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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】合わせガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20231213BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20231213BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231213BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
C03C27/12 K
B32B17/10
B32B27/30 A
B32B27/36 102
C03C27/12 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020147744
(22)【出願日】2020-09-02
(65)【公開番号】P2022042345
(43)【公開日】2022-03-14
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】飯柴 一輝
(72)【発明者】
【氏名】武田 英明
(72)【発明者】
【氏名】中原 淳裕
(72)【発明者】
【氏名】淺沼 芳聡
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/093352(WO,A1)
【文献】特開2001-31451(JP,A)
【文献】国際公開第2018/061861(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12,
B32B 17/10,
B32B 27/30,27/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機ガラス、樹脂中間膜(A)、無機ガラスがこの順に積層された合わせガラスであって、
樹脂中間膜(A)は、ポリカーボネート樹脂を含有する基材層(I)の両面に、アクリル系ブロック共重合体(X)を含有する接着層(II)を備えた積層体を含み、
下記式(1):
【数1】

で示される積層体の25℃における曲げ剛性は、6N・mm以上、60N・mm以下である、合わせガラス。
【請求項2】
下記式(2):
【数2】

で示される前記積層体の50℃における曲げ剛性は、4N・mm以上、60N・mm以下である、請求項1に記載の合わせガラス。
【請求項3】
前記積層体において接着層(II)の一方または両方に含有されるアクリル系ブロック共重合体(X)は、下記条件(i)~(iii):
(i)アクリル系ブロック共重合体(X)は、アクリル酸エステル単位を主構成単位とする重合体ブロック(a1)の片末端または両末端にメタクリル酸エステル単位を主構成単位とする重合体ブロック(a2)が結合した構造を有すること、
(ii)重量平均分子量は50,000~150,000であること、および
(iii)重合体ブロック(a2)の含有量は、アクリル系ブロック共重合体(X)を構成する全構成単位に対して10~60質量%であること
を満たす、請求項1または2に記載の合わせガラス。
【請求項4】
前記積層体において接着層(II)の一方または両方に含有されるアクリル系ブロック共重合体(X)は、アクリル酸エステル単位を主構成単位とする重合体ブロック(a1)の両末端にそれぞれメタクリル酸エステル単位を主構成単位とする重合体ブロック(a2)が結合した構造を有する、請求項1~3のいずれか記載の合わせガラス。
【請求項5】
前記樹脂中間膜(A)は2以上の前記積層体を含む、請求項1~4のいずれか記載の合わせガラス。
【請求項6】
JIS K7136:2000に準拠して測定した前記積層体のヘイズは5%以下である、請求項1~5のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項7】
JIS Z8722:2009に準拠して測定した前記積層体の黄色度は3以下である、請求項1~6のいずれかに記載の合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス破損時の破片の飛散防止、防犯性の向上といった目的のために、ガラスと樹脂中間膜を組み合わせた合わせガラスが有用であることが知られている。樹脂中間膜は、ガラスとの接着性、透明性、耐貫通性および柔軟性に優れることが好ましい。そのような樹脂中間膜をもたらし得る樹脂として、ポリビニルブチラール(PVB)に代表されるポリビニルアセタールが広く使用されている。PVBは、樹脂中間膜としての優れた性能をもたらし得るものの、高温(例えば50℃)だけでなく室温(例えば25℃)付近でも曲げ剛性が低いため、ガラスと積層する工程で樹脂中間膜に皺が発生して収率が低下しやすい。この問題を回避するため、積層工程を低温で実施する必要がある。また、PVBを含有する樹脂中間膜を合わせガラスにおいて使用すると、樹脂中間膜が軟化してクリープ変形し易く、その結果、合わせガラスにおいてズレが生じるという問題が起こることがある。これらの問題を解決する手段として、ポリカーボネート基材の両面にウレタン樹脂を積層した樹脂中間膜が提案されている(例えば、特許文献1および2を参照)。しかし、そのような樹脂中間膜では、透明性の改善および耐熱クリープ性の改善がなお求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-321587号公報
【文献】国際公開第2015/93352号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明は、合わせガラス製造時の取り扱い性に優れる樹脂中間膜をガラスでラミネートすることにより製造された、透明性に優れる合わせガラスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記課題を解決するために、合わせガラスについて鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、以下の好適な態様を包含する。
[1]無機ガラス、樹脂中間膜(A)、無機ガラスがこの順に積層された合わせガラスであって、
樹脂中間膜(A)は、ポリカーボネート樹脂を含有する基材層(I)の両面に、アクリル系ブロック共重合体(X)を含有する接着層(II)を備えた積層体を含み、
下記式(1):
【数1】

で示される積層体の25℃における曲げ剛性は、6N・mm以上、60N・mm以下である、合わせガラス。
[2]下記式(2):
【数2】

で示される前記積層体の50℃における曲げ剛性は、4N・mm以上、60N・mm以下である、前記[1]に記載の合わせガラス。
[3]前記積層体において接着層(II)の一方または両方に含有されるアクリル系ブロック共重合体(X)は、下記条件(i)~(iii):
(i)アクリル系ブロック共重合体(X)は、アクリル酸エステル単位を主構成単位とする重合体ブロック(a1)の片末端または両末端にメタクリル酸エステル単位を主構成単位とする重合体ブロック(a2)が結合した構造を有すること、
(ii)重量平均分子量は50,000~150,000であること、および
(iii)重合体ブロック(a2)の含有量は、アクリル系ブロック共重合体(X)を構成する全構成単位に対して10~60質量%であること
を満たす、前記[1]または[2]に記載の合わせガラス。
[4]前記積層体において接着層(II)の一方または両方に含有されるアクリル系ブロック共重合体(X)は、アクリル酸エステル単位を主構成単位とする重合体ブロック(a1)の両末端にそれぞれメタクリル酸エステル単位を主構成単位とする重合体ブロック(a2)が結合した構造を有する、前記[1]~[3]のいずれか記載の合わせガラス。
[5]前記樹脂中間膜(A)は2以上の前記積層体を含む、前記[1]~[4]のいずれか記載の合わせガラス。
[6]JIS K7136:2000に準拠して測定した前記積層体のヘイズは5%以下である、前記[1]~[5]のいずれかに記載の合わせガラス。
[7]JIS Z8722:2009に準拠して測定した前記積層体の黄色度は3以下である、前記[1]~[6]のいずれかに記載の合わせガラス。



【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、合わせガラス製造時の取り扱い性に優れる樹脂中間膜をガラスでラミネートすることにより製造された、透明性に優れる合わせガラスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の合わせガラスの一態様を表す概略模式図である。
図2】圧縮剪断試験を表す概略模式図である。
図3】合わせガラスの耐熱クリープ性試験に使用する試験用サンプルを表す概略模式図である。
図4】合わせガラスの耐熱クリープ性試験を表す概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、無機ガラス、樹脂中間膜(A)、無機ガラスがこの順に積層された合わせガラスに関する。樹脂中間膜(A)は、ポリカーボネート樹脂を含有する基材層(I)の両面に、アクリル系ブロック共重合体(X)を含有する接着層(II)を備えた積層体を含み、下記式(1):
【数3】

で示される積層体の25℃における曲げ剛性は、6N・mm以上、60N・mm以下である。
【0009】
[基材層(I)]
本発明において、基材層(I)は、ポリカーボネート樹脂からなるか、またはポリカーボネート樹脂組成物からなる。
<ポリカーボネート樹脂>
ポリカーボネート樹脂は特に限定されない。ポリカーボネート樹脂として、多官能性ヒドロキシ化合物と炭酸エステル形成性化合物とを反応させて得られる公知の樹脂を、単独でまたは2つ以上組み合わせて使用できる。このような樹脂の例としては、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂、およびこれらを分岐化させて得られる分岐化ポリカーボネート樹脂を挙げることができる。
芳香族ポリカーボネート系樹脂の例としては、2,2-ビス(4-オキシフェニル)プロパン(別名ビスフェノールA)から誘導される芳香族ポリカーボネート系樹脂、およびポリ(エステルカーボネート)からなるポリカーボネート成分を含む樹脂を挙げることができる。これらの樹脂は、直鎖状のポリマー鎖中に繰り返してカーボネート基、カルボキシレート基および芳香族炭素環式基を有するコポリエステルである。
脂肪族ポリカーボネート系樹脂の例としては、炭酸と脂肪族ジオールまたは脂環式ジオールとからなる脂肪族ポリカーボネート系樹脂を挙げることができる。これは、複数の脂肪族ジオールまたは脂環式ジオールを含む共重合体であってもよく、分子鎖中に脂肪族ジオールまたは脂環式ジオールに代表される脂肪族系化合物由来の構成単位と前記芳香族系化合物由来の構成単位とを有する共重合体であってもよい。
【0010】
前記多官能性ヒドロキシ化合物の例としては、直鎖脂肪族ジオール、分岐脂肪族ジオール、脂環式ジオール、その他のジオール、および芳香族ジヒドロキシ化合物等を挙げることができる。多官能性ヒドロキシ化合物は、1つを単独で用いてもよく、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。これらの化合物は特に制限されないが、より優れた耐熱性または機械強度を得やすい観点からは芳香族ジヒドロキシ化合物が好ましい。
【0011】
芳香族ジヒドロキシ化合物の例としては、4,4’-ジヒドロキシビフェニル類、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル類、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド類、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド類、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン類、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン類、ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類、ジヒドロキシ-p-ターフェニル類、ジヒドロキシ-p-クォーターフェニル類、ビス(ヒドロキシフェニル)ピラジン類、ビス(ヒドロキシフェニル)メンタン類、ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン類、ジヒドロキシナフタレン類、ジヒドロキシベンゼン類等を挙げることができる。
【0012】
これらの中でも、より優れた耐熱性または機械強度を得やすい観点から、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)プロパン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、α,ω-ビス[3-(2-ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン、レゾルシン、および2,7-ジヒドロキシナフタレンが好ましく、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンがより好ましい。
【0013】
炭酸エステル形成性化合物は特に限定されない。炭酸エステル形成性化合物の例としては、ホスゲン等の各種ジハロゲン化カルボニル;クロロホーメート等のハロホーメート;およびビスアリールカーボネート等の炭酸エステル化合物等を挙げることができる。炭酸エステル形成性化合物は、1つを単独で用いてもよく、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート単位以外に、ポリエステル単位、ポリウレタン単位、ポリエーテル単位、ポリスチレン単位、ポリシロキサン単位、リン原子を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマー等を共重合成分として1つ以上含んでいてもよい。
【0015】
ポリカーボネート樹脂の製造方法は特に限定されず、従来公知の製造方法を使用できる。また、ポリカーボネート樹脂として市販品を用いてもよい。そのような市販品の例としては、「SDPOLYCA 301-4」(住化ポリカーボネート株式会社製、300℃、1.2kg荷重におけるメルトボリュームフローレート(以下において、「MVR」と略記する):4cm/10分)、「SDPOLYCA 301-6」(住化ポリカーボネート株式会社製、MVR:6cm/10分)、「SDPOLYCA 301-10」(住化ポリカーボネート株式会社製、MVR:6cm/10分)、「ユーピロン H-3000」(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、MVR:28cm/10分)、「ユーピロン S-2000」(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、MVR:9cm/10分)等を挙げることができる。
【0016】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、特に限定されない。粘度平均分子量は、基材への成形加工性および機械物性の観点から、通常10,000~60,000、好ましくは15,000~35,000、より好ましくは18,000~30,000である。かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調整剤または触媒等を必要に応じて使用することにより、粘度平均分子量を調整できる。また、予め粘度平均分子量の異なるポリカーボネート樹脂を2つ以上準備しておき、それらをブレンドして所望の粘度平均分子量に調整してもよい。
【0017】
ポリカーボネート樹脂のMVRは、特に限定されない。300℃、1.2kg荷重におけるMVRは通常1~200cm/10分である。ここで、MVRは、ISO1133に準拠して測定される。成形加工性および耐貫通性の観点から、ポリカーボネート樹脂のMVRは、好ましくは2~30cm/10分、より好ましくは3~10cm/10分である。かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調整剤または触媒等を必要に応じて使用することにより、MVRを調整できる。また、予めMVRの異なるポリカーボネート樹脂を2つ以上準備しておき、それらをブレンドして所望のMVRに調整してもよい。
【0018】
ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、特に限定されない。ガラス転移温度は、好ましくは100~180℃、より好ましくは110~160℃である。ガラス転移温度が前記下限値以上であると、合わせガラス製造時の基材(I)の変形を防止しやすい。ガラス転移温度が前記上限値以下であると、ポリカーボネート樹脂の高い溶融粘度に起因した押出成形時におけるヒケ等の欠陥の発生を防止しやすい。ガラス転移温度は、例えば粘度平均分子量、または粘度平均分子量の異なるポリカーボネート樹脂の配合比率を調整することにより、前記範囲内に調整できる。
【0019】
ポリカーボネート樹脂のシャルピー衝撃強度は、特に限定されない。シャルピー衝撃強度は、合わせガラスに飛来物が衝突した際の耐貫通性の観点から、好ましくは5kJ/m以上、より好ましくは10kJ/m以上、更に好ましくは30kJ/m以上、特に好ましくは60kJ/m以上である。本明細書において、シャルピー衝撃強度は、ISO179に準拠して、3mm厚の試験片にノッチ加工を施し、23℃にてノッチ付きのシャルピー衝撃強度(単位:kJ/m)を測定した値とする。シャルピー衝撃強度は、例えば粘度平均分子量分布または多官能性ヒドロキシ化合物と炭酸エステル形成性化合物の組み合わせを調整することにより、前記下限値以上に調整できる。
【0020】
ポリカーボネート樹脂の全光線透過率は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上、特に好ましくは89%以上である。前記全光線透過率が前記下限値以上であると、基材層(I)を後述の厚さ範囲で使用した場合の透明性が高くなりやすく、得られる合わせガラスの透明性も高くなりやすい。前記全光線透過率は、ポリカーボネート樹脂をプレス成形して得られる、例えば厚さ3mm以下(例えば3mm)の成形品を用いてJIS K7361-1に記載の測定方法でヘイズメーターにより測定することができる。全光線透過率は、例えば多官能性ヒドロキシ化合物と炭酸エステル形成性化合物を選択してポリカーボネート樹脂の屈折率を調整することにより、前記下限値以上に調整できる。
【0021】
<ポリカーボネート樹脂組成物>
基材層(I)は、上述したようなポリカーボネート樹脂からなってもよいし、本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて必要に応じて添加剤を含む、ポリカーボネート樹脂組成物からなってもよい。
添加剤の例としては、酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染顔料、光拡散剤、有機色素、艶消し剤、耐衝撃性改質剤および蛍光体等を挙げることができる。添加剤を用いる場合は、1つを単独で用いてもよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。添加剤を用いる場合、その添加量は、ポリカーボネート樹脂組成物の総質量に対して、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0022】
ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。そのような製造方法の例としては、ポリカーボネート樹脂および必要に応じて配合される添加剤を、例えばタンブラーまたはヘンシェルミキサー等の各種混合機を用いて予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機またはニーダー等の混合機で溶融混練する方法を挙げることができる。溶融混練温度は特に限定されず、ポリカーボネート樹脂の種類に応じて適宜選択すればよい。溶融混練温度は、通常220~320℃である。
【0023】
ポリカーボネート樹脂組成物の粘度平均分子量、MVR、ガラス転移温度およびシャルピー衝撃強度等の特性は、特に限定されない。ポリカーボネート樹脂組成物が、上述したポリカーボネート樹脂の特性と同様の特性を有することが好ましい。
【0024】
[基材層(I)の製造方法]
基材層(I)の製造方法は特に限定されず、公知のフィルムまたはシートの製造方法を採用できる。好適な厚さに調整しやすい観点からは、押出機を用いることが好ましい。
押出機の例としては、単軸押出機、同方向噛合型二軸押出機、同方向非噛合型二軸押出機、異方向非噛合型二軸押出機および多軸押出機等を挙げることができる。中でも、樹脂滞留部が少ないため押出中に樹脂の熱劣化を抑制できること、および設備費が安価であることから、単軸押出機が好ましい。単軸押出機等で使用するスクリューとしては、圧縮比2~3程度の一般的なフルフライト構成を有するスクリューでもよく、未溶融物が存在しないようにバリアフライト等の特殊な混練機構を備えたスクリューでもよい。また、ポリカーボネート樹脂若しくはポリカーボネート樹脂組成物中の残存揮発分または押出機において加熱より発生した揮発成分を除去するため、ベント機構を有する押出機を用いてもよい。
また、基材層(I)の材料としてポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合は、予めポリカーボネート樹脂組成物を調製し、押出機に投入して押し出してもよいし、ポリカーボネート樹脂および必要に応じて配合される添加剤を押出機に投入して押し出してもよい。
【0025】
基材層(I)の表面は平滑である方が好ましい。基材層(I)が平滑であるほど、基材層(I)と接着層(II)との積層体の作製が容易になりやすい。また、そのような積層体を樹脂中間膜(A)に用いて合わせガラスを製造すると、合わせガラスの外観品位が向上しやすい。平滑な表面を得る方法は特に限定されない。平滑な表面は、例えば、ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物の溶融混練物をTダイから溶融状態で押し出し、押し出した溶融混練物の両面を鏡面ロール表面または鏡面ベルト表面に接触させて成形する工程を含む方法により得ることができ、そのような方法が好ましい。その際に用いるロールまたはベルトはいずれも、金属製またはシリコーンゴム製であることが好ましい。
【0026】
基材層(I)は耐貫通性を有することが好ましい。従って、基材層(I)の落錘式衝撃試験における貫通エネルギーは、好ましくは5J以上、より好ましくは10J以上、更に好ましくは13J以上である。基材層(I)の貫通エネルギーが前記下限値以上であると、基材層(I)と接着層(II)との積層体を樹脂中間膜(A)に用いて製造した合わせガラスの耐貫通性を十分な値に調整しやすい。基材層(I)の貫通エネルギーは、基材層(I)から縦60mm×横60mmとなるように試験片を切り出し、落錘式衝撃試験機(インストロン社製CEAST9350)を用い、ASTM D3763に準拠して、測定温度23℃、荷重2kg、衝突速度9m/secの条件で試験を行い、試験片貫通の際の、ストライカ先端が試験片に接した(試験力を感知した)瞬間から貫通する(試験力がゼロに戻る)までのSSカーブの面積から貫通エネルギーを算出することで測定できる。貫通エネルギーは、例えば、基材層(I)に含まれるポリカーボネート樹脂としてビスフェノールAを選択すること、および/または基材層(I)の厚さを調整することにより、前記下限値以上に調整できる。
【0027】
基材層(I)の、引張動的粘弾性測定により25℃、周波数1Hzで測定した貯蔵弾性率は、好ましくは1,000~3,500MPa、より好ましくは1,300~3,000MPa、更に好ましくは1,500~2,500MPaである。前記貯蔵弾性率が前記下限値以上であると、基材層(I)が成形できる範囲で薄肉であっても曲げ剛性を十分確保しやすく、前記上限値以下であると、後述のロール形状への良好な賦形性を得やすい。前記貯蔵弾性率は、粘弾性測定装置により測定することができ、例えば、縦20mm×横5mm×厚さ0.4mmのシートを作製し、粘弾性スペクトロメーター「Rheogel-E4000」(株式会社ユービーエム製)を用い、周波数1Hz、測定温度-50~250℃の測定条件にて動的粘弾性測定を行うことにより測定できる。貯蔵弾性率は、例えば、基材層(I)に含まれるポリカーボネート樹脂としてビスフェノールAを選択すること、および/または基材層(I)の厚さを調整することにより、前記範囲内に調整できる。
【0028】
基材層(I)は高い全光線透過率を有することが好ましい。従って、後述の厚さにおける基材層(I)の全光線透過率は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上、特に好ましくは89%以上である。全光線透過率が前記下限値以上であると、得られる合わせガラスの透明性が高くなりやすい。前記全光線透過率は、基材層(I)を用いてJIS K7361-1に記載の測定方法でヘイズメーターにより測定することができる。全光線透過率は、基材層(I)に含まれるポリカーボネート樹脂として上述したような高い全光線透過率を有する樹脂を選択すること、および/または基材層(I)の表面粗さを低減すること、および/または基材層(I)を構成するポリカーボネート樹脂組成物における添加剤の選択若しくは添加剤の分散性の調整により、前記下限値以上に調整できる。
【0029】
基材層(I)の厚さT(I)は、基材層(I)と接着層(II)との積層体の取り扱い性の観点から、好ましくは0.70mm以下である。厚さT(I)は、所望の貫通エネルギー、貯蔵弾性率、および後述する積層体の曲げ剛性を得やすい観点から、好ましくは0.20mm以上、より好ましくは0.30mm以上であり、好ましくは0.60以下、より好ましくは0.50mm以下である。厚さT(I)は、厚み計で測定できる。
【0030】
本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、基材層(I)の表面に易接着処理を施してもよい。易接着処理の例としては、コロナ処理、プラズマ処理および低圧紫外線処理等の表面処理を挙げることができる。
【0031】
また、本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、基材層(I)に易接着層を設けてもよい。易接着層に含まれる樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、エポキシ樹脂、シリコーン等を挙げることができる。
【0032】
易接着層は公知の方法により基材層(I)に形成できる。そのような方法の例としては、上述した樹脂を基材層(I)に塗布し、乾燥することを含む方法を挙げることができる。易接着層の厚さは、乾燥状態において、好ましくは1~100nm、更に好ましくは10~50nmである。塗布に用いる樹脂は溶剤により希釈してもよい。そのような溶剤は特に限定されないが、例えばアルコール類を使用できる。希釈濃度(塗布液の総質量に対する固形分の質量の百分率)は特に限定されないが、好ましくは1~5質量%、より好ましくは1~3質量%である。
【0033】
易接着層の表面には、接着層(II)との接着力を高める目的で、必要に応じて低圧紫外線処理、コロナ処理またはプラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0034】
[接着層(II)]
積層体は、基材層(I)と、その両面に存在する2つの接着層(II)とからなる。2つの接着層(II)を構成する材料は、相互に同じでもよいし、異なっていてもよい。2つの接着層(II)を構成する材料は、好ましくは同じである。
接着層(II)を構成する材料は、アクリル系ブロック共重合体(X)であるか、またはアクリル系ブロック共重合体(X)を含有する組成物である。
【0035】
<アクリル系ブロック共重合体(X)>
本発明におけるアクリル系ブロック共重合体(X)は、アクリル酸エステル単位を主構成単位とする重合体ブロック(a1)の片末端または両末端にメタクリル酸エステル単位を主構成単位とする重合体ブロック(a2)が結合した構造、即ち、(a1)-(a2)または(a2)-(a1)-(a2)の構造(構造中「-」は、化学結合を示す)を有する。アクリル系ブロック共重合体(X)が前記構造を有することは、例えば、NMR測定または赤外分光法により確認することができる。
接着層(II)に含まれるアクリル系ブロック共重合体(X)は、以下に例示するようなアクリル系ブロック共重合体(X)単独であってもよいし、またはそれらの2つ以上の組み合わせであってもよい。例えば、(a2)-(a1)-(a2)の構造を有するアクリル系ブロック共重合体(X)でもよいし、(a1)-(a2)の構造を有するアクリル系ブロック共重合体(X)と(a2)-(a1)-(a2)の構造を有するアクリル系ブロック共重合体(X)との組み合わせであってもよいし、互いに物性(例えば、重量平均分子量および/または重合体ブロック(a2)の含有量等)が異なる2つの(a2)-(a1)-(a2)構造のアクリル系ブロック共重合体(X)の組み合わせであってもよい。
【0036】
<重合体ブロック(a1)>
重合体ブロック(a1)におけるアクリル酸エステル単位の含有量は、通常60質量%以上であり、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。前記アクリル酸エステル単位を構成するアクリル酸エステルの例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、およびアクリル酸2-メトキシエチル等を挙げることができる。これらのアクリル酸エステルの中でも、向上した柔軟性を得やすい観点から、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2-メトキシエチル等のアクリル酸アルキルエステルが好ましく、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシルがより好ましい。重合体ブロック(a1)は、これらのアクリル酸エステルの1種から構成されていても、2種以上から構成されていてもよい。
【0037】
本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、重合体ブロック(a1)は、アクリル酸グリシジルおよびアクリル酸アリル等の反応基を有するアクリル酸エステルに由来する構成単位;または、下記メタクリル酸エステル、メタクリル酸、アクリル酸、芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびオレフィン等のアクリル酸エステル以外の他の重合性単量体に由来する構成単位;等を共重合成分として含んでいてもよい。これらの、反応基を有するアクリル酸エステルに由来する構成単位または他の重合性単量体に由来する構成単位は、本発明の効果を発現させやすい観点から少量であることが好ましい。それらの構成単位を重合体ブロック(a1)が含む場合、それらの合計含有量は、重合体ブロック(a1)を構成する全構成単位に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
【0038】
アクリル酸エステル単位を主構成単位とする重合体ブロック(a1)を調製する際に用いるアクリル酸エステルは、1種の単量体であっても、2種以上を組み合わせた単量体であってもよく、予め2種以上を混合した混合単量体であってもよい。混合単量体は、透明性を高める観点から、好ましくはアクリル酸アルキルエステルとアクリル酸芳香族エステルとの混合単量体である。この場合、アクリル酸アルキルエステル50~90質量%とアクリル酸芳香族エステル50~10質量%の混合単量体であることが好ましく、アクリル酸アルキルエステル60~80質量%とアクリル酸芳香族エステル40~20質量%の混合単量体であることがより好ましい。
【0039】
<重合体ブロック(a2)>
重合体ブロック(a2)におけるメタクリル酸エステル単位の含有量は、通常60質量%以上であり、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。前記メタクリル酸エステル単位を構成するメタクリル酸エステルの例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルおよびメタクリル酸2-メトキシエチル等を挙げることができる。これらのメタクリル酸エステルの中でも、透明性および耐熱性を向上させやすい観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸シクロヘキシルおよびメタクリル酸イソボルニル等のメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。重合体ブロック(a2)は、これらのメタクリル酸エステルの1種から構成されていても、2種以上から構成されていてもよい。
【0040】
本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、重合体ブロック(a2)は、メタクリル酸グリシジルおよびメタクリル酸アリル等の反応基を有するメタクリル酸エステルに由来する構成単位;または、前記アクリル酸エステル、メタクリル酸、アクリル酸、芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、オレフィン等のメタクリル酸エステル以外の他の重合性単量体に由来する構成単位;等を共重合成分として含んでいてもよい。これらの、反応基を有するメタクリル酸エステルに由来する構成単位または他の重合性単量体に由来する構成単位は、本発明の効果を発現させやすい観点から少量であることが好ましい。それらの構成単位を重合体ブロック(a2)が含む場合、それらの合計含有量は、重合体ブロック(a2)を構成する全構成単位に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
【0041】
アクリル系ブロック共重合体(X)の分子鎖形態は、重合体ブロック(a1)の末端に重合体ブロック(a2)が結合した構造を分子内に少なくとも1つ有する限り、特に限定されない。例えば、直鎖状、分岐状、放射状等のいずれの分子鎖形態でもよいが、所望の接着強度を得やすい観点から、(a2)-(a1)-(a2)で表されるトリブロック体が好ましい。従って、本発明の好ましい一態様では、積層体において接着層(II)の一方または両方、好ましく接着層(II)の両方に含有されるアクリル系ブロック共重合体(X)は、アクリル酸エステル単位を主構成単位とする重合体ブロック(a1)の両末端にそれぞれメタクリル酸エステル単位を主構成単位とする重合体ブロック(a2)が結合した構造を有する。ここで、重合体ブロック(a1)の両端の重合体ブロック(a2)の分子量および組成等は、相互に同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0042】
本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、アクリル系ブロック共重合体(X)は、重合体ブロック(a1)および(a2)とは別の重合体ブロックとして、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル以外の単量体から誘導される重合体ブロック(c)を有してもよい。重合体ブロック(c)と前記重合体ブロック(a1)および重合体ブロック(a2)との結合の形態は特に限定されず、その例としては、(a2)-((a1)-(a2))-(c)および(c)-(a2)-((a1)-(a2))-(c)等を挙げることができる。ここで、nは1~20の整数である。
【0043】
重合体ブロック(c)を構成する単量体の例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレンおよび1-オクテン等のオレフィン;1,3-ブタジエン、イソプレンおよびミルセン等の共役ジエン;スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレンおよびm-メチルスチレン等の芳香族ビニル;並びに酢酸ビニル、ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、アクリルアミド、メタクリルアミド、ε-カプロラクトンおよびバレロラクトン等を挙げることができる。
【0044】
アクリル系ブロック共重合体(X)の重量平均分子量(Mw)は、得られる接着層(II)の衝撃吸収性および接着層(II)と基材層(I)との接着性の観点から、好ましくは50,000~150,000、より好ましくは55,000~120,000、特に好ましくは60,000~100,000である。アクリル系ブロック共重合体(X)の重量平均分子量が前記下限値以上であると、基材層(I)および無機ガラスとの十分な接着強度を保持しやすく、良好な合わせガラスを得やすい。また、得られる合わせガラスの、より優れた破断強度等の機械強度を得やすい。一方、アクリル系ブロック共重合体(X)の重量平均分子量が前記上限値以下であると、押出成形等で得られる接着層(II)の成形体の表面に、微細なシボ調の凹凸または未溶融物(高分子量のアクリル系ブロック共重合体)に起因するブツが発生しにくく、外観に優れる合わせガラスを得やすい。
【0045】
アクリル系ブロック共重合体(X)の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)で表される分子量分布は特に限定されない。Mw/Mnは、接着層(II)におけるブツ発生の原因となり得る未溶融物の含有量を抑制または防止しやすい観点から、好ましくは1.01以上、10未満の範囲内であり、より好ましくは1.01以上、3.0以下の範囲内である。
なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン換算分子量であり、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0046】
アクリル系ブロック共重合体(X)における重合体ブロック(a2)の含有量は、透明性、衝撃吸収性、および基材層(I)との接着性の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、特に好ましくは25質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、特に好ましくは45質量%以下である。本発明の好ましい一態様では、重合体ブロック(a2)の含有量は、アクリル系ブロック共重合体(X)を構成する全構成単位に対して10~60質量%である
アクリル系ブロック共重合体(X)における重合体ブロック(a2)の含有量が前記下限値以上であると、アクリル系ブロック共重合体(X)の膠着感が増加しにくく、このようなアクリル系ブロック共重合体(X)は接着層(II)を構成する材料としてより好ましい。一方、アクリル系ブロック共重合体(X)における重合体ブロック(a2)の含有量が前記上限値以下であると、アクリル系ブロック共重合体(X)が硬くなりにくく、合わせガラスを製造する際にガラスおよび基材層(I)との十分な接着力が得られるまでに要する加熱時間が長くなる傾向を回避しやすい。
【0047】
アクリル系ブロック共重合体(X)の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、各ブロックを構成する単量体をリビング重合する方法が一般に使用される。このようなリビング重合の方法の例としては、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用い、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩等の鉱酸塩の存在下でアニオン重合する方法(特開平7-25859号公報参照)、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用い、有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法(特開平11-335432号公報参照)、有機希土類金属錯体を重合開始剤として用いて重合する方法(特開平6-93060号公報参照)、α-ハロゲン化エステル化合物を開始剤として用い、銅化合物の存在下でラジカル重合する方法(Macromolecular Chemical Physics, 201巻、1108~1114頁、2000年参照)等を挙げることができる。また、多価ラジカル重合開始剤および多価ラジカル連鎖移動剤を用いて、各ブロックを構成する単量体を重合させ、アクリル系ブロック共重合体を含有する混合物として製造する方法等も挙げることができる。これらの方法のうち、特に、アクリル系ブロック共重合体が高純度で得られ、分子量および各重合体ブロックの組成比の制御が容易であり、かつ経済的であることから、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用い、有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法が好ましい。
【0048】
アクリル系ブロック共重合体(X)の全光線透過率は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上、特に好ましくは89%以上である。前記全光線透過率が前記下限値以上であると、接着層(II)を後述の厚さ範囲で使用した場合の透明性が高くなりやすく、得られる合わせガラスの透明性も高くなりやすい。前記全光線透過率は、ポリカーボネート樹脂をプレス成形して得られる、例えば厚さ3mm以下(例えば3mm)の成形品を用いてJIS K7361-1に記載の測定方法でヘイズメーターにより測定することができる。全光線透過率は、例えば重合体ブロック(a1)および(a2)を構成する化合物を選択してアクリル系ブロック共重合体(X)の屈折率を調整することにより、前記下限値以上に調整できる。
【0049】
アクリル系ブロック共重合体(X)のメルトフローレート(以下において、「MFR」と略記する)は特に限定されず、通常1~200g/10分である。ここで、MFRは、ISO1133に準拠して190℃、2.16kg荷重下で測定される。成形加工性の観点から、好ましくは2~100g/10分、より好ましくは3~80g/10分である。かかるアクリル系ブロック共重合体(X)を製造するに際し、分子量調整剤または触媒等を必要に応じて使用することにより、MFRを調整できる。また、予めMFRの異なるアクリル系ブロック共重合体(X)を2つ以上準備しておき、それらをブレンドして所望のMFRに調整してもよい。
【0050】
アクリル系ブロック共重合体(X)の23℃でのA硬度は、好ましくは20~99、より好ましくは30~90、更に好ましくは50~80である。前記A硬度が前記範囲内であると、接着層(II)を後述の厚さで製造した際に、柔軟性および基材(I)との剥離強度に優れた接着層(II)を得やすい。
【0051】
<アクリル系ブロック共重合体(X)を含有する組成物>
接着層(II)は、上述したようなアクリル系ブロック共重合体(X)からなっていてもよいし、本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて必要に応じてアクリル系ブロック共重合体(X)以外の成分を含む、アクリル系ブロック共重合体(X)含有組成物であってもよい。
そのような成分の種類は特に限定されない。例えば、後述するような各種重合体および添加剤を挙げることができる。そのような成分を用いる場合は、1つを単独で用いてもよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。そのような成分を用いる場合、その添加量は、アクリル系ブロック共重合体(X)を含有する組成物の総質量に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0052】
アクリル系ブロック共重合体(X)を含有する組成物におけるアクリル系ブロック共重合体(X)以外の成分としては、メタクリル酸エステル単位を主構成単位とするアクリル系重合体が好ましい。
そのようなアクリル系重合体は、好ましくは、アクリル系重合体を構成する全構成単位に対して80質量%以上のメタクリル酸エステル単位を含有するアクリル系重合体、より好ましくは、アクリル系重合体を構成する全構成単位に対して90質量%以上のメタクリル酸エステル単位を含有するアクリル系重合体である。前記メタクリル酸エステル単位を構成するメタクリル酸エステルの例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n-へキシル、メタクリル酸2-エチルへキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-エトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ノルボルネニルおよびメタクリル酸イソボルニル等を挙げることができる。中でも、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
【0053】
メタクリル酸エステル単位を主構成単位とするアクリル系重合体は、メタクリル酸エステル単位以外の他の単量体単位を含有していてもよい。そのような他の単量体単位を構成する単量体の例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n-へキシル、アクリル酸2-エチルへキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-エトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル、アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸ノルボルネニルおよびアクリル酸イソボルニル等のアクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸およびイタコン酸等の不飽和カルボン酸;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレンおよび1-オクテン等のオレフィン;ブタジエン、イソプレンおよびミルセン等の共役ジエン;スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレンおよびm-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;並びにアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデンおよびフッ化ビニリデン等を挙げることができる。
【0054】
メタクリル酸エステル単位を主構成単位とするアクリル系重合体の製造方法は特に限定されない。また、そのようなアクリル系重合体として市販品を用いてもよい。かかる市販品の例としては、「パラペットH1000B」(MFR:22g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットGF」(MFR:15g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットEH」(MFR:1.3g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットHRL」(MFR:2.0g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットHRS」(MFR:2.4g/10分(230℃、37.3N))および「パラペットG」(MFR:8.0g/10分(230℃、37.3N))[いずれも商品名、株式会社クラレ製]等を挙げることができる。
【0055】
アクリル系ブロック共重合体(X)を含有する組成物が前記アクリル系重合体を含有する場合、その含有量は、好ましくは1~45質量%であり、より好ましくは3~30質量%であり、更に好ましくは5~15質量%である。
【0056】
任意に含まれてよい前記アクリル系重合体以外に、アクリル系ブロック共重合体(X)含有組成物が含んでよい重合体の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、ポリ-4-メチルペンテン-1およびポリノルボルネン等のオレフィン系樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂およびMBS樹脂等のスチレン系樹脂;メチルメタクリレート-スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリ乳酸等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66およびポリアミドエラストマー等のポリアミド樹脂;エステル系ポリウレタンエラストマー、エーテル系ポリウレタンエラストマー、無黄変エステル系ポリウレタンエラストマーおよび無黄変カーボネート系ポリウレタンエラストマー等のポリウレタン樹脂;並びにポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィドおよびシリコーンゴム変性樹脂等を挙げることができる。これらの重合体は、1つが単独で含まれてもよいし、2つ以上の組み合わせが含まれてもよい。これらの中でも、アクリル系ブロック共重合体(X)との相溶性の観点から、AS樹脂、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。
【0057】
アクリル系ブロック共重合体(X)含有組成物が任意に含み得る添加剤の例としては、ゴム、滑剤、酸化防止剤、光安定剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性調整剤、フィラーを挙げることができる。これらの添加剤が含まれる場合、1つが単独で含まれてもよいし、2つ以上の組み合わせが含まれてもよい。
ゴムの例としては、アクリル系ゴム;シリコーン系ゴム;SEPS、SEBS、SIS等のスチレン系熱可塑性エラストマー;IR、EPR、EPDM等のオレフィン系ゴム等を挙げることができる。
ゴム以外の添加剤の例としては、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル等の鉱物油軟化剤(これらは、成形加工時の流動性を向上させることができる);炭酸カルシウム、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム等の無機充填剤(これらは主に、耐熱性若しくは耐候性等の向上または増量を目的として添加される);ガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維または有機繊維(これらは主に、補強を目的として添加される);熱安定剤;酸化防止剤;光安定剤;粘着剤;粘着付与剤;可塑剤;帯電防止剤;発泡剤;着色剤;染色剤等を挙げることができる。
これらの添加剤の中でも、耐熱性および耐候性を更に良好なものとするために、熱安定剤および/または酸化防止剤等を添加することが実用上好ましい。
【0058】
アクリル系ブロック共重合体(X)を含有する組成物の製造方法は限定されず、公知の製造方法を広く採用できる。そのような製造方法の例としては、アクリル系ブロック共重合体(X)および必要に応じて添加されるその他の成分を、例えばタンブラーまたはヘンシェルミキサー等の各種混合機を用いて予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機またはニーダー等の混合機で溶融混練する方法を挙げることができる。溶融混練温度は特に限定されず、アクリル系ブロック共重合体(X)および必要に応じて添加されるその他の成分に応じて適宜選択すればよい。溶融混練温度は、通常160~240℃である。
【0059】
アクリル系ブロック共重合体(X)を含有する組成物のMFR、23℃でのA硬度および透明性等の特性は特に限定されない。アクリル系ブロック共重合体(X)を含有する組成物が、上述したアクリル系ブロック共重合体(X)の特性と同様の特性を有することが好ましい。
【0060】
[接着層(II)の製造方法]
アクリル系ブロック共重合体(X)を含有する接着層(II)の製造方法は特に限定されない。例えば、接着層(II)を構成する材料を、熱プレス成形機、カレンダーロールまたは押出機等の公知の装置を用いてシート状に成形することで得ることができる。また、接着層(II)を構成する材料を有機溶媒または有機分散媒に溶解または分散して塗布液を得、塗布液を離形フィルムに塗布した後、有機溶媒または有機分散媒を除去することによって製造してもよい。接着層(II)の表面には、脱気性の観点から、メルトフラクチャーまたはエンボス等の凹凸構造を従来公知の方法で形成してもよく、形成することが好ましい。そのような凹凸構造の形状は特に限定されず、従来公知の構造であってよい。
【0061】
接着層(II)の、引張動的粘弾性測定で25℃、周波数1Hzで測定した貯蔵弾性率は、好ましくは0.1~1000MPa、より好ましくは1~500MPa、更に好ましくは10~200MPaである。前記貯蔵弾性率が前記下限値以上であると、接着層(II)が薄肉であっても、基材層(I)と接着層(II)との積層体を破断を伴わず容易に巻き取りやすい。前記貯蔵弾性率が前記上限値以下であると、合わせガラス製造時に発生する応力による割れを防止しやすく、外観に優れる合わせガラスを得やすい。前記貯蔵弾性率は粘弾性測定装置により測定することができ、例えば、縦20mm×横5mm×厚さ0.2mmのシートを作製し、粘弾性スペクトロメーター「Rheogel-E4000」(株式会社ユービーエム製)を用い、周波数1Hz、測定温度-50~250℃の測定条件にて動的粘弾性測定を行うことで測定できる。貯蔵弾性率は、例えば、接着層(II)に含まれるアクリル系ブロック共重合体(X)における重合体ブロック(a1)および(a2)の構成比率を調整すること、および/または接着層(II)の厚さを調整することにより、前記範囲内に調整できる。
【0062】
1層の接着層(II)の厚さT(II)は、圧縮剪断に対する良好な剛性およびガラスに対する良好な接着性を得やすい観点および経済的観点から、好ましくは0.30mm以下、より好ましくは0.010~0.30mm、更に好ましくは0.020~0.25mm、特に好ましくは0.030~0.20mmである。1つの積層体に含まれる2つの接着層(II)の厚さは、相互に同じでもよいし、異なっていてもよい。2つの接着層(II)の厚さは、好ましくは同じである。厚さT(II)は、厚み計で測定できる。
【0063】
接着層(II)の厚さT(II)に対する基材層(I)の厚さT(I)の比T(I)/T(II)は、基材層(I)を構成する材料、接着層(II)を構成する材料、および使用される用途に依存するが、合わせガラスにした際の各層の接着性および耐貫通性の観点並びに所望の積層体の曲げ剛性を得やすい観点から、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは2.0以上、好ましくは26以下、より好ましくは20以下である。
【0064】
[樹脂中間膜(A)]
本発明の合わせガラスにおける樹脂中間膜(A)は、上述の基材層(I)の両面に上述の接着層(II)を備えた積層体を含む。本発明の一態様では、樹脂中間膜(A)は、1つの前記積層体を含む。樹脂中間膜(A)は、1つの前記積層体からなってもよい。また、本発明の別の一態様では、樹脂中間膜(A)は、2以上の前記積層体を含む。樹脂中間膜(A)は、2つ以上の前記積層体からなってもよい。
【0065】
1つの積層体の厚さは、前述の各層の厚さの範囲を満たしたうえで、好ましくは0.95mm以下、より好ましくは0.90mm以下、更に好ましくは0.85mm以下である。1つの積層体の厚さが前記上限値以下であると、前記厚さ比を有する積層体をロール体として提供しやすく、かつ十分な取り扱い性、透明性および耐熱性を有する積層体を得やすい。また、1つの積層体の厚さは、前述の各層の厚さの範囲を満たしたうえで、好ましくは0.30mm以上、より好ましくは0.40mm以上、更に好ましくは0.45mm以上である。1つの積層体の厚さが前記下限値以上であると、合わせガラスに求められる耐貫通性をもたらす樹脂中間膜(A)を得やすい。
【0066】
樹脂中間膜(A)を製造する方法は、基材層(I)の両面に接着層(II)を有する積層体、即ち接着層(II)-基材層(I)-接着層(II)の順で積層された積層体を製造できる方法であれば特に限定されない。そのような方法の例としては、基材層(I)および接着層(II)を、熱ラミネート法または圧着法等の公知の方法で積層する方法、接着層(II)を構成する材料を有機溶媒または有機分散媒に溶解または分散して塗布液を得、この塗布液を、基材層(I)の片面に塗布した後、有機溶媒または有機分散媒を除去し、更に基材層(I)のもう一方の面に塗布液を塗布した後、有機溶媒または有機分散媒を除去する方法、および基材層(I)を構成する材料と接着層(II)を構成する材料とを共押出しする方法を挙げることができる。
【0067】
積層体の25℃における曲げ弾性率は、得られる合わせガラスの良好な機械強度を得やすい観点から、好ましくは30MPa以上、より好ましくは100MPa以上、更に好ましくは200MPa以上、特に好ましくは220MPa以上である。この曲げ弾性率の上限値は特に限定されないが、積層体の25℃における曲げ弾性率は通常2000MPa以下である。積層体の25℃における曲げ弾性率は、例えば、接着層(II)の厚さT(II)に対する基材層(I)の厚さT(I)の比T(I)/T(II)を大きくすることにより、前記下限値以上に調整できる。
積層体の50℃における曲げ弾性率は、得られる合わせガラスの良好な機械強度を得やすい観点から、好ましくは20MPa以上、より好ましくは100MPa以上、更に好ましくは200MPa以上、特に好ましくは220MPa以上である。この曲げ弾性率の上限値は特に限定されないが、積層体の50℃における曲げ弾性率は通常1500MPa以下である。積層体の50℃における曲げ弾性率は、例えば、接着層(II)の厚さT(II)に対する基材層(I)の厚さT(I)の比T(I)/T(II)を大きくすることにより、前記下限値以上に調整できる。
曲げ弾性率は、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0068】
積層体の25℃における曲げ剛性は、6N・mm以上、60N・mm以下である。積層体がこの特定の曲げ剛性を有さない場合、積層体が、合わせガラス製造時の優れた取り扱い性を有することは困難である。
樹脂中間膜(A)は、合わせガラス製造時の優れた取り扱い性を有するため、樹脂中間膜に含まれる積層体をガラスの間に挟持する過程において積層体に皺が生じることもなく、簡便に合わせガラスを製造することができる。また、積層体がこの特定の曲げ剛性を有することにより、比較的細い巻き芯(例えば6インチ(約15.24cm)径の巻き芯)であっても積層体を良好に巻回することができ、得られた積層体のロール体に撓みが生じにくいことから搬送時の作業効率を高めることもできる。更に、ロール体から巻き戻した後に、積層体に巻き癖が残留しにくい。
前記曲げ剛性は、好ましくは8N・mm以上、より好ましくは10N・mm以上、更に好ましくは12N・mm以上、特に好ましくは14N・mm以上である。前記曲げ剛性が前記下限値以上であると、合わせガラス製造時のより優れた取り扱い性を得やすい。
前記曲げ剛性は、好ましくは55N・mm以下、より好ましくは50N・mm以下、より好ましくは45N・mm以下、より好ましくは40N・mm以下、より好ましくは35N・mm以下、更に好ましくは30N・mm以下、特に好ましくは28N・mm以下である。前記曲げ剛性が前記上限値以下であると、比較的細い巻き芯にもより良好に巻回しやすく、ロール体から巻き戻した後に積層体に巻き癖がより残留しにくい。
前記曲げ剛性は、例えば、特定の基材層(I)と特定の接着層(II)とを適切な厚さ比で積層すること、または各層の曲げ弾性率を調整することにより、前記下限値以上および前記上限値以下に調整できる。
【0069】
積層体の50℃における曲げ剛性は、高温であっても合わせガラス製造時の優れた取り扱い性を得やすい観点から、好ましくは4N・mm以上、より好ましくは6N・mm以上、より好ましくは8N・mm以上、より好ましくは10N・mm以上、更に好ましくは12N・mm以上、特に好ましくは13N・mm以上であり、好ましくは60N・mm以下、より好ましくは55N・mm以下、より好ましくは50N・mm以下、更に好ましくは45N・mm以下、特に好ましくは40N・mm以下である。本発明の一態様では、積層体の50℃における曲げ剛性は、4N・mm以上、60N・mm以下である。前記曲げ剛性が前記下限値以上であると、高温であっても合わせガラス製造時のより優れた取り扱い性を得やすい。前記曲げ剛性が前記上限値以下であると、高温であっても、比較的細い巻き芯にもより良好に券回しやすく、ロール体から巻き戻した後に積層体に巻き癖がより残留しにくい。
前記曲げ剛性は、例えば、特定の基材層(I)と特定の接着層(II)とを適切な厚さ比で積層すること、または接着層(II)の厚さT(II)に対する基材層(I)の厚さT(I)の比T(I)/T(II)を大きくすることにより、前記下限値以上および前記上限値以下に調整できる。
【0070】
25℃または50℃における積層体の曲げ剛性は、下記式(1)または(2)により求められる。
【数4】

【数5】

積層体の曲げ弾性率として、基材層(I)を構成する樹脂および接着層(II)を構成する樹脂の公知のヤング率から求めた値を用いてもよいし、上述したように後述の実施例に記載の方法により実験的に測定した値を用いてもよい。なお、本発明において、ポアソン比としては0.38を用いている。
【0071】
本発明の合わせガラスは、樹脂中間膜(A)に起因して、優れた透明性を有することができる。そのため、用途に応じて外層である無機ガラスの種類が変更された場合でも、本発明の合わせガラスは優れた透明性を有することができる。
より優れた透明性を合わせガラスにもたらしやすい観点から、樹脂中間膜(A)に含まれる1つの積層体のヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下である。ヘイズの下限値は特に規定されない。1つの積層体のヘイズは、通常0.01%以上である。前記ヘイズは、接着層(II)に含まれるアクリル系ブロック共重合体(X)として透明性の高い共重合体を用いること、または樹脂中間膜(A)の厚みを薄くすることにより、前記上限値以下に調整できる。前記ヘイズは、例えば厚さ0.8mm以下(例えば0.8mm)の積層体を用いて、ヘイズメーターSH7000(日本電飾工業株式会社製)を用いてJIS K7136:2000に準拠して測定できる。
【0072】
本発明の合わせガラスは、樹脂中間膜(A)に起因して、極めて低い着色性を有することができ、可能な限り無色であり得る。
より低い着色性を合わせガラスにもたらしやすい観点から、樹脂中間膜(A)に含まれる1つの積層体の黄色度(YI)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下、特に好ましくは0.5以下である。前記黄色度は0以上である。前記黄色度は、接着層(II)に含まれるアクリル系ブロック共重合体(X)として低い黄色度を示す共重合体と用いること、または樹脂中間膜(A)の厚みを薄くすることにより、前記上限値以下に調整できる。前記黄色度は、例えば厚さ0.8mm以下(例えば0.8mm)の積層体を用いて、ヘイズメーターSH7000(日本電飾工業株式会社製)を用いてJIS Z8722:2009に準拠して測定できる。
【0073】
本発明の合わせガラスは、樹脂中間膜(A)に起因して、優れた透明性を有することができるため、十分な合わせガラスの透明性を確保しつつ用途に応じて無機ガラスを選択することができる。本発明の合わせガラスのヘイズは特に限定されず、前述の積層体のヘイズと同様のヘイズであることが好ましい。
【0074】
本発明の合わせガラスは、樹脂中間膜(A)に起因して、極めて低い着色性を有することができるため、十分な合わせガラスの透明性を確保しつつ用途に応じて無機ガラスを選択することができる。本発明の合わせガラスの黄色度は特に限定されず、前述の積層体の黄色度と同様の黄色度であることが好ましい。
【0075】
<無機ガラス>
樹脂中間膜(A)と積層させる2枚の無機ガラスとしては、例えば、フロートガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラスまたは熱線吸収板ガラス等の無機ガラスが使用できる。無機ガラスは、無色または有色のいずれであってもよい。2枚の無機ガラスの種類および厚さは、相互に同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0076】
[合わせガラス]
本発明の合わせガラスは、樹脂中間膜(A)の両面に無機ガラスを積層した構成を有する。樹脂中間膜(A)は、基材層(I)の両面に接着層(II)を備えた積層体を含む。
樹脂中間膜(A)に含まれる積層体が1つの場合、合わせガラスは、図1に示すような構成を有する。即ち、本発明の一態様において、合わせガラスは、無機ガラス11、樹脂中間膜(A)31、無機ガラス11の順に積層された構成を有し、樹脂中間膜(A)31は、基材層(I)22の両面に接着層(II)21を備えた積層体からなる。なお、図1および後述の図2図4においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法および比率等は適宜相違させている。
樹脂中間膜(A)に含まれる積層体は2つ以上であってもよい。例えば樹脂中間膜(A)に含まれる積層体が2つの場合、合わせガラスは、無機ガラス/接着層(II)/基材層(I)/接着層(II)/接着層(II)/基材層(I)/接着層(II)/無機ガラスという構成を有する。樹脂中間膜(A)に含まれる積層体が2つ以上である場合、防弾ガラスのように特に優れた耐貫通性を必要とする用途にも好ましく使用できる。樹脂中間膜(A)に含まれる積層体が2つ以上である場合、複数の積層体を構成する基材層(I)および接着層(II)それぞれの材料および厚さは、相互に同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0077】
樹脂中間膜(A)は、本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、必要に応じて前記積層体以外の構造を樹脂中間膜(A)の全面または一部に含むことができる。そのような構造の例としては、導電構造、遮音構造、意匠またはデザイン層およびそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0078】
前記合わせガラスは、1枚で使用してもよいし、2枚以上組み合わせた状態で使用してもよい。2枚以上組み合わせた状態で使用する場合、合わせガラスは、例えば、ガラス/接着層(II)/基材層(I)/接着層(II)/ガラス/接着層(II)/基材層(I)/接着層(II)/ガラスの構成を有する。合わせガラスを2枚以上組み合わせた状態で使用する場合、それらの合わせガラスを構成するそれぞれの材料および厚さは、相互に同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0079】
[合わせガラスの製造方法]
本発明の合わせガラスは、従来公知の方法で製造できる。そのような方法の例としては、真空ラミネーター装置を用いる方法、真空バッグを用いる方法、真空リングを用いる方法、およびニップロールを用いる方法を挙げることができる。また、前記方法により仮圧着した後に、オートクレーブに投入して本接着する方法も挙げることができる。
【0080】
真空ラミネーター装置を用いる場合、例えば1×10-6~3×10-2MPaの減圧下、60~200℃、特に80~160℃で無機ガラス、樹脂中間膜(A)、無機ガラスをラミネートすることにより合わせガラスを製造できる。
【0081】
真空バッグまたは真空リングを用いる場合、例えば欧州特許第1235683号明細書に記載されているように、約2×10-2MPaの圧力下、無機ガラス、樹脂中間膜(A)、無機ガラスを100~160℃でラミネートすることにより合わせガラスを製造できる。
【0082】
ニップロールを用いる場合、樹脂中間膜(A)の流動開始温度以下の温度で、無機ガラス、樹脂中間膜(A)、無機ガラスを重ねた状態でロールにより脱気した後、樹脂中間膜(A)の流動開始温度に近い温度に加熱して無機ガラス、樹脂中間膜(A)、無機ガラスを圧着することにより合わせガラスを製造できる。より具体的には、例えば、無機ガラス、樹脂中間膜(A)、無機ガラスを重ねた状態で赤外線ヒーター等により30~70℃に加熱した後、ロールで脱気し、その後、50~150℃に加熱した後、無機ガラス、樹脂中間膜(A)、無機ガラスをロールで圧着することにより合わせガラスを製造できる。
【0083】
前記方法により仮圧着した後にオートクレーブに投入して本圧着を行う場合、オートクレーブ工程の運転条件は合わせガラスの厚さまたは構成により適宜選択してよい。オートクレーブ工程は、例えば、0.5~1.5MPaの圧力下、100~160℃で0.5~3時間実施できる。
【0084】
合わせガラスの安全性は、公知のとおり、樹脂中間膜と外層のガラスとの間の接着力に依存する。この接着力は、ガラスの機械的な破壊の際にガラス破片が樹脂中間膜に接着したままであることが保証され、かつ角がとがったガラス破片が剥離することができない程度に高い方が好ましい。しかし、樹脂中間膜とガラスとの接着力が高すぎる場合、激突した物体が合わせガラスを貫通することがある。樹脂中間膜のガラスに対する接着力が低い場合、樹脂中間膜が衝突箇所で引き延ばされながらガラスから部分的に剥離し、かつ変形することによって、衝突エネルギーが減衰し、衝突した物体の貫通は抑制される。即ち、合わせガラスにおけるガラスと樹脂中間膜の接着力は、ガラスが破損した際にガラス破片が樹脂中間膜に接着したままであることを保証する程度に高く、耐貫通性が低下しない程度に高すぎないことが好ましい。
このような観点から、本発明の合わせガラスの、圧縮剪断試験により評価した無機ガラスと接着層(II)との接着性は、好ましくは5MPa以上、35MPa以下、より好ましくは10MPa以上、30MPa以下、更に好ましくは15MPa以上、25MPa以下である。無機ガラスと接着層(II)との接着性は、例えば、接着層(II)に含まれるアクリル系ブロック共重合体(X)の選択、または接着層(II)への接着性調整剤、フィラーまたは接着性調整剤等の添加剤の添加により、前記範囲内に調整できる。無機ガラスと接着層(II)との接着性は、例えば、特開2006-13505に記載された圧縮剪断試験により測定できる。
【0085】
樹脂中間膜(A)とガラスとの接着力および樹脂中間膜(A)の耐熱性が不十分であると、合わせガラスの耐熱クリープ性が低下しやすい。本発明の合わせガラスは、特定の樹脂中間膜(A)に起因して、優れた耐熱クリープ性を有することができる。合わせガラスの耐熱クリープ性は、荷重37kg/m、雰囲気温度100℃の条件での促進試験を1週間実施した際の合わせガラスに生じたズレの距離を測定することにより評価できる。具体的には、後述の実施例に記載の方法により評価できる。本発明の合わせガラスの耐熱クリープ性は、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.5mm以下である。耐熱クリープ性が前記上限値以下であると、合わせガラスに熱ズレが生じて設置したガラスが脱落または移動する問題を防止しやすい。耐熱クリープ性は、接着層(II)の貯蔵弾性率またはMFRを大きくすることにより、前記上限値以下に調整できる。
【0086】
破損時、合わせガラスに含まれる基材層(I)が、無機ガラス単独のように大きな破片を形成しないことが好ましい。そのため、基材層(I)と接着層(II)との間には、十分な接着力が必要とされる。基材層(I)と接着層(II)との接着力は、例えばJIS K6854-2に準じて、剥離強度を測定することで評価できる。具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。剥離角度180°、引張速度100mm/分、環境温度23℃の条件で測定される剥離強度は、好ましくは10N/25mm超、より好ましくは12N/25mm超、更に好ましくは20N/25mm超である。剥離強度が前記下限値より大きいと、強固な接着力、例えば薄い(例えば厚さ0.2mmの)接着層であれば剥離前に破断するほどの強固な接着力を得やすく、合わせガラス製造時または製造後の合わせガラスにおいて基材層(I)と接着層(II)との間で剥離が生じる問題が起こりにくい。
【実施例
【0087】
以下、実施例および比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、実施例および比較例中の各物性は、以下の方法により測定または評価した。
【0088】
<重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)>
アクリル系ブロック共重合体(X)の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(以下、GPCと略記する)によりポリスチレン換算分子量として求めた。詳細は以下のとおりである。
・装置:東ソー株式会社製GPC装置「HLC-8020」
・分離カラム:東ソー株式会社製の「TSKgel GMHXL」、「G4000HXL」および「G5000HXL」を直列に連結
・溶離剤:テトラヒドロフラン
・溶離剤流量:1.0mL/分
・カラム温度:40℃
・検出方法:示差屈折率(RI)
【0089】
<各重合体ブロックの含有量>
アクリル系ブロック共重合体(X)における各重合体ブロックの含有量は、H-NMR(H-核磁気共鳴)測定によって求めた。詳細は以下のとおりである。
・装置:日本電子株式会社製 核磁気共鳴装置「JNM-LA400」
・重溶媒:重水素化クロロホルム
【0090】
<ヘイズ>
後述の実施例または比較例において作製した各積層体について、ヘイズメーターSH7000(日本電飾工業株式会社製)を用い、JIS K7136:2000に準拠してヘイズを測定した。なお、各積層体について3箇所のヘイズを測定し、その平均値を積層体のヘイズとして採用した。
【0091】
<黄色度>
後述の実施例または比較例において作製した各積層体について、ヘイズメーターSH7000(日本電飾工業株式会社製)を用い、JIS Z8722:2009に準拠して黄色度を測定した。なお、各積層体について3箇所の黄色度を測定し、その平均値を積層体の黄色度として採用した。
【0092】
<曲げ剛性>
後述の実施例または比較例において作製した積層体を切り出して、長さ40mm、幅30mm、厚さ0.8mmのシートを作製した。作製した各シートから、JIS-7017を参考にして40mm×10mm×0.8mmの試験片を3枚ずつ切り出した。得られた各試験片についてオートグラフ(島津製作所株式会社製)を用いて3点曲げ試験を行い、支点間距離を16mmとしたときの25℃および50℃の曲げ弾性率を測定した。各積層体について、測定により得られた曲げ弾性率の平均値を、積層体の曲げ弾性率として採用した。曲げ弾性率および厚さを用い、式(1)および(2)に従って各積層体の曲げ剛性を計算した。ポアソン比として0.38を用いた。
【数6】

【数7】
【0093】
<基材層(I)と接着層(II)との接着性>
後述の実施例1~4および比較例2~3で用いた基材層および接着層を用いて、下記手順により、各々の層間剥離強度測定用試験片を3枚ずつ作製した。
縦150mm×横75mmの基材層および接着層を重ね、その間に、シリコーンによる剥離処理が施されたPETフィルム(MRF38、三菱樹脂株式会社製、縦75mm×横75mm、厚さ38μm)を挿入した。重ねた層およびPETフィルムを、熱ラミネーション装置(大成ラミネーター株式会社製VAII-700型)を用い、130℃のロールおよび40℃のロールの間に通して熱ラミネートすることにより、PETフィルムが挿入されていない領域の基材層と接着層とを接合した(接合領域の面積:縦75mm×横75mm、非接合領域の面積:縦75mm×横75mm)。得られた部分接合品を、恒温恒湿室(20℃-65%RH)で24時間調湿した後、2枚の平坦なフロートガラス(縦300mm×横300mm×厚さ3.0mm)の間の中央付近に配置した。これをゴムバックに入れた後、後述の<取り扱い性>の段落に記載の条件で真空ラミネーターによる仮圧着およびオートクレーブによる圧縮を行った。
上記工程を経た試験片からガラスおよびPETフィルムを取り除き、縦150mm×横25mmの試験片(接合領域の面積:縦75mm×横25mm、非接合領域の面積:縦75mm×横25mm)を3枚切り出して層間剥離強度測定用試験片を得た。
作製した各試験片の基材層(I)側を、ステンレス鋼板に強粘着テープ(日東電工株式会社製:ハイパージョイントH9004)で固定した。卓上精密万能試験機(島津製作所株式会社製:AGS-X)を使用し、JIS K6854-2に準拠して、剥離角度180°、引張速度100mm/分、環境温度23℃の条件で、基材層(I)と接着層(II)の間の剥離強度をそれぞれ測定した。測定値の平均値から接着強度(単位:N/25mm)を求め、下記基準により評価した。
A:剥離強度の最大値が20N/25mm超、かつ接着層(II)が材料破壊
B:剥離強度の最大値が12N/25mm超、20N/25mm以下
C:剥離強度の最大値が10N/25mm超、12N/25mm以下
D:剥離強度の最大値が10N/25mm以下
【0094】
<取り扱い性>
後述の実施例または比較例において作製した各樹脂中間膜を、300mm×300mmの寸法に切り出した。切り出した各樹脂中間膜を、恒温恒湿室(20℃-65%RH)で24時間調湿した後、2枚の平坦なフロートガラス(縦300mm×横300mm×厚さ3.0mm)の間にそれぞれ配置した。これをゴムバックに入れた後、真空ラミネーター(日清紡メカトロニクス株式会社製1522N)に投入し、熱可塑性ポリウレタン樹脂を使用する樹脂中間膜(A-7)では熱板温度100℃、真空引き時間12分、プレス圧力50kPa、プレス時間17分の条件、それ以外の樹脂中間膜では熱板温度165℃、真空引き時間12分、プレス圧力50kPa、プレス時間17分の条件で脱気することにより、フロートガラスと樹脂中間膜とを仮接着した。次いで、ゴムバックから取り出した仮圧着物をオートクレーブで圧縮することにより、平坦な合わせガラスを得た。オートクレーブの条件は、樹脂中間膜(A-7)では圧力6バールおよび温度100℃で合計90分以内とし、それ以外の樹脂中間膜では圧力12バールおよび温度140℃で合計90分以内とした。
合わせガラス製造時の取り扱い性を下記基準により評価した。
A:問題なく製造できる
B:製造に問題あり(樹脂中間膜の撓み若しくは皺の発生、または賦形不良)
【0095】
<無機ガラスと接着層(II)との接着性(圧縮剪断試験)>
後述の実施例または比較例において製造した各樹脂中間膜について、特開2006-13505に記載された圧縮剪断試験を実施し、無機ガラスと接着層(II)との接着力を評価した。具体的には、下記手順により評価を行った。
樹脂中間膜を、100mm×100mmの寸法に切り出した。切り出した樹脂中間膜を、恒温恒湿室(20℃-65%RH)で24時間調湿した後、2枚の平坦なフロートガラス(縦100mm×横100mm×厚さ3.0mm)の間に、ガラスのスズ面が樹脂中間膜に接する向きに挟んでそれぞれ配置した。これをゴムバックに入れた後、真空ラミネーター(日清紡メカトロニクス株式会社製1522N)に投入し、樹脂中間膜(A-7)では熱板温度100℃、真空引き時間12分、プレス圧力50kPa、プレス時間17分の条件、それ以外の樹脂中間膜では熱板温度165℃、真空引き時間12分、プレス圧力50kPa、プレス時間17分の条件で脱気してフロートガラスと樹脂中間膜とを仮接着した。次いで、ゴムバックから取り出した仮圧着物を、オートクレーブを用いて圧力12バールおよび温度140℃の条件で合計90分以内の時間圧縮することにより、平坦な合わせガラスを得た。
得た合わせガラスを切断し、縦25mm×横25mmの試験用サンプルを3個得た。各試験用サンプルを図2に示された試験装置に角度45゜で挟み込んだ。試験装置に力を鉛直方向に加えることで試験用サンプルに剪断を生じさせ、ガラスと樹脂中間膜との剥離のために必要な最大の剪断力を求め、3個の試験用サンプルの平均値を算出した。得られた平均値を、サンプル面積(25mm×25mm)×√2で除することにより、圧縮剪断力(MPa)を得た。圧縮剪断力の値が小さいほど、ガラスと樹脂中間膜との接着力が小さいことを意味する。
【0096】
<合わせガラスの耐熱クリープ性の評価>
後述の実施例または比較例において作製した各樹脂中間膜を、縦135mm×横50mmの寸法に切り出した。次に、図3に示すように、縦165mm×横50mm×厚さ3mmのフロートガラス41および42の間に、これらのフロートガラスの縦165mmのうち135mmが、基材層(I)52の両面に接着層(II)51を備えた積層体からなる樹脂中間膜(A)61を介して付着するよう樹脂中間膜(A)61を挟み、合わせガラス40を製造した。なお、合わせガラスの製造手順は、先の<取り扱い性>の段落に記載した製造手順と同じである。
続いて、図4に示すように、合わせガラス40のガラス41側に重さ250gの鉄板71を瞬間接着剤81を用いて貼り合わせ、鉄板を貼り合わせた合わせガラス90を製造した。鉄板を貼り合わせた合わせガラス90を、スタンド101に立て掛けて、100℃のチャンバー内で1週間放置した。放置後に、ガラス41がずり落ちた距離を測定し、前記距離を下記基準に基づいて評価し、この評価を耐熱クリープ性の評価とした。
A:ガラス41がずり落ちた距離が1mm以下である。
B:ガラス41がずり落ちた距離が1mmを超える。
【0097】
下記合成例では、化合物は常法により乾燥精製し、窒素で脱気したものを使用した。また、化合物の移送および供給は窒素雰囲気下で行った。
【0098】
[合成例1:アクリル系ブロック共重合体(A1)の合成]
内部を脱気し、窒素で置換した三ツ口フラスコに、室温で、乾燥トルエン735g、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.4g、およびイソブチルビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)アルミニウム20mmolを含有するトルエン溶液39.4gを導入し、更に、sec-ブチルリチウム1.8mmolを添加した。得られた混合物に1回目のメタクリル酸メチル43.0gを添加し、室温で1時間反応させた。反応液に含まれる重合体をサンプリングして重量平均分子量を測定したところ、24,000であった。かかるメタクリル酸メチル重合体は、後述のアクリル系ブロック共重合体(A1)において重合体ブロック(a2)となる。
【0099】
次いで、反応液の温度を-25℃に低下させ、アクリル酸n-ブチル61.0gを0.5時間かけて滴加した。滴加完了直後、反応液に含まれる重合体をサンプリングして重量平均分子量を測定したところ、58,000であった。上述したように重合体ブロック(a2)となるメタクリル酸メチル重合体の重量平均分子量は24,000であったので、アクリル酸n-ブチル共重合体からなるアクリル酸エステル重合体ブロック(a1)の重量平均分子量を34,000であると決定した。
【0100】
続いて、反応液に2回目のメタクリル酸メチル18.0gを添加し、反応液の温度を室温に戻し、8時間撹拌することにより、2つ目のメタクリル酸エステル重合体ブロック(a2)を形成した。その後、反応液にメタノール4gを添加して重合を停止させた後、反応液を大量のメタノールに注ぎ、トリブロック共重合体であるアクリル系ブロック共重合体(A1)を析出させ、ろ過した。ろ取したアクリル系ブロック共重合体(A1)を80℃、1torr(約133Pa)で、12時間乾燥して単離した。得られたアクリル系ブロック共重合体(A1)の重量平均分子量は68,000であった。ジブロック共重合体の重量平均分子量は58,000であったので、2つ目のメタクリル酸メチル重合体ブロック(a2)の重量平均分子量を10,000であると決定した。このアクリル系ブロック共重合体(A1)を単軸押出機によりペレット化し、アクリル系ブロック共重合体(A1)のペレットを得た。
得られたアクリル系ブロック共重合体(A1)の構造は、メタクリル酸メチル重合体ブロック(PMMA)-アクリル酸n-ブチル重合体ブロック(PnBA)-メタクリル酸メチル重合体ブロック(PMMA)のトリブロック共重合体であった。このトリブロック共重合体を構成する全構成単位に対するPMMA含有量(重合体ブロック(a2)の含有量)は50.0質量%であり、トリブロック共重合体の重量平均分子量は68,000(24,000-34,000-10,000)であり、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は1.12であった。
【0101】
[合成例2:アクリル系ブロック共重合体(A2)の合成]
1回目のメタクリル酸メチルの添加量を18.0gに変更し、アクリル酸n-ブチルの滴加量を79.0gに変更したこと以外は合成例1と同様にして、アクリル系ブロック共重合体(A2)のペレットを得た。
得られたアクリル系ブロック共重合体(A2)の構造は、メタクリル酸メチル重合体ブロック(PMMA)-アクリル酸n-ブチル重合体ブロック(PnBA)-メタクリル酸メチル重合体ブロック(PMMA)のトリブロック共重合体であった。このトリブロック共重合体を構成する全構成単位に対するPMMA含有量(重合体ブロック(a2)の含有量)は30.5質量%であり、トリブロック共重合体の重量平均分子量は64,000(10,500-44,000-9,500)であり、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は1.15であった。
【0102】
[合成例3:アクリル系ブロック共重合体(A3)の合成]
1回目のメタクリル酸メチルの添加量を19.0gに変更し、2回目のメタクリル酸メチルの添加量を28.0gに変更したこと以外は合成例2と同様にして、アクリル系ブロック共重合体(A3)のペレットを得た。
得られたアクリル系ブロック共重合体(A3)の構造は、メタクリル酸メチル重合体ブロック(PMMA)-アクリル酸n-ブチル重合体ブロック(PnBA)-メタクリル酸メチル重合体ブロック(PMMA)のトリブロック共重合体であった。このトリブロック共重合体を構成する全構成単位に対するPMMA含有量(重合体ブロック(a2)の含有量)は38.5質量%であり、トリブロック共重合体の重量平均分子量は69,000(10,000-44,000-15,000)であり、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は1.10であった。
【0103】
[合成例4:アクリル系ブロック共重合体(A4)の合成]
1回目のメタクリル酸メチルの添加量を36.0gに変更し、アクリル酸n-ブチルの滴加量を170gに変更し、2回目のメタクリル酸メチルの添加量を36.0gに変更したこと以外は合成例1と同様にして、アクリル系ブロック共重合体(A4)のペレットを得た。
得られたアクリル系ブロック共重合体(A4)の構造は、メタクリル酸メチル重合体ブロック(PMMA)-アクリル酸n-ブチル重合体ブロック(PnBA)-メタクリル酸メチル重合体ブロック(PMMA)のトリブロック共重合体であった。このトリブロック共重合体を構成する全構成単位に対するPMMA含有量(重合体ブロック(a2)の含有量)は30.0質量%であり、トリブロック共重合体の重量平均分子量は131,000(19,000-93,000-19,000)であり、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は1.17であった。
【0104】
[接着層(II-1)の作製]
60℃で24時間事前に乾燥させた合成例1で得た樹脂(アクリル系ブロック共重合体(A1))を、25mφ単軸押出機「VGM25-28EX」(G&M Engineering Company Limited製)を用いて、220℃の樹脂温度で、単層用Tダイから押出し、表面温度60℃のロールで引き取り、幅300mm、厚さ0.20mmの接着層(II-1)を得た。
【0105】
[接着層(II-2)の作製]
アクリル系ブロック共重合体(A1)に代えて合成例2で得た樹脂(アクリル系ブロック共重合体(A2))を使用したこと、および樹脂温度を170℃に変更したこと以外は接着層(II-1)の作製法と同様にして、幅300mm、厚さ0.20mmの接着層(II-2)を得た。
【0106】
[接着層(II-3)の作製]
アクリル系ブロック共重合体(A1)に代えて合成例3で得た樹脂(アクリル系ブロック共重合体(A3))を使用したこと、および樹脂温度を180℃に変更したこと以外は接着層(II-1)の作製法と同様にして、幅300mm、厚さ0.20mmの接着層(II-3)を得た。
【0107】
[接着層(II-4)の作製]
アクリル系ブロック共重合体(A1)に代えて合成例4で得た樹脂(アクリル系ブロック共重合体(A4))を使用したこと、および樹脂温度を190℃に変更したこと以外は接着層(II-1)の作製法と同様にして、幅300mm、厚さ0.20mmの接着層(II-4)を得た。
【0108】
[接着層(II-5)の作製]
アクリル系ブロック共重合体(A1)に代えて合成例3で得た樹脂(アクリル系ブロック共重合体(A3))を使用したこと、および樹脂温度を170℃に変更したこと以外は接着層(II-1)の作製法と同様にして、幅300mm、厚さ0.80mmの接着層(II-5)を得た。
【0109】
[接着層(II-6)の作製]
アクリル系ブロック共重合体(A1)に代えて、株式会社クラレ製ポリビニルブチラール(原料ポリビニルアルコールの粘度平均重合度1700、アセタール構成単位含有量74モル%、ビニルアルコール単位含有量19モル%、酢酸ビニル単位含有量7モル%)61.5質量部、および可塑剤としてのジイソデシルフタレート20質量部を単軸押出機に投入したこと、および樹脂温度を190℃に変更したこと以外は接着層(II-1)の作製法と同様にして、幅300mm、厚さ0.20mmの接着層(II-6)を得た。
【0110】
[接着層(II-7)の作製]
無黄変熱可塑性ポリウレタン樹脂シートであるArgotec ST6050(SWM社製)を、2枚のステンレス鋼板(縦35cm×横35cm)の間に設置した型枠(縦30cm×横30cm×高さ0.80mm)内に配置した。これを熱プレス機(株式会社神藤金属工業製AYS.10)にセットした。130℃で3分間、無黄変熱可塑性ポリウレタン樹脂シートに圧力をかけず樹脂を加熱した。次いで、180秒間、90kgf/cm(約8.8MPa)の圧力で樹脂シートを熱プレスした。その後、直ちにステンレス板および型枠を23℃の冷却プレス機にセットした。冷却プレス機で樹脂シートを冷却しながら、樹脂シートに圧力を印加した。型枠内の樹脂シートを切り出すことにより、縦30cm×横30cm×厚さ0.20mmの接着層(II-7)を得た。
【0111】
[基材層(I)の作製]
100℃で24時間事前に乾燥させたポリカーボネート樹脂「SDPOLYCA 301-4」(住化ポリカーボネート株式会社製)を、25mmφ単軸押出機「VGM25-28EX」(G&M Engineering Company Limited製)を用いて、280℃の樹脂温度で、単層用Tダイから押出し、表面温度140℃のロールで引き取り、幅300mm、厚さ0.40mmの基材層(I)を得た。
【0112】
[実施例1]
ポリカーボネート樹脂からなる基材層(I)とアクリル系ブロック共重合体からなる2枚の接着層(II-1)とを、熱ラミネーション装置(大成ラミネーター株式会社製VAII-700型)を用いて、130℃および40℃のロール間に通して熱ラミネートすることにより、積層体の長尺ロール体を作製した。搬送速度は1.0m/分、圧力は0.15MPaであった。
次いで、先の<取り扱い性>の段落に記載の手順に従って、長尺ロール体から巻き出した積層体を樹脂中間膜(A-1)として用い、合わせガラス(A-1)を製造した。なお、無機ガラスと接着層(II-1)の接着性は16.1MPaと良好であった。
【0113】
[実施例2~4]
接着層(II-1)に代えて接着層(II-2)~(II-4)をそれぞれ使用したこと以外は実施例1と同様にして、積層体の長尺ロール体、樹脂中間膜(A-2)~(A-4)および合わせガラス(A-2)~(A-4)をそれぞれ製造した。なお、無機ガラスと接着層(II-2)の接着性は15.6MPa、無機ガラスと接着層(II-3)の接着性は15MPaといずれも良好であった。
【0114】
[比較例1]
積層体の長尺ロール体に代えて先の[接着層(II-5)の作製]において得た接着層(II-5)のみを用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂中間膜(A-5)および合わせガラス(A-5)を製造した。なお、無機ガラスと接着層(II-5)の接着性は4.4MPaであった。
【0115】
[比較例2]
接着層(II-1)に代えて接着層(II-6)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、積層体の長尺ロール体、樹脂中間膜(A-6)および合わせガラス(A-6)を製造した。
【0116】
[比較例3]
接着層(II-1)に代えて接着層(II-7)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、30cm×30cmの積層体、樹脂中間膜(A-7)および合わせガラス(A-7)を製造した。
【0117】
実施例および比較例において作製した樹脂中間膜の構成、並びに樹脂中間膜および合わせガラスの評価結果を表1に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
表1に示されているとおり、実施例1~4における樹脂中間膜は、アクリル系ブロック共重合体(X)の優れた透明性に起因して、基材層(I)と組み合わせても、低いヘイズおよび低い黄色度を有していた。これは、実施例1~4における樹脂中間膜を用いて合わせガラスを製造した場合に、合わせガラスが優れた透明性を有することを示す。
また、特定の基材層(I)と特定の接着層(II)とを適切な厚さ比で積層したことにより、25℃でも50℃でも積層体の曲げ剛性の範囲を満たしていた。そのため、一般的に使用されている6インチ(約15.24cm)径の巻き芯に積層体を良好に巻回することができ、積層体の長尺ロール体に撓みが生じにくいことから搬送時の作業効率を高めることができ、また、巻き戻した後に積層体に巻き癖が残留することもなく、更には、取り扱い性試験結果にも示されているとおり皺も生じず簡便に合わせガラスを製造することができた。これは、室温付近(25℃)だけでなく50℃の高温でも、樹脂中間膜の、合わせガラス製造時における取り扱い性が極めて優れていることを示す。
更に、実施例1~4の合わせガラスは、優れた基材層(I)と接着層(II)との接着性を有し、耐熱クリープ性にも優れていた。また、実施例1~3の合わせガラスは、非常に優れた無機ガラスと接着層(II)との接着性(圧縮剪断剥離強さ)も有していた。このことから、実施例1~3の合わせガラスでは、非常に優れた圧縮剪断剥離強さが長期的に保持されることも確認された。
【0120】
一方、比較例1では、ヘイズおよび黄色度は優れていたが、曲げ剛性が不足していたため、長尺ロール体の搬送の作業効率が悪く、ガラスとの積層時にも皺が生じた。
比較例2および3では、合わせガラス製造時における取り扱い性は良好であったが、ヘイズおよび黄色度に劣っていた。また、比較例3では、耐熱クリープ性も劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の合わせガラスは、極めて優れた透明性(低ヘイズ・低黄変度)を有しており、合わせガラス製造時における取り扱い性にも非常に優れる。また、優れた基材層(I)と接着層(II)との接着性、非常に優れた無機ガラスと接着層(II)との接着性、および優れた耐熱クリープ性も有する。従って、本発明の合わせガラスは、乗物用途の合わせガラス(例えば、自動車用フロントガラス、自動車用サイドガラス、自動車用サンルーフ、自動車用リアガラス、ヘッドアップディスプレイ用ガラス等)または建築用途(例えば、ファサード、外壁若しくは屋根のためのラミネート、パネル、ドア、窓、壁、屋根、サンルーフ、遮音壁、表示窓、バルコニー、手摺壁等の建材、会議室の仕切りガラス部材、ソーラーパネル等)の合わせガラスとして、特に建築用途の合わせガラスとして、好適に使用できる。
【符号の説明】
【0122】
11 無機ガラス
21 アクリル系ブロック共重合体(X)を含有する接着層(II)
22 ポリカーボネート樹脂を含有する基材層(I)
31 樹脂中間膜(A)
40 耐熱クリープ性の評価に用いる合わせガラス
41 フロートガラス
42 フロートガラス
51 アクリル系ブロック共重合体(X)を含有する接着層(II)
52 ポリカーボネート樹脂を含有する基材層(I)
61 樹脂中間膜(A)
71 鉄板
81 瞬間接着剤
90 鉄板を貼り合わせた合わせガラス
101 スタンド
図1
図2
図3
図4