IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産化学工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】硬化膜、配向材および位相差材
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20231213BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/13363
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020530203
(86)(22)【出願日】2019-07-09
(86)【国際出願番号】 JP2019027166
(87)【国際公開番号】W WO2020013189
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2018130871
(32)【優先日】2018-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 直也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 潤
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/054784(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/056741(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/136889(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/065324(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/010688(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/126022(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/126021(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/126019(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/13363
H05B33/00-33/28
H05B44/00
H05B45/60
H10K50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)光配向性基とヒドロキシ基、カルボキシル基およびアミノ基から選ばれるいずれか1つの置換基とを有する化合物、
(B)芳香族環を有するポリエステルポリオール、並びに
(C)架橋剤
を含有することを特徴とする硬化膜形成組成物の塗布物から形成される乾燥焼成膜であって、その膜厚が3μm以上20μm以下である、光配向性基を有する硬化膜。
【請求項2】
(A)成分の光配向性基が光二量化または光異性化する構造の官能基であることを特徴とする請求項1に記載の硬化膜。
【請求項3】
(A)成分の光配向性基がシンナモイル基であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の硬化膜。
【請求項4】
(A)成分の光配向性基がアゾベンゼン構造の基であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の硬化膜。
【請求項5】
(A)成分が2個以上のヒドロキシ基を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の硬化膜。
【請求項6】
硬化膜形成組成物が、(D)成分として架橋触媒をさらに含有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の硬化膜。
【請求項7】
(A)成分と(B)成分の比率が質量比で5:95乃至60:40であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の硬化膜。
【請求項8】
(A)成分と(B)成分の合計量の100質量部に基づいて、5質量部乃至500質量部の(C)成分を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載
の硬化膜。
【請求項9】
(A)成分の化合物と(B)成分のポリマーとの合計量の100質量部に対して0.01質量部乃至20質量部の(D)成分を含有する請求項6に記載の硬化膜。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の硬化膜を用いて得られることを特徴とする配向材。
【請求項11】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の硬化膜を使用することを特徴とする位相差材の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶分子を配向させる配向材を形成するための硬化膜、配向材および位相差材に関する。特に本発明は、円偏光メガネ方式の3Dディスプレイに用いられるパターニングされた位相差材や、有機ELディスプレイの反射防止膜として使用される円偏光板に用いられる位相差材を作製するのに有用な硬化膜、配向材および位相差材に関する。
【背景技術】
【0002】
円偏光メガネ方式の3Dディスプレイの場合、液晶パネル等の画像を形成する表示素子の上に位相差材が配置されるのが通常である。この位相差材は、位相差特性の異なる2種類の位相差領域がそれぞれ複数、規則的に配置されており、パターニングされた位相差材を構成している。尚、以下、本明細書においては、このような位相差特性の異なる複数の位相差領域を配置するようにパターン化された位相差材をパターン化位相差材と称する。
【0003】
パターン化位相差材は、例えば、特許文献1に開示されるように、重合性液晶からなる位相差材料を光学パターニングすることで作製することができる。重合性液晶からなる位相差材料の光学パターニングは、液晶パネルの配向材形成で知られた光配向技術を利用する。すなわち、基板上に光配向性の材料からなる塗膜を設け、これに偏光方向が異なる2種類の偏光を照射する。そして、液晶の配向制御方向の異なる2種類の液晶配向領域が形成された配向材として光配向膜を得る。この光配向膜の上に重合性液晶を含む溶液状の位相差材料を塗布し、重合性液晶の配向を実現する。その後、配向された重合性液晶を硬化してパターン化位相差材を形成する。
【0004】
有機ELディスプレイの反射防止膜は、直線偏光板、1/4波長位相差板により構成され、画像表示パネルのパネル面に向かう外来光を直線偏光板により直線偏光に変換し、続く1/4波長位相差板により円偏光に変換する。ここでこの円偏光による外来光は、画像表示パネルの表面等で反射するものの、この反射の際に偏光面の回転方向が逆転する。その結果、この反射光は、到来時とは逆に、1/4波長位相差板より、直線偏光板により遮光される方向の直線偏光に変換された後、続く直線偏光板により遮光され、その結果、外部への出射が著しく抑制される。
【0005】
この1/4波長位相差板に関して、特許文献2には、1/2波長板、1/4波長板を組み合わせて1/4波長位相差板を構成することにより、この光学フィルムを逆分散特性により構成する方法が提案されている。この方法の場合、カラー画像の表示に供する広い波長帯域において、正の分散特性による液晶材料を使用して逆分散特性により光学フィルムを構成することができる。
【0006】
また近年、この位相差層に適用可能な液晶材料として、逆分散特性を備えるものが提案されている(特許文献3、4)。このような逆分散特性の液晶材料によれば、1/2波長板、1/4波長板を組み合わせた2層の位相差層により1/4波長位相差板を構成する代わりに、位相差層を単層により構成して逆分散特性を確保することができ、これにより広い波長帯域において所望の位相差を確保することが可能な光学フィルムを簡易な構成により実現することができる。
【0007】
液晶を配向させるためには配向層が用いられる。配向層の形成方法としては、例えばラビング法や光配向法が知られており、光配向法はラビング法の問題点である静電気や塵の発生がなく、定量的な配向処理の制御ができる点で有用である。
【0008】
光配向法を用いた配向材形成では、利用可能な光配向性の材料として、側鎖にシンナモイル基およびカルコン基等の光二量化部位を有するアクリル樹脂やポリイミド樹脂等が知られている。これらの樹脂は、偏光UV照射することにより、液晶の配向を制御する性能(以下、液晶配向性とも言う。)を示すことが報告されている(特許文献5乃至特許文献7を参照。)。
【0009】
また、配向層には、液晶配向能の他、耐溶剤性が要求される。例えば、配向層が、位相差材の製造過程にて熱や溶剤にさらされる場合がある。配向層が溶剤にさらされると、液晶配向能が著しく低下するおそれがある。
【0010】
そこで、例えば特許文献8には、安定した液晶配向能を得るために、光により架橋反応の可能な構造と熱によって架橋する構造とを有する重合体成分を含有する液晶配向剤、および、光により架橋反応の可能な構造を有する重合体成分と熱によって架橋する構造を有する化合物とを含有する液晶配向剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2005-49865号公報
【文献】特開平10-68816号公報
【文献】米国特許第8119026号明細書
【文献】特開2009-179563号公報
【文献】特許第3611342号公報
【文献】特開2009-058584号公報
【文献】特表2001-517719号公報
【文献】特許第4207430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のように、位相差材は、配向材である光配向膜の上に、硬化された重合性液晶の層を積層して構成される。そのため、優れた液晶配向性と耐溶剤性を両立することができる配向材の開発が必要とされている。
【0013】
しかしながら、本発明者の検討によれば、側鎖にシンナモイル基やカルコン基等の光二量化部位を有するアクリル樹脂は、位相差材の形成に適用した場合に充分な特性が得られないことが分かっている。特に、これらの樹脂に偏光UVを照射して配向材を形成し、その配向材を用いて重合性液晶からなる位相差材を作製するためには、大きな偏光UV露光量が必要となる。その偏光UV露光量は、通常の液晶パネル用の液晶を配向させるのに十分な偏光UV露光量(例えば、30mJ/cm程度。)より格段に多くなる。
【0014】
偏光UV露光量が多くなる理由としては、位相差材形成の場合、液晶パネル用の液晶と異なり、重合性液晶が溶液の状態で用いられ、配向材の上に塗布されることが挙げられている。
【0015】
側鎖にシンナモイル基等の光二量化部位を有するアクリル樹脂等を用いて配向材を形成し、重合性液晶を配向させようとする場合、そのアクリル樹脂等においては、光二量化反応による光架橋を行う。そして、重合性液晶溶液に対する耐性が発現するまで、大きな露光量の偏光照射を行う必要がある。液晶パネルの液晶を配向させるためには、通常、光配向性の配向材の表面のみを二量化反応すればよい。しかし、上述のアクリル樹脂等の従来材料を用いて配向材に溶剤耐性を発現させようとすると、配向材の内部まで反応をさせる必要があり、より多くの露光量が必要となる。その結果、従来材料の配向感度は非常に小さくなってしまうという問題があった。
【0016】
また、上述の従来材料である樹脂にこのような溶剤耐性を発現させるため、架橋剤を添加する技術が知られている。しかし、架橋剤による熱硬化反応を行った後、形成される塗膜の内部には3次元構造が形成され、光反応性は低下することがわかっている。すなわち、配向感度が大きく低下してしまい、従来材料に架橋剤を添加して使用しても、所望とする効果は得られていない。
【0017】
さらに、液晶インキには様々な有機溶媒が使用され、光学特性の点で有機溶媒に対して耐性の低いフィルムが使用されることがあり、フィルムの保護という理由で、膜厚3μm以上の配向膜が求められている。特に、液晶として逆分散液晶を用いる場合は、その溶解性を担保するためにN-メチルピロリドン等の良溶媒を用いる必要があるため、そのような良溶媒への溶剤耐性が求められている。
【0018】
以上より、配向材の配向感度を向上させ、偏光UV露光量を低減できるとともに、良溶媒への耐性を付与することが可能な光配向技術と、その配向材の形成に用いられる光配向用液晶配向剤が求められている。そして、高効率に位相差材を提供することができる技術が求められている。
【0019】
本発明の目的は、以上の知見や検討結果に基づいてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、膜厚が3μm以上の厚さであっても優れた配向感度、パターン形成性および透明性を有し、なおかつ、良溶媒への耐性を有し、配向均一性にも優れた配向材を提供するための硬化膜を提供することである。
【0020】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の第1の態様は、
(A)光配向性基とヒドロキシ基、カルボキシル基およびアミノ基から選ばれるいずれか1つの置換基とを有する化合物、
(B)芳香族環を有するポリエステルポリオール、並びに
(C)架橋剤
を含有することを特徴とする硬化膜形成組成物の塗布物から形成される乾燥焼成膜であって、その膜厚が3μm以上20μm以下である、光配向性基を有する硬化膜に関する。
【0022】
本発明の第1の態様において、(A)成分の光配向性基が光二量化または光異性化する構造の官能基であることが好ましい。
【0023】
本発明の第1の態様において、(A)成分の光配向性基がシンナモイル基であることが好ましい。
【0024】
本発明の第1の態様において、(A)成分の光配向性基がアゾベンゼン構造の基であることが好ましい。
【0025】
本発明の第1の態様において、(A)成分が2個以上のヒドロキシ基を有することが好ましい。
【0026】
本発明の第1の態様において、(D)成分として架橋触媒をさらに含有することが好ましい。
【0027】
本発明の第1の態様において、(A)成分と(B)成分の比率が質量比で5:95乃至60:40であることが好ましい。
【0028】
本発明の第1の態様において、(A)成分と(B)成分合計量の100質量部に基づいて、5質量部乃至500質量部の(C)成分を含有することが好ましい。
【0029】
本発明の第1の態様において、(A)成分の化合物と(B)成分のポリマーとの合計量の100質量部に対して0.01質量部乃至20質量部の(D)成分を含有することが好ましい。
【0030】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様の硬化膜を用いて得られることを特徴とする配向材に関する。
【0031】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様の硬化膜を使用して形成されることを特徴とする位相差材に関する。
【発明の効果】
【0032】
本発明の第1の態様によれば、膜厚が3μm以上の厚さであっても優れた配向感度、パターン形成性および透明性を有し、なおかつ、配向均一性にも優れた配向材を提供するための硬化膜を提供することができる。
【0033】
本発明の第2の態様によれば、膜厚が3μm以上の厚さであっても優れた配向感度、パターン形成性および透明性を有し、良溶媒への耐性を有し、なおかつ、配向均一性にも優れた配向材を提供することができる。
【0034】
本発明の第3の態様によれば、アルカリガラス上でも高い効率で形成できて光学パターニングの可能な位相差材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
<硬化膜形成組成物>
本発明に用いられる硬化膜形成組成物(以下、単に硬化膜形成組成物ともいう)は、(A)成分である低分子の光配向成分と、(B)成分である芳香族環を有するポリエステルポリオールと、(C)成分である架橋剤を含有する。本発明に用いられる硬化膜形成組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分に加えて、さらに、(D)成分として架橋触媒、(E)成分として硬化膜の接着性を向上させる成分をも含有することができる。そして、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他の添加剤を含有することができる。
【0036】
以下、各成分の詳細を説明する。
<(A)成分>
本実施形態の硬化膜形成組成物に含有される(A)成分は、上述した、低分子の光配向成分である。
【0037】
そして、(A)成分である低分子の光配向成分は、光配向性基とヒドロキシ基、カルボキシル基およびアミノ基から選ばれるいずれか1つの置換基とを有する化合物とすることができる。光配向性基とヒドロキシ基、カルボキシル基およびアミノ基から選ばれるいずれか1つの置換基とを有する化合物においては、光反応性基が光反応成分における疎水性の光反応部を構成し、ヒドロキシ基等が親水性の熱反応部を構成する。
尚、本発明において、光配向性基としては光二量化または光異性化する構造部位の官能基を言う。
【0038】
光二量化する構造部位とは、光照射により二量体を形成する部位であり、その具体例としてはシンナモイル基、カルコン基、クマリン基、アントラセン基等が挙げられる。これらのうち可視光領域での高い透明性および光二量化反応性を有するシンナモイル基が好ましい。
また、光異性化する構造部位とは、光照射によりシス体とトランス体が変化する部位であり、その具体例としてはアゾベンゼン構造、スチルベン構造等からなる部位が挙げられる。これらのうち反応性の高さからアゾベンゼン構造が好ましい。光配向性基とヒドロキシ基とを有する化合物は、例えば、下記式[A1]乃至[A5]で表される。
【0039】
【化1】
【0040】
前記式[A1]乃至[A5]中、AとAはそれぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、Xは単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、アミノ結合またはそれらの組み合わせから選ばれる1種又は2種以上の結合を介して、炭素原子数1乃至18のアルキレン、フェニレン、ビフェニレンまたはそれらの組み合わせから選ばれる1乃至3の単位が結合してなる構造を表す。Xは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1乃至18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基又はシクロヘキシル基を表す。中でも炭素原子数1乃至18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基及びシクロヘキシル基は、共有結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合又は尿素結合を介して結合してもよい。Xはヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基またはアルコキシシリル基を表す。Xはヒドロキシ基、メルカプト基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、炭素原子数1乃至10のアルキルチオ基またはフェニル基を表す。Xは単結合、炭素原子数1乃至20のアルキレン基、芳香族環基、又は、脂肪族環基を表す。中でも炭素原子数1乃至20のアルキレン基は分岐状でも直鎖状でもよい。Xは単結合、酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0041】
なお、これらの置換基において、フェニレン、フェニル基、ビフェニレンとビフェニル基は、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基およびシアノ基から選ばれる同一又は相異なる1または複数の置換基によって置換されていてもよい。
【0042】
上記式中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基またはシアノ基を表す。
【0043】
(A)成分である光配向性基とヒドロキシ基とを有する化合物の具体例としては、例えば、4-(8-ヒドロキシオクチルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4-(6-ヒドロキシヘキシルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4-(4-ヒドロキシブチルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4-(3-ヒドロキシプロピルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4-(2-ヒドロキシエチルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4-ヒドロキシメチルオキシけい皮酸メチルエステル、4-ヒドロキシけい皮酸メチルエステル、4-(8-ヒドロキシオクチルオキシ)けい皮酸エチルエステル、4-(6-ヒドロキシヘキシルオキシ)けい皮酸エチルエステル、4-(4-ヒドロキシブチルオキシ)けい皮酸エチルエステル、4-(3-ヒドロキシプロピルオキシ)けい皮酸エチルエステル、4-(2-ヒドロキシエチルオキシ)けい皮酸エチルエステル、4-ヒドロキシメチルオキシけい皮酸エチルエステル、4-ヒドロキシけい皮酸エチルエステル、4-(8-ヒドロキシオクチルオキシ)けい皮酸フェニルエステル、4-(6-ヒドロキシヘキシルオキシ)けい皮酸フェニルエステル、4-(4-ヒドロキシブチルオキシ)けい皮酸フェニルエステル、4-(3-ヒドロキシプロピルオキシ)けい皮酸フェニルエステル、4-(2-ヒドロキシエチルオキシ)けい皮酸フェニルエステル、4-ヒドロキシメチルオキシけい皮酸フェニルエステル、4-ヒドロキシけい皮酸フェニルエステル、4-(8-ヒドロキシオクチルオキシ)けい皮酸ビフェニルエステル、4-(6-ヒドロキシヘキシルオキシ)けい皮酸ビフェニルエステル、4-(4-ヒドロキシブチルオキシ)けい皮酸ビフェニルエステル、4-(3-ヒドロキシプロピルオキシ)けい皮酸ビフェニルエステル、4-(2-ヒドロキシエチルオキシ)けい皮酸ビフェニルエステル、4-ヒドロキシメチルオキシけい皮酸ビフェニルエステル、4-ヒドロキシけい皮酸ビフェニルエステル、けい皮酸8-ヒドロキシオクチルエステル、けい皮酸6-ヒドロキシヘキシルエステル、けい皮酸4-ヒドロキシブチルエステル、けい皮酸3-ヒドロキシプロピルエステル、けい皮酸2-ヒドロキシエチルエステル、けい皮酸ヒドロキシメチルエステル、4-(8-ヒドロキシオクチルオキシ)アゾベンゼン、4-(6-ヒドロキシヘキシルオキシ)アゾベンゼン、4-(4-ヒドロキシブチルオキシ)アゾベンゼン、4-(3-ヒドロキシプロピルオキシ)アゾベンゼン、4-(2-ヒドロキシエチルオキシ)アゾベンゼン、4-ヒドロキシメチルオキシアゾベンゼン、4-ヒドロキシアゾベンゼン、4-(8-ヒドロキシオクチルオキシ)カルコン、4-(6-ヒドロキシヘキシルオキシ)カルコン、4-(4-ヒドロキシブチルオキシ)カルコン、4-(3-ヒドロキシプロピルオキシ)カルコン、4-(2-ヒドロキシエチルオキシ)カルコン、4-ヒドロキシメチルオキシカルコン、4-ヒドロキシカルコン、4’-(8-ヒドロキシオクチルオキシ)カルコン、4’-(6-ヒドロキシヘキシルオキシ)カルコン、4’-(4-ヒドロキシブチルオキシ)カルコン、4’-(3-ヒドロキシプロピルオキシ)カルコン、4’-(2-ヒドロキシエチルオキシ)カルコン、4’-ヒドロキシメチルオキシカルコン、4’-ヒドロキシカルコン、7-(8-ヒドロキシオクチルオキシ)クマリン、7-(6-ヒドロキシヘキシルオキシ)クマリン、7-(4-ヒドロキシブチルオキシ)クマリン、7-(3-ヒドロキシプロピルオキシ)クマリン、7-(2-ヒドロキシエチルオキシ)クマリン、7-ヒドロキシメチルオキシクマリン、7-ヒドロキシクマリン、6-ヒドロキシオクチルオキシクマリン、6-ヒドロキシヘキシルオキシクマリン、6-(4-ヒドロキシブチルオキシ)クマリン、6-(3-ヒドロキシプロピルオキシ)クマリン、6-(2-ヒドロキシエチルオキシ)クマリン、6-ヒドロキシメチルオキシクマリン、6-ヒドロキシクマリン等が挙げられる。
【0044】
光配向性基とカルボキシル基とを有する化合物の具体例としてはけい皮酸、フェルラ酸、4-ニトロけい皮酸、4-メトキシけい皮酸、3,4-ジメトキシけい皮酸、クマリン-3-カルボン酸、4-(N,N-ジメチルアミノ)けい皮酸等が挙げられる。
【0045】
光配向性基とアミノ基とを有する化合物の具体例としてはメチル-4-アミノけい皮酸、エチル-4-アミノけい皮酸、メチル-3-アミノけい皮酸、エチル-3-アミノけい皮酸等が挙げられる。
(A)成分である低分子の光配向成分は、以上の具体例を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
また、(A)成分である光配向成分が、光配向性基とヒドロキシ基とを有する化合物である場合、(A)成分として、分子内に、光配向性基を2個以上および/またはヒドロキシ基を2個以上有する化合物を用いることが可能である。具体的には、(A)成分として、分子内に1個のヒドロキシ基とともに2個以上の光配向性基を有する化合物や、分子内に1個の光配向性基とともに2個以上のヒドロキシ基を有する化合物や、分子内に光配向性基とヒドロキシ基をそれぞれ2個以上有する化合物を用いることが可能である。例えば、分子内に光配向性基とヒドロキシ基をそれぞれ2個以上有する化合物については、その一例として、下記式で表される化合物を例示することができる。
【0047】
【化2】
【0048】
このような化合物を適宜選択することにより、(A)成分である光配向成分の分子量を所望範囲の値に制御することが可能となる。その結果、後述するように、(A)成分である光配向成分および(B)成分であるポリマーと(C)成分である架橋剤とが熱反応する際に、(A)成分である光配向成分が昇華するのを抑制することができる。そして、本実施の形態の硬化膜形成組成物は、硬化膜として、光反応効率の高い配向材を形成することができる。
【0049】
また、硬化膜形成組成物における(A)成分の化合物としては、光配向性基とヒドロキシ基、カルボキシル基およびアミノ基から選ばれるいずれか1つの置換基とを有する、複数種の化合物の混合物であってもよい。
【0050】
<(B)成分>
本実施形態の硬化膜形成組成物に含有される(B)成分は、芳香族環を有するポリエステルポリオールである。
【0051】
(B)成分の特定重合体の好ましい一例であるポリエステルポリオールとしては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族多価カルボン酸にエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジオールを反応させたものが挙げられる。芳香族環を有するポリエステルポリオールの具体例としてはDIC社製RX-4800、クラレ社製ポリオールP-520、P-1020、P-2020、P-1012、P-2012、東ソー社製ニッポラン121E、134、179P、131、800、1100、川崎化成工業社製マキシモールRDK-121、RDK-133、RDK-142、RMK-342、RFK-505、RFK-506、RFK-509、RLK-087、RLK-035等が挙げられる。
【0052】
(B)成分の特定重合体の好ましい分子量は重量平均分子量で100乃至20,000が好ましく、架橋度を上げる点で好ましくは100乃至10,000であり、さらに好ましくは100乃至5,000である。
【0053】
(B)成分の特定重合体の好ましい水酸基価は50乃至1,000、架橋度を上げる点で好ましくは100乃至600である。
【0054】
(B)成分の特定重合体の好ましい芳香環濃度は5モル%乃至50モル%が好ましく、溶解性の点で5モル%乃至30モル%が好ましい。
【0055】
本実施形態の硬化膜形成組成物において、(B)成分のポリマーは、粉体形態で、または精製した粉末を後述する溶剤に再溶解した溶液形態で用いてもよい。
【0056】
また、本実施形態の硬化膜形成組成物において、(B)成分のポリマーは、(B)成分のポリマーの複数種の混合物であってもよい。
【0057】
<(C)成分>
本実施形態の硬化膜形成組成物は、(C)成分として架橋剤を含有する。より詳しくは、(C)成分は、上述の(A)成分および(B)成分と反応する架橋剤である。(C)成分は、(A)成分である化合物の熱架橋性基、及び(B)成分に含まれるヒドロキシ基と結合する。そして、本実施の形態の硬化膜形成組成物は、硬化膜として、光反応効率の高い配向材を形成することができる。
【0058】
(C)成分である架橋剤としては、エポキシ化合物、メチロール化合物およびイソシアナート化合物等の化合物が挙げられるが、好ましくはメチロール化合物が挙げられる。中でも、(C)成分である架橋剤としては、前記(A)成分の熱架橋可能な官能基と架橋を形成する基を2個以上有する化合物が好ましく、例えばメチロール基またはアルコキシメチル基を2個以上有する架橋剤であることが好ましい。これらの基を有する化合物としては、例えば、アルコキシメチル化グリコールウリル、アルコキシメチル化ベンゾグアナミンおよびアルコキシメチル化メラミン等のメチロール化合物が挙げられる。
【0059】
上述したメチロール化合物の具体例としては、例えば、アルコキシメチル化グリコールウリル、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン、アルコキシメチル化メラミン、テトラ(アルコキシメチル)ビスフェノール及びテトラ(ヒドロキシメチル)ビスフェノール等の化合物が挙げられる。
【0060】
アルコキシメチル化グリコールウリルの具体例としては、例えば、1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキス(ブトキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキス(メトキシメチル)尿素、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)-4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリノン、および1,3-ビス(メトキシメチル)-4,5-ジメトキシ-2-イミダゾリノン等が挙げられる。市販品として、オルネクスジャパン(株)(旧三井サイテック(株))製グリコールウリル化合物(商品名:サイメル(登録商標)1170、パウダーリンク(登録商標)1174)等の化合物、メチル化尿素樹脂(商品名:UFR(登録商標)65)、ブチル化尿素樹脂(商品名:UFR(登録商標)300、U-VAN10S60、U-VAN10R、U-VAN11HV)、DIC(株)(旧大日本インキ化学工業(株))製尿素/ホルムアルデヒド系樹脂(高縮合型、商品名:ベッカミン(登録商標)J-300S、同P-955、同N)等が挙げられる。
【0061】
アルコキシメチル化ベンゾグアナミンの具体例としては、例えば、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン等が挙げられる。市販品として、オルネクスジャパン(株)(旧三井サイテック(株))製(商品名:サイメル(登録商標)1123)、(株)三和ケミカル製(商品名:ニカラック(登録商標)BX-4000、同BX-37、同BL-60、同BX-55H)等が挙げられる。
【0062】
アルコキシメチル化メラミンの具体例としては、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン等が挙げられる。市販品として、オルネクスジャパン(株)(旧三井サイテック(株))製メトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:サイメル(登録商標)300、同301、同303、同350)、ブトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:マイコート(登録商標)506、同508)、三和ケミカル社製メトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:ニカラック(登録商標)MW-30、同MW-22、同MW-11、同MW-100LM、同MS-001、同MX-002、同MX-730、同MX-750、同MX-035)、ブトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:ニカラック(登録商標)MX-45、同MX-410、同MX-302)等が挙げられる。
【0063】
テトラ(アルコキシメチル)ビスフェノール及びテトラ(ヒドロキシメチル)ビスフェノールの例としては、テトラ(アルコキシメチル)ビスフェノールA、テトラ(ヒドロキシメチル)ビスフェノールA等が挙げられる。
【0064】
また、(C)成分である架橋剤としては、このようなアミノ基の水素原子がメチロール基またはアルコキシメチル基で置換されたメラミン化合物、尿素化合物、グリコールウリル化合物およびベンゾグアナミン化合物を縮合させて得られる化合物であってもよい。例えば、米国特許第6323310号に記載されているメラミン化合物およびベンゾグアナミン化合物から製造される高分子量の化合物が挙げられる。前記メラミン化合物の市販品としては、商品名:サイメル(登録商標)303(オルネクスジャパン(株)(旧三井サイテック(株))等が挙げられ、前記ベンゾグアナミン化合物の市販品としては、商品名:サイメル(登録商標)1123(オルネクスジャパン(株)(旧三井サイテック(株))等が挙げられる。
【0065】
さらに、(C)成分である架橋剤としては、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルメタクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルメタクリルアミド等のヒドロキシメチル基(すなわちメチロール基)またはアルコキシメチル基で置換されたアクリルアミド化合物またはメタクリルアミド化合物を使用して製造されるポリマーも用いることができる。
【0066】
そのようなポリマーとしては、例えば、ポリ(N-ブトキシメチルアクリルアミド)、N-ブトキシメチルアクリルアミドとスチレンとの共重合体、N-ヒドロキシメチルメタクリルアミドとメチルメタクリレートとの共重合体、N-エトキシメチルメタクリルアミドとベンジルメタクリレートとの共重合体、及びN-ブトキシメチルアクリルアミドとベンジルメタクリレートと2-ヒドロキシプロピルメタクリレートとの共重合体等が挙げられる。
【0067】
このようなポリマーの重量平均分子量(ポリスチレン換算値)は、1,000乃至500,000であり、好ましくは、2,000乃至200,000であり、より好ましくは3,000乃至150,000であり、更に好ましくは3,000乃至50,000である。
【0068】
これらの架橋剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0069】
本実施形態の硬化膜形成組成物における(C)成分の架橋剤の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に基づいて、5質量部乃至500質量部であることが好ましく、より好ましくは10質量部乃至400質量部である。
【0070】
<(D)成分>
本実施形態の硬化膜形成組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分に加えて、さらに、(D)成分として架橋触媒を含有することができる。
(D)成分である架橋触媒としては、例えば、酸または熱酸発生剤とすることができる。この(D)成分は、本実施形態の硬化膜形成組成物の熱硬化反応を促進させることにおいて有効である。
【0071】
(D)成分としては、スルホン酸基含有化合物、塩酸またはその塩、およびプリベークまたはポストベーク時に熱分解して酸を発生する化合物、すなわち温度80℃から250℃で熱分解して酸を発生する化合物であれば特に限定されるものではない。
【0072】
そのような化合物としては、例えば、塩酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、カンファスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-フェノールスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、メシチレンスルホン酸、p-キシレン-2-スルホン酸、m-キシレン-2-スルホン酸、4-エチルベンゼンスルホン酸、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロ(2-エトキシエタン)スルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ノナフルオロブタン-1-スルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸またはその水和物や塩等が挙げられる。
【0073】
また、熱により酸を発生する化合物としては、例えば、ビス(トシルオキシ)エタン、ビス(トシルオキシ)プロパン、ビス(トシルオキシ)ブタン、p-ニトロベンジルトシレート、o-ニトロベンジルトシレート、1,2,3-フェニレントリス(メチルスルホネート)、p-トルエンスルホン酸ピリジニウム塩、p-トルエンスルホン酸モルフォニウム塩、p-トルエンスルホン酸エチルエステル、p-トルエンスルホン酸プロピルエステル、p-トルエンスルホン酸ブチルエステル、p-トルエンスルホン酸イソブチルエステル、p-トルエンスルホン酸メチルエステル、p-トルエンスルホン酸フェネチルエステル、シアノメチルp-トルエンスルホネート、2,2,2-トリフルオロエチルp-トルエンスルホネート、2-ヒドロキシブチルp-トルエンスルホネート、N-エチル-p-トルエンスルホンアミド、及び下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0074】
【化3】
【0075】
【化4】
【0076】
【化5】
【0077】
【化6】
【0078】
【化7】
【0079】
【化8】
【0080】
本実施形態の硬化膜形成組成物における(D)成分の含有量は、(A)成分の化合物と(B)成分のポリマーとの合計量の100質量部に対して、好ましくは0.01質量部乃至20質量部、より好ましくは0.1質量部乃至18質量部、更に好ましくは0.5質量部乃至15質量部である。(D)成分の含有量を0.01質量部以上とすることで、本実施形態の硬化膜形成組成物に充分な熱硬化性および溶剤耐性を付与することができ、さらに光照射に対する高い感度をも付与することができる。
【0081】
<溶剤>
本実施形態の硬化膜形成組成物は、主として溶剤に溶解した溶液状態で用いられる。その際に使用する溶剤は、(A)成分、(B)成分および(C)成分、必要に応じて(D)成分、および/または、後述するその他添加剤を溶解できればよく、その種類および構造などは特に限定されるものでない。
【0082】
溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ブタノン、3-メチル-2-ペンタノン、2-ペンタノン、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、およびN-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0083】
これらの溶剤は、1種単独でまたは2種以上の組合せで使用することができる。
【0084】
<その他添加剤>
さらに、本実施形態の硬化膜形成組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、増感剤、シランカップリング剤、界面活性剤、レオロジー調整剤、顔料、染料、保存安定剤、消泡剤、酸化防止剤等を含有することができる。
【0085】
例えば、増感剤は、本実施形態の硬化膜形成組成物を用いて熱硬化膜を形成した後、光反応を促進することにおいて有効である。
【0086】
その他添加剤の一例である増感剤としては、ベンゾフェノン、アントラセン、アントラキノン、チオキサントン等およびその誘導体、並びにニトロフェニル化合物等が挙げられる。これらのうち、ベンゾフェノン誘導体およびニトロフェニル化合物が好ましい。
好ましい化合物の具体例としてN,N-ジエチルアミノベンゾフェノン、2-ニトロフルオレン、2-ニトロフルオレノン、5-ニトロアセナフテン、4-ニトロビフェニル、4-ニトロけい皮酸、4-ニトロスチルベン、4-ニトロベンゾフェノン、5-ニトロインドール等が挙げられる。特に、ベンゾフェノンの誘導体であるN,N-ジエチルアミノベンゾフェノンが好ましい。
【0087】
これらの増感剤は上記のものに限定されるものではない。また、増感剤は単独でまたは2種以上の化合物を組み合わせて併用することが可能である。
【0088】
本実施形態の硬化膜形成組成物における増感剤の使用割合は、(A)成分の化合物と(B)成分の芳香族環を有するポリエステルポリオールとの合計質量の100質量部に対して0.1質量部乃至20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2質量部乃至10質量部である。
【0089】
<硬化膜形成組成物の調製>
本実施形態の硬化膜形成組成物は、(A)成分である低分子の光配向成分と、(B)成分である芳香族環を有するポリエステルポリオールと、(C)成分である架橋剤を含有する。そして、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他の添加剤を含有することができる。
【0090】
(A)成分と(B)成分の配合比は、質量比で5:95乃至60:40が好ましい。
【0091】
硬化膜の好ましい例は、以下のとおりである。
[1]:(A)成分と(B)成分の配合比が質量比で5:95乃至60:40であり、(A)成分と(B)成分との合計量の100質量部に基づいて、5質量部乃至500質量部の(C)成分を含有する硬化膜形成組成物の塗布物から形成される乾燥焼成膜であって、その膜厚が3μm以上20μm以下である、光配向性基を有する硬化膜。
【0092】
[2]:(A)成分と(B)成分との合計量の100質量部に基づいて、5質量部乃至500質量部の(C)成分、溶剤を含有する硬化膜形成組成物の塗布物から形成される乾燥焼成膜であって、その膜厚が3μm以上20μm以下である、光配向性基を有する硬化膜。
【0093】
[3]:(A)成分と(B)成分との合計量の100質量部に基づいて、5質量部乃至500質量部の(C)成分、0.01質量部乃至20質量部の(D)成分、溶剤を含有する硬化膜形成組成物の塗布物から形成される乾燥焼成膜であって、その膜厚が3μm以上20μm以下である、光配向性基を有する硬化膜。
【0094】
本実施形態の硬化膜形成組成物を溶液として用いる場合の配合割合、調製方法等を以下に詳述する。
本実施形態の硬化膜形成組成物における固形分の割合は、各成分が均一に溶剤に溶解している限り、特に限定されるものではないが、1質量%乃至80質量%であり、好ましくは3質量%乃至60質量%であり、より好ましくは5質量%乃至40質量%である。ここで、固形分とは、硬化膜形成組成物の全成分から溶剤を除いたものをいう。
【0095】
本実施形態の硬化膜形成組成物の調製方法は、特に限定されない。調製法としては、例えば、溶剤に溶解した(B)成分の溶液に(A)成分、(C)成分および必要に応じて(D)成分を所定の割合で混合し、均一な溶液とする方法、或いは、この調製法の適当な段階において、必要に応じてその他添加剤をさらに添加して混合する方法が挙げられる。
【0096】
また、調製された硬化膜形成組成物の溶液は、孔径が0.2μm程度のフィルタなどを用いて濾過した後、使用することが好ましい。
【0097】
<硬化膜、配向材および位相差材>
本実施形態の硬化膜形成組成物の溶液を基板(例えば、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、金属、例えば、アルミニウム、モリブデン、クロムなどが被覆された基板、ガラス基板、石英基板、ITO基板等)やフィルム(例えば、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、アクリルフィルム等の樹脂フィルム)等の上に、バーコート、回転塗布、流し塗布、ロール塗布、スリット塗布、スリットに続いた回転塗布、インクジェット塗布、印刷などによって塗布して塗膜を形成し、その後、ホットプレートまたはオーブン等で加熱乾燥することにより、硬化膜を形成することができる。
【0098】
加熱乾燥の条件としては、硬化膜から形成される配向材の成分が、その上に塗布される重合性液晶溶液に溶出しない程度に、硬化反応が進行すればよく、例えば、温度60℃乃至200℃、時間0.4分間乃至60分間の範囲の中から適宜選択された加熱温度および加熱時間が採用される。加熱温度および加熱時間は、好ましくは70℃乃至160℃、0.5分間乃至10分間である。
【0099】
本実施形態の硬化膜形成組成物を用いて形成される硬化膜の膜厚は、例えば、3μm以上20μm以下であり、使用する基板の段差や光学的、電気的性質を考慮し適宜選択することができる。
【0100】
このようにして形成された硬化膜は、偏光UV照射を行うことで配向材、すなわち、重合性液晶等の液晶性を有する化合物を配向させる部材として機能させることができる。
【0101】
偏光UVの照射方法としては、通常150nm乃至450nmの波長の紫外光乃至可視光が用いられ、室温または加熱した状態で垂直または斜め方向から直線偏光を照射することによって行われる。
【0102】
本実施形態の硬化膜から形成された配向材は耐溶剤性および耐熱性を有しているため、この配向材上に、重合性液晶溶液からなる位相差材料を塗布した後、液晶の相転移温度まで加熱することで位相差材料を液晶状態とし、配向材上で配向させる。そして、配向状態となった位相差材料をそのまま硬化させ、光学異方性を有する層として位相差材を形成することができる。
【0103】
位相差材料としては、例えば、重合性基を有する液晶モノマーおよびそれを含有する組成物等が用いられる。そして、配向材を形成する基板がフィルムである場合には、本実施の形態の位相差材を有するフィルムは、位相差フィルムとして有用である。このような位相差材を形成する位相差材料は、液晶状態となって、配向材上で、水平配向、コレステリック配向、垂直配向、ハイブリッド配向等の配向状態をとるものがあり、それぞれ必要とされる位相差に応じて使い分けることが出来る。
【0104】
また、3Dディスプレイに用いられるパターン化位相差材を製造する場合には、本実施形態の硬化膜組成物から上記した方法で形成された硬化膜に、ラインアンドスペースパターンのマスクを介して所定の基準から、例えば、+45度の向きで偏光UV露光し、次いで、マスクを外してから-45度の向きで偏光UVを露光し、液晶の配向制御方向の異なる2種類の液晶配向領域が形成された配向材を得る。その後、重合性液晶溶液からなる位相差材料を塗布した後、液晶の相転移温度まで加熱することで位相差材料を液晶状態とし、配向材上で配向させる。そして、配向状態となった位相差材料をそのまま硬化させ、位相差特性の異なる2種類の位相差領域がそれぞれ複数、規則的に配置された、パターン化位相差材を得ることができる。
【0105】
また、上記のようにして形成された、本実施の形態の配向材を有する2枚の基板を用い、スペーサを介して両基板上の配向材が互いに向かい合うように張り合わせた後、それらの基板の間に液晶を注入して、液晶が配向した液晶表示素子とすることもできる。
そのため、本実施の形態の硬化膜は、各種位相差材(位相差フィルム)や液晶表示素子等の製造に好適に用いることができる。
【実施例
【0106】
以下、本発明の実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0107】
[実施例で用いる略記号]
以下の実施例で用いる略記号の意味は、次のとおりである。
【0108】
<原料>
BMAA:N-ブトキシメチルアクリルアミド
AIBN:α,α’-アゾビスイソブチロニトリル
【0109】
<A成分>
MCA:4-メトキシけい皮酸
【化9】
【0110】
<B成分>
APEPO:芳香族ポリエステルポリオール(下記構造単位を有する多価カルボン酸と多価アルコールで得られる液状エステルオリゴマー)
【化10】
(上記式中、R11は、C乃至Cのアルキレン、R12は芳香環を表す。)
【0111】
<C成分>
PC-1:下記の構造式で表される(nは繰り返し単位の数)。
【化11】
【0112】
<D成分>
PTSA:p-トルエンスルホン酸・一水和物
【0113】
<溶剤>
実施例及び比較例の各樹脂組成物は溶剤を含有し、その溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)、酢酸ブチル(BA)、酢酸エチル(EA)、N-メチルピロリドン(NMP)、シクロペンタノン(CPN)、メチルエチルケトン(MEK)を用いた。
【0114】
<重合体の分子量の測定>
重合例におけるアクリル共重合体の分子量は、(株)Shodex社製常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GPC-101)、Shodex社製カラム(KD―803、KD-805)を用い以下のようにして測定した。
なお、下記の数平均分子量(以下、Mnと称す。)及び重量平均分子量(以下、Mwと称す。)は、ポリスチレン換算値にて表した。
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
検量線作成用標準サンプル:昭和電工社製 標準ポリスチレン(分子量 約197,000、55,100、12,800、3,950、1,260、580)。
【0115】
<C成分の合成>
<重合例>
BMAA 100.0g、重合触媒としてAIBN 1.0gをPM 193.5gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル重合体溶液を得た。得られたアクリル重合体のMnは10,000、Mwは23,000であった。アクリル重合体溶液をヘキサン2000.0gに徐々に滴下して固体を析出させ、ろ過および減圧乾燥することで、重合体(PC-1)を得た。
【0116】
<液晶配向剤の調製>
<実施例1>
(A)成分としてMCA 0.047g、(B)成分としてAPEPO-1 0.065g(川崎化成工業(株)社製 RDK-133)、(C)成分として重合例で得た重合体(PC-1)を0.248g、(D)成分としてPTSA 0.012gを混合し、これに溶媒としてのPM 0.764g、BA 0.984gを加えて目視で溶解したことを確認し溶液を得た。次いで、この得られた溶液を孔径0.2μmのフィルターでろ過することにより、液晶配向剤(A-1)を調製した。なお、ここで液晶配向剤は、硬化膜形成組成物と同義である。
【0117】
<実施例2乃至実施例4>
下記表1に示す種類及び配合量の各成分を用いた以外は、実施例1と同様に操作し、各液晶配向剤(A-2)乃至(A-4)を調製した。
APEPO-2:RFK-505(川崎化成工業株式会社製)
APEPO-3:RFK-509(川崎化成工業株式会社製)
APEPO-4:RMK-342(川崎化成工業株式会社製)
【0118】
<比較例1乃至比較例2>
(B)成分に芳香環を含まないPEPO(ポリエステルポリオール)を用い、下記表1に示す種類及び配合量の各成分を用いた以外は実施例1と同様に操作し、各液晶配向剤(B-1)乃至(B-2)を調製した。
PEPO-1:ポリライト8651(DIC株式会社社製)
PEPO-2:PLACCEL410(株式会社ダイセル社製)
【0119】
【表1】
【0120】
<水平配向用重合性液晶溶液の作製>
<実施例5>
水平配向用重合性液晶であるLC-242 1.463g(BASF社製)、光ラジカル開始剤であるIrgacure907 0.029g(BASF社製)、レベリング材であるBYK-361N 0.075gを加え、さらに溶媒としてN-メチルピロリドン 2.776gを加え、2時間攪拌し目視で溶解していることを確認し、30質量%の重合性液晶溶液LC-1を得た。
【0121】
<実施例6>
実施例5と同様に操作を行い、溶媒をN-メチルピロリドンからシクロペンタノンに変更し、重合性液晶溶液LC-2を得た。
【0122】
<実施例7>
実施例5と同様に操作を行い、溶媒をN-メチルピロリドンからMEKに変更し、重合性液晶溶液LC-3を得た。
【0123】
<液晶配向膜の形成及び位相差フィルムの作製>
<実施例8>
実施例1で調製した液晶配向剤(A-1)を、基板としてのTACフィルム上にバーコーターを用いてWet膜厚30μmにて塗布した。熱循環式オーブン内にて120℃で1分間の加熱乾燥を行い、フィルム上に硬化膜を形成した。次いで、この硬化膜表面に313nmの直線偏光を10mJ/cmの露光量で垂直に照射し、液晶配向膜を形成した。水平配向用重合性液晶溶液LC-1を、バーコーターを用いて上記液晶配向膜上にWet膜厚6μmにて塗布した。次いで、ホットプレート上にて90℃で1分間の加熱乾燥を行った後、365nmの非偏光を300mJ/cmの露光量で垂直に照射することで重合性液晶を硬化させ、位相差フィルムを作製した。
【0124】
<実施例9乃至実施例11>
液晶配向剤として(A-2)乃至(A-4)を用い、実施例8と同様に操作し、実施例9乃至実施例11の各位相差フィルムを作製した。
【0125】
<比較例3及び比較例4>
液晶配向剤として(B-1)、(B-2)、実施例8と同様に操作し、比較例3及び比較例4の各位相差フィルムを作製した。
【0126】
<実施例12乃至実施例15>
液晶配向剤として(A-1)乃至(A-4)、水平配向用重合性液晶溶液LC-2を用い、実施例8と同様に操作し、実施例12乃至実施例15の各位相差フィルムを作製した。
【0127】
<比較例5及び比較例6>
液晶配向剤として(B-1)、(B-2)、水平配向用重合性液晶溶液LC-2を用い、実施例8と同様に操作し、比較例3及び比較例4の各位相差フィルムを作製した。
【0128】
<実施例16乃至実施例19>
液晶配向剤として(A-1)乃至(A-4)、水平配向用重合性液晶溶液LC-3を用い、実施例8と同様に操作し、実施例16乃至実施例19の各位相差フィルムを作製した。
【0129】
<比較例7及び比較例8>
液晶配向剤として(B-1)、(B-2)、水平配向用重合性液晶溶液LC-3を用い、実施例8と同様に操作し、比較例7及び比較例8の各位相差フィルムを作製した。
【0130】
上記で作製した各位相差フィルムについて、下記方法により評価を行った。その評価結果を表2に示す。
【0131】
<配向性の評価>
作製した基板上の位相差フィルムを一対の偏光板で挟み込み、目視によりクロスニコル下での位相差特性の発現状況を観察した。位相差が欠陥なく発現しているものを○、位相差が発現していないものを×として「配向性」の欄に記載した。
【0132】
【表2】
【0133】
表2の結果から明らかなように、芳香環含有ポリエステルポリオールを使用することにより、液晶可溶な種々の溶媒への溶剤耐性が得られ、良溶媒であるNMPへの耐性を有し、良好な配向性を得ることができるとともに、膜厚が3μm以上の厚膜であっても透明性に優れる。一方、比較例では、NMPへの耐性が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明による硬化膜は、液晶表示素子の液晶配向膜や、液晶表示素子に内部や外部に設けられる光学異方性フィルムを形成するための配向材を形成しうる膜として非常に有用であり、特に、3Dディスプレイのパターン化位相差材の形成材料として好適である。さらに、薄膜トランジスタ(TFT)型液晶表示素子や有機EL素子などの各種ディスプレイにおける保護膜、平坦化膜および絶縁膜などの硬化膜、特に、TFT型液晶素子の層間絶縁膜、カラーフィルタの保護膜または有機EL素子の絶縁膜としても好適である。