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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】光導波路部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/122 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
G02B6/122 311
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022544918
(86)(22)【出願日】2020-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2020031934
(87)【国際公開番号】W WO2022044101
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 祥江
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 賢哉
(72)【発明者】
【氏名】森脇 摂
(72)【発明者】
【氏名】倉田 優生
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-538426(JP,A)
【文献】国際公開第2012/114866(WO,A1)
【文献】特開2016-018191(JP,A)
【文献】特開2004-258610(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0310423(US,A1)
【文献】特開平05-249331(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0297093(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に、
複数の第1の光導波路と、
前記第1の光導波路とは異なるモードフィールド径(MFD)を持ち、前記第1の光導波路と光学的に結合した、対応する複数の第2の光導波路とを有する光導波路部品であって、
前記複数の第2の光導波路は、前記複数の第1の光導波路とは異なる間隔で配置されており、前記複数の第1の光導波路と前記複数の第2の光導波路の間に、導波路間間隔を拡張する領域を有し、
前記複数の第1の光導波路の各々は、
第1の材料による第1のコア、および前記第1のコアの上下に形成された、第2の材料によるクラッドを含
前記複数の第2の光導波路の各々は、
前記第1のコアに沿って、前記クラッドから延長して形成された前記第2の材料による第2のコア、前記基板と前記第2のコアの間に形成された、第3の材料による下側クラッド、および、前記第2のコアの上に形成された上側クラッドを含
前記光導波路の長さ方向に垂直な断面において、前記第1のコアの領域は、前記第2のコアの領域に内包されており、
前記第1の材料は最も屈折率が大きく、前記第3の材料は最も屈折率が小さく、
前記第1のコアの先端部は、前記第1のコアが断続的に形成されたセグメント構造を有し、前記第1の光導波路を伝搬する光信号のMFDを変化させるスポットサイズ変換領域を構成しており、
前記第1の光導波路の前記第1のコアから延長して形成された第3のコア、および、前記第1の光導波路の前記第1のコアの下に形成された前記クラッドから延長して形成された下側クラッドのみを含む、前記スポットサイズ変換領域の外に形成された第3の光導波路をさらに備えた
ことを特徴とする光導波路部品。
【請求項2】
前記第3の光導波路は、
前記第3のコアの上が、前記第2の光導波路の前記上側クラッドから延長して形成された上側クラッドでさらに覆われていることを特徴とする請求項1に記載の光導波路部品。
【請求項3】
前記第1のコアの下に形成された前記クラッドの厚さは、前記第2のコアの高さの1/2および前記第1のコアの高さの1/2の間の差に設定されており、
前記第1のコアの中心高さおよび前記第2のコアの中心高さが一致することを特徴とする請求項1または2に記載の光導波路部品。
【請求項4】
前記第1の光導波路および前記第2の光導波路は、導波する光信号波長に対してシングルモード導波路であることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の光導波路部品。
【請求項5】
前記第1の材料、前記第2の材料および前記第3の材料は、Si、SiN、SiON、SiOX、ポリマーのいずれかを母材とし、
前記母材の違いによって屈折率の違いが生じたもの、または、
前記母材への不純物の添加量の違いによって屈折率の違いが生じたもののいずれかであること特徴とする請求項1乃至いずれかに記載の光導波路部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信を利用する光導波路部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のデータセンタ内通信のトラフィック増大に伴い、コンピュータ筐体内素子の光配線化技術の重要性が高まっている。中でも、多数の光回路を高密度に集積可能なシリコンフォトニクス技術が注目を集めている。
【0003】
シリコンフォトニクス技術において光伝送媒体となるシリコン光回路は、SiをコアとしSiOをクラッドとするシリコン細線導波路によって構成される。シリコン細線導波路ではコアとクラッドの間の比屈折率差が40%程度であり、シングルモード通信の使用波長帯である1550nm付近において、数百nm角という極小断面領域内での光伝搬が可能である。許容曲げ半径も数μm程度と小さいため、狭い領域内に複雑な配線パターンを形成可能で、シリコンフォトニクス技術による光回路の大規模集積化が期待される。
【0004】
シリコン光回路は通常SOI(Silicon On Insulator)基板上に形成されるため、シリコン光回路および電子回路をモノリシック集積することもできる。製造技術の観点では、成熟した半導体微細加工技術を適用できるため、微細パターンを簡単に形成できる。シリコンフォトニクス技術を半導体技術や電子回路技術と組み合わせることで、光電子集積型デバイスの実現が期待される。
【0005】
一方でシリコン光回路は、他の光素子との接続という観点で問題を抱えていた。光素子同士を接続する際には、接続点における損失を低減する上で、光素子内を伝搬する光のモードフィールドを合わせることが重要である。二つの光素子を突き合わせて接続させた場合、伝搬光の結合効率は両者のモードフィールドの重なり積分によって決定づけられる。シリコン光回路のモードフィールド径(Mode Field Diameter:MFD)は300nm程度である。ここで、コンピュータ筐体内にて回路外部の光伝送媒体として使用されているシングルモードファイバ(Single Mode Fiber:SMF)との接続を考える。長距離伝送にも用いられる一般的なSMFのMFDは9μm程度であり、MFDの小さな光導波路などとの接続用の高比屈折率差設計のSMFでもMFDは4μm程度である。このようにシリコン光回路のMFDは、SMFのMFDと比べて10~数十倍も小さく、シリコン光回路およびSMFを直接接続した場合、MFDの不整合よって大きな結合損失が生じてしまう。
【0006】
さらに、複数チャネルを含むシリコン光回路と複数のSMFとを接続する際には、シリコン光回路およびSMFの間でのコア間ピッチの違いの問題もあった。上述のように、シリコン光導波路は、数百nm角の極小断面領域内での光伝搬が可能である。このためシリコン光回路上で複数チャネルを配列させる場合も、そのコア間ピッチを数μm程度にまで減らして、高密度に配線できる。一方、複数の光ファイバを含むSMFでは、125μmや250μmのコア間ピッチが既に規格化されており、対応する製品も市場に広く流通している。したがって、シリコン光回路内で高い配線密度を維持しながら、その端部で規格化されたピッチの複数のSMFと接続するためには、シリコン光回路とSMFとの間でコア間ピッチを揃えなければならない。すなわち、シリコン光回路のSMFとの接続部付近で、SMFのコア間ピッチに一致するよう、シリコン細線導波路のコア間ピッチを拡大するピッチ変換配線パターンを構成する必要がある。
このピッチ変換配線パターンでは、元々高密度に配置された数μmのコア間ピッチをSMF接続のために100μm以上にまで拡大させる必要があり、シリコン光回路が大型化したり、配線長が長くなったりしてしまう。シリコンフォトニクスは光回路の高密度集積化には優れているが、シリコン細線導波路の伝搬損失は3dB/cmに及ぶ。シリコン光回路内の極小領域では問題とならなかった伝搬損失が、今度は、光回路全体が大型化し配線長が長距離化することで、深刻な問題となっていた。このようなシリコン光回路とSMFの間の接続性に関する問題を解決するために、スポットサイズ変換構造(Spot Size Conversion:SSC)およびピッチ変換構造を挿入する手法が提案されていた。
【0007】
図5は、従来技術のスポットサイズ変換(SSC)構造の構成を示す図である。図5は、異なるMFDを持つ2つの光導波路コア501、502を有し、MFDの差異の影響を緩和するためのSSC構造部530含むシリコン光回路500の上面図、およびa-a線を切った断面図を示している。x-z面を見ている断面図を参照すれば、Si基板503の上に、アンダークラッド層504が構成され、さらにアンダークラッド層504の上に、MFDの小さいシリコン細線導波路のコア501が形成されている。シリコン光回路500は、さらに全体がオーバークラッド層505により覆われている。図5においてSi基板503、アンダークラッド504、Siコア501は、SOI基板を共通の基板として利用し作製される。このSSC構造を含むシリコン光回路の構成については、課題とともに後述する。
【0008】
SSC構造部530では、コア501-2の先端を先細りの逆テーパ部501-1とし、逆テーパ部501-1を覆うように平面光導波路コア502を配置している。平面光導波路コア502とアンダークラッド層504およびオーバークラッド層505との比屈折率差は、シリコン細線導波路のコア501-2とアンダークラッド層504およびオーバークラッド層505との比屈折率差よりも小さい。また平面光導波路コア502は、シリコン細線導波路のコア501よりもコア断面積およびMFDが大きい。シリコン細線導波路のコア501-2内の光は、SSC構造部530の逆テーパ部501-1でコア先端に近づくにしたがい、逆テーパ形状のコア内には閉じ込めきれなくなり、逆テーパ部501-1の周囲のクラッドへ漏洩する。逆テーパ部501-1から漏洩した光は、シリコン細線導波路コア501-2を覆う平面光導波路コア502へと断熱的に遷移する。この光の遷移過程は断熱的であるので、理論上は光エネルギーの損失を発生しない。
【0009】
図5におけるSiコアよりもMFDの大きい平面光導波路502としては、SiOをコア、SiOをクラッド材料とする石英系光導波路や、ポリマー材料をコア、クラッド材料とするポリマー光導波路などが用いられる。これら平面光導波路の材料の組み合わせのいずれも、比屈折率差は1~数%程度である。SSC構造部530によって、数百nm角程度のSiコア501-2から、数μm程度の平面光導波路コア502に断面を拡大することで、SMFとの結合効率を改善できる。特に平面光導波路502として、光ファイバと同様の石英系材料である石英系光導波路を採用すれば、通信波長帯で低損失であり、温度依存性や偏波依存性が低く、高信頼・高性能な光デバイスが得られる。
【0010】
石英系光導波路などの平面光導波路はSiコアと比べてコアサイズが大きい。平面光導波路における伝搬損失は0.1dB/cm以下から0.数dB/cm程度に留まり、数10cmを超える配線長であっても大きな伝搬損失無しに実現できる。さらに、数10μmから数百μm程度の幅広いコア間ピッチにも対応可能であり、大きな伝搬損失無しに、光回路全体の大型化や配線長の増大を伴うピッチ変換構造を形成することもできる。
【0011】
上述のように、シリコン光回路に対して石英系光導波路を代表とする平面光導波路を組み合わせることで、MFDの異なる2種類の光導波路を低損失に接続し、シリコンフォトニクス技術の接続性を向上していた(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】B. Ben Bakir, et al., “Low-loss (< 1 dB) and polarization-insensitive edge fiber couplers fabricated on 200-mm silicon-on-insulator wafers”, 2010年6月1日、IEEE Photon. Technol. Lett., Vol. 22, No. 11, pp. 739-741
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながらMFDの異なる光導波路を組み合わせた従来技術の光回路では、依然として、製造工程の煩雑さやコストの問題が残っている。MFDの異なる光導波路を有するシリコン光回路と平面光導波路とを組み合わせる光回路の作製方法には、大別して2つのアプローチがある。1つは、別々の基板を組み合わせるハイブリッド集積であり、もう1つは、単一の共通基板を用いるモノリシック集積である。
【0014】
ハイブリッド集積は、別基板上にMFDの異なる光導波路を有するシリコン光回路と平面光導波路をそれぞれ作製し、その後に集積化する方法である。ハイブリッド集積の場合、シリコン細線導波路コアと平面光導波路コアを正確に位置合わせする工程(調心工程とも言う)が必要となる。シリコン光回路のシリコン細線導波路コアのように数百nmという非常に細いコアを有する光導波路に対しては、調心精度への要求が高く、高精度な調心プロセスにはコストが掛かることが問題であった。
【0015】
モノリシック集積は、シリコン光回路および平面光導波路のそれぞれの異種材料を同一基板上に集積する作製方法であって、上述のハイブリッド集積の問題を解消できる。モノリシック集積では、シリコン光回路と平面光導波路を共通のSOI基板上に同時集積することで、煩雑な調心プロセスを不要とし、位置ずれによる結合効率の悪化を最低限に抑えられる。しかしながらモノリシック集積によって作製した場合でも、シリコン細線導波路と平面光導波路間の接続性に関して問題が生じる。ここで再び図5を参照しながら、モノリシック集積した場合の接続性の問題を説明する。先に説明をしたように、図5のシリコン光回路500では、SSC構造部530によってスポットサイズを変換し、MFDの不整合による結合損失を抑えていた。
【0016】
図5に示した光回路500のシリコン細線導波路コア501の厚さは数百nm、平面光導波路コア502の厚さは数μm程度である。図5の断面図では各部を見やすくするために2つのコアの厚さの相対寸法の差を圧縮して描いているが、コア501の中心高さと、コア502の中心高さが一致しない構造となっていることは明らかである。シリコン細線導波路コア501から平面光導波路コア502への断熱結合を利用する場合、コア同士の中心高さが一致していなくとも理論的には完全結合が可能である。しかし実際には、断熱結合効率はシリコン細線導波路コアの寸法精度や平面光導波路コアの光学特性によって左右される。このため、同じプロセスで製造されるすべての光回路に対して、全光エネルギーが断熱結合をするとは限らない。
【0017】
断熱結合が不完全な場合、断熱結合せずに残った光エネルギーは、シリコン光回路510の終端、すなわちSSC構造部530において、平面光導波路520へと突合せ結合されることになる。一般に突合せ結合では、接続される光素子のモードフィールドの重なり積分にて結合効率が決定されるため、図5に示したように接続される2つのコアの中心高さが異なっている場合、結合効率が悪化する場合がある。
【0018】
上述の突合せ結合効率を改善するために、SOI基板上に作製されたシリコン光回路コアおよび平面光導波路コアの中心高さを合わせる方法も検討されている。この場合、SOI基板のBOX層を削り取るエッチング処理が必要になる。図5の構成の場合では、平面光導波路520においてアンダークラッド層504の一部を除去することになり、作製工程が煩雑となる問題があった。このように、共通の1つの基板上に異なる材料の光導波路をモノリシック集積した光回路において、MFDの大きく異なる2種類の光導波路を低損失に接続できる光導波路部品およびその簡便な製造方法が望まれている
本発明はこのような問題に鑑みなされたものであり、異なる材料の異なる光導波路を低損失で低コストに提供できる新規な光導波路構造およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の1つの実施態様は、基板の上に、異なるモードフィールド径(MFD)を有する光導波路を形成した光導波路部品であって、第1の材料による第1のコア、および前記第1のコアの上下に形成された、第2の材料によるクラッドを含む第1の光導波路と、前記第1のコアに沿って、前記クラッドから延長して形成された前記第2の材料による第2のコア、前記基板と前記第2のコアの間に構成された、第3の材料による下側クラッド、および前記第2のコアの上に構成された上側クラッドを含む第2の光導波路とを備え、前記光導波路の長さ方向に垂直な断面において、前記第1のコアの領域は、前記第2のコアの領域に内包されており、前記第1の材料は最も屈折率が大きく、前記第3の材料は最も屈折率が小さいことを特徴とする光導波路部品である。
【0020】
本発明の別の実施態様は、異なるモードフィールド径(MFD)を有する第1の光導波路および第2の光導波路を含む光導波路部品の製造方法であって、基板上に、下側クラッドとなる第1の層を形成するステップと、前記第1の層よりも高い屈折率を有する材料により、前記第2の光導波路の下側コアのための第2の層を形成するステップと、前記第2の層よりもさらに高い屈折率を有する材料により、前記第1の光導波路のコアのための第3の層を形成するステップと、前記第3の層を加工して、前記第1の光導波路のコアを形成するステップと、前記第2の層と同程度の屈折率を有する材料により、前記第2の光導波路の上側コアのための第4の層を形成するステップと、前記第2の層および前記第4の層を一括して加工して、前記第2の光導波路のコアを形成するステップと、前記第2の層および前記第4の層よりも低い屈折率を有する材料により、上側クラッドとなる第5の層を形成するステップとを備える光導波路部品の製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、異なる材料の異なる光導波路を低損失で接続する光導波路の構造およびその製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示の第1の実施形態の光導波路部品の構成を示す図である。
図2】二重構造および別の導波路構造を含む光導波路部品の構成を示す図である。
図3】本開示の第2の実施形態の光導波路部品の構成を示す図である。
図4】本開示の光導波路部品の製造方法の各プロセスを説明する図である。
図5】従来技術のスポットサイズ変換構造の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示の光導波路部品は、異なる材料の光導波路を共通の単一の基板上にモノリシック集積可能であり、モードフィールドの大きさが異なる2種類の光導波路を低損失に接続する構成を提供する。本開示の光導波路部品は、光導波路の長さ方向に垂直な断面で、第1の光導波路のコア領域が、第2の光導波路のコア領域に内包される二重構造を持つように構成される。第1の光導波路のコアの第1の材料の屈折率は、第2の光導波路のコアの第2の材料の屈折率より大きい。また第2の光導波路のコアを構成する第2の材料の屈折率は、第2の光導波路のクラッドを構成する第3の材料の屈折率より大きい。基板面に垂直な方向で、第1の光導波路のコアの中心高さと、第2の光導波路のコアの中心高さを揃えることで、従来技術のSSC構造部における断熱結合の不完全さや、突合せ結合効率の悪化による接続性の問題を解消する。
【0024】
図1は、本開示の二重構造を含む光導波路部品の構成を示す図である。図1は、基板101の面(x-y面)に向かって2つの光導波路110、120を見た上面図、2本の光導波路の各コア104、103の中心を通る側面図(x-z面)、光導波路の長さ方向を垂直に切った断面の2つの端面図(y-z面)を含む。図1の光導波路部品100は、共通の基板101の上に形成された第1のコアサイズおよび対応するMFDを持つ第1の光導波路と、第2のコアサイズおよび対応するMFDを持つ第2の光導波路とが、光学的に接続された構造を備えている。第2の光導波路の第2のコアサイズは、第1の光導波路の第1のコアサイズよりも大きい。図1は2つの光導波路110、120が基板101上にモノリシック集積された光回路の一部だけを切り出して示しており、光導波路の数はこれに限られないし、また他の光導波路が光導波路部品100内に含まれていても良い。尚、図1の上面図(x-y面)では、最上部にあるクラッド105を取り除いて示している。
【0025】
2つの光導波路のより具体的な構成は、以下の通りである。第1の光導波路110では、コア104は第1の材料、クラッド103-1は第2の材料で形成し、第2の光導波路120では、コア103-2は第2の材料、クラッド105、102は第3の材料で形成する。本開示の光導波路部品100では、第1の材料、第2の材料および第3の材料の屈折率n、n、nの関係が、第1の材料の屈折率nが最も高く、第3の材料の屈折率nが最も低いという関係を満たしていれば、各光導波路の材料の種類は問わない。要するに3つの材料の屈折率n、n、nに、次式が成立していれば良い。
> n > n 式(1)
【0026】
光導波路の長さ方向に垂直に切った断面(端面図)を見たとき、光学的に接続される2つの光導波路110、120は、第1の光導波路110のコア104が第2の光導波路のコア103に内包されていることがわかる。図1の上面図および側面図では、2つの光導波路の領域を区別して示すために、点線を用いて境界を示しているが、後述する作製プロセスを参照すれば明らかなように2つの光導波路の間に物理的な境界は存在しない。第2の材料について、第1の光導波路のクラッド103-1(103-1a、103-1b)および第2の光導波路のコア103-2(103-2a、103-2b)は2つの光導波路110、120を通して、一体とみなすことができる。光導波路の長さ方向に垂直な断面を見て、あたかも鉛筆とその芯のように、第2の光導波路のコア領域の内部に、第1の光導波路のコア領域が内包されている関係にある。さらに図1の光導波路部品100では、光導波路の長さ方向に垂直な断面で見たとき、第1の光導波路のコア領域は第2の光導波路のコア領域内に含まれ、2つのコアの中心高さが一致するように構成されている。このような光導波路の「二重構造」または「入れ子様構造」によって、図5に示した従来技術のモノリシック集積におけるコアの中心高さ位置のずれによる損失の問題を解消できる。
【0027】
以下の実施形態の説明では具体例として、第1の材料がSi、第2の材料が相対的に屈折率の高いSiO、第3の材料が相対的に屈折率の低いSiOの場合で説明する。この材料例の場合、屈折率の大きさを、Si > 高屈折率SiO > 低屈折率SiOの関係で表せる。2種類の光導波路の各部に使用できる材料はこれらだけに限られず、例えば第1の材料としてSi、SiN、SiONなどを使用することができる。また、第2の材料および第3の材料としてSiO、SiOx、ポリマーなどを使用できる。以下、上述の具体的な材料を例に図1の光導波路部品の構造を説明する。
【0028】
再び図1に戻ると、光導波路部品100は基板101上に構成されている。基板101は、その直上にSiO層を成膜可能な、表面が平滑な基板である。基板101の上には、屈折率の最も小さい第3の材料であるSiO層102を備える。図1の上面図を参照すると、基板101の上に、第1の光導波路110および第2の光導波路120が構成されている。第1の光導波路110は、屈折率の最も大きいSiコア104を備え、上面図にあるようにSiコア104-2と、第2の光導波路120に向かって幅が狭まるテーパ導波路104-1とからなる。断面図を参照すれば、Siコア104は、下側のSiOコア部103-1aの上に作製され、さらにSiコア104の上を覆うように上側のSiOコア部103-1bが作製されている。
【0029】
第2の光導波路120は、SiO層102上のSiOコア103を備え、側面図を参照すればSiOコア103は上側のSiOコア部103-2bと、下側のSiOコア部103-2aの2つの部分から成る。以下の説明では、簡単のためSiOコア103と記載する場合は、2つの光導波路に渡った4つのコア部103-1a、103-1b、103-2a、103-2bのSiO領域の全体を指すものとする。SiOコア103は、屈折率が中間の値を持つ第2の材料から構成されることになる。後述するように、上下のコア部103-2a、103-2bは別の工程により作製されるため、厳密に完全に同一の屈折率にするのが難しい場合もある。しかしながら、SiOコア103は第2の光導波路120では、上下のコア部103-2a、103-2bが文字通り光導波路の「コア」として機能するよう、概ね同一の屈折率となるよう構成される。一方、第1の光導波路110では、上下のコア部103-1a、103-1bが実際には光導波路の「クラッド」として機能している点に留意されたい。
【0030】
本開示の光導波路部品100では、高屈折率差導波路である第1の光導波路110の上層クラッド103-1b、下層クラッド103-1aにおける材料を、低屈折率差導波路である第2の光導波路120のコア103の材料と同一にしている点に注目すべきである。図4とともに後述する製造方法でも述べる通り、4つのコア部からなるSiOコア103の内、下層のコア部103-1a、103-2aのSiO領域(103-a)が1つの工程で作成される。また、4つのコア部からなるSiOコア103の内、上層のコア部103-1b、103-2bのSiO領域(103-b)も、1つの工程で作成される。本開示の光導波路部品100は、一般的な積層工程による光導波路部品の作製と同等の簡単なプロセスで、屈折率の異なるコアを有する2種類の光導波路を低損失に接続する構成を実現できる。図5の従来技術のSSC構造部で説明したような、SOI基板のBOX層を削り取るエッチング処理などは不要である。
【0031】
2つの光導波路110、120の全体は、屈折率の最も小さい第3の材料によるSiO層105の上側クラッドで覆われている。したがって、第1の光導波路110のSiコア104は、二重構造のクラッドによって囲まれている点にも留意されたい。
【0032】
図1の光導波路部品の構成で屈折率の大きいものから順に並べれば、Siコア104 → SiOコア103 → SiOクラッド102、105の関係となる。すなわちSiOコア部103-2a、103-2bの屈折率は、SiO層102およびSiO層105のクラッドの屈折率よりも大きい関係にある。ここでSiO層102およびSiO層105の屈折率は、同じである必要は無いことに留意されたい。すなわちSiO層102、105の屈折率が、第2の光導波路のSiOコア103-2よりも小さい限り、第2の光導波路120で光をコア内に閉じ込めて光導波路として機能できるからである。以下、図1の光導波路部品の各部およびコアの「二重構造」について、さらに詳細に説明する。
[第1の実施形態:光導波路の構成]
図1の光導波路部品100には、2種類の光導波路が存在している。すなわち1つは、SiOコア部103-1aをアンダークラッド、Siコア104をコア、SiOコア部103-1bをオーバークラッドとする第1の光導波路110である。もう1つは、SiO層102をアンダークラッド、SiOコア103をコア、SiO層105をオーバークラッドとする第2の光導波路120である。
【0033】
第1の光導波路110において、Siコア104は「クラッド」として機能するSiOコア部103-1aとSiOコア部103-1bの間に挟まれており、さらにSiコア104の幅はSiOコア部103-1の幅よりも狭い構造となっている。したがって光導波路部品100は、平面光回路でありながら、第1の光導波路のSiコア104の断面領域が、第2の光導波路のSiOコア103の断面領域内に完全に収まるようなコアの「二重構造」を持っている。また図1の左側の端面図から明らかなように、第1の光導波路110におけるSiコア104は、SiOコア部103-1による内側クラッド、さらにSiO層103、105による外側クラッドを備えた、クラッドの「二重構造」を持っているとも言える。
【0034】
したがって本発明は、基板101の上に、異なるモードフィールド径(MFD)を有する光導波路を形成した光導波路部品であって、第1の材料による第1のコア104、および、前記第1のコアの上下に形成された、第2の材料によるクラッド103-1a、103-1bを含む第1の光導波路110と、前記第1のコアに沿って、前記クラッドから延長して形成された前記第2の材料による第2のコア103、前記基板と前記第2のコアの間に構成された、第3の材料による下側クラッド102、および前記第2のコアの上に構成された上側クラッド105を含む第2の光導波路120とを備え、前記光導波路の長さ方向に垂直な断面において、前記第1のコア104の領域は、前記第2のコアの領域103に内包されており、前記第1の材料は最も屈折率が大きく、前記第3の材料は最も屈折が小さいことを特徴とする光導波路部品として実施できる。
【0035】
光導波路部品100では、コア内を伝搬する光のMFDを徐々に拡大させるSSC領域130において、上述のコアの二重構造を備えている必要がある。すなわち、コア内を伝搬する光のMFDを徐々に拡大させるSSC領域130は、第1の光導波路内のコアの二重構造部分に形成することが望ましい。SSC機能のための構造は特定のものに限定されないが、図1のSSC領域130のように、Siコア104を一定幅のコア104-2から先細りのテーパ形状部104-1を経る構造によって実現できる。またSiコア104の高さが徐々に低くなる基板垂直方向(z軸方向)のテーパ形状を有しても良い。Siコア104が光の伝搬方向(x軸方向)に分断されたセグメント状の構造によって実現することもできる。すなわちSiコア104を、コアが形成されている領域(セグメント)と形成されていない領域が交互に繰り返されるようにセグメント化することで、光の閉じ込めを次第に弱くし、断熱遷移を生じさせる。さらに、テーパ形状およびセグメント形状の両方を組み合わせて、SSC領域を構成しても良い。
【0036】
一方、第1の光導波路110においてSSC機能の無い、接続部の境界から離れた領域においては、必ずしも上述のコアの二重構造を備えている必要は無い。光導波路部品100で、第1の光導波路110および第2の光導波路120の接続部付近から遠ざかった図1に示さない領域では、図1の第1の光導波路110および第2の光導波路120は、それぞれの構造から別の構造へ遷移をしていっても良い。
【0037】
図2は、二重構造および別の導波路構造を含む光導波路部品の構成を示す図である。図2の(a)、(b)は、それぞれ図1の光導波路部品の変形例の構成を示し、基板面(x-y面)を見た上面図、光導波路を含む基板面に垂直な断面(x-z面)を見た側面図、光導波路の長さ方向に垂直な断面(y-z面)を見た端面図を含む。また各上面図は、最上部にあるクラッド105を取り除いて示している。
【0038】
図2の(a)の光導波路部品100-1は、第1の光導波路110のオーバークラッドとして機能するコア部103-1bを、SSC領域130内のテーパ形状部104-1の上だけに限定して備えている。すなわち、第1の光導波路110の矩形のSiコア104-2の上は、オーバークラッドとして機能するSiO層105で直接覆われている。図2の(a)の構造の場合、SSC領域130の外におけるSiコア104では、第2の材料のSiOコア部103-1aのアンダークラッドおよび第3の材料のSiO層105のオーバークラッドによって光が閉じ込められる。光導波路としての機能は、図1の第1の光導波路110の場合と何ら変わりがない。図2(a)の光導波路部品100-1のSiコア104の先では、シリコン細線導波路の光回路が構成されることになるため、第2の材料のコア103のためのパターンニングが無くなり、Siコア104の先では、シリコン細線導波路の光回路が構成されることになる。その光回路部においては、シリコン細線導波路コアの上で、平面光導波路コアの材料層を形成したりパターニングしたりする必要がないため、シリコン回路を劣化させる要因が減る。
【0039】
図2の(b)の光導波路部品100-2は、第1の光導波路110のオーバークラッドとして機能するコア部103-1bをSSC領域130内のテーパ形状部104-1の上だけに限定して備えている。図2の(b)の構成では、第1の光導波路110の矩形のSiコア104-2の上にはオーバークラッドが無く、Siコア104がむき出しになった構成である。この構造でも、SSC領域130外のSiコア104では、第2の材料のSiOコア部103-1aによるアンダークラッドおよびSiコアとの屈折率差の大きい空気によって光が閉じ込められる。図2(b)の光導波路部品100-2のSiコア104の先にあるシリコン細線導波路において、より強く光を閉じ込め、コアをより細くし、曲げ半径をより小さくできるメリットがある。
【0040】
上述のように、図1の第1の光導波路110の先において、図2の(a)、(b)の様に光導波路の形態を変えることもできるし、第2の光導波路120の先において光導波路の形態を変えることもできる。本開示の光導波路部品におけるコアサイズの異なる2つの光導波路のコアの二重構造は、SSC領域130において必要なものであって、図1の光導波路部品100は集積化した光回路の一部であることに留意されたい。
[各層の厚み、中心高さ合わせ構造]
ここで再び図1の光導波路部品100に戻ると、アンダークラッドのSiO層102およびオーバークラッドのSiO層105の厚さは、第2の光導波路120のSiOコア103内を伝搬する光のモードフィールドが十分収まるものであれば良い。すなわちクラッド層102、105は、第2の光導波路120を伝搬する光のモードフィールドが、基板101やオーバークラッドSiO層105直上の空気層にまで染み出さない程度の厚さであれば良い。一般的には、クラッドSiO層102、105の厚さは数10μm程度であれば十分である。
【0041】
基板に垂直な方向において、第1の光導波路110のSiコア104の中心高さと、第2の光導波路120のSiOコア103の中心高さは、次の様に設定することで一致させることができる。すなわち、下側のSiO層103-1a、103-2aの厚さを、SiOコア103の全体の高さの1/2およびSiコア104の高さの1/2の間の差に設定すれば良い。このとき2つの光導波路のコア同士の中心高さを完全に一致させることが可能で、従来技術のSSC構造部における断熱結合の不完全さや、突合せ結合効率の悪化による接続性の問題を解消する。
[モード数の非限定、コアサイズ、シングルモードの場合のMFD]
図1の光導波路部品100において、第1の光導波路110および第2の光導波路120のいずれも、コア断面サイズに上限はなく、使用する光信号の波長に対して、複数のモードの光を伝搬させるマルチモードの光導波路とすることもできる。また、コア断面サイズを小さくすることで、最低次のモードのみを伝搬させるシングルモードの光導波路とすることもできる。
【0042】
第1の光導波路110はSi層をコア104とし、図1のようにSiO層103-1a、103-1bを、または図2の(b)のように空気をクラッドとし、コア-クラッド間の屈折率差が大きい。このため、コア断面サイズを数百nmまで小さくすることができる。一方、コアおよびクラッドの材料としてSiO層を用いる第2の光導波路120は、第1の光導波路110に比べてコア-クラッド間の屈折率差が小さい。このため、第2の光導波路120のコア断面サイズは、数μm~10μm角程度までとなる。
【0043】
第1の光導波路110、第2の光導波路120のいずれもシングルモードの光導波路である場合、コア断面サイズは第1の光導波路で数百nm程度、第2の光導波路120で数μm~10μm程度となる。このため、2つの光導波路のコア内を伝搬する光のMFDは著しく異なり、第2の光導波路120のMFDが第1の光導波路110のMFDに比べて大きな値となる。
[結合方式]
シングルモードとなる光導波路のコア同士を接続させる方式は、2種類に大別される。1つの接続方式は断熱結合であり、伝搬方向に対して、2つの光導波路の両コアが接するように配置し、一方の光導波路コアを、先細りのテーパ形状にするなどしてコア内を伝搬するモードの等価屈折率を徐々に減少させる。このような構成により、もはや閉じ込めきれなくなったモードの光エネルギーが、隣接する他方の光導波路コアへと断熱的に遷移する。もう1つの接続方式は突合せ結合であり、コアどうしの端面を突き合わせて配置し、2つの光導波路の両コアに存在するモードプロファイルの重なり積分でその結合効率が規定される。
【0044】
本開示の光導波路部品100で、第1の光導波路110および第2の光導波路120のいずれもシングルモード光導波路である場合、2種類の光導波路を接続するSSC領域130において、断熱結合および突合せ結合の一方または両方の接続方式を利用する。
【0045】
第2の光導波路120は、第1の光導波路110に比べて大きなMFDを示す。第1の光導波路110および第2の光導波路120を低損失に接続するためには、2種類の光導波路の境界近傍でMFDを整合させることが望ましい。MFDの整合を実現するため、第1の光導波路110のMFDを、第2の光導波路120のMFDへ合わせるように徐々に拡大させる。このMFD拡大機能を実現する構造は問わないが、例えば、図1のSSC領域130のようにSiコアを先細りのテーパ形状104-1とする構造がある。Siコア104のMFDを徐々に拡大させるには、Siコア104内のモードの等価屈折率を徐々に減少させれば良い。SSC領域130のSiコアを、先細りのテーパ形状部分104-1とすることで、第2の光導波路120に近づくにつれ等価屈折率を減少させることができる。Siコア104-1が上下のSiOコア部103-1a、103-1bに挟まれている領域において、テーパ形状のSiコアにより等価屈折率を減少させることで、Siコア内の光エネルギーの一部またはすべてを、第2の光導波路120のSiOコア103へと断熱的に遷移させられる。
【0046】
Siコア104内の光エネルギーの一部は、SiOコア103との断熱結合をしないでSiコア104内を伝搬し、第1の光導波路と第2の光導波路の境界にまで到達することがある。このような場合、第1の光導波路110のSiコア104は境界において第2の光導波路120のSiOコア103と突合せ結合される。Siコア104内で断熱結合をしなかった光エネルギーの一部分は、Siコア104とSiOコア103の中心高さが一致するように光導波路部品100を作製することで効率的に結合できる。2つのコアの中心高さを一致させることにより、モードフィールドの重なり積分で規定される突合せ結合効率を高く保ち、2つの光導波路間で低損失に光エネルギーを結合させることができる。
【0047】
以上詳細に述べたように、実施形態の光導波路部品100によれば、異なる材料の光導波路を共通の単一の基板上にモノリシック集積可能であり、モードフィールドの大きさが異なる2種類の光導波路を低損失に接続する構成を提供できる。上述の図1の実施形態では、2つの光導波路を低損失に結合して、連続した単一の光導波路を構成していたが、異なる材料の複数の光導波路同士を低損失に結合させることもできる。
[第2の実施形態:ピッチ変換]
図3は、第2の実施形態の光導波路部品の構成を示す図である。第2の実施形態の光導波路部品300では、複数の第1の光導波路と、同数の第2の光導波路とを低損失に結合する。複数の第1の光導波路の内の1つの第1の光導波路と、対応する第2の光導波路との間の構造は、図1に示した第1の実施形態の光導波路部品100と同様であり、説明を省略する。
【0048】
第1の実施形態で説明した通り、第1の光導波路のSiコア104では、第2の光導波路と比較して極小断面内に光を閉じ込め可能である。したがって狭い領域に複数のSiコア104のための多くのコアパターンを作成したい場合、コア間ピッチを数μm程度にまで狭めることができる。一方、第1の光導波路より大きいコアサイズを持つ第2の光導波路は、できるだけコア幅を細くした場合でも、少なくとも数μm~10μm角程度のコア断面サイズが必要である。このため、複数の第2の光導波路のSiOコア103を配列する場合に想定されるコア間ピッチは、数10μm~数100μmとなる。
【0049】
図3の光導波路部品300において、複数の第1の光導波路と同数の対応する第2の光導波路の接続を高密度で行う場合、複数のSiコア104と複数のSiOコア103を、同一のコア間ピッチにて形成する必要がある。その際のコア間ピッチは任意であるが、高密度に配線する場合、第2の光導波路の最小コア間ピッチに合わせて、たとえば数10μmとすることが望ましい。
【0050】
一方、第1の光導波路との接続部から離れた、例えば基板上の第2の光導波路の別の端面107では、接続部とは異なるコア間ピッチとする場合がある。光ファイバアレイに接続する場合であれば、光ファイバのコア間ピッチの規格である125μmや250μmに合わせ、第2の光導波路の端面107付近でのSiOコア103のコア間ピッチが決定される。このような場合、第1の光導波路との接続部付近から、接続部から離れた別の端面107まで、第2の光導波路のSiOコア103に対して、導波路間間隔を拡張する。導波路間間隔を拡張する領域108は、直線、曲線、または、直線および曲線の組み合わせを含むパターニングにより構成される。この導波路間間隔を拡張する領域108により、複数の第1の光導波路から第2の光導波路の基板の別の端面107まで、第2の光導波路は滑らかに延長され、光ファイバアレイ106まで光学的に接続することができる。
【0051】
以上、本実施形態によれば、MFDが大きく異なる2種類の光導波路について、複数の光導波路の接続部が配列される場合にも、本開示の接続部の構成で両導波路を低損失に接続する光導波路部品を提供できる。
[第3の実施形態:製造方法]
図4は、本開示の光導波路部品の製造方法のプロセスを説明する図である。本実施形態は、第1の実施形態および第2の実施形態で示した光導波路部品の製造方法であり、作製される光導波路部品の構造については、第1の実施形態および第2の実施形態に記載の通りであるため、説明を省略する。図4の(a)~(e)は、図1の光導波路部品100が作製されるまでステップを順に示している。
【0052】
図4の(a)を参照すると、その上にSiO層を成膜可能な程度に表面が平滑な基板101の上に、SiO層102(第1の層)を形成する。基板101の具体例として、ガラス基板等が挙げられるが、特にSi基板が好適である。SiO層102の形成方法については、形成した層の直上にさらに他の層を形成可能な程に、均一かつ平滑な層を形成できればその方法は問わない。一例を挙げれば、火炎堆積法などのSiO層の成膜方法がある。SiO層102の直上には、SiO層102よりも高い屈折率を有するSiO層203-a(第2の層)を形成する。SiO層203-aの形成にあたっては、GeO、ZrO、HfO、PやBなどを添加することでその屈折率を制御しても良い。SiO層203-aをCMP(Chemical Mechanical Polishing)などの手段により平坦化する工程を経たのち、SiO層203-aの直上にSi層204(第3の層)を形成し、平坦化する。
【0053】
ここで図1を再び参照すれば、上述のSiO層203-aが、図1の2つの光導波路に渡った4つのコア部103-1a、103-1b、103-2a、103-2bのSiO領域の内の、下側の103-1a、103-2aのための層となる。
【0054】
Si層204の形成にあたっては、アモルファスシリコンのスパッタリングなどで製膜をしても良いし、別のSi基板を基板101の上面(SiO層203-a上)に貼り合わせた後に、所望のSi膜厚を得ても良い。(a)の状態は、一般的なSOI基板において、表層のSi層の下に単層のSiO層すなわちBOX(Buried OXide)層を形成する代わりに、屈折率の異なる2層のSiO層、すなわちSiO層102およびSiO層203-aが形成されたものと言える。
【0055】
次に図4の(b)を参照すると、Si層204を、光導波路コアとして光を伝搬させることができるように加工して、第1の光導波路のSiコア104を作製する。図4の(b)には示されていないが、Siコア104の形成と併せて、Siコア104の先のSiフォトニクスの光回路を形成しても良い。
【0056】
さらに図4の(c)を参照すると、SiO層203-aおよびSiコア104の直上に、SiO層203-b(第4の層)を形成する。このSiO層203-bは、SiO層203-aと同程度の屈折率を有する。図1を再び参照すれば、上述のSiO層203-bが、図1の2つの光導波路に渡った4つのコア部103-1a、103-1b、103-2a、103-2bのSiO領域の内、上側の103-1b、103-2bのための層となる。
【0057】
次に図4の(d)を参照すると、SiO層203-aとSiO層203-bを一括して加工して、第2の光導波路のコアとして光を伝搬させることができるSiOコア103(コア部103-2a、103-2b)を得る。同時に第1の光導波路の「クラッド」としてコア部103-1a、103-1bも形成される。この段階で、すでに加工されているSiコア104の幅に比べて、一括加工されるSiOコア103の幅が広いことが望ましい。これは、SiOコア103の加工時に、既に加工されているSiコア104の側壁に影響を与えないためである。
【0058】
最後に図4の(e)を参照すると、SiOコア103よりも低い屈折率を有するSiO層105(第5の層)を形成することで、光導波路部品100を作製することができる。
【0059】
上述のように本発明は、異なるモードフィールド径(MFD)を有する第1の光導波路110および第2の光導波路120を含む光導波路部品100の製造方法であって、基板101上に、下側クラッドとなる第1の層102を形成するステップと、前記第1の層よりも高い屈折率を有する材料により、前記第2の光導波路の下側コアのための第2の層203-aを形成するステップと、前記第2の層よりもさらに高い屈折率を有する材料により、前記第1の光導波路のコアのための第3の層204を形成するステップと、前記第3の層を加工して、前記第1の光導波路のコア104を形成するステップと、前記第2の層と同程度の屈折率を有する材料により、前記第2の光導波路の上側コアのための第4の層203-bを形成するステップと、前記第2の層および前記第4の層を一括して加工して、前記第2の光導波路のコア103を形成するステップと、前記第2の層および前記第4の層よりも低い屈折率を有する材料により、上側クラッドとなる第5の層103を形成するステップとを備える光導波路部品の製造方法として実施できる。
【0060】
上述のように、本実施形態によれば、第1の実施形態および第2の実施形態に示した光導波路部品の簡単な製造方法を提供することができる。
【0061】
以上詳細に説明したように、第1、第2の実施形態の光導波路部品および第3の実施形態の光導波路部品の製造方法によれば、一般的な積層工程による光導波路部品作製プロセスと同等の簡単なプロセスで、屈折率の異なるコアを有する2種類の光導波路を低損失に接続できる。特に、2つの光導波路のコア中心高さが互いに一致するような構造とすることで、より低損失に接続することができる。本発明により、MFDの大きく異なる光導波路同士を簡易に接続できる光導波路部品を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、光通信を用いる装置に利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5