IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

<>
  • 特許-検出装置 図1
  • 特許-検出装置 図2
  • 特許-検出装置 図3
  • 特許-検出装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20231212BHJP
   G01N 29/24 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H01L21/78 C
G01N29/24
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020068076
(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公開番号】P2021166216
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】能丸 圭司
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-228639(JP,A)
【文献】特開2000-238491(JP,A)
【文献】特開2015-206739(JP,A)
【文献】特開2010-71888(JP,A)
【文献】特開2019-95419(JP,A)
【文献】特開2013-221793(JP,A)
【文献】特開2011-133338(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0316498(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105453243(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-1538908(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
G01N 29/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物を保持するX軸座標及びY軸座標で規定される保持面を備えた保持手段と、該保持手段に保持された被測定物の内部を検出する検出機構と、該保持手段と該検出機構とを相対的にX軸方向に移動するX軸移動手段と、該保持手段と該検出機構とを相対的にY軸方向に移動するY軸移動手段とを備える検出装置であって、
該検出機構は、
パルスレーザー光線を発振するパルス発振器と、該保持手段に保持された被測定物に対面するfθレンズと、からなり、該パルス発振器が発振したパルスレーザー光線を該保持手段に保持された被測定物の上面に該fθレンズを介して照射して熱励起によって球面状に伝播する超音波を生成する熱励起手段と、該熱励起手段によって生成された該超音波が被測定物の内部を伝播して下面で反射して上面に戻った超音波を開口合成法によって捕らえて画像を生成する画像生成手段と、を備え、
該画像生成手段は、連続波のレーザー光線を生成する連続波発振器と、該連続波発振器によって発振されたレーザー光線を第一の方向及び第二の方向に分岐するビームスプリッターと、該第一の方向に導かれたレーザー光線を被測定物の下面で反射し上面に戻った超音波の領域に該fθレンズを介して走査する走査手段と、該第二の方向に配設され分岐された連続波のレーザー光線を該ビームスプリッターに戻すリターンミラーと、該リターンミラーで反射され該ビームスプリッターに戻されたレーザー光線と、該保持手段に保持された被測定物の上面で振動の変調を開口合成法によって捕らえ該走査手段を介して該ビームスプリッターに戻されたレーザー光線との干渉光を受光するホトデテクターと、該ホトデテクターによって受光された干渉光を画像に変換する画像変換手段と、から構成される検出装置。
【請求項2】
該連続波発振器が発振するレーザー光線、及び該パルス発振器が発振するパルスレーザー光線は、いずれも被測定物に対して透過性が低い波長が選択される請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
該fθレンズと該走査手段との間にダイクロイックミラーが配設され、該パルス発振器から発振されたパルスレーザー光線は、該ダイクロイックミラーに導かれ反射して該fθレンズに到達し、該連続波発振器によって発振されたレーザー光線は、該走査手段を介して該ダイクロイックミラーに導かれ通過して該fθレンズに到達する請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項4】
該走査手段は、該レーザー光線をX軸方向に走査するX軸スキャナーと、該レーザー光線をY軸方向に走査して割り出し送りするY軸スキャナーと、から構成される請求項1から3のいずれかに記載の検出装置。
【請求項5】
該走査手段は、該レーザー光線をX軸方向に走査するX軸スキャナーで構成され、該Y軸移動手段によってY軸方向の割り出し送りがなされる請求項1から3のいずれかに記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持手段に保持された被測定物の内部を検出する検出機構を備える検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
また、MEMS、CCD、CMOS等の汚れを嫌うデバイスが表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割する場合、赤外線カメラによってウエーハの裏面から表面に形成された分割予定ラインを検出してダイシング加工、又はレーザー加工を施している(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平07-075955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、ウエーハの表面に形成されるデバイスの電気的特性を良好にするために、ウエーハの裏面に対し、金属膜を形成する場合がある。その場合、ウエーハの裏面からは赤外線が透過せず、赤外線カメラを用いてもウエーハの裏面から表面に形成された分割予定ラインを検出することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、ウエーハの裏面に金属膜が被覆されているような場合であっても、ウエーハの裏面から表面に形成された分割予定ラインを検出することができる検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被測定物を保持するX軸座標及びY軸座標で規定される保持面を備えた保持手段と、該保持手段に保持された被測定物の内部を検出する検出機構と、該保持手段と該検出機構とを相対的にX軸方向に移動するX軸移動手段と、該保持手段と該検出機構とを相対的にY軸方向に移動するY軸移動手段とを備える検出装置であって、該検出機構は、パルスレーザー光線を発振するパルス発振器と、該保持手段に保持された被測定物に対面するfθレンズと、からなり、該パルス発振器が発振したパルスレーザー光線を該保持手段に保持された被測定物の上面に該fθレンズを介して照射して熱励起によって球面状に伝播する超音波を生成する熱励起手段と、該熱励起手段によって生成された該超音波が被測定物の内部を伝播して下面で反射して上面に戻った超音波を開口合成法によって捕らえて画像を生成する画像生成手段と、を備え、該画像生成手段は、連続波のレーザー光線を生成する連続波発振器と、該連続波発振器によって発振されたレーザー光線を第一の方向及び第二の方向に分岐するビームスプリッターと、該第一の方向に導かれたレーザー光線を被測定物の下面で反射し上面に戻った超音波の領域に該fθレンズを介して走査する走査手段と、該第二の方向に配設され分岐された連続波のレーザー光線を該ビームスプリッターに戻すリターンミラーと、該リターンミラーで反射され該ビームスプリッターに戻されたレーザー光線と、該保持手段に保持された被測定物の上面で振動の変調を開口合成法によって捕らえ該走査手段を介して該ビームスプリッターに戻されたレーザー光線との干渉光を受光するホトデテクターと、該ホトデテクターによって受光された干渉光を画像に変換する画像変換手段と、から構成される検出装置が提供される。
【0008】
該連続波発振器が発振するレーザー光線、及び該パルス発振器が発振するパルスレーザー光線は、いずれも被測定物に対して透過性が低い波長が選択されることが好ましい。また、該fθレンズと該走査手段との間にダイクロイックミラーが配設され、該パルス発振器から発振されたパルスレーザー光線は、該ダイクロイックミラーに導かれ反射して該fθレンズに到達し、該連続波発振器によって発振されたレーザー光線は、該走査手段を介して該ダイクロイックミラーに導かれ通過して該fθレンズに到達するように構成されてもよい。
【0009】
該走査手段は、該レーザー光線をX軸方向に走査するX軸スキャナーと、該レーザー光線をY軸方向に走査して割り出し送りするY軸スキャナーと、から構成されてもよく、また、該走査手段は、該レーザー光線をX軸方向に走査するX軸スキャナーで構成され、該Y軸移動手段によってY軸方向の割り出し送りがなされるように構成されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の検出装置は、被測定物を保持するX軸座標及びY軸座標で規定される保持面を備えた保持手段と、該保持手段に保持された被測定物の内部を検出する検出機構と、該保持手段と該検出機構とを相対的にX軸方向に移動するX軸移動手段と、該保持手段と該検出機構とを相対的にY軸方向に移動するY軸移動手段とを備える検出装置であって、該検出機構は、パルスレーザー光線を発振するパルス発振器と、該保持手段に保持された被測定物に対面するfθレンズと、からなり、該パルス発振器が発振したパルスレーザー光線を該保持手段に保持された被測定物の上面に該fθレンズを介して照射して熱励起によって球面状に伝播する超音波を生成する熱励起手段と、該熱励起手段によって生成された該超音波が被測定物の内部を伝播して下面で反射して上面に戻った超音波を開口合成法によって捕らえて画像を生成する画像生成手段と、を備え、該画像生成手段は、連続波のレーザー光線を生成する連続波発振器と、該連続波発振器によって発振されたレーザー光線を第一の方向及び第二の方向に分岐するビームスプリッターと、該第一の方向に導かれたレーザー光線を被測定物の下面で反射し上面に戻った超音波の領域に該fθレンズを介して走査する走査手段と、該第二の方向に配設され分岐された連続波のレーザー光線を該ビームスプリッターに戻すリターンミラーと、該リターンミラーで反射され該ビームスプリッターに戻されたレーザー光線と、該保持手段に保持された被測定物の上面で振動の変調を開口合成法によって捕らえ該走査手段を介して該ビームスプリッターに戻されたレーザー光線との干渉光を受光するホトデテクターと、該ホトデテクターによって受光された干渉光を画像に変換する画像変換手段と、から構成されているので、例えば、被測定物の裏面側に金属膜が被覆されていて、赤外線が透過せず、赤外線カメラによって被測定物の裏面から表面に形成された分割予定ラインを検出することができない場合であっても、被測定物の裏面から表面に形成された分割予定ラインを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の検出装置を備えたレーザー加工装置の全体斜視図である。
図2図1に示す検出装置を構成する検出機構の光学系の概略を示すブロック図である。
図3】本実施形態の被測定物であるウエーハ、及びフレームによりウエーハが支持される態様を示す斜視図である。
図4】本実施形態の検出装置がウエーハの内部を検出する態様を示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に基づいて構成される検出装置に係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0013】
図1には、本発明の検出装置3を備えたレーザー加工装置1の全体斜視図が示されている。レーザー加工装置1は、検出装置3に加え、レーザー光線照射手段6と、表示手段9と、図示しない制御手段とを備えている。
【0014】
検出装置3は、被測定物を保持する保持手段20と、保持手段20に保持された被測定物の内部を検出する検出機構8と、保持手段20と検出機構8とを相対的に移動させる移動手段30と、を備える。
【0015】
保持手段20は、X軸方向において移動自在に基台2に搭載された矩形状のX軸方向可動板21と、Y軸方向において案内レール21a、21aに沿って移動自在にX軸方向可動板21に搭載された矩形状のY軸方向可動板22と、Y軸方向可動板22の上面に固定された円筒状の支柱23と、支柱23の上端に固定された矩形状のカバー板24とを含む。カバー板24にはカバー板24上に形成された長穴を通って上方に延びる円形状の部材であって図示しない回転駆動手段により回転可能に構成されたチャックテーブル25が配設されている。チャックテーブル25は、通気性を有する多孔質材料から形成されX軸方向及びY軸方向で規定される保持面26を備えている。保持面26は、支柱23を通る流路によって図示しない吸引手段に接続されている。なお、X軸方向は図1に矢印Xで示す方向であり、Y軸方向は矢印Yで示す方向であってX軸方向に直交する方向である。X軸方向及びY軸方向で規定される平面は実質上水平である。
【0016】
移動手段30は、保持手段20のチャックテーブル25と検出機構8とを相対的にX軸方向に移動させるX軸移動手段32と、保持手段20のチャックテーブル25と検出機構8とを相対的にY軸方向に移動するY軸移動手段34とを備えている。X軸移動手段32は、基台2上においてX軸方向に延びるボールねじ36と、ボールねじ36の片端部に連結されたモータ35とを有する。ボールねじ36のナット部(図示は省略)は、X軸方向可動板21の下面に固定されている。そしてX軸移動手段32は、ボールねじ36によりモータ35の回転運動を直線運動に変換してX軸方向可動板21に伝達し、基台2上の案内レール2a、2aに沿ってX軸方向可動板21をX軸方向に進退させる。Y軸移動手段34は、X軸方向可動板21上においてY軸方向に延びるボールねじ38と、ボールねじ38の片端部に連結されたモータ37とを有する。ボールねじ38のナット部は、Y軸方向可動板22に形成されている。そしてY軸移動手段34は、ボールねじ38によりモータ37の回転運動を直線運動に変換してY軸方向可動板22に伝達し、X軸方向可動板21上の案内レール21a、21aに沿ってY軸方向可動板22をY軸方向に進退させる。
【0017】
保持手段30の奥側には、基台2の上面から上方に延びる垂直壁部4bと、実質上水平に延びる水平壁部4aとを備える枠体4が立設されている。水平壁部4aには、レーザー光線照射手段6と、検出機構8の光学系が収容されている。枠体4の水平壁部4aの先端下面にはレーザー光線照射手段6を構成する集光器61が配設され、該集光器61とX軸方向に間隔をおいた位置に、検出機構8の集光器821が配設されている。
【0018】
図2に、検出機構8を構成する光学系の概略をブロック図で示す。図に示すように、検出機構8は、熱励起手段82と、画像生成手段84とを備えている。熱励起手段82は、保持手段20のチャックテーブル25に保持された被測定物に対面するfθレンズ821aを含む集光器821と、パルスレーザー光線LB1(2点鎖線で示す)を発振するパルス発振器822とを備えており、パルス発振器822が発振したパルスレーザー光線LB1を保持手段20に保持された被測定物の上面にfθレンズ821aを介して照射し、被測定物において熱励起によって球面状に伝播する超音波を生成する。
【0019】
画像生成手段84は、連続波のレーザー光線LB2(実線で示す)を生成する連続波発振器841と、連続波発振器841によって発振されたレーザー光線LB2を第一の方向D1、及び第二の方向D2に分岐するビームスプリッター842と、第一の方向D1に分岐されたレーザー光線LB2を被測定物の下面で反射し上面に戻った超音波の領域に上記したfθレンズ821aを介して走査する走査手段843と、第二の方向D2に配設され分岐された連続波のレーザー光線LB2をビームスプリッター842に戻すリターンミラー844と、リターンミラー844で反射されビームスプリッター842に戻されたレーザー光線LB2と、保持手段20に保持された被測定物の上面で振動の変調を開口合成法によって捕らえ走査手段843を介してビームスプリッター842に戻されたレーザー光線LB2との干渉光を受光するホトデテクター845と、ホトデテクター845によって受光された干渉光を画像に変換するアナライザーとして機能する画像変換手段846と、から構成される。画像生成手段84が作動することにより、熱励起手段82によって生成された超音波が被測定物の内部を伝播して下面で反射して上面に戻った超音波の振動を開口合成法によって捕らえて画像を生成することができる。画像変換手段846によって変換され生成された画像は、表示手段9に表示される。
【0020】
走査手段843は、R2で示す方向に回転する反射面で反射させてレーザー光線LB2を保持手段20のチャックテーブル25上におけるX軸方向に走査するX軸スキャナー843aと、R1で示す方向に回転する反射面で反射させてレーザー光線LB2をチェックテーブル25上におけるY軸方向に走査して割り出し送りするY軸スキャナー843bと、から構成される。X軸スキャナー843aとしては、例えば、ガルバノスキャナー、又はレゾナントスキャナーから選択されることが好ましい。また、Y軸スキャナー843bとしては、例えば、ガルバノスキャナーを使用することが好ましい。
【0021】
上記した走査手段843とfθレンズ821aとの間には、ダイクロイックミラー85が配設されている。パルス発振器822から発振されたパルスレーザー光線LB1は、このダイクロイックミラー85に導かれ反射して光路が変更されてfθレンズ821aに到達し、連続波発振器841によって発振されたレーザー光線LB2は、走査手段843を介してダイクロイックミラー85に導かれて通過してfθレンズ821aに到達し、それぞれがチャックテーブル25上の被測定物に照射される。
【0022】
パルス発振器846が発振するパルスレーザー光線LB1、及び連続波発振器841が発振するレーザー光線LB2は、いずれも被測定物に対して透過性が低い波長が選択される。
【0023】
本発明の検出装置3を備えたレーザー加工装置1は、概ね上記したとおりの構成を備えており、検出装置3の機能、作用について、以下に説明する。
【0024】
本実施形態における被測定物は、図3に示すウエーハ10である。ウエーハ10は、例えばシリコン、サファイア、ガリウムヒ素等を基板とする円盤状の半導体ウエーハであり、複数のデバイス12が分割予定ライン14によって区画され表面10aに形成されている。また、ウエーハ10の裏面10b側には、放熱効果や電極としての機能を有する金属膜11が形成されている。このようなウエーハ10を用意したならば、図に示すように、金属膜11が形成された裏面10bを上方に、表面10a側を下方に向けて、ウエーハ10を収容可能な開口を有する板状の環状のフレームFの開口に位置付け、粘着テープTを介してフレームFに支持させる。次いで、フレームFに保持させたウエーハ10を、図1図2に示すチャックテーブル25に載置して図示しない吸引手段を作動して吸引保持させる。次いで、X軸移動手段32、及びY軸移動手段34を作動して、ウエーハ10を検出機構8の集光器821のfθレンズ821aを介してパルスレーザー光線LB1、及びレーザー光線LB2が照射される所定の位置に位置付ける。なお、本実施形態では、連続波発振器841が発振するレーザー光線LB2の波長は635nmであり、パルス発振器846が発振するパルスレーザー光線LB1の波長は355nmであり、いずれもウエーハ10を構成する基板に対して透過性が低い波長が選択されている。即ち、金属膜11に対して透過性の低い波長が選択される。また、検出機構8によって一度にウエーハ10の内部が検出可能な領域は、ウエーハ10全体に対して一部の領域であり、複数回に分けてウエーハ10の内部を検出することになるため、まず、最初に内部を検出するウエーハ10の所定の領域をfθレンズ821aの直下に位置付ける。
【0025】
ウエーハ10の裏面10b側には、上記したように金属膜11が形成されており、裏面10b側からは、表面10aに形成されたデバイス12及び分割予定ライン14を、赤外線カメラ等を使用しても撮像することができない。そこで、本実施形態では、上記した熱励起手段82と、画像生成手段84とを作動して、ウエーハ10の内部、より具体的には、ウエーハ10の表面10a近傍の形態を検出する。以下にその手順について説明する。
【0026】
上記したように、ウエーハ10の所定の領域をfθレンズ821aの直下に位置付けたならば、図2に示すように、熱励起手段82のパルス発振器822を作動し、パルス発振器822が発振したパルスレーザー光線LB1をダイクロイックミラー85で反射させて、保持手段20のチャックテーブル25に保持されたウエーハ10の上面、すなわち、裏面10bの金属膜11上にfθレンズ821aを介して照射する。このときのパルスレーザー光線LB1の照射位置は、内部を検出する所定の領域の中心位置である。ウエーハ10の金属膜11上にパルスレーザー光線LB1が照射されると、図4に示すように、熱励起によってパルスレーザー光線LB1の照射位置から球面状に伝播する超音波Uが生成される。このような超音波Uは、ウエーハ10の内部を球面状に伝播して下面、すなわち、ウエーハ10の表面10a側に達して、上面(裏面10b)側に反射されて戻る。
【0027】
上記した熱励起手段82を作動させるのと同時に、図2に示すように、画像生成手段84を構成する連続波発振器841を作動し、連続波発振器841から発振された連続波のレーザー光線LB2は、ビームスプリッター842において、保持手段20側へと向かう方向(第一の方向D1)と、リターンミラー844へと向かう方向(第二の方向D2)とに分岐され、第一の方向D1に分岐されたレーザー光線LB2は、走査手段843に導かれる。走査手段843を構成するX軸スキャナー843a、Y軸スキャナー843bが作動することにより、導かれたレーザー光線LB2を、X軸方向、及びY軸方向で規定される上記した所定の領域全体を走査(スキャン)する。
【0028】
図4に示すように、ウエーハ10の内部を伝播して下面(表面10a)に達して反射した超音波U(点線でその一部を示している)は、各下面の位置の形状を反映して上面(裏面10b)に戻り、上面側を振動させる。この上面の所定の領域には、上記したレーザー光線LB2が照射され、レーザー光線LB2は、上面に戻った超音波Uの振動の影響を受けて反射されて走査手段843を介してビームスプリッター842に戻り、ビームスプリッター842で反射されホトデテクター845に照射される。これと共に、ホトデテクター845には、リターンミラー844に導かれ反射してビームスプリッター842を通過したレーザー光線LB2が照射される。すなわち、ホトデテクター845には、ウエーハ10の下面で反射した超音波Uの振動の影響を受けたレーザー光線LB2と、リターンミラー844で反射した該超音波Uの振動の影響を受けていないレーザー光線LB2とによる干渉光が導かれる。ホトデテクター845によって受光された該干渉光の信号は、画像変換手段846に送られ、保持手段20のチャックテーブル25に保持されたウエーハ10の上面における振動の変調を開口合成法によって捕らえて適宜の画像に変換される。該干渉光に基づき変換された画像信号は、レーザー光線LB2が照射されたX軸座標、Y軸座標の位置に対応して表示手段9に表示される(図2を参照)。図に示すように、表示手段9に所定の領域におけるウエーハ10の表面10a側の形状が表示されたならば、デバイス12を区画する分割予定ライン14の位置、及び方向がX軸座標、Y軸座標で特定され、図示しない制御手段に記憶される。
【0029】
上記したように、ウエーハ10の所定の領域における表面10aの分割予定ライン14の位置、方向等が検出されたならば、保持手段20の移動手段30を構成するX軸移動手段32、Y軸移動手段34を作動して、次に表面10aの形状を検出するウエーハ10の所定の領域をfθレンズ821aの直下に位置付ける。そして、上記したのと同様に、熱励起手段82と、画像生成手段84とを作動して、表面10aの形状を検出して、該制御手段に記憶する。このようにして、ウエーハ10において内部を検出することが必要な領域を、順次fθレンズ821aの直下に位置付けて、表面10aに形成された分割予定ライン14の位置、及び方向を検出する。
【0030】
上記したように、ウエーハ10の表面10aの分割予定ライン14を検出し、該制御手段に記憶したならば、チャックテーブル25をレーザー光線照射手段6の直下に位置付けて、分割予定ライン14に沿って分割起点を形成する所定のレーザー加工を実施する。なお、レーザー加工の具体的な形態は、本発明の要旨を構成するものではないため、本実施形態の説明においては、省略するものとする。
【0031】
上記した実施形態によれば、ウエーハ10の裏面側に金属膜11が被覆されていて、赤外線が透過せず、赤外線カメラによってウエーハ10の裏面10bから表面10aに形成された分割予定ライン14を検出することができない場合であっても、ウエーハ10の裏面10bから表面10aに形成された分割予定ラインを検出することができる。
【0032】
なお、上記した実施形態では、裏面10b側に金属膜11が形成されたウエーハ10の裏面10b側から表面10aの形状を検出する例を示したが、本発明はこれに限定されず、パルスレーザー光線LB1が照射されることにより、熱励起によって球面状に伝播する超音波が生成される被測定物であればいずれにも適用することが可能である。
【0033】
また、上記した実施形態の走査手段843は、レーザー光線LB2をX軸方向に走査するX軸スキャナー843aと、レーザー光線LB2をY軸方向に走査して割り出し送りするY軸スキャナー843bと、から構成された例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、Y軸スキャナー843bを廃し、チャックテーブル25をY軸方向に移動させるY軸移動手段34を作動させることにより、検出機構8とチャックテーブル25とを相対的にY軸方向に移動させて割り出し送りするものであってもよい。
【符号の説明】
【0034】
1:レーザー加工装置
2:基台
3:検出装置
4:枠体
6:レーザー光線照射手段
61:集光器
8:検出機構
82:熱励起手段
821:集光器
821a:fθレンズ
822:パルス発振器
84:画像生成手段
841:連続波発振器
842:ビームスプリッター
843:走査手段
843a:X軸スキャン手段
843b:Y軸スキャン手段
844:リターンミラー
845:ホトデテクター
846:画像生成手段
85:ダイクロイックミラー
9:表示手段
10:ウエーハ
12:デバイス
14:分割予定ライン
20:保持手段
21:X軸方向可動板
22:Y軸方向可動板
23:支柱
24:カバー板
25:チャックテーブル
26:保持面
30:移動手段
32:X軸移動手段
34:Y軸移動手段
LB1:パルスレーザー光線
LB2:レーザー光線
D1:第一の方向
D2:第二の方向
図1
図2
図3
図4