記出力インク量と前記ペル形成要素アーチファクトのない未修正ハーフトーン閾値に対応する前記第1の出力インク量とが前記入力デジタルカウントの範囲について実質的に等しくなるように、前記アーチファクト補償逆伝達関数により修正される。
【0100】
例17は、例13~16の対象事項を含み、前記アーチファクト補償逆伝達関数は、前記ペル形成要素アーチファクトに隣接する前記ペル形成要素列に対応する前記1つ以上のハーフトーン閾値を修正するように実装される。
【0101】
例18は、例13~17の対象事項を含み、前記複数のカラープレーンの各々について画像データに前記補償済みハーフトーンを適用するステップ、をさらに含む。
【0102】
いくつかの実施形態が例19に関連し、例19は、命令を記憶させた少なくとも1つのコンピュータ読取可能媒体であって、前記命令は、1つ以上のプロセッサにより実行されたときに前記プロセッサに、ペル形成要素アーチファクトのない複数のカラープレーンの各々についての入力デジタルカウントに対する第1の出力インク量を表す第1のインク堆積関数を生成し、前記ペル形成要素アーチファクトのある前記複数のカラープレーンの各々についての入力デジタルカウントに対する第2の出力インク量を表す第2のインク堆積関数を生成し、前記第1のインク堆積関数及び前記第2のインク堆積関数に基づいて前記複数のカラープレーンの各々について補償済みハーフトーンを生成することをさせる。
【0103】
例20は、例19の対象事項を含み、前記補償済みハーフトーンを生成することは、前記ペル形成要素アーチファクトのうちの1つに隣接するペル形成要素列に対応する1つ以上のハーフトーン閾値を修正することを含む。
【0104】
例21は、例19及び20の対象事項を含み、1つ以上のプロセッサにより実行されたときに前記プロセッサに、前記第1のインク堆積関数及び前記第2のインク堆積関数に基づいて前記複数のカラープレーンの各々についてアーチファクト補償逆伝達関数を生成し、前記アーチファクト補償逆伝達関数は前記1つ以上のハーフトーン閾値を修正する、ことをさらにさせる命令を記憶させている。
【0105】
例22は、例19~21の対象事項を含み、前記ハーフトーン閾値は、前記ペル形成要素アーチファクトのある修正済みハーフトーン閾値に対応する前記出力インク量と前記ペル形成要素アーチファクトのない未修正ハーフトーン閾値に対応する前記第1の出力インク量とが前記入力デジタルカウントの範囲について実質的に等しくなるように、前記アーチファクト補償逆伝達関数により修正される。
【0106】
本発明の多くの変更及び修正が、前述の説明を読んだ後に当業者に疑いなく明らかになるであろうが、例示として図示及び説明されたいずれの特定の実施形態も、限定とみなされることを意図するものでは決してないことが理解されるべきである。したがって、様々な実施形態の詳細への参照は、発明に対して本質的と考えられる特徴のみをそれ自体に記載している特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。