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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】光導波路部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/122 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
G02B6/122 311
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022544919
(86)(22)【出願日】2020-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2020031935
(87)【国際公開番号】W WO2022044102
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉田 優生
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 賢哉
(72)【発明者】
【氏名】森本 祥江
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-538426(JP,A)
【文献】特開2004-258610(JP,A)
【文献】特開2003-035833(JP,A)
【文献】特開平05-249331(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0297093(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に、異なる材料による光導波路を光接続する光導波路部品であって、
前記基板の上に形成されたアンダークラッド層と、
第1の材料第1のコアとする光導波路を有する第1の光回路と、
前記第1の材料より低い屈折率の第2の材料第2のコアとする光導波路を有する第2の光回路と、
前記第1のコアと前記第2のコアの光接続部とを備え、
前記アンダークラッド層は、前記第1の光回路における高位面および前記第2の光回路における低位面からなる段差を有しており、
記第2のコアは、光導波路の長さ方向に垂直な断面において、前記第1のコアの領域が、前記第2のコアの領域に内包されるよう、前記第1の光回路まで延長して構成され、
前記光接続部において、前記延長された第2のコアの高さが前記第1の光回路から前記第2の光回路に向かって低くなる縦テーパ構造を有し、前記縦テーパ構造に対応して、前記高位面から連続して形成され、前記第2の光回路に向かって徐々に断面積を減らし、幅が狭くなるテーパ構造を有する前記アンダークラッド層の突出部を有し、
前記第1のコアは、前記突出部の上面において前記突出部の途中まで延長して形成されていること特徴とする光導波路部品。
【請求項2】
記縦テーパ構造に対応して、スポットサイズ変換器が構成されていることを特徴とする請求項に記載の光導波路部品。
【請求項3】
前記突出部の幅は、前記第1のコアの幅よりも広いことを特徴とする請求項1または2に記載の光導波路部品。
【請求項4】
前記第1のコアの中心高さと、前記第2のコアの中心高さが一致していることを特徴とする請求項1乃至いずれかに記載の光導波路部品。
【請求項5】
前記アンダークラッド層の材料はSiO2であり、
前記第1の材料は、Si、SiNまたはSiONのいずれかであり、
前記第2の材料は、SiO2、SiOXまたはポリマーのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の光導波路部品。
【請求項6】
前記第1の光回路まで延長して構成された前記第2のコアは、前記第1の光回路のオーバクラッドとして機能することを特徴とする請求項1に記載の光導波路部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信システムに応用可能な光導波路部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ファイバ伝送の普及に伴い、多数の光回路を高密度に集積する技術が求められている。そのような光回路の高密度集積技術の1つとして、シリコンフォトニクス(以下、SiPh)が知られている。SiPhでは、光導波路のコア・クラッド間の比屈折率差が大きいため、曲げ半径の小さい光回路を構成可能で、非常に小型な光回路を実現することができる。伝送装置内には、光と電気の信号を変換するフォトダイオード(PD:Photo Diode)や、光信号の強度や位相の変調を行う光変調器などの光機能素子も必要になる。これらの光機能素子についても、Siによる半導体機能を用いることで、PDや光変調器を実現し、光回路に集積することも可能である。
【0003】
上述のSiPh回路は、通信容量の拡大に向けて、光信号処理を行う光導波路と光電変換を行うPD等の光デバイスを集積した高機能な光電子集積型デバイスに好適である。SiPhを用いて光回路機能と光機能素子を集積することで光信号の送受信機能を小型に実現可能になり、例えばSiPhを用いた小型の光送受信モジュールが開発されている(特許文献1)。
【0004】
SiPh回路は小型で光―電気変換や変調などの様々な光機能を実現できるメリットがある一方で、コア・クラッド間の比屈折率差が大きいため、作製誤差に起因した問題が起こり得る。具体的には、マッハツェンダ光干渉計やアレイ導波路グレーティング(AWG:Arrayed Waveguide Grating)などの波長合分波器においては、わずかな作製誤差で大きな位相誤差を生じさせてしまい光学特性を劣化させてしまう。またSiPh回路では、伝搬する光のモードフィールドが小さいため、モードフィールドの大きい光ファイバとの接続で損失が大きく、伝送特性を劣化させる問題もある。SiPhは光回路機能の精度や光ファイバとの接続性の面では上述の問題があり、更に高性能な光回路が求められていた。
【0005】
上述のSiPh回路の欠点を補う別の光回路として石英系平面光波回路(PLC:Planar Lightwave Circuit)が知られている。PLCは低損失、高信頼性、高い設計自由度などの優れた特徴を持つ導波路型光デバイスであり、実際に光通信伝送システムの伝送装置には合分波器、分岐・結合器等の機能を集積したPLCが搭載されている。PLCでは位相誤差が小さいため、高精度で大規模な波長合分波が可能であり(特許文献1)、偏波依存性や温度依存性も小さく、SiPh回路には向かない光回路機能を高性能に実現できる。またPLCでは光ファイバと同じ材料系で光導波路が構成されているため、伝搬損失が小さく、モードフィールドを光ファイバに近づけることで、光ファイバとの低損失結合が実現できる。上述のような高機能なSiPh回路および高性能なPLCのそれぞれの特長を活かし、これらを組み合わせ、集積することで、より小型で高機能な光デバイスが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6290742号 明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、SiPh回路およびPLCを結合する場合のように、異種材料からなる光回路同士を結合する際の結合損失が依然として問題であった。別々に作製された光回路同士を結合するには、それぞれの入出力導波路を突合せて調心し固定する「突合せ結合」が必要である。
【0008】
図1は、SiPh回路とPLCを突き合わせて結合する光回路の構成を示す図である。図1の(a)は「突合せ結合」を含む光回路の基板面(x-y面)を見た上面図を、(b)は結合する光導波路(Ib-Ib線)を通り基板面に垂直な面(x-z面)で切った断面図である。図1のような異種材料からなる光回路同士を突合せ結合する形態は、「ハイブリッド集積」と呼ばれている。図1の(a)を参照すれば、光回路はSiPh回路1とPLC2からなり、両者は接着剤14を介して固定されている。SiPh回路1では、光導波路4は基板7の上に作成されたアンダークラッド層8と、オーバークラッド層9との間に構成されている。光回路1の光導波路は、角型の通常の光導波路4aと、先端のスポットサイズ変換器(SSC)としてのテーパ部4bからなっている。PLC2では、光導波路5aは、基板10の上に作成されたアンダークラッド層11と、オーバークラッド層12の間に構成されている。
【0009】
図1の「突合せ結合」による光回路は、別々に作製されたSiPh回路1とPLC2を接着剤14により固定しているため、光導波路間の距離を完全にゼロにすることは、加工誤差や実装誤差により難しい。そのため一方の光導波路から光が空間(接着剤14)に出射され、そのビームが対となる他方の光導波路に入射されることで光結合(光接続とも言う)が行われる。光が空間に出射する際、回折により出射ビームが拡がるため、出射ビームと入力側導波路の伝搬光のモードフィールドとの重なりが減少して損失が発生する。さらに、光導波路端面と空間との屈折率差により反射が生じて損失が発生するため、SiPh回路1およびPLC2の間で適切な間隔を持って高精度にコアを調心して、両者を固定することが必要になる。このように、ハイブリッド集積のアプローチでは、それぞれの基板上の光導波路を突合せ結合する必要があり、アライメントの煩雑さや結合部の接着剤厚さによる回折損失の問題があった。
【0010】
上述のハイブリッド集積に対して、共通の単一の基板上に異なる材料からなる光導波路を集積する「モノリシック集積」のアプローチが知られている。SiPh回路およびPLCはいずれもSi基板上に形成する光回路であって、基板の材料が同じであり、SOI(Silicon On Insulator)基板上にSiコアとSiOコアを形成することで、SiPh回路およびPLCの両方を同時に集積することができる。
【0011】
図2は、異なる光導波路の光回路をモノリシック集積する工程を概念的に説明する図である。図2では作製工程の説明に着目しているため、異なる光導波路を接続した構成は示しておらず、光導波路の長さ方向に垂直な断面のみを示している。ハイブリッド集積による光回路の作製工程では、まず第1工程でSOI基板13を準備する。SOI基板13は、Si基板7の上に埋め込み酸化膜(BOX:Buried OXide)のBOX層8と最上層のSi層4を備えている。次の第2工程で、Si層4を加工して、SiPh回路1の光導波路のSiコア4aを作成する。第3工程で、Siコア4aを含むBOX層8の全面にSiO膜5を堆積させる。次に第4工程で、SiO膜5を加工して、PLC2の光導波路コアとなるSiOコア5aを作成する。さらに第5工程で、オーバークラッド層9を堆積させる。最後の第6工程で、配線パターンを作成するためにSiPh回路1の必要な加工箇所に対してオーバークラッド層9を除去する。
【0012】
図2のモノリシック集積の一連の工程のフォトリソグラフィープロセスによって、Siコア4aを含むSiPh回路1と、SiOコア5aを含むPLC2の異種材料の光導波路からなる2つの光回路を、1つのウェハ(SIO基板)上へ集積できる。モノリシック集積では、図1に示したハイブリッド集積の「突合せ結合」による光回路における煩雑なアライメントも、接着剤による接続も不要になり、SiPh回路1とPLC2との間隔を開けることなく接続することができる。
【0013】
しかしながら、図2に示したモノリシック集積による光回路は、ハイブリッド集積における光回路の問題を解消するものの、依然として光接続損失の問題が残っていた。具体的には、異種材料からなる2つの光導波路間での伝搬光のモードフィールド径(MFD:Mode Field Diameter)の不整合、および、2つの光導波路間のコア高さの不一致の問題である。
【0014】
図3は、モノリシック集積した光回路の光導波路中心ずれを説明する図である。図1と同様に図3の(a)はモノリシック集積された光回路の基板面(x-y面)を見た上面図を、(b)は光導波路(IIIb-IIIb線)を通り基板面に垂直な面(x-z面)で切った断面図である。図3のモノリシック集積による光回路は、図2で説明した一連の工程で作製されたものであって、(b)の断面図の構成は図2の工程で作製される2つの光導波路の構成に対応している。図2の作製工程からも理解できるように、基板に垂直方向(z軸方向)において、Siコア4とSiOコア5aの中心高さはずれており、2つのコア4、5aを伝搬する光のモードフィールド中心もずれて、光接続損失が発生する。
【0015】
図4は、モノリシック集積における光導波路の位置ずれを解消する構成を示した図である。図1および図3と同様に、図4の(a)はモノリシック集積された光回路の基板面(x-y面)を見た上面図を、(b)は光導波路(IVb-IVb線)を通り基板面に垂直な面(x-z面)で切った断面図である。図4の構成では、PLC2側でBOX層8のアンダークラッドの上面を削り込んで、高さを下げたアンダークラッド8-2とすることで、2つのコア4、5aの中心高さを一致させることができる。この構成でも、Siコア4が途切れるSiPh回路1とPLC2の境界面におけるMFDの不整合は依然として残り、光接続損失となる。
【0016】
上述のように、モノリシック集積を使って、Siをコアとする光回路とSiOをコアとする光回路との間で光信号の入出力を行う際には、光接続損失が生じる問題が残っていた。異なる材料をコアとする様々な光回路機能を共通の単一の基板上に集積する異種材料の光集積に適用可能で、低損失な光接続を簡単な構造と作製プロセスで実現することが求められている。
【0017】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、目的とするところは、低損失な光接続を簡単な構造と製法で実現する光導波路部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の1つの実施態様は、基板の上に、異なる材料による光導波路を光接続する光導波路部品であって、第1の材料による第1のコアとする光導波路を有する第1の光回路と、前記第1の材料より低い屈折率を有する第2の材料による第2のコアとする光導波路を有する第2の光回路と、前記第1のコアと前記第2のコアの光接続部とを備え、光導波路の長さ方向に垂直な断面において、前記第2のコアは、前記第1のコアの領域が、前記第2のコアの領域に内包されるよう、前記第1の光回路まで延長して構成され、前記光接続部において、前記延長された第2のコアの高さが前記第1の光回路から前記第2の光回路に向かって低くなる縦テーパ構造を有すること特徴とする光導波路部品である。
【0019】
本発明の別の実施態様は、異なる材料による光導波路を光接続する光導波路部品の製造方法であって、アンダークラッド層を備えた基板の上に、第1の材料による第1のコアを形成するステップと、前記アンダークラッド層を加工して、第1の光回路に対応する高位面、第2の光回路に対応する低位面、および、前記高位面から前記第2の光回路に向かい前記第1のコアに沿って延びた突出部を形成するステップと、前記加工されたアンダークラッド層の上に、前記第1の材料より低い屈折率を有する第2の材料のコア層を堆積させるステップと、前記堆積したコア層を加工して、前記第1の光回路から前記第2の光回路に渡って、第2のコアを形成するステップであって、前記第2のコアは、光導波路の長さ方向に垂直な断面において、前記第1のコアの領域が前記第2のコアの領域に内包されるよう構成され、前記第2のコアの高さが前記第1の光回路から前記第2の光回路に向かって低くなる縦テーパ構造を形成する、ステップとを備える製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
低損失な光接続を簡単な構造で実現する光導波路部品およびその製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】SiPhとPLCを突き合わせて結合する光回路の構成を示す図である。
図2】異なる光回路をモノリシック集積する工程を概念的に説明する図である。
図3】モノリシック集積した光回路の光導波路中心ずれを説明する図である。
図4】モノリシック集積における導波路位置ずれを解消する構成の図である。
図5】本開示の異なる光導波路を結合した光導波路部品の構成を示す図である。
図6】本開示の光導波路部品を含む光回路の実施例1の構成を示す図である。
図7】実施例1の光導波路部品の光接続部の上面、側面の構成を示す図である。
図8】実施例1の光導波路部品の光接続部の各部の断面の構成を示す図である。
図9】本開示の光導波路部品を含む光回路の実施例2の構成を示す図である。
図10】実施例2の光導波路部品の上面、側面の構成を示す図である。
図11】実施例2の光導波路部品の各部の断面の構成を示す図である。
図12】実施例2の別の光回路の構成を示す図である。
図13】本開示の光導波路部品の突出部の構造の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示の光導波路部品は、異なる材料で構成される2つ光導波路を低損失で光接続する構成を提供する。第1の材料によるコアを含む第1の光回路と、第2の材料によるコアを含む第2の光回路が、単一の基板上に構成される。本開示の光導波路部品は、2つの光回路の間に光接続部を備え、2つの光導波路間で、一方の光導波路のコア断面領域が他方の光導波路のコア断面領域に内包される二重構造を持っている。
【0023】
光接続部には、アンダークラッドの高位面から、低位面に向かって第1のコアに沿って延びたアンダークラッドの突出部が設けられ、突出部の幅が第2の光回路に向かって徐々に狭まる構成を持つ。光接続部は、第2の光回路から延長して形成された第2のコア領域が第1のコアを覆っており、その延長された第2のコア領域の高さが、第2の光回路に向かって徐々に低くなる縦テーパ構造を持つ。光接続部における断面では、アンダークラッドの突出部の面積が徐々に狭くなり、第2の光回路から延長された第2のコア領域が占める面積比は徐々に大きくなる。光接続部において断面構造が滑らかに変化することで、MFDの不整合、MF中心のずれが緩和される。以下、図面とともに本開示の光導波路部品の詳細な構成およびその製造方法について説明する。
【0024】
図5は、本開示の異なる光導波路を結合した光導波路部品の構成を示した図である。図5の(a)は光導波路部品100の基板面(x-y面)を見た上面図であり、(b)は2本の光導波路(Vb-Vb線)の中心を通る断面(x-z面)の側面図であり、(c)は光導波路の各部で、長さ方向に垂直な面(y-z面)切った断面図である。光導波路部品100は、共通の基板7の上にSiをコア4とする第1の光回路(SiPh回路1)とSiOをコア5とする第2の光回路(PLC2)が形成され、2つの光回路の間で光信号の入出力を行う。2つの光回路1、2の間には、異なる材料の光導波路のコアの高さを徐々に一致させる光接続部3を備えている。
【0025】
図1の(a)を参照すると、第1の光回路1の領域と、第2の光回路2の領域は、異なる高さのアンダークラッド層8-1、8-2を持っている。異なる高さのアンダークラッド層8-1、8-2は、図1の(b)の側面図および図1の(c)のA-A´断面、D-D´断面からも理解できるだろう。この点では、図4に示したモノリシック集積による段差を設けたアンダークラッド層の構成と類似している。
【0026】
従来技術の光回路との相違点は、光接続部3において、第1の光回路1のアンダークラッド8-1の「高い面」から、第2の光回路2のアンダークラッド「8-2」の低い面に向かって、Siコア4aに沿って延長して形成された突出部8-3を備えていることである。以下、アンダークラッド8-1の高い面を「高位面」、アンダークラッド8-2の低い面を「低位面」と呼ぶ。さらに、アンダークラッドの突出部8-3の幅は、第2の光回路2に向かって徐々に狭まる構成を持っている。光接続部3において、この突出部8-3の上面の途中までSiコア4bが連続して形成され、光導波路の長さ方向に垂直な断面で見て、第1の光回路1のSiコア4a、4bを内包するよう第2の光回路2のSiOコア5-2が構成されている。
【0027】
さらに、光接続部3の上述のアンダークラッドの突出部8-3に対応して、突出部8-3を覆うように特徴的な縦テーパ構造5-3が形成される。SiOの縦テーパ構造5-3は、第2の光回路2のSiOコア5-2から連続して、第1の光回路1のSiO領域5-1とともに、「一体のもの」として形成される。すなわち、SiO領域5-1、縦テーパ構造5-3およびSiOコア5-2は、共通のSiO膜の堆積工程と、光導波路の作製工程によって同時に形成される。したがって、Siコア4a、4bに沿って形成された上述のSiO膜による3つの領域5-1、5-2、5―3は、図1の(a)の上面図では、単一のSiO領域5と示されている。図1の(c)の各部の断面図を参照すれば、SiO領域5は、第1の光回路1のA-A´断面のSiO領域5-1から、B-B´断面、C-C´断面の縦テーパ構造5-3を経て、第2の光回路2のD-D´断面のSiOコア5-2まで、徐々にその形状と高さを変化させている。同時に、SiO領域5全体を覆うオーバークラッド9の最上部の形状と高さが変化していることに着目されたい。
【0028】
上述の縦テーパ構造5-3は、突出部8-3が第2の光回路2に向かって徐々に幅が狭まる構造を持っている。この縦テーパ構造は、薄膜の堆積プロセス上において、狭い領域にSiO膜を堆積させるほど、その高さが低くなるという効果を利用している。第1の光回路1の領域では、Siコア4を取り囲む様にSiO領域5-1が形成されている。このiO領域5-1は、第2の光回路2におけるSiOコア5-2から連続して一体に作製されたものであるが、第1の光回路1の光導波路では「クラッド」として機能する点に留意されたい。言い換えると、第2の光回路2のコアが、第1の光回路1においてはクラッドとして機能している。このことから、光導波路の長さ方向に垂直な断面で見ると、第1の光回路1の導波路コア4の断面領域は、第2の光回路2の導波路コア5-2の断面領域に内包されていることがわかる。
【0029】
図5の(b)に示されたSiOコア5-2から延長して形成された光接続部3の縦テーパ構造5-3によって、Siコア4と、SiOコア5-2との間でMFの中心を近づけるように光信号を伝搬させ、結合損失を減らすことができる。以下、様々な視点から、本開示の異なる光導波路を結合した光導波路部品100の構成と、結合損失を低減の仕組みおよび効果を説明してゆく。
【0030】
図5で概要を説明したように、光導波路部品100は、共通の単一の基板7の上に、第1のコア4a(Si)を有する第1の光導波路と、第1のコアより屈折率の低い材料による第2の5-2コア(SiO)を有する第2の光導波路をモノリシック集積している。ここで視点を変えて、2つ光回路1、2の間の光接続部3の構成を、光導波路のコアの形態の遷移から見てみる。第1の光導波路と第2の光導波路とを光接続する光接続部3において、第1のコア4aの延長上には、第2のコア5-2および第1のコア4bが重なる領域(重複領域:B-B´断面)と、重複領域に続けて、第1のコア4bが終わり第2のコア5-2のみからなる領域(非重複領域:C-C´断面)が在る。上述の縦テーパ構造5-3は、重複領域と非重複領域に渡って構成されている。縦テーパ構造5-3は、基板7の基板面に垂直方向(z方向)において基板上面を基準として、光接続部3の重複領域側から非重複領域側に向かって、第2のコア5-2の高さが徐々に低くなっている。
【0031】
通常、SiPh回路1およびPLC2の間の光接続部3では、MFDの大きいPLC2側のMFDに合わせてSiPh回路1のMFDをスポットサイズ変換器(SSC)で拡大し整合する。SSC構造は、一例を挙げれば、従来技術の図4でも示したように、矩形形状のSiコア4aから先端に向けて幅が狭まる細テーパのSiコア4bで実現することができる。
【0032】
本開示の光導波路部品100では、Siコアの細テーパ構造に加えて、基板7の直上にあるアンダークラッド8-1、8-2の上面に段差が設けられる。この段差を挟んで、Siコア4aに沿ってアンダークラッドの高位面側から低位面側に向かって、高位面から延長して形成された突出部8-3が構成される。突出部8-3の幅は、PLC2側に向かって徐々に狭まる水平方向(y方向)のテーパ構造を備える。Siコアの細テーパ構造と対応した突出部8-3のテーパ構造によって、Siコアは、SiPh回路1からPLC2に向かって、徐々に高さを下げながらSiO膜によって覆われる。Siコアの細テーパ構造および突出部8-3のテーパ構造によって、光接続部3の縦テーパ構造5-3が形成される。第1の光導波路のクラッドとして機能するSiOコア5-1、光接続部3の縦テーパ構造5-3、第2の光導波路のSiOコア5-2が連続的に一体に滑らかに構成される。
【0033】
上述の縦テーパ構造5-3は、Siコア4bのテーパ構造でMFDが拡大された伝搬光の基板上方向への遷移を抑制しつつ、徐々にSiOコア5-2の第2の光導波路の伝搬モードに遷移させることができる。また導波路長さ方向に垂直な断面において、Siコア4aおよびSiOコア5-2の領域が重なるため、モードの不整合を減らすこともできる。結果として、SiPh回路1およびPLC2の光接続を簡単かつ低損失に実現することができる。
【0034】
ここで図1の光導波路部品100の作製手順を簡単に述べれば、図2で説明したモノリシック集積の光回路の作製手順と概ね同じである。一般的にPLCでは、SiまたはSiOの基板上に、SiO薄膜が、アンダークラッドとして10~20μm、コアとして3~10μm、オーバークラッドとして約10~20μm堆積されている。図5の本開示の光導波路部品100では、基板7、アンダークラッド層8-1、8-2およびSiコア4のために、SOI基板13を利用できる。アンダークラッド層をなすBOX層のSiO厚さは10~20μm、SOI層であるSi層の厚さはコアの光導波路の設計に応じて0.1~0.5μmとするのが好ましい。このようなSOI基板13を用い、図2に示した工程によって、SiPh回路1のSiコア4a、4bの加工を行う。次に、アンダークラッド層8-1、8-2の段差、および突出部8-3を形成する。その後、PLC2のSiOコアとなるSiO層を堆積し、さらにSiOコア5-2を含むSiO領域5を加工する。最後に、オーバークラッドとなるSiO層9を堆積することで、Siコア4による第1の光回路1と、SiOコア5-2による第2の光回路2をSOI基板13のウェハ上に集積する。
【0035】
SiPh回路1およびPLC2の光接続部3では、MFDを整合するため、SiPh回路側の光の閉じ込め効果を徐々に減らしてMFを拡大する様々なSSC構造を利用できる。図5のようにSiコアの幅を細テーパ4bで狭める導波路の他、セグメント化したSi導波路等の導波路構造が設けることもできる。同様に、アンダークラッドの突出部8-3の形状におけるテーパ構造についても、様々なバリエーションが可能である。図5の突出部8-3の例では、図5の(c)の断面図から明らかなように、突出部8-3の光導波路の幅方向(y軸方向)について、徐々に狭まる単純な構造としている。突出部8-3のアンダークラッドの矩形の断面積が第2の光回路2に向かって徐々に小さくなることで、SiO層がその高さを下げながら覆い、縦テーパ5―3が形成される。途中までSiコア4bを作製しながら、突出部8-3のアンダークラッドの実効的な断面積(密度または占有率)を第2の光回路に向かって徐々に小さくできれば、突出部8-3の構成は様々な形態を採ることができる。例えば、突出部の両脇をスロープ状にして徐々に下げたり、階段状にして下げたりできる。突出部の他の具体的な構成は、最後に図13において変形例として簡単に説明する。
【0036】
PLC2のSiOコア5-2は、上述のアンダークラッドの段差および突出部を形成した後で、SiO層をウェハ上に堆積してエッチング等で加工することで形成される。SiPh回路1のSiコア4a上を覆って重なるようにSiO堆積層を加工することで、SiOコア5はSiPh回路との境界を越えて、SiPh回路側のSiコア4aに沿って連続して構成されることになる。このとき堆積されるSiO層は、PLC2およびSiPh回路で、同じ厚さになる。光接続部3では、SiO層は、突出部8-3のテーパ構造によりその幅が徐々に狭くなるにつれてSiO層の高さが低くなるように堆積される。このSiO層の高さの変化は、SiOを堆積する際に、大きい領域の凸部と比べて、小さい領域の凸部においては堆積高さが減少する効果が反映されているためである。
【0037】
図5の(c)を参照すれば、アンダークラッド8-2の低位面の高さを基準としたSiOコア上面の高さは、SiPh回路1側(断面A-A´)がPLC2側(断面D-D´)よりも高くなる。その中間では、突出部8-3の幅方向のテーパにより、突出部8-3の幅の広いSiPh回路1側から幅の狭いPLC2側にかけて、堆積されたSiOの高さ位置が徐々に低くなる(断面B-B´→ 断面C-C´)。光接続部3で、SiPh回路1側からPLC2側に向かってSiO層の高さが徐々に低くなり、異なる高さのSiO層5-1、5-2が縦テーパ構造5-3によって接続された構造となる。
【0038】
光接続部3では、Siコアの細テーパ4bのSSC構造により光の閉じ込め効果が徐々に弱くなり、同時に縦テーパ構造5-3において、Siコア上のSiOコアに結合し始める。PLC2側に近づくにつれSiOコア高さが徐々に低くなり、アンダークラッドの突出部8-3に対してSiOコアの占有率が増える。逆に突出部8-3は、第2の光回路(PLC2)に向かって徐々に断面積を減らしている。Siコアの伝搬光は、Siコアの上方のSiOコアと、突出部8-3の両側面のSiOコアとにより形成されるモードに徐々に結合する。光接続部3は、その断面において2つの構成要素(アンダークラッド8-3とSiOコア5-3)の比率が徐々に入れ替わり、MF中心の基板垂直方向(z軸)の変化が小さくなる構造となっている。光接続部3において、モード結合しつつ遷移的に突合せ結合が行われて、MF中心のずれやMFの不整合による損失を減らすことができる。同時に、基板垂直方向におけるSiコアの中心とSiOコアの中心を滑らかに一致させることも可能となっている。
【0039】
突出部8-3および縦テーパ構造5-3を有する副次的効果として、本開示の光導波路部品100は、光接続損失変動についての、Siコア幅の製造誤差に対するトレランス拡大にも寄与している。光接続部3において、Siコア4bとSiOコア5-2から延長したSiO層が重複していことで、コア間のモード遷移により光接続するアディアバティック(断熱)光結合構造と比較して、Siコア幅のトレランスが大きくて済む。例としてSiコア幅が製造誤差によりも太く仕上がった場合、Siコアによる光の閉じ込め効果が強くなる。このため、Siコアよりも屈折率の低いSiOコアが近接していても、両導波路間のモード遷移が起きにくくなる。そのため、アディアバティック結合の構造では設計通りにモード遷移が行われない。結果として光接続部のMFとSiPhまたはPLC側の光導波路とのMFとの間で、MF中心の不整合が生じ、光接続損失が生じてしまう。
【0040】
一方で本開示の光導波路部品100では、Siコア4bは、PLC2側に向かって突出部8-3および対応する縦テーパ構造5-3によって徐々にSiO層に覆われる。この構造では、SiコアによりなるMFとSiOコアによりなるMFの中心が近くなっており、Siコアによる光の閉じ込めが強い場合でもMF中心の不整合による光接続損失が低減される。そのため、Siコア幅の製造誤差にともなう光接続損失の変動を抑え、トレランスの拡大につながっている。
【0041】
アンダークラッド8-2の低位面からの、基板垂直方向(z軸)の突出部8-3の高さは、SiOコア厚さの半分からSiコア厚さの半分を引いた値に設定することが望ましい。このように突出部8-3の高さを設定することによって、Siコア4a、4bを伝搬する光のMF中心とSiOコア5-2を伝搬するMF中心が一致する。
【0042】
Siコアの細テーパ4bによるSSC構造の先端で突出部8-3の構造が終わると、細テーパ4bの先端前後でSiOコアの高さが大きく変化してしまう。急激なSiOコア高さの変化を避けるため、突出部8-3は、Siコアの細テーパ4bの先端よりもさらにPLC2側に延びた非重複領域を備え、非重複領域の幅がテーパ状に狭くなるのが望ましい。図5の(a)に示した突出部8-3は、重複領域および非重複領域が連続して一体となっており、全体が単純なテーパ形状となっている。重複領域および非重複領域は、Siコアの終点の前後を便宜的に区別して呼んでいるものであって、突出部8-3の導波路長さ方向の途中でSiコアが終わっていること意味している。
【0043】
また、突出部8-3の幅がSiコア4a、4bと同程度の場合、Siコアの特に側面が突出部8-3の加工時に露出して、面荒れ等の損傷が生じ伝搬特性に影響を及ぼす恐れがある。基板水平方向における突出部8-3の幅はSiコア4a、4bの幅より大きいことが望ましく、これにより突出部8-3の加工時のSiコアへの損傷を抑えられる。
【0044】
上述の説明では、第1の光回路の光導波路のSiコア4と、第2の光回路の光導波路のSiOコア5-2を、共通の単一の基板上で光接続する構造を例に、光接続損失を抑える効果を述べてきた。しかしながら、本開示の光導波路部品100の構成による効果は、特定の材料だけに限定されない。屈折率の高い第1の材料による第1のコアとしてSi、SiN、SiONを用い、第1の材料よりも屈折率の低い第2の材料の第2のコアとしてSiO、SiO、ポリマー等の材料を用いた場合でも、同様の光接続損失を抑える効果を実現できる。
【0045】
本発明は、異なる材料による光導波路を光接続する光導波路部品の製造方法の側面も持っている。以下の製造方法によって、第1の光回路の光導波路と第2の光回路の光導波路とを光接続する光導波路部品の構造が作製される。製造方法の概要を述べれば、以下の工程から構成される。
【0046】
第1の工程は、アンダークラッド層を備えた基板13の上に、第1の材料による第1のコア4a、4bを形成するステップである。同時に、光接続部3における第1のコアのテーパ構造も形成される。第1のコアは、Siコアであり得る。また基板13は、SOI基板を使用することができる。
【0047】
第2の工程は、アンダークラッド層を加工して、第1の光回路1に対応するアンダークラッド8-1の高位面、第2の光回路2に対応するアンダークラッド8-2の低位面、および、高位面から第2の光回路に向かって第1のコア4bに沿って延びた突出部8-3を形成するステップである。この時、アンダークラッドの段差構造と、突出部8-3のテーパ構造が形成される。後述するようなより複雑な構造の突出部の場合は、別の工程が追加されることもある。
【0048】
第3の工程は、加工されたアンダークラッド層の上に、第1の材料より低い屈折率を有する第2の材料のコア層を堆積させるステップである。第2の材料は、例えばSiO膜であり得る。この工程で、後に縦テーパ構造となる場所において、コア層の高さが第2の光回路に向かって徐々に低くなる構造が形成される。この構造は、第2の材料のコア層を堆積する際に、大きい領域の凸部と比べて、小さい領域の凸部においては堆積高さが減少する効果によるものである。
【0049】
第4の工程は、前記堆積したコア層を加工して、第1の光回路1から第2の光回路2に渡って、第2のコア5-1、5-3、5-2を形成するステップであって、この第2のコアは、光導波路の長さ方向に垂直な断面において、第1のコアの領域が第2のコアの領域に内包されるよう構成され、さらに第2のコアの高さが第1の光回路1から第2の光回路2に向かって低くなる縦テーパ構造5-3を形成する、ステップである。この工程で、アンダークラッドの突出部8-3に対応した第2のコアによる縦テーパ構造5-3が形成される。
【0050】
最後に、第2のコアとアンダークラッド全体を覆う、オーバークラッド層9を形成して、光接続部3を含む光導波路部品を作製される。
【0051】
上述のように、本開示の光導波路部品は、SOI基板を用いて、SiPh回路1およびPLC2を1つの基板上にモノリシック集積する。Si光導波路とSiO光導波路の光接続部において、アンダークラッドであるSiOからなるBOX層に、高位面および低位面を有する段差を設ける。さらに段差の高位面側からSi導波路に沿って低位面側へアンダークラッドの突出部を形成し、Si光導波路からSiO光導波路にかけて突出部の幅方向テーパを設ける。光接続部では、突出部の幅方向のテーパに対応して、光接続部の上に堆積されるSiO膜の基板厚さ方向の高さが徐々に低くなる縦テーパ構造がさらに形成される。
【0052】
突出部に対応した縦テーパ構造によって、SiOコアの重心を徐々にSiコアの中心に近づけることが可能となる。光接続部におけるSi光導波路を伝搬する光のMF中心とSiO光導波路を伝搬する光のMF中心のずれを抑え、MF中心の不整合による損失を減らすことができる。同時に、Siコアが徐々SiOコアに覆われることでSi光導波路からSiO光導波路へのMFD変換を低損失に実現することができる。光接続部3の構成を備えることによって、1つの基板上で、低損失で高精度な光接続を小型に実現する光導波路部品を提供できる。以下、図5の本発明の光導波路部品の構成に基づいた、さらに具体的な光部品の実施例について説明する。
【実施例1】
【0053】
図6は、本開示の光導波路部品を含む光回路の実施例1の構成を示す図である。図6の光回路20は、Siコアからなる信号光の複数の入力用光導波路24と、対応するSiOコアからなる信号光の複数の出力用導波路25、および光接続部23で構成される。このような光回路20を用いて、光接続部23における光接続損失を評価し、光接続損失の低減の効果を検証した。最初に、光回路20の各部の構造を示す。
【0054】
光回路20となる図6のチップは、サイズが縦5mm、横10mmで、SiPh回路のSi光導波路24とPLCのSiO光導波路25が集積されている。信号光の入力はチップの短辺側に設けられた入力用光導波路のSi光導波路24から行う。信号光の出力は、Si光導波路24に対してチップの反対の短辺側(PLC側)に形成した出力用導波路25で行う。4本の入力光導波路24が250μmピッチで設けられ、それぞれ光入力部から光接続部23までをSi光導波路で、光接続部23から光出力部に至るまでをSiO光導波路で構成する。光接続部23から光出力部に至る間にS字型の導波路構造が設けられている。
【0055】
Si光導波路24とSiO光導波路25の各構成は、以下の通りである。チップを構成するSOI基板は、アンダークラッドとなるSiOのBOX層の膜厚が15μm、SiコアとなるSiのSOI層厚さが0.22μmとなっている。SiコアはSi層を幅0.5μmにフォトリソグラフィおよびエッチングにより加工することで形成し、PLCを形成する領域においてもSi層をエッチングで除去しておく。
【0056】
次にPLCのSiOコアを形成する前段階として、PLCを形成する領域においてはアンダークラッドを2.14μmエッチングする。このエッチング工程において、アンダークラッドの高位面、低位面、および突出部が形成される。後に図13で説明するような、より複雑な突出部の構成の場合には、さらにいくつかの追加の加工工程を経る場合がある。次に、基板上にSiOコアとなるSiO膜をCVDやスパッタ等の手法により4.5μm堆積させる。その後、フォトリソグラフィとエッチングにより高さと幅が4.5μmのSiOコアが形成されている。さらに基板上にSiPh回路とPLCのオーバークラッドとなるSiO層を14.5μm堆積することで、Si光導波路とSiO光導波路が形成される。このときPLC側のSiOコアにGe等をドーピングすることで、コアとクラッドの屈折率差2.0%の光導波路が構成されている。
【0057】
図7は、実施例1の光回路の光接続部の構成を示す図である。図7の光導波路部品200は、図6の光回路の光接続部23の近傍に対応しており、図6の光回路の一部を切り出して示している点に留意されたい。図7の(a)は、光導波路部品200の基板面(x-y面)を見た上面図であり、(b)は、2本の光導波路(VIIb-VIIb線)の中心を通る断面(x-z面)の側面図である。
【0058】
図8は、実施例1の光導波路部品の光接続部の異なる箇所で、長さ方向に垂直な面(y-z面)切った断面図である。図7図8で、第1の光回路21(SiPh)と第2の光回路22(PLC)の間の光接続部23が示されており、図7の5つの断面と、図8の各断面が対応している。以下、図7および図8を参照しながら、実施例1の光接続部と図5に示した基本構成の光接続部との相違点に絞って説明する。
【0059】
図5および図7の光導波路部品の構成上の相違点は、アンダークラッド28-1、28-2の高位面から延長して形成される突出部の構成にある。図5の突出部8-3は単純なテーパ形状であったが、本実施例の突出部は、連続した3つの部分28-3、28-4、28-5から成り、図7の(a)の上面図で、概ねロケット様の形状をしていることである。突出部が、テーパ状の第1の部分28-3、直線状の第2の部分28-4、テーパ状の第3の部分28-5を備えることで、段階的にPLC側に向かって幅を狭める構造となっている。Siコア光導波路は、テーパ状の第1の部分28-3で細テーパ24b、直線状の第2の部分28-4でより細い一定幅のSiコア24cとなっている。尚、図8の突出部の構成は、図5の突出部8-3のテーパの途中に第2の部分28-4を挿入したものと見ることもできる。
【0060】
図7の(b)を参照すれば、突出部のテーパ状の第1の部分28-3およびテーパ状の第3の部分28-5で、それぞれSiO層による縦テーパ構造25-3、25-5が形成される。突出部の全体を見ると、第1の光回路(SiPh回路)から第2の光回路(PLC)に向かって、連続的に形成されたSiO膜領域25の高さが徐々に下がっていることがわかる。図8の(c)の断面VIIIA-VIIIA´から断面VIIIE-VIIIE´を参照すれば、SiO膜領域25の高さが、SiO領域25-1(断面VIIIA-VIIIA´)からSiO光導波路25-2(断面VIIIE-VIIIE´)まで徐々に低くなっていることがわかる。光接続部23における上述の突出部の構成の相違点を除けば、他の構成は図5の光導波路部品100と同様である。以下、具体的な構成についてさらに説明する。
【0061】
Si光導波路24bは、光接続部の突出部の第1の部分28-3において、テーパ状部24bとして幅0.5μmから幅0.2μmまで300μmかけて幅を徐々に狭める。引き続き、突出部の第2の部分28-4において幅0.2μmの直線部24cを300μm延長してSSC構造が形成されている。このように、テーパ状部24b、直線部24cと2段階でSi光導波路の形状を変更する構造で、延長した導波路を伝搬させ、テーパ状部24bによりMFが拡大した光の伝搬状態を安定化させる効果が得られる。
【0062】
上述のSiコアのテーパ構造に対応して、突出部の3つの部分が形成されている。突出部の第1の部分28-3は、Siコアのテーパ部24bの開始位置において幅4.5μmとし、テーパ部の終了位置で幅1.5μmとして、テーパ状に徐々に狭くなるように形成される。Siコアの直線部24cでは、突出部の第2の部分28-4は、Siコアの直線部24cに沿って幅1.5μmを保ったまま延長される。さらに、突出部の第3の部分28-5のテーパは、Siコアの直線部24cの終了した後も100μm延長され、テーパ状に先端を狭めて終わる。
【0063】
実施例1の光接続部23における突出部28-3~28-5の形成もフォトリソグラフィおよびエッチングにより行われ、Si光導波路24b、24cにエッチングによる損傷が生じないよう、Si光導波路の幅より突出部28-3~28-5の幅が大きいことが望ましい。また突出部28-3~28-5のテーパの幅の変化に合うように、Si光導波路24b、24cのSSC構造は細テーパ形状が望ましい。
【0064】
突出部28-3~28-5の低位面からの高さは、Si光導波路のコア24aとSiO光導波路のコア25-2の中心高さが一致するように形成するため、SiOコア25-2の厚さの半分からSiコア24の厚さの半分を引いた値とする。図7および図8の実施例1の構成例では、突出部の低位面からの高さを2.14μm(4.5μm/2-0.22μm/2)とする。このとき、突出部の上面はSiコア4の底面(アンダークラッド高位面)と一致し、突出部の底の高さはSiOコアの底面(アンダークラッド低位面)に一致する。Siコア24およびSiOコア24-2の中心の高さを同じとすることで、光ファイバアレイとチップ20との接続を安定して行うことができる。例えば図6のようにSiコアを一方の入出力導波路とし、SiOコアを他方の入出力導波路として、チップのそれぞれの端面に配置する際、チップ端面とアレイファイバを偏心することなく接続し、偏心による光接続損失を減らすことができる。
【0065】
突出部が終了する第3の部分28-5において、Siコアの直線部24cの端部より延長した位置まで、徐々に幅を狭める細テーパを設けるのが好ましい。第3の部分28-5のテーパ構造により、SiOコアの基板垂直方向(z方向)の高さが急に変化することを避け、突出部の最終部でSiOコア形状の急な変化による反射損失を抑制できる。SiO領域は、幅4.5μmで、第1の光回路21のSiコア上のSiO領域25-1から、第2の光回路のSiOコア25-2まで連続して一体に形成されている。
【0066】
SiO領域の高さは、突出部の低位面(アンダークラッド28-2上面)を基準として、突出部の始まる第1の部分28-3では6.64μmであった。SiO領域の高さは、突出部の第1の部分28-3の幅が狭くなるにつれて徐々に低くなり(断面VIIIB-VIIIB´)、突出部の幅が1.5μmとなる位置で高さ5.5μmとなった(断面VIIIC-VIIIC´)。突出部の幅が再び狭まり突出部が終了する第3の部分28-5において、SiO領域の高さはさらに低くなり(断面VIIID-VIIID´)、SiOコア25-2においては4.5μmとなった(断面VIIIE-VIIIE´)。このように、段階的にその幅を狭めるテーパ構造を含む突出部28-3~28-5により、突出部の開始から終了にかけてSiO領域高さが6.64から4.5μmに徐々に低くなる縦テーパ構造25-3~25-5が形成される。図5に示した光接続部の基本構造と同様の構成が、図7および図8の光導波路部品の突出部および縦テーパ構造によって実現されていることがわかる。
【0067】
実施例1の光回路20に、波長1.55μmの光を光ファイバでSiPh側から入力し、PLC側から出力された光を別の光ファイバへ結合した際の光強度をパワーメータでch毎に測定、挿入損失を評価した。実施例1との比較のため、光接続部の構造のみが異なる2種類の光回路を別に作製した。1つは図3に示したアンダークラッド段差を設けないモノリシック集積によるもの、もう1つは図4に示したアンダークラッド段差を設けたモノリシック集積によるものである。これらとは別に、Si光導波路のみで構成されたテスト光回路、SiO光導波路のみで構成されたテスト光回路を作製した。これらから、光ファイバとの接続損失、Si光導波路およびSiO光導波路で伝搬損失の評価を行ってこれらの値を差し引き、光接続部のみの結合損失を算出した。
【0068】
3種類の光接続部では、図3のアンダークラッド段差を設けない光回路の構成が最も損失が大きく、5.7dBであった。一方で図4のアンダークラッド段差を設けた光回路の構成の損失は0.85dBまで低減しているが、MF中心の不整合により損失が生じていたことがわかる。図7の本開示の光導波路部品を含む光回路20では、光接続部の損失は0.7dBと図4の構成よりもさらに小さいことが確認できた。従来技術の図4の構成突では、Si光導波路の小さいMFDからSiO導波路の大きいMFDへの光接続でMFDの不整合により生じる損失が残っていた。図7の光回路20では、光接続部においてSiOコアがSi光導波路を徐々に覆う構造によりMFDサイズの不整合を低減している。さらに、アンダークラッドの高位面からの突出部のテーパ構造と、これを覆うSiO膜の縦テーパ構造により、Si光導波路を伝搬する光のMF中心とSiO導波路を伝搬する光のMF中心のずれを抑制していると考えられる。本実施例の光導波路部品の光接続部の構成により、本開示の光導波路部品の低損失な光接続を簡単な構造と製造方法で実現できることを確認できた。
【実施例2】
【0069】
図9は、本開示の光導波路部品を含む光回路の実施例2の構成を示す図である。図9の光回路30は、チップの1つの短辺に側に設けられたSiOコアからなる信号光の入力用光導波路35と、対応するSiコアからなる折り曲げ導波路34、同じ短辺に設けられたSiOコアからなる出用光導波路36で構成される。2つのSiOコアの間を、2つの光接続部33-1、33-2で接続している。このような光回路30を用いて、2つの光接続部33における光接続損失を評価し、光接続損失を減らす効果を検証した。最初に、光回路30の各部の構造を示す。
【0070】
光回路30となるチップは、サイズが縦5mm、横7mmで、SiPh回路のSi光導波路34とPLCのSiO光導波路35、36がモノリシック集積されている。光入力はチップの短辺側に設けられたSiO導波路35から行い、光出力部は入力部と同じ短辺の端面に形成する。SiOコアの入力光導波路35から第1の光接続部33-1までをSiO導波路で、入力側の第1の光接続部33-1から曲げ導波路34を経て出力側の第2の光接続部33-2に至るまでをSi光導波路で構成する。最後に、第2の光接続部33-2から光出力部までを再びSiO光導波路が構成している。
【0071】
Si光導波路およびSiO光導波路の各構成は、以下の通りである。チップを構成するSOI基板は、アンダークラッドとなるSiOのBOX層の膜厚が15μm、SiコアとなるSiのSOI層が0.22μmとなっている。SiコアはSi層を幅0.5μmにフォトリソグラフィおよびエッチングにより加工することで形成し、PLCを形成する領域においてもSi層をエッチングで除去しておく。
【0072】
次にPLCのSiOコアを形成する前段階として、PLCを形成する領域においてはアンダークラッドを2.14μmエッチングする。このエッチング工程において、図5に示したアンダークラッドの高位面、低位面、および突出部が形成される。後に図13で説明するような、より複雑な構成の突出部の場合には、さらにいくつかの加工工程を経る場合がある。
【0073】
次に、基板上にSiOコアとなるSiO膜をCVDやスパッタ等の手法により4.5μm堆積させる。その後、フォトリソグラフィとエッチングにより高さと幅が4.5μmのSiOコアが形成されている。さらに基板上にSiPh回路とPLCのオーバークラッドとなるSiO層を14.5μm堆積することで、Si光導波路24とSiO光導波路が形成される。このときPLC側のSiOコアにGe等をドーピングすることで、コアとクラッドの屈折率差2.0%の光導波路が構成されている。
【0074】
図10は、実施例2の光回路における光接続部の構成を示す図である。図10の光導波路部品300は、図9の光回路30の光接続部33-1、33-2の各構成に対応しており、光回路30の一部を切り出して示している点に留意されたい。図10の(a)は、光導波路部品300の基板面(x-y面)を見た上面図であり、(b)は、2本の光導波路(Xb-Xb線)の中心を通る断面(x-z面)の側面図である。
【0075】
図11は、実施例2の光導波路部品の光接続部の異なる箇所で、長さ方向に垂直な面(y-z面)切った断面図である。図10および図11には、第1の光回路31(SiPh)と第2の光回路32(PLC)の間の光接続部33が示されており、図10の6つの断面線と、図11の各断面(A-A´~F-F´)が対応している。以下、図10および図11を参照しながら、実施例2の光回路30における光接続部と、図5に示した光接続部の基本構成および図7の実施例1の光接続部との相違点に絞って説明する。
【0076】
図10の光導波路部品と、図5および図7の光導波路部品の構成上の相違点は、アンダークラッド38-1、38-2の高位面から延長して形成される突出部の構成にある。本実施例の突出部は、実施例1の光接続部の構成をさらに多段階的に徐々に変化させたものである。突出部は連続した4つの部分38-3~38-6から成り、実施例1の突出部の構成よりも滑らかに幅が変化し、対応する縦テーパ構造の高さも2段階で低くなっている。突出部は、テーパ状の第1の部分38-3、テーパ状の第2の部分38-4、直線状の第3の部分38-5、テーパ状の第4の部分38-6を備えることで、段階的にPLC側に向かって幅を狭める構造となっている。
【0077】
光接続部33において、第1の光回路31から延長されるSiコア光導波路も、突出部の各部分の構造に対応して、以下の様に多段階に徐々に変化している。テーパ状の第1の部分38-3では、第1の光回路のSiコア34aと同じ幅をそのまま延長したものである。テーパ状の第2の部分38-4において、Siコアは細テーパ34bとなり、続く直線状の第3の部分38-4でより細い一定幅のSiコア34cとなっている。最後のテーパ状の第4の部分38-6の開始位置で、Siコア34cが終了する。
【0078】
第2の光回路33のSiOコア35-2は、上述の第1の光回路31および光接続部33のSiコアをすっぽりと覆うように、第2の光回路から延長して形成され、図10の(a)の上面図のように一体のSiOコア領域35となっている。上述の突出部においてテーパ構造となっている第1の部分38-4、第2の部分38-4に概ね対応して縦テーパ構造35-3が形成され、第4の部分38-6に概ね対応して縦テーパ構造35-5が形成される。図10の(b)では、SiOコア領域の縦テーパ構造が各部分の境界において、急激にその高さが変化しているように示している。しかしながら実際には、突出部の幅が狭まるのに対応して、図11の断面A-A´から断面F-F´に示したように、滑らかにSiOコア領域の高さが変化してゆくことに留意されたい。
【0079】
図10および図11の光導波路部品300におけるSiPhとPLCの間の光接続部33は、具体的に次のように構成されている。Si光導波路は、光接続部33の第2の部分38-4において幅0.5μmから幅0.2μmまで200μmかけてテーパ状に幅を狭める。さらに、第3の部分38-5において幅0.2μmを200μm延長してSSC構造が形成されている。
【0080】
アンダークラッド38-1の高位面からの突出部の幅は、3つの部分のテーパにより3段階で狭くなる構造とする。まず突出部の第1の部分38-3においてSiOコア35-1の幅より広い幅から徐々に狭め、第2の部分38-4においてさらに続けて幅を狭める。等幅の第3の部分38-5を経て、第4の部分38-6で再びその先端まで幅を狭めることで、突出部の全体でその幅を徐々に狭めている。突出部の各部分の具体的なサイズは、以下の通りである。突出部の第1の部分38-3は、テーパの太い側で幅5.0μm、細い側で幅2.5μm、長さは250μmとした。第2の部分38-4は、テーパの太い側で幅2.5μm、細い側で幅1.25μm、長さが200μmとした。第4の部分38-6は、テーパの太い側で幅1.25μmとして先端を幅0まで狭めて終端し、長さは100μmとした。第3の部分38-5は、幅1.25μmを等幅に保ったままで長さは200μmとした。
【0081】
突出部の第1の部分38-3でテーパを設けて、SiOコア35-1よりも広い幅から狭い幅へまず変化させ、断面A-A´からC-C´にかけてSiコア34a上のSiOコア35-1やオーバークラッド9膜厚の急激な変化を抑える。作製誤差によりSiOコア35-1の幅が設計値より多少太くなっても、第2の部分38-4~第4の部分38-6にかけて上述の設計の長さによって縦テーパ構造をSiOコアに設けることが可能となり、作製トレランスの向上につながる。
第2の光回路32のSiOコア35-2の幅は、PLC側においては4.5μmであるが、光接続部33においては300μm長のテーパにより3.5μmまで幅を狭めて第2の光回路31(SiPh回路)側へ延長する。光接続部33においてSiOコア幅をやや狭くすることで伝搬光のMFDを小さくし、Siコア34b、34cの光導波路のSSC構造における伝搬光のMFDとの整合を改善する。本開示の光導波路部品における突出部および対応する縦テーパ構造の効果を得るためには、突出部の第2の部分38-4の幅がSiOコア領域35-1~35-5の幅よりも狭くなっているのが好ましい。このようにすることで、光導波路の長さ方向に垂直な断面で見たときに、突出部の第2の部分38-4から第4の部分38-6の断面領域も、第2の光回路から延長して構成されるSiOコアの断面領域に内包される構造となる。
【0082】
このとき突出部の断面に着目すると、第2の光回路32に近づくに従って突出部の幅が徐々に狭まる。また第1の光回路31から第2の光回路32に向かって、SiOコアの高さが徐々に低くなる。アンダークラッドの突出部と、これを覆うSiOコアとの構成比(面積比)も徐々に変化する。光接続部33において、光導波路の長さ方向に垂直な断面を見たとき、上述のように2つの光回路の間でSiOコアとアンダークラッドの構造が徐々に変化している。本開示の光導波路部品は、上述のような第1の光回路および第2の光回路の間の光接続部におけるサイズや構成比が連続的に変化することよって、MFDの不整合と、MFの中心位置ずれの緩和を実現していることが理解できる。
【0083】
アンダークラッド38-2の低位面からの突出部の高さは、Si光導波路4とSiO導波路のコア35-2の中心高さが一致するよう、SiOコア厚さの半分からSiコア厚さの半分を引いた値とする。本実施例2では、2.14μm(4.5μm/2-0.22μm/2)とした。このとき、突出部の上面(アンダークラッド38-1高位面)はSiコア4の底面に一致し、突出部の底面(アンダークラッド38-2低位面)はSiOコア35-2の底面に一致する。SiコアとSiOコアの中心の高さを同じとすることで、図9のように1つの短辺上でSiOコアを入出力光導波路とし、チップ端面に2本の光ファイバを配置する際に、光導波路と光ファイバを偏心なく接続し、光接続損失を減らすことができる。
【0084】
図12は、実施例2の光導波路部品を含む別の光回路の構成例を示す図である。図12の(a)は、光回路40の基板面(x-y面)を見た上面図であり、(b)は、光回路40の光導波路34、34aの中心を通る断面(x-z面)の側面図である。図12の光回路40は、(a)の上面図において実施例2の図10の光導波路部品300を一点鎖線の領域に含んでおり、実施例2の構成のSiコア側の延長部分をさらに示している。図12の光回路40において、(b)の断面C-C´の構造は、実施例2の図11の断面A-A´と同一である。一方(b)の断面B-B´では、Siコアを覆っていたSiOコア35-1が除去されている。さらに断面A-A´では、SiPh回路側のオーバークラッド9およびSiOコア35-1がいずれも除去され、Siコア34が露出して設けられている。SiPh回路内にSiコアが露出した領域を設けることで、Siコア34へのドーパント導入、半導体の成膜、ヒータや金属配線の形成などのプロセスを行うことができ、光回路の機能性を広げることができる。
【0085】
再び実施例2の光導波路部品に戻り、図9の光回路30について、実施例1と同様に、波長1.55umの光で光接続部33の光接続損失を評価した。光接続部33の光接続損失を算出した結果、図10および図11の構造を持つ実施例2の光回路30の光接続部33の光接続損失は0.50dBであった。図7および図8の構造を持つ実施例1の光回路20の光接続部23の光接続損失0.70dBよりさらに小さい値が得られた。図4の従来技術の光回路におけるアンダークラッド段差のみを設けた構成での損失0.85dBと比べれば、大きく光接続損失を改善していることがわかる。
【0086】
図10および図11の実施例2の光導波路部品300でも、Siコアの断面領域がSiOコアの断面領域に内包される二重構造により、光接続部で断面構造が徐々に変化している。光導波路の長さ方向に垂直な断面で、第1の光回路から第2の光回路に向かって、アンダークラッドの突出部に対する、SiOコアの面積比が増加し、SiOコアがSiコアを徐々に覆っている。アンダークラッドの突出部の幅が徐々に狭まり、同時にSiOコアの高さが徐々に低くなる滑らかな断面構造変化により、MFDサイズの不整合を低減していると考えられる。また、アンダークラッドの高位面から延長して低位面に向かって形成された突出部の幅のテーパ構造と、対応するSiOコアの縦テーパ構造により、Siコアの伝搬光のMF中心とSiOコアの伝搬光のMF中心のずれを抑えている。本実施例においても、本開示の光導波路部品の低損失な光接続を簡単な構造と製法で実現できることが確認された。
【0087】
図13は、本開示の光導波路部品における突出部の構成の変形例を示す図である。図13の(a)は突出部をセグメント化した光導波路部品40-1を、(b)は突出部の両脇にスロープ部を設けた光導波路部品40-2を示している。いずれも突出部のみの構造を示しており、上述の各実施例と同様に、突出部に沿ってSiOコアが形成される。
【0088】
図13の(a)の光導波路部品40-1は、アンダークラッド層42の高位面から低位面に向かって、異なる2つの幅のセグメントが交互に連なった構成の突出部を持っている。幅の広い3つの部分44a、44b、44cの間に幅の狭い部分が挟まれており、突出部の3つの部分の光導波路方向の長さは、徐々に短くなっている。Siコア43は、アンダークラッド層42の高位面から突出部の途中まで形成されている。このように突出部をセグメント化した構成でも、光導波路の長さ方向に垂直な断面で見れば、高位面側から低位面に向かって、アンダークラッドの突出部に対して図示しないSiOコアの占有率が増える。逆に突出部は、高位面側から低位面に向かって徐々に断面積を減らすことになる。突出部の実効的な断面積が徐々に減ることで、突出部に対応するSiO領域の高さが徐々に低位面に向かって低くなり、縦テーパ構造が得られる。
【0089】
図13の(b)の光導波路部品40-2は、アンダークラッド層42の高位面から低位面に向かって単純な直方体状の突出部44を持っている。さらに突出部44に沿って両脇に、高位面から徐々にその高さを下げて低位面に至るスロープ部45a、45bを設けている。Siコア43は、アンダークラッド層42の高位面から突出部44の途中まで形成されている。このようなスロープ部を含む構成でも、光導波路の長さ方向に垂直な断面で見れば、高位面側から低位面に向かって、アンダークラッドの突出部に対してSiOコアの占有率が増える。突出部の実効的な断面積が徐々に減ることで、SiO領域の高さが低位面に向かって徐々に低くなり、縦テーパ構造が得られる。図13の(b)のスロープ部を階段状にしても良い。上述のように、突出部の形状は様々に変形できる。
【0090】
以上詳細に述べたように、本開示の光接続部の構成を備えることによって、低損失な光接続を簡単な構造で実現する光導波路部品およびその製造方法を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、光通信を用いる装置に利用できる。
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