(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】吸引クランプ、物体ハンドラ、ステージ装置、およびリソグラフィ装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20231212BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
H01L21/68 B
(21)【出願番号】P 2022543439
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(86)【国際出願番号】 EP2020087160
(87)【国際公開番号】W WO2021144119
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-08-22
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】クラメル、ガイス
【審査官】菅原 拓路
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-157822(JP,A)
【文献】特開平10-086086(JP,A)
【文献】国際公開第2015/064613(WO,A1)
【文献】特開2001-179672(JP,A)
【文献】米国特許第06517130(US,B1)
【文献】特開2012-099621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
9/00
H01L 21/027
21/677
21/68
B25J
B65G 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体をクランプするための吸引クランプであって、
基部と接続領域とを備える基部構造であって、第1突起を備え、前記第1突起が前記接続領域を備える基部構造と、
前記物体を受け取るための第1パッドと、
前記第1パッドが前記物体を受け取る受取位置と前記物体をクランプするクランプ位置との間で前記基部に対して移動可能であるように、前記第1パッドを前記基部構造の前記第1突起に接続する弾性部材であって、前記第1パッドを前記受取位置に付勢するように構成された弾性部材と、
前記基部に設けられ、前記第1パッド上の前記物体をクランプする吸引力を提供するための吸引装置に接続されるように構成された吸引開口と、
前記吸引力が前記吸引開口を介して提供されるとき、圧力降下部材の下流の内圧を前記第1パッドの上流の周囲圧力よりも低くするように構成された圧力降下部材と、を備え
、
前記圧力降下部材は、前記基部に対して固定された位置に配置され、少なくとも前記第1パッドの前記受取位置において、前記第1パッドと前記圧力降下部材との間に隙間が存在する吸引クランプ。
【請求項2】
物体をクランプするための吸引クランプであって、
基部と接続領域とを備える基部構造であって、第1突起を備え、前記第1突起が前記接続領域を備える基部構造と、
前記物体を受け取るための第1パッドと、
前記第1パッドが前記物体を受け取る受取位置と前記物体をクランプするクランプ位置との間で前記基部に対して移動可能であるように、前記第1パッドを前記基部構造の前記第1突起に接続する弾性部材であって、前記第1パッドを前記受取位置に付勢するように構成された弾性部材と、
前記基部に設けられ、前記第1パッド上の前記物体をクランプする吸引力を提供するための吸引装置に接続されるように構成された吸引開口と、を備え、
前記基部構造は、前記第1パッドが前記クランプ位置にあるときに前記第1パッドに係合するように構成されたパッド受け領域を備える
、吸引クランプ。
【請求項3】
前記吸引力が前記吸引開口を介して提供されるとき、圧力降下部材の下流の内圧を前記第1パッドの上流の周囲圧力よりも低くするように構成された圧力降下部材をさらに備える、請求項
2に記載の吸引クランプ。
【請求項4】
前記圧力降下部材は、前記吸引開口と前記第1パッドとの間に配置されている、請求項
1または3に記載の吸引クランプ。
【請求項5】
前記圧力降下部材は、前記第1パッドに隣接して配置され、前記第1パッドの前記クランプ位置において前記第1パッドと前記圧力降下部材が接触している、請求項
1、3または4に記載の吸引クランプ。
【請求項6】
前記第1パッドが、リング形状の要素であり、及び/又は、前記圧力降下部材が、リング形状の要素である、請求項
1、3、4または5のいずれかに記載の吸引クランプ。
【請求項7】
前記第1パッドは、少なくとも第1ゾーンおよび第2ゾーンを備え、前記第1ゾーンは、前記第2ゾーンが前記受取位置に留まる間に、前記受取位置から前記クランプ位置に移動可能であるように構成されている、請求項1から6のいずれかに記載の吸引クランプ。
【請求項8】
前記第1パッドが前記受取位置と前記クランプ位置との間で移動するように構成された距離が、0.5mm未満である、請求項1から
7のいずれかに記載の吸引クランプ。
【請求項9】
前記第1パッドは、前記吸引クランプの上面視において非対称の形状を有しており、
前記非対称の形状は、
第1の質量中心を有する第1端部と、
第2の質量中心を有する第2端部と、
前記第1端部と前記第2端部の間にあり、第3の質量中心を有する中間部分であって、第1側に第1の境界部を有し、第2側に第2の境界部を有する中間部分と、を備え、
前記第1側から前記第2側に向かう方向に見たとき、前記第3の質量中心は、前記第1の質量中心と前記第2の質量中心との間に位置
する、請求項1から
8のいずれかに記載の吸引クランプ。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれかに記載の第1の吸引クランプを少なくとも備える物体グリッパ。
【請求項11】
請求項1から
9のいずれかに記載の第2の吸引クランプと、第3の吸引クランプと、をさらに備える、請求項
10に記載の物体グリッパ。
【請求項12】
物体を受け取るためのステージ装置であって、前記ステージ装置は、物体支持体と、請求項
10または
11に記載の物体グリッパとを備え、前記物体グリッパは、前記物体支持体の上方に前記物体を配置するように構成される、ステージ装置。
【請求項13】
基板を備える物体を受け取るための請求項
12に記載のステージ装置と、前記基板上にパターンを投影するための投影システムと、を備えるリソグラフィ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年1月17日に出願された欧州出願20152451.9号の優先権を主張し、その全体が本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、基板またはウェーハなどの物体をクランプする技術分野に関する。とくに、本発明は、吸引クランプ、物体ハンドラ、ステージ装置、およびリソグラフィ装置に関する。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィ装置は、基板上に所望のパターンを適用するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用することができる。リソグラフィ装置は、例えば、パターニングデバイス(例えば、マスク)のパターン(しばしば「設計レイアウト」または「設計」とも呼ばれる)を、基板(例えばウェーハ)上に提供される放射感応性材料(レジスト)の層に投影することができる。
【0004】
一般に「ムーアの法則」と呼ばれる傾向に従って、半導体製造プロセスが進歩し続けるにつれて、回路要素の寸法は継続的に縮小され、装置あたりのトランジスタなどの機能要素の量は、数十年にわたって着実に増加している。ムーアの法則に追いつくために、半導体業界はますます小さなフィーチャを作成できるテクノロジーを追いかけている。基板上にパターンを投影するために、リソグラフィ装置は電磁放射を使用することができる。この放射の波長は、基板上にパターニングされるフィーチャの最小サイズを決定する。現在使用されている典型的な波長は、365nm(i線)、248nm、193nm、及び13.5nmである。4nmから20nmの範囲内の波長、例えば、6.7nm又は13.5nmを有する極紫外線(EUV)放射を使用するリソグラフィ装置は、例えば193nmの波長の放射を使用するリソグラフィ装置よりも基板上に小さいフィーチャを形成するのに使用できる。
【0005】
パターンが基板上に投影されている間、基板は通常、基板支持体に取り付けられる。基板を基板支持体上に配置するために、複数の支持部材が基板を受けるように設けられている。支持部材は、クランプ力を使用して基板をクランプするための1つ又は複数の吸引クランプを備えてもよい。基板を受け取った後、基板が基板支持体によって支持されるまで、支持部材は同時に垂直下向きに動かされる。
【0006】
典型的には、基板は、物体グリッパによって前述の支持部材上に配置される。グリッパは、クランプ力を用いて基板をクランプするための1つ又は複数の吸引クランプを備えてもよい。
【0007】
いわゆる3D NAND及び3D Xpoint基板など、近年の開発により、基板は多くの場合平坦ではなく、例えば反りや曲がりなど面外形状を有する。これは例えば、内部応力を持つ層数の増加に起因しうる。このような反りや曲がりのある基板は、物体ハンドラ及び/又は支持ピンの従来の吸引クランプによって必ずしも適切にクランプされないことが確認されている。
【発明の概要】
【0008】
本発明のひとつの目的は、少なくとも先行技術装置の代替案を提供することにある。本発明のひとつの目的は、先行技術装置の1つ又は複数の欠点を緩和することにある。特に、本発明のひとつの目的は、曲がり又は反りのある物体のための改良されたクランプを提供することにある。
【0009】
本発明の第1の態様によると、上記の目的の1つ又は複数が、物体をクランプするための吸引クランプにより実現される。吸引クランプは、基部と接続領域とを備える基部構造と、物体を受け取るための第1パッドと、を備える。吸引クランプは、第1パッドが物体を受け取る受取位置と物体をクランプするクランプ位置との間で基部に対して移動可能であるように、第1パッドを基部構造の接続領域に接続する弾性部材をさらに備え、弾性部材は、第1パッドを受取位置に付勢するように構成されている。吸引クランプは、基部に設けられ、第1パッド上の物体をクランプする吸引力を提供するための吸引装置に接続されるように構成された吸引開口をさらに備える。
【0010】
弾性部材が第1パッドを受取位置に向けて付勢するので、第1パッドは、物体が吸引クランプ上に配置されるとき受取位置に配置される。物体は、例えば基板またはウェーハであってもよい。物体が反った表面を有する場合であっても、物体の反った表面のうち少なくとも下部が第1パッドによって係合されることが保証される。弾性部材は第1パッドがクランプ位置に向けて移動することを許容するので、少なくとも反った面に係合している部分は第1パッドに係合され、また、反った面の上部も第1パッドに係合される。そして、第1パッドがクランプ位置に向かって移動すると、反った面は吸引力により実質的に矯正される。物体は、良好に規定された位置で適切にクランプされることができる。
【0011】
一実施形態では、吸引クランプは、吸引力が吸引開口を介して提供されるとき、圧力降下部材の下流の内圧を第1パッドの上流の周囲圧力よりも低くするように構成された圧力降下部材をさらに備える。有利には、圧力降下部材は、物体に及ぼされる吸引力を増加させる。
【0012】
一実施形態では、圧力降下部材は、基部に対して固定された位置に配置され、少なくとも第1パッドの受取位置において、第1パッドと圧力降下部材との間に隙間が存在する。有利には、この実施形態では、圧力降下部材は、耐摩耗性を有する。
【0013】
一実施形態では、圧力降下部材は、吸引開口と第1パッドとの間に配置されている。この配置は、物体に及ぼされるクランプ力に対する圧力降下部材の効果にとって有益であることが判明している。
【0014】
一実施形態では、圧力降下部材は、第1パッドに隣接して配置され、第1パッドのクランプ位置において第1パッドと圧力降下部材が接触している。有利には、クランプ位置において、吸引空気のいかなるリークも低減される。
【0015】
一実施形態では、第1パッドが、リング形状の要素であり、任意的に円形または楕円形のリング形状であり、及び/又は、圧力降下部材が、リング形状の要素であり、任意的に円形または楕円形のリング形状である。この構成は、物体をクランプするのに有利であることが判明している。
【0016】
一実施形態では、第1パッドは、少なくとも第1ゾーンおよび第2ゾーンを備え、第1ゾーンは、第2ゾーンが受取位置に留まる間に、受取位置からクランプ位置に移動可能であるように構成されている。有利には、物体が反った表面を有する場合、第1ゾーンは、最初に、反った表面の下部に係合することができ、第2ゾーンは、第1ゾーンが既にクランプ位置に移動されたときに、反った表面のより高い部分に係合する。このようにして、反った表面をより良くクランプすることができる。
【0017】
一実施形態では、基部構造は、第1パッドがクランプ位置にあるときに第1パッドに係合するように構成されたパッド受け領域を備える。有利には、第1パッドの位置は、クランプ位置において良好に規定され、その結果、物体の位置も同様に規定される。
【0018】
一実施形態では、第1パッドが受取位置とクランプ位置との間で移動するように構成された距離が、0.5mm未満、好ましくは0.3mm未満、例えば約0.2mmである。これは、比較的反った物体に対して十分である一方で、物体の位置を良好に規定することができることが判明している。
【0019】
一実施形態では、弾性部材は、ばね、例えば、板ばねである。これは、満足のいく結果を達成しながら、製造が比較的簡単な構成であることが分かっている。
【0020】
一実施形態では、基部構造は、第1突起を備え、第1突起が接続領域を備える。有利には、弾性部材は、例えば、他の構成要素によって妨げられることなく、突起に容易に取り付けられることができる。
【0021】
本発明の第2の態様においては、本発明は、少なくとも第1パッドを有する吸引クランプに関し、第1パッドは、吸引クランプの上面視において非対称の形状を有しており、非対称の形状は、第1の質量中心を有する第1端部と、第2の質量中心を有する第2端部と、第1端部と第2端部の間にあり、第3の質量中心を有する中間部分であって、第1側に第1の境界部を有し、第2側に第2の境界部を有する中間部分と、を備え、第1の境界部と第2の境界部とが互いに平行であり、第1側から第2側に向かう方向に見たとき、第3の質量中心は、第1の質量中心と第2の質量中心との間に位置する。第2の態様に係る吸引クランプによりクランプすることが可能であることが判明している。
【0022】
本発明の第2の態様は、第1の態様と組み合わされてもよく、本発明はまた、そのような第2の態様にも関する。
【0023】
一実施形態では、第1端部は第1の非平行境界線を備え、第2端部は第2の非平行境界線を備え、第1の非平行境界線及び第2の非平行境界線は、物体に対して非同心であるように構成されている。
【0024】
第2の態様のさらなる実施形態では、第1側から第2側への方向に垂直な方向に見たとき、第2端部は、第1端部よりも長い。
【0025】
本発明は、さらに、本発明の第1及び/又は第2の態様に係る少なくとも第1の吸引クランプを備える物体グリッパに関する。有利には、物体をより良くクランプすることができ、物体グリッパの移動中に物体グリッパに対する物体の移動を低減することができる。
【0026】
一実施形態では、物体グリッパは、本発明の第1及び/又は第2の態様に係る第2の吸引クランプと、第3の吸引クランプとをさらに備える。有利には、物体をより良くクランプすることができ、物体グリッパの移動中に物体グリッパに対する物体の移動を低減することができる。
【0027】
本発明は、さらに、本発明に係る物体グリッパと、第1の吸引クランプ、及び/又は第2の吸引クランプ、及び/又は第3の吸引クランプの吸引開口に接続された吸引装置と、を備える物体ハンドラに関する。有利には、物体をより良くクランプすることができ、物体ハンドラが物体をより正確に位置決めすることが可能になる。
【0028】
本発明は、さらに、物体を受け取るためのステージ装置に関し、ステージ装置は、物体支持体と、本発明に係る物体ハンドラ、物体グリッパとを備え、物体グリッパは、物体支持体の上方に物体を配置するように構成されている。有利には、物体は、物体支持体の上方でより正確に位置決めされることができる。
【0029】
本発明は、さらに、基板を備える物体を受け取るための本発明に係るステージ装置と、基板上にパターンを投影するための投影システムと、を備えるリソグラフィ装置に関する。有利には、物体がより正確に位置決めされているため、パターンをより正確に投影することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図2】
図1のリソグラフィ装置の一部の詳細図を示す。
【
図4a】物体支持体を備えるステージ装置の側面図を示す。
【
図5a】物体グリッパおよび反った物体の側面図を示す。
【
図5b】リークの大きさの関数として吸引力および変形力のグラフを示す。
【
図6a】第1の態様に係る吸引クランプの概略断面を示す。
【
図6b】第1の態様に係る吸引クランプの概略断面を示す。
【
図6c】第1の態様に係る吸引クランプの概略断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本書では、「放射」および「ビーム」という用語は、紫外放射(例えば、365、248、193、又は126nmの波長をもつ)及びEUV(例えば約5~100nmの範囲の波長を有する極紫外放射)を含むあらゆるタイプの電磁放射を包含するように使用される。
【0032】
このテキストで使用される「レチクル」、「マスク」又は「パターニングデバイス」という用語は、入射放射ビームに、基板のターゲット部分に作成されるパターンに対応するパターニングされた断面を与えるために使用できる一般的なパターニングデバイスを指すと広く解釈されうる。「ライトバルブ」という用語は、この文脈でも使用できる。従来のマスク(透過型または反射型、バイナリ、位相シフト、ハイブリッドなど)に加えて、他のそのようなパターニングデバイスの例には、プログラマブルミラーアレイ及びプログラマブルLCDアレイが含まれる。
【0033】
図1は、リソグラフィ装置LAを概略的に示している。リソグラフィ装置LAは、放射ビームB(例えば、UV放射、DUV放射またはEUV放射)を調整するように構成された照明システム(イルミネータとも呼ばれる)ILと、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを支持するように構築され、特定のパラメータにしたがってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするように構成された第1ポジショナPMに接続されたマスク支持体(例えば、マスクテーブル)MTと、基板(例えばレジストで覆われたウェーハ)Wを保持するように構築され、特定のパラメータにしたがって基板支持体を正確に位置決めするように構成された第2ポジショナPWに接続された基板支持体(例えば、ウェーハテーブル)WTと、パターニングデバイスMAにより放射ビームBに付与されたパターンを基板のターゲット部分(例えば、1つ又は複数のダイを含む)Cに投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSとを含む。
【0034】
動作中、照明システムILは、放射源SOから放射ビームを、例えばビーム搬送システムBD経由で、受け取る。照明システムILは、放射を方向付け、成形し、及び/又は制御するために、屈折、反射、磁気、電磁、静電、及び/又は他のタイプの光学コンポーネント、又はそれらの任意の組み合わせなど、様々なタイプの光学コンポーネントを含みうる。イルミネータILは、パターニングデバイスMAの平面での放射ビームBの断面に所望の空間的および角度的強度分布を持たせるように放射ビームBを調整するために使用されうる。
【0035】
本明細書で使用される「投影システム」PSという用語は、屈折、反射、反射屈折、アナモルフィック、磁気的、電磁気的、及び/又は静電光学システム、またはそれらの任意の組み合わせを含み、使用される露光放射について、及び/又は液浸液の使用や真空の使用など他の要因について適切な様々なタイプの投影システムを包含すると広く解釈されるべきである。本明細書における「投影レンズ」という用語の使用は、より一般的な用語「投影システム」PSと同義であると見なせる。
【0036】
リソグラフィ装置LAは、基板の少なくとも一部が、投影システムPSと基板Wとの間の空間を満たすように、比較的高い屈折率を有する液体、例えば、水によって覆われ得るタイプのものであってもよく、これは液浸リソグラフィとも呼ばれる。液浸技術の詳細は、US6952253に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
リソグラフィ装置LAはまた、2つ以上の基板支持体WTを有するタイプのものであってもよい(「デュアルステージ」とも呼ばれる)。そのような「多段」機械では、基板支持体WTを並行して使用することができ、及び/又は、基板支持体WTの一方に配置された基板W上でその後の露光のための準備工程を実行すると同時に、他方の基板支持体WT上の基板Wにパターンを露光するように使用することができる。
【0038】
基板支持体WTに加えて、リソグラフィ装置LAは、測定ステージを含んでもよい。測定ステージは、センサ及び/又は洗浄装置を保持するように構成される。センサは、投影システムPSの特性または放射ビームBの特性を測定するように構成される。測定ステージは、複数のセンサを保持できる。洗浄装置は、リソグラフィ装置の一部、例えば、投影システムPSの一部または液浸液を提供するシステムの一部を洗浄するように構成される。測定ステージは、基板支持体WTが投影システムPSから離れているときに、投影システムPSの下に移動できる。
【0039】
動作中、放射ビームBは、マスク支持体MT上に保持されたパターニングデバイスMA、例えばマスクに入射し、パターニングデバイスMA上に存在するパターン(デザインレイアウト)によってパターニングされる。放射ビームBは、パターニングデバイスMAを通過した後、ビームを基板Wの標的部分Cに集束させる投影システムPSを通過する。第2ポジショナPWおよび位置測定システムIFの助けを借りて、基板支持体WTは、例えば、集束され整列された位置で放射ビームBの経路内にさまざまなターゲット部分Cを配置するように、正確に移動することができる。同様に、第1ポジショナPM及び場合によっては別の位置センサ(
図1には明示的に示されていない)を使用して、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に配置することができる。パターニングデバイスMAおよび基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせされうる。図示のように基板アライメントマークP1、P2は専用のターゲット部分を占めるが、それらはターゲット部分の間の空間に配置されてもよい。基板アライメントマークP1、P2は、これらがターゲット部分Cの間に配置されている場合、スクライブレーンアライメントマークとして知られている。
【0040】
本発明を明確にするために、デカルト座標系が使用される。デカルト座標系には、X軸、Y軸、Z軸の3つの軸がある。3つの軸のそれぞれは、他の2つの軸に直交する。X軸を中心とした回転は、Rx回転と呼ばれる。Y軸を中心とした回転は、Ry回転と呼ばれる。Z軸を中心とした回転は、Rz回転と呼ばれる。X軸とY軸は水平面を定義し、Z軸は垂直方向を定義する。デカルト座標系は本発明を限定するものではなく、説明のためにのみ使用される。代わりに、円筒座標系などの別の座標系を使用して、本発明を明確にすることができる。デカルト座標系の方向は、例えば、Z軸が水平面に沿った成分を持つように、異なっていてもよい。
【0041】
図2は、
図1のリソグラフィ装置LAの一部のより詳細な図を示す。リソグラフィ装置LAは、ベースフレームBF、バランスマスBM、計測フレームMF、及び防振システムISを備えていてもよい。計測フレームMFは投影システムPSを支持する。さらに、計測フレームMFは、位置測定システムPMSの一部を支持してもよい。計測フレームMFは、防振システムISを介してベースフレームBFによって支持される。防振システムISは、振動がベースフレームBFから計測フレームMFに伝播するのを防止または低減するように構成されている。
【0042】
第2ポジショナPWは、基板支持体WTとバランスマスBMとの間に駆動力を提供することにより、基板支持体WTを加速するように構成されている。駆動力は、基板支持体WTを所望の方向に加速させる。運動量が保存されるため、駆動力はバランスマスBMにも同じ大きさで適用されるが、上記所望の方向とは反対の方向になる。典型的には、バランスマスBMの質量は、第2ポジショナPWの可動部分および基板支持体WTの質量よりも著しく大きい。
【0043】
一実施形態では、第2ポジショナPWは、バランスマスBMによって支持されている。例えば、第2ポジショナPWは、バランスマスBMの上方に基板支持体WTを浮上させるための平面モーターを含む。別の実施形態では、第2ポジショナPWは、ベースフレームBFによって支持されている。この場合、例えば、第2ポジショナPWは、リニアモーターを含み、かつ、第2ポジショナPWは、ベースフレームBF上に基板支持体WTを浮上させるガスベアリングなどのベアリングを含む。
【0044】
位置測定システムPMSは、基板支持体WTの位置を決定するのに適した任意のタイプのセンサを含みうる。位置測定システムPMSは、マスク支持体MTの位置を決定するのに適した任意のタイプのセンサを含みうる。センサは、干渉計またはエンコーダーなどの光学センサであってもよい。位置測定システムPMSは、干渉計とエンコーダの組み合わせシステムを備えてもよい。センサは、磁気センサ、静電容量センサ又は誘導センサなどの別のタイプのセンサであってもよい。位置測定システムPMSは、基準、例えば、計測フレームMF又は投影システムPSに対する位置を決定することができる。位置測定システムPMSは、位置を測定することによって、又は速度若しくは加速度などの位置の時間微分を測定することによって、基板テーブルWT及び/又はマスク支持体MTの位置を決定することができる。
【0045】
位置測定システムPMSは、エンコーダシステムを含んでもよい。エンコーダシステムとしては、例えば、2006年9月7日に出願された米国特許出願US2007/0058173A1が知られており、参照により本明細書に組み込まれる。エンコーダシステムは、エンコーダヘッド、回折格子、及びセンサを備える。エンコーダシステムは、一次放射ビーム及び二次放射ビームを受けることができる。一次放射ビームと二次放射ビームの両方は同じ放射ビーム、すなわち元の放射ビームから発生する。一次放射ビームと二次放射ビームの少なくとも一方は、元の放射ビームを回折格子で回折することによって作成される。一次放射ビームと二次放射ビームの両方が元の放射ビームを回折格子で回折することによって作成される場合、一次放射ビームは二次放射ビームとは異なる回折次数を有する必要がある。異なる回折次数は、例えば、+1次、-1次、+2次、及び-2次である。エンコーダシステムは、一次放射ビームと二次放射ビームを光学的に結合して、結合された放射ビームにする。エンコーダヘッドのセンサは、結合された放射ビームの位相又は位相差を決定する。センサは、位相又は位相差に基づく信号を生成する。信号は、回折格子に対するエンコーダヘッドの位置を表す。エンコーダヘッド及び回折格子のうちの1つは、基板構造体WT上に配置される。エンコーダヘッドと回折格子のうちもう一方は、計測フレームMF又はベースフレームBFに配置される。例えば、複数のエンコーダヘッドが計測フレームMF上に配置され、回折格子は、基板支持WTの上面に配置される。別の例では、回折格子が基板支持体WTの底面に配置され、エンコーダヘッドが基板支持体WTの下方に配置される。
【0046】
位置測定システムPMSは、干渉計システムを含んでもよい。干渉計システムとしては、例えば、1998年7月13日に出願された米国特許第6,020,964号が知られており、参照により本明細書に組み込まれる。干渉計システムは、ビームスプリッタ、ミラー、基準ミラー、及びセンサを含む。放射のビームは、ビームスプリッタによって基準ビームと測定ビームに分割される。測定ビームはミラーに伝搬し、ミラーによって反射されてビームスプリッタに戻る。基準ビームは基準ミラーに伝搬し、基準ミラーによって反射されてビームスプリッタに戻る。ビームスプリッタでは、測定ビームと基準ビームが結合されて、結合された放射ビームになる。結合された放射ビームはセンサに入射する。センサは、結合された放射ビームの位相又は周波数を決定する。センサは、位相又は周波数に基づく信号を生成する。信号はミラーの変位を表す。一実施形態では、ミラーは、基板支持体WTに接続されている。基準ミラーは、計測フレームMFに接続されてもよい。一実施形態では、測定ビームと基準ビームは、ビームスプリッタの代わりに追加の光学部品によって、結合された放射ビームに結合される。
【0047】
第1ポジショナPMは、ロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを含む。ショートストロークモジュールは、ロングストロークモジュールに対してマスク支持体MTを狭い移動範囲で高精度に動かすように構成されている。ロングストロークモジュールは、投影システムPSに対してショートストロークモジュールを広い移動範囲の動きで比較的低い精度で動かすように構成されている。ロングストロークモジュールとショートストロークモジュールの組み合わせにより、第1ポジショナPMは、広い移動範囲にわたって高精度で投影システムPSに対してマスク支持体MTを移動させることができる。同様に、第2ポジショナPWは、ロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを含む。ショートストロークモジュールは、ロングストロークモジュールに対して基板支持体WTを狭い移動範囲で高精度に動かすように構成されている。ロングストロークモジュールは、投影システムPSに対してショートストロークモジュールを広い移動範囲で比較的低い精度で動かすように構成されている。ロングストロークモジュールとショートストロークモジュールの組み合わせにより、第2ポジショナPWは、広い移動範囲にわたって高精度で投影システムPSに対して基板支持体WTを動かすことができる。
【0048】
第1ポジショナPM及び第2ポジショナPWの各々は、それぞれマスク支持体MT及び基板支持体WTを移動させるためのアクチュエータを備えている。アクチュエータは、単一の軸、例えば、Y軸に沿って駆動力を提供するためのリニアアクチュエータであってもよい。複数のリニアアクチュエータを適用して、複数の軸に沿って駆動力を提供してもよい。アクチュエータは、多軸に沿って駆動力を提供するための平面アクチュエータであってもよい。例えば、平面アクチュエータは、基板支持体WTを6自由度で動かすように構成されてもよい。アクチュエータは、少なくとも1つのコイル及び少なくとも1つの磁石を含む電磁アクチュエータであってもよい。アクチュエータは、少なくとも1つのコイルに電流を印加することによって、少なくとも1つの磁石に対して少なくとも1つのコイルを動かすように構成されている。アクチュエータは、基板支持体WT又はマスク支持体MTのそれぞれに結合された少なくとも1つの磁石を有する移動磁石タイプのアクチュエータであってもよい。アクチュエータは、基板支持体WT又はマスク支持体MTにそれぞれ結合された少なくとも1つのコイルを有する移動コイルタイプのアクチュエータであってもよい。アクチュエータは、ボイスコイルアクチュエータ、リラクタンスアクチュエータ、ローレンツアクチュエータ、ピエゾアクチュエータ、又は他の任意の適切なアクチュエータであってもよい。
【0049】
リソグラフィ装置LAは、
図3に概略的に示されているような位置制御システムPCSを備える。位置制御システムPCSは、セットポイントジェネレータSP、フィードフォワードコントローラFF及びフィードバックコントローラFBを備える。位置制御システムPCSは、アクチュエータACTに駆動信号を提供する。アクチュエータACTは、第1ポジショナPM又は第2ポジショナPWのアクチュエーターであってもよい。アクチュエータACTは、基板支持体WT又はマスク支持体MTを含みうるプラントPを駆動する。プラントPの出力は、位置、または速度、または加速度などの位置量である。位置量は、位置測定システムPMSで測定される。位置測定システムPMSは、プラントPの位置量を表す位置信号である信号を生成する。セットポイントジェネレータSPは、プラントPの所望の位置量を表す基準信号である信号を生成する。基準信号は、例えば基板支持体WTの所望の軌道を表す。基準信号と位置信号の差がフィードバックコントローラFBの入力になる。入力に基づいて、フィードバックコントローラFBは、アクチュエータACTに駆動信号の少なくとも一部を提供する。基準信号は、フィードフォワードコントローラFFの入力を形成する。入力に基づいて、フィードフォワードコントローラFFは、アクチュエータACTに駆動信号の少なくとも一部を提供する。フィードフォワードFFは、質量、剛性、共振モード、固有周波数など、プラントPの動的特性に関する情報を利用してもよい。
【0050】
図4aは、例えば基板W又はウェーハである物体105を支持するように構成された物体支持体102を備えるステージ装置101の側面図である。物体支持体102は、例えば、
図4aに示すように、他の支持体によって支持されてもよい。ステージ装置101は、例えば、物体105を支持するための複数の支持部材103を備え、支持部材103は、物体グリッパ104から物体105を受け取り、物体105を物体支持体102上に配置し及び/又はその逆を行うように構成されている。支持部材103は、少なくとも、第1の平面xyに垂直な鉛直方向zに移動可能である。図示の実施形態では、ステージ装置101は、3つの支持部材103を備え、そのうち2つが
図4aに示す側面図に見ることができる。これら3つの支持部材103は、好ましくは、上面視において、支持部材103が角に位置する想像上の正三角形を描くように配置されてもよい。しかしながら、任意の適切な数の支持部材103が任意の適切な配置で適用され得ることに留意されたい。
【0051】
物体105をロードすること、すなわち物体105を物体支持体102上に配置することは、その後、例えば以下のように達成することができる。
図4aに示す状況では、物体105は支持部材103によって支持されており、物体グリッパ104は部分的に引っ込んでいる。この状況に先立って、物体105は物体グリッパ104によって支持され、物体グリッパ104は、物体105をステージ装置101に提供するために物体支持体102の上方に配置していた。物体グリッパ104は、例えば、物体105を提供する物体ハンドラの一部であるロボット、例えば、多軸ロボットアームによって駆動されてもよい。次に、支持部材103は、物体支持体102の下方に配置される格納位置から、
図4aに示す支持位置まで垂直方向上方に移動される。前記垂直方向上方への移動の間、支持部材103は物体105と係合する。物体105が支持部材103によって支持されると、グリッパ104は、
図4aに示される状況に対応するように引き込まれることができる。グリッパ104が水平方向に引き込まれると、次に、破線105’で示されるように、物体105が物体支持体102上に配置されるまで、支持部材103が鉛直下方に移動される。
【0052】
物体105は、例えば、物体105にパターンが投影された後、同様の方法でアンロードされることが可能である。物体105が物体支持体102上に配置されている間、支持部材103は、物体支持体102の上面より下方の格納位置にある。支持部材103は、物体105に係合するまで鉛直方向zに上方に移動させることができ、物体105が物体支持体102の代わりに支持部材103によって支持されるようにすることができる。その後、支持部材103は、再び
図4aに示されるような支持位置に達するまで、鉛直方向zに上方にさらに移動させることができる。その後、物体グリッパ104を物体105の下方に移動させて、物体105を支持することができる。例えば、物体グリッパ104は、物体105の下に配置された後、物体に係合するために、鉛直方向上方に移動させることが可能である。また、物体グリッパ104が物体105の下に配置された後、物体グリッパ104が物体105に係合するまで、支持部材103を鉛直下方に移動させることも可能である。あるいは、物体グリッパ104を物体105の上方に移動させることも可能である。例えば、物体グリッパ104は、物体に係合するために、物体105の上方に配置された後、鉛直下方に移動させることができる。一実施形態において、物体105のアンロード使用される物体グリッパは、物体105を提供するために使用される物体グリッパ104とは異なる物体グリッパであってもよく、例えば、両方のグリッパが物体105の反対側、例えば、
図4aにおける左側及び右側に配置されてもよいことが留意される。
【0053】
図4bは、物体ハンドラ301を上面図で概略的に示している。なお、
図4bは、分かりやすくするために、全ての構成要素を描いているわけではなく、以下の説明に関連する構成要素に焦点を合わせている。物体ハンドラ301は、物体105を物体支持体102に提供するように構成されたロボットアーム304と、制御部305とを備える。
図4bは、さらに、制御部305が、ロボットアーム304を第1制御信号305.1aで制御するための第1出力端子305.1を有することを示している。ロボットアーム304は、物体グリッパ104を備えており、したがって、物体グリッパ104の位置をそれに従い制御することができる。物体グリッパ104は、支持部材が物体105に係合するために、物体105を物体支持体102の上方に配置するので、物体105の物体支持体102に対する位置をそれに従い制御することが可能である。ロボットアーム304は、さらに、各物体105を物体支持体102に対して実質的に同じ位置に配置できるように、その動作を高い精度で繰り返し行うことができるようにしてもよい。
【0054】
図4aはさらに、支持部材103が吸引クランプ103.1を備えることを示し、
図4bは、図示の実施形態における物体グリッパ104が第1吸引クランプ104.1、第2吸引クランプ104.2、及び第3吸引クランプ104.3を備えることを示す。例えばステージ装置の支持部材が物体105に係合することを可能にするためなどに、物体グリッパ104に凹部104.4がさらに設けられてもよい。吸引クランプ103.1、104.1、104.2、104.3は、1つ又は複数の図示しない吸引源に流体的に接続されており、物体105に吸引力を与える。しかしながら、物体105が反った表面を有する場合、吸引クランプ103.1、104.1、104.2、104.3は物体105を適切にクランプできないことがある。これは、物体グリッパ104が側面図で示されている
図5aによって示されており、そこでは、第1の吸引クランプ104.1および第3の吸引クランプ104.3が見えている。
【0055】
図5aは、物体105の反った表面105.1により、第1の吸引クランプ104.1が物体105によって完全には覆われておらず、その結果、リーク201が発生していることを示している。リーク201を通して、周囲の空気が吸引源によって吸い込まれ、その結果、物体105に印加される吸引力が低下する。
【0056】
物体105を適切にクランプするためには、第1吸引クランプ104.1が物体105によって可能な限り覆われるべきである。
図5bは、リーク201の大きさを横軸202に、ニュートンで表される力を縦軸203にとるグラフを示す。第1のグラフ204’は、物体105に及ぼされる吸引力204を示し、これは、リーク201にほぼ反比例している。第2のグラフ205’は、物体105を変形させ、そのように物体105を第1の吸引クランプ104.1に向かって吸い込むために必要な変形力205を示している。変形力205は、物体105の剛性にほぼ比例し、リーク201が減少するにつれて増加する。さらに変形するためにより多くの力が必要とされるためである。
【0057】
物体105の反りが大きいために、
図5bに示すような状況が発生することがある。吸引力204が変形力205より小さい領域206では、物体105はもはや変形せず、したがって十分にクランプされない。これが例えば物体グリッパの第1の吸引クランプ104で起こると、物体105は、物体グリッパの例えば水平方向の移動中に物体グリッパに対して移動する可能性がある。これは、物体支持体102に対する物体105の不正確な位置をもたらし、最終的には、物体105へのパターンの不正確な投影をもたらす可能性がある。
【0058】
したがって、第1の態様によれば、本発明は、その例が
図6aから
図6cに概略断面で示される吸引クランプ501を提案する。
図6dはさらに、吸引クランプ501の概略的な上面図を示す。吸引クランプ501は、基部構造502を備える。基部構造502は、基部511と接続領域503とを備える。吸引クランプ501は、物体105を受け取るための第1パッド505を備える。吸引クランプ501は、第1パッド505が物体105を受け取るための受取位置(
図6aに示すような状況)と物体105をクランプするためのクランプ位置(
図6cに示すような状況)との間で基部511に対して移動可能であるように第1パッド505を基部構造502の接続領域503に接続する弾性部材509をさらに備える。弾性部材509は、第1パッド505を受取位置に付勢するように構成されている。吸引クランプ501は、基部511に配置され、第1パッド505上に物体105をクランプするための吸引力を提供するための吸引装置(図示せず)に接続されるように構成された吸引開口507をさらに備える。
【0059】
図6aは、受取位置にある第1パッド505を示す。弾性部材509が第1パッド505をこの位置に向かって付勢するように構成されているので、これは、何らかの物体105が第1パッド505に係合する前の状態となる。弾性部材509は、第1パッド505に少なくとも上向き成分を有するバネ力を及ぼす。物体105は、例えば、反った表面を有する基板又はウェーハであってもよい。吸引クランプ501は、物体105よりもかなり小さく、反った表面の曲率は、
図6aから
図6cに示される物体105の部分において実際上無視し得ることに留意されたい。そのため、物体105は模式的に直線で示されている。しかし、見て分かるように、物体105が反っているため、物体105は基部511と平行ではない。この結果、
図6aに示される状況が生じ、物体105は、
図6aから
図6cにおいて右側となる部分で最初に第1パッド505に係合する。
【0060】
第1パッド505は、吸引孔507を介して提供される吸引力と、(物体105が第1パッドに係合するとき)物体105の重量とを含む下向きの力に曝される。下向きの力が弾性部材509によって印加されるバネ力の上向き成分を上回ると、第1パッド505は下向きに移動される。好ましくは、弾性部材509は、吸引力が提供されない場合であっても、第1パッド505の少なくとも一部がクランプ位置に向かって移動することを許容する。
図6aでは、物体105は右側の第1パッド505にのみ係合するので、第1パッド505は、
図6bの状況が生じるまで、最初は右側でのみ下方に移動することになる。
図6bでは、第1パッド505は、物体
105が左側でも第1パッド505に係合するまで、右側で下方に移動している。
【0061】
有利には、弾性部材509が第1パッド505の一部を下方に移動させることを可能にするので、第1パッド505のより大きな部分が物体105によって覆われることになる。したがって、リークがあったとしても低減され、従来の吸引クランプと比較して、吸引装置によって吸引開口507を介して物体105に及ぼされる吸引力が増加される。今度は、第1パッド505の左側も下方に移動し始め、
図6cの状況に達する。このとき、物体105に作用する吸引力は変形力よりも大きいため、物体105は変形し、かつ、下方に移動する。
図6cの結果は、物体105が満足にクランプされた状況を示している。
【0062】
基部構造502は、例えば、物体グリッパ又は支持部材上に配置されるか又はそこに埋め込まれてもよい。図示の例では、基部構造502は、第1の突起504を備える。第1の突起504は、接続領域503を備える。
図6aから
図6cでは、第1の突起504が吸引クランプ501の中心にあることを示しているが、これは必須ではない。例えば、第1の突起504は、第1パッド505の半径方向外側に配置することも可能である。
【0063】
任意選択的に、第1パッド505は、エラストマー、例えばポリエーテルイミドなどの非晶質プラスチックから形成される。例えば、第1パッド505は、商品名Semitron 410 ESDとして市販されている材料で形成されてもよい。弾性部材509は、バネ、例えば板バネであってもよい。弾性部材509は、例えば、1~3N/mmの間、例えば約2N/mmのバネ定数を有してもよい。第1パッドが受取位置とクランプ位置との間で移動するように構成される距離は、水平方向及び鉛直方向の両方において、物体105の位置が良好に規定されるように、例えば、0.5mm未満、好ましくは0.3mm未満、例えば約0.2mmであってもよい。
【0064】
吸引開口507は、例えばポンプ又は圧縮機、例えば真空ポンプであってもよい吸引装置に接続される。吸引装置は、
図6aから
図6cに矢印508で示されるように、吸引クランプ501から離れるように、チャネル内に空気を吸引するように構成されてもよい。
【0065】
図6aから
図6cは、任意選択的に、吸引クランプ501が圧力降下部材506をさらに備えることを示す。圧力降下部材506は、吸引力が吸引開口507を介して提供されるとき、圧力降下部材506の下流532の内圧を第1パッド505の上流531の周囲圧力より低くするように配置される。物体105は、外側で周囲圧力にさらされ、内側で内圧、または少なくとも当該内圧によって一部が決定される圧力にさらされる。圧力降下部材506により前記内圧と周囲圧力との間に圧力降下を与えることで、内圧が低減される。そのため、物体105に作用する吸引力は増大する。
【0066】
いくつかの実施形態では、圧力降下部材506は、第1パッド505と基部構造502との間のシールとして具現化されてもよい。しかしながら、図示の例では、圧力降下部材506は、基部511に対して固定された位置に配置され、少なくとも第1パッド505の受取位置において第1パッド505と圧力降下部材506との間に隙間510が存在する。圧力降下部材506は、例えば、第1パッド505と同じ材料で形成されて、基部511上に配置されてもよい。あるいは、圧力降下部材506は、例えば、基部構造502と一体であってもよく、例えば、基部511から延在する突起であってもよい。
【0067】
空気は、吸引装置によって隙間510を通って吸引開口507に吸引される。隙間510は比較的小さいので、比較的高い圧力降下が達成され得る。この構成は、「リーキーシール(leaky seal)」と呼ばれることもある。有利なことに、この実施形態では、第1パッド505と圧力降下部材506との間の物理的な接触が必要ない。そのため、圧力降下部材506は、例えば従来のシールとは異なり、第1パッド505の移動によって摩耗しやすいものではない。
【0068】
図6aから
図6cは、圧力降下部材506が、吸引開口507と第1パッド505との間、特に第1パッド505の半径方向内側にあることを示している。これは、満足のいく結果をもたらす実用的な配置であることが判明している。それにもかかわらず、圧力降下部材506を第1パッド505の半径方向外側に配置することも可能である。
【0069】
図6cはさらに、圧力降下部材506が第1パッド505に隣接して配置されていることを示す。任意選択的に、第1パッド505のクランプ位置において、前記第1パッド505及び圧力降下部材506は接触している。このようにして隙間510が閉じられると、クランプ位置において隙間510を介した空気のリークはなくなる。
【0070】
図6dは、図示の実施形態では、第1パッド505と圧力降下部材506がリング形状の要素、特に円形であることを示している。しかしながら、リング形状の要素は、
図8aから
図8bを参照して本明細書でさらに説明されるように、楕円形又は他の適切な形状であってもよい。
【0071】
また、
図6dに示すように、弾性部材509は、例えば、第1パッド505を接続領域503に接続するいくつかの枝を備えてもよい。
【0072】
図6bで最もよく見えるのは、さらに、任意選択的に、第1パッド505が少なくとも第1ゾーン505a及び第2ゾーン505bを備え、第1ゾーン505aは、第2ゾーン505bが受取位置に留まる間に受取位置からクランプ位置へ移動できるように構成されているということである。
【0073】
図6aから
図6cはさらに、
図6cに示されているように、基部構造502が、第1パッド505がクランプ位置にあるときに第1パッド505と係合するように構成された任意選択的なパッド受け領域512を備えることを示す。図示の例では、パッド受け領域512は、特に凹部として基部511に配置される。パッド受け領域512は、基部構造502上の固定された既知の位置であり、したがって、接続領域503に対して固定された既知の位置である。第1パッド505がクランプ位置でパッド受け領域512に係合するため、第1パッド505の位置も、それに従い既知となる。その結果、物体105を高い精度で位置決めすることができる。
【0074】
図7は、本発明に係る物体グリッパ1104を示す。図示の例では、物体グリッパ1104は、第1吸引クランプ1104.1、第2吸引クランプ1104.2、および第3吸引クランプ1104.3、ならびに凹部1104.4を備える。中心点1104.5の上方に物体の中心が配置されてもよい。本発明に従って、吸引クランプ1104.1、1104.2、1104.3のうち少なくとも1つが具現化される。特に、示された実施形態では、第1吸引クランプ1104.1及び第2吸引クランプ1104.2は、本発明に従って具現化される。
【0075】
図示の例では、第1吸引クランプ1104.1及び第2吸引クランプ1104.2は、物体グリッパ1104の外側端部に配置される。第3の吸引クランプ1104.3は、物体グリッパ1104の中心部に配置される。
図7は、さらに、第3吸引クランプ1104.3が、例えば、第1吸引クランプ1104.1及び第2吸引クランプ1104.2より小さくてもよいことを示している。加えて、第3吸引クランプ1104.3は、任意選択的に、本発明に従って具現化されなくてもよい。すなわち、第3吸引クランプ1104.3は、第1パッドが受取位置とクランプ位置との間で移動できるようにする弾性部材なしで具現化されてもよい。
【0076】
図8a及び
図8aは、特定の形状を有する吸引クランプ2104.1、2104.2に関する、本発明の第2の態様を示す図である。
図8aは、第2の態様に従って具現化された第1の吸引クランプ2104.1及び第2の吸引クランプ2104.2と、第3の吸引クランプ2104.3とを有する物体グリッパ2104を示す。
図8bは、第1吸引クランプ2104.1の拡大図である。分かりやすくするために、第1の吸引クランプ2104については、第1パッド2
105.1のみが示されていることに留意されたい。しかしながら、第1パッド2
10
5.1は、必須ではないが、本発明の第1の態様に従って具現化されてもよい。
【0077】
第2の態様に係る第1パッド2
10
5.1の形状は、以下のように説明することができる。すなわち、第1パッド2105.1は、吸引クランプ2104.1の上面図で見たとき、第1質量中心702を有する第1端部701、および第2質量中心708を有する第2端部707を備える非対称の形状を有する。第1パッド2105.1は、第1端部701と第2端部707の間に、第3質量中心704を有する中間部分703をさらに有する。中間部分703は、第1側に第1の境界部705を有し、第2側に第2の境界部706を有する。第1の境界部705及び第2の境界部706は、
図8bでx方向における物体グリッパ2104の境界に配置される。図示の例では、第1の境界部705と第2の境界部706は共に直線状のパッド部分であり、互いに平行である。
図8bにおいて、第1側は右側であり、第2側は左側である。第3の態様によれば、第1側から第2側に向かう方向で見たとき、第3の質量中心704は、第1の質量中心702と第2の質量中心708との間に位置する。
【0078】
好ましくは、第1端部701は第1の非平行境界線711を備え、第2端部707は第2の非平行境界線712を備え、第1の非平行境界線711及び第2の非平行境界線712は物体に対して非同心になるように構成される。
【0079】
任意選択的に、第1側から第2側への方向に垂直な方向で見たとき、第2端部707は第1端部701よりも長いことも見て取れる。
【0080】
第2の態様に係る吸引クランプ2104.1、2401.2の有利な効果には、特に反った物体をクランプするために使用する場合、いくつかの要因が寄与し得る。まず、従来の吸引クランプと比較して、表面積がほぼ維持される。したがって、総クランプ力が維持される。第二に、第1パッド2105.1の外側の点と吸引開口との間の距離(
図8bではY方向)が増加する。これにより、物体に及ぼされる空気圧トルクが増大し、その結果、物体を必要な方向に変形させる力が増加する。第三に、第1端部701は第1の非平行境界線711を有し、第2端部707は第2の非平行境界線712を有し、これらは物体の支持点を形成する。第1の非平行境界線711と第2の非平行境界線712は、中心点1104.5(物体の中心に対応)から半径方向の距離をおいて配置され、第1の非平行境界線711と第2の非平行境界線712の間の半径方向の距離は比較的小さい。物体がまだクランプされていないときのトータルのリークが最小化される。そのため、ボウル型や傘型の物体は、よりよくクランプされることが分かっている。第四に、第1の非平行境界線711および第2の非平行境界線712は、物体に対して非同心である。これは、反った物体、特にボウル型および傘型が、第1吸着クランプ2104.1の中心から
図8bにおいて+yおよび-y方向に可能な限り遠くで第1吸着クランプ2104.1に接触するという有利な効果を有する。これは、物体に及ぼされる空気圧トルクを増加させる。
【0081】
さらに、
図8aから
図8bに示すような第1吸引クランプ2104.1および第2吸引クランプ2104.2は、傘型およびボウル型の物体に最適化されている。一般に、物体の反りは、x方向及び/又はy方向において二次の形状であることが予想される。反りは、x方向の第1反り量とy方向の第2反り量として表現することができる。第1反り量と第2反り量の両方が正の値である場合、物体はボウル型、すなわち、物体の局所的な曲率の中心が物体の上方に位置することになる。第1反り量と第2反り量の両方が負の値である場合、物体は傘型、すなわち、物体の局所的な曲率の中心が物体の下方にある。鞍型の物体は、X方向の第1反り量が正で、Y方向の第2反り量が負、またはその逆である。ハーフパイプ形状の物体は、第1反り量と第2反り量のどちらか一方のみが非ゼロである。ボウルおよび傘以外の形状の物体は、第1吸着クランプ2104.1及び/又は第2吸着クランプ2104.2に異なる位置で接触する可能性がある。しかし、一方向の反りの欠如または反転した符号が、第1の吸引クランプ2104.1及び/又は第2の吸引クランプ2104.2の円周に沿ってより少ない局所リークを生成するので、これらの物体はクランプしやすく、及び/又は、これらの物体は物体内の応力が少ないので変形しやすくなる。
【0082】
図9a、
図9b及び
図9cは、本発明の第3の態様をさらに示している。第3の態様は、第1及び/又は第2の態様と組み合わされてもよいが、これは必須でない。
【0083】
図9aは、
図7にも示される物体グリッパ1104を側面図で示す。第1の吸引クランプ1104.1(この例では第1の態様に従って具現化される)と第3の吸引クランプ1104.3が見えている。また、支持部材103も見えており、これはステージ装置の一部であってもよく、物体グリッパ1104.1の凹部を通して物体105に係合するように構成されてもよい。
【0084】
図9aは、第3の吸引クランプ1104.3の中心が第1の吸引クランプ1104.1の中心から距離601に配置されていることを示している。距離601は、従来の構成に相当する。
図9Aに見られるように、これは、反った物体105の曲面による問題を引き起こす可能性がある。物体105が反っているため、第3吸引クランプ1104.3が物体105に係合できない。そのためリークが形成され、第3吸引クランプ1104.3を介して周囲の空気が吸い込まれる。物体105に作用する吸引力が低下し、物体を変形させるのに十分ではなくなる可能性がある。そのため、物体105を十分にクランプできない場合がある。
【0085】
そこで、
図9bに示すように、本発明の第3の態様は、第3の吸引クランプ1104.3の中心を、第1の吸引クランプ1104.1の中心から距離602に配置することを提案するものである。距離602は、距離601よりも大きい。例えば、距離602は、距離601よりも25mm大きくてもよい。また、一実施形態では、距離602は、距離601よりも20~30mm大きくてもよい。
【0086】
第3の吸引クランプ1104.3が第1の吸引クランプからより遠くに配置されているので、第3の吸引クランプ1104.3から上方の物体105までの距離は、
図9aに示される状況と比較すると、
図9bの状況のほうが実際のところ大きくなっている。しかし、距離602は距離601よりも大きいので、第3の吸引クランプ1104.3が係合するように物体105を変形させるために必要な変形力は小さくなる。物体105の剛性が必要な変形力を決定するが、これは距離602が大きくなるにつれて減少し、例えば距離602に反比例している。したがって、
図9cに示すような状況を実現することができ、すなわち第3の吸引クランプ1104.3が物体105によって覆われる。物体105が第3の吸引クランプ1104.3上に配置されると、物体105の柔軟性により、そこにクランプされた状態を維持するために必要な力は、上述の変形力よりもはるかに低くなる。
【0087】
図9aから
図9cでさらに分かるように、第3の吸引クランプ1104.3は、第1の吸引クランプ1104.1、及び場合によっては第2の吸引クランプ1104.2よりも小さいことが好ましい。有利には、第3の吸引クランプ1104.3でのリークは、第1の吸引クランプ1104.1でのリークよりも小さく、少なくとも物体105が少なくとも1箇所で第3の吸引クランプ1104.3と接触しているとき、吸引力はより高くなる。このように、吸引クランプ1104.1、1104.2、1104.3によって物体105がクランプされる場合、第3の吸引クランプ1104.3で物体105に作用する吸引力は、第1の吸引クランプ1104.1で物体105に作用する吸引力より高くなる。
【0088】
例えば、従来の値は、物体105が50N/mmの剛性を有し、第3の吸引クランプ1104.3の半径が約17mmであり、クランプ前の第3の吸引クランプ1104.3と物体105の間の上方距離が0.7mmであり、第3の吸引クランプ1104.3の最大吸引力が5Nであってもよい。この場合従来は距離601が約130mmとなりうる。第3の態様によれば、距離602は、例えば、155mmに増加されてもよい。
【0089】
図9cの状況は、物体105が第1吸引クランプ1104.1と第3吸引クランプ1104.3との間で比較的平坦であることをさらに保証する。したがって、支持部材103が物体105に係合する高さは、良好に規定される。その結果、支持部材103は、例えばステージ装置の物体支持体上で、物体105を高い精度で位置決めすることができる。
【0090】
本発明はさらに、例えば
図7に示すような、本発明の1つ又は複数の態様に係る物体グリッパを備える物体ハンドラに関する。物体ハンドラは、第1の吸引クランプ1104.1、及び/又は第2の吸引クランプ1104.2、及び/又は第3の吸引クランプ1104.3の吸引開口に接続された吸引装置をさらに備えてもよい。物体ハンドラは、
図4bに示す物体ハンドラ301を参照して説明したような構成要素、特にロボットアーム304及び制御部305をさらに備えてもよい。
【0091】
本発明は、さらに、物体を受け取るためのステージ装置に関する。ステージ装置は、物体支持体102、支持部材103などの、
図4aに示すステージ装置101の構成要素のうちの1つ又は複数を備えてもよい。一実施形態において、ステージ装置は、本発明に係る物体グリッパ又は物体ハンドラを備えてもよい。一実施形態において、支持部材103は、本発明に係る吸引クランプを備えてもよい。
【0092】
本発明はさらにリソグラフィ装置に関し、この装置は、投影システムのような
図1に示すリソグラフィ装置LAの構成要素のうちの1つ又は複数を備えてもよい。リソグラフィ装置は、本発明に係るステージ装置をさらに備えてもよい。
【0093】
本書では、ICの製造におけるリソグラフィ装置の使用について具体的に言及しているが、本明細書に記載のリソグラフィ装置は他の用途を有し得ることを理解すべきである。考えられる他の用途には、統合光学システム、磁区メモリのガイダンスおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造が含まれる。
【0094】
本書では、リソグラフィ装置の文脈で本発明の実施形態を具体的に説明しているが、本発明の実施形態は、他の装置で使用することができる。本発明の実施形態は、マスク検査装置、計測装置、または、ウェーハ(または他の基板)又はマスク(または他のパターニングデバイス)などの物体を測定または処理する任意の装置の一部を形成してもよい。これらの装置は、一般にリソグラフィツールと呼ばれ得る。そのようなリソグラフィツールは、真空条件または周囲(非真空)条件を使用することができる。
【0095】
光学リソグラフィの文脈における本発明の実施形態の使用について上記で特定の言及がなされたが、文脈が許す場合、本発明は光学リソグラフィに限定されず、たとえばインプリントリソグラフィなど他の用途で使用され得ることが理解されよう。
【0096】
文脈が許す場合、本発明の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらの任意の組み合わせで実装されてもよい。本発明の実施形態は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ実行され得る、機械可読媒体に格納された命令として実装されることもできる。機械可読媒体は、機械(例えば、コンピューティングデバイス)によって読み取り可能な形態で情報を格納または送信するための任意の機構を含んでもよい。例えば、機械可読媒体は、読み取り専用メモリ(ROM);ランダムアクセスメモリ(RAM);磁気記憶媒体;光学記憶媒体;フラッシュメモリ装置;電気、光学、音響または他の形態の伝播信号(例えば、搬送波、赤外線信号、デジタル信号など)、その他を含んでもよい。さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令は、特定の動作を実行するものとして本明細書に記載される場合がある。しかしながら、そのような記述は単に便宜上のものであり、そのような動作は、実際には、コンピューティングデバイス、プロセッサ、コントローラ、または他のデバイスがファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令などを実行することから生じ、それを行うことによって、アクチュエータまたは他のデバイスに物理世界との相互作用を引き起こし得ることを理解されたい。
【0097】
本発明の特定の実施形態を上で説明したが、本発明は、説明された以外の方法で実施されてもよいことを理解すべきである。上記の説明は、限定ではなく、例示を目的としている。したがって、以下に記載される特許請求の範囲から逸脱することなく、記載されるように本発明に変更を加えることができることは当業者には明らかであろう。