(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】伸縮性樹脂形成用熱硬化性組成物、伸縮性樹脂、及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08G 59/66 20060101AFI20231212BHJP
C08G 59/24 20060101ALI20231212BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20231212BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C08G59/66
C08G59/24
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2022178246
(22)【出願日】2022-11-07
(62)【分割の表示】P 2018147712の分割
【原出願日】2018-08-06
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】柴田 智章
(72)【発明者】
【氏名】天童 一良
(72)【発明者】
【氏名】今津 裕貴
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/060439(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/174299(WO,A1)
【文献】特開2012-072384(JP,A)
【文献】特開2019-143134(JP,A)
【文献】特開平03-273021(JP,A)
【文献】特開2006-291093(JP,A)
【文献】特開平01-135858(JP,A)
【文献】特開2014-001291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
H01L 23/28-23/30
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂と、
(B)2以上のチオール基を有するチオール化合物と、
を含有し、
(A)エポキシ樹脂が、(A1)芳香族基又は脂環基を有する構成単位と、炭素数4以上のアルキレン基を有する構成単位とを含む共重合体である共重合エポキシ樹脂を含む、
伸縮性樹脂形成用熱硬化性組成物であって、
(A1)共重合エポキシ樹脂が、芳香族基又は脂環基を有するジオールと炭素数4~8のアルキレン基を有するグリシジルエーテルとの共重合体、炭素数4~8のアルキレン基を有するジオールと芳香族基又は脂環基を有するジグリシジルエーテルとの共重合体、又はこれらの組み合わせを含み、
当該熱硬化性組成物の熱硬化によって形成される伸縮性樹脂の引張弾性率が0.1MPa以上2.2MPa以下であ
り、
前記引張弾性率が、長さ40mm、幅5mm、厚さ1mmの試験片の引張試験によって得られた応力-ひずみ曲線から求められる、荷重0.1~0.5Nにおける値であり、前記引張試験が、25℃の環境下で、チャック間距離20mm、引張速度50mm/minの条件で行われる、
伸縮性樹脂形成用熱硬化性組成物。
【請求項2】
(A)エポキシ樹脂が、(A2)炭素数6以上のアルキル基を有する単官能エポキシ樹脂を更に含む、請求項1に記載の伸縮性樹脂形成用熱硬化性組成物。
【請求項3】
(A2)単官能エポキシ樹脂が、炭素数6以上17以下のアルキル基を有する単官能エポキシ樹脂である、請求項2に記載の伸縮性樹脂形成用熱硬化性組成物。
【請求項4】
(A)エポキシ樹脂が、(A3)脂環基を有する脂環基含有多官能エポキシ樹脂を更に含み、(A3)脂環基含有多官能エポキシ樹脂が、(A1)共重合エポキシ樹脂とは異なる化合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の伸縮性樹脂形成用熱硬化性組成物。
【請求項5】
(A3)脂環基含有多官能エポキシ樹脂が、ジシクロペンタジエン基を有する多官能エポキシ樹脂を含む、請求項4に記載の伸縮性樹脂形成用熱硬化性組成物。
【請求項6】
(B)チオール化合物が、2級チオール基を有するチオール化合物を含む、請求項1~5いずれか一項に記載の伸縮性樹脂形成用熱硬化性組成物。
【請求項7】
(A1)共重合エポキシ樹脂の含有量が、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して50質量部以上である、請求項1~6いずれか一項に記載の伸縮性樹脂形成用熱硬化性組成物。
【請求項8】
請求項1~7いずれか一項に記載の伸縮性樹脂形成用熱硬化性組成物の硬化物からなる、伸縮性樹脂。
【請求項9】
請求項1~7いずれか一項に記載の伸縮性樹脂形成用熱硬化性組成物の硬化物からなる伸縮性樹脂層を備える、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、伸縮性樹脂形成用熱硬化性組成物、及びこれを用いて形成された伸縮性樹脂層を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェアラブル機器、生体センサ、及び接続コネクタ部材等を構成する樹脂部材に関して、従来よりも高いフレキシブル性及び伸縮性を有することが求められる場合がある。例えば、ウェアラブル機器を構成する樹脂部材は、身体の曲面への装着のし易さ、及び脱着にともなう接続不良の抑制のために、高いフレキシブル性及び伸縮性を有することが求められる。高いフレキシブル性及び伸縮性を有する従来の伸縮性樹脂は、一般に、液状シリコーン又は液状ポリウレタンによって形成される。
【0003】
しかしながら、液状シリコーンから形成された伸縮性樹脂は、他材料との密着性が不足することがある。液状ポリウレタンから形成される伸縮性樹脂は、耐熱性が不足する傾向がある。
【0004】
一方、特許文献1は、共重合体ゴムを含む防湿絶縁塗料を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エポキシ樹脂を含む熱硬化性組成物から形成される伸縮性樹脂は、他材料に対する高い密着性を有し、しかも高い耐熱性を有する傾向がある。しかし、伸縮性樹脂の破断伸び率及び伸縮性の点で、改善の余地がある。
【0007】
そこで、本発明の一側面の目的は、エポキシ樹脂を含む熱硬化性組成物の硬化によって形成される伸縮性樹脂に関して、破断伸び率及び伸縮性の更なる向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、(A)エポキシ樹脂と、(B)2以上のチオール基を有するチオール化合物と、を含有する、伸縮性樹脂形成用熱硬化性組成物に関する。(A)エポキシ樹脂が、(A1)共重合エポキシ樹脂を含む。(A1)共重合エポキシ樹脂は、芳香族基又は脂環基を有する構成単位と、オキシアルキレン基又は炭素数4~8のアルキレン基を有する構成単位とを含む共重合体である。
【0009】
本発明の別の一側面は、上記伸縮性樹脂形成用熱硬化性組成物の硬化物からなる、伸縮性樹脂に関する。本発明の更に別の一側面は、上記伸縮性樹脂形成用熱硬化性組成物の硬化物からなる伸縮性樹脂層を備える、半導体装置に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、十分な破断伸び率及び伸縮性を有する伸縮性樹脂を形成できる熱硬化性組成物が提供される。形成される伸縮性樹脂は、耐熱性及び多材料との密着性の点でも良好な特性を有する。本発明の一側面に係る熱硬化性組成物は、保存時の安定性の点でも優れる。本発明の熱硬化性組成物は、無溶剤であることができる。無溶剤の熱硬化性組成物は、溶剤を含む熱硬化性組成物と比較して、取り扱い性及び生産性の点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】伸縮回復率の測定例を示す応力-ひずみ曲線である。
【
図2】半導体装置の一実施形態を示す断面図である。
【
図3】フレキシブル基板および回路部品の一実施形態を示す断面図である。
【
図4】複数の半導体装置を得る工程の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。このことは、数値および範囲についても同様であり、本発明を不当に制限するものではないと解釈すべきである。
【0013】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。
本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0014】
[伸縮性樹脂形成用熱硬化性組成物]
一実施形態に係る熱硬化性組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)2以上のチオール基を有するチオール化合物とを含有する。(A)エポキシ樹脂が、(A1)芳香族基又は脂環基を有する構成単位と、オキシアルキレン基又は炭素数4~8のアルキレン基を有する構成単位とを含む共重合体である共重合エポキシ樹脂を含む。この熱硬化性組成物が、エポキシ基とチオール基との反応等によって硬化すると、十分な伸縮性を有する伸縮性樹脂が形成される。一実施形態に係る熱硬化性組成物は、一液型の熱硬化性組成物であってもよいし、(A)エポキシ樹脂を含む主剤液と(B)チオール化合物を含む硬化剤液とから構成される二液型の熱硬化性組成物であってもよい。
【0015】
本明細書において、「伸縮性」は、引張荷重によってひずみを生じた後、荷重からの解放により元の形状またはそれに近い形状に回復できる性質を意味する。例えば、引張荷重によって50%のひずみを生じた後、元の形状またはそれに近い形状に回復できる材料は、伸縮性を有するということができる。より具体的には、後述の伸縮回復率が80%以上である樹脂は、伸縮性樹脂であるといえる。
【0016】
<(A1)共重合エポキシ樹脂>
(A1)成分の共重合エポキシ樹脂は、芳香族基又は脂環基を有する構成単位を剛直成分として有し、炭素数4以上のアルキレン基を有する構成単位を柔軟成分として有する。共重合エポキシ樹脂は、通常、共重合体鎖の両末端に位置する2つのエポキシ基を有する。この共重合エポキシ樹脂を用いることで、耐熱信頼性と柔軟性を兼ね備えた硬化物を得ることができる。
【0017】
共重合エポキシ樹脂は、例えば、芳香族基又は脂環基を有するジオールと炭素数4~8のアルキレン基を有するグリシジルエーテルとの共重合体、炭素数4~8のアルキレン基を有するジオールと芳香族基又は脂環基を有するジグリシジルエーテルとの共重合体、又はこれらの組み合わせであってもよい。芳香族基又は脂環基を有するジオールは、下記式(21)で表される化合物であってもよい。炭素数4以上のアルキレン基を有するグリシジルエーテルは、下記式(31)で表される化合物であってもよい。炭素数4~8のアルキレン基を有するジオールは、下記式(22)で表される化合物であってもよい。芳香族基又は脂環基を有するジオールは、下記式(32)で表される化合物であってもよい。これら式中、R
aは芳香族基又は脂環基を示し、R
bは炭素数4以上のアルキレン基を示す。R
bは炭素数4~8のアルキレン基であってもよい。
【化1】
【0018】
芳香族基は、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環及びピレン環等の芳香族炭化水素基、又は、ピロール環及びチオフェン環等の芳香族複素環基であってもよい。芳香族基は、2以上の芳香環を有しそれらが直接結合、メタンジイル基、2,2-プロパンジイル基、4級スピロ炭素原子又はこれらの組み合わせによって結合されている基であってもよく、その例としては、ビフェニレン基、テトラメチルビフェニレン基、カルド構造を有する基、及びフルオレン環が挙げられる。脂環基は、例えば、シクロヘキサン環、又はジシクロペンタジエン基であってもよい。
【0019】
炭素数4以上のアルキレン基としては、公知のものを用いることができる。例えば、炭素数4以上のアルキレン基は、1,4-ブタンジイル基、又は1,6-ヘキサンジイル基であってもよい。オキシアルキレン基は、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、又はオキシブチレン基であってもよい。
【0020】
共重合エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールFと1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,6-ヘキサンジオールとビスフェノールFジグリシジルエーテルの共重合体、ビスフェノールFと1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,4-ブタンジオールとビスフェノールFジグリシジルエーテルとの共重合体、ビスフェノールAと1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,6-ヘキサンジオールとビスフェノールAジグリシジルエーテルとの共重合体、ビスフェノールAと1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルの共重合体、1,4-ブタンジオールとビスフェノールAジグリシジルエーテルとの共重合体、テトラメチルビフェノールと1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,6-ヘキサンジオールとテトラメチルビフェノールジグリシジルエーテルとの共重合体、テトラメチルビフェノールと1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,4-ブタンジオールとテトラメチルビフェノールジグリシジルエーテルとの共重合体、ビフェノールと1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,6-ヘキサンジオールとビフェノールジグリシジルエーテルの共重合体、ビフェノールと1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,4-ブタンジオールとビフェノールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,4-ナフタレンジオールと1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,6-ヘキサンジオールと1,4-ナフタレンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,4-ナフタレンジオールと1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,4-ブタンジオールと1,4-ナフタレンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,6-ナフタレンジオールと1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,6-ヘキサンジオールと1,6-ナフタレンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,6-ナフタレンジオールと1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、及び、1,4-ブタンジオールと1,6-ナフタレンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせで用いてもよい。
【0021】
(A1)共重合エポキシ樹脂の市販品の例としては、三菱ケミカル(株)製「YX7105」及び「YX7110」(ビスフェノールFと1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体)が挙げられる。
【0022】
(A1)共重合エポキシ樹脂の含有量は、(A)エポキシ樹脂の総量100質量部に対して、30質量部以上、又は50質量部以上であってもよい。(A1)成分の含有量が30質量部以上であると、特に高い柔軟性を有する硬化物を容易に得ることができる。
【0023】
<(B)2以上のチオール基を有するチオール化合物>
(B)成分のチオール化合物は、2以上のチオール基(-SH)を有する。(B)チオール化合物は、チオール基を2~5個、3~5個、又は3~4個有していてもよい。(B)チオール化合物が有するチオール基は、2級チオール基であってもよい。2級チオール基を有するチオール化合物を含有する熱硬化性組成物は、特に優れた保存安定性を有することができる。2級チオール基は、2個の炭素原子及び1個の水素原子に結合した炭素原子に結合したチオール基である。
【0024】
(B)チオール化合物は、下記式(1)、(2)又は(3)で表される化合物であってもよい。
【化2】
【化3】
【化4】
【0025】
式(1)中、X
1、X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立にチオール基を有する1価の基、又は水素原子を示し、X
1、X
2、X
3及びX
4のうち2個以上はチオール基を有する1価の基である。式(2)中、X
5、X
6及びX
7は、それぞれ独立にチオール基を有する1価の基、又は水素原子を示し、X
5、X
6及びX
7のうち2個以上はチオール基を有する1価の基である。式(3)中、X
8及びX
9は、それぞれ独立にチオール基を有する1価の基を示し、R
1はアルキレン基を示す。R
1は、炭素数2~10のアルキレン基であってもよい。チオール基を有する基は、2級チオール基を有する下記式(11)で表される基であってもよいし、1級チオール基を有する下記式(12)又は(13)で表される基であってもよい。式(11)中、R
2はアルキレン基を示す。式(12)中、R
3はアルキレン基を示す。式(13)中、R
4はアルキレン基を示す。R
2は、炭素数1~8のアルキレン基であってもよい。R
3及びR
4は、炭素数2~10のアルキレン基であってもよい。
【化5】
【0026】
2級チオール基を有するチオール化合物としては、例えば、下記式(1a)で表されるペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(例えば、昭和電工(株)製「カレンズMT PE-1」)、下記式(2a)で表される1,3,5-トリス(2-(3-メルカプトブチリルオキシ)エチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(例えば、昭和電工(株)製「カレンズMT NR-1」)、及び、下記式(3a)で表される1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン(例えば、昭和電工(株)製「カレンズMT BD-1」)が挙げられる。
【化6】
【化7】
【化8】
【0027】
2級チオール基を有するチオール化合物のその他の例としては、エチレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールトリ(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタン(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、及びジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトブチレート)が挙げられる。
【0028】
1級チオール基を有するチオール化合物のその他の例としては、ペンタエリスリトールトリプロパンチオール、1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,4-ブタンジチオール、2,3-ブタンジチオール、1,5-ペンタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,8-オクタンジチオール、1,10-デカンジチオール、1,3-ベンゼンジチオール、1,4-ベンゼンジチオール、4,4’-チオビスベンゼンチオール、4,4’-ビフェニルジチオール、1,5-ジメルカプトナフタレン、4,5-ビス(メルカプトメチル)-オルト-キシレン、1,3,5-ベンゼントリチオール、1,4-ブタンジオールビス(チオグリコレート)、ジチオエチスリトール、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール、3,7-ジチア-1,9-ノナンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、エチレングリコールビス(メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトイソブチレート)、ブタンジオールビス(メルカプトアセテート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトイソブチレート)、ペンタエリトリトールトリ(メルカプトアセテート)、ペンタエリトリトールトリ(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールトリ(3-メルカプトイソブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトイソブチレート)、トリメチロールエタン(メルカプトアセテート)、トリメチロールエタン(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタン(3-メルカプトイソブチレート)、トリメチロールプロパントリス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトイソブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトイソブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトプロピルオキシ)ブタン、トリス[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、及びテトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)が挙げられる。
【0029】
以上例示したチオール化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
(B)チオール化合物のチオール当量(チオール基の当量)が、(A)エポキシ樹脂の総量のエポキシ当量に対して、0.5~1.5、又は0.8~1.2であってもよい。チオール化合物のチオール当量がこの範囲であると、未反応の(A)エポキシ樹脂及び(B)チオール化合物が硬化物中に残存し難い。
【0031】
<(A2)炭素数6以上のアルキル基を有する単官能エポキシ樹脂>
一実施形態に係る熱硬化性組成物は、(A)エポキシ樹脂として、(A2)炭素数6以上のアルキル基を有する単官能エポキシ樹脂を更に含有してもよい。(A2)成分の単官能エポキシ樹脂は、炭素数6以上のアルキル基及び1個のエポキシ基を有するエポキシ化合物を1種又は2種以上含む。アルキル基の炭素数は8以上であってもよく、20以下、又は17以下であってもよい。アルキル基の炭素数がこれら数値範囲内であると、硬化物が白濁し難い傾向がある。(A2)単官能エポキシ樹脂が有する炭素数6以上のアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよい。
【0032】
(A2)単官能エポキシ樹脂は、下記式(5)で表されるグリシジルエーテル化合物、下記式(6)で表されるグリシジルエステル化合物、又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。式(5)及び(6)中のR
5及びR
6が、炭素数6以上のアルキル基である。
【化9】
【0033】
(A2)単官能エポキシ樹脂の例としては、炭素数12~13のアルキル基を有するグリシジルエーテル化合物(例えば、(株)ADEKA製「アデカグリシロールED-502」)、及び炭素数17のアルキル基を有するグリシジルエステル化合物(例えば、ナガセケムテックス(株)製「デナコールEX-1113」)が挙げられる。これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
(A2)単官能エポキシ樹脂の含有量は、(A)エポキシ樹脂の総量100質量部に対して、60質量部以下、又は50質量部以下であってもよく、10質量部以上であってもよい。(A2)成分の含有量がこれら数値範囲内であると、伸縮性樹脂としての硬化物が特に容易に形成される傾向がある。
【0035】
<(A3)脂環基含有多官能エポキシ樹脂>
一実施形態に係る熱硬化性組成物は、(A)エポキシ樹脂として、(A3)脂環基含有多官能エポキシ樹脂を含有してもよい。(A3)成分の脂環基含有多官能エポキシ樹脂は、脂環基と2個以上のエポキシ基とを有するエポキシ樹脂であり、(A1)成分の共重合エポキシ樹脂とは異なるものである。脂環基は、例えば、シクロヘキサン環、又はジシクロペンタジエン基であってもよい。
【0036】
脂環基含有多官能エポキシ樹脂の例としては、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(例えば、DIC(株)製「EPICLON HP-7200シリーズ」)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、(株)ダイセル製「セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド8000」)、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、三菱ケミカル(株)製「エピコートYX8000、エピコートYX8034、エピコートYL8040」)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(例えば、(株)ダイセル製「EHPE3150」)、ブタンテトラカルボン酸 テトラ(3、4-エポキシシクロヘキシルメチル)修飾ε-カプロラクトン(例えば、(株)ダイセル製「エポリードGT-401」)、脂環基及びエポキシ基を有するシリコーンオリゴマー(例えば、信越化学工業(株)製「X-40-2670」)が挙げられる。耐熱信頼性の観点から、(A3)脂環式含有多官能エポキシ樹脂がジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含んでいてもよい。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
(A3)脂環基含有多官能エポキシ樹脂の含有量は、(A)エポキシ樹脂の総量100質量部に対して、5質量部以上、又は10質量部以上であってもよく、50質量部以下、又は40質量部以下であってもよい。(A3)成分の含有量が5質量部以上であると、強度及び耐熱性が特に高い硬化物が形成される傾向がある。(A3)成分の含有量が50質量部以下であると、硬化物がより一層高い伸縮性を示す傾向がある。
【0038】
<その他の成分>
一実施形態に係る熱硬化性組成物は、以上説明した(A)エポキシ樹脂及び(B)チオール化合物に加えて、必要に応じて、その他の成分を含有していてもよい。(A)エポキシ樹脂が、(A1)成分、(A2)成分及び(A3)成分以外のエポキシ樹脂を含んでいてもよい。ただし、(A)エポキシ樹脂の総量に対する(A1)成分、(A2)成分及び(A3)成分の合計量の割合は、通常、80~100質量%、又は90~100質量%である。(A)エポキシ樹脂及び(B)チオール化合物の合計量は、熱硬化性組成物のうち溶剤を除く部分の質量に対して50~100質量%、60~100質量%、70~100質量%、80~100質量%、又は90~100質量%であってもよい。
【0039】
一実施形態に係る熱硬化性組成物は、無機微粒子、硬化触媒、消泡在、レベリング剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、黄変防止剤、紫外線吸収剤、可視光吸収剤、着色剤、可塑剤、及び難燃剤から選ばれるその他の成分を含有してもよい。無機微粒子の例としては、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、炭酸バリウム(BaCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、酸化亜鉛(ZnO)、硫酸バリウム(BaSO4)、有機ベントナイト、及びハイドロタルサイトが挙げられる。硬化触媒の例としては、3級アミン、イミダゾール、リン化合物、4級アンモニウム塩、及び有機金属塩が挙げられる。消泡剤及びレベリング剤は、例えば、シリコーン系、フッ素系、又は高分子系であることできる。シランカップリング剤は、例えば、チアゾール系、又はトリアゾール系であることができる。熱硬化性組成物が、溶剤を含有する樹脂ワニスであってもよい。
【0040】
[伸縮性樹脂/伸縮性樹脂層]
一実施形態に係る伸縮性樹脂は、以上説明した実施形態に係る熱硬化性組成物の熱硬化によって形成される硬化物からなる。伸縮性樹脂は、任意の形状を有することが可能であり、例えば伸縮性樹脂層を形成してもよい。
【0041】
一実施形態に係る伸縮性樹脂又は伸縮性樹脂層は、例えば、ウェアラブル機器、生体センサ、接続コネクタ部材の封止層若しくは保護膜として、又は、フレキシブル基板の配線の保護膜として用いることができる。
【0042】
伸縮性樹脂の引張試験による破断伸び率は、100%以上であってもよい。破断伸び率が100%以上であれば十分な引張り強度を得ることができる。
【0043】
伸縮性樹脂の伸縮性は、2回の引張試験を含む以下の手順で測定される伸縮回復率を指標として評価することができる。
1)長さ40mm、幅5mmの短冊状の伸縮性樹脂を試験片として準備する。
2)試験片を、チャック間距離20mmのチャックで保持した状態で、1回目の引張試験で変位量(ひずみ)Xまで試験片を引張る。
3)チャックを初期位置に戻す。
4)2回目の引張試験を行い、荷重がかかっている区間の変位量(ひずみ)Yを記録する。
5)式:伸縮回復率R(%)=(Y/X)×100によって伸縮回復率を算出する。
引張試験は、25℃の環境下で行われる。Xは変位量10mm(ひずみ50%)に設定することができる。試験機としては、例えばマイクロフォース試験機(Illinois Tool Works Inc、「Instron 5948」)を用いることができる。
図1は、伸縮回復率を求めるための引張試験から得られた応力-ひずみ曲線の例である。
【0044】
上記伸縮回復率は、繰り返し使用への耐性の観点から、80%以上、85%以上、又は90%以上であってもよい。伸縮回復率の上限は、100%である。上述の実施形態に係る熱硬化性組成物は、通常、80%の伸縮回復率を示す硬化物を容易に形成することができる。
【0045】
伸縮性樹脂の引張弾性率は、0.1MPa以上50MPa以下であってもよい。引張弾性率が0.1MPa以上50MPa以下であると、より容易に伸縮性樹脂を伸縮させることができる。同様の観点から、伸縮性樹脂の引張弾性率が0.1MPa以上30MPa以下、又は0.1MPa以上10MPa以下であってもよい。
【0046】
伸縮性樹脂又は伸縮性樹脂層は、熱硬化性組成物を、ディスペンス、ディッピング、各種コーティング又は注型等の方法により所望の形態で配置することと、その後、熱硬化性組成物を熱硬化させることとを含む方法により、形成することができる。熱硬化のための加熱の条件は、十分に熱硬化が進行する範囲で設定すればよいが、例えば100℃~200℃の温度であってもよい。
【0047】
[半導体装置]
図2は、半導体装置の一実施形態を示す断面図である。
図2に示す半導体装置100は、伸縮性を有するフレキシブル基板1と、回路部品2と、封止樹脂層3とを有する。回路部品2は、フレキシブル基板1上に実装されている。封止樹脂層3は、上述の実施形態に係る熱硬化性組成物から形成された伸縮性樹脂であることができる。封止樹脂層3は、フレキシブル基板1及び回路部品2を封止し、それによりこれらを保護している。
【0048】
フレキシブル基板1は、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ビスマレイミド樹脂、エポキシ樹脂及びポリエチレングリコール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む樹脂フィルムであってもよい。伸縮性に優れる観点から、フレキシブル基板1が、シロキサン基、脂肪族エーテル基又はジエン構造を有するポリイミド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、長鎖アルキル鎖(例えば、炭素数1~20のアルキル鎖)を有するビスマレイミド樹脂、エポキシ樹脂、及び、ロタキサン構造を有するポリエチレングリコール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む樹脂フィルムであってもよい。同様の観点から、フレキシブル基板1が、シロキサン基、脂肪族エーテル基又はジエン構造を有するポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、及び、長鎖アルキル鎖を有するビスマレイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む樹脂フィルムであってもよい。
【0049】
回路部品2は、1種類又は2種類以上の部品であることができる。回路部品2は、例えば、制御回路、メモリーチップ、発光ダイオード(LED)、RFタグ(RFID)、温度センサ、加速度センサ、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0050】
半導体装置100は、例えば、
図3に示すようにフレキシブル基板1上に回路部品2を実装する工程と、フレキシブル基板1及び回路部品2を封止する封止樹脂層3を形成する工程とを含む方法によって製造することができる。封止樹脂層3は、フレキシブル基板1上に形成された熱硬化性組成物の膜を硬化させることにより形成される。熱硬化性組成物の膜は、例えば、フレキシブル基板1及び回路部品2に熱硬化性組成物を塗布又は印刷すること、又は、熱硬化性組成物にフレキシブル基板1及び回路部品2を浸漬することによって形成することができる。
【0051】
必要に応じて、
図4に示すように、半導体装置となる複数の部分を含む封止構造体を形成し、これを切断し分離することにより、複数の半導体装置を得てもよい。これにより、複数の半導体装置を一括して製造することができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0053】
1.原材料
(A1)共重合エポキシ樹脂
・YX7105:三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールFと1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、エポキシ当量487
(B)チオール化合物
・PEPT:SC有機化学(株)製、ペンタエリスリトールトリプロパンチオール、3官能1級チオール、分子量358.6
・PE-1:カレンズMT PE-1、昭和電工(株)製、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート、4官能2級チオール、分子量544
(A2)炭素数6以上のアルキル鎖を有する単官能エポキシ樹脂
・ED-502:アデカグリシロールED-502、(株)ADEKA製、炭素数12又は13のアルキルアルコールのグリシジルエーテル、エポキシ当量320
(A3)脂環基含有多官能エポキシ樹脂
・HP-7200L:EPICLON HP-7200L、DIC(株)製、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、エポキシ当量248
(酸無水物)
・HN-5500:日立化成(株)製、3又は4-メチル-ヘキサヒドロ無水フタル酸、分子量168
(硬化触媒)
・2E4MZ:キュアゾール2E4MZ、四国化成(株)製、2-エチル-4-メチルイミダゾール
(その他のエポキシ樹脂)
・セロキサイド2081:(株)ダイセル製、ε-カプロラクトン変性3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エポキシ当量200
・デナコールEX-991L:ナガセケムテックス(株)製、ポリエーテルグリコールジグリシジルエーテル、エポキシ当量450
・デナレックスR15-EPT:ナガセケムテックス(株)製、ポリブタジエン/水添ボリブタジエン骨格含有2官能エポキシ樹脂、エポキシ当量910
・デナレックスR45-EPT:ナガセケムテックス(株)製、ポリブタジエン/水添ボリブタジエン骨格含有2官能エポキシ樹脂、エポキシ当量1570
【0054】
2.樹脂ワニス(伸縮性樹脂形成用熱硬化性組成物)の調製
実施例1
ふた付きポリ容器に、YX7105を60.0質量部、PEPTを14.7質量部、及びキュアゾール2E4MZを0.1質量部入れ、これらの混合物を自転・公転ミキサー((株)シンキー製「ARE-250」)にて撹拌して、伸縮性樹脂を形成するための樹脂ワニスを作製した。
【0055】
実施例2~7、比較例1~5
表1に示す配合比(質量部)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2~7及び比較例1~5の樹脂ワニスを調製した。比較例1の樹脂ワニスは、(B)チオール化合物の代わりに酸無水物を含む。比較例2~5の樹脂ワニスは、(A1)共重合エポキシ樹脂の代わりに柔軟構造を有するその他のエポキシ樹脂を含む。
【0056】
3.評価用フィルムの作製
アルミ製容器(L102mm×W45mm×H23mm)の底部に離型剤(ダイキン工業(株)製「ダイフリーGA-7500」)を塗布し、塗膜を、熱風式加熱炉を用いて120℃で3分間加熱することによって、容器の底部を離型処理した。次いで、アルミ製容器に各実施例及び比較例の樹脂ワニスを流し入れた。アルミ製容器内の樹脂ワニスを120℃で1時間加熱することにより硬化して、熱硬化性組成物の硬化物からなる評価用フィルム(厚さ1mm)を得た。
【0057】
4.評価
[弾性率、伸び率]
評価用フィルムから、長さ40mm、幅5mmの試験片を切り出した。この試験片の引張試験を、オートグラフ((株)島津製作所「EZ-S」)を用いて行い、応力-ひずみ曲線を得た。得られた応力-ひずみ曲線から、硬化物の弾性率及び破断伸び率を求めた。引張試験は、チャック間距離20mm、引張速度50mm/minの条件で行った。弾性率は、加重0.1~0.5Nにおける値であり、伸び率は試験片が破断した時点の伸び(破断伸び率)である。比較例2の樹脂ワニスからは硬化物が形成されなかったため、硬化物の弾性率及び伸び率を測定できなかった。
【0058】
[伸縮回復率]
評価用フィルムから、長さ40mm、幅5mmの試験片を切り出した。この試験片の引張試験をマイクロフォース試験機(Illinois Tool Works Inc製「Instron 5948」)を用いて2回行った。試験片を一対のチャックで挟み、1回目の引張試験で変位量(ひずみ)をXまで試験片に引張応力を加えた。次いでチャックを初期位置に戻し、再度、変位量(ひずみ)Xまで引張試験を行ったときに荷重がかかっている区間の変位量(ひずみ)Yを測定した。伸縮回復率Rを、式:R=(Y/X)×100により求めた。本測定では初期長さ(チャック間の距離)を20mm、Xを10mm(ひずみ50%)とした。比較例4の樹脂ワニスから形成されたフィルムは、1回目の引張試験でひずみ50%に達する前に破断した。
【0059】
[ポリイミドとの密着性]
各実施例の樹脂ワニスを、厚さ50μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製「カプトン200EN」上にフィルムアプリケーター(テスター産業(株))を用いて塗布した。塗膜を表1又は表2に示す硬化条件で硬化した。形成された硬化膜に、1mm間隔の碁盤目の切れ目を入れ、硬化膜を100個の正方形部分に分割した。碁盤目の切れ目が形成された部分の全体に粘着テープを強く圧着させ、粘着テープの端を45°の角度で一気に引き剥がした。その後、100個の正方形部分のうち、ポリイミドフィルムから剥離しなかったものの個数に基づいて、密着性を以下の3段階で評価した。
A:100(剥離なし)
B:95~99
C:95未満
【0060】
[粘度(保管安定性)]
各実施例の樹脂ワニスの初期、及び室温(25℃)で24時間保管後の25℃における粘度を、E型粘度計(東機産業(株)製「TVE25H」)で測定した。粘度の変化に基づいて、樹脂ワニスの保存安定性を評価した。
【0061】
【0062】
【0063】
実施例の樹脂ワニスから形成された硬化物(伸縮性樹脂)は、130%以上の高い破断伸び率を示し、且つ、90%以上の高い伸縮回復率を示した。特に、実施例3~7の樹脂ワニスから形成された硬化物(伸縮性樹脂)は、200%を超える非常に高い破断伸び率を示した。2級チオール基を有するチオール化合物を用いた実施例6及び7の樹脂ワニスは、室温24時間保管後の粘度上昇が小さく、保管安定性に優れている。
【符号の説明】
【0064】
1…フレキシブル基板、2…回路部品、3…封止樹脂層(伸縮性樹脂)、100…半導体装置。