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特許7401035プリズムシート及びプリズムシート用活性エネルギー線硬化性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】プリズムシート及びプリズムシート用活性エネルギー線硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20231212BHJP
   G02B 5/04 20060101ALI20231212BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20231212BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20231212BHJP
   C08F 20/10 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G02B5/02 C
G02B5/04 A
C08F2/44 Z
G02F1/1335
C08F20/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023546467
(86)(22)【出願日】2023-04-18
(86)【国際出願番号】 JP2023015447
【審査請求日】2023-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2022073693
(32)【優先日】2022-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】木下 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】原 裕二郎
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 正和
(72)【発明者】
【氏名】申 東美
(72)【発明者】
【氏名】上田 裕太郎
(72)【発明者】
【氏名】高田 泰廣
(72)【発明者】
【氏名】出口 義信
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/111697(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/250721(WO,A1)
【文献】特開2012-208376(JP,A)
【文献】特開2011-221492(JP,A)
【文献】特開2014-71153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00- 5/136
C08F 2/44
C08F20/10
G02F 1/1335
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物である微細凹凸構造層と、透明基材層と、を有するプリズムシートであって、
前記活性エネルギー線硬化性組成物は、無機ナノ粒子を40質量%以上含有し、
前記微細凹凸構造層は、表面に10~100μmの周期の微細凹凸構造を有し、
前記微細凹凸構造層は、最大試験力における押込み深さ(hmax)が8μm以上であり、弾性変形仕事率(nIT)が50%以上であるプリズムシート。
なお、前記最大試験力における押込み深さ(hmax)及び弾性変形仕事率(nIT)は、以下の測定条件で得られたものである。
圧子:100μmx100μmの平面圧子
平面圧子1秒当たりの圧縮力:20~60mN
最大圧縮力:500mN
最大圧縮力における停止時間:5~10秒。
【請求項2】
前記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物からなる試験片の引裂試験において、最大点変位が2.1%以上である、請求項1記載のプリズムシート。
なお、前記引裂試験は、以下の測定条件でJIS-K-7128-3に準拠して行う。
前記試験片形状:JIS-K-7128-3に記載の直角形引裂試験片
前記試験片の厚さ:200±50μm(各試験片ごとに実測した値)
前記試験片作製:打ち抜きにより作製した。
掴み具間距離:56mm
試験環境:23℃×50%RH
試験速度:500mm/min。
【請求項3】
前記無機ナノ粒子はジルコニアである請求項1又は2に記載のプリズムシート。
【請求項4】
前記活性エネルギー線硬化性組成物が、(メタ)アクリレート化合物を含有する請求項1又は2に記載のプリズムシート。
【請求項5】
前記活性エネルギー線硬化性組成物が、表面調整剤を前記組成物中に0.1~1.5質量部の範囲で含有する請求項1又は2に記載のプリズムシート。
【請求項6】
表面調整剤が、シリコンを含有する請求項5に記載のプリズムシート。
【請求項7】
無機ナノ粒子と(メタ)アクリレート化合物とを含む、プリズムシート用活性エネルギー線硬化性組成物であって、
前記プリズムシート用活性エネルギー線硬化性組成物は、前記無機ナノ粒子を40質量%以上含有し、
前記プリズムシート用活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物で作成した標準プリズムシートは、最大試験力における押込み深さ(hmax)が8μm以上であり、弾性変形仕事率(nIT)が50%以上である、プリズムシート用活性エネルギー線硬化性組成物。
なお、前記標準プリズムシートは、透明基材層と微細凹凸構造層とを有し、
前記透明基材層が厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートであり、
前記微細凹凸構造層が前記透明基材層の表面に50μmの周期の微細凹凸構造を有し、
前記微細凹凸構造の単位構造が単位プリズムを構成し、前記単位プリズム形状は、厚さ方向の断面における形状が高さ25μm、底辺50μm、頂角90°となる二等辺三角形の三角柱形状とし、
前記単位プリズムが、前記標準プリズムシートの平面視において、各単位プリズムの稜線が互いに平行になるように複数の単位プリズムを配列周期50μmで当該稜線と直交する方向に多数隣接して配列している。
前記最大試験力における押込み深さ(hmax)及び弾性変形仕事率(nIT)は、以下の測定条件で得られたものである。
圧子:100μmx100μmの平面圧子
平面圧子1秒当たりの圧縮力:20~60mN
最大圧縮力:500mN
最大圧縮力における停止時間:5~10秒。
【請求項8】
前記プリズムシート用活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物からなる試験片の引裂試験において、最大点変位が2.1%以上である、請求項7に記載のプリズムシート用活性エネルギー線硬化性組成物。
なお、前記引裂試験は、以下の測定条件でJIS-K-7128-3に準拠して行う。
前記試験片形状:JIS-K-7128-3に記載の直角形引裂試験片
前記試験片の厚さ:200±50μm(各試験片ごとに実測した値)
前記試験片作製:打ち抜きにより作製した。
掴み具間距離:56mm
試験環境:23℃×50%RH
試験速度:500mm/min。
【請求項9】
前記無機ナノ粒子はジルコニアである、請求項7又8に記載のプリズムシート用活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項10】
表面調整剤を0.1~1.5質量部の範囲で含有する請求項7又8に記載のプリズムシート用活性エネルギー線硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置等のディスプレイに用いられるプリズムシート及びプリズムシート用活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
本願は、2022年4月27日に、日本に出願された特願2022-073693号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置等のディスプレイにおいては、輝度の向上、視野角の拡大等の機能を有する光学シートが用いられている。このような光学シートは、通常、基材と、当該基材上に微細な凹凸構造を有する光学機能層を有し、その凹凸形状において光を屈折等の幾何光学的作用によって変調させることで、所望の機能を発現する。このような凹凸形状は主にモールドを用いて樹脂材料を賦形する方法により製造されることから、光学機能層に用いる材料には溶剤を含まず、かつ低粘度であることが求められている。
また、上記光学シートの内、例えばプリズムシートは、とがった凸形状を持つことから、隣接する部材との摩擦等によって欠けが生じやすい。このようなプリズムシートの場合は特に、耐摩耗性が求められている。
一方、ディスプレイの薄型化や消費電力の削減等に伴い、上記光学機能層に用いる材料には、高い屈折率が要求されている。これに対応するために、高屈折率の樹脂を使用したり、有機や無機の高屈折率微粒子を添加したりする方法が提案されている(例えば、特許文献1と2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公報第2020/250721号
【文献】特開2013-249439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、屈折率の高い材料は一般に樹脂硬化物の柔軟性を低下させるため、凹凸形状の欠けが発生しやすくなる問題があった。したがって、耐摩耗性が良好でかつ高屈折率である材料が求められていた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、平面圧子を用いて、プリズムシートの凸部の機械物性を評価したところ、一定のパラメータを有する材料で、良好な耐摩耗性と高屈折率の両立を達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の内容は、以下の実施態様を含む。
[1] 活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物である微細凹凸構造層と、透明基材層と、を有するプリズムシートであって、
前記活性エネルギー線硬化性組成物は、無機ナノ粒子を40質量%以上含有し、
前記微細凹凸構造層は、表面に10~100μmの周期の微細凹凸構造を有し、
前記微細凹凸構造層は、最大試験力における押込み深さ(hmax)が8μm以上であり、弾性変形仕事率(nIT)が50%以上であるプリズムシート。
なお、前記最大試験力における押込み深さ(hmax)及び弾性変形仕事率(nIT)は、以下の測定条件で得られたものである。
圧子:100μmx100μmの平面圧子
平面圧子1秒当たりの圧縮力:20~60mN
最大圧縮力:500mN
最大圧縮力における停止時間:5~10秒。
[2] 前記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物からなる試験片の引裂試験において、最大点変位が2.1%以上である、[1]に記載のプリズムシート。
なお、前記引裂試験は、以下の測定条件でJIS-K-7128-3に準拠して行う。
前記試験片形状:JIS-K-7128-3に記載の直角形引裂試験片
前記試験片の厚さ:200±50μm(各試験片ごとに実測した値)
前記試験片作製:打ち抜きにより作製した。
掴み具間距離:56mm
試験環境:23℃×50%RH
試験速度:500mm/min。
[3] 前記無機ナノ粒子はジルコニアである[1]又は[2]に記載のプリズムシート。
[4] 前記活性エネルギー線硬化性組成物が、(メタ)アクリレート化合物を含有する[1]~[3]の何れかに記載のプリズムシート。
[5] 前記活性エネルギー線硬化性組成物が、表面調整剤を前記組成物中に0.1~1.5質量部の範囲で含有する[1]~[4]の何れかに記載のプリズムシート。
[6] 前記表面調整剤が、シリコンを含有する[5]に記載のプリズムシート。
[7] 無機ナノ粒子と(メタ)アクリレート化合物とを含む、プリズムシート用活性エネルギー線硬化性組成物であって、
前記プリズムシート用活性エネルギー線硬化性組成物は、前記無機ナノ粒子を40質量%以上含有し、
前記プリズムシート用活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物で作成した標準プリズムシートは、最大試験力における押込み深さ(hmax)が8μm以上であり、弾性変形仕事率(nIT)が50%以上である、プリズムシート用活性エネルギー線硬化性組成物。
なお、前記標準プリズムシートは、透明基材層と微細凹凸構造層とを有し、
前記透明基材層が厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートであり、
前記微細凹凸構造層が前記透明基材層の表面に50μmの周期の微細凹凸構造を有し、
前記微細凹凸構造の単位構造が単位プリズムを構成し、前記単位プリズム形状は、厚さ方向の断面における形状が高さ25μm、底辺50μm、頂角90°となる二等辺三角形の三角柱形状とし、
前記単位プリズムが、前記標準プリズムシートの平面視において、各単位プリズムの稜線が互いに平行になるように複数の単位プリズムを配列周期50μmで当該稜線と直交する方向に多数隣接して配列している。
前記最大試験力における押込み深さ(hmax)及び弾性変形仕事率(nIT)は、以下の測定条件で得られたものである。
圧子:100μmx100μmの平面圧子
平面圧子1秒当たりの圧縮力:20~60mN
最大圧縮力:500mN
最大圧縮力における停止時間:5~10秒。
[8] 前記プリズムシート用活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物からなる試験片の引裂試験において、最大点変位が2.1%以上である、[7]に記載のプリズムシート用活性エネルギー線硬化性組成物。
なお、前記引裂試験は、以下の測定条件でJIS-K-7128-3に準拠して行う。
前記試験片形状:JIS-K-7128-3に記載の直角形引裂試験片
前記試験片の厚さ:200±50μm(各試験片ごとに実測した値)
前記試験片作製:打ち抜きにより作製した。
掴み具間距離:56mm
試験環境:23℃×50%RH
試験速度:500mm/min。
[9] 前記無機ナノ粒子はジルコニアである[7]又[8]に記載の、プリズムシート用活性エネルギー線硬化性組成物。
[10] 表面調整剤を0.1~1.5質量部の範囲で含有する[7]~[9]の何れかに記載のプリズムシート用活性エネルギー線硬化性組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、平面圧子を用いて、プリズムシートの凸部の機械物性を評価したところ、一定のパラメータを有する材料で、良好な耐摩耗性と高屈折率の両立を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態のプリズムシートの一例の模式的な斜視図である。
図2】本実施形態に係るプリズムシートの一例の模式的断面図である。
図3】本実施形態に係るプリズムシートの一例の表面の模式的断面図である。
図4】本実施形態に係る押込み試験方法に用いた平面圧子の断面図である。
図5】本実施形態に係る平面圧子を用いた押込み試験方法を示す模試図である。
図6】本実施形態に係る押込み試験における平面圧子の測定位置を説明する模試図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態のみに限定されるものではない。
【0010】
「~」は「~」という記載の前の値以上、「~」という記載の後の値以下を意味する。「(メタ)アクリル」とはアクリルとメタクリルの総称であり、「(メタ)アクリレート化合物」とは、アクリル樹脂とメタクリル樹脂の総称である。
【0011】
(プリズムシート)
図1は、本実施形態のプリズムシート10の一例を示した模式的な斜視図である。図2は、本実施形態に係るプリズムシート10の一例の模式的断面図である。本実施形態のプリズムシート10は、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物である微細凹凸構造層と、透明基材層と、を有する。前記活性エネルギー線硬化性組成物は、無機ナノ粒子を40質量%以上含有する。また、前記微細凹凸構造層は、その表面に10~100μmの周期Pの微細凹凸構造2aを有する。
本実施形態のプリズムシート10の微細凹凸構造2aを有する面に対する平面圧子を用いた押込み試験において、最大試験力における押込み深さ(hmax)が8μm以上であり、8.5μm以上15μm以下であることが好ましく、9μm以上12μm以下であることがより好ましい。また、弾性変形仕事率(nIT)が50%以上であり、51%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましい。また、弾性変形仕事率(nIT)の上限値は特に限定されるものではなく値が高いほど好ましい。しいて言えば、屈折率とのバランスの観点から、51%以上70%以下であることが好ましく、55%以上65%以下であることがより好ましい。
【0012】
なお、前記最大試験力における押込み深さ(hmax)及び弾性変形仕事率(nIT)は、以下の測定条件で得られたものである。
圧子:100μmx100μmの平面圧子
平面圧子1秒当たりの圧縮力:20~60mN
最大圧縮力:500mN
最大圧縮力における停止時間:5~10秒
押込み試験について、実施例で詳細に説明する。
【0013】
前記プリズムシート10が微細凹凸構造層2と透明基材層4とを有することが好ましい。
【0014】
〔微細凹凸構造層〕
本実施形態の微細凹凸構造層2は、一例として、図1と2に示すように、三角の角錐の単位凹凸構造2aを透明基材層4表面に二次元的に複数配列したものが挙げられたが、それに限定されない。例えば、本実施形態の微細凹凸構造層2としては、円錐、円錐台又は三角、四角、五角若しくは六角等の角錐又は角錐台等の単位凹凸構造2aを透明基材層表面に二次元的に複数配列したものが挙げられる。
透明基材層の平面の法線方向(以下、単に「厚さ方向」という。)における単位プリズムの断面の形状は図3のように二等辺三角形としても良いし、図示しないが不等辺三角形としても良い。
厚さ方向の断面における三角形の単位プリズムの頂角24aの値は、図3のように90°でも良いし、それ以外の角度であっても良く、40~120°の範囲で調節することができる。また、その底部角24bの値は、図3のように90°でも良いし、それ以外の角度であっても良く、40~120°の範囲で調節することができる。
【0015】
本実施形態の微細凹凸構造層2の厚さは、5μm~100μmであることが好ましく、5μm~60μmであることがより好ましく、10μm~40μmであることが更に好ましい。
【0016】
<活性エネルギー線硬化性組成物>
本実施形態に係る活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物からなる試験片の引裂試験において、最大点変位が2.1%以上であることが好ましく、2.5%以上であることがより好ましく、3.1%以上であることがさらに好ましい。また、20%以下であることが好ましい。最大点変位が2.1%以上である場合、耐摩耗性に優れる。20%以下である場合、実用で十分な効果が得られる。
【0017】
なお、前記引裂試験は、以下の測定条件でJIS-K-7128-3に準拠して行う。
前記試験片形状:JIS-K-7128-3に記載の直角形引裂試験片
前記試験片の厚さ:200±50μm(各試験片ごとに実測した値)
前記試験片作製:打ち抜きにより作製した。
掴み具間距離:56mm
試験環境:23℃×50%RH
試験速度:500mm/min
試験について、実施例で詳細に説明する。
【0018】
本実施形態に係る活性エネルギー線硬化性組成物は、(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。本実施形態に係る活性エネルギー線硬化性組成物に含まれている前記無機ナノ粒子は、ジルコニア微粒子(以下、単にジルコニアという。)であることがより好ましい。
前記ジルコニアと、前記(メタ)アクリレート化合物と、を含む前記活性エネルギー線硬化性組成物を、「プリズムシート用活性エネルギー線硬化性組成物」とする。その場合、前記プリズムシート用活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物で作成した標準プリズムシートは、最大試験力における押込み深さ(hmax)が8μm以上であり、8.5μm以上15μm以下であることが好ましく、9μm以上12μm以下であることがより好ましい。また、弾性変形仕事率(nIT)が50%以上であり、51%以上70%以下であることが好ましく、55%以上65%以下であることがより好ましい。
【0019】
なお、前記押込み深さを評価するための標準プリズムシートは、透明基材層と微細凹凸構造層とを有し、
前記透明基材層が厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートであり、
前記微細凹凸構造層が前記透明基材層部の表面に50μmの周期の微細凹凸構造を有し、
前記微細凹凸構造の単位構造が単位プリズムを構成し、前記単位プリズム形状は、厚さ方向の断面における形状が高さ25μm、底辺50μm、頂角90°となる二等辺三角形の三角柱形状とする。
【0020】
前記単位プリズムが、前記プリズムシートの平面視において、各単位プリズムの稜線が互いに平衡になるように複数の単位プリズムを配列周期50μmで当該稜線と直交する方向に多数隣接して配列している。
【0021】
前記最大試験力における押込み深さ(hmax)及び弾性変形仕事率(nIT)測定条件は、本実施形態のプリズムシートで記載した測定条件と同じである。
【0022】
また、前記プリズムシート用活性エネルギー線硬化性組成物を硬化して、標準プリズムシートを製造する方法は、後述の実施例1において、調製例で得られた活性エネルギー線硬化性組成物P1を製造した方法と同じである。
【0023】
本実施形態において「活性エネルギー線」とは、可視光線並びに紫外線及びX線等の非可視領域の波長の電磁波だけでなく、電子線及びα線のような粒子線を総称する、放射線が含まれる。前記放射線が、活性エネルギー線硬化性基を有する分子に架橋反応乃至重合反応を生じせしめるに足るエネルギー量子を持つ。活性エネルギー線としては、紫外線が好ましい。
【0024】
[ジルコニア]
本実施形態に係るジルコニアとしては、通常公知のものを用いることができ、粒子の形状は、特に限定させるものではないが、例えば、球状、中空状、多孔質状、棒状、繊維状等が挙げられ、これらの中でも、球状が好ましい。
また、本実施形態に係るジルコニアの平均一次粒子径は、1~50nmのものが好ましく、1~30nmのものがより好ましい。さらに、結晶構造も特に限定されるものではないが、単斜晶系が好ましい。
なお、本発明における平均一次粒子径は、TEM(透過型電子顕微鏡)を使用して、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で測定することができる。測定方法としては、例えば、個々の無機微粒子の一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、その平均を一次粒子の平均一次粒子径とする方法が挙げられる。
本実施形態に係るジルコニアの具体例としては、UEP-100(第一稀元素化学工業株式会社製、平均一次粒子径:11nm)、PCS(日本電工株式会社製、平均一次粒子径:20nm)が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性組成物における本実施形態に係るジルコニア含有量は、40質量%~90質量%であることが好ましく、40質量%~80質量%であることがより好ましく、40質量%~70質量%であることがさらに好ましい。
【0025】
[(メタ)アクリレート化合物]
本実施形態に係る(メタ)アクリレート化合物としては、従来公知のプリズムシート形成用の(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単官能(メタ)アクリレート若しくは多官能(メタ)アクリレートを用いることができる。必要に応じてオリゴマー又はプレポリマー等を用いることができる。
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、特許文献(特開2009-37204号公報)に記載のビニルモノマー、(メタ)アクリル酸エステルモノマー及び(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、二官能(メタ)アクリレート若しくは三官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。例えば、特許文献(特開2009-37204号公報)に記載のエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジオールジ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
反応性プレポリマーとしては、例えば、特許文献(特開2009-37204号公報)に記載のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
本実施形態に係るプリズムシートの好適な態様では、前記(メタ)アクリレート化合物が、(A)活性エネルギー線硬化性基を1個有する単官能(メタ)アクリレート(以下、単に「(A)成分」ということがある。)と、(B)活性エネルギー線硬化性基を2個有する二官能(メタ)アクリレート及び/又は三官能(メタ)アクリレート(以下、単に「(B)成分」ということがある。)とを含むことが好ましい。前記(A)成分と前記(B)成分と(C)開始剤(以下、単に「(C)成分」ということがある。)とを含むことがより好ましい。前記(A)成分と前記(B)成分と前記(C)成分と(D)表面調整剤(以下、単に「(D)成分」ということがある。)とを含むことが更に好ましい。当該(A)及び(B)の合計質量が当該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の全固形分質量に対して50質量%以下であることが好ましい。この場合、微細凹凸構造層が上述した特定範囲の押し込み深さ及び上記特定の復元性を発現しつつ、高い屈折率とすることができるためである。
以下、これら(A)~(D)成分について順に説明する。
【0027】
((A)成分)
(A)成分は、活性エネルギー線硬化性基を1個有する単官能(メタ)アクリレートである。前記単官能(メタ)アクリレートが、ハロゲン原子、硫黄原子、酸素原子若しくは窒素原子等のヘテロ原子を含んでもよい。前記単官能(メタ)アクリレートが、鎖状の脂肪族の(メタ)アクリレート又は環状の脂環式の(メタ)アクリレート若しくは芳香族の(メタ)アクリレートであっても良い。例えば、上述した特許文献1に記載の単官能の(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0028】
(A)成分しては、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、フェニルフェノール(EO)n(メタ)アクリレート、フェノール(EO)n(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ビフェニルメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニロキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、等の単官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0029】
(A)成分の具体例としは、例えば、実施例で用いた以下の単官能(メタ)アクリレート-1~単官能(メタ)アクリレート-6が挙げられる。
単官能(メタ)アクリレート-1:KOMERATE A011(Green Chemical Co.,Ltd.製)
構造式あるいは化合物名:オルトフェニルフェノール(EO)アクリレート
単官能(メタ)アクリレート-2:Photomer 4035(IGM Resins Inc.製)
構造式あるいは化合物名:フェノール(EO)アクリレート
単官能(メタ)アクリレート-3:KOMERATE A008(Green Chemical Co., Ltd.製)
構造式あるいは化合物名:3-フェノキシベンジルアクリレート
単官能(メタ)アクリレート-4:MIRAMER M1192(MIWON SPECIALTY CHEMICAL CO.,LTD.製)
構造式あるいは化合物名:ビフェニルメチルアクリレート
単官能(メタ)アクリレート-5:MIRAMER M142(MIWON SPECIALTY CHEMICAL CO.,LTD.製)
構造式あるいは化合物名:フェノール(EO)アクリレート
単官能(メタ)アクリレート-6:MIRAMER M144(MIWON SPECIALTY CHEMICAL CO.,LTD.製)
構造式あるいは化合物名:フェノール(EO)アクリレート
【0030】
(A)成分は1種単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
(A)成分の含有量は組成物の全固形分質量に対して、20~50質量%が好ましい。 そして、組成物の全固形分質量に対して芳香環含有アクリレートが、15~30質量%であることが好ましく、22~27質量%であることがより好ましい。
また、組成物の全固形分質量に対して上記一般式(2)で表わされる化合物の含有量が、5~20質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。
【0031】
上記(A)成分と後述する(B)成分は、その合計質量((A)+(B))が組成物の全固形分質量に対して50質量%以下であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましい。当該合計質量を組成物の全固形分質量に対して50質量%以下とすることにより、微細凹凸構造層が上述した特定範囲の押し込み深さ及び上記特定の復元性を発現しつつ、高い屈折率とすることができる。
【0032】
((B)成分)
(B)成分は、活性エネルギー線硬化性基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートである。ハロゲン原子、硫黄原子、酸素原子若しくは窒素原子等のヘテロ原子を含む鎖状の脂肪族又は環状の脂環式若しくは芳香族の(メタ)アクリルアクリレートであっても良く、例えば、上述した特許文献1に記載の多官能型(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0033】
(B)成分としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ヒドロピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレン(EO)ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA(EO)ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(EO)トリ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性したジペンタエリスリトールのトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0034】
(B)成分の具体例としては、例えば、実施例で用いた二官能(メタ)アクリレート、三官能(メタ)アクリレート-1、三官能(メタ)アクリレート-2が挙げられる。
二官能(メタ)アクリレート:MIRAMER M2100(MIWON SPECIALTY CHEMICAL CO.,LTD.製)
構造式あるいは化合物名:ビスフェノールA(EO)10ジアクリレート
三官能(メタ)アクリレート-1:MIRAMER M3130(MIWON SPECIALTY CHEMICAL CO.,LTD.製)
構造式あるいは化合物名:トリメチロールプロパン(EO)トリアクリレート
三官能(メタ)アクリレート-2:MIRAMER M3160(MIWON SPECIALTY CHEMICAL CO.,LTD.製)
構造式あるいは化合物名:トリメチロールプロパン(EO)トリアクリレート
【0035】
(B)成分の含有量は、組成物の全固形分質量に対して、0~30質量%であることが好ましく、さらに0~20質量%であることが好ましく、特に3~15質量%であることが好ましい。
(B)成分の含有量は、上記特定の前記最大試験力における押込み深さ(hmax)及び弾性変形仕事率(nIT)を十分に発現する観点から、組成物の全固形分質量に対して、好ましくは0~20質量%であり、より好ましくは3~15質量%である。
【0036】
((C)成分)
(C)成分は、開始剤である。光重合開始剤であることが好ましい。
前記光重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、2,2′-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン等が挙げられる。
【0037】
(C)成分の具体例としては、例えば、開始剤-1~開始剤-3が挙げられる。
開始剤-1:Runtecure 1108(Runtec Chemical Co., Ltd.製)
構造式あるいは化合物名:2、4、6―トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド
開始剤-2:Runtecure 1104(Runtec Chemical Co., Ltd.製)
構造式あるいは化合物名:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
開始剤-3:ベンゾフェノン(IGM Resins Inc.製)
構造式あるいは化合物名:ベンゾフェノン
【0038】
(C)成分の含有量は、組成物の全固形分質量に対して、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは0.5~5質量%である。
【0039】
((D)成分)
(D)成分は、表面調整剤である。シリコン系表面調整剤であることが好ましい。
(D)成分は、スリップ性を付与する働きを有する。
(D)成分の具体例としては、シリコン系表面調整剤:BYK-333等のBYKシリーズ(ビックケミー・ジャパン株式会社製)挙げられる。
【0040】
(D)成分の含有量は、耐ブリードアウト性の観点から、組成物の全固形分質量に対して、好ましくは0.01~3質量%であり、より好ましくは0.2~1.5質量%である。
【0041】
本実施形態の組成物には、上記成分以外に必要に応じて、リン酸エステル、シランカップリング剤、可塑剤、酸化防止剤、重合禁止剤、増粘剤、離型剤、帯電防止剤、紫外線安定剤、消泡剤、溶剤、非反応性ウレタンポリマー等の非反応性ウレタン樹脂、非反応性アクリル樹脂、非反応性ポリエステル樹脂、顔料、染料又は拡散剤等も併用することができる。
なお、本実施形態の組成物は、通常、当該組成物中に含まれる上記必須成分と当該必須成分以外の硬化後にプリズムシートのマトリクスを形成する成分の合計量が、当該組成物の全質量に対して、通常、90質量%以上となるように適宜調製される。
【0042】
<リン酸エステル>
本実施形態に係るリン酸エステルとしては、特に制限されないが、例えば、ポリエステル鎖を有するもの、(メタ)アクリロイル基を有するものなどが挙げられる。
【0043】
ポリエステル鎖を有するものとしては、例えば、DISPERBYK-110、DISPERBYK-111(ビックケミー・ジャパン株式会社製)が挙げられる。
【0044】
また、(メタ)アクリロイル基を有するものとしては、例えば、下記構造式(1)で表されるものが挙げられる。下記構造式(1)で表されるものを用いる場合、得られる無機微粒子分散体が優れた分散安定性を有し、また、これを含有する硬化性組成物が低粘度であり、高い屈折率性能及び優れた耐ブリードアウト性を有する硬化塗膜を形成できる。
【0045】
【化1】
(式中Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素原子数2~4のアルキレン鎖である。また、xは、4~10の整数であり、yは、1以上の整数であり、nは、1~3の整数である。)
【0046】
上記構造式(1)で表されるリン酸エステル化合物は、式中のxは、4または5が好ましく、yは、2~7の整数が好ましい。このようなリン酸エステル化合物を用いる場合、得られる活性エネルギー線硬化性組成物が低粘度であり、高い屈折率性能及び優れた耐ブリードアウト性を有する硬化塗膜を形成できる。また、上記構造式(1)で表される分散剤は、式中のnが、1、2及び/または3の混合物であってもよい。
【0047】
前記活性エネルギー線硬化性組成物における、前記リン酸エステル化合物の含有量は、ジルコニアの100質量部に対して5~40質量部の範囲であることがより好ましく、10~25質量部の範囲であることがさらに好ましい。前記リン酸エステル化合物の含有量がジルコニアの100質量部に対して5~40質量部の範囲である場合、高い屈折率性能及び優れた耐ブリードアウト性を有する硬化塗膜を形成できる。
【0048】
<シランカップリング剤>
本実施形態に係るシランカップリング剤としては、例えば、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロイルオキシ系シランカップリング剤;
アリルトリクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン等のビニル系シランカップリング剤;
ジエトキシ(グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、2-(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤;
p-スチリルトリメトキシシラン等のスチレン系シランカップリング剤;
N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1、3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤;
3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド系シランカップリング剤;
3-クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロプロピル系シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤;
ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファイド等のスルフィド系シランカップリング剤;
3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート系シランカップリング剤;
アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系シランカップリング剤などが挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。これらの中でも、後述する(メタ)アクリロイル基含有化合物(C)との相溶性が良いことから、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
本実施形態に係るシランカップリング剤の使用量は、得られる活性エネルギー線硬化性組成物が優れた分散安定性を有すること、また、低粘度であり、高い屈折率性能及び優れた耐ブリードアウト性を有する硬化塗膜を形成できることから、ジルコニアの100質量部に対して10~30質量部の範囲が好ましい。
【0049】
〔透明基材層〕
本実施形態に係る透明基材層4は、プリズムシート10の基材であり、特に限定されず、従来公知のプリズムシートに用いられている透明基材を用いることができる。透明基材層は、例えば、特許文献2に記載のものを用いることができる。
本実施形態に係る透明基材層4は、所望の透明性、機械的強度等の要求適性を勘案の上、材料及び厚さを適宜選択すればよい。
本実施形態に係る透明基材層4は、樹脂基材であっても良いし、硝子基材であっても良い。
透明フィルムの樹脂材料としては、(メタ)アクリレート化合物、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)樹脂及びシクロオレフィンコポリマー(COC)樹脂、セルローストリアセテート(TAC)樹脂等が好ましい。
【0050】
本実施形態に係る透明基材層4は、長尺形状であっても良いし、所定の大きさからなる枚葉形状であっても良い。
本実施形態に係る透明基材層4の厚さは、通常は50~500μmが好ましいが、これに限定されない。
本実施形態に係る透明基材層4の光透過率としては、ディスプレイの前面設置用としては、100%が理想であり、透過率85%以上であることが好ましい。
本実施形態に係る透明基材層4は、必要に応じて、その表面に従来公知のマット処理(光拡散性の微小凹凸の形成)、帯電防止処理又は反射防止処理等が施されたものであっても良い。また、透明樹脂と基材の間にマット処理、帯電防止処理又は反射防止処理等が施されたものであっても良いし、これらを自由に組合せて用いても良い。
【0051】
〔プリズムシートの製造方法〕
本実施形態のプリズムシート10の製造方法は、上記特定の押し込み深さ又は上記弾性変形仕事率が得られる方法であれば特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
例えば、特許文献(特開2009-37204号公報)の図2に示すように、所望の単位凹凸形状の型に上記組成物を入れ、そこに透明基材層を重ね、ラミネーター等を用いて透明基材層をその組成物に圧着し、紫外線等で組成物を硬化させ、単位凹凸形状を形成する。次いで、単位凹凸形状の型を剥離乃至除去することで、透明基材層上に所望の凹凸形状を有する光学機能発現部を備えるプリズムシートが得られる。
【0052】
(プリズムシート用活性エネルギー線硬化性組成物)
本実施形態のプリズムシート用活性エネルギー線硬化性組成物は、ジルコニアと、(メタ)アクリレート化合物と、を含み、前述の本実施形態のプリズムシートを製造するために用いる、活性エネルギー線硬化性組成物である。
本実施形態のプリズムシート用活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物で作成した標準プリズムシートは、最大試験力における押込み深さ(hmax)が8μm以上であり、弾性変形仕事率(nIT)が50%以上である。
なお、本実施形態にかかる標準プリズムシートは、本実施形態のプリズムシートに記載した標準プリズムシートと同じである。
本実施形態にかかる最大試験力における押込み深さ(hmax)及び弾性変形仕事率(nIT)の測定条件、本実施形態のプリズムシートに記載の測定条件と同じである。
【0053】
本実施形態のプリズムシート用活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物からなる試験片の引裂試験において、最大点変位が2.1%以上であることが好ましい。
なお、本実施形態に係る引裂試験の測定条件は、本実施形態のプリズムシートで記載した測定条件と同じである。
本実施形態のプリズムシート用活性エネルギー線硬化性組成物は、表面調整剤を含有することが好ましく、0.01~3質量部の範囲で含有することがより好ましく、0.2~1.5質量部の範囲で含有することがさらに好ましい。本実施形態に係る表面調整剤が本実施形態のプリズムシートに記載の表面調整剤と同じである。
【実施例
【0054】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
(原料)
ジルコニア:UEP-100、第一稀元素化学工業株式会社製
チタニア:P25、日本エアロジル株式会社製
リン酸エステル:DISPERBYK-111、ビックケミー・ジャパン株式会社製 シランカップリング剤:KBM-503、信越化学工業株式会社製
単官能(メタ)アクリレート-1:KOMERATE A011、Green Chemical Co.,Ltd.製
単官能(メタ)アクリレート-2:Photomer 4035、IGM Resins Inc.製
単官能(メタ)アクリレート-3:KOMERATE A008、Green Chemical Co.,Ltd.製
単官能(メタ)アクリレート-4:MIRAMER M1192、MIWON SPECIALTY CHEMICAL CO.,LTD.製
単官能(メタ)アクリレート-5:MIRAMER M142、MIWON SPECIALTY CHEMICAL CO.,LTD.製
単官能(メタ)アクリレート-6:MIRAMER M144、MIWON SPECIALTY CHEMICAL CO.,LTD.製
二官能(メタ)アクリレート:MIRAMER M2100、MIWON SPECIALTY CHEMICAL CO.,LTD.製
三官能(メタ)アクリレート-1:MIRAMER M3130、MIWON SPECIALTY CHEMICAL CO.,LTD.製
三官能(メタ)アクリレート-2:MIRAMER M3160、MIWON SPECIALTY CHEMICAL CO.,LTD.製
フタル酸エステル系可塑剤:ジエチレングリコールジベンゾアート、東京化成工業株式会社製
開始剤-1:Runtecure 1108、Runtec Chemical Co., Ltd.製
開始剤-2:Runtecure 1104、Runtec Chemical Co., Ltd.製
開始剤-3:ベンゾフェノン、IGM Resins Inc.製
シリコン系表面調整剤 :BYK-333、ビックケミー・ジャパン株式会社製
HALS:TINUVIN 292、BASFジャパン株式会社製
【0055】
<押し込み試験>
押し込み試験の試験片は、後述の各実施例と各比較例で得られたプリズムシートであった。
図3は、本実施形態に用いた平面圧子の断面を示す模試図である(上が測定面である)。圧子は、ダイヤモンド製の四角錐型の代わりに、ダイヤモンド製の平面圧子を用いた以外は、ISO 14577-1に準拠して株式会社フィッシャーインストルメンツ製の微小硬さ試験機(商品名HM2000)を用いて、最大試験力における押し込み深さ(hmax)、弾性変形仕事率(nIT)を測定した。
【0056】
試験条件:
平面圧子 平面サイズ 100μmx100μm
1秒当たり20~60mN
最大圧縮力500mN
最大圧縮力における停止時間5~10秒
F 500mN/10s
C 5.0s
R 0.1mN/10s
C2 10.0s。
【0057】
<耐摩耗性>
前記実施例および比較例の各プリズムシートに対して、耐摩耗性評価を行った。井元製作所製の可動盤の上に、プリズムシートの頂部が荷重部側を向くように貼り付け、荷重部側には摩耗子として、直径1cmのホルダーにPET系拡散フィルムを貼り付け、拡散フィルムの基材層がプリズムシートの頂部と擦り合わさるように設置した。評価は23℃(湿度:50%)の室内で実施した。荷重部に300gの荷重をかけて耐摩耗性試験機を動作させ、可動盤を一方向に(移動速度:4m/min、移動距離:10cm、往復回数:40回)で移動させた後の、帯状の傷の度合を目視によって評価した。その基準は次のとおりである。
【0058】
判断標準は以下に示す。
A:目立った傷は確認できない。
B:薄く、細い傷が見られる。
C:中程度の傷が見られる。
D:濃く、太い傷が見られる。
【0059】
<液屈折率>
液屈折率の評価は、多波長アッベ屈折計DR-M4屈折率計(株式会社アタゴ製)を用いて、温度25℃、波長589nmにおける屈折率を測定した。
【0060】
<粘度>
粘度の評価は、E型回転粘度計(東機産業株式会社製「TVE-25H」)を用いて、温度25℃における粘度を測定した。
【0061】
(評価)
<引裂試験>
引裂試験の試験片は、本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物である。硬化条件は、後述の実施例1の硬化条件と同じである。
引裂試験は、以下の測定条件でJIS-K-7128-3に準拠して行う。
前記試験片形状:JIS-K-7128-3に記載の直角形引裂試験片
前記試験片の厚さ:200±50μm(各試験片ごとに実測した値)
前記試験片作製:打ち抜きにより作製した。
掴み具間距離:56mm
試験環境:23℃×50%RH
試験速度:500mm/min。
【0062】
(調製例1)
ジルコニアとして、UEP-100、51.2質量部と、
リン酸エステルとして、DISPERBYK-111、7.7質量部と、
シランカップリング剤として、KBM-503、5.1質量部と、
メチルエチルケトン(以下、「MEK」と略記する。)110.1質量部と
を混合し、分散攪拌機で30分間攪拌し、粗分散を行った。次いで、得られた混合液を、メディア式湿式分散機(アシザワファインテック株式会社製「スターミルLMZ-015」)にて、粒子径100μmのジルコニアビーズを用いて分散処理した。途中の粒子径を確認しながら、滞留時間100分の分散処理を行い、無機微粒子分散体を得た。
この無機微粒子分散体に、
単官能(メタ)アクリレートとして、Photomer 4035、24.0質量部と、二官能(メタ)アクリレートとして、MIRAMER M2100、10.0質量部と、を加え、エバポレーターにて加温しながら揮発成分を減圧除去した。さらに、
開始剤として、Runtecure 1108、0.7質量部、及びRuntecure 1104、0.7質量部、
シリコン系表面調整剤として、BYK-333、0.5質量部
を添加し、本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物P1(組成物P1)を調製した。組成物P1の液屈折率、粘度を評価した。また、組成物P1の硬化物の引裂試験を行った。それらの結果を表1に示す。
【0063】
(調製例2~6、比較調製例1~11)
各調製例は、表1に示す成分及び組成比を用いた以外は、調製例1と同様な方法で、それぞれ、調製例2~6、比較調製例1~11の組成物P2~P6、cP1~cP11を調製した。各組成物の液屈折率、粘度を評価した。また、各組成物の硬化物の引裂試験を行った。それらの結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
(実施例1)
図1に示すような単位プリズムの線状配列の凹凸形状を形成できるプリズム金型(図示なし)に上記調製例1で調製した組成物P1を滴下した。その後、透明基材層として厚さ125μmのポリエチレンテレフタレート(PET)(東洋紡株式会社製の商品名「A4300」)を重ね、ラミネーターで当該PET基材全面を組成物P1に圧着した。
次いで、以下の硬化条件で多数の単位プリズムを有するプリズム部を硬化させ、PET基材と一体化させた。
硬化条件:
照射光源:紫外線
照射装置:高圧水銀灯(株式会社GSユアサライティングサービス製)
照射光量:780mJ/cm
その後、上記プリズム型を剥離することによって、プリズムシートS1を得た。
ここで、単位プリズムの形状は、厚さ方向の断面における形状が高さ25μm、底辺50μm、頂角90℃となる二等辺三角形の三角柱形状とした。そして、微細凹凸構造層は、各単位プリズムの稜線が互いに平衡になるように複数の単位プリズムを配列周期50μmで当該稜線と直交する方向に多数隣接して配列しているものであった。
プリズムシートS1の押込み試験、耐摩耗性試験を行った。結果を表2に示す。
【0066】
(実施例2~6及び比較例1~11)
実施例1において、組成物P1をそれぞれ、表1に示すように組成物P2~P6、cP1~cP11に代えた以外は実施例1と同様に行い、プリズムシートS1~S6,cS1~cS11を得た。
各プリズムシートの押込み試験、耐摩耗性試験を行った。結果を表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
(考察)
表1、2に示すように、無機ナノ粒子であるジルコニアを40質量%以上含有し、かつ50%以上のnIT、8μm以上のhmaxを有するプリズムシートは、高い屈折率と耐摩耗性を両立することができた。一般に無機ナノ粒子を添加すると、柔軟性が低下し、また樹脂の架橋密度が低下するため、耐摩耗性が悪くなる。しかし、nITを50%以上、hmaxを8μm以上とすることで、耐摩耗性が良好である結果が得られた。これは、hmaxが大きいプリズムシートでは耐摩耗試験時の荷重によってプリズム頂部が変形し、摩耗布との接触面積が大きくなることで荷重が分散されるためと考えらえる。また、nITが大きい組成物では塑性変形よりも弾性変形の仕事率が大きいため、荷重をかけて変形させても、除荷時にもとの形状に戻る。
また、硬化物の引裂試験の最大点変位が2.1%以上である組成物から作成したプリズムシートは、良好な耐摩耗性を示した。これは、引裂試験の最大点変位が大きいと、耐摩耗試験時に摩擦力によりプリズム頂部が引き延ばされても、欠けや破断が生じずに変形するためと考えられる。
これらのプリズムシートの耐摩耗性は、シリコン系表面調整剤を添加してスリップ性を付与することで、更に向上させることができた。
【符号の説明】
【0069】
2:微細凹凸構造層(プリズム層)
2a:単位凹凸構造(単位プリズム)
4:透明基材層
10:プリズムシート
24a:頂角
24b:底部角
24:凹部
50:平面圧子
52:測定面
【要約】
本発明によれば、平面圧子を用いて、プリズムシートの凸部の機械物性を評価したところ、一定のパラメータを有する材料で、良好な耐摩耗性と高屈折率の両立を達成することができる。本発明のプリズムシートは、無機ナノ粒子を40質量%以上含有する活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物である微細凹凸構造層と、透明基材層と、を有する。前記微細凹凸構造層は、表面に20~100μmの周期の微細凹凸構造を有する。前記微細凹凸構造層は、最大試験力における押込み深さ(hmax)が8μm以上であり、弾性変形仕事率(nIT)が50%以上である。
なお、前記最大試験力における押込み深さ(hmax)及び弾性変形仕事率(nIT)は、平面圧子を用いて、本文記載の測定条件で得られたものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6