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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】2成分型シーリング材組成物の攪拌方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20231213BHJP
   B01F 29/83 20220101ALI20231213BHJP
【FI】
C09K3/10 Z
B01F29/83
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023156600
(22)【出願日】2023-09-22
【審査請求日】2023-09-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100166637
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 圭
(72)【発明者】
【氏名】大角 昌弘
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-204980(JP,A)
【文献】国際公開第2019/172222(WO,A1)
【文献】特開平7-39740(JP,A)
【文献】登録実用新案第3044591(JP,U)
【文献】特開2021-127357(JP,A)
【文献】特開2014-15530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/10
B01F 29/00-29/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂中空体を含む基剤と、硬化剤とを備えた2成分型シーリング材組成物を攪拌するための攪拌方法であって、前記攪拌方法は、
前記2成分型シーリング材組成物が供給される有底筒状の混合容器と、この混合容器の中心部に駆動装置によって回転自在に設けられた回転軸と、この回転軸の下端部に設けられたボトムパドルおよび該ボトムパドルの両端部からそれぞれ上記混合容器の内壁に沿って上端部まで伸びる一対のサイドパドルとを有する攪拌装置を用いて前記2成分型シーリング材組成物を混合し、
前記基剤を前記混合容器に供給したときの平均基剤液面高さLL(mm)、前記一対のサイドパドルの高さH(mm)、前記ボトムパドルの平均半径X(mm)、攪拌時の温度における前記基剤の初期粘度A(Pa・S)、摂氏5℃における前記基剤の初期粘度B(Pa・S)、BをAで除した値の三乗根C、Y=(LL-H)×Cが、下記式1:
式1 0.2X≦Y≦0.4X
を満たすことを特徴とする攪拌方法。
【請求項2】
前記樹脂中空体は、基剤100質量部に対して、0.8~10質量部の含有量で含まれる請求項1に記載の攪拌方法。
【請求項3】
攪拌前の前記2成分型シーリング材組成物の全体積R(L)に対する、前記一対のサイドパドルが通過する最も低い位置から最も高い位置までの高さに存在する前記2成分型シーリング材組成物の体積S(L)が、下記式2:
式2 13≦Z=100×(R-S)/R≦23
を満たす、請求項2に記載の攪拌方法。
【請求項4】
樹脂中空体を含む基剤と、硬化剤とを備えた2成分型シーリング材組成物を請求項1に記載の攪拌方法により攪拌するステップと、前記攪拌された2成分型シーリング材組成物を対象物に適用するステップを含む、シーリング材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2成分型シーリング材組成物の攪拌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シーリング材は、建築物等において各種部材間の接合部や隙間を充填し、水密性又は気密性等を確保する目的で幅広く使用されている。例えば、特許文献1には、加水分解性シリル基を有する重合体と、樹脂中空体と、炭酸カルシウムと、二酸化ケイ素とをそれぞれ所定量で含有する2成分型シーリング材組成物が開示されている。特許文献1に記載の2成分型シーリング材組成物は、シーリング材の表面の凹凸が目立ちにくく意匠性に優れ、作業性や耐久性にも優れることを狙って開発されたものである。
【0003】
シーリング材組成物が2成分型である場合、施行現場において、攪拌羽根を有する攪拌機を用いて2成分型シーリング材組成物を均一に混合して硬化させるのが一般的である。例えば、特許文献2には、回転軸までの距離が互いに異なる一対の攪拌羽根又は上下の長さが互いに異なる一対の攪拌羽根を有するパドルを備えた混合機を用いて、ウレタン系の2成分型シーリング材を攪拌する方法が開示されている。
【0004】
一方で、樹脂中空体を含むシーリング材組成物は、硬化後に得られるシーリング材の表面に凹みが生じて外観不良を発生させてしまうことがあることがわかっている。そのような凹みの発生を防止する方法としては、例えば、特許文献3に、変成シリコーン樹脂と、可塑剤と、硬化促進剤と、無機充填材と、有機充填材とを含有する建築用シーリング材であって、有機充填材としてポリアクリロニトリル樹脂からなる中空フィラーを用い、該中空フィラーの含有量が、0.1~0.6質量%であり、該中空フィラーの真比重が0.1~0.5であるものが開示されている。特許文献3は、中空フィラーの樹脂組成、含有量及び真比重等を限定することにより、シーリング材の表面に凹みが発生するのを抑制しようとしたものであると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開第2021-127357号広報
【文献】特開第2006-204980号公報
【文献】特開第2014-15530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、特許文献1に記載の2成分型シーリング材組成物を特許文献2に記載の方法で攪拌することによってシーリング材を調製したところ、得られたシーリング材は、混合した直後には問題がなくても、時間経過に伴って表面に凹凸が増加し、外観が劣化する場合があることを確認した。また、凹凸の発生を防止するために攪拌羽根の高さを低くすると、混合が不十分となってしまうことを確認した。他方で、特許文献3に記載されているように樹脂中空体の樹脂組成、配合量及び真比重を限定する方法では、シーリング材に所望の物性を付与できなくなってしまう場合がある。そこで、本発明は、樹脂中空体を含む2成分型シーリング材組成物を十分に混合することができ、かつ、そのような組成物の硬化後に時間経過に伴って増加することがあった表面凹凸と外観劣化を防止することができる攪拌方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、一実施形態において本発明は下記の構成を有する。
[1]
樹脂中空体を含む基剤と、硬化剤とを備えた2成分型シーリング材組成物を攪拌するための攪拌方法であって、前記攪拌方法は、
前記2成分型シーリング材組成物が供給される有底筒状の混合容器と、この混合容器の中心部に駆動装置によって回転自在に設けられた回転軸と、この回転軸の下端部に設けられたボトムパドルおよび該ボトムパドルの両端部からそれぞれ上記混合容器の内壁に沿って上端部まで伸びる一対のサイドパドルとを有する攪拌装置を用いて前記2成分型シーリング材組成物を混合し、
前記基剤を前記混合容器に供給したときの平均基剤液面高さLL(mm)、前記一対のサイドパドルの高さH(mm)、前記ボトムパドルの平均半径X(mm)、攪拌時の温度における前記基剤の初期粘度A(Pa・s)、摂氏5℃における前記基剤の初期粘度B(Pa・s)、BをAで除した値の三乗根C、Y=(LL-H)×Cが、下記式1:
式1 0.2X≦Y≦0.4X
を満たすことを特徴とする攪拌方法。
[2]
前記樹脂中空体は、基剤100質量部に対して、0.8~10質量部の含有量で含まれる[1]に記載の攪拌方法。
[3]
攪拌前の前記2成分型シーリング材組成物の全体積R(L)に対する、前記一対のサイドパドルが通過する最も低い位置から最も高い位置までの高さに存在する前記2成分型シーリング材組成物の体積S(L)が、下記式2:
式2 13≦Z=100×(R-S)/R≦23
を満たす[1]又は[2]に記載の攪拌方法。
[4]
樹脂中空体を含む基剤と、硬化剤とを備えた2成分型シーリング材組成物を[1]~[3]のいずれかに記載の攪拌方法により攪拌するステップと、前記攪拌された2成分型シーリング材組成物を対象物に適用するステップを含む、シーリング材の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の攪拌方法は、樹脂中空体を含む基剤と硬化剤とを備えた2成分型シーリング材組成物を十分に混合することができ、かつ、そのような組成物の硬化後に時間経過に伴って発生することがあった表面凹凸と外観劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る攪拌方法に用いられる攪拌装置を模式的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る方法に用いられる攪拌装置のパドルを模式的に示す図である。
図3】実施例で用いた攪拌装置の写真である。
図4】各実施例及び比較例において調製した2成分型シーリング材組成物を5℃の雰囲気下で攪拌及び打設したシーリング材の表面の写真である。
図5】各実施例及び比較例において調製した2成分型シーリング材組成物を23℃の雰囲気下で攪拌及び打設したシーリング材の表面の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、(メタ)アクリルはアクリル又はメタクリルを表す。
また、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその製造方法について特に制限されない。例えば、従来公知の方法が挙げられる。また、各成分として市販品を使用することができる。
本明細書において、加水分解性シリル基を有する重合体(A)を単に「重合体(A)」又は「成分(A)」と称する場合がある。樹脂中空体(B)を単に「成分(B)」と称する場合がある。炭酸カルシウム(C)、二酸化ケイ素(D)についても同様である。
【0011】
[攪拌装置]
本発明について以下詳細に説明する。
本発明の攪拌方法に用いる攪拌装置1は、ボトムパドル及びサイドパドルが所定の条件を満たす以外は、従来の構成を有する攪拌装置であってもよく、例えば、図1及び図2に示される構成を有する。
図1に示すように、混合装置1は、機台2に内装した駆動手段(図示略)と、駆動手段における上下方向の回転軸3の上端部に固定した回転台4と、混合対象物8(2成分型シーリング材組成物)を収容した混合容器5と、混合容器5内に挿入可能なパドル6と、パドル6を機台2に対して着脱可能に固定支持するパドル支持手段7とを備えている。
【0012】
この混合装置1を用いて混合対象物8を混合する際には、混合対象物8を混合容器5に収容して、これを回転台4に相対回転しないように設置するとともに、該混合容器5の略中央部内にパドル6を挿入して、パドル支持手段7によりパドル6を機台2に固定支持した状態で、駆動手段により回転台4を回転駆動して、混合対象物8を混合容器5とともに回転させながら、混合容器5内の混合対象物8をパドル6で混合することになる。
【0013】
パドル6は、混合容器5の略中央部に上下方向に挿入される軸部10と、軸部10から混合容器5の内面側へ延びるアーム部11と、アーム部11の外端部から上方へ延びる攪拌部12とを備え、アーム部11と攪拌部12とからなる略L字状の左右1対のパドル本体部13により、混合対象物8を攪拌混合するように構成されている。
【0014】
左右1対のパドル本体部13は、軸部10から攪拌部12までのアーム部11の長さL1、L2が、左右のパドル本体部13間において異なる値になるように設定されている。但し、アーム部11の長さL1、L2に加えて、攪拌部12の上下方向の長さHやアーム部11の上下方向の長さDを左右のパドル本体部13間において異なる値に設定することもできる。短い方のアーム部11の長さは、混合性の観点から、長い方のアーム部11の長さの75%~95%であることが好ましく、80%~90%であることがより好ましい。
【0015】
本発明の攪拌方法においては、基剤を前記混合容器8に供給したときの平均基剤液面高さLL(mm)、一対のサイドパドルの高さH(mm)、ボトムパドルの平均半径X(mm)、攪拌時の温度における基剤の初期粘度A(Pa・s)、摂氏5℃における基剤の初期粘度B(Pa・s)、BをAで除した値の三乗根C、Y=(LL-H)×Cが、下記式1:
式1 0.2X≦Y≦0.4X
を満たす。
【0016】
平均基剤液面高さLL(mm)は、攪拌する基剤の全量を混合容器5に入れた際に、混合容器5の底面からその液面までの垂直方向における高さを4点において計測した値の平均値である。その4点は、混合容器5の液面の外周円を等間隔に分ける4点であり、外周円において目視で最も低い1点を選択し、そこから90度ずつ離れた3点を選択することで決定される4点である。
【0017】
一対のサイドパドルの高さH(mm)は、垂直方向において一対のサイドパドルの最も低い位置から最も高い位置までの垂直方向の距離を表す。ボトムパドルの平均半径Xは、X=(E-2W)/2の式によって算出される値である。図2に示されているように、Eは、ボトムパドルの水平方向の全長(mm)を表す。
【0018】
上記式1において、B/Aは、摂氏5℃における前記基剤の初期粘度B(Pa・s)を、攪拌時の温度における基剤の初期粘度A(Pa・s)で除した値である。これらの粘度の測定方法及び好ましい数値範囲は後述する。
【0019】
上記式1は、0.2X≦Yを満たすことがより好ましい。また、上記1は、Y≦0.3Xを満たすことが好ましい。より好ましくは、上記式1が0.2X≦Y≦0.3Xを満たす。これらの数値範囲を満たすことにより本発明の効果がより顕著に発揮される。
【0020】
攪拌前の前記2成分型シーリング材組成物の全体積R(L)に対する、前記一対のサイドパドルが通過する最も低い位置から最も高い位置までの高さに存在する前記2成分型シーリング材組成物の体積S(L)が、下記式2:
式2 13≦Z=100×(R-S)/R≦23
を満たすことが好ましい。
上記式2は、13≦Z≦21を満たすことがより好ましく、15≦Z≦19を満たすことがより好ましい。
上記Zは、攪拌対象となる2成分型シーリング材組成物の全体積に対して、上下方向を基準として前記一対のサイドパドルが存在しない範囲に存在する2成分型シーリング材組組成物の体積が、100分率でどの程度あるかを示す値である。本発明の攪拌方法は、式2及び上記好ましい数値範囲を満たすことにより、本発明の効果をより確実に発揮することができる。
【0021】
パドル支持手段7は、機台2の上面一側に立設固定した支柱15と、支柱15に着脱自在に取り付けた側面視が倒立J字状の支持パイプ16とを備えている。支持パイプ16の遊端部は、回転台4の略中央部の上方位置に上下方向に配置され、この支持パイプ16の遊端部にパドル6の軸部10の上端部を内嵌させて溶接やビスなどにより固定することによって、軸部10が混合容器5の略中央部に位置するように、パドル6が機台2に固定支持されている。
【0022】
混合容器5は、単一部材で構成することも可能であるが、硬質な外容器20と、コンパクトに折り畳み可能な内容器21とからなる二重容器で構成し、内容器21を外容器20に対して相対回転不能に内嵌装着できるものを採用することが好ましい。内容器21は再利用せずに廃棄することができる。
【0023】
内容器21としては、柔軟性のあるフィルム材で構成された筒部材22と、筒部材22の下端開口部を閉鎖する底板23と、筒部材22の上端の開口部に取付けた上部環状枠24と、筒部材22の高さ方向の途中位置で、内容器21の高さの半分より少し低い位置に取付けた胴部環状枠25とを備え、硬質樹脂材料からなる底板23及び両環状枠24、25をフィルム材からなる筒部材22に対してヒートシールや超音波シール、高周波誘導シール等により融着したものを好適に採用できる。
【0024】
混合装置1を用いて混合対象物8を攪拌混合する際には、先ず、混合対象物8を充填した混合容器5を回転台4に設置し、パドル6の軸部10が回転台4の略中心線上に位置するように、支持部材を用いてパドル6を機台2に固定する。そして、回転台4とともに混合容器5を回転させて、パドル本体部13で混合対象物8を攪拌混合することになる。
【0025】
[シーリング材組成物]
本発明の攪拌方法の対象となるシーリング材組成物は、基材と硬化剤とを有する2成分型のものであって、これらの一方に樹脂中空体を含むものであることが好ましい。そのようなシーリング材組成物は、例えば、特開第2021-127357号の明細書に開示されているものであってもよい。
【0026】
本発明の攪拌方法の対象となるシーリング材組成物の基剤は、該基剤の主成分を構成する重合体(AA)と、樹脂中空体(B)とを少なくとも含有する。主成分であるとは、該基剤に含まれる全成分100質量部に対して、重合体(AA)の含有量が50質量部以上であることを意味する(他の好ましい実施形態においては、重合体(AA)の含有量が80質量部以上であってもよい)。樹脂中空体(B)は、基剤100質量部に対して、0.8~10質量部であることが好ましく、1.0~8質量部であることがより好ましく、1.2~6質量部であることがさらに好ましく、1.4~5質量部であることがよりさらに好ましく、1.5~4質量部であることがよりさらにより好ましい。
【0027】
本発明の攪拌方法の対象となるシーリング材組成物の主成分を構成する重合体は、加水分解性シリル基を有する重合体(A)であることが好ましい。本発明の攪拌方法の対象となるシーリング材組成物は、加水分解性シリル基を有する重合体(A)、樹脂中空体(B)、炭酸カルシウム(C)、及び、二酸化ケイ素(D)を含有する、シーリング材組成物であることがより好ましい。上記シーリング材組成物は、加水分解性シリル基を有する重合体(A)100質量部に対して、樹脂中空体(B)0.1~10質量部、炭酸カルシウム(C)100~300質量部、及び、二酸化ケイ素(D)0.1~10質量部を含有することがさらに好ましい。
【0028】
<<重合体(A)>>
本発明の攪拌方法の対象となるシーリング材組成物は、基剤の主成分を構成する重合体(AA)を含有する。重合体(AA)は、加水分解性シリル基を有する重合体(A)を主成分とするものであることが好ましい。本明細書においては、加水分解性シリル基を有する重合体(A)の上位概念を重合体(AA)と表記する。
重合体(A)は上記加水分解性シリル基の加水分解及び縮合によって例えばシロキサン結合を形成することができる。
【0029】
<加水分解性シリル基>
重合体(A)は、分子内に加水分解性シリル基を有する。上記加水分解性シリル基は、ケイ素原子に結合した加水分解性基を有する。上記加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基が挙げられる。中でも、本発明の効果により優れるという観点から、アルコキシ基が好ましい。上記加水分解性基としてアルコキシ基を有する加水分解性シリル基をアルコキシシリル基と称する場合がある。
なお、上記加水分解性基の一部が加水分解し、シラノール基となってもよい。
【0030】
上記加水分解性シリル基としては、例えば、下記式(1)で表される基が挙げられる。
-SiR1 3-a(OR2 (1)
式(1)中、R1 2はそれぞれ独立に炭化水素基を表し、aは1~3を表す。
【0031】
1、R2としての炭化水素基は特に制限されない。例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状若しくは環状)、芳香族炭化水素基又はこれらの組み合わせが挙げられる。
1は、脂肪族炭化水素基又はフェニル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基であることが更に好ましい。
2は脂肪族炭化水素基が好ましい。OR2は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基又はブトキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基であるのがより好ましく、メトキシ基が更に好ましい。
aは、本発明の効果がより優れるという観点から、2~3が好ましく、2がより好ましい。
【0032】
(主鎖)
重合体(A)の主鎖は、骨格が少なくとも炭素を有する有機重合体であることが好ましい。
重合体(A)の主鎖としては、例えば、ポリエーテル系重合体(例えばポリオキシアルキレン)、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、エーテル/エステル共重合体、エチレン性不飽和化合物の重合体、ジエン系化合物の重合体が挙げられる。
上記加水分解性シリル基は上記主鎖の末端又は側鎖に結合することができる。上記加水分解性シリル基は上記主鎖に直接又は有機基を介して結合することができる。上記有機基は特に制限されない。
【0033】
重合体(A)は、加水分解性シリル基を有する、ポリエーテル系重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、エーテル/エステル共重合体、エチレン性不飽和化合物の重合体又はジエン系化合物の重合体が好ましく、加水分解性シリル基を有するポリエーテル系重合体がより好ましく、加水分解性シリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体が更に好ましく、アルコキシシリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体が特に好ましい。
【0034】
重合体(A)としては、市販品を用いてもよい。重合体(A)のうち、加水分解性シリル基を有するポリエーテルとしては、いわゆる「変成シリコーン」と呼ばれるものが市販されている。このような市販品としては、MSP-S203、S303、S810(商品名、カネカ社製)、ES-S2410、ES-S2420、ES-S3430、ES-S3630、ES-S2730C(商品名、旭硝子社製)等が挙げられる。
重合体(A)のうち、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の市販品としては、例えば、SA100S、SA310S、XX009S(商品名、カネカ社製)等が挙げられる。
【0035】
<<樹脂中空体(B)>>
本発明の攪拌方法の対象となる組成物は、樹脂中空体(B)を含有することが好ましい。
樹脂中空体(B)は、外殻が樹脂によって構成され、内部が空洞であることが好ましい。
【0036】
樹脂中空体(B)の外殻の材料としては、例えば、フェノール樹脂;尿素樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニリデン;アクリロニトリル系共重合体(例えば、アクリロニトリルとメタクリロニトリルとの共重合体、アクリロニトリル及びアクリロニトリルと共重合可能な、ブタジエン、スチレンのようなビニル系モノマーの共重合体等)のような熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0037】
樹脂中空体(B)は、本発明の効果により優れ、耐候性に優れるという観点から、アクリロニトリル系共重合体の中空体を含むことが好ましい。
【0038】
上記樹脂中空体(B)は、その表面がフィラーで被覆されていてもよい。上記フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンが挙げられる。
上記樹脂中空体(B)は、本発明の効果により優れ、耐候性に優れるという観点から、上記フィラーで被覆されていることが好ましく、炭酸カルシウムで被覆されていることがより好ましく、炭酸カルシウムを被覆させた、アクリルニトリル系共重合体の中空体を含むことが更に好ましい。
なお、樹脂中空体(B)が炭酸カルシウムで被覆されている樹脂中空体である場合、上記樹脂中空体を被覆する炭酸カルシウムは、後述する炭酸カルシウム(C)に含まれない。
また、樹脂中空体(B)を被覆しうる上記フィラーは、後述する二酸化ケイ素(D)を含まない。
【0039】
(樹脂中空体(B)の平均粒子径)
樹脂中空体(B)の平均粒子径は、80~150μmであることが好ましく、100~140μmであることがより好ましい。
本発明において、樹脂中空体(B)の平均粒子径は、レーザー回折法により測定することができる。
【0040】
なお、本発明において、樹脂中空体(B)としての樹脂中空体の平均粒子径が(例えばA~Bμmのように)数値範囲で表示される場合には、上記樹脂中空体(B)の平均粒子径の数値範囲の中央値(つまり(A+B)/2)を樹脂中空体(B)の平均粒子径として取り扱うことができる。
樹脂中空体(B)としての樹脂中空体の平均粒子径が数値範囲で表示される場合、上記樹脂中空体(B)の平均粒子径(上記中央値)は、本発明の効果により優れるという観点から、80~150μmであることが好ましく、100~140μmであることがより好ましく、115~130μmが更に好ましい。
【0041】
(樹脂中空体(B)の真比重)
樹脂中空体(B)の真比重は、本発明の効果により優れるという観点から、0.05~0.35g/cm3が好ましく、0.07~0.12g/cm3がより好ましい。
樹脂中空体(B)の真比重とは、樹脂中空体を微粉砕して得られた、樹脂中空体の外殻のみから求めた比重を指す。
樹脂中空体(B)の真比重は、例えば、気体置換型ピクノメーター法(定容積膨張法)により、島津製作所製乾式自動密度計アキュピック1330(商品名)等を使用し、測定することが可能である。
【0042】
なお、樹脂中空体(B)としての樹脂中空体の真比重が(例えばC~Dg/cm3のように)数値範囲で表示される場合には、上記樹脂中空体(B)の真比重の数値範囲の中央値(つまり(C+D)/2)を樹脂中空体(B)の真比重として取り扱うことができる。
樹脂中空体(B)としての樹脂中空体の真比重が数値範囲で表示される場合、樹脂中空体(B)の真比重(上記中央値)は、本発明の効果により優れるという観点から、0.05~0.35g/cm3が好ましく、0.07~0.12g/cm3がより好ましく、0.10~0.12g/cm3が更に好ましい。
【0043】
<樹脂中空体(B)の含有量>
樹脂中空体(B)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、0.1~10質量部である。
成分(B)の含有量が上記範囲であることによって、本発明は意匠性、作業性、耐久性に優れる。
成分(B)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、5~10質量部が好ましく、8~10質量部がより好ましい。
なお、樹脂中空体(B)がフィラーで被覆されている場合、成分(B)の含有量は、上記フィラーを含んだ量を指す。
【0044】
<<炭酸カルシウム(C)>>
本発明の攪拌方法の対象となる組成物は、作業性の観点で、炭酸カルシウム(C)(成分(C))を含有することが好ましい。
【0045】
成分(C)は特に制限されない。例えば、未処理の炭酸カルシウム(c-1)又は表面処理された炭酸カルシウム(c-2)が挙げられる。
なお、未処理の炭酸カルシウムは、表面処理がされていない炭酸カルシウムを指す。
炭酸カルシウムを表面処理するために用いられる表面処理剤は特に制限されない。表面処理剤は、脂肪酸、樹脂酸及び脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、脂肪酸を含むことがより好ましい。
上記脂肪酸は特に制限されない。例えば、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸;オレイン酸、エライジン酸、リノーリ酸、リシノール酸などの不飽和脂肪酸が挙げられる。
【0046】
(炭酸カルシウム(C)の平均粒子径)
炭酸カルシウム(C)の平均粒子径は、本発明の効果により優れ、組成物の混合性に優れるという観点から、0.01~5.00μmであることが好ましく、0.01~1.00μmがより好ましく、0.01~0.1μmが更に好ましい。
炭酸カルシウム(C)の平均粒子径は、電子顕微鏡によって観察される一次粒子径の平均値を指す。
【0047】
成分(C)が未処理の炭酸カルシウム(c-1)を含む場合、未処理の炭酸カルシウム(c-1)の平均粒子径は、本発明の効果により優れ、組成物の混合性に優れるという観点から、0.01~5.00μmであることが好ましく、0.05~3.0μmがより好ましく、0.5~3.0μmが更に好ましい。
【0048】
成分(C)が表面処理された炭酸カルシウム(c-2)を含む場合、表面処理された炭酸カルシウム(c-2)の平均粒子径は、組成物の混合性に優れるという観点から、0.01~5.00μmであることが好ましく、0.01~1.00μmがより好ましく、0.01~0.1μmが更に好ましい。
【0049】
<炭酸カルシウム(C)の含有量>
炭酸カルシウム(C)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、100~300質量部であることが好ましい。
成分(C)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、100~200質量部が好ましく、100~180質量部がより好ましく、120~150質量部が更に好ましい。
【0050】
炭酸カルシウム(C)は、未処理の炭酸カルシウム(c-1)及び/又は表面処理された炭酸カルシウム(c-2)を含むことが好ましく、表面処理された炭酸カルシウム(c-2)を含むことがより好ましく、未処理の炭酸カルシウム(c-1)及び表面処理された炭酸カルシウム(c-2)を含むことが更に好ましい。
【0051】
上記炭酸カルシウム(C)が表面処理された炭酸カルシウム(c-2)を含む場合、本発明の効果により優れるという観点から、上記炭酸カルシウム(C)は、表面処理され、平均粒子径が0.05~1.0μmである炭酸カルシウム(c-2-1)、及び/又は、表面処理され、平均粒子径が0.01μm以上0.05μm未満である炭酸カルシウム(c-2-2)を含むことが好ましく、上記炭酸カルシウム(c-2-1)及び炭酸カルシウム(c-2-2)を含むことがより好ましい。
上記炭酸カルシウム(c-2-1)の平均粒子径は、0.07~1.0μmが好ましい。
上記炭酸カルシウム(c-2-2)の平均粒子径は、0.01~0.04μmが好ましい。
【0052】
上記炭酸カルシウム(C)が上記炭酸カルシウム(c-2-1)及び上記炭酸カルシウム(c-2-2)を含む場合、上記炭酸カルシウム(c-2-2)に対する上記炭酸カルシウム(c-2-1)の質量比(炭酸カルシウム(c-2-1)/炭酸カルシウム(c-2-2))は、1.0~4.0が好ましく、1.5~3.0がより好ましい。
【0053】
炭酸カルシウム(C)が未処理の炭酸カルシウム(c-1)及び表面処理された炭酸カルシウム(c-2)を含む場合、表面処理された炭酸カルシウム(c-2)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、100質量部以上が好ましく、100~200質量部がより好ましく、100~150質量部が更に好ましい。
【0054】
炭酸カルシウム(C)が未処理の炭酸カルシウム(c-1)及び表面処理された炭酸カルシウム(c-2)を含む場合、未処理の炭酸カルシウム(c-1)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、100質量部以上が好ましく、100~200質量部がより好ましく、100~150質量部が更に好ましい。
【0055】
炭酸カルシウム(C)が未処理の炭酸カルシウム(c-1)及び表面処理された炭酸カルシウム(c-2)を含む場合、未処理の炭酸カルシウム(c-1)と表面処理された炭酸カルシウム(c-2)との質量比(c-1/c-2)は、150/100~100/150が好ましい。
【0056】
(炭酸カルシウム(C)/樹脂中空体(B)の質量比)
上記樹脂中空体(B)の含有量に対する上記炭酸カルシウム(C)の含有量の質量比(炭酸カルシウム(C)/樹脂中空体(B))は、10~110が好ましく、15~80がより好ましく、15~50が更に好ましく、15~18が特に好ましい。
【0057】
<<二酸化ケイ素(D)>>
本発明の攪拌方法の対象となる組成物は、二酸化ケイ素(D)(成分(D))を含有することが好ましい。
【0058】
成分(D)は、例えば、親水性シリカ、疎水性シリカが挙げられる。成分(D)は、親水性シリカが好ましい。
【0059】
(二酸化ケイ素(D)の平均粒子径)
二酸化ケイ素(D)の平均粒子径は、10~20μmであることが好ましい。
二酸化ケイ素(D)の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された50%体積累積径(D50)をいう。なお、平均値を算出する基になる粒子径は、成分(D)の断面が楕円形である場合はその長径と短径の合計値を2で割った平均値をいい、正円形である場合はその直径をいう。
【0060】
二酸化ケイ素(D)は、湿式法による製造方法で得られるものであってもよい。
【0061】
<二酸化ケイ素(D)の含有量>
二酸化ケイ素(D)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、0.1~10質量部である事が好ましい。成分(D)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、1~9質量部が好ましく、5~8質量部がより好ましい。
【0062】
(二酸化ケイ素(D)/樹脂中空体(B)の質量比)
上記樹脂中空体(B)の含有量に対する上記二酸化ケイ素(D)の含有量の質量比(二酸化ケイ素(D)/樹脂中空体(B))は、本発明の効果により優れるという観点から、0.1~7.0が好ましく、0.5~2.0がより好ましく、0.5~1.0が更に好ましい。
【0063】
上記基剤は、B型粘度計(東機産業社製、7号ローター)を使用して回転速度1rpmの条件で測定したときに、5℃における初期粘度が1200~3200Pa・sであることが好ましく、1500~2900Pa・sであることがより好ましい。上記基剤は、同条件において、23℃における初期粘度が700~2700Pa・sであることが好ましく、1000~2400Pa・sであることがより好ましい。
【0064】
(硬化剤)
本発明の攪拌方法の対象となる2成分型シーリング材組成物を構成する硬化剤は、硬化触媒を含有する。
硬化触媒は、重合体(AA)を硬化させ得る化合物であれば特に制限されない。例えば、スズ系触媒、チタン系触媒、ジルコニウム系触媒、アルミニウム系触媒、アミン系触媒が挙げられる。
なかでも、硬化性に優れるという観点から、スズ系触媒が好ましい。
【0065】
スズ系触媒としては、例えば、ブタン酸スズ、オクチル酸スズ、カプリル酸スズ、オレイン酸スズ等のスズカルボン酸塩(後述するアルキルスズカルボン酸塩は除く。);
ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオレエート、ジオクチルスズジラウレートのようなアルキルスズカルボン酸塩;
酸化ジブチルスズのような酸化アルキルスズ;
ジブチルスズジメトキシドのようなアルキルスズアルコキシドが挙げられる。
【0066】
スズ系触媒は、スズカルボン酸塩が好ましく、オクチル酸スズがより好ましい。
上記オクチル酸スズとしては、例えば、2-エチルヘキシル酸第一錫が挙げられる。
【0067】
上記硬化触媒の含有量は、本発明の効果により優れ、硬化性に優れるという観点から、上記重合体(A)100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましい。
【0068】
(添加剤)
本発明の攪拌方法の対象となる組成物は、必要に応じて、目的又は効果を損なわない範囲で、更に、添加剤を含有することができる。
上記添加剤としては、例えば、可塑剤、有機溶媒、老化防止剤、炭酸カルシウム(C)及び二酸化ケイ素(D)以外のチクソ付与剤、炭酸カルシウム(C)及び二酸化ケイ素(D)以外の充填剤が挙げられる。
上記各添加剤は特に制限されない。適宜選択することができる。
【0069】
上記可塑剤としては、例えば、ジイソノニルフタレートのような芳香族カルボン酸エステル系可塑剤;
脂肪族カルボン酸エステル系可塑剤;
エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2-エチルヘキシル等のエポキシヘキサヒドロフタル酸ジアルキルエステルのようなエポキシ系可塑剤;
ポリオキシプロピレンジオールのようなポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。
上記可塑剤は、本発明の効果により優れるという観点から、芳香族カルボン酸エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤及びポリオキシアルキレンポリオールを併用することが好ましい。
上記可塑剤の含有量は、上記重合体(A)100質量部に対して、10~200質量部が好ましく、50~100質量部が好ましい。
【0070】
本発明の攪拌方法の対象となる組成物は、基剤と硬化剤とを有する2成分型である。
本発明の攪拌方法の対象となる組成物を構成する基剤は、重合体(A)、樹脂中空体(B)、炭酸カルシウム(C)、二酸化ケイ素(D)を含有していてもよい。
一方、上記硬化剤は広義の硬化剤を意味する。上記硬化剤は上記硬化触媒を狭義の硬化剤(重合体(A)を硬化させ得る成分)として含むことができる。
上記添加剤は、基剤及び/又は硬化剤に含有させることができる。
【0071】
本発明の攪拌方法の対象となる組成物は、基剤と硬化剤とを別々に容器にて保管し、使用する際に基剤と硬化剤とを混合して用いられるものである。
【0072】
本発明の攪拌方法の対象となる組成物は、シーリング材用の組成物として使用することができる。
【0073】
本発明の攪拌方法の対象となる組成物を適用することができる基材としては、例えば、コンクリート、木材、金属、ガラス、プラスチック、セラミック、石材が挙げられる。
本発明の攪拌方法の対象となる組成物を基材に適用する方法は、特に制限されない。例えば従来公知の方法が挙げられる。
【0074】
(色素)
本発明の攪拌方法の対象となるシーリング材組成物は、得られるシーリング材に色調を付与するため、顔料を含有していてもよい。顔料には、無機顔料と有機顔料とがあり、無機顔料としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ等の金属酸化物、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム等の硫化物、塩酸塩、硫酸塩等を挙げることができる。有機顔料としては、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。
【0075】
(本発明の攪拌方法の対象となるシーリング材組成物の真比重)
本発明の攪拌方法の対象となるシーリング材組成物(基剤、硬化剤、及び、カラーマスターを含む全成分)の真比重は、1.24~1.04g/cm3が好ましく、1.19~1.09/cm3がより好ましい。
【実施例
【0076】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明は実施例に限定されない。
【0077】
<<組成物の製造>>
下記表1に示される組成(質量部)を含む組成物を撹拌装置で攪拌し、2成分型シーリング材組成物の基剤を調製した。2成分型シーリング材組成物の硬化剤として、錫触媒、可塑剤、炭酸カルシウム等の充填剤など含む硬化剤を調整し用いた。2成分型シーリング材組成物のカラーマスターとして、顔料、可塑剤などを含むカラーマスターを調整し用いた。得られた基剤と硬化剤とカラーマスターを、撹拌装置(日本ソセー工業社製シーリング材専用容器回転式撹拌機(製品名:カルマゼ))を用いて十分に混合して、組成物を製造した。
【0078】
【表1】
【0079】
表1に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
<(A)成分>
・加水分解性シリル基を有する合体(A):両末端に加水分解性シリル基としてジメトキシシリル基を有し、主鎖がポリオキシプロピレンである重合体。商品名「MSP-S810」、株式会社カネカ製
【0080】
<成分(B)>
・樹脂中空体(B):炭酸カルシウムを被覆させた、アクリルニトリル系共重合体の中空体。商品名MFL-110CAL、松本油脂製薬社製。真比重:0.07~0.09g/cm、平均粒子径:90~120μm。樹脂中空体(B)1の真比重の中央値は0.08g/cm3、平均粒子径の中央値は105μmである。
【0081】
<成分(C)>
・炭酸カルシウム(C)1:脂肪酸で表面処理されたコロイダル炭酸カルシウム。商品名白艶華CCR、白石工業社製。平均粒子径約0.08μm。本実施例で使用された上記炭酸カルシウム(C)1は、本明細書における、表面処理され、平均粒子径が0.05~1.0μmである上記炭酸カルシウム(c-2-1)に該当する。
【0082】
・炭酸カルシウム(C)2:脂肪酸で表面処理されたコロイダル炭酸カルシウム。商品名Viscoexcel-30、白石工業社製。平均粒子径0.03μm。本実施例で使用された上記炭酸カルシウム(C)2は、本明細書における、表面処理され、平均粒子径が0.01μm以上0.05μm未満である上記炭酸カルシウム(c-2-2)に該当する。
【0083】
<成分(D)>
・二酸化ケイ素(D):湿式法で製造された親水性シリカ。商品名カープレックス#80、DSL.ジャパン社製。平均粒子径約15μm
【0084】
・可塑剤1:ジイソノニルフタレート。商品名「DINP」、株式会社ジェイ・プラス製
・可塑剤2:エポキシ系可塑剤。エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2-エチルヘキシル。商品名「サンソサイザーE-PS」、新日本理化(株)社製
・可塑剤3:ポリオキシプロピレンジオール(PPG)。商品名「PREMINOL S4012」、AGC(株)社製
【0085】
<攪拌に用いたパドルの形状>
図3に示されるパドルを実施例1~8及び比較例1~4における攪拌試験に用いた。図3に示されているように、アーム部11の長さ(回転軸10の外周部から攪拌部12の内周部までの長さ)L1、L2は、それぞれ、69.5mm、59.5mmであった。攪拌部12の高さは88.5mmであった。アーム部11の横方向の全長は203mmであった。
【0086】
<配合量>
実施例1~8及び比較例1~4における攪拌試験に用いた2成分型シーリング材組成物を構成する基剤、硬化剤、及び、色素の重量及び体積等を表2及び表3に示した。組成物の初期粘度は、B型粘度計(東機産業社製、7号ローター)を使用し、回転速度1rpm、5℃又は23℃の条件下で測定した(単位:Pa・s)。
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
<<評価>>
実施例1~8及び比較例1~4においてそれぞれ攪拌した2成分型シーリング材組成物を、目地(幅:40mm、奥行(深さ):20mm、長さ:1,000mm)に充填する(目地内を完全に満たす)ように打設した。打設は攪拌直後に行った。打設後、金ヘラで打設された組成物の表面を均一にした。その後、それぞれの組成物を、5℃又は23℃、50%RH(相対湿度)の条件下に置いて7日間養生し、シーリング材を調製した。調製したシーリング材の写真を図4及び図5に示す。
【0090】
(混合性)
実施例1~8及び比較例1~4においてそれぞれ攪拌及び打設されたシーリング材の表面の色味を目視で確認した。色味が均一であるものを「◎」と評価した。完全ではないが、色味が実用的に均一であるものを「○」と評価した。色味にややムラがあるものを「△」と評価した。それらの結果を表2及び表3に示した。
【0091】
(表面凹凸)
実施例1~8及び比較例1~4においてそれぞれ攪拌及び打設されたシーリング材の表面凹凸(アバタ)を目視で確認した。目視で確認可能な表面凹凸の数をカウントした。その結果を表2及び表3に示した。
【0092】
(その他の測定)
実施例1~8及び比較例1~4においてそれぞれ調製したシーリング材の混合後の粘度及びTI値、室温、高温及び水存在環境下で7日間養生した後の接着性を確認した。実施例1~8及び比較例1~4のいずれにおいてもこれらの物性においてシーリング材として実用性に問題があるものは確認されなかった。
【0093】
実施例1~8において打設されたシーリング材は、比較例1~4において打設されたシーリング材よりも表面凹凸の程度が低かった。実施例1、2、5及び6において打設されたシーリング材は、実施例3、4、7及び8において打設されたシーリング材よりも均一に混合されていたことが確認された。これらの中でも、実施例1及び5は、混合性と表面凹凸の点でバランスが良く、特に優れていた。
【要約】
【課題】本発明は、樹脂中空体を含む2成分型シーリング材組成物を充分に混合することができ、かつ、そのような組成物の硬化後に時間経過に伴って増加することがあった表面凹凸と外観劣化を防止することができる攪拌方法を提供することを目的とする。
【解決手段】樹脂中空体を含む基剤と、硬化剤とを備えた2成分型シーリング材組成物を攪拌するための攪拌方法であって、混合容器と、回転軸と、ボトムパドルおよびサイドパドルとを有する攪拌装置を用いて2成分型シーリング材組成物を混合し、基剤を混合容器に供給したときの平均基剤液面高さLL(mm)、一対のサイドパドルの高さH(mm)、ボトムパドルの平均半径X(mm)、攪拌時の温度における基剤の初期粘度A(Pa・S)、摂氏5℃における基剤の初期粘度B(Pa・S)、BをAで除した値の三乗根C、Y=(LL-H)×Cが、0.2X≦Y≦0.4Xの式を満たす。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5