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特許7402179熱エッチングおよび原子層エッチングにおけるエッチング特性の予測
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】熱エッチングおよび原子層エッチングにおけるエッチング特性の予測
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/302 20060101AFI20231213BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20231213BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
H01L21/302 201A
G06N20/00
H01L21/302 101G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020561639
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 US2019028780
(87)【国際公開番号】W WO2019212810
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-04-19
(31)【優先権主張番号】15/970,744
(32)【優先日】2018-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592010081
【氏名又は名称】ラム リサーチ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リル・トールステン
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ベリー・ザサード・アイバン・エル.
(72)【発明者】
【氏名】ドレイガー・ネリッサ・スー
(72)【発明者】
【氏名】ゴッチョ・リチャード・エー.
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-135365(JP,A)
【文献】国際公開第2011/115023(WO,A1)
【文献】特開2001-168076(JP,A)
【文献】特開2014-041849(JP,A)
【文献】特開平09-313925(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0176983(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0013253(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
G06N 20/00
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層とエッチング前駆体との間の反応におけるエッチング特性を予測するための方法であって、
(a)量子力学的モデルを使用して、前記表面層と前記エッチング前駆体との間のシミュレートされた反応における1つまたは複数の反応経路についての化学的特性および関連するエネルギーを識別することと、
(b)前記シミュレートされた反応における前記化学的特性および関連するエネルギーを、機械学習モデルへの入力として提供することと、
(c)前記機械学習モデルを使用して、前記表面層と前記エッチング前駆体との間の前記シミュレートされた反応についてのエッチング特性を決定することと
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記シミュレートされた反応における前記1つまたは複数の反応経路についての前記化学的特性および関連するエネルギーは、前記表面層の選択された表面表示および1つまたは複数の選択された初期条件で構成された前記量子力学的モデルを使用して決定される、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
前記1つまたは複数の選択された初期条件は、前記シミュレートされた反応の開始時の前記表面層と前記エッチング前駆体との間の分離距離、前記シミュレートされた反応の前記開始時の前記表面層および前記エッチング前駆体の配向および/もしくは方向、前記シミュレートされた反応の前記開始時の前記表面層と前記エッチング前駆体との間の初期化学架橋の形態、前記シミュレートされた反応の前記開始時の前記エッチング前駆体もしくは前記表面層の内部エネルギーもしくは運動エネルギー、またはそれらの組み合わせを含む、方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、
前記表面層の前記選択された表面表示は、分子、分子の小さなクラスタであって原子が20個以下のクラスタ、および分子の大きなクラスタであって原子が20個を超えるクラスタからなる群から選択される、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
前記量子力学的モデルは、密度汎関数理論(DFT)モデル、ハートリーフォックモデル、半経験的モデル、またはそれらの組み合わせを含む、方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法であって、
前記入力は、前記シミュレートされた反応の温度および圧力の一方または両方を含む、方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法であって、
前記化学的特性は、前記1つまたは複数の反応経路で発生する1つまたは複数の反応中間体および/または生成物の結合構成または分子構造を含む、方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法であって、
前記機械学習モデルは、複数の訓練セットメンバーを含む訓練セットを使用して訓練されたものであり、各訓練セットメンバーは、(i)少なくとも1つの量子力学的シミュレーションによってシミュレートされた熱エッチング反応に対する1つまたは複数の反応経路で発生する中間体および/または生成物についての化学的特性および関連するエネルギーを含む特徴ベクトル、ならびに(ii)前記熱エッチング反応の特性を表すラベルを含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、
前記特徴ベクトルの各々は、指定のエッチング前駆体、指定の修飾された表面層、指定の量子力学的モデル、前記指定の修飾された表面層の指定の表面表示、および1つまたは複数の指定の初期条件の固有の組み合わせを含む、方法。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法であって、
前記機械学習モデルを使用して前記表面層と前記エッチング前駆体との間の1つまたは複数の熱エッチング反応候補を識別することをさらに含み、前記1つまたは複数の識別された熱エッチング反応候補の各々は、少なくとも識別された前記エッチング前駆体に関連付けられている、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(参照による援用)
本出願の一部として、本明細書と同時にPCT出願願書が提出される。この同時出願されたPCT出願願書に明記され、本出願が利益または優先権を主張する各出願は、参照によりその全体があらゆる目的で本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体製作プロセスは、様々な材料のエッチングを含む。熱エッチングおよび化学エッチングを含む異なるタイプのエッチングを利用して、基板表面から材料をエッチングすることができる。フィーチャサイズが縮小し、原子スケール処理の必要性が高まるにつれて、熱エッチングまたは化学エッチングが原子層エッチング(ALE)になる場合がある。エッチング前駆体は、基板表面から特定の材料をエッチングするために基板表面と反応する場合と反応しない場合がある。基板表面上のエッチング前駆体および材料がエッチングされるかどうかを予測することは、困難である。
【発明の概要】
【0003】
本明細書では、表面層とエッチング前駆体との間の反応におけるエッチング特性を予測するための方法が提供される。この方法は、(a)量子力学的モデルを使用して、表面層とエッチング前駆体との間のシミュレートされた反応における1つまたは複数の反応経路についての化学的特性および関連するエネルギーを識別することと、(b)シミュレートされた反応における化学的特性および関連するエネルギーを、機械学習モデルへの入力として提供することと、(c)機械学習モデルを使用して、表面層とエッチング前駆体との間のシミュレートされた反応についてのエッチング特性を決定することとを含む。
【0004】
いくつかの実施態様では、シミュレートされた反応における1つまたは複数の反応経路についての化学的特性および関連するエネルギーは、表面層の選択された表面表示および1つまたは複数の選択された初期条件で構成された量子力学的モデルを使用して決定される。いくつかの実施態様では、1つまたは複数の選択された初期条件は、シミュレートされた反応の開始時の表面層とエッチング前駆体との間の分離距離、シミュレートされた反応の開始時の表面層およびエッチング前駆体の配向および/もしくは方向、シミュレートされた反応の開始時の表面層とエッチング前駆体との間の初期化学架橋の形態、シミュレートされた反応の開始時のエッチング前駆体もしくは表面層の内部エネルギーもしくは運動エネルギー、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施態様では、表面層の選択された表面表示は、分子、分子の小さなクラスタ、および分子の大きなクラスタからなる群から選択される。いくつかの実施態様では、量子力学的モデルは、密度汎関数理論(DFT)モデル、ハートリーフォックモデル、半経験的モデル、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施態様では、化学的特性は、1つまたは複数の反応経路で発生する1つまたは複数の反応中間体および/または生成物の結合構成または分子構造を含む。結合構成または分子構造は、シングルブリッジ(単架橋)二量体、ダブルブリッジ(二重架橋)二量体、トリプルブリッジ(三重架橋)二量体、または二量体なしの1つまたは複数を含んでもよい。いくつかの実施態様では、シミュレートされた反応についてのエッチング特性は、表面層のエッチング速度を含む。いくつかの実施態様では、この方法は、シミュレートされた反応の1つまたは複数の反応経路についての化学的特性および関連するエネルギーを特徴ベクトルに編成する(organizing)ことをさらに含む。いくつかの実施態様では、機械学習モデルは、複数の訓練セットメンバーを含む訓練セットを使用して訓練されたものであり、各訓練セットメンバーは、(i)少なくとも1つの量子力学的シミュレーションによってシミュレートされた熱エッチング反応に対する1つまたは複数の反応経路で発生する中間体および/または生成物についての化学的特性および関連するエネルギーを含む特徴ベクトル、ならびに(ii)熱エッチング反応の特性を表すラベルを含む。いくつかの実施態様では、この方法は、機械学習モデルを使用して1つまたは複数の熱エッチング反応候補を識別することをさらに含み、1つまたは複数の識別された熱エッチング反応候補の各々は、少なくとも識別されたエッチング前駆体を含む。1つまたは複数の識別された熱エッチング反応候補の各々は、識別されたエッチング前駆体によってエッチングされる識別された材料、識別されたエッチングマスク材料、および/または識別されたチャンバ材料をさらに含んでもよい。
【0005】
別の態様は、熱エッチング反応におけるエッチング情報の予測に使用するための機械学習モデルを生成する方法を含む。この方法は、複数の熱エッチング反応の各々について少なくとも1つの量子力学的シミュレーションを実施することであって、各量子力学的シミュレーションは、表面層とエッチング前駆体との間の対応する熱エッチング反応における1つまたは複数の反応経路についての化学的特性および関連するエネルギーを生成することと、複数の熱エッチング反応の各々について、実験的に決定されたエッチング特性を決定することと、複数の訓練セットメンバーを含む訓練セットを生成することであって、各訓練セットメンバーは、(i)対応する熱エッチング反応に対する1つまたは複数の反応経路で発生する中間体および/または生成物についての化学的特性および関連するエネルギーを含む少なくとも1つの特徴ベクトル、ならびに(ii)実験的に決定されたエッチング特性を表すラベルを含むことと、訓練セットを使用して訓練された機械学習モデルを生成することであって、機械学習モデルは、熱エッチング反応におけるエッチング情報を予測するように構成されることとを含む。
【0006】
いくつかの実施態様では、少なくとも1つの量子力学的シミュレーションを実施することは、複数の熱エッチング反応の各々について複数の量子力学的シミュレーションを実施することを含み、各特徴ベクトルは、対応する熱エッチング反応の複数の量子力学的シミュレーションの1つから1つまたは複数の反応経路で発生する中間体および/または生成物についての化学的特性および関連するエネルギーを含む。いくつかの実施態様では、少なくとも1つの量子力学的シミュレーションの各々は、表面層の表面表示および1つまたは複数の初期条件で構成された量子力学的モデルを含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数の初期条件は、量子力学的シミュレーションの開始時の表面層とエッチング前駆体との間の分離距離、量子力学的シミュレーションの開始時の表面層およびエッチング前駆体の配向および/もしくは方向、量子力学的シミュレーションの開始時の表面層とエッチング前駆体との間の初期化学架橋の形態、量子力学的シミュレーションの開始時のエッチング前駆体もしくは表面層の内部エネルギーもしくは運動エネルギー、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施態様では、表面層の表面表示は、分子、分子の小さなクラスタ、および分子の大きなクラスタからなる群から選択される。いくつかの実施態様では、量子力学的モデルは、密度汎関数理論(DFT)モデル、ハートリーフォックモデル、半経験的モデル、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施態様では、化学的特性は、1つまたは複数の反応経路で発生する中間体および/または生成物の結合構成または分子構造を含む。結合構成または分子構造は、シングルブリッジ(単架橋)二量体、ダブルブリッジ(二重架橋)二量体、トリプルブリッジ(三重架橋)二量体、または二量体なしの1つまたは複数を含んでもよい。いくつかの実施態様では、訓練セットを生成することは、対応する熱エッチング反応における1つまたは複数の反応経路についての化学的特性および関連するエネルギーを少なくとも1つの特徴ベクトルに編成することと、実験的に決定されたエッチング特性をラベルに編成することとを含む。
【0007】
これらおよび他の態様は、図面を参照して以下でさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A図1Aは、非自己制限熱エッチングプロセスの例を示す概略図である。
【0009】
図1B図1Bは、自己制限熱エッチングプロセスの例を示す概略図である。
【0010】
図1C図1Cは、原子層エッチングの修飾動作における異なる修飾メカニズムの概略図である。
【0011】
図1D図1Dは、等方性原子層エッチングの除去動作における異なる除去メカニズムの概略図である。
【0012】
図2図2は、原子層エッチングにおける例示的なリガンド交換反応の概略図である。
【0013】
図3A図3Aは、フッ化アルミニウムと金属塩化物との間の例示的な反応において想定される最小エネルギー異性体の概略図である。
【0014】
図3B図3Bは、フッ化アルミニウムと金属塩化物との間の反応経路で発生する反応中間体および生成物に関する例示的なエネルギー図である。
【0015】
図4図4は、フッ化アルミニウムと様々な金属塩化物との間の熱エッチング反応についての例示的な反応パターンを示す図である。
【0016】
図5図5は、いくつかの実施態様による、熱エッチング反応におけるエッチング情報の予測に使用するための機械学習モデルを生成する例示的な方法のフロー図である。
【0017】
図6A図6Aは、いくつかの実施態様による、表面層とエッチング前駆体との間の反応についての量子力学的シミュレーションにおいて想定されるいくつかのパラメータの概略図である。
【0018】
図6B図6Bは、いくつかの実施態様による、表面層とエッチング前駆体との間の反応について、図6Aで実行された様々な量子力学的シミュレーションから生成された特徴ベクトルの表を示す。
【0019】
図6C図6Cは、いくつかの実施態様による、異なる熱エッチング反応についての特徴ベクトル表と、この表に対応し、それらの異なる熱エッチング反応のエッチング特性を表すラベル表を示す。
【0020】
図7図7は、いくつかの実施態様による、表面層とエッチング前駆体との間の反応におけるエッチング特性を予測するための例示的な方法のフロー図である。
【0021】
図8図8は、いくつかの実施態様による、実験的に測定された値から機械学習モデルを検証する概略図である。
【0022】
図9図9は、いくつかの実施態様による、熱エッチング反応候補を設計するために識別されたエッチング前駆体と識別された表面層を用いた異なる熱エッチング反応についての特徴ベクトル表を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示では、「半導体ウエハ」、「ウエハ」、「基板」、「ウエハ基板」、および「部分的に製作された集積回路」という用語は、互換的に使用される。当業者は、「部分的に製作された集積回路」という用語が、集積回路を製作するための多くの段階のいずれかにあるシリコンウエハを指すことができることを理解するであろう。半導体デバイス業界で使用されるウエハまたは基板は、典型的には、200mm、または300mm、または450mmの直径を有する。以下の詳細な説明は本開示がウエハ上で実施されることを想定しているが、本開示はこれに限定されない。ワークピースは、様々な形状、サイズ、および材料であってよい。半導体ウエハのほかに、本開示を利用することができる他のワークピースとしては、プリント回路基板等のような様々な製品が挙げられる。
【0024】
熱エッチング
熱エッチングは、気相試薬を使用して基板表面と反応し、基板表面から化学的および/または熱的に材料をエッチングする。本明細書で使用する場合、熱エッチングは「化学エッチング」と呼ばれることもあり、その逆の場合もある。熱エッチングは、広範囲の材料に適用可能である。熱エッチング反応においては、ある材料が他の材料の存在下で除去されるよう、選択性が望まれることがある。エッチングにおける選択性は、半導体デバイスの製作および表面洗浄において多くの用途を有する。熱エッチングにおける選択性は、プラズマエッチングまたはスパッタリングなどの他の従来のエッチング技術における選択性よりも高い可能性がある。
【0025】
熱エッチングは、一般に、固体エッチング材料およびガス状エッチング前駆体を伴う。エッチング前駆体は、熱エッチング反応において基板表面からの固体エッチング材料の除去を容易にするために固体エッチング材料と反応する任意の反応ガスである。いくつかの実施態様では、エッチング前駆体が基板表面の表面層を修飾することができ、修飾された表面層をエッチングするために熱エネルギーを与えることができる。このプロセスの例を図1Aに示す。いくつかの実施態様では、エッチング前駆体は、修飾された表面層と反応し、熱エネルギーおよび/または化学エネルギーによってエッチングすることができる。このプロセスの例を図1Bに示す。
【0026】
熱エッチングプロセスは、大まかに、連続的(非自己制限的)または非連続的(自己制限的)に分類することができる。自己制限熱エッチングプロセスは熱原子層エッチング(ALE)プロセスを含むことができ、熱ALEプロセスの一例はリガンド交換反応を伴い得る。
【0027】
図1Aは、非自己制限熱エッチングプロセスの例を示す概略図である。非自己制限熱エッチングプロセスの最初のステップは、エッチングされる表面層の固体材料101に向けてエッチング前駆体102を供給することを含む。非自己制限熱エッチングプロセスの修飾ステップにおいて、エッチング前駆体102は、表面層の固体材料101に吸着し、修飾された表面層103を形成する。続いて、非自己制限熱エッチングプロセスの除去ステップにおいて、熱エネルギーを固体材料101に与え、揮発性反応生成物104の脱着を引き起こして、修飾された表面層103を除去する。
【0028】
図1Bは、自己制限熱エッチングプロセスの例を示す概略図である。図1Bの自己制限熱エッチングプロセスは、複数のALEサイクルを伴い得る熱ALEプロセスとして説明することができる。ALEは、連続的な自己制限反応を使用して材料の薄層を除去する技術である。一般に、「ALEサイクル」は、単層のエッチングのようなエッチングプロセスを1回実施するために使用される動作の最小セットである。1サイクルの結果、基板の表面層の少なくとも一部がエッチングされる。典型的には、ALEサイクルは修飾動作と除去動作を含む。ALEサイクルは、反応物または副産物の1つを一掃するなどの補助的動作を含んでもよい。一例として、ALEサイクルは、以下の動作を含むことがある:(i)チャンバへの修飾前駆体または反応ガスの供給、(ii)チャンバからの修飾前駆体のパージ、(iii)チャンバへのエッチング前駆体または除去ガスの供給、および(iv)チャンバのパージ。
【0029】
自己制限熱エッチングプロセスの最初のステップは、エッチングされる表面層の固体材料111に向けて修飾前駆体112を供給することを含む。一例として、固体材料111は結晶性酸化アルミニウム(Al23)を含むことができ、修飾前駆体112はフッ化水素(HF)を含むことができる。いくつかの実施態様において、修飾前駆体112は、ガス種またはプラズマ種を含むことができ、プラズマ種は、修飾前駆体112にフッ素ラジカルを含んでいてもよい。したがって、プラズマまたは単なる熱エネルギーを超える他のエネルギー源の存在下で、修飾を実施することができる。修飾前駆体112は、固体材料111の表面に吸着し、修飾された表面層113を形成する。修飾された表面層113の材料は、揮発性ではない場合があるか、または少なくとも所与の温度において揮発性ではない場合がある。この自己制限熱エッチングプロセスの最初のステップは、「修飾」ステップと呼ばれることがある。いくつかの実施態様では、修飾ステップの後に、修飾前駆体112をパージするパージステップが続く場合がある。
【0030】
自己制限熱エッチングプロセスの後続のステップは、修飾された表面層113を、エッチング前駆体114を使用してエッチングすることを含む。エッチング前駆体114は、修飾された表面層113と反応し、修飾された表面層113の少なくとも一部を揮発性生成物115に変換する。一例として、エッチング前駆体114はトリメチルアルミニウム(TMA)を含み、修飾された表面層113は三フッ化アルミニウム(AlF3)を含む。TMAは、AlF3からフッ素原子を受け取り、CH3分子を供与して、フッ化アルミニウムジメチル(AlF(CH32)を含む揮発性生成物115を発生させることができる。AlF3が、修飾された表面層113からの脱着のために高温を必要とするのに対して、AlF(CH32は、修飾された表面層113からの脱着を起こすために低温(例えば、室温)を必要とする。言い換えれば、修飾された表面層113と反応するエッチング前駆体114を導入することにより、脱着を起こすプロセス温度を低下させることができる。エッチング前駆体114を使用する修飾された表面層113の除去は、自己制限的に行われる。エッチング前駆体114および適切な温度は、修飾された表面層113と選択的に反応し、かつ、バルク層または残りの固体材料111と反応することなく修飾された表面層113を除去するように選択される。熱エッチングプロセスにおけるこの後続のステップは、「除去」ステップまたは「エッチング」ステップと呼ばれることがある。いくつかの実施態様では、除去ステップの後に、過剰のエッチング前駆体114および揮発性生成物115を除去するパージステップを続けてもよい。修飾ステップおよび除去ステップは、所望の深さまたは量に達するまで、一層ずつ固体材料111を除去するために何度も繰り返すことができる。
【0031】
典型的な熱ALEプロセスは、修飾ステップおよび除去ステップを含むことができる。図1Cは、ALEの修飾動作における異なる修飾メカニズムの概略図を示す。図1Dは、等方性ALEの除去動作における異なる除去メカニズムの概略図を示す。図1C図1D内の各図151~154は、一般的なALEサイクルを示す。151では、基板が提供される。152では、基板の表面が修飾される。153では、次のステップが準備される。154では、修飾された層がエッチングされ、最終的に除去される。1回のサイクルにより、約0.1nm~約50nmの材料、または約0.1nm~約5nmの材料、または約0.2nm~約50nmの材料、または約0.2nm~約5nmの材料を部分的にのみエッチングすることができる。1回のサイクルでエッチングされる材料の量は、変化する場合がある。例えば、側壁を保護するために使用される原子層堆積(ALD)とALEが統合される場合、1回のALEサイクルで除去される材料は、ALEがALDと統合されない場合と比較して少なくなる可能性がある。
【0032】
図1Cは、ALEで表面を修飾する異なるメカニズムを例示する:(a)化学吸着、(b)堆積、および(c)変換。化学吸着では、修飾前駆体が基板の表面と反応し、基板表面と結合する材料を吸着量が制限された状態で形成することができる。堆積では、除去前の基板表面に材料の薄層を堆積することができる。変換では、基板の上部において原子で塩が形成され、本質的に障壁層を形成してさらなる反応を防止する。後に、この塩は、後続の熱的動作または化学的動作によって除去されてもよい。図1Cでは、表面修飾に使用される反応物は、ガス、プラズマ、湿式(液体)化学、または他の供給源によって供給されてもよい。
【0033】
図1Dは、ALEで修飾された表面を等方的に除去する異なるメカニズムを例示する:(a)熱エネルギー、および(b)化学エネルギー。熱エネルギーを用いる場合、ALEの除去ステップは、温度を調整して、修飾された表面層の脱着を引き起こすだけで、さらなる化学反応なしに達成することができる。化学エネルギーを用いる場合、ALEの除去ステップは、修飾された表面層とガス状前駆体を反応させて、修飾された表面層の脱着を引き起こすことによって、温度を変化させることなく達成することができる。化学エネルギーによって温度が変化しない場合であっても、ALE反応は、一種の熱エッチング反応として理解される。熱エネルギーと化学エネルギーを用いる場合、ALEの除去ステップは、修飾された表面層とガス状前駆体を反応させ、所望の温度を適用して、修飾された表面層の脱着を引き起こすことによって達成することができる。
【0034】
熱エッチング反応におけるエッチング特性の実験、調査、計算、研究、および手動決定では、リソースが制限される場合がある。本開示の機械学習モデルは、熱エッチング反応におけるエッチング特性を予測するように構成される。熱エッチング反応は、少なくともエッチング前駆体と、表面層または修飾された表面層とを含む。本開示の機械学習モデルは、連続的または非連続的熱エッチングに適用できることが理解されよう。また、本開示の機械学習モデルは、修飾された表面層の除去に熱エネルギーおよび/または化学エネルギーが使用されるかどうかにかかわらず、ALE反応、具体的にはALE反応における除去ステップに適用され得ることが理解されよう。本開示の機械学習モデルは、時間、コスト、およびリソースを削減するだけでなく、新規の熱エッチング反応および化学的構造の設計を容易にする可能性がある。
【0035】
熱エッチング反応の説明
一般に、熱エッチング反応は、表面層およびエッチング前駆体を含む反応物を、揮発性の生成物に変換することであると見なされる。形成された生成物が揮発性である場合、エッチング前駆体が表面層をエッチングする。エッチングの結果は、生成物の安定性および揮発性によって説明され得る。揮発性生成物の安定性は、反応経路ならびに反応経路中の反応物、中間体、および/または生成物に関連するエネルギーを理解することから決定することができる。
【0036】
一例として、熱エッチング反応は、1つまたは複数のリガンド交換反応を含み得る。リガンド交換反応は反応経路の一種であり、化合物中のリガンドがリガンド置換を介して別のリガンドに置き換えられる。図2は、ALEにおける例示的なリガンド交換反応の概略図を示す。基板は、金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム)などのバルク材料201を含むことができる。この基板の表面をフッ素化して、修飾された表面層を形成することができる。この修飾された表面層は、金属フッ化物202(例えば、フッ化アルミニウム)を含んでいる。気相中の金属前駆体203は、基板に向かって流れ、修飾された表面層と反応することができる。金属前駆体203は、スズ(II)アセチルアセトナート(Sn(acac)2)を含んでいる。金属前駆体203は、エッチング前駆体として機能する。金属前駆体203は、金属フッ化物202からフッ素原子を受け取り、アセチルアセトナート(acac)分子を供与して揮発性生成物を形成することができる。言い換えれば、金属前駆体203は、リガンドを金属フッ化物202と交換する。リガンド交換は、第1の揮発性生成物204としてスズ(II)フルオロアセチルアセトナート(SnF(acac))を形成し、かつ第2の揮発性生成物205として金属(III)アセチルアセトナート(M(acac)3)を形成する。第1の揮発性生成物204および第2の揮発性生成物205が基板の表面から脱着する結果、バルク材料201は自己制限的にエッチングされる。リガンド交換は、フッ素がスズと安定した架橋を形成する能力、およびアセチルアセトナートリガンドが安定した金属アセチルアセトナート化合物を形成する能力によって促進される可能性がある。
【0037】
1つまたは複数の揮発性生成物への反応物の変換は、1つまたは複数の反応経路を伴う。各反応経路は、2つ以上の反応物、1つまたは複数の中間体、および1つまたは複数の生成物を含む。各反応経路は、全体的な熱エッチング反応を引き起こすと想定される反応メカニズムを表すことができる。具体的には、反応経路は、個別の中間化合物およびそれらの関連するエネルギーによって表すことができる。これに加えて、またはその代わりに、反応経路は、個別の中間化合物だけでなく、それら個別の中間化合物同士の間の全ての中間状態を含む反応座標によって表すことができる。このような個別の中間状態は、様々な分子構成、分子間立体構造、分子間配向、結合長などを表す場合がある。個別の中間化合物は、反応経路中の異なるステップで形成される可能性があり、反応経路中の各ステップは、独自の関連するエネルギー変化(ΔE)を有することがある。エネルギーは、基底状態のエネルギーなどの熱力学的性質と見なすことができる。
【0038】
熱エッチング反応におけるエッチング特性の予測は、熱エッチング反応の反応経路、および特定の中間状態または生成物がその反応経路において熱力学的またはエネルギー的に有利であるかどうかに依存する可能性がある。別の言い方をすれば、反応経路ならびにその反応経路における反応物、中間体、および生成物の関連するエネルギーによって、熱エッチング反応中の反応物が揮発性生成物に変換するかどうかが決まる可能性がある。
【0039】
図3Aは、フッ化アルミニウムと金属塩化物との間の例示的な反応において想定される最小エネルギー異性体の概略図を示す。想定される最小エネルギー異性体は、フッ化アルミニウムと金属塩化物との間の例示的な反応のシミュレーションを実行することによって生成することができる。これら2つの分子、すなわちフッ化アルミニウムと金属塩化物との間の反応は、1つまたは複数の反応経路で個別の中間体および/または生成物化合物をもたらす可能性があり、そのような個別の中間体および/または生成物化合物の各々は、固有の結合構成または分子構造を有する。例示的な反応は、第1のシミュレーション310および第2のシミュレーション311でシミュレートすることができる。図3Aの第1のシミュレーション310は、フッ化アルミニウム中のアルミニウム原子と金属塩化物中の金属原子との間のトリプルブリッジ結合構成を可能にする。図3Aの第2のシミュレーション311は、フッ化アルミニウム中のアルミニウム原子と金属塩化物中の金属原子との間のダブルブリッジ結合構成を可能にする。図3Aにおいて、「トリプルブリッジ(三重架橋)」は、フッ素原子および/または塩素原子を含む3つのハロゲン化物原子が、アルミニウム原子と金属原子を接続するブリッジ(架橋)を形成していることを示す。「ダブルブリッジ(二重架橋)」は、2つのハロゲン化物原子を示す。「シングルブリッジ(単架橋)」は、1つのハロゲン化物原子を示す。「二量体なし」は、アルミニウム原子と金属原子を接続するブリッジがないことを示す。図3Aに示すように、トリプルブリッジ構成を可能にする第1のシミュレーション310は、想定される中間体および/または生成物化合物として、トリプルブリッジ異性体312、ダブルブリッジ異性体313、シングルブリッジ異性体314、および二量体なし315を生成する。ダブルブリッジ構成を可能にする第2のシミュレーション311は、想定される中間体および/または生成物化合物として、ダブルブリッジ異性体313、シングルブリッジ異性体314、および二量体なし315を生成する。熱エッチング反応のシミュレーション(以下で説明する量子力学的シミュレーションなど)は、1つまたは複数の反応経路で発生すると想定される中間体および/または生成物化合物を生成することができる。
【0040】
これらの想定される中間体および/または生成物化合物がどの程度安定しているかは、反応経路における中間体および/または生成物化合物に関連するエネルギーを示すエネルギー図から確認することができる。図3Bは、フッ化アルミニウムと金属塩化物との間の反応経路で発生する反応中間体および生成物に関する例示的なエネルギー図を示す。図3Bのエネルギー図は、4つの異なる反応に対応する4つの異なる反応経路を示す:(1)フッ化アルミニウムと四塩化ケイ素との間の反応に対する反応経路、(2)フッ化アルミニウムと四塩化ゲルマニウムとの間の反応に対する反応経路、(3)フッ化アルミニウムと四塩化スズとの間の反応に対する反応経路、および(4)フッ化アルミニウムと四塩化チタンとの間の反応に対する反応経路。このエネルギー図は、エネルギー変化(ΔE)を、各反応経路に沿ったステップを表す反応座標の関数として示す。エネルギー図における最小エネルギーは、異なる反応中間体または生成物に関連付けられている場合がある。したがって、異なる反応中間体および生成物の各々は、関連するエネルギー変化を有する場合がある。
【0041】
図3Bに示すように、反応経路の各々は、2つの反応物320、すなわちフッ化アルミニウム(AlF3)および金属塩化物(MCl4)で開始し、この時点で2つの反応物320の関連するエネルギーはゼロである。2つの反応物320は、熱エッチング反応におけるエッチング前駆体および表面層を代表することができる。反応経路の各々が進行するにつれて、関連するエネルギーがエネルギー図の第1の最小値の時に第1の反応中間体321が形成され、関連するエネルギーがエネルギー図の第2の最小値の時に第2の反応中間体322が形成される。第1の反応中間体321は、フッ化アルミニウムと金属塩化物との間の二量体であって、フッ素のシングルブリッジまたはフッ素と塩素のダブルブリッジを有する二量体を表し得る。第2の反応中間体322は、フッ化アルミニウムと金属塩化物との間の二量体であって、フッ素とフッ素のダブルブリッジを有する二量体を表し得る。第2の反応中間体322は、第1の反応中間体321よりも低いエネルギー最小値を有する。反応経路の各々がさらに進行するにつれて、リガンド交換反応に続いて、塩化アルミニウムフッ化物(AlF2Cl)および金属フッ化物塩化物(MFCl3)を含む反応生成物323が形成される。反応生成物323は、第1の反応中間体321および第2の反応中間体322の各々よりも、関連するエネルギーが大きい。したがって、エネルギー図は、第2の反応中間体322が反応経路上で最も安定した化合物であることを示す。
【0042】
図3Bに示すようなエネルギー図は、フッ化アルミニウムと選択された金属塩化物との間の反応のシミュレーションを実行することによって生成できる。図3Bはそれぞれの熱エッチング反応に対して1つの反応経路のみを示しているが、多くの場合、熱エッチング反応には複数の反応経路がある。実際、熱エッチング反応における複数の反応経路を、シミュレーションによって生成してもよい。これらの別々の反応経路は、固有の関連する反応中間体/生成物、関連するエネルギー変化、および関連する発生確率を有する。シミュレーションから生成される関連する反応中間体/生成物、関連するエネルギー変化、および関連する発生確率は、反応経路における特定の反応中間体/生成物の安定性を決定する際に有用な情報を提供し得る。これは、反応パターンで表すことができる。
【0043】
熱エッチング反応の1つまたは複数の反応経路についての化学的特性は、反応パターンで提示することができる。「反応パターン」は、熱エッチング反応における複数の反応経路の潜在的な寄与を表す。いくつかの実施形態では、反応パターンは、「反応フィンガープリント」または「反応シグネチャ」と呼ばれることもある。熱エッチング反応の反応パターンは、様々な化学的特性次元およびエネルギー次元を含み得る。熱エッチング反応の様々な化学的特性は、反応中間体および/または生成物、ならびに、それらの結合構成および/または分子構造を含む。例えば、結合構成および/または分子構造は、反応経路において想定される結合構成および/または分子構造として、シングルブリッジ二量体、ダブルブリッジ二量体、トリプルブリッジ二量体、および二量体なしの1つまたは複数を含み得る。いくつかの実施形態において、反応パターンは、x軸に化学的特性を示し、y軸にエネルギーを示すことができる。しかし、より複雑な反応パターンでは、追加の次元(温度および/または圧力について追加の次元など)を示し得ることが理解されよう。
【0044】
図4は、フッ化アルミニウムと様々な金属塩化物との間の熱エッチング反応についての例示的な反応パターンを示す。x軸は化学的特性次元430を示し、y軸はエネルギー次元440を示す。第1の反応パターン420は、フッ化アルミニウムと四塩化チタンとの間の熱エッチング反応における化学的特性および関連するエネルギーを提示する。第2の反応パターン421は、フッ化アルミニウムと四塩化ケイ素との間の熱エッチング反応における化学的特性および関連するエネルギーを提示する。第3の反応パターン422は、フッ化アルミニウムと四塩化スズとの間の熱エッチング反応における化学的特性および関連するエネルギーを提示する。第4の反応パターン423は、フッ化アルミニウムと四塩化ゲルマニウムとの間の熱エッチング反応における化学的特性および関連するエネルギーを提示する。量子力学的シミュレーションなどのシミュレーションを実行し、各々の熱エッチング反応に対してそれぞれ反応パターン420~423を生成する。量子力学的シミュレーションは、複数の異なる反応経路、および熱エッチング反応におけるそれらの反応経路の潜在的な寄与を追跡し、複数の反応経路の各々からの反応中間体および/または生成物ならびにそれらの関連するエネルギーを提供し、これを反応パターンで表すことができる。複数の反応経路は、反応中間体および/または生成物ならびにそれらの関連するエネルギーに対する複数のデータセットに寄与する可能性がある。そして、その複数のデータセットを使用して、化学的特性次元430における各化学的特性について、エネルギー次元440に沿った平均、中央線、最小/最大、および平均±1SD(標準偏差)を提供する。いくつかの実施態様では、反応パターン420~423の各々を、1つの熱エッチングの複数の量子力学的シミュレーションから生成することができ、この場合、1つのエッチング反応の複数の量子力学的シミュレーションは、異なるパラメータ(例えば、表面表示、初期条件など)を用いて実行される。
【0045】
異なるエッチング前駆体同士の間で、パターンと傾向に共通点が見られる場合がある。具体的には、図4の様々な反応パターン420~423からパターンと傾向を確認および識別することができる。例えば、第1の反応パターン420における四塩化チタン(TiCl4)および第3の反応パターン422における四塩化スズ(SnCl4)は、フッ素のトリプルブリッジ構成、フッ素のダブルブリッジ構成、およびフッ素と塩素のダブルブリッジ構成の形成に関して、同様の「フィンガープリント」を共有する。第2の反応パターン421における四塩化ケイ素(SiCl4)および第4の反応パターン423における四塩化ゲルマニウム(GeCl4)は、フッ素のダブルブリッジ構成およびフッ素/塩素のダブルブリッジの形成、およびX構成によって示される二量体の欠如に関して、同様の「フィンガープリント」を共有する。フッ素のトリプルブリッジ構成およびフッ素のダブルブリッジ構成は、一般に、第1の反応パターン420および第3の反応パターン422におけるエッチング前駆体に対して最も低い最小エネルギーを有する。フッ素のダブルブリッジ構成は、一般に、反応パターン420~423における各エッチング前駆体に対して最も低い最小エネルギーを有する。第1の反応パターン420および第3の反応パターン422には、フッ素のシングルブリッジ構成が存在しない。さらに、塩素のトリプルブリッジ構成および塩素のダブルブリッジ構成に関連するエネルギーは、一般に、反応パターン420~422で高くなる。図4の反応パターンの一部はエッチングをもたらす可能性があるが、図4の反応パターンの一部はエッチングをもたらさない。実験では、第1の反応パターン420および第3の反応パターン422はエッチングをもたらしたが、第2の反応パターン421および第4の反応パターン423はエッチングをもたらさなかった。人間は、反応パターン420~423における傾向とパターンの一部を観察することができるが、混合物中のエッチング前駆体および表面材料が増えるにつれ、傾向とパターンを認識することはますます複雑になる。言い換えれば、人間の頭脳では、図4に例示するような特定の傾向とパターンを認識できるかもしれないが、異なるタイプの多くの異なる反応の全期間にわたって、データポイントとエッチング情報の特定の組み合わせ間の関連性を人間の頭脳で識別することは、不可能ではないにしても極めて困難である。
【0046】
異なるタイプの多くの異なる反応にわたってデータポイントとエッチング情報の特定の組み合わせ間の関連性を識別することの複雑さが増すことで、反応経路、表面の正しい近似、および開始条件について正確な仮定が得られる。量子力学的シミュレーションは、特定の量子力学的モデル、表面修飾された反応物材料の表面を表示するための特定の仮定、および熱エッチング反応の初期条件に関する特定の仮定を利用することができる。量子力学的モデル、表面表示、および初期条件の一部の特定の組み合わせは、予測能力の観点から、一部のタイプの熱エッチング反応ではうまく作用する可能性があり、他のタイプの熱エッチング反応ではうまく作用しない可能性がある。
【0047】
反応経路および関連するエネルギー変化を計算によって生成するために、様々な量子力学的シミュレーションモデルが存在する。量子力学的シミュレーションモデルは、典型的には、物理学、化学、および材料科学において原子、分子、および凝縮相を含む多体系の電子構造を調査するために使用される。量子力学的シミュレーションモデルは、シュレディンガー(波動)方程式を使用して電子密度を表し、関連するエネルギーまたはポテンシャルを計算するために使用することができる。
【0048】
本開示の文脈において、量子力学的シミュレーションモデルは、エッチング前駆体および表面層の所与の組み合わせに対して存在し得る様々な反応経路を識別することができる。いくつかの実施態様では、表面層は、修飾された表面層である。識別された各反応経路について、量子力学的シミュレーションモデルは、1つまたは複数の反応物、生成物、および中間体のエネルギーを計算する。このようにして、量子力学的シミュレーションモデルは、反応経路における各ステップについてのエネルギー変化(ΔE)を決定することができる。
【0049】
多体系をモデル化し、様々な反応経路を識別するために、多くの異なる量子力学的シミュレーションツールが存在する。これらの量子力学的シミュレーションツールは、シュレディンガー(波動)方程式の項の異なる近似を使用する。このような量子力学的シミュレーションツールは、ソフトウェアパッケージとして存在する場合があり、市販されている場合とされていない場合がある。例として、ABINIT、ACES、AMPAC、ADF、Atomisix ToolKit、BigDFT、CADPAC、CASINO、CASTEP、CFOUR、COLUMBUS、CONQUEST、CP2K、CPMD、CRYSTAL、DACAPO、Dalton、deMon2k、DFTB+、DFT++、DIRAC、DMol3、ELK、Empire、EPW、ErgoSCF、ERKALE、EXCITING、FLEUR、FHI-aims、FPLO、FreeON、Firefly、GAMESS、Gaussian、GPAW、HiLAPW、HORTON、HyperChem、Jaguar、JDFTx、LOWDIN、MADNESS、MISSTEP、MOLCAS、MoIDS、MOLGW、MOLPRO、MONSTERGAUSS、MOPAC、MPQC、NRLMOL、NTChem、NWChem、Octopus、ONETEP、OpenAtom、OpenMX、ORCA、phase0、PLATO、PQS、Priroda-06、PSI、PUPIL、PWmat、PWscf、PyQuante、PySCF、Qbox、Q-Chem、QMCPACK、Quantemol-N、QSite、Quantum ESPRESSO、RMG、RSPt、Scigress、Spartan、Siam Quantum、SIESTA、TB-LMTO、TeraChem、TURBOMOLE、VASP、WIEN2k、およびYambo Codeが挙げられるが、これらに限定されない。一部の量子力学的シミュレーションツールは、密度汎関数理論(DFT)ツール、ハートリーフォックツール、および/または半経験的ツールを含み得る。前述の量子力学的シミュレーションツールの多くは、DFTツール、ハートリーフォックツール、および半経験的ツールのいくつかのカテゴリまたは組み合わせを使用しており、前述の量子力学的シミュレーションツールの一部は、一般に公開されている。例えば、Gaussianは、DFTツール、ハートリーフォックツール、および半経験的ツールを使用する。MOLPROは、ハートリーフォックツールおよびDFTツールを使用するが、半経験的ツールは使用しない。MONSTERGAUSSは、ハートリーフォックツールを使用するが、DFTツールおよび半経験的ツールは使用しない。Atomistix ToolKitは、半経験的ツールおよびDFTツールを使用するが、ハートリーフォックツールは使用しない。量子力学的シミュレーションツールの違い、および量子力学的シミュレーションツールのパラメータ化の違いは、計算および結果(特定の反応経路の識別、および特定の反応経路からの様々な種に関連するエネルギーの識別を含む)に影響を与える可能性がある。
【0050】
熱エッチング反応の量子力学的シミュレーションにおいては、異なる量子力学的シミュレーションモデルの中から選択することに加えて、その量子力学的シミュレーションにおいて表面層の様々な表面表示の中から1つを選択することができる。表面表示は、エッチング前駆体との熱エッチング反応に関与する表面層上の化学種の形状を描写することができる。例として、表面表示は、単一分子(例えば、フッ化アルミニウム(AlF3))または分子のクラスタ(例えば、[AlF3x)の表示であってもよい。分子のクラスタは、大~小の広範囲のサイズであり得る。本明細書で使用する場合、分子の小さなクラスタは、原子が約20個未満、または約10個~約20個であってもよい。例えば、AlF3分子の小さなクラスタは、分子が3個~5個となるだろう。本明細書で使用する場合、分子の大きなクラスタは、原子が約20個を超えてもよく、約30個を超えてもよく、または約50個を超えてもよい。
【0051】
表面表示の違いは、所与の熱エッチング反応の量子力学的シミュレーションの結果に影響を及ぼす可能性がある。いくつかの実施態様では、反応の他の全ての側面が同一であっても、第1の表面表示でシミュレートされた熱エッチング反応は、第2の表面表示でシミュレートされたときとは異なる反応パターンを与える場合がある。
【0052】
異なる量子力学的シミュレーションモデルの中から選択すること、および表面層の異なる表面表示の中から選択することに加えて、熱エッチング反応の量子力学的シミュレーションにおいては、様々な初期条件のうちの1つを選択することができる。初期条件は、熱エッチング反応の量子力学的シミュレーションにおける表面層とエッチング前駆体との初期相互作用を表し得る。量子力学的シミュレーションにおける初期条件の例には、シミュレートされた反応の開始時の表面層とエッチング前駆体との間の分離距離、シミュレートされた反応の開始時の表面層およびエッチング前駆体の配向および方向、シミュレートされた反応の開始時の表面層とエッチング前駆体との間の初期化学架橋または結合の形態、ならびにシミュレートされた反応の開始時のエッチング前駆体および/または表面層の内部エネルギーまたは運動エネルギーが挙げられる。前述の初期条件は、量子力学的シミュレーションごとに指定することができる。一例として、2つの反応物の化学的相互作用がまだ始まっていないと初期条件が仮定しているとき、初期条件は、これら2つの反応物間に化学架橋または結合がないと仮定することができる。いくつかの実施態様において、初期条件は、2つの反応物間に分離距離がないと仮定する場合がある。例えば、初期条件は、エッチング前駆体が反応して化学架橋または結合を形成する前に、表面層の表面上で物理吸着および拡散したと仮定する場合がある。
【0053】
初期条件の違いは、所与の熱エッチング反応の量子力学的シミュレーションの結果に影響を及ぼす可能性がある。表面表示の場合と同様に、化学種のエネルギーまたは反応経路におけるエネルギー変化(ΔE)は、反応の初期条件の関数であり得る。いくつかの実施態様では、反応の他の全ての側面が同一であっても、第1の初期条件でシミュレートされた熱エッチング反応は、第2の初期条件でシミュレートされたときとは異なる反応パターンを与える場合がある。
【0054】
機械学習モデル
本開示の機械学習モデルは、表面層とエッチング前駆体との間のシミュレートされた反応の1つまたは複数の反応経路についての化学的特性および関連するエネルギーを入力として、そのシミュレートされた反応についてのエッチング特性を出力する訓練済み計算モデルである。シミュレートされた反応の1つまたは複数の反応経路についての化学的特性および関連するエネルギーは、上述のような量子力学的シミュレーションモデルを使用して識別することができる。いくつかの実施態様では、化学的特性および関連するエネルギーは、1つの反応パターンまたは図4に示すように複数のパターンで表現され得る。本開示は量子力学的シミュレーションモデルによって生成される関連するエネルギーに言及しているが、量子力学的モデルによって他の性質(関連する種の安定性および/または関連する種の寿命など)が生成され得ることが理解されよう。このような性質は、関連するエネルギーに加えて、またはその代わりに使用することができる。
【0055】
化学的特性および関連するエネルギーは、反応パターンで表現されているかどうかにかかわらず、シミュレートされた反応におけるデータポイントを提供することができる。いくつかの実施態様では、エッチング特性(実験的に決定されたものでもよいし、実験的に決定されたものでなくてもよい)が、シミュレートされた反応に伴う追加のデータポイントを提供し得る。異なるタイプの反応が増えると、より多くのデータポイントが提供される可能性がある。本開示の機械学習モデルは、新規の反応のエッチング特性を正確に予測するために、異なるタイプの多くの異なる反応にわたるデータポイント間のパターンを認識および発見するように訓練することができる。
【0056】
図5は、いくつかの実施態様による、熱エッチング反応におけるエッチング情報の予測に使用するための機械学習モデルを生成する例示的な方法のフロー図である。プロセス500の動作は、異なる順序で、かつ/または異なる動作、より少数の動作、もしくは追加の動作で実施してもよい。機械学習モデルは、教師あり、教師なし、または部分的に教師ありであってもよい。
【0057】
プロセス500のブロック510において、複数の熱エッチング反応の各々について少なくとも1つの量子力学的シミュレーションが実施される。各量子力学的シミュレーションは、表面層とエッチング前駆体との間の対応する熱エッチング反応における1つまたは複数の反応経路についての化学的特性および関連するエネルギーを生成する。いくつかの実施態様では、表面層は、修飾された表面層である。生成された化学的特性および関連するエネルギーは、機械学習モデルを訓練するための訓練セットにおける訓練セットメンバーの一部として機能する。
【0058】
エッチングプロセスの特性は、典型的には反応経路の特性であり、反応の化学的特徴および/または反応に関与する個々の化学種を含む。反応経路におけるこれらの特性は、反応経路で発生する化学種の化学的特性および関連するエネルギー(安定性、寿命など)によって説明される。化学的特性は、1つまたは複数の反応経路の各々で発生する1つまたは複数の中間体および/または生成物の結合構成または分子構造を含み得る。化学的特性は、表面層とエッチング前駆体との間の相互作用のタイプを反映する場合がある。相互作用のタイプは、2つの反応物(すなわち、表面層およびエッチング前駆体)間の化学架橋または結合であり得る。いくつかの実施態様では、結合構成または分子構造は、シングルブリッジ(単架橋)二量体、ダブルブリッジ(二重架橋)二量体、トリプルブリッジ(三重架橋)二量体、および二量体なしの1つまたは複数を含む。図3Bのフッ化アルミニウム(AlF3)と金属塩化物(MCl4)との間の例示的な熱エッチング反応に戻ると、反応中間体は、フッ素のシングルブリッジを有するAlF3-MCl4二量体、フッ素と塩素のダブルブリッジを有するAlF3-MCl4二量体、またはフッ素とフッ素のダブルブリッジを有するAlF3-MCl4二量体を含むことができる。反応生成物は、AlF2ClおよびMFCl3の形態の二量体を持たないものを含む可能性がある。
【0059】
量子力学的シミュレーションは、存在する可能性のある様々な反応経路を識別する。識別されたそれぞれの経路について、量子力学的シミュレーションは、反応物、1つまたは複数の中間体、および1つまたは複数の生成物の化学的特性(例えば、結合構成または分子構造)を識別する。さらに、量子力学的シミュレーションは、反応物、1つまたは複数の中間体、および1つまたは複数の生成物に関連するエネルギー、ならびに/または、反応物から1つまたは複数の中間体、および1つまたは複数の生成物に達するためのエネルギー変化(ΔE)を計算する。
【0060】
量子力学的シミュレーション用のこのようなデータは、特徴ベクトルで表すことができる。各特徴ベクトルは、対応する熱エッチング反応における1つまたは複数の反応経路で発生する中間体および/または生成物についての化学的特性および関連するエネルギーを含む。いくつかの実施態様において、特徴ベクトルは、図4に示すような反応パターンで表される情報を含むが、より複雑な特徴ベクトルは、追加の情報を含み得ることが理解されよう。例えば、そのような追加の情報は、熱エッチング反応の温度および圧力の1つまたは複数を含んでもよい。いくつかの実施態様では、特徴ベクトルは、熱エッチング反応の温度および圧力の一方または両方をさらに含む。いくつかの実施態様では、プロセス500は、対応する熱エッチング反応における1つまたは複数の反応経路で発生する中間体および/または生成物についての化学的特性および関連するエネルギーを少なくとも1つの特徴ベクトルに編成することを含む。
【0061】
1つの熱エッチング反応に対して、複数の特徴ベクトルが存在することがある。具体的には、1つの熱エッチング反応の異なる量子力学的シミュレーションから、別個の特徴ベクトルが得られることがある。量子力学的モデルの違い、表面表示の違い、および/または初期条件の違いから、1つの熱エッチング反応について異なる量子力学的シミュレーションが生じる可能性がある。したがって、少なくとも1つの量子力学的シミュレーションの各々は、表面層の表面表示および1つまたは複数の初期条件に応じて構成された量子力学的モデルを含む。それゆえ、量子力学的シミュレーションの各特徴ベクトルは、量子力学的モデル、表面表示、および初期条件について独自の固有の組み合わせを有する可能性がある。
【0062】
図6Aは、いくつかの実施態様による、表面層とエッチング前駆体との間の反応についての量子力学的シミュレーションにおいて想定されるいくつかのパラメータの概略図を示す。熱エッチング反応の量子力学的シミュレーション610は、図6Aに示す3つのパラメータに限定されず、異なるパラメータ、より少数のパラメータ、または追加のパラメータを含んでもよいことが理解されよう。追加のパラメータは、例えば、温度または運動エネルギーの変動および圧力の変動を含むことができる。
【0063】
図6Aにおいて、量子力学的シミュレーション610の第1のパラメータ611は、量子力学的モデルを含む。第1のパラメータ611は、DFTモデル、ハートリーフォックモデル、半経験的モデル、またはそれらの組み合わせから選択される量子力学的モデルを含み得る。量子力学的モデルは前述のモデルに限定されず、他の適切な量子力学的モデルが利用されてもよいことが理解されよう。異なるタイプの量子力学的モデルを使用して熱エッチング反応をシミュレートすることによって、所与の熱エッチング反応に対して別個の特徴ベクトルを提供してもよい。例えば、DFTモデルを使用して1つの特徴ベクトルを生成し、ハートリーフォックモデルを使用して別の特徴ベクトルを生成してもよい。それぞれの量子力学的シミュレーション610ごとに、熱エッチング反応の化学的特性および関連するエネルギーの独自のセットが提供される。
【0064】
図6Aにおいて、量子力学的シミュレーション610の第2のパラメータ612は、表面表示を含む。第2のパラメータ612は、分子、分子の小さなクラスタ、および分子の大きなクラスタから選択される表面層の表面表示を含み得る。表面表示は前述の表示に限定されず、他の適切な表面表示が利用されてもよいことが理解されよう。異なる表面表示を使用して熱エッチング反応をシミュレートすることによって、所与の熱エッチング反応に対して別個の特徴ベクトルを提供してもよい。例えば、表面層を表す単一分子を使用して1つの特徴ベクトルを生成し、表面層を表す分子の小さなクラスタを使用して別の特徴ベクトルを生成してもよい。量子力学的シミュレーション610では、このようなバリエーションが提供される。
【0065】
図6Aにおいて、量子力学的シミュレーション610の第3のパラメータ613は、初期条件を含む。第3のパラメータ613は、量子力学的シミュレーションの開始時の表面層とエッチング前駆体との間の分離距離、量子力学的シミュレーションの開始時の表面層およびエッチング前駆体の配向および/もしくは方向、量子力学的シミュレーションの開始時の表面層とエッチング前駆体との間の初期化学架橋の形態、量子力学的シミュレーションの開始時のエッチング前駆体もしくは表面層の内部エネルギーもしくは運動エネルギー、またはそれらの組み合わせを含み得る。初期条件は前述の初期条件に限定されず、他の適切な初期条件が利用されてもよいことが理解されよう。異なる初期条件を使用して熱エッチング反応をシミュレートすることによって、所与の熱エッチング反応に対して別個の特徴ベクトルを提供してもよい。例えば、シングルブリッジ二量体の初期化学架橋で1つの特徴ベクトルを生成し、ダブルブリッジ二量体の初期化学架橋で別の特徴ベクトルを生成してもよい。別の例では、異なる特徴ベクトルが、エッチング前駆体の配向の違いにより、異なる特徴ベクトルを生成してもよい。特定の表面表示を有する量子力学的モデルに対して、別個のシミュレーションを実行するため、複数の異なる初期条件が提供される。言い換えれば、シミュレーションは、(おそらく同じシミュレーションツールまたはモデルを使用して)複数回実行されるため、各回の量子力学的シミュレーション610は異なる初期条件で実行される。それぞれの初期条件ごとに、独自の特徴ベクトルが提供される。
【0066】
熱エッチング反応の量子力学的シミュレーション610は、図6Aに示されていない追加のパラメータを含むことができる。いくつかの実施態様では、異なる温度または運動エネルギーを使用して熱エッチング反応をシミュレートすることによって、所与の熱エッチング反応に対して別個の特徴ベクトルを提供してもよい。いくつかの実施態様では、異なる圧力を使用して熱エッチング反応をシミュレートすることによって、所与の熱エッチング反応に対して別個の特徴ベクトルを提供してもよい。量子力学的シミュレーション610では、このようなバリエーションが提供される。
【0067】
図6Bは、いくつかの実施態様による、表面層とエッチング前駆体との間の反応について、図6Aで実行された様々な量子力学的シミュレーションから生成された特徴ベクトルの表を示す。量子力学的シミュレーションのパラメータが異なると、生成される特徴ベクトルも異なる。ここで、特徴ベクトルは、少なくとも反応中間体および/または生成物、ならびにそれらの関連するエネルギー変化を含む。量子力学的シミュレーションのための異なるパラメータを、括弧内に3桁(abc)の組み合わせとして示す。例えば、以下のような組み合わせなどが挙げられる。(111)は、DFTモデルと、表面層を表す単一分子と、第1の初期条件に対応する。(211)は、ハートリーフォックモデルと、表面層を表す単一分子と、第1の初期条件に対応する。(121)は、DFTモデルと、表面層を表す分子の小さなクラスタと、第1の初期条件に対応する。
【0068】
表620の各行は、反応中間体または生成物630に対応する。また、表620の各列は、所与の量子力学的シミュレーション(abc)についての反応中間体または生成物630に関連するエネルギー変化(ΔE)640に対応する。表620の最後の行は、それぞれの量子力学的シミュレーション(abc)に関連する特徴ベクトル650に対応する。特徴ベクトル650は、どの反応中間体または生成物630が安定しているかを反映するために、反応中間体または生成物630をΔE640によってランク付けすることができる。いくつかの実施態様では、特定の特徴ベクトル650における反応中間体または生成物630の各々に係数を割り当ててもよく、それにより、一部の反応中間体または生成物630は、他のものよりも重み付けされる。
【0069】
図5に戻ると、プロセス500のブロック520において、実験的に決定されたエッチング特性が、複数の熱エッチング反応の各々について決定される。表面層とエッチング前駆体との間の熱エッチング反応について実験的に決定されたエッチング特性は、教師あり機械学習モデルにおける熱エッチング反応に対する所望の出力を表し得る。いくつかの実施態様では、エッチング特性は、エッチング前駆体が表面層をエッチングするかどうかを含む。これは、バイナリ出力によって示すことができる。いくつかの実施態様では、エッチング特性は、エッチング前駆体による表面層のエッチング速度を含む。これは、エッチング速度を反映する数値によって示すことができ、高いエッチング速度値は、エッチング前駆体がエッチングすることを示し、低いエッチング速度値またはゼロ値は、エッチング前駆体がエッチングしないことを示す。いくつかの実施態様では、エッチング特性は、表面層をエッチングする際のエッチング前駆体の有効性に関するいくつかの他の数値特性を含む。
【0070】
いくつかの他の実施態様では、熱エッチング反応のエッチング特性が実験的に決定されないことが理解されよう。例えば、エッチング特性は、信頼できるシミュレータを使用したシミュレーションを介して決定することができる。いくつかの実施態様では、実験的に決定されたエッチング特性は、複数の熱エッチング反応の一部に対して決定されるが、全ての熱エッチング反応に対して決定されるわけではない。機械学習モデルは、実験的に決定された値を使って、または使わずに、訓練することが可能である。したがって、本開示の機械学習モデルは、必ずしも教師あり機械学習モデルに限定されない。
【0071】
実験的に決定されたエッチング特性は、機械学習モデルを訓練するための訓練セットにおける訓練セットメンバーの一部として機能し得る。いくつかの実施態様では、プロセス500は、実験的に決定されたエッチング特性をラベルに編成することをさらに含む。ラベルは、エッチングが発生するかどうかの指標として、またはエッチング速度として、または熱エッチングの有効性に関するいくつかの他の数値特性として提供され得る。
【0072】
訓練セットにおけるラベルは、複数の熱エッチング反応について実験的に決定されたエッチング特性を示す従属変数を含む。訓練セットにおける特徴ベクトルは独立変数を含んでおり、各特徴ベクトルが、1つの熱エッチング反応を特徴付ける。いくつかの実施態様では、各特徴ベクトルが、1つの熱エッチング反応および1つの量子力学的シミュレーションを特徴付ける。いくつかの他の実施態様では、1つの特徴ベクトルが、1つの熱エッチング反応およびその1つの熱エッチング反応の複数の量子力学的シミュレーションを特徴付ける。機械学習モデルを訓練するための訓練セットは、複数の熱エッチング反応についての特徴ベクトルおよび関連するラベルから生成することができる。
【0073】
プロセス500のブロック530において、複数の訓練セットメンバーを含む訓練セットが生成される。各訓練セットメンバーは、(i)対応する熱エッチング反応に対する1つまたは複数の反応経路で発生する中間体および/または生成物についての化学的特性および関連するエネルギーを含む少なくとも1つの特徴ベクトル、ならびに(ii)実験的に決定されたエッチング特性を表すラベルを含む。
【0074】
それぞれの熱エッチング反応に対して、1つまたは複数の訓練セットメンバーを提供することができる。すなわち、1つの熱エッチング反応に対して、特徴ベクトルおよび関連するラベルの組み合わせを1つまたは複数提供することができる。例えば、フッ化アルミニウムと四塩化ケイ素の反応に対して、1つの特徴ベクトルおよびその関連するラベルを提供することができる。フッ化アルミニウムと四塩化ゲルマニウムの反応に対して、別の特徴ベクトルおよびその関連するラベルを提供することができる。フッ化アルミニウムと四塩化スズの反応に対して、さらに別の特徴ベクトルおよびその関連するラベルを提供することができる。そして、フッ化アルミニウムと四塩化チタンの反応に対して、またさらに別の特徴ベクトルおよびその関連するラベルを提供することができる。フッ化アルミニウムは表面層を表し、各金属塩化物は熱エッチング反応におけるエッチング前駆体を表す。熱ALE反応サイクルの場面では、フッ化アルミニウム中のこれらのフッ化物の各々は、第1のALE相(例えば、酸化アルミニウムから三フッ化アルミニウムへの変換)によって以前に生成されていた可能性がある。したがって、熱ALE反応において、フッ化アルミニウムは、修飾された表面層である。特徴ベクトルおよび関連するラベルの各々は、訓練セットにおける訓練セットメンバーとして提供され得る。
【0075】
図6Cは、いくつかの実施態様による、異なる熱エッチング反応についての特徴ベクトル表と、この表に対応し、それらの異なる熱エッチング反応のエッチング特性を表すラベル表を示す。特徴ベクトル表660および対応するラベル表670は、機械学習モデルを訓練するための訓練セットにおける訓練セットメンバーとして提供され得る。
【0076】
特徴ベクトル表660は、異なる熱エッチング反応にわたって実行される複数の量子力学的シミュレーション610(図6A図6B)から生成することができる。特徴ベクトル表660の各行は、熱エッチング反応におけるエッチング前駆体Mxy661を含み、特徴ベクトル表660の各列は、対応する熱エッチング反応における表面層Sxy662を含む。特徴ベクトル表660の各セルは、エッチング前駆体Mxy661と表面層Sxy662との間の熱エッチング反応の特徴ベクトル663を含み、各セルは、異なる熱エッチング反応についての異なる特徴ベクトルを表す。特徴ベクトル663は、図6A図6Bで実行される量子力学的シミュレーション610の少なくとも1つから生成することができる。別の言い方をすれば、ある1つの特徴ベクトル663は、1つの熱エッチング反応のために、図6B複数の特徴ベクトル650のうちの1つ、または図6Bの複数の特徴ベクトル650の組み合わせを含み得る。特徴ベクトル663は、1つの熱エッチング反応における1つまたは複数の反応経路で発生する反応中間体および/または生成物の化学的特性および関連するエネルギーを含む。
【0077】
対応するラベル表670は、実験的に、または場合によっては信頼できるシミュレータを介して生成することができる。対応するラベル表670の各行は、熱エッチング反応におけるエッチング前駆体Mxy671を含み、対応するラベル表670の各列は、対応する熱エッチング反応における表面層Sxy672を含む。対応するラベル表670の各セルは、エッチング前駆体Mxy671と表面層Sxy672との間の熱エッチング反応のラベル673を含み、各セルは、異なる熱エッチング反応についての異なるラベルを表す。ラベル673は、実験的に決定されたエッチング特性または予測されたエッチング特性を示し得る。ラベル673は、エッチングが発生するかどうかを示すバイナリ値を含むか、エッチング速度を含むか、またはエッチングの有効性に関するいくつかの他の数値特性を含むことができる。図6Cに示すように、ラベル673のゼロ値は、エッチング前駆体Mxy671と表面層Sxy672との間のエッチングがないことを示し、ゼロよりも大きい値は、エッチング前駆体Mxy671と表面層Sxy672との間のエッチングを示す。エッチングを示す場合、特徴ベクトル表660の特徴ベクトル663は、(i’j’k’)で示され、エッチングを示さない場合、特徴ベクトル表660の特徴ベクトル663は、(ijk)で示される。複数の熱エッチング反応についての特徴ベクトル663および対応するラベル673は、訓練セットにおける訓練セットメンバーとして機能し得る。
【0078】
いくつかの実施態様では、訓練セットのメンバーは、機械学習モデルが正確な予測を行うことが予想される一連の熱エッチング反応(すなわち、エッチング反応空間)にわたって、訓練セットの中から選択される場合がある。エッチング特性を予測する際の機械学習モデルの精度および範囲は、正確なモデルの作成が予想される適切な訓練セットメンバーの選択に依存し得る。一例として、ハロゲン化エッチング前駆体を用いた訓練セットメンバーは、トリメチルアルミニウム(TMA)を伴うエッチング前駆体よりも四塩化ケイ素(SiCl4)のエッチング前駆体を伴う熱エッチング反応において、エッチング特性をより正確に予測することができる。いくつかの実施態様では、特定の量子力学的モデル、表面表示、および初期条件は、熱エッチング反応の一部のカテゴリで他のカテゴリよりも正確な予測を提供する場合がある。訓練セットにおける訓練セットメンバーは、正確な予測のために最適化することができる。予測が不十分な訓練セットメンバーは、排除される。そのような最適化のための訓練セットメンバーを選択するために、どの要素が他の要素よりも重要かを確認する統計的原理に基づく実験計画法(DOE)などの方法論を利用してもよい。このようなDOEは、例えば、Al2O3をAlF3に変換するための表面修飾ステップを必ずしも含まない。代わりに、Al2O3とAlF3のサンプルを別個の実験でエッチング前駆体に曝露することができる。
【0079】
図5に戻ると、プロセス500のブロック540において、訓練セットを使用して訓練された機械学習モデルが生成される。この機械学習モデルは、熱エッチング反応におけるエッチング情報を予測するように構成される。独立変数を含む特徴ベクトルおよび従属変数を含むラベルからのデータポイントを使用して、パターンを認識し、熱エッチング反応におけるエッチング情報を予測するように機械学習モデルを訓練することができる。
【0080】
訓練セットを使用して機械学習モデルを訓練するために、適切な訓練アルゴリズムを使用することができる。訓練アルゴリズムを使用して、独立変数(入力)と従属変数(出力)との間のデータポイントにおけるパターンを認識することで、新規の熱エッチング反応(新規の入力)が提示されたときにエッチング情報(新規の出力)を正確に予測することができる。訓練アルゴリズムは、いくつかの機械学習アルゴリズムの1つに基づくものでもよい。機械学習アルゴリズムは、3つの大きなカテゴリ:教師あり学習、教師なし学習、および強化学習に分類することができる。本開示は教師あり学習に焦点を当てているが、機械学習モデルは、教師なし学習、強化学習、または他の適切な学習形態を使用して訓練することができることが理解されよう。
【0081】
教師あり学習は、プロパティ(ラベル)が特定のデータセット(訓練セット)で利用可能な場合に有用である。教師ありの機械学習アルゴリズムの例として、線形回帰、ロジスティック回帰、決定木、学習ベクトル量子化、サポートベクターマシン(SVM)、単純ベイズ、k最近傍法、ランダムフォレスト、および勾配ブースティングが挙げられるが、これらに限定されない。半教師あり学習は、教師あり学習の一種であり、特定のデータセットに対して少量のラベル付きデータおよび大量のラベルなしデータを有する。教師なし学習は、所与のラベルなしデータセット(アイテムが事前に割り当てられていない)における暗黙的な関係が発見されていない場合に有用である。教師なしの機械学習アルゴリズムの例として、k-means法が挙げられる。強化学習は、教師あり学習と教師なし学習との中間にあり、各予測ステップまたはアクションに対して若干のフィードバックを利用できるが、正確なラベルは存在しない。教師あり学習のように正確な入力/出力のペアが提示されるのではなく、所与の入力が、エージェントが最大化しようとしている報酬関数にマップされる。強化ベースの機械学習アルゴリズムの例には、マルコフ決定過程が挙げられる。上述のカテゴリの1つまたは複数に分類される可能性のある他のタイプの学習として、例えば、深層学習および人工ニューラルネットワーク(例えば、畳み込みニューラルネットワーク)が挙げられる。
【0082】
機械学習モデルを訓練するために、様々な訓練ツールまたはフレームワークが存在し得る。独自の訓練ツールの例として、Amazon Machine Learning、Microsoft Azure Machine Learning Studio、DistBelief、Microsoft Cognitive Toolkitが挙げられるが、これらに限定されない。オープンソースの訓練ツールの例として、Apache Singa、Caffe、H2O、PyTorch、MLPACK、Google TensorFlow、Torch、およびAccord.Netが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
訓練された機械学習モデルを使用して、エッチング前駆体と表面層との間の熱エッチング反応についてのエッチング情報を予測することができる。訓練された機械学習モデルは、熱エッチング反応における1つまたは複数の反応経路で発生する中間体および/または生成物についての化学的特性および関連するエネルギーを入力として、熱エッチング反応のエッチング特性を出力することができる。いくつかの実施態様では、このような化学的特性および関連するエネルギーを、入力として機能する特徴ベクトルに編成してもよい。いくつかの実施態様では、1つの熱エッチング反応について図4に示すような反応パターンが、入力として機能する場合がある。
【0084】
訓練された機械学習モデルは、いくつかの形態のいずれかを取ることができる。いくつかの実施態様では、訓練された機械学習モデルは、分類および回帰ツリーまたはランダムフォレストツリーである。いくつかの実施態様では、訓練された機械学習モデルは、畳み込みニューラルネットワークなどの人工ニューラルネットワークである。いくつかの実施態様では、訓練された機械学習モデルは、線形回帰、ロジスティック回帰、またはサポートベクターマシンなどの線形分類器である。
【0085】
所与のエッチング前駆体が表面層をエッチングするかどうか、所与のエッチング前駆体が表面層をエッチングする速度、所与のエッチング前駆体が表面層をエッチングする際の選択性、またはエッチング前駆体が表面層をエッチングする際の有効性が不明または未知の状況において、本開示の機械学習モデルは、そのようなエッチング情報を正確に予測するように訓練することができる。エッチング情報は、例えば、エッチング前駆体が表面層をエッチングするかどうかを含むか、エッチング前駆体による表面層のエッチング速度を含むか、またはエッチング前駆体が表面層をエッチングする際の有効性を示す他の何らかの数値を含むことができる。これは、基板の表面上に様々な材料が存在する場合のエッチング前駆体の選択性を決定する上で有用であり得る。
【0086】
いくつかの実施態様では、本開示の機械学習モデルは、熱エッチング反応候補(熱ALE反応候補を含む)を識別する際に有用であり得る。例えば、エッチング前駆体に同時に曝露される複数の異なる材料を基板が含んでいる場合、機械学習モデルは、所与の用途において所望の選択性を提供するエッチング前駆体および/または表面層の組み合わせを識別することができる。いくつかの実施態様では、本開示の機械学習モデルは、エッチングマスク候補の識別に有用であり得る。例えば、機械学習モデルは、基板上のどの材料がエッチングに耐え、所与のエッチング前駆体に対するエッチングマスクとして機能し得るかを識別することができる。いくつかの実施態様では、本開示の機械学習モデルは、所与のエッチング前駆体に対するエッチングに耐えるチャンバ材料の識別に有用であり得る。そうすれば、チャンバ壁および他の構成要素が、エッチング前駆体によって不意にエッチングされることがない。いくつかの実施態様では、 機械学習モデルは、(i)熱エッチング反応候補、(ii)エッチングマスク材料候補、および(iii)チャンバ材料候補の1つまたは複数を識別することによって、新規のエッチングプロセスまたはリアクタ設計を設計する際に有用であり得る。
【0087】
図7は、いくつかの実施態様による、表面層とエッチング前駆体との間の反応におけるエッチング特性を予測するための例示的な方法のフロー図である。プロセス700の動作は、異なる順序で、かつ/または異なる動作、より少数の動作、もしくは追加の動作で実施することができる。
【0088】
プロセス700のブロック710において、表面層とエッチング前駆体との間のシミュレートされた反応における1つまたは複数の反応経路についての化学的特性および関連するエネルギーが、量子力学的モデルを使用して識別される。いくつかの実施態様では、表面層は、熱ALE反応の第1段階後の修飾された表面層である。いくつかの実施態様では、化学的特性は、1つまたは複数の反応経路で発生する1つまたは複数の反応中間体および/または生成物の結合構成または分子構造を含む。いくつかの実施態様では、結合構成または分子構造は、シングルブリッジ二量体、ダブルブリッジ二量体、トリプルブリッジ二量体、および二量体なしの1つまたは複数を含む。このような結合構成または分子構造を、図3Aに示す。反応経路で発生する想定される反応中間体および/または生成物、ならびにそれらの関連するエネルギーをエネルギー図で示すことができる。4つの異なる熱エッチング反応について4つの異なる反応経路を示すエネルギー図の例を、図3Bに示す。いくつかの実施態様では、化学的特性および関連するエネルギーを反応パターンで表現することができる。4つの異なる反応パターンの例を、図4に示す。
【0089】
いくつかの実施態様では、プロセス700は、シミュレートされた反応の1つまたは複数の反応経路についての化学的特性および関連するエネルギーを特徴ベクトルに編成することをさらに含む。前述のように、特徴ベクトルは、シミュレートされた反応の1つまたは複数の反応経路についての化学的特性および関連するエネルギーを少なくとも含む。
【0090】
シミュレートされた反応における1つまたは複数の反応経路についての化学的特性および関連するエネルギーは、表面層の選択された表面表示および1つまたは複数の選択された初期条件で構成された量子力学的モデルを使用して決定される。しかし、量子力学的モデルは、異なるパラメータ、より少数のパラメータ、または追加のパラメータで構成され得ることが理解されよう。いくつかの実施態様では、1つまたは複数の選択された初期条件は、シミュレートされた反応の開始時の表面層とエッチング前駆体との間の分離距離、シミュレートされた反応の開始時の表面層およびエッチング前駆体の配向および/もしくは方向、シミュレートされた反応の開始時の表面層とエッチング前駆体との間の初期化学架橋の形態、シミュレートされた反応の開始時のエッチング前駆体もしくは表面層の内部エネルギーもしくは運動エネルギー、またはそれらの組み合わせを含む。しかし、初期条件は、前述の初期条件に限定されず、他の初期条件が量子力学的モデルに対して構成または調整されてもよいことが理解されよう。いくつかの実施態様では、表面層の選択された表面表示は、分子、分子の小さなクラスタ、および分子の大きなクラスタからなる群から選択される。いくつかの実施態様では、量子力学的モデルは、密度汎関数理論(DFT)モデル、ハートリーフォックモデル、半経験的モデル、またはそれらの組み合わせを含む。量子力学的モデル、選択された表面表示、および1つまたは複数の選択された初期条件が独自に組み合わせられた各量子力学的シミュレーションに対して、別個の特徴ベクトルを生成することができる。いくつかの実施態様では、量子力学的モデル、表面表示、および初期条件を、予測の精度を最適化するように選択することができる。
【0091】
プロセス700のブロック720において、シミュレートされた反応における化学的特性および関連するエネルギーが、機械学習モデルへの入力として提供される。シミュレートされた反応の他の特性が、機械学習モデルへの入力として提供されてもよい。いくつかの実施態様では、入力は、シミュレートされた反応の温度および圧力の一方または両方をさらに含んでもよい。
【0092】
いくつかの実施態様では、図5に記載のプロセス500に従って機械学習モデルを訓練することができる。いくつかの実施態様では、機械学習モデルは、複数の訓練セットメンバーを含む訓練セットを使用して訓練されたものであり、各訓練セットメンバーは、(i)少なくとも1つの量子力学的シミュレーションによってシミュレートされた熱エッチング反応に対する1つまたは複数の反応経路で発生する中間体および/または生成物についての化学的特性および関連するエネルギーを含む特徴ベクトル、ならびに(ii)その熱エッチング反応の特性を表すラベルを含む。各訓練セットメンバーは、所与の熱エッチング反応についての少なくとも1つの特徴ベクトルと、関連するラベルとを含む。いくつかの実施態様では、特定の訓練セットメンバーが、所与の熱エッチング反応に関する複数の量子力学的シミュレーションにわたる複数の特徴ベクトルを含んでもよい。特徴ベクトルの各々は、指定のエッチング前駆体、指定の表面層、指定の量子力学的モデル、指定の表面層の指定の表面表示、および1つまたは複数の指定の初期条件の固有の組み合わせを含んでもよい。機械学習モデルは、シミュレートされた反応のエッチング特性の正確な予測を可能とするため、訓練セットにおける訓練セットメンバー全体のパターンを認識するように訓練することができる。機械学習モデルは、上述の訓練アルゴリズムのいずれかを含む任意の適切な訓練アルゴリズムを使用して訓練することができる。
【0093】
プロセス700のブロック730において、表面層とエッチング前駆体との間のシミュレートされた反応についてのエッチング特性が、機械学習モデルを使用して決定される。いくつかの実施態様では、シミュレートされた反応についてのエッチング特性は、表面層のエッチング速度を含む。いくつかの実施態様では、シミュレートされた反応についてのエッチング特性は、表面層がエッチングされているかどうかの指標を含む。
【0094】
いくつかの実施態様では、実験的に測定された値に対して機械学習モデルを検証することができる。いくつかの実施態様では、プロセス700は、エッチング特性の実験的に測定された値に基づいて、シミュレートされた反応について決定されたエッチング特性を検証することをさらに含む。これは、プロセス700のブロック730で決定されたエッチング特性を、エッチング特性の実験的に測定された値と比較することによって行うことができる。機械学習モデルは、その予測精度を向上させるために、このようなフィードバックを引き続き学習し、フィードバックにより訓練することができる。
【0095】
図8は、いくつかの実施態様による、実験的に測定された値から機械学習モデルを検証する概略図を示す。機械学習モデルは、特徴ベクトル表850および対応するラベル表860を使用して、新規のエッチング前駆体と新規の表面層との間の新規の熱エッチング反応についてのエッチング特性863を予測することができる。特徴ベクトル表850および対応するラベル表860は、エッチング反応の特定の期間を包含する訓練セットを含み得る。新規の特徴ベクトル853を、新規の熱エッチング反応の少なくとも1つの量子力学的シミュレーションから生成し、特徴ベクトル表850に提供することができる。機械学習モデルは、予想ラベル(対応するラベル表860のエッチング特性863によって示されるラベル)を予測する。このエッチング特性863を、実験的に測定された値または実験的に決定されたラベル873と比較し、予測の精度を検証する。特徴ベクトル表850の生成に使用される特徴ベクトルセット880は、エッチング特性863と実験的に決定されたラベル873との比較後に提供されるフィードバックに基づいて、予測成功を最大化するように調整される。特徴ベクトルセット880は、各熱エッチング反応について異なるパラメータにわたる複数の量子力学的シミュレーションから生成することができる。訓練セットを生成するために特徴ベクトルセット880で使用されるパラメータおよび量子力学的シミュレーションは、実験的に決定されたラベル873からのフィードバックに従って調整される。
【0096】
機械学習モデルによって予測された結果はエッチングの新規の測定値によって確認または拒否され、機械学習モデルは、その新規の測定値からのフィードバックを使用して継続的な訓練または改良を受けることができる。機械学習モデルへのフィードバックは、エッチングの新規の測定値という形態だけでなく、熱エッチング反応において識別された反応中間体および/または生成物という形態で提供されてもよい。例えば、そのようなフィードバックは、反応器もしくはチャンバに備えられた質量分析計または他の機器から受け取ることができる。フィードバックを使用して、所与の訓練セットのための特徴ベクトルの生成に使用されるパラメータおよび量子力学的シミュレーションをさらに洗練することができる。言い換えれば、実験的に決定された反応中間体および/または生成物に基づいて、特徴ベクトルの生成に使用されるパラメータおよび量子力学的シミュレーションを洗練することができる。いくつかの実施態様では、継続的な訓練を提供するため、反応器に備えられる質量分析計または他の機器を機械学習モデルに使用されるソフトウェアと統合してもよい。
【0097】
いくつかの実施態様では、機械学習モデルを使用して、熱エッチングプロセスまたは熱ALEプロセスを設計することができる。具体的には、機械学習モデルを使用して、所望の選択性およびエッチング速度を達成するエッチング前駆体および/または表面層を用いた熱エッチング反応候補、エッチングマスク材料候補、ならびに所与のエッチング化学についてのエッチングに耐えるチャンバ材料候補を識別することができる。いくつかの実施態様では、図7のプロセス700は、機械学習モデルを使用して1つまたは複数の熱エッチング反応候補を識別することをさらに含み、1つまたは複数の識別された熱エッチング反応候補の各々は、少なくとも識別されたエッチング前駆体を含む。1つまたは複数の識別された熱反応候補の各々は、識別されたエッチング前駆体によってエッチングされる識別された材料、識別されたエッチングマスク材料、および/または識別されたチャンバ材料をさらに含む。機械学習モデルは、過度の実験を行う必要なく、望ましい選択性で熱的にエッチングするための材料の組み合わせを識別することができる。
【0098】
図9は、いくつかの実施態様による、熱エッチング反応候補を設計するために識別されたエッチング前駆体と識別された表面層を用いた異なる熱エッチング反応についての特徴ベクトル表を示す。特徴ベクトル表950は、エッチング前駆体951の行および表面層952の列を含む。所与のエッチング前駆体951について、一対の表面層960を識別することができ、一方の表面層はエッチングされ、もう一方の表面層はエッチングされない。一例として、一対の表面層960が1つの要素(例えば、Al23およびAlF3)によって変化する場合、一方の表面層が修飾され、他方の表面層がバルク材料として残る一対の表面層960を生成するように表面修飾ステップを設計することができる。このようにして、エッチング前駆体951は、バルク材料をエッチングすることなく、修飾された表面層を選択的にエッチングすることができる。
【0099】
結論
前述の説明では、提示された実施形態の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が記載されている。開示された実施形態は、これらの特定の詳細の一部または全てなしで実施されてもよい。他の例では、周知のプロセス動作は、開示された実施形態を不必要に不明瞭にしないために詳細に説明されていない。開示された実施形態は、特定の実施形態と併せて説明されているが、開示された実施形態を限定することを意図していないことが理解されよう。
【0100】
前述の実施形態は、明確な理解のために多少詳しく説明されてきたが、一定の変更および修正が添付の特許請求の範囲の範囲内で実施されてもよいことは明らかであろう。本実施形態のプロセス、システム、および装置の実施には多くの別の方法があることに注意されたい。したがって、本実施形態は、限定ではなく例示と見なされるべきであり、それらの実施形態は本明細書に述べられる詳細に限定されるべきではない。また本開示は以下の形態として実現できる。
[形態1]
表面層とエッチング前駆体との間の反応におけるエッチング特性を予測するための方法であって、
(a)量子力学的モデルを使用して、前記表面層と前記エッチング前駆体との間のシミュレートされた反応における1つまたは複数の反応経路についての化学的特性および関連するエネルギーを識別することと、
(b)前記シミュレートされた反応における前記化学的特性および関連するエネルギーを、機械学習モデルへの入力として提供することと、
(c)前記機械学習モデルを使用して、前記表面層と前記エッチング前駆体との間の前記シミュレートされた反応についてのエッチング特性を決定することと
を含む、方法。
[形態2]
形態1に記載の方法であって、
前記シミュレートされた反応における前記1つまたは複数の反応経路についての前記化学的特性および関連するエネルギーは、前記表面層の選択された表面表示および1つまたは複数の選択された初期条件で構成された前記量子力学的モデルを使用して決定される、方法。
[形態3]
形態2に記載の方法であって、
前記1つまたは複数の選択された初期条件は、前記シミュレートされた反応の開始時の前記表面層と前記エッチング前駆体との間の分離距離、前記シミュレートされた反応の前記開始時の前記表面層および前記エッチング前駆体の配向および/もしくは方向、前記シミュレートされた反応の前記開始時の前記表面層と前記エッチング前駆体との間の初期化学架橋の形態、前記シミュレートされた反応の前記開始時の前記エッチング前駆体もしくは前記表面層の内部エネルギーもしくは運動エネルギー、またはそれらの組み合わせを含む、方法。
[形態4]
形態2に記載の方法であって、
前記表面層の前記選択された表面表示は、分子、分子の小さなクラスタ、および分子の大きなクラスタからなる群から選択される、方法。
[形態5]
形態1に記載の方法であって、
前記量子力学的モデルは、密度汎関数理論(DFT)モデル、ハートリーフォックモデル、半経験的モデル、またはそれらの組み合わせを含む、方法。
[形態6]
形態1~5のいずれか一項に記載の方法であって、
前記入力は、前記シミュレートされた反応の温度および圧力の一方または両方を含む、方法。
[形態7]
形態1~5のいずれか一項に記載の方法であって、
前記化学的特性は、前記1つまたは複数の反応経路で発生する1つまたは複数の反応中間体および/または生成物の結合構成または分子構造を含む、方法。
[形態8]
形態1~5のいずれか一項に記載の方法であって、
前記機械学習モデルは、複数の訓練セットメンバーを含む訓練セットを使用して訓練されたものであり、各訓練セットメンバーは、(i)少なくとも1つの量子力学的シミュレーションによってシミュレートされた熱エッチング反応に対する1つまたは複数の反応経路で発生する中間体および/または生成物についての化学的特性および関連するエネルギーを含む特徴ベクトル、ならびに(ii)前記熱エッチング反応の特性を表すラベルを含む、方法。
[形態9]
形態8に記載の方法であって、
前記特徴ベクトルの各々は、指定のエッチング前駆体、指定の修飾された表面層、指定の量子力学的モデル、前記指定の修飾された表面層の指定の表面表示、および1つまたは複数の指定の初期条件の固有の組み合わせを含む、方法。
[形態10]
形態1~5のいずれか一項に記載の方法であって、
前記機械学習モデルを使用して1つまたは複数の熱エッチング反応候補を識別することをさらに含み、前記1つまたは複数の識別された熱エッチング反応候補の各々は、少なくとも識別されたエッチング前駆体を含む、方法。
[形態11]
熱エッチング反応におけるエッチング情報の予測に使用するための機械学習モデルを生成する方法であって、
複数の熱エッチング反応の各々について少なくとも1つの量子力学的シミュレーションを実施することであって、各量子力学的シミュレーションは、表面層とエッチング前駆体との間の対応する熱エッチング反応における1つまたは複数の反応経路についての化学的特性および関連するエネルギーを生成することと、
前記複数の熱エッチング反応の各々について、実験的に決定されたエッチング特性を決定することと、
複数の訓練セットメンバーを含む訓練セットを生成することであって、各訓練セットメンバーは、(i)前記対応する熱エッチング反応に対する前記1つまたは複数の反応経路で発生する中間体および/または生成物についての前記化学的特性および関連するエネルギーを含む少なくとも1つの特徴ベクトル、ならびに(ii)前記実験的に決定されたエッチング特性を表すラベルを含むことと、
前記訓練セットを使用して訓練された前記機械学習モデルを生成することであって、前記機械学習モデルは、前記熱エッチング反応における前記エッチング情報を予測するように構成されることと
を含む、方法。
[形態12]
形態11に記載の方法であって、
前記少なくとも1つの量子力学的シミュレーションを実施することは、前記複数の熱エッチング反応の各々について複数の量子力学的シミュレーションを実施することを含み、各特徴ベクトルは、前記対応する熱エッチング反応の前記複数の量子力学的シミュレーションの1つから前記1つまたは複数の反応経路で発生する中間体および/または生成物についての前記化学的特性および関連するエネルギーを含む、方法。
[形態13]
形態11に記載の方法であって、
前記少なくとも1つの量子力学的シミュレーションの各々は、前記表面層の表面表示および1つまたは複数の初期条件で構成された量子力学的モデルを含む、方法。
[形態14]
形態13に記載の方法であって、
前記1つまたは複数の初期条件は、前記量子力学的シミュレーションの開始時の前記表面層と前記エッチング前駆体との間の分離距離、前記量子力学的シミュレーションの前記開始時の前記表面層および前記エッチング前駆体の配向および/もしくは方向、前記量子力学的シミュレーションの前記開始時の前記表面層と前記エッチング前駆体との間の初期化学架橋の形態、前記量子力学的シミュレーションの前記開始時の前記エッチング前駆体もしくは前記表面層の内部エネルギーもしくは運動エネルギー、またはそれらの組み合わせを含む、方法。
[形態15]
形態13に記載の方法であって、
前記表面層の前記表面表示は、分子、分子の小さなクラスタ、および分子の大きなクラスタからなる群から選択される、方法。
[形態16]
形態11~15のいずれか一項に記載の方法であって、
前記訓練セットを生成することは、
前記対応する熱エッチング反応における前記1つまたは複数の反応経路についての前記化学的特性および関連するエネルギーを前記少なくとも1つの特徴ベクトルに編成することと、
前記実験的に決定されたエッチング特性を前記ラベルに編成することと
を含む、方法。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9