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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】光通信システム及び光回線終端装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/44 20060101AFI20231212BHJP
   H04B 10/272 20130101ALI20231212BHJP
   H04B 10/2575 20130101ALI20231212BHJP
【FI】
H04L12/44 200
H04L12/44 Z
H04B10/272
H04B10/2575
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022531299
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2020024728
(87)【国際公開番号】W WO2021260823
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩文
(72)【発明者】
【氏名】氏川 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩崇
【審査官】大石 博見
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-152916(JP,A)
【文献】特開2016-119578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/44
H04B 10/272
H04B 10/2575
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のキャリアの基地局がそれぞれ接続された光回線終端装置から複数の光ネットワークユニットへ光回線を介して同期信号を配信する光通信システムにおいて、
前記光回線終端装置は、
前記基地局それぞれから送信された同期信号をそれぞれスレーブとして処理する1つ以上のスレーブ処理部と、
複数の同期信号のいずれかをマスタークロックとして分配する分配部と、
1つ以上の前記スレーブ処理部が処理した同期信号を前記分配部が分配したマスタークロックに基づいて補正する1つ以上の補正部と、
前記補正部が補正した同期信号に対し、キャリアごとに異なる識別子を付すように変換する1つ以上の変換部と、
前記変換部が変換した同期信号を前記識別子に基づいてキャリアごとに異なる前記光ネットワークユニットへ光回線を介して送信するように処理する同期信号処理部と
を有することを特徴とする光通信システム。
【請求項2】
前記光回線終端装置は、
キャリアごとに異なる識別子を含む同期信号データベース、並びに、前記光ネットワークユニット及びユーザを認証する認証データベースを予め記憶する記憶部
をさらに有し、
前記同期信号処理部は、
前記同期信号データベース及び前記認証データベースに基づいてユニキャスト転送を行うこと
を特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
【請求項3】
前記同期信号処理部は、
前記同期信号データベース及び前記認証データベースに基づいてキャリアを識別すること
を特徴とする請求項2に記載の光通信システム。
【請求項4】
前記光ネットワークユニットは、
前記光回線終端装置から送信された同期信号をユーザそれぞれに対して送信するように処理するマスター処理部を有すること
を特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の光通信システム。
【請求項5】
複数のキャリアの基地局それぞれから送信された同期信号をそれぞれスレーブとして処理する1つ以上のスレーブ処理部と、
複数の同期信号のいずれかをマスタークロックとして分配する分配部と、
1つ以上の前記スレーブ処理部が処理した同期信号を前記分配部が分配したマスタークロックに基づいて補正する1つ以上の補正部と、
前記補正部が補正した同期信号に対し、キャリアごとに異なる識別子を付すように変換する1つ以上の変換部と、
前記変換部が変換した同期信号を前記識別子に基づいてキャリアごとに異なる光ネットワークユニットへ光回線を介して送信するように処理する同期信号処理部と
を有することを特徴とする光回線終端装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信システム及び光回線終端装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光アクセスのモバイルフロントホール(MFH:Mobile Fronthaul)やモバイルバックホール(MBH:Mobile Backhaul)では、周波数及び時刻同期を実現するために、例えばGPS(Global Positioning System)又はGNSS(Global Navigation Satellite System)などから同期基準信号を受信し、下位装置に同期基準信号(同期信号)を配信する例えばPTP(Precision Time Protocol:時刻同期)やSyncE(同期イーサネット:周波数同期)を使用した通信が行われている。
【0003】
例えば、OLT(Optical Line Terminal:光回線終端装置)に対してGPS受信機から同期基準信号を入力し、ONU(Optical Network Unit:光ネットワークユニット)のUNI(User Network Interface)から周波数及び時刻同期した信号をユーザへ提供する技術は公知である(例えば、非特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】田代隆義、外6名、「モバイルバックホール適用に向けた周波数・時刻同期機能対応10G-EPONシステム」、電子情報通信学会論文誌 B、2013年、Vol.J96-B No.3 pp.321-329
【文献】”時刻同期機能”、ANSL R&D Times 第93号(2016_09)、[online]、NTTアクセスサービスシステム研究所、[令和2年6月16日検索]、インターネット〈URL:https://www.ansl.ntt.co.jp/j/times/093/01/04.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来は、複数の異なるキャリアの基地局それぞれがGMC(Grand Master Clock)を備えてPON(Passive Optical Network)に接続されている場合、異なる同期基準信号が混在してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、それぞれ異なる同期基準信号を用いる複数の基地局が接続されても、効率的に同期基準信号を配信することができる光通信システム及び光回線終端装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様にかかる光通信システムは、複数のキャリアの基地局がそれぞれ接続された光回線終端装置から複数の光ネットワークユニットへ光回線を介して同期信号を配信する光通信システムにおいて、前記光回線終端装置は、前記基地局それぞれから送信された同期信号をそれぞれスレーブとして処理する1つ以上のスレーブ処理部と、複数の同期信号のいずれかをマスタークロックとして分配する分配部と、1つ以上の前記スレーブ処理部が処理した同期信号を前記分配部が分配したマスタークロックに基づいて補正する1つ以上の補正部と、前記補正部が補正した同期信号に対し、キャリアごとに異なる識別子を付すように変換する1つ以上の変換部と、前記変換部が変換した同期信号を前記識別子に基づいてキャリアごとに異なる前記光ネットワークユニットへ光回線を介して送信するように処理する同期信号処理部とを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様にかかる光回線終端装置は、複数のキャリアの基地局それぞれから送信された同期信号をそれぞれスレーブとして処理する1つ以上のスレーブ処理部と、複数の同期信号のいずれかをマスタークロックとして分配する分配部と、1つ以上の前記スレーブ処理部が処理した同期信号を前記分配部が分配したマスタークロックに基づいて補正する1つ以上の補正部と、前記補正部が補正した同期信号に対し、キャリアごとに異なる識別子を付すように変換する1つ以上の変換部と、前記変換部が変換した同期信号を前記識別子に基づいてキャリアごとに異なる光ネットワークユニットへ光回線を介して送信するように処理する同期信号処理部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、それぞれ異なる同期基準信号を用いる複数の基地局が接続されても、効率的に同期基準信号を配信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態にかかる光通信システムの構成例を示す図である。
図2】OLTが有する機能例及びその周辺を示す図である。
図3】同期信号データベースが保持する同期信号情報を例示する図である。
図4】ONUの構成例を示す図である。
図5】設定パターンDBが保持する設定パターンテーブルを例示する図である。
図6】光通信システムが行う下り通信の流れを、OLTの動作を中心にして例示する図である。
図7】光通信システムが行う下り通信の流れを、ONUの動作を中心にして例示する図である。
図8】光通信システムが行う上り通信の流れを、ONUの動作を中心にして例示する図である。
図9】光通信システムが行う上り通信の流れを、OLTの動作を中心にして例示する図である。
図10】OLTのハードウェア構成例を示す図である。
図11】比較例の光通信システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一実施形態にかかる光通信システムを説明するにあたって、まず、本発明がなされるに至った背景について説明する。
【0012】
光通信システムは、例えば、モバイルキャリア(キャリア)ごとに基地局親局(DU)と基地局子局(RU)がPTPやSyncEなどの同期信号プロトコルで接続されており、DUとRUの間にPONシステムを挿入して、複数のキャリアが混在するように構成される場合がある。
【0013】
このときの前提として、DUとRUの間の同期信号は、供給元がキャリアごとに独立しているとする。また、OLTとDUは、建設工事時に接続されており、ユーザ需要に併せてONU及びRUが付帯増設されるものとする。また、DUとRUの間の同期信号は、PONシステムの導入に伴う設定変更を行われないものとする。
【0014】
この場合、光通信システムは、OLTが複数キャリアのDUと接続され、複数のONUとRUの組み合わせを収容する構成となり、同一の光ファイバ内を複数のキャリアの同期信号が透過する構成となり得る。
【0015】
同期信号のフレーム構成によっては、宛先MACアドレスが同一である場合のように、同期信号からキャリアを識別することが困難になることがある。一方、OLT内でキャリアごとにOSUを分割すると、光ファイバの配線効率が悪くなってしまう。
【0016】
図11は、比較例の光通信システム10の構成を示す図である。光通信システム10は、例えば3台の基地局親機(基地局親局:DU)2-1~2-3と、3台の基地局子機(基地局子局:RU)3-1~3-3とを有する。
【0017】
基地局親機2-1~2-3は、それぞれモバイル事業者(キャリア)が異なっており、GMC4-1~4-3からそれぞれ異なる同期基準信号(同期信号)を受信している。GMC4-1~4-3は、それぞれGPS(GNSS)受信機などにより同期信号を受信し、例えばPTPやSyncEなどの同期信号を下位の装置へ配信する装置である。
【0018】
OLT50は、OSU(Optical Subscriber Unit)51-1~51-3を有する。そして、基地局親機2-1~2-3は、それぞれOSU51-1~51-3及びONU70-1~70-3を介して基地局子機3-1~3-3に接続されている。また、基地局子機3-1~3-3には、例えば時刻をエンドアプリケーションに供給するTSC(Time Slave Clock)8-1~8-3がそれぞれ含まれている。
【0019】
この場合、基地局親機2-1は、GMC4-1が受信した同期信号を、OSU51-1及びONU70-1を介して基地局子機3-1へ送信する。基地局子機3-1は、基地局子機3-1内のTSC8-1を介して、基地局2-1と時刻や周波数の同期を行う。
【0020】
同様に、基地局親機2-2は、GMC4-2が受信した同期信号を、OSU51-2及びONU70-2を介して基地局子機3-2へ送信する。また、基地局親機2-3は、GMC4-3が受信した同期信号を、OSU51-3及びONU70-3を介して基地局子機3-3へ送信する。なお、ONU70-1~70-3は、BC(Boundary Clock)であってもよい。
【0021】
つまり、光通信システム10は、それぞれ異なるGMCを備えた基地局親機2-1~2-3と、基地局子機3-1~3-3とが例えばPTPやSyncEなどの同期信号通信を行う場合、異なる同期信号の混在を防ぐために、OLT50内に収容するONU70-1~70-3がキャリアごとに分離されている。そして、光通信システム10は、キャリアそれぞれのOSUの配下に、同一キャリアの基地局子機のみを配置することとしている。
【0022】
したがって、光通信システム10は、OLT50内でキャリアごとにOSUを分割しているので、光ファイバの配線効率が悪くなっている。
【0023】
次に、一実施形態にかかる光通信システム1について説明する。図1は、一実施形態にかかる光通信システム1の構成例を示す図である。
【0024】
図1に示すように、光通信システム1は、例えば3台の基地局親機(基地局親局:DU)2-1~2-3、3台の基地局子機(基地局子局:RU)3-1~3-3、OLT5、光スプリッタ6、ONU7-1~7-3を有する。つまり、光通信システム1は、基地局親機2-1~2-3と基地局子機3-1~3-3との間にPON区間が挿入された構成となっている。
【0025】
基地局親機2-1~2-3は、それぞれモバイル事業者(キャリア)が異なっており、GMC4-1~4-3からそれぞれ異なる同期基準信号(同期信号)を受信している。GMC4-1~4-3は、それぞれGPS(GNSS)受信機などにより同期信号を受信し、例えばPTPやSyncEなどの同期信号を下位の装置へ配信する装置である。
【0026】
OLT5は、基地局親機2-1~2-3それぞれから入力された信号を、光スプリッタ6及びONU7-1~7-3を介して基地局子機3-1~3-3へ送信する。また、基地局子機3-1~3-3には、例えば時刻をDUとRUとの間で同期させるためのTSC(Time Slave Clock)8-1~8-3がそれぞれ含まれている。
【0027】
なお、OLT5は、ONU7-1~7-3の接続時の認証データ(ONU認証テーブル)を用いて、特定のONUとのユニキャスト接続状態を認識可能にされている。
【0028】
以下、基地局親機2-1~2-3のように複数ある構成のいずれかを特定しない場合には、単に基地局親機2などと略記する。
【0029】
図2は、OLT5が有する機能例及びその周辺を示す図である。OLT5は、例えばマスターCLK受信部501、マスターCLK分配部502、スレーブ処理部503-1,503-2、時刻補正部504-1,504-2、変換部505-1,505-2、同期信号データベース(DB)506、認証データベース(DB)507、区間同期処理部508-1,508-2、及び同期信号処理部509を有する。なお、OLT5は、図2に示した時刻同期信号処理機能のみでなく、OLTが一般に有する他の機能も備えていることとする。
【0030】
また、OLT5は、SNI(Service Node Interface)ポートとなるインターフェース(I/F)500-1~500-3、又はインターフェース(I/F)510を介して信号を送受信するように構成されている。I/F500-1~500-3は、主信号だけでなく、例えば時刻同期信号及び周波数同期信号などのS-plane信号も送受信することができる。I/F510は、それぞれPONポートである。
【0031】
OLT5は、基地局親機2-1~2-3のいずれかが出力する同期信号をマスターCLKとして使用する。また、OLT5は、外部からマスターCLKを供給されてもよい。
【0032】
ここでは、OLT5は、外部(又は基地局親機2-1)に設けられたマスターCLK供給部200から入力される同期信号をマスターCLKとしてI/F500-1が受信することとする。また、OLT5は、基地局親機2-2に設けられたマスター配信部202-1が配信する時刻同期信号A及び周波数同期信号A’をI/F500-2が受信することとする。また、OLT5は、基地局親機2-3に設けられたマスター配信部202-2が配信する時刻同期信号B及び周波数同期信号B’をI/F500-3が受信することとする。
【0033】
マスターCLK受信部501は、I/F500-1を介してマスターCLK供給部200が供給するマスターCLKを受信し、マスターCLK分配部502に対して出力する。
【0034】
マスターCLK分配部502は、マスターCLK受信部501から入力されたマスターCLKを時刻補正部504-1,504-2に対して分配する。つまり、マスターCLK分配部502は、複数の同期信号のいずれかをマスタークロックとして分配する分配部として機能する。
【0035】
スレーブ処理部503-1は、I/F500-2を介して基地局親機2-2が送信した同期信号をスレーブとして処理して配信するBC(Boundary Clock)としての機能を備え、同期信号を時刻補正部504-1に対して出力する。
【0036】
スレーブ処理部503-2は、I/F500-3を介して基地局親機2-3が送信した同期信号をスレーブとして処理して配信するBC(Boundary Clock)としての機能を備え、同期信号を時刻補正部504-2に対して出力する。
【0037】
時刻補正部504-1は、マスターCLK分配部502から入力されたマスターCLKと、スレーブ処理部503-1から入力された同期信号とを比較し、差分を用いて同期信号(時刻)を補正し、補正した同期信号を変換部505-1に対して出力する。つまり、時刻補正部504-1は、スレーブ処理部503-1が処理した同期信号をマスターCLK分配部502が分配したマスタークロックに基づいて補正する補正部としての機能を備える。
【0038】
時刻補正部504-2は、マスターCLK分配部502から入力されたマスターCLKと、スレーブ処理部503-2から入力された同期信号とを比較し、差分を用いて同期信号(時刻)を補正し、補正した同期信号を変換部505-2に対して出力する。つまり、時刻補正部504-2は、スレーブ処理部503-2が処理した同期信号をマスターCLK分配部502が分配したマスタークロックに基づいて補正する補正部としての機能を備える。
【0039】
変換部505-1は、時刻補正部504-1が補正した同期信号と、同期信号データベース506が保持している同期信号情報とを用いて、キャリアを識別可能にする識別子の変換を行い、変換した結果を同期信号データベース506及び区間同期処理部508-1に対して出力する。例えば、変換部505-1は、時刻補正部504-1が補正した同期信号に対し、キャリアごとに異なる識別子を付すように変換する。
【0040】
変換部505-2は、時刻補正部504-2が補正した同期信号と、同期信号データベース506が保持している同期信号情報とを用いて、キャリアを識別可能にする識別子の変換を行い、変換した結果を同期信号データベース506及び区間同期処理部508-2に対して出力する。例えば、変換部505-2は、時刻補正部504-2が補正した同期信号に対し、キャリアごとに異なる識別子を付すように変換する。
【0041】
同期信号データベース506は、OLT5のSNIポートごとに同期信号の送信元を関連付ける情報(同期信号情報)を保持するデータベースである。ここでは、同期信号データベース506は、認証データベース507が保持するONU認証テーブルを参照する同期信号情報を保持していることとする。
【0042】
例えば、同期信号データベース506は、基地局親機2-1~2-3とOLT5とを建設する工事時の設計データとして、OLT5に基地局親機2-1~2-3を接続するときに同期信号情報を記憶するようにされている。
【0043】
図3は、同期信号データベース506が保持する同期信号情報を例示する図である。同期信号データベース506は、例えば、同期信号がPTPとSyncEである場合、ユーザID、SNIポート番号、同期信号識別子、PORT identity、PON区間PTPドメイン番号、PON区間QL-TLVフィールドのreserved 4bit、Original PTPドメイン番号、及びOriginal QL-TLV reserved 4bitなどの管理項目を保持する。
【0044】
例えば、同期信号データベース506は、認証データベース507が保持するONU認証テーブルに含まれるユーザIDをインデックスとすることにより、PON区間のキャリアを識別したユニキャスト転送を可能とする。
【0045】
具体的には、同期信号データベース506は、スロット、ポート、PON-VID(VLAN ID)、LLID(Logical Link ID)などによるPON区間のユニキャスト転送を可能にする。
【0046】
また、図3に示したAの管理項目は、キャリアごとの同期信号を識別するために、例えばONU7-1~7-3への信号送信時に変換部505-1,505-2が変換した識別子である。例えば、変換部505-1,505-2は、PTPに含まれるTIMESYNCメッセージや、SyncEに含まれるESMCメッセージにAの管理項目を識別子として埋め込む。
【0047】
また、図3に示したBの管理項目は、認証データベース507が保持するONU認証テーブルに書き込むために、SNIポートから入力された同期信号によりキャリアごとに設定されている値を保持したものである。例えば、変換部505-1,505-2は、ONU7-1~7-3からの信号受信時にBの管理項目を書き戻し、同期信号データベース506に保持させる。
【0048】
区間同期処理部508-1,508-2は、変換部505-1,505-2が変換した識別子を用いてPON区間における信号の同期をとるための処理を行い、処理結果を同期信号処理部509に対して出力する。
【0049】
同期信号処理部509は、上り信号を処理する場合にはキャリアを識別し、下り信号を処理する場合には配信先となるPONポートを識別する処理を行い、処理結果をI/F510に対して出力する。
【0050】
また、同期信号処理部509は、同期信号データベース506が保持している同期信号情報のユーザIDをKEYとして、認証データベース507が保持するONU認証テーブルを検索し、ユニキャストLLID宛に同期信号を配信する機能を有する。
【0051】
また、同期信号処理部509は、ONU7-1~7-3に接続している複数の基地局子機(RU)に対し、同時に同期信号を配信することができるように、ユニキャストLLIDごとに同期信号をコピーして配信する機能を有する。
【0052】
つまり、同期信号処理部509は、変換部505-1,505-2が変換した同期信号を識別子に基づいてキャリアごとに異なるONU7へ光スプリッタ6を介して送信するように処理する機能を備える。このとき、同期信号処理部509は、同期信号データベース506及び認証データベース507に基づいてキャリアを識別し、ユニキャスト転送を行う。
【0053】
I/F510は、同期信号処理部509とONU7-1~7-3とを接続するためのPONポートであり、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0054】
図4は、ONU7の構成例を示す図である。ONU7は、区間同期処理部701、時刻補正部702、変換部703、設定パターンデータベース(DB)704、及びマスター処理部705を有する。また、ONU7は、インターフェース(I/F)700及びインターフェース(I/F)706を介して信号を送受信するように構成されている。
【0055】
区間同期処理部701は、I/F700を介して取得して、OLT5との間で同期信号を送受信し、PON区間における信号の同期をとるための処理を行い、同期信号を含む処理結果を時刻補正部702に対して出力する。
【0056】
時刻補正部702は、区間同期処理部701から入力される同期信号を補正し、補正した同期信号を変換部703に対して出力する。
【0057】
変換部703は、設定パターンDB704が保持する設定パターンテーブルを参照し、同期信号を識別可能にする識別子の変換を行い、変換した結果をマスター処理部705に対して出力する。
【0058】
設定パターンDB704は、ONUサービスごとの設定パターンテーブルを保持するデータベースである。図5は、設定パターンDB704が保持する設定パターンテーブルを例示する図である。
【0059】
図5に示すように、設定パターンテーブルには、例えば同期信号がPTPとSyncEである場合、PON-VID、キャリア(モバイル事業者)識別子、PORT identity、PTPドメイン番号、QL-TLVフィールドのreserved 4bit、Original PTPドメイン番号、及びOriginal QL-TLV reserved 4bitなどが含まれる。
【0060】
また、設定パターンテーブルは、図5に示したAの管理項目には、キャリアごとに同期信号を識別するために、PTPに含まれるTIMESYNCメッセージや、SyncEに含まれるESMCメッセージに識別子としてOLT5から配信された値を保持する。例えば、変換部703は、OLT5への信号送信時にPTPドメイン番号を上書きする。
【0061】
また、設定パターンテーブルの図5に示したBの管理項目は、UNI側へのPTP/SYNCEの送受信用にキャリアごとに設定されている値を保持したものである。例えば、変換部703は、基地局子機3へ同期信号を送信するときに、Bの管理項目を書き戻す。
【0062】
マスター処理部705は、変換部703が変換した識別子を用いてRU向けの同期信号を生成するマスター処理を行い、生成した同期信号を、I/F706を介してユーザとなる基地局子機3それぞれへ送信する。
【0063】
そして、ONU7は、OLT5からONU7への接続時の認証・設定に使用される設定パターンの中に、OLT5が保持する同期信号情報の項目を追加することにより、PON区間内の同期信号の送信元を識別する。また、ONU7は、接続する基地局子機3の同期信号送信元のキャリアを識別する情報、及びOLT5が変換した同期信号の変換前後の値を保持してもよい。
【0064】
次に、光通信システム1の動作例を、OLT5及びONU7の動作を中心にして説明する。図6は、光通信システム1が行う下り通信の流れを、OLT5の動作を中心にして例示する図である。
【0065】
図6に示すように、基地局親機2-1~2-3がOLT5に対して同期信号を送信すると(S100)、OLT5は、スレーブ処理部503が同期信号を受信する(S102)。
【0066】
時刻補正部504は、スレーブ処理部503から入力された同期信号がマスターCLKとなる外部CLKと同期しているか否かを判定する(S104)。時刻補正部504は、同期していないと判定した場合(S104:No)にはS106の処理に進み、同期していると判定した場合(S104:Yes)にはS108の処理に進む。
【0067】
S106の処理において、OLT5は、例えばPTPのANNOUCEメッセージの中でCLK Class=248、例えばSyncEのESMCメッセージの中でQL-DUSとして、非同期状態であることをSNIポートに送信する。
【0068】
S108の処理において、OLT5は、スレーブ処理部503からマスター側にDelay Reqを送信する。
【0069】
スレーブ処理部503は、例えばPTPのDelay respメッセージを受信したか否かを判定する(S110)。スレーブ処理部503は、例えばPTPのDelay respメッセージを受信していないと判定した場合(S110:No)にはS112の処理に進み、例えばPTPのDelay respメッセージを受信したと判定した場合(S110:Yes)にはS114の処理に進む。
【0070】
S112の処理において、OLT5は、例えばPTPのANNOUCEメッセージの中でCLK Class=248、例えばSyncEのESMCメッセージの中でQL-DUSとして、非同期状態であると判定し、S116の処理に進む。
【0071】
S114の処理において、時刻補正部504は、マスターCLK分配部502から入力されたマスターCLKと、スレーブ処理部503から入力された同期信号とを比較し、差分を用いて時刻を補正し、変換部505に対して出力する。
【0072】
変換部505が同期信号の識別子を書き換える変換を行うと(S116)、区間同期処理部508は、同期信号処理部509へ同期信号を送信する(S118)。
【0073】
同期信号処理部509は、認証データベース507が保持するONU認証テーブルに対し、同期信号データベース506が保持している同期信号情報のユーザIDがあるか否かを検索して判定する(S120)。同期信号処理部509は、ユーザIDがないと判定した場合(S120:No)にはS122の処理に進み、ユーザIDがあると判定した場合(S120:Yes)にはS124の処理に進む。
【0074】
S122の処理において、OLT5は、同期信号を配信しない。S124の処理において、OLT5は、認証データベース507からユニキャスト転送先を選択する。
【0075】
そして、OLT5は、PONポートからユニキャストLLIDの宛先ONU7に同期信号を送信する(S126)。
【0076】
図7は、光通信システム1が行う下り通信の流れを、ONU7の動作を中心にして例示する図である。
【0077】
図7に示すように、ONU7は、PONポートからPON同期信号を受信すると(S200)、区間同期処理部701が同期信号を受信することとなる(S202)。そして、区間同期処理部701は、OLT5へ例えばPTPのDelay reqメッセージを送信する(S204)。
【0078】
ONU7は、PONポートから例えばPTPのDelay respメッセージを受信したか否かを判定する(S206)。ONU7は、例えばPTPのDelay respメッセージを受信していないと判定した場合(S206:No)にはS208の処理に進み、例えばPTPのDelay respメッセージを受信したと判定した場合(S206:Yes)にはS210の処理に進む。
【0079】
S208の処理において、ONU7は、例えばPTPのANNOUCEメッセージの中でCLK Class=248、例えばSyncEのESMCメッセージの中でQL-DUSとして、非同期状態であると判定し、S212の処理に進む。
【0080】
変換部703が同期信号の識別子を書き戻す変換を行うと(S212)、マスター処理部705は、UNIポートへ同期信号を送信する(S214)。
【0081】
図8は、光通信システム1が行う上り通信の流れを、ONU7の動作を中心にして例示する図である。
【0082】
図8に示すように、ONU7は、UNIポートにより基地局子機(RU)3から同期信号を受信すると(S300)、マスター処理部705がUNIポートへ例えばPTPのDelay respメッセージを送信する(S302)。
【0083】
変換部703は、キャリアを識別するようにキャリアごとに識別子を書き換える変換を行う(S304)。
【0084】
そして、時刻補正部702が時刻の差分を修正する補正を行うと(S306)、区間同期処理部701は、例えばPTPのDelay respメッセージを受信したか否かを判定する(S310)。区間同期処理部701は、例えばPTPのDelay respメッセージを受信していないと判定した場合(S310:No)にはS312の処理に進み、例えばPTPのDelay respメッセージを受信したと判定した場合(S310:Yes)にはS314の処理に進む。
【0085】
S312の処理において、ONU7は、例えばPTPのANNOUCEメッセージの中でCLK Class=248、例えばSyncEのESMCメッセージの中でQL-DUSとして、非同期状態であると判定し、S314の処理に進む。そして、ONU7は、PONポートからPON同期信号を送信する(S314)。
【0086】
図9は、光通信システム1が行う上り通信の流れを、OLT5の動作を中心にして例示する図である。
【0087】
図9に示すように、OLT5は、PONポートから同期信号を受信すると(S400)、認証データベース507が保持するONU認証テーブルに対し、SNIポート番号のユーザIDがあるか否かを検索して判定する(S402)。OLT5は、ユーザIDがないと判定した場合(S402:No)にはS404の処理に進み、ユーザIDがあると判定した場合(S402:Yes)にはS406の処理に進む。
【0088】
S404の処理において、OLT5は、例えばPTPのANNOUCEメッセージの中でCLK Class=248、例えばSyncEのESMCメッセージの中でQL-DUSとして、非同期状態であることをPONポートに送信する。
【0089】
S406の処理において、OLT5は、同期信号の識別子に基づいて、変換元の同期信号処理部509へ同期信号を送信する。また、OLT5は、区間同期処理部508から同期信号処理部509へ例えばPTPのDelay respメッセージを送信する(S408)。そして、変換部505は、同期信号に対し、キャリアの識別子を書き換える(S410)。
【0090】
時刻補正部504は、スレーブ処理部503から入力された同期信号がマスターCLKとなる外部CLKと同期しているか否かを判定する(S412)。時刻補正部504は、同期していないと判定した場合(S412:No)にはS414の処理に進み、同期していると判定した場合(S412:Yes)にはS416の処理に進む。
【0091】
S414の処理において、OLT5は、例えばPTPのANNOUCEメッセージの中でCLK Class=248、例えばSyncEのESMCメッセージの中でQL-DUSとして、非同期状態であることをSNIポートに送信する。
【0092】
S416の処理において、OLT5は、区間同期処理部508が例えばPTPのDelay Reqメッセージを送信する。
【0093】
スレーブ処理部503は、SNIポートから例えばPTPのDelay respメッセージを受信したか否かを判定する(S418)。スレーブ処理部503は、例えばPTPのDelay respメッセージを受信していないと判定した場合(S418:No)にはS420の処理に進み、例えばPTPのDelay respメッセージを受信したと判定した場合(S418:Yes)にはS422の処理に進む。
【0094】
S420の処理において、OLT5は、例えばPTPのANNOUCEメッセージの中でCLK Class=248、例えばSyncEのESMCメッセージの中でQL-DUSとして、非同期状態であると判定し、S424の処理に進む。
【0095】
S422の処理において、時刻補正部504は、マスターCLK分配部502から入力されたマスターCLKと、スレーブ処理部503から入力された同期信号とを比較し、差分を用いて時刻を補正し、変換部505に対して出力する。
【0096】
変換部505が同期信号のキャリアを識別する識別子を書き戻す変換を行うと(S424)、スレーブ処理部503は、同期信号を送信する(S426)。
【0097】
このように、光通信システム1は、光ファイバ本数を削減することができ、それぞれ異なる同期基準信号を用いる複数の基地局が接続されても、効率的に同期基準信号を配信することができる。具体的には、光通信システム1は、複数のキャリアが用いる同期基準信号(同期信号)を1台のOLT5が複数のONU7との間で効率的に送受信することが可能である。
【0098】
なお、基地局親機2、基地局子機3、OLT5、及びONU7が有する各機能は、それぞれ一部又は全部がPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアによって構成されてもよいし、CPU等のプロセッサが実行するプログラムとして構成されてもよい。
【0099】
例えば、本発明にかかる光通信システム1は、コンピュータとプログラムを用いて実現することができ、プログラムを記憶媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0100】
図10は、OLT5のハードウェア構成例を示す図である。図10に示すように、例えばOLT5は、入力部900、出力部910、通信部920、CPU930、メモリ940及びHDD950がバス960を介して接続され、コンピュータとしての機能を備える。また、OLT5は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体970との間でデータを入出力することができるようにされている。
【0101】
入力部900は、例えばキーボード及びマウス等である。出力部910は、例えばディスプレイなどの表示装置である。通信部920は、例えば有線のネットワークインターフェース及びPONに用いられるインターフェースである。
【0102】
CPU930は、OLT5を構成する各部を制御し、所定の処理等を行う。メモリ940及びHDD950は、データ等を記憶する記憶部である。例えば、HDD950は、キャリアごとに異なる識別子を含む同期信号データベース506、並びに、ONU7及びユーザを認証する認証データベース507を予め記憶する。
【0103】
記憶媒体970は、OLT5が有する機能を実行させるプログラム等を記憶可能にされている。なお、OLT5を構成するアーキテクチャは図10に示した例に限定されない。また、基地局親機2、基地局子機3、及びONU7もOLT5と同様のハードウェア構成であってもよい。
【0104】
ここでいう「コンピュータ」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記憶媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体等の記憶装置のことをいう。
【0105】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記憶媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するものや、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータ内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものを含んでもよい。
【0106】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明してきたが、上述の実施形態は、本発明の例示に過ぎず、本発明が上述の実施形態に限定されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の技術思想及び範囲を逸脱しない範囲で、構成要素の追加、省略、置換、その他の変更が行われてもよい。
【符号の説明】
【0107】
1・・・光通信システム、2-1~2-3・・・基地局親機、3-1~3-3・・・基地局子機、4-1~4-3・・・GMC、5・・・OLT、6・・・光スプリッタ、7-1~7-3・・・ONU、8-1~8-3・・・TSC、200・・・マスターCLK供給部、202-1,202-2・・・マスター配信部、500-1~500-3,510・・・インターフェース(I/F)、501・・・マスターCLK受信部、502・・・マスターCLK分配部、503-1,503-2・・・スレーブ処理部、504-1,504-2・・・時刻補正部、505-1,505-2・・・変換部、506・・・同期信号データベース、507・・・認証データベース、508-1,508-2・・・区間同期処理部、509・・・同期信号処理部、700,706・・・インターフェース(I/F)、701・・・区間同期処理部、702・・・時刻補正部、703・・・変換部、704・・・設定パターンデータベース、705・・・マスター処理部、900・・・入力部、910・・・出力部、920・・・通信部、930・・・CPU、940・・・メモリ、950・・・HDD、960・・・バス、970・・・記憶媒体
図1
図2
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