(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】陰圧創傷療法システムにおける自動化創傷結合検出
(51)【国際特許分類】
A61M 27/00 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
A61M27/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022068784
(22)【出願日】2022-04-19
(62)【分割の表示】P 2018558161の分割
【原出願日】2017-05-12
【審査請求日】2022-05-18
(32)【優先日】2016-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502032219
【氏名又は名称】スミス アンド ネフュー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エドワード・ヤーベリー・ハートウェル
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス・シー・キンタナル
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・デ・ヴィラーズ
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0133829(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0041401(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0005000(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0008179(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷に陰圧を加える装置であって、
創傷被覆材に流体流路を介して結合して、前記創傷被覆材に陰圧を与えるように構成される、陰圧源と、
前記流体流路内の圧力を監視するように構成される、センサと、
コントローラであって、
前記陰圧源が目標圧力範囲内に前記流体流路内の陰圧を維持する間、前記創傷被覆材が、混沌とした状態を示す継続時間にわたる前記流体流路内の圧力の大きさの変化から、前記創傷被覆材が創傷に結合されていることを決定すること、
前記創傷被覆材が前記創傷に結合されていることを示す、第1の表示を出力すること、
前記陰圧源が前記目標圧力範囲内に前記流体流路内の陰圧を維持する間、前記創傷被覆材が、定常状態を示す前記継続時間にわたる前記流体流路内の圧力の前記大きさの前記変化から、前記創傷に結合されていないことを決定すること、および
前記創傷被覆材が前記創傷に結合されていないことを示す、前記第1の表示とは異なる第2の表示を出力すること、を行うように構成される、コントローラと、を備える、装置。
【請求項2】
前記コントローラが、前記創傷被覆材が前記創傷に結合されている前記決定に応じて、前記陰圧源の準拠した使用を示すデバイス使用データをメモリデバイスに記憶するようにさらに構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記コントローラが、前記創傷被覆材が前記創傷に結合されていない前記決定に応じて、前記陰圧源の誤った使用を示すデバイス使用データをメモリデバイスに記憶するようにさらに構成される、請求項1または2のいずれか1項以上に記載の装置。
【請求項4】
前記デバイス使用データが、圧力レベル、アラーム、滲出液レベル、イベントログ、または療法継続時間のうち1つ以上を含む、請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
前記コントローラが、前記継続時間にわたる前記大きさの前記変化の不規則性の測定を閾値と比較して、前記継続時間にわたる前記大きさの前記変化が前記定常状態を示すかどうかを決定するようにさらに構成され、かつ、随意、不規則性の前記測定が、少なくとも1秒、10秒、30秒、1分または5分の前記継続時間にわたる前記大きさの前記変化に応答する、請求項1~4のいずれか1項以上に記載の装置。
【請求項6】
前記コントローラが、
前記継続時間にわたる前記大きさに基づく統計動作、トレンディング動作、フィルタリング動作、累積合計動作、またはローパスフィルタリング動作を実行して、出力値を生成することと、
前記出力値が前記定常状態を示す決定に応じて、前記継続時間にわたる前記大きさの前記変化が、前記定常状態を示すことを決定することと、を行うようにさらに構成される、請求項1~5のいずれか1項以上に記載の装置。
【請求項7】
前記コントローラが、前記継続時間にわたる前記大きさの時間領域表示および前記継続時間にわたる前記大きさの周波数領域表示から、前記継続時間にわたる前記大きさの前記変化が前記定常状態を示すことを決定するように構成される、請求項1~6のいずれか1項以上に記載の装置。
【請求項8】
前記コントローラが、前記継続時間にわたる前記大きさを圧力パターンと比較して、前記継続時間にわたる前記大きさの前記変化が前記定常状態を示すかどうかを決定するようにさらに構成される、請求項1~7のいずれか1項以上に記載の装置。
【請求項9】
前記圧力パターンが、前記陰圧源が前記目標圧力範囲内に前記流体流路内の陰圧を維持する間の、前記創傷被覆材が前記創傷に結合された時の前記流体流路内の圧力を示すか、前記圧力パターンが、前記陰圧源が前記目標圧力範囲内に前記流体流路内の陰圧を維持する間の、前記創傷被覆材が前記創傷に結合されていない時の前記流体流路内の圧力を示す、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の表示が、前記陰圧源の準拠した使用を示し、前記第2の表示が、前記陰圧源の準拠しない使用を示す、請求項1~9のいずれか1項以上に記載の装置。
【請求項11】
前記コントローラが、
メモリデバイスに記憶するために前記第1の表示を出力するように、または
前記メモリデバイスに記憶するために前記第2の表示を出力するようにさらに構成される、請求項1~10のいずれか1項以上に記載の装置。
【請求項12】
前記コントローラが、
送信機に通信ネットワークを介して前記第1の表示をコンピュータ装置に送信させることによって、前記第1の表示を出力するように、または
前記送信機に前記通信ネットワークを介して前記第2の表示を前記コンピュータ装置に送信させることによって、前記第2の表示を出力するようにさらに構成される、請求項1~11のいずれか1項以上に記載の装置。
【請求項13】
前記コントローラが、
ユーザーへの呈示のために前記第1の表示を出力するように、または
前記ユーザーへの呈示のために前記第2の表示を出力するようにさらに構成される、請求項1~12のいずれか1項以上に記載の装置。
【請求項14】
前記流体流路が、少なくとも1つの内腔または複数の内腔を含む、請求項1~13のいずれか1項以上に記載の装置。
【請求項15】
前記コントローラが、前記第1の表示または前記第2の表示に応答して、前記陰圧源を起動および停止するように構成される、請求項1~14のいずれか1項以上に記載の装置。
【請求項16】
前記陰圧源が、前記継続時間にわたる前記大きさが前記目標圧力範囲内に維持されている場合に、陰圧療法を実施するように構成される、請求項1~15のいずれか1項以上に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照本出願は、2016年5月13日に出願された米国仮出願第62/335,978号と2016年8月24日に出願された米国仮出願第62/378,856号の利益を主張するものであり、これらの開示はその全体が参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
本開示の実施形態は、陰圧療法もしくは減圧療法または局所陰圧(TNP)療法を用いて、創傷を被覆かつ治療するための方法及び装置に関する。具体的には、限定するものではないが、本明細書に開示された実施形態は、陰圧療法デバイス、TNPシステムの動作を制御するための方法、及びTNPシステムの使用方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2011/0130712号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0133829号明細書
【文献】国際公開第2015/023515号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、陰圧創傷療法システムにおいて、創傷被覆材が創傷に結合されているかの決定が、該システムにより自動的に、しかも確実かつ容易に行われるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一部の実施形態では、創傷への陰圧を適用するための装置が開示される。装置は、創傷被覆材に流体流路を介して結合し、創傷被覆材に陰圧を与えるように構成される、陰圧源と、流体流路内の圧力を監視するように構成される、センサと、陰圧源が目標圧力範囲内に流体流路内の陰圧を維持する間、創傷被覆材が、定常状態を示す継続時間を通じて流体流路内の圧力の大きさの変化から創傷に結合されたことを決定し、創傷被覆材が創傷に結合されていることを示す第1の表示を出力し、また陰圧源が目標圧力範囲内に流体流路内の陰圧を維持する間、創傷被覆材が、混沌とした状態を示す継続時間を通じて流体流路内の圧力の大きさの変化から創傷に結合されていないことを決定し、創傷被覆材が創傷に結合されていないことを示す第1の表示とは異なる第2の表示を出力するように構成される、コントローラと、を含むことができる。
【0006】
上記の段落に記載の装置は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る:コントローラは、創傷被覆材が創傷に結合されている決定に応じて、陰圧源の準拠した使用を示すデバイス使用データをメモリデバイスに記憶するようにさらに構成される。コントローラは、創傷被覆材が創傷に結合されていない決定に応じて、陰圧源の誤った使用を示すデバイス使用データをメモリデバイスに記憶するようにさらに構成される。デバイス使用データは、圧力レベル、アラーム、滲出液レベル、イベントログ、または療法継続時間のうち1つ以上を含む。コントローラは、継続時間にわたる大きさの変化の不規則性の測定を閾値と比較して、継続時間にわたる大きさの変化が定常状態を示すかどうかを決定するようにさらに構成される。不規則性の測定は、少なくとも1秒、10秒、30秒、1分または5分の継続時間にわたる大きさの変化に応答する。コントローラは、継続時間にわたる大きさに基づいて統計動作、トレンディング動作、フィルタリング動作、累積合計動作、またはローパスフィルタリング動作を実行して、出力値を生成することと、出力値が定常状態を示す決定に応じて、継続時間にわたる大きさの変化が定常状態を示すことを決定することと、を行うようにさらに構成される。コントローラは、継続時間にわたる大きさの時間領域表示および継続時間にわたる大きさの周波数領域表示から、継続時間にわたる大きさの変化が定常状態を示すことを決定するように構成される。コントローラは、継続時間にわたる大きさを圧力パターンと比較して、継続時間にわたる大きさの変化が定常状態を示すかどうかを決定するようにさらに構成される。圧力パターンは、陰圧源が目標圧力範囲内に流体流路内の陰圧を維持する間の、創傷被覆材が創傷に結合された時の流体流路内の圧力を示す。圧力パターンは、陰圧源が目標圧力範囲内に流体流路内の陰圧を維持する間の、創傷被覆材が創傷に結合されていない時の流体流路内の圧力を示す。第1の表示は、陰圧源の準拠した使用を示し、第2の表示は、陰圧源の準拠しない使用を示す。コントローラは、メモリデバイスに記憶するために第1の表示を出力するように、またはメモリデバイスに記憶するために第2の表示を出力するようにさらに構成される。コントローラは、送信機に通信ネットワークを介して第1の表示をコンピュータ装置に送信させることによって、第1の表示を出力するように、または送信機に通信ネットワークを介して第2の表示をコンピュータ装置に送信させることによって、第2の表示を出力するようにさらに構成される。コントローラは、ユーザーへの呈示のために第1の表示を出力するように、またはユーザーへの呈示のために第2の表示を出力するようにさらに構成される。流体流路は、少なくとも1つの内腔を含む。流体流路は、複数の内腔を含む。コントローラは、第1の表示または第2の表示に応答して、陰圧源を起動および停止するように構成される。陰圧源は、継続時間にわたる大きさが目標圧力範囲内に維持されている場合に、陰圧療法を実施するように構成される。
【0007】
一部の実施形態では、陰圧創傷療法装置の動作方法が開示される。方法は、陰圧源を使用して流体流路を介して創傷被覆材に陰圧を与えることと、流体流路内の圧力をセンサを用いて監視することと、目標圧力範囲内に流体流路内の陰圧を維持する間、創傷被覆材が、定常状態を示す継続時間にわたる流体流路内の圧力の大きさの変化から創傷に結合されたかどうかを決定することと、創傷被覆材が継続時間にわたる大きさの変化から創傷に結合されていることの決定に応じて、創傷被覆材が、創傷に結合されていることを示す第1の表示を出力することと、創傷被覆材が継続時間にわたる大きさの変化から創傷に結合されていないことの決定に応じて、創傷被覆材が、創傷に結合されていないことを示す第1の表示とは異なる第2の表示を出力することと、を含むことができる。
【0008】
上記の段落に記載の方法は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る:方法は、創傷被覆材が創傷に結合された決定に応じて、陰圧創傷療法装置の準拠した使用と関連するデバイス使用データをメモリデバイスに記憶することをさらに含むことができる。方法は、創傷被覆材が創傷に結合されていない決定に応じて、陰圧創傷療法装置の誤った使用と関連するデバイス使用データをメモリデバイスに記憶することをさらに含むことができる。デバイス使用データは、圧力レベル、アラーム、滲出液レベル、イベントログ、または療法継続時間のうち1つ以上を含む。前記決定することは、継続時間にわたる大きさの変化の不規則性の測定を閾値と比較することを含む。不規則性の測定は、少なくとも1秒、10秒、30秒、1分または5分の継続時間にわたる大きさの変化に応答する。方法は、ある期間にわたる大きさに基づいて統計動作、トレンディング動作、フィルタリング動作、累積合計動作、またはローパスフィルタリング動作を実行して、出力値を生成することをさらに含むことができ、前記決定することは、出力値が定常状態を示す決定に応じて、継続時間にわたる大きさの変化が定常状態を示すかどうかを決定することを含む。方法は、継続時間にわたる大きさを圧力パターンと比較して、継続時間にわたる大きさの変化が定常状態を示すかどうかを決定することをさらに含むことができる。
【0009】
一部の実施形態では、創傷への陰圧を適用するための装置が開示される。装置は、創傷被覆材に流体流路を介して結合し、創傷被覆材に陰圧を与えるように構成される、陰圧源と、流体流路内の圧力を監視するように構成される、センサと、流体流路内の圧力に少なくとも部分的に基づいて、流体流路内の気体の流れの変化の検出、流体流路内の滲出液の流れの変化、流体流路内の真空レベルの変化の検出、または流体流路内の血液の存在の検出のうちの少なくとも1つに基づいて、創傷被覆材が、創傷に結合されていることを決定し、創傷被覆材が創傷に結合されていることの表示を出力するように構成される、コントローラと、を備える。
【0010】
上記の段落に記載の装置は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る:コントローラは、陰圧源の作動レベルにさらに基づいて、創傷被覆材が創傷に結合されていることを決定するように構成される。陰圧源は、アクチュエータによって動作するポンプを備え、その作動レベルは、ポンプ速度、アクチュエータを駆動するように構成されるパルス幅変調(PWM)信号、またはアクチュエータを駆動するように構成される電流信号のうちの少なくとも1つを含む。コントローラは、継続時間にわたる作動レベルの変化と関連する、第1の指標を決定するように構成される。第1の指標は、統計的な指標を含む。コントローラは、第1の指標が第1の閾値から逸脱しているかどうかを決定するために時系列分析を実行するように、また第1の指標が第1の閾値から逸脱していることの決定に応じて、創傷被覆材が創傷に結合されていることを決定するようにさらに構成される。時系列分析は、第1の指標の累積和(Cusum)の決定を含む。第1の指標のCusumは、非因果的Cusum、スライディング因果的Cusumまたは累積因果的Cusumを含む。第1の指標は、作動レベルの標準偏差の尖度を含み、第1の指標は、流体流路内の滲出液の流れの変化を示す。コントローラは、継続時間にわたる作動レベルの変化と関連する、第2の指標であって、第1の指標とは異なる、第2の指標の累積和(Cusum)を決定するようにさらに構成される。第2の指標は、流体流路内の気体漏洩レートの変化を示す作動レベルの標準偏差を含み、コントローラは、第2の指標が第2の閾値から逸脱しているかどうかを決定するように、また第2の指標が第2の閾値から逸脱していることの決定に応じて、創傷被覆材が創傷に結合されていることを決定するようにさらに構成される。コントローラは、継続時間にわたる流体流路内の圧力の変化と関連する、第3の指標であって、第1および第2の指標とは異なる、第3の指標の累積和(Cusum)を決定するようにさらに構成される。第3の指標は、流体流路内の陰圧の変化を示す流体流路内の平均圧力を含み、コントローラは、第3の指標が第3の閾値から逸脱しているかどうかを決定するように、また第3の指標が第3の閾値から逸脱していることの決定に応じて、創傷被覆材が創傷に結合されていることを決定するようにさらに構成される。
【0011】
一部の実施形態では、創傷への陰圧を適用するための方法が開示される。方法は、流体流路を介して創傷被覆材に陰圧源を用いて陰圧を与えることと、流体流路内の圧力を監視することと、流体流路内の圧力に少なくとも部分的に基づいて、創傷被覆材が、流体流路内の気体の流れの変化の検出、流体流路内の滲出液の流れの変化、流体流路内の真空レベルの変化の検出、または流体流路内の血液の存在の検出のうちの1つから創傷に結合されていることを決定することと、創傷被覆材が創傷に結合されている表示を出力することと、を含むことができる。
【0012】
上記の段落に記載の方法は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る:前記決定することは、さらに陰圧源の作動レベルから、創傷被覆材が創傷に結合されていることを決定することを含む。陰圧源は、アクチュエータによって動作するポンプを備え、その作動レベルは、ポンプ速度、アクチュエータを駆動するように構成されるパルス幅変調(PWM)信号、またはアクチュエータを駆動するように構成される電流信号のうちの少なくとも1つを含む。方法は、継続時間にわたる作動レベルの変化と関連する、第1の指標を決定することをさらに含むことができる。第1の指標は、統計的な指標を含む。方法は、第1の指標が第1の閾値から逸脱しているかどうかを決定するために時系列分析を実行することと、第1の指標が第1の閾値から逸脱していることの決定に応じて、創傷被覆材が創傷に結合されていることを決定することと、をさらに含むことができる。時系列分析は、第1の指標の累積和(Cusum)の決定を含む。第1の指標のCusumは、非因果的Cusum、スライディング因果的Cusumまたは累積因果的Cusumを含む。第1の指標は、作動レベルの標準偏差の尖度を含み、第1の指標は、流体流路内の滲出液の流れの変化を示す。方法は、継続時間にわたる作動レベルの変化と関連する、第2の指標であって、第1の指標とは異なる、第2の指標の累積和(Cusum)を決定することをさらに含むことができる。第2の指標は、流体流路内の気体漏洩レートの変化を示す作動レベルの標準偏差を含み、方法は、第2の指標が第2の閾値から逸脱しているかどうかを決定することと、第2の指標が第2の閾値から逸脱していることの決定に応じて、創傷被覆材が創傷に結合されていることを決定することと、をさらに含むことができる。方法は、継続時間にわたる流体流路内の圧力の変化と関連する、第3の指標であって、第1および第2の指標とは異なる、第3の指標の累積和(Cusum)を決定することをさらに含むことができる。第3の指標は、流体流路内の陰圧の変化を示す流体流路内の平均圧力を含み、方法は、第3の指標が第3の閾値から逸脱しているかどうかを決定することと、第3の指標が第3の閾値から逸脱していることの決定に応じて、創傷被覆材が創傷に結合されていることを決定することと、をさらに含むことができる。
【0013】
本開示は、減圧療法または局所陰圧(TNP)療法を用いて、創傷を被覆かつ治療するための方法及び装置に関する。具体的には、限定するものではないが、本開示の実施形態は、陰圧療法装置、TNPシステムの動作を制御するための方法、及びTNPシステムの使用方法に関する。方法及び装置は、以下に説明する特徴の任意の組み合わせを組み込むか、または実装することができる。
【0014】
TNP療法は、組織浮腫を軽減し、血流および肉芽組織の形成を促進し、過剰な滲出液を除去することによって、多くの形態の「治癒が困難な」創傷の閉鎖および治癒を支援することができるとともに、細菌負荷(それによる感染のリスク)を低減することができる。さらに、TNP療法によって創傷の障害をより少なくすることができ、より迅速な治癒に結び付き得る。TNPシステムはまた、流体を除去し、閉鎖の並列された位置で組織を安定化するのに役立つことで、外科的に閉じられた創傷の治癒を支援することができる。TNP療法のさらなる有益な使用は、過剰な流体を除去することが重要であり、組織の生存度を確保するために移植片が組織に近接していることが求められる、移植片及びフラップにおいて見出すことができる。
【0015】
本明細書で使用される場合、-XmmHgといった減圧または陰圧レベルは、概して760mmHg(または、1気圧、29.93inHg、101.325kPa、14.696psiなど)に相当する大気圧よりも低い圧力レベルを表す。したがって、-XmmHgの陰圧値は、(760-X)mmHgの圧力といった、大気圧よりもXmmHg低い圧力を表している。さらに、-XmmHgよりも「低い」または「小さい」陰圧は、大気圧により近い圧力に相当する(例えば、-40mmHgは-60mmHgよりも低くなる)。-XmmHgよりも「高い」または「大きい」陰圧は、大気圧からより遠い圧力に相当する(例えば、-80mmHgは-60mmHgよりも高くなる)。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一部の実施形態による陰圧創傷療法システムを示す。
【
図2A】一部の実施形態によるポンプアセンブリおよびキャニスターを示す。
【
図2B】一部の実施形態によるポンプアセンブリおよびキャニスターを示す。
【
図2C】一部の実施形態によるポンプアセンブリおよびキャニスターを示す。
【
図3A】一部の実施形態による陰圧療法システムの構成要素を示す。
【
図3B】一部の実施形態による陰圧療法システムの構成要素を示す。
【
図3C】一部の実施形態による陰圧療法システムの構成要素を示す。
【
図3D】一部の実施形態による陰圧療法システムの構成要素を示す。
【
図3E】一部の実施形態による陰圧療法システムの構成要素を示す。
【
図3F】一部の実施形態による陰圧療法システムの構成要素を示す。
【
図3G】一部の実施形態による陰圧療法システムの構成要素を示す。
【
図4】一部の実施形態による複数のセンサを含む陰圧療法システムの構成要素を示す。
【
図5】一部の実施形態による創傷結合検出プロセスを示す。
【
図6】一部の実施形態による陰圧療法システムの例示的な時間に対する圧力の曲線を示す。
【
図7】一部の実施形態による陰圧療法システムの例示的な時間に対する圧力の曲線を示す。
【
図8】一部の実施形態による気体漏れによる変化、流体速度の変化、および真空レベルの変化を示す。
【
図9】一部の実施形態による気体漏れによる変化、流体速度の変化、および真空レベルの変化を示す。
【
図10】一部の実施形態による気体漏れによる変化、流体速度の変化、および真空レベルの変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
概要
一部の実例において、TNP装置(時々ポンプアセンブリとして本明細書で言及される)のポンプなどの陰圧源が、患者に使用されているかどうかを確証することは困難であり得る。TNP装置は、陰圧源の起動と停止との間の時間のほか、TNP装置によって管理される療法プログラムに対するアラーム、測定された圧力または変化などのログイベントの関数として、その陰圧源の使用をログに記録することができる。しかし、起動と停止との間の時間およびログイベントは、TNP装置が、陰圧源が作動しているが流体流路を介して創傷に結合されていないかどうかを確信的に決定することを可能にし得ない。TNP装置は、例えば、陰圧源が創傷を治療するために使用されているか、またはその代わりに、創傷に結合されていない、また創傷被覆材が、いくつかの表面にわたる実質的な流体密封を形成していない、もしくは患者の組織以外の表面にわたる封止を形成していない状態(例えば、被覆材がテーブル、ドアなどの上に配置され得る)で、記憶装置のそばにもしくは記憶装置に単に置かれている間に使用されているかどうかの確信を区別することができない場合がある。さらに、TNP装置は、治療に強い影響を与える方法で調整され、変更されて使用される場合があり、または患者への使用の準備に時間がかかり得る。結果として、こうした使用または状況から集められたデータと患者への治療使用から集められたデータとを区別することは困難であり得る。
【0018】
TNP装置の使用を正確に理解するために、TNP装置の陰圧源が患者に使用される場合のすぐれた確実性を識別することが望ましくあり得る。例えば、TNP装置の使用の準拠性を監視できること、したがって、TNP装置が、創傷を治療することなどの準拠した様式で使用されているか、またはその代わりに、作動しているが創傷に結合していないままであるなどの準拠しない様式で使用されているかどうかを決定できることが望ましい。
【0019】
有利には、一定の実施形態では、TNP装置は、TNP装置の陰圧源が創傷くぼみ110などの創傷に流体流路を介して結合されているかどうかを自動的に検出することができる。結果として、TNP装置は、TNP装置が患者に使用されているかどうか、したがって、準拠した様式で使用されているかどうかを自動的に決定することができる。TNP装置によるこの自動的な決定は、さらに、患者の診断または準拠性のためにTNP装置によって集められたデータが患者への治療上の使用の結果として有効にされることを可能にすることができる。
【0020】
一実装において、TNP装置は、陰圧源が、創傷に結合された創傷被覆材(例えば、創傷くぼみ110に結合された創傷カバー120および創傷充填材130など)にもしくはそれに対して、またはそれ自身のシステム(例えば、陰圧源または創傷被覆材が、結合されていないままであり得る、またはその代わりに、無生物のような創傷以外の何かに結合され得る)に対して送り込んでいるかどうかを決定するためのTNP装置を含むTNPシステムにおける、圧力の大きさを分析する(未加工のピーク間の圧力読取値を測定することによってなど)ことができる。陰圧源が、創傷に結合された創傷被覆材に対してではなくその自身のシステムに対する圧力を維持し得る時、TNPシステム内の圧力の大きさは、TNPシステムを通じて移動する液体が存在し得ず、またTNPシステムが不規則に移動または屈曲し得ないので、比較的迅速に規則的なパターンとなり始めることができ、または定常状態に到達することができる。TNP装置は、適宜に、TNPシステム内の圧力の大きさの変化が、患者へのTNP装置の使用を示す不規則なパターンもしくは混沌とした状態、または患者へのTNP装置の使用を示さない規則的なパターンもしくは定常状態に従っているかどうかを決定することができる。
【0021】
さらに、TNP装置は、圧力信号におけるアーチファクトを分析して、それにより、陰圧源が創傷に結合された創傷被覆材に対してポンプで送り込まれているかどうかを決定することができる。アーチファクトは、TNP装置を含むTNPシステムにおける機械的な変化または流体の変化によって生成され得る。例えば、創傷被覆材に結合された創傷での機械的な動き(例えば、患者の動きによる)は、圧力信号におけるアーチファクトとして現れ得る。別の実施例として、TNPシステムにおける液体通路は、圧力信号におけるアーチファクトとして現れ得る。特に、いくつかのアーチファクトは、脈拍または呼吸からなどのその他のアーチファクトが実質的に周期的なパターンに従い得る間、ランダムに現れ得る。
【0022】
陰圧システム
図1は、創傷くぼみ110であって、創傷カバー120によって封止された創傷くぼみの内部に置かれた創傷充填材130を備える、陰性のまたは低減された圧力創傷治療(またはTNP)システム100の実施形態を示す。創傷カバー120と組み合わされた創傷充填材130は、創傷被覆材として言及され得る。単一または複数の内腔管または導管140は、創傷カバー120と、減圧圧力を供給するように構成されるポンプアセンブリ150とを接続する。創傷カバー120は、創傷くぼみ110に流体連通することができる。
図1に示される実施形態のような本明細書で開示されるいくつかのシステムの実施形態において、ポンプアセンブリは、キャニスターレスポンプアセンブリ(滲出液が、創傷被覆材に集められる、または別の位置に集めるために管140を介して運ばれることを意味する)であることができる。しかし、本明細書で開示されるいくつかのポンプアセンブリの実施形態は、キャニスターを含むまたは支持するように構成され得る。追加的に、本明細書で開示されるいくつかのシステムの実施形態において、いくつかのポンプアセンブリの実施形態は、被覆材に取り付けられ、もしくは被覆材によって支持され、または被覆材に隣接することができる。
【0023】
創傷充填材130は、例えば、親水性または疎水性発泡体、ガーゼ、膨張可能なバッグ等の任意の適切なタイプであることができる。創傷充填材130は、それが実質的にくぼみを充填するように、創傷くぼみ110に適合することができる。創傷カバー120は、創傷くぼみ110を覆う実質的に流体不浸透性のシールを提供することができる。創傷カバー120は、上部側面および下部側面を有することができ、下部側面は、創傷くぼみ110を粘着的に(または任意のその他の適切な手法において)封止する。本明細書で開示される導管140もしくは内腔またはいくつかのその他の導管もしくは内腔は、ポリウレタン、PVC、ナイロン、ポリエチレン、シリコーン、または任意のその他の適切な材料から形成され得る。
【0024】
創傷カバー120の一部の実施形態は、導管140の端を受けるように構成される、ポート(図示せず)を有することができる。例えば、ポートは、Smith&Nephewから入手可能なRenays Soft Portであることができる。その他の実施形態では、導管140は、別のやり方では、創傷くぼみ内に所望のレベルの減圧圧力を維持するように、減圧圧力を創傷くぼみ110に供給するために創傷カバー120を通り抜けるまたはその下にあることができる。導管140は、ポンプアセンブリ150によって提供される減圧圧力を創傷くぼみ110に供給するように、ポンプアセンブリ150と創傷カバー120との間に少なくとも実質的に密封された流体流経路を提供するように構成される、任意の適切な物品であることができる。
【0025】
創傷カバー120および創傷充填材130は、単一な物品または一体型の単一なユニットとして提供され得る。一部の実施形態では、創傷充填材が提供されずに、創傷カバーがそれ自体として創傷被覆材とみなされてもよい。ついで、創傷被覆材は、導管140を介して、ポンプアセンブリ150といった陰圧源に接続され得る。ポンプアセンブリ150は小形化され、持ち運び可能とすることができるが、より大きな従来のそのようなポンプがまた使用されてもよい。
【0026】
創傷カバー120は、治療される創傷部位の上に置かれ得る。創傷カバー120は、創傷部位を覆う実質的に密封されたくぼみまたはエンクロージャを形成することができる。一部の実施形態では、創傷カバー120は、過剰流体の蒸発を可能にする高い水蒸気浸透性を持つフィルムを有するように構成されることができ、また創傷滲出液を安全に吸収するためにその中に含まれる超吸収性材料を有することができる。本明細書全体を通して、創傷に関して言及することが理解されるであろう。この点において、創傷という用語は広く解釈され、皮膚が断裂、切開、もしくは穿孔される、または外傷によって挫傷が引き起こされる開放創および閉鎖創、あるいは患者の皮膚における任意の他の表面もしくは他の状態または欠陥、あるいは減圧治療によって利益を得る他のものを包含することを理解されたい。よって、創傷は、流体が生成されることもされないこともある、組織の任意の損傷領域として広く定義される。そのような創傷の例としては、急性創傷、慢性創傷、外科切開およびその他の切開、亜急性創傷および裂開創傷、外傷性創傷、フラップおよび皮膚移植片、裂傷、擦傷、挫傷、火傷、糖尿病性潰瘍、褥瘡性潰瘍、ストーマ、外科創傷、外傷性潰瘍および静脈性潰瘍などが挙げられるが、それらに限定されない。本明細書に記載のTNPシステムの構成要素は、少量の創傷滲出液を滲出する切開創傷に特に適し得る。
【0027】
システムの一部の実施形態は、滲出液キャニスターを使用することなく動作するように設計される。一部の実施形態は、滲出液キャニスターを支持するように構成され得る。一部の実施形態では、管材料140がポンプアセンブリ150から迅速にかつ容易に取り除かれ得るようにポンプアセンブリ150および管材料140を構成することは、必要な場合、被覆材またはポンプを交換するプロセスを容易にする、または改善することができる。本明細書で開示されるいくつかのポンプの実施形態は、管材料とポンプとの間の任意の適切な接続を有するように構成され得る。
【0028】
ポンプアセンブリ150は、一部の実装において、約-80mmHg、または約-20mmHg~200mmHgの陰圧を供給するように構成され得る。これらの圧力は、正常な大気圧に対する相対値であり、つまり、-200mmHgは、実際に則した用語において、約560mmHgであり得ることに留意されたい。圧力範囲は約-40mmHgから-150mmHgの間であり得る。代替として、最高-75mmHg、最高-80mmHgまたは-80mmHgを超える圧力範囲が使用され得る。また、-75mmHgを下回る圧力範囲が使用され得る。代替として、およそ-100mmHgまたはさらに150mmHgより上の圧力範囲が、ポンプアセンブリ150により供給され得る。
【0029】
動作時に、創傷充填材130は、創傷くぼみ110内に挿入され、創傷カバー120は、創傷くぼみ110を密封するように置かれる。ポンプアセンブリ150は、創傷充填材130を介して創傷くぼみ110に送られる陰圧源を創傷カバー120に提供する。流体(例えば、創傷滲出液)は、導管140を通して引き出され、キャニスター内に貯蔵され得る。一部の実施形態では、流体は、創傷充填材130または1つ以上の吸収性の層(図示せず)によって吸収される。
【0030】
本出願のポンプアセンブリおよびその他の実施形態とともに利用され得る創傷被覆材は、Smith&Nephewから入手可能なRenasys-F、Renasys-G、Renasys ABおよびPico被覆材を含む。本出願のポンプアセンブリおよびその他の実施形態とともに使用され得る陰圧創傷療法システムのこうした創傷被覆材およびその他の構成要素のさらなる説明は、米国特許公開第2011/0213287号、第2011/0282309号、第2012/0116334号、第2012/0136325号および第2013/0110058号において見出され、それらの全体が参照により援用される。その他の実施形態では、その他の適切な創傷被覆材が利用され得る。
【0031】
図2Aは、一部の実施形態によるポンプアセンブリ230およびキャニスター220の前方図を示す。示されるように、ポンプアセンブリ230とキャニスターが接続されて、それにより、陰圧創傷療法デバイスを形成する。ポンプアセンブリ230は、一部の実施形態におけるポンプアセンブリ150と類似し、またはそれと同一であり得る。
【0032】
ポンプアセンブリ230は、アラームを示すように構成される視覚的指標202およびTNPシステムの状態を示すように構成される視覚的指標204などの1つ以上の指標を含む。指標202および204は、通常のまたは適切な動作状態、ポンプ停止、ポンプまたは停電に供給される電力、創傷カバーまたは流れ経路内の漏れの検出、吸引閉塞、またはいくつかのその他の同様のまたは適切な状態またはそれらの組み合わせをユーザーに警告することを含む、システムの様々な動作または停止状態を患者または医療提供者などのユーザーに警告するように構成され得る。ポンプアセンブリ230は、追加的な指標を備えることができる。ポンプアセンブリは、単一な指標または複数の指標を使用することができる。任意の適切な指標は、例えば、視覚的な、音声的な、触覚的な指標等として使用され得る。指標202は、例えば、キャニスター充填、低電力、導管140の分離、創傷シール120におけるシール破壊等の警告状態を示すように構成され得る。指標202は、ユーザーの注意を引くために赤のせん光を表示するように構成され得る。指標204は、例えば、療法送達は正常である、漏れが検出された等のTNPシステムの状態を示すように構成され得る。指標204は、例えば、緑、黄などの1つ以上の異なる色の光を表示するように構成され得る。例えば、緑色の光は、TNPシステムが適切に動作している時に放出されてもよく、黄色の光は、警告を示すために放出され得る。
【0033】
ポンプアセンブリ230は、ポンプアセンブリのケースに形成されたくぼみ208に取り付けられる、ディスプレイまたはスクリーン206を含む。ディスプレイ206は、タッチスクリーンディスプレイであることができる。ディスプレイ206は、取扱い説明ビデオなどの視聴覚(AV)コンテンツの再生を支持することができる。以下で説明されるように、ディスプレイ206は、いくつかのスクリーンまたはグラフィカルユーザーインタフェース(GUI)がTNPシステムの動作を構成する、制御する、および監視するように構成され得る。ポンプアセンブリ230は、ポンプアセンブリのケースに形成されたグリップ部分210を含む。グリップ部分210は、例えば、キャニスター220の取り外しの間などに、ユーザーがポンプアセンブリ230を保持することを支持するように構成され得る。キャニスター220は、例えば、キャニスター220が流体で充填された時などに、別のキャニスターと取り替えられ得る。
【0034】
ポンプアセンブリ230は、ユーザーがTNPシステムの動作を操作し、および監視することを可能にするように構成される、1つ以上のキーまたはボタンを含む。示されるように、これには、ボタン212a、212bおよび212c(集合的にボタン212として言及される)が含まれる。ボタン212aは、ポンプアセンブリ230の電源を入れる/切るための電源ボタンとして構成され得る。ボタン212bは、陰圧療法の供給のためのプレイ/ポーズボタンとして構成され得る。例えば、ボタン212bを押すことにより、療法を開始することができ、その後ボタン212bを押すことにより、療法を停止または終了することができる。ボタン212cは、ディスプレイ206またはボタン212をロックするように構成され得る。例えば、ボタン212cは、ユーザーが故意でなく療法の供給を変えることがないように押され得る。ボタン212cは、制御をアンロックするために押下され得る。その他の実施形態では、追加的なボタンが、用いられてもよく、または示したボタン212a、212bまたは212cのうち1つ以上が、省かれてもよい。複数のキーの押下または連続的なキーの押下は、ポンプアセンブリ230を動作させるために使用され得る。
【0035】
ポンプアセンブリ230は、カバーに形成される1つ以上のラッチ凹部222を含む。例示の実施形態では、2つのラッチ凹部222は、ポンプアセンブリ230の側部に形成され得る。ラッチ凹部222は、1つ以上のキャニスターラッチ221を使用してキャニスター220の取付けおよび分離を可能にするように構成され得る。ポンプアセンブリ230は、創傷くぼみ110から取り除かれる空気が漏れ出ることを可能にするための空気出口224を備える。ポンプアセンブリに入る空気は、抗菌フィルタなどの1つ以上の適切なフィルタを通り抜けることができる。これは、ポンプアセンブリの再利用性を維持することができる。ポンプアセンブリ230は、ポンプアセンブリ230に携帯ストラップを接続するための、または受け台を取り付けるための1つ以上のストラップ取付け部226を含む。例示の実施形態では、2つのストラップ取付け部226は、ポンプアセンブリ230の側部に形成され得る。一部の実施形態では、種々のこれらの特徴は省かれ、または種々の追加的な特徴がポンプアセンブリ230に加えられる。
【0036】
キャニスター220は、創傷くぼみ110から取り除かれる流体(例えば、滲出液)を保持するように構成される。キャニスター220は、キャニスターをポンプアセンブリ230に取り付けるための1つ以上のラッチ221を含む。例示の実施形態では、キャニスター220は、キャニスターの側部に2つのラッチ221を備える。キャニスター220の外部は、キャニスターが実質的に不透明であり、またキャニスターの中身が平面視で実質的に隠されるように、つや消しプラスチックから形成され得る。キャニスター220は、キャニスターのケースに形成されるグリップ部分214を備える。グリップ部分214は、例えば、装置230からのキャニスターの取り外しの間などに、ユーザーがポンプアセンブリ220を保持することを可能にするように構成され得る。キャニスター220は、実質的に透明な窓216を含み、それはまた、量の目盛りを含むことができる。例えば、示される300mLのキャニスター220は、50mL、100mL、150mL、200mL、250mLおよび300mLの目盛りを含む。キャニスターのその他の実施形態は、異なる量の流体を保持することができ、異なる目盛り尺度を含むことができる。例えば、キャニスターは、800mLのキャニスターであることができる。キャニスター220は、導管140に接続するための管状のチャネル218を備える。一部の実施形態では、グリップ部分214などの種々のこれらの特徴は省かれ、または種々の追加的な特徴がキャニスター220に加えられる。いくつかの開示されるキャニスターは、凝固剤を含んでもよく、または凝固剤を省いてもよい。
【0037】
図2Bは、一部の実施形態によるポンプアセンブリ230およびキャニスター220の背面図を示す。ポンプアセンブリ230は、音を生成するためのスピーカーポート232を備える。ポンプアセンブリ230は、フィルタアクセスドア234を含み、そのドアは、アクセスドア234を取り外し、抗菌または臭気フィルタなどの1つ以上のフィルタと連通し、それを取り替えるためのねじを有する。ポンプアセンブリ230は、ポンプアセンブリのケースに形成されたグリップ部分236を含む。グリップ部分236は、例えば、キャニスター220の取り外しの間などに、ユーザーがポンプアセンブリ230を保持することを可能にするように構成され得る。ポンプアセンブリ230は、表面上にポンプアセンブリ230を配置するためのねじカバーまたは足部またはプロテクターとして構成される、1つ以上のカバー238を含む。カバー230は、ゴム、シリコーンまたは任意のその他の適切な材料で形成され得る。ポンプアセンブリ230は、ポンプアセンブリの内部バッテリーを充電および再充電するための電源ジャック239を備える。電源ジャック239は、直流(DC)ジャックであることができる。一部の実施形態では、ポンプアセンブリは、電源ジャックが必要ないように、バッテリーなどの使い捨て可能な電源を備え得る。
【0038】
キャニスター220は、表面上にキャニスターを配置するための1つ以上の足部244を含む。足部244は、ゴム、シリコーンまたは任意のその他の適切な材料で形成されてもよく、キャニスター220が表面上に配置された時に安定した状態を保つように適切な角度に角度付けられてもよい。キャニスター220は、1つ以上の管がデバイスの前部へと抜け出ることを可能にするように構成される、管取付けレリーフ246を備える。キャニスター220は、キャニスターが表面上に配置された時にキャニスターを支持するためのスタンドまたはキックスタンド248を含む。以下で説明されるように、キックスタンド248は、開位置と閉位置との間で旋回することができる。閉位置において、キックスタンド248は、キャニスター220にラッチされ得る。一部の実施形態では、キックスタンド248は、プラスチックなどの不透明材料から作られ得る。その他の実施形態では、キックスタンド248は、透明材料から作られ得る。キックスタンド248は、キックスタンドに形成されるグリップ部分242を含む。グリップ部分242は、ユーザーがキックスタンド248を閉位置に位置付けることを可能にするように構成され得る。キックスタンド248は、穴249を含み、それは、ユーザーがキックスタンドを開位置に位置付けることを可能にする。穴249は、ユーザーが指を用いてキックスタンドを伸ばすことが可能となるようにサイズ設定され得る。
【0039】
図2Cは、一部の実施形態によるキャニスター220から分離されたポンプアセンブリ230を示す。ポンプアセンブリ230は、真空ポンプがそれを通じてキャニスター220に陰圧を伝達する、真空アタッチメント、コネクターまたは入口252を含む。ポンプアセンブリは、入口252を介して創傷からの気体などの流体を吸い出す。ポンプアセンブリ230は、1つ以上のUSBポートへのアクセスを可能にするように構成される、USBアクセスドア256を備える。一部の実施形態では、USBアクセスドアが省かれ、またUSBポートはドア234を通じてアクセスされる。ポンプアセンブリ230は、例えば、SD、コンパクトディスク(CD)、DVD、ファイアワイア、サンダーボルト、PCIエクスプレスなどの追加的なシリアル、パラレル、またはハイブリッドデータ転送インターフェースへのアクセスを可能にするように構成される、追加的なアクセスドアを含むことができる。その他の実施形態では、これらの追加的なポートのうち1つ以上は、ドア234を通じてアクセスされる。
【0040】
図3Aは、TNP装置310および遠隔データ処理システム320を含む、陰圧療法システム300Aの構成要素を示す。TNP装置310は、流体流路を介してTNP装置310と流体連通する創傷被覆材を使用して創傷を治療するように使用され得る。TNP装置310には、相互に電気的通信するように構成された、コントローラ311、メモリデバイス312、陰圧源313と、ユーザーインターフェース314と、電源315と、圧力センサ316と、トランシーバ317とが含まれ得る。電源315は、TNP装置310の1つ以上の構成要素に電力を供給することができる。TNP装置310は、本明細書で説明したような、またはその全体が参照により援用される米国特許公開第2016/0136339号および第2016/0184496号に記載のものと同様の圧力レベルで、また制御手法を使用して動作することができる。TNP装置310は、一部の実施形態におけるポンプアセンブリ150と類似し、またはそれと同一であり得る。
【0041】
コントローラ311は、メモリデバイス312に格納された命令に少なくとも従って、TNP装置310の1つ以上の他の構成要素の動作を制御することができる。例えば、コントローラ311は、陰圧源313の動作およびそれによる陰圧の供給を制御することができる。陰圧源313には、限定されないが、ロータリーダイヤフラムポンプもしくは他のダイヤフラムポンプ、圧電ポンプ、蠕動ポンプ、ピストンポンプ、ロータリーベーンポンプ、液封式ポンプ、スクロールポンプ、圧電変換器によって動作するダイヤフラムポンプ、または他の任意の好適なポンプもしくはマイクロポンプ、あるいは上記のものの任意の組み合わせなどのポンプが含まれ得る。
【0042】
ユーザーインターフェース314は、ユーザー入力を受信するか、またはユーザー出力を患者または介護者に提供する1つ以上の要素を含み得る。ユーザー入力を受信する1つ以上の要素は、ボタン、スイッチ、ダイヤル、またはタッチスクリーンなどを含むことができる。ユーザーインターフェース314は、例えば、療法使用のデータ、準拠しない使用のデータまたは療法使用の準拠しない使用に対するデータの比較を反映するレポートまたはその他の情報を生成し、表示するために使用され得る。別の実施例として、ユーザーインターフェース314は、患者参照番号または別の一意的識別子を提供するユーザー入力を受信してもよく、TNP装置310は、次に、患者によって使用のために作動されてもよく、本明細書で説明したように集められ、かつ記憶されたデータは、特定の患者を監視する使用のために患者参照番号と関係付けられてもよい。
【0043】
圧力センサ316は、(i)
図3Bに示されるような陰圧源313と創傷被覆材とに接続している流体流路の圧力、(ii)
図3Cに示されるような創傷被覆材での圧力、または(iii)
図3Dに示されるような陰圧源313での、または陰圧源313内の圧力などの、創傷被覆材の下側の圧力を監視するために使用され得る。陰圧源313が陰圧を与えるのに従って、陰圧源313は、流体流路を通じて伝搬され、圧力センサ316によって検出される圧力パルスを生成し得る。これらの圧力パルスは、圧力センサ316からの信号の大きさまたは周波数における変化またはバウンスとして示され得る。
【0044】
コントローラ311は、圧力センサ316によって出力された信号を分析して、それにより、流体流路内の圧力を決定することができる。コントローラ311は、例えば、デジタル信号プロセッサを用いるなどの、時間領域または周波数領域算出を含む1つ以上の手法を使用して信号を調べ得る。
【0045】
TNP装置310のコントローラ311またはその他の回路は、ノイズをフィルタリングし、次にフィルタリングした1つ以上の信号を動的に増幅することによって、圧力センサ316によって出力された1つ以上の信号を処理し得る。動的な増幅は、フィルタリングすることなく実行されてもよい。これは、本明細書に記載の特徴が小さい創傷または弱い圧力信号に適用されることを可能にし得る。例えば、増幅は、ソフトウエアまたはハードウエアによって制御され得る、プログラム可能な利得増幅器によって実行され得る。
【0046】
圧力センサ316による圧力の検出は、一部の実例において、陰圧源313によって供給される真空レベルを増大するまたは減少すること、陰圧源313を停止すること、陰圧源313の動作速度を変えること、陰圧源313のリズムを変えること、同じのものの組み合わせ等などの、陰圧源313の1つ以上の設定を変えることによって、向上され得る。コントローラ311は、例えば、1つ以上の設定の調節を自動的に管理することができる。
【0047】
一部の実装では、圧力センサ316は、別の圧力センサと組み合わせて用いられてもよく、その結果、例えば、
図3Eに示されるように、流体流路に位置付けられる、または流体流路に流体接続される少なくとも2つの圧力センサが、異なる圧力の測定を行うことを可能にする。例えば、第1の圧力センサは、創傷の上流に(例えば、陰圧源313Cの入口に、またはその近くに)位置付けられてもよく、第2の圧力センサは、創傷におけるもしくは創傷の近くの、またはキャニスターにおけるもしくはキャニスターの近くの圧力を検出するように位置付けられてもよい。この構成は、さらに、陰圧源313を創傷に接続する第1の流体流路、TNP装置310を創傷に接続する1つ以上の内腔を含み、また第2の圧力センサがそれを通じて創傷におけるもしくは創傷の近くの、またはキャニスターにおけるもしくはキャニスターの近くの圧力を監視することができる、第2の流体流路を形成する1つ以上の内腔を組み込むことによって達成され得る。第1および第2の流体流路は、相互に流体的に分離され得る。少なくとも2つの圧力センサが使用される場合、第1および第2の流体流路内の圧力変化のレート(例えば、ピーク間の圧力または最大圧力における)が定められてもよく、第1の圧力センサと第2の圧力センサとの間で検出された圧力差が定められてもよい。これらの値は、例えば、第1の流体流路または第2の流体流路における、漏れ、閉塞、キャニスター充填状態、血液の存在などの種々の動作状態を検出するために個々に、または一緒に使用され得る。一部の実装では、複数の冗長圧力センサが、圧力センサのうち1つ以上の故障に対して保護するために提供され得る。
【0048】
トランシーバ317は、ネットワーク330を介してデータ処理システム320と通信するように使用され得る。トランシーバ317は、例えば、TNP装置310によって管理された療法プログラムに対するアラーム、測定された圧力または変化のようなデバイス使用データをデータ処理システム320に送信することができる。ネットワーク330は、セルラー方式通信ネットワークのような無線通信ネットワークなどの通信ネットワークであることができる。メモリデバイス312は、トランシーバ317によって送信され得るデバイス使用データを記憶するように使用され得る。
【0049】
データ処理システム320は、一部の実装では、トランシーバ317から受信した圧力データを分析して、受信した圧力データが、TNP装置310に関して説明したような分析手法を使用することなどの患者への使用における陰圧源313を示すものであるかどうかを決定することができる。データ処理システム320は、例えば、療法使用のデータ、準拠しない使用のデータまたは療法使用の準拠しない使用に対するデータの比較を反映するレポートまたはその他の情報を生成し、表示することができる。一例では、データ処理システム320のユーザーは、患者参照番号またはTNP装置と関連するTNP装置番号を入力してもよく、データ処理システム320は、次に、患者参照番号またはTNP装置番号に関する療法使用のデータまたは準拠しない使用のデータなどのデータを提供する、または表示することができる。
【0050】
図3Bは、
図3AのTNP装置310のほか、第1の流体流路340A、創傷被覆材350および創傷360を含む、陰圧療法システム300Bを示す。TNP装置310は、第1の流体流路340Aを介して陰圧源313と流体連通する創傷被覆材350を使用して創傷360を治療するように使用され得る。特に、
図3Bは、第1の流体流路340A内の圧力を測定するために、圧力センサ316が、例えば、TNP装置310の入口においてまたはその近くにおいて、第1の流体流路340Aに位置付けられ得ることを示す。
【0051】
図3Cは、圧力センサ316が、その代わりに、創傷被覆材350が創傷360に結合された時の創傷被覆材350の下側の圧力などの創傷被覆材350における、またはその近くの圧力を測定するように位置付けられ得る点において陰圧療法システム300Bと異なる、陰圧療法システム300Cを示す。
【0052】
図3Dは、圧力センサ316が、その代わりに、陰圧源313における圧力を測定するように位置付けられ得る点において陰圧療法システム300Bと異なる、陰圧療法システム300Dを示す。一例では、圧力センサ316は、陰圧源313の一部分であり、かつ陰圧源313内にあり、それにより、陰圧源313によって生成された圧力を測定することができる。別の実施例では、圧力センサ316は、陰圧源313から分離され、陰圧源313の入口における、またはその近くの圧力を測定するように位置付けられ得る。
【0053】
図3Eは、陰圧療法システム300Eが、第2の流体流路340Bをさらに含み、また圧力センサ316が、差圧センサであり、または2つの圧力センサを含むことができる点において陰圧療法システム300Bと異なる、陰圧療法システム300Eを示す。圧力センサ316が2つの圧力センサを含み得る場合、圧力センサ316の2つの圧力センサのうちの一方は、第1の流体流路340Aに位置付けられて、第1の流体流路340A内の圧力を測定することができ、圧力センサ316の2つの圧力センサのうちの他方は、第2の流体流路340Bに位置付けられて、第2の流体流路340B内の圧力を測定することができる。圧力センサ316が差圧センサであり得る場合、圧力センサ316は、第1の流体流路340Aおよび第2の流体流路340Bに流体接続され得る。第1の流体流路340Aは、したがって、陰圧源313によって使用されて、創傷被覆材350に陰圧を与えることができ、第2の流体流路340Bは、主として圧力センサ316によって使用されて、創傷被覆材360の下などの創傷被覆材350における、またはその近くの圧力を測定することができる。圧力センサ316は、陰圧源313によって供給される圧力と、創傷被覆材350における、またはその近くの圧力との間の差圧測定を実行するためにTNP装置310により使用され得る。
【0054】
図3Fは、陰圧療法システム300Fが、創傷被覆材350が創傷360に結合された時の創傷被覆材350の下側の圧力などの創傷被覆材350における、またはその近くの圧力を測定するように位置付けられる追加的な圧力センサ370をさらに含むことができる点において陰圧療法システム300Bと異なる、陰圧療法システム300Fを示す。追加的な圧力センサ370は、創傷被覆材350で測定された圧力に応答して、信号を生成し、TNP装置310にその信号を出力することができる。圧力センサ316および追加的な圧力センサ370は、したがって、陰圧源313によって供給される圧力と、創傷被覆材350における、またはその近くの圧力との間の差圧測定を実行するためにTNP装置310により使用され得る。
【0055】
図3Gは、キャニスター380が、第1の流体流路340Aにおいて、陰圧源313と創傷被覆材350との間に結合され得る点において陰圧療法システム300Bと異なる、陰圧療法システム300Gを示す。キャニスター380は、創傷360から取り出された滲出液を集めることができる。
図3C~
図3Fの実施例は、一部の実装において、キャニスター380をさらに含むように同様に変更され得る。
【0056】
図4は、TNP装置410およびセンサ420A、420B~420Nを含む陰圧療法システム400を示す。センサ420A、420B~420Nは、有利には、一定の実施形態において、患者へのTNP装置410の結合またはその使用を確実にするために使用され得る。TNP装置410は、一部の実施形態におけるTNP装置310と類似し、またはそれと同一であり得る。センサ420A、420B~420Nのうちの1つは、一部の実施形態における圧力センサ316と類似し、またはそれと同一であり得る。センサ420A、420B~420Nのうちの1つは、一部の実施形態における圧力センサ370と類似し、またはそれと同一であり得る。
【0057】
センサ420A、420B~420Nは、患者の接触部位430A、430B~430Nからそれぞれ検出することができ、または患者に応答することができる。センサ420Aは、例えば、接触部位430Aから検出することができ、センサ420Bは接触部位430Bから検出することができ、一方で、センサ420Nは接触部位430Nから検出することができる。接触部位430A、430B~430Nは、患者の組織部位(例えば、患者の創傷、肢または頭における患者の内部または外部組織)、患者に取り付けられた物品(例えば、衣類または宝石類)、またはTNP装置410もしくはキャニスターのような関連する構成要素の一部分を含むことができる。センサ420A、420B~420Nのうち1つ以上は、創傷被覆材の一部分として組み込まれてもよく、または創傷被覆材に結合するように構成されてもよい。
【0058】
センサ420A、420B~420Nは、例えば、圧力センサ、音響センサ、化学的なセンサ、電流センサ、電位センサ、インピーダンスセンサ、磁気センサ、光学センサ、色センサ、圧力センサ、圧電センサ、温度計、熱センサ、近接センサ、バイオセンサ、歪みゲージ、同様の組み合わせ等のうち1つ以上を含むことができる。センサ420A、420B~420Nは、一部の実装において、異なる位置で検出するように配置される同様のセンサ、または異なるセンサであることができる。
【0059】
センサ420A、420B~420Nのそれぞれは、無線または有線通信を介して、対応する監視した接触部位430A、430B~430Nのうちの1つに応答する1つ以上の信号をTNP装置410に送信することができる。1つ以上の信号は、例えば、患者の生理的状態または患者の動きに応答することができる。次に、TNP装置410は、1つ以上の信号を処理して、2つ以上のセンサ420A、420B~420Nからの1つ以上の信号が、TNP装置410または創傷被覆材のような関連する構成要素が患者に結合されている、または患者に準拠した使用状態にあることを示すかどうかを決定することができる。TNP装置410は、例えば、センサ420A、420B~420Nのうちの2つ以上のそれぞれまたは少なくとも1つのサブセットが、生理学的に許容される信号(例えば、患者の呼吸、脈拍または動きのような患者の活動に応答する信号)であって、患者への成功した結合またはTNP装置410と患者の関連付けを示す信号を、TNP装置410に提供するかどうかを決定することができる。
【0060】
創傷結合検出
図5は、
図1のポンプアセンブリ150、
図2A~
図2Cのポンプアセンブリ230、
図3AのTNP装置310、またはあらかじめその全体が参照によって本明細書に援用された米国特許公開第2016/0136339号および第2016/0184496号に記載のものと同様のその他のポンプアセンブリなどのデバイスによる創傷結合検出プロセス500を示す。便宜上、創傷結合検出プロセス500が
図3AのTNP装置310との関連において説明されるが、代わりに、本明細書に記載の他のシステムで、または示されていない他のシステムによって実行される場合もある。
【0061】
創傷結合検出プロセス500は、TNP装置310が、TNP装置310に結合された創傷被覆材が患者の創傷に結合されているかどうかを自動的に決定することを可能にし得る。TNP装置310は、有利には、一定の実施形態において、創傷被覆材が創傷に結合されていると決定した時に第1の表示を、または創傷被覆材が創傷に結合されていないと決定した時に第1の表示とは異なる第2の表示を出力することができる。
【0062】
ブロック502では、プロセス500は、圧力データを受信することができる。例えば、コントローラ311は、陰圧源313を創傷被覆材に結合する流体流路で測定された圧力の大きさを示す圧力データを受信することができる。圧力は、例えば、本明細書において、またはあらかじめその全体が参照によって本明細書に援用された米国特許公開第2016/0136339号および第2016/0184496号において説明されるような測定手法を用いて、圧力センサ316によって測定され得る。圧力センサ316は、有線または無線を介してコントローラ311に情報を伝達することができる。一定の実装では、圧力センサ316は、創傷にまたはその近くに位置付けられて、無線でコントローラ311に情報を伝達することができる。一部の実施形態では、圧力センサデータは、例えば、0.5秒、1秒、3秒などの継続時間にわたって測定された1つ以上の圧力の大きさを含む。
【0063】
ブロック504では、プロセス500は、被覆材が創傷に結合されているかどうかを決定することができる。例えば、コントローラ311は、ある期間にわたる大きさの変化などの圧力データから、創傷被覆材が患者の創傷に結合されているかどうかを決定することができる。
【0064】
一例では、コントローラ311は、ある期間にわたる大きさの変化の不規則性の測定を1つ以上の閾値と比較して、創傷被覆材が創傷に結合されているかどうかを決定することができる(一部の実例では、誤った圧力読取り、ノイズなどによる誤検知を防ぐために複数回の比較を実行する)。不規則性の測定は、少なくとも1秒、10秒、30秒、1分または5分の継続時間にわたる大きさの変化に応答することができる。コントローラ311は、ある期間にわたる大きさに基づく統計動作、トレンディング動作、フィルタリング動作、累積合計動作、またはローパスフィルタリング動作を実行して、不規則性の測定を生成することができる。コントローラ311は、不規則性の測定が、混沌とした状態に対応する閾値を満たすこと、または定常状態に対応する閾値を満たさないことの決定に応じて、創傷被覆材が創傷に結合されていることを決定することができる。一方では、コントローラ311は、不規則性の測定が、混沌とした状態に対応する閾値を満たさないこと、または定常状態に対応する閾値を満たすことの決定に応じて、創傷被覆材が創傷に結合されていないことを決定することができる。不規則性の測定と比較される1つ以上の閾値は、さらに、経時的に変わることができ(例えば、患者を治療するために自動的に調節される)、またはTNP装置310に関する動作状態に応答して設定されてもよく(例えば、バックグラウンドノイズに多少敏感になるように調節される)、または患者の健康に関するニーズ(例えば、患者の創傷の大きさ、性別または患者の年齢に応じて調節される)に応答して設定されてもよい。
【0065】
さらに別の実施例では、コントローラ311は、ある期間にわたる大きさを1つ以上の圧力パターン(メモリデバイス312に記憶されている1つのパターンなど)と比較して、創傷被覆材が創傷に結合されているかどうかを決定することができる。1つの圧力パターンは、例えば、創傷被覆材が創傷に結合されている時の流体流路内の圧力を示すことができ、別の異なる圧力パターンは、創傷被覆材が創傷に結合されていない時の流体流路内の圧力を示すことができる。1つ以上の圧力パターンに関連する経時的な大きさの類似性の度合いは、創傷被覆材が創傷に結合されているかどうかを反映するように経時的な大きさを割り当てるために使用され得る。
【0066】
ブロック506では、プロセス500は第1の表示を出力することができる。例えば、創傷被覆材が創傷に結合されていることの決定に応じて、コントローラ311は、創傷被覆材が創傷に結合されていることを示す第1の表示を出力することができる。第1の表示は、一部の実例において、TNP装置310の準拠した使用を示すことができる。第1の表示は、例えば、メモリデバイス312への記憶のために第1の表示を出力すること、トランシーバ317を介してデータ処理システム320に第1の表示を送信すること、ユーザーインターフェース314を介するユーザーへの呈示のために第1の表示を出力すること、またはTNP装置310のデバイス使用データと関連して第1の表示を記憶することのうち1つ以上のために出力され得る。第1の表示の出力は、例えば、陰圧源313の連続的な動作を可能にするために、TNP装置310の動作を追加的に制御することができる。
【0067】
ブロック508では、プロセス500は第2の表示を出力することができる。例えば、創傷被覆材が創傷に結合されていないことの決定に応じて、コントローラ311は、創傷被覆材が創傷に結合されていないことを示す第2の表示を出力することができる。第2の表示は、一部の実例において、TNP装置310の準拠しない使用を示すことができる。第2の表示は、例えば、メモリデバイス312への記憶のために第2の表示を出力すること、トランシーバ317を介してデータ処理システム320に第2の表示を送信すること、ユーザーインターフェース314を介するユーザーへの呈示のために第2の表示を出力すること、またはTNP装置310のデバイス使用データと関連して第2の表示を記憶することのうち1つ以上のために出力され得る。第2の表示の出力は、TNP装置310が準拠しない様式で使用され得るので、例えば、陰圧源313の動作を停止させるために、TNP装置310の動作を追加的に制御することができる。
【0068】
プロセス500は、TNP装置310が準拠したまたは準拠しない様式で使用され得るかどうかに関する追加的な情報または確実性を提供するために、例えば、
図4に関して説明したような別のセンサからのデータを調べることができる。例えば、TNP装置310に関連する別のセンサが患者の脈拍または呼吸を反映する信号を検出する場合、TNP装置310は、TNP装置310が準拠しない様式ではなく準拠した様式で使用されていることのさらなる確実性および情報を有し得る。
【0069】
図6は、TNP装置310などのTNP装置の陰圧源が患者の創傷に使用されているTNPシステムに関する、例示的な時間に対する圧力の曲線600を示す。
図6から分かるように、陰圧源が一定の時間作動すると、時点T1において、流体流路内の圧力の大きさは、概して目標圧力レベルの辺りを変動する。しかし、流体流路内の圧力の大きさは、いくつかの理由により、時点T1~T2において、実質的に混沌としており、予測できない状態であり得る。患者は、位置、呼吸または脈拍の物理的な調節のために連続的に移動することができ、そのため、例えば、創傷、被覆材シールなどの幾何学的配置に影響を与える。結果として、創傷の体積は、圧力の大きさの変化をもたらし得る軽微な変更を連続的に受け得る。さらに、創傷は、それが流体流路に入ることに基づいて気体量の減少を引き起こし得る、滲出液を生成し得る。気体量は、システム内の圧縮可能な量を表すことができるので、この圧縮可能な量は、陰圧源および患者の動きによって生成される圧力スパイクに対するダンパーとしての役目を果たすことができ、その結果、圧力スパイクは、減少したダンピングによって徐々に大きくなる。さらに、液体は、創傷被覆材から出て、スラグにおける流体流路を通じて移動することができ、これらのスラグは、圧力スパイクに影響(例えば、大きさまたは周波数の増加)を与えることができる。全体的に、これは結果として、圧力読取りにおける比較的相当量のノイズであり得る。
図6によって示される圧力の大きさは、したがって、時点T1~T2において、定常状態ではなく混沌とした状態の反映であり得る。さらに、または別の方法として、周波数などの圧力のその他の特性は、変化として監視され得る。例えば、時点T1~T2において、圧力信号の周波数は、継続時間614よりも継続時間612にわたって小さい。
【0070】
一実装では、TNP装置310は、上記の段落で説明されたノイズを監視して、陰圧源が患者に接続されているかどうかを決定することができる。したがって、TNP装置11は、例えば、(i)患者データまたは(ii)デバイス誤用のいずれかとして事象の使用データおよびログにフラグを付けることができる。TNP装置310は、一部の実例において、累積和(Cusum)またはローパスフィルタリングなどの統計的な技法、トレンディング技法またはフィルタリング技法を使用して、圧力読取りが定常状態(創傷に取り付けられていない)または混沌とした状態(創傷に取り付けられている)にあり得るかどうかを決定することができる。
【0071】
図7は、TNP装置310などのTNP装置の陰圧源が患者の創傷に使用されていないTNPシステムに関する、例示的な時間に対する圧力の曲線700を示す。
図7から分かるように、陰圧源が一定の時間作動すると、時点T3において、流体流路内の圧力の大きさは、概して目標圧力レベルの辺りを変動する。周波数は、全体的に特定の周波数値の辺りを変動することができる。しかし、流体流路内の圧力の大きさは、少なくとも前述の2つの段落で説明された理由だけでなく本明細書に記載のその他の理由により、TNP装置が創傷に使用されている時よりも、混沌とした状態でなくなり、より予測可能な状態(時点T3~T4においてなど)であることができる。
図7によって示される圧力の大きさは、したがって、時点T3~T4において、混沌とした状態ではなく定常状態の反映であり得る。
【0072】
図6における時点T1~T2と
図7における時点T3~T4で示される圧力特性を比較することから、以下の特徴が認められ得る。
図6のT1~T2における圧力の特性は、
図7のT3~T4における経時的な圧力変動と比較して、より大きい圧力大きさの変動、経時的なより多くの圧力周波数変動、より高い圧力大きさの成分(スパイクなど)、または圧力の大きさまたは周波数のより大きいランダム性のうち1つ以上を有することができる。
【0073】
一部の実施形態では、自動回帰統合移動平均(ARIMA)、汎用自動回帰仮定不等分散性(GARCH)、またはCusum(または累積和)などの時系列分析アルゴリズムは、患者の創傷での使用を検出するために使用され得る。Cusumは、各サンプルと平均との間の差の累積和として定義され得る(例えば、変化がない場合、Cusumはゼロである)。Cusumは、根元的な可変において変動を追跡するために使用され得る。
【0074】
Cusumは、いくつかの方法で定められ得る。一定の実装では、非因果的Cusumは、平均からの差が算出され得る前にすべてのサンプルの認識を要求する、入力信号の全継続時間から算出された平均を使用する。非因果的Cusumは、前の分析からの平均の推定が使用され得る場合を除いて、実時間の監視および検出および識別に適していなくてもよい。非因果的Cusumは、ゼロ値を有して開始および終了することができる。
【0075】
スライディング因果的Cusumは、平均を推定するためにスライディングウィンドウを用いて定められ得る。非因果的Cusumにおけるような傾きの変化をもたらすのではなく、初期段階でのステップ変化は、ゼロからの第1の離脱を得ることができる。スライディング因果的Cusumは、非因果的Cusumよりも短い継続時間内でデータを生成することができる。スライディング因果的Cusumは、わずかな領域が変化を検出するために用いられることを可能にしてもよく、丸みがつけられなくなり、ロールオーバーエラー(例えば、長い連続的なデータの使用に起因し得る数値誤差)がなくなり得る。
【0076】
累積因果的Cusum測定は、一部の実施形態において、継続時間の開始からの前のサンプルから現在のサンプルのすべてを使用して、現在のサンプルの平均を推定し得る。Cusumのこのバージョンは、上述の2つのバージョンの中間物であることができ、スライディング因果的Cusumよりも平滑であるが、ゼロ値で終了しなくてもよい。
【0077】
TNP装置は、例えば、創傷モデルに接続されてもよく、1つ以上のセンサは、表1におけるパラメーターのうち1つ以上を検出するために使用されてもよい。これらのパラメーターは、陰圧創傷療法システムの動作の間に得られる、圧力測定、作動レベルの測定などを含むことができる。一部の実施形態では、作動レベルは、モータ駆動信号の電流(または電圧)、PWM信号およびモータ速度などの陰圧源(例えば、ポンプ)のアクチュエータ(例えば、モータ)の1つ以上のパラメーターを含むことができる。装置は、流体流路における、陰圧源によって与えられる真空レベル、創傷から取り出された水のレート、創傷から取り出された滲出液のレート、創傷から取り出された血液のレート、または気体(例えば、空気)漏洩レートのうちの1つの変化の状態下で動作されてもよく、一方でその他のパラメーター定数は、維持される。このように、動作パラメーターが定められることができ、統計が算出および分析されることができ(例えば、Cusum分析を使用することによって)、患者の創傷での使用を検出するための多くの適切な統計(複数可)が選択されることができる。さらに、一部の実施形態では、表1における統計のうち1つ以上の統計特性が算出される。これらの統計特性は、平均、標準偏差、歪度(第3の統計モーメント)、尖度(第4の統計モーメント)、最小値および最大値のうち1つ以上を含むことができる。
【0078】
【0079】
関連性および適合性分析の使用は、例えば、その全体が参照によって援用される、2017年2月10日に出願された、名称を「SYSTEMS AND METHODS FOR DETECTING OPERATIONAL CONDITIONS OF REDUCED PRESSURE THERAPY」とする国際特許公開PCT/US2017/017538に記載され、以下の統計は、TNP装置の1つ以上の動作状態の検出および識別のために選択され得る。
【0080】
【0081】
例えば、
図8~
図10に示されるグラフにおいて、TNP装置は、最初に定常状態で動作され、その後は動作パラメーターまたは変数のうちの1つを変えた。
図8では、流体流路内の気体(例えば、空気)漏れの度合いが変えられ(例えば、約5秒で60sccmから180sccmへと変えられ)、集められ、分析したデータを、漏洩レートにおける急な増大の検出を実施するために使用した。
図9では、流体(例えば、滲出液)の流量が変えられ(例えば、約5秒で流体のボーラスを流体流路内に加える)、集められ、分析したデータを、流体流量の変化の検出を実施するために使用した。
図10では、陰圧源により生成される真空レベルが変えられ(例えば、約18秒で-80mmHgから-120mmHgへ)、集められ、分析したデータを、流体流路内の真空圧力の変化の検出を実施するために使用した。
【0082】
図8は、一部の実施形態による、滲出液が創傷から吸い出された時の気体漏れの検出800を示す。4つのプロット800a、800b、800cおよび800dは、表2における統計の未加工(または処理されていない)の値、表2における統計の非因果的Cusum、スライディング因果的Cusum、および累積因果的Cusumにそれぞれ対応して示される。プロット800a~dにおいて、曲線802は、未加工の真空の平均の未加工のCusum値を表し、曲線804は、モータ電流の回転平均の標準偏差の未加工のCusum値を表わし、曲線806は、ポンプ速度の回転標準偏差の尖度の未加工のCusum値を表し、曲線808は、モータ電流の回転標準偏差の標準偏差を表わす。プロット800a~dにおけるX軸は、継続時間(例えば、60秒)に対応する。プロット800aにおけるY軸は、対数的な尺度(統計の正規化した異なる未加工の値に対する)を表し、プロット800b~dにおけるY軸は、Cusum値が一定の範囲(-1.0、1.0)にあるように線形に尺度化(または正規化)される。プロット800a~dは、気体漏洩レート(例えば、約5秒で60sccm~180sccm)における変化(例えば、増加)に対応するデータを取り込む。
【0083】
図9は、一部の実施形態による、滲出液が創傷から吸い出された時の流体レートの変化の検出900を示す。4つのプロット900a~dは、表2における統計(802、804、806および808と明示される)の未加工の(または処理されていない)値、統計の非因果的Cusum、スライディング因果的Cusum、および累積因果的Cusumにそれぞれ対応して示される。プロット800a~dは、滲出液のボーラスが流体流路内に放出された(例えば、約5秒において)ことによる、滲出液流量の変化(例えば、増加)に対応するデータを取り込む。
【0084】
図10は、一部の実施形態による、滲出液が創傷から吸い出された時の真空レベルの変化の検出1000を示す。4つのプロット1000a~dは、表2における統計(802、804、806および808と明示される)の未加工の(または処理されていない)値、統計の非因果的Cusum、スライディング因果的Cusum、および累積因果的Cusumにそれぞれ対応して示される。プロット1000a~dは、ポンプによって与えられる真空レベル(例えば、約18秒で-80mmHg~-120mmHg)における変化(例えば、増加)に対応するデータを取り込む。
【0085】
一定の実装において、国際特許公開PCT/US2017/017538で記載されるものと同様のプロットが、水または血液などの別のタイプの流体が流体流路内に加えられた時に得られ得る。
【0086】
本明細書に記載の1つ以上の動作状態の検出は、さらに、患者の創傷での使用の検出のために使用され得る。例えば、
図8を参照すると、モータ電流の回転平均の標準偏差(804)に関する種々のCusum(非因果的、スライディング因果的および累積因果的)は、約5秒で気体漏れの増加に応答する。800bに示される非因果的Cusumは、約5~8秒において急激に増加し、約9~30秒において平坦であり、ついで、約30秒後に徐々に減少する。800cに示されるスライディング因果的Cusumは、約5~7秒において比較的平坦なままであり、約9秒において急激に減少し、その後は、比較的平坦である。800cに示される累積因果的Cusumは、約5~8秒において比較的平坦なままであり、その後は、線形または単調に減少する。鮮鋭な、漸進的な、または線形の変化(増加または減少)を含むいくつかのこうしたパターンは、1つ以上の閾値と比較されて、気体漏洩レートの変化を検出することができる。気体漏洩レートのこうした変化の検出は、患者の創傷への使用を示すことができる。
【0087】
別の実施例として、
図9を参照すると、ポンプ速度の回転標準偏差の尖度(806)に関する種々のCusum(非因果的、スライディング因果的および累積因果的)は、約5秒で滲出液流量の増加に応答する。プロット900b~dに示されるように、曲線806は、約6秒後に実質的に周期的であり、約20、25および35秒でいくつかの明確に区別できるピークに到達する。滲出液流量の変化を示すこうしたパターンは、例えば、1つ以上の閾値と比較することによって検出されてもよく、患者の創傷への使用の表示を提供するために使用され得る。
【0088】
さらに別の実施例として、
図10を参照すると、平均真空(802)に関する種々のCusum(非因果的、スライディング因果的および累積因果的)は、約18秒で真空レベルの増加に応答する。1000bに示される非因果的Cusumは、約18秒後に線形または単調に増加する。1000cに示される累積因果的Cusumは、約18秒後、線形または単調に増加したままである。線形の変化(増加または減少)を含むいくつかのこうしたパターンは、1つ以上の閾値と比較されて、真空レベルの変化を検出することができる。気体漏洩レートのこうした変化の検出は、患者の創傷への使用を示すことができる。
【0089】
血液の存在または血液の流量の変化は、例えば、国際特許公開PCT/US2017/017538に記載のようなモータ電流の回転標準偏差(808)の標準偏差に基づいて検出され得る。気体漏洩レート、真空レベル、滲出液流量または血液流量の変化のうち任意の1つ以上の検出は、患者の創傷への使用の表示を提供するために使用され得る。
【0090】
他の変化形
一部の実施形態では、陰圧創傷療法デバイスの準拠した使用および準拠しない使用を検出するための装置が開示される。装置は、メモリデバイスおよびプロセッサを含むことができる。メモリデバイスは、陰圧源と創傷被覆材を接続する流体流路内のある期間にわたる圧力の大きさを示す、圧力データを記憶することができる。プロセッサは、メモリデバイスと通信することができる。プロセッサは、陰圧源が創傷被覆材に陰圧を与えた時に、創傷被覆材が創傷に結合されているかどうかをある期間にわたる大きさの変化から決定することができ、陰圧源が創傷被覆材に陰圧を与えた時に創傷被覆材が創傷に結合されていることの決定に応答して、第1の表示を出力することができ、陰圧源が創傷被覆材に陰圧を与えた時に創傷被覆材が創傷に結合されていないことの決定に応答して、第1の表示とは異なる第2の表示を出力することができる。
【0091】
上記の段落に記載の装置は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る:装置は、通信ネットワークを介して圧力データを受信するように構成される、受信機をさらに含むことができる。通信ネットワークは、無線通信ネットワークであることができる。プロセッサは、ある期間にわたる大きさの変化の不規則性の測定を閾値と比較して、創傷被覆材が創傷に結合されているかどうかを決定することができる。プロセッサは、ある期間にわたる大きさに基づいて統計動作、トレンディング動作、フィルタリング動作、累積合計動作、またはローパスフィルタリング動作を実行して、出力値を生成することと、出力値が定常状態よりも混沌とした状態を示す決定に応じて、創傷被覆材が創傷に結合されていると決定することと、を行うことができる。プロセッサは、ある期間にわたる大きさを圧力パターンと比較して、創傷被覆材が創傷に結合されているかどうかを決定することができる。プロセッサは、グラフイックユーザーインタフェースへのユーザーに対する呈示のために第2の表示を出力するために、第2の表示を出力することができる。プロセッサは、グラフイックユーザーインタフェースへのユーザーに対する呈示のために警告を生成して伝えるために、第2の表示を出力することができる。プロセッサは、デバイス使用データが陰圧源の準拠した使用と関連することを示すために、メモリデバイスに、第1の表示と関連するデバイス使用データを記憶することができる。プロセッサは、デバイス使用データが陰圧源の準拠しない使用と関連することを示すために、メモリデバイスに、第2の表示と関連するデバイス使用データを記憶することができる。
【0092】
前述の2つの段落のいずれかに記載した装置の動作方法または製造方法が開示される。
【0093】
本明細書で提供される閾値、限界値、期間などの値は、絶対的なものであることを意図するものではなく、したがっておおよそのものであり得る。さらに、本明細書で提供される任意の閾値、限界値、期間などは、自動的にまたはユーザーによって、固定されるかまたは変えられ得る。さらに、本明細書で使用される場合、参照値に関連した、超える、超、未満などの相対的な程度を表す用語は、参照値と等しい場合も包含することが意図される。例えば、正の方向に参照値を超えることは、参照値以上であることを包含することができる。その上、本明細書で使用される場合、参照値に関連した、超える、超、未満などの相対的な程度を表す用語は、参照値に関連した、未満である、未満、超などの開示された関係とは逆のものも包含することが意図される。また、種々のプロセスのブロックは、ある値が特定の閾値に達するかまたは達しないかを判定することに関して説明され得るが、ブロックは、例えば、ある値が(i)閾値未満であるかもしくは閾値を超えているか、または(ii)閾値を満たすかもしくは満たしていないかに関しても同様に解釈され得る。
【0094】
特定の態様、実施形態、または実施例に関連して説明される特性、物質、特徴、または群は、本明細書に記載される他の任意の態様、実施形態、または実施例に、これらと両立できないことがない限り、適用可能であることを理解されたい。(あらゆる特許請求の範囲、要約書、および図面を含む)本明細書において開示されるすべての特徴、および/またはそのように開示されるあらゆる方法もしくはプロセスのすべてのステップは、そのような特徴および/またはステップのうち少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わされてよい。本発明の保護するものは、前述の任意の実施形態の詳細に限定されない。保護するものは、本明細書(添付の任意の特許請求の範囲、要約書、及び図面を含む)において開示される特徴のうちの任意の新規なもの、もしくは任意の新規な組み合わせに及び、または同様に開示される任意の方法またはプロセスのステップのうちの任意の新規なもの、もしくは任意の新規な組み合わせに及ぶ。
【0095】
一定の実施形態が説明されてきたが、これらの実施形態は、単に例として提示されており、保護範囲を限定することを意図するものではない。実際、本明細書に記載の新規な方法及びシステムは、様々な他の形態で具現化されてもよい。さらに、本明細書に記載の方法及びシステムの形態において、様々な省略、置換、及び変形がなされ得る。一部の実施形態では、図示および/または開示されたプロセスにおいて実施される実際のステップは、図に示されたステップとは異なり得ることを、当業者は認識するであろう。実施形態によっては、上述したステップのうちの特定のステップが除去される場合があり、別のものが加えられる場合もある。例えば、開示されるプロセスで実施される実際のステップおよび/またはステップの順序は、図で示したものとは異なっていてもよい。実施形態によっては、上述したステップのうちの特定のステップが除去される場合があり、別のものが加えられる場合もある。例えば、図に示した様々な構成要素が、プロセッサ、コントローラ、ASIC、FPGA、および/または専用ハードウエア上のソフトウエアおよび/またはファームウエアとして実装されてもよい。プロセッサ、ASIC、FPGAなどのハードウエア構成要素には論理回路が含まれ得る。さらに、上記に開示された特定の実施形態の特徴及び特性は、様々な方法で組み合わせることができ、さらなる実施形態を形成することができるが、その全てが本開示の範囲内に収まることになる。
【0096】
本明細書で図示され、説明されるユーザーインターフェーススクリーンには、追加の構成要素および/または代替の構成要素が含まれ得る。これらの構成要素には、メニュー、リスト、ボタン、テキストボックス、ラベル、ラジオボタン、スクロールバー、スライダー、チェックボックス、コンボボックス、ステータスバー、ダイアログボックス、ウィンドウなどが含まれ得る。ユーザーインターフェーススクリーンには、追加の情報、および/または代替の情報が含まれ得る。構成要素は、任意の好適な順番に配置され、グループ化され、標示され得る。
【0097】
本開示には、一定の実施形態、実施例、および適用例が含まれるが、本開示は、具体的に開示された実施形態の範囲を超えて、他の代替の実施形態および/または使用ならびにその明らかな変更形およびその等価物にまで及び、これには本明細書に記載された特徴および利点の全てを提供しているとは限らない実施形態が含まれることは、当業者に理解されるはずである。したがって、本開示の範囲は、本明細書における好ましい実施形態の特定の開示によって限定されることを意図するものではなく、本明細書に提示されるまたはこの後に提示される特許請求の範囲によって画定され得る。
【0098】
「し得る(can)」、「できる(could)」、「可能性がある(might)」、または「場合がある(may)」などの条件付き言い回しは、別途具体的に記載されない限り、または使用される文脈の範囲内で別途解釈されない限り、一定の実施形態が、特定の特徴、要素、またはステップを含む一方で、他の実施形態は含まないということの伝達を意図するのが通例である。したがって、こうした条件付き言い回しは、特徴、要素、またはステップが1つ以上の実施形態に多少なりとも必要とされるという示唆、またはこれらの特徴、要素、および/もしくはステップが特定の任意の実施形態に含まれているかどうか、もしくは該実施形態で実施されるべきかどうかを、ユーザー入力または命令の有無にかかわらず決定するためのロジックが、1つ以上の実施形態に必然的に含まれているという示唆を必ずしも意図するものではない。「備える(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」などの用語は、同義語であり、包含的に非限定様式で用いられ、追加の要素、特徴、行為、及び動作などを排除するものではない。また、用語「または(or)」は、包括的な意味で(排他的な意味ではなく)用いられることで、例えば要素の列記をつなぐのに使用される場合、列記の要素のうちの1つ、一部、または全てを意味することになる。さらに、用語「各々」は、本明細書で使用される場合、通常の意味を有するのに加えて、用語「各々」が適用されている一連の要素の任意のサブセットも意味し得る。
【0099】
語句「X、Y、およびZのうちの少なくとも1つ」などの連言的言い回しは、別途具体的に記載されない限り、ある項目や用語などが、Xか、Yか、Zのいずれかであり得ることを示唆するのに一般的に用いられる文脈によって、別途解釈されるものである。したがって、こうした連言的言い回しは、一定の実施形態が、少なくとも1つのXと、少なくとも1つYと、少なくとも1つのZとを含むことを必要とするという示唆を必ずしも意図するものではない。
【0100】
本明細書で使用される「およそ」、「約」、「概して」、および「実質的に」という用語などの、本明細書で使用される程度を表す言い回しは、所望の機能を依然として果たすかまたは所望の結果をもたらす所定の値、量、または特性に近い値、量、または特性を表すものである。例えば、「およそ」、「約」、「概して」、及び「実質的に」という用語は、所定の量の10%未満以内、5%未満以内、1%未満以内、0.1%未満以内、及び0.01%未満以内の量を意味し得る。別の例として、一定の実施形態において、「概して平行」及び「実質的に平行」という用語は、丁度平行である状態から15度以下、10度以下、5度以下、3度以下、1度以下、または0.1度以下ずれている値、量、または特性を意味する。
【0101】
本開示の範囲は、本節におけるまたは本明細書の他の箇所における好ましい実施形態の特定の開示によって制限されることを意図するものではなく、本節においてまたは本明細書の他の箇所において提示されているか、またはこの後に提示される特許請求の範囲によって画定され得る。本特許請求の範囲の言い回しは、本特許請求の範囲で用いられている言い回しに基づいて広い意味で解釈されるべきであり、本明細書で説明されている例または本出願の手続きの間に説明される例に限定されるものではなく、それらの例は非排他的なものとして解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0102】
311 コントローラ
313 陰圧源
316 センサ