(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】メッセージ生成装置、メッセージ提示装置、メッセージ生成方法及びメッセージ生成プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 16/9035 20190101AFI20231212BHJP
【FI】
G06F16/9035
(21)【出願番号】P 2022530356
(86)(22)【出願日】2020-06-08
(86)【国際出願番号】 JP2020022488
(87)【国際公開番号】W WO2021250730
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹川 真奈
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 妙
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-62490(JP,A)
【文献】特開2015-64826(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146767(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00 - 16/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発信者の感情を推定するための発信者情報を取得する発信者情報取得部と、
前記発信者からのメッセージを受け取る受け手の感情を推定するための受け手情報を取得する受け手情報取得部と、
前記発信者情報取得部で取得した前記発信者情報に基づいて推定される前記発信者の感情に対応する行動を表すメッセージを生成するメッセージ生成部と、
を備え、
前記メッセージ生成部は、前記行動を表すメッセージとして、
前記発信者情報取得部で取得した前記発信者情報に基づいて推定される前記発信者の感情と、前記受け手情報取得部で取得した前記受け手情報に基づいて推定される前記受け手の感情とが、近いときには、前記行動を具体化したメッセージを生成し、
前記推定した前記発信者の感情と前記受け手の感情とが遠いときには、前記行動を概念化したメッセージを生成する、
メッセージ生成装置。
【請求項2】
前記発信者の感情に対応する、発信者がやりたい行動を示す行動メッセージを保持する行動データベースを更に備え、
前記メッセージ生成部は、
前記発信者情報取得部で取得した前記発信者情報に基づいて前記発信者の感情を推定し、前記推定した前記発信者の感情に対応する行動の行動メッセージを前記行動データベースから取得する行動取得部と、
前記受け手情報取得部で取得した前記受け手情報に基づいて前記受け手の感情を推定し、推定した前記受け手の感情と前記行動取得部で推定した前記発信者の感情との近さに応じて、生成するメッセージの抽象度を算出する抽象度算出部と、
前記抽象度算出部が生成した前記抽象度に基づいて、前記行動取得部で取得した前記行動メッセージに対応するメッセージを生成する生成部と、
を備える、
請求項1に記載のメッセージ生成装置。
【請求項3】
前記抽象度算出部は、
前記行動取得部で推定した前記発信者の感情を発信者感情ベクトルに変換すると共に、前記受け手情報に基づいて推定した前記受け手の感情を受け手感情ベクトルに変換し、
前記発信者感情ベクトルと前記受け手感情ベクトルとの近さを、前記発信者の感情と前記受け手の感情との前記近さとする、
請求項2に記載のメッセージ生成装置。
【請求項4】
前記抽象度算出部は、
前記発信者感情ベクトルと前記受け手感情ベクトルとの内積を算出し、
前記内積が-1以上0未満であれば、前記発信者の感情と前記受け手の感情が遠いと判定して、前記抽象度を1段階上げ、
前記内積が0以上1以下であれば、前記発信者の感情と前記受け手の感情が近いと判定して、前記抽象度を1段階下げる、
請求項3に記載のメッセージ生成装置。
【請求項5】
前記生成部は、前記行動取得部で取得した前記行動メッセージと、前記抽象度算出部が算出した前記抽象度とに基づいて、前記具体化したメッセージとしての、前記行動メッセージを下位概念化したメッセージ、又は、前記行動を概念化したメッセージとしての、前記行動メッセージを上位概念化したメッセージを生成する、
請求項4に記載のメッセージ生成装置。
【請求項6】
前記行動データベースが保持する行動メッセージそれぞれについて、前記抽象度算出部が算出した前記抽象度に応じた複数段階の抽象度のメッセージを保持するメッセージデータベースを更に備え、
前記生成部は、前記行動取得部で取得した前記行動メッセージに対応し且つ前記抽象度算出部が算出した前記抽象度に対応する抽象度のメッセージを、前記メッセージデータベースから選択する選択部を有する、
請求項4に記載のメッセージ生成装置。
【請求項7】
前記発信者感情ベクトル及び前記受け手感情ベクトルは、感情価と覚醒価を軸とした2次元空間にて感情をマッピングしたラッセルの感情円環モデル上におけるベクトルである、
請求項3乃至6の何れかに記載のメッセージ生成装置。
【請求項8】
前記メッセージ生成装置は、前記発信者が有する発信者装置と、前記受け手が有する受け手装置と、を含み、
前記受け手装置は、少なくとも、前記メッセージ生成部の前記抽象度算出部及び前記生成部を含む、
請求項2に記載のメッセージ生成装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載のメッセージ生成装置と、
前記メッセージ生成装置の前記メッセージ生成部によって生成された前記メッセージを前記受け手に提示するメッセージ提示部と、
を備える、メッセージ提示装置。
【請求項10】
プロセッサを備え、発信者の感情に対応する行動を表すメッセージを生成するメッセージ生成装置におけるメッセージ生成方法であって、
前記プロセッサにより、前記発信者の感情を推定するための発信者情報を取得し、
前記プロセッサにより、前記取得した前記発信者情報に基づいて前記発信者の感情を推定し、
前記プロセッサにより、前記発信者からのメッセージを受け取る受け手の感情を推定するための受け手情報を取得し、
前記プロセッサにより、前記取得した前記受け手情報に基づいて前記受け手の感情をすいていし、
前記プロセッサにより、前記推定した前記発信者の感情と前記受け手の感情とが近いときには、前記発信者の感情に対応する前記行動を具体化したメッセージを生成し、
前記プロセッサにより、前記推定した前記発信者の感情と前記受け手の感情とが遠いときには、前記発信者の感情に対応する前記行動を概念化したメッセージを生成する、
メッセージ生成方法。
【請求項11】
請求項1乃至8の何れかに記載のメッセージ生成装置の前記各部としてプロセッサを機能させるメッセージ生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、メッセージ生成装置、メッセージ提示装置、メッセージ生成方法及びメッセージ生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
発信者の感情に基づいてメッセージを提示するための技術が各種提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、犬の鳴き声の特徴から犬の感情を推定する感情推定技術を開示している。また、この感情推定技術を適用して、ペットとのコミュニケーションツールを提供する製品も販売されている。この製品では、ペットの感情毎に複数のメッセージが用意されており、推定された感情に紐づけられたメッセージがランダムに提示されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発信者の実行したい行動が主張されたとき、コミュニケーション相手である受け手の感情によって、その主張が叶えられるかは左右されることが多い。例えば、発信者が楽しい気持ちで「散歩したい!」と思った場合、受け手の感情が発信者の感情である「楽しい」と近ければ、その行動を実行してくれる可能性が高い。これに対して、受け手の感情が例えば「悲しい」などといった、発信者の感情(楽しい)と遠い場合は、その行動を実行してもらえない可能性が高い。
【0006】
特許文献1は、コミュニケーション相手である受け手の感情を考慮する構成について全く開示していない。
【0007】
この発明は、発信者の感情に加えて、コミュニケーション相手である受け手の感情も考慮して、提示するメッセージを生成できるようにする技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明の一態様に係るメッセージ生成装置は、発信者の感情を推定するための発信者情報を取得する発信者情報取得部と、前記発信者からのメッセージを受け取る受け手の感情を推定するための受け手情報を取得する受け手情報取得部と、前記発信者情報取得部で取得した前記発信者情報に基づいて推定される前記発信者の感情に対応する行動を表すメッセージを生成するメッセージ生成部と、を備え、前記メッセージ生成部は、前記行動を表すメッセージとして、前記発信者情報取得部で取得した前記発信者情報に基づいて推定される前記発信者の感情と、前記受け手情報取得部で取得した前記受け手情報に基づいて推定される前記受け手の感情とが、近いときには、前記行動を具体化したメッセージを生成し、前記推定した前記発信者の感情と前記受け手の感情とが遠いときには、前記行動を概念化したメッセージを生成する。
【発明の効果】
【0009】
この発明の一態様によれば、発信者とコミュニケーション相手である受け手との感情の近さに応じたメッセージを生成するので、発信者の感情に加えて受け手の感情も考慮して、提示するメッセージを生成可能とする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】
図1Aは、この発明の第1実施形態に係るメッセージ生成装置を備えるメッセージ提示装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図1B】
図1Bは、メッセージ提示装置を構成する情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、行動データベースが保持する情報の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、情報処理装置における処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、行動メッセージ「あそぶの?じゅんびOK!」が示す各感情成分をラッセルの感情円環モデル上にモデル化した図である。
【
図5】
図5は、
図4の各感情ベクトルに基づいて取得される発信者感情の感情ベクトルを示す図である。
【
図6】
図6は、受け手感情の感情ベクトルを示す図である。
【
図7】
図7は、発信者感情の感情ベクトルと受け手感情の感情ベクトルとの関係を示す図である。
【
図8】
図8は、この発明の第2実施形態に係るメッセージ生成装置を備えるメッセージ提示装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、
図8のメッセージ提示装置における発信者装置を構成する情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図10B】
図10Bは、
図8のメッセージ提示装置における受け手装置を構成する情報処理装置における処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、この発明の第3実施形態に係るメッセージ生成装置を備えるメッセージ提示装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態に係るメッセージ生成装置を備えるメッセージ提示装置の構成の別の例における受け手装置の構成を示すブロック図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態に係るメッセージ生成装置におけるメッセージデータベースが保持する情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、この発明に係わる実施形態を説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1Aは、この発明の第1実施形態に係るメッセージ生成装置を備えるメッセージ提示装置の構成の一例を示すブロック図である。メッセージ生成装置は、行動データベース10、発信者情報取得部20、受け手情報取得部30、及びメッセージ生成部40を備える。メッセージ提示装置は、メッセージ生成装置とメッセージ提示部50とを備える。なお、
図1Aでは、「行動データベース」を「行動DB」と記載している。
【0013】
ここで、行動データベース10は、発信者の感情に対応する、発信者がやりたい行動を示す行動メッセージを保持する。
【0014】
発信者情報取得部20は、発信者の感情を推定するための発信者情報を取得する。発信者は、例えば、犬、猫、鳥などの感情に応じて様々な鳴き声や呻き声を発するペットを含む。また、発信者は、未だ言語を操れず感情を鳴き声や呻き声で表す人間の乳幼児を含み得る。発信者情報は、少なくとも、発信者が発した音声に関する音声情報を含む。発信者情報は、それ以外にも、発信者の外見を撮像した画像情報、発信者の体温や心拍数等の生体の状態を示す生体情報、等の、発信者の感情を推定するのに利用可能な様々な情報を含むことができる。
【0015】
受け手情報取得部30は、発信者からのメッセージを受け取る受け手の感情を推定するための受け手情報を取得する。受け手は、例えば、ペットの飼い主や人間の乳幼児の親等を含む。受け手情報は、例えば、受け手の発言に関する音声情報、受け手の外見を撮像した画像情報、受け手生体情報、等の、受け手の感情を推定するのに利用可能な様々な情報を含み得る。
【0016】
メッセージ生成部40は、発信者情報取得部20で取得した発信者情報に基づいて推定される発信者の感情に対応する行動を表すメッセージを生成する。メッセージ生成部40は、行動を表すメッセージとして、発信者情報取得部20で取得した発信者情報に基づいて推定される発信者の感情と、受け手情報取得部30で取得した受け手情報に基づいて推定される受け手の感情とが、近いときには、行動を具体化したメッセージを生成する。また、メッセージ生成部40は、それら推定した発信者の感情と受け手の感情とが遠いときには、行動を概念化したメッセージを生成する。
【0017】
このメッセージ生成部40は、より詳細には、行動取得部41、抽象度算出部42、及び生成部43を含む。
【0018】
行動取得部41は、発信者情報取得部20で取得した発信者情報に基づいて発信者の感情を推定し、推定した発信者の感情に対応する行動の行動メッセージを行動データベース10から取得する。
【0019】
抽象度算出部42は、受け手情報取得部30で取得した受け手情報に基づいて受け手の感情を推定し、推定した受け手の感情と行動取得部41で推定した発信者の感情との近さに応じて、生成するメッセージの抽象度を算出する。
【0020】
生成部43は、抽象度算出部42が生成した抽象度に基づいてメッセージを生成する。
【0021】
また、メッセージ提示部50は、メッセージ生成部40によって生成されたメッセージを受け手に提示する。
【0022】
図1Bは、
図1Aのメッセージ提示装置を構成する情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。情報処理装置は、専用の筐体を備えるコミュニケーション装置として提供されても良いし、スマートフォンやパーソナルコンピュータなどの汎用のコンピュータによって実現されても良い。
【0023】
情報処理装置は、
図1Bに示すように、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサ101を有する。そして、情報処理装置では、このプロセッサ101に対し、プログラムメモリ102と、データメモリ103と、通信インタフェース104と、入出力インタフェース105とが、バス106を介して接続される。なお、
図1Bでは、「入出力インタフェース」を「入出力IF」と略記している。
【0024】
ここで、プログラムメモリ102は、非一時的な有形のコンピュータ可読記憶媒体として、例えば、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の随時書込み及び読出しが可能な不揮発性メモリと、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリとが組合せて使用されたものである。このプログラムメモリ102には、プロセッサ101が第1実施形態に係る各種制御処理を実行するために必要なプログラムが格納されている。すなわち、上記の発信者情報取得部20、受け手情報取得部30、メッセージ生成部40、及びメッセージ提示部50の各部における処理機能部は、何れも、プログラムメモリ102に格納されたプログラムを上記プロセッサ101により読み出させて実行させることにより実現され得る。なお、これらの処理機能部の一部又は全部は、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)などの集積回路を含む、他の多様な形式によって実現されても良い。
【0025】
また、データメモリ103は、有形のコンピュータ可読記憶媒体として、例えば、上記の不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリとが組合せて使用されたものである。このデータメモリ103は、各種処理が行われる過程で取得及び作成された各種データが記憶されるために用いられる。すなわち、データメモリ103には、各種処理が行われる過程で、適宜、各種データを記憶するための領域が確保される。そのような領域として、データメモリ103には、例えば、行動データベース記憶部1031、一時記憶部1032、及び提示情報記憶部1033を設けることができる。なお、
図1Bでは、「行動データベース記憶部」を「行動DB記憶部」と記載している。
【0026】
行動データベース記憶部1031は、発信者の感情に対応する、発信者がやりたい行動を示す行動メッセージを記憶する。すなわち、上記行動データベース10が、この行動データベース記憶部1031に構成されることができる。
【0027】
一時記憶部1032は、プロセッサ101が、上記発信者情報取得部20、受け手情報取得部30、及びメッセージ生成部40としての動作を実施した際に取得又は生成する、発信者情報、受け手情報、やりたい行動の行動メッセージ、感情、等のデータを記憶する。
【0028】
提示情報記憶部1033は、プロセッサ101が上記メッセージ生成部40としての動作を実施した際に生成され、メッセージ提示部50としての動作を実施した際に受け手に提示されるメッセージを記憶する。
【0029】
通信インタフェース104は、一つ以上の有線又は無線の通信モジュールを含むことができる。
【0030】
例えば、通信インタフェース104は、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線技術を利用した無線通信モジュールを含む。この無線通信モジュールは、プロセッサ101の制御の下、ワイヤレスマイクロフォン200からの音声信号、センサ群300のセンサからのセンサ信号、等を受信する。なお、
図1Bでは、「ワイヤレスマイクロフォン」を「MIC」と記している。そして、無線通信モジュールは、それら受信した信号をプロセッサ101が処理可能な情報に変換して、データメモリ103の一時記憶部1032に記憶することができる。例えば、ワイヤレスマイクロフォン200を発信者に装着する又は発信者の近傍に配置することで、情報処理装置は、発信者の音声情報を取得することができる。また、センサ群300のセンサ、例えばカメラ等のイメージセンサを発信者を撮影するように設置したり、体温センサや心拍センサ等の生体センサを発信者に装着したりすることで、情報処理装置は、発信者の画像情報や生体情報を取得することができる。すなわち、プロセッサ101及び通信インタフェース104は、発信者情報取得部20として機能することができる。また、センサ群300のセンサ、例えば体温センサや心拍センサ等の生体センサを受け手に装着することで、情報処理装置は、受け手の生体情報を取得することができる。すなわち、プロセッサ101及び通信インタフェース104は、受け手情報取得部30としても機能することができる。
【0031】
更に、通信インタフェース104は、例えば、Wi-Fiアクセスポイントや携帯電話基地局と無線接続する無線通信モジュールを含んでも良い。この無線通信モジュールは、プロセッサ101の制御の下、Wi-Fiアクセスポイントや携帯電話基地局を介してネットワーク400上の他の情報処理装置やサーバ装置との間で通信を行い、各種情報を送受信することができる。なお、
図1Bでは、「ネットワーク」を「NW」と記載している。ネットワーク400は、インターネットを含むIP網と、このIP網にアクセスするためのアクセス網とから構成される。アクセス網としては、例えば公衆有線網や携帯電話網、有線LAN(Local Area Network)、無線LAN、CATV(Cable Television)等が用いられる。
【0032】
また、入出力インタフェース105には、キー入力部107、スピーカ108、表示部109、マイクロフォン110、及びカメラ111が接続されている。なお、
図1Bでは、「マイクロフォン」を「マイク」と記載している。
【0033】
キー入力部107は、情報処理装置のユーザである受け手がプロセッサ101に動作指示を与えるための操作キーやボタンを含む。入出力インタフェース105は、キー入力部107の操作に応じて、その操作信号をプロセッサ101に入力する。
【0034】
スピーカ108は、入出力インタフェース105から入力された信号に応じた音を発生する。例えば、プロセッサ101により、提示情報記憶部1033に記憶されたメッセージを音声情報に変換し、該音声情報を入出力インタフェース105により音声信号としてスピーカ108に入力することで、メッセージを音声として受け手に提示することができる。すなわち、プロセッサ101、入出力インタフェース105、及びスピーカ108は、メッセージ提示部50として機能することができる。
【0035】
表示部109は、例えば液晶、有機EL(Electro Luminescence)、等を使用した表示デバイスであり、入出力インタフェース105から入力された信号に応じた画像を表示する。例えば、プロセッサ101により、提示情報記憶部1033に記憶されたメッセージを画像情報に変換し、該画像情報を入出力インタフェース105により画像信号として表示部109に入力することで、メッセージを画像として受け手に提示することができる。すなわち、プロセッサ101、入出力インタフェース105、及び表示部109は、メッセージ提示部50として機能することができる。なお、キー入力部107及び表示部109は、一体的なデバイスとして構成されても良い。すなわち、表示デバイスの表示画面上に、静電方式又は圧力方式を採用した入力検知シートを配置した、いわゆるタブレット型の入力・表示デバイスとしても良い。
【0036】
マイクロフォン110は、近傍の音を集音して音声信号として入出力インタフェース105に入力する。入出力インタフェース105は、プロセッサ101の制御の下、入力された音声信号を音声情報に変換し、それを一時記憶部1032に記憶する。情報処理装置が、例えばスマートフォン等の受け手近傍に存在するものである場合、マイクロフォン110は、受け手の発した音声を集音する。よって、プロセッサ101及び入出力インタフェース105は、受け手情報取得部30として機能することができる。また、受け手と発信者との距離が近く、マイクロフォン110が受け手と発信者との両者の音声を集音できるのであれば、プロセッサ101及び入出力インタフェース105は、発信者情報取得部20として機能することができる。プロセッサ101は、例えば、音声情報の周波数等の特徴量によって、或いは、音声情報を文章として或る程度意味が通じるよう音声認識できるか、等の条件により、音声情報が受け手情報と発信者情報との何れであるのかを判定することが可能である。
【0037】
カメラ111は、視野内を撮像して撮像信号を入出力インタフェース105に入力する。入出力インタフェース105は、プロセッサ101の制御の下、入力された撮像信号を画像情報に変換し、それを一時記憶部1032に記憶する。カメラ111の視野に受け手が入っていれば、プロセッサ101及び入出力インタフェース105は、受け手の画像情報を取得する受け手情報取得部30として機能することができる。また、カメラ111の視野に発信者が入っていれば、プロセッサ101及び入出力インタフェース105は、発信者の画像情報を取得する発信者情報取得部20として機能することができる。プロセッサ101は、例えば、画像情報の特徴量によって、画像情報が受け手情報と発信者情報との何れであるのかを判定することが可能である。
【0038】
なお、入出力インタフェース105は、フラッシュメモリなどの半導体メモリといった記録媒体のリード/ライト機能を有しても良いし、或いは、そのような記録媒体のリード/ライト機能を持ったリーダライタとの接続機能を有しても良い。これにより、情報処理装置に対して着脱自在な記録媒体を、やりたい行動の行動メッセージを記憶する行動データベース記憶部とすることができる。入出力インタフェース105は、更に、他の機器との接続機能を有して良い。
【0039】
図2は、行動データベース記憶部1031に構成された行動データベース10が保持する情報の一例を示す図である。この例は、発信者を犬、受け手を人間とした場合の例である。
図2に示すように、行動データベース10は、発信者である犬の感情である「たのしい」、「かなしい」、「要求」、…のそれぞれついて、その感情に対応する犬のやりたい行動を示す行動メッセージを記憶している。例えば、行動データベース10は、「たのしい」という感情に対し「あそぶの?じゅんびOK!」、「かなしい」という感情に対し「もっとかまってほしいのになぁ」、…等の感情と行動メッセージを対応付けて記憶している。
【0040】
次に、メッセージ生成装置を備えるメッセージ提示装置の動作を説明する。ここでは、発信者を犬、受け手を人間とした場合を例に説明する。
【0041】
図3は、メッセージ提示装置における処理動作の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、メッセージ提示装置の、発信者情報取得部20、受け手情報取得部30、メッセージ生成部40、及びメッセージ提示部50として機能する情報処理装置のプロセッサ101における処理動作を示している。例えば、ワイヤレスマイクロフォン200を発信者である犬に装着する又は犬の近傍に配置した後、入出力インタフェース105を介してキー入力部107からメッセージ提示の開始が指示されると、プロセッサ101は、このフローチャートに示す動作を開始する。なお、ワイヤレスマイクロフォン200だけでなく、更に、イメージセンサや生体センサ等のセンサ群300を利用しても良いが、ここでは、発信者情報としての犬の鳴き声のみから、犬の感情を推測するものとする。
【0042】
先ず、プロセッサ101は、発信者情報取得部20として機能して、通信インタフェース104により、ワイヤレスマイクロフォン200が集音した発信者音声、つまり犬の鳴き声を取得したか否か判断する(ステップS1)。ここで、発信者音声を取得していないと判断した場合(ステップS1のNO)には、プロセッサ101は、このステップS1の処理を繰り返す。
【0043】
これに対して、発信者音声を取得したと判断した場合(ステップS1のYES)には、プロセッサ101は、取得した発信者音声を一時記憶部1032に記憶して、メッセージ生成部40の行動取得部41としての動作を実施する。
【0044】
すなわち、先ず、プロセッサ101は、一時記憶部1032に記憶した発信者音声に基づいて、発信者感情つまり犬の感情を取得する(ステップS2)。発信者感情の取得手法は、本実施形態では特に限定しない。例えば、犬の感情は、特許文献1に開示されているような手法によって取得することができる。
【0045】
そして、プロセッサ101は、行動データベース記憶部1031に記憶した行動データベース10より、取得した発信者感情に対応する犬のやりたい行動を示す行動メッセージを取得して、一時記憶部1032に記憶する(ステップS3)。
【0046】
その後、プロセッサ101は、抽象度算出部42としての動作を実施する。
【0047】
すなわち、先ず、プロセッサ101は、一時記憶部1032に記憶した行動メッセージに基づいて、発信者感情の感情ベクトルを算出する(ステップS4)。感情ベクトルとは、ラッセルの感情円環モデル上におけるベクトルのことを言う。ラッセルの感情円環モデルとは、感情価と覚醒価を軸とした2次元空間にて感情をマッピングしたモデルのことである。ラッセルの感情円環モデルは、例えば、「J. A. Russell, "A circumplex model of affect." Journal of personality and social psychology, vol.39, no.6, p.1161, 1980.」に開示されている。
【0048】
この感情ベクトルの算出処理においては、プロセッサ101は、先ず、やりたい行動の行動メッセージが示す発信者感情の感情成分の割合を算出する。感情成分の割合の算出手法は、本実施形態では特に限定しない。例えば、プログラムメモリ102又はデータメモリ103に記憶した感情成分の割合の算出アルゴリズムにより感情成分の割合を算出することができる。また、インターネットには、既存技術として、テキスト感情認識AI(例えば、https://emotion-ai.userlocal.jp/)も提供されている。インターネット上の何れかのサイトに提供されているテキストから感情成分の割合を算出する感情認識リソースを利用する場合には、プロセッサ101は、そのリソースを提供するネットワーク400上の特定サイトに、通信インタフェース104を介して、メッセージのテキストを送信する。これにより、プロセッサ101は、当該特定サイトから、送信したテキストに対応する感情成分の割合データを受信することができる。
【0049】
例えば、プロセッサ101は、
図2に示す「たのしい」という感情に対応する行動メッセージ「あそぶの?じゅんびOK!」の感情成分の割合として、喜び=0.68、好意=0.72、恐れ=0.10、悲しみ=0.17、怒り=0.58を算出する。
【0050】
次に、プロセッサ101は、各メッセージについて、算出した各感情成分を感情ベクトル化する。
図4は、行動メッセージ「あそぶの?じゅんびOK!」が示す各感情成分をラッセルの感情円環モデル上にモデル化した図である。ラッセルの感情円環モデルにおいて、感情価軸は、右へ行くに従って「快」の度合いが高まり、左へ行くに従って「不快」の度合いが高まる。覚醒価軸は、上へ行くに従って「覚醒」の度合いが高まり、下へ行くに従って「沈静」の度合いが高まる。感情の各成分は、このラッセルの感情円環モデル上に、原点からの向きとして表される。プロセッサ101は、算出した感情の割合を、ベクトルの大きさ(min0~MAX1)、感情がマッピングされている原点からの方向をベクトルの向き、として、ラッセルの感情円環モデル上においてベクトル化する。
【0051】
そして、プロセッサ101は、感情成分の感情ベクトルを足し合わせすることで、発信者感情の感情ベクトルを取得する。ラッセルの感情円環モデル上での感情ベクトル及び合力の考え方については、例えば、「有賀玲子,渡邊淳司,布引純史,「図形の伸縮によるエージェントの感情表現に関する印象評価」,ヒューマンインタフェースシンポジウム 2017 論文集 (2017).」に開示されている。
図5は、
図4の各感情ベクトルに基づいて取得される、発信者である犬の感情に対応するやりたい行動の行動メッセージ「あそぶの?じゅんびOK!」の感情ベクトルTVを示す図である。
【0052】
こうして、発信者感情の感情ベクトルが算出されたならば、次に、プロセッサ101は、受け手である人間の感情についても、感情ベクトルを算出する。
【0053】
そのために、プロセッサ101は、受け手情報取得部30として、受け手情報を取得する(ステップS5)。例えば、プロセッサ101は、入出力インタフェース105を介して、マイクロフォン110により集音された受け手の音声及び/又はカメラ111により撮像された受け手の人間の顔画像を、受け手情報として一時記憶部1032に記憶する。
【0054】
そして、プロセッサ101は、再び抽象度算出部42としての動作に戻り、受け手の感情の感情ベクトルを算出する(ステップS6)。以下、受け手である人間の感情を受け手感情と記載する。
【0055】
すなわち、先ず、プロセッサ101は、一時記憶部1032に記憶した音声及び/又は顔画像から、受け手である人間の感情成分の割合を算出する。受け手の感情成分の割合の算出手法についても、本実施形態では特に限定しない。例えば、音声と顔画像に基づく感情成分の割合の算出手法については、「Panagiotis Tzirakis, George Trigeorgis, Mihalis A. Nicolaou, Bjorn W. Schuller, Stefanos Zafeiriou, "End-to-End Multimodal Emotion Recognition Using Deep Neural Networks," IEEE Journal of Selected Topics in Signal Processing, vol.11, No.8, pp.1301-1309, 2017.」に開示されている。プロセッサ101は、プログラムメモリ102又はデータメモリ103に記憶した感情成分の割合の算出アルゴリズムにより感情成分の割合を算出することができる。また、インターネットには、既存技術として、表情感情認識AI(例えば、https://emotion-ai.userlocal.jp/face)も提供されている。インターネット上の何れかのサイトに提供されている表情から感情成分の割合を算出する感情認識リソースを利用する場合には、プロセッサ101は、そのリソースを提供するネットワーク400上の特定サイトに、通信インタフェース104を介して、顔画像を送信する。これにより、プロセッサ101は、当該特定サイトから、送信した顔画像に対応する感情成分の割合データを受信することができる。
【0056】
次に、プロセッサ101は、算出した受け手の各感情成分を感情ベクトル化する。そして、プロセッサ101は、感情成分の感情ベクトルを足し合わせすることで、受け手感情の感情ベクトルを取得する。
図6は、この受け手感情の感情ベクトルRVの一例を示す図である。
【0057】
こうして、発信者感情の感情ベクトルTVと受け手感情の感情ベクトルRVとを算出したならば、プロセッサ101は、発信者感情の感情ベクトルTVと受け手感情の感情ベクトルRVの距離を算出する(ステップS7)。例えば、プロセッサ101は、発信者感情ベクトルTVと受け手感情ベクトルRVとの内積を算出することで、この距離を求めることができる。
【0058】
そして、プロセッサ101は、この算出した距離に基づいて、発信者である犬のやりたい行動の抽象度を算出する(ステップS8)。例えば、距離を内積により求めた場合、プロセッサ101は、内積が「-1」以上「0」未満であれば、発信者感情と受け手感情とが遠いと判定して、抽象度を1段階上げる。また、内積が「0」以上「1」以下であれば、プロセッサ101は、発信者感情と受け手感情とが近いと判定して、抽象度を1段階下げる。
図7は、
図5の発信者感情の感情ベクトルTVと
図6の受け手感情の感情ベクトルRVとの関係を示す図である。この例では、両ベクトルのなす角度が90度以上あり、内積は「-1」以上「0」未満となるので、プロセッサ101は、発信者感情と受け手感情とが遠いと判定して、抽象度を1段階上げることとなる。プロセッサ101は、この算出した抽象度を一時記憶部1032に記憶する。
【0059】
次に、プロセッサ101は、生成部43として機能して、算出した抽象度に基づいて、やりたい行動を示すメッセージを生成する(ステップS9)。メッセージの生成手法は、本実施形態では特に限定しない。また、インターネットには、既存技術として、WordNet(https://wordnet.princeton.edu/)という概念辞書(辞書+シソーラス)において、入力単語のhypo/hypernymを選択することで下位/上位概念を検索できる技術も提供されている。インターネット上の何れかのサイトに提供されている入力文を抽象度に応じて変換する概念辞書リソースを利用する場合には、プロセッサ101は、そのリソースを提供するネットワーク400上の特定サイトに、通信インタフェース104を介して、一時記憶部1032に記憶してある発信者である犬のやりたい行動を示す行動メッセージと、発信者感情と受け手感情の近さに応じた抽象度とを送信する。これにより、プロセッサ101は、当該特定サイトから、それら送信した情報に対応するメッセージを受信することができる。例えば、やりたい行動の行動メッセージ「あそぶの?じゅんびOK!」と、抽象度1段階上げを示す抽象度「+1」とを送信すると、「あそぶの?じゅんびOK!」を上位概念化した「動きたいな」というメッセージを受信することができる。プロセッサ101は、この受信したメッセージを、生成メッセージとして提示情報記憶部1033に記憶する。
【0060】
こうして、メッセージが生成できたならば、プロセッサ101は、メッセージ提示部50として機能して、生成されたメッセージを提示する(ステップS10)。すなわち、プロセッサ101は、提示情報記憶部1033に記憶したメッセージを、入出力インタフェース105を介してスピーカ108により音声として、或いは、表示部109に画像として、出力することで、メッセージを提示する。
【0061】
その後は、プロセッサ101は、上記ステップS1から処理を繰り返す。
【0062】
以上に説明した第1実施形態に係るメッセージ生成装置は、発信者の感情を推定するための発信者情報を取得する発信者情報取得部20と、発信者からのメッセージを受け取る受け手の感情を推定するための受け手情報を取得する受け手情報取得部30と、発信者情報取得部20で取得した発信者情報に基づいて推定される発信者の感情に対応する行動を表すメッセージを生成するメッセージ生成部40と、を備え、メッセージ生成部40は、行動を表すメッセージとして、発信者情報取得部20で取得した発信者情報に基づいて推定される発信者の感情と、受け手情報取得部30で取得した受け手情報に基づいて推定される受け手の感情とが、近いときには、行動を具体化したメッセージを生成し、推定した発信者の感情と受け手の感情とが遠いときには、行動を概念化したメッセージを生成する。よって、発信者とコミュニケーション相手である受け手との感情の近さに応じたメッセージを生成するので、発信者の感情に加えて受け手の感情も考慮して、提示するメッセージを生成することが可能となる。
【0063】
また、第1実施形態に係るメッセージ生成装置は、発信者の感情に対応する、発信者がやりたい行動を示す行動メッセージを保持する行動データベース10を更に備え、メッセージ生成部40は、発信者情報取得部20で取得した発信者情報に基づいて発信者の感情を推定し、推定した発信者の感情に対応する行動の行動メッセージを行動データベース10から取得する行動取得部41と、受け手情報取得部30で取得した受け手情報に基づいて受け手の感情を推定し、推定した受け手の感情と行動取得部41で推定した発信者の感情との近さに応じて、生成するメッセージの抽象度を算出する抽象度算出部42と、抽象度算出部42が生成した抽象度に基づいて、行動取得部41で取得した行動メッセージに対応するメッセージを生成する生成部43と、を備えるようにしている。このように、第1実施形態に係るメッセージ生成装置は、発信者の感情と受け手の感情を推定し、感情の近さ/遠さに応じて発信者のやりたい行動の抽象度を調整した上で、提示するメッセージを生成する。例えば、互いの感情が近い場合には、やりたい行動の抽象度を下げてメッセージを生成し、感情が遠い場合には、やりたい行動の抽象度を上げたメッセージを生成する。これにより、受け手の感情が発信者の感情に遠い場合でも、やりたい行動の抽象度を上げて行動の選択肢の幅を広げることで、受け手に行動を実行してもらえる可能性を高めることができる。例えば、発信者が、楽しくて「遊びたい」と思った時に、「あそぶの?じゅんびOK!」という行動メッセージではなくて、遊びの上位概念である「動きたい」を提示することが可能となり、受け手は、今の気分に合わせた動き、例えば、一緒に遊ぶまでいかなくとも、おもちゃを投げて運動をさせる等、を選択することができる。そうすることで、お互いにウィンウィンなコミュニケーションが実現でき、コミュニケーションの促進が見込まれる。
【0064】
また、第1実施形態に係るメッセージ生成装置では、抽象度算出部42は、行動取得部41で推定した発信者の感情を発信者感情ベクトルに変換すると共に、受け手情報に基づいて推定した受け手の感情を受け手感情ベクトルに変換し、発信者感情ベクトルと受け手感情ベクトルとの近さを、発信者の感情と受け手の感情との近さとする。このように、発信者と受け手の感情を共に感情ベクトル化することで、両者の感情の比較が可能となり、メッセージの選択を容易化することができる。
【0065】
また、第1実施形態に係るメッセージ生成装置では、抽象度算出部42は、発信者感情ベクトルと受け手感情ベクトルとの内積を算出し、内積が-1以上0未満であれば、発信者の感情と受け手の感情が遠いと判定して、抽象度を1段階上げ、内積が0以上1以下であれば、発信者の感情と受け手の感情が近いと判定して、抽象度を1段階下げる。よって、発信者と受け手両者の感情の近さに応じて容易に抽象度を求めることができる。
【0066】
また、第1実施形態に係るメッセージ生成装置では、生成部43は、行動取得部41で取得した行動メッセージと、抽象度算出部42が算出した抽象度とに基づいて、具体化したメッセージとしての、行動メッセージを下位概念化したメッセージ、又は、行動を概念化したメッセージとしての、行動メッセージを上位概念化したメッセージを生成する。よって、発信者がやりたい行動と抽象度に応じたメッセージを生成することができる。
【0067】
なお、第1実施形態に係るメッセージ生成装置において、感情ベクトルは、感情価と覚醒価を軸とした2次元空間にて感情をマッピングしたラッセルの感情円環モデル上におけるベクトルとすることができる。
【0068】
また、第1実施形態に係るメッセージ提示装置は、第1実施形態に係るメッセージ生成装置と、メッセージ生成装置のメッセージ生成部40によって選択されたメッセージを受け手に提示するメッセージ提示部50と、を備える。よって、発信者の感情に加えて受け手の感情も考慮したメッセージを提示することが可能となり、受け手の感情が発信者の感情と遠い場合でも、発信者のやりたい行動に近い行動を受け手に実行してもらえる可能性を高めることができる。
【0069】
[第2実施形態]
前記第1実施形態では、メッセージ生成装置を備えるメッセージ提示装置を、受け手が操作する一つの装置として構成している。しかしながら、メッセージ生成装置又はメッセージ提示装置は、複数の装置に分割されたシステムとして提供されても良い。
【0070】
図8は、この発明の第2実施形態に係るメッセージ生成装置を備えるメッセージ提示装置の構成の一例を示すブロック図である。
図8に示すように、メッセージ提示装置は、発信者が有する発信者装置60と、受け手が有する受け手装置70と、の二つの装置から構成される。
【0071】
発信者装置60は、第1実施形態で説明したような、行動データベース10と、発信者情報取得部20と、受け手情報取得部30と、メッセージ生成部40の行動取得部41と、メッセージ提示部50と、を備える。更に、発信者装置60は、受け手装置70との間でデータの送受信を行う発信者通信部61を備える。本第2実施形態では、発信者装置60は、犬等のペットの首輪に装着されるコミュニケーション装置を想定する。
【0072】
受け手装置70は、第1実施形態で説明したような、メッセージ生成部40の抽象度算出部42及び生成部43を含む。更に、受け手装置70は、発信者装置60との間でデータの送受信を行う受け手通信部71を備える。本第2実施形態では、受け手装置70は、犬等のペットの飼い主である人間が有するスマートフォンやパーソナルコンピュータを想定する。
【0073】
図9は、
図8のメッセージ提示装置における発信者装置60を構成する情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。情報処理装置は、
図9に示すように、ハードウェアプロセッサ601を有し、このプロセッサ601に対し、プログラムメモリ602と、データメモリ603と、通信インタフェース604と、入出力インタフェース605とが、バス606を介して接続される。なお、
図9では、「入出力インタフェース」を「入出力IF」と略記している。
【0074】
ここで、プログラムメモリ602は、非一時的な有形のコンピュータ可読記憶媒体として、例えば、HDD又はSSD等の随時書込み及び読出しが可能な不揮発性メモリと、ROM等の不揮発性メモリとが組合せて使用されたものである。このプログラムメモリ602には、プロセッサ601が第2実施形態に係る各種制御処理を実行するために必要なプログラムが格納されている。すなわち、上記の発信者情報取得部20、受け手情報取得部30、行動取得部41、メッセージ提示部50、及び発信者通信部61の各部における処理機能部は、何れも、プログラムメモリ602に格納されたプログラムを上記プロセッサ601により読み出させて実行させることにより実現され得る。なお、これらの処理機能部の一部又は全部は、ASIC、DSP、又はFPGAなどの集積回路を含む、他の多様な形式によって実現されても良い。
【0075】
また、データメモリ603は、有形のコンピュータ可読記憶媒体として、例えば、上記の不揮発性メモリと、RAM等の揮発性メモリとが組合せて使用されたものである。このデータメモリ603は、各種処理が行われる過程で取得及び作成された各種データが記憶されるために用いられる。すなわち、データメモリ603には、各種処理が行われる過程で、適宜、各種データを記憶するための領域が確保される。そのような領域として、データメモリ603には、例えば、行動データベース記憶部6031、一時記憶部6032、及び提示情報記憶部6033を設けることができる。なお、
図9では、「行動データベース記憶部」を「行動DB記憶部」と記載している。
【0076】
行動データベース記憶部6031は、発信者の感情に対応する、発信者がやりたい行動を示す行動メッセージを記憶する。すなわち、上記行動データベース10が、この行動データベース記憶部6031に構成されることができる。
【0077】
一時記憶部6032は、プロセッサ601が、上記発信者情報取得部20、受け手情報取得部30、及び行動取得部41としての動作を実施した際に取得又は生成する、発信者情報、受け手情報、やりたい行動の行動メッセージ、等のデータを記憶する。
【0078】
提示情報記憶部6033は、プロセッサ601が、上記メッセージ提示部50としての動作を実施した際に受け手に提示されるメッセージを記憶する。
【0079】
通信インタフェース604は、例えば、Bluetooth等の近距離無線技術を利用した無線通信モジュールを含む。この無線通信モジュールは、プロセッサ601の制御の下、受け手装置70との間で、無線によりデータ通信を行う。すなわち、プロセッサ601及び通信インタフェース604は、発信者通信部61として機能することができる。
【0080】
入出力インタフェース605には、キー入力部607、スピーカ608、表示部609、マイクロフォン610、及びカメラ611が接続されている。なお、
図9では、「マイクロフォン」を「マイク」と記載している。
【0081】
キー入力部607は、発信者装置60の動作を開始させるための電源キー等の操作キーやボタンを含む。入出力インタフェース605は、キー入力部607の操作に応じて、その操作信号をプロセッサ601に入力する。
【0082】
スピーカ608は、入出力インタフェース605から入力された信号に応じた音を発生する。例えば、プロセッサ601により、提示情報記憶部6033に記憶されたメッセージを音声情報に変換し、該音声情報を入出力インタフェース605により音声信号としてスピーカ608に入力することで、メッセージを音声として受け手に提示することができる。すなわち、プロセッサ601、入出力インタフェース605、及びスピーカ608は、メッセージ提示部50として機能することができる。
【0083】
表示部609は、例えば液晶、有機EL、等を使用した表示デバイスであり、入出力インタフェース605から入力された信号に応じた画像を表示する。例えば、プロセッサ601により、提示情報記憶部6033に記憶されたメッセージを画像情報に変換し、該画像情報を入出力インタフェース605により画像信号として表示部609に入力することで、メッセージを画像として受け手に提示することができる。すなわち、プロセッサ601、入出力インタフェース605、及び表示部609は、メッセージ提示部50として機能することができる。
【0084】
マイクロフォン610は、近傍の音を集音して音声信号として入出力インタフェース605に入力する。入出力インタフェース605は、プロセッサ601の制御の下、入力された音声信号を音声情報に変換し、それを一時記憶部6032に記憶する。マイクロフォン610は、発信者及び受け手の発した音声を集音する。よって、プロセッサ601及び入出力インタフェース605は、発信者情報取得部20及び受け手情報取得部30として機能することができる。
【0085】
カメラ611は、視野内を撮像して撮像信号を入出力インタフェース605に入力する。入出力インタフェース605は、プロセッサ601の制御の下、入力された撮像信号を画像情報に変換し、それを一時記憶部6032に記憶する。発信者装置60を発信者に装着した際に、カメラ611が発信者の前方を撮像するように取り付けられることで、カメラ611は、受け手を撮像することができる。よって、プロセッサ601及び入出力インタフェース605は、受け手の画像情報を取得する受け手情報取得部30として機能することができる。
【0086】
なお、入出力インタフェース605は、フラッシュメモリなどの半導体メモリといった記録媒体のリード/ライト機能を有しても良いし、或いは、そのような記録媒体のリード/ライト機能を持ったリーダライタとの接続機能を有しても良い。これにより、情報処理装置に対して着脱自在な記録媒体を、発信者の感情に対応する、発信者がやりたい行動を示す行動メッセージを記憶する行動データベース記憶部とすることができる。入出力インタフェース605は、更に、発信者の生体情報を検出する生体センサ等、他の機器との接続機能を有して良い。
【0087】
また、受け手装置70を構成する情報処理装置は、第1実施形態で説明した
図1Bに示すようなハードウェア構成であって良い。但し、データメモリ103に行動データベース記憶部1031は不要である。プログラムメモリ102には、プロセッサ101が第2実施形態に係る各種制御処理を実行するために必要なプログラムが格納されている。すなわち、上記の抽象度算出部42、生成部43、及び受け手通信部71の各部における処理機能部は、何れも、プログラムメモリ102に格納されたプログラムを上記プロセッサ101により読み出させて実行させることにより実現され得る。
【0088】
次に、本実施形態に係るメッセージ生成装置を備えるメッセージ提示装置の動作を説明する。
【0089】
図10Aは、メッセージ提示装置における発信者装置60を構成する情報処理装置における処理動作の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、発信者装置60の、発信者情報取得部20、受け手情報取得部30、行動取得部41、メッセージ提示部50、及び発信者通信部61として機能する情報処理装置のプロセッサ601における処理動作を示している。例えば、発信者装置60を発信者に装着、例えば犬の首輪等に装着した後、キー入力部607の電源キーのオン操作により入出力インタフェース605を介してメッセージ提示の開始が指示されると、プロセッサ601は、このフローチャートに示す動作を開始する。
【0090】
先ず、プロセッサ601は、発信者情報取得部20として機能して、入出力インタフェース605により、マイクロフォン610が集音した発信者音声、例えば犬の鳴き声を取得したか否か判断する(ステップS61)。ここで、発信者音声を取得していないと判断した場合(ステップS61のNO)には、プロセッサ601は、このステップS61の処理を繰り返す。
【0091】
これに対して、発信者音声を取得したと判断した場合(ステップS61のYES)には、プロセッサ601は、取得した発信者音声を一時記憶部6032に記憶して、行動取得部41としての動作を実施する。
【0092】
すなわち、先ず、プロセッサ601は、一時記憶部6032に記憶した発信者音声に基づいて、発信者感情、例えば犬の感情を取得する(ステップS62)。発信者感情の取得手法は、本実施形態では特に限定しない。
【0093】
そして、プロセッサ601は、行動データベース記憶部6031に記憶した行動データベース10より、取得した発信者感情に対応する犬のやりたい行動を示す行動メッセージを取得して、一時記憶部6032に記憶する(ステップS63)。
【0094】
次に、プロセッサ601は、受け手情報取得部30として機能して、受け手情報を取得する(ステップS64)。例えば、プロセッサ601は、入出力インタフェース605を介して、マイクロフォン610により集音された受け手の音声及び/又はカメラ611により撮像された受け手の人間の顔画像を、受け手情報として一時記憶部6032に記憶する。
【0095】
その後、プロセッサ601は、発信者通信部61としての動作を実施する。
【0096】
すなわち、先ず、プロセッサ601は、一時記憶部6032に記憶した行動メッセージと受け手情報とを、通信インタフェース604により受け手装置70へ送信する(ステップS65)。
【0097】
そして、プロセッサ601は、通信インタフェース604により受け手装置70から生成メッセージを受信したか否か判断する(ステップS66)。ここで、生成メッセージを受信していないと判断した場合(ステップS66のNO)には、プロセッサ601は、タイムアウトとなったか否か、つまり予め設定された時間が経過したか否か判断する(ステップS67)。未だタイムアウトとなっていない場合(ステップS67のNO)には、プロセッサ601は、上記ステップS66から処理を繰り返す。なお、上記の予め設定された時間は、受け手装置70においてメッセージを生成する処理に要する時間に基づいて決定されている。
【0098】
図10Bは、メッセージ提示装置における受け手装置70を構成する情報処理装置における処理動作の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、受け手装置70の、抽象度算出部42、生成部43、及び受け手通信部71として機能する情報処理装置のプロセッサ101における処理動作を示している。例えば、入出力インタフェース105を介してキー入力部107よりメッセージ提示の開始が指示されると、プロセッサ101は、プログラムメモリ602に格納されたプログラムを読み出して、このフローチャートに示す動作を開始する。
【0099】
先ず、プロセッサ101は、受け手通信部71として機能して、通信インタフェース104により、発信者装置60から行動メッセージ及び受け手情報を受信したか否か判断する(ステップS71)。ここで、行動メッセージ及び受け手情報を受信していないと判断した場合(ステップS71のNO)には、プロセッサ101は、このステップS71の処理を繰り返す。
【0100】
これに対して、行動メッセージ及び受け手情報を受信したと判断した場合(ステップS71のYES)には、プロセッサ101は、受信した行動メッセージ及び受け手情報を一時記憶部1032に記憶して、抽象度算出部42としての動作を実施する。
【0101】
すなわち、先ず、プロセッサ101は、一時記憶部1032に記憶した行動メッセージに基づいて、発信者感情の感情ベクトルを算出する(ステップS72)。
【0102】
また、プロセッサ101は、一時記憶部1032に記憶した受け手情報である音声情報及び/又は顔画像から、受け手感情の感情ベクトルを算出する(ステップS73)。
【0103】
こうして、発信者感情の感情ベクトルと受け手感情の感情ベクトルとを算出したならば、プロセッサ101は、生成部43としての動作を実施する。
【0104】
すなわち、先ず、プロセッサ101は、発信者感情の感情ベクトルと受け手感情の感情ベクトルの距離を算出する(ステップS74)。
【0105】
そして、プロセッサ101は、この算出した距離に基づいて、発信者である犬のやりたい行動の抽象度を算出する(ステップS75)。
【0106】
次に、プロセッサ101は、生成部43として機能して、算出した抽象度に基づいて、やりたい行動を示すメッセージを生成する(ステップS76)。メッセージの生成手法は、本実施形態では特に限定しない。プロセッサ101は、生成したメッセージを、提示情報記憶部1033に記憶する。
【0107】
こうして、発信者である犬のやりたい行動を示すメッセージを生成できたならば、プロセッサ101は、再び受け手通信部71として機能して、提示情報記憶部1033に記憶したメッセージを、生成メッセージとして発信者装置60に送信する(ステップS77)。
【0108】
その後は、プロセッサ101は、上記ステップS71から処理を繰り返す。
【0109】
発信者装置60は、通信インタフェース604により、この受け手装置70から送信された生成メッセージを受信し、提示情報記憶部6033に記憶する。これにより、プロセッサ601は、選択メッセージを受信したと判断する(ステップS66のYES)。そして、プロセッサ601は、メッセージ提示部50として機能して、提示情報記憶部6033に記憶した生成メッセージを、入出力インタフェース605を介してスピーカ608により音声として、或いは、表示部609に画像として、出力することで、メッセージを提示する。
【0110】
その後は、プロセッサ601は、上記ステップS61から処理を繰り返す。
【0111】
一方、受け手装置70から生成メッセージを受信することなくタイムアウトとなった場合(ステップS67のYES)には、プロセッサ601は、一時記憶部6032に記憶している行動メッセージを生成メッセージとして、提示情報記憶部6033に記憶する(ステップS69)。その後は、プロセッサ601は、上記ステップS68の処理に進んで、上記行動メッセージである生成メッセージを提示する。
【0112】
以上に説明した第2実施形態に係るメッセージ生成装置は、発信者が有する発信者装置60と、受け手が有する受け手装置70と、を含み、受け手装置70は、少なくとも、メッセージ生成部40の抽象度算出部42及び生成部43を含むものとしている。このように、高性能で高速な処理機能が必要とされる部分を、高機能なプロセッサ101を有するスマートフォンやパーソナルコンピュータに実施させることで、発信者装置60のプロセッサ601としては低機能のものが利用でき、発信者装置60を安価に提供することができる。
【0113】
また、発信者装置60は、受け手装置70から選択メッセージを受信しない場合には、行動取得部41で取得した行動メッセージを生成メッセージとして提示するので、受け手装置70を有しない受け手に対しては、発信者の感情のみに基づく従来と同様のメッセージ提示を行うことができる。
【0114】
[第3実施形態]
前記第1及び第2実施形態では、生成部43において、行動メッセージと抽象度とに基づいて、発信者がやりたい行動の行動メッセージを生成するものとしている。しかしながら、行動データベース10に登録されている各行動メッセージについて抽象度に応じたメッセージを予め用意しておき、その中から発信者がやりたい行動の行動メッセージを選択するようにしても良い。
【0115】
図11は、この発明の第3実施形態に係るメッセージ生成装置を備えるメッセージ提示装置の構成の一例を示すブロック図である。第1実施形態のメッセージ提示装置の構成において、更に、メッセージデータベース80を追加している。また、生成部43は、選択部44を有している。
【0116】
また、
図12は、第3実施形態に係るメッセージ生成装置を備えるメッセージ提示装置の構成の別の例における受け手装置70の構成を示すブロック図である。第2実施形態の受け手装置70の構成において、更に、メッセージデータベース80を追加している。また、生成部43は、選択部44を有している。
【0117】
なお、
図11及び
図12では、「メッセージデータベース」を「メッセージDB」と記載している。
【0118】
図13は、メッセージデータベース80が保持する情報の一例を示す図である。
図13に示すように、メッセージデータベース80は、行動データベース10に登録されている各行動メッセージについて、抽象度毎のメッセージを保持している。
【0119】
生成部43が有する選択部44は、行動取得部41が取得した行動メッセージと、抽象度算出部42が算出した抽象度とにより、メッセージデータベース80からメッセージを選択する。生成部43は、この選択部44が選択したメッセージを、発信者がやりたい行動を示すメッセージとして生成する。
【0120】
以上に説明した第3実施形態に係るメッセージ生成装置は、行動データベース10が保持する行動メッセージそれぞれについて、抽象度算出部42が算出した抽象度に応じた複数段階の抽象度のメッセージを保持するメッセージデータベース80を更に備え、生成部43は、行動取得部41で取得した行動メッセージに対応し且つ抽象度算出部42が算出した抽象度に対応する抽象度のメッセージを、メッセージデータベース80から選択する選択部44を有する。よって、発信者のやりたい行動と、発信者感情と受け手感情との近さに応じた抽象度とに基づいてメッセージを算出する必要がないので、処理の高速化が図れる。
【0121】
[他の実施形態]
上記第1乃至第3実施形態では、受け手である人間の感情を音声情報や顔画像から推定する例を説明したが、それに限らない。例えば、日本国特開2014-18645号公報や日本国特開2016-106689号公報等、マイクロフォンで取得した受け手の発言内容や生体センサで取得した心拍数等の生体情報等の様々な情報に基づいて、人間の感情を推定する技術が各種提案されている。
【0122】
また、上記第1乃至第3実施形態の動作説明では、犬と人間とのコミュニケーションを例に説明したが、この用途に限定するものではない。猫や鳥等の他のペットと人間とのコミュニケーション、人間の乳幼児と親等のコミュニケーション、といった、感情を言葉として表せない発信者を対象としたコミュニケーションにおいても、各実施形態は適用可能である。
【0123】
更に、互いに感情を言葉として表せる発信者と受け手との間のコミュニケーションにおいても、上記実施形態を適用することも可能である。メッセージ生成装置は、発信者のメッセージと受け手の感情とを入力とし、発信者のメッセージの意図は変えずに、受け手の感情に応じて、生成する言いまわしを変えることができる。例えば、「ご飯いこ!」という発信者のメッセージに対して、「悲しい」という受け手の感情が入力された場合には「ご飯いこ!」を「元気出して!ご飯いこ!」としたり、「怒り」という受け手の感情が入力された場合には「ご飯いこ!」を「ご飯にいきませんか?」にしたりする、等のメッセージを生成することができる。
【0124】
また、上記第1乃至第3実施形態では、抽象度を2段階としたが、それに限定されない。発信者感情の感情ベクトルと受け手感情の感情ベクトルの距離を近い/遠いの2つではなく、より細分化して判断することで、3段階以上の抽象度を算出でき、それに応じて、生成及び提示されるメッセージも、各行動メッセージについて3種以上とすることができる。
【0125】
また、上記第1乃至第3実施形態の動作説明では、感情ベクトルを用いて、発信者と受け手の感情の近さを算出するものとしたが、二者の感情の近さは、別の指標で算出しても良い。
【0126】
更に、感情ベクトルは、ラッセルの感情円環モデル上にて定義したが、他の感情モデルを用いて感情ベクトルを定義しても良い。
【0127】
また、上記第1乃至第3実施形態では、両者の感情の近さに応じて抽象度を上げ下げしたが、発信者のやりたい行動を超越しない範囲で、選択肢を増やすことができれば、抽象度を上げ下げするという手法とは異なる手法を採用しても良い。
【0128】
また、上記第1乃至第3実施形態では、行動メッセージから発信者感情の感情ベクトルを算出するものとした。しかしながら、行動データベース10に登録されている各メッセージについて、感情ベクトルを予め算出して、行動データベース10に各メッセージに対応付けて記憶しておいても良い。
【0129】
また、
図3、
図10A、及び
図10Bのフローチャートに示した処理ステップの順序は一例であり、この順に限定するものではない。例えば、
図3において、受け手情報を取得するステップS5は、ステップS1とステップS6の間の何れで実施しても構わない。また、ステップS5の処理は、プロセッサ101が並行処理能力を備える場合には、ステップS2乃至ステップS4の処理とは並行して実行しても構わない。このように、各処理ステップは、先行の又は後続する処理ステップと齟齬が生じない限り、処理順序を変更して構わない。
【0130】
また、メッセージ生成装置又はメッセージ提示装置を構成する情報処理装置は、その機能の一部を、ネットワーク400上のサーバ装置によって構成しても良い。例えば、行動データベース10やメッセージ生成部40をサーバ装置に設けることができる。
【0131】
また、メッセージ生成装置又はメッセージ提示装置の機能の全てをサーバ装置に設けても良い。この場合、スキルとして、発信者情報及び受け手情報の収集機能と、生成メッセージの出力機能を提供することで、受け手に、ネットワーク400に接続されたスマートスピーカを、あたかもメッセージ提示装置であるかのように見せることができる。例えば、ユーザインタフェースとしてマイクロフォンとスピーカのみを有するスマートスピーカは、発信者と受け手の音声情報をネットワーク400を介してサーバ装置に送信し、生成メッセージを、サーバ装置からネットワーク400を介して受信してスピーカにより音声出力することができる。また、例えば、ユーザインタフェースとして更にカメラとディスプレイを有するスマートスピーカは、受け手の音声情報と顔画像情報とをネットワーク400を介してサーバ装置に送信し、生成メッセージを、サーバ装置からネットワーク400を介して受信してスピーカにより音声出力したり、ディスプレイにより表示出力したりすることができる。
【0132】
また、前記実施形態に記載した手法は、計算機(コンピュータ)に実行させることができるプログラム(ソフトウェア手段)として、例えば磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD-ROM、DVD、MO等)、半導体メモリ(ROM、RAM、フラッシュメモリ等)等の記録媒体に格納し、また通信媒体により伝送して頒布することもできる。なお、媒体側に格納されるプログラムには、計算機に実行させるソフトウェア手段(実行プログラムのみならずテーブル、データ構造も含む)を計算機内に構成させる設定プログラムをも含む。本装置を実現する計算機は、記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、また場合により設定プログラムによりソフトウェア手段を構築し、このソフトウェア手段によって動作が制御されることにより上述した処理を実行する。なお、本明細書で言う記録媒体は、頒布用に限らず、計算機内部或いはネットワークを介して接続される機器に設けられた磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶媒体を含むものである。
【0133】
要するに、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組合せて実施してもよく、その場合組合せた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。
【符号の説明】
【0134】
10…行動データベース(行動DB)
20…発信者情報取得部
30…受け手情報取得部
40…メッセージ生成部
41…行動取得部
42…抽象度算出部
43…生成部
44…選択部
50…メッセージ提示部
60…発信者装置
61…発信者通信部
70…受け手装置
71…受け手通信部
80…メッセージデータベース(メッセージDB)
101,601…プロセッサ
102,602…プログラムメモリ
103…データメモリ
1031,6031…行動データベース記憶部(行動DB記憶部)
1032,6032…一時記憶部
1033,6033…提示情報記憶部
104,604…通信インタフェース
105,605…入出力インタフェース(入出力IF)
106,606…バス
107,607…キー入力部
108,608…スピーカ
109,609…表示部
110,610…マイクロフォン(マイク)
111,611…カメラ
200…ワイヤレスマイクロフォン(MIC)
300…センサ群
400…ネットワーク(NW)