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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】発光装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20231213BHJP
   H01L 33/58 20100101ALI20231213BHJP
【FI】
H01L33/50
H01L33/58
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019195067
(22)【出願日】2019-10-28
(65)【公開番号】P2021068856
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】長尾 真樹
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-190771(JP,A)
【文献】特開2017-050359(JP,A)
【文献】特開2019-165122(JP,A)
【文献】特開2019-102565(JP,A)
【文献】特開2015-012081(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0190406(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0099073(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および側面を有する発光素子と、
平面視において多角形に形成され、前記発光素子の上面に下面を対面させて設けられる波長変換部材と、
前記発光素子の側面の少なくとも一部を覆う導光部材と、
前記波長変換部材の側面及び前記導光部材を覆う被覆部材と、を備え、
前記波長変換部材の下面は、前記発光素子の上面を囲む溝部を有し、
前記溝部は、前記多角形の各辺に沿って形成されると共に、隣り合う溝部と交差して前記下面において外縁まで延伸し、
前記導光部材は、前記溝部の内部を被覆する発光装置。
【請求項2】
前記発光素子の上面と前記波長変換部材の下面とは前記導光部材を介して接合される請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記溝部の溝幅方向における断面視形状は、溝中心に対して左右対称である請求項1又は請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記溝部の溝幅方向における断面視形状は、溝中心に対して左右非対称である請求項1又は請求項2に記載の発光装置。
【請求項5】
前記発光素子を囲む位置の溝部の形状は、前記発光素子の上面の形状に相似の形状である請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記溝部は、略同じ溝幅に形成されている請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記溝部は、前記発光素子の側面が溝開口に対向する位置あるいは溝開口よりも内側になるように形成されている請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記溝部は、前記発光素子の外縁に沿って設けられている請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記溝部で囲まれる領域に前記発光素子が複数設けられる請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記波長変換部材は、平面視において四角形であり、前記四角形の各辺に沿って形成された前記溝部で囲まれる領域を2分する中央分割溝部をさらに備え、前記中央分割溝部で2分されたそれぞれの領域に前記発光素子の上面が前記導光部材を介して接合される請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項11】
平板状部材を個片化して、平面視において多角形に形成すると共に下面の各辺に沿って外縁まで延伸する溝部を有する波長変換部材を準備する準備工程と、
前記溝部により囲まれる前記波長変換部材の下面の領域に発光素子の上面を導光部材により接合すると共に前記溝部内に前記導光部材を配置する接合工程と、を含む発光装置の製造方法。
【請求項12】
前記接合工程の前に、前記波長変換部材の上面を支持体に支持する支持工程を行い、
前記接合工程の後に、
前記発光素子を覆うと共に前記波長変換部材を覆う被覆部材を形成する被覆部材形成工程と、
前記被覆部材の一部を除去して前記発光素子の素子電極を露出させる露出工程と、
をさらに含む請求項11に記載の発光装置の製造方法。
【請求項13】
前記接合工程の後に、
前記発光素子を覆うと共に前記波長変換部材を覆う被覆部材を形成する被覆部材形成工程と、
前記被覆部材の一部を除去して前記波長変換部材の上面を露出させる露出工程と、をさらに含む請求項11に記載の発光装置の製造方法。
【請求項14】
前記接合工程の後に、
前記波長変換部材の上面を露出し、前記発光素子と前記波長変換部材の側面を覆う被覆部材を形成する被覆部材形成工程をさらに含む請求項11に記載の発光装置の製造方法。
【請求項15】
前記発光素子は複数が前記波長変換部材の下面の領域に設けられる請求項11に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光装置としては、発光素子から放射された青色光と、発光素子上に設けた蛍光体板の蛍光体によって波長変換された例えば黄色の二次光との混色によって白色光を生成するように構成されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-079805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示に係る実施形態は、色むらの改善ができる発光装置及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施形態に係る発光装置は、上面および側面を有する発光素子と、平面視において多角形に形成され、前記発光素子の上面に下面を対面させて設けられる波長変換部材と、前記発光素子の側面の少なくとも一部を覆う導光部材と、前記波長変換部材の側面及び前記導光部材を覆う被覆部材と、を備え、前記波長変換部材の下面は、前記発光素子の上面を囲む溝部を有し、前記溝部は、前記多角形の各辺に沿って形成されると共に、隣り合う溝部と交差して前記下面において外縁まで延伸し、前記導光部材は、前記溝部の内部を被覆する構成を備えている。
【0006】
本開示の実施形態に係る発光装置の製造方法は、平面視において多角形に形成すると共に下面の各辺に沿って外縁まで延伸する溝部を有する波長変換部材を準備する準備工程と、前記溝部により囲まれる前記波長変換部材の下面の領域に発光素子の上面を導光部材により接合すると共に前記溝部内に前記導光部材を配置する接合工程と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る実施形態によれば、色むらの改善ができる発光装置及び発光装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る発光装置の全体を示す斜視図である。
図2図1のII-II線における断面図である。
図3図2における発光素子及び波長変換部材を模式的に拡大して示す拡大断面図である。
図4】実施形態に係る発光装置の波長変換部材を模式的に示す底面図である。
図5】実施形態に係る発光装置の波長変換部材を模式的に示す側面図である。
図6】実施形態に係る発光装置の波長変換部材の溝部の一部を底面側から拡大して模式的に示す拡大斜視図である。
図7】実施形態に係る発光装置の波長変換部材に形成した溝部と導光部材との状態を拡大して断面として模式的に示す拡大断面図である。
図8A】実施形態に係る発光装置の第1の製造方法を示すフローチャートであるである。
図8B】実施形態に係る発光装置の第1の製造方法において波長変換部材の下面の一部を拡大して模式的に示す説明図である。 模式的に示す説明図である。
図8C】実施形態に係る発光装置の第1の製造方法において発光素子を支持体に支持させた状態を模式的に示す説明図である。
図8D】実施形態に係る発光装置の第1の製造方法において発光素子に導光部材を介して波長変換部材を接合させる状態を模式的に示す説明図である。
図8E】実施形態に係る発光装置の第1の製造方法において被覆部材を形成した状態を模式的に示す説明図である。
図8F】実施形態に係る発光装置の第1の製造方法において発光装置を個片化した状態を模式的に示す説明図である。
図9A】実施形態に係る発光装置の第2の製造方法を示すフローチャートであるである。
図9B】実施形態に係る発光装置の第2の製造方法において被覆部材を形成した状態を模式的に示す説明図である。
図9C】実施形態に係る発光装置の第2の製造方法において被覆部材を研削して波長変換部材の上面を露出させた状態を模式的に示す説明図である。
図9D】実施形態に係る発光装置の第1の製造方法において発光装置を個片化した状態を模式的に示す説明図である。
図10A】実施形態に係る発光装置の第3の製造方法を示すフローチャートであるである。
図10B】実施形態に係る発光装置の第3の製造方法において波長変換部材を支持体に支持させた状態を模式的に示す説明図である。
図10C】実施形態に係る発光装置の第3の製造方法において波長変換部材に導光部材を介して発光素子を接合させる状態を模式的に示す説明図である。
図10D】実施形態に係る発光装置の第3の製造方法において被覆部材を形成した状態を模式的に示す説明図である。
図10E】実施形態に係る発光装置の第3の製造方法において被覆部材を研削して発光素子の素子電極を露出させた状態を模式的に示す説明図である。
図10F】実施形態に係る発光装置の第3の製造方法において支持体を除去する状態を模式的に示す説明図である。
図11A】各実施形態に係る発光装置の波長変換部材に形成される溝形状の第1変形例を模式的に示す部分拡大断面図である。
図11B】各実施形態に係る発光装置の波長変換部材に形成される溝形状の第2変形例を模式的に示す部分拡大断面図である。
図11C】各実施形態に係る発光装置の波長変換部材に形成される溝形状の第3変形例を模式的に示す部分拡大断面図である。
図12A】各実施形態に係る発光装置の波長変換部材に形成される溝部について第1変形例を模式的に示す説明図である。
図12B】各実施形態に係る発光装置の波長変換部材及び溝部について第2変形例を模式的に示す説明図である。
図12C】各実施形態に係る発光装置の波長変換部材に形成される溝部について第3変形例を模式的に示す説明図である。
図13A】各実施形態に係る発光装置の波長変換部材に形成される溝部の大きさを変形例として拡大して模式的に示す説明図である。
図13B】各実施形態に係る発光装置の波長変換部材に形成される溝部の位置を変形例として拡大して模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の一例を示す発光装置及びその製造方法を説明する。なお、以下の説明において参照する図面は、本実施形態を概略的に示したものであるため、各部材のスケールや間隔、位置関係等が誇張、あるいは、部材の一部の図示が省略されている場合がある。また、以下の説明では、同一の名称及び符号については原則として同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略することとする。
【0010】
<発光装置の構成>
図1乃至図4に示すように、発光装置100Aは、上面10aおよび側面10bを有する発光素子10と、平面視において多角形に形成され、発光素子10の上面10aに下面13cを対面させて設けられる波長変換部材13と、発光素子10の側面10bの少なくとも一部を覆う導光部材20と、波長変換部材13の側面13b及び導光部材20を覆う被覆部材30と、を備えている。そして、波長変換部材13の下面13cは、発光素子10の上面10aを囲む溝部14を有している。さらに、溝部14は、多角形(図では矩形)の各辺に沿って形成されると共に、隣り合う溝部と交差して下面13cにおいて外縁まで延伸するように形成されている。また、導光部材20は、溝部14の内部を被覆するように形成されている。
ここでは、発光装置100Aは、主として、発光素子10と、下面に溝部14を有する波長変換部材13と、導光部材20と、被覆部材30と、基板40と、を備えている。以下、発光装置100Aの各構成について説明する。
【0011】
[発光素子]
発光素子10は、例えばLED等の公知の半導体発光素子である。発光素子10は、一例として、素子本体11と、第1素子電極12aおよび第2素子電極12bとを有する。この例では、発光素子10の上面は、素子本体11で構成されており、第1素子電極12a及び第2素子電極12bが、発光素子10の上面10aとは反対側となる下面10cに形成されている。発光素子10の上面視における形状は、ここでは矩形状に形成されている。この発光素子10は、上面10aの形状を波長変換部材13と相似形として矩形状に形成され、4つの側面10bを有している。
素子本体11は、例えば、サファイア基板、窒化ガリウム基板等の支持基板と、支持基板上の半導体積層構造とを含む。半導体積層構造は、活性層と、活性層を挟むn型半導体層およびp型半導体層とを含む。半導体積層構造は、紫外から可視域の発光が可能な窒化物半導体であるInAlGa1-X-YN(0≦X≦1、0≦Y≦1、X+Y≦1)等で表されるGaN系やInGaN系を用いることができる。発光素子10は、フリップチップ実装されるものを使用することができる。
第1素子電極12a及び第2素子電極12bは、Ag、Al、Au、Cu、Ti、Ni、Pt、Pd、W等の金属または合金の単層膜または積層膜で形成され、素子本体11中の支持基板とは反対側においてn型半導体層およびp型半導体層にそれぞれ電気的に接続されている。発光素子10は、同一面側に第1素子電極12a及び第2素子電極12bとを備え、フリップチップ接続に適合するように構成されている。
【0012】
[波長変換部材]
波長変換部材13は、図3及び図7に示すように、発光素子10の上面に接合される板状部材である。波長変換部材13は、発光素子10の上面10aに導光部材20を介して接合される下面13cと、下面13cとは反対側に位置する上面13aと、上面13a及び下面13cに連続する側面13bを有する。波長変換部材13の厚さ、すなわち、下面13cと上面13aとの間の距離は、例えば、30μm以上300μm以下の範囲である。ここでは、波長変換部材13の上面視における形状は、発光素子10の上面10aの形状に相似する矩形に形成されている。なお、波長変換部材13は、平面視において、発光素子10の上面を内包するように、発光素子よりも大きい平面積を有するように形成されている。
【0013】
波長変換部材13は、発光素子10から出射された光の少なくとも一部を吸収し、発光素子10からの光の波長とは異なる波長の光を発する。例えば、波長変換部材13は、発光素子10からの青色光の一部を波長変換して黄色光を発する。このような構成によれば、波長変換部材13を通過した青色光と、波長変換部材13から発せられた黄色光との混色によって、白色光が得られる。
波長変換部材13は、例えば、蛍光体の焼結体や、樹脂、ガラス、セラミック又は他の無機物等に蛍光体粉末を含有させたものが挙げられる。また、波長変換部材13は、樹脂、ガラス、セラミック等の成形体の下面に蛍光体を含有する樹脂層や蛍光体を含有するガラス層を形成したものでもよい。また、波長変換部材13は、目的に応じて、拡散材等のフィラーを含有してもよい。また、拡散材等のフィラーを含有する場合、波長変換部材13は、樹脂、ガラス、セラミック又は他の無機物等にフィラーを含有させたものでもよいし、樹脂、ガラス、セラミック等の成形体の表面にフィラーを含有する樹脂層やフィラーを含有するガラス層を形成したものでもよい。
蛍光体には、公知の材料を適用することができる。蛍光体の一例としては、YAG系蛍光体、KSF系蛍光体等のフッ化物系蛍光体およびCASN等の窒化物系蛍光体、βサイアロン蛍光体等である。さらに、YAG系蛍光体は、青色光を黄色光に変換する波長変換物質の例であり、KSF系蛍光体およびCASNは、青色光を赤色光に変換する波長変換物質の例であり、βサイアロン蛍光体は、青色光を緑色光に変換する波長変換物質の例である。蛍光体は、量子ドット蛍光体であってもよい。
拡散材としては、例えば、例えば、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素等を用いることができる。
【0014】
[溝部]
図3乃至図7に示すように、波長変換部材13の下面13cには、溝部14が設けられている。溝部14は、発光素子10の上面10aを囲むように波長変換部材13の各辺に沿って設けられている。なお、本明細書における「溝部」の用語は、一方向に連続する凹部、一方向に断続する凹部により形成されるものを包含するように解釈される。ここでは、溝部14として、連続する凹部である構成を一例として説明する。溝部14の溝深さD1は、一例として、波長変換部材13の厚さの30%以上60%以下程度の範囲になるように形成されている。溝部14の溝深さD1は、ここでは、溝部14の全周にわたって一定に形成されているが、下面13c上の位置に応じて異なった深さを有していてもよい。また、溝部14の溝幅L1は、波長変換部材13の下面13cにおいて一辺の長さに対して5%以上20%以下程度の範囲であることが好ましい。具体的な例として、溝部は、20μm以上500μm以下の範囲で形成されている。
なお、波長変換部材13として、樹脂、ガラス、セラミック等の成形体の下面に蛍光体を含有する樹脂層や蛍光体を含有するガラス層を形成したものを用いる場合は、溝部14が成形体に達することのないように、溝部の溝深さは蛍光体を含有する層の厚みよりも小さくなるように形成されることが好ましい。
【0015】
溝部14は、断面視において、2つの溝内側壁面と、これらの溝内側壁面の間に位置する溝内底面とにより矩形状に形成されている。ここでは溝部14は、溝幅方向における断面視形状が、溝中心に対して左右対称となるように形成されている。また、溝部14は、発光素子10を囲む位置の形状が、発光素子10の上面10aの形状に相似の形状であるように形成されている。そして、溝部14は、隣り合う溝部14と交差して波長変換部材13の下面13cにおいて外縁まで延伸して形成されている。つまり、溝部14は、波長変換部材13の各辺に沿って各辺と同じ長さに形成されており、対向する一方の側面13bから他方の側面13bまで連続して形成されている。なお、溝部14は、一例として、波長変換部材13の各辺に沿って中央側に形成される中央溝部14aと、この中央溝部14aの両側に形成される交差部14b、14bと、交差部14b、14bからさらに外縁まで延伸して形成される延伸部14c、14cとを備えている。そして、交差部14bは、波長変換部材13の多角形の各頂部を形成する角度と同じ角度で交差するように形成されている。つまり、上面視矩形状の波長変換部材13の下面において、隣り合う溝部は90度で交差するように形成されている。さらに、延伸部14cは、波長変換部材13の外縁となる側面13bまで連通するように交差部14bから延伸して形成されている。そして、溝部14は、中央溝部14aから両側の交差部14b、14bを介して延伸部14c、14cまで連続する一定の溝幅及び溝深さで形成されている。溝部14は、全体として、略同じ溝幅に形成されている。
【0016】
なお、図3及び図4に示すように、発光素子10の上面10aに対する溝部14の位置は、溝部14の外側の溝内側壁面よりも発光素子10の外縁となる側面10bが平面視において内側になるように形成されている。つまり、溝部14は、発光素子10の側面10bが溝開口に対向する位置あるいは溝開口よりも内側になるように形成されている。図4で示す一点鎖線の範囲Lu内に発光素子10の側面10bが位置するように溝部14が形成されることが好ましい。そして、ここでは、範囲Luは、溝部14の溝中心から平面視において溝部14を超えて溝幅の倍以内において内側までの間の範囲を示している。発光素子10の側面10bと溝部14との位置関係が、範囲Luで示す位置であると、導光部材20を使用したときに導光部材20が溝部14内に入り込んで溝部14内を被覆し易くなる。なお、溝部14は、図3に示すように、発光素子10の外縁である側面10bに沿って設けられている状態であってももちろん構わない。
【0017】
[導光部材]
導光部材20は、発光素子10と波長変換部材13とを接合させる透光性の部材である。なお、ここで「透光性」、「導光」および「透光」の用語は、入射した光に対して拡散性を示すことをも包含するように解釈される。また、導光部材20は、「透明」であることに限定されない。導光部材20の表面の一部は、ここでは、被覆部材30との界面を形成するように設けられている。
導光部材20は、発光素子10の側面10bの少なくとも一部を覆う第1部分21と、波長変換部材13に形成される溝部14の内部に位置する第2部分22と、発光素子10の上面10a及び波長変換部材13の下面13cの間に位置する第3部分23とを有している。このような導光部材20は、発光素子10の上面10a、あるいは、波長変換部材13の下面13cのいずれかあるいは両方に配置し、発光素子10及び/又は波長変換部材13を押圧して接合させることで形成することができる。
【0018】
導光部材20は、発光素子10及び波長変換部材13を接合することで、発光素子10の上面10aと波長変換部材13の下面13cとの間となる第3部分23を形成する。さらに、導光部材20は、押圧されることで溝部14の内部に濡れ広がり第2部分22を形成すると共に、発光素子10の側面10bに沿って広がり第1部分21を形成する。導光部材20は、ここでは、波長変換部材13に溝部14が形成されていることで、波長変換部材13の側面13b側への這い上がりが抑制され、発光素子10の側面10bに適切に第1部分21を形成することができる。導光部材20は、発光素子10の側面10bにおいて、ここでは、側面10b全体を覆うように形成した状態を第1部分21として示している。なお、第1部分21は、発光素子10の側面10bの高さ方向の一部のみを覆うこととしてもよく、側面10bの他の一部は第1部分21から露出していてもよい。
【0019】
導光部材20の材料としては、透光性を有する樹脂材料を母材として含む樹脂組成物を用いることができる。導光部材20は、発光素子10の発光ピーク波長を有する光に対して、例えば60%以上の透過率を有する。光を有効に利用する観点から、発光素子10の発光ピーク波長における導光部材20の透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であるとより好ましい。導光部材20は、例えば母材とは異なる屈折率を有する材料が分散させられることにより、光拡散機能を有していてもよい。樹脂組成物の一例としては、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルペンテン樹脂もしくはポリノルボルネン樹脂、または、これらの2種以上を含む材料を用いることができる。
【0020】
導光部材20は、第1部分21を形成するための材料および第2部分22、第3部分23を形成するための材料を共通としている。
第1部分21を有する導光部材20を設けることにより、発光素子10が発する光のうち、発光素子10の側面10bから出る光の一部を導光部材20の第1部分21に入射させることができる。第1部分21に入射した光は、被覆部材30との境の位置で発光素子10の上方に向けて反射され、波長変換部材13を介して発光装置100Aの外部に向けて出射する。したがって、導光部材20を設けることにより、光の取出し効率を向上させることができる。第1部分21が発光素子10の側面10bのより多くの領域を覆うと、より多くの光を発光素子10の上方に導くことができる。
なお、断面視における導光部材20は、第1部分21の外形の形状が、直線状であることや、湾曲する曲線状であってもよい
【0021】
また、溝部14に導光部材20が入り込むことで、発光素子10からの青色の光が導光部材20を介して発光素子10から遠い波長変換部材13の外縁、特に、各頂部の位置まで導光されやすくなる。そのため、発光素子10の上面10aから出た光は、中央部分では、波長変換部材13によって変換されやすく、かつ、波長変換部材13の周縁においても波長変換部材13の溝部14の内部を覆う導光部材20により導光され、波長変換部材13で変換されやすくなる。そのため、発光素子10を囲む溝部14が波長変換部材13の外縁まで形成されることで青色光を導光するので、イエローリング等の色むらの発生を抑制することができる。
【0022】
[被覆部材]
被覆部材30は、光反射性の材料から形成されている。そして、被覆部材30は、波長変換部材13の側面13b及び下面13cと、導光部材20を介して発光素子10を被覆する位置と、発光素子10の下面10c側に設けられている。ここで、「光反射性」とは、発光素子10の発光ピーク波長における反射率が60%以上であることを指す。なお、被覆部材30は、発光素子10の発光ピーク波長における反射率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。例えば、被覆部材30は、白色を有することが好ましい。
被覆部材30は、波長変換部材13の上面13aを露出するように波長変換部材13の側面13bを覆い、導光部材20を介して発光素子10を覆うように設けられている。そして、被覆部材30は、導光部材20に覆われていない発光素子10の下面10cと、第1素子電極12a及び第2素子電極12bの側周面を覆うように設けられている。
【0023】
被覆部材30としては、例えば熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を挙げることができる。
熱可塑性樹脂の場合、例えば、ポリフタルアミド樹脂、液晶ポリマー、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、不飽和ポリエステル等を用いることができる。被覆部材30として、熱可塑性樹脂を用いた場合には、加熱、冷却することにより熱可塑性樹脂を固化する。
熱硬化性樹脂の場合、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂等を用いることができる。
被覆部材30は、光を効率よく反射するために、光反射部材が含有されていてもよい。光反射部材として、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、ガラスフィラー、シリカ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムを用いることができる。また、前記した光反射部材は、水分等に対して比較的安定でかつ高屈折率であり、また熱伝導性にも優れるため好ましい。
【0024】
[基板]
基板40は、基材と、この基材の上面あるいは内部に設けられた導体配線と、を備える。基板40は、発光素子10及び電子部品等を支持する部材である。基板40は、発光装置として一般的に用いられるパッケージ基板を利用できる。例えば、AlN等のセラミック基板、Al等の金属基板、ガラスエポキシ等の樹脂基板等を挙げることができる。また、導体配線は、発光素子10及び電子部品に外部から電力を供給する配線であり、基体に所定形状にパターニングされている。また、導体配線は、基材を貫通した配線部と、基材の下面から露出した配線部とを介して外部電源に接続される。この導体配線は、金属材料を用いることができ、例えば、Ag、Al、Ni、Rh、Au、Cu、Ti、Pt、Pd、Mo、Cr、W等の単体金属またはこれらの金属を含む合金を好適に用いることができる。さらに好ましくは、光反射性に優れたAg、Al、Pt、Rh等の単体金属またはこれらの金属を含む合金を用いることができる。
【0025】
<発光装置の製造方法>
(発光装置の第1製造方法)
次に、本開示の実施形態による発光装置の製造方法を説明する。なお、発光装置の3つの製造方法を説明するが、これらの製造方法に限定されるものんではない。また、各製造工程において同じ工程内容であれば適宜説明を省略する。さらに、工程名が同じ場合であっても行う工程内容が異なる場合がある。
初めに発光装置の第1製造方法について、図8A乃至図8Fを主に参照して説明する。
図8Aに示すように、発光装置の製造方法は、平面視において多角形に形成すると共に下面の各辺に沿って外縁まで延伸する溝部を有する波長変換部材を準備する準備工程S11と、溝部により囲まれる波長変換部材の下面の領域に発光素子の上面を導光部材により接合すると共に溝部内に導光部材を配置する接合工程S13と、を含むものである。そして、発光装置の製造方法は、接合工程S13の後に、発光素子を覆うと共に波長変換部材を覆う被覆部材を形成する被覆部材形成工程S14と、各発光装置に個片化する個片化工程S17とを含む。なお、第1製造方法では、接合工程S13の前に、発光素子の素子電極側を支持体に支持する支持工程S12を行ってもよく、ここでは支持工程S12を行った例として説明する。以下、発光装置100Aを例にとり、第1の製造方法において各工程を説明する。
【0026】
まず、準備工程S11は、多角形に形成されると共にその下面13cの各辺に沿って外縁まで延伸する溝部を有する波長変換部材13を準備する工程である。この準備工程S11では、少なくとも1つの発光素子10を載置する領域を囲む溝部14が設けられた下面13cを有する波長変換部材13を準備する。波長変換部材13は、溝部14の平面視における形状を発光素子10の上面10aの形状と相似となる形状に形成している。波長変換部材13は、予め蛍光体等の波長変換物質を含有する平板状部材130を準備し、平板状部材130を所望の形状に分割し個片化することで形成される。また、波長変換部材13は、個片化される前の平板状部材130において、下面13cとなる位置に溝部14が格子状に形成されている。そして、波長変換部材13は、格子状に形成した内側の領域が、予め設定された数の発光素子10を載置する大きさに形成されている。
【0027】
溝部14を有する波長変換部材13は、金型で形成することや、機械的あるいはレーザのような研削作業を行うことで形成することとしてもよい。そして、準備工程S11では、図8Bに示すように、矢印で示す位置で平板状部材130が切断され、波長変換部材13として、一つの発光装置100Aに対応する大きさに個片化されたものが準備される。また、波長変換部材13と接合される発光素子10は、ここでは、支持工程S12を行うことで支持体Bdに支持されている。なお、支持体Bdには、予め配線が形成されている。支持体Bdの配線と、発光素子10の第1素子電極12a及び第2素子電極12bとを接続することで発光素子10を支持体Bd上にフリップチップ実装することができる。この支持工程S12は、接合工程S13の前であれば、準備工程S11の前後あるいは並行して行われても構わない。
【0028】
続いて、接合工程S13が行われる。接合工程S13は、溝部14により囲まれる波長変換部材13の下面13cの領域に発光素子10の上面10aを導光部材20により接合すると共に溝部14内に導光部材20を配置する工程である。接合工程S13において、発光素子10の上面10aにディスペサ装置等のノズルNにより、未硬化の導光部材20である樹脂部材Rgを滴下する。そして、接合工程S13では、波長変換部材13を発光素子10側に押圧或いは押圧加熱することで波長変換部材13を発光素子10に接合する。
【0029】
波長変換部材13の下面には、溝部14が設けられているので、溝部14を越えて波長変換部材13の側面に導光部材20が濡れ広がることを抑制し得る。また、導光部材20は、発光素子10の側面10bに沿って広がり、側面10bの少なくとも一部又は全部を覆う。
発光素子10の上面10aに波長変換部材13の下面13cが接合されると、導光部材20は、波長変換部材13の下面13cと発光素子10の上面10aとの間で第3部分23が一定の厚みとなるように形成される。また、導光部材20は、押圧されることで、波長変換部材13の溝部14の内部に濡れ広がり、溝部14の内部を被覆する第2部分22が形成される。さらに、導光部材20は、押圧されることで、発光素子10の側面10bに沿って濡れ広がり、側面10bを被覆することで第1部分21が形成される。なお、接合工程S13の後で、必要に応じて硬化工程を行い導光部材20を強制的に短時間で硬化させてもよい。
【0030】
続いて、被覆部材形成工程S14が行われる。被覆部材形成工程S14では、発光素子10の側面を覆うと共に波長変換部材13の側面を覆う被覆部材30が形成される。被覆部材30は、未硬化の状態で、波長変換部材13の上面13aを露出する位置まで支持体Bd上に供給され、その後硬化することで形成される。なお、支持体Bdの周囲には、被覆部材30を所定高さまで充填できる側壁が形成されていることが好ましい。
続いて、個片化工程S17が行われる。個片化工程S17では、硬化した被覆部材30及び支持体Bdを切断して、各発光装置100Aに個片化される。支持体Bdは、個片化されることで、発光装置100Aの基板40となるように予め形成されている。
【0031】
第1の製造方法では、波長変換部材13の下面13cに溝部14が形成されているため、波長変換部材13と発光素子10とを導光部材20を介して接合する際に、導光部材20が溝部14内を被覆すると共に、発光素子10の側面10bも被覆する。そのため、発光装置100Aでは、発光素子10からの光が、導光部材20を介して波長変換部材13の外縁側まで導光させることができ、イエローリングの発生を抑制し色むらを改善できるようになる。
【0032】
次に、発光装置の第2製造方法について、図9A乃至図9Dを主に参照して説明する。
図9Aに示すように、発光装置の第2の製造方法は、準備工程S11と、支持工程S12と、接合工程S13と、被覆部材形成工程S14aと、露出工程S15aと、個片化工程S17が行われる。以下、発光装置100Aを例にとり、第2の製造方法において各工程を説明する。
準備工程S11、支持工程S12及び接合工程S13は、既に第1の製造方法で説明した工程と同じ工程である。接合工程S13が行われた後に被覆部材形成工程S14aが行われる。ここで行われる被覆部材形成工程S14aは、波長変換部材13の上面13aを被覆するように未硬化の被覆部材30が充填される。なお、被覆部材形成工程S14aでは、波長変換部材13の上面13aを覆うように未硬化の被覆部材30を充填するので、波長変換部材13の上面13aを露出する場合と比較して充填速度を速くすることができる。
【0033】
続いて、被覆部材30が充填され硬化した後に、露出工程S15aが行われる。露出工程S15では、波長変換部材13の上面13aが被覆部材30から露出するように被覆部材30の一部を研削して除去する工程である。この露出工程S15aでは、露出した波長変換部材13の上面13aと被覆部材30が同一平面となることが好ましい。なお、露出工程S15aで波長変換部材13の上面13aが露出するまで研削する装置として、機械的な研削を行う研削装置あるいは機械的な研磨を行う研磨装置等が使用される。露出工程S15aが終了した後には、研削くず或いは研磨くずを除去する洗浄工程が行われることが好ましい。
続いて、個片化工程S17が行われる。個片化工程S17は、各発光装置100Aになるように被覆部材30から支持体Bdに亘って切断されることで個片化される。支持体Bdは、切断されることで発光装置の基板40となるように予め配線等が形成されている。
第2の製造方法では、露出工程S15aにより波長変換部材13の上面13aを被覆部材30を被覆した後に露出させるので、機械的な研削等の調整のみで波長変換部材13の上面13aの露出状態を設定できる。
なお、第2の製造方法では、露出工程S15aにより波長変換部材13の上面13a側
の一部が被覆部材30と共に研削加工等により除去されることを考慮して、波長変換部材13は、蛍光体を実質的に含有しない樹脂成形体の下面に蛍光体を含有する樹脂層を形成したものを用いることが好ましい。
【0034】
次に、発光装置の第3の製造方法について、図10A乃至図10Dを主に参照して説明する。
第3の製造方法では、準備工程S11、支持工程S12b、接合工程S13b、被覆部材形成工程S14b、露出工程S15b、個片化工程S17bが行われる。以下、発光装置100Aを例にとり、第3の製造方法において各工程を説明する。なお、準備工程S11と、支持工程S12bとは、接合工程S13bの前であれば、準備工程S11の前後あるいは同じ工程に含まれていても構わない。
【0035】
準備工程S11は、既に説明した工程と同じ工程である。
続いて、支持工程S12bは、波長変換部材13の上面13aを支持体Bdに接合する工程である。支持工程S12では、波長変換部材13の上面13aが支持体Bdに接合され、溝部14が形成されている下面13cが上方を向くようにする。なお、ここで使用される支持体Bdは、粘着シートなどの配線が形成されていないものが使用される。そして、接合工程S13は、波長変換部材13の下面13cに導光部材20を介して発光素子10の上面10aを接合する工程である。ここでは、波長変換部材13の溝部14の内側となる発光素子10の接合される領域内に、未硬化の導光部材20である樹脂部材Rgが滴下される。そして、発光素子10の下面10cを波長変換部材13に向かって押圧することで、発光素子10と波長変換部材13とが接合される。
【0036】
なお、導光部材20は、押圧されることで、発光素子10の上面10aと波長変換部材13の下面13cとの間に略均一な厚みの第3部分23が形成される。また、発光素子10の上面10aを囲むように溝部14が形成されていることから、押圧により広がった導光部材20が溝部14内を被覆するよことで第2部分22が形成される。さらに、導光部材20は、発光素子10の側面10bを這い上がり発光素子10の側面10bの少なくとも一部を覆うことで第1部分21が形成される。接合工程S13bに続けて、導光部材20を強制的に硬化させるために加熱等の硬化工程を行っても構わない。導光部材20の硬化後、波長変換部材13と発光素子10とが接合された後に、被覆部材形成工程S14bが行われる。
【0037】
被覆部材形成工程S14bでは、発光素子10の素子電極を覆う位置まで未硬化の被覆部材30を充填している。被覆部材形成工程S14bでは、支持体Bdに支持される発光素子10の向きが第2の製造方法と異なるのみで、未硬化の被覆部材30の充填される量は第2の製造方法と同じであっても構わない。そして、未硬化の被覆部材30が硬化した後に、露出工程S15bが行われる。
露出工程S15bでは、発光素子10の第1素子電極12a及び第2素子電極12bの下端面が被覆部材30から露出するまで、被覆部材30の一部を研削して除去する。露出工程S15bでは、被覆部材30から露出する第1素子電極12aの下端面及び第2素子電極12bの下端面が、基板40と電気的な接続を行うことができるように、被覆部材30と同一平面に形成される。露出工程S15bでは、被覆部材30の厚みが薄くなるように、機械的な研削あるいは研磨により、第1素子電極12aの下面及び第2素子電極12bの下面を露出させる。そのため、露出工程S15bの後に、研削くずあるいは研磨くずを除去する洗浄工程を行うことが好ましい。
【0038】
なお、支持体除去工程S16は、一例として、露出工程S15bの後に行われる。さらに、ここでは、支持体除去工程S16は、個片化工程S17bの前に行うこととして説明する。支持体除去工程S16bは、支持体を除去する工程である。支持体除去工程S16bでは、支持体Bdを除去することで、波長変換部材13の上面13aを露出させると共に、波長変換部材13の上面13aと同一平面上に形成されている被覆部材30を露出させている。
続いて、個片化工程S17bが行われる。個片化工程S17bでは、支持体Bdを除去した場合、被覆部材30を切断することで個片化される。個片化工程S17bでは、発光装置100Aの大きさに対応した大きさに被覆部材30が個片化される。
【0039】
なお、個片化工程S17bを行う場合に、支持体除去工程S16が行われていない場合には、被覆部材30までを切断した後に、支持体除去工程S16を行うことや、支持体Bdまで個片化工程S17bで切断した後に、支持体除去工程S16を行うこととしても構わない。
【0040】
この第3の製造方法では、波長変換部材13が支持体Bdと対面する状態(下向き)で発光素子10が接合される。なお、導光部材20は、滴下される樹脂部材Rgの量及び粘度を調整することで、発光素子10の側面10bに形成される第1部分21において発光素子10の側面10bを越えて発光素子10の下面10c側に濡れ広がることが抑制される。また、波長変換部材13の上面13aは、支持体Bdに対面した状態で、各工程が進められるので、波長変換部材13の上面13aが外部からの汚れ等から保護される。
【0041】
以上、本開示の実施形態に係る発光装置について、図面を参照して説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。例えば、発光装置では、基板40に発光素子10を接続する構成として説明したが、保護素子やその他の半導体素子を発光素子10と組み合わせで使用する構成としても構わない。
【0042】
また、溝部14の断面形状は、矩形である例を図示して説明したが、例えば、図11A乃至図11Cに示すような形状であってもよい。つまり、溝部14の断面形状は、溝中心に対して対称とする矩形や、図11Aで示すように、溝部14Bとして半長丸形あるいは半円形である断面溝形状としてもよい。さらに、図11Bで示すように、溝部14Cは、断面溝形状が三角形であってもよい。そして、図11Cで示すように、溝部14Dの断面形状は、溝中心に対して左右非対称となる形状であってもよい。ここで示す溝部14Dの断面形状は、一方の溝側面14d1が開口から溝底面に向かって曲線を有するように形成され、他方の溝側面14d2が開口から溝底面に向かって直線となるように形成されている。
【0043】
また、溝部14は、平面視において直線形状として示したが、例えば、図12Aに示すように、溝部14Aは、曲線により形成される構成としてもよい。この溝部14Aは、波長変換部材13Aの各辺の中央部分でその辺に一番近接し、各辺の端部に向かうに従って徐々に辺との間を広げるような曲線形状に形成されている。溝部14Aは、中央溝部14A1と、その両端側に形成した交差部14A2と、その交差部14A2から延伸して波長変換部材13Aの外縁まで形成される延伸部14A3,14A3とを備えている。発光装置では、波長変換部材13Aの各辺において、溝部14Aから辺までの距離を変えることで、導光部材20が配置される位置を調整して色むらの改善を行うことができる。
【0044】
さらに、波長変換部材13は、平面視形状が多角形の一例として矩形(平行四辺形、台形、長方形あるいは正方形)であるものとして説明したが、三角形や五角形あるいは六角形等であっても構わない。図12Bに示すように、例えば、波長変換部材13Bが六角形である場合には、その各辺に沿って形成される溝部14Bも多角形の辺の数に対応する数が形成されることになる。そして、溝部14Bは、中央溝部14B1の両端側に形成される交差部14B2、14B2が多角形の頂部と同じ数で、頂部と同じ角度を有するように形成される。さらに、交差部14B2から波長変換部材13Bの外縁まで延伸して形成される延伸部14B3,14B3は、交差部14B2を介して隣り合う延伸部14B3、14B3によるなす角度を90度以上の鈍角となるように形成される。波長変換部材13Bは、多角形である各辺が多くなることで、延伸部14B3の数が増えることで、発光素子10からの光を外縁側までより送り易くなり色むらの解消を向上させることができる。
【0045】
また、図12Cに示すように、溝部140は、断続する凹部140C1により形成されている。溝部140が凹部140C1を断続することで形成されている場合には、一方向に並列する並列方向の長さよりも、その並列方向に直交する方向における長さ(つまり溝幅)が大きいような形状を有する構造、および、穴のような形状を有する構造をも包含するように広く解釈される。溝部140は、発光素子10の上面10aを囲む位置に多角形の各辺に沿って断続する複数の凹部140C1により形成されている。凹部140C1は、各辺に沿って長方形の開口を備えるように形成され、隣り合う凹部140C1の間隔140C2が、凹部140C1の開口長さよりも短くなるようにここでは形成されている。そして、溝部140は、中央溝部140C11において、複数の凹部140C1を断続して配置することで形成されている。そして、交差部140C12及び延伸部140C13は、連続して形成されることで、一つの十字形状に形成されている。断続する凹部140C1が一方向に並列することで形成した溝部140は、すでに説明した溝部14と同様に、イエローリング抑制の効果が期待できる。
【0046】
さらに、波長変換部材13の溝部14で囲まれる領域に、発光素子10を一つ以上配置する構成としてもよい。例えば、図13Aに示すように、波長変換部材131は、平面視形状が長方形になるように形成し、その長方形の各辺に沿って溝部14Dを形成する。そして、その溝部140Dで囲まれる領域に、発光素子10を複数(図面では2つ)設けられるようにしてもよい。また、図13Bに示すように、平面視が長方形の波長変換部材132の下面に発光素子10を囲む領域を複数(図面では2つ)形成し、各領域に発光素子10を配置する構成としてもよい。つまり、波長変換部材132は、平面視において四角形(長方形)に形成される。そして、波長変換部材132は、四角形の各辺に沿って形成された溝部140Eで囲まれる領域を2分する中央分割溝部140E1をさらに備え、中央分割溝部140E1で2分されたそれぞれの領域に発光素子10の上面10aが導光部材20を介して接合されるようにしてもよい。
【0047】
なお、溝部の平面視における各辺での形状は、発光素子から出射される光の色味がずれやすい領域の形状に応じて適宜に決定されればよく、直線状、曲線状に限定されず、任意の形状を有し得る。また、溝部は、発光素子10を二重以上に取り囲まれるように複数形成されるようにしてもよい。そして、溝部を二重以上形成する場合には、溝幅を揃えることや、溝幅を変えて形成してもよい。
また、発光素子の平面視形状は、波長変換部材13の形状に対応して変えることとしてもよい。
【0048】
さらに、溝部の形成方法も、特定の方法に限定されない。例えば、矩形状の凸部を有す
る金型を、平板状の波長変換部材に押し付ける部分的な押圧によって溝部を形成してもよい。そのほか、波長変換部材に、エッチング、機械加工等によって溝部を形成してもよい。
そして、発光素子を波長変換部材に導光部材を介して接合する場合、以下のような手順としてもよい。すなわち、導光部材は、はじめに波長変換部材の下面において各辺に沿って形成した溝部内に盛り上がるようにして充填して硬化させる。つまり、波長変換部材の溝部内に充填した導光部材を波長変換部材の下面となる平坦面よりも盛り上がるように枠状に形成し、その後、その枠内に導光部材を形成する未硬化の樹脂部材を滴下して発光素子の上面を接合するようにしてもよい。このように導光部材を2段階で付与することにより、溝部に沿って配置され、硬化された導光部材を、未硬化の導光部材の流出を抑制するダムとして機能させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る実施形態の発光装置は、照明用装置、車載用発光装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 発光素子
10a 発光素子の上面
10b 発光素子の側面
10c 発光素子の下面
11 素子本体
12a 第1素子電極
12b 第2素子電極
13、13A、13B、131、132 波長変換部材
13a 波長変換部材の上面
13b 波長変換部材の側面
13c 波長変換部材の下面
14,14A,14B,14C,14D,140,140D,140E 溝部
14a,14A1,14B1,140C11 中央溝部
14b,14A2,14B2,140C12 交差部
14c,14A3,14B3,140C13 延伸部
20 導光部材
21 第1部分
22 第2部分
23 第3部分
30 被覆部材
40 基板
100A 発光装置
130 平板状部材
140C1 凹部
140C2 間隔
14d1 溝側面
14d2 溝側面
Bd 支持体
N ノズル
Rg 樹脂部材(導光部材)
S11 準備工程
S12,S12b 支持工程
S13,S13b 接合工程
S14,14a,S14b 被覆部材形成工程
S15,S15a,S15b 露出工程
S16,S16b 支持体除去工程
S17,17b 個片化工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B