(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】発光装置及び発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/60 20100101AFI20231213BHJP
H01L 33/62 20100101ALI20231213BHJP
H01L 33/52 20100101ALI20231213BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
H01L33/60
H01L33/62
H01L33/52
G02B5/08 A
G02B5/08 F
(21)【出願番号】P 2022134625
(22)【出願日】2022-08-26
【審査請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2021159175
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【氏名又は名称】言上 惠一
(72)【発明者】
【氏名】楠瀬 健
(72)【発明者】
【氏名】田村 和也
(72)【発明者】
【氏名】岸川 大介
(72)【発明者】
【氏名】山ノ井 拓也
(72)【発明者】
【氏名】多田 孝昭
(72)【発明者】
【氏名】小関 健司
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/021921(WO,A1)
【文献】特開2012-044000(JP,A)
【文献】特開2020-067603(JP,A)
【文献】特開2019-127545(JP,A)
【文献】特開2013-177492(JP,A)
【文献】特開2021-061383(JP,A)
【文献】特開2012-039067(JP,A)
【文献】特開2018-088485(JP,A)
【文献】特開2019-175928(JP,A)
【文献】国際公開第2014/024372(WO,A1)
【文献】特開2012-069539(JP,A)
【文献】特開2019-145794(JP,A)
【文献】特開2011-035082(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0301604(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102190862(CN,A)
【文献】特開2012-036364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/48-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
前記発光素子から出射される光を反射する光反射性部材と、を含み、
前記光反射性部材は、板状の光反射材、シリカ、及びアルカリ金属を含み、
前記光反射材の平均粒径が0.6μm以上43μm以下であり、
前記光反射材の平均アスペクト比が10以上である、発光装置。
【請求項2】
基体をさらに含み、
前記発光素子及び前記光反射性部材は、前記基体上に配置されており、
前記発光素子は半導体層を含み、
前記半導体層の側面の少なくとも一部は、前記光反射性部材から離隔している、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記基体は、凹部を規定する底部と壁部とを有し、
前記発光素子は、前記凹部内に配置され、
前記光反射性部材は、前記壁部の内側面及び底部の上面に連続して配置される、請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
上面視において、
前記壁部の内周形状は、矩形であり、
前記光反射性部材は、前記矩形の4つの角部に、互いに離隔して配置される、請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
上面視において、
前記発光素子の外周形状は、矩形であり、
前記壁部の外周形状は、矩形であり、
前記発光素子の矩形の4辺はそれぞれ、前記壁部の矩形の4辺のいずれとも非平行である、請求項3又は4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記光反射性部材は、前記発光素子を囲む枠部材である、請求項2に記載の発光装置。
【請求項7】
前記基体と前記光反射性部材との間に、第1保護膜が配置される、請求項3
に記載の発光装置。
【請求項8】
前記光反射性部材の表面に、第2保護膜が配置される、請求項2
に記載の発光装置。
【請求項9】
前記光反射性部材は、前記発光素子が配置される基板であり、
前記発光素子は、半導体層を含み、
前記半導体層の側面の少なくとも一部は、前記光反射性部材から離隔している、請求項1に記載の発光装置。
【請求項10】
前記光反射材は窒化ホウ素であり、
前記光反射材の平均粒径は、6μm以上43μm以下である、請求項1
に記載の発光装置。
【請求項11】
前記光反射材はアルミナであり、
前記光反射材の平均粒径は、0.6μm以上10μm以下である、請求項1
に記載の発光装置。
【請求項12】
前記アルカリ金属は、カリウム又はナトリウムである、請求項1
に記載の発光装置。
【請求項13】
前記光反射性部材は散乱材を含む、請求項1
に記載の発光装置。
【請求項14】
前記散乱材は、主にジルコニア又はチタニアである、請求項13に記載の発光装置。
【請求項15】
前記発光素子は、紫外光を出射する、請求項1
に記載の発光装置。
【請求項16】
凹部を規定する底部と壁部とを有する基体を準備する工程と、
前記凹部内に基板と半導体層とを含む発光素子を配置する工程と、
シリカの粉末と、平均粒径が0.6μm以上43μm以下であり、かつ平均アスペクト比が10以上である板状の光反射材の粉末と、アルカリ溶液と、気化性の物質と、を混合し混合物を形成する工程と、
前記凹部内において、前記半導体層の側面から離隔して、前記混合物を配置する工程と、
前記混合物を加熱することにより硬化させて光反射性部材を形成する工程と、を含む発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置及び発光装置の製造方法の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LED等の発光装置の中には、発光素子と発光素子の光を反射する光反射性部材とを有するものがある。例えば、特許文献1には、光反射性部材として、シリコーン樹脂などの耐熱性樹脂や無機バインダのベース材にチタニア、酸化亜鉛、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ジルコニア、アルミナなどの白色顔料を含む反射材を含有させたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、発光装置の高輝度化、高出力化が進み、発光装置を動作させたときの光反射性部材の温度上昇が大きくなっている。これに応じて、耐熱性が高い光反射性部材が要求されている。
【0005】
そこで、本開示は、耐熱性が高い光反射性部材を備える発光装置及び該発光装置を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る発光装置は、発光素子と、前記発光素子から出射される光を反射する光反射性部材と、を含み、前記光反射性部材は、板状の光反射材、シリカ、及びアルカリ金属を含み、前記光反射材の平均粒径が0.6μm以上43μm以下であり、前記光反射材の平均アスペクト比が10以上である。
【0007】
また、本開示に係る発光装置の製造方法は、凹部を規定する底部と壁部とを有する基体を準備する工程と、前記凹部内に基板と半導体層とを含む発光素子を配置する工程と、シリカの粉末と、平均粒径が0.6μm以上43μm以下であり、かつ平均アスペクト比が10以上である板状の光反射材の粉末と、アルカリ溶液と、気化性の物質と、を混合し混合物を形成する工程と、前記凹部内において、前記半導体層の側面から離隔して、前記混合物を配置する工程と、前記混合物を加熱することにより硬化させて光反射性部材を形成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態に係る発光装置及び発光装置の製造方法によれば、耐熱性が高い光反射性部材を備える発光装置及び該発光装置を製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1に係る発光装置が備える光反射性部材の一部を拡大した断面図である。
【
図2】
図1に示す光反射性部材を形成する光反射材の概略斜視図の一例である。
【
図3A】本開示の一実施形態に係る発光装置の概略断面図である。
【
図3C】
図3Aに示す発光装置の他の形態に係る概略上面図である。
【
図3D】
図3Aに示す発光装置の他の形態に係る概略断面図である。
【
図3E】
図3Aに示す発光装置の他の形態に係る概略断面図である。
【
図3F】
図3Aに示す発光装置の他の形態に係る概略断面図である。
【
図4A】本開示の別の実施形態に係る発光装置の概略断面図である。
【
図4C】
図4Aに示す実施形態の他の形態に係る発光装置の概略断面図である。
【
図5】本開示の別の実施形態に係る発光装置の概略断面図である。
【
図6】本開示の別の実施形態に係る発光装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための実施形態や実施例を説明する。なお、以下に説明する発光装置及び発光装置の製造方法は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。
各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態や実施例に分けて示す場合があるが、異なる実施形態や実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせは可能である。後述の実施形態や実施例では、前述と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態や実施例ごとには逐次言及しないものとする。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。また、断面図として切断面のみを示す端面図を用いることがある。
【0011】
実施形態1
実施形態1に係る発光装置は、発光素子と、発光素子から出射される光を反射する光反射性部材と、を含む。光反射性部材は、板状の光反射材、シリカ、及びアルカリ金属を含む。光反射材の平均粒径は、0.6μm以上43μm以下であり、光反射材の平均アスペクト比が10以上である。
以上のように構成された光反射性部材は、光反射材が骨材として機能することで、光反射性部材の温度が変化しても、光反射性部材5の変形を抑制することができる。このような光反射部材は、耐熱性を高くすることができる。これにより、実施形態1に係る発光装置は、耐熱性を高くでき、耐用期間を長くできる。また、上記のように構成される光反射性部材は無機材料で構成されるため、紫外光を出射する発光素子を用いる場合、紫外光による劣化が抑制される。
本開示に係る光反射性部材は、様々な構成を有する発光装置に適用することができる。そのため、以下、実施形態1では、光反射性部材そのものの具体的な構成について詳細に説明し、発光装置において光反射性部材を適用する部分または形態および発光装置を構成する他の構成部材(基板、発光素子等)については、後述する実施形態2~実施形態5で詳細に説明する。
【0012】
(光反射性部材)
光反射性部材5は、発光素子からの光を反射する部材である。
光反射性部材5は、複数の無機材料が混ざり合ったものである。
図1に示すように、光反射性部材5は、光反射材11と、光反射材11を支持する支持部材12と、を含む。支持部材12は、シリカ及びアルカリ金属を含む。光反射性部材5は、後述するように、光反射材11の粉末、シリカの粉末、及びアルカリ溶液を混合したものを加熱する加熱工程を経て形成される。
光反射性部材5は、無機材料のみで構成されていてもよいし、主として無機材料で構成されていてもよい。
光反射性部材5は、その表面に凹凸を有する。その凹凸の表面粗さ(Ra)は、1~3ミクロンである。表面粗さは、レーザ顕微鏡を用いて測定することができる。
また、光反射性部材5は、アルカリ溶液に含まれる水分が蒸発することにより、その内部に空隙が形成され得る。このように形成される空隙は、水分が蒸発する経路となる部分を含む空間であり、空隙の少なくとも一部が光反射部材の表面に開口する部分を含む。すべての空隙が光反射部材の内部において1つのつながった空間であってもよく、あるいは、光反射部材の内部において離隔する複数の空間であってもよい。空隙の大きさや形状は不定形である。尚、このように光反射部材5の表面に連通する空隙は、光反射部材5の表面に凹凸の一部であるともいえる。
【0013】
(光反射材)
光反射材11は、例えば
図2に示すように、一方の主面11aと、一方の主面11aと反対側の面である他方の主面11bを有する板状の粒子である。一方の主面11aと他方の主面11bとは、光反射材11の上面と下面とも呼べる。また、光反射材11は、鱗片状の粒子とも呼べる。なお、
図2は、光反射材11の形状の説明を容易にするために、光反射材11を、例えば上面視において円形である板状と見なして、模式的に示した図にすぎない。
【0014】
光反射材11は、例えば、窒化ホウ素又はアルミナである。これらの材料であれば、紫外光から可視光までの光を反射させることができる。
光反射材11は、一次粒子でもよいし、2個以上の一次粒子が凝集した二次粒子でもよい。また、一次粒子と二次粒子が混在してもよい。
発光装置の光反射性部材5において、光反射材11の平均アスペクト比は10以上であり、望ましくは10以上70以下である。ここで、加熱工程による光反射材11とシリカとの融着、及び光反射材11のアルカリ溶液への溶出は、わずかなものである。従って、加熱工程を経て形成された光反射性部材5に含まれる光反射材11の形状は、光反射性部材5と実質同一形状である。すなわち、加熱工程を経て形成された光反射性部材5に含まれる光反射材11の形状は、例えば、一方の主面と、一方の主面と反対側の面である他方の主面を有する板状の粒子である。
光反射材11の平均アスペクト比は、以下の方法で算出される。
【0015】
<平均アスペクト比の算出方法>
光反射材11の平均アスペクト比は、光反射性部材の断面が含まれる発光装置の断面において、光反射性部材5に含まれる光反射材11の厚さ及び横幅を測定することで算出される。
まず、発光装置を切断加工することによって該断面を露出する。
【0016】
次に、露出させた断面を鏡面研磨する。鏡面研磨した断面を走査型顕微鏡(SEM)で撮影し、光反射材11の断面を抽出し、およそ1000個の光反射材11の断面が含まれる測定領域を選択する。顕微鏡の画素数は、およそ2000万画素に設定され、倍率は500倍から3000倍に設定される。また、本明細書において、光反射材11の断面とは、光反射材11の一方の主面及び/又は他方の主面に略垂直な面である。なお、板状の光反射材11それぞれは、その形状に起因して、光反射性部材5内で互いの主面を対向させて重なり合うようにして配置される傾向にある。そのため、発光装置の露出させる断面を適当に選択することで、SEMにより適宜光反射材11の断面を抽出することができる。
【0017】
次に、画像解析ソフトウェアにより、抽出した光反射材11の各断面の横幅(光反射材の断面の長手方向の長さ)と厚さ(光反射材の断面の短手方向の長さ)をそれぞれ一点ずつ(例えば各方向の最大長を)測定し、厚さに対する横幅の平均値を算出する。そして、100個の光反射材11の該測定値の平均値を平均アスペクト比とする。
光反射材11が窒化ホウ素の場合、光反射材11の平均アスペクト比は、例えば、16.5以上19.2以下である。光反射材11がアルミナの場合、光反射材11の平均アスペクト比は、例えば、10以上70以下である。
【0018】
また、光反射材11の平均粒径は、0.6μm以上43μm以下である。
上述したように、加熱工程による光反射材11とシリカとの融着、及び光反射材11のアルカリ溶液への溶出は、わずかなものである。そのため、光反射材11の形状及び寸法と、加熱工程を経て形成された光反射性部材5に含まれる光反射材11の形状及び寸法とは、実質同一である。そのため、上記の光反射材11の平均粒径は、以下の方法で光反射材11の粒径を測定することにより算出される。
【0019】
<平均粒径の算出方法>
光反射材11の粒径は、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の走査電子顕微鏡「TM3030Plus」を用いて算出される。
まず、カーボン製の両面テープの一方の面を該顕微鏡の試料台に貼りつけ、その後、両面テープの他方の面に光反射材11を配置する。顕微鏡の画素数を123万画素に設定し、倍率を1000倍から2000倍に設定し、100個の光反射材11(粒子)の画像を取得する。その後、画像解析ソフトウェアにより各粒子の粒径を測定する。本明細書において、光反射材11の粒径は、光反射材11の主面11a又は11bから見たときの直径のうち最大の直径である。次に、測定した粒子のメジアン径を算出し、該算出値を光反射材11の平均粒径とする。また、光反射材11の粒径は、SEMにより光反射性部材の断面を抽出し、画像解析ソフトウェアにより測定して算出してもよい。
【0020】
光反射材11が窒化ホウ素の場合、光反射材11の平均粒径は、例えば、6μm以上43μm以下である。光反射材11がアルミナの場合、光反射材11の平均粒径は、例えば、0.6μm以上10μm以下である。
【0021】
なお、上記で説明した平均アスペクト比と平均粒径の算出方法は、一次粒子で算出した値である。二次粒子で算出する場合は、二次粒子を構成する一つの粒子を抽出して、上述した算出方法によって算出することができる。
【0022】
(シリカ)
光反射性部材5に含まれるシリカと光反射材11との含有比率は重量比で、例えば、1:4以上1:1以下である。すなわち、光反射性部材5に含まれる光反射材11の重量は、光反射性部材5に含まれるシリカの重量の、例えば、1倍以上4倍以下である。この範囲であれば、混合物の硬化時の収縮を低減させることができる。光反射材の量が多すぎると、硬化性が低下する虞がある。一方、シリカの量が多すぎると、硬化による収縮が大きくなり、硬化時にクラックが生じる虞がある。
シリカの平均粒径は、例えば、0.1μm以上10μm以下である。この範囲内であれば、原料(光反射材やシリカ)の容量あたりの密度を向上させることができるため、光反射性部材5の強度を確保することができる。
シリカの平均粒径は、光反射材の平均粒径よりも小さい方が望ましい。これにより、シリカが、混合時に光反射材同士の間にできる空隙に配置される。シリカの平均粒径は、レーザ回析法によりシリカの粒度分布を測定することにより算出される。シリカの平均粒径は、アルカリ溶液と混合する前に測定した値である。シリカは、アルカリ溶液と混合すると溶融されてしまうため、光反射性部材5から粒径を確認することが困難であるためである。なお、光反射性部材5から、シリカと光反射材との含有比率を算出するには、例えば、SEMにより抽出された光反射性部材5の断面を観察し、シリカと光反射材の占有率に基づいて算出してもよい。
【0023】
(アルカリ金属)
光反射性部材5に含まれるアルカリ金属は、上記のアルカリ溶液に含まれるアルカリ金属である。アルカリ金属は、例えば、カリウム及び/又はナトリウムである。
【0024】
上記のように光反射材11とシリカとを含む光反射性部材5は、光反射材11と、シリカを含む支持部材12との屈折率差を利用して、発光素子からの光を反射させることができる。
さらに、上記のような平均粒径及び平均アスペクト比を有する光反射材11は、光反射性が骨材として機能することで、光反射性部材5の温度が変化しても、光反射性部材5の変形を抑制することができる。具体的には、光反射性部材の温度が発光素子に起因して上昇した場合では光反射性部材の膨張が抑制され、発光素子に起因して温度が下降した場合では光反射性部材の収縮が抑制される。このような光反射性部材は、耐熱性を高くすることできる。ここで、光反射性部材5の温度変化は、主として、発光素子から光反射性部材5に伝搬する熱と、発光素子から出射される光によって光反射性部材5そのものに生じる熱と、により生じる。
このように光反射性部材5の温度が変化しても光反射性部材5の膨張及び収縮が抑制される光反射性部材5が得られることで、発光素子から生じる熱が大きい条件(例えば、発光素子に供給する電力量が大きい場合)でも発光装置の信頼性を向上させることが可能になる。発光素子に供給する電力量を大きくできることで、発光装置あたりの光量を増やすことができる。
【0025】
さらに、光反射性部材5は、散乱材を含むことが望ましい。これにより、光反射性部材5による光反射率が向上する。散乱材は、例えば、主にジルコニアまたはチタニアである。発光素子が紫外光を出射する場合は、紫外波長領域の光吸収の少ないジルコニアが望ましい。光反射性部材5に散乱材を添加した場合、散乱材は、支持部材12のシリカ中に分散して存在する。
【0026】
散乱材は、チタニア単体で用いてもよいし、チタニアの表面に、シリカ、アルミナ、ジルコニア、亜鉛、有機等のうちいずれか1又は2以上で構成される被覆膜が被覆されていてもよい。この被覆膜は、スパッタリング法や蒸着法等の公知の技術により形成することができる。
散乱材は、ジルコニア単体で用いてもよいし、ジルコニアの表面にシリカ、アルミナ、亜鉛、有機等のうちいずれか1又は2以上で構成される被覆膜が被覆されていてもよい。この被覆膜は、スパッタリング法や蒸着法等の公知の技術により形成することができる。また、カルシウムやマグネシウム、イットリウム、アルミニウム等が添加された安定化ジルコニアや、部分安定化ジルコニアを用いてもよい。
【0027】
散乱材の平均粒径は、光反射材11の平均粒径より小さいことが望ましい。これにより、光反射材11同士の隙間に散乱材が配置されやすくなるため、発光素子4から出射された光が光反射材11同士の隙間を介して光反射性部材5を透光することを抑制できる。すなわち、発光素子4から出射された光が光反射材11同士の隙間に配置された光反射性部材5によって反射され、発光装置の光取り出し効率を上昇させることができる。なお、散乱材の平均粒径は、レーザ回析法で測定される。
【0028】
以下では、上記の光反射性部材5を異なる形態で備える発光装置の具体的な構成を説明する。
【0029】
実施形態2
図3A~
図3Fに示すように、本実施形態に係る発光装置100、101、102、103は、基体35と、発光素子4と、光反射性部材5と、を含む。発光素子4及び光反射性部材5は、基体35上に配置される。発光素子4は、半導体層2を含む。半導体層2の側面の少なくとも一部は、光反射性部材5から離隔している。
【0030】
(基体)
基体35は、凹部31を規定する底部32と壁部33とを備えている。凹部31は、底部32と壁部33とにより囲まれる空間である。底部32と壁部33とは、同一材料で構成されてもよいし、それぞれ異なる部材で構成されてもよい。
基体35の母材30は、例えば、ガラス、セラミックス、樹脂、木材、パルプ等の絶縁材料、半導体、金属(例えば、銅、銀、金、アルミニウム等)等の導電材料の単一材料及びこれらの複合材料によって形成することができる。特に、母材30は、金属、セラミックス等が好ましく、無機材料であるセラミックスがより好ましい。セラミックスとしては、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、ムライト等が例示され、特に放熱性の高い窒化アルミ二ウムが好ましい。
【0031】
基体35は、導電部材40を含む。導電部材40は、
図3A,及び
図3D~
図3Fに示すように、配線層41と外部電極42とを含む。配線層41は、底部32の上面32aに配置され、後述する発光素子4の電極3と電気的に接続される。外部電極42は、底部32の下面32bに配置され、外部端子と電気的に接続される。配線層41と外部電極42とは、底部32に形成されるビア(スルーホール)を通じて電気的に接続される。また、配線層41は、
図3B、及び
図3Cに示すように、アノード側の配線層44及びカソード側の配線層45を含む。
【0032】
図3A,及び
図3D~
図3Fに示すように、断面視において、基体35の壁部33の厚さは一定である。また、
図3B及び
図3Cに示すように、上面視において、基体35の壁部33の外周形状、及び該壁部33の内周形状は、矩形である。しかしながら、壁部33の形状は、これらに限定されるものではなく、既知のいずれの形状であってもよい。
【0033】
(発光素子)
発光素子4は、凹部31内において、基体35の底部32上に配置される。1つの発光素子4が、基体35の底部32上に配置されてもよいし、2以上の発光素子4が基体35の底部32上に配置されてもよい。
発光素子4は基板1と半導体層2を含む。基板1は、半導体層2を構成する半導体の結晶を成長可能な結晶成長用基板である。基板1は、例えば、サファイア基板である。半導体層2は、例えば、n型半導体層と、p型半導体層と、n型半導体層及びp型半導体層の間に配置される発光層と、を含む。
半導体層2が出射する光のピーク波長は、例えば、260nm以上630nm以下の範囲である。発光素子4は、例えば、紫外光又は青色光を出射する。
【0034】
図3A、
図3D~
図3Fに示す例では、半導体層2の下面に一対の電極3が設けられ、配線層41と電気的に接続される。半導体層2の下面に設けられた一対の電極3は、p電極とn電極である。なお、
図4A、
図4B、
図4C、
図5、
図6に示す例も同様である。
【0035】
半導体層2は、ダブルヘテロ接合であってもよい。発光層は、単一量子井戸(SQW)等の構造を有していてもよいし、多重量子井戸(MQW)のように複数の井戸層をもつ構造を有していてもよい。半導体層2は、可視光または紫外光を発光可能に構成されている。このような発光層を含む半導体層2は、例えばInxAlyGa1-x-yN(0≦x、0≦y、x+y≦1)を含むことができる。
【0036】
半導体層2は、1つの発光層を有してもよいし、複数の発光層を有していてもよい。複数の発光層を有する半導体層2の構造は、1つのn型半導体層と1つのp型半導体層との間に複数の発光層を含む構造であってもよいし、n型半導体層と発光層とp型半導体層とを順に含む構造が複数回繰り返された構造であってもよい。半導体層2が複数の発光層を含む場合、発光ピーク波長が異なる発光層を含んでいてもよいし、発光ピーク波長が同じ発光層を含んでいてもよい。なお、発光ピーク波長が同じとは、数nm程度のばらつきがある場合も含む。複数の発光層の間の発光ピーク波長の組み合わせは、適宜選択することができる。例えば半導体層2が2つの発光層を含む場合、青色光と青色光、緑色光と緑色光、赤色光と赤色光、紫外光と紫外光、青色光と緑色光、青色光と赤色光、または、緑色光と赤色光などの組み合わせで発光層を選択することができる。各発光層は、発光ピーク波長が異なる複数の活性層を含んでいてもよいし、発光ピーク波長が同じ複数の活性層を含んでいてもよい。
【0037】
なお、
図3B,及び
図3Cに示す発光素子4の上面視における形状は矩形である。但し、発光素子4の上面視における形状は、既知のいずれの形状であってもよい。
【0038】
(光反射性部材)
光反射性部材5は、発光素子4から出射された光を光取り出し方向へ反射させる。光反射性部材5で反射された光が発光装置100から取り出される方向は、基体35の上方である。
光反射性部材5は、
図3Aに示すように、基体35の壁部33の内側面33aに沿って、基体35の底部32上に配置されている。
【0039】
光反射性部材5は、
図3Bに示す例では、発光素子4の周囲全域を囲むように連続して配置される。この例では、上面視において、発光素子4の外周形状である矩形のうち、対向する2辺は、基体35の外周形状である矩形のうち、対向する2辺と平行である。また、発光素子4の外周形状のうち、別の対向する2辺は、基体350の外周形状のうち、別の対向する2辺と平行である。
【0040】
光反射性部材5は、発光素子4の周囲全域を囲むように連続して配置されることに限らず、発光素子の周囲において互いに離隔して配置されてもよい。例えば、
図3Cに示すように、光反射性部材5は、壁部33の内側面33aの4つの角部に、互いに離隔して配置されていてもよい。或いは、光反射性部材5は、第1領域と第2領域を有し、第1領域が壁部33の内側面33aの4つの角部のうち2つの角部に連続して配置され、第2領域が残りの2つの角部に連続し、第1領域から離隔して配置されてもよい。
光反射性部材5は、
図3Cに示す発光装置100Aの例では、凹部31の矩形の角を頂点とし、底部に向かって高さが低くなりかつ底面が略2等辺三角形になるような略三角錐形状である。
図3Cに示す例では、上面視において、発光素子4の外周形状である矩形の4辺はそれぞれ、基体35の外周形状である矩形のいずれの辺とも非平行である。具体的には、発光素子4は、発光素子4の4つの側面がそれぞれ、4つの角部に配置された光反射性部材5に対向するように配置されている。すなわち、上面視において発光素子4の側面と壁部33とのなす角度が略45度になるように設定される。これにより、発光素子4の側面から出射された光が光反射性部材5により効果的に反射される。
なお、
図3Bに示す例でも、上面視において、発光素子4の外周形状である矩形の4辺がそれぞれ、基体35の外周形状である矩形のいずれかの辺とも非平行であってもよい。
【0041】
光反射性部材5は、
図3A~
図3Fに示すように、壁部33から発光素子4に向けて、底部32の上面32aからの高さh1が低くなる傾斜面を有する傾斜領域R1を含む。傾斜領域R1は、壁部33の内側面33a及び底部32の上面32aに連続して配置される。すなわち、傾斜領域R1は、壁部33の内側面33a及び底部32の上面32aに跨がって配置される。傾斜領域R1の発光素子4側の端部P1は、壁部33と発光素子4との間のいずれの位置であってもよいし、発光素子4の電極3に接してもよい。端部P1が壁部33と発光素子4との間に位置する場合、例えば、端部P1は、
図3Aに示すように、壁部33と発光素子4のおよそ中間に位置する。ただし、端部P1がいずれの位置に配置されていても光反射性部材5は、半導体層2の側面2aから離隔して配置されることが望ましい。これにより、半導体層2の側面2aから出射される光が光反射性部材5により遮断されることを抑制できる。すなわち、発光素子4から出射されて光反射性部材5で反射した光が、発光素子4に戻りにくくなり、所望の方向に出射される。
【0042】
発光装置100において、
図3Aに示す例では、発光素子4の一方の側面に対向する光反射性部材5の傾斜領域R1の傾斜面は、断面視における形状が直線である。同様に、発光素子4の他方の側面に対向する光反射性部材5の傾斜領域R1の傾斜面は、断面視における形状が直線である。但し、各傾斜領域R1の傾斜面の形状は、発光装置の光取り出し方向に応じて適宜形成されてもよい。例えば、傾斜領域R1の傾斜面は、断面視における形状が、基体35側に(例えば、基体35の外周方向に向けて)窪んだ湾曲形状でもよいし、基体35側と反対側に(例えば、該基体35の外周方向と反対方向に向けて)盛り上がる湾曲形状であってもよい。断面視における形状が基体35側に窪んだ湾曲形状であれば、基体35側と反対側に盛り上がる湾曲形状、及び直線形状よりも、光取り出し効率を向上させることができる。
【0043】
図3Dに示す例では、光反射性部材5は、底部32の上面32aに位置し、傾斜領域R1に連続する平坦領域R2を含む。平坦領域R2は、底部32の上面32aからの高さ(厚さ)が実質一定である領域である。ここで、高さ(厚さ)が実質一定であるとは、例えば、平坦領域R2を形成する際の製造ばらつきの範囲内で高さ(厚さ)が変化している場合も一定であるとする意味であり、例えば、数十ミクロン程度の差を有し得る。平坦領域R2は、底部32の上面32a及び/又は配線層41を覆って配置される。平坦領域R2の高さは、底部32の上面32aから発光素子4の下面までの高さ以下であることが望ましい。平坦領域R2の光反射性部材5は、半導体層2の側面2aから離隔して配置されることが望ましい。
【0044】
図3Aに示す発光装置100において、光反射性部材5は、壁部33の内側面33aの上方を露出して基体35の底部32上に配置されている。但し、光反射性部材5は、壁部33の内側面33aの上端から下端までの全体を覆って配置されてもよい。
図3Aに示す断面視において、光反射性部材5が壁部33の内側面33aを覆う面積を増加させるほど、発光装置100からの光取り出し効率を高くすることができる。なお、
図3Cの例も同様に、光反射性部材5が、壁部33の内側面33aの上端から下端までの全体を覆って配置されてもよい。また、光反射性部材5は、壁部33の上面33cに配置されていてもよいし、配置されていなくてもよい。壁部33の上面33cに配置される光反射性部材5は、上面視において、壁部33の上面33cの一部又は全部を覆っていてもよい。光反射性部材5が壁部33の上面33cの一部を覆う場合、壁部33の上面33cに配置される光反射性部材5は、上面視において、互いに離隔した複数の領域に配置されていてもよい。壁部33の内側面33aを覆う光反射性部材5と、壁部の33の上面33cに配置される光反射性部材5とは、離隔して配置されていてもよいし、連続して配置されていてもよい。
【0045】
実施形態2に係る発光装置100では、光反射材11の平均アスペクト比は、例えば、発光素子4の上面4aの中心を通り、かつ上面4aに略直交する断面を露出させて、該断面において、光反射性部材5に含まれる光反射材11の厚さ及び横幅を測定することで算出される。ここで例示した断面は、光反射材11の平均アスペクト比を算出するために露出させる断面として、実施形態3から実施形態5においても利用することができる。
【0046】
ここで、紫外光を発する発光素子は、可視光を発する発光素子よりも光の持つエネルギー量が大きく、樹脂の光劣化が起こりやすいため、光エネルギーに対して耐久性が高いセラミックス製の母材を含む基体に配置されている場合がある。しかしながら、上記のように構成された実施形態2に係る発光装置100は、基体35の表面のうち、発光素子4から出射された光が主に照射する部分を光反射性部材5で覆うことができるため、樹脂製の母材30を採用することができる。一般的に、樹脂製の母材は、セラミックス製の母材と比較して、製造コストを抑制することができる。
【0047】
実施形態2に係る発光装置はさらに、第1保護膜60及び/又は第2保護膜70を備えていてもよい。
図3A~
図3Dに示す発光装置100、101は、第1保護膜60及び/又は第2保護膜70を備えていない。一方、
図3E及び
図3Fに示す発光装置102、103は、第1保護膜60及び/又は第2保護膜70を備える。
【0048】
(第1保護膜)
基体35と光反射性部材5との間に、第1保護膜60を配置させることができる。第1保護膜60は、
図3Eに示すように、基体35の底部32の上面32aに配置される。第1保護膜60が配置されることで、基体35は塵埃や湿度等の外的要因から保護される。これにより、発光装置100の信頼性を高めることができる。
【0049】
第1保護膜60は、1つの材料による単層膜又は2以上の異なる材料による多層膜とすることができる。第1保護膜60の材料としては、例えば、アルミナ、シリカ、酸化タンタル、酸化ニオブ、チタニア、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の無機材料が挙げられる。第1保護膜60が多層膜の場合、例えば、アルミナとシリカとをそれぞれ主成分とする膜が1層ずつ又は繰り返し積層された膜(誘電体多層膜)を用いることができる。 第1保護膜60の厚みは、例えば3nm以上250nm以下である。第1保護膜60の厚みは、40nm以上150nm以下であることが好ましい。なお、第1保護膜60が多層膜である場合は、全ての層の合計厚みを上記範囲とすることが好ましい。
第1保護膜は、基体35を塵埃や湿度等の外的要因から保護するために、後述するように光反射性部材5より緻密な膜であることが望ましい。
【0050】
また、第1保護膜60は、発光素子4から出射した光のうち光反射性部材5を透過した光を反射させることができる。これにより、発光装置100の光取り出し効率を高めることができる。
【0051】
(第2保護膜)
光反射性部材5の表面に、第2保護膜70を配置させることができる。第2保護膜70をさらに、例えば、
図3Fに示すように、光反射性部材5から露出した基体35の表面、及び発光素子の表面に配置させることができる。
第2保護膜70が発光素子4を覆わない場合、第2保護膜70は、例えば、光反射性を有する誘電体多層膜である。第2保護膜70が発光素子4を覆う場合、第2保護膜70は、例えば、発光素子4の光に対して透光性を有する誘電体多層膜である。
第2保護膜70は、光反射性部材5、配線層41、及び/又は発光素子4が大気中の水分、腐食ガス等からダメージを受けることを抑制する。すなわち、第2保護膜70は、光反射性部材5、配線層41、及び/又は発光素子4の耐湿性及びガスバリア性を高める。さらに、第2保護膜70が、光反射性部材5から露出した基体35の表面、及び光反射性部材5の表面を連続して覆うことで、光反射性部材5の基体35への固着性を高めることができる。
【0052】
第2保護膜70の材料及び厚さは、第2保護膜70が光反射性であるか、又は透光性であるか(すなわち、第2保護膜70が発光素子4を覆うか否か)に応じて、適宜選択される。
第2保護膜70を光反射性とする場合、第2保護膜70の材料は、第1保護膜60と同一の材料から選択でき、第2保護膜70の厚さは、第1保護膜60の厚さと同一の範囲から選択できる。
また、第2保護膜70を透光性とする場合には、例えば、第1保護膜60と同様、アルミナ、シリカ、酸化タンタル、酸化ニオブ、チタニア、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の無機材料から好ましくは透光性の高い材料を選択し、透光性が高くなるように膜厚を設定する。さらに第2保護膜70を透光性の誘電体多層膜とする場合には、該誘電体多層膜を構成する各誘電体層の膜厚は発光素子4の光に対して透光性を有するように設定する。
【0053】
発光装置100は、第1保護膜60及び第2保護膜70のどちらか一方を備えていてもよいし、両方を備えていてもよい。発光装置100が、第1保護膜60のみ(又は第2保護膜70のみ)を備えている場合、基体35の壁部33の外側面33b及び底部32の下面32bに、第1保護膜60(又は第2保護膜70)を配置させることができる。発光装置100が第1保護膜60及び第2保護膜70の両方を備えている場合、基体35の壁部33の外側面33b、底部32の下面32b及び/又は発光素子4の表面等に、第1保護膜60と第2保護膜70とが積層した層を配置させることができる。
【0054】
製造方法
<製造方法1>
実施形態2に係る発光装置100の製造方法の一例(製造方法1)を説明する。
【0055】
(基体を準備する工程)
凹部を規定する底部32と壁部33とを有する基体35を準備する。基体35の母材30を樹脂材料で形成する場合、底部32と壁部33とは、例えば、射出成形等で一体的に形成することができる。基体35の母材30をセラミックス材料で形成する場合、いわゆるポストファイア法やコファイア法のいずれでも製造できる。基体35の母材30を樹脂材料及びセラミックス材料いずれで形成する場合も、底部32と壁部33とを別々に形成した後に接着剤などを用いて接合することができる。
なお、製造方法1及び後述する製造方法2の説明において、部材を準備するとは、部材を製造することに限らず部材を購入する、部材を譲受する等、部材を取得することを含む。
【0056】
(発光素子を配置する工程)
基板1と半導体層2とを含む発光素子4を凹部31内において、基体35の底部32上に配置する。発光素子4は、
図3A~Fに示す例では、電極3を配線層41にはんだ等を介して接続することで実装される。
【0057】
(光反射材の粉末と、シリカの粉末と、アルカリ溶液と、を混合し混合物を形成する工程)
光反射材11の粉末、及びシリカの粉末を混合した混合粉を、アルカリ溶液と混合し、混合物を準備する。このとき、例えば水等、混合物の硬化時に気化する物質(以下、気化性の物質とも言う)をさらに加えて混合することが望ましい。混合粉とアルカリ溶液と(加えられた場合は、気化性の物質と)の混合は、例えば、均一な粘性が得られる程度まで混合した後に、減圧して撹拌できる撹拌脱泡機によって脱泡及び撹拌することで得られる。混合物を形成する工程において、常温で混合してもよいし、加熱しながら混合してもよい。加熱しながら混合する場合は、混合物が固まるのを防ぐために、90度以下で行うのがよい。得られた混合物のpHは、例えば、約14である。
【0058】
光反射材11は、平均粒径が0.6μm以上43μm以下であり、かつ平均アスペクト比が10以上であり、望ましくは10以上70以下である。光反射材11は、例えば、窒化ホウ素またはアルミナである。
シリカは、例えば、平均粒径が0.1μm以上10μm以下である。
アルカリ溶液の濃度は、例えば、1mol/L以上5mol/L以下である。アルカリ溶液の濃度が低すぎると、混合物を硬化させた際の硬化性が悪くなり、光反射性部材5の強度低下や分解の生じる虞がある。一方、アルカリ溶液の濃度が高すぎると、混合物の硬化後に余剰なアルカリ金属が析出してしまう。結露が生じる環境下では、析出したアルカリ金属が結露した水分と反応し、その生成物が発光素子4に触れることで発光素子4の信頼性が低下する虞がある。アルカリ溶液は、例えば、水酸化カリウム溶液又は水酸化ナトリウム溶液である。
【0059】
シリカと光反射材11とは、例えば、重量比が1:4以上1:1以下の範囲で混合される。すなわち、シリカと光反射材11とは、例えば、シリカの重量に対し、光反射材11の重量が1倍以上4倍以下で混合される。
【0060】
混合粉とアルカリ溶液に気化性の物質を混合せずに混合物を準備する場合、アルカリ溶液と混合粉とは、例えば、重量比が2:10以上8:10以下で混合される。すなわち、アルカリ溶液と混合粉とは、アルカリ溶液の重量に対し混合粉の重量が、例えば、1.25倍以上5倍以下で混合される。アルカリ溶液が少なすぎると、アルカリ溶液と混合粉とを混合する時に細かなダマが複数個形成されてしまい、成形が困難となる。一方、アルカリ溶液と混合粉とを混合する時にアルカリ溶液が多すぎると、硬化時にクラックが発生したり、硬化して得られた光反射性部材の強度が低下する虞がある。
【0061】
混合粉とアルカリ溶液にさらに気化性の物質を混合して混合物を準備する場合、アルカリ溶液と混合粉とは、例えば、重量比が2:10以上6:10以下で混合される。すなわち、アルカリ溶液と混合粉とは、アルカリ溶液の重量に対し混合粉の重量が、例えば、1.67倍以上5倍以下で混合される。アルカリ溶液と気化性の物質との重量比は、例えば、1:2以上10:1以下である。すなわち、アルカリ溶液と気化性の物質とは、アルカリ溶液の重量に対し気化性の物質の重量が、例えば、0.1倍以上2倍以下である。
【0062】
このように、気化性の物質を混合して混合物を準備する場合、混合するアルカリ溶液の量は、気化性の物質を混合しない場合と比較して少なくすることができる。これは、以下の利点がある。
(a)アルカリ溶液と混合粉に含まれるシリカとの中和反応において、アルカリ溶液がシリカに対して過剰な量であると、シリカと反応しなかったアルカリ成分が析出する。アルカリ成分の析出は発光素子の信頼性の低下を招くため、望ましくない。そのため、混合するアルカリ溶液の量を減らすことでアルカリ成分の析出が抑制され、発光素子の信頼性が低下することを抑制することができる。
(b)また、混合物の流動性(粘性)を調整することにより、混合物を配置する工程において、壁部33から発光素子4に向かって表面が所望の角度で傾斜又は所望の形状に湾曲した傾斜領域R1を形成することができる。そのため、光反射材11の粉末、及びシリカの粉末を混合した混合粉とアルカリ溶液とに、さらに気化性の物質を加えて混合することで、所望の粘性を有する混合物を形成することができ、混合物を凹部31の所望の位置に、所望の形状で配置することができる。
【0063】
なお、製造される発光装置100が備える光反射性部材5に、散乱材を含ませる場合は、この混合物に散乱材を混合する。散乱材の平均粒径は、例えば、光反射材11の平均粒径より小さい。散乱材は、例えば、主にジルコニア又はチタニアを含む。
【0064】
(混合物を配置する工程)
凹部31内において、基体35の底部32上に混合物を配置する。混合物は、半導体層2の側面2aから離隔して配置される。混合物は、壁部33から発光素子4に向けて高さが低くなる領域を含むように配置される。
混合物は、例えばディスペンサで塗布して配置される。混合物は、例えば、壁部33及び底部32に同時に塗布される、または壁部33の内側面33aに塗布される。これにより、傾斜した領域が形成され得る。該傾斜した領域が、後述する加熱工程を経ると、傾斜領域R1となる。さらに、塗布した混合物の発光素子4側への濡れ広がりを利用することにより、高さが実質一定になる領域が形成され得る。該高さが実質一定になる領域が、後述する加熱工程を経ると、平坦領域R2となる。また、混合物を壁部33及び底部32に同時に塗布する、または壁部33の内側面33aに塗布することで、発光素子4から離れた位置に混合物を配置することができ、半導体層2の側面2aが混合物によって覆われることを抑制できる。
【0065】
(混合物を加熱して光反射性部材を形成する工程/加熱工程)
混合物を加熱することで硬化させて光反射性部材5を形成する。これは、混合物及び発光素子4が配置された基体35を加熱することで実施され得る。
この工程は、仮硬化工程を含んでもよいし、含まなくてもよい。仮硬化工程を含む場合、混合物を第1温度T1で硬化させる仮硬化工程と、混合物を第1温度T1よりも高い第2温度T2で硬化させる本硬化工程と、を含む。仮硬化工程は、例えば、80℃以上100℃以下の第1温度T1で、10分以上2時間以下行われる。本硬化工程は、例えば、150℃以上250℃以下の第2温度T2で、10分以上3時間以下行われる。
このように本硬化工程の前に、本硬化工程よりも低い温度で仮硬化工程を実施することで、形成される光反射性部材5にクラックが生じにくくなる。
さらに、仮硬化工程、及び/又は本硬化工程は大気圧下で行ってもよいし、加圧しながら行ってもよい。混合物が加圧されながら硬化することで、形成される光反射性部材5における、発光素子からの光に対する反射率が高くなる。これは、混合物が加圧されることで、混合物内の光反射材がより密集して配置された状態で硬化するためと考えられる。加圧を行う場合、加えられる圧力は、例えば、1MPaである。
【0066】
以上のようにして、実施形態2に係る発光装置100を形成することができる。なお、発光素子を配置する工程は、混合物を配置する工程の前でもよいし、混合物を加熱して光反射性部材を形成する工程の後でもよい。また、発光装置100は、個々に製造してもよいし、複数個を一体的に形成した後に個片化して得てもよい。具体的には、底面と複数の壁とを含む集合基板を準備し、該底面と複数の壁とにより形成される複数の凹部それぞれに発光素子、及び混合物を配置し、混合物を加熱硬化させ、発光装置毎に個片化する。
【0067】
その他の工程
(洗浄工程)
また、加熱工程の後に、混合物、すなわち光反射性部材5を洗浄する洗浄工程を実施することができる。加熱工程の後に洗浄工程を実施することで、アルカリ溶液と混合物に含まれるシリカとの中和反応で反応しきれず残留したアルカリ成分を除去することができる。これにより、発光素子の信頼性の低下を抑制できる。光反射性部材5の洗浄には、水(望ましくは純水)を用いてもよいし、それ以外にIPA等のアルコールや、希塩酸等の酸,塩化アンモニウム等の弱塩基の塩,クラウンエーテル、クリプタンド,もしくはこれらの混合液を用いてもよい。光反射性部材5の洗浄は、例えば、光反射性部材5が配置された発光装置100を、水又は上述した混合液に浸けることで実施される。これにより、残留したアルカリ成分を除去することができる。
【0068】
(第1保護膜を形成する工程)
第1保護膜を形成する工程は、例えば、原子層堆積法(ALD(Atomic Layer Deposition))を用いることができる。原子層堆積法を採用することにより、基体35の表面(
図3Aの場合、基体35の底部32の上面32a、壁部33の内側面33a、壁部33の上面33c、壁部33の外側面33b、基体の底部32の下面32b)に、緻密で薄い第1保護膜60を形成することができる。第1保護膜は、原子位相堆積法に限らず、スパッタリング法や蒸着法等の公知の技術により形成してもよい。
【0069】
第1保護膜を形成する工程は、発光装置の製造を、基体を準備する工程、発光素子を配置する工程、混合物を配置する工程の順で実施する場合、例えば、基体を準備する工程の後であって、発光素子を配置する工程の前に実施される。この場合、第1保護膜60を形成した後に、配線層41の表面のうち、発光素子4と接続するための領域を露出させる工程を含む。該領域を露出させる方法としては、例えば、該領域上の第1保護膜60を研磨する方法がある。他の方法としては、例えば、該領域上の第1保護膜60にレーザを照射して、第1保護膜60を除去する方法がある。さらに他の方法としては、第1保護膜60を形成する前に、該領域にマスクを設け、第1保護膜60を形成した後にマスクを除去する方法がある。
第1保護膜を形成する工程は、発光素子を配置する工程の後であって、混合物を配置する工程の前に実施してもよい。この場合、発光素子4の表面も第1保護膜60で被覆してよい。
【0070】
(第2保護膜を形成する工程)
第2保護膜を形成する工程も、例えば、原子層堆積法を用いることができる。第2保護膜を形成する工程は、発光装置の製造を、基体を準備する工程、発光素子を配置する工程、混合物を配置する工程の順で実施する場合、例えば、混合物を配置する工程の後に実施される。
図3Fでは、光反射性部材5の表面、発光素子4の表面、及び基体35の底部32の上面32aに、第2保護膜70が形成されている。さらに、基体35の壁部33の外側面33b、基体35の底部32の下面32bに第2保護膜70が形成される。
【0071】
第1保護膜を形成する工程及び第2保護膜を形成する工程は、どちらか一方の工程のみ実施されてもよいし、いずれの工程も実施されてもよい。いずれの工程も実施される場合は、例えば、第1保護膜を形成する工程、発光素子を配置する工程、混合物を配置する工程、第2保護膜を形成する工程の順で実施される。
【0072】
実施形態2の変形例
(光反射性部材で形成される母材を備える基体)
基体35の母材30は、光反射性部材5と異なる部材で構成されることに限らず、光反射性部材5と同一の部材で構成されてもよい。これにより、セラミックス、金属等で形成された母材より光反射性が高くなるため、発光装置の光取り出し効率を高めることができる。この発光装置の製造方法は、
(a)導電部材40を準備する工程と、
(b)目的とする母材30及び光反射性部材5が一体化した形状を有する型を導電部材40上に配置し、該型に混合物を流し込み、混合物を加熱硬化させる工程と、
(c)研磨、レーザ照射等で硬化した混合物の表面から露出させた導電部材40に発光素子4を電気的に接続する工程と、を含む。
なお、既知の方法を用いて複数の発光装置を一体的に製造した後、個片化することで大量生産が可能である。
【0073】
(発光素子の種類)
また、
図3A~
図3Fでは、発光装置100、101、102、103に配置される発光素子4は、基板1より半導体層2が基体35側に位置しており、半導体層2の下面に設けられた電極3が基体35の導電部材40に電気的に接続されることで、基体35と接合されるフリップチップ実装された発光素子である。
なお、発光装置100、101、102、103の発光素子は、フェイスアップ実装されてもよい。この発光素子は、半導体層2より基板1が基体35側に位置し、電極が半導体層2における基板1とは反対側の面に位置するように配置される。そして、発光素子の電極が、ワイヤを介して基体35の導電部材40に電気的に接続される。
また、支持基板と、支持基板上に接合部材を介して配置され、支持基板から順にp側半導体層、発光層、及びn側半導体層が配置された半導体層と、p側電極、及びn側電極と、を含む発光素子であってもよい。このような支持基板と半導体層とを貼り合わせることで得られる発光素子は、支持基板側の面が基体35に対向するように配置される。支持基板は、例えば、シリコン基板を用いることができる。
このような発光素子は、例えば、以下のような製造方法で得られる。まず、成長用基板上に半導体層を成長させて、半導体層のp側半導体層とn側半導体層のそれぞれに電気的に接続されるp側電極とn側電極を配置させる。次に、接合部材を介して半導体層上に支持基板を接合させ、成長用基板を除去する。次に、半導体層側から半導体層の一部をp側電極及びn側電極が露出するまで除去する。
【0074】
(保護素子)
発光装置100、101、102、103は、
図3Cに示すように、保護素子80を備えていてもよい。保護素子80は、例えばツェナーダイオードである。保護素子80が基体35の底部32上に配置される場合、保護素子80は、光反射性部材5に一部または全部が覆われているのが好ましい。光反射性部材5が保護素子80を被覆することで、保護素子80での光吸収による取り出し効率の低下を抑制することができる。
【0075】
(リッド)
発光装置100、101、102、103は、さらに基体35の凹部31を覆うリッドを備えることができる。リッドは、例えば、樹脂又は無機材料を含んだ透光性の部材である。リッドは、蛍光体のような波長変換材料を含有してもよいし、含有しなくてもよい。リッドが無機材料の母材に蛍光体を含有されたものである場合、例えば、蛍光体として、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)、母材としてアルミナや、シリカを用いることができる。
リッドは、例えば、はんだ(Au-Sn、Au-In等)、低融点ガラス、樹脂(シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等)のような接着剤を用いて基体35の母材30に接合される。光反射性部材5が基体35の壁部33の上面33cに配置されている場合は、上面33cに配置された光反射性部材5がリッドと基体とを接合する接着剤としても機能し得る。このように、光反射性部材5は、光反射の用途とは別に接着剤の用途としても使用可能である。光反射性部材5を接着剤として使用することで、発光装置100からの光取り出し効率を高くすることできる。
また、リッドは、基体35の凹部31が気密になるように配置されていてもよいし、基体35の凹部31が非気密になるように配置されていてもよい。リッドにより凹部31が気密にされていると、基体35の底部32上に配置される発光素子4、光反射性部材5等が外気に晒されることを防止することができる。
リッドを配置する工程は、例えば、混合物を配置する工程の後であって、混合物を加熱して光反射性部材を形成する工程(加熱工程)の前又は後に実施される。
【0076】
(封止部材)
基体35の凹部31には、発光素子4を封止する封止部材を配置させることができる。封止部材は、例えば、蛍光体が含有された樹脂である。蛍光体としては、例えば、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)を用いることができる。凹部31に配置される封止部材は、光反射性部材5、第1保護膜60、第2保護膜70、保護素子80等、基体35の底部32上に配置される部材を封止し得る。
【0077】
発光素子が紫外光を出射する場合、封止部材の材料として、フッ素樹脂又は低融点ガラスのような紫外光に対して耐光性を有する材料を用いることが好ましい。発光素子が紫外光を出射する場合においても、封止部材は、上述の封止部材の材料に蛍光体を含んでもよいし、蛍光体を含んでいなくてもよい。
光反射部材がその内部に空隙を有する場合、封止部材及び/又は保護膜は、光反射性部材5の表面に開口する空隙に内部に含浸して配置され得る。これにより、光反射性部材5と封止部材との密着性が向上する。また、封止部材が蛍光体を含む場合、光反射部材の空隙の内部にも、蛍光体が配置され得る。
封止部材は、光反射性部材5の表面に配置された第2保護膜70を介して配置されてもよいし、光反射性部材5の表面に直接配置されてもよい。
封止部材の上面は、断面視において、平坦でもよいし、凹凸を有していてもよい。あるいは、封止部材の上面は、中央が窪んでもよいし、中央が盛り上がってもよい。例えば、封止部材の上面を凹レンズ状、凸レンズ状、フレネルレンズ状等のレンズ効果を有する形状とすることで、発光素子からの光を広げる、あるいは、集光させる等により、発光装置の配光特性を制御することができる。
【0078】
実施形態3
実施形態3に係る発光装置200は、
図4A及び
図4Bに示すように、基体235が平板であり、光反射性部材205が発光素子4を囲む枠部材である点で、実施形態2に係る発光装置100と異なる。
【0079】
(光反射性部材)
枠部材である光反射性部材205は、基体235とともに、発光素子4を配置する凹部231を規定する部材であるとも言える。
図4Aに示す発光装置200では、光反射性部材205は、上面、内側面及び外側面を備える。光反射性部材205の内側面及び外側面は、断面視において直線状であり、基体235の上面235aに対して垂直である。但し、光反射性部材205の内側面及び/又は外側面は、基体235の上面235aに対して傾斜してもよい。例えば、光反射性部材205の外側面が、基体235の上面に対して垂直で、光反射性部材205の内側面が、光反射性部材205の下端から上端に向かって光反射性部材205の幅が狭くなるように傾斜してもよい。
図4Bに示す発光装置201では、光反射性部材255は、内側面と外側面とを備え、内側面の上端と外側面の上端とが接する。光反射性部材255の内側面及び外側面は、基体235側とは反対側に盛り上がるように湾曲する。
このように、光反射性部材の内側面及び/又は外側面は、断面視において直線形状でもよいし、湾曲形状でもよい。但し、光反射性部材の内側面及び/又は外側面は、これに限らず、断面視において階段状でもよい。また、光反射性部材は、内側面の上端と外側面の上端とが上面を介してつながっていてもよいし、内側面の上端と外側面の上端とが直接つながっていてもよい。
また、発光装置200,201は、
図4Cに示すように、光反射性部材205,255によって囲まれる領域(すなわち凹部231)に、発光素子4を覆う透光性の部材270が配置される。
また、
図4Cに示すように、凹部231には、複数の発光素子4が配置される。この場合、各発光素子4の上面4aにそれぞれ異なる蛍光材料を含有する波長変換部材を配置させることができる。各波長変換部材に含有される蛍光材料は、各発光素子4に配置された波長変換部材それぞれから出射される光が、所望の色になるように選択される。例えば、各波長変換部材に含有される蛍光材料は、一部の発光素子4に配置された波長変換部材からは白色光が出射され、他の発光素子4に配置された波長変換部材からは電球色が出射されるように適宜選択される。このような構成により、調色可能な発光装置200,201を得ることができる。透光性の部材270には、蛍光材料が含有されてもよいし、含有されていなくてもよい。また、このように発光装置を調色できる構成は、実施形態2、実施形態4及び実施形態5の発光装置100,101,102,300,400にも採用できる。
また、発光素子4の上面4aに波長変換部材を配置し、該波長変換部材の上面が露出するように、凹部231に光反射性の白色封止部材(すなわち、チタニアを含有した樹脂或いは、光反射性部材255と同一の材料)を配置することができる。
【0080】
光反射性部材205の上面視における形状は、環状であり、その外周及び/又は内周が矩形、円形、八角形等、種々の形状であってよい。光反射性部材205の上面視における形状が多角形の場合、角部が湾曲した略多角形であってもよい。
【0081】
発光装置200、201はさらに、枠部材である光反射性部材205、255と発光素子4との間に、枠部材と同一の光反射性部材から構成された平坦領域を備えていてもよい。平坦領域は、前述した実施形態2における平坦領域R2と同様である。平坦領域は、枠部材である光反射性部材205、255に連続していてもよいし、該光反射性部材205、255から離隔していてもよい。
【0082】
実施形態3の変形例
実施形態2に係る変形例で説明した、光反射性部材で形成される基体、発光素子の種類、保護素子、リッド、封止部材、及び発光素子に配置される部材に関しては、いずれも実施形態3に係る発光装置200、201に適用できる。
【0083】
製造方法2
実施形態3に係る発光装置200の製造方法(製造方法2)は、混合物を配置する工程が製造方法1と異なる。
製造方法2における混合物を配置する工程では、例えば、発光素子4を配置した基体235上に、所望の枠部材形状を有する金型を配置して、金型内に混合物を配置する。混合物は、例えば、金型の流入口から流し込まれて金型内に配置される。その後、金型を配置したまま、発光素子4及び混合物が配置された基体235を加熱し、光反射性部材205を形成する(混合物を加熱して光反射性部材を形成する工程/加熱工程)。加熱工程後、金型を取り外す。このように金型を利用することで、所望の形状の光反射性部材205を得ることができる。
【0084】
実施形態4
実施形態4に係る発光装置300は、
図5に示すように、基体335が平板であり、光反射性部材305が基体335の上面335aを覆って配置されている点で、実施形態2に係る発光装置100と異なる。
【0085】
(光反射性部材)
図5に示す発光装置300では、光反射性部材305は、基体335の上面335aを覆って配置される。
光反射性部材305の、基体335の上面335aからの高さは、例えば、数十ミクロン以下の差を有し得るが、実質一定である。光反射性部材305の高さは、基体335の母材330の上面から発光素子4の下面までの高さ以下であることが望ましい。光反射性部材305は、発光素子4の半導体層2の側面2aから離隔して配置されることが望ましい。
【0086】
このように基体335の上面335aを光反射性部材305で覆うことで、発光素子4から出射された光が基体335によって吸収されることを抑制できる。
【0087】
なお、光反射性部材305は、
図5に示すように、配線層41の上面を覆って配置されることに限らず、配線層41と母材330との間に配置されてもよい。すなわち、母材330の上面に光反射性部材305が配置され、光反射性部材の上面に配線層41が配置されてもよい。
【0088】
実施形態4の変形例
実施形態2に係る変形例で説明した発光素子の種類、保護素子、発光素子に配置される部材に関しては、いずれも実施形態4に係る発光装置300に適用できる。
【0089】
実施形態5
実施形態5に係る発光装置400は、
図6に示すように、基体435の母材430が光反射性部材405で形成された平板である点で、実施形態2に係る発光装置100と異なる。実施形態5に係る発光装置400はさらに、1以上の貫通孔91を有する導光板90を備える。貫通孔91は、例えば、二次元状に配列された複数の貫通孔である。
光反射性部材405である基体435は、発光素子4の半導体層2の側面2aを露出させていることが望ましい。
【0090】
このように光反射性部材405で形成される基体435は、導光板90と、導光板90の各貫通孔91内に配置された複数の発光素子4と、を設けることで、面状光源として利用できる。
【0091】
実施形態5の変形例
実施形態2に係る変形例で説明した発光素子の種類、保護素子、発光素子に配置される部材に関しては、いずれも実施形態5に係る発光装置400に適用できる。また、実施形態2に係る変形例で説明したリッド及び封止部材は、実施形態5に係る発光装置400に適用できる。
【0092】
実施例及び参考例
実施例1から9及び参考例1、2について説明する。
参考例1、参考例2、実施例1~実施例9では、光反射性部材を作製し、該光反射性部材を1000℃で1時間加熱した時の収縮維持率を測定した。また、アルカリ溶液の添加量は、成形に適した粘度となるように適宜調整を行った。
【0093】
参考例1の光反射性部材5を以下のようにして作製した。
まず、平均粒径が1μmでありかつ平均アスペクト比が4.6である光反射材11の粉末と、平均粒径がメジアン径で0.4μmのシリカの粉末とを、混合して混合粉を準備した。光反射材11は、窒化ホウ素であった。シリカと窒化ホウ素とは、重量比を4:5にして混合した。
該混合粉をと、濃度が3mol/Lのアルカリ溶液と、を混合して混合物を準備した。アルカリ溶液は、水酸化カリウム溶液であった。アルカリ溶液と混合粉とは、重量比を5.8:9にして混合した。
次に、混合物を90℃の第1温度、及び1MPaの圧力下で1時間加熱し、仮硬化させた。
次に、混合物を200℃の第2温度、及び1MPaの圧力下で2時間加熱し、本硬化させ、光反射性部材5を作製した。
【0094】
参考例2、実施例1から実施例9の光反射性部材5は、光反射材の材料、光反射材の平均粒径、光反射材のアスペクト比、及びシリカと光反射材の重量比を表1に示すように変更し、表1に記載した条件以外は、参考例1における作製方法と同様の方法で作製した。
【0095】
参考例1、参考例2、実施例1から実施例9の光反射性部材5を直径およそ3cm、厚さ約1mmの大きさの板状から2分割し、2分割した一方の光反射性部材を1000℃で1時間加熱した。その後、2分割した光反射性部材のうち加熱しなかった光反射性部材の分割断面における一辺の長さに対する、加熱した光反射性部材の分割断面における一辺の長さの割合(収縮維持率)を算出した。その結果を表1に示す。
【0096】
【0097】
参考例1、参考例2、実施例1から実施例9の結果より、実施例1~実施例9の収縮維持率は、99.00%以上であり、参考例1、参考例2の収縮維持率と比較して大きかった。従って、シリカ、アルカリ金属、及び平均粒径が0.6μm以上43μm以下であり、アスペクト比が10以上の光反射材を含む、実施例1から実施例9の光反射性部材5は、熱耐性が高いことが明らかになった。
【0098】
実施例10
次に、実施例10について説明する。
実施例10では、実施形態2に係る発光装置を作製し、光量を評価した。
実施例10の発光装置を以下のようにして作製した。
まず、導電部材40と、凹部31を有する母材30を備える、基体35を準備した。凹部31は、底辺が2.5mm×2.5mmの矩形であり、高さが0.9mmである、直方体形状の空間であった。基体35の底部32及び壁部33の材料はAlNであった。導電部材40の材料はAuであった。
次に、基体35の底部32上に発光素子4を配置した。発光素子4が出射する波長は280nmであった。発光素子4の上面視における形状は、一辺が1mmの矩形形状であった。
次に、平均粒径が10umであり、平均アスペクト比が20程度の窒化ホウ素と、平均粒径が0.3umのシリカと、を重量比5:3で混ぜ合わせた混合粉を作製した。その後、作製した混合粉6gに対して、3mol/Lの水酸化カリウム溶液を2g添加し(アルカリ溶液と混合粉との重量比が1:2)、さらに水を2g添加して、撹拌棒を用いて混ぜ合わせた。その後、減圧して撹拌できる撹拌脱泡機によって脱泡及び撹拌させることで、白色で均一な粘度状の混合物を得た。さらに、得られた混合物に散乱材としてイットリア安定化ジルコニアを添加した。
以上のようにして生成された混合物を、ノズルを用いて凹部31内に配置した。混合物は、壁部33から発光素子4に向けて高さが低くなる傾斜領域R1を形成するように配置された。
次に、発光素子4及び混合物が配置された基体35を、ホットプレートを使用して、1大気中で10分の仮硬化を行った。仮硬化の温度は、90℃であった。仮硬化後、再び加圧オーブンで、1MPaの加圧窒素雰囲気中で40分の本硬化を行った。本硬化時の温度は200℃であった。
【0099】
比較例1
比較例1の発光装置は、光反射性部材5を備えない以外は、実施例10における発光装置と同一の発光装置であった。
【0100】
上記のように作製した実施例10の発光装置100及び比較例1の発光装置に順方向電流100[mA]を流し、その時の光量を比較し、評価した。
【0101】
<光量>
実施例10の発光装置及び比較例1の発光装置に関して、積分球を用いて各発光装置の光量を測定した。測定結果を比較すると、実施例10の発光装置の光量は、比較例1の発光装置の光量と比較して、22.5%増加していた。
【0102】
以上、本開示の実施形態、変形例、実施例及び参考例を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施形態、変形例、実施例及び参考例における要素の組合せや順序の変化等は請求された本開示の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【符号の説明】
【0103】
1 基板
2 半導体層
2a 側面
3 電極
3a 下面
4 発光素子
4a 上面
5、205、255、305、405 光反射性部材
11 光反射材
11a、11b 主面
12 支持部材
13 ボイド
14 散乱材
30、230、330、430 母材
31、231 凹部
32 底部
32a 上面
32b 下面
33 壁部
33a 内側面
33b 外側面
33c 上面
35、235、335、435 基体
235a、335a、435a 上面
40 導電部材
41 配線層
42 外部電極
43 カソードマーク
44 アノード側の配線層
45 カソード側の配線層
50 混合物
60 第1保護膜
70 第2保護膜
80 保護素子
81 ワイヤ
90 導光板
91 貫通孔
100、100A、101、102、103、200、201、300、400 発光装置
270 透光性の部材
h1 高さ
P1 端部
R1 傾斜領域
R2 平坦領域