(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】緩み検出センサ及びそれを用いた緩み検出方法
(51)【国際特許分類】
F16B 31/00 20060101AFI20231213BHJP
G01N 22/00 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
F16B31/00 Z
G01N22/00 V
(21)【出願番号】P 2022516550
(86)(22)【出願日】2020-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2020017318
(87)【国際公開番号】W WO2021214909
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】松永 恵里
(72)【発明者】
【氏名】津田 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】美濃谷 直志
(72)【発明者】
【氏名】庄司 正成
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0129158(US,A1)
【文献】特開2003-034352(JP,A)
【文献】特開2001-159572(JP,A)
【文献】特開2018-013431(JP,A)
【文献】松永恵里,インフラ劣化検知を目的とした電磁波伝搬型塗布式センサの基礎検討,材料と環境,日本,公益社団法人 腐食防食学会,2019年07月10日,Vol.68, No.7,p.178-181
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 31/00
G01N 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を固定するボルト又はナットの緩みを検出する緩み検出センサであって、
前記緩み検出センサは、
絶縁層と、当該絶縁層を上下から挟む第1導電層と第2導電層とを備え、前記ボルトの軸とは直接接触せずに前記部品と前記ボルト又は前記部品と前記ナットで挟まれる座金形状であ
り、
前記第1導電層には、所定の範囲の周波数が掃引された高周波信号が印加される
緩み検出センサ。
【請求項2】
部品を固定するボルト又はナットの緩みを検出する緩み検出センサであって、
前記緩み検出センサは、
絶縁層と、当該絶縁層を上下から挟む第1導電層と第2導電層とを備え、前記ボルトの軸とは直接接触せずに前記部品と前記ボルト又は前記部品と前記ナットで挟まれる座金形状であり、
前記第1導電層、前記絶縁層、及び前記第2導電層は、
円環形状であり、前記第1導電層又は前記第2導電層に高周波信号を給電する給電点と異なる位置の当該第1導電層と当該第2導電層の一点が導電性部材で短絡されて
いる
緩み検出センサ。
【請求項3】
前記絶縁層、前記第1導電層、及び前記第2導電層のそれぞれは、前記軸と直交する方向から前記部品と前記ボルトの間、又は前記部品と前記ナットの間に挿入可能な平面形状である請求項1に記載の緩み検出センサ。
【請求項4】
部品を固定するボルト又はナットの緩みを検出する緩み検出装置が実行する緩み検出方法であって、
絶縁層と、当該絶縁層を上下から挟む第1導電層と第2導電層とを備え、前記ボルトの軸とは直接接触せずに前記部品と前記ボルト又は前記部品と前記ナットで挟まれる座金形状である緩み検出センサに、所定の範囲の周波数の高周波信号を掃引して印加し、該高周波信号の反射波を受信する反射波受信ステップと、
前記反射波のピーク値を記録するピーク値記録ステップと、
前記ピーク値と過去の前記ピーク値とを比較し変化量を求める比較ステップと、
前記変化量が閾値未満の場合は前記緩みがないと判定し、前記変化量が閾値以上の場合は前記緩みがあると判定する判定ステップと
を行うことを特徴とする緩み検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品を固定するボルト又はナットの緩みを検出する緩み検出センサ及びそれを用いた緩み検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボルトは、部品と部品を締め付け、固定するものであり、インフラ構造物、プラント設備等の大型設備から、乗り物、遊具、及び家具等の身近な製品まで様々な用途で使用される。ボルトの接合部では、振動や過大な力による組成変形、疲労等の劣化が原因で、緩みや脱落が生じることがある。
【0003】
これらが原因で、例えば橋梁の崩落事故、接合部分からのガス及び液体の漏洩、遊具の破損、高所からの落下物による人身事故等が発生する。これらの事故を防止するため、例えば非特許文献1にボルトにマーキングをして、合いマークのズレを監視する方法が提案されている。また、非特許文献2と3に導波路型センサによって異常を検出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】構造物のゆるみ対策、〔令和2年4月13日検索〕、インターネット(https://www.euroke.co.jp/linecap1/)
【文献】E. Matsunaga ; M. Nakamura ; T. Minotani ; M. Tsuda, “Paintable Wireless Passive Sensor based on Electromagnetic Waveguide to Detect Loose Bolts for Remote Infrastructure Inspection.” Proc. IEEE SENSORS 2019, Montreal, QC, Canada, Canada,2019.
【文献】E. Matsunaga, T. Minotani, S. Oka, and M. Tsuda, “Fundamental study of coating-type sensor for detection of infrastructure deterioration. ”Proceedings of the 65th Japan Conference on Materials and Environments, Japan, pp. 178-181, 2019 (in Japanese).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、合いマークのズレを監視する方法等は、検査対象が見難い場所にある場合、又は遠方などの目視点検が困難な部分の検査には適さない。また、導波路型センサによる異常を検出する方法は、構造物にセンサを塗装する必要があるため、ボルトの上に塗料を塗装した場合は、緩み検知後に再塗装しなくてはならないといった施工上の課題がある。また、施工済みの既存の設備へのセンサの設置が難しいと言った課題がある。
【0006】
本発明は、この課題に鑑みてなされたものであり、施工上の課題が少なく、施工済みの設備への設置が容易な緩み検出センサ及びそれを用いた緩み検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る緩み検出センサは、部品を固定するボルト又はナットの緩みを検出する緩み検出センサであって、前記緩み検出センサは、絶縁層と、該絶縁層を上下から挟む第1導電層と第2導電層とを備え、前記ボルトの軸とは直接接触せずに前記部品とボルト又は前記部品とナットで挟まれる座金形状であることを要旨とする。
【0008】
また、本発明の一態様に係る緩み検出方法は、上記緩み検出装置が実行する緩み検出方法であって、絶縁層と、該絶縁層を上下から挟む第1導電層と第2導電層とを備え、前記ボルトの軸とは直接接触せずに前記部品と前記ボルト又は前記部品と前記ナットで挟まれる座金形状である緩み検出センサに、所定の範囲の周波数の高周波信号を掃引して印加し、該高周波信号の反射波を受信する反射波受信ステップと、前記反射波のピーク値を記録するピーク値記録ステップと、前記ピーク値と過去の前記ピーク値とを比較し変化量を求める比較ステップと、前記変化量が閾値未満の場合は前記緩みがないと判定し、前記変化量が閾値以上の場合は前記緩みがあると判定する判定ステップとを行うことを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、施工上の課題が少なく、施工済みの設備への設置が容易な緩み検出センサ及びそれを用いた緩み検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る緩み検出センサを用いたボルトの固定部分の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すA-A線に沿う構造断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る緩み検出センサと緩み検出装置を示す模式図である。
【
図4】
図1に示す緩み検出センサの平面形状の一例を示す図である。
【
図5】
図3に示す緩み検出センサと緩み検出装置を用いて測定した共振周波数スペクトルを示す図である。
【
図6】
図3に示す緩み検出装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図7】
図3に示す緩み検出装置の処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る緩み検出センサを示す模式図である。
【
図9】
図8に示す緩み検出センサと緩み検出装置を用いて測定した共振周波数スペクトルを示す図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る緩み検出センサを示す模式図である。
【
図11】
図10に示す緩み検出センサと緩み検出装置を用いて測定した共振周波数スペクトルを示す図である。
【
図12】
図10に示す緩み検出センサの変形例を示す模式図である。
【
図13】
図12に示す緩み検出センサと緩み検出装置を用いて測定した共振周波数スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。複数の図面中同一のものには同じ参照符号を付し、説明は繰り返さない。
【0012】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る緩み検出センサの一例を示す斜視図である。
図1に示す緩み検出センサ5は、二つの部品1,2を固定するボルト4とナットの緩みを検出するのに用いられる。
【0013】
図1に示す例は、部品1,2を鋼材の例で示す。二つの部品1,2を固定する構造は、この例に限定されない。ボルト4は複数で有っても良い。緩み検出センサ5は座金形状であり、部品1とボルト4、又は、部品2とナットの間に配置される。
【0014】
図2は、
図1に示すA-A線に沿う構造断面図である。
図2において、ボルト4、ナット6、及び一般的なワッシャー9はそれぞれの外観を示す。
【0015】
図2に示すように、緩み検出センサ5は、例えばボルト4の首部4a側に配置される。又は、ナット6側に配置してもよい。また、首部4a側とナット6側の両方に配置しても構わない。
【0016】
緩み検出センサ5は、絶縁層5bを、第1導電層5aと第2導電層5cとで挟む三層構造である。また、緩み検出センサ5は、ボルト4の軸4bとは直接接触せずに部品1とボルト4又は部品2とナット6で挟まれる座金形状である。
【0017】
座金形状の中央の穴の大きさは、緩みを検出したいボルト4の軸4bの直径以上の大きさであり、ボルト4の首部4aと第1導電層5a、及び第2導電層5cと部品1は、それぞれ電気的に接続する。一方、ボルト4の軸4bとネジ部4cには直接接触しない形状である。
【0018】
第1・第2導電層5a,5cは、一般的な座金(ワッシャー)と同じ材料で構成される。例えば、SUS304,310,316等のステンレス材料及びそれらの金属の蒸着物を用いる。
【0019】
絶縁層5bは、例えば、PTFE,PTE等の弾力性のある樹脂を用いる。又は、酸化物やガラス等の樹脂以外の材料を用いてもよい。
【0020】
図3は、本実施形態に係る緩み検出センサ5緩み検出装置200を示す模式図である。
図4は、緩み検出センサ5の平面形状の一例を示す図である。
【0021】
緩み検出装置200は、第1導電層5aに、所定の範囲の周波数の高周波信号を掃引して印加し、緩み検出センサ5の共振周波数(固有振動数)を検出する。緩み検出センサ5の共振波長λ1は次式で表せる。共振波長λ1は、1次の固有振動数の波長である。
【0022】
【0023】
共振波長λ1は、緩み検出センサ5の絶縁層5bに閉じ込められる高周波信号の波長である。よって、共振波長λ1は絶縁増5bの材料によって異なる。ここでLは、座金形状のリング幅Wの中央を通る円の半周の長さである。nは1以上の整数である。
【0024】
共振周波数fは、ボルト4の締め付け具合で変化する。ボルト4が緩んでいる状態では緩み検出センサ5単体の共振周波数と同じである(式(1))。一方、ボルト4が締め付けられた状態では、緩み検出センサ5の内周部分がボルト4の頭部によってショートするので内周部分の電界強度が下がる。そのため、高周波信号の伝搬モードが変化し、式(1)で表される共振波長λ1が短くなる。このように、共振周波数の変化に基づいてボルト4の緩みを検出することができる。また、共振周波数の有無でボルト4の緩みを検出することもできる。
【0025】
図5は、M30のボルト4用に作製した緩み検出センサ5を使用して検出した共振周波数の変化例を示す。
図3の横軸は周波数(GHz)、縦軸は任意単位(dB)である。
【0026】
図5において、実線はボルト4が締まった状態、破線はボルト4が緩んだ状態の共振周波数を示す。約2.1GHzの共振周波数は、ボルト4が緩むことで約1.4GHZに変化する。また、約2.9GHZの共振周波数は、ボルト4が緩むことで約2.5GHZに変化する。
【0027】
このように、共振周波数の変化でボルト4の緩みを検出することができる。本実施形態に係る緩み検出センサ5は、ボルト4又はナット6で挟まれる座金形状であるため施工性に優れる。また、形状が円環状であるため作業者を傷つけるリスクが低く安全性が高い。
【0028】
次に、本発明の実施形態に係る緩み検出装置について説明する。
【0029】
(緩み検出装置)
図6は、本発明の実施形態に係る緩み検出装置200の機能構成例を示すブロック図である。その処理手順を示すフローチャートを
図7に示す。
【0030】
緩み検出装置200は、周波数掃引部20、高周波印加部21、振動モード検出部22、振動モード記録部23、判定部24,及び制御部25を備える。制御部25は、各機能構成部の動作を制御する機能構成部であり、例えば、ROM、RAM、CPU等からなるコンピュータで構成することができる。制御部25をコンピュータで実現する場合は、振動モード検出部22の一部、振動モード記録部23、及び判定部24もそのコンピュータで構成することが可能である。
【0031】
緩み検出装置200は、緩み検出センサ5の第1導電層5aに高周波信号を入力する。周波数掃引部20は、所定の範囲の周波数を掃引する。高周波印加部21は、周波数掃引部20が掃引する周波数の高周波信号を生成し、緩み検出センサ5の第1導電層5aに印加する(ステップS1)。
【0032】
振動モード検出部22は、緩み検出センサ5の振動モードを検出する(ステップS2)。振動モードは、例えば、第1導電層5aに入力される電流の特性を高速フーリエ(FFT)変換することで求めることができる。
【0033】
又は、第1導電層5aから反射される反射波を高速フーリエ変換して振動モードを検出するようにしても良い。反射波から検出する場合は、振動モード検出部22は、導電性膜7と振動モード記録部23との間に直列に接続される(図示せず)。振動モードの具体例は後述する。
【0034】
振動モード記録部23は、振動モード検出部22で検出された振動のピーク値を記録する(ステップS3)。振動のピーク値は、例えば第1導電層5aから入力される電流の最大値で求めることができる。ピーク値は、例えば電流値と、その電流が流れる周波数とで表せる。
【0035】
判定部24は、まず、得られたピーク値と過去に得られたピーク値とを比較し変化量を求める(ステップS4)。変化量は、例えば電流値と、周波数でも良いし、周波数だけでも良い。
【0036】
そして、判定部24は、変化量が閾値未満の場合は緩みがないと判定し(ステップS6)、変化量が閾値以上の場合は緩みがあると判定する(ステップS7)。緩みの判定の具体例は後述する。
【0037】
以上説明したように本実施形態に係る緩み検出装置200が実行する緩み検出方法は、上記の緩み検出装置200が実行する緩み検出方法であって、絶縁層5bと、当該絶縁層5bを上下から挟む第1導電層5aと第2導電層5cとを備え、ボルト4の軸4bとは直接接触せずに部品1とボルト4又は部品2とナット6で挟まれる座金形状である緩み検出センサ5に、所定の範囲の周波数の高周波信号を掃引して印加(ステップS1)し、該高周波信号の反射波を受信する反射波受信ステップ(ステップS2)と、
前記反射波のピーク値を記録するピーク値記録ステップ(ステップS3)と、
前記ピーク値と過去の前記ピーク値とを比較し変化量を求める比較ステップ(ステップS4)と、
前記変化量が閾値未満の場合は前記緩みがないと判定(ステップS6)し、前記変化量が閾値以上の場合は前記緩みがある(ステップS7)と判定する判定ステップ(ステップS5)とを行う。これにより、ボルト4による二つの部品1,2の締め付け部分の緩みを検出することができる。
【0038】
なお、緩みの検出は、ピーク値が生じる態様に基づいて検出するようにしてもよい。態様とは、ピーク値を示す周波数の間隔が、例えば不均一な状態から均一な状態に変化する等のことである。
【0039】
〔第2実施形態〕
図8は、本発明の第2実施形態に係る緩み検出センサを示す図である。
図8(a)は平面図、
図8(a)はその断面を模式的に示す。
【0040】
図8に示すように、第1導電層52a、絶縁層52b、及び第2導電層52cは円環状であり、第1導電層52a又は第2導電層52cに高周波信号を給電する給電点と、該給電点と反対側の第1導電層52aと第2導電層52cの一点が導電性部材7で短絡されている。
【0041】
本実施形態に係る緩み検出センサ52の共振波長λ2と座金形状のリング幅Wの中央を通る円の半周の長さLとの関係は次式で表せる。
【0042】
【0043】
ここで、mは奇数である。ボルト4が締まった状態における最も低い共振条件はm=1の場合である。また、円環の半周の長さで第1導電層52aと第2導電層52cが短絡されているため、共振波長λは第1実施形態の場合と異なり次式に従って短波長側で共振することができる。
【0044】
【0045】
ここでm=2n+1である。nは1以上の整数、mは3以上の奇数である。ゆえに共振波長λ2と共振周波長λ1の関係は次式で表せる。
【0046】
【0047】
式(4)に示すように、第1実施形態に対して短波長側で共振することができる。したがって、本実施形態は設計の自由度を向上させることができる。
【0048】
図9は、M30のボルト4用に作製した緩み検出センサ52を使用して検出した共振周波数の変化例を示す。
図9の横軸は周波数(GHz)、縦軸は任意単位(dB)である。
【0049】
リング状のセンサはリングの半周の長さで共振しているが、センサ中央に対して給電点と反対側の位置においてショートさせた場合、ボルト4が緩んだ状態において、式(2)に示す共振波長が存在する。また、リングの半周の長さの端部が強制的に短絡されているため、各共振の波長は式(4)に従って短波長側にシフトする。
【0050】
式(2)に示す共振周波数を緩み検出に利用すれば、共振周波数を低周波数化することができる。また、式(3)に示す特徴を利用すれば、緩み検出センサ5よりも高周波側での検出が可能となる。
【0051】
なお、導電性部材7で第1導電層52aと第2導電層52cを短絡させる位置は、円環状のどの位置であっても構わない。つまり、第1導電層52a又は第2導電層52cに高周波信号を給電する給電点と異なる位置の第1導電層52aと第2導電層52cの一点が導電性部材7で短絡されていればよい。これにより、緩み検出センサの設計の自由度を高めることができる。
【0052】
{第3実施形態}
図10は、本発明の第3実施形態に係る緩み検出センサを示す図である。
図10に示す緩み検出センサ53は、上記の緩み検出センサ5,52と同様に、絶縁層53b(図示せず)を、第1導電層53aと第2導電層53c(図示)せず)を挟み込む三層構造である。
【0053】
本実施形態に係る緩み検出センサ53は、ボルト4が緩んでいる場合、共振波長λは次式に従って現れる。
【0054】
【0055】
ここでnは整数である。
【0056】
一方、ボルト4が締まっている場合、緩み検出センサ5の内周部分の電界強度が下がるため高周波信号の伝搬モードが変化し、式(5)で表される共振波長λが短くなる。このように、共振周波数の波長に基づいてボルト4の緩みを検出することができる。また、共振周波数の有無でボルト4の緩みを検出することもできる。
【0057】
図11は、緩み検出センサ53でボルト4の緩みを検出した共振周波数の変化を示す図である。
図11の横軸は周波数(GHz)、縦軸は任意単位(dB)である。
【0058】
ボルト4が緩んでいる場合は、センサの共振波長λは、長さLに依存して式(5)に従って現れる。一方、センサが締まっている場合は、センサの内周の電界強度が低下した共振モードが形成されて共振周波数が高周波側にシフトする。
【0059】
なお、第3実施形態の緩み検出センサ53は、
図10に示す平面形状に限られない。例えば、
図12に示すように半円形であっても構わない。
【0060】
図13は、緩み検出センサ53でボルト4の緩みを検出した共振周波数の変化を示す図である。横軸と縦軸の関係は
図11等と同じである。
【0061】
図13に示すように、ボルト4が緩む(破線)と、共振周波数は凡そ等間隔(式(5))に変化する。
【0062】
本実施形態に係る緩み検出センサ53は、ボルト4又はナット6の下に挿入な能な平面形状であればよい。要するに、絶縁層53b、第1導電層53a、及び第2導電層53cのそれぞれは、ボルト4の軸4bと直交する方向からボルト4又はナット6の下に挿入可能な平面形状である。これにより、施工済みのボルト4を取り外すことなく緩み検出センサ53を配置することができる。
【0063】
以上述べたように、本実施形態に係る緩み検出センサ5,52,53、及び緩み検出センサ5と緩み検出装置200を用いた緩み検出方法によれば、2つの部品の固定部分に挟まれた緩み検出センサ5,52,53の固有振動数の変化に基づいて、当該部分を固定するボルト4又はナット6の緩みを検出する。よって、検査対象が見難い場所、又は、遠方で目視点検が困難な部分の検査にも好適である。
【0064】
また、緩み検出センサ5,52,53と緩み検出装置200を、離して配置すれば遠隔でボルトの緩みを検出することができる。緩み検出センサ5と緩み検出装置200の間は、マイクロスプリットライン等の高周波信号線で接続すれば良い。また、導波管等で接続するようにしても良い。
【0065】
また、構造上の要の部分のボルト4の近傍に緩み検出装置200を配置して、検出結果を無線で送信するようにしても良い。そうすることで、検査に伴う危険性を排除することが出来る。また、検査コストを削減することも可能である。
【0066】
なお、本発明の緩み検出センサ5,52,53は、上記の実施形態1~3に限定されない。2つの部品1,2をボルト4で固定する構造に広く適用することが可能である。また、部品1の表面が導電性を持つ場合は、第2導電層5cは無くても構わない。
【0067】
このように本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で変形が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1,2:部品
4:ボルト
4a:首部
4b:軸
4c:ネジ部
5:緩み検出センサ
5a:第1導電層
5b:絶縁層
5c:第2導電層
6:ナット
7:導電性部材
9:ワッシャー
200:緩み検出装置
20:周波数掃引部
21:高周波印加部
22:振動モード検出部
23:振動モード記録部
24:判定部
25:制御部