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特許7401816オーディオスポットシステム及びオーディオスポット形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】オーディオスポットシステム及びオーディオスポット形成方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20231213BHJP
   H04R 1/40 20060101ALI20231213BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20231213BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
H04R3/00 310
H04R1/40 330
G08G1/09 P
G08G1/16 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022512907
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2020014589
(87)【国際公開番号】W WO2021199166
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-07-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年10月31日~11月1日に日本電信電話株式会社が、「つくばフォーラム2019」において、笠原久稔、池口雄大、吉村勇祐、荒武淳、柳秀一、小口傑が発明した「オーディオスポットシステム及びオーディオスポット形成方法」について公開。
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100176728
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】笠原 久稔
(72)【発明者】
【氏名】池口 雄大
(72)【発明者】
【氏名】吉村 勇祐
(72)【発明者】
【氏名】荒武 淳
(72)【発明者】
【氏名】柳 秀一
(72)【発明者】
【氏名】小口 傑
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-001774(JP,A)
【文献】特開2018-078429(JP,A)
【文献】特開2017-092531(JP,A)
【文献】特開2008-287678(JP,A)
【文献】特開2014-229286(JP,A)
【文献】高速道路の工事を安全にする新製品がすごい!【ハイウェイテクノフェア2019】,[オンライン],2019年10月18日,[検索日 2020.05.18],インターネット:<URL:https://jafmate.jp/blog/safety/191017-20.html>
【文献】空間シェアリング技術の実用化,[オンライン],2015年,[検索日 2020.05.18],インターネット:<URL:http://www.activeforall.jp/project/project02/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
H04R 1/40
G08G 1/09
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路を走行する車両に注意喚起音を伝達するオーディオスポット形成システムであって、
側帯波を放射する第1のパラメトリックスピーカと、
キャリア波を放射する第2のパラメトリックスピーカと、を備え、
前記側帯波と前記キャリア波とを道路上で交差させてオーディオスポットを形成し、
前記注意喚起音として、前記車両の運転者に伝達することが必要な文字列を繰り返し再生した音声を伝達し、
前記文字列を再生する時間がx[秒]であり、前記車両の走行速度がP[m/秒]であるとき、前記車両の走行方向における前記オーディオスポットの長さを2xP[m]に設定するよう構成され、
前記文字列は、前記運転者へ伝達されるべき、意味を有するメッセージを含む、
オーディオスポット形成システム。
【請求項2】
請求項1に記載のオーディオスポット形成システムにおいて、
前記第2のパラメトリックスピーカは複数の第2のスピーカを含み、
前記複数の第2のスピーカは前記車両の走行方向に沿って配置され、
前記複数の第2のスピーカから放射された複数のキャリア波のそれぞれと、前記側帯波とを前記道路上で交差させて、複数のオーディオスポットを形成する、
オーディオスポット形成システム。
【請求項3】
請求項1に記載のオーディオスポット形成システムにおいて、
前記第1のパラメトリックスピーカは複数の第1のスピーカを含み、
前記複数の第1のスピーカから放射された帯域分割された複数の側帯波と前記キャリア波とを前記道路上の単一の領域で交差させて、単一のオーディオスポットを形成する、
オーディオスポット形成システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のオーディオスポット形成システムにおいて、
前記第2のパラメトリックスピーカは、前記第1のパラメトリックスピーカよりも、前記オーディオスポットに対して近い位置に配置される、
オーディオスポット形成システム。
【請求項5】
道路を走行する車両に注意喚起音を伝達するオーディオスポット形成方法であって、
第1のパラメトリックスピーカにより側帯波を放射する第1のステップと、
第2のパラメトリックスピーカによりキャリア波を放射する第2のステップと、
前記側帯波と前記キャリア波とを道路上で交差させてオーディオスポットを形成する第3のステップと、
を含み、
前記第1のステップ及び前記第2のステップでは、前記注意喚起音として、前記車両の運転者に伝達することが必要な文字列を繰り返し再生した音声を伝達し、
前記第3のステップでは、前記文字列を再生する時間がx[秒]であり、前記車両の走行速度がP[m/秒]であるとき、前記車両の走行方向における前記オーディオスポットの長さを2xP[m]に設定し、
前記文字列は、前記運転者へ伝達されるべき、意味を有するメッセージを含む
オーディオスポット形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オーディオスポット形成システム及びオーディオスポット形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路舗装時、又は道路下に埋設されているインフラの点検、補修時等には、道路上に工事作業帯を設置し作業を行う必要がある。その際、車両が適切に通行できるように、工事作業帯の近傍に交通誘導員、標識等を配置し、交通整理をする必要がある。一方でこのような取り組みにもかかわらず、工事作業帯に車両が誤って衝突し人身事故となる、飛び込まれ事故が後を絶たない。
【0003】
従来、このような事故による人的被害を防ぐ技術が知られている。1つ目の技術は、ドップラーレーダにより車両の速度を検知し、衝突可能性がある場合に工事の作業者に警告する(例えば特許文献1参照)。しかしデメリットとして、この技術は運転者への警告をすることができない。このため被害の低減にはつながるが、事故の低減にはつながりにくい。
【0004】
2つ目の技術は、工事作業帯前に、車両を物理的に停止させる装置を設置する(例えば非特許文献1参照)。しかしこの技術のデメリットは、運転者の怪我につながる可能性があることと、車両が急停止するため二次的な事故につながる恐れがあることである。
【0005】
上記2つの技術におけるデメリットを解決して衝突事故を無くすためには、運転者への直接の注意喚起が有効である。衝突事故は、運転手の不注意又は居眠りによるものが大半であるため、運転手に聴覚的に注意喚起を行うことが望ましい。そのための技術として、例えば、パラメトリックスピーカを用いて運転者に対して直接注意喚起を行う技術が知られている(例えば非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-192145号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】「とまるくん(進入車両強制停止装置)」、[online]、株式会社ハナイ、[令和2年3月18日検索]、インターネット、<URL:http://www.eight-guard.com/products/tomarukun/>
【文献】「USIMPACT[ウルトラソニックインパクト]」、[online]、西日本高速道路株式会社、[令和2年3月18日検索]、インターネット、<URL:https://corp.w-nexco.co.jp/techno/product/mat05.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記非特許文献2が提案する技術により音を放射した場合、放射する超音波の直線上は全て可聴域となるため、市街地又は住宅街では超音波が反射し、多くの箇所で音声が聞こえてしまう。これは苦情の原因にもなりうるため、その技術の使用場所は限定される。
【0009】
かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、特定の領域にのみ音による注意喚起を行って飛び込まれ事故を低減することができるオーディオスポット形成システム及びオーディオスポット形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係るオーディオスポット形成システムは、
道路を走行する車両に注意喚起音を伝達するオーディオスポット形成システムであって、
側帯波を放射する第1のパラメトリックスピーカと、
キャリア波を放射する第2のパラメトリックスピーカと、を備え、
前記側帯波と前記キャリア波とを道路上で交差させてオーディオスポットを形成し、
前記注意喚起音として、前記車両の運転者に伝達することが必要な文字列を繰り返し再生した音声を伝達し、
前記文字列を再生する時間がx[秒]であり、前記車両の走行速度がP[m/秒]であるとき、前記車両の走行方向における前記オーディオスポットの長さを2xP[m]に設定するよう構成され、
前記文字列は、前記運転者へ伝達されるべき、意味を有するメッセージを含む
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係るオーディオスポット形成方法は、
道路を走行する車両に注意喚起音を伝達するオーディオスポット形成方法であって、
第1のパラメトリックスピーカにより側帯波を放射する第1のステップと、
第2のパラメトリックスピーカによりキャリア波を放射する第2のステップと、
前記側帯波と前記キャリア波とを道路上で交差させてオーディオスポットを形成する第3のステップと、
を含み、
前記第1のステップ及び前記第2のステップでは、前記注意喚起音として、前記車両の運転者に伝達することが必要な文字列を繰り返し再生した音声を伝達し、
前記第3のステップでは、前記文字列を再生する時間がx[秒]であり、前記車両の走行速度がP[m/秒]であるとき、前記車両の走行方向における前記オーディオスポットの長さを2xP[m]に設定し、
前記文字列は、前記運転者へ伝達されるべき、意味を有するメッセージを含む
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るオーディオスポット形成システム及びオーディオスポット形成方法によれば、特定の領域にのみ音による注意喚起を行って、飛び込まれ事故を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態のオーディオスポット形成システムの配置図である。
図2】複数の第2のスピーカの配置図である。
図3】複数の第1のスピーカの配置図である。
図4】複数の第1のスピーカを工事作業帯内に配置したときの配置図である。
図5】複数の第1のスピーカと複数の第2のスピーカとの配置図である。
図6A】車両の運転者に伝達する必要がある文字列として「ABC」を例にとったときの図である。
図6B図6Aに示される文字列を繰り返した文字列を示す図である。
図6C】音声を2x秒再生したときに再生される文字列を示す図である。
図7A】車両の運転者に伝達する必要がある文字列を示す図である。
図7B図7Aに示される文字列を繰り返した文字列を示す図である。
図7C】音声を2x秒再生したときに再生される文字列を示す図である。
図8】オーディオスポット形成システムによって実行される処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態では、パラメトリックスピーカを用いて特定の領域にオーディオスポットを形成して飛び込まれ事故を低減する技術が開示される。関連する技術が次の非特許文献3に開示される。
[非特許文献3]松井唯、他3名、「キャリア波と側帯波の分離放射によるオーディオスポット形成」、電子情報通信学会論文誌、日本、2014年4月、A Vol.J97-A、No.4、pp.304-312
【0015】
上記の関連技術では、複数のパラメトリックスピーカを用いてキャリア波と側帯波とを別々に放射することで特定の領域のみに可聴域のオーディオスポットが形成される。この関連技術において、反射波による意図しない第三者への騒音被害は低減される。
【0016】
本実施形態のオーディオスポット形成システムは、例えば上記非特許文献3に記載のようなパラメトリックスピーカを活用して、特定の領域にオーディオスポットを形成する。
【0017】
本実施形態のオーディオスポット形成システムにおける複数のパラメトリックスピーカの配置方法と、オーディオスポットの長さの決定方法とが、以下で開示される。
【0018】
[パラメトリックスピーカの配置方法]
図1に本実施形態のオーディオスポット形成システムSが示される。オーディオスポット形成システムSは第1のパラメトリックスピーカ1(以下、「第1のスピーカ1」とも称される)と、第2のパラメトリックスピーカ2(以下、「第2のスピーカ2」とも称される)とを含む。車両Vは道路Wを走行する。車両Vは、四輪自動車、自動二輪車、自転車、原動機付自転車、及び建設車両のいずれであってもよい。道路Wは一例として二車線を有し、そのうち1つの車線には工事作業帯Kが設けられる。工事作業帯Kには第1のスピーカ1が配置される。道路Wの脇の路側帯には第2のスピーカ2が配置される。第1のスピーカ1と第2のスピーカ2との配置は、これに限られない。代替例として、第1のスピーカ1と第2のスピーカ2との配置は、道路の幅又は形状、地理的制約、オーディオスポットにて実現したい音圧又は音質等、によって決定されてよい。あるいは、第1のスピーカ1と第2のスピーカ2とは、車両通行と工事作業帯Kで行う作業とを阻害しない任意の位置に配置されてよい。
【0019】
第1のスピーカ1及び第2のスピーカ2のそれぞれは、プロセッサ及びメモリを含んでよい。プロセッサは例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)を含む1つ以上の汎用プロセッサを含む。プロセッサは、特定の処理に特化した1つ以上の専用プロセッサを含んでよい。メモリは、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリであるが、これらに限られない。メモリは、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。メモリは、第1のスピーカ1及び第2のスピーカ2の動作又は制御に関する各種情報を記憶してよい。メモリは、システムプログラム、アプリケーションプログラム、及び組み込みソフトウェアを記憶してよい。
【0020】
第1のスピーカ1及び第2のスピーカ2のそれぞれのプロセッサは、外部装置から受信した指示情報に応じて、放射される超音波の向き及び強度等を調整して、オーディオスポットの位置又は形状を調整することができる。このように第1のスピーカ1及び第2のスピーカ2のそれぞれは、外部装置によって操作可能である。代替例として、第1のスピーカ1及び第2のスピーカ2のそれぞれは手動で操作可能であってよい。
【0021】
第1のスピーカ1は領域R1に超音波を放射する。第2のスピーカ2は領域R2に超音波を放射する。このようにオーディオスポット形成システムSは、領域R1と領域R2とを道路W上で交差させて、オーディオスポットS11を形成する。オーディオスポットS11においてのみ音声が再現されるので、オーディオスポット形成システムSは、オーディオスポットS11を通過する車両の運転者のみに、注意喚起音を伝達することができる。
【0022】
第1のスピーカ1と第2のスピーカ2とのどちらのスピーカからキャリア波を放射するかは限定されない。しかしオーディオスポットS11における音圧はキャリア波に依存する。このため、キャリア波を放射するスピーカは、キャリア波の減衰を低減するために、オーディオスポットS11から近い位置に配置されることが望ましい。道路幅が広い場合を除いて、図1のような場合、第2のスピーカ2の方が第1のスピーカ1よりもオーディオスポットS11に近い。このため第2のスピーカ2がキャリア波を放射し、第1のスピーカ1が側帯波を放射する。
【0023】
図2を参照して、キャリア波を放射する第2のスピーカ2の数が複数である場合が説明される。第1のスピーカ1は側帯波を放射する。第2のスピーカ2はキャリア波を放射する。第2のスピーカ2として、複数の第2のスピーカ2-1、2-2、・・(中略)・・及び2-nが車両の走行方向に沿って配置される。nは2以上の自然数である。
【0024】
オーディオスポット形成システムSはn個のオーディオスポットS21を形成する。オーディオスポット形成システムSは、形成されたn個のオーディオスポットS21において、複数回にわたり運転者に注意喚起を行うことができる。nの値が大きいほどオーディオスポット形成システムSは衝突可能性を低減できる。nの値は、道路の幅又は形状、スピーカ設置時の地理的制約、スピーカの設置コスト、稼働状況等を考慮して決定されてよい。
【0025】
図3を参照して、側帯波を放射する第1のスピーカ1の数が複数である場合が説明される。
【0026】
上記の非特許文献3に記載のようにキャリア波と側波帯との分離放射によりオーディオスポットを形成する場合、側帯波を周波数帯域ごとに細かく帯域分割するほど、オーディオスポットで再現される音の音質が良くなることと、音が大音量化することとが知られている。
【0027】
そこで図3に示すように、側帯波を放射する第1のスピーカ1として、3つの第1のスピーカ1a、1b及び1cが配置される。オーディオスポット形成システムSは、帯域分割された複数の側帯波を複数の第1のスピーカ1a、1b及び1cから放射し、放射された複数の側帯波とキャリア波とを道路上の単一の領域で交差させて、単一のオーディオスポットS31を形成する。含まれるスピーカの数はこれに限られない。側帯波を放射する第1のスピーカ1の数が複数である場合は、側帯波を放射する第1のスピーカ1の数が単数である場合と比較して、形成されるオーディオスポットS31における音質は良い。すなわち、運転者に対し音声による注意喚起を行う場合、より明瞭に音声を伝達することができる。
【0028】
図4を参照して、工事作業帯K内に複数の第1のスピーカ1が配置される場合が説明される。地理的制約により路側帯に配置するスピーカの数を少なくすることが望ましい場合は、図4に示すように3つの第1のスピーカ1a、1b、及び1cが工事作業帯K内に複数配置されてよい。配置される第1のスピーカ1の数はこれに限られない。第1のスピーカ1は側帯波を放射する。第2のスピーカ2はキャリア波を放射する。図4に示すように、第2のスピーカ2は第1のスピーカ1よりもオーディオスポットS41に近い位置に配置される。この配置によって、音圧が維持され、音質が良い状態が実現される。
【0029】
代替例として、図5に示すように第1のスピーカ1として複数の第1のスピーカ1a、1b、1c、1d、1e及び1fの6つが配置されてよい。第2のスピーカ2として第2のスピーカ2a及び2bの2つが配置されてよい。第1のスピーカ1a、1b及び1cから放射された側帯波と、第2のスピーカ2aから放射されたキャリア波とが重なった領域にオーディオスポットS51が形成される。更に、第1のスピーカ1d、1e及び1fから放射された側帯波と、第2のスピーカ2bから放射されたキャリア波とが重なった領域に別のオーディオスポットS52が形成される。このように複数の第1のスピーカ1と複数の第2のスピーカ2とを路側帯と工事作業帯Kとに配置することにより、複数のオーディオスポットS51及びS52を形成することができる。
【0030】
[オーディオスポットの大きさの決定方法]
オーディオスポットの大きさは少なくとも、スピーカ1個当たりの大きさと、スピーカが放射する超音波同士がなす角度とによって決定される。オーディオスポットは、道路上に収まる範囲内で大きいほうが望ましい。しかし、コスト又は稼働を考慮すると大きい領域を創出することは困難な場合がある。そこで、領域の最低限の大きさの決定方法が以下で説明される。
【0031】
本実施形態のオーディオスポット形成システムSは、走行中の車両の運転者に対して注意喚起音を伝達して注意喚起を行う。車両の走行速度をP[m/秒]とする。車両が飛び込み事故を起こす場面を想定すると、Pは大きく見積もることが好ましい。
【0032】
運転者に何秒間注意喚起音を聞かせるべきかが検討される。注意喚起音が単調な警告音に設定される場合、対象となる運転者が注意喚起音として知覚可能な長さが設定される。その長さを判断するのに資する情報として、次の非特許文献4には、強注意音の長さは1.8秒以上と規定されている。
[非特許文献4]「家電製品における操作性向上のための報知音に関するガイドライン」、pp9、[online]、2018年3月、一般財団法人家電製品協会 ユニバーサルデザイン技術委員会、[令和2年3月18日検索]、インターネット、<URL:https://www.aeha.or.jp/ud/pdf/ud_guideline_5.pdf>
【0033】
上記の非特許文献4を考慮して、例えば本実施形態における注意喚起音の長さは1秒以上に設定されてよい。
【0034】
一方で注意喚起音が、単調な警告音ではなく、文字列を再生した音声に設定される場合、その音声内容及び意味が運転者に伝達されるのに必要な長さが設定される。説明の便宜のために、運転者に伝達したい最低限の文字列を「ABC」とする。オーディオスポット形成システムSは、「ABC」を繰り返した「ABCABCABC・・・」との音声を再生する。図6Aに示すように「ABC」と一回再生されるためにx[秒]かかると仮定すると、「BCA」と一回再生されるためには同様にx[秒]かかる。図6Bに示すように運転者の聞き始めの音が「B」である場合に、その音声がx[秒]のみ再生されると、運転者には「BCA」という音が伝達される。このため意味が伝わらない。
【0035】
そこで運転者の聞き始めの最初の音が「A」、「B」及び「C」のいずれであっても「ABC」を少なくとも一回聞いてもらうためには、図6Cのように少なくとも2x[秒]間、音声を再生すればよい。「ABC」との文字列が太字で示される。オーディオスポット形成システムSにおいて、音声の長さは2x[秒]に設定される。設定は、上記のように外部装置によってなされてよいし、手動でなされてもよい。
【0036】
図6Aで説明した「ABC」との音声に代えて、図7Aに記載のように「工事中です」との音声を伝達する場合が説明される。「工事中です」と一回再生されるのにx[秒]かかると仮定する。その音声がx[秒]のみ再生される場合、聞き始めのタイミングによっては、図7Bのように「です工事中」との意味不明な音声のみが伝達されてしまう。そこで、「工事中です」のうちどの文字から運転者が聞き始めても必ず「工事中です」と一回再生されるようにするには、図7Cに示すように音を2x[秒]間再生すればよい。「工事中です」との文字列が太字で示される。オーディオスポット形成システムSにおいて、音声の長さは2x[秒]に設定される。
【0037】
上記の図6A乃至図6C、及び、図7A乃至図7Cを参照して説明された例によれば、オーディオスポット形成システムSによって再生される音の長さは2x[秒]に設定される。車両の速度がP[m/秒]であることを考慮すると、オーディオスポットの長さは、車両の走行方向につき2xP[m]以上に設定される。
【0038】
図8を参照して、オーディオスポット形成システムSによって実行されるオーディオスポット形成方法が説明される。
【0039】
ステップS1にて、第2のスピーカ2は、キャリア波を放射する。
【0040】
ステップS2にて、第1のスピーカ1は側帯波を放射する。代替例としてステップS1とステップS2との順序は逆であってもよい。別の代替例として、第1のスピーカ1がキャリア波を放射して第2のスピーカ2が側帯波を放射してもよい。
【0041】
ステップS3にて、オーディオスポット形成システムSは、キャリア波と側帯波とが交差する領域にオーディオスポットを形成して、オーディオスポットを通過する車両の運転者に音を伝達する。
【0042】
以上述べたように、本実施形態によれば、オーディオスポット形成システムSは、側帯波とキャリア波とを道路上で交差させてオーディオスポットを形成し、道路を走行する車両に注意喚起音を伝達するよう構成される。この構成によりオーディオスポット形成システムSは、車両の運転者が通過する特定の領域にのみ音による注意喚起を行うことができるので、もって飛び込まれ事故を低減することができる。
【0043】
また本実施形態によれば、第2のスピーカ2は複数の第2のスピーカ2-1、2-2及び2-nを含み、複数の第2のスピーカ2-1、2-2及び2-nは車両の走行方向に沿って配置される。オーディオスポット形成システムSは、複数の第2のスピーカ2-1、2-2及び2-nから放射された複数のキャリア波のそれぞれと、側帯波とを道路上で交差させて、複数のオーディオスポットを形成するよう構成される。この構成によりオーディオスポット形成システムSは、複数回にわたり運転者に注意喚起を行うことができるので、もって衝突可能性を低減することができる。
【0044】
また本実施形態によれば、第1のスピーカ1は複数の第1のスピーカ1a、1b及び1cを含む。オーディオスポット形成システムSは、帯域分割された複数の側帯波を複数の第1のスピーカ1a、1b及び1cから放射し、複数の側帯波とキャリア波とを道路上の単一の領域で交差させて、単一のオーディオスポットを形成するよう構成される。この構成によりオーディオスポット形成システムSは、オーディオスポットで再現される音の音質を改善し、音が大音量化することができる。
【0045】
また本実施形態によれば、第2のスピーカ2は、第1のスピーカ1よりも、オーディオスポットに対して近い位置に配置される。この構成によりオーディオスポット形成システムSは、キャリア波の減衰を低減することができる。
【0046】
また本実施形態によれば、オーディオスポット形成システムSは、注意喚起音として、車両の運転者に伝達することが必要な最低限の文字列を繰り返し再生した音声を伝達し、必要な最低限の文字列を再生する時間がx[秒]であり、車両の走行速度がP[m/秒]であるとき、車両の走行方向におけるオーディオスポットの長さを2xP[m]に設定するよう構成される。この構成によりオーディオスポット形成システムSは、運転者に伝達する必要がある音声を最低でも1回は伝達することができるので、もって飛び込まれ事故を低減することができる。
【0047】
本実施形態の第1のスピーカ1の制御部(図示せず)は、任意のコンピュータとプログラムによっても実現できる。具体的には第1のスピーカ1の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムをメモリ等の記録媒体に記録して、プロセッサによってそのプログラムを読み出して実行させる。同様に、本実施形態の第2のスピーカ2の制御部(図示せず)は、任意のコンピュータとプログラムによっても実現できる。具体的には第2のスピーカ2の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムをメモリ等の記録媒体に記録して、プロセッサによってそのプログラムを読み出して実行させる。そのようなプログラムは、ネットワークを通して提供されることも可能である。
【0048】
このプログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM又はDVD-ROMなどの記録媒体であってもよい。
【0049】
本発明が諸図面及び実施例に基づき説明されるが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップ等を1つに組み合わせたり、あるいは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
S オーディオスポット形成システム
1(1a、1b、1c、1d、1e、1f) 第1のスピーカ
2(2-1、2-2、2-n、2a、2b) 第2のスピーカ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8