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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】定電圧回路
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
G05F1/56 320E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020123003
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019262
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮島 一之
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-037493(JP,A)
【文献】特開2011-096231(JP,A)
【文献】特開2010-170364(JP,A)
【文献】特開2008-052516(JP,A)
【文献】特開2002-169618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力電圧を分圧する分圧回路の第1の分圧端子の電圧と参照電圧との差に比例する電圧を出力する差動増幅回路と、前記差動増幅回路の出力部にゲートが接続され、電源端子と出力端子との間にソース及びドレインが接続されるPchMOS型の出力トランジスタと、を含み、前記出力端子より所定電圧を得る定電圧回路であって、
前記分圧回路に前記第1の分圧端子と分圧比が異なる第2の分圧端子を備え、
前記出力トランジスタとゲート及びソースが共通接続された第2のPchMOS型のトランジスタと、
前記第2の分圧端子にゲートが接続された第3のPchMOS型のトランジスタと、
ゲートに前記参照電圧が供給され、前記第3のPchMOS型のトランジスタとソース及びドレインが共通接続された第4のPchMOS型のトランジスタと、
前記第2のPchMOS型のトランジスタのドレインに第3の抵抗素子を介してソースが接続され、ゲート及びドレインが接地された第5のPchMOS型のトランジスタと、
前記第3及び第4のPchMOS型のトランジスタのソースに第4の抵抗素子を介してソースが接続され、ゲートが前記第2のPchMOS型のトランジスタのドレインに接続された第1のNchMOS型のトランジスタと、
前記第3及び第4のPchMOS型のトランジスタのドレインにドレインが接続され、ゲートが接地され、ソースが第5の抵抗素子を介して接地された第2のNchMOS型のトランジスタと、
前記第3及び第4のPchMOS型のトランジスタのドレインに入力端が接続され、出力端が前記差動増幅回路の出力部に接続された第1のカレントミラー回路と、
を有する過電流保護回路を備えた、定電圧回路。
【請求項2】
出力電圧を分圧する分圧回路の第1の分圧端子の電圧と参照電圧との差に比例する電圧を出力する差動増幅回路と、前記差動増幅回路の出力部にゲートが接続され、電源端子と出力端子との間にソース及びドレインが接続されるPchMOS型の出力トランジスタと、を含み、前記出力端子より所定電圧を得る定電圧回路であって、
前記分圧回路に前記第1の分圧端子と分圧比が異なる第2の分圧端子を備え、
前記出力トランジスタとゲート及びソースが共通接続された第2のPchMOS型のトランジスタと、
前記第2の分圧端子にゲートが接続された第3のPchMOS型のトランジスタと、
ゲートに前記参照電圧が供給され、前記第3のPchMOS型のトランジスタとソース及びドレインが共通接続された第4のPchMOS型のトランジスタと、
前記第2のPchMOS型のトランジスタのドレインに第3の抵抗素子を介してソースが接続され、ゲート及びドレインが接地された第5のPchMOS型のトランジスタと、
前記第3及び第4のPchMOS型のトランジスタのソースに第4の抵抗素子を介してソースが接続され、ゲートが前記第2のPchMOS型のトランジスタのドレインに接続された第1のNchMOS型のトランジスタと、
前記第1のNchMOS型のトランジスタのドレインにゲートが接続されるとともに第6の抵抗素子を介してソースが接続され、ドレインが前記電源端子に接続された第3のNchMOS型のトランジスタと、
前記第1のNchMOS型のトランジスタのドレインに入力端が接続され、出力端が前記差動増幅回路の出力部に接続された第2のカレントミラー回路と、
を有する過電流保護回路を備えた、定電圧回路。
【請求項3】
請求項1に記載の定電圧回路であって、
前記第5のPchMOS型のトランジスタは、閾値電圧が前記第4のPchMOS型のトランジスタと所定誤差範囲内で同じであり、
前記第2のNchMOS型のトランジスタは、閾値電圧とゲート幅及びゲート長とが前記第1のNchMOS型のトランジスタと所定誤差範囲内で同じであり、
前記第4の抵抗素子と前記第5の抵抗素子の抵抗値が所定誤差範囲内で同じである、定電圧回路。
【請求項4】
請求項2に記載の定電圧回路であって、
前記第5のPchMOS型のトランジスタは、閾値電圧が前記第4のPchMOS型のトランジスタと所定誤差範囲内で同じであり、
前記第3のNchMOS型のトランジスタは、閾値電圧とゲート幅及びゲート長とが前記第1のNchMOS型のトランジスタと所定誤差範囲内で同じであり、
前記第4の抵抗素子と前記第6の抵抗素子の抵抗値が所定誤差範囲内で同じである、定電圧回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定化された出力電圧を供給可能な定電圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電源回路等において安定化された出力電圧を供給するレギュレータ回路等の定電圧回路では、負荷短絡等に対する回路及び装置の保護のために、過電流保護回路が設けられる。近年、車載用途などにおける低消費電力化の要求に伴い、低飽和動作が可能な安定化電源回路(LDO(Low Drop-Out)レギュレータ回路)が用いられている。LDOレギュレータ回路等のリニアレギュレータの定電圧回路では、過電流保護とともに消費電力の抑制が求められる。
【0003】
定電圧回路の従来例として、例えば特許文献1に開示されている定電圧電源回路がある。この従来例の定電圧電源回路では、過負荷に対する過電流制限機能と出力短絡に対する短絡電流制限機能を独立させてそれぞれ任意に設定でき、起動時の条件にかかわらず、出力電圧を定電圧域まで起動でき、入力電圧条件など外部の条件が変わってもフの字形あるいはフォールドバック形の過電流制限値を最適に調整でき、垂下形の過電流制限回路を適正に動作させ所望の出力電流を得ることができ、短絡電流値も最適な値に設定することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-169618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の定電圧回路では、過電流保護回路に用いられるトランジスタの閾値電圧のばらつきなどによって、過電流制限値が変動することがあった。このため、過電流保護回路の動作電流と通常使用する出力電流の範囲との間にマージンを大きくとる必要があった。
【0006】
本発明は、過電流保護回路における回路素子の製造ばらつきの影響を受けることなく、安定した過電流保護特性を得ることが可能な定電圧回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、出力電圧を分圧する分圧回路の第1の分圧端子の電圧と参照電圧との差に比例する電圧を出力する差動増幅回路と、前記差動増幅回路の出力部にゲートが接続され、電源端子と出力端子との間にソース及びドレインが接続されるPchMOS型の出力トランジスタと、を含み、前記出力端子より所定電圧を得る定電圧回路であって、前記分圧回路に前記第1の分圧端子と分圧比が異なる第2の分圧端子を備え、前記出力トランジスタとゲート及びソースが共通接続された第2のPchMOS型のトランジスタと、前記第2の分圧端子にゲートが接続された第3のPchMOS型のトランジスタと、ゲートに前記参照電圧が供給され、前記第3のPchMOS型のトランジスタとソース及びドレインが共通接続された第4のPchMOS型のトランジスタと、前記第2のPchMOS型のトランジスタのドレインに第3の抵抗素子を介してソースが接続され、ゲート及びドレインが接地された第5のPchMOS型のトランジスタと、前記第3及び第4のPchMOS型のトランジスタのソースに第4の抵抗素子を介してソースが接続され、ゲートが前記第2のPchMOS型のトランジスタのドレインに接続された第1のNchMOS型のトランジスタと、前記第3及び第4のPchMOS型のトランジスタのドレインにドレインが接続され、ゲートが接地され、ソースが第5の抵抗素子を介して接地された第2のNchMOS型のトランジスタと、前記第3及び第4のPchMOS型のトランジスタのドレインに入力端が接続され、出力端が前記差動増幅回路の出力部に接続された第1のカレントミラー回路と、を有する過電流保護回路を備えた、定電圧回路を提供する。
【0008】
また、本発明は、出力電圧を分圧する分圧回路の第1の分圧端子の電圧と参照電圧との差に比例する電圧を出力する差動増幅回路と、前記差動増幅回路の出力部にゲートが接続され、電源端子と出力端子との間にソース及びドレインが接続されるPchMOS型の出力トランジスタと、を含み、前記出力端子より所定電圧を得る定電圧回路であって、前記分圧回路に前記第1の分圧端子と分圧比が異なる第2の分圧端子を備え、前記出力トランジスタとゲート及びソースが共通接続された第2のPchMOS型のトランジスタと、前記第2の分圧端子にゲートが接続された第3のPchMOS型のトランジスタと、ゲートに前記参照電圧が供給され、前記第3のPchMOS型のトランジスタとソース及びドレインが共通接続された第4のPchMOS型のトランジスタと、前記第2のPchMOS型のトランジスタのドレインに第3の抵抗素子を介してソースが接続され、ゲート及びドレインが接地された第5のPchMOS型のトランジスタと、前記第3及び第4のPchMOS型のトランジスタのソースに第4の抵抗素子を介してソースが接続され、ゲートが前記第2のPchMOS型のトランジスタのドレインに接続された第1のNchMOS型のトランジスタと、前記第1のNchMOS型のトランジスタのドレインにゲートが接続されるとともに第6の抵抗素子を介してソースが接続され、ドレインが前記電源端子に接続された第3のNchMOS型のトランジスタと、前記第1のNchMOS型のトランジスタのドレインに入力端が接続され、出力端が前記差動増幅回路の出力部に接続された第2のカレントミラー回路と、を有する過電流保護回路を備えた、定電圧回路を提供する。
【0009】
また、本発明は、上記の定電圧回路であって、前記第5のPchMOS型のトランジスタは、閾値電圧が前記第4のPchMOS型のトランジスタと所定誤差範囲内で同じであり、前記第2のNchMOS型のトランジスタは、閾値電圧とゲート幅及びゲート長とが前記第1のNchMOS型のトランジスタと所定誤差範囲内で同じであり、前記第4の抵抗素子と前記第5の抵抗素子の抵抗値が所定誤差範囲内で同じである、定電圧回路を提供する。
【0010】
また、本発明は、上記の定電圧回路であって、前記第5のPchMOS型のトランジスタは、閾値電圧が前記第4のPchMOS型のトランジスタと所定誤差範囲内で同じであり、前記第3のNchMOS型のトランジスタは、閾値電圧とゲート幅及びゲート長とが前記第1のNchMOS型のトランジスタと所定誤差範囲内で同じであり、前記第4の抵抗素子と前記第6の抵抗素子の抵抗値が所定誤差範囲内で同じである、定電圧回路を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、過電流保護回路における回路素子の製造ばらつきの影響を受けることなく、安定した過電流保護特性を得ることが可能な定電圧回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態の定電圧回路の構成を示す回路図である。
図2】第2の実施形態の定電圧回路の構成を示す回路図である。
図3】比較例の定電圧回路の構成を示す回路図である。
図4】過電流保護回路を備える定電圧回路における出力電圧及び出力電流の特性の一例を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る定電圧回路を具体的に開示した実施形態(以下、「本実施形態」という)について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
(本実施形態に至る背景)
LDOレギュレータ回路等の定電圧回路における過電流保護回路として、過電流保護動作時に出力電圧が下がるに従って出力電流の過電流制限値が下がるようないわゆるフの字特性の過電流保護回路を備える場合がある。フの字特性(Foldback protections)は、過電流保護動作として、最大リミット値で電流制限(Current limiting)を行って出力電圧が低下した後、電流フォールドバック(Current foldback)を行って出力電圧が下がるに従い出力電流の過電流制限値を下げ、定電圧回路の出力素子に過剰な電力損失が発生することを抑制するものである。
【0015】
以下に、比較例として、フの字特性を持つ過電流保護回路を備えた定電圧回路の構成及び動作の一例を示す。
【0016】
図3は、比較例の定電圧回路の構成を示す回路図である。図4は過電流保護回路を備える定電圧回路における出力電圧及び出力電流の特性の一例を示す特性図である。
【0017】
定電圧回路50は、エラーアンプとしての差動増幅回路AMP1と、過電流保護回路60と、出力トランジスタMP1とを有する。過電流保護回路60は、過電流を制限する過電流制限回路61と、フの字特性を実現するフの字特性回路62とを有して構成される。
【0018】
この定電圧回路50における過電流保護動作を説明する。ここでは、出力端子OUTから参照電圧Vrefに応じた出力電圧VOUTを出力している状態から、定電圧回路50の出力とグランド間に接続される負荷抵抗RLの抵抗値が次第に低下して、出力トランジスタMP1のドレイン電流、すなわち出力端子OUTのソース電流が次第に増加していく場合を想定する。
【0019】
出力端子OUTのソース電流が増加すると、これに応じて出力トランジスタMP1に並列接続されたトランジスタMP2とトランジスタMP10のドレイン電流が増加する。これに伴い、トランジスタMP2,MP10のドレイン電流がそれぞれ流れる抵抗R3,R7においてそれぞれ発生する電圧も上昇する。抵抗R7の両端電圧がトランジスタMN7の閾値電圧VthMN7に達すると、トランジスタMN7がオンしてトランジスタMN5のドレイン端子から電流をシンクする。
【0020】
トランジスタMN5のドレイン電流は、トランジスタMP8とMP9とにより構成されるカレントミラー回路で折り返され、出力電流を制御する出力トランジスタMP1のゲート端子電圧を引き上げる。この結果、出力トランジスタMP1のドレイン電流は減少し、定電圧回路50の出力電流は所定値以下に制御され、出力電圧VOUTは低下し始める。図4において、線Aで示される出力端子OUTのソース電流が、上記動作が開始する点である。このときの出力電流の過電流制限値(最大リミット値)をIOLIMAとする。
【0021】
次に、出力端子OUTの出力電圧VOUTが徐々に低下し、出力電圧VOUTの分圧抵抗R1,R2の接続点に接続されたトランジスタMP3のゲート電圧VMP3が下記の式(1)を下回ると、トランジスタMP3のドレイン電流が流れ始める。
【0022】
MP3=(IDMP1/M)・R3-|VGSMP3|-VGSMN1 …(1)
【0023】
ここで、VMP3:トランジスタMP3のゲート電圧、IDMP1:トランジスタMP1のドレイン電流、M:トランジスタMP1とMP2およびトランジスタMP1とMP10のゲート幅比、R3:抵抗R3の抵抗値、|VGSMP3|:トランジスタMP3のゲート-ソース間電位差、VGSMN1:トランジスタMN1(デプレッション型)のゲート-ソース間電位差である。トランジスタMP3のゲート-ソース間電位差VGSMP3はVGSMP3<0Vであるため、式(1)では絶対値で表している。本明細書では、「・」は乗算子、「/」は除算子を表している。
【0024】
トランジスタMP3のドレイン電流は、トランジスタMN3とMN4とにより構成されるカレントミラー回路で折り返され、トランジスタMN5のドレイン端子から電流をシンクする。これにより、出力トランジスタMP1のゲート端子電圧を引き上げ、出力トランジスタMP1のドレイン電流がさらに減少する。
【0025】
このとき、互いにソースが抵抗R4を介して接続されたトランジスタMP3及びMN1のゲートアスペクト比が十分に大きく、過電流保護回路が動作するドレイン電流でトランジスタMP3及びMN1のゲート-ソース間電位差がこれらの素子の閾値電圧Vthに近い値であるとする。この場合、トランジスタMP3のゲート電圧VMP3は下記の式(2)で表される。
【0026】
MP3=(IDMP1/M)・R3+VthMP3-VthMN1 …(2)
【0027】
ここで、VthMN1:デプレッション型トランジスタMN1の閾値電圧(VthMN1<0V)、VthMP3:トランジスタMP3の閾値電圧(VthMP3<0V)である。
【0028】
出力端子OUTの出力電圧VOUTの低下に伴い、トランジスタMN7は次第にオフするが、トランジスタMP3のゲート電圧はさらに低下するため、抵抗R3で発生する電圧がより低くともトランジスタMP3が導通するようになる。この結果、出力端子OUTのソース電流は減少し、出力電圧VOUTがグランドに短絡された状態(VOUT=0V)では、図4の線Bの点までソース電流は減少する。最終的に、出力端子OUTのソース電流は、線Aのピーク時から線Bまで約1/3~1/4の値まで低下する。上記のような動作により、過電流保護回路60はフの字特性を実現している。
【0029】
図4において、フの字特性の肩の部分に相当する、定電圧回路50の出力電流の過電流制限値IOLIMAは、下記の式(3)で表される。
【0030】
OLIMA=(M/R7)・VthMN7 …(3)
【0031】
ここで、R7:抵抗R7の抵抗値、VthMN7:トランジスタMN7の閾値電圧(VthMN7>0V)である。
【0032】
また、フの字特性の腕の部分に相当する、定電圧回路50の出力電圧制限値VOLIMは、下記の式(4)で表される。
【0033】
OLIM=(R1+R2)/R2・{(IOLIMA/M)・R3
+VthMP3-VthMN1} …(4)
【0034】
ここで、R1:抵抗R1の抵抗値、R2:抵抗R2の抵抗値である。
【0035】
比較例の定電圧回路50では、定電圧回路50の出力電流が0Aに近い場合、抵抗R3に生じる電圧もグランド電位付近まで低下する。このため、トランジスタMP3のゲート-ソース間の電位差VGSMP3は導通状態とは逆方向の電圧が印加され、トランジスタMP3がオフ状態になり、この部分で電流を消費しない。よって、無負荷状態で低消費電力の回路を構成しやすいという利点がある。また、回路を構成する素子が少なく、回路の簡素化、小型化が可能になる利点も挙げられる。
【0036】
これに対し、上記の特許文献1の従来例では、特許文献1の図3のように過電流保護回路に差動増幅回路が使用されている。このため、たとえ定電圧回路の出力端に負荷抵抗が接続されていなくとも、差動増幅回路の比較器A3と電源端子VDDとの間に接続された電流源の電流は流れ続けることになり、低消費電力化が難しいという課題がある。また、従来の定電圧回路では、過電流保護回路に用いられるトランジスタの閾値電圧のばらつき、抵抗素子の抵抗値のばらつき、温度変化等によって、過電流制限値が変動することがあった。このため、過電流保護回路の動作電流と通常使用する出力電流の範囲との間にマージンを大きくとる必要があった。
【0037】
一方、比較例の構成では、上記式(2)~(4)に示されるように、トランジスタMN1,MP3,及びMN7の閾値電圧Vthのばらつきにより、過電流制限値及び出力電圧制限値が変動する課題がある。このため、比較例においても、過電流保護回路の動作電流と通常使用する出力電流の範囲との間にマージンを大きくとる必要がある。
【0038】
本実施形態では、上記事情に鑑み、定電圧回路の過電流保護回路におけるトランジスタの閾値電圧等の回路素子の製造ばらつきによる影響を軽減し、過電流制限値及び出力電圧制限値の変動を抑制でき、安定した過電流保護特性を得ることが可能な定電圧回路の構成例を示す。
【0039】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の定電圧回路の構成を示す回路図である。本実施形態の定電圧回路10Aは、エラーアンプとしての差動増幅回路AMP1と、過電流保護回路20Aと、PchMOS型のトランジスタである出力トランジスタMP1とを有する。出力トランジスタMP1は、ソースが電源端子VDDに接続され、ドレインより所定の出力電圧VOUTを出力する。出力トランジスタMP1のドレインには、出力端子OUTが設けられるとともに、出力電圧VOUTを分圧する分圧回路としての分圧抵抗R1,R2が直列に接続されている。分圧抵抗R1,R2の間には、抵抗R6が挿入されている。すなわち、分圧回路は、分圧比が異なる第1の分圧端子と第2の分圧端子とを有し、分圧抵抗R2と抵抗R6との接続点が第1の分圧端子、分圧抵抗R1と抵抗R6との接続点が第2の分圧端子となっている。出力端子OUTには、負荷抵抗RL及びキャパシタCLが接続される。
【0040】
差動増幅回路AMP1は、出力電圧VOUTに比例する電圧と電圧源V1の参照電圧Vrefとを比較し、出力電圧VOUTの誤差成分を出力する。差動増幅回路AMP1は、ソースが共通接続された2つのNchMOS型のトランジスタMN5,MN6と、電流源I1と、カレントミラー回路を構成するPchMOS型のトランジスタMP8,MP9とを有する。トランジスタMN5,MN6は、ソースに電流源I1が接続され、ドレインにトランジスタMP8,MP9によるカレントミラー回路が接続される。差動増幅回路AMP1の一方の入力端であるトランジスタMN6のゲートには電圧源V1が接続されて参照電圧Vrefが供給される。差動増幅回路AMP1の他方の入力端であるトランジスタMN5のゲートは、第1の分圧端子としての分圧抵抗R2と抵抗R6との接続点に接続され、出力トランジスタMP1の出力電圧VOUTに比例する電圧が入力される。差動増幅回路AMP1は、出力部において、トランジスタMN5のドレイン電流をトランジスタMP8,MP9によるカレントミラー回路で折り返し、トランジスタMP9のドレインが出力トランジスタMP1のゲートと接続される。ここで、差動増幅回路AMP1のカレントミラー回路の入出力における、トランジスタMN5のドレインとトランジスタMP9のドレインとは、いずれも差動増幅回路AMP1の出力部に含まれる。そして、差動増幅回路AMP1の出力部が出力トランジスタMP1のゲートに接続される構成となっている。
【0041】
過電流保護回路20Aは、PchMOS型のトランジスタMP2,MP3,MP4,MP5と、NchMOS型のトランジスタMN1,MN2,MN3,MN4と、抵抗R3,R4,R5とを有する。トランジスタMP2(第2のPchMOS型のトランジスタ)は、出力トランジスタMP1と並列にゲートとソースが接続される。トランジスタMP2のドレインには、抵抗R3(第3の抵抗素子)を介して、トランジスタMP5(第5のPchMOS型のトランジスタ)のソースが接続され、トランジスタMP5のゲート及びドレインが接地される。
【0042】
また、デプレッション型のNchMOSFETであるトランジスタMN1(第1のNchMOS型のトランジスタ)は、ドレインがトランジスタMP1,MP2のソースと接続され、ゲートがトランジスタMP2のドレインと接続される。トランジスタMN1のソースは、抵抗R4(第4の抵抗素子)を介して、トランジスタMP3(第3のPchMOS型のトランジスタ)及びトランジスタMP4(第4のPchMOS型のトランジスタ)のソースが共に接続される。
【0043】
トランジスタMP3及びMP4のドレインには、トランジスタMN3,MN4による第1のカレントミラー回路が接続される。第1のカレントミラー回路は、トランジスタMN3,MN4のゲートが互いに接続され、トランジスタMN3のドレイン及びゲートが入力端となり、トランジスタMN3,MN4のソースが接地され、トランジスタMN4のドレインが出力端となってトランジスタMN5のドレインと接続される。トランジスタMN5のドレインは、トランジスタMP8,MP9によるカレントミラー回路を介して出力トランジスタMP1のゲートと接続される。
【0044】
トランジスタMP3のゲートは、第2の分圧端子としての分圧抵抗R1と抵抗R6との接続点に接続され、出力トランジスタMP1の出力電圧VOUTに比例する電圧が入力される。トランジスタMP4のゲートは参照電圧Vrefを供給する基準電圧源に接続される。さらに、トランジスタMP3及びMP4のドレインには、デプレッション型のNchMOSFETであるトランジスタMN2(第2のNchMOS型のトランジスタ)のドレインが接続される。トランジスタMN2のソースには抵抗R5(第5の抵抗素子)の一端が接続され、トランジスタMN2のゲート及び抵抗R5の他端が接地される。
【0045】
本実施形態では、図3に示した比較例の構成に対して、以下の点が異なっている。比較例にあるトランジスタMP10,抵抗R7,トランジスタMN7を廃するとともに、フの字特性を得る回路部分に、トランジスタMP3のドレイン及びソースにそれぞれドレイン及びソースが共通に接続されたトランジスタMP4を追加している。また、抵抗R3とグランドとの間にトランジスタMP3,MP4と同じ閾値電圧を持つトランジスタMP5を、ドレイン及びゲートがグランドにソースが抵抗R3に接続された形で挿入している。また、トランジスタMP3のゲートは、差動増幅回路AMP1の入力端であるトランジスタMN5のゲートと共通に接続せず、分圧抵抗R1とR2の間に抵抗R6を挿入し、トランジスタMP3のゲート電圧が少し高い電圧となるように電位差を持たせるようにしている。また、トランジスタMP3,MP4のドレインとグランドとの間に、トランジスタMN1と同じ閾値電圧を持つデプレッション型のトランジスタMN2を接続している。
【0046】
トランジスタMP5は、トランジスタMP4のゲート-ソース間電位差の影響を打ち消すために、閾値電圧がトランジスタMP4の閾値電圧と所定誤差範囲内で同じであるのが好ましい。トランジスタMN2は、トランジスタMN1のゲート-ソース間の電位差の影響を打ち消すために、閾値電圧がトランジスタMN1の閾値電圧と所定誤差範囲内で同じであるのが好ましい。抵抗R5は、トランジスタMN1のゲート-ソース間の電位差の影響を打ち消すために、抵抗値が抵抗R4の抵抗値と所定誤差範囲内で同じであるのが好ましい。
【0047】
次に、本実施形態の定電圧回路10Aにおける過電流保護回路20Aの動作について説明する。
【0048】
負荷抵抗RLの抵抗値が次第に減少して出力端子OUTからのソース電流が増加すると、抵抗R3及びトランジスタMP5に流れる電流が増加し、トランジスタMN1のゲート電圧が上昇する。これにより、トランジスタMP3,MP4のソース電圧が(参照電圧Vref)+(トランジスタMP4の閾値電圧)を超える付近から、トランジスタMP4のドレイン電流が流れ始める。トランジスタMP3のゲート電圧はトランジスタMP4のゲートにかかる参照電圧Vrefよりも高いため、トランジスタMP3はオフしている。トランジスタMP4のドレイン電流の流れ初めのときの、出力トランジスタMP1のドレイン電流は、下記の式(5)により求められる。
【0049】
IDMP1=(M/R3)・(Vref-VthMP4+VthMP5
+R4・IDMP3+VthMN1) …(5)
【0050】
ここで、IDMP1:トランジスタMP1のドレイン電流、M:トランジスタMP1とMP2のゲート幅比、R3:抵抗R3の抵抗値、Vref:電圧源V1の出力の参照電圧、VthMP4:トランジスタMP4の閾値電圧(VthMP4<0V)、VthMP5:トランジスタMP5の閾値電圧(VthMP5<0V)、R4:抵抗R4の抵抗値、IDMP3:トランジスタMP3のドレイン電流、VthMN1:トランジスタMN1の閾値電圧(VthMN1<0V)である。
【0051】
このとき、トランジスタMP4のゲート電圧は参照電圧Vrefで一定であり、トランジスタMP4の閾値電圧VthMP4は、同じ閾値を持つトランジスタMP5の閾値電圧VthMP5で打ち消される。
【0052】
また、デプレッション型のNchMOSFETであるトランジスタMN2は、ソースに抵抗R5を備えている。トランジスタMP4がドレイン電流を流し始め、出力端子OUTのソース電流を抑制し始めるためには、トランジスタMP4のドレイン電流がこのトランジスタMN2のドレイン電流を超える必要がある。
【0053】
トランジスタMN2のドレイン電流は、トランジスタMN2のゲートアスペクト比が十分に大きくMN2のゲート-ソース間電位差がMN2の閾値電圧VthMN2付近で動作しているとすると、下記の式(6)により表される。
【0054】
IDMN2=|VthMN2|/R5 …(6)
【0055】
ここで、IDMN2:トランジスタMN2のドレイン電流、|VthMN2|:トランジスタMN2の閾値電圧(VthMN2<0V)の絶対値である。
【0056】
抵抗R4と抵抗R5が同じ抵抗値の抵抗素子であり、また、トランジスタMN1及びMN2が同じ閾値電圧Vthを持ち、ゲート幅及びゲート長が同じ場合、抵抗R4にデプレッション型のトランジスタMN2の閾値電圧と等しい電圧が発生し、トランジスタMP4のソース電圧とトランジスタMN1のゲート電圧をほぼ等しくすることができる。このため、トランジスタMN1の閾値電圧VthMN1の影響を打ち消すことが可能となる。
【0057】
本実施形態の構成では、図4に示したフの字特性の肩の部分に相当する、定電圧回路10Aの出力電流の過電流制限値IOLIMAは、下記の式(7)で表される。
【0058】
OLIMA≒(M/R3)・Vref …(7)
【0059】
負荷抵抗RLの値がさらに減少すると、出力トランジスタMP1のドレイン電流が制限されているため、出力端子OUTの出力電圧VOUTは低下し始める。これにより、トランジスタMP3のゲート電圧が低下し、参照電圧Vref近くの電圧になると、トランジスタMP3のドレイン電流が増加、トランジスタMP4のドレイン電流は減少し、出力トランジスタMP1のドレイン電流はトランジスタMP3のゲート電圧により制御される。このため、トランジスタMP3のゲート電圧が低下するに従い、出力端子OUTのソース電流は減少していく。
【0060】
図4に示したフの字特性の腕の部分に相当する、定電圧回路10Aの出力電圧制限値VOLIMは、下記の式(8)で表される。
【0061】
OLIM≒(R1+R2+R6)/(R2+R6)・Vref …(8)
【0062】
ここで、R1:抵抗R1の抵抗値、R2:抵抗R2の抵抗値、R6:抵抗R6の抵抗値である。本実施形態では、出力電圧の分圧抵抗に抵抗R6を設けることにより、過電流制限値と出力電圧制限値の両方に参照電圧Vrefを利用し、フの字特性の腕の部分を実現している。
【0063】
以上の様な過程を経て、図1の本実施形態の定電圧回路10Aにおいても、図3の比較例の定電圧回路50と同様の過電流保護特性が得られる。すなわち、出力端子OUTの出力電圧VOUTの低下に伴い、トランジスタMP3のゲート電圧がさらに低下して出力端子OUTのソース電流は減少していく。
【0064】
本実施形態の過電流保護回路20Aでは、トランジスタMP4の閾値電圧はトランジスタMP5の閾値電圧により打ち消され、トランジスタMN1の閾値電圧は抵抗R4に発生する電圧により打ち消され、これらの素子の特性ばらつきの影響を軽減することができる。
【0065】
出力端子OUTの負荷抵抗RLが無い場合は、比較例の定電圧回路と同様に、トランジスタMP3,MP4がオフ状態になることにより、トランジスタMN1のドレイン電流も停止する。このため、過電流保護回路20Aにおいて電流を消費することなく、無負荷状態で低消費電力の回路を構成することができる。
【0066】
上述したように、第1の実施形態では、トランジスタMP3とドレイン及びソースが共通に接続されたトランジスタMP4を設けて、トランジスタMP4のゲートを電圧源V1に接続して参照電圧Vrefを供給する構成となっている。また、分圧抵抗R1,R2の間に抵抗R6を設け、トランジスタMP3のゲート電圧と、差動増幅回路AMP1の入力端であるトランジスタMN5のゲート電圧との間に、所定の電位差を持たせた構成となっている。また、トランジスタMP4のゲート-ソース間電位差の影響を打ち消すためのトランジスタMP5を設け、トランジスタMN1のゲート-ソース間電位差の影響を打ち消すためのトランジスタMN2及び抵抗R4,R5を設けた構成となっている。
【0067】
第1の実施形態によれば、過電流保護動作において、トランジスタMN1等の閾値電圧等の各素子のばらつきの影響を軽減し、過電流制限値及び出力電圧制限値の変動を抑制することができ、過電流保護回路の動作電流のマージンを小さくすることが可能となる。図1の回路構成は、さらなる低消費電力化を図るため低い電源電圧で設計された回路においても、安定した過電流保護特性を得ることができる。
【0068】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態の定電圧回路の構成を示す回路図である。第2の実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、過電流保護回路におけるカレントミラー回路の位置を変更した他の構成例を示すものである。ここでは、図1に示した第1の実施形態と同様の構成部分の説明を省略し、異なる構成の部分を中心に説明する。
【0069】
定電圧回路10Bの過電流保護回路20Bは、図1と同様、PchMOS型のトランジスタMP2,MP3,MP4,MP5と、NchMOS型のトランジスタMN1と、抵抗R3,R4とを有する。また、NchMOS型のトランジスタMN8と、PchMOS型のトランジスタMP6,MP7と、抵抗R8とを有する。
【0070】
第2の実施形態では、トランジスタMN1のドレインと定電圧回路10Bの電源端子VDDとの間に、トランジスタMP6,MP7による第2のカレントミラー回路の入力を設けている。これにより、トランジスタMN1のドレイン電流をカレントミラー回路で折り返して、出力トランジスタMP1のゲート電圧を引き上げ、出力端子OUTのソース電流の制御を行う。一方、トランジスタMP3,MP4のドレインは直接グランドに接続されて接地されている。また、トランジスタMN1のドレインには、デプレッション型NchMOSFETであるトランジスタMN8(第3のNchMOS型のトランジスタ)のゲートが接続され、さらに抵抗R8(第6の抵抗素子)を介してトランジスタMN8のソースが接続される。トランジスタMN8のドレインは電源端子VDDに接続される。
【0071】
第2のカレントミラー回路は、トランジスタMP6,MP7のゲートが互いに接続され、トランジスタMP6のドレイン及びゲートが入力端となり、トランジスタMP6,MP7のソースが電源端子VDDに接続され、トランジスタMP7のドレインが出力端となって差動増幅回路AMP1の出力部及び出力トランジスタMP1のゲートと接続される。その他の部分の構成は図1に示した第1の実施形態と同様である。
【0072】
トランジスタMN8は、トランジスタMN1のゲート-ソース間の電位差の影響を打ち消すために、閾値電圧がトランジスタMN1の閾値電圧と所定誤差範囲内で同じであるのが好ましい。抵抗R8は、トランジスタMN1のゲート-ソース間の電位差の影響を打ち消すために、抵抗値が抵抗R4の抵抗値と所定誤差範囲内で同じであるのが好ましい。
【0073】
図1の定電圧回路10Aにおいては、出力端子OUTがグランドに短絡された際に、トランジスタMP3のゲート電圧がグランド電位まで引き下げられる。一方、カレントミラー回路の入力素子となるトランジスタMN3は、動作電流を流すためにはトランジスタMN3のゲート-ドレイン間電圧がトランジスタMN3の閾値電圧以上になる必要がある。この結果、トランジスタMP3のドレイン-ソース間の電位差が減少して、トランジスタMP3の動作が飽和領域での動作から非飽和領域での動作になる。このため、トランジスタMP3,MP4のドレイン-ソース間電位差が十分に確保できず、トランジスタMP5に同じドレイン電流を流すために、よりゲート-ソース間の電位差が必要となり、トランジスタMP5のゲート-ソース間の電圧差が拡大する。結果として、負荷短絡時にグランド電位近くに出力電圧が低下した際に、トランジスタMP3,MP5の閾値電圧Vthの変動に対して、出力電流(出力端子OUTのソース電流)が変化し易くなる。
【0074】
図2の第2の実施形態では、トランジスタMN1のドレイン電流を電源端子VDD側に接続されたトランジスタMP6,MP7によるカレントミラー回路で折り返す回路構成とすることにより、上記問題点を回避している。トランジスタMN1の閾値電圧のばらつきを打ち消すため、デプレッション型のトランジスタMN8及びそのソースに接続される抵抗R8は、電源端子VDDとトランジスタMN1のドレイン端子との間に接続されている。これにより、トランジスタMP6及びMP7によるカレントミラー回路が動作する際には、第1の実施形態と同様に、抵抗R4においてトランジスタMN1の閾値電圧VthMN1を打ち消す電圧を発生させることができる。
【0075】
上述したように、第2の実施形態では、第1の実施形態の構成に対して、トランジスタMN1のドレインと電源端子VDDとの間にトランジスタMP6,MP7による第2のカレントミラー回路を設け、トランジスタMN1のドレイン電流により差動増幅回路AMP1の出力電圧を制御する構成となっている。また、トランジスタMN1のゲート-ソース間電位差の影響を打ち消すためのトランジスタMN8及び抵抗R8を設けた構成となっている。
【0076】
第2の実施形態においても、過電流保護動作におけるトランジスタMN1等の閾値電圧等の各素子のばらつきの影響を軽減し、過電流制限値及び出力電圧制限値の変動を抑制することができる。図2の回路構成は、負荷短絡時などの出力電圧がグランド電位に近い領域において過電流制限値の変動を抑制できるため、過電流保護特性の精度を向上でき、安定した過電流保護特性を得ることが可能である。
【0077】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、過電流保護回路における回路素子の製造ばらつきの影響を受けることなく、安定した過電流保護特性を得ることができる効果を有し、例えばLDO等の定電圧回路に有用である。
【符号の説明】
【0079】
10A,10B:定電圧回路
20A,20B:過電流保護回路
AMP1:差動増幅回路
MP1:出力トランジスタ
MP2,MP3,MP4,MP5,MP6,MP7,MP8,MP9:トランジスタ(PchMOS)
MN1,MN2,MN3,MN4,MN5,MN6:トランジスタ(NchMOS)
R1,R2,R3,R4,R5,R6,R8:抵抗
RL:負荷抵抗
CL:キャパシタ
I1:電流源
V1:電圧源(参照電圧Vref)
図1
図2
図3
図4