IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの特許一覧 ▶ コーロン プラスチックス インコーポレーテッドの特許一覧

<>
  • 特許-ジオキソランを製造するための方法 図1
  • 特許-ジオキソランを製造するための方法 図2
  • 特許-ジオキソランを製造するための方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】ジオキソランを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 317/12 20060101AFI20231214BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231214BHJP
【FI】
C07D317/12
C07B61/00 300
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021514474
(86)(22)【出願日】2019-05-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2019061784
(87)【国際公開番号】W WO2019219475
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】18173085.4
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】520437401
【氏名又は名称】コーロン プラスチックス インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Kolon Plastics Inc.
【住所又は居所原語表記】10th floor, Kolon Tower Annex, 1-22 Gwacheon-Si, Gyeonggi-Do, Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】ハイツ,トマス
(72)【発明者】
【氏名】クランプ,マルフィン
(72)【発明者】
【氏名】ハイリヒ,マンフレット
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ヒュンソ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョンムン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,イン ギ
【審査官】土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-204080(JP,A)
【文献】特開平09-048774(JP,A)
【文献】特開平04-049250(JP,A)
【文献】特開平07-206717(JP,A)
【文献】国際公開第2012/177598(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/177485(WO,A1)
【文献】特開平07-285958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 317/12
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)エチレングリコールを含有する第1のフィードストリーム(1)ならびに水溶液中のホルムアルデヒドおよびメタノールを含有する第2のフィードストリーム(2)を反応蒸留装置(10)にフィードし、少なくとも1種の触媒の存在下でエチレングリコールと水溶液中のホルムアルデヒドとを反応させ、水、ジオキソランおよびメタノールを含む粗生成物を得る工程、
b)粗生成物を含有する蒸留物ストリーム(11)を、反応蒸留装置(10)の頂部から相分離ユニット(20)に移す工程であって、相分離ユニット(20)に有機抽出剤が存在する工程、
c)有機画分ストリーム(21)を、相分離ユニット(20)から精製カラム(30)の上部に移し、ジオキソランを含有する底部生成物ストリーム(31)を精製カラム(30)から取り出し、蒸留物ストリーム(32)を精製カラム(30)から相分離ユニット(20)にリサイクルする工程、
d)水性画分ストリーム(22)を相分離ユニット(20)から廃水カラム(40)に移し、廃水カラム(40)の底部から廃水ストリーム(41)を取り出し、蒸留物ストリーム(42)を廃水カラム(40)から相分離ユニット(20)にリサイクルし、廃水カラム(40)のフィード段よりも下の段からメタノールを含有するサイドストリーム(43)を取り出す工程
を含む、ジオキソランを製造するための方法。
【請求項2】
メタノールを含有するサイドストリーム(44)が、廃水カラム(40)の頂部から取り出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
追加の水を含有するストリーム(23)が相分離ユニット(20)にフィードされる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
抽出剤が、ペンタン、シクロペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、メチルイソブチルエーテル、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、プロピルイソプロピルエーテル、ヘキサン、メチルシクロペンタン、2,2-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、シクロヘキサン、3,3-ジメチルペンタン、2-エチル-3-メチル-1-ブテン、1,1-ジメチルシクロペンタン、2-メチルヘキサン、ジ-n-プロピルエーテル、(z)-1,3-ジメチルシクロペンタン、trans-1,2-ジメチルシクロペンタン、trans-1,3-ジメチルシクロペンタン、3-メチル-ヘキサン、1-エトキシブタン、3-エチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-ヘプタン、イソプロピル-イソブチル-エーテル、(z)-1,2-ジメチルシクロペンタン、2,2-ジメチルヘキサン、2,3-ジメチルヘキサン、2,4-ジメチルヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン、3,4-ジメチルヘキサン、2-メチルヘプタン、オクタンからなる群から選択される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
抽出剤が、ヘキサンの異性体(C14)からなる群から選択される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
抽出剤が、質量分率が少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、特に少なくとも99%であるn-ヘキサンを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
有機抽出剤を含有する補給ストリーム(24)が相分離ユニット(20)にフィードされる、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
相分離ユニット(20)が、ミキサ(25)および相分離器(26)を含み、反応蒸留装置(10)からの蒸留物ストリーム(11)、精製カラム(30)からの蒸留物ストリーム(32)、廃水カラム(40)からの蒸留物ストリーム(42)、ならびに任意に、追加の水を含有するストリーム(23)および/または有機抽出剤を含有する補給ストリーム(24)がミキサ(25)にフィードされ、混合され、ミキサ(25)の出口ストリームが相分離器(26)にフィードされる、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
反応蒸留装置(10)からの蒸留物ストリーム(11)中のメタノールの質量分率が0.02%~5%である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
精製カラム(30)の底部生成物ストリーム(31)中のメタノールの質量分率が、0.5%未満、好ましくは0.1%未満、より好ましくは0.05%未満、特に0.01%未満である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸触媒の存在下でエチレングリコールをホルムアルデヒドの水溶液と反応させることによってジオキソランを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下「ジオキソラン」と称する1,3-ジオキサシクロペンタンは、工業的に使用されるエチレングリコールの誘導体であり、硫酸、三フッ化ホウ素、塩化亜鉛または酸イオン交換体などの酸触媒の存在下で、エチレングリコールをホルムアルデヒド水溶液と反応させることによって製造することができる。純粋なジオキソランは、種々の分離方法を使用して、特に蒸留または抽出によって反応混合物から単離することができる。
【0003】
文献EP 0 867 434 A1では、酸触媒の存在下でエチレングリコールとホルムアルデヒド水溶液とを反応させる、ジオキソランを製造するための方法が開示される。反応混合物を、底部生成物として水を除去する脱水カラムにフィードする。脱水カラムの頂部から、主にジオキソランと水との共沸混合物を取り出し、ベンゼンを使用して共沸物を分解する共沸蒸留カラムにフィードする。底部生成物としてカラムから得られたジオキソラン生成物はベンゼンを含有し、ベンゼンは、該文献には開示されないさらなるプロセス工程で除去されなければならない。添加されたベンゼンのほとんどは、プロセスによって除去され、さらなる使用のために精製されなければならない、または排出される。
【0004】
ドイツ特許出願DE 10 2005 042 505 A1は、触媒の存在下でエチレングリコールを水溶液中のホルムアルデヒドと反応させることによってジオキソランを製造する方法を開示しており、反応は反応性蒸留カラム内で行われる。主にジオキソランと水との共沸混合物をカラムの頂部から取り出し、高い圧力で動作するさらなる蒸留カラムにフィードして、底部生成物として精製されたジオキソランを得る。反応カラムの底部ストリームをさらなる蒸留カラムにフィードし、水を分離除去して未反応エチレングリコールをリサイクルする。この方法は、前述の方法におけるベンゼンなどの抽出剤を必要としないが、生成されたジオキソランの一部は、ジオキソラン精製カラムの頂部からの必然的な排出に起因して失われる。
【0005】
当技術分野で公知のジオキソランを製造するための方法は、さらなるプロセス工程で精製されなければならない、もしくは排出される、比較的多量の抽出剤を必要とする、かつ/または価値ある生成物であるジオキソランの一部が失われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】EP 0 867 434 A1
【文献】ドイツ特許出願DE 10 2005 042 505 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、生成物であるジオキソランの収率を増大させると同時に、補助物質および廃棄物の量を減少させる、ジオキソランを製造するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本発明によって、請求項1に記載のジオキソランを製造するための方法によって達成される。有利な実施形態および本発明のさらなる発展は、従属項2~10に示される。
【0009】
本発明によると、ジオキソランを製造するための方法は、以下の工程を含む:
a)エチレングリコールを含有する第1のフィードストリームならびに水溶液中のホルムアルデヒドおよびメタノールを含有する第2のフィードストリームを反応蒸留装置にフィードし、少なくとも1種の触媒の存在下でエチレングリコールと水溶液中のホルムアルデヒドとを反応させ、水、ジオキソランおよびメタノールを含む粗生成物を得る工程、
b)粗生成物を含有する蒸留物ストリームを、反応蒸留装置の頂部から相分離ユニットに移す工程であって、相分離ユニットに有機抽出剤が存在する工程、
c)有機画分ストリームを、相分離ユニットから精製カラムの上部に移し、ジオキソランを含有する底部生成物ストリームを精製カラムから取り出し、蒸留物ストリームを精製カラムから相分離ユニットにリサイクルする工程、
d)水性画分ストリームを相分離ユニットから廃水カラムに移し、廃水カラムの底部から廃水ストリームを取り出し、蒸留物ストリームを廃水カラムから相分離ユニットにリサイクルし、廃水カラムのフィード段よりも下の段からメタノールを含有するサイドストリームを取り出す工程。
【0010】
有機抽出剤の供給と組み合わせて、反応蒸留装置と2つのさらなるカラムとの間に相分離ユニットを設けることにより、成分混合物の分離が簡素化され、ジオキソランの純度が増大し、抽出剤の完全なリサイクルが促進され、かつ価値ある生成物の損失が最小化されることが見出された。
【0011】
好ましくは、本発明の方法は、上述の工程(a)~(d)が同時に実施されるような、連続的な方法である。
【0012】
工程(a)で使用される反応蒸留装置は、エチレングリコールとホルムアルデヒドとを反応させてジオキソランを得ることを可能にする、反応と蒸留の任意の組合せであってもよい。一実施形態では、反応蒸留装置は、蒸留カラムと直接結合した反応器として設置される。さらなる実施形態では、反応蒸留装置は、触媒が、蒸留カラムのトレイまたは段、好ましくは蒸留カラムの下部に埋め込まれる反応性蒸留カラムとして設置される。さらなる実施形態では、反応蒸留装置は、触媒が反応器だけでなく、蒸留カラムの一部にも存在する反応性蒸留カラムに直接結合した反応器として設置される。
【0013】
好ましくは、反応蒸留装置からの蒸留物ストリーム中のメタノールの質量分率は、0.02質量%~5質量%である。
【0014】
さらに、精製カラムの底部生成物ストリーム中のメタノールの質量分率が、0.5%未満、より好ましくは0.1%未満、最も好ましくは0.05%未満、特に0.01%未満であることが好ましい。
【0015】
メタノールは、通常、主にホルムアルデヒドの生成プロセス中のメタノールの不完全な変換に起因して、ホルムアルデヒド水溶液のフィードストリームに少量で存在する。さらに、メタノールは、ホルマリン溶液の安定剤として作用する。フィードストリームに少量で存在するにもかかわらず、メタノールは、水の完全なリサイクルに起因して蓄積し、長期的には動作不良を引き起こすことが見出されている。この問題は、先行技術では全く考察されていない。メタノールは、廃水カラムの中間領域に蓄積することが見出された。したがって、廃水カラムのフィード段よりも下の段からメタノールを含有するサイドストリームを取り出す本発明の解決策は、先行技術に関連する問題を解決する。
【0016】
廃水カラムの最下段とサイドストリーム取り出し段との間の距離は、少なくとも5段の理論蒸留段、より好ましくは少なくとも7段の理論蒸留段に対応することが好ましい。廃水カラムのフィード段とサイドストリーム取り出し段との間の距離は、少なくとも4段の理論蒸留段、より好ましくは少なくとも6段の理論蒸留段に対応することがさらに好ましい。
【0017】
好ましい実施形態では、メタノールを含有する追加のサイドストリームが廃水カラムの頂部から取り出される。メタノールは、廃水カラムの頂部にも存在することが見出された。廃水カラムの頂部からの追加のサイドストリームの取り出しは、メタノールの除去に有利である場合があり、したがって方法の安定な操作に有利である場合がある。追加のサイドストリームは、カラムの最上段のうちの1段から、または廃水カラムから取り除かれる蒸留物ストリームの一部として、例えば、カラムへの還流の一部として、または相分離ユニットにリサイクルされるストリームの一部として取り出されてもよい。
【0018】
さらなる好ましい実施形態では、相分離ユニットに追加の水を含有するストリームがフィードされる。水は、反応蒸留装置の蒸留物ストリームの一成分であるため、本発明による方法の工程(b)で相分離ユニットに移される。水相中の水の最大の部分は、相分離ユニットから廃水カラムに移される。追加の水を添加することは、廃水カラムの負荷を増大させ、それゆえ運転コストを増大させるので一見反直観的である。しかし、追加の水を添加することで、相分離ユニットの操作性の範囲が広がり、したがって本発明の方法の安定な操作に有利な影響を及ぼすことが見出されている。
【0019】
概して、ジオキソランと水とを分離することができる限り、有機抽出剤の組成に関して特定の制限はない。
【0020】
好ましい実施形態では、有機抽出剤(「EA」)は、以下の条件:
(a)gamma_inf_298_(水中EA)+gamma_inf_298_(EA中水)>1600
(b)gamma_inf_298_(EA中メタノール)/gamma_inf_298_(水中メタノール)>1.5
(c)gamma_inf_335_(ジオキソラン中EA)>1
gamma_inf_335_(水中EA)>1
gamma_inf_335_(EA中ジオキソラン)>1
gamma_inf_335_(EA中水)>1
(d)および追加的に、
・P DX>P EA>P であれば:
(P DX・gamma_inf_335_(EA中ジオキソラン)/P EA-1)・
(P DX/P EA/gamma_inf_335_(ジオキソラン中EA)-1)<0
・あるいはP >P EAであれば:
(P DX・gamma_inf_335_(EA中ジオキソラン)/P EA-1)・
(P DX/P EA/gamma_inf_335_(ジオキソラン中EA)-1)<0
および
(P ・gamma_inf_335_(EA中水)/P EA-1)・
(P /P EA/gamma_inf_335_(水中EA)-1)<0
(ここで、「gamma_inf_<温度>_(<溶媒>中<溶質>)」は、それぞれ298.15K(「298」)または334.85K(「335」)の温度における限界活量係数、および無限希釈にある溶媒中の溶質を表し、P は、純成分kの蒸気圧を示し、「DX」はジオキソランを示し、「W」は水を示す)
を満たす物質の群から選択される。
【0021】
条件(a)は、有機相の水相からの分離を向上させる溶解度ギャップが相分離ユニットに存在することを確実にする。条件(b)は、相分離ユニットを出る水性画分ストリームにメタノールが濃縮されることを確実にする。条件(c)は、純成分への分離を妨げる重沸点の共沸物が存在しないことを保障する。条件(d)は純成分の蒸気圧に依存し、共沸物の蒸留を促進する。条件(d)に関して、すべての純成分蒸気圧は334.85Kの温度で計算される。
【0022】
純成分蒸気圧および限界活量係数を決定するための方法およびソフトウェアツールは、当技術分野で公知である。例として、純成分蒸気圧のデータは、実験データの蒸気圧の関数から導出することができ、限界活量係数(無限希釈での活量係数)は、パラメータ化BP_TZVP_C30_1701を用いて、量子化学的連続溶媒和モデルCosmo-RS(COSMOthermX Version C30_1702、COSMOlogic GmbH&Co.KG、Imbacher Weg 46、51379 Leverkusen、ドイツにより開発および著作権所有)によって計算することができる。
【0023】
好ましくは、抽出剤は、ペンタン、シクロペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、メチルイソブチルエーテル、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、プロピルイソプロピルエーテル、ヘキサン、メチルシクロペンタン、2,2-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、シクロヘキサン、3,3-ジメチルペンタン、2-エチル-3-メチル-1-ブテン、1,1-ジメチルシクロペンタン、2-メチルヘキサン、ジ-n-プロピルエーテル、(z)-1,3-ジメチルシクロペンタン、trans-1,2-ジメチルシクロペンタン、trans-1,3-ジメチルシクロペンタン、3-メチル-ヘキサン、1-エトキシブタン、3-エチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-ヘプタン、イソプロピル-イソブチル-エーテル、(z)-1,2-ジメチルシクロペンタン、2,2-ジメチルヘキサン、2,3-ジメチルヘキサン、2,4-ジメチルヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン、3,4-ジメチルヘキサン、2-メチルヘプタン、オクタンからなる群から選択される。
【0024】
表1は、純成分蒸気圧および上述のCosmo-RSモデルを用いて計算した限界活量係数の値を示す。
【0025】
【表1】
【0026】
より好ましくは、抽出剤は、ヘキサンの異性体(C14)からなる群から選択される。ヘキサンの異性体は、n-ヘキサン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,3-ジメチルブタンおよび2,2-ジメチルブタンである。抽出剤は、ヘキサンの単一の異性体または異性体の混合物を含んでもよい。さらなる物質、例えば、シクロヘキサンまたはメチルシクロペンタン(C12)などの、他のC炭化水素が抽出剤に存在してもよい。
【0027】
さらにより好ましくは、抽出剤は、質量分率が少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、特に少なくとも99%であるn-ヘキサンを含む。特に好ましい技術的に純粋なグレードのヘキサンは、典型的に、99%以上のn-ヘキサンおよび合計最大1%の量の、シクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンを含む種々のC異性体を含有する。高純度のn-ヘキサンは、抽出剤の副成分の蓄積を回避することが好ましい。
【0028】
さらに好ましい実施形態では、有機抽出剤を含有する補給ストリームが相分離ユニットにフィードされる。先行技術に対する本発明による方法の1つの利点は、抽出剤が設計によって完全にリサイクルされ、結果として抽出剤の損失がないことである。抽出剤は、プロセスの開始時に1回供給されなければならない。その後、抽出剤はプロセスの間滞留する。しかし、動作障害または故障に起因して、抽出剤が流出ストリームによってプロセスから取り出される場合がある。したがって、抽出剤の補給ストリームの供給は、方法の安定な操作のために有利である。概して、補給ストリームは、任意のプロセスストリームまたはプロセスユニットにフィードされてもよい。好ましくは、補給ストリームは相分離ユニットにフィードされる。より好ましくは、補給ストリームは、相分離ユニットの混合装置にフィードされる。
【0029】
本発明による方法の好ましい実施形態では、相分離ユニットは、ミキサおよび相分離器を含む。反応蒸留装置からの蒸留物ストリーム、精製カラムからの蒸留物ストリーム、廃水カラムからの蒸留物ストリーム、ならびに任意に、追加の水を含有するストリームおよび/または有機抽出剤を含有する補給ストリームは、ミキサにフィードされ、混合される。ミキサの出口ストリームは、相分離器にフィードされる。第1の工程でストリームを混合し、第2の工程で相を分離することは、混合工程を伴わずに、ストリームを相分離器に直接フィードすることに比べ、例えば、液滴サイズに関して、相分離器にフィードされる混合物がより均質であるという利点を有する。ミキサは、完全かつ均質な混合物を供給する任意の種類の混合装置であってもよい。好ましくは、ミキサは静的ミキサである。さらに好ましい実施形態では、ミキサの出口における混合されたストリームは、混合されたストリームの温度を低下させる冷却装置にフィードされ、その後相分離器にフィードされる。混合されたストリームの温度の低下は、相分離の安定な操作を促進する。
【0030】
本発明による方法は、先行技術で公知の方法のいくつかの利点を提供する。ジオキソランは、他のストリームによる生成物の顕著な損失を伴わずに極めて高純度で生成され、提供される。副成分、特にメタノールは効率的に除去される。使用される抽出剤は、材料の損失を伴わずにリサイクルされる。方法は、工業および商業規模で、安定かつ確実に操作可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明を、図面を利用して以下に例示する。図面は、原理的な表示と解釈されるべきである。図面は、例えば、構成要素の特定の寸法または設計の変形に関して、本発明のいずれの制限ももたらさない。
図1】本発明による方法の第1の実施形態のブロック図を示す。
図2】本発明による方法の第2の実施形態のブロック図を示す。
図3】本発明による相分離ユニットの好ましい実施形態を示す。
【0032】
使用される参照番号のリスト
1・・・エチレングリコールを含有するフィードストリーム
2・・・水溶液中のホルムアルデヒドおよびメタノールを含有するフィードストリーム
10・・・反応蒸留装置
11・・・反応蒸留装置の蒸留物ストリーム
20・・・相分離ユニット
21・・・有機画分ストリーム
22・・・水性画分ストリーム
23・・・水を含有するストリーム
24・・・有機抽出剤の補給ストリーム
25・・・ミキサ
26・・・相分離器
27・・・冷却装置
30・・・精製カラム
31・・・精製カラムの底部生成物ストリーム
32・・・精製カラムの蒸留物ストリーム
40・・・廃水カラム
41・・・廃水ストリーム
42・・・廃水カラムからのサイドストリーム
43・・・廃水カラムからの蒸留物ストリーム
44・・・廃水カラムからのメタノールを含有するサイドストリーム
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、本発明による方法の第1の実施形態のブロック図を示す。ブロック図は、主な動作ユニットのみを示す。リボイラー、コンデンサ、ポンプ、バルブおよび計装機器などの補助機器は図1に示されない。
【0034】
ジオキソランの製造の連続的な方法では、エチレングリコールを含有するフィードストリーム1ならびに水溶液中のホルムアルデヒドおよびメタノールを含有するフィードストリーム2は、反応蒸留装置10の下部領域にフィードされる。反応蒸留装置10、好ましくは装置の下部には、少なくとも1種の触媒が存在する。触媒は、エチレングリコールと水溶液中のホルムアルデヒドとが反応し、水、ジオキソランおよびメタノールを含む粗反応生成物が形成するのを可能にする。粗生成物は反応蒸留装置10の頂部から取り出され、その一部が凝縮され、還流として反応蒸留装置10にリサイクルされ(図示せず)、残余が蒸留物ストリーム11として相分離ユニット20に移される。
【0035】
相分離ユニット20には、流入物質の水性画分と有機画分とへの分離を向上させる有機抽出剤が存在する。有機画分は、ストリーム21によって相分離ユニット20から取り出され、精製カラム30の上部に移される。水性画分は、ストリーム22によって相分離ユニット20から取り出され、廃水カラム40に移される。
【0036】
精製カラム30には、ストリーム21によってフィードされた有機材料とリボイラーで生成される蒸気との向流様式がカラム内に存在するように、カラムの底部分に存在する材料の一部を蒸発させるリボイラー(図示せず)が備え付けられている。精製カラム30の底部の材料の残部は、ジオキソランに富む底部生成物ストリーム31として取り出される。上昇流材料が精製カラム30から蒸留物ストリーム32として取り出され、相分離ユニット20にリサイクルされる。
【0037】
相分離ユニット20からの水性画分ストリーム22は、廃水カラム40の中間区画にフィードされる。カラムには、カラム内の液体と蒸気との向流様式を可能にするリボイラーおよびコンデンサ(図示せず)が備え付けられている。カラムの底部の液体材料の一部は、水に富む廃水ストリーム41として取り出される。残余はリボイラーにフィードされる。廃水カラム40の上部を出るオーバーヘッドストリームはコンデンサにフィードされる。凝縮された材料の一部は、還流としてカラムにリサイクルされる。残余は、蒸留物ストリーム42として相分離ユニット20にリサイクルされる。メタノールを含有するサイドストリーム43は、廃水カラム40のフィード段よりも下の段から取り出される。任意に、追加の水を含有するストリーム23および/または有機抽出剤を含有する補給ストリーム24が、相分離ユニット20にフィードされる。
【0038】
図2は、本発明による方法の第2の実施形態のブロック図を示す。この方法は、図1に示される第1の実施形態の改変である。主な違いは、廃水カラム40の頂部から取り出される、メタノールを含有する追加のサイドストリーム44である。
【0039】
図3は、本発明による相分離ユニット20の好ましい実施形態を示す。相分離ユニット20は、ミキサ25および相分離器26を含む。反応蒸留装置からの蒸留物ストリーム11、精製カラムからの蒸留物ストリーム32および廃水カラムからの蒸留物ストリーム42は、ミキサ25にフィードされる。任意に、追加の水を含有するストリーム23および/または有機抽出剤を含有する補給ストリーム24もミキサ25にフィードされる。すべてのストリームはミキサ25で混合され、ミキサの出口ストリームは、混合されたストリームの温度を低下させる冷却装置27にフィードされ、冷却装置27の出口ストリームは、相分離器26にフィードされる。
【実施例
【0040】
図1による方法のために、正確な定常状態のシミュレーションを準備した。物性データを実際の実験データにフィットさせた。
【0041】
69.8wt%のジオキソラン、29.4wt%の水、0.3wt%のメタノールおよび0.5wt%の未反応のホルムアルデヒドを含有する、質量流量503.9kg/hの蒸留物ストリーム11を、反応蒸留装置10の頂部から相分離ユニット20に移した。相分離ユニットは、静的ミキサ25および相分離器26を含んだ。追加の水ストリーム23は供給しなかった。有機抽出剤としてn-ヘキサンを使用した。有機抽出剤のn-ヘキサンの質量分率は99.1%であり、n-ヘキサンの異性体(C14)とC12成分の合計が残りの1%であった。
【0042】
好適な抽出剤の選択基準に関して、使用したn-ヘキサンは以下の基準を満たす:
(a)gamma_inf_298_(水中EA)+gamma_inf_298_(EA中水)=72271>1600
(b)gamma_inf_298_(EA中メタノール)/gamma_inf_298_(水中メタノール)=114.9>1.5
(c)gamma_inf_335_(ジオキソラン中EA)=4.98>1
gamma_inf_335_(水中EA)=69637>1
gamma_inf_335_(EA中ジオキソラン)=4.1>1
gamma_inf_335_(EA中水)=202.14>1
n-ヘキサンの純成分蒸気圧(334.85Kの温度で計算)がジオキソランのものより大きいため(P EA=1110.7hPa、P DX=905.6hPa)、他の基準を満足する必要はない。
【0043】
有機画分ストリーム21を、相分離ユニット20から精製カラム30の最上段のトレイに移した。蒸留物ストリーム32を、相分離ユニット20のミキサ25にリサイクルした。カラムの底部から、底部生成物ストリーム31として純度99.99wt%のジオキソランを342.5kg/hの速度で取り出した。ジオキソラン生成物の含水量は43ppmであった。メタノール含有量は18ppmであった。ジオキソラン生成物中の抽出剤(n-ヘキサン)の含有量は61ppmであった。
【0044】
相分離器の水性画分を含有するストリーム22を、廃水カラム40の(合計18個のトレイの下から数えて)14番目のトレイに移した。カラムの底部から、含水量が98.2wt%の廃水ストリーム41を135.4kg/hの流量で取り出した。未反応ホルムアルデヒド(1.7wt%)もまた廃水ストリーム41とともに排出された。廃水カラム40の頂部を出るオーバーヘッドストリームをコンデンサにフィードした。凝縮された材料の一部を還流としてカラムにリサイクルした。残余は、蒸留物ストリーム42として相分離ユニット20にリサイクルした。32.6wt%のジオキソラン、60.5wt%の水、5.4wt%のメタノール、および1.4wt%の未反応ホルムアルデヒドを含有するサイドストリーム43を、25kg/hの流量で(下から数えて)8段目から取り出した。
【0045】
99.1wt%のn-ヘキサンを含有する有機抽出剤の補給ストリーム24を、0.03kg/hの流量で相分離ユニット20にフィードした。
【0046】
シミュレーションの結果によると、優れた純度のジオキソランを生成することができる。ジオキソラン生成物中、ごく微量の有機抽出剤(n-ヘキサン)のみが検出された。廃水の品質は常に十分に規格内であった。
[比較例]
【0047】
本発明による実施例を、文献EP 0 867 434 A1の実施例4と比較する。主な違いは、カラムの順序、および先行技術には相分離ユニットがないという点でのカラムの構成、ならびに抽出剤の選択である。
【0048】
比較例では、ホルマリン(ホルムアルデヒドの60wt%水溶液)を85g/hで、蒸留カラムに結合した反応器にフィードする。エチレングリコールを106g/hで蒸留カラムにフィードし、反応器から流れ出るジオキソラン粗生成物に対して向流で流す。質量分率が、ジオキソラン65.4wt%、水33.7wt%、およびホルムアルデヒド0.1wt%である、191g/hの速度の蒸留物ストリームを第1の蒸留カラムから取り出し、脱水カラムにフィードする。脱水カラムでは、底部から水を取り出し、136g/hの速度の、91.8wt%のジオキソランおよび7.6wt%の水を含有する共沸混合物の蒸留物ストリームを取り出し、精製カラムにフィードする。共沸物を分解するために、16g/hの流量で、精製カラムに抽出剤としてベンゼンを添加する。ジオキソランが底部生成物として精製カラムから135g/hの流量で得られ、ジオキソラン生成物ストリーム中のベンゼンの濃度は11wt%である。含水量は44ppmであった。
【0049】
この先行技術の実施例と比較すると、本発明による方法は、有意により高い純度の所望のジオキソラン生成物を提供する。本発明の方法のさらなる利点として、抽出剤は、ほぼ完全に内部のリサイクルで使用される。先行技術の方法とは対照的に、本発明の方法では、抽出剤の高価な処理または加工は必要ない。
図1
図2
図3