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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】推定システム、推定装置及び推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/18 20060101AFI20231213BHJP
   G01N 25/72 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
G01N25/18 C
G01N25/72 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020063026
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021162434
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊平
(72)【発明者】
【氏名】田中 仁章
(72)【発明者】
【氏名】波津久 達也
(72)【発明者】
【氏名】井原 智則
(72)【発明者】
【氏名】盛田 元彰
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/202981(WO,A1)
【文献】特開平8-15189(JP,A)
【文献】特表平7-500673(JP,A)
【文献】特開2000-88561(JP,A)
【文献】特開昭48-29484(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/308548(US,A1)
【文献】特開昭54-10762(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第4163587(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00-25/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる配管の外表面温度の測定値を取得する取得部と、
前記配管の内表面における析出物の除去処理の実行時刻を推測する推測部と、
前記析出物の厚さの推定に用いられる推定値を、前記析出物の除去処理の実行時刻の推測結果から所定時間内に得られた前記配管の外表面温度の測定値を用いて補正する補正部と、
補正された前記推定値と前記配管の外表面温度の測定値とに基づいて前記析出物の厚さを推定する推定部と、
を備える推定システム。
【請求項2】
前記補正部は、前記析出物の厚さの推定結果が予め規定された閾値以下になるように前記推定値を補正する、
請求項1に記載の推定システム。
【請求項3】
前記補正部は、前記析出物の熱伝導率の前記推定値と、前記配管の内側における流体の温度の前記推定値と、前記配管の外側における流体の温度の前記推定値と、前記配管の内側における熱伝達率の前記推定値と、前記配管の外側における熱伝達率の前記推定値とのうちの少なくとも一つを補正する、
請求項1に記載の推定システム。
【請求項4】
前記取得部は、更に、前記配管の外表面における熱流束の測定値と、前記配管の外表面を覆う断熱材の内部温度の測定値とのうちの少なくとも一つを取得し、
前記推定部は、前記配管の外表面における熱流束の測定値と前記断熱材の内部温度の測定値とのうちの少なくとも一つと、前記配管の外表面温度の測定値と、補正された前記推定値とに基づいて、前記析出物の厚さを推定する、
請求項1又は請求項2に記載の推定システム。
【請求項5】
前記推測部は、前記析出物の除去処理を検出または予測した時刻から前記析出物の除去処理の実行時刻を推測し、
前記補正部は、前記推定値を、前記析出物の除去処理の実行時刻の推測結果から所定時間内に得られた前記配管の外表面温度の測定値を用いて補正する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の推定システム。
【請求項6】
流体が流れる配管の内表面における析出物の厚さの推定に用いられる推定値を、前記析出物の除去処理の実行時刻の推測結果から所定時間内に得られた前記配管の外表面温度の測定値を用いて補正する補正部と、
補正された前記推定値と前記配管の外表面温度の測定値とに基づいて前記析出物の厚さを推定する推定部と、
を備える推定装置。
【請求項7】
推定システムが実行する推定方法であって、
流体が流れる配管の外表面温度の測定値を取得する取得ステップと、
前記配管の内表面における析出物の除去処理の実行時刻を推測する推測ステップと、
前記析出物の厚さの推定に用いられる推定値を、前記析出物の除去処理の実行時刻の推測結果から所定時間内に得られた前記配管の外表面温度の測定値を用いて補正する補正ステップと、
補正された前記推定値と前記配管の外表面温度の測定値とに基づいて前記析出物の厚さを推定する推定ステップと、
を含む推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定システム、推定装置及び推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体が流れる配管の内表面(流路壁)に、その流体に含まれている物質の析出物が付着することが、従来から知られている。例えば、オイル及びガスのパイプラインでは、温度及び圧力の条件に応じて、ハイドレート、ワックス、アスファルテン又はスケールといった析出物が付着することが知られている。このような析出物は、例えば、ピグと呼ばれる器具をパイプラインの内側に通過させることにより、或いは、析出物の発生を阻害する阻害剤をパイプラインに投入することにより、パイプラインの内表面から除去される。従来では、配管の内表面に付着した析出物の厚さが推定され、その厚さが閾値を超えた場合に、上述した除去処理が実行されていた。以下の特許文献1~4には、配管の内表面に付着した析出物の厚さの推定方法が、それぞれ開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第6644848号明細書
【文献】米国特許第8960305号明細書
【文献】特開2016-166781号公報
【文献】米国特許出願公開第2004/0059505号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、配管の内表面に付着した析出物の厚さを推定するために、配管の外表面温度、配管を流れる流体の温度、配管の外側及び内側における熱伝達率、及び、析出物の熱伝導率等の各物理量が必要になる場合がある。これらの物理量の中には、パイプライン等の現場において測定することができるものと、測定することができないものとがある。そこで、析出物の厚さを推定するために、測定することができない物理量の代わりに推定値が用いられる場合がある。しかしながら、推定値と真値との乖離が大きい場合には、配管の内表面における析出物の厚さの推定誤差を所定範囲に収めることができないという問題がある。
【0005】
また、特にパイプラインなど自然環境下に設置される配管の場合、周囲の環境変化(配管が埋もれるなど)が起こりやすく、推定値と真値との乖離が大きくなりやすいという問題がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、配管の内表面における析出物の厚さの推定誤差を所定範囲に収めることが可能である推定システム、推定装置及び推定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様による推定システムは、流体が流れる配管(200)の外表面温度の測定値を取得する取得部(40)と、前記配管(200)の内表面における析出物の除去処理の実行時刻を推測する推測部(3)と、前記析出物の厚さの推定に用いられる推定値を、前記析出物の除去処理の実行時刻の推測結果から所定時間内に得られた前記配管の外表面温度の測定値を用いて補正する補正部(42)と、補正された前記推定値と前記配管(200)の外表面温度の測定値とに基づいて前記析出物の厚さを推定する推定部(43)と、を備える。
【0008】
また、本発明の一態様による推定システムは、前記補正部(42)が、前記析出物の厚さの推定結果が予め規定された閾値以下になるように前記推定値を補正する。
【0009】
また、本発明の一態様による推定システムは、前記補正部(42)が、前記析出物の熱伝導率の前記推定値と、前記配管(200)の内側における流体の温度の前記推定値と、前記配管(200)の外側における流体の温度の前記推定値と、前記配管(200)の内側における熱伝達率の前記推定値と、前記配管(200)の外側における熱伝達率の前記推定値とのうちの少なくとも一つを補正する。
【0010】
また、本発明の一態様による推定システムは、前記取得部(40)が、更に、前記配管(200)の外表面における熱流束の測定値と、前記配管(200)の外表面を覆う断熱材の内部温度の測定値とのうちの少なくとも一つを取得し、前記推定部(43)が、前記配管(200)の外表面における熱流束の測定値と前記断熱材の内部温度の測定値とのうちの少なくとも一つと、前記配管(200)の外表面温度の測定値と、補正された前記推定値とに基づいて、前記析出物の厚さを推定する。
【0011】
また、本発明の一態様による推定システムは、前記推測部は、前記析出物の除去処理を検出または予測した時刻から前記析出物の除去処理の実行時刻を推測し、前記補正部(42)が、前記推定値を、前記析出物の除去処理の実行時刻の推測結果から所定時間内に得られた前記配管の外表面温度の測定値を用いて補正する。
【0012】
本発明の一態様による推定装置(4a)は、流体が流れる配管(200)の内表面における析出物の厚さの推定に用いられる推定値を、前記析出物の除去処理の実行時刻の推測結果から所定時間内に得られた前記配管の外表面温度の測定値を用いて補正する補正部(42)と、補正された前記推定値と前記配管(200)の外表面温度の測定値とに基づいて前記析出物の厚さを推定する推定部(43)と、を備える。
【0013】
本発明の一態様による推定方法は、推定システムが実行する推定方法であって、流体が流れる配管(200)の外表面温度の測定値を取得する取得ステップと、前記配管(200)の内表面における析出物の除去処理の実行時刻を推測する推測ステップと、前記析出物の厚さの推定に用いられる推定値を、前記析出物の除去処理の実行時刻の推測結果から所定時間内に得られた前記配管の外表面温度の測定値を用いて補正する補正ステップと、補正された前記推定値と前記配管(200)の外表面温度の測定値とに基づいて前記析出物の厚さを推定する推定ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、配管の内表面における析出物の厚さの推定誤差を所定範囲に収めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態における、推定システムの構成例を示す図である。
図2】第1実施形態における、センサの配置例を示す断面図である。
図3】第1実施形態における、内表面に析出物が付着している配管の例を示す断面図である。
図4】第1実施形態における、配管の外表面温度の例を示す図である。
図5】第1実施形態における、厚さの推定結果の例を示す図である。
図6】第1実施形態における、推定システムの動作例を示すフローチャートである。
図7】第1実施形態の第2変形例における、センサの配置例を示す断面図である。
図8】第2実施形態における、推定システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による推定システム、推定装置及び推定方法について詳細に説明する。以下では、まず本発明の実施形態の概要について説明し、続いて本発明の各実施形態の詳細について説明する。
【0017】
〔概要〕
本発明の実施形態は、配管の内表面における析出物の厚さの推定誤差を所定範囲に収めることができるようにするものである。例えば、オイル及びガスのパイプラインの内表面に付着するハイドレート、ワックス、アスファルテン又はスケールといった析出物の厚さの推定誤差を、所定範囲に収めることができるようにするものである。
【0018】
特許文献3に開示された装置は、配管の外表面に設置された4個の温度センサを用いて、析出物の厚さを推定する。しかしながら、配管の外側及び内側における各流体の温度と、流体及び配管の間の熱の伝わり方を表すパラメータ(例えば、熱伝達率)とが精度よく推定又は測定されていなければ、配管の内表面における析出物の厚さの推定誤差を所定範囲に収めることができない。すなわち、配管の外側及び内側における各流体の温度の推定誤差が大きい場合には、流体の温度の推定値に基づいて推定された厚さの推定結果を所定範囲に収めることができない。
【0019】
また、配管の外側及び内側における流体の温度が時間経過に応じて変化するので、配管の外側及び内側における流体の圧力、流速及び流動は時間経過に応じて変化する。更に、配管の一部が海底に埋もれる場合がある。これらの要因により、過去の測定値に基づいて推定された推定値が推定誤差を有する場合がある。推定値が推定誤差を有する場合、推定誤差を有する推定値に基づいて推定された厚さの推定結果を所定範囲に収めることができない。
【0020】
これらのように特許文献1~4では、析出物の厚さの推定に用いられる推定値が補正されることがないので、配管の内表面における析出物の厚さの推定誤差は蓄積されたままである。
【0021】
本発明の実施形態では、推定システムは、配管の内表面における析出物の厚さの推定に用いられる推定値(熱等の物理量に関する推定値)を、析出物の除去処理の実行時刻(例えば、析出物を除去する器具が配管の内側を通過した通過時刻、あるいは、析出物を除去する器具が配管の内側を通過するであろう又は通過したであろう予測時刻)から所定時間内に得られた配管の外表面温度の測定値を用いて補正する。ここで、析出物の除去処理の実行時刻では析出物の厚さが閾値以下(例えば、0)になっているので、推定システムは、予め規定された閾値以下に厚さの推定結果がなるように推定値を補正する。推定値が補正されることによって、析出物の厚さの推定誤差は蓄積されなくなる。その結果、配管の内表面における析出物の厚さの推定誤差を所定範囲に収めることが可能である。なお、この所定時間は、析出物が除去された後に、センサの測定値に所定の影響を与える程度に再び付着し始めるまでの時間よりも短いことが望ましい。このような所定時間は、例えば析出物が付着するまでに要する時間を予め実験などで得ておくことで定められてもよい。
【0022】
〔第1実施形態〕
〈推定システム〉
図1は、第1実施形態における、推定システムの構成例を示す図である。本実施形態の推定システム1aは、配管の外表面温度の測定値と、熱等の物理量に関する推定値とに基づいて、配管の内表面における析出物の厚さを推定するシステムである。
【0023】
推定システム1aは、複数のセンサ2と、検出部(推測部)3と、推定装置4aとを備える。推定装置4aは、通信回線100を経由してセンサ2及び検出部3と通信可能である。通信回線100は、インターネット、WAN(Wide Area Network)等の通信回線である。通信回線100は、有線回線又は無線回線のいずれでもよく、有線回線及び無線回線の両方でもよい。
【0024】
配管200は、流体を送る配管(流体が流れる配管)である。以下、配管200を用いて送られる流体は、一例としてオイル及びガスである。オイル及びガスは、坑井から生産される。生産されたオイル及びガスは、配管200の内側に流される。オイル及びガスの温度は、オイル及びガスが坑井から生産された直後において測定される。
【0025】
配管200は例えば地上又は海中に設置されており、配管200の一部又は全部は地中又は海底に埋設されていてもよい。配管200の内表面には、析出物201が付着する。析出物201は、配管200を用いて送られるオイル又はガス等に含まれている物質であり、例えば、ハイドレート、ワックス若しくはアスファルテン等の有機物、又はスケール等の無機物である。
【0026】
器具300は、析出物201を除去する器具であり、例えば、ピグである。器具300は、配管200の内側を管軸方向に通過するという除去処理を実行することによって、析出物201を配管200の内表面から除去する。
【0027】
センサ2は、温度センサであり、例えば、熱電対、測温抵抗体、DTS(Distributed Temperature Sensor)又はサーモカメラである。第1実施形態においては、配管200の外表面の温度(温度分布)を測定するために、複数のセンサ2は、配管200の外周方向に所定の間隔で、配管200の外表面に設置される。ここでセンサ2がサーモカメラであって、1台のサーモカメラで配管200の外表面における所望の範囲の温度(温度分布)を測定することができる場合には、センサ2(サーモカメラ)は1台であってもよい。センサ2は、設置された位置において、配管200の外表面温度を測定する。また、センサ2は、配管200の外表面温度を測定できれば、配管外表面に限らず、配管に埋め込んで設置してもよい。センサ2は、配管200の外表面温度の測定値を、通信回線100を経由して推定装置4aに出力する。
【0028】
図2は、第1実施形態における、センサの配置例を示す断面図である。なお、図2に示す断面図は、配管200の半径方向の断面図である。図2(a),(b)に示す例は何れも、4個のセンサ2(センサ2-1~2-4)が、配管200の外表面に、配管200の外周方向に沿って等間隔(90度の間隔)で設置されている。これによって、センサ2-1~2-4は、配管200の外周方向における配管200の外表面の温度分布を測定することが可能である。
【0029】
ここで、図2(b)に示す例では、配管200の外表面に、センサ2-1~2-4とともに、配管200の外表面を覆う断熱材230が設けられているが、図2(a)に示す例では、配管200の外表面に断熱材230は設けられていない。断熱材230は、配管200の外側からセンサ2への熱の影響を低減するために設けられる。断熱材230を設けることで、例えばセンサ2-1~2-4に対する海水の熱の影響を低減することができる。
【0030】
検出部3は、器具300が所定の位置(例えば、検出部3の設置位置)を通過したことを検出する。例えば、検出部3は、配管200の内側を管軸方向に移動する器具300が発する振動や磁界を検出し、その検出結果に基づいて、器具300が検出部3の設置位置を通過したこと(通過時刻)を検出(推測)する。或いは検出部3は、超音波若しくは放射線の反射又は透過を検出し、その検出結果に基づいて、検出部3の設置位置を器具300が通過したことを検出(推測)する。
【0031】
検出部3は、器具300が通過したことを検出(推測)することによって、その検出結果(検出時刻)を、配管200の内表面における析出物201の除去処理の実行時刻(タイミング)として推測する。検出部3は、析出物201の除去処理の実行時刻の推測結果を、通信回線100を経由して推定装置4aに出力する。
【0032】
〈推定装置〉
推定装置4aは、取得部40と、記憶部41と、補正部42と、推定部43と、判定部44と、出力部45とを備える。取得部40は、複数のセンサ2が出力した測定値(配管200の外表面温度の測定値)、検出部3が出力した推測結果(析出物201の除去処理の実行時刻の推測結果)を取得する。取得部40は、上記の測定値及び推測結果を、通信回線100を経由して取得する。取得部40は、取得した測定値及び推測結果を記憶部41に記憶させる。判定部44は、器具300の通過を検出部3が検出(推測)したか否かを判定する。すなわち、判定部44は、析出物201の除去処理が実行されたか否かを判定する。
【0033】
記憶部41は、不揮発性の記録媒体(非一時的な記録媒体)を有しており、例えば、プログラム、モデル、パラメータ等を記憶する。モデルは、外表面温度の測定値と析出物201の厚さとの関係を表すものである。このモデルは、例えば関数又は変換テーブルの形式で表される。モデルが関数の形式で表される場合、パラメータは、モデル「関数f(p)」の引数「p」である。
【0034】
このようなパラメータとしては、例えば、センサ2-1~2-4のセンサ2ごとの外表面温度の測定値、析出物201の熱伝導率の推定値、配管200の内側における熱伝達率の推定値、配管200の外側における熱伝達率の推定値が挙げられる。各パラメータは、例えば、過去の測定値と、経験値と、フローシミュレータによる推定値の解析結果とのうちの少なくとも一つに基づいて予め決定される。推定値の解析処理と測定とは、リアルタイムで繰り返し実行されてもよい。
【0035】
仮に、析出物201の厚さの推定に用いられる推定値が真値に対して大きな誤差を有している場合、器具300が通過した直後において、実際には析出物201が除去されているにもかかわらず、析出物201の厚さの推定結果が0にならない(例えば、析出物201の厚さの推定結果が、0から大きく外れた値となる)。
【0036】
そこで、補正部42は、析出物201の厚さの推定に用いられる推定値を、析出物201の除去処理の実行時刻から所定時間内に得られた測定値を用いて補正する。所定時間は、例えば、器具300の通過に起因する配管200の外表面温度(センサ2の測定値)の変化が収束し、配管200の外表面温度(センサ2の測定値)が安定するのに要する時間であり、例えば、1~数分間、1~数時間、又は、1~数日間とすることができる。補正部42は、析出物201の厚さの推定結果が閾値以下(例えば、0)になるように、析出物201の厚さの推定に用いられる推定値(複数の推定値が用いられる場合には、それら複数の推定値のうち少なくとも一つの推定値)を補正する。なお、閾値は予め規定される。
【0037】
析出物201の厚さの推定に用いられる推定値とは、配管200周辺の環境における熱等の物理量に関する推定値であって、例えば、析出物201の熱伝導率の推定値と、配管200の内側におけるオイル及びガスの温度の推定値と、配管200の外側における流体(例えば、海水)の温度の推定値と、配管200の内側(例えば、析出物、オイル及びガス)における熱伝達率の推定値と、配管200の外側(例えば、海水、海底)における熱伝達率の推定値とのうちの少なくとも一つである。
【0038】
推定部43は、補正された推定値と配管200の外表面温度の測定値とに基づいて、析出物201の厚さを推定する。配管の外表面温度の測定値に基づいて析出物の厚さを推定する方法は、国際公開第2019/202981号(以下「参考文献」という。)に開示されている。なお、配管200の外表面温度の測定値に基づいて推定部43が析出物201の厚さを推定する方法は、上記の参考文献に開示された方法に限定されるものではない。
【0039】
推定部43は、析出物201の厚さの推定結果を出力部45に出力する。推定部43は、析出物201の厚さの推定結果を記憶部41に記録してもよく、また、析出物201の厚さの推定結果を記憶部41に記録すると共に出力部45に出力してもよい。推定部43は、推定処理を終了するか否かを表す指示信号を、外部端末(不図示)から取得部40を経由して取得してもよい。なお、推定部43で行われる処理の詳細は、後述する。
【0040】
出力部45は、データを外部装置(不図示)に出力する機能部である。例えば、出力部45は、析出物201の厚さの推定結果を、外部装置に出力する。外部装置は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等の表示デバイスである。表示デバイスは、析出物201の厚さの推定結果を表す画像(例えば、グラフ、断面図)を表示する。オペレータは、表示デバイスに表示された厚さの推定結果を確認することができる。
【0041】
上述した取得部40、補正部42、推定部43、判定部44及び出力部45の一部又は全部は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが、記憶部41に記憶されたプログラムを実行することにより、ソフトウェア的に実現される。つまり、取得部40、補正部42、推定部43、判定部44及び出力部45の一部又は全部の機能は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することによって実現される。
【0042】
上記のプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置などの非一時的な記録媒体である。プログラムは、通信回線100を経由して、取得部40によって受信されてもよい。
【0043】
なお、上述した取得部40、補正部42、推定部43、判定部44及び出力部45の一部又は全部は、ハードウェアによって実現されてもよい。例えば、LSI(Large Scale Integration circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いた電子回路(electronic circuit又はcircuitry)によって実現されても良い。
【0044】
〈推定部で行われる処理〉
推定部43は、少なくとも1個のセンサ2の外表面温度の測定値に基づいて、所定の位置(例えば、そのセンサ2の設置位置)における析出物201の厚さを推定する。例えば、推定部43は、センサ2-1~2-4の各設置位置における外表面温度の測定値(温度分布)に基づいて、析出物201の形状(厚さ分布)を式(1)のように推定する。
【0045】
th=f(p,p,p,p) …(1)
【0046】
ここで、「th」は、少なくとも1個のセンサ2の設置位置における析出物201の厚さの推定結果を表す。「f」は、予め規定された関数を表す。パラメータ「p」は、少なくとも1個のセンサ2の外表面温度の測定値を表す。パラメータ「p」は、析出物201の熱伝導率の推定値を表す。パラメータ「p」は、配管200の内側における流体(オイル及びガス)の温度の推定値又は測定値を表す。オイル及びガスの温度は、例えば、オイル及びガスが坑井から生産された直後において測定された温度に基づいて推定される。パラメータ「p」は、配管200の外側における流体の温度の推定値又は測定値を表す。配管200が地上に設置されている場合、配管200の外側における流体は大気である。配管200が海底に設置されている場合、配管200の外側における流体は海水である。
【0047】
また、配管200の内側に混相流が形成されている場合(熱の伝わり方に偏りがある場合)でも析出物201の厚さを推定できるように、記憶部41は、配管200の内側における流体の熱伝達率の推定値を、変数として予め記憶してもよい。推定部43は、配管200の内側における熱伝達率の推定値と、配管200の外側における熱伝達率の推定値とに基づいて、析出物201の厚さを式(2)のように推定してもよい。
【0048】
th=f(p,p,p,p,p) …(2)
【0049】
ここで、パラメータ「p」は、配管200の内側における熱伝達率の推定値を表す。これにより推定部43は、配管200の内側に混相流が形成されている場合でも、配管200の内側における熱の伝わり方を考慮して、析出物201の厚さを推定することができる。
【0050】
また、配管200の一部が海底に埋設されている又は海流が激しい場合でも析出物201の厚さを推定できるように、記憶部41は、配管200の外側における熱伝達率の推定値を、変数として記憶してもよい。推定部43は、配管200の内側における熱伝達率の推定値と、配管200の外側における熱伝達率の推定値とに基づいて、析出物201の厚さを式(3)のように推定してもよい。
【0051】
th=f(p,p,p,p,p,p) …(3)
【0052】
ここで、パラメータ「p」は、配管200の外側における熱伝達率の推定値を表す。これにより推定部43は、配管200の一部が例えば海底に埋設されている場合でも、配管200の外側における熱の伝わり方を考慮して、析出物201の厚さを推定することができる。
【0053】
推定部43は、配管200の外側における熱伝達率の推定値に基づいて、析出物201の厚さを式(4)のように推定してもよい。
【0054】
th=f(p,p,p,p,p) …(4)
【0055】
これにより推定部43は、配管200の内側における熱伝達率を推定せずに、配管200の外側における熱の伝わり方を考慮して、析出物201の厚さを推定することができる。
【0056】
〈配管に付着した析出物の例〉
図3は、第1実施形態における、内表面に析出物が付着している配管の例を示す断面図である。なお、図3に示す断面図は、図2と同様に、配管200の半径方向の断面図である。図3に例示する析出物201では、センサ2-1の設置位置における厚さが「th」であり、センサ2-2の設置位置における厚さが「th」であり、センサ2-3の設置位置における厚さが「th」であり、センサ2-4の設置位置における厚さが「th」である。
【0057】
図3では、配管200の内側における一例として、オイル210及びガス220の混相流が形成されている。すなわち、配管200の内側の天井付近にガス220が集まっている。配管200の内側に混相流が形成されている場合、配管200の内側において熱の伝わり方に偏りがあるので、配管200の外周方向の位置に応じて熱の伝わり方が変化する。このようなことに起因して、厚さ「th」~「th」のように、析出物201の厚さが不均一になることがある。図3では、一例として、厚さ「th」が最も厚く、厚さ「th」が最も薄い。
【0058】
なお、配管200の一部が例えば海底に埋設されている場合、埋設されていることの影響によっても、配管200の外周方向の位置に応じて熱の伝わり方が変化する。また、配管200の外側において海流が激しい場合、海流の影響によっても、配管200の外周方向の位置に応じて熱の伝わり方が変化する。
【0059】
図4は、第1実施形態における、配管の外表面温度の例を示す図である。横軸は、配管200の外周方向の位置(センサ2-1~2-4の各設置位置)を示す。縦軸は、図3に示された配管200の外表面温度の測定値「tp」を示す。図4に示す例では、センサ2-1による測定値が「tp」であり、センサ2-2による測定値が「tp」であり、センサ2-3による測定値が「tp」であり、センサ2-4による測定値が「tp」である。図4に示す例では、センサ2-2による測定値「tp」が最も低い。これは、図3に示された配管200の内側の天井付近に集まっているガス220の熱伝導率が、オイル210の熱伝導率よりも低いためである。また、図4に示す例では、センサ2-4による測定値と、センサ2-3による測定値と、センサ2-2による測定値との順に、配管200の外表面温度が高い。
【0060】
図5は、第1実施形態における、厚さの推定結果の例を示す図である。横軸は、配管200の外周方向の位置(センサ2-1~2-4の各設置位置)を示す。縦軸は、図3に例示された配管200における析出物201の厚さの推定結果を示す。なお、図5に示す測定結果は、推定部43で、上述した処理が行われて得られたものである。
【0061】
推定部43は、図4の縦軸に例示された外表面温度の測定値を用いて、センサ2-1~2-4のセンサ2ごとに析出物201の厚さを推定する。例えば、推定部43は、外表面温度の測定値と式(1)~(4)のいずれかとを用いて、センサ2ごとに析出物201の厚さを推定する。なお、図5の縦軸に示された厚さの推定結果は一例である。
【0062】
〈推定システムの動作〉
図6は、第1実施形態における、推定システムの動作例を示すフローチャートである。図6に示すフローチャートの処理(推定値の補正フロー)は、通常の動作フロー(センサ2による検出結果(温度)に基づく析出物201の厚さを推定するフロー)中のいずれのタイミングであっても、優先して行われ得る。
【0063】
図6に示すフローチャートの処理が開始されると、まず、判定部44は、器具300の通過を検出部3が検出(推測)できたか否かを判定する。すなわち、判定部44は、析出物201の除去処理が実行されたか否かを判定する(ステップS101)。例えば、判定部44は、析出物201の除去処理が実行されたことを示す通知を受信したか否かに基づいて、析出物201の除去処理が実行されたか否かを判定する。
【0064】
器具300の通過を検出部3が検出(推測)できていないと判定部44が判定した場合(ステップS101:NO)、判定部44は、配管200内の析出物201の除去処理がなされていないと判定する(ステップS105)。推定システム1aは、図6に示された推定処理を終了する。
【0065】
これに対し、器具300の通過を検出部3が検出(推測)できたと判定部44が判定した場合(ステップS101:YES)、判定部44は、配管200内の析出物201の除去処理がなされたと判定する(ステップS102)。器具300の通過時刻から所定時間内にセンサ2は外表面温度を測定する(ステップS103)。このように、析出物201の厚さを推定するための外表面温度の測定とは別に、推定値の補正のためにセンサ2は外表面温度を測定する。もちろん、これに限定されず、例えば、除去処理の実行時刻が推測できた後の初回の外表面温度の測定結果(析出物201の厚さを推定のための測定結果)を用いて、推定値の補正が実行されてもよい。
【0066】
続いて、補正部42は、析出物201の厚さの推定に用いられる各推定値を、除去処理後の外表面温度の測定値を用いて補正する(ステップS104)。具体的には、補正部42は、析出物201の厚さの推定結果が閾値以下(例えば、0)になるように、析出物201の厚さの推定に用いられる推定値(複数の推定値を用いる場合には、少なくとも一つの推定値)を補正する。
【0067】
以上説明した通り、本実施形態では、補正部42が、析出物201の厚さの推定に用いられる少なくとも一つの推定値を、除去処理の実行時刻としての検出部3の検出結果(検出時刻)から所定時間内に得られた配管200の外表面温度の測定値を用いて補正するようにしている。ここで、補正部42は、析出物201の厚さの推定結果が予め規定された閾値以下(例えば、0)になるように推定値を補正してもよい。推定値が補正されることによって、析出物201の厚さの推定誤差は蓄積されなくなるため、配管200の内表面における析出物201の厚さの推定誤差を所定範囲に収めることが可能である。また、推定部43は、配管200の外表面温度の測定値をセンサ2ごとに取得するので、析出物201の形状(厚さ分布)を推定することも可能である。
【0068】
なお、センサ2-1~2-4の配置は、図2に示す配置以外の配置であっても良い。例えば、センサ2-1~2-4は、配管200の外周方向に不均等な間隔で、配管200の外表面に設置されてもよい。例えば、センサ2-1~2-4は、図3に例示されているように析出物201が厚くなり易い位置(例えば、配管200の底部)の近傍において、密に設置されてもよく、厚くなり難い位置(例えば、配管200の頂部)の近傍において、疎に設置されてもよい。また、外周方向に設置された複数のセンサ2(センサ2-1~2-4)の組は、配管200の管軸方向に、予め定められた間隔で配管200の外表面に設置されてもよい。これによって、配管200の管軸方向についても、配管200の内表面における析出物201の厚さの推定誤差を所定範囲に収めることが可能である。
【0069】
また、配管200の内側に器具300を通過させることによって析出物201を除去する代わりに、析出物201の発生を阻害する阻害剤を配管200に投入することによって析出物201を除去するようにしてもよい。この場合、検出部3としては、配管200内の阻害剤の有無を検出(または推測)可能なセンサ、または、阻害剤を投入する機器等の投入タイミングを検出(または推測)可能なセンサ等を利用することができる。配管200の内側から析出物201を除去する方法には、上述したものに限られず、どのような方法が適用されてもよい。
【0070】
〈第1変形例〉
上述した実施形態では、センサ2-1~2-4が配管200の外表面温度を測定するためにのみ用いられていた。本変形例は、図2(a)に示すセンサ2-1~2-4を、配管200の外表面温度に加えて、配管200の外表面の熱流束(例えば、配管200の外表面と略直交する方向(法線方向)の熱流束)を測定するために用いるものである。センサ2-1~2-4は、その設置位置において、配管200の外表面温度の測定値と、熱流束の測定値とを、通信回線100を経由して推定部43に送信する。
【0071】
本変形例において、推定部43は、少なくとも1個のセンサ2の設置位置における外表面温度の測定値と、熱流束の測定値とに基づいて、そのセンサ2の設置位置における析出物201の厚さを式(5)のように推定する。
【0072】
th=f(p,p,p,p,p,p,p) …(5)
【0073】
ここで、パラメータ「p」は、センサ2-1~2-4のうちの少なくとも1個のセンサ2による、配管200の外表面における熱流束の測定値を表す。なお、式(5)において、パラメータ「p」及びパラメータ「p」は必須ではなく、無くてもよい。
【0074】
配管200の外側における熱の環境と配管200の内側における熱の環境とが共に変化する場合でも、推定部43は、配管200の外表面における熱流束の測定値を用いて、配管200の外側の環境変化の影響と配管200の内側の環境変化の影響とを分離する。これによって、熱流束の測定値を用いて配管200の外側及び内側における環境の影響を補正して、配管200の内表面における析出物201の厚さの推定誤差を所定範囲に収めることが可能である。
【0075】
推定部43は、配管200の外側及び内側における熱に関する推定結果を、出力部45を用いてオペレータに通知してもよい。これによって、推定部43は、例えば、パイプラインの管理において有用な情報を、オペレータに通知することが可能になる。パイプラインの管理において有用な情報とは、例えば、配管200の外側における大気又は海水の温度変化と、配管200の内側におけるオイル及びガスの各温度と、配管200の内側における混相流の流動様式である。
【0076】
〈第2変形例〉
図7は、第1実施形態の第2変形例における、配管構成例を示す断面図である。なお、図7に示す断面図は、配管200の半径方向の断面図である。本変形例は、図2(b)に示す通り、配管200の外表面に断熱材230が設けられている場合においても、配管200の外表面温度に加えて、配管200の外表面の熱流束の測定を可能にするものである。
【0077】
図7に示す通り、本変形例では、センサ2-1~2-4に加えて、センサ2-5~2-8が設けられている。センサ2-5~2-8は、断熱材230内であって、センサ2-1~2-4から配管200の半径方向に所定距離だけそれぞれ離れた位置に、配管200の外周方向に沿って等間隔(等角度間隔であって、例えば90度の間隔)で設置されている。センサ2-1~2-4とセンサ2-5~2-8とは、それぞれ対応して設けられている。
【0078】
センサ2-5~2-8は、設置位置において、配管200の外表面温度に応じた断熱材230の内部温度を測定する。センサ2-5~2-8は、設置位置における断熱材230の内部温度の測定値を、通信回線100を経由して推定部43に送信する。
【0079】
推定部43は、センサ2-1~2-4のうちの少なくとも1個のセンサの設置位置における外表面温度の測定値と、センサ2-5~2-8のうちの対応する少なくとも1個のセンサの設置位置における断熱材230の内部温度の測定値とに基づいて、センサ2-1~2-4の設置位置における析出物201の厚さを式(6)のように推定する。
【0080】
th=f(p,p,p,p,p,p,p) …(6)
【0081】
ここで、パラメータ「p」は、センサ2-5~2-8のうちの少なくとも1個のセンサによる、断熱材230の内部温度の測定値を表す。なお、式(6)において、パラメータ「p」及びパラメータ「p」は必須ではなく、無くてもよい。
【0082】
本変形例においても、第1変形例と同様に、配管200の外側及び内側における環境の影響を補正して、配管200の内表面における析出物201の厚さの推定誤差を所定範囲に収めることが可能である。なお、本変形例においても、推定部43は、配管200の外側及び内側における熱に関する推定結果を、出力部45を用いてオペレータに通知してもよい。
【0083】
〔第2実施形態〕
【0084】
〈推定システム〉
図8は、第2実施形態における、推定システムの構成例を示す図である。本実施形態の推定システム1bは、図1に示す推定システム1aの推定装置4aを推定装置4bに代えた構成である。図8に示す推定システム1bは、図1に示す推定システム1aと同様に、配管の内表面における析出物の厚さを推定するシステムである。但し、図8に示す推定システム1bは、配管200の所定位置を器具300が通過すること又は通過したことを予測(推測)することによって、その予測結果(予測時刻)を、析出物の除去処理が実行される実行時刻(配管200における所定の位置を器具300が通過する通過時刻)として推測する点が、図1に示す推定システム1aとは異なる。配管200の所定位置とは、例えば、センサ2の設置位置である。
【0085】
〈推定装置〉
推定装置4bは、図1に示す推定装置4aに予測部(推測部)46を追加した構成である。予測部46は、器具300(ピグ)がピグ発射装置(pig launcher)(不図示)から発射された発射時刻の情報と、器具300がピグ回収装置(pig receiver)(不図示)において回収された回収時刻の情報とのうちの少なくとも一つを取得する。なお、推定装置4bは、上記の発射時刻または回収時刻の情報を、ピグから直接、あるいは、ピグ発射装置又はピグ回収装置のうちの少なくとも一方を制御する制御端末(不図示)から取得する。
【0086】
予測部46は、ピグが発射された位置とピグが回収された位置とのうちの少なくとも一つの情報を、記憶部41から取得する。予測部46は、ピグが発射された時刻及びピグが発射された位置とピグが回収された時刻及びピグが回収された位置とのうちの少なくとも一つと、所定位置と、器具300の移動速度とに基づいて、所定位置を器具300が通過すること又は通過したこと(通過時刻)を予測(推測)する。予測部46は、器具300が通過すること又は通過したことを予測(推測)することによって、その予測結果(予測時刻)を、配管200のうち表面における析出物201の除去処理の実行時刻(タイミング)として推測する。予測部46は、所定位置を器具300が通過する通過時刻の予測結果、すなわち、析出物201の除去処理の実行時刻の推測結果を、記憶部41に記憶させる。判定部44は、器具300の通過を予測部46が予測(推測)したか否かを判定する。すなわち、判定部44は、析出物201の除去処理が実行されたか否かを判定する。
【0087】
補正部42は、析出物201の厚さの推定に用いられる推定値を、所定位置を器具300が通過するであろう又は通過したであろう予測時刻から所定時間内(例えば、1秒以内)に得られた配管200の外表面温度の測定値を用いて補正する。もちろん、検出部3の設置位置を器具300が通過する通過時刻を予測する際には、上述したようにピグの発射または回収タイミングと通過推測位置とピグ移動速度とに基づいて通過時刻を予測するものに限定されず、予め記憶された移動時間に基づいて通過時刻を予測してもよい。具体的には、ピグがピグ発射装置を発射してから通過推測位置を通過するまでの移動時間、または、ピグが通過推測位置を通過してからピグ回収装置に回収されるまでの移動時間を、予め経験値または計算値で記憶部41に記憶しておき、この記憶部41に記憶された経験値または計算値に基づいて通過時刻を予測(推測)することができる。
【0088】
以上説明した通り、本実施形態では、補正部42が、析出物201の厚さの推定に用いられる少なくとも一つの推定値を、除去処理の実行時刻としての予測部46の予測結果(予測時刻)から所定時間内に得られた配管200の外表面温度の測定値を用いて補正するようにしている。ここで、補正部42は、析出物201の厚さの推定結果が予め規定された閾値以下(例えば、0)になるように推定値を補正してもよい。推定値が補正されることによって、析出物201の厚さの推定誤差は蓄積されなくなるため、配管200の内表面における析出物201の厚さの推定誤差を所定範囲に収めることが可能である。よって、第1実施形態の検出部3を備えていない場合でも、本実施形態では配管200の内表面における析出物201の厚さの推定誤差を所定範囲に収めることが可能である。また、たとえ第1実施形態の検出部3を備えているにも関わらず、第1実施形態の検出部3が器具300の通過を検出することによって析出物201の除去処理の実行時刻を推測できない場合であっても、本実施形態では配管200の内表面における析出物201の厚さの推定誤差を所定範囲に収めることが可能である。なお、第1実施形態の検出部3と第2実施形態の予測部46とを推定システム1bが備えることで、予測部46によるピグの通過予測と、検出部3によるピグの通過検出とのうちの少なくとも一方又は両方が実行されてもよい。
【0089】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0090】
例えば、予測部46は、析出物201の厚さ推定の結果が急激に変化(減少)した際に、器具300が通過したと推定し(みなし)、推定値の補正フローが実行されてもよい。又は、予測部46は、センサ2の測定値(外表面温度)が急激に変化した際に、器具300が通過したと推定し(みなし)、推定値の補正フローが実行されてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1a,1b…推定システム、2…センサ、3…検出部、4a,4b…推定装置、40…取得部、41…記憶部、42…補正部、43…推定部、44…判定部、45…出力部、46…予測部、100…通信回線、200…配管、201…析出物、210…オイル、220…ガス、230…断熱材、300…器具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8