(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】中空シリカ粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/18 20060101AFI20231212BHJP
B01J 13/08 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C01B33/18 Z
B01J13/08
(21)【出願番号】P 2022164127
(22)【出願日】2022-10-12
(62)【分割の表示】P 2019562038の分割
【原出願日】2018-12-25
【審査請求日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2017248972
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390005728
【氏名又は名称】AGCエスアイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 広幸
(72)【発明者】
【氏名】金 賢枝
(72)【発明者】
【氏名】松原 俊哉
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-088438(JP,A)
【文献】国際公開第2011/091285(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/060884(WO,A1)
【文献】特開2015-128762(JP,A)
【文献】特表2000-500113(JP,A)
【文献】国際公開第2016/137456(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-33/193
B01J 13/00-13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相、油相、及び界面活性剤を含む水中油型エマルションのpHを3.0以下として、該水中油型エマルションに
、水溶性シリカが溶解した水溶液、固体シリカが分散した水性分散液、これらの混合物、ならびに、アルカリ金属ケイ酸塩及び活性ケイ酸からなる群から選ばれる1種以上またはそれらの水溶液または水分散液からなる第1のシリカ原料を添加し、
アルカリ金属イオン存在下、第1のシリカ原料が添加されたエマルションにそのpHが8以上で
、水溶性シリカが溶解した水溶液、固体シリカが分散した水性分散液、これらの混合物、ならびに、アルカリ金属ケイ酸塩及び活性ケイ酸からなる群から選ばれる1種以上またはそれらの水溶液または水分散液からなる第2のシリカ原料を添加して、中空シリカ前駆体分散液を得て、
前記中空シリカ前駆体分散液から中空シリカ前駆体を得、次いで前記中空シリカ前駆体から中空シリカ粒子を得る、中空シリカ粒子の製造方法
であり、
前記水相における水の割合が90~100質量%である、中空シリカ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記第1のシリカ原料及び第2のシリカ原料が、それぞれ独立的に、アルカリ金属ケイ酸塩
及び活性ケイ
酸からなる群から選ばれる1種以上からなる、請求項1に記載の中空シリカ粒子の製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ金属ケイ酸塩がケイ酸ソーダである、請求項2に記載の中空シリカ粒子の製造方法。
【請求項4】
前記第1のシリカ原料として、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液を用いる、請求項1から3のいずれか1項に記載の中空シリカ粒子の製造方法。
【請求項5】
前記第2のシリカ原料として、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液及び活性ケイ酸水溶液の少なくとも一方を用いる、請求項1から4のいずれか1項に記載の中空シリカ粒子の製造方法。
【請求項6】
前記第2のシリカ原料を、加熱された前記エマルションに添加する、請求項1から5のいずれか1項に記載の中空シリカ粒子の製造方法。
【請求項7】
前記第1のシリカ原料添加後の前記エマルションに塩基を添加し、その後第2のシリカ原料を添加する、請求項1から
6のいずれか1項に記載の中空シリカ粒子の製造方法。
【請求項8】
前記中空シリカ前駆体を焼成して前記中空シリカ粒子を得る、請求項1から
7のいずれか1項に記載の中空シリカ粒子の製造方法。
【請求項9】
前記焼成の温度が、300℃~800℃である、請求項
8に記載の中空シリカ粒子の製造方法。
【請求項10】
前記界面活性剤が、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体である、請求項1から
9のいずれか1項に記載の中空シリカ粒子の製造方法。
【請求項11】
得られる中空シリカ粒子の平均一次粒子径が10nm~10μmであり、BET比表面積が300m
2/g以下である、請求項1から
10のいずれか1項に記載の中空シリカ粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空シリカ粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空シリカ粒子は、シリカで形成されるシェル層の内部に空隙を有する粒子である。中空シリカ粒子は、その粒子径、シェル層の細孔構造、表面物性の多様性から、触媒、触媒担体、化粧品用顔料、樹脂充填剤、吸着剤、乾燥剤、断熱材、塗料、ドラッグデリバリー、光学フィルターなどに広く使用されている。また、中空形状による低屈折率性から、反射防止塗膜材料としても有用である。
【0003】
中空シリカ粒子の製造方法の一例には、水相に油相が分散している水中油型エマルションを作製後に、油滴にシリカ原料を付着させ、オイルコア-シリカシェル粒子を作製し、この粒子から油滴成分を除去することで、中空状のシリカ粒子を得る方法がある。エマルションから作製されるため、粒子径が数十nm~10μm程度の中空シリカ粒子が形成できる。
一方で、小粒子径の中空シリカ粒子は、シリカシェル層も薄くなるため、粒子強度が低下し、使用中や保管中に粒子が割れる問題がある。シェル層の強度が低いと、セラミックス原料等の他の原料と混合する際に壊れる可能性がある。また、シェル層が多孔質であると、溶媒等と混合する際に内部の中空構造を維持できない可能性がある。
【0004】
特許文献1では、水、塩化ナトリウム、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸ナトリウムを含む初期容器底部装入物をpH9で撹拌し、続いて、ケイ酸ナトリウム水溶液、硫酸水溶液を添加し、熟成、ろ過、乾燥することで、乾燥粒子を得て、この乾燥粒子を濃塩酸で処理して炭酸カルシウムを除去し、中空シリカ粒子を製造する方法が提案されている。
【0005】
特許文献2では、平均細孔直径が1.6~10nmである中空シリカマイクロカプセルが提案されている。特許文献2では、水相にアルカリ金属のケイ酸塩が含まれるW/O型乳濁液又はO/W/O型乳濁液を得て、この乳濁液に沈殿剤を添加して中空シリカマイクロカプセルを形成し、所定の水洗、乾燥、焼成し、さらに焼成後のマイクロカプセルをメソポーラス化して、中空シリカマイクロカプセルを製造する方法が提案されている。
【0006】
非特許文献1では、ポリ(エチレンオキサイド)-ポリ(プロピレンオキサイド)-ポリ(エチレンオキサイド)のブロック共重合体を用いたエマルションとケイ酸ナトリウムと組み合わせて、中空シリカ粒子を合成する方法が提案されている。
非特許文献1では、ブロック共重合体が添加された水溶液に、トリメチルベンゼンが溶解したエタノールを添加し、エマルションを得て、このエマルションに、ケイ酸ナトリウム水溶液が添加され、pH5.2に調整し、熟成し、白色粉末を単離、乾燥、焼成し、中空シリカ粒子を合成している。この方法によって、平均直径約1μm以下で、BET比表面積が426m2/g程度の中空シリカ粒子が得られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Qianyao Sun et al, "The Formation of Well-Defined Hollow Silica Spheres with Multilamellar Shell Structure", Advanced Materials, 2003, 15, No.13, July 4.
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2000-500113号公報
【文献】特開2006-102592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では、コア粒子が炭酸カルシウムであるため、エマルションをアルカリ性にして、コア粒子にシリカ原料を付着させる。この方法では、コア粒子である固体状の炭酸カルシウム粒子の粒子径や形状に、得られる中空粒子の粒子径や形状が制限されてしまう。また、炭酸カルシウムを酸によって除去する際に、シェル層に気孔が発生して、シェル層を充分に緻密化できなく、また、酸処理によってシェル層の強度が低下する可能性もある。
特許文献1では、コア粒子の他の例として植物油等の液体材料が挙げられているが、シリカ原料は、液体材料からなるコア粒子にアルカリ性条件下では十分に付着しない問題がある。
【0010】
特許文献2のように、W/O型乳濁液から得られる中空シリカは、アルカリ金属のケイ酸塩を含む水相の液滴が中空シリカを形成するため、中空部に空隙が明らかに存在する粒子ではなく、最外殻から中心部にかけてシリカ密度がなだらかに減少した粒子である。
また、W/O/W型乳濁液から得られる中空シリカは、中心部の油滴が中空部となり、中間層の水相に含まれるシリカ原料がシェル層を形成するようになる。このシェル層は、中間層の水相から形成されるため、緻密化が難しい。
【0011】
非特許文献1では、水中油型エマルションの油滴に酸性条件でケイ酸ナトリウムを付着、熟成し、その後に白色粉末を単離している。この方法では、得られる中空シリカ粒子のシェル層を十分に緻密化できず、中空シリカ粒子の強度が劣る問題がある。
【0012】
本発明の一目的としては、緻密なシリカシェル層を有する中空シリカ粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下を要旨とする。
[1]水相、油相、及び界面活性剤を含む水中油型エマルションのpHを3.0以下として、該水中油型エマルションに第1のシリカ原料を添加し、アルカリ金属イオン存在下、第1のシリカ原料が添加されたエマルションにそのpHが8以上で第2のシリカ原料を添加して、中空シリカ前駆体分散液を得て、前記中空シリカ前駆体分散液から中空シリカ前駆体を得、次いで前記中空シリカ前駆体から中空シリカ粒子を得る、中空シリカ粒子の製造方法。
[2]前記第1のシリカ原料及び第2のシリカ原料が、それぞれ独立的に、アルカリ金属ケイ酸塩、活性ケイ酸及びケイ素アルコキシドからなる群から選ばれる1種以上からなる、[1]に記載の中空シリカ粒子の製造方法。
[3]前記アルカリ金属ケイ酸塩がケイ酸ソーダである、[2]に記載の中空シリカ粒子の製造方法。
[4]前記第1のシリカ原料として、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液を用いる、[1]から[3]のいずれかに記載の中空シリカ粒子の製造方法。
【0014】
[5]前記第2のシリカ原料として、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液及び活性ケイ酸水溶液の少なくとも一方を用いる、[1]から[4]のいずれかに記載の中空シリカ粒子の製造方法。
[6]前記第2のシリカ原料を、加熱された前記エマルションに添加する、[1]から[5]のいずれかに記載の中空シリカ粒子の製造方法。
[7]前記水中油型エマルションに酸を添加してそのpHを3以上とし、次いで第1のシリカ原料としてアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を添加する、[1]から[6]のいずれかに記載の中空シリカ粒子の製造方法。
[8]前記第1のシリカ原料添加後の前記エマルションに塩基を添加し、その後第2のシリカ原料を添加する、[1]から[7]のいずれかに記載の中空シリカ粒子の製造方法。
【0015】
[9]前記中空シリカ前駆体を焼成して前記中空シリカ粒子を得る、[1]から[8]のいずれかに記載の中空シリカ粒子の製造方法。
[10]前記焼成の温度が、300℃~800℃である、[9]に記載の中空シリカ粒子の製造方法。
[11]前記界面活性剤が、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体である、[1]から[10]のいずれかに記載の中空シリカ粒子の製造方法。
[12]得られる中空シリカ粒子の平均一次粒子径が10nm~10μmであり、BET比表面積が300m2/g以下である、[1]から[11]のいずれかに記載の中空シリカ粒子の製造方法。
[13]平均一次粒子径が10nm~10μmであり、BET比表面積が150m2/g以下であり、シェル層に500質量ppm以上のアルカリ金属成分を含む、中空シリカ粒子。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、緻密なシリカシェル層を有する中空シリカ粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、例1で得られた中空シリカ粒子の透過型電子顕微鏡像(TEM像)を示す。
【
図2】
図2は、例1で得られた中空シリカ粒子の透過型電子顕微鏡像(TEM像)を示す。
【
図3】
図3は、例1で得られた中空シリカ粒子の解砕後の走査型電子顕微鏡像(SEM像)を示す。
【
図4】
図4は、例21で得られた中空シリカ粒子の透過型電子顕微鏡像(TEM像)を示す。
【
図5】
図5は、例21で得られた中空シリカ粒子の解砕後の走査型電子顕微鏡像(SEM像)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について説明するが、以下の説明における例示によって本発明は限定されない。
本発明の中空シリカ粒子の製造方法としては、水相、油相、及び界面活性剤を含む水中油型エマルションのpHを3.0以下として、該水中油型エマルションに第1のシリカ原料を添加し、アルカリ金属イオン存在下、第1のシリカ原料が添加されたエマルションにそのpHが8以上で第2のシリカ原料を添加し、中空シリカ前駆体分散液を得て、中空シリカ前駆体分散液から中空シリカ前駆体を得、次いで中空シリカ前駆体から中空シリカ粒子を得ることを特徴とする。
これによれば、緻密なシリカシェル層を有する中空シリカ粒子を得ることができる。シェル層が緻密であることで、粒子強度が高まり、他の材料と混合しても形状を維持できる。また、シェル層が緻密であることで、溶媒や外部からの異物が内部の中空部分に侵入しにくくできる。
さらに、シリカ原料に制限なく、例えばアルカリ金属ケイ酸塩を用いても、緻密なシリカシェル層を有する中空シリカ粒子を提供することができる。
【0019】
本方法では、水相、油相、及び界面活性剤を含む水中油型エマルションを用いる。この水中油型エマルションは、水中に油相が分散したエマルションであり、このエマルションにシリカ原料が添加されると油滴にシリカ原料が付着し、オイルコア-シリカシェル粒子を形成できる。以下、水中油型エマルションを単にエマルションとも記す。
なお、第1のシリカ原料が添加されて生成しかつ第2のシリカ原料が添加される前のオイルコア-シリカシェル粒子が分散した分散液、及び、第2のシリカ原料が添加された後のオイルコア-シリカシェル粒子が分散した分散液も、エマルションと記すことがある。後者の第2のシリカ原料が添加された後のオイルコア-シリカシェル粒子が分散した分散液は中空シリカ前駆体分散液と同等のものであってもよい。
【0020】
エマルションの水相は、主として水を溶媒として含む。水相には、水溶性の有機液体、水溶性樹脂等の添加剤がさらに添加されてもよい。水相における水の割合は50~100質量%が好ましく、90~100質量%がより好ましい。
【0021】
エマルションの油相は、水相成分と相溶しない非水溶性の有機液体を含むことが好ましい。この有機液体がエマルション中で液滴となり、中空シリカ前駆体のオイル-コア部分を形成する。
有機液体としては、例えば、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、イソヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、n-ノナン、イソノナン、n-ペンタン、イソペンタン、n-デカン、イソデカン、n-ドデカン、イソドデカン、ペンタデカン等の脂肪族炭化水素類、もしくはそれらの混合物であるパラフィン系基油、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセン等の脂環式炭化水素類、もしくはそれらの混合物であるナフテン系基油、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン、スチレン等の芳香族炭化水素類、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸-n-アミル、酢酸イソアミル、乳酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル等のエステル類、パーム油、大豆油、菜種油等の植物油、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系溶剤等が挙げられる。また、シェル形成反応温度で疎水性液体となるポリオキシアルキレングリコールを用いることもできる。例えば、ポリプロピレングリコール(分子量1000以上)、オキシエチレン単位の割合が20質量%未満で、曇点(1質量%水溶液)が40℃以下、好ましくは、20℃以下のポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体などが挙げられる。中でも、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン型のブロック共重合体が好ましく用いられる。
これらは単独で、又は、単一相で油相を形成する範囲で2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
有機液体としては、炭素数8~16、特に炭素数9~12の炭化水素が好ましい。有機液体は、操作性、火気への安全性、中空シリカ前駆体と有機液体との分離性、中空シリカ粒子の形状特性、水への有機液体の溶解性などを総合的に考慮して選定される。炭素数が8~16の炭化水素は、その化学的安定性が良好であれば、直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素であってよく、炭素数の異なる炭化水素を混合して用いてもよい。炭化水素としては、飽和炭化水素が好ましく、直鎖状飽和炭化水素がより好ましい。
【0023】
有機液体の引火点としては、20~90℃のものが好ましく、より好ましくは30~80℃のものが好ましい。引火点が20℃未満の有機液体を用いる場合、引火点が低すぎるため、防火上、作業環境上の対策が必要である。また、引火点が90℃を超えるものは、揮発性が小さいことから、得られる中空シリカ粒子に付着する有機液体の量が多くなるお
それがある。
【0024】
エマルションは、乳化安定性を高めるために、界面活性剤を含む。界面活性剤は、水溶性又は水分散性が好ましく、水相へ添加して用いることが好ましい。好ましくは、非イオン性界面活性剤である。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、下記の界面活性剤を挙げることができる。
ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体系界面活性剤
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート
ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル系界面活性剤:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル
ポリオキシエチレン脂肪族エステル系界面活性剤:ポリオキシエチレングリコールモノラウレート、ポリオキシエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレングリコールモノオレエート
グリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤:ステアリン酸モノグリセライド、オレイン酸モノグリセライド
さらに、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル系界面活性剤、ショ糖脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系界面活性剤等を用いてもよい。
これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
上記した非イオン性界面活性剤のなかでも、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体系界面活性剤を好ましく用いることができる。ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体は、ポリオキシエチレンブロック(EO)とポリオキシプロピレンブロック(PO)とが結合したブロック共重合体である。ブロック共重合体としては、EO-PO-EOブロックコポリマー、EO-POブロックコポリマー等が挙げられ、好ましくはEO-PO-EOブロックコポリマーである。EO-PO-EOブロックコポリマーのオキシエチレン単位の割合は、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。
ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体の重量平均分子量は、3,000~27,000が好ましく、6,000~19,000がより好ましい。
ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体全体に対して、ポリオキシエチレンブロックの合計量は40~90質量%が好ましく、ポリオキシプロピレンブロックの合計量は10~60質量%が好ましい。
【0026】
界面活性剤の使用量は、界面活性剤の種類、界面活性剤の親水性あるいは疎水性の程度を表す指標であるHLB(Hydrophile-lipophile balance)、目的とするシリカ粒子の粒子径等の条件により異なるが、水相中の含有量が500~20,000質量ppmが好ましく、1,000~10,000質量ppmがより好ましい。500質量ppm以上で、エマルションをより安定化できる。また、20,000質量ppm以下で、製品である中空シリカ粒子に残留する界面活性剤の量を少なくできる。
【0027】
水相と油相とは、質量比で、200:1~5:1で配合してよく、好ましくは100:1~9:1である。
【0028】
水中油型エマルションの作製方法は、以下に限定されない。事前に水相及び油相をそれ
ぞれ調整しておき、水相に油相を添加して、十分に混合ないし撹拌させることで作製できる。さらに物理的に強いせん断力を与える超音波乳化、撹拌式乳化、高圧乳化などの方法を適用できる。また、微細孔を持つ膜を通して微細にした油相を水相中に分散させる膜乳化法や、界面活性剤を油相に溶解させた後に水相を加えて乳化を行う転相乳化法、界面活性剤が曇点付近の温度を境に水溶性から油溶性に変化することを利用した転相温度乳化法などの方法がある。これらの乳化方法は、目的とする粒子径、粒度分布等の特定により適宜選択することができる。
得られる中空シリカ粒子を小粒子径化し、粒度分布を狭めるために、水相中に油相が十分に分散し乳化されることが好ましい。例えば、混合液は、100bar、好ましくは400bar以上の圧力で高圧ホモジナイザーを用いて乳化できる。
【0029】
本方法では、水中油型エマルションに、第1のシリカ原料を添加する。
第1のシリカ原料としては、例えば、水溶性シリカが溶解した水溶液、固体シリカが分散した水性分散液、これらの混合物、ならびに、アルカリ金属ケイ酸塩、活性ケイ酸及びケイ素アルコキシドからなる群から選ばれる1種以上またはそれらの水溶液または水分散液が挙げられる。これらのうちアルカリ金属ケイ酸塩、活性ケイ酸及びケイ素アルコキシドからなる群から選ばれる1種以上またはそれらの水溶液または水分散液が、入手容易性が高い点で好ましい。
固体シリカとしては、例えば、有機ケイ素化合物を加水分解して得られたシリカゾル、市販のシリカゾルが挙げられる。
アルカリ金属ケイ酸塩のアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム等が挙げられ、中でも入手の容易さ、経済的理由によりナトリウムが好ましい。すなわちアルカリ金属ケイ酸塩としては、ケイ酸ソーダが好ましい。ケイ酸ソーダは、Na2O・nSiO2・mH2Oで表される組成を有する。ナトリウムとケイ酸の割合は、Na2O/SiO2のモル比nで1.0~4.0が好ましく、さらには2.0~3.5が好ましい。
【0030】
活性ケイ酸はアルカリ金属ケイ酸塩を陽イオン交換処理によりアルカリ金属を水素に置換して得られるものであり、この活性ケイ酸の水溶液は弱酸性を示す。陽イオン交換には、水素型陽イオン交換樹脂を用いることができる。
アルカリ金属ケイ酸塩及び活性ケイ酸は、水に溶解ないし分散させてから、エマルションに添加することが好ましい。アルカリ金属ケイ酸塩及び活性ケイ酸水溶液の濃度は、SiO2濃度として3~30質量%が好ましく、さらには5~25質量%が好ましい。
【0031】
ケイ素アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン等のテトラアルキルシラン類を好ましく用いることができる。
また、シリカ原料とともに、他の金属酸化物等を混合することで、複合粒子を得ることも可能である。他の金属酸化物としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化銅、酸化鉄、酸化錫等が挙げられる。
【0032】
第1のシリカ原料としては、上記したシリカ原料を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。なかでも、第1のシリカ原料として、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液、特にケイ酸ソーダ水溶液を好ましく用いることができる。
【0033】
本方法で第1のシリカ原料の水中油型エマルションへの添加は、水中油型エマルションのpHが3.0以下で行う。水相、油相、及び界面活性剤を含む水中油型エマルションに酸を添加することでpHが3.0以下とすることが好ましい。
第1のシリカ原料の添加の一例は、エマルションに酸を添加し、次いでケイ酸ソーダ水溶液を添加して行う。
中性のエマルションを一度酸性にしてから、アルカリ成分であるケイ酸ソーダ水溶液を添加するため、第1のシリカ原料の添加においてエマルション全体を酸性に保持できる。
第1のシリカ原料の添加では、エマルションに酸を添加した後のエマルションのpHを2以下とし、次いでケイ酸ソーダ水溶液を添加した後にpHを3.0以下とすることが好ましい。
エマルションへの第1のシリカ原料の添加の際のpHは、3.0以下が好ましく、2.4以下がより好ましい。これによって、エマルション中の油滴に、界面活性剤を介して、シリカ原料による1層目の皮膜が形成される際に、皮膜の厚さをより均一にし、得られる中空シリカのシリカシェル層をより緻密にすることができる。
エマルションへの第1のシリカ原料の添加の際のpHは、1以上であってよい。
【0034】
酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、過塩素酸、臭化水素酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等が挙げられる。
【0035】
第1のシリカ原料の添加では、第1のシリカ原料の添加量は、エマルション中に含まれる油相100質量部に対して、第1のシリカ原料中のSiO2が1~50質量部が好ましく、3~30質量部がより好ましい。
第1のシリカ原料の添加では、第1のシリカ原料を添加後のエマルションのpHを3.0以下の条件下で、1分以上保持することが好ましく、5分以上がより好ましく、10分以上がさらに好ましい。
【0036】
次に、第1のシリカ原料を添加したエマルションのpHを5以上で保持することが好ましい。これによって、第1のシリカ原料を油滴の表面に固定化することができる。
例えば、第1のシリカ原料を添加したエマルションに塩基を添加することで、エマルションのpHを5以上とする方法がある。
塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、アンモニア、アミン類等が挙げられる。
あるいは陰イオン交換処理によりハロゲンイオン等の陰イオンを水酸化物イオンに交換する方法を用いてもよい。
【0037】
塩基を添加する際は、シリカ原料を添加したエマルションを撹拌しながら塩基を徐々に添加して、エマルションのpHを徐々に上昇させることが好ましい。撹拌が弱かったり、多量の塩基を一度に投入したりすると、エマルションのpHが不均一になり、1層目の被膜の厚みが不均一になることがある。
エマルションのpHを5以上とした状態で、好ましくは撹拌しながら、エマルションを保持することが好ましい。この保持時間は、10分以上であってよく、1時間以上が好ましく、4時間以上であってもよい。
保持の間、エマルションのpHは7以下が好ましい。
【0038】
次に、アルカリ金属イオン存在下、エマルションのpHが8以上で第2のシリカ原料を添加する。これによって、中空シリカ前駆体分散液が得られる。ここで、中空シリカ前駆体は、オイルコア-シリカシェル粒子となっている。
【0039】
第2のシリカ原料としては、上記した第1のシリカ原料と同様のものを単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。なかでも、第2のシリカ原料の添加では、ケイ酸ソーダ水溶液及び活性ケイ酸水溶液の少なくとも一方を好ましく用いることができる。
エマルションのpHを8以上で第2のシリカ原料を添加する際には、第2のシリカ原料と同時にアルカリ金属水酸化物を添加する方法を用いてもよい。また、第2のシリカ原料にアルカリ金属ケイ酸塩としてケイ酸ソーダを用いる方法でもよい。この場合、第1のシリカ原料の添加後にpHを5以上とした弱酸性のエマルションに、アルカリ成分であるケイ酸ソーダ成分を添加するため、第2のシリカ原料を添加しながらエマルションのpHを8以上のアルカリ性に保持できる。また、アルカリ金属イオンがエマルション中に存在するようになる。
【0040】
エマルションへの第2のシリカ原料の添加の際のエマルションのpHは、8以上が好ましく、9以上であってもよい。これによって、第1のシリカ原料による1層目の皮膜の上に、より緻密な2層目の皮膜を形成できる。
第1のシリカ原料の添加では、油滴への第1のシリカ原料の付着をより均一にするために、エマルションを一旦酸性とした後にpHを5以上にする方法を用いている。この方法によって得られる1層目のシリカ層は多孔質であり、緻密性が不十分なため強度が低くなってしまう。第2のシリカ原料の添加において、エマルションをアルカリ性とすることで、先に得られた1層目のシリカ層上に、高密度な2層目のシリカ層を形成できる。この2段階で形成したシリカ層から、緻密なシリカシェル層を形成できる。
エマルションへの第2のシリカ原料の添加の際のエマルションのpHは、特に限定されないが、13以下であってよく、11以下であってもよい。第2のシリカ原料にケイ酸ソーダ水溶液を用いる場合などで、pHが上がりすぎてしまう場合は、pHを調整するために酸を加えてもよい。ここで用いる酸には、第1のシリカ原料を添加する時と同じ酸を用いてもよい。
【0041】
第2のシリカ原料の添加はアルカリ金属イオンの存在下で行う。このアルカリ金属イオンは、第1のシリカ原料由来、第2のシリカ原料由来、pH調整のために加えた塩基由来であってよく、エマルションへの添加剤の添加等によっても配合が可能である。例えば、第1のシリカ原料及び第2のシリカ原料の少なくとも一方に、アルカリ金属ケイ酸塩を用いる場合である。また、エマルションの添加剤に、アルカリ金属のハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、脂肪酸塩等を用いる場合である。
【0042】
第2のシリカ原料の添加は、例えば、第1のシリカ原料の添加後のエマルションに、ケイ酸ソーダ水溶液及び活性ケイ酸水溶液のうち一方を添加してもよく、両方を添加してもよい。両方を添加する場合は、ケイ酸ソーダ水溶液及び活性ケイ酸水溶液を一括して添加してもよいし、順番に添加してもよい。
【0043】
例えば、第2のシリカ原料の添加は、pH調整をしながら、1層目のシリカ層上へのシリカ原料の付着を促進するために、ケイ酸ソーダ水溶液を添加する工程と、活性ケイ酸水溶液を添加する工程とを、1回又は2回以上繰り返すことができる。
【0044】
第2のシリカ原料は、1層目のシリカ層上へのシリカ原料の付着を促進するために、加熱されたエマルションに添加することが好ましい。加熱温度は、30~100℃が好ましく、50~80℃がより好ましい。加熱されたエマルションを用いた場合、第2のシリカ原料の添加後は、生成したエマルションを室温(23℃)まで徐冷することが好ましい。
【0045】
第2のシリカ原料の添加では、第2のシリカ原料の添加量は、油相100質量部に対して、第2のシリカ原料中のSiO2が20~500質量部となるように調整されるのが好ましく、40~300質量部となるように調整されるのがより好ましい。
第2のシリカ原料の添加では、第2のシリカ原料を添加後にエマルションのpHが8以上の条件下で、10分以上保持することが好ましい。
【0046】
第1のシリカ原料の添加及び第2のシリカ原料の添加を通して、第1のシリカ原料及び第2のシリカ原料の添加量の合計量は、油相100質量部に対して、第1のシリカ原料中のSiO2と第2のシリカ原料中のSiO2の合計が30~500質量部となるように調整されるのが好ましく、50~300質量部となるように調整されるのがより好ましい。
【0047】
本発明のシリカシェル層は主としてシリカより構成されるが、屈折率調整など、必要に応じてTiやZrなどの他の金属成分を含有させても良い。他の金属成分を含有させる方法は特に限定されないが、例えばシリカ原料を添加する工程で金属ゾル液や金属塩水溶液を同時に添加するなどの方法を用いることができる。
【0048】
以下、中空シリカ前駆体分散液から中空シリカ前駆体を得、次いで中空シリカ前駆体から中空シリカ粒子を得る工程について説明する。
【0049】
中空シリカ前駆体分散液から中空シリカ前駆体を得る方法としては、例えば、分散液をろ過する方法、加熱して水相を除去する方法、沈降分離もしくは遠心分離により前駆体を分離する方法等がある。
一例としては、0.1μm~5μm程度のフィルターを用いて分散液をろ過し、ろ別された中空シリカ前駆体を乾燥する方法がある。
また必要に応じて、得られた中空シリカ前駆体を、水や酸、アルカリ、有機溶剤等で洗浄してもよい。
【0050】
中空シリカ前駆体からオイルコアを除去して中空シリカ粒子を得る方法としては、例えば、中空シリカ前駆体を焼成しオイルを燃焼分解する方法、乾燥によりオイルを揮発させる方法、適切な添加剤を加えてオイルを分解させる方法、有機溶媒等を用いてオイルを抽出する方法等がある。
一例としては、加熱温度300℃~800℃、特に400℃~600℃で、加熱時間1~8時間、特に3~6時間で中空シリカ前駆体を加熱することが好ましい。この場合、昇温速度は、1~20℃/分、特に2~10℃/分が好ましい。
得られた中空シリカ粒子は、乾燥や焼成の工程により凝集していることがあるため、取り扱いやすい凝集径にするために解砕しても良い。解砕の方法としては、例えば、乳鉢を使う方法、乾式あるいは湿式のボールミルを使う方法、振とう式篩を使う方法、ピンミル、カッターミル、ハンマーミル、ナイフミル、ローラーミルなどの解砕機を使う方法等がある。
【0051】
得られる中空シリカ粒子がシェル層の内部に空隙を持つことは、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により確認できる。TEM観察によって確認できる、内部に空隙を持つ球状の粒子を「一次粒子」と定義する。焼成や乾燥の工程によって一次粒子同士が一部結合するため、得られた中空シリカは一次粒子が凝集した二次粒子の集合体となっていることが多い。
一次粒子の大きさは、TEM観察によりその粒子径を直接観察することによって求められる。具体的には、極端に粒子径が大きい、あるいは小さい粒子が存在せず、観察範囲における一次粒子径の分布が、得られた中空シリカ粒子全体の一次粒子径の分布と同程度と思われる部分を拡大観察し、個々の一次粒子の大きさを測定し、それらを集計して得られた一次粒子の大きさの分布を、全体の一次粒子の大きさの分布と推定する。
一次粒子の大きさの平均値は10nm~10μmが好ましく、50nm~2μmがより好ましく、100nm~1μmがさらに好ましい。
【0052】
中空シリカ粒子は、BET比表面積が300m2/g以下が好ましく、200m2/g以下がより好ましく、150m2/g以下がさらに好ましい。
ここで、BET比表面積の測定は、島津製作所社製の比表面積測定装置「トライスターII3020」を用い、前処理として230℃で50mTorrとなるまで乾燥させた後、液体窒素を用いた多点法で測定した。
【0053】
中空シリカ粒子のシェル厚さは、一次粒子の大きさに対して、0.01~0.3が好ま
しく、0.02~0.2がより好ましく、0.03~0.1がさらに好ましい。
シェル厚さが一次粒子の大きさに対して0.01より小さいと、中空シリカ粒子の強度が低下することがある。この比が0.3より大きいと、内部の空隙が小さくなってしまい、中空形状であることによる特性が出なくなってしまう。
ここで、シェル厚さの測定方法は、一次粒子径と同様にTEM観察によって個々の粒子のシェル厚さを測定する。
【0054】
中空シリカ粒子は、水中油型エマルションの油滴をコア粒子として形成されるため、中空シリカ粒子の形状は球状となり、好ましくは真球形状である。
【0055】
本発明において、得られる中空シリカ粒子のシェル層にアルカリ金属成分が含まれる。このアルカリ金属成分は、シリカ原料としてケイ素アルコキシドを用いる場合は、ほとんど観測されない。
たとえば、シリカ原料としてケイ酸ソーダ水溶液を用いた場合、得られる中空シリカ粒子のシェル中のNa成分の質量濃度は500質量ppm以上となり、より多い場合は1000質量ppm以上となる。一方、シリカ原料としてオルトケイ酸テトラエチルを用いて作られた一般的な中空シリカ粒子のシェル中のNa成分の質量濃度は100質量ppm以下である。
このNa成分の測定方法は、得られた中空シリカに過塩素酸とフッ酸を加えて強熱し主成分のケイ素を除去したのちにICP発光分析で測定することができる。
また、シリカ原料としてアルカリ金属ケイ酸塩を用いる場合は、シリカ原料としてケイ素アルコキシドを用いる場合に比べて、得られる中空シリカ粒子のシェル層に原料由来の炭素(C)成分は少なくなる。
【0056】
本発明の方法に従って製造される中空シリカ粒子は、シェル層の緻密性に特徴があり、例えば、水中に沈降するが、油成分中では浮遊する特性を備えることができる。
本発明の方法に従って製造される中空シリカ粒子の一部は、一つ孔を有する中空シリカ(孔を一つ有する中空シリカ)とすることができる。この孔は電子顕微鏡(SEM)で観察されるもので、孔径は5nm~3μmであり、かつ、中空シリカ粒子の粒子径の1/3以下が好ましく、10nm~1μmであり、かつ、中空シリカ粒子の粒子径の1/5以下が好ましい。
このような一つ孔を有する中空シリカは香料や薬剤の徐放剤として利用できる。すなわち所定の薬剤等(好ましくは液体又は溶液)を減圧下で粒子中に取り入れる。常圧下では当該薬剤等が一つ孔から徐放される。
この一つ孔の中空シリカ粒子は、本発明の粒子群から例えば以下の方法で選別できる。まず大気圧下で液状媒体に投入し、浮上したものを回収する。この時液状媒体としてフッ素系溶剤を用いると、見掛け比重が液状媒体より軽い粒子群が回収しやすい。その次に回収された粒子群を減圧下で液状媒体に投入する。一つ孔の中空シリカ粒子は、中空部に液状媒体が入るために液状媒体に沈む。このため液状媒体に沈降した粒子を回収し乾燥させれば一つ孔の中空シリカ粒子群が回収される。
【0057】
本発明の中空シリカ粒子は、平均一次粒子径が10nm~10μmであり、BET比表面積が300m2/g以下であり、シェル層にアルカリ金属成分を含むことを特徴とする。
本発明による中空シリカ粒子のシェル中のアルカリ金属成分の質量濃度は、500質量ppm以上が好ましく、1000質量ppm以上がより好ましい。アルカリ金属成分が少ないとシェルが多孔質になり、緻密で強度の高いシェルが得られなくなる。
本発明の中空シリカ粒子は、上記した製造方法によって製造することができるが、上記した製造方法によって製造されるものに限定されない。
中空シリカ粒子の平均一次粒子径、BET比表面積等の詳細は、上記した通りである。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の説明において、共通する成分は同じものを用いている。また、特に説明のない限り、「%」は「質量%」を表す。例1~17は実施例であり、例21は比較例である。
【0059】
(例1)
「エマルションの作製」
純水1778gにEO-PO-EOブロックコポリマー(BASF社製Kolliphor P188)を3.6g添加し溶解するまで撹拌した。
この水溶液にn-ドデカン(試薬特級、和光純薬工業社製)18gを加え、IKA社製ホモジナイザーを使って液全体が均一になるまで撹拌し、粗エマルションを作製した。
この粗エマルションに、高圧乳化機(エスエムテー社製LAB1000)を使い、圧力400barで3回乳化を行い、微細エマルションを作製した。
【0060】
「一段目シェル形成」
得られた微細エマルション1600gに、35%塩酸(試薬特級、和光純薬工業社製)3.4gを加え、pHを1.7とした。
次に、希釈したケイ酸ソーダ水溶液(SiO2濃度6.9質量%、Na2O濃度2.3質量%)34.8gを加え良く撹拌し、pHを2.4とした状態で15分保持した。
この液を良く撹拌しながら0.1M水酸化ナトリウム水溶液46.1gをゆっくり滴下し、撹拌した状態を4時間保持した後、pHが5.2のオイルコア-シリカシェル粒子分散液を得た。
【0061】
「活性ケイ酸準備」
良く洗浄した水素型陽イオン交換樹脂(三菱樹脂社製SK1BH)270gに純水380gを加え、温度を5℃に冷却した。
上記樹脂分散液を良く撹拌しながら、温度を5℃に保ったまま希釈したケイ酸ソーダ水溶液(SiO2濃度10.3質量%、Na2O濃度3.5質量%)360gを少量ずつ滴下した。
滴下終了後にろ過をして樹脂を除き、5質量%の活性ケイ酸水溶液を得た。
【0062】
「二段目シェル形成」
一段目シェル形成で得られたオイルコア-シリカシェル粒子分散液1300gを70℃に加熱し、撹拌しながら希釈したケイ酸ソーダ水溶液(SiO2濃度3.5質量%、Na2O濃度1.2質量%)35.2gを添加し、pHを9.6とした。
この懸濁液を70℃に保ったまま撹拌しながら、準備しておいた5質量%の活性ケイ酸水溶液200gをゆっくり滴下し、pHを9.2とした。
次に、希釈したケイ酸ソーダ水溶液(SiO2濃度3.5質量%、Na2O濃度1.2質量%)1.4gを添加し、pHを9.5とした。
再び、5質量%の活性ケイ酸水溶液200gをゆっくり滴下し、pHを9.2とした。
次に再び希釈したケイ酸ソーダ水溶液(SiO2濃度3.5質量%、Na2O濃度1.2質量%)5.2gを添加し、pHを9.4とした。
再び、5質量%の活性ケイ酸水溶液195gをゆっくり滴下し、pHを8.9とした。これをゆっくり室温まで冷却し、中空シリカ前駆体分散液を得た。
【0063】
「ろ過、乾燥、焼成」
中空シリカ前駆体分散液1200gを、0.45μmの親水化PTFEメンブレンフィルターを用いて加圧ろ過(圧力0.28MPa)でろ過を行ったあと、80℃で8時間乾燥し、中空シリカ前駆体を得た。
得られた前駆体を550℃で4時間焼成し(昇温速度10℃/min)、中空シリカ粒子6gを得た。
【0064】
「評価」
例1で得られた中空シリカの窒素吸着法によるBET比表面積は118m
2/gだった。
例1で得られた中空シリカ粒子の透過型電子顕微鏡像(TEM像)を
図1及び
図2に示す。
図1に示すTEM像から輪郭の鮮明な116個の一次粒子を選出し、その直径を測定し集計したところ、その平均値は278nmであった。また、
図2に示すTEM像からシェルの厚みを測定したところ、15nmであった。
例1で得られた中空シリカ粒子を、メノウ乳鉢を用いて解砕した後の走査型電子顕微鏡像(SEM像)を
図3に示す。
図3から、例1の中空シリカ粒子は、乳鉢解砕後も中空粒子の形状が維持できていることがわかる。
例1で得られた中空シリカのシェル中のNaの質量濃度は、3800質量ppmであった。
【0065】
(例21)
「エマルションの作製」
純水1765gにEO-PO-EOブロックコポリマー(BASF社製Kolliphor P188)を18g添加し溶解するまで撹拌した。
この水溶液にn-ドデカン18gを加え、IKA社製ホモジナイザーを使って液全体が均一になるまで撹拌し、粗エマルションを作製した。
この粗エマルションに、高圧乳化機(エスエムテー社製LAB1000)を使い、圧力400barで3回乳化を行い、微細エマルションを作製した。
【0066】
「中空シリカ前駆体形成」
得られた微細エマルション1700gに、35%塩酸9.2gを加え、pHを1.5とした。
次に、希釈したケイ酸ソーダ水溶液(SiO2濃度6.9質量%、Na2O濃度2.3質量%)123.3gを加え良く撹拌し、pHを2.2とした状態で15分保持した。
この液を良く撹拌しながら0.1M水酸化ナトリウム水溶液127.1gをゆっくり滴下し、撹拌した状態を4時間保持した後、pHが5.2の中空シリカ前駆体分散液を得た。
【0067】
「ろ過、乾燥、焼成」
中空シリカ前駆体分散液600gを、0.45μmの親水化PTFEメンブレンフィルターを用いて減圧ろ過でろ過を行ったあと、80℃で8時間乾燥し、中空シリカ前駆体を得た。
得られた前駆体を550℃で4時間焼成し(昇温速度10℃/min)、中空シリカ粒子3gを得た。
【0068】
「評価」
例21で得られた中空シリカの窒素吸着法によるBET比表面積は554m
2/gだった。
例21で得られた中空シリカ粒子のTEM像を
図4に示す。
図4に示すTEM像は、
図2に示すTEM像と比較してシェル層の影が薄くなっており、例1と比較してシェルの緻密さが低いことが示唆される。
例21で得られた中空シリカ粒子を、メノウ乳鉢を用いて解砕した後のSEM像を
図5に示す。
図5から、例21の中空シリカ粒子は、シリカシェル強度が不十分なため大部分の粒子が崩れてしまい、シリカシェルの破片が多く存在していることがわかる。
【0069】
(例2)
「エマルションの作製」
純水480gにEO-PO-EOブロックコポリマー(BASF社製Kolliphor P188)を2.4g添加し溶解するまで撹拌した。この水溶液にn-ドデカン16gを加え、IKA社製ホモジナイザーを使って液全体が均一になるまで撹拌し、粗エマルションを作製した。
この粗エマルションに、高圧乳化機(エムエステー社製LAB1000)を使い、圧力400barで3回乳化を行い、微細エマルションを作製した。
【0070】
「1段目シェル形成」
得られた微細エマルション442gに、2M塩酸9gを加え、pHを1.5とした。
次に、希釈したケイ酸ソーダ水溶液(SiO2濃度10.4質量%、Na2O濃度3.6質量%)12.3gを加え良く撹拌し、pHを2.1とした状態で15分保持した。
この液を良く撹拌しながら1M水酸化ナトリウム水溶液4gをゆっくり滴下し、撹拌下状態を1時間保持した後、pHが5.8のオイルコア-シリカシェル粒子分散液を得た。
【0071】
「2段目シェル形成」
1段目シェル形成で得られたオイルコア-シリカシェル粒子分散液400gを30℃に加熱し、撹拌しながら希釈したケイ酸ソーダ水溶液(SiO2濃度10.4質量%、Na2O濃度3.6質量%)3gをゆっくり添加し、pHを9とした。
次に、希釈したケイ酸ソーダ水溶液(SiO2濃度10.4質量%、Na2O濃度3.6質量%)127gを、pH9になるように0.5M塩酸とともに徐々に添加した。
この懸濁液を30℃で2日間保持した後、ゆっくり室温まで冷却し、中空シリカ前駆体分散液を得た。
【0072】
「ろ過、乾燥、焼成」
中空シリカ前駆体分散液770gを、0.45μmの親水性PTFEメンブレンフィルターを用いて加圧ろ過(圧力0.28MPa)でろ過を行った。
ろ過後のケーキを、窒素雰囲気下で、60℃で1時間、400℃で4時間乾燥し(昇温時間5℃/min)、中空シリカ前駆体を得た。
得られた前駆体を550℃で4時間焼成し(昇温時間5℃/min)、中空シリカ粒子13.8gを得た。
例2で得られた中空シリカ粒子の比表面積を表1に示す。
【0073】
(例3~5)
例2と同様の方法でシリカ粒子を作製した。ただし、2段目シェル形成時の反応温度及び保持温度を変更した。
例3~5の2段目シェル形成時の反応温度及び保持温度、そして得られた中空シリカ粒子の比表面積を表1に示す。
2段目シェル形成時の反応温度及び保持温度が高いほど、比表面積が小さことから、緻密なシェルを持つ中空シリカ粒子が作製できていると考えられる。
【表1】
【0074】
(例6~13)
例5と同様の方法でシリカ粒子を作製した。ただし、例6~13は使用したEO-PO-EOブロックコポリマーの種類を変更した。それぞれの例で使用したEO-PO-EOブロックコポリマーを表2に示す。
例6~13は全て中空シリカ粒子を得ることができたが、例6、例7、例11においては、孔が1つあいた中空シリカ粒子が多く見られた。
【表2】
【0075】
(例14)
例5と同様の方法で、シリカ粒子を作製した。ただし、EO-PO-EOブロックコポリマー(BASF社製Kolliphor P188)の添加量を10倍量とした。
例14で得られた中空シリカ粒子の比表面積は140m2/gであった。
【0076】
(例15)
「エマルションの作製」
純水480gにEO-PO-EOブロックコポリマー(ADEKA社製 F-68)を2.4g添加し溶解するまで撹拌した。この水溶液にn-ドデカン16gを加え、IKA社製ホモジナイザーを使って液全体が均一になるまで撹拌し、粗エマルションを作製した。
この粗エマルションに、超音波分散機(ギンセン社製GSCVP-600)を使い、V-Level3.4の強度で1分間の超音波照射を2回実施し、微細エマルションを作製した。
【0077】
1段目シェル形成以降は、例5と同様の方法でシリカ粒子を作製した。ただし、1段目シェル形成後、シリカ原料を添加した液体をpH5で保持せず、そのままpH9まで1M水酸化ナトリウム水溶液を添加した。
例15で得られた中空シリカ粒子の比表面積は170m2/gであった。
【0078】
(例16)
「エマルションの作製」
純水462gにEO-PO-EOブロックコポリマー(BASF社製 Pluronic PE10400)を4.9g添加し溶解するまで撹拌した。
この水溶液にフッ素系溶剤のアサヒクリンAC-6000(AGC社製:1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタン)を33g加え、IKA社製ホモジナイザーを使って液全体が均一になるまで撹拌し、粗エマルションを作製した。
この粗エマルションに、超音波分散機(ギンセン社製GSCVP-600)を使い、V-Level3.4の強度で1分間の超音波照射を2回実施し、微細エマルションを作製した。
【0079】
「1段目シェル形成」「2段目シェル形成」「ろ過」
1段目シェル形成及び2段目シェル形成、ろ過は、例5と同様の方法でシリカ粒子を作製した。
【0080】
「乾燥」
ろ過後のケーキを、60℃で2日間乾燥することでAC-6000を除去し、中空シリカ粒子8gを得た。
例16で得られた中空シリカ粒子の比表面積は80m2/gであった。
【0081】
(例17)
「エマルションの作製」
純水174gにEO-PO-EOブロックコポリマー(BASF社製 PE10500)の13gを添加して溶解した。この溶液を5℃に保持して、PO-EO-POブロックコポリマー(ADEKA社製 25R-1)の13gを添加して溶解し、透明な水溶液を得た。純水300gを60℃に加温し、攪拌しながら前記ブロックコポリマー混合溶液を滴下した。これにより約300nmの液滴径の微細エマルションを得た。
【0082】
1段目シェル形成以降は、例5と同様の方法でシリカ粒子を作製した。ただし、1段目シェル形成は60℃で実施し、その後シリカ原料を添加した液体をpH5で保持せず、そのままpH9まで1M水酸化ナトリウム水溶液を添加した。
例17で得られた中空シリカ粒子の比表面積は160m2/gであった。
なお2017年12月26日に出願された日本特許出願2017-248972号の明細書、特許請求の範囲、要約書及び図面の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。