(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】インシトゥ電磁誘導監視のためのエッジ再構成における基板ドーピングの補正
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20231212BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20231212BHJP
G01B 7/06 20060101ALI20231212BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20231212BHJP
B24B 37/005 20120101ALI20231212BHJP
B24B 37/013 20120101ALI20231212BHJP
【FI】
H01L21/304 622S
H01L21/66 P
G01B7/06 M
B24B49/10
B24B37/005 A
B24B37/013
(21)【出願番号】P 2021515511
(86)(22)【出願日】2018-09-26
(86)【国際出願番号】 RU2018000625
(87)【国際公開番号】W WO2020067914
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】イワノフ, デニス アナトーリエビッチ
(72)【発明者】
【氏名】シュー, クン
(72)【発明者】
【氏名】ゲージ, デーヴィッド マクスウェル
(72)【発明者】
【氏名】リー, ハリー キュー.
(72)【発明者】
【氏名】イラヴァニ, ハサン ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ベネット, ドイル イー.
(72)【発明者】
【氏名】シュレスタ, キラン ロール
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-523756(JP,A)
【文献】国際公開第2018/102222(WO,A1)
【文献】特開2009-99842(JP,A)
【文献】米国特許第6594024(US,B1)
【文献】米国特許第7001243(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/66
G01B 7/06
B24B 49/10
B24B 37/005
B24B 37/013
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を研磨する方法であって、
変更された参照トレースを保存又は作成することであって、前記変更された参照トレースはニューラルネットワークによって処理された初期参照トレースの少なくとも一部を表し、前記初期参照トレースは予備参照トレースの未処理の信号値を変換することにより提供されたものであり、前記予備参照トレースは、インシトゥ電磁誘導監視システムによる裸のドープされた参照半導体ウエハの測定値
によって提供されたものである、変更された参照トレースを保存又は作成することと、
半導体ウエハ上に配置された導電層を有する基板を研磨パッドと接触させることと、
前記基板と前記研磨パッドとの間に相対運動を生成することと、
前記導電層の厚さに依存する測定トレースを作成するために、前記導電層が研磨されるときに、前記インシトゥ電磁誘導監視システムを用いて前記基板を監視することと、
変更された測定トレースを作成するために、前記測定トレースの少なくとも一部を前記ニューラルネットワークによって処理することであって、前記ニューラルネットワークが複数のトレーニングトレースによってトレーニングされたものであり、前記基板のエッジ近くの歪みを低減させる、前記ニューラルネットワークによって処理することと、
前記測定トレースへの前記半導体ウエハの導電率の寄与を少なくとも部分的に補正するために、前記変更された測定トレースから前記変更された参照トレースを差し引くことを含む、調整トレースを作成することと、
前記調整トレースに基づいて、研磨を停止すること又は研磨パラメータを変更することの少なくとも1つを行うことと
を含む方法。
【請求項2】
未処理の信号値を有する
前記予備参照トレースを作成するために、前記インシトゥ電磁誘導監視システムのセンサを用いて、前記裸のドープされた参照半導体ウエハをスキャンすることと、
前記初期参照トレースを作成するために、前記予備参照トレースの未処理の信号値を厚さ値に変換することと、前記変更された参照トレースを作成するために、前記初期参照トレースの少なくとも一部を前記ニューラルネットワークによって処理することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記変更された参照トレースを作成することは、前記裸のドープされた参照半導体ウエハ全体で、インシトゥ電磁誘導監視システムのセンサをスキャンすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記調整トレースA(x)が、以下のように計算され、
A(x)=(T(x)-S(x)-b)/k
上記式において、T(x)は前記変更された測定トレースであり、S(x)は前記変更された参照トレースであり、b及びkは定数である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
定数b=0である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ニューラルネットワークによって処理される前記測定トレースの少なくとも一部が、前記基板のエッジ領域に対応する部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記導電層の様々な厚さ及び様々なエッジプロファイルに対応する様々なトレーニングトレースを含む、ドープされていない半導体ウエハ上に導電層を有する1又は複数のトレーニング基板の測定値を表す複数のトレーニングトレースを用いて、前記ニューラルネットワークをトレーニングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
命令を含むコンピュータプログラムであって、
該命令は、1又は複数のコンピュータに、
変更された参照トレースを保存又は作成することであって、前記変更された参照トレースはニューラルネットワークによって処理された初期参照トレースの少なくとも一部を表し、前記初期参照トレースは予備参照トレースの未処理の信号値を変換することにより提供されたものであり、前記予備参照トレースは、インシトゥ電磁誘導監視システムによる裸のドープされた参照半導体ウエハの測定値
によって提供されたものである、変更された参照トレースを保存又は作成することと、
基板上の導電層が研磨されるときに、インシトゥ電磁誘導監視システムから導電層の厚さに依存する測定トレースを受け取ることと、
変更された測定トレースを作成するために、ニューラルネットワークを通して前記測定トレースの少なくとも一部を処理することであって、前記ニューラルネットワークが複数のトレーニングトレースによってトレーニングされたものであり、前記基板のエッジ近くの歪みを低減させる、ニューラルネットワークを通して処理することと、
前記測定トレースへの半導体ウエハの導電率の寄与を少なくとも部分的に補正するために、調整トレースを作成することであって、前記調整トレースを作成するための命令は、前記変更された測定トレースから前記変更された参照トレースを差し引く命令を含む、調整トレースを作成することと、
前記調整トレースに基づいて、研磨を停止すること又は研磨パラメータを変更することの少なくとも1つと
を実行させ
る、コンピュータプログラム。
【請求項9】
前記調整トレースA(x)は、以下のように計算され、
A(x)=(T(x)-S(x)-b)/k
上記式において、T(x)は前記変更された測定トレースであり、S(x)は前記変更された参照トレースであり、b及びkは定数である、請求項8に記載のコンピュータプログラム。
【請求項10】
定数b=0である、請求項9に記載のコンピュータプログラム。
【請求項11】
前記ニューラルネットワークによって処理される前記測定トレースの前記少なくとも一部が、前記基板のエッジ領域に対応する部分を含む、請求項8に記載のコンピュータプログラム。
【請求項12】
研磨システムであって、
研磨パッドを保持するための支持体と、
基板を前記研磨パッドと接触させて保持するためのキャリアヘッドと、
導電層の厚さに依存する測定トレースを作成するために、前記基板上の前記導電層が研磨されるときに前記基板を監視するためのインシトゥ電磁誘導監視システムと、
コントローラであって、
変更された参照トレースを保存又は作成することであって、前記変更された参照トレースはニューラルネットワークによって処理された初期参照トレースの少なくとも一部を表し、前記初期参照トレースは予備参照トレースの未処理の信号値を変換することにより提供されたものであり、前記予備参照トレースは、インシトゥ電磁誘導監視システムによる裸のドープされた参照半導体ウエハの測定値
によって提供されたものである、変更された参照トレースを保存又は作成することと、
前記インシトゥ電磁誘導監視システムから前記測定トレースを受け取ることと、
変更された測定トレースを作成するために、ニューラルネットワークを通して前記測定トレースの少なくとも一部を処理することであって、前記ニューラルネットワークが複数のトレーニングトレースによってトレーニングされたものであり、前記基板のエッジ近くの歪みを低減させる、ニューラルネットワークを通して処理することと、
前記測定トレースへの半導体ウエハの導電率の寄与を少なくとも部分的に補正するために、前記変更された測定トレースから前記変更された参照トレースを差し引くことを含め、調整トレースを作成することと、
前記調整トレースに基づいて、研磨を停止すること又は研磨パラメータを変更することの少なくとも1つを行うことと
を実施するように構成されたコントローラと
を備える、研磨システム。
【請求項13】
前記調整トレースA(x)は、前記コントローラによって、以下のように計算され、
A(x)=(T(x)-S(x)-b)/k
上記式において、T(x)は前記変更された測定トレースであり、S(x)は前記変更された参照トレースであり、b及びkは定数である、請求項12に記載の研磨システム。
【請求項14】
定数b=0である、請求項13に記載の研磨システム。
【請求項15】
前記ニューラルネットワークによって処理される前記測定トレースの前記少なくとも一部が、前記基板のエッジ領域に対応する部分を含む、請求項12に記載の研磨システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化学機械研磨、より具体的には、化学機械研磨中の導電層の監視に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路は、通常、シリコンウエハ上に導電層、半導体層、又は絶縁層を順次堆積させることによって基板上に形成される。様々な製造プロセスでは、基板上の層を平坦化させる必要がある。例えば、ある製造ステップは、非平面上に充填層を堆積させ、充填層を平坦化させることを含む。特定の用途では、パターニングされた層の上面が露出するまで、充填層が平坦化される。例えば、金属層をパターニングされた絶縁層上に堆積させて、絶縁層のトレンチ及び孔を埋めることができる。平坦化後、パターニングされた層のトレンチ及び孔内の金属の残り部分がビア、プラグ、及びラインを形成して、基板上の薄膜回路間に導電性経路を提供する。
【0003】
化学機械研磨(CMP)は、平坦化の1つの容認された方法である。この平坦化方法では、通常、基板をキャリアヘッドに取り付ける必要がある。基板の露出面は、通常、回転する研磨パッドに対して配置される。キャリアヘッドは、基板に制御可能な負荷を付与して、基板を研磨パッドに押し付ける。研磨粒子を含む研磨スラリは、通常、研磨パッドの表面に供給される。
【0004】
CMPの1つの問題は、研磨プロセスが完了したか否か、つまり、基板層が所望の平坦度又は厚さに平坦化されたか否か、又は所望の量の材料がいつ除去されたかを決定することである。スラリ組成、研磨パッドの状態、研磨パッドと基板との間の相対速度、基板層の初期の厚さ、及び基板への負荷の変動により、材料除去速度の変動が引き起こされ得る。これらの変動により、研磨終点に到達するのに必要な時間が変動する。したがって、研磨終点を単に研磨時間の関数として決定すると、ウエハ内又はウエハ間で不均一になる可能性がある。
【0005】
幾つかのシステムでは、例えば研磨パッドを通して、研磨中に基板がインシトゥで監視される。監視手法の1つは、導電層に渦電流を誘導し、導電層が除去されたときの渦電流の変化を検出することである。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、インシトゥ電磁誘導監視システムによって測定トレースへの半導体ウエハの導電率の寄与を補正する方法は、ニューラルネットワークによって変更された、インシトゥ電磁誘導監視システムによる裸のドープされた参照半導体ウエハの測定値を表す変更された参照トレースを保存又は作成することと、導電層の厚さに依存する測定トレースを作成するために、導電層が研磨されるときにインシトゥ電磁誘導監視システムを用いて基板を監視することと、変更された測定トレースを作成するために、測定トレースの少なくとも一部をニューラルネットワークに適用することと、変更された測定トレースから変更された参照トレースを差し引くことを含む、調整トレースを作成することとを含む。
【0007】
一態様では、基板を研磨する方法は、ニューラルネットワークによって変更された、インシトゥ電磁誘導監視システムによる裸のドープされた参照半導体ウエハの測定値を表す変更された参照トレースを保存又は作成することと、半導体ウエハ上に配置された導電層を有する基板を研磨パッドと接触させることと、基板と研磨パッドとの間に相対運動を生成することと、導電層の厚さに依存する測定トレースを作成するために導電層が研磨されるときに、インシトゥ電磁誘導監視システムを用いて基板を監視することと、変更された測定トレースを作成するために、測定トレースの少なくとも一部をニューラルネットワークに適用することと、測定トレースへの半導体ウエハの導電率の寄与を少なくとも部分的に補正するために、変更された測定トレースから変更された参照トレースを差し引くことを含む、調整トレースを作成することと、研磨を停止すること、又は調整トレースに基づいて研磨パラメータを変更することの少なくとも1つとを含む。
【0008】
これらの各態様は、コンピュータシステムに適切な動作(例えば、変更された参照トレースを保存又は作成すること、測定トレースを適用すること、及び調整トレースを作成すること)を実行させる命令を含む、コンピュータ可読媒体に有形に具現化されたコンピュータプログラム製品、又は適切な動作を実行するように構成されたコントローラを含む研磨システムとしても適用可能である。
【0009】
本方法、コンピュータプログラム製品、及び/又はシステムの実装態様は、以下の特徴のうちの1又は複数を含み得る。
【0010】
変更された参照トレースは、一連の同等の厚さ値を含み得、変更された測定トレースは、一連の実際の厚さ値を含み得る。変更された参照トレースを作成するために、初期参照トレースの少なくとも一部がニューラルネットワークに適用され得る。初期参照トレースを作成するために、予備参照トレースの未処理の信号値が厚さ値に変換され得る。複数の参照トレースから参照トレースを選択するユーザ入力が受信され得る。変更された参照トレースを作成することは、裸のドープされた参照半導体ウエハ全体で、インシトゥ電磁誘導監視システムのセンサをスキャンすることを含み得る。
【0011】
調整トレースの作成には、変更された参照トレースと変更された測定トレースとの間の差をスケーリングすることを含み得る。調整トレースA(x)は、A(x)=(T(x)-S(x)-b)/kで計算され得る。上記式において、T(x)は変更された測定トレースであり、S(x)は変更された参照トレースであり、b及びkは定数である。定数b及びkは、インシトゥ監視システムのセンサの構成によるものである。
【0012】
ニューラルネットワークに適用される測定トレースの少なくとも一部は、基板のエッジ領域に対応する部分を含み得る。ニューラルネットワークに適用される測定トレースの少なくとも一部は、基板の中央領域に対応する部分を含む必要はない。ニューラルネットワークは、導電層の様々な厚さ及び様々なエッジプロファイルに対応する様々なトレーニングトレースを含む、ドープされていない半導体ウエハ上に導電層を有する1又は複数のトレーニング基板の測定値を表す複数のトレーニングトレースを用いてトレーニングされ得る
【0013】
実装態様には、以下の利点の1又は複数が含まれ得る。基板の処理、例えば研磨の監視中に、測定された渦電流信号と、下にある半導体ウエハのドーピングによって引き起こされる導電層の厚さとの間の相関に起こり得る不正確さが、特に基板のエッジで軽減され得る。補正プロセスを使用して調整された渦電流信号又は調整された導電層の厚さは、より正確であり得る。システムは、基板のエッジに対応する信号の一部の歪みを補正できる。調整された渦電流信号及び/又は調整された導電層を使用して、研磨プロセス中の制御パラメータを決定する、及び/又は研磨プロセスの終点を決定することができる。制御パラメータの決定と終点の検出の信頼性が向上し得、ウエハの研磨不足が回避され得、ウエハ内の不均一性が低減し得る。
【0014】
1又は複数の実装態様の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載されている。他の態様、特徴、及び利点は、説明及び図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】電磁誘導監視システムを含む研磨ステーションの実施例を示す概略断面図である。
【
図2】例示の化学機械研磨ステーションを示す概略上面図である。
【
図3】A~Cは、研磨プロセスを示す基板の概略断面図である。
【
図4】電磁誘導センサによって生成される例示的な磁場を示す概略断面図である。
【
図5】研磨装置のセンサヘッドによってスキャンされている基板の概略上面図である。
【
図6】基板上の位置を監視している間に取得された測定信号の概略グラフである。
【
図8】エッジの再構成を適用しながら、基板のドーピングを補正するプロセスの概略図である。
【
図9】導電層の厚さの関数としての例示の渦電流位相信号を示すグラフである。
【
図10】研磨中の基板の調整トレースの作成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
研磨工程の監視技法の1つは、基板上の導電層に電流を誘導することである。誘導電流は、信号を生成するために、研磨中にインシトゥで誘導監視システムによって測定され得る。研磨中の最外層が導電層であると仮定すると、センサからの信号は導電層の厚さに依存するはずである。監視に基づいて、例えば、研磨後に層の位置が実質的に同じ厚さになるように、又は層の位置の研磨がほぼ同時に完了するように、研磨の制御パラメータが調整され得る。上記プロファイル制御は、リアルタイムプロファイル制御(RTPC)と称され得る。更に、研磨工程は、監視された厚さが所望の終点の厚さに達したという表示に基づいて終了し得る。
【0017】
インシトゥ監視システムは、基板のエッジに近い位置での測定のため、信号の歪みを受ける可能性がある。例えば、誘導監視システムは、磁場を生成し得る。基板のエッジ近くでは、磁場が基板の導電層と部分的にしか重ならないため、信号は人工的に低くなり得る。様々な技法を使用して、歪みを補正することができる。例えば、信号を人工ニューラルネットワークに供給して、変更された信号を生成することができる。
【0018】
実際には、渦電流センサによって生成された磁場は、導電層内で停止することなく、下にある基板にまで及ぶ可能性がある。特定の理論に限定されることなく、渦電流センサで使用される電磁周波数に対するこれらの透磁性材料の表皮深さは、導電層及び下にある半導体ウエハの厚さよりも大きくなり得る。その結果、渦電流センサによって生成される信号は、半導体ウエハの導電率に依存し得る。
【0019】
半導体ウエハがドープされていない場合、例えば、システムキャリブレーションに使用される「ブランク」ウエハや基本的な基板ウエハで通常使用される場合、ウエハの電気抵抗が十分に高く、ウエハの存在が渦電流信号に検出可能な影響を与えない可能性がある。しかしながら、実際のデバイス製造において、ウエハは通常、様々な目的のためにドープされる、例えば、高度にドープされる。この状況では、渦電流センサによって生成された信号は、半導体ウエハの導電率に応じて、ウエハから大きく寄与する場合がある。このため、渦電流センサによってキャプチャされた信号に基づく厚さの測定は、不正確になり得る。技法を使用して、例えば、半導体ウエハからの信号への寄与を考慮に入れることによって、この不正確さを補正することができる。しかしながら、上記補正は、エッジ再構成技法が利用される場合、基板のエッジに追加のエラーをもたらす可能性がある。
【0020】
ただし、基板からのトレースとドープされたウエハからのトレースは、エッジ再構成アルゴリズムを通して別々に実行され得る。ドープされたウエハの変更されたトレースが、基板の変更された測定トレースから差し引かれ得る。結果として生じる差は、研磨中の層の実際の厚さに近くなる。さらに、センサ構成を補正するために、差がスケーリングされ得る。
【0021】
図1及び
図2に、化学機械研磨システムの研磨ステーション20の実施例を示す。研磨ステーション20は、研磨パッド30が位置する回転可能な円盤状のプラテン24を含む。プラテン24は、軸25を中心に回転するように動作可能である。例えば、モータ22は、駆動シャフト28を回転させてプラテン24を回転させることができる。研磨パッド30は、外側研磨層34及びより柔らかいバッキング層32を有する2層研磨パッドであり得る。
【0022】
研磨ステーション20は、研磨スラリ等の研磨液38を研磨パッド30上に分配するための供給ポート又は組み合わされた供給リンスアーム39を含み得る。研磨ステーション20は、研磨パッドの表面粗さを維持するためのコンディショニングディスクを備えたパッドコンディショナー装置を含み得る。
【0023】
キャリアヘッド70は、研磨パッド30に対して基板10を保持するように動作可能である。キャリアヘッド70は、支持構造72、例えばカルーセル又はトラックから吊り下げられ、駆動シャフト74によってキャリアヘッド回転モータ76に接続され、これにより、キャリアヘッドは軸71を中心に回転し得る。オプションとして、キャリアヘッド70は、例えば、カルーセル上のスライダで、トラックに沿った移動によって、又はカルーセル自体の回転振動によって、横方向に振動し得る。
【0024】
キャリアヘッド70は、基板を保持するための保持リング84を含み得る。幾つかの実装態様では、保持リング84は高導電性部分を含み得る、例えば、キャリアリングは、研磨パッドと接触する薄い下部プラスチック部分86、及び厚い上部導電性部分88を含み得る。幾つかの実装態様では、高導電性部分は、金属、例えば、研磨される層と同じ金属、例えば、銅である。
【0025】
工程において、プラテンはその中心軸25を中心に回転され、キャリアヘッドはその中心軸71を中心に回転され、研磨パッド30の上面を横切って横方向に並進される。複数のキャリアヘッドが存在する場合、各キャリアヘッド70は、その研磨パラメータを独立して制御することができる、例えば、各キャリアヘッドは、それぞれの各基板に印加される圧力を独立して制御することができる。
【0026】
キャリアヘッド70は、基板10の裏側に接触する基板取り付け面と、基板10上の異なるゾーン、例えば、異なるラジアルゾーンに異なる圧力を印加するための複数の加圧チャンバ82とを有する可撓性膜80を含み得る。
【0027】
幾つかの実装態様では、研磨ステーション20は、研磨ステーションの温度又は研磨ステーションの構成要素/研磨ステーション内の構成要素の温度を監視するための温度センサ64を含む。研磨パッド30及び/又はパッド30上のスラリ38の温度を監視するように配置されたものとして
図1に示したが、温度センサ64は、基板10の温度を測定するためにキャリアヘッド70の内側に配置され得る。温度センサ64は、研磨パッド又は基板10の最外層(導電層であり得る)と直接接触して(すなわち、接触センサ)、研磨パッド又は基板の最外層の温度を正確に監視することができる。温度センサは、非接触センサ(例えば、赤外線センサ)であってよい。幾つかの実装態様では、例えば、研磨ステーションの異なる構成要素/研磨ステーション内の異なる構成要素の温度を測定するために、複数の温度センサが研磨ステーション22に含まれる。温度は、リアルタイムで、例えば、定期的に、及び/又は渦電流システムによって行われるリアルタイム測定に関連して測定され得る。監視された温度は、インシトゥで渦電流測定を調整する際に使用され得る。
【0028】
図3Aを参照すると、研磨システムを使用して、パターニングされた誘電体層の上にある及び/又ははめ込まれた導電性材料を含む基板10が研磨され得る。例えば、基板10は、誘電体層14、例えば、酸化ケイ素又は高誘電率誘電体のトレンチを覆い、埋める導電性材料16、例えば、金属、例えば、銅、アルミニウム、コバルト又はチタンの層を含み得る。オプションとして、バリア層18、例えば、タンタル又は窒化タンタルによりトレンチを裏打ちして、導電性材料16を誘電体層14から分離することが可能である。トレンチの導電性材料16は、完成した集積回路にビア、パッド、及び/又は相互接続を提供し得る。誘電体層14を、半導体ウエハ12上に直接堆積されたものとして示したが、1又は複数の他の層を、誘電体層14とウエハ12との間に挿入することができる。
【0029】
半導体ウエハ12は、他の半導体材料が可能であるが、シリコンウエハ、例えば、単結晶シリコンであり得る。さらに、半導体ウエハ12は、例えば、p型又はn型のドーピングでドープすることができる。ドーピングは、ウエハ全体で横方向に均一にすることができる、又は、例えば、半導体ウエハを使用する集積回路のトランジスタの製造に適切なように、ウエハを選択的にドープすることができる。
【0030】
最初、導電性材料16は、誘電体層14全体を覆っている。研磨が進むにつれて、導電性材料16の大部分が除去され、バリア層18が露出する(
図3Bを参照)。次に、研磨を続けると、誘電体層14のパターニングされた上面が露出する(
図3Cを参照)。次に、追加の研磨を使用して、導電性材料16を含むトレンチの深さが制御され得る。
【0031】
幾つかの実装態様では、研磨システムは追加の研磨ステーションを含む。例えば、研磨システムは、2つ又は3つの研磨ステーションを含み得る。例えば、研磨システムは、第1の電磁誘導監視システムを備えた第1の研磨ステーションと、第2の電磁誘導電流監視システムを備えた第2の研磨ステーションとを含み得る。
【0032】
例えば、工程において、基板上の導電層のバルク研磨が第1の研磨ステーションで実施され得、導電層の目標厚さが基板上に残ったときに研磨が停止され得る。次に、基板は第2の研磨ステーションに移送され、基板は、下にある層、例えば、パターニングされた誘電体層まで研磨され得る。
【0033】
図1に戻ると、研磨システムは、コントローラ90に連結され得る、又はコントローラ90を含むと見なされ得るインシトゥ電磁誘導監視システム100を含む。回転式カプラー29を使用して、回転可能なプラテン24の構成要素、例えば、インシトゥ監視システムのセンサを、プラテン外の構成要素、例えば、駆動及び感知回路又はコントローラ90に電気的に接続することができる。
【0034】
インシトゥ電磁誘導監視システム100は、導電性材料16、例えば金属の深さに依存する信号を生成するように構成される。電磁誘導監視システムは、誘電体層の上にある導電性材料のシートに渦電流を発生させるか、基板上の誘電体層のトレンチに形成された導電性ループに電流を生成することによって動作し得る。
【0035】
渦電流監視システムとして電磁誘導監視システム100を使用して、導電性シートに渦電流を誘導することにより、導電層の厚さを監視することができる。あるいは、誘導監視システムとして、電磁誘導監視システムは、例えば、米国特許公開番号第2015-0371907明細書に記載されているように、監視の目的で、基板10の誘電体層14に形成された導電性ループに電流を誘導的に生成することによって動作し得る。
【0036】
工程において、研磨システムは、インシトゥ監視システム100を使用して、導電層が目標厚さ、例えば、トレンチの金属の目標深さ又は誘電体層の上にある金属層の目標厚さに到達したときを決定し、そして研磨を停止し得る。代替的に又は追加的に、研磨システムは、インシトゥ監視システム100を使用して、基板10全体の導電性材料16の厚さの差を決定し、この情報を使用して、研磨の不均一性を低減するために、研磨中のキャリアヘッド80の1又は複数のチャンバ82の圧力を調整し得る。
【0037】
プラテン24に凹部26を形成することができ、オプションとして、凹部26を覆う研磨パッド30に薄いセクション36を形成することができる。凹部26及び薄いセクション36は、キャリアヘッドの並進位置に関係なく、プラテン回転の一部の間に基板10の下を通過するように配置され得る。研磨パッド30が2層パッドであると仮定すると、薄いセクション36は、バッキング層32の一部を除去することによって、またオプションとして、研磨層34の底部に凹部を形成することによって、構築され得る。薄いセクションは、例えば、インシトゥ光学監視システムがプラテン24に統合されている場合、オプションとして光透過性であり得る。
【0038】
インシトゥ監視システム100は、凹部26に設置されたセンサ102を含み得る。センサ102は、少なくとも部分的に凹部26に配置された磁気コア104、及びコア104の一部の周りに巻かれた少なくとも1つのコイル106を含み得る。駆動及び感知回路108は、コイル106に電気的に接続されている。駆動及び感知回路108は、コントローラ90に送信され得る信号を生成する。プラテン24の外側として示したが、駆動及び感知回路108の一部又はすべては、プラテン24に設置され得る。
【0039】
図1及び
図4を参照すると、駆動及び感知回路108は、AC電流をコイル106に印加し、コイル106は、コア104の2つの極152aと152bとの間に磁場150を生成する。
図4にC字形のコアを示したが、他のコア、例えば、E字形、I字形等が可能である。工程において、基板10が断続的にセンサ102の上に重なると、磁場150の一部が基板10の中に延びる。
【0040】
回路108は、コイル106と並列に接続されたコンデンサを含み得る。コイル106とコンデンサは共に、LC共振タンクを形成し得る。
【0041】
基板上の導電層の厚さの監視が所望される場合、磁場150が導電層に到達すると、磁場150は通過して(ターゲットがループである場合に)電流を生成し得る、又は(ターゲットがシートである場合)渦を発生させ得る。これにより、LC回路の実効インピーダンスが変更される。
【0042】
しかしながら、磁場150は半導体基板12にも浸透し得る。このため、LC回路の実効インピーダンス、したがって駆動及び感知回路108からの信号も、半導体基板12のドーピング及び結果として生じる導電率に依存する可能性がある。
【0043】
駆動及び感知回路108は、組み合わされた駆動/感知コイル106に連結されたマージナル発振器を含んでいてよく、出力信号は、例えば、米国特許第7,112,960号明細書に記載されるように、正弦波振動のピークツーピーク振幅を一定値に維持するために必要な電流であり得る。駆動及び感知回路108については、他の構成が可能である。例えば、別々の駆動コイルと感知コイルがコアに巻かれ得る。例えば、米国特許第6,975,107号明細書に記載されるように、駆動及び感知回路108は、固定周波数で電流を印加することができ、駆動及び感知回路108からの信号は、駆動コイルに対する感知コイルの電流の位相シフト、又は感知された電流の振幅であり得る。
【0044】
図2を参照すると、プラテン24が回転すると、センサ102は基板10の下を掃引する。回路108からの信号を特定の周波数でサンプリングすることにより、回路108は、基板10全体の一連のサンプリングゾーン94で測定値を生成する。各掃引について、1又は複数のサンプリングゾーン94での測定値が選択又は組み合わせられ得る。したがって、複数の掃引にわたる選択又は組み合わされた測定値は、時間とともに変化する一連の値を提供する。
【0045】
研磨ステーション20は、センサ102が基板10の下にあるとき、及びセンサ102が基板から離れているときを感知するために、光インタラプタ等の位置センサ96も含み得る。例えば、位置センサ96は、キャリアヘッド70の反対側の固定位置に取り付けられ得る。プラテン24の周囲にフラグ98が取り付けられ得る。フラグ98の取り付け点及び長さは、センサ102が基板10の下を掃引するときに位置センサ96に信号を送ることができるように選択される。
【0046】
代替的又は追加的に、研磨ステーション20は、プラテン24の角度位置を決定するためのエンコーダを含み得る。
【0047】
図1に戻ると、コントローラ90、例えば、汎用プログラマブルデジタルコンピュータは、インシトゥ監視システム100のセンサ102から信号を受信する。センサ102が、プラテン24が回転するたびに基板10の下を掃引するため、導電層、例えば、トレンチのバルク層又は導電性材料の深さに関する情報がインシトゥで蓄積する(プラテンの回転ごとに1回)。コントローラ90は、基板10が全体的にセンサ102の上にあるときに、インシトゥ監視システム100からの測定値をサンプリングするようにプログラミングされ得る。
【0048】
さらに、コントローラ90は、各測定値の半径方向位置を計算し、測定値を半径方向範囲に分類するようにプログラミングされ得る。測定値を半径範囲に配置することにより、各半径範囲の導電性膜厚に関するデータをコントローラ(例えば、コントローラ90)に供給して、キャリアヘッドによって印加される研磨圧力プロファイルが調整され得る。コントローラ90は、インシトゥ監視システム100の信号によって生成された一連の測定値に終点検出ロジックを適用し、研磨終点を検出するようにもプログラミングされ得る。
【0049】
プラテン24が回転するたびにセンサ102が基板10の下を掃引するため、導電層の厚さに関する情報がインシトゥで連続的にリアルタイムで蓄積される。研磨中、センサ102からの測定値を出力装置に表示して、研磨ステーションのオペレータが研磨工程の経過を視覚的に監視できるようにすることができる。
【0050】
図2及び
図5を参照すると、基板10に対するセンサヘッドの位置の変化は、インシトゥ監視システム100からの信号の変化をもたらし得る。すなわち、センサヘッドが基板10全体をスキャンするとき、インシトゥ監視システム100は、基板10上の異なる位置で、複数の領域94、例えば、測定スポット211について測定を行う。領域94は部分的に重なり合っていてよい。
【0051】
図6に、センサ102が基板10の下を1回通過中の、インシトゥ監視システム100からの信号220を示すグラフを示す。この信号220は、基板全体の「トレース」と称され得る。信号220は、センサヘッドが基板の下を掃引するときのセンサヘッドからの一連の個々の測定値から構成される。グラフは、測定時間又は基板上の測定位置、例えば、半径方向位置の関数であり得る。いずれの場合も、信号220の異なる部分は、センサ102によってスキャンされた基板10上の異なる位置にある測定スポット211に対応する。したがって、グラフは、センサヘッドによってスキャンされた基板の所定の位置について、信号220からの対応する測定された信号値を示す。
【0052】
図5及び
図6を参照すると、信号220は、センサ102が基板10の前縁を横切ったときの基板10のエッジ領域203内の位置に対応する第1の部分222と、基板10の中央領域201内の位置に対応する第2の部分224と、センサ102が基板10の後縁を横切ったときのエッジ領域203内の位置に対応する第3の部分226とを含む。信号はまた、基板外測定に対応する部分228、すなわち、センサヘッドが
図5の基板10のエッジ204を超えた領域をスキャンするときに生成される信号を含み得る。
【0053】
エッジ領域203は、センサヘッドの測定スポット211が基板エッジ204と重なる基板の部分に対応し得る。中央領域201は、エッジ領域203に隣接する環状アンカー領域202、及びアンカー領域202によって囲まれる内側領域205を含み得る。センサヘッドは、その経路210上のこれらの領域をスキャンし、経路210に沿った一連の位置に対応する一連の測定値を生成し得る。
【0054】
第1の部分222において、信号強度は、初期強度(通常、基板及びキャリアヘッドが存在しない場合に生じる信号)からより高い強度に上昇する。これは、監視位置が、最初は基板のエッジ204で基板とわずかに重なるのみ(初期のより低い値を生成する)から、ほぼ完全に基板と重なる(より高い値を生成する)監視位置へ移行することによって引き起こされる。同様に、第3の部分226では、監視位置が基板のエッジ204に移行すると、信号強度が低下する。
【0055】
第2の部分224は平坦として図示したが、これは簡略化のためであり、第2の部分224の実際の信号は、ノイズ及び層の厚さの変動の両方に起因する変動を含む可能性が高い。第2の部分234は、中央領域201をスキャンする監視位置に対応する。第2の部分224は、中央領域201のアンカー領域202をスキャンする監視位置によって引き起こされる2つのサブ部分230及び232と、中央領域201の内側領域205をスキャンする監視位置によって引き起こされるサブ部分234とを含む。
【0056】
上記のように、領域222、226における信号強度の変動は、監視されている層の厚さ又は導電率の固有の変動ではなく、基板エッジと重なるセンサ106の測定領域によって部分的に引き起こされる。結果として、信号220のこの歪みにより、基板の特性値、例えば、基板エッジ近くの層の厚さの計算においてエラーが発生し得る。この問題に対処するために、コントローラ90は、基板10の1又は複数の位置に対応する測定信号に基づいて、それらの位置に対応する変更された信号を生成するために、ニューラルネットワーク、例えば、
図7のニューラルネットワーク300を含み得る。
【0057】
ここで
図7を参照すると、ニューラルネットワーク300は、適切にトレーニングされたときに、基板エッジの近くで計算された信号値の歪みを低減及び/又は除去する変更された信号を生成するように構成される。ニューラルネットワーク300は、一群の入力304を受信し、1又は複数のニューラルネットワーク層を通して入力304を処理して、一群の出力350を生成する。ニューラルネットワーク300の層は、入力層310、出力層330、及び1又は複数の隠れ層320を含む。
【0058】
ニューラルネットワーク300の各層は、1又は複数のニューラルネットワークノードを含む。ニューラルネットワーク層の各ニューラルネットワークノードは、1又は複数のノード入力値を受け取り(入力304からニューラルネットワーク300へ、又は先行するニューラルネットワーク層の1又は複数のノードの出力から)、1又は複数のパラメータ値に従ってノード入力値を処理し、アクティベーション値を生成し、オプションとして非線形変換関数(例えば、シグモイド関数又はtanh関数)をアクティベーション値に適用して、ニューラルネットワークノードの出力を生成する。
【0059】
入力層310の各ノードは、ニューラルネットワーク300への入力304のうちの1つを、ノード入力値として受け取る。
【0060】
ニューラルネットワークへの入力304は、基板10上の複数の異なるスポット211についてのインシトゥ監視システム100からの測定された信号値、例えば、第1の測定された信号値301、第2の測定された信号値302からn番目の測定された信号値303までを含む。測定された信号値は、信号220の一連の値の個々の値であり得る。
【0061】
一般に、複数の異なる位置は、基板10のエッジ領域203、及びオプションとしてアンカー領域202内の位置を含む。幾つかの実装態様では、複数の異なる位置は、エッジ領域203及びアンカー領域202にのみ存在する。他の実装態様では、複数の異なる位置は基板のすべての領域にまたがっている。
【0062】
これらの測定された信号値は、信号入力ノード344で受信される。オプションとして、ニューラルネットワーク300の入力ノード304は、1又は複数のプロセス状態信号304、例えば、研磨装置20のパッド30の摩耗の測定値を受信する1又は複数の状態入力ノード316も含み得る。
【0063】
隠れ層320及び出力層330のノードは、先行する層のすべてのノードからの入力を受信するものとして示されている。これは、完全に接続されたフィードフォワードニューラルネットワークの場合である。しかしながら、ニューラルネットワーク300は、完全に接続されていないフィードフォワードニューラルネットワーク又は非フィードフォワードニューラルネットワークであり得る。さらに、ニューラルネットワーク300は、1又は複数の完全に接続されたフィードフォワード層:1又は複数の完全に接続されていないフィードフォワード層;及び1又は複数の非フィードフォワード層のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0064】
ニューラルネットワークは、出力層330のノード、つまり「出力ノード」350で一群の変更された信号値350を生成する。幾つかの実装態様では、ニューラルネットワーク300に供給されるインシトゥ監視システムからの各測定信号に対して出力ノード350が存在する。この場合、出力ノード350の数は、入力層310の信号入力ノード304の数に対応し得る。
【0065】
例えば、信号入力ノード344の数は、エッジ領域203及びアンカー領域202における測定値の数に等しくてよく、同じ数の出力ノード350が存在し得る。したがって、各出力ノード350は、信号入力ノード344への入力として供給されるそれぞれの測定信号に対応する変更された信号、例えば、第1の測定信号301の第1の変更された信号351、第2の測定信号302の第2の変更された信号352、及びn番目の測定信号303のn番目の変更された信号353を生成する。
【0066】
幾つかの実装態様では、出力ノード350の数は、入力ノード304の数よりも少ない。幾つかの実装態様では、出力ノード350の数は、信号入力ノード344の数よりも少ない。例えば、信号入力ノード344の数は、エッジ領域203における測定値の数に等しくてよく、又はエッジ領域203及びアンカー領域202における測定値の数に等しくてよい。この場合も、出力層330の各出力ノード350は、信号入力ノード304として供給されるそれぞれの測定信号に対応する変更された信号、例えば、第1の測定信号301に対する第1の変更された信号351を生成するが、エッジ領域203から信号を受信する信号入力ノード354に対してのみである。
【0067】
研磨装置100は、ニューラルネットワーク300を使用して、変更された信号を生成し得る。次に、変更された信号を使用して、基板の第1の群の位置内の各位置、例えば、エッジ領域(及び場合によってはアンカー領域)内の位置の厚さが決定され得る。例えば、
図6に戻って参照すると、エッジ領域の変更された信号値は、信号220の変更された部分230を提供し得る。
【0068】
幾つかの実装態様では、所定の測定位置に対応する変更された信号値について、ニューラルネットワーク500は、変更された信号値を決定する際に、その所定の位置から既定の距離内の測定位置からの入力信号値のみが使用されるように構成され得る。
【0069】
ニューラルネットワークをトレーニングするために、インシトゥ監視システム100のセンサ102を使用して、参照基板のプロファイルが生成され得る。さらに、参照基板の厚さのグラウンドトルース測定値が取得され得る。これらの測定は、ニューラルネットワークによって処理される位置に対して実施され得る。本システムは、4点プローブ法等の電気インピーダンス測定法を使用して、厚さのグラウンドトルース測定値を生成し得る。参照基板からの信号値が入力304に適用され、グラウンドトルース測定値が出力350に適用され、システムはトレーニングモード(バックプロパゲーションを伴う傾斜降下等)で実行される。
【0070】
参照基板は、均一な厚さの導電性材料が堆積されたブランクのドープされていないウエハを含み得る。導電性材料の量は、ドープされたウエハの存在をシミュレートするように選択され得る。
【0071】
参照基板は、研磨の制御のためにインシトゥ監視システムが使用されるデバイス基板と同等の処理段階にあるサンプルデバイス基板、例えば、異なるエッジプロファイルを有する層を有する基板も含み得る。
【0072】
上記のように、インシトゥ監視システムによって生成される信号には、ドープされたウエハからの寄与も含まれる。適切に処理されない場合、ドープされたウエハからの信号への寄与を補正しようとすると、例えば、エッジ再構成技法が利用される場合に、基板エッジに追加のエラーが発生する可能性がある。
【0073】
図8を参照すると、ブランクのドープされたウエハ全体の参照トレース420が作成される。この参照トレース420は、基板の研磨の前に作成される。ブランクのドープされたウエハは、研磨されるデバイス基板で使用されるウエハと同じドーピングプロファイルを有する。幾つかの実装態様では、参照トレースは、サンプルのブランクのドープされたウエハ、例えば、犠牲ウエハを、インシトゥ監視システム100のセンサ102を用いてスキャンすることによって作成される。例えば、参照トレースは製造オペレータによって作成され得る。あるいは、システム製造業者は、様々な異なるドーピング(例えば、濃度及び/又はドーピング材料)を有するウエハの参照トレースを作成することができ、これらのトレースは、ライブラリに保存され得る。次に、オペレータは、ライブラリから、例えばドロップダウンメニュー又は同様のユーザーインターフェイスから、研磨するデバイス基板のウエハのドーピングに最も厳密に対応する参照トレースの1つを選択し得る。
【0074】
センサ102からの参照トレース420の未処理の信号値は、相関曲線を使用して厚さ値(参照トレース420で表される)に変換され得る。
【0075】
図9に、所定の抵抗率について、所定の抵抗率の導電層の厚さと電磁誘導監視システム100からの信号との間の相関曲線510を示す。D
STARTは導電層の初期の厚さを表し、S
STARTは初期の厚さD
STARTに対応する所望の信号値である。D
FINALは導電層の最終的な厚さを表し、S
FINALは最終的な厚さに対応する所望の信号値である。Kは、導電層の厚さがゼロの場合の信号の値を表す定数である。
【0076】
関係曲線510は、コントローラ90において、関数、例えば、多項式関数、例えば、二次関数、三次関数、又は高次関数によって表され得る。信号X(x)と厚さD(x)の相関関係は、次の式によって表され得る。
X(x)=W1・D(x)2+W2・D(x)+W3 (式1)
上記式において、W1、W2、及びW3は実数係数である。したがって、コントローラは、関数の係数の値、例えば、W1、W2、及びW3、及び関係曲線510が適用される抵抗率ρ0を保存し得る。さらに、この関係は、線形関数、ベジェ曲線、又は指数関数や対数等の非多項式関数で表され得る。
【0077】
関係曲線510を使用して、未処理の信号420の信号値を参照ウエハから「同等の」厚さ測定値に変換することができる。つまり、ドープされた参照ウエハの上に導電層はないが、測定値は厚さ値として表され得る。これらは「同等の」厚さ値である。これは、それぞれがドープされていないウエハ上の同等の導電層の厚さであり、ドープされた参照ウエハと同じ信号を生成するためである。
【0078】
次に、
図8に戻ると、参照トレース420´は、参照トレースに対してエッジ再構成アルゴリズムを実行するために、ニューラルネットワークによって通常の信号であるかのように処理される。これにより、変更された信号値430を有する部分を有する変更された参照トレース450が作成される。
【0079】
幾つかの実装態様では、厚さへの変換は事前に実行され、厚さ値を含む参照トレース420´がライブラリに保存される(及びオペレータによって選択される)。幾つかの実装態様では、厚さへの変換及びエッジ再構成が事前に実行され、変更された参照トレース450がライブラリに保存される(及びオペレータによって選択される)。
【0080】
研磨工程中、基板10はインシトゥ監視システムによって監視され、基板10の測定トレース220が基板10全体のセンサ102の各掃引において作成される。この測定トレース220は、研磨される導電層とその下にあるドープされたウエハの両方からの寄与を含むため、「合計」トレース又は信号とも称され得る。
【0081】
関係曲線510(
図9を参照)を使用して、研磨される基板からの信号220の信号値を厚さ測定値(測定トレース220´で表す)に変換することができる。
【0082】
各測定トレース220´は、上記のようにニューラルネットワークによって処理され、変更された値230を有する部分を有する変更された測定トレース250が作成される。
【0083】
幾つかの実装態様では、未処理信号から厚さへの変換は、エッジ再構成が実施された後に、参照ウエハと研磨される基板の両方に対して実行され得る。
【0084】
コントローラ190は、ウエハドーピングを補正するために、調整トレース480を作成し得る。調整トレースの作成は、変更された測定トレース250から変更された参照トレース450を差し引くことを含む。変更された参照トレース450がS(x)で表され、変更された測定トレース250がT(x)で表され、xが半径方向位置であると仮定すると、T(s)-S(x)は見かけ上の厚さトレースとなる。
【0085】
センサ102の幾つかの構成では、ドープされたウエハ及び基板からのトレースへの寄与は、単純な重ね合わせではない。むしろ、導電層の見かけ上の厚さは、実際の厚さよりいくらか薄くてよい。この問題は、より高い駆動周波数でより顕著になり得る。
【0086】
ただし、特定のセンサ構成(例えば、駆動周波数、コアの形状と寸法、コイルの位置と巻き数等)は、実際の厚さと見かけ上の厚さの間に概して線形の関係があるように見える。この関係を
図10に示す。見かけ上の厚さを実際の厚さに関連付ける関数520は、傾きがkで、y切片(厚さがゼロでなければならない)がbである線形関数として表され得る。これらの値k及びbは、テストによって経験的に決定され、センサ構成間で異なり得る。kの値は1以下、例えば、0.7から1の値になる傾向がある。
【0087】
したがって、基板上の導電層の調整膜厚プロファイルA(x)は、A(x)=(T(x)-S(x)-b)/kにより計算され得る。
【0088】
調整厚さ値A(x)が目標厚さ値DTARGETに達したときを、終点と呼ぶことができる。同様に、調整厚さ値A´(x)は、研磨パラメータの制御、例えば、不均一性を低減させるための研磨圧力の計算に使用され得る。
【0089】
ある場合には、特定のセンサ構成の見かけ上の厚さと実際の厚さとの関係が線形でないことがある。上記の場合、実際の厚さを計算するために、より複雑な方程式、例えば多項式が使用され得る。
【0090】
幾つかの実装態様では、未処理の信号は厚さ値に変換される前に正規化される。この技法は、参照トレース420と基板トレース220の両方に適用可能である。例えば、較正信号X´(x)は、次のように生成され得る。
X´(x)=G*X(x)-ΔK (式2)
上記式において、Gはゲイン、ΔKはオフセットであるが、既知の厚さと導電率の導電層を有するブランクウエハを使用して、インシトゥ監視システムにおいて実験的に決定される。X(x)は、例えば、それぞれのトレースの処理に適切な、参照トレース420又は基板トレース220のいずれかからの未処理の信号値を表す。次に、較正信号X´(x)が、厚さ値を決定するために、例えば、上記の式1のX(x)の代わりに相関曲線に使用される。
【0091】
さらに、未処理の信号値が厚さ値に変換される際に、層の抵抗率が考慮され得る。例えば、相関曲線、例えば上記の式1を使用して計算された厚さ値は、修正された厚さ値を提供するために、層の抵抗率に基づいて調整され得る。この技法は、参照トレース420と基板トレース220の両方に使用することができる。
【0092】
修正された厚さ値D´(x)は、次のように計算され得る。
D´(x)=D(x)*(ρX/ρ0) (式3)
上記式において、ρXは導電層の抵抗率、ρ0は関係曲線410(及び値W1、W2、W3)が適用される抵抗率であり、D(x)は相関曲線(必要に応じて、参照トレース420又は基板トレース220のいずれかから)を使用して計算された初期の厚さ値を表す。エッジ再構成アルゴリズムは、初期の厚さ値D(x)の代わりに、修正された厚さ値D´(x)に適用され得る。
【0093】
抵抗率の基板間変動に加えて、層の温度変化が導電層の抵抗に変化をもたらし得る。例えば、導電層は、研磨が進むにつれてより熱くなり、したがってより導電性(より低い抵抗率)になり得る。特に、プロセスを実行するコントローラは、リアルタイム温度T(t)での導電層の抵抗率ρTを計算することも可能である。リアルタイム温度T(t)は、温度センサ64から決定され得る。幾つかの実装態様では、調整抵抗率ρTは次の式に基づいて計算される。
ρT=ρX[1+α(T(t)-Tini)] (式4)
上記式において、Tiniは、研磨プロセスが開始されたときの導電層の初期温度である。次に、例えば、上記の式3(又は式2のゲインとオフセットの計算)において、抵抗率ρXの代わりに調整抵抗率ρTが使用される。
【0094】
研磨プロセスが室温で行われる状況では、Tiniはおよそ20℃の値を取り得る。ρXはTiniでの導電層の抵抗率であり、室温であり得る。通常、αは既知の値であり、文献に記載されている場合がある、又は実験から取得可能である。未処理の信号220には、下にあるドープされたウエハからの寄与が含まれるが、導電層の値αは、トレース220´の厚さ値を計算する際の第1の近似値として使用され得る。
【0095】
幾つかの実装態様では、測定された渦電流信号を調整する際に使用される温度T及びTiniは、例えば、キャリアヘッドの温度センサによって測定された導電層の温度である。幾つかの実装態様では、温度T及びTiniは、導電層の温度の代わりに、研磨パッドの温度又はスラリの温度であり得る。
【0096】
上記の研磨装置及び方法は、様々な研磨システムに適用され得る。研磨パッド、又はキャリアヘッド、又はその両方を動かして、研磨面と基板との間に相対運動が提供され得る。例えば、プラテンは回転するのではなく軌道を回る場合がある。研磨パッドは、プラテンに固定された円形(又はその他の任意の形状)のパッドであってよい。終点検出システムの幾つかの態様は、例えば、研磨パッドが直線的に移動する連続ベルト又はリールツーリールベルトである場合の線形研磨システムに適用可能であり得る。研磨層は、標準的な(例えば、充填材を含む又は含まないポリウレタン)研磨材料、軟質材料、又は固定研磨材料であり得る。相対位置付けの用語は、システム又は基板内の相対位置付けを指すために使用される。研磨工程の間、研磨面及び基板は、垂直方向又は他の何らかの方向に保持され得ることが理解されるべきである。
【0097】
コントローラ90の機能的動作は、デジタル電子回路、又はコンピュータソフトウェア、ファームウェア、又はハードウェア、ならびにそれらの構造的同等物、又はそれらの組み合わせで実行され得る。コンピュータソフトウェアは、1又は複数のコンピュータプログラム製品として、すなわち、データ処理装置、例えばプログラム可能なプロセッサ、コンピュータ、又は複数のプロセッサ又はコンピュータによって実行するために、又はその動作を制御するために、非一過性のコンピュータ可読記憶媒体に有形に具現化される1又は複数のコンピュータプログラムとして実装され得る。コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、又はコードとも称される)は、コンパイル済み又は解釈済みの言語を含む任意の形式のプログラミング言語で記述され得、スタンドアロンプログラム又はモジュール、コンポーネント、サブルーチン、又はコンピューティング環境での使用に適したその他のユニットとして展開され得る。コンピュータプログラムは必ずしもファイルに対応しているわけではない。プログラムは、他のプログラム又はデータを保持するファイルの一部、当プログラム専用の単一ファイル、又は複数の調整されたファイル(例えば、1又は複数のモジュール、サブプログラム、又はコードの一部を保存するファイル)に保存され得る。コンピュータプログラムは、1台のコンピュータで、又は1つのサイトのあるいは複数のサイトにわたって分散させて通信ネットワークによって相互接続させた複数のコンピュータで実行するように展開することも可能である。
【0098】
本明細書に記載のプロセス及び論理フローは、1又は複数のコンピュータプログラムを実行する1又は複数のプログラム可能なプロセッサによって実行され、入力データを操作して出力を生成することによって機能が実行され得る。プロセス及び論理フローはまた、専用論理回路、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)によって実行され得、装置は専用論理回路、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)として実装され得る。
【0099】
本発明の幾つかの実施形態を説明した。しかしながら、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な修正を行うことができることが理解されよう。例えば、上記の説明は化学機械研磨に焦点を合わせているが、制御システムは、他の半導体処理技法、例えば、エッチング又は堆積、例えば、化学気相堆積に適合させることができる。さらに、本技法は、インシトゥ監視ではなく、インライン又はスタンドアロンの計測システムに適用することができる。したがって、その他の実施形態も以下の特許請求の範囲内である。