(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】高分子及び金属微粒子を含む無電解めっき下地剤
(51)【国際特許分類】
C23C 18/18 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
C23C18/18
(21)【出願番号】P 2020561284
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2019047444
(87)【国際公開番号】W WO2020129649
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2018239963
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 有輝
(72)【発明者】
【氏名】森元 雄大
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-019335(JP,A)
【文献】国際公開第2017/142022(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/142008(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/151073(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00-20/08
C08F 226/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に無電解めっき処理により金属めっき膜を形成するための無電解めっき下地剤であって、
(A)分子内に金属分散性基及び1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーaに由来する構成単位と、分子内に架橋性基及び1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーbに由来する構成単位を含む共重合体、
(B)金属微粒子、及び
(C)溶剤
を含み、
金属分散性基は、アミド結合を有する基及びイミド結合を有する基からなる群から選ばれる基であり、
前記モノマーaが、下式(1)又は式(2)で表される化合物であり、
【化1】
(式(1)中、R
1
は、水素原子又は炭素原子数1乃至6のアルキル基を表し、Lは、O又はNを表し、R
2
は、LがNを表す場合にのみ存在し、水素原子を表すか、又は、R
1
及びR
2
は、それらが結合する原子と一緒になって、4乃至6員の環状アミドを形成してもよい。
式(2)中、R
3
は水素原子またはメチル基を表し、
R
4
は水素原子又は炭素原子数1乃至10の分岐しても良いアルキル基、炭素原子数1乃至10の分岐しても良いアルコキシル基又は、炭素原子数1乃至10の分岐しても良いアルコキシルアルキル基を表し、Lは、O又はNを表し、R
5
は、LがNを表す場合にのみ存在し、水素原子を表すか、又は、R
4
及びR
5
は、それらが結合する原子と一緒になって、4乃至6員の環状アミド、又は、4乃至6員の環状イミドを形成してもよい。)前記モノマーbが、下式(3)で表される化合物であり、
【化2】
(式(3)中、Xは、単結合、カルボニルオキシ基、アミド基又はフェニレン基を表し、Yは炭素数1ないし6のアルキレン基、炭素数1ないし6のオキシアルキレン基、分岐しても良い炭素数1ないし6のアルキルエーテル基、炭素数1ないし6のチオアルキレン基又は炭素数1ないし6のチオアルキルエーテル基を表し、Zは、架橋性基を表し、該架橋性基は、N-アルコキシメチル基、N-ヒドロキシメチル基、置換基Qを有しても良い脂環式エポキシ基、置換基Qを有しても良いオキセタン基から選ばれる基であり、置換基Qはハロゲンで置換されても良い炭素数1ないし4のアルキル基、フェニル基から選ばれる基であり、R
6
は水素原子又は炭素数1ないし4のアルキル基を表す。)
前記モノマーaと前記モノマーbを共重合させる割合は、前記モノマーaの1モルに対して、前記モノマーbが0.05モル乃至5モルであ
り、
前記(B)金属微粒子が、1~100nmの一次粒子平均粒径を有する微粒子である、下地剤。
【請求項2】
前記(A)共重合体中の金属分散性基に、前記(B)金属微粒子が付着又は配位した複合体を含む、請求項1に記載の下地剤。
【請求項3】
前記モノマーaがN-ビニルピロリドン、N-ビニルアセトアミド又はN-ビニルホルムアミドである請求項
1又は請求項2に記載の下地剤。
【請求項4】
前記(B)金属微粒子が、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、スズ(Sn)、白金(Pt)及び金(Au)からなる群より選択される少なくとも一種の金属の微粒子である、請求項1乃至請求項
3のうちいずれか一項に記載の下地剤。
【請求項5】
前記(B)金属微粒子が、パラジウム微粒子である、請求項
4に記載の下地剤。
【請求項6】
さらに、(D)非ラジカル重合性架橋性基を有するベース樹脂を含有する請求項1乃至請求項
5の何れか一項に記載の下地剤。
【請求項7】
さらに、(E)架橋剤を含有する請求項1乃至請求項
6の何れか一項に記載の下地剤。
【請求項8】
請求項1乃至請求項
7のうち何れか一項に記載の無電解めっき下地剤を用いて得られる、無電解金属めっきの下地層。
【請求項9】
請求項
8に記載の無電解金属めっきの下地層の上に形成された金属めっき膜。
【請求項10】
基材と、該基材上に形成された請求項
8に記載の無電解金属めっきの下地層と、該無電解金属めっきの下地層の上に形成された金属めっき膜とを具備する、金属被膜基材。
【請求項11】
下記(1)工程及び(2)工程を含む、金属被膜基材の製造方法。
(1)工程:請求項1乃至請求項
7のうち何れか一項に記載の無電解めっき下地剤を基材上に塗布し、無電解金属めっきの下地層を該基材の上に具備する工程、
(2)工程:該下地層を具備した基材を無電解めっき浴に浸漬し、金属めっき膜を該下地層の上に形成する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子、金属微粒子を含む無電解めっき下地剤めっき下地剤に関する。
【背景技術】
【0002】
無電解めっきは、基材をめっき液に浸漬するだけで、基材の種類や形状に関係なく厚さの均一な被膜が得られ、プラスチックやセラミック、ガラス等の不導体材料にも金属めっき膜を形成できることから、例えば、自動車部品などの樹脂成形体への高級感や美観の付与といった装飾用途や、電磁遮蔽、プリント基板及び大規模集積回路等の配線技術など、種々の分野において幅広く用いられている。
通常、無電解めっきにより基材(被めっき体)上に金属めっき膜を形成する場合、基材と金属めっき膜の密着性を高めるための前処理が行われる。具体的には、まず種々のエッチング手段によって被処理面を粗面化及び/又は親水化し、次いで、被処理面上へのめっき触媒の吸着を促す吸着物質を被処理面上に供給する感受性化処理(sensitization)と、被処理面上にめっき触媒を吸着させる活性化処理(activation)とを行う。典型的には、感受性化処理は塩化第一スズの酸性溶液中に被処理物を浸漬し、これにより、還元剤として作用し得る金属(Sn2+)が被処理面に付着する。そして、感受性化された被処理面に対して、活性化処理として塩化パラジウムの酸性溶液中に被処理物を浸漬させる。これにより、溶液中のパラジウムイオンは還元剤である金属(スズイオン:Sn2+)によって還元され、活性なパラジウム触媒核として被処理面に付着する。こうした前処理後、無電解めっき液に浸漬して、金属めっき膜を被処理面上に形成する。
【0003】
これに対して、アンモニウム基を有する高分岐ポリマー及び金属微粒子を含む組成物を無電解めっきの下地剤(めっき触媒)として使用した例が報告され、従来の無電解めっき処理の前処理工程(粗面化処理)において問題となっていたクロム化合物(クロム酸)の使用を回避し、また前処理の工程数を削減するなど、環境面やコスト面、煩雑な操作性などの種々の改善を図った無電解めっき下地剤の提案がなされている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際特許出願公開第2012/141215号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の無電解めっきの下地剤として提案されたアンモニウム基を有する高分岐ポリマー及び金属微粒子を含む組成物にあっては、これを半導体製造等における配線技術に適用した場合、そこに含まれる高分岐ポリマーの耐熱温度が低いため、半田リフローや高温処理に対して該高分岐ポリマーが分解するおそれがある。また、5G等の次世代通信機器に用いられる、電気特性に優れた基板であるLCP(液晶ポリマー)基板への密着性の付与が難しいという問題もあった。
このように、これまで提案された無電解めっき下地剤にあっては、めっき下地剤としてのめっき性能に加え、ハロゲン原子や硫黄原子等の腐食性原子を含まず、高耐熱性を有するめっきを与えることができ、様々な組成に容易にワニス化可能で、高い金属微粒子分散安定性を有するといった種々の性能、LCP基板への密着性、さらには少ないプロセスで簡便に製造できるといった操作性、これらの特性を十分に実現した無電解めっき下地剤の提案はこれまでにない。
本発明はこうした課題に着目し、高い耐熱性を有し、LCP基板への密着性に優れるめっき下地層を形成でき、さらにはその製造においても低コスト化を実現できる、無電解めっきの前処理工程として用いられる新たな下地剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、金属分散性基を含有し、但し腐食性原子を含まないポリマーを検討し、該ポリマーと金属微粒子とを組み合わせ、これを基材上に塗布して得られる層が、無電解金属めっきの下地層としてめっき性のみならず、高い耐熱性を有し、LCP基板への密着性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち本発明は、第1観点として、基材上に無電解めっき処理により金属めっき膜を形成するための無電解めっき下地剤であって、
(A)分子内に金属分散性基及び1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーaに由来する構成単位と、分子内に架橋性基及び1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーbに由来する構成単位を含む共重合体、
(B)金属微粒子、及び
(C)溶剤
を含む下地剤に関する。
第2観点として、前記(A)共重合体中の金属分散性基に、前記(B)金属微粒子が付着又は配位した複合体を含む、第1観点に記載の下地剤に関する。
第3観点として、前記モノマーaが、ビニル基及び(メタ)アクリロイル基の何れか一方を有する化合物である、第1観点又は第2観点に記載の下地剤に関する。
第4観点として、前記モノマーaが、下式(1)又は(2)で表される化合物である第3観点に記載の下地剤に関する。
【化1】
(式(1)中、R
1は、水素原子又は炭素原子数1乃至6のアルキル基を表し、Lは、O又はNを表し、R
2は、LがNを表す場合にのみ存在し、水素原子を表すか、又は、R
1及びR
2は、それらが結合する原子と一緒になって、4乃至6員の環状アミドを形成してもよい。
式(2)中、R
3は水素原子またはメチル基を表し、
R
4は水素原子又は炭素原子数1乃至10の分岐しても良いアルキル基、炭素原子数1乃至10の分岐しても良いアルコキシル基又は、炭素原子数1乃至10の分岐しても良いアルコキシルアルキル基を表し、Lは、O又はNを表し、R
5は、LがNを表す場合にのみ存在し、水素原子を表すか、又は、R
4及びR
5は、それらが結合する原子と一緒になって、4乃至6員の環状アミド、又は、4乃至6員の環状イミドを形成してもよい。)
第5観点として、前記モノマーaがN-ビニルピロリドン、N-ビニルアセトアミド又はN-ビニルホルムアミドである第4観点に記載の下地剤に関する。
第6観点として、前記モノマーbが、ビニル基及び(メタ)アクリロイル基の何れか一方を有する化合物である、第1観点又は第2観点に記載の下地剤に関する。
第7観点として、前記モノマーbが、下式(3)で表される化合物である第6観点に記載の下地剤に関する。
【化2】
(式(3)中、Xは、単結合、カルボニルオキシ基、アミド基又はフェニレン基を表し、Yは炭素数1ないし6のアルキレン基、炭素数1ないし6のオキシアルキレン基、分岐しても良い炭素数1ないし6のアルキルエーテル基、炭素数1ないし6のチオアルキレン基又は炭素数1ないし6のチオアルキルエーテル基を表し、Zは、架橋性基を表し、R
6は水素原子又は炭素数1ないし4のアルキル基を表す。)
第8観点として、前記(A)共重合体を与えるモノマーは、前記モノマーaのモル数に対して5~500%のモル数となる量の前記モノマーbを含む、第1観点乃至第7観点のうちいずれか一つに記載の下地剤に関する。
第9観点として、前記(B)金属微粒子が、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、スズ(Sn)、白金(Pt)及び金(Au)からなる群より選択される少なくとも一種の金属の微粒子である、第1観点乃至第8観点のうちいずれか一つに記載の下地剤に関する。
第10観点として、前記(B)金属微粒子が、パラジウム微粒子である、第9観点に記載の下地剤に関する。
第11観点として、前記(B)金属微粒子が、1~100nmの一次粒子平均粒径を有する微粒子である、第1観点乃至第10観点のうちいずれか一つに記載の下地剤に関する。
第12観点として、さらに、(D)非ラジカル重合性架橋性基を有するベース樹脂を含有する第1観点乃至第11観点の何れか一つに記載の下地剤に関する。
第13観点として、さらに、(E)架橋剤を含有する第1観点乃至第12観点の何れか一つに記載の下地剤に関する。
第14観点として、第1観点乃至第13観点のうち何れか一つに記載の無電解めっき下地剤を用いて得られる、無電解金属めっきの下地層に関する。
第15観点として、第14観点に記載の無電解金属めっきの下地層の上に形成された金属めっき膜に関する。
第16観点として、基材と、該基材上に形成された第14観点に記載の無電解金属めっきの下地層と、該無電解金属めっきの下地層の上に形成された金属めっき膜とを具備する、金属被膜基材に関する。
第17観点として、下記(1)工程及び(2)工程を含む、金属被膜基材の製造方法に関する。
(1)工程:第1観点乃至第13観点のうち何れか一つに記載の無電解めっき下地剤を基材上に塗布し、無電解金属めっきの下地層を該基材の上に具備する工程、
(2)工程:該下地層を具備した基材を無電解めっき浴に浸漬し、金属めっき膜を該下地層の上に形成する工程。
【発明の効果】
【0008】
本発明の下地剤は、基材上に塗布するだけで容易に無電属めっきの下地層を形成することができる。また本発明によれば、優れためっき性能と高い耐熱性を有し、LCP基板への密着性に優れる、めっきの下地層を形成することができる。しかも本発明の下地剤は、様々な組成にて容易にワニス化が可能であり、高い金属微粒子分散安定性を有するものとすることができる。
さらに本発明の下地剤に使用するポリマーは、少ないプロセスで簡便に調製可能であることから、めっき下地剤の製造工程の簡略化と製造コストの低減も図ることができる。
また本発明の無電解めっき下地剤から形成された無電解金属めっきの下地層は、無電解めっき浴に浸漬するだけで、容易に金属めっき膜を形成でき、基材と下地層、そして金属めっき膜とを備える金属被膜基材を容易に得ることができる。
すなわち、本発明の無電解めっき下地剤を用いて基材上に下地層を形成することにより、基材、特に、LCP基板との密着性に優れ、耐熱性を有する金属めっき膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の下地剤は、(A)上述の特定の構成単位を有する共重合体、(B)金属微粒子、及び(C)溶剤を含み、必要に応じてその他成分を含む下地剤である。
本発明の下地剤は基材上に無電解めっき処理により金属めっき膜を形成するための触媒として好適に使用される。以下、各成分について説明する。
<(A)共重合体>
【0010】
(A)成分は、分子内に金属分散性基及び1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーaに由来する構成単位と、分子内に架橋性基及び1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーbに由来する構成単位を含む共重合体である。
【0011】
[モノマーa]
本発明において、モノマーaは、分子内に金属分散性基及び1個のラジカル重合性二重結合を有する化合物である。
金属分散性基は、(B)成分の金属微粒子と付着及び/又は配位等の相互作用をすることによって、金属微粒子の組成物中における分散性を向上させ、それにより金属微粒子を組成物中に安定に存在させるための基である。このような金属分散性基としては、カルボニルと、それに共有結合で結合した窒素原子を有する部位、すなわち、-C(=O)-N-部位を有する置換基が好ましく、より具体的には、アミド結合を有する基及びイミド結合を有する基からなる群から選ばれる基が好ましい。
ラジカル重合性二重結合としては、好ましくはビニル基及び(メタ)アクリロイル基の何れか一方を有する化合物であることが好ましい。なお、モノマーaがラジカル重合性二重結合として(メタ)アクリロイル基を有する化合物である場合、該(メタ)アクリロイル基に含まれるカルボニル基[-C(=O)-]が、金属分散性基としてのアミド基におけるカルボニル基と重複する構造となっていてもよい。
【0012】
具体的なモノマーaとしては、例えば、下記式(1)または式(2)で表される化合物が挙げられる。
【化3】
(式(1)中、R
1は、水素原子又は炭素原子数1乃至6のアルキル基を表し、Lは、O又はNを表し、R
2は、LがNを表す場合にのみ存在し、水素原子を表すか、又は、R
1及びR
2は、それらが結合する原子と一緒になって、4乃至6員の環状アミドを形成してもよい。
式(2)中、R
3は水素原子またはメチル基を表し、
R
4は水素原子又は炭素原子数1乃至10の分岐しても良いアルキル基、炭素原子数1乃至10の分岐しても良いアルコキシル基又は、炭素原子数1乃至10の分岐しても良いアルコキシルアルキル基を表し、Lは、O又はNを表し、R
5は、LがNを表す場合にのみ存在し、水素原子を表すか、又は、R
4及びR
5は、それらが結合する原子と一緒になって、4乃至6員の環状アミド、又は、4乃至6員の環状イミドを形成してもよい。)
【0013】
このようなモノマーaとしては、例えばN-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-イソブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-オクチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシブチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソブトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルフタルイミド、N-ビニルコハク酸イミド等が挙げられる。
【0014】
中でも、モノマーaとしては、モノマーの金属への配位能の観点から式(1)で表されるモノマーが好ましく、N-ビニルアミド基を有するモノマーがより好ましく、入手性等を考慮すると、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミドが更に好ましい。
これらモノマーaは一種を単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよい
【0015】
[モノマーb]
モノマーbは、分子内に架橋性基及び1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーである。
架橋性基としては、N-アルコキシメチル基、N-ヒドロキシメチル基、置換基Qを有しても良いエポキシ基、置換基Qを有しても良い脂環式エポキシ基、置換基Qを有しても良いオキセタン基等が挙げられる。置換基Qとしてはハロゲンで置換されても良い炭素数1ないし4のアルキル基、フェニル基等が挙げられる。
【0016】
具体的なモノマーbとしては、例えば、下式(3)で表される化合物が挙げられる。
【化4】
(式(3)中、Xは、単結合、カルボニルオキシ基、アミド基又はフェニレン基を表し、Yは炭素数1ないし6のアルキレン基、炭素数1ないし6のオキシアルキレン基、炭素数1ないし6のアルキルエーテル基、炭素数1ないし6のチオアルキレン基又は炭素数1ないし6のチオアルキルエーテル基を表し、Zは、架橋性基を表し、R
6は水素原子又は炭素数1ないし4のアルキル基を表す。)
【0017】
Yで表される炭素数1ないし6のアルキレン基は、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、その具体例としては限定されるものではないが、メチレン基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基等が挙げられる。
【0018】
炭素数1ないし6のオキシアルキレン基は、直鎖上、分岐状のいずれでもよく、-O-R7-を満たす基でありR7の具体例としては上述した1ないし6のアルキレン基と同じである。
【0019】
炭素数1ないし6のアルキルエーテル基は、直鎖上、分岐状のいずれでもよく、-R8-O-R8-を満たす基であり、R8の具体例としては限定されるものではないが、それぞれ独立してメチレン基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基等が挙げられる。但し二つのR8の炭素数の合計は6までとする。
【0020】
炭素数1ないし6のチオアルキレン基は、直鎖上、分岐状のいずれでもよく、-S-R7-を満たす基でありR7は上述した通りである。
【0021】
炭素数1ないし6のアルキルエーテル基は、直鎖上、分岐状のいずれでもよく、-R8-O-R8-は上述した通りである。
【0022】
このようなモノマーの具体例としては限定されるものではないが、以下のものが挙げられる。
【0023】
1個のラジカル重合性二重結合を有し、さらにN-アルコキシメチル基を有するモノマーとしては、N-ブトキシメチルアクリルアミド、N-イソブトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルメタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド等が挙げられる。
【0024】
1個のラジカル重合性二重結合を有し、さらにN-ヒドロキシメチル基を有するモノマーとしては、限定されるものではないが、例えば、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、N-ヒドロキシメチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0025】
1個のラジカル重合性二重結合を有し、さらにエポキシ基を有するモノマーとしては、限定されるものではないが例えばアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸グリシジル、α-n-プロピルアクリル酸グリシジル、α-n-ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸-3,4-エポキシブチル、メタクリル酸-3,4-エポキシブチル、アクリル酸-6,7-エポキシヘプチル、メタクリル酸-6,7-エポキシヘプチル、α-エチルアクリル酸-6,7-エポキシヘプチル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロへキシルメタクリレートなどが挙げられる。これらのうち、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸-6,7-エポキシヘプチル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロへキシルメタクリレートなどが好ましく用いられる。これらは、単独であるいは組み合わせて用いられる。
【0026】
1個のラジカル重合性二重結合を有し、さらにオキセタン基を有するモノマーとしては、限定されるものではないが、例えば、オキセタン基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができる。このようなモノマーの中では、3-(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)-3-エチル-オキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)-3-エチル-オキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)-2-トリフロロメチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)-2-トリフロロメチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)-2-フェニル-オキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)-2-フェニル-オキセタン、2-(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、2-(アクリロイルオキシメチル)オキセタン、2-(メタクリロイルオキシメチル)-4-トリフロロメチルオキセタン、2-(アクリロイルオキシメチル)-4-トリフロロメチルオキセタンが好ましく、3-(メタクリロイルオキシメチル)-3-エチル-オキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)-3-エチル-オキセタン等が好ましく用いられる。
これらの中でも、基板との密着性の観点からXはカルボニルオキシ基又はメチレン基であることが好ましく、Zはエポキシ基であることが好ましい。
【0027】
本発明では、(A)成分の共重合体を製造する際に、上記モノマーaおよび上記モノマーbとともに、その他モノマーを使用することもできる。そのようなその他モノマーとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、3-メトキシブチルメタクリレート、γ-ブチロラクトンメタクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルメタクリレート、8-メチル-8-トリシクロデシルメタクリレート、8-エチル-8-トリシクロデシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、γ-ブチロラクトンアクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルアクリレート、8-メチル-8-トリシクロデシルアクリレート、8-エチル-8-トリシクロデシルアクリレート、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、及びビニルビフェニル等が挙げられる。
【0028】
本発明においては、(A)成分の共重合体を製造する際に、上記その他モノマーを用いることで、得られる(A)成分の共重合体の、めっき液等に対する耐性を付与することもできる。
【0029】
本発明に用いる特定共重合体を得る方法は特に限定されないが、例えば、上記モノマーa、上記モノマーbと所望によりその他モノマーと重合開始剤等とを共存させた溶剤中において、50乃至110℃の温度下で重合反応させることにより得られる。その際、用いられる溶剤は、特定官能基を有するモノマー、所望により用いられる特定官能基を有さないモノマー及び重合開始剤等を溶解するものであれば特に限定されない。具体例としては、後述する<(C)溶剤>に記載する。
前記方法により得られる特定共重合体は、通常、溶剤に溶解した溶液の状態である。
【0030】
また、上記方法で得られた特定共重合体の溶液を、攪拌中のジエチルエーテルや水等に投入して沈殿させ、生成した沈殿物を濾過・洗浄した後に、常圧又は減圧下で、常温乾燥又は加熱乾燥し、特定共重合体の粉体とすることができる。前記操作により、特定共重合体と共存する重合開始剤及び未反応のモノマーを除去することができ、その結果、精製した特定共重合体の粉体が得られる。一度の操作で充分に精製できない場合は、得られた粉体を溶剤に再溶解させ、上記の操作を繰り返し行えば良い。
【0031】
本発明においては、特定共重合体は粉体形態で、あるいは精製した粉末を後述する溶剤に再溶解した溶液形態で用いてもよい。
【0032】
また、本発明においては、(A)成分の特定共重合体は、複数種の特定共重合体の混合物であってもよい。
【0033】
本発明において、前記モノマーaと前記モノマーbを共重合させる割合は、反応性や、めっき性の観点から、好ましくは前記モノマーa 1モルに対して前記モノマーb 0.05モル乃至5モル、特に好ましくは0.1モル乃至3モルである。
【0034】
本発明において、(A)成分である共重合体を製造する際に上記その他モノマーを、用いる場合は、前記モノマーaとモノマーbのモル数の合計に対して、1乃至200%のモル数の量、より好ましくは10乃至100%のモル数の量である。
【0035】
<(B)金属微粒子>
本発明の下地剤に用いられる(B)金属微粒子としては特に限定されず、金属種としては鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、スズ(Sn)、白金(Pt)及び金(Au)並びにこれらの合金が挙げられ、これらの金属の1種類でもよいし2種以上の合金でも構わない。中でも好ましい金属微粒子としてはパラジウム微粒子が挙げられる。なお、金属微粒子として、前記金属の酸化物を用いてもよい。
【0036】
前記金属微粒子は、例えば金属塩の溶液を高圧水銀灯により光照射する方法や、該溶液に還元作用を有する化合物(所謂還元剤)を添加する方法等により、金属イオンを還元することによって得られる。例えば、上記(A)成分ポリマーを溶解した溶液に金属塩の溶液を添加してこれに紫外線を照射したり、或いは、該溶液に金属塩の溶液及び還元剤を添加するなどして、金属イオンを還元することにより、(A)成分ポリマーと金属微粒子の複合体を形成させながら、(A)成分ポリマー及び金属微粒子を含む下地剤を調製することができる。
【0037】
前記金属塩としては、塩化金酸、硝酸銀、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、塩化スズ、塩化第一白金、塩化白金酸、Pt(dba)2[dba=ジベンジリデンアセトン]、Pt(cod)2[cod=1,5-シクロオクタジエン]、Pt(CH3)2(cod)、塩化パラジウム、酢酸パラジウム(Pd(OC(=O)CH3)2)、硝酸パラジウム、Pd2(dba)3・CHCl3、Pd(dba)2、塩化ロジウム、酢酸ロジウム、演歌ルテニウム、酢酸ルテニウム、Ru(cod)(cot)[cot=シクロオクタトリエン]、塩化イリジウム、酢酸イリジウム、Ni(cod)2等が挙げられる。
前記還元剤としては、特に限定されるものではなく、種々の還元剤を用いることができ、得られる下地剤に含有させる金属種等により還元剤を選択することが好ましい。用いることができる還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等の水素化ホウ素金属塩;水素化アルミニウムリチウム、水素化アルミニウムカリウム、水素化アルミニウムセシウム、水素化アルミニウムベリリウム、水素化アルミニウムマグネシウム、水素化アルミニウムカルシウム等の水素化アルミニウム塩;ヒドラジン化合物;クエン酸及びその塩;コハク酸及びその塩;アスコルビン酸及びその塩;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ポリオール等の第一級又は第二級アルコール類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン[TMEDA]、エチレンジアミン四酢酸[EDTA]等の第三級アミン類;ヒドロキシルアミン;トリ-n-プロピルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリエトキシホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン[DPPE]、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン[DPPP]、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン[DPPF]、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル[BINAP]等のホスフィン類などが挙げられる。
【0038】
前記金属微粒子の一次粒子平均粒径は1~100nmが好ましい。該金属微粒子の一次粒子平均粒径を100nm以下とすることで、表面積の減少が少なく十分な触媒活性が得られる。一次粒子平均粒径としては、75nm以下が更に好ましく、1~30nmが特に好ましい。
一次粒子平均粒径は次の方法により測定することができる。
[一次粒子平均粒径の測定]
金属微粒子をエタノールに分散後、カーボン支持膜上に滴下し、乾燥させてサンプルを作製後、得られたサンプルをTEM装置(日立製作所製:H-8000加速電圧200kV)にて顕微鏡法で一次粒子平均粒径を求めることができる。
【0039】
本発明の下地剤における上記(A)成分である共重合体の添加量は、上記(B)金属微粒子100質量部に対して20質量部以上10,000質量部以下とすることが好ましい。(B)金属微粒子100質量部に対する(A)共重合体の添加量を20質量部以上とすることで、上記金属微粒子を十分に分散させることができ、また、20質量部以下であると、上記金属微粒子の分散性が不充分であり、沈殿物や凝集物を生じやすくなる。より好ましくは、30質量部以上である。また、(B)金属微粒子100質量部に対して(A)共重合体を10,000質量部以上添加すると、塗布後の単位面積当たりのPd量が不十分となるため、めっきの析出性が低下するおそれがある。
【0040】
<下地剤>
本発明の無電解めっき下地剤は、前記(A)共重合体、(B)金属微粒子、及び(C)溶剤を含むものであり、さらに、必要に応じてその他成分を含むものである。本発明の無電解めっき下地剤において、前記(A)成分である共重合体と前記(B)金属微粒子が複合体を形成していることが好ましく、すなわち前記下地剤が前記(A)成分である共重合体と前記(B)金属微粒子により形成された複合体を含むことが好ましい。
【0041】
ここで複合体とは、前記(A)成分である共重合体の側鎖の金属分散性基の作用により、金属微粒子に接触又は近接した状態で両者が共存し、粒子状の形態を為すものであり、言い換えると、前記(A)成分である共重合体の金属分散性基に金属微粒子が付着又は配位した構造を有する複合体であると表現される。
ここで“付着又は配位した構造”とは、(A)成分である共重合体の金属分散性基の一部又は全部が金属微粒子と相互作用した状態をいい、これによって錯体のような構造を形成していると考えられる。そのため、金属微粒子としてパラジウム微粒子を採用した場合、表層のPd原子が金属分散性基と相互作用することにより、(A)成分ポリマーが金属微粒子を取り囲む構造を形成していると考えられる。
【0042】
従って、本発明における「複合体」には、上述のように金属微粒子と(A)成分である共重合体が結合して一つの複合体を形成しているものだけでなく、金属微粒子と(A)成分である共重合体が結合部分を形成することなく、夫々独立して存在しているもの(見かけ上、1つの粒子を形成しているようにみえるもの)も含まれていてもよい。
【0043】
前記(A)成分である共重合体と(B)金属微粒子の複合体の形成は、(A)成分である共重合体と金属微粒子を含む下地剤の調製時に同時に実施され、その方法としては、金属分散性基によりある程度安定化した金属微粒子を合成した後に(A)成分である重合体により配位子を交換する方法や、(A)成分である共重合体の溶液中で、金属イオンを直接還元することにより複合体を形成する方法がある。また、上述のように、上記(A)成分である共重合体を溶解した溶液に金属塩の溶液を添加してこれに紫外線を照射する、或いは、該溶液に金属塩の溶液及び還元剤を添加するなどして、金属イオンを還元することによっても複合体を形成できる。
【0044】
直接還元方法としては、金属イオンと(A)成分である共重合体を溶媒に溶解し、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ポリオール等の第一級又は第二級アルコール類で還元させることにより、目的とする金属微粒子複合体を得ることができる。
ここで用いられる金属イオン源としては、上述の金属塩が使用できる。
使用する溶媒としては、金属イオンと金属分散性基を有するポリマーを必要濃度以上に溶解できる溶媒であれば特に限定はされないが、具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール等のアルコール類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル類;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類など及びこれらの溶媒の混合液が挙げられ、好ましくは、アルコール類、ハロゲン化炭化水素類、環状エーテル類が挙げられ、より好ましくは、エタノール、2-プロパノール、クロロホルム、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
還元反応(金属イオンと(A)成分である共重合体を混合する)の温度は、通常0℃乃至溶媒の沸点の範囲を使用することができ、好ましくは室温(およそ25℃)乃至100℃の範囲である。
【0045】
他の直接還元方法としては、金属イオンと(A)成分である共重合体を溶媒に溶解し、水素ガス雰囲気下で反応させることにより、目的とする金属微粒子複合体を得ることができる。
ここで用いられる金属イオン源としては、上述の金属塩や、ヘキサカルボニルクロム[Cr(CO)6]、ペンタカルボニル鉄[Fe(Co)5]、オクタカルボニルジコバルト[Co2(CO)8]、テトラカルボニルニッケル[Ni(CO)4]等の金属カルボニル錯体が使用できる。また金属オレフィン錯体や金属ホスフィン錯体、金属窒素錯体等の0価の金属錯体も使用できる。
使用する溶媒としては、金属イオンと(A)成分である共重合体を必要濃度以上に溶解できる溶媒であれば特に限定はされないが、具体的には、エタノール、プロパノール等のアルコール類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル類;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類など及びこれらの溶媒の混合液が挙げられ、好ましくはテトラヒドロフランが挙げられる。
金属イオンと(A)成分である共重合体を混合する温度は、通常0℃乃至溶媒の沸点の範囲を使用することができる。
【0046】
また、直接還元方法として、金属イオンと(A)成分である共重合体を溶媒に溶解し、熱分解反応させることにより、目的とする金属微粒子複合体を得ることができる。
ここで用いられる金属イオン源としては、上述の金属塩や金属カルボニル錯体やその他の0価の金属錯体、酸化銀等の金属酸化物が使用できる。
使用する溶媒としては、金属イオンと(A)成分である共重合体を必要濃度以上に溶解できる溶媒であれば特に限定はされないが、具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル類;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類など及びこれらの溶媒の混合液が挙げられ、好ましくはトルエンが挙げられる。
金属イオンと金属分散性基を有する(A)成分である共重合体を混合する温度は、通常0℃乃至溶媒の沸点の範囲を使用することができ、好ましくは溶媒の沸点近傍、例えばトルエンの場合は110℃(加熱還流)である。
【0047】
こうして得られる(A)成分である共重合体と金属微粒子の複合体は、再沈殿等の精製処理を経て、粉末などの固形物の形態とすることができる。
【0048】
本発明の下地剤は、前記(A)成分である共重合体、(B)金属微粒子(好ましくはこれらよりなる複合体)、及び(C)溶剤を含むものであり、さらに、必要に応じてその他成分を含むものであって、該下地剤は、後述する[無電解金属めっきの下地層]の形成時に用いるワニスの形態であってもよい。
【0049】
本発明の無電解めっき下地剤は、所望により、(D)成分であるベース樹脂を含有させることができる。(D)成分としては、(A)成分中の架橋性基と熱により架橋反応する基である、非ラジカル重合性の架橋性基を有するものが好ましく、例えば、WO2014/171376に(B)成分として記載されているものが好ましい。このような(D)成分を添加することにより、得られる下地層の密着性をより向上させることができる場合がある。
【0050】
本発明のめっき下地剤に(D)成分を含有させる場合の含有量は、(A)成分の共重合体と、(B)成分の金属微粒子との合計100質量部に基づいて、0質量部乃至200質量部であることが好ましく、より好ましくは0質量部乃至150質量部である。(D)成分の含有量が過大である場合にはめっき析出性が低下することがある。
【0051】
本発明の無電解めっき下地剤は、所望により、(E)成分である架橋剤を含有させることができる。
【0052】
(E)成分である架橋剤としては、エポキシ化合物、メチロール化合物、ブロックイソシアネート化合物、フェノプラスト化合物、トリアルコキシシリル基を2個以上有する化合物、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物等の化合物、アルコキシ基及び/又はキレート配位子を有する有機金属化合物、N-アルコキシメチルアクリルアミドの重合体、エポキシ基を有する化合物の重合体、アルコキシシリル基を有する化合物の重合体、イソシアネート基を有する化合物の重合体、及びメラミンホルムアルデヒド樹脂等の重合体が挙げられる。
【0053】
上述したエポキシ化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2-ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6-テトラグリシジル-2,4-ヘキサンジオール、N,N,N’,N’,-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、及びN,N,N’,N’-テトラグリシジル-4、4’-ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
【0054】
上述したメチロール化合物の具体例としては、アルコキシメチル化グリコールウリル、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン、及びアルコキシメチル化メラミン等の化合物が挙げられる。
【0055】
アルコキシメチル化グリコールウリルの具体例としては、例えば、1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキス(ブトキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキス(メトキシメチル)尿素、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)-4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリノン、および1,3-ビス(メトキシメチル)-4,5-ジメトキシ-2-イミダゾリノン等が挙げられる。市販品として、三井サイテック(株)製グリコールウリル化合物(商品名:サイメル(登録商標)1170、パウダーリンク(登録商標)1174)等の化合物、メチル化尿素樹脂(商品名:UFR(登録商標)65)、ブチル化尿素樹脂(商品名:UFR(登録商標)300、U-VAN10S60、U-VAN10R、U-VAN11HV)、DIC(株)製尿素/ホルムアルデヒド系樹脂(高縮合型、商品名:ベッカミン(登録商標)J-300S、同P-955、同N)等が挙げられる。
【0056】
アルコキシメチル化ベンゾグアナミンの具体例としては、例えば、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン等が挙げられる。市販品として、三井サイテック(株)製(商品名:サイメル(登録商標)1123)、(株)三和ケミカル製(商品名:ニカラック(登録商標)BX-4000、同BX-37、同BL-60、同BX-55H)等が挙げられる。
【0057】
アルコキシメチル化メラミンの具体例としては、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン等が挙げられる。市販品として、三井サイテック(株)製メトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:サイメル(登録商標)300、同301、同303、同350)、ブトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:マイコート(登録商標)506、同508)、三和ケミカル製メトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:ニカラック(登録商標)MW-30、同MW-22、同MW-11、同MS-001、同MX-002、同MX-730、同MX-750、同MX-035)、ブトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:ニカラック(登録商標)MX-45、同MX-410、同MX-302)等が挙げられる。
【0058】
また、このようなアミノ基の水素原子がメチロール基又はアルコキシメチル基で置換されたメラミン化合物、尿素化合物、グリコールウリル化合物及びベンゾグアナミン化合物を縮合させて得られる化合物であってもよい。例えば、米国特許第6323310号に記載されているメラミン化合物およびベンゾグアナミン化合物から製造される高分子量の化合物が挙げられる。前記メラミン化合物の市販品としては、商品名:サイメル(登録商標)303(三井サイテック(株)製)等が挙げられ、前記ベンゾグアナミン化合物の市販品としては、商品名:サイメル(登録商標)1123(三井サイテック(株)製)等が挙げられる。
【0059】
上述したブロックイソシアネート化合物とは、イソシアネート基が適当な保護基によりブロックされたイソシアネート基を一分子中2個以上有し、熱硬化時の高温に曝されると、保護基(ブロック部分)が熱解離して外れ、生じたイソシアネート基が樹脂との間で架橋反応を起こすものである。
【0060】
このような多官能ブロックイソシアネート化合物は、例えば、一分子中2個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネート化合物に対して適当なブロック剤を反応させて得ることができる。
【0061】
前記多官能イソシアネート化合物としては、例えば、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネ-ト、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート、2,6-ビス(イソシアネートメチル)テトラヒドロジシクロペンタジエン、ビス(イソシアネートメチル)ジシクロペンタジエン、ビス(イソシアネートメチル)アダマンタン、2,5-ジイソシアネートメチルノルボルネン、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘプタントリイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネ-ト、2,4-トリレンジイソシアネ-ト、2,6-トリレンジイソシアネ-ト、キシリレンジイソシアネ-ト、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネ-ト、p-フェニレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,6-ビス(イソシアネートメチル)デカヒドロナフタレン、ビス(ジイソシアネートトリル)フェニルメタン、1,1’-メチレンビス(3-メチル-4-イソシアネートベンゼン)、1,3-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン、1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン、4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)チオフェン、ビス(イソシアネートメチル)テトラヒドロチオフェン、及びこれらの変性化合物(例えば、イソシアヌレート体、ビウレット体、エチレングリコールアダクト体、プロピレングリコールアダクト体、トリメチロールプロパンアダクト体、エタノールアミンアダクト体、ポリエステルポリオールアダクト体、ポリエーテルポリオールアダクト体、ポリアミドアダクト体、ポリアミンアダクト体)を挙げることができる。
【0062】
前記ブロック剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、ヘプタノール、ヘキサノール、2-エトキシヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、イソノニルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、2-エトキシエタノール、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸アミル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、N,N-ジメチルアミノエタノール、N,N-ジエチルアミノエタノール、N,N-ジブチルアミノエタノール等のアルコール類、フェノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ニトロフェノール、クロロフェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、キシレノール等のフェノール類、α-ピロリドン、β-ブチロラクタム、β-プロピオラクタム、γ-ブチロラクタム、δ-バレロラクタム、ε-カプロラクタム等のラクタム類、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、ジエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム類、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、3-メチル-5-フェニルピラゾール等のピラゾール類、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、ベンゼンチオール等のメルカプタン類、マロン酸ジエステル、アセト酢酸エステル、マロン酸ジニトリル、アセチルアセトン、メチレンジスルホン、ジベンゾイルメタン、ジピバロイルメタン、アセトンジカルボン酸ジエステル等の活性メチレン系化合物類、ジブチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ-tert-ブチルアミン、ジ(2-エチルヘキシル)アミン、ジシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール等のアミン類、イミダゾール、2-エチルイミダゾール等のイミダゾール類、メチレンイミン、エチレンイミン、ポリエチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン類、アセトアニリド、アクリルアミド、酢酸アミド、ダイマー酸アミド等の酸アミド類、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、フタル酸イミド等の酸イミド類、尿素、チオ尿素、エチレン尿素等の尿素化合物類を挙げることができる。また、ウレトジオン結合(イソシアネート基の2量化)による内部ブロック型であってもよい。
【0063】
前記多官能ブロックイソシアネート化合物の市販品としては、例えば、下記製品を挙げることができる。
タケネート〔登録商標〕B-815N、同B-830、同B-842N、同B-846N、同B-870、同B-870N、同B-874、同B-874N、同B-882、同B-882N、同B-5010、同B-7005、同B-7030、同B-7075(以上、三井化学(株)製)。
【0064】
デュラネート〔登録商標〕ME20-B80S、同MF-B60B、同MF-B60X、同MF-B90B、同MF-K60B、同MF-K60X、同SBN-70D、同17B-60P、同17B-60PX、同TPA-B80E、同TPA-B80X、同E402-B80B、同E402-B80T、同K6000(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)、コロネート〔登録商標〕2503、同2507、同2512、同2513、同2515、同2520、同2554、同BI-301、同AP-M、ミリオネート MS-50(以上、東ソー(株)製)。
【0065】
バーノック〔登録商標〕D-500、同D-550、同DB-980K(以上、DIC(株)製)。
【0066】
スミジュール〔登録商標〕BL-3175、同BL-4165、同BL-4265、同BL-1100、同BL-1265、デスモジュール〔登録商標〕TPLS-2957、同TPLS-2062、同TPLS-2078、同TPLS-2117、同BL-3475、デスモサーム〔登録商標〕2170、同2265(以上、住化バイエルウレタン(株)製)。
【0067】
TRIXENE BI-7641、同BI-7642、同BI-7986、同BI-7987、同BI-7950、同BI-7951、同BI-7960、同BI-7961、同BI-7963、同BI-7981、同BI-7982、同BI-7984、同BI-7986、同BI-7990、同BI-7991、同BI-7992、同BI-7770、同BI-7772、同BI-7779、同DP9C/214(以上、バクセンデンケミカルズ社製)。
【0068】
VESTANAT〔登録商標〕B1358A、同B1358/100、同B1370、VESTAGON〔登録商標〕B1065、同B1400、同B1530、同BF1320、同BF1540(以上、エボニックインダストリーズ社製)。
【0069】
また、前記多官能ブロックイソシアネート化合物としては、ブロックイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートをラジカル重合して得られるホモポリマー又はコポリマーを挙げることができる。ここで、コポリマーとは、2種以上のモノマーを重合して得られるポリマーを意味する。コポリマーは、ブロックイソシアネート基を有する2種以上の(メタ)アクリレートを重合して得られるコポリマーであってもよいし、ブロックイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート及びその他の(メタ)アクリレートを重合して得られるコポリマーであってもよい。このようなブロックイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、昭和電工(株)製カレンズ〔登録商標〕MOI-BM、同AOI-BM、同MOI-BP、同AOI-BP、同MOI-DEM、同MOI-CP、同MOI-MP、同MOI-OEt、同MOI-OBu、同MOI-OiPrを挙げることができる。
【0070】
これらの多官能ブロックイソシアネート化合物は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
上述したフェノプラスト化合物の具体例としては以下の化合物が挙げられるが、フェノプラスト化合物は以下の化合物例に限定されるものではない。
【0072】
【0073】
トリアルコキシシリル基を2個以上有する化合物の具体例としては、例えば、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、4,4’-ビス(トリメトキシシリル)ビフェニル、4,4’-ビス(トリエトキシシリル)ビフェニル、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エチレン、ビス(トリエトキシシリル)エチレン、1,3-ビス(トリメトキシシリルエチル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(トリエトキシシリルエチル)テトラメチルジシロキサン、ビス(トリエトキシシリルメチル)アミン、ビス(トリメトキシシリルメチル)アミン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)カーボネート、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)カーボネート、ビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、ビス[(3-トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、ビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]チオウレア、ビス[(3-トリエトキシシリル)プロピル]チオウレア、ビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]ウレア、ビス[(3-トリエトキシシリル)プロピル]ウレア、1,4-ビス(トリメトキシシリルメチル)ベンゼン、1,4-ビス(トリエトキシシリルメチル)ベンゼン、トリス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、1,1,2-トリス(トリメトキシシリル)エタン、1,1,2-トリス(トリエトキシシリル)エタン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、及びトリス(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等の化合物が挙げられる。
【0074】
アミノ基を有するアルコキシシラン化合物の具体例としては、例えば、N,N’‐ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2-エタンジアミン、N,N’‐ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2-エタンジアミン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2-エタンジアミン、N-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2-エタンジアミン、ビス-{3-(トリメトキシシリル)プロピル}アミン、ビス-{3-(トリエトキシシリル)プロピル}アミン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、トリメトキシ{3-(メチルアミノ)プロピルシラン、3-(N-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(N-アリルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(ジエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(ジエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、及び3-(フェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン等の化合物が挙げられる。
【0075】
アルコキシ基及び/又はキレート配位子を有する有機金属化合物の具体例としては、例えば、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトネートアルミニウム、トリアセチルアセトネートアルミニウム、テトラキスイソプロポキシチタニウム、テトラキスノルマルブトキシチタニウム、テトラオクチルチタネート、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)チタニウム、チタンテトラアセチルアセトネート、テトラキス(ノルマルプロポキシ)ジルコニウム、テトラキス(ノルマルブトキシ)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトネート)ジルコニウム等の化合物が挙げられる。
【0076】
さらに、上述したN-アルコキシメチルアクリルアミドの重合体としては、例えば、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基で置換されたアクリルアミド化合物又はメタクリルアミド化合物を使用して製造されるポリマーが挙げられる。
【0077】
そのようなポリマーの具体例としては、例えば、ポリ(N-ブトキシメチルアクリルアミド)、N-ブトキシメチルアクリルアミドとスチレンとの共重合体、N-ヒドロキシメチルメタクリルアミドとメチルメタクリレートとの共重合体、N-エトキシメチルメタクリルアミドとベンジルメタクリレートとの共重合体、及びN-ブトキシメチルアクリルアミドとベンジルメタクリレートと2-ヒドロキシプロピルメタクリレートとの共重合体等が挙げられる。このようなポリマーの重量平均分子量は、1,000乃至200,000であり、より好ましくは3,000乃至150,000であり、さらに好ましくは3,000乃至50,000である。
【0078】
エポキシ基を有する化合物の重合体としては、例えば、グリシジルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチルメタクリレート等のエポキシ基を有する化合物を使用して製造されるポリマーが挙げられる。
【0079】
そのようなポリマーの具体例としては、例えば、ポリ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート)、ポリ(グリシジルメタクリレート)、グリシジルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体、グリシジルメタクリレートとスチレンとの共重合体等が挙げられる。このようなポリマーの重量平均分子量は、1,000乃至200,000であり、より好ましくは3,000乃至150,000であり、さらに好ましくは3,000乃至50,000である。
【0080】
上述したアルコキシシリル基を有する化合物の重合体としては、例えば、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する化合物を使用して製造されるポリマーが挙げられる。
【0081】
そのようなポリマーの具体例としては、例えば、ポリ(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとスチレンとの共重合体、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとメチルメタクリレートとの共重合体等が挙げられる。このようなポリマーの重量平均分子量は、1,000乃至200,000であり、より好ましくは3,000乃至150,000であり、さらに好ましくは3,000乃至50,000である。なお本明細書において、上記「ポリ((メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン)」は、アルコキシシリル基を有するポリ(メタ)アクリレートを意味する。
【0082】
これらの架橋剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0083】
本発明のめっき下地剤に(E)成分を含有させる場合の含有量は、(A)成分の共重合体と、(B)成分の金属微粒子との合計100質量部に基づいて、0質量部乃至100質量部であることが好ましく、より好ましくは0質量部乃至50質量部である。
【0084】
<その他添加剤>
本発明の下地剤は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、さらに界面活性剤、各種表面調整剤、増粘剤等の添加剤などを適宜添加してもよい。
【0085】
上記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等のポリオキシエチレンノニオン系界面活性剤;エフトップ(登録商標)EF-301、同EF-303、同EF-352[以上、三菱マテリアル電子化成(株)製]、メガファック(登録商標)F-171、同F-173、同R-08、同R-30[以上、DIC(株)製]、Novec(登録商標)FC-430、同FC-431[以上、住友スリーエム(株)製]、アサヒガード(登録商標)AG-710[旭硝子(株)製]、サーフロン(登録商標)S-382[AGCセイミケミカル(株)製]等のフッ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0086】
また、上記表面調整剤としては、信越シリコーン(登録商標)KP-341[信越化学工業(株)製]等のシリコーン系レベリング剤;BYK(登録商標)-302、同307、同322、同323、同330、同333、同370、同375、同378[以上、ビックケミー・ジャパン(株)製]等のシリコーン系表面調整剤などが挙げられる。
【0087】
上記増粘剤としては、例えば、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)等のポリアクリル酸類(架橋したものも含む);ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリスチレン(PS)等のビニルポリマー;ポリエチレンオキシド類;ポリエステル;ポリカーボネート;ポリアミド;ポリウレタン;デキストリン、寒天、カラギナン、アルギン酸、アラビアガム、グアーガム、トラガントガム、ローカストビーンガム、デンプン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の多糖類;ゼラチン、カゼイン等のタンパク質などが挙げられる。また、上記各ポリマーには、ホモポリマーだけでなくコポリマーも含まれる。これら増粘剤は一種を単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよい。
本発明の下地剤は、必要に応じて増粘剤を配合することにより、下地剤の粘度やレオロジー特性を調整することができ、下地剤の適用方法や適用箇所など、その用途に応じて適宜採用・選択し得る。
【0088】
これら添加剤は一種を単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよい。添加剤の使用量は、前記(A)成分であるポリマーと(B)成分である金属微粒子より形成された複合体100質量部に対して、0.001~50質量部が好ましく、0.005~10質量部がより好ましく、0.01~5質量部がより一層好ましい。
【0089】
[無電解金属めっきの下地層]
上述の本発明の無電解めっき下地剤は、基材上に塗布することにより、無電解金属めっきの下地層を形成することができる。この無電解金属めっきの下地層も本発明の対象である。
【0090】
前記基材としては特に限定されないが、非導電性基材又は導電性基材を好ましく使用できる。
非導電性基材としては、例えばガラス、セラミック等;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ナイロン(ポリアミド樹脂)、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、PEN(ポリエチレンナフタラート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタラート)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、LCP(液晶ポリマー)樹脂等;紙などが挙げられる。これらはシートあるいはフィルム等の形態にて好適に使用され、この場合の厚さについては特に限定されない。
また導電性基材としては、例えばITO(スズドープ酸化インジウム)や、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、また各種ステンレス鋼、アルミニウム並びにジュラルミン等のアルミニウム合金、鉄並びに鉄合金、銅並びに真鍮、燐青銅、白銅及びベリリウム銅等の銅合金、ニッケル並びにニッケル合金、そして、銀並びに洋銀等の銀合金などの金属等が挙げられる。
さらに上記非導電性基材上にこれらの導電性基材で薄膜が形成された基材も使用可能である。
また、上記基材は、三次元成形体であってもよい。
【0091】
上記(A)成分である共重合体、(B)金属微粒子(好ましくはこれらよりなる複合体)、及び(C)溶剤を含み、さらに、必要に応じて(D)ベースポリマー、(E)架橋剤及びその他成分を含む無電解めっき下地剤より無電解金属めっきの下地層を形成する具体的な方法としては、まず前記(A)成分ポリマーと(B)金属微粒子(好ましくはこれらよりなる複合体)(と必要に応じて(D)ベースポリマー、(E)架橋剤及びその他成分)とを(C)溶剤に溶解又は分散してワニスの形態とし、該ワニスを、金属めっき被膜を形成する基材上にスピンコート法;ブレードコート法;ディップコート法;ロールコート法;バーコート法;ダイコート法;スプレーコート法;インクジェット法;ファウンテンペンナノリソグラフィー(FPN)、ディップペンナノリソグラフィー(DPN)などのペンリソグラフィー;活版印刷、フレキソ印刷、樹脂凸版印刷、コンタクトプリンティング、マイクロコンタクトプリンティング(μCP)、ナノインプリンティングリソグラフィー(NIL)、ナノトランスファープリンティング(nTP)などの凸版印刷法;グラビア印刷、エングレービングなどの凹版印刷法;平版印刷法;スクリーン印刷、謄写版などの孔版印刷法;オフセット印刷法等によって塗布し、その後、溶媒を蒸発・乾燥させることにより、薄層を形成する。
これらの塗布方法の中でもバーコート法、フレキソ印刷、グラビア印刷、スピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法、ペンリソグラフィー、コンタクトプリンティング、μCP、NIL及びnTPが好ましい。スピンコート法を用いる場合には、単時間で塗布することができるために、揮発性の高い溶液であっても利用でき、また、均一性の高い塗布を行うことができるという利点がある。スプレーコート法を用いる場合には、極少量のワニスで均一性の高い塗布を行うことができ、工業的に非常に有利となる。インクジェット法、ペンリソグラフィー、コンタクトプリンティング、μCP、NIL、nTPを用いる場合には、例えば配線などの微細パターンを効率的に形成(描画)することができ、工業的に非常に有利となる。
【0092】
<(C)溶剤>
またここで用いられる溶媒としては、上記(A)成分であるポリマーと(B)金属微粒子(好ましくはこれらよりなる複合体)、及び所望により(D)成分、(E)成分及びその他成分を溶解又は分散するものであれば特に限定されないが、たとえば、水;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、2-オクタノール、2-エチルヘキサノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ類;プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のグリコールエステル類;テトラヒドロフラン(THF)、メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;n-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;1,2-ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシドなどが使用できる。これら溶媒は単独で使用してもよく、2種類以上の溶媒を混合してもよい。さらに、ワニスの粘度を調整する目的で、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のグリコール類を添加してもよい。
また上記溶媒に溶解又は分散させる濃度は任意であるが、ワニス中の非溶媒成分の濃度[下地剤に含まれる溶媒を除く全成分((A)成分であるポリマーと(B)金属微粒子(好ましくはこれらよりなる複合体)、所望により(D)ベースポリマー、(E)架橋剤及びその他成分等)の濃度]は0.05~90質量%であり、好ましくは0.1~80質量%である。
【0093】
溶媒の乾燥法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ホットプレートやオーブンを用いて、適切な雰囲気下、すなわち大気、窒素等の不活性ガス、真空中等で蒸発させればよい。これにより、均一な成膜面を有する下地層を得ることが可能である。焼成温度は、溶媒を蒸発させることができれば特に限定されないが、40~250℃で行うことが好ましい。
【0094】
[無電解めっき処理、金属めっき膜、金属被膜基材]
上記のようにして得られた基材上に形成された無電解金属めっきの下地層を無電解めっきすることにより、該下地層の上に金属めっき膜が形成される。こうして得られる金属めっき膜、並びに、基材上に無電解金属めっきの下地層、金属めっき膜の順にて具備する金属被膜基材も本発明の対象である。
無電解めっき処理(工程)は特に限定されず、一般的に知られている何れの無電解めっき処理にて行うことができ、例えば、従来一般に知られている無電解めっき液を用い、該めっき液(浴)に基材上に形成された無電解金属めっきの下地層を浸漬する方法が一般的である。
【0095】
前記無電解めっき液は、主として金属イオン(金属塩)、錯化剤、還元剤を主に含有し、その他用途に合わせてpH調整剤、pH緩衝剤、反応促進剤(第二錯化剤)、安定剤、界面活性剤(めっき膜への光沢付与用途、被処理面の濡れ性改善用途など)などが適宜含まれてなる。
ここで無電解めっきにより形成される金属めっき膜に用いられる金属としては、鉄、コバルト、ニッケル、銅、パラジウム、銀、スズ、白金、金及びそれらの合金が挙げられ、目的に応じて適宜選択される。
また上記錯化剤、還元剤についても金属イオンに応じて適宜選択すればよい。
【0096】
また無電解めっき液は市販のめっき液を使用してもよく、例えばメルテックス(株)製の無電解ニッケルめっき薬品(メルプレート(登録商標)NIシリーズ)、無電解銅めっき薬品(メルプレート(登録商標)CUシリーズ);奥野製薬工業(株)製の無電解ニッケルめっき液(ICPニコロン(登録商標)シリーズ、トップピエナ650)、無電解銅めっき液(OPC-700無電解銅M-K、ATSアドカッパーIW、同CT、OPCカッパー(登録商標)AFシリーズ、同HFS、同NCA)、無電解スズめっき液(サブスターSN-5)、無電解金めっき液(フラッシュゴールド330、セルフゴールドOTK-IT)、無電解銀めっき液(ムデンシルバー);小島化学薬品(株)製の無電解パラジウムめっき液(パレットII)、無電解金めっき液(ディップGシリーズ、NCゴールドシリーズ);佐々木化学薬品(株)製の無電解銀めっき液(エスダイヤAG-40);日本カニゼン(株)製の無電解ニッケルめっき液(カニゼン(登録商標)シリーズ、シューマー(登録商標)シリーズ、シューマー(登録商標)カニブラック(登録商標)シリーズ)、無電解パラジウムめっき液(S-KPD);ダウケミカル社製の無電解銅めっき液(キューポジット(登録商標)カッパーミックスシリーズ、サーキュポジット(登録商標)シリーズ)、無電解パラジウムめっき液(パラマース(登録商標)シリーズ)、無電解ニッケルめっき液(デュラポジット(登録商標)シリーズ)、無電解金めっき液(オーロレクトロレス(登録商標)シリーズ)、無電解スズめっき液(ティンポジット(登録商標)シリーズ);上村工業(株)製の無電解銅めっき液(スルカップ(登録商標)ELC-SP、同PSY、同PCY、同PGT、同PSR、同PEA、同PMK)、アトテックジャパン(株)製の無電解銅めっき液(プリントガント(登録商標)PV、同PVE)等を好適に用いることができる。
【0097】
上記無電解めっき工程は、めっき浴の温度、pH、浸漬時間、金属イオン濃度、撹拌の有無や撹拌速度、空気・酸素の供給の有無や供給速度等を調節することにより、金属被膜の形成速度や膜厚を制御することができる。
【実施例】
【0098】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、数平均分子量及び重量平均分子量の測定は以下の通りである。
[数平均分子量及び重量平均分子量の測定]
以下の合成例に従い得られた共重合体の数平均分子量及び重量平均分子量を、東ソー(株)製GPC装置(ShodexカラムKD800およびTOSOHカラムTSK-GEL)を用い、溶出溶媒N,N-ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム-水和物(LiBr・H2O)を10mmol/L(リットル)混合)を流量1mL/分でカラム中に(カラム温度40℃)流して溶離させるという条件で測定した。なお、下記の数平均分子量(以下、Mnと称す。)及び重量平均分子量(以下、Mwと称す。)は、ポリスチレン換算値にて表される。
【0099】
以下の実施例で用いる略記号の意味は、次の通りである。
MMA:メチルメタクリレート
HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート
NVA:N-ビニルアセトアミド
GMA:グリシジルメタクリレート
サイクロマーM100:3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート(ダイセル製)
AMBN:2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
IPE:ジイソプロピルエーテル
DAA:ジアセトンアルコール
BL-10:ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業社製)
【0100】
<合成例1>
スチレン 2.00g、NVA 1.63g、GMA 2.73g、AMBN 0.32gをPGME 15.59gに溶解し、80℃にて20時間反応させることにより得られた共重合体溶液(固形分濃度30質量%)をジエチルエーテル500mLに撹拌しながら投入し、ポリマーを析出させた。析出したポリマーを減圧ろ過し、50℃で真空乾燥して、共重合体粉末を得た(P1)。得られた共重合体のMnは6,057、Mwは8,884であった。
【0101】
<合成例2>
スチレン 2.00g、NVA 1.63g、サイクロマーM100 3.76g、AMBN 0.37gをPGME 18.14gに溶解し、80℃にて20時間反応させることにより得られた共重合体溶液(固形分濃度30質量%)をジエチルエーテル500mLに撹拌しながら投入し、ポリマーを析出させた。析出したポリマーを減圧ろ過し、50℃で真空乾燥して、共重合体粉末を得た(P2)。得られた共重合体のMnは5,336、Mwは8,669であった。
【0102】
<合成例3>
スチレン 2.00g、NVA 1.63g、HEA 2.23g、AMBN 0.29gをPGME 14.37gに溶解し、80℃にて20時間反応させることにより得られた重合体溶液(固形分濃度30質量%)をジエチルエーテル500mlに再沈精製した。析出したポリマーを減圧ろ過し、50℃で真空乾燥して、重合体粉末を得た(P3)。得られた重合体のMnは6,806、Mwは11,797であった。
【0103】
<合成例4>
MMA 2.00g、HEMA 1.11g、AMBN 0.16gをPGME 7.63gに溶解し、80℃にて20時間反応させることにより得られた共重合体溶液(固形分濃度30質量%)をジエチルエーテル500mLに撹拌しながら投入し、ポリマーを析出させた。析出したポリマーを減圧ろ過し、50℃で真空乾燥して、共重合体粉末を得た(P4)。得られた共重合体のMnは13,186、Mwは24,452であった。
【0104】
<合成例5>
冷却器を設置した100mLの反応フラスコに、酢酸パラジウム[和光純薬(株)製] 0.90g及びクロロホルム 9.10gを仕込み、均一になるまで撹拌した。この溶液へ、合成例1で重合したP1 l.0gをクロロホルム 16.40g、エタノール 6.40gに溶解させた溶液を、滴下ロートを使用して加えた。この混合物を、窒素雰囲気下60℃で8時間撹拌した。
液温30℃まで冷却後、この溶液をIPE/ヘキサン溶液(質量比10:1) 341gに撹拌しながら投入し、ポリマー/Pd粒子複合体を析出させた。析出したポリマー/Pd粒子複合体を減圧ろ過し、50℃で真空乾燥して、Pd粒子の複合体(M1) 0.9gを黒色粉末として得た。
【0105】
<合成例6>
冷却器を設置した100mLの反応フラスコに、酢酸パラジウム[和光純薬(株)製] 0.90g及びクロロホルム 9.10gを仕込み、均一になるまで撹拌した。この溶液へ、合成例2で重合したP2 l.0gをクロロホルム 16.40g、エタノール 6.40gに溶解させた溶液を、滴下ロートを使用して加えた。この混合物を、窒素雰囲気下60℃で8時間撹拌した。
液温30℃まで冷却後、この溶液をIPE/ヘキサン溶液(質量比10:1) 341gに撹拌しながら投入し、ポリマー/Pd粒子複合体を析出させた。析出したポリマー/Pd粒子複合体を減圧ろ過し、50℃で真空乾燥して、Pd粒子の複合体(M2) 0.9gを黒色粉末として得た。
【0106】
<合成例7>
冷却器を設置した100mLの反応フラスコに、酢酸パラジウム[和光純薬(株)製] 0.90g及びクロロホルム 9.10gを仕込み、均一になるまで撹拌した。この溶液へ、合成例3で重合したP3 l.0gをクロロホルム 16.40g、エタノール 6.40gに溶解させた溶液を、滴下ロートを使用して加えた。この混合物を、窒素雰囲気下60℃で8時間撹拌した。
液温30℃まで冷却後、この溶液をIPE/ヘキサン溶液(質量比10:1) 341gに撹拌しながら投入し、ポリマー/Pd粒子複合体を析出させた。析出したポリマー/Pd粒子複合体を減圧ろ過し、50℃で真空乾燥して、Pd粒子の複合体(M3) 0.9gを黒色粉末として得た。
【0107】
【0108】
[めっき液の調製]
<調製例1>
300mLビーカーにトップニコロンSA-98-MLF(奥野製薬製) 20mL、トップニコロンSA-98-1LF(奥野製薬製) 11mLを仕込み、さらに純水を加えて溶液の総量を200mLとした。この溶液を撹拌し、無電解ニッケルめっき液とした。
【0109】
[分散性の評価]
得られたPd粒子の複合体を表1の通りに仕込み、1時間撹拌後、静置して溶液の状態を目視で評価した。評価結果は、後に表2にまとめて示す。
【0110】
<分散性の評価基準>
○:均一な溶液が得られた。
×:沈殿物が見られ、均一な溶液が得られていない。
【0111】
[めっき析出性の評価]
LCP(千代田インテグレ株式会社製ペリキュール(登録商標)LCP)基材に対しUVオゾン洗浄装置(株式会社テクノビジョン製UV-208)を用いて30秒間表面処理を行った。表面処理したLCP上に無電解めっき下地剤を膜厚6μmでバーコート塗布した後、80℃で5分間加熱することにより塗膜を形成した。この塗膜をさらに200℃で10分間加熱することにより硬化させた。得られた硬化膜を調製例1で調製した無電解ニッケルめっき液に2分間浸漬した。その後、得られためっき基材を水洗した後、金属めっき膜の状態を目視で評価した。評価結果は、後に表2にまとめて示す。
【0112】
<めっき析出性の評価基準>
○:塗膜全面に均一にめっきが析出している。
-:均一な溶液が得られないため未実施
【0113】
<密着性の評価>
上記で得られためっき基材上の金属めっき膜部分に、縦横1mm間隔で10×10マスとなるようカッターナイフで切込みをつけた。この切り込みの上にニチバン(株)製 セロテープ(登録商標)を貼り、強く擦りつけてしっかり密着させた後、密着させた粘着テープを一気に剥がし、金属めっき膜の状態を以下の基準に従って目視で評価した。評価結果は、後に表2にまとめて示す。
【0114】
<密着性の評価基準>
○:100マス全て剥がれずに残っている。
×:1マスでも剥がれている。
-:均一な溶液が得られないため未実施。
【0115】
【0116】
表2に示すように、実施例1乃至実施例5、比較例1、2は分散性とめっき析出性が共に良好であった。また、実施例1乃至実施例5は密着性が良好であった。一方、比較例1、2は十分な密着性を確認することはできなかった。