(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】内視鏡操作システム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20231212BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
A61B1/00 610
G02B23/24 A
(21)【出願番号】P 2020098811
(22)【出願日】2020-06-05
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】506087705
【氏名又は名称】学校法人産業医科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】久米 恵一郎
(72)【発明者】
【氏名】坂井 伸朗
(72)【発明者】
【氏名】上田 徹
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-192623(JP,A)
【文献】特開平08-224246(JP,A)
【文献】特表2017-515615(JP,A)
【文献】国際公開第2018/061683(WO,A1)
【文献】特表2014-517747(JP,A)
【文献】特開平08-090461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟性内視鏡の動作を指示するためのマスター装置と、前記マスター装置からの指示により軟性内視鏡を動作させるスレーブ装置と、前記マスター装置および前記スレーブ装置を制御する制御装置とを備え、
前記マスター装置は、前記軟性内視鏡の進退方向および軸回転の動作指示する第1操作手段と、前記軟性内視鏡における挿入部の先端部の湾曲方向を指示する第2操作手段と、前記第1操作手段の動作状態、および前記第2操作手段の動作状態を検出して、マスター状態信号を出力するマスター検出手段と、前記第1操作手段および前記第2操作手段への操作力に対する反力を駆動信号により駆動するマスター駆動手段とを備え、
前記スレーブ装置は、前記軟性内視鏡を保持する支持手段と、前記軟性内視鏡の進退方向の移動および軸回転と上下ハンドルおよび左右ハンドルの回転とを駆動信号により駆動するスレーブ駆動手段と、前記軟性内視鏡の進退方向の移動および軸回転と前記上下ハンドルおよび左右ハンドルの動作状態を検出して、スレーブ状態信号を出力するスレーブ検出手段と
、前記挿入部を進退方向に沿って支持する懸架部とを備え、
前記懸架部は、枠体の一辺が開閉して、前記挿入部が出入りする把持部を備えており、
前記制御装置は、前記マスター装置からのマスター状態信号と、前記スレーブ装置からのスレーブ状態信号とに基づいた双方向力覚フィードバックにより、前記マスター装置および前記スレーブ装置への駆動信号を生成することで、前記マスター装置に加えられた操作力を前記スレーブ装置へ出力し、前記スレーブ装置に発生した力を前記マスター装置に出力する内視鏡操作システム。
【請求項2】
前記マスター検出手段は、前記第1操作手段の進退方向の位置および軸回転の位置を示す位置情報と、前記第2操作手段により指定する前記上下ハンドルおよび左右ハンドルの回転の位置を示す位置情報とを、マスター状態信号として出力するものであり、
前記スレーブ検出手段は、前記軟性内視鏡の進退方向の位置および軸回転の位置を示す位置情報と、前記上下ハンドルおよび左右ハンドルの回転の位置を示す位置情報とを、スレーブ状態信号として出力するものであり、
前記制御装置は、位置情報を微分して速度情報を算出すると共に、前記第1操作手段および前記第2操作手段に加わる外力と前記軟性内視鏡に加わる外力とを外力推定値として算出し、前記位置情報と、前記速度情報と、前記外力推定値とに基づいて、前記第1操作手段および前記第2操作手段と軟性内視鏡とへの加速度指令値を算出し、前記加速度指令値に基づいて前記マスター駆動手段および前記スレーブ駆動手段が駆動される請求項1記載の内視鏡操作システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記マスター装置および前記スレーブ装置を制御対象として入力される力情報と、実際の動きを実モデルで逆算した推定入力を演算する実モデル用演算手段の出力との差を減算器により減算して、前記外力推定値を算出する請求項2記載の内視鏡操作システム。
【請求項4】
前記マスター装置および前記スレーブ装置における進退方向に移動する可動部にロードセルが設けられ、
前記制御装置は、前記ロードセルによる測定値と、前記ロードセルの遠位側の質量により外力推定を行うロードセルモデル用演算手段からの出力とを加算器により加算して、前記外力推定値を算出する請求項2記載の内視鏡操作システム。
【請求項5】
前記マスター装置および前記スレーブ装置における進退方向に移動する可動部にロードセルが設けられ、
前記制御装置は、前記マスター装置および前記スレーブ装置を制御対象として入力する力情報と、実際の動きを実モデルで逆算した推定入力を演算する実モデル用演算手段の出力との差を減算器により減算して、第1外力推定値を算出すると共に、前記ロードセルによる測定値と、前記ロードセルの遠位側の質量により外力推定を行うロードセルモデル用演算手段からの出力とを加算器により加算して、第2外力推定値を算出し、前記第1外力推定値と前記第2外力推定値とを所定の割合で合算して、前記外力推定値として算出する請求項2記載の内視鏡操作システム。
【請求項6】
前記マスター装置は、前記マスター装置の前記第1操作手段への進退方向の操作を前記スレーブ装置と連動させたり、非連動としたりすることを指示する進退方向動作用スイッチを備え、
前記制御装置は、前記進退方向動作用スイッチにより非連動が指示されたときに、スレーブ状態信号を停止する請求項1または2記載の内視鏡操作システム。
【請求項7】
前記マスター装置は、前記軟性内視鏡における挿入部の湾曲状態を固定するためのアングルロック用スイッチを備え、
前記制御装置は、前記アングルロック用スイッチにより固定が指示されたときに、前記挿入部の先端部の湾曲を指示する上下ハンドルと左右ハンドルとを回転させる前記スレーブ駆動手段をブレーキ状態とする請求項1から3のいずれかの項に記載の内視鏡操作システム。
【請求項8】
前記マスター装置は、精密動作用スイッチを備え、
前記制御装置は、前記精密動作用スイッチからの指示に基づいて、前記第1操作手段の進退方向への移動と軸回転とに対する前記スレーブ装置の前記支持手段の移動の比率を小さくする請求項1から4のいずれかの項に記載の内視鏡操作システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟性内視鏡を操作・制御することができる内視鏡操作システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟性内視鏡は、大腸や食道、胃、十二指腸などの消化管のポリープ・潰瘍などの検査や、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)に代表される手術に使用される重要な医療機器である。軟性内視鏡による検査を行う操作者は、異常を見逃さないように相当な集中力を要する。また、手術においては、集中力だけでなく、手術時間が長時間に及ぶため体力も必要である。
集中力や体力が必要な検査や手術を行う操作者の負担を軽減する内視鏡操作システムについて、発明者らが特許文献1として提案したものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載の内視鏡操作システムは、軟性内視鏡の動作を指示するためのマスター装置と、マスター装置からの指示により軟性内視鏡を動作させるスレーブ装置と、マスター装置およびスレーブ装置を制御する制御装置4を備えたものである。この制御装置は、マスター装置からのマスター状態信号と、スレーブ装置からのスレーブ状態信号とに基づいた双方向力覚フィードバックにより、マスター装置およびスレーブ装置への駆動信号を生成することで、マスター装置に加えられた操作力をスレーブ装置へ出力し、スレーブ装置に発生した力をマスター装置に出力する、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
軟性内視鏡による検査での疼痛の原因の第一は、大腸を腹腔内で支える役割をする腸間膜が内視鏡の挿入により過伸展させられることにより起こる。従って、内視鏡医は、この過伸展をなるべく起こさないように内視鏡を挿入する技術を身に付けるトレーニングを積み重ねる。この挿入操作は、右手によるスコープの回旋・挿抜動作および左手による先端の上下左右の先端アングル操作により行われる。しかし、これをロボット操作するには、軟性内視鏡により腸管を操作する内臓感覚がマスター装置を操作する双方向で伝達されることが必要である。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の内視鏡操作システムでは、軟性内視鏡の進退方向の操作と、軟性内視鏡を軸回転させる操作とが双方向力覚フィードバックされるだけでは、操作者に内臓感覚を感じさせることは難しい。
【0007】
そこで本発明は、軟性内視鏡により腸管を操作する内臓感覚を、マスター装置を操作する操作者に感じさせることが可能な内視鏡操作システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の内視鏡操作システムは、軟性内視鏡の動作を指示するためのマスター装置と、前記マスター装置からの指示により軟性内視鏡を動作させるスレーブ装置と、前記マスター装置および前記スレーブ装置を制御する制御装置とを備え、前記マスター装置は、前記軟性内視鏡の進退方向および軸回転の動作指示する第1操作手段と、前記軟性内視鏡における挿入部の先端部の湾曲方向を指示する第2操作手段と、前記第1操作手段の動作状態、および前記第2操作手段の動作状態を検出して、マスター状態信号を出力するマスター検出手段と、前記第1操作手段および前記第2操作手段への操作力に対する反力を駆動信号により駆動するマスター駆動手段とを備え、前記スレーブ装置は、前記軟性内視鏡を保持する支持手段と、前記軟性内視鏡の進退方向の移動および軸回転と上下ハンドルおよび左右ハンドルの回転とを駆動信号により駆動するスレーブ駆動手段と、前記軟性内視鏡の進退方向の移動および軸回転と前記上下ハンドルおよび左右ハンドルの動作状態を検出して、スレーブ状態信号を出力するスレーブ検出手段とを備え、前記制御装置は、前記マスター装置からのマスター状態信号と、前記スレーブ装置からのスレーブ状態信号とに基づいた双方向力覚フィードバックにより、前記マスター装置および前記スレーブ装置への駆動信号を生成することで、前記マスター装置に加えられた操作力を前記スレーブ装置へ出力し、前記スレーブ装置に発生した力を前記マスター装置に出力することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の内視鏡操作システムによれば、前記マスター装置におけるマスター検出手段が、軟性内視鏡の進退方向および軸回転を指示する第1操作手段の動作状態、および挿入部の湾曲方向を指定する第2操作手段の動作状態を検出して出力するマスター状態信号と、スレーブ装置におけるスレーブ検出手段が、軟性内視鏡の進退方向の移動と軸回転の動作状態、および上下ハンドル、左右ハンドルの動作状態を検出して出力するスレーブ状態信号とに基づいた双方向力覚フィードバックにより、マスター装置およびスレーブ装置への駆動信号を生成する。そうすることで、マスター装置に加えられた操作力をスレーブ装置へ出力し、スレーブ装置に発生した力をマスター装置に出力する。従って、軟性内視鏡の進退方向への移動、軸回転、挿入部の上下方向および左右方向への湾曲等の操作全部に双方向力覚フィードバックを掛けることができる。
【0010】
前記マスター検出手段は、前記第1操作手段の進退方向の位置および軸回転の位置を示す位置情報と、前記第2操作手段により指定する前記上下ハンドルおよび左右ハンドルの回転の位置を示す位置情報とを、マスター状態信号として出力するものであり、前記スレーブ検出手段は、前記軟性内視鏡の進退方向の位置および軸回転の位置を示す位置情報と、前記上下ハンドルおよび左右ハンドルの回転の位置を示す位置情報とを、スレーブ状態信号として出力するものであり、前記制御装置は、位置情報を微分して速度情報を算出すると共に、前記第1操作手段および前記第2操作手段に加わる外力と前記軟性内視鏡に加わる外力とを外力推定値として算出し、前記位置情報と、前記速度情報と、前記外力推定値とに基づいて、前記第1操作手段および前記第2操作手段と軟性内視鏡とへの加速度指令値を算出し、前記加速度指令値に基づいて前記マスター駆動手段および前記スレーブ駆動手段が駆動されたものとすることができる。
制御装置が、位置情報から速度情報と外力推定値を算出して、位置情報と速度情報と外力推定値とに基づいて第1操作手段および第2操作手段と軟性内視鏡とへの加速度指令値を算出し、加速度指令値とからマスター駆動手段およびスレーブ駆動手段が駆動される加速度制御型にて制御することで、各種の力を測定する各種のセンサを設けることなくマスター装置およびスレーブ装置を制御することができる。
【0011】
前記制御装置は、前記マスター装置および前記スレーブ装置を制御対象として入力される力情報と、実際の動きを実モデルで逆算した推定入力を演算する実モデル用演算手段の出力との差を減算器により減算して、前記外力推定値を算出することができる。
このように構成することで、信号にノイズが重畳しやすいロードセルを使用しなくても、外力推定値を算出するようにすることができる。
【0012】
前記マスター装置および前記スレーブ装置における進退方向に移動する可動部にロードセルが設けられ、前記制御装置は、前記ロードセルによる測定値と、前記ロードセルの遠位側の質量により外力推定を行うロードセルモデル用演算手段からの出力とを加算器により加算して、前記外力推定値を算出するようにすることができる。
このように構成することで、ロードセルにより静止摩擦力を測定することができるため、外力推定値に静止摩擦力を反映させることができる。
【0013】
前記マスター装置および前記スレーブ装置における進退方向に移動する可動部にロードセルが設けられ、前記制御装置は、前記マスター装置および前記スレーブ装置を制御対象として入力する力情報と、実際の動きを実モデルで逆算した推定入力を演算する実モデル用演算手段の出力との差を減算器により減算して、第1外力推定値を算出すると共に、前記ロードセルによる測定値と、前記ロードセルの遠位側の質量により外力推定を行うロードセルモデル用演算手段からの出力とを加算器により加算して、第2外力推定値を算出し、前記第1外力推定値と前記第2外力推定値とを所定の割合で合算して、前記外力推定値として算出するようにすることができる。
第1外力推定値を算出するときにロードセルを使用しないときのメリットと、第2外力推定値を算出するときにロードセルを使用したときのメリットとの両方を併せ持たせることができる。
【0014】
前記マスター装置は、前記マスター装置の前記第1操作手段への進退方向の操作を前記スレーブ装置と連動させたり、非連動としたりすることを指示する進退方向動作用スイッチを備え、前記制御装置は、前記進退方向動作用スイッチにより非連動が指示されたときに、スレーブ状態信号を停止することができる。
進退方向動作用スイッチが連動と非連動とを指定することにより、第1操作手段の進退方向の移動に対して可動部の移動を微小としたときに、第1操作手段を何回も往復させることで支持手段を操作者の希望の方向に移動させることができる。
【0015】
前記マスター装置は、前記軟性内視鏡における挿入部の湾曲状態を固定するためのアングルロック用スイッチを備え、前記制御装置は、前記アングルロック用スイッチにより固定が指示されたときに、前記挿入部の先端部の湾曲を指示する上下ハンドルと左右ハンドルとを回転させる前記スレーブ駆動手段をブレーキ状態とすることができる。
アングルロック用スイッチにより固定が指示されることにより、挿入部の先端部の湾曲状態を維持させることができる。
【0016】
前記マスター装置は、精密動作用スイッチを備え、前記制御装置は、前記精密動作用スイッチからの指示に基づいて、前記第1操作手段の進退方向への移動と軸回転とに対する前記スレーブ装置の支持手段の移動の比率を小さくすることができる。
挿入部を被術者の体内に挿入する際に、また挿入して挿入部を軸回転させる際に、精密動作用スイッチにより支持手段の移動の比率を小さくことにより、スレーブ装置を微小動作とすることができる。
【0017】
前記スレーブ装置は、前記挿入部を進退方向に沿って支持する懸架部を備え、前記懸架部は、枠体の一辺が開閉して、前記挿入部が出入りする把持部を備えたものとすることができる。
把持部における枠体の一辺が開くので、簡単に挿入部を懸架部から取り出したり、懸架部に取り付けたりすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の内視鏡操作システムは、軟性内視鏡の進退方向への移動、軸回転、挿入部の上下方向および左右方向への湾曲等の操作全部に双方向力覚フィードバックを掛けることができるので、軟性内視鏡により腸管を操作する内臓感覚を、マスター装置を操作する操作者に感じさせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る内視鏡操作システム全体の構成を説明するための図である。
【
図2】
図1に示す内視鏡操作システムのスレーブ装置全体の構成を説明するための図である。
【
図3】
図2に示すスレーブ装置の基台部から一部を透過した状態の図であり、(A)は、挿入部側から見た図、(B)は(A)の反対側から見た図である。
【
図4】
図3に示すスレーブ装置の可動部から一部を透過した状態の図である。
【
図5】
図4に示す可動部から軟性内視鏡を取り外した状態の図である。
【
図6】
図4に示す可動部を説明するための図であり、(A)は垂直断面図、(B)は一部を透過した状態の図である。
【
図7】
図2に示すスレーブ装置における懸架部を説明するための図であり、(A)は一部拡大図、(B)はレール部およびスライド部を説明するための図である。
【
図8】
図7に示すスライド部の把持部を説明するための拡大図である。
【
図9】
図1に示す内視鏡操作システムのマスター装置全体の構成を説明するための図である。
【
図10】
図9に示すマスター装置の基台部から一部を透過した状態の図である。
【
図11】
図10に示すマスター装置の可動部から一部を透過した状態の図であり、(A)は側方から見た図、(B)は指示部側から見た図である。
【
図12】
図1に示す内視鏡操作システムの制御装置を示すブロック図である。
【
図13】
図1に示す内視鏡操作システムを示すブロック線図であり、軟性内視鏡を進退方向に移動させる際の図である。
【
図14】
図1に示す内視鏡操作システムを示すブロック線図であり、軟性内視鏡を軸回転させる際の図である。
【
図15】
図1に示す内視鏡操作システムを示すブロック線図であり、軟性内視鏡における挿入部の先端部を上下方向に動作させる際の図である。
【
図16】
図1に示す内視鏡操作システムを示すブロック線図であり、軟性内視鏡における挿入部の先端部を左右方向に動作させる際の図である。
【
図17】
図12に示す制御装置の各部の構成を説明するための図であり、(A)は進退方向制御部および軸回転制御部の構成を示す第1制御部の図、(B)は第1ハンドル制御部および第2ハンドル制御部の構成を示す第2制御部の図である。
【
図18】
図17(A)に示す第1制御部の第1マスター制御部および第1スレーブ制御部と、
図17(B)に示す第2制御部の第2マスター制御部および第2スレーブ制御部とに含まれる共通ユニット部の構成の図である。
【
図19】本発明の実施の形態2に係る内視鏡操作システムの共通ユニット部の構成を示す図である。
【
図20】本発明の実施の形態3に係る内視鏡操作システムの共通ユニット部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る内視鏡操作システムについて、図面に基づいて説明する。
なお、本明細書においては、軟性内視鏡を被術者の体内へ挿入したり、排出したりする方向を進退方向と称し、被術者の体内に挿入される軟性内視鏡の挿入部の軸線回りに回転することを軸回転と称する。
図1に示す内視鏡操作システム1は、被術者側となるスレーブ装置2と、操作側となるマスター装置3と、スレーブ装置2とマスター装置3とを制御する制御装置4と、モータドライバ装置5,6(
図13から
図16参照)と、表示装置7と、入力装置8とを備えている。
【0021】
まず、スレーブ装置2の構成について、
図2から
図8に基づいて説明する。
図2に示すように、スレーブ装置2は、スレーブ装置2全体を支持する基台部21と、進退方向に移動する可動部22と、軟性内視鏡Eの挿入部E1を進退方向F1に沿って支持する懸架部23とを備えている。
【0022】
基台部21は、平面視矩形状に形成され、支持脚が設けられたフレーム部211と、フレーム部211の長手方向(進退方向)に沿って配置されたレール部212と、レール部212により案内される可動部22を進退方向に移動させる進退方向駆動部213と、進退方向駆動部213の動作状態を検知するリニアエンコーダ214(
図3(A)参照)とを備えている。
【0023】
フレーム部211は、平行な2本の棒状部材211aの両端を連結部材211bにより固定することで平面視矩形状に形成されている。
レール部212(スレーブレール部)は、棒状部材211aの長さ方向に沿って形成された板状部材により形成されている。レール部212は、可動部22が移動するための案内溝として直線状溝が両側面に設けられている。
図3(A)および同図(B)に示すように、進退方向駆動部213(スレーブ駆動手段)は、可動部22に連結された筒状のコイル部213aと、フレーム部211の長さ方向に沿って配置され、コイル部213aの空洞部分を貫通するシャフト部213bとを備えたコアレスリニア型モータ(リニアスライダ)である。
【0024】
リニアエンコーダ214(スレーブ検出手段)は、磁気を検出する走査ヘッド214aと、フレーム部211の長さ方向に沿って配置され、走査ヘッド214aが面上を移動するスケール214bとを備えている。リニアエンコーダ214は、走査ヘッド214aがスケール214b上の磁気の変化を読み取ることで、この変化を、位置情報(スレーブ位置)として、進退方向位置信号(スレーブ状態信号)により出力する。
【0025】
可動部22は、レール部212をスライドする台座部221と、台座部221により支持され、軟性内視鏡E(
図2参照)を軸回転させる軸回転駆動部222と、軸回転駆動部222の動作状態を検出するロータリエンコーダ223と、軟性内視鏡Eを保持する保持部224と備えている。
また、可動部22は、
図5に示すように、軟性内視鏡Eのハンドル部を駆動する2つのハンドル駆動部225と、軟性内視鏡Eのハンドル部の回転の動作状態を検出するハンドル検出部226(スレーブ検出手段)とを備えている。
【0026】
台座部221は、レール部212に取り付けられた移動ステージである。
図4に示すように、軸回転駆動部222(スレーブ駆動手段)は、保持部224に取り付けられた大ギア2221と、大ギア2221と噛み合う小ギア2222と、小ギア2222に回転軸が連結された駆動源となるモータ2223とを備えている。
ロータリエンコーダ223(スレーブ検出手段)は、モータ2223の回転軸に連結されている。ロータリエンコーダ223は、モータ2223よる可動部22の回転を検出し、スレーブ装置2の軸回転の位置情報(スレーブ位置)を軸回転の位置信号(スレーブ状態信号)により軸回転の動作状態として出力する。
図3(A)に示すように、保持部224(支持手段)は、軟性内視鏡Eの操作部E2を担持する棚部2241と、挿入部E1と操作部E2との連結部分を囲って保持する筒部2242とを備えている。筒部2242は、軸線に沿った境界によって2分割され、蓋を開けるように開閉して軟性内視鏡Eを脱着することができる。
【0027】
図5と
図6(A)および同図(B)とに示すように、ハンドル駆動部225(スレーブ駆動手段)は、軟性内視鏡Eのハンドル部(上下ハンドルE31,左右ハンドルE32)の凹凸が嵌合する嵌合部2251と、嵌合部2251とピン(図示せず)により連結する中継部2252と、中継部2252の外周に配置され、中継部2252に連結された大ギア2253と、大ギア2253に噛み合う小ギア2254と、小ギア2254が回転軸に連結された駆動源となるモータ2255と備えている。
【0028】
嵌合部2251は、上下ハンドルE31に嵌合する第1嵌合部2251aと、左右ハンドルE32に嵌合する第2嵌合部2251bとを備えている。
中継部2252は、第1嵌合部2251aに連結する第1中継部2252aと、第2嵌合部2251bに連結する第2中継部2252bとを備えている。
大ギア2253は、第1中継部2252aに連結された第1大ギア2253aと、第2中継部2252bに連結された第2大ギア2253bとを備えている。
小ギア2254は、第1大ギア2253aに噛み合う第1小ギア2254aと、第2大ギア2253bに噛み合う第2小ギア2254bとを備えている。
モータ2255は、第1小ギア2254aを駆動する第1モータ2255aと、第2小ギア2254bを駆動する第2モータ2255bとを備えている。
【0029】
ハンドル検出部226(スレーブ検出手段)は、第1モータ2255aの回転軸に連結された第1ロータリエンコーダ2261と、第2モータ2255bの回転軸に連結された第2ロータリエンコーダ2262とを備えている。
【0030】
図2に示すように、懸架部23は、軟性内視鏡Eの被術者の体内に挿入される長尺の挿入部E1を支持するものである。懸架部23は、基台部21の一方の側部に設けられた略L字状の3本の支柱部231と、支柱部231のそれぞれの上部に架設された一対のレール部232と、軟性内視鏡Eの挿入部E1を保持し、レール部232に案内されるスライド部233とを備えている。
図7(A)および同図(B)に示すように、一対のレール部232は、上下2列に並べられている。レール部232は、天面および底面に長さ方向に沿った溝232aが形成されている。
スライド部233は、レール部232の一対の溝232aに嵌合する一対の凸部が形成され、溝232aに沿って移動する。スライド部233は、レール部232の長さ方向に沿って、上段のレール部232と下段のレール部232の交互に並べられている。
【0031】
スライド部233は、レール部232を移動する足部2331と、一端部に形成された足部2331から、レール部232の長さ方向と直交する方向に延びる板状の腕部2332と、腕部2332の他端部に形成された把持部2333とを備えている。
図8に示すように、把持部2333は、四角形の枠体に形成され、挿入部E1を内部に貫通させることで保持する。把持部2333は、四辺に対応する棒状部材2333a~2333dと、棒状部材2333aに回転自在に取り付けられたリング部材2333eと、棒状部材2333a~2333dを各角部で支持する支持部材2333f~2333hと備えている。
【0032】
支持部材2333fは、開口を上方に向けたコ字状に形成されている。支持部材2333fは、一対の突出部の間に棒状部材2333aが跨って配置されている。
支持部材2333fの一対の突出部の先端部には、棒状部材2333b,2333cの一端部が固定されている。棒状部材2333bの他端部には、棒状部材2333bを中心に回転するL字状の支持部材2333gが設けられている。また、棒状部材2333cの他端には、水平方向に向いて切り欠き部が形成された支持部材2333hが設けられている。
支持部材2333gが棒状部材2333bを中心に回転して、棒状部材2333dが支持部材2333hの切り欠き部から出入りすることで、ゲート部2330が形成されている。
【0033】
次に、マスター装置3について、
図9から
図11に基づいて説明する。
図9に示すように、マスター装置3は、マスター装置3全体を支持する基台部31と、進退方向F2に移動する可動部32とを備えている。
【0034】
基台部31(支持手段)は、平面視矩形状に形成されたフレーム部311と、フレーム部311の長手方向(進退方向F2)に沿って配置されたレール部312と、レール部312により案内される可動部32を進退方向F2に移動させる進退方向駆動部313と、進退方向駆動部313の動作状態を検知するリニアエンコーダ314(
図10参照)とを備えている。
【0035】
フレーム部311は、平行な2本の棒状部材311aの両端を連結部材311bにより固定することで平面視矩形状に形成されている。
レール部312(マスターレール部)は、棒状部材311aの長さ方向に沿って形成された板状部材により形成されている。レール部312は、可動部32が移動するための案内溝として直線状溝が両側面に設けられている。
図10に示すように、進退方向駆動部313(マスター駆動手段)は、可動部32に連結された筒状のコイル部313aと、フレーム部311の長さ方向に沿って配置され、コイル部313aの空洞部分を貫通するシャフト部313bとを備えたコアレスリニア型モータ(リニアスライダ)である。
【0036】
リニアエンコーダ314(マスター検出手段)は、磁気を検出する走査ヘッド314aと、フレーム部311の長さ方向(
図9参照)に沿って配置され、走査ヘッド314aが面上を移動するスケール314bとを備えている。リニアエンコーダ314は、走査ヘッド314aがスケール314b上の磁気の変化を読み取ることで、この変化を、位置情報(マスター位置)として、進退方向位置信号(マスター状態信号)により出力する。
【0037】
可動部32は、レール部312をスライドする台座部321(支持手段)と、台座部321上に設けられた支持部材と軸受により支持され、軟性内視鏡E(
図2参照)を進退方向へ指示したり、軸回転を指示したりするための指示部322(回旋ハンドル)と、操作者の操作力に反力を駆動する軸回転駆動部323と、指示部322の軸回転の動作状態を検出するロータリエンコーダ324(
図11(A)参照)と、軟性内視鏡Eの上下ハンドルE31(
図6(A)参照)の駆動および左右ハンドルE32の駆動を指示するためのハンドル指示部325とを備えている。
【0038】
台座部321は、レール部312および進退方向駆動部313のコイル部313aに取り付けられた移動ステージである。
指示部322(第1操作手段)は、操作者が把持して、可動部32を、進退方向へ移動させたり、軸回転させたりする把手である。
図11(A)および同図(B)に示すように、軸回転駆動部323(マスター駆動手段)は、指示部322の軸線に沿って延びるシャフト3231と、シャフト3231により回転する大ギア3232と、大ギア3232に噛み合う小ギア3233と、小ギア3233が回転軸に連結されたモータ3234とを備えている。
【0039】
ロータリエンコーダ324(マスター検出手段)は、指示部322による可動部32の軸回転を検出し、マスター装置3の軸回転の位置情報(マスター位置)を軸回転の位置信号(マスター状態信号)により軸回転の動作状態として出力する。
【0040】
ハンドル指示部325は、操作者が前後左右に移動させて、挿入部E1(
図2参照)の先端部の湾曲方向を指示する操作棒3251(第2操作手段)と、操作棒3251の前後方向への傾斜に対する操作力に反力を駆動する第1操作棒駆動部3252と、操作棒3251の前後方向への傾斜に対する動作状態を位置情報として検出する第1ロータリエンコーダ3253と、操作棒3251の左右方向への傾斜に対する操作力に反力を駆動する第2操作棒駆動部3254と、操作棒3251の左右方向への傾斜に対する動作状態を位置情報として検出する第2ロータリエンコーダ3255とを備えている。
【0041】
第1操作棒駆動部3252(マスター駆動手段)は、前後方向への傾斜角度に応じて回転する第1軸部3252aと、第1軸部3252aからの回転を伝達する第1ギア群3252bと、第1ギア群3252bに連結された第1モータ3252cとを備えている。
第1ロータリエンコーダ3253(マスター検出手段)は、第1モータ3252cの回転軸に連結されている。
第2操作棒駆動部3254(マスター駆動手段)は、前後方向への傾斜角度に応じて回転する第2軸部3254aと、第2軸部3254aからの回転を伝達する第2ギア群3254bと、第2ギア群3254bに連結された第2モータ3254cとを備えている。
第2ロータリエンコーダ3255(マスター検出手段)は、第2モータ3254cの回転軸に連結されている。
【0042】
第1ロータリエンコーダ3253および第2ロータリエンコーダ3255は、操作棒3251による軸回転駆動部323による上下ハンドルE31および左右ハンドルE32(
図6(A)参照)の回転を検出し、マスター装置3の上下ハンドルE31および左右ハンドルE32の位置情報(マスター位置)をハンドルの回転の位置信号(マスター状態信号)によりハンドルの回転の動作状態として出力する。
【0043】
また、可動部32は、進退方向動作用スイッチ326と、アングルロック用スイッチ327と、精密動作用スイッチ328とを備えている。
進退方向動作用スイッチ326は、
図9に示すマスター装置3の指示部322への進退方向の操作をスレーブ装置2と連動させたり、非連動としたりすることを指示するスイッチである。
アングルロック用スイッチ327は、挿入部E1の先端部の動作にブレーキを掛けたブレーキ状態としたり、操作棒3251の操作に従って先端部が湾曲するフリー状態としたりすることが選択できるスイッチである。
精密動作用スイッチ328は、マスター装置3の指示部322への操作に対するスレーブ装置2への動作比率を、通常モードと精密モードとの2段階から選択するスイッチである。
【0044】
次に、制御装置4について
図12に基づいて説明する。
制御装置4は、内視鏡制御プログラムが動作するコンピュータにより実現されている。制御装置4は、
図12に示すように、進退方向制御部41と、軸回転制御部42と、第1ハンドル制御部43と、第2ハンドル制御部44と、表示制御部45と、入力制御部46と、記憶部47と、出力部48とを備えている。
【0045】
進退方向制御部41は、
図2に示す軟性内視鏡E(
図2参照)の進退方向F1への移動、
図9に示す指示部322の進退方向F1への移動を制御するものである。進退方向制御部41は、
図9に示す進退方向動作用スイッチ326が連動状態を指定するときには、マスター装置3の操作棒3251の移動に応じて、
図2に示すスレーブ装置2の可動部22を進退方向に移動させ、進退方向動作用スイッチ326が非連動状態を指定するときには、操作棒3251を移動させても、可動部22を移動させない制御を行う。
進退方向制御部41は、精密動作用スイッチ328からの指示に基づいて、マスター装置3の指示部322の進退方向への移動に対するスレーブ装置2の可動部22の移動の比率を小さくする。
【0046】
図12に示す軸回転制御部42は、
図2に示す軟性内視鏡Eの軸回転、
図9に示す指示部322の軸回転を制御するものである。軸回転制御部42は、
図9に示す精密動作用スイッチ328からの指示に基づいて、マスター装置3の指示部322の軸回転に対する
図2に示すスレーブ装置2の可動部22の軸回転の比率を小さくする。
【0047】
図12に示す第1ハンドル制御部43は、軟性内視鏡E(
図2参照)の上下ハンドルE31(
図6(A)参照)への操作を制御するものである。第2ハンドル制御部44は、軟性内視鏡Eの左右ハンドルE32(
図6(A)参照)への操作を制御するものである。
第1ハンドル制御部43および第2ハンドル制御部44は、
図9に示すアングルロック用スイッチ327からの指示に基づいて、挿入部E1の先端部の湾曲を指示する上下ハンドルE31と左右ハンドルE32(
図6(A)参照)とを回転させるハンドル駆動部225(
図5参照)をブレーキ状態としたり、フリー状態としたりする。
【0048】
進退方向制御部41、軸回転制御部42、第1ハンドル制御部43および第2ハンドル制御部44からの駆動信号はモータドライバ装置5,6を介してスレーブ装置2,マスター装置3へ送られる。
表示制御部45は、進退方向制御部41、軸回転制御部42、第1ハンドル制御部43および第2ハンドル制御部44から情報を受けて、表示装置7へ表示する機能を備えている。入力制御部46は、入力装置8からの入力情報に基づいて制御装置4全体を制御する。
【0049】
記憶部47は、マスター装置3により操作されたときの進退方向および軸回転の位置と力、挿入部の上下方向および左右方向の屈曲の位置と力のそれぞれのデータが格納される。記憶部47は、高速でアクセスが可能で大容量なハードディスクやフラッシュメモリとすることができる。
出力部48は、記憶部47に格納されたデータを外部へLAN(Local Area Network)やUSB(Universal Serial Bus)を介して出力する。出力部48の出力形式は任意のものが採用できるが、例えば、CSV(Comma Separated Values)としたり、バイナリデータとしたりすることができる。
記憶部47により各データが保存でき、出力部48によりデータが取り出せるので、熟練の操作者の操作を、未熟な操作者が、後で学習して、習熟度を向上させることができる。
【0050】
モータドライバ装置5,6は、制御装置4からの駆動信号を受け、各モータを駆動する制御電流を発生する。また、モータドライバ装置5,6は、それぞれの動作状態の信号を受け、適正な制御を行う機能を有している。モータドライバ装置5,6は一般の市販品が使用でき、状況に応じて省略することも可能である。
【0051】
表示装置7は、制御装置4からの表示信号に基づいてディスプレイに表示するものである。表示装置7は、CRTやLCD、有機ELディスプレイとすることができる。入力装置8は、制御装置4がコンピュータであれば、キーボードとすることができる。また、入力装置8は、始動・停止・いくつかの制御キーを備えた操作盤とすることができる。
【0052】
以上のように構成された本発明の実施の形態1に係る内視鏡操作システムの動作および使用状態について、
図13から
図16に基づいて説明する。
図13から
図16は、それぞれ、軟性内視鏡Eを進退方向へ動作させたとき、軸回転させたとき、挿入部の先端を上下方向や左右方向に動作させたときのブロック線図を示すものである。
【0053】
操作者が、
図9に示すマスター装置3の指示部322を把持して、可動部32を進退方向へ移動させると、
図13に示すように、リニアエンコーダ214から進退方向の位置情報が制御装置4の進退方向制御部41へ出力される。
進退方向制御部41は、
図10に示すリニアエンコーダ214から進退方向の位置情報に応じて、
図2に示すスレーブ装置2の可動部22を進退方向駆動部213により同方向へ移動させる。
スレーブ装置2の可動部22が進退方向へ移動すると、または、進退方向に沿った外力がスレーブ装置2に加わると、その状態が、
図13に示すリニアエンコーダ214から進退方向の位置情報として、進退方向制御部41に出力される。
進退方向制御部41は、リニアエンコーダ214からの位置情報に応じて、
図9に示すマスター装置3の可動部32を進退方向駆動部313により同方向へ移動させる。
【0054】
操作者が、
図9に示すマスター装置3の指示部322を把持して、可動部32を軸回転させると、
図14に示すように、ロータリエンコーダ223から軸回転の位置情報が制御装置4の軸回転制御部42へ出力される。
軸回転制御部42は、ロータリエンコーダ223から軸回転の位置情報に応じて、
図2に示すスレーブ装置2の可動部22を軸回転駆動部222により同方向へ軸回転させる。
スレーブ装置2の可動部22が軸回転すると、または、軸回転に沿った外力がスレーブ装置2に加わると、その状態が、
図14に示すロータリエンコーダ223から軸回転の位置情報として、軸回転制御部42に出力される。
軸回転制御部42は、ロータリエンコーダ223からの位置情報に応じて、
図9に示すマスター装置3の可動部32を軸回転駆動部323により同方向へ軸回転させる。
【0055】
次に、操作者が、
図10に示すマスター装置3の操作棒3251を指により前後方向に移動させると、
図15に示すように、第1ロータリエンコーダ3253から操作棒3251の前後方向への傾斜に対する位置情報が制御装置4の第1ハンドル制御部43に出力される。
第1ハンドル制御部43は、第1ロータリエンコーダ3253からの位置情報に応じて、
図2に示すスレーブ装置2に搭載された軟性内視鏡Eの上下ハンドルE31(
図6(A)参照)を、ハンドル駆動部225(
図5参照)により同方向へ回転させる。
ハンドル駆動部225により上下ハンドルE31が回ると、または、挿入部E1の上下方向への湾曲に対する外力が挿入部E1に加わり、ハンドル駆動部225に伝達されると、その状態が、
図15に示す第1ロータリエンコーダ2261から回転の位置情報として、第1ハンドル制御部43に出力される。
第1ハンドル制御部43は、第1ロータリエンコーダ2261からの位置情報に応じて、
図9に示すマスター装置3の操作棒3251を第1操作棒駆動部3252(
図11(B)参照)により同方向へ回転させる。
【0056】
更に、操作者が、マスター装置3の操作棒3251を指により左右方向に移動させると、
図16に示すように、第2ロータリエンコーダ3255から操作棒3251の左右方向への傾斜に対する位置情報が制御装置4の第2ハンドル制御部44に出力される。
第2ハンドル制御部44は、第2ロータリエンコーダ3255からの位置情報に応じて、
図2に示すスレーブ装置2に搭載された軟性内視鏡Eの左右ハンドルE32(
図6(A)参照)を、ハンドル駆動部225(
図5参照)により同方向へ回転させる。
ハンドル駆動部225により左右ハンドルE32が回ると、または、挿入部E1の左右方向への湾曲に対する外力が挿入部E1に加わり、ハンドル駆動部225に伝達されると、その状態が、
図16に示す第2ロータリエンコーダ2262から回転の位置情報として、第2ハンドル制御部44に出力される。
第2ハンドル制御部44は、第2ロータリエンコーダ2262からの位置情報に応じて、マスター装置3の操作棒3251を第2操作棒駆動部3254により同方向へ回転させる。
【0057】
ここで、進退方向制御部41と、軸回転制御部42と、第1ハンドル制御部43、第2ハンドル制御部44にて行われるバイラテラル制御について、
図17(A)および同図(B)に基づいて説明する。
図12に示す進退方向制御部41と、軸回転制御部42との構成が同じであるため、
図17(A)に、第1制御部410として示している。また、第1ハンドル制御部43による軟性内視鏡Eにおける上下ハンドルE31の回転制御と、第2ハンドル制御部44による左右ハンドルE32の回転制御とは、構成が同じであるため、
図17(B)に、第2制御部420として示している。
【0058】
まず、
図17(A)に示す第1制御部410について説明する。
第1制御部410には、マスター装置3の進退方向または軸回転が制御される第1マスター制御部411が含まれている。また、第1制御部410には、スレーブ装置2の進退方向または軸回転が制御される第1スレーブ制御部412が含まれている。
この第1マスター制御部411および第1スレーブ制御部412は、
図18に示す局所制御部である共通ユニット部430Aにより構成される。従って、第1マスター制御部411としての共通ユニット部430Aにおける制御対象は指示部322(
図9参照)であり、第1スレーブ制御部412としての共通ユニット部430Aにおける制御対象は軟性内視鏡E(
図2参照)である。
【0059】
例えば、位置センサ(
図3および
図10に示すリニアエンコーダ214,314、
図4および
図11ロータリエンコーダ223,324)により制御対象(スレーブ装置2,マスター装置3)の動作の状態を取得する。
この取得された動作の状態は、基本的には駆動源(
図2および
図9に示す進退方向駆動部213,313(リニア型モータ)、
図2および
図9に示す軸回転駆動部222,323)からの力と、外力による力の和となる。
位置センサにより動作のデータには、その2つが混在しているため、動作のデータから駆動源からの力を差し引いた外力からの力を抽出するのが、「外乱オブザーバ」であり、更に、位置力・抵抗力・摩擦力まで考慮したのが「外力推定オブザーバ」である。
【0060】
上記のように、制御対象の動作を位置センサ(リニアエンコーダ214,314、ロータリエンコーダ223,324)により取得した位置情報xは、
図18に示す微分フィルタ431により微分されることで、以下の式により速度情報x’が算出される。この位置情報xと速度情報x’は、共通ユニット部430Aの出力となる。
【0061】
次に、制御対象に入力した力情報Foutであり、遅れ要素432を加味した力情報Foutと、実際の動き(速度情報x’)を理想モデル(ノミナルモデル)の動きとしたときに、理想モデルによる動きから逆算した推定入力を、遅れ要素を加味して演算するノミナルモデル用演算手段433の出力との差を減算器434により力情報Fdistを算出して、入力部に差し戻す。
そうすることで、制御対象でなく理想モデルの動きに強制的に合わせる(ロバスト制御)。ノミナルモデルでは抵抗や摩擦が考慮されていないため、制御対象への入力の力情報Foutは、加速度参照値x”refに質量mを乗算器435にて乗算した力情報Frefから力情報Fdistを減算器436により減算した力であり、この力情報Foutに基づいて制御対象が制御される。従って、制御対象は、抵抗(c)や摩擦(Ffric)のない動き、つまり加速度指令値に基づいて動くことになる。
【0062】
そこで、制御対象に入力する力情報Foutであり、遅れ要素437を加味した力情報Foutと、実際の動きを実モデルで逆算した推定入力を、遅れ要素を加味して演算する実モデル用演算手段438(摩擦モデルを加味した力情報Ffric、抵抗cを加味した力)の出力との差を減算器439により外力推定値Fextとして出力する(外力推定オブザーバ)。
【0063】
このように、共通ユニット部430Aでは、加速度参照値X”refを入力することにより動作した制御対象の位置情報xと、速度情報x’とを出力すると共に、外力推定値Fextとを出力する。
【0064】
共通ユニット部430Aである、
図17(A)に示す第1マスター制御部411から速度情報x
mが出力され、第1スレーブ制御部412から速度情報x
sが出力される。第1マスター制御部411からの位置情報x
mと速度情報x'
mとは、移動量を増幅するためのスケーラと称される乗算器4101a,4101bに入力され、乗算器4101a,4101bから減算器4102a,4102bに入力される。乗算器4101a,4101bにより乗算される定数は、精密動作用スイッチ328(
図11参照)により選択することができる。
【0065】
また、
図17(A)に示す第1マスター制御部411からの位置情報x
sと速度情報x'
sとは、減算器4102a,4102bに入力される。
減算器4102a,4102bにより、位置情報x
mと速度情報x'
mから位置情報x
sと速度情報x'
sが減算される。これにより、マスター装置3とスレーブ装置2の位置のずれ、速度のずれが算出される。
減算器4102a,4102bからの出力は、乗算器4103a,4103bにより比例定数が乗算されることでずれを早く修正するように動作させることができる。そして、乗算器4103a,4103bのそれぞれの出力は、加算器4104により加算されることで、位置と速度とに基づく加速度指令値が算出される。
【0066】
第1マスター制御部411からの外力推定値Fm‐extと、第1スレーブ制御部412からの外力推定値Fs‐extとが加算器4105により加算される。例えば、釣り合い状態では、いずれか一方の外力推定値の符号が負であるため、実質的には加算器4105により減算される。
外力推定値Fm‐extと外力推定値Fs‐extとの差分は、除算器4106により質量が除算されることで、加速度指令値となる加速度が算出される。
【0067】
そして、除算器4106からの出力は、減算器4107aにより加算器4104からの出力と加算されることで第1マスター制御部411への加速度指令値を算出する。
また、除算器4106からの出力は、加算器4104からの出力と加算器4107bにより加算されることで第1スレーブ制御部412への加速度指令値を算出する。
これにより、スレーブ装置2とマスター装置3とで、進退方向の位置または軸回転の位置にずれが生じている場合に、スレーブ装置2には早く修正するようにプラス方向に指示され、マスター装置3には加速を抑えるようにマイナス方向に指示される。
【0068】
本実施の形態1では、減算器4107aからの加速度指令値が第1マスター制御部411への加速度指令値x’’
m-ref、加算器4107bからの加速度指令値が第1スレーブ制御部412への加速度指令値x’’
s-refとしていない。
本実施の形態1では、減算器4107aからの加速度指令値に減算器4108aにより力情報F
m-pos(x)を減算して補正を掛けている。これは、コアレスリニア型モータにより形成された進退方向駆動部313(
図9参照)では、シャフト部313bに内蔵された磁石の不均一さから生じるコイル部313aとの位置関係のずれを解消させるためである。
【0069】
また、本実施の形態1では、加算器4107bからの加速度指令値に減算器4108aにより力情報F
s-pos(x)+F
grav(x)を減算して補正を掛けている。力情報F
s-pos(x)は、力情報F
m-pos(x)と同様に、進退方向駆動部213(
図3参照)での位置関係のずれを解消させるための補正値である。また、力情報F
grav(x)は、可動部22の重心が軸回転で重力の影響を排除するための補正値である。
【0070】
減算器4108aからの加速度指令値x’’
m-ref、減算器4107aからの加速度指令値x’’
m-refは、
図18に示す共通ユニット部430Aへの加速度参照値x’’
m-refとなる。この加速度参照値x’’
m-refから算出される力情報F
outに基づいて、スレーブ装置2であれば、進退方向駆動部213および軸回転駆動部222が駆動され、マスター装置3であれば、進退方向駆動部313および軸回転駆動部323が駆動される。
【0071】
次に、
図17(B)に示す第2制御部420について説明する。なお、
図17(B)に示す第2制御部420においては、
図17(A)に示す第1制御部410と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
【0072】
図17(B)に示す第2制御部420には、
図9に示すマスター装置3の進退方向F2または軸回転が制御される第2マスター制御部421が含まれている。また、第2制御部420には、スレーブ装置2の進退方向またはおよび軸回転が制御される第2スレーブ制御部422が含まれている。
この第2マスター制御部421および第2スレーブ制御部422は、
図17(A)に示す第1制御部410と同様に、
図18に示す共通ユニット部430Aにより構成される。
従って、第2マスター制御部421としての共通ユニット部430Aにおける制御対象は操作棒3251あり、第2スレーブ制御部422としての共通ユニット部430Aにおける制御対象は軟性内視鏡Eの上下ハンドルE31および左右ハンドルE32と、挿入部E1の先端部である。
【0073】
第2制御部420においては、第2マスター制御部421からの位置情報xmとx’mとに定数を乗算する乗算器4101a,4101bの定数が第1制御部410より大きく設定されている。また、外力推定値Fm‐extは乗算器4101cにより定数が乗算される。
【0074】
また、第2制御部420には、第2スレーブ制御部422からの外力推定値Fs‐extと、入力である外力推定値Fs‐extが所定値となるまで出力せずに、所定値以上となると外力推定値Fs‐extに比例する仮想静摩擦を出力とした力とを選択するスイッチ4201を備えている。このスイッチ4201は、アングルロック用スイッチ327と連動している。
【0075】
乗算器4101cにより定数と乗算される第2マスター制御部421からの外力推定値Fm‐extは、スイッチ4201からの出力と、スイッチ4202からの出力とが加算器4203により加算される。スイッチ4202は、アングルロック用スイッチ327により挿入部E1の先端部をブレーキ状態としたときには、外力が0となる出力を選択したり、挿入部E1の先端部をフリー状態としたときには、湾曲方向に基づいた所定の外力となる出力を選択したりするものである。
このように、実質的に加算器4203により外力推定値Fm‐extから外力推定値Fs‐extを減算しているため、その分の摩擦力を動摩擦として加えることで、ロック状態とフリー状態との間での違和感のない操作感を仮想的に実現することが可能である。
【0076】
減算器4107aからの加速度指令値x’’
m-refは、
図18に示す共通ユニット部430Aへの加速度参照値x’’
m-refとなる。
この加速度参照値x’’
m-refから算出される力情報F
outに基づいて、スレーブ装置2であれば、ハンドル駆動部225が駆動され、マスター装置3であれば、第1操作棒駆動部3252および第2操作棒駆動部3254が駆動される。
【0077】
このように、制御装置4は、マスター装置3における以下の(1)~(4)に示す動作状態を検出して出力するマスター状態信号と、スレーブ装置2における(5)~(7)に示す動作状態を検出して出力するスレーブ状態信号とに基づいた双方向力覚フィードバックにより、マスター装置3およびスレーブ装置2への駆動信号を生成する。
(1)
図10に示すリニアエンコーダ314が、軟性内視鏡E(
図2参照)の進退方向F1を指示する指示部322の動作状態
(2)
図11(A)に示すロータリエンコーダ324が、軟性内視鏡Eの軸回転を指示する指示部322の動作状態
(3)
図11(B)に示す第1ロータリエンコーダ3253が、挿入部E1の上下方向への湾曲を指定する操作棒3251の前後方向の動作状態
(4)
図11(B)に示す第2ロータリエンコーダ3255が、挿入部E1の左右方向への湾曲を指定する操作棒3251の左右方向の動作状態
(5)
図3(A)に示すリニアエンコーダ214が、軟性内視鏡Eの進退方向の移動の動作状態
(6)
図4に示すロータリエンコーダ223が、軟性内視鏡Eの軸回転の動作状態
(7)
図5に示すハンドル検出部226が、上下ハンドル、左右ハンドルの動作状態
【0078】
そうすることで、マスター装置3に加えられた操作力をスレーブ装置2へ出力し、スレーブ装置2に発生した力をマスター装置3に出力する。従って、軟性内視鏡Eの進退方向への移動、軸回転、挿入部E1の上下方向および左右方向への湾曲等の操作全部に双方向力覚フィードバックを掛けることができる。
【0079】
従って、内視鏡操作システム1は、内視鏡検査医の感覚に、臓器側からの力覚・反力(力・挿入速度・加速度)が正確にフィードバックされるだけでなく、臓器側にも挿入操作による力・挿入速度・加速度が等質・等量で同時に伝達されるので、この双方向力覚フィードバックにおけるバイラテラル制御より操作者はより実際の感触に近い操作感覚が得られるので、精度の高い操作性を図ることができる。よって、内視鏡操作システム1は、軟性内視鏡により腸管を操作する内臓感覚を、マスター装置を操作する操作者に感じさせることが可能である。また、用手的に内視鏡挿入操作をしている操作者の使用を満足させることができる。また、「内蔵感覚」を手掛かりとした経験を要する内視鏡挿入操作が遠隔操作で可能となる。
【0080】
大腸内視鏡挿入法では「軸保持短縮法」という方法が知られている。この「軸保持短縮法」は、
(1)軟性内視鏡が大腸内を進行する際に、腸管の長軸方向から進行が外れないように、腸管の長軸方向への進行・挿入を維持しながら(軸保持操作)、
(2)先端では襞をひとつひとつ畳み込みながら堅実に進み、
(3)直腸S状結腸移行部、S状結腸、S状結腸下行結腸移行部を含めた大腸の屈曲部では、回旋(主に右回旋)を併用しながら腸管短縮を行って、挿入していくものである。
【0081】
術者は、この(1)~(3)の3つの主要要素を習得するが、このうち(1)が一番の課題である。上級者は、(1)を経験上必須の基本と体得しているので、即ち(2)および(3)をする上でも軸を失わないようにするため、ほぼ直立不動の姿勢で挿入できるようになる。しかし、初級者や(1)が感覚的に理解できていない術者は、(2)と(3)を進行させることに集中するあまりに全身を使って行う。
つまり、無駄な動きが多くなり、そうこうするうちに軸保持を失い(または最初から軸を意識していない)、その結果(2)および(3)でも進むことができないことが多くなることで、軟性内視鏡を無理に押しながら挿入部を挿入してしまうため、腸間膜を過伸展させて苦痛の原因となる。
【0082】
マスター装置3は、進退方向駆動部313(
図10参照)がリニアスライダにより形成され、且つ指示部322(回旋ハンドル)も同じ進退方向に移動するように固定されている。また、スレーブ装置2も同様に、可動部22が進退方向に移動するように固定されている。そのため、この構成による操作では(1)の軸保持操作は進退方向に規制される。従って、術者は(1)を意識することなく、(2)と(3)のみに集中すれば、軟性内視鏡の挿入できることになる。(1)が不十分であると、(2)および(3)も難しくしてしまうという面もある。
つまり、この内視鏡操作システム1の装置構成が、無駄な動きを吸収するため、難題である軸保持操作が装置構成により実現できるため、習得すべき技量の中心は(2)と(3)となり、技量の均一化の早期実現が可能である。
その上で、内視鏡操作システム1では、力覚フィードバック機能を有しているため、(2)および(3)を行う場合でも、無理な動きを抑制することができる。
【0083】
本実施の形態1に係る内視鏡操作システム1(
図1参照)では、
図9に示すマスター装置3が、進退方向動作用スイッチ326を備えており、進退方向動作用スイッチ326が連動と非連動とを指定することにより、
図12に示す制御装置4の進退方向制御部41が、マスター装置3の指示部322(
図9参照)の移動に応じて、
図2に示すスレーブ装置2の可動部22を同方向に移動させたり、移動させなかったりする。
進退方向動作用スイッチ326が非連動を指示したときには、進退方向制御部41は、
図13に示すように、スレーブ状態信号を停止し、モータドライバ装置5から進退方向駆動部213への制御電流を停止する。そうすることで、スレーブ装置2はフリー状態となる。
【0084】
例えば、
図9に示す進退方向動作用スイッチ326を連動状態にして指示部322を前進させて、スレーブ装置2の可動部22を前進させた後に、進退方向動作用スイッチ326を非連動状態にして操作棒3251を後退させ、そして、進退方向動作用スイッチ326を連動状態にして操作棒3251を前進させることで、可動部22を引き続いて前進させることができる。
従って、指示部322の進退方向の移動に対して可動部22の移動を微小としたときに、指示部322を何回も往復させることで可動部22を操作者の希望の方向に移動させることができる。
【0085】
また、
図9に示すマスター装置3は、アングルロック用スイッチ327を備えており、アングルロック用スイッチ327からの指示に基づいて、挿入部E1の先端部の湾曲を指示する上下ハンドルE31(
図6(A)参照)と左右ハンドルE32とを回転させるハンドル駆動部225(
図5参照)をブレーキ状態としたり、フリー状態としたりする。そのため、挿入部E1の先端部の湾曲状態を維持させることができる。
従って、
図2に示す挿入部E1を被術者の体内に挿入した状態で挿入部E1の湾曲状態を固定すれば、操作者が誤って操作棒3251を動かして、挿入部E1の先端部の湾曲状態が変化してしまうことを抑止することができる。
【0086】
更に、
図9に示すマスター装置3は、精密動作用スイッチ328を備えており、精密動作用スイッチ328からの指示に基づいて、マスター装置3の指示部322の進退方向への移動と軸回転とに対するスレーブ装置2の可動部22の移動の比率を小さくする。そのため、挿入部E1を被術者の体内に挿入する際に、また挿入して挿入部E1を軸回転させる際に、精密動作用スイッチ328により精密モードを指定することで微小動作とすることができる。従って、操作者は、指示部322による進退方向への移動と軸回転との操作を慎重に行うことができる。
【0087】
図8に示すように、把持部2333が、棒状部材2333dが、棒状部材2333bを中心に回転することで、把持部2333の四角枠の一辺が開くので、簡単に挿入部E1を懸架部23から取り出したり、懸架部23に取り付けたりすることができる。
従って、操作開始する際のセットアップ時間を短縮することができ、緊急時にもスレーブ装置2から挿入部E1を取り外して、術者が軟性内視鏡Eを持って対応することができる。
【0088】
なお、本実施の形態に係るスレーブ装置2では、軟性内視鏡Eを保持させてマスター装置3により操作するアタッチメント式であったが、コンピュータ上でスレーブ装置を機能させることもできる。
つまり、スレーブ装置は、コンピュータを、軟性内視鏡、前記軟性内視鏡を保持する支持手段、スレーブ駆動信号により前記軟性内視鏡を駆動するスレーブ駆動手段、前記軟性内視鏡の動作状態を検出して、スレーブ状態信号として出力するスレーブ検出手段として機能させる、スレーブ装置のシミュレーションプログラムを動作させたものとすることができる。
スレーブ装置を、シミュレーションプログラムをコンピュータで動作させたものとすることで、内視鏡操作システムを訓練用のシミュレーション装置とすることができる。
【0089】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る内視鏡操作システムを図面に基づいて説明する。
本実施の形態2に係る内視鏡操作システムは、ロードセルにより力を測定した測定値に基づいて、外力推定値を算出するものである。
なお、
図19においては、
図18と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
【0090】
本実施の形態2に係る内視鏡操作システムでは、
図18に示す局所制御部である共通ユニット部430Aの代わりに、
図19に示す共通ユニット部430Bが採用されている。
従って、
図17(A)に示す第1制御部410および
図17(B)に示す第2制御部320は、第1マスター制御部411および第1スレーブ制御部412と、第2マスター制御部421および第2スレーブ制御部422とが、共通ユニット部430Bとなる。
【0091】
図18に示す共通ユニット部430Aでは、遅れ要素432を加味した力情報F
outとしていたが、
図19に示す共通ユニット部430Bでは、ロードセルにより測定された測定値であり、力の遅れ要素437を加味した測定値としている。
また、
図18に示す共通ユニット部430Aでは、実際の動きを実モデルで逆算した推定入力を、遅れ要素を加味して演算する実モデル用演算手段438としているが、
図19に示す共通ユニット部430Bでは、ロードセルの遠位側の質量Mpにより外力推定を行うロードセルモデル用演算手段438xとしている。
ロードセルモデル用演算手段438xは、ロードセルの遠位側の質量Mpによる慣性力を打ち消すためのものである。この場合、ロードセルの遠位側の質量Mpには、何も接触するものがないため、摩擦モデルの考慮は不要である。
【0092】
そして、
図18に示す共通ユニット部430Aでは、遅れ要素437を加味した力情報F
outと実モデル用演算手段438との出力を減算器439により減算しているが、
図19による示す共通ユニット部430Bでは、遅れ要素437を加味したロードセルによる測定値と、ロードセルモデル用演算手段438xからの出力とを加算する加算器439xとしている。
これは、ロードセルからの測定値が示す向きと、制御対象からの位置から演算された力の向きが、反対であるときには実質的に、加算器439xによる減算となるからである。
【0093】
ロードセルは、少なくとも進退方向に移動する、スレーブ装置2の可動部22(
図2参照)と、マスター装置3の可動部32(
図9参照)とのいずれかの箇所に設置するのが望ましい。
図18に示す共通ユニット部430Aでは、加速度から外力推定値を演算しているため、外力推定値に静止摩擦力を考慮させることができない。しかし、ロードセルであれば、動作していなくても力が測定できるため、外力推定値に静止摩擦力を加味させることができる。
特に、進退方向を移動する、スレーブ装置2の可動部22は、軟性内視鏡を保持しており、また、マスター装置3の可動部32も指示部322(回旋ハンドル)を備えているため、重量がある。
従って、ロードセルにより測定された力(測定値)や、ロードセルモデル用演算手段438xにより算出された力により、外力推定値を演算することで、更に実際の感触に近い操作感覚が得ることができる。
【0094】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る内視鏡操作システムを図面に基づいて説明する。
本実施の形態3に係る内視鏡操作システムにおける、
図20に示す共通ユニット部430Cは、実施の形態1に係る共通ユニット部430A(
図18参照)と、実施の形態2に係る共通ユニット部430B(
図19参照)との両方の機能を備えたものである。
なお、
図20においては、
図18および
図19と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
【0095】
図20に示す共通ユニット部430Cは、外力推定値A(第1外力推定値)の演算では、
図18に示す共通ユニット部430Aと同じように、遅れ要素437を加味した力情報Foutと実モデル用演算手段438との出力を減算器439により減算している。また、外力推定値B(第2外力推定値)では
図19に示す共通ユニット部430Bと同じように、遅れ要素437を加味したロードセルによる測定値と、ロードセルモデル用演算手段438xからの出力とを加算器439xにより加算している。
【0096】
この外力推定値Aを、(1-k)倍する乗算器441からの出力と、外力推定値Bとk倍する乗算器442からの出力とを加算器443により加算する。なお、kは0以上、1以下の数である。このようにして、外力推定値Aと外力推定値Bとを所定の割合で合算することができる。
【0097】
例えば、ロードセルからの信号には電気的なノイズが重畳しやすいが、加速度から外力推定値を演算する共通ユニット部430Aでは、その心配を排除することができる。
また、ロードセルを用いた共通ユニット部430Bでは、外力推定値に静止摩擦力を反映させることができる。
従って、共通ユニット部430Cは、
図18に示す共通ユニット部430Aと
図19に示す共通ユニット部430Bとのメリットを併せ持つことができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の内視鏡操作システムは、経口的消化管内視鏡だけでなく、下部消化管内視鏡へも適用が可能であり、内視鏡による検査、手術、操作の訓練に好適である。
【符号の説明】
【0099】
1 内視鏡操作システム
2 スレーブ装置
21 基台部
211 フレーム部
211a 棒状部材
211b 連結部材
212 レール部
213 進退方向駆動部
213a コイル部
213b シャフト部
214 リニアエンコーダ
214a 走査ヘッド
214b スケール
22 可動部
221 台座部
222 軸回転駆動部
2221 大ギア
2222 小ギア
2223 モータ
223 ロータリエンコーダ
224 保持部
2241 棚部
2242 筒部
225 ハンドル駆動部
2251 嵌合部
2251a 嵌合部
2251b 第2嵌合部
2252 中継部
2252a 第1中継部
2252b 第2中継部
2253 大ギア
2253a 第1大ギア
2253b 第2大ギア
2254 小ギア
2254a 第1小ギア
2254b 第2小ギア
2255 モータ
2255a 第1モータ
2255b 第2モータ
226 ハンドル検出部
2261 第1ロータリエンコーダ
2262 第2ロータリエンコーダ
23 懸架部
231 支柱部
232 レール部
232a 溝
233 スライド部
2331 足部
2332 腕部
2333 把持部
2333a,2333b,2333c,2333d 棒状部材
2333f,2333g,2333h 支持部材
2333e リング部材
2330 ゲート部
3 マスター装置
31 基台部
311 フレーム部
311a 棒状部材
311b 連結部材
312 レール部
313 進退方向駆動部
313a コイル部
313b シャフト部
314 リニアエンコーダ
314a 走査ヘッド
314b スケール
32 可動部
321 台座部
322 指示部
323 軸回転駆動部
3231 シャフト
3232 大ギア
3233 小ギア
3234 モータ
324 ロータリエンコーダ
325 ハンドル指示部
3251 操作棒
3252 第1操作棒駆動部
3252a 第1軸部
3252b 第1ギア群
3252c 第1モータ
3253 第1ロータリエンコーダ
3254 第2操作棒駆動部
3254a 第2軸部
3254b 第2ギア群
3254c 第2モータ
3255 第2ロータリエンコーダ
326 進退方向動作用スイッチ
327 アングルロック用スイッチ
328 精密動作用スイッチ
4 制御装置
41 進退方向制御部
42 軸回転制御部
43 第1ハンドル制御部
44 第2ハンドル制御部
45 表示制御部
46 入力制御部
47 記憶部
48 出力部
410 第1制御部
411 第1マスター制御部
412 第1スレーブ制御部
4101a,4101b,4101c 乗算器
4102a,4102b 減算器
4103a,4103b 乗算器
4104 加算器
4105 加算器
4106 除算器
4107a 減算器
4107b 加算器
4108a 減算器
420 第2制御部
4201,4202 スイッチ
4203 加算器
421 第2マスター制御部
422 第2スレーブ制御部
430A,430B,430C 共通ユニット部
431 微分フィルタ
432 遅れ要素
433 ノミナルモデル用演算手段
434 減算器
435 乗算器
436 減算器
437 遅れ要素
438 実モデル用演算手段
438x ロードセルモデル用演算手段
439 減算器
439x 加算器
441,442 乗算器
443 加算器
5,6 モータドライバ装置
7 表示装置
8 入力装置
E 軟性内視鏡
E1 挿入部
E2 操作部
E31 上下ハンドル
E32 左右ハンドル
F1,F2 進退方向