IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電信電話株式会社の特許一覧

特許7400936映像品質推定装置、映像品質推定方法、及びプログラム
<>
  • 特許-映像品質推定装置、映像品質推定方法、及びプログラム 図1
  • 特許-映像品質推定装置、映像品質推定方法、及びプログラム 図2
  • 特許-映像品質推定装置、映像品質推定方法、及びプログラム 図3
  • 特許-映像品質推定装置、映像品質推定方法、及びプログラム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】映像品質推定装置、映像品質推定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 17/00 20060101AFI20231212BHJP
   H04N 21/83 20110101ALI20231212BHJP
【FI】
H04N17/00 Z
H04N21/83
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022502366
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2020007458
(87)【国際公開番号】W WO2021171363
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-06-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年7月11日に電子情報通信学会 信学技報 コミュニケーションクオリティ研究会(CQ) vol.119 No.125 CQ2019-52 pp.79-83にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】浦田 勇一朗
(72)【発明者】
【氏名】小池 正憲
(72)【発明者】
【氏名】山岸 和久
【審査官】益戸 宏
(56)【参考文献】
【文献】小池正憲 他2名,タイルベースVR映像配信サービスの客観品質推定モデルに関する検討,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2019年03月07日,Vol.118, No.503,pp.55-59
【文献】篠原裕矢 他2名,視野領域を考慮した360度映像配信の適応レート制御手法の性能評価,情報処理学会研究報告 オーディオビジュアル複合情報処理(AVM),日本,情報処理学会,2018年03月07日,Vol.2018-AVM-100, No.10,pp.1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 17/00
H04N 21/83
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像の視聴時のユーザが体感する品質を推定するための映像品質推定装置であって、
前記映像における高画質領域の映像品質に関するパラメータと、前記映像における低画質領域の映像品質に関するパラメータと、低画質表示状態から高画質表示状態に切り替わるまでの時間に関するパラメータとに基づいて映像品質推定値を算出する映像品質推定部
を備える映像品質推定装置。
【請求項2】
前記高画質領域の映像品質に関するパラメータに基づき高画質領域の映像品質を推定する高画質領域映像品質推定部と、
前記低画質領域の映像品質に関するパラメータに基づき低画質領域の映像品質を推定する低画質領域映像品質推定部とを更に備え、
前記映像品質推定部は、前記高画質領域映像品質推定部が推定した高画質領域映像品質推定値と、前記低画質領域映像品質推定部が推定した低画質領域映像品質推定値と、低画質表示状態から高画質表示状態に切り替わるまでの時間に関するパラメータとに基づいて前記映像品質推定値を算出する
請求項1に記載の映像品質推定装置。
【請求項3】
前記映像におけるオーディオ品質に関するパラメータからオーディオ品質を推定するオーディオ品質推定部と、
前記映像品質推定部が推定した映像品質推定値と前記オーディオ品質推定部が推定したオーディオ品質推定値とに基づきオーディオビジュアル品質を推定するオーディオビジュアル品質・品質変動統合部と、
前記映像における再生停止に関するパラメータに基づき再生停止による体感品質の劣化量を推定する劣化量推定部と、
前記オーディオビジュアル品質・品質変動統合部が推定したオーディオビジュアル品質と、前記劣化量推定部が推定した再生停止による劣化量とに基づき視聴に対する体感品質を推定する品質統合部と
を更に備える請求項1又は2に記載の映像品質推定装置。
【請求項4】
前記オーディオビジュアル品質・品質変動統合部は、前記映像品質推定部が推定した映像品質推定値と前記オーディオ品質推定部が推定したオーディオ品質推定値とに基づいて、短時間の視聴に対する短時間オーディオビジュアル品質を推定し、当該短時間オーディオビジュアル品質に基づいて、前記オーディオビジュアル品質を推定する
請求項3に記載の映像品質推定装置。
【請求項5】
ユーザが視聴する前記映像は、タイルベースのVR映像である
請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載の映像品質推定装置。
【請求項6】
映像の視聴時のユーザが体感する品質を推定するための映像品質推定装置が実行する映像品質推定方法であって、
前記映像における高画質領域の映像品質に関するパラメータと、前記映像における低画質領域の映像品質に関するパラメータと、低画質表示状態から高画質表示状態に切り替わるまでの時間に関するパラメータとに基づいて映像品質推定値を算出する映像品質推定ステップ
を備える映像品質推定方法。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の映像品質推定装置の各部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VR(Virtual Reality)映像の品質評価を行う技術に関連するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、VR技術の発展により、ユーザが360°見渡すことのできるVR映像配信サービス・コンテンツが増加しており、ユーザがスマートフォン、タブレット端末、PC、HMD等を用いてVR映像を視聴する機会も増加している。
【0003】
ベストエフォート型ネットワークを介したサービス提供ではサービス品質が時間帯等によって大きく変化するため、サービス品質の可視化が重要となる。そのため、映像配信、Webブラウジング、音声通話等に対する品質監視を目的とする品質推定技術が確立されてきた。
【0004】
一方で、近年、カメラの高性能化、ディスプレイの高精細化・小型化、映像処理技術の進展等に伴い、360度全方向を視聴可能なVR映像配信サービスが普及してきたが、VR映像配信に対する品質推定技術は確立されていない。
【0005】
VR映像配信では、高解像度の360度映像を配信するため、高いビットレートを必要とする。そのため、2D映像配信サービスのように映像全体を一様な画質で符号化・配信せず、ディスプレイに表示されるユーザの視聴方向の領域を高ビットレートで配信し、その他のディスプレイに表示されない映像を低ビットレートで配信、もしくは配信しないことによって配信コストを抑えるというタイルベース配信が主流になりつつある。
【0006】
非特許文献1では、映像全体をタイル分割し、各タイルを高ビットレートで符号化(高画質タイル)し、映像全体の解像度を低下させ低ビットレートで符号化(低画質タイル)する符号化方式を提案している。本方式では、ユーザの視聴方向の高画質タイルと映像全体を含む低画質タイルを配信する。
【0007】
タイルベース配信においても、MPEG-DASH等をはじめとするアダプティブビットレート映像配信が利用される。アダプティブビットレート映像配信では、スループット低下や受信端末のバッファ枯渇による再生停止を可能な限り避けるため、ビットレートレベルを切り替えながら配信を行う。
【0008】
前述のように、タイルベースVR映像配信では、ユーザの視聴領域変更に伴い、高画質タイルのダウンロードが新たに必要となるため、その間、低画質タイルが表示される。加えて、スループットやバッファ枯渇により、選択されるビットレートの変動や再生停止が発生する。このようにVR映像配信の品質監視を行うためには、高画質・低画質の切り替えに伴う品質劣化、ビットレート変動による画質劣化や再生停止を加味した品質推定技術が必要となる。
【0009】
品質監視の実現にむけたビットレート変動や再生停止を考慮した品質推定技術としては、ITU-T勧告P.1203(非特許文献2)が標準化されている。
【0010】
しかしながら、非特許文献2をはじめとする2D映像の品質推定法では、視聴領域の変更に伴う品質変動は考慮できていない。2D映像では、帯域変動に伴う品質変動はあるものの視聴時の時刻に対して映像品質は1つだが、タイルベースVR映像では、視聴方向の変更により高画質領域だけでなく低画質領域も視聴される可能性があるため、両方の映像品質を考慮する必要がある。
【0011】
非特許文献2を拡張し、VR映像の品質推定、特に、タイルベースVR映像を対象とした品質推定の検討としては非特許文献3がある。非特許文献3は、視聴領域の変更に伴う品質変動を考慮し、高画質タイル、低画質タイルの品質推定値あるいは品質劣化量を用いることで、ユーザ視聴時の体感品質を推定している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】D. Ochi, Y. Kunita, A. Kameda, A. Kojima, S. Iwaki, "Live streaming system for omnidirectional video", Proc. of IEEE Virtual Reality (VR), 2015.
【文献】Parametric bitstream-based quality assessment of progressive download and adaptive audiovisual streaming services over reliable transport, Recommendation ITU-T P.1203, 2017.
【文献】浦田勇一朗,小池正憲,山岸和久,"ITU-T 勧告P.1203 技術のVR映像配信への適用可能性," 信学技報, vol. 119, no. 125, CQ2019-52, pp. 79-83, 2019 年7 月.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
タイルベースVR映像では、視聴方向の変更により高画質領域だけでなく低画質領域も視聴され、変更後の視聴方向において低画質から高画質に切り替わるまで時間(以下、切り替え遅延)がかかる。切り替え遅延は再生プレイヤのバッファや映像のチャンクサイズに依存する。
【0014】
しかしながら、非特許文献3の品質推定法では、切り替え遅延が一定であることが前提となっており、高画質タイルと低画質タイルの品質推定値を一定の割合で重みづけして和をとっている。前提としている切り替え遅延と異なる切り替え遅延が発生した際には品質推定精度が低くなってしまう。
【0015】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、タイルベースかつアダプティブに配信されるVR映像を視聴した際にユーザが体感する品質を視聴領域の変更に伴う切り替え遅延を考慮して推定することを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
開示の技術によれば、映像の視聴時のユーザが体感する品質を推定するための映像品質推定装置であって、
前記映像における高画質領域の映像品質に関するパラメータと、前記映像における低画質領域の映像品質に関するパラメータと、低画質表示状態から高画質表示状態に切り替わるまでの時間に関するパラメータとに基づいて映像品質推定値を算出する映像品質推定部
を備える映像品質推定装置が提供される。
【発明の効果】
【0017】
開示の技術によれば、タイルベースかつアダプティブに配信されるVR映像を視聴した際にユーザが体感する品質を視聴領域の変更に伴う切り替え遅延を考慮して推定することを可能とする技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態におけるVR映像品質推定装置の構成図である。
図2】本発明の一実施形態における高画質領域映像品質推定部11への入力パラメータ例を示す図である。
図3】本発明の一実施形態におけるVR映像品質推定装置のハードウェア構成例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態におけるVR映像品質推定装置が実行する映像品質推定方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下で説明する実施の形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施の形態は、以下の実施の形態に限られるわけではない。以下の実施形態の説明では、VR映像を対象としているが、本発明はVR映像ではない、高画質領域と低画質領域を有する映像に適用することも可能である。
【0020】
以下の実施形態においては、ユーザが360°見渡すことのできるVR映像を、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)等を装着し、ユーザが首を振る、体を動かすなどの行動によって視線方向を変えることのできる状態、あるいは従来の据え置き型のディスプレイをマウス等の操作によって映像の視聴方向を変えることのできる等の状態で視聴した際に体感するVR映像の品質値(映像品質値)を推定するVR映像品質推定装置について説明する。
【0021】
以下、第一の実施形態と第二の実施形態を説明する。第一の実施形態と第二の実施形態において、VR映像はタイルベースであり、アダプティブビットレート配信がなされるものである。また、以下で説明する高画質領域は、例えば高画質タイルであり、低画質領域は、例えば低画質タイルである。また、VR映像品質推定装置1に入力されるパラメータの取得方法は特定の方法に限られない。例えば、映像配信サーバから取得することができる。また、ユーザが視聴する「映像」は、音声も含むことを想定している。
(第一の実施形態)
<装置構成>
図1は、第一の実施形態におけるVR映像品質推定装置1の構成例を示す。図1に示すように、VR映像品質推定装置1は、高画質領域映像品質推定部11、低画質領域映像品質推定部12、映像品質推定部13、オーディオ品質推定部14、品質統合部23を有する。品質統合部23は、AV(Audio Visual)品質・品質変動統合部21、再生停止による劣化量推定部22を有する。なお、VR映像品質推定装置1を、映像品質推定装置1と呼んでもよい。また、VR映像品質推定装置1において、オーディオ品質推定部14、品質統合部23を備えないこととしてもよい。その場合、VR映像品質推定装置1から、映像品質推定部13により算出された映像品質推定値が出力される。
【0022】
高画質領域映像品質推定部11は、高画質領域の映像パラメータを入力として、数秒から数十秒程度の視聴に対する高画質領域映像品質推定値を算出する。高画質領域の映像パラメータの例を図2に示す。図2に示すとおり、ビットレート、フレームレート、解像度等が入力パラメータとして使用される。
【0023】
高画質領域映像品質推定部11は、例えば下記の数式により高画質領域映像品質推定値を算出する。
【0024】
O.22=MOSq
MOSq=q+q・exp(q・quant)
quant=a+a・ln(a+ln(br)+ln(br・bpp))
【0025】
【数1】
ただし、O.22は高画質領域映像品質推定値、brはビットレート、resは解像度、frはフレームレートを表し、q~q、a~aは予め定められた定数である。quantについては、上記のようにbr、bppから求める代わりに、所定の量子化パラメータQPを用いてもよい。
【0026】
なお、本明細書において示される「予め定められた定数」については、例えば、実験により最適な値を求めておくこととしてもよいし、ITU-T勧告P.1203において規定されている値を適用できる場合にはその値を用いてもよい。
【0027】
高画質領域映像品質推定部11は、高画質領域映像品質推定値を、上記のMOSqを用いて以下のように算出してもよい。
【0028】
O.22=MOSfromR(100-D
=max(min(D+D+D,100),0)
=max(min(100-RfromMOS(MOSq),100),0)
=max(min(u・log10(u・(scaleFactor-1)+1),100,0)
【0029】
【数2】
ただし、Dは高画質領域による品質劣化量を示している。また、MOSfromRとRfromMOSはユーザ体感品質MOSと心理値Rを変換する関数、disResは表示解像度、codResは符号化解像度、u、u、t~tは予め定められた定数である。
【0030】
また、高画質領域映像品質推定部11は、高画質領域映像品質推定値を、以下のように算出してもよい。
【0031】
O.22=VQ
【0032】
【数3】
ただし、br、res、frはそれぞれビットレート、解像度、フレームレートを表し、v~vは予め定められた定数である。上記式におけるX、Yと同様のX、Yを用いることで、brの代わりに量子化パラメータQPを用いて、高画質領域映像品質推定値を下記のように算出してもよい。
【0033】
【数4】
低画質領域映像品質推定部12も、高画質領域映像品質推定部11と同様に、低画質領域の映像パラメータを入力として低画質領域映像品質推定値O.22を算出する。低画質領域映像品質推定値O.22も、数秒から数十秒程度の視聴に対する品質推定値である。
【0034】
なお,低画質領域映像品質推定値O.22を算出する際の各定数は、高画質領域映像品質推定部11でO.22を算出する際の各定数と等しい値を用いてもよいし、異なる値を用いてもよい。
【0035】
映像品質推定部13は、高画質領域映像品質推定部11により算出された高画質領域映像品質推定値O.22と、低画質領域映像品質推定部12により算出された低画質領域映像品質推定値O.22と、及び、低画質表示状態から高画質表示状態に切り替わるまでの切り替え遅延を示すパラメータ(後述するdelay)とに基づいて映像品質推定値O.22を算出する。映像品質推定値O.22も、数秒から数十秒程度の視聴に対する品質推定値である。映像品質推定部13は、例えば以下の計算式で映像品質推定値を算出する。
【0036】
O.22=ω・O.22+(1-ω)・O.22
【0037】
【数5】
上記の式において、delayは切り替え遅延の秒数、resは高画質領域の解像度、resは映像全体の解像度、d~dは予め定めた係数である。ωは高画質領域の品質と低画質領域の品質の総合品質に対する寄与度を示す値である。なお、Sは、画像全体の中で低画質タイル(低画質領域)の占める面積に相当する。低画質タイルを表示しない場合、Sは0になる。特にd=0と定めたときは、解像度の影響を考慮しないこともできる。ωは同様の変数及び係数を用いて、積の形で次のように算出してもよい。
【0038】
【数6】
説明のために、仮にd~dをいずれも1とすると、上記のいずれのωの式においても、遅延が小さいほど、及び、高画質領域の解像度が大きいほど、ωが大きくなり、全体の映像に対する品質高画質領域の映像品質の寄与が高くなる。
【0039】
映像品質推定部13は、ωを用いずに、次のように映像品質推定値O.22を算出してもよい。
【0040】
【数7】
ただし、d~d10は予め定めた係数である。
【0041】
オーディオ品質推定部14はオーディオパラメータを入力として、数秒から数十秒程度の視聴に対するオーディオ品質推定値を算出する。オーディオ品質推定値は以下の式で算出することができる。
【0042】
O.21=a1A・exp(a2A・br)+a3A
ただし、O.21はオーディオ品質推定値、brはオーディオのビットレートを表し、a1A~a3Aは予め定められた定数である。また、オーディオ品質推定部14は、オーディオ品質推定値を下記の式で算出してもよい。
【0043】
【数8】
上記の式において、a4A~a6Aは予め定められた定数である。
【0044】
AV品質・品質変動統合部21及び再生停止による劣化量推定部22を備える品質統合部23では、映像品質推定値、オーディオ品質推定値、再生停止パラメータ、デバイスタイプを入力として、品質推定値を算出する。
【0045】
AV品質・品質変動統合部21は、映像品質推定値とオーディオ品質推定値から数秒から数十秒程度の視聴に対する短時間AV品質推定値O.34を算出し、帯域の時間変動に伴う品質変動を加味した数分程度の視聴に対する長時間AV品質推定値O.35を算出する。なお、本明細書では、数秒から数十秒程度を「短時間」、数分程度を「長時間」と呼んでいる。
【0046】
AV品質・品質変動統合部21は、O.34を、例えば以下の式で算出することができる。
【0047】
O.34=max(min(av+av・O.21+av・O.22+av・O.21・O.22,5),1)
ただし、O.34は時刻tにおけるAV品質推定値、O.21は時刻tにおけるオーディオ品質推定値、O.22は時刻tにおける映像品質推定値を表し、av~avは予め定められた定数である。
【0048】
また、AV品質・品質変動統合部21は、メディアセッションに対するAV品質推定値であるO.35を以下の式で算出できる。
【0049】
O.35=O.35baseline-negBias-oscComp-adaptComp
【0050】
【数9】
(t)=t-t・O.34
ただし、O.35はAV品質推定値、O.34は時刻tにおけるAV品質推定値、TはAV品質推定値O.35の対象時間長を表し、t~tは予め定められた定数である。negBias、oscComp、adaptCompは品質変動の幅や頻度の影響を表す変数であり、ITU-T勧告P.1203において規定されている方法で計算してもよいし、計算を省略して、
O.35=O.35baseline
としてもよい。
【0051】
再生停止による劣化量推定部22は、再生停止パラメータから再生停止による劣化量SIを算出する。再生停止による劣化量SIは、例えば、以下の式で算出できる。
【0052】
【数10】
ただし、numStallsは再生停止回数、totalStallLenは再生停止時間の合計、avgStallIntervalは再生停止の発生間隔の平均、TはAV品質推定値(及びSI)の対象時間長を表し、s~sは予め定められた定数である。
【0053】
品質統合部23は、AV品質推定値O.35と再生停止による劣化量SIから品質推定値O.46を算出する。品質推定値は、例えば、以下の式で算出できる。
【0054】
O.46=0.02833052+0.98117059・O.46temp
O.46temp=0.75・(1+(O.35-1)・SI)+0.25・RFPrediction
ただし、RFPredictionはランダムフォレストにより計算される品質推定値である。ランダムフォレストの計算を省略して、以下で品質推定値O.46を算出してもよい。
【0055】
O.46=1+(O.35-1)・SI
【0056】
(ハードウェア構成例)
VR映像品質推定装置1は、例えば、図1に示す各部の機能を実現する論理回路を用いてハードウェアで実現してもよいし、汎用のコンピュータに、第一、第二の実施形態で説明する処理内容を記述したプログラムを実行させることにより実現することとしてもよい。なお、この「コンピュータ」は、仮想マシンであってもよい。仮想マシンを使用する場合、ここで説明する「ハードウェア」は仮想的なハードウェアである。
【0057】
コンピュータを用いる場合、VR映像品質推定装置1は、当該コンピュータに内蔵されるCPUやメモリ等のハードウェア資源を用いて、VR映像品質推定装置1で実施される処理に対応するプログラムを実行することによって実現することが可能である。上記プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(可搬メモリ等)に記録して、保存したり、配布したりすることが可能である。また、上記プログラムをインターネットや電子メール等、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0058】
図3は、上記コンピュータのハードウェア構成例を示す図である。図3のコンピュータは、それぞれバスBで相互に接続されているドライブ装置1000、補助記憶装置1002、メモリ装置1003、CPU1004、インタフェース装置1005、表示装置1006、及び入力装置1007等を有する。
【0059】
当該コンピュータでの処理を実現するプログラムは、例えば、CD-ROM又はメモリカード等の記録媒体1001によって提供される。プログラムを記憶した記録媒体1001がドライブ装置1000にセットされると、プログラムが記録媒体1001からドライブ装置1000を介して補助記憶装置1002にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体1001より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置1002は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0060】
メモリ装置1003は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置1002からプログラムを読み出して格納する。CPU1004は、メモリ装置1003に格納されたプログラムに従って、VR映像品質推定装置1に係る機能を実現する。インタフェース装置1005は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられる。表示装置1006はプログラムによるGUI(Graphical User Interface)等を表示する。入力装置1007はキーボード及びマウス、ボタン、又はタッチパネル等で構成され、様々な操作指示を入力させるために用いられる。
【0061】
(VR映像品質推定装置1の処理手順)
以下、VR映像品質推定装置1が実行する処理手順について説明する。図4は、VR映像品質推定装置1が実行する処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【0062】
S11において、高画質領域映像品質推定部11が、高画質領域の映像パラメータに基づいて、高画質領域映像品質推定値を算出する。S12において、低画質領域映像品質推定部12が、低画質領域の映像パラメータに基づいて、低画質領域映像品質推定値を算出する。
【0063】
S13において、映像品質推定部13が、高画質領域映像品質推定値と、低画質領域映像品質推定値と、低画質表示状態から高画質表示状態に切り替わるまでの時間に関するパラメータとに基づき映像品質推定値(例:O.22)を算出する。S14において、オーディオ品質推定部14がオーディオ品質推定値(例:O.21)を算出する。
【0064】
S21において、AV品質・品質変動統合部21が、映像品質推定値とオーディオ品質推定値に基づき短時間AV品質推定値(例:O.34)を算出する。S22において、AV品質・品質変動統合部21が、短時間AV品質推定値に基づきAV品質推定値(例:O.35)を算出する。
【0065】
S23において、再生停止による劣化量推定部22が、再生停止による劣化量(例:SI)を算出する。S31において、品質統合部23が、AV品質推定値と再生停止による劣化量に基づき、品質推定値(例:O.46)を算出し、出力して、処理を終了する。
【0066】
(第二の実施形態)
次に、第二の実施形態について説明する。以下、第二の実施形態の第一の実施形態と異なる点を説明する。
【0067】
第二の実施形態の第一の実施形態と異なる点は、高画質領域映像品質推定部11、低画質領域映像品質推定部12はそれぞれ品質劣化量を出力し、映像品質推定部13はそれらの品質劣化量に基づいて映像品質推定値を算出する点である。
【0068】
例えば、第一の実施形態で例示した式を用いて、高画質領域映像品質推定部11、低画質領域映像品質推定部12は、D、Dを出力する。
【0069】
映像品質推定部13は、下記の式により映像品質推定値(O.22)を算出することができる。
【0070】
O.22=MOSfromR(100-max(min(DHL,100),0))
HL=ω・D+(1-ω)・D
【0071】
【数11】
ただし、delayは切り替え遅延、resは高画質領域の解像度、resは映像全体の解像度、d~dは予め定めた係数である。
【0072】
映像品質推定部13は、下記の式によりDHLを算出してもよい。
【0073】
【数12】
ただし、d~d10は予め定めた係数である。
【0074】
(実施形態の効果)
上記のように、タイルベースのVR映像サービスに対して、高画質領域の映像品質、低画質領域の映像品質をそれぞれ算出し、低画質表示状態から高画質表示状態に切り替わるまでの時間に関するパラメータとともに考慮することで、視線移動に伴う品質劣化を加味した視聴に対する体感品質の推定を行うことができる。
【0075】
(実施の形態のまとめ)
本明細書には、少なくとも下記の各項に記載した映像品質推定装置、映像品質推定方法、プログラムが記載されている。
(第1項)
映像の視聴時のユーザが体感する品質を推定するための映像品質推定装置であって、
前記映像における高画質領域の映像品質に関するパラメータと、前記映像における低画質領域の映像品質に関するパラメータと、低画質表示状態から高画質表示状態に切り替わるまでの時間に関するパラメータとに基づいて映像品質推定値を算出する映像品質推定部
を備える映像品質推定装置。
(第2項)
前記高画質領域の映像品質に関するパラメータに基づき高画質領域の映像品質を推定する高画質領域映像品質推定部と、
前記低画質領域の映像品質に関するパラメータに基づき低画質領域の映像品質を推定する低画質領域映像品質推定部とを更に備え、
前記映像品質推定部は、前記高画質領域映像品質推定部が推定した高画質領域映像品質推定値と、前記低画質領域映像品質推定部が推定した低画質領域映像品質推定値と、低画質表示状態から高画質表示状態に切り替わるまでの時間に関するパラメータとに基づいて前記映像品質推定値を算出する
第1項に記載の映像品質推定装置。
(第3項)
前記映像におけるオーディオ品質に関するパラメータからオーディオ品質を推定するオーディオ品質推定部と、
前記映像品質推定部が推定した映像品質推定値と前記オーディオ品質推定部が推定したオーディオ品質推定値とに基づきオーディオビジュアル品質を推定するオーディオビジュアル品質・品質変動統合部と、
前記映像における再生停止に関するパラメータに基づき再生停止による体感品質の劣化量を推定する劣化量推定部と、
前記オーディオビジュアル品質・品質変動統合部が推定したオーディオビジュアル品質と、前記劣化量推定部が推定した再生停止による劣化量とに基づき視聴に対する体感品質を推定する品質統合部と
を更に備える第1項又は第2項に記載の映像品質推定装置。
(第4項)
前記オーディオビジュアル品質・品質変動統合部は、前記映像品質推定部が推定した映像品質推定値に基づいて短時間の視聴に対する短時間オーディオビジュアル品質を推定し、当該短時間オーディオビジュアル品質に基づいて、前記オーディオビジュアル品質を推定する
第3項に記載の映像品質推定装置。
(第5項)
ユーザが視聴する前記映像は、タイルベースのVR映像である
第1項ないし第4項のうちいずれか1項に記載の映像品質推定装置。
(第6項)
映像の視聴時のユーザが体感する品質を推定するための映像品質推定装置が実行する映像品質推定方法であって、
前記映像における高画質領域の映像品質に関するパラメータと、前記映像における低画質領域の映像品質に関するパラメータと、低画質表示状態から高画質表示状態に切り替わるまでの時間に関するパラメータとに基づいて映像品質推定値を算出する映像品質推定ステップ
を備える映像品質推定方法。
(第7項)
コンピュータを、第1項ないし第5項のうちいずれか1項に記載の映像品質推定装置の各部として機能させるためのプログラム。
【0076】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 VR映像品質推定装置
11 高画質領域映像品質推定部
12 低画質領域映像品質推定部
13 映像品質推定部
14 オーディオ品質推定部
21 AV品質・品質変動統合部
22 再生停止による劣化量推定部
23 品質統合部
1000 ドライブ装置
1001 記録媒体
1002 補助記憶装置
1003 メモリ装置
1004 CPU
1005 インターフェース装置
1006 表示装置
1007 入力装置
図1
図2
図3
図4