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特許7402385半導体洗浄液および半導体洗浄液の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】半導体洗浄液および半導体洗浄液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023535854
(86)(22)【出願日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2023003901
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2022041318
(32)【優先日】2022-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100136939
【弁理士】
【氏名又は名称】岸武 弘樹
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【弁理士】
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】保坂 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】徳永 貴史
(72)【発明者】
【氏名】山下 義晶
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-121160(JP,A)
【文献】国際公開第2017/217279(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/071307(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/200936(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/135408(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/037953(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C11D 7/24
C11D 7/26
C11D 7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプロピルアルコールを含む半導体洗浄液であって、
イソプロピルアルコールに対するt-ブチルアルコールの質量比が1ppm以下であり、
イソプロピルアルコールに対する2-ペンタノンの質量比が1ppb以上50ppb以下であり、
イソプロピルアルコールに対するクロトンアルデヒドの質量比が0.5ppb以上10ppb以下である、半導体洗浄液。
【請求項2】
不純物としてt-ブチルアルコールを含む粗イソプロピルアルコール水溶液を第一蒸留塔の原料供給段に供給し、前記第一蒸留塔の塔頂からイソプロピルアルコールよりも沸点が低い低沸点不純物を含む第一留出液を抜き出すとともに、前記第一蒸留塔の塔底から第一缶出液を抜き出す第一蒸留工程を含み、
前記第一蒸留工程では、前記第一蒸留塔の原料供給段から塔頂までの段のうちの理論段数として3段以上の段における液相中の水の含有率が15質量%以上となるように、前記第一蒸留塔の原料供給段よりも理論段として2段以上上の所定の段に、前記第一蒸留塔の外部から、水を含有する流体を供給する、半導体洗浄液の製造方法。
【請求項3】
前記第一留出液を第二蒸留塔の原料供給段に供給し、前記第二蒸留塔の塔頂から前記低沸点不純物を含む第二留出液を抜き出すとともに、前記第二蒸留塔の塔底から第二缶出液を抜き出す第二蒸留工程をさらに含み、
前記第二蒸留工程では、前記第二蒸留塔の所定の段に、前記第二蒸留塔の外部から、水を供給し、
前記第一蒸留工程では、前記水を含有する液体として、前記第二缶出液を供給する、請求項に記載の半導体洗浄液の製造方法。
【請求項4】
前記第二蒸留塔の所定の段は、前記第二蒸留塔の原料供給段と塔頂との間の段である、請求項に記載の半導体洗浄液の製造方法。
【請求項5】
プロピレンの直接水和法により、前記粗イソプロピルアルコール水溶液を得る反応工程をさらに含む、請求項からのいずれか一項に記載の半導体洗浄液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体洗浄液および半導体洗浄液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造プロセスにおいては、半導体基板、ガラス基板等の基板を半導体洗浄液で洗浄した後、乾燥させる。半導体洗浄液としては、例えば、イソプロピルアルコールが用いられている。
【0003】
イソプロピルアルコールの製造方法としては、例えば、プロピレンの直接水和法(特許文献1参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/217279号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プロピレンの直接水和法により製造されているイソプロピルアルコールには、不純物としてt-ブチルアルコールが含まれるため、半導体洗浄液として用いると、t-ブチルアルコールの残渣が半導体デバイスに悪影響を及ぼすことが懸念される。このため、半導体洗浄液中のt-ブチルアルコールの含有率を減少させることが望まれているが、t-ブチルアルコールは、イソプロピルアルコールと沸点が82℃と略同一であるため、t-ブチルアルコールを分離するのが困難である。
【0006】
本発明は、t-ブチルアルコールの含有率が減少した半導体洗浄液およびt-ブチルアルコールの含有率を減少させることが可能な半導体洗浄液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、イソプロピルアルコールを含む半導体洗浄液であって、イソプロピルアルコールに対するt-ブチルアルコールの質量比が1ppm以下である。
【0008】
上記の半導体洗浄液は、イソプロピルアルコールに対するペンタノンの質量比が1ppb以上50ppb以下であり、イソプロピルアルコールに対するクロトンアルデヒドの質量比が0.5ppb以上10ppb以下であってもよい。
【0009】
イソプロピルアルコールは、プロピレンの直接水和法により製造されていてもよい。
【0010】
本発明の他の一態様は、半導体洗浄液の製造方法において、不純物としてt-ブチルアルコールを含む粗イソプロピルアルコール水溶液を第一蒸留塔の原料供給段に供給し、前記第一蒸留塔の塔頂からイソプロピルアルコールよりも沸点が低い低沸点不純物を含む第一留出液を抜き出すとともに、前記第一蒸留塔の塔底から第一缶出液を抜き出す第一蒸留工程を含み、前記第一蒸留工程では、前記第一蒸留塔の原料供給段から塔頂までの段のうちの理論段数として3段以上の段における液相中の水の含有率が15質量%以上となるように、前記第一蒸留塔の原料供給段よりも理論段として2段以上上の所定の段に、前記第一蒸留塔の外部から、水を含有する流体を供給する。
【0011】
上記の半導体洗浄液の製造方法は、前記第一留出液を第二蒸留塔の原料供給段に供給し、前記第二蒸留塔の塔頂から前記低沸点不純物を含む第二留出液を抜き出すとともに、前記第二蒸留塔の塔底から第二缶出液を抜き出す第二蒸留工程をさらに含み、前記第二蒸留工程では、前記第二蒸留塔の所定の段に、前記第二蒸留塔の外部から、水を供給し、前記第一蒸留工程では、前記水を含有する液体として、前記第二缶出液を供給してもよい。
【0012】
前記第二蒸留塔の所定の段は、前記第二蒸留塔の原料供給段と塔頂との間の段であってもよい。
【0013】
上記の半導体洗浄液の製造方法は、プロピレンの直接水和法により、前記粗イソプロピルアルコール水溶液を得る反応工程をさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、t-ブチルアルコールの含有率が減少した半導体洗浄液およびt-ブチルアルコールの含有率を減少させることが可能な半導体洗浄液の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】水の含有率が0質量%である場合のt-ブチルアルコール/イソプロピルアルコールのx-y線図である。
図2】水の含有率が18質量%である場合のt-ブチルアルコール/イソプロピルアルコールのx-y線図である。
図3】水の含有率が36質量%である場合のt-ブチルアルコール/イソプロピルアルコールのx-y線図である。
図4】水の含有率が54質量%である場合のt-ブチルアルコール/イソプロピルアルコールのx-y線図である。
図5】水の含有率が72質量%である場合のt-ブチルアルコール/イソプロピルアルコールのx-y線図である。
図6】水の含有率が90質量%である場合のt-ブチルアルコール/イソプロピルアルコールのx-y線図である。
図7】水/イソプロピルアルコールのx-y線図である。
図8】本実施形態の半導体洗浄液の製造方法における低沸蒸留工程の一例を示す図である。
図9】本実施形態の半導体洗浄液の製造方法における低沸蒸留工程の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
<半導体洗浄液>
本実施形態の半導体洗浄液は、イソプロピルアルコールを含み、イソプロピルアルコールに対するt-ブチルアルコールの質量比は、1ppm以下であり、より好ましくは0.5ppm以下であり、さらに好ましくは0.3ppm以下である。このため、本実施形態の半導体洗浄液を用いて、基板を洗浄しても、t-ブチルアルコールの残渣が半導体デバイスに悪影響を及ぼさない。イソプロピルアルコールに対するt-ブチルアルコールの質量比は、特に制限されないが、低すぎると、コストが増大することから、好ましくは0.01ppm以上であり、より好ましくは0.1ppm以上である。なお、イソプロピルアルコールに対するt-ブチルアルコールの質量比は、ガスクロマトグラフ質量分析法(GC-MS法)により測定する。その測定は、半導体洗浄液の水分濃度が1%未満であるときは、半導体洗浄液を直接装置のインジェクションに導入して分析すれば良いが、半導体洗浄液の水分濃度が1%以上であるときは、ヘッドスペース-GC-MS法により分析することが好ましい。
【0018】
イソプロピルアルコールは、例えば、プロピレンの直接水和法により製造することができる。
【0019】
この場合、原料のプロピレンが不純物としてイソブテンを含んでいなくても、副生成物としてt-ブチルアルコールが生成するため、イソプロピルアルコールの製造時に、プロピレンの不均化反応によりイソブテンが生成すると推測される(下記反応機構参照)。
【0020】
【化1】
【0021】
また、プロピレンの直接水和法により製造されているイソプロピルアルコールは、不純物として2-ペンタノン、クロトンアルデヒド等が不可避的に混入する。本実施形態の半導体洗浄液中のイソプロピルアルコールに対する2-ペンタノンの質量比は、特に限定されないが、例えば、1ppb以上50ppb以下であり、好ましくは2ppb以上30ppb以下である。また、本実施形態の半導体洗浄液中のイソプロピルアルコールに対するクロトンアルデヒドの質量比は、特に限定されないが、例えば、0.5ppb以上20ppb以下であり、好ましくは2ppb以上10ppb以下である。
【0022】
本実施形態の半導体洗浄液中のイソプロピルアルコールの含有率は、水を除いた含有率で示した場合に、99.99質量%以上であることが好ましく、99.999質量%以上であることがさらに好ましい。
【0023】
本実施形態の半導体洗浄液中の水の含有率は、特に限定されないが、例えば、0.1質量ppm以上100質量ppm以下であり、好ましくは1ppm以上20ppm以下である。
【0024】
なお、本実施形態の半導体洗浄液は、後述する本実施形態の半導体洗浄液の製造方法により、製造することができる。
【0025】
<半導体洗浄液の製造方法>
本実施形態の半導体洗浄液の製造方法は、不純物としてt-ブチルアルコールを含む粗イソプロピルアルコール水溶液を第一蒸留塔の原料供給段に供給し、第一蒸留塔の塔頂からイソプロピルアルコールよりも沸点が低い低沸点不純物を含む第一留出液を抜き出すとともに、第一蒸留塔の塔底から第一缶出液を抜き出す第一蒸留工程を含む。このとき、第一蒸留工程では、第一蒸留塔の原料供給段から塔頂までの段のうちの理論段数として3段以上の段における液相中の水の含有率が15質量%以上となるように、第一蒸留塔の原料供給段よりも理論段として2段以上上の所定の段、より好ましくは3段以上上の所定の段、さらに好ましくは5段以上上の所定の段に、第一蒸留塔の外部から、水を含有する流体を供給する。これにより、半導体洗浄液中のt-ブチルアルコールの含有率が減少する。このとき、第一蒸留塔の原料供給段から塔頂までの段のうちの理論段数として3段以上上の段、より好ましくは4段以上上の段における液相中の水の含有率が15質量%以上となることが好ましい。
【0026】
図1~6に、水の含有率が0~90質量%である場合のt-ブチルアルコール/イソプロピルアルコールのx-y線図を示す。
【0027】
図1~6から、水の含有率が18~90質量%である場合は、水の含有率が0質量%である場合と対比して、イソプロピルアルコールとt-ブチルアルコールの分離が促進されていることがわかる。このため、第一蒸留塔の原料供給段から塔頂までの段のうちの理論段数として3段以上の段における液相中の水の含有率が15質量%以上となることで、半導体洗浄液中のt-ブチルアルコールの含有率が減少する。
【0028】
図7に、水/イソプロピルアルコールのx-y線図を示す。
【0029】
図7から、例えば、水の含有率が95質量%である水/イソプロピルアルコール混合液は、理論段として2段で、水の含有率が20質量%となり、理論段として4段で、水の含有率が15質量%となり、理論段として6段で、水の含有率が13質量%(共沸組成における水の含有率12.5質量%)となることがわかる。このため、第一蒸留塔の原料供給段から塔頂までの段のうちの理論段数として3段以上の段における液相中の水の含有率が15質量%以上となるように、第一蒸留塔の原料供給段よりも理論段として2段以上上の所定の段に、第一蒸留塔の外部から、水を含有する流体を供給することができる。
【0030】
なお、水を含有する流体は、気体であってもよいし、液体であってもよい。水を含有する流体中の水の含有率および水の供給量は、適宜調整すればよい。水を含有する流体中の水の含有率は、好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上である。原料(不純物としてt-ブチルアルコールを含む粗イソプロピルアルコール水溶液)の供給量に対する水の供給量の質量比は、好ましくは1/10~1/1000であり、さらに好ましくは1/50~1/200である。水の供給量が多すぎると、系内の水量が多くなるため、蒸留塔の塔径を大きくする必要があり、工程全体の系より余分となった水を取り出す必要がある。水の供給量が少なすぎると、t-ブチルアルコールの分離が不十分になる。
【0031】
好ましい形態として、後述する共沸蒸留工程および脱水工程で除去された水を後述する反応工程に使用することができるが、反応工程に使用される水、運転上わずかに失われる水の追加分として、第一蒸留塔に供給される水を用いることができる。
【0032】
[反応工程]
本実施形態の半導体洗浄液の製造方法は、プロピレンの直接水和法により、粗イソプロピルアルコール水溶液を得る反応工程をさらに含んでいてもよい。反応工程におけるプロピレンの反応は、反応式
+HO→CHCH(OH)CH
で表される。このような反応を反応塔で実施することで、イソプロピルアルコールを含む反応生成物が得られる。
【0033】
反応工程では、反応塔内における温度および圧力を、それぞれ200℃以上300℃以下および150atm以上250atm以下とすることが好ましい。また、反応工程では、例えば、モリブデン系、タングステン系無機イオン交換体等の各種のポリアニオンの酸触媒を使用することができる。酸触媒としては、反応活性の点から、リンタングステン酸、ケイタングステン酸およびケイモリブデン酸が好ましい。
【0034】
水に溶解している状態の反応生成物を、反応塔から抜き出す。そして、反応生成物を冷却するとともに、減圧することで、水に溶解している未反応のプロピレンを気体として回収し、粗イソプロピルアルコール水溶液が得られる。回収されるプロピレンは、原料として再使用される。粗イソプロピルアルコール水溶液中の水の含有率は、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上である。
【0035】
(低沸蒸留工程)
本実施形態の半導体洗浄液の製造方法は、反応工程で得られた粗イソプロピルアルコール水溶液を蒸留する低沸蒸留工程として、第一蒸留工程を含む。
【0036】
図8に、低沸蒸留工程の一例を示す。
【0037】
粗イソプロピルアルコール水溶液は、導管を介して、低沸蒸留塔(第一蒸留塔)1の原料供給段に供給され、蒸留される。このとき、第一蒸留塔1の塔頂にはコンデンサーが設けられており、コンデンサーで凝縮した液の一部を還流し、残部を第一留出液として抜き出す。また、第一蒸留塔1の塔底から第一缶出液を抜き出し、精製する。
【0038】
ここで、第一蒸留塔1の還流比は、特に限定されないが、例えば、10以上100以下であり、好ましくは50以上80以下である。
【0039】
また、第一蒸留塔1の塔頂から抜き出された第一留出液は、回収蒸留塔(第二蒸留塔)2の原料供給段に供給され、蒸留される。このとき、第二蒸留塔2の塔頂にはコンデンサーが設けられており、コンデンサーで凝縮した液の一部を還流し、残部を第二留出液として抜き出し、廃棄する。また、第二蒸留塔2の所定の段に水を供給するが、第二蒸留塔2の原料供給段と塔頂との間の段に水を供給することが好ましい。さらに、第二蒸留塔2の塔底から第二缶出液を抜き出し、第一蒸留塔1の原料供給段よりも理論段として2段以上上の所定の段に供給することが好ましく、第一蒸留塔1の原料供給段よりも理論段として5段以上上の所定の段に供給することがさらに好ましい。
【0040】
ここで、第二蒸留塔2の還流比は、特に限定されないが、例えば、5以上50以下であり、好ましくは10以上30以下である。
【0041】
第一留出液および第二留出液に含まれる低沸点不純物としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン類、ペンテン類、ヘキセン類等のオレフィン類、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサンなどのアルカン類、アセトアルデヒド、プロピレンアルデヒド等のアルデヒド類、アセトン、ブタノン等のケトン類等が挙げられる。
【0042】
図9に、低沸蒸留工程の他の例を示す。図9は、第二蒸留塔2を省略し、第一蒸留塔1の原料供給段よりも理論段として2段以上上の所定の段に、第二缶出液の代わりに水を供給した以外は、図8と同様の構成である。
【0043】
粗イソプロピルアルコール水溶液は、導管を介して、低沸蒸留塔(第一蒸留塔)1の原料供給段に供給され、蒸留される。このとき、第一蒸留塔1の塔頂にはコンデンサーが設けられており、コンデンサーで凝縮した液の一部を還流し、残部を第一留出液として抜き出し、廃棄する。また、第一蒸留塔1の原料供給段よりも理論段として2段以上上の所定の段に水を供給する。さらに、第一蒸留塔1の塔底から第一缶出液を抜き出し、精製する。
【0044】
ここで、第一蒸留塔1の還流比は、特に限定されないが、例えば、10以上100以下であり、好ましくは50以上80以下である。
【0045】
なお、第一蒸留塔1および第二蒸留塔2は、それぞれ棚段塔および充填塔のいずれであってもよいが、棚段塔であることが好ましい。それぞれの蒸留塔の理論段数は、特に限定されないが、第一蒸留塔1の理論段数は、好ましくは5~80段であり、より好ましくは10~50段である。第二蒸留塔2の理論段数は、好ましくは3~20段であり、より好ましくは5~15段である。第一蒸留塔1が棚段塔である場合の実段数は、上記理論段数になるように適宜調節すればよいが、例えば、10段以上100段以下であり、好ましくは20段以上70段以下である。第二蒸留塔2が棚段塔である場合の実段数は、例えば、5段以上30段以下であり、好ましくは10段以上25段以下である。棚段塔における棚段としては、例えば、十字流トレイ、シャワートレイ等が挙げられる。充填塔における充填物としては、例えば、ラシヒリング、レッシングリング等が挙げられる。塔および充填物の材質としては、例えば、鉄、ステンレス鋼、ハステロイ、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)等が挙げられる。
【0046】
また、第一蒸留塔1および第二蒸留塔2における原料供給段を設ける位置は、特に限定されないが、塔頂より理論段として3段以上下であることが好ましい。
【0047】
さらに、第一蒸留塔1および第二蒸留塔2の圧力は、特に限定されないが、例えば、0.0~0.2MPaである。このとき、第一蒸留塔1および第二蒸留塔2の塔頂および塔底の温度は、圧力に応じて、適宜設定すればよい。
【0048】
[精製工程]
本実施形態の半導体洗浄液の製造方法は、第一缶出液を精製して、本実施形態の半導体洗浄液を得る精製工程をさらに含んでいてもよい。
【0049】
精製工程は、第一缶出液を共沸蒸留塔の原料供給段に供給して、蒸留し、イソプロピルアルコールと水との共沸混合物を得る共沸蒸留工程と、イソプロピルアルコールと水との共沸混合物を脱水する脱水工程と、脱水された共沸混合物を高沸蒸留塔の原料供給段に供給して、蒸留し、半導体洗浄液を得る高沸蒸留工程を含むことが好ましい。
【0050】
(共沸蒸留工程)
共沸蒸留工程では、第一缶出液を蒸留して、共沸蒸留塔の塔頂から、イソプロピルアルコールと水との共沸混合物を、留出液として取り出すとともに、共沸蒸留塔の塔底から、イソプロピルアルコールよりも沸点が高い高沸点不純物を含む缶出液を取り出す。
【0051】
具体的には、イソプロピルアルコールと水との共沸温度は、80.1℃であるため、第一缶出液を80.1℃で蒸留することにより、塔頂から、イソプロピルアルコールと水との共沸混合物が取り出される。一方、塔底では、水と共に高沸点不純物が取り出される。
【0052】
その他、共沸蒸留工程は、低沸蒸留工程で説明した諸条件に準じて実施すればよい。
【0053】
(脱水工程)
脱水工程では、共沸蒸留工程で得られたイソプロピルアルコールと水との共沸混合物を脱水する。
【0054】
脱水方法としては、特に限定されないが、蒸留、吸着、膜透過等が挙げられる。なお、イソプロピルアルコールと水との共沸混合物を蒸留する場合は、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン、トリクロロエチレン、ジクロロメタン、ヘキセン類等を加えて、三成分共沸組成とすることで、水を除去することができる。
【0055】
(高沸蒸留工程)
高沸蒸留工程では、脱水工程で脱水された共沸混合物を蒸留して、高沸蒸留塔の塔頂から、半導体洗浄液を、留出液として取り出すとともに、高沸蒸留塔の塔底から、イソプロピルアルコールよりも沸点が高い高沸点不純物を含む缶出液を取り出す。
【0056】
(その他の工程)
高沸蒸留工程で得られた半導体洗浄液は、必要に応じて、吸着等の方法により、さらに精製してもよいし、フィルター濾過により、金属粒子、無機粒子、有機粒子等を除去してもよいし、イオン交換樹脂塔により、金属イオン等を除去してもよい。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨の範囲内で、上記の実施形態を適宜変更してもよい。
【実施例
【0058】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。なお、本実施例中、%およびppmは、特に記載が無い場合、質量基準である。
【0059】
<分析例1>
(高濃度水分を含有するサンプル中の水分濃度測定)
機器:カールフィッシャー水分計 CA-200(三菱ケミカルアナリティック製)
サンプル中の水分濃度が数%を超えると思われるサンプルはIPAで希釈した後、測定した。希釈に用いるIPA中の水分濃度は事前に測定し、100ppm以下であることを確認した。水分濃度が数%以下と思われるサンプルは希釈せずに分析した。想定したより水分が多い場合、測定に時間がかかるだけで測定値には影響はない。100ppm以下の水分を測定する場合、露点-60℃以下のグローボックス中で測定サンプル5g以上をテルモシリンジで採取し、カールフィッシャー水分計にて測定するのが好ましく、本分析法は1ppm以上の水分があれば定量可能である。
【0060】
<分析例2>
(アルデヒド・ケトン濃度測定)
特に水を含有するイソプロピルアルコール中のアルデヒド・ケトン化合物は、本方法で分析した。なお、水を含有しない場合でも本方法で同様に分析可能である。アルデヒド・ケトン化合物の2、4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)誘導体化、続いて濃縮を行った後、アルデヒド・ケトン化合物の定量を行った。
【0061】
DNPH100mgと2mоl/Lの塩酸100mlを混合し、DNPH塩酸溶液を調製した。イソプロピルアルコール50mlとDNPH塩酸溶液1mlを混合し1時間静置し、50倍濃縮を行い1mlとした。得られた濃縮サンプルに対して、以下の条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を行った。標準物質を用い、定量下限を算出した結果、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロトンアルデヒド、2-ペンタノンの定量下限は0.1ppbであった。
【0062】
-測定条件-
装置:Ultimate3000(サーモフィッシャーサイエンティフィック製)
カラム:Inertsil ODS-2(ジーエルサイエンス製)
カラム充填物の粒子径:5μm
カラム径:2.1mm
カラム長さ:250mm
流量:0.2ml/min
カラム温度:40℃
検出器:UV(360nm)
サンプル注入量:10μl
移動相比:0→14分:アセトニトリル/1mM酢酸+2mM酢酸アンモニウム:48/52(一定)、14分→25分:アセトニトリル/1mM酢酸+2mM酢酸アンモニウム:48/52→100/0(勾配)、25分→45分:アセトニトリル/1mM酢酸+2mM酢酸アンモニウム:100/0(一定)
【0063】
<分析例3-1>
(t-ブチルアルコール濃度測定)
水を含有するイソプロピルアルコール中に含まれるt-ブチルアルコールは、ヘッドスペース法にて、GC-MSを使用し、以下に示した測定条件で測定した。標準物質を用い、定量下限を算出した結果、水分濃度95%、イソプロピルアルコール濃度5%中のt-ブチルアルコールの定量下限は5ppbであった。
【0064】
-測定条件-
装置:7890A/5975C(アジレント・テクノロジー製)
分析カラム:J&W DB-1(60m×0.32mm、5μm)
カラム温度:35℃(2分間保持)→10℃/分で昇温→250℃(6分間保持)
キャリアガス:ヘリウム
注入時圧力:20psi
線速度:31cm/秒
注入口温度:200℃
試料注入法:スプリット法
スプリット比:1対5
注入量:1ml
ヘッドスペース加熱温度:60℃
ヘッドスペース加熱時間:20分
トランスファーライン温度:240℃
イオン源、四重極の温度:230℃、150℃
スキャンイオン:m/z=25~250
SIMモニターイオン:31、59
【0065】
<分析例3-2>
(t-ブチルアルコール濃度測定)
イソプロピルアルコール中に含まれるt-ブチルアルコールは、GC-MSを使用し、以下に示した測定条件で測定した。標準物質を用い、定量下限を算出した結果、t-ブチルアルコールの定量下限は10ppbであった。
【0066】
-測定条件-
装置:7890A/5975C(アジレント・テクノロジー製)
分析カラム:J&W DB-1(60m×0.32mm、5μm)
カラム温度:35℃(2分間保持)→10℃/分で昇温→250℃(6分間保持)
キャリアガス:ヘリウム
注入時圧力:20psi
線速度:31cm/秒
注入口温度:200℃
試料注入法:スプリットレス法
注入量:2μl
ヘッドスペース加熱温度:60℃
ヘッドスペース加熱時間:20分
トランスファーライン温度:240℃
イオン源、四重極の温度:230℃、150℃
スキャンイオン:m/z=25~250
SIMモニターイオン:31、59
<実施例1>
(反応工程)
原料のプロピレンとしては、不純物として、プロパン(40000ppm)、エタン(20ppm)、2-ブテン(5ppm)、イソブテン(0.1ppm以下)ペンテン(0.1ppm以下)、ヘキセン(0.1ppm以下)が含まれているものを準備した。また、原料の水としては、酸触媒としての、リンタングステン酸を添加して、pHを3.0に調整したものを準備した。
【0067】
内容積10Lの反応塔に、110℃に加温した水(密度0.92kg/L)を18.4kg/h(20L/h)の供給量で投入するとともに、プロピレンを1.2kg/hの供給量で投入した。このとき、反応塔内における温度および圧力を、それぞれ280℃および250atmとして、プロピレンと水とを反応させて、イソプロピルアルコールを含む反応生成物を得た。次に、プロピレン回収塔内における温度および圧力を、それぞれ140℃および18atmとすることで、反応生成物に含まれる水に溶解しているプロピレンを気体として回収し、粗イソプロピルアルコール水溶液を得た。回収したプロピレンは、原料として再利用するために、プロピレンの回収ドラムに投入した。このとき、プロピレンの転化率が84.0%であり、プロピレンのイソプロピルアルコールへの選択率が99.2%であった。また、粗イソプロピルアルコール水溶液中の水の含有率が95質量%であった。
【0068】
(低沸蒸留工程(第一蒸留工程および第二蒸留工程))
段数が60のオルダーショウ型低沸蒸留塔(第一蒸留塔)と、段数が20のオルダーショウ型回収蒸留塔(第二蒸留塔)とを設置した。ここで、第一蒸留塔は、塔底が2Lの容器であり、塔底から第一缶出液を抜き出す。また、第一蒸留塔は、塔頂(塔の最上段)にコンデンサーが設けられており、コンデンサーで凝縮した液の一部を塔頂に還流し、残部を、第一留出液として、抜き出す。一方、第二蒸留塔は、塔底が500mLの容器であり、塔底から第二缶出液を抜き出す。また、第二蒸留塔は、塔頂にコンデンサーが設けられており、コンデンサーで凝縮した液の一部を塔頂に還流し、残部を第二留出液として、抜き出す。
【0069】
第一蒸留塔の塔頂(1段)よりも7段下の原料供給段(8段)に、粗イソプロピルアルコール水溶液を10L/hで供給して、粗イソプロピルアルコール水溶液を蒸留した。このとき、塔頂の温度を75~85℃とし、塔圧(ゲージ圧)を0~10kPaとした。また、還流量を2.5L/hとし、還流比を約62.5とし、コンデンサーから第一留出液を40ml/hで抜き出した。さらに、第一蒸留塔内の液量が約1.5Lを維持するように、塔底から第一缶出液を約10L/hで抜き出した。
【0070】
また、第二蒸留塔の塔頂よりも4段下の原料供給段(5段)に第一留出液を40ml/hで供給して、第一留出液を蒸留した。このとき、塔頂の温度を50~80℃とし、塔圧(ゲージ圧)を0~10kPaとした。また、還流量を30mL/hとし、還流比を約6とし、第二蒸留塔の塔頂に水を60ml/hで供給した。また、第二蒸留塔の塔底から第二缶出液を95ml/hで抜き出し、第一蒸留塔の塔頂に供給した。さらに、第二蒸留塔のコンデンサーから第二留出液を5ml/hで抜き出し、廃棄した。
【0071】
(精製工程)
共沸蒸留塔の原料供給段に第一缶出液を供給して、蒸留し、イソプロピルアルコールと水との共沸混合物(質量比87.5:12.5)を得た。次に、イソプロピルアルコールと水との共沸混合物を脱水した後、高沸蒸留塔を用いて、蒸留し、半導体洗浄液を得た。
【0072】
(第一蒸留塔の各段における液相中の水の含有率のシミュレーション)
プロセスシミュレーションソフトウェアAspenPlus(アスペンテクノロジー製)を用いて、第一蒸留塔の各段における液相中の水の含有率のシミュレーションを実施した。その結果、原料供給段(8段)から2段まで液相中の水の含有率が15質量%以上に維持されていた(表1参照)。このとき、塔効率を70%とすると、液相中の水の含有率が15質量%以上に維持されているのは、原料供給段から塔頂までの段のうちの理論段数として4.9段であった。なお、原料供給段から塔頂までの段のうちの理論段数として3段以上の段における液相中の水の含有率を15質量%以上とするためには、第一蒸留塔の塔頂よりも3段下の段(4段)、すなわち、第一蒸留塔の原料供給段(8段)よりも4段上の段(4段)における液相中の水の含有率が15質量%以上であればよい。
【0073】
(第一蒸留塔の4段における液相中の水の含有率の測定)
分析例1を用いて、第一蒸留塔の4段から抜き出した液相中の水の含有率を分析した(表1参照)。
【0074】
(第一缶出液中の成分の含有率の測定)
分析例2、4を用いて、第一缶出液中の成分(t-ブチルアルコール、水、2-ペンタノン、クロトンアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド)の含有率を分析した(表2参照)。
(半導体洗浄液中の成分の含有率の測定)
分析例2、4を用いて、半導体洗浄液中の成分(t-ブチルアルコール、2-ペンタノン、クロトンアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド)の含有率を分析した。半導体洗浄液は、イソプロピルアルコールに対するt-ブチルアルコールの質量比が0.6ppmであった(表3参照)。また、半導体洗浄液は、イソプロピルアルコールに対する2-ペンタノンの質量比が20ppbであり、イソプロピルアルコールに対するクロトンアルデヒドの質量比が10ppbであった。
【0075】
<実施例2>
(粗イソプロピルアルコール水溶液の低沸蒸留工程)において、第二蒸留塔の塔頂に水を120ml/hで供給し、第二蒸留塔の塔底から第二缶出液を155ml/hで抜き出し、第一蒸留塔の塔頂に供給した以外は、実施例1と同様にして、半導体洗浄液を得た。半導体洗浄液は、イソプロピルアルコールに対するt-ブチルアルコールの質量比が0.3ppmであった。また、半導体洗浄液は、イソプロピルアルコールに対する2-ペンタノンの質量比が20ppbであり、イソプロピルアルコールに対するクロトンアルデヒドの質量比が8ppbであった。
【0076】
(第一蒸留塔の各段における液相中の水の含有率のシミュレーション)
プロセスシミュレーションソフトウェアAspenPlus(アスペンテクノロジー製)を用いて、第一蒸留塔の各段における液相中の水の含有率のシミュレーションを実施した。その結果、原料供給段(8段)から1段まで液相中の水の含有率が15質量%以上に維持されていた。このとき、塔効率を70%とすると、液相中の水の含有率が15質量%以上に維持されているのは、原料供給段から塔頂までの段のうちの理論段数として5.6段であった。
【0077】
<実施例3>
(粗イソプロピルアルコール水溶液の低沸蒸留工程)において、第一蒸留塔の原料供給段の3段上に第二蒸留塔の塔底から第二缶出液を供給した以外は、実施例2と同様にして、半導体洗浄液を得た。半導体洗浄液は、イソプロピルアルコールに対するt-ブチルアルコールの質量比が0.8ppmであった。また、半導体洗浄液は、イソプロピルアルコールに対する2-ペンタノンの質量比が20ppbであり、イソプロピルアルコールに対するクロトンアルデヒドの質量比が10ppbであった。
【0078】
(第一蒸留塔の各段における液相中の水の含有率のシミュレーション)
プロセスシミュレーションソフトウェアAspenPlus(アスペンテクノロジー製)を用いて、第一蒸留塔の各段における液相中の水の含有率のシミュレーションを実施した。その結果、原料供給段(8段)から1段まで液相中の水の含有率が15質量%以上に維持されていた。このとき、塔効率を70%とすると、液相中の水の含有率が15質量%以上に維持されているのは、原料供給段から塔頂までの段のうちの理論段数として5.6段であった。
【0079】
<実施例4>
(粗イソプロピルアルコール水溶液の低沸蒸留工程)において、第二蒸留塔の塔頂に水を360ml/hで供給し、第二蒸留塔の塔底から第二缶出液を390ml/hで抜き出し、第一蒸留塔の塔頂に供給した以外は、実施例1と同様にして、半導体洗浄液を得た。半導体洗浄液は、イソプロピルアルコールに対するt-ブチルアルコールの質量比が0.15ppmであった。また、半導体洗浄液は、イソプロピルアルコールに対する2-ペンタノンの質量比が20ppbであり、イソプロピルアルコールに対するクロトンアルデヒドの質量比が7ppbであった。
【0080】
(第一蒸留塔の各段における液相中の水の含有率のシミュレーション)
プロセスシミュレーションソフトウェアAspenPlus(アスペンテクノロジー製)を用いて、第一蒸留塔の各段における液相中の水の含有率のシミュレーションを実施した。その結果、原料供給段(8段)から4段まで液相中の水の含有率が15質量%以上に維持されていた。このとき、塔効率を70%とすると、液相中の水の含有率が15質量%以上に維持されているのは、原料供給段から塔頂までの段のうちの理論段数として3.5段であった。
【0081】
<比較例1>
(粗イソプロピルアルコール水溶液の低沸蒸留工程)において、第二蒸留塔の塔頂に水を供給せず、第二蒸留塔の塔底から第二缶出液を35ml/hで抜き出し、第一蒸留塔の塔頂に供給した以外は、実施例1と同様にして、半導体洗浄液を得た。半導体洗浄液は、イソプロピルアルコールに対するt-ブチルアルコールの質量比が2.2ppmであった。また、半導体洗浄液は、イソプロピルアルコールに対する2-ペンタノンの質量比が20ppbであり、イソプロピルアルコールに対するクロトンアルデヒドの質量比が10ppbであった。
【0082】
また、第一蒸留塔の各段における液相中の水の含有率のシミュレーションを実施した結果、原料供給段(8段)から5段まで液相中の水の含有率が15質量%以上に維持されていた。このとき、塔効率を70%とすると、液相中の水の含有率が15質量%以上に維持されているのは、原料供給段から塔頂までの段のうちの理論段数として2.8段であった。
【0083】
<比較例2>
(粗イソプロピルアルコール水溶液の低沸蒸留工程)において、第一蒸留塔の原料供給段の1段上に第二蒸留塔の塔底から第二缶出液を供給した以外は、実施例2と同様にして、半導体洗浄液を得た。半導体洗浄液は、イソプロピルアルコールに対するt-ブチルアルコールの質量比が1.5ppmであった。また、半導体洗浄液は、イソプロピルアルコールに対する2-ペンタノンの質量比が20ppbであり、イソプロピルアルコールに対するクロトンアルデヒドの質量比が10ppbであった。
【0084】
(第一蒸留塔の各段における液相中の水の含有率のシミュレーション)
プロセスシミュレーションソフトウェアAspenPlus(アスペンテクノロジー製)を用いて、第一蒸留塔の各段における液相中の水の含有率のシミュレーションを実施した。その結果、原料供給段(8段)から5段まで液相中の水の含有率が15質量%以上に維持されていた。このとき、塔効率を70%とすると、液相中の水の含有率が15質量%以上に維持されているのは、原料供給段から塔頂までの段のうちの理論段数として2.8段であった。
【0085】
<比較例3>
(粗イソプロピルアルコール水溶液の低沸蒸留工程)において、第二蒸留塔の塔頂に水を40ml/hで供給し、第二蒸留塔の塔底から第二缶出液を75ml/hで抜き出し、第一蒸留塔の塔頂に供給した以外は、実施例3と同様にして、半導体洗浄液を得た。半導体洗浄液は、イソプロピルアルコールに対するt-ブチルアルコールの質量比が2.0ppmであった。また、半導体洗浄液は、イソプロピルアルコールに対する2-ペンタノンの質量比が20ppbであり、イソプロピルアルコールに対するクロトンアルデヒドの質量比が10ppbであった。
【0086】
(第一蒸留塔の各段における液相中の水の含有率のシミュレーション)
プロセスシミュレーションソフトウェアAspenPlus(アスペンテクノロジー製)を用いて、第一蒸留塔の各段における液相中の水の含有率のシミュレーションを実施した。その結果、原料供給段(8段)から5段まで液相中の水の含有率が15質量%以上に維持されていた。このとき、塔効率を70%とすると、液相中の水の含有率が15質量%以上に維持されているのは、原料供給段から塔頂までの段のうちの理論段数として2.8段であった。
【0087】
表1に、第一蒸留塔の各段における液相中の水の含有率のシミュレーション結果、液相中の水の含有率が15質量%以上である理論段数、4段における液相中の水の含有率の測定結果を示す。
【0088】
【表1】
【0089】
表2に、第一缶出液中の成分の含有率を示す。分析例1、2、3-1を用いた。
【0090】
【表2】
【0091】
表3に、イソプロピルアルコールに対する成分の質量比を示す。分析例1、2、3-2を用いた。
【0092】
【表3】
【0093】
表3から、実施例1~4の半導体洗浄液は、イソプロピルアルコールに対するt-ブチルアルコールの質量比が1ppm以下であることがわかる。これに対して、比較例1~3の半導体洗浄液は、第一蒸留塔の液相中の水の含有率が15質量%以上に維持されているのは、原料供給段から塔頂までの段のうちの理論段数として2.8段であるため、イソプロピルアルコールに対するt-ブチルアルコールの質量比が1ppmを超える。
【符号の説明】
【0094】
1 低沸蒸留塔(第一蒸留塔)
2 回収蒸留塔(第二蒸留塔)
【要約】
イソプロピルアルコールを含む半導体洗浄液であって、イソプロピルアルコールに対するt-ブチルアルコールの質量比が1ppm以下である、半導体洗浄液を提供する。また、不純物としてt-ブチルアルコールを含む粗イソプロピルアルコール水溶液を第一蒸留塔の原料供給段に供給し、前記第一蒸留塔の塔頂からイソプロピルアルコールよりも沸点が低い低沸点不純物を含む第一留出液を抜き出すとともに、前記第一蒸留塔の塔底から第一缶出液を抜き出す第一蒸留工程を含み、前記第一蒸留工程では、前記第一蒸留塔の原料供給段から塔頂までの段のうちの理論段数として3段以上の段における液相中の水の含有率が15質量%以上となるように、前記第一蒸留塔の原料供給段よりも理論段として2段以上上の所定の段に、前記第一蒸留塔の外部から、水を含有する流体を供給する、半導体洗浄液の製造方法を提供する。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9