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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】ホルダ付きウインドウガラス
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/38 20060101AFI20231214BHJP
   E05F 11/48 20060101ALI20231214BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
E05F11/38 F
E05F11/48 D
B60J1/17 A
B60J1/17 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020050642
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021147936
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】浦田 量一
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-176968(JP,U)
【文献】特開昭52-18629(JP,A)
【文献】特開平6-106568(JP,A)
【文献】米国特許第4819380(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 11/00-11/54
E05F 15/00-15/79
B60J 1/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに組付けられ、円弧状の軌跡に沿って摺動可能なホルダ付きウインドウガラスであって、
前記ウインドウガラスは、前記ウインドウガラスの下縁部にホルダが装着されており、かつ、前記ウインドウガラスは、前記車両に取り付けられた状態で、摺動方向における断面形状において、第1の曲率半径を有する湾曲形状を有し、
前記ホルダは、前記車両のドアに配置された昇降装置の昇降部材と連結される連結部と、前記摺動方向における断面形状において、前記ウインドウガラスの下縁部を保持する少なくとも一つのホルダ本体とを有し、
前記連結部は、前記ホルダ本体の下縁部から離間する方向に延設され、かつ、前記連結部は、前記摺動方向における断面形状において、第2の曲率半径を有する円弧状部を少なくとも一部分に有し、
前記ホルダ本体は、前記ウインドウガラスの少なくとも一方の主面と対向する側壁と、前記側壁の下部に連結された底壁であって、前記ウインドウガラスの下縁部の端面と対向する底面を有する底壁と、を有し、
前記連結部は、前記昇降部材に連結される連結用孔を有し、
前記連結部のうち、前記底壁の前記底面に対向する下面から前記連結用孔の中心までの長さL3の部分が前記円弧状部として構成され、
前記ホルダは、前記円弧状部を介してスライダに連結されており、前記スライダは、第3の曲率半径を有する軌跡に沿った円弧状のガイドレールに係合されている構成により、前記ホルダ付きウインドウガラスが摺動方向に描く軌跡は、前記第3の曲率半径を有し、
前記第2の曲率半径と、前記第3の曲率半径とが同じである、
ホルダ付きウインドウガラス。
【請求項2】
記ホルダ本体の前記側壁の上部から前記底面までの長さをL1とし、前記底面から前記連結用孔の中心までの長さをL2とした場合に、L1×2≦L2の関係式を満たす、
請求項1に記載のホルダ付きウインドウガラス。
【請求項3】
前記ホルダは、ウインドウガラスの下縁部に間隔を開けて一対備えられる、
請求項1又は2に記載のホルダ付きウインドウガラス。
【請求項4】
前記連結部は、前記ホルダ本体の下縁部において前記ウインドウガラスの下縁部に沿った方向に備えられる、
請求項1又は2に記載のホルダ付きウインドウガラス。
【請求項5】
前記第1の曲率半径は、1000mm以上100000mm以下であり、前記第2の曲率半径は、1000mm以上100000mm以下である、
請求項1からのいずれか1項に記載のホルダ付きウインドウガラス。
【請求項6】
前記第の曲率半径と、前記第2の曲率半径とが同じである、
請求項1からのいずれか1項に記載のホルダ付きウインドウガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルダ付きウインドウガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアに摺動可能に組み付けられたウインドウガラスは、ドアパネルの内部に配置された昇降装置(レギュレータとも言う。)の駆動力により昇降移動される。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されたレギュレータは、モータと、モータの動力をウインドウガラスに伝達するスライダとを有している。一方、特許文献2に開示されたウインドウガラスは、その下縁部の一部にガラスホルダ(ホルダ)が装着されており、このガラスホルダの連結部にスライダとしてのキャリアプレートがボルトを介して連結されている。
【0004】
上記のようなホルダは、特許文献2及び3に示されているように、ウインドウガラスの下縁部のうち下方に向けて突出した突出部に装着されている。この突出部及びホルダは、ウインドウガラスが最上位置に上昇移動した場合でも外部に露出せずドアパネルの内部に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-246671号公報
【文献】特開2017-8521号公報
【文献】特開2017-94880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ホルダ付きウインドウガラスのうち、流線形状のボディラインに沿って摺動されるタイプのものは、ウインドウガラス自体もボディラインに沿った湾曲形状のものが使用され、ドアに設けられた円弧状のサッシュにガイドされながら円弧状の軌跡に沿って摺動される。
【0007】
このようなホルダ付きウインドウガラスにおいては、上記の円弧状の軌跡に沿って円滑に摺動させる必要があるが、従来のホルダ付きウインドウガラスでは、摺動中に発生する摩擦抵抗に起因して円滑に摺動できない場合があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、円弧状の軌跡に沿って円滑に摺動可能なホルダ付きウインドウガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的を達成するため、本発明のホルダ付きウインドウガラスは、車両のドアに組付けられ、円弧状の軌跡に沿って摺動可能なホルダ付きウインドウガラスであって、ウインドウガラスは、ウインドウガラスの下縁部にホルダが装着されており、かつ、ウインドウガラスは、車両に取り付けられた状態で、摺動方向における断面形状において、第1の曲率半径を有する湾曲形状を有し、ホルダは、車両のドアに配置された昇降装置の昇降部材と連結される連結部と、摺動方向における断面形状において、ウインドウガラスの下縁部を保持する少なくとも一つのホルダ本体とを有し、連結部は、ホルダ本体の下縁部から離間する方向に延設され、かつ、連結部は、摺動方向における断面形状において、第2の曲率半径を有する円弧状部を少なくとも一部分に有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、円弧状の軌跡に沿って円滑に摺動できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態のホルダ付きウインドウガラスが搭載された車両の要部右側面図
図2図1に示したホルダ付きウインドウガラスの構成を示した正面図
図3図2に示したホルダの3-3線に沿う断面図
図4】実施形態に係るホルダ付きウインドウガラスの摺動動作を示した説明図
図5】比較例のホルダ付きウインドウガラスの摺動動作を示した説明図
図6】変形例のホルダの構成を示した正面図
図7】他の変形例のホルダの構成を示した断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に従って本発明に係るホルダ付きウインドウガラスの実施形態を説明する。
【0013】
なお、本明細書において、方向と位置を表わす「上」「下」「車内」「車外」「前方」「後方」は、ホルダ付きウインドウガラスが車両に搭載された場合の「上」「下」「車内」「車外」「前方」「後方」を意味する。
【0014】
図1は、実施形態に係るホルダ付きウインドウガラス10が搭載された車両100の左側面図である。また、図2は、図1のホルダ付きウインドウガラス10の構成を示した正面図である。なお、図1及び図2では、車両100の前方を矢印Aで示し、後方を矢印Bで示している。また、図1及び図2に示す二点鎖線Cは車両100のベルトラインを示している。
【0015】
図1に示すホルダ付きウインドウガラス10は、一例として、フロントサイドガラスに適用されたものであり、車両100のフロントサイドドア102に組付けられる。また、ホルダ付きウインドウガラス10は、フロントサイドドア102のドアパネル104の内部に配置された昇降装置50(図2参照)に連結され、昇降装置50からの駆動力により昇降移動されてフロントサイドドア102の窓用開口部106を開閉する。なお、本発明のホルダ付きウインドウガラスは、リヤサイドガラス108にも適用できる。
【0016】
以下、図2に示す昇降装置50の概略構成について説明する。
【0017】
昇降装置50は、駆動源であるモータ52と、ガイドレール54と、昇降部材であるスライダ56と、第1ワイヤ58と、第2ワイヤ60と、ドラム62とを有している。また、昇降装置50と協同して、ホルダ付きウインドウガラス10の昇降をガイドするフロントサッシュ64及びリヤサッシュ66がフロントサイドドア102(図1参照)に設けられている。
【0018】
ガイドレール54は、その長手方向がホルダ付きウインドウガラス10の後述する摺動方向に沿うように配置される。また、その長手方向の形状が、ホルダ付きウインドウガラス10の摺動方向に沿った円弧状に形成されている(図4参照)。
【0019】
スライダ56は、ホルダ付きウインドウガラス10に連結される部材であり、ガイドレール54に対しガイドレール54の長手方向に沿って摺動自在に係合されている。
【0020】
第1ワイヤ58は、一端がドラム62に連結され、他端がスライダ56に連結されている。第2ワイヤ60は、一端がドラム62に連結され、他端がスライダ56に連結されている。
【0021】
フロントサッシュ64は、ホルダ付きウインドウガラス10を構成するウインドウガラス12の前縁部12Aを摺動自在に支持し、リヤサッシュ66は、ウインドウガラス12の後縁部12Bを摺動自在に支持している。フロントサッシュ64及びリヤサッシュ66は、それぞれの長手方向がホルダ付きウインドウガラス10の摺動方向に沿うように配置され、また、それぞれの長手方向の形状が、ホルダ付きウインドウガラス10の摺動方向に沿った円弧状に形成されている(図4参照)。
【0022】
上記のように構成された昇降装置50によれば、モータ52によってドラム62が一方向に回転されると、第1ワイヤ58がドラム62に巻き取られ、第2ワイヤ60がドラム62から送り出される。これにより、スライダ56がガイドレール54に沿って上昇することにより、ホルダ付きウインドウガラス10が、フロントサッシュ64及びリヤサッシュ66にガイドされながらガイドレール54の長手方向の形状に沿った円弧状の軌跡D(図3参照)に沿って上昇する。
【0023】
また、モータ52によってドラム62が他方向に回転されると、第1ワイヤ58がドラム62から送り出され、第2ワイヤ60がドラム62に巻き取られる。これにより、スライダ56がガイドレール54に沿って下降することにより、ホルダ付きウインドウガラス10が、フロントサッシュ64及びリヤサッシュ66にガイドされながら上記の円弧状の軌跡D(図3参照)に沿って下降する。
【0024】
図3は、図2に示したホルダ付きウインドウガラス10の3―3線に沿う断面図である。すなわち、図3は、車両100の後方側から前方側を見たときのホルダ付きウインドウガラス10の断面図であって、ホルダ付きウインドウガラス10の摺動方向における断面図である。なお、図3では、ホルダ付きウインドウガラス10の構成を分かり易く説明するために、ガイドレール54の図示を省略している。
【0025】
実施形態では、ホルダ付きウインドウガラス10を構成するウインドウガラス12として、単板のガラス板を例示して説明する。なお、ホルダ付きウインドウガラス10の摺動方向に相当する円弧状の軌跡Dは、図3において一点鎖線で示されており、この軌跡Dの曲率半径の中心は車内側に位置している。これにより、軌跡Dは車内側から車外側に向けた凸の湾曲形状を有している。また、図1及び図2で示したフロントサッシュ64及びリヤサッシュ66は、図3において二点鎖線で示している。
【0026】
図2及び図3に示すように、ウインドウガラス12は、正面視(図2参照)で略台形状に構成されている。また、ウインドウガラス12は、車両100(図1参照)に取り付けられた状態で、摺動方向における断面形状が、第1の曲率半径R1を有する湾曲形状を有している(図3参照)。
【0027】
図3に示すように、ウインドウガラス12は車両100に取り付けられた場合に、車外側に凸となるような湾曲形状を有する。なお、ウインドウガラス12は1方向にのみ湾曲した単曲曲げ形状であってもよいし、直交する2つの方向に湾曲した複曲曲げ形状であってもよい。
【0028】
更に、ウインドウガラス12は、その周縁部を構成する前縁部12A、後縁部12B、上縁部12C及び下縁部12Dを有している。下縁部12Dは、ベルトラインCと平行となるように略直線状に構成されており、下縁部12Dに突出部を備えていないものが採用されている。なお、ウインドウガラス12は、この形状に限定されるものではなく、上記の突出部を備えたものであってもよい。また、上記の平行とは、完全な平行である態様を含む他、例えば下縁部12DとベルトラインCとのなす角度が10度程度の範囲内で傾斜した態様も含む。
【0029】
ウインドウガラス12としては、無機ガラスであっても有機ガラスであってもよい。無機ガラスとしては、例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が特に制限なく用いられる。これらのうちでも、製造コスト、成形性の点からソーダライムガラスが特に好ましい。
【0030】
ウインドウガラス12が無機ガラスである場合、ウインドウガラス12は、未強化ガラス、強化ガラスの何れでもよい。強化ガラスとしては、風冷強化ガラス、化学強化ガラスのいずれでもよい。未強化ガラスは、溶融ガラスを板状に成形し、徐冷したものである。強化ガラスは、未強化ガラスの表面に圧縮応力層を形成したものである。強化ガラスは、物理強化ガラス(例えば風冷強化ガラス)、化学強化ガラスの何れでもよい。物理強化ガラスである場合は、曲げ成形において均一に加熱したガラス板を軟化点付近の温度から急冷させるなど、徐冷以外の操作により、ガラス表面とガラス内部との温度差によってガラス表面に圧縮応力層を生じさせることで、ガラス表面を強化してもよい。化学強化ガラスである場合は、曲げ成形の後、イオン交換法等によってガラス表面に圧縮応力を生じさせることでガラス表面を強化してもよい。又、紫外線又は赤外線を吸収するガラスを用いてもよい。更に、透明であることが好ましいが、透明性を損なわない程度に着色されたガラス板であってもよい。
【0031】
ウインドウガラス12が有機ガラスである場合、有機ガラスの材料としては、ポリカーボネート、アクリル樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の透明樹脂が挙げられる。
【0032】
ウインドウガラス12は、2枚以上のガラス板を、中間膜を介して接着された合わせガラスであってもよい。合わせガラスの中間膜は、一例としてPVB(poly vinyl butyral:ポリビニルブチラール)製又はEVA(ethylene vinyl acetate:エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)製などの公知の膜を用いることが出来る。合わせガラスの中間膜は、透明であってもよいし、着色された中間膜であってもよい。また、中間膜は2層以上であってもよい。
【0033】
ウインドウガラス12の厚みは特に限定されないが、0.5mm以上5.0mm以下であることが好ましい。ウインドウガラス12が合わせガラスである場合、ウインドウガラス12を車両に取り付け場合に外側に位置するガラスの厚みは1.8mm以上3mm以下であることが好ましい。外側に位置するガラスの厚みが1.8mm以上であると、耐飛び石性能等の強度が十分であり、3mm以下であると、合わせガラスの質量が大きくなり過ぎず、車両の燃費の点で好ましい。外側に位置するガラスの厚みは、1.8mm以上2.8mm以下がより好ましく、1.8mm以上2.6mm以下が更に好ましい。また、ウインドウガラス12を車両に取り付け場合に内側に位置するガラスの厚みは、0.3mm以上2.3mm以下であることが好ましい。内側に位置するガラスの厚みが0.3mm以上であることによりハンドリング性がよく、2.3mm以下であることによりの質量が大きくなり過ぎない。
【0034】
上述した通り、ウインドウガラス12は湾曲形状を有する。ウインドウガラス12の曲げ成形には、重力成形、プレス成形、ローラー成形等が用いられる。ウインドウガラス12の成形法についても特に限定されないが、例えば、無機ガラスの場合はフロート法等により成形されたガラス板が好ましい。
【0035】
図2及び図3に示すように、ウインドウガラス12の下縁部12Dの一部には、一対のホルダ14、14が下縁部12Dに沿った方向に間隔を開けて備えられている。ホルダ14は、例えば、金属製であってもよく樹脂製であってもよい。樹脂製の場合、POM(polyacetal:ポリアセタール樹脂)、PBT(polybutyleneterephthalate:ポリブチレンテレフタレート樹脂)などのエンジニアリングプラスティック、またはこれらのエンジニアリングプラスティックにグラスファイバーを混在させた樹脂、若しくはPOMと比較して硬度の低いPP(polypropylene:ポリプロリレン樹脂)又はPVC(polyvinyl chloride:ポリ塩化ビニル)などの熱可塑性エラストマを例示できる。
【0036】
ホルダ14は、ホルダ本体16と連結部18とを有する。
【0037】
ホルダ本体16は、図3に示すように、ホルダ付きウインドウガラス10の摺動方向における断面形状において、ウインドウガラス12の下縁部12Dを保持するために断面U字形状に形成されている。具体的に説明すると、ホルダ本体16は、互いに対向する一対の側壁20、22と、一対の側壁20、22の下部を連結する底壁24であってウインドウガラス12の下縁部12Dの端面と対向する底面26を有する底壁24を有している。なお、下縁部12Dの端面は底面26に当接されていてもよく、隙間をもって底面26に対向されていてもよい。
【0038】
連結部18は、板状に形成されるとともに、底壁24の底面26に対向する下面(下縁部)28から一対の側壁20、22側とは反対側に延設されている。これにより、連結部18は、ホルダ本体16がウインドウガラス12の下縁部12Dに装着された場合、下縁部12Dから離間する方向に延設される。また、連結部18には、連結用孔30が備えられており、この連結用孔30に挿入される図2のボルト32をスライダ56のネジ孔(不図示)に締結することにより、ホルダ14、14がスライダ56に連結される。
【0039】
また、連結部18は、ホルダ付きウインドウガラス10の摺動方向における断面形状において、第2の曲率半径R2を有する円弧状部18Aを有する。この円弧状部18Aは、一例として、底壁24の下面28から連結用孔30の中心30Aまでの長さL3の部分に形成されている。なお、L3は、下面28から中心30Aまでの最短の長さではなく、円弧状部18Aに沿った円弧状の長さである。
【0040】
ここで、ウインドウガラス12の第1の曲率半径R1と、円弧状部18Aの第2の曲率半径R2と、ホルダ付きウインドウガラス10が摺動方向に描く軌跡Dの第3の曲率半径R3との関係について説明する。
【0041】
第1の曲率半径R1と、第2の曲率半径R2と、第3の曲率半径R3のそれぞれの中心は、それぞれ車内側に位置している。また、第1の曲率半径R1は、一例として、1000mm以上100000mm以下であることが好ましく、第2の曲率半径R2も同様に1000mm以上100000mm以下であることが好ましい。ホルダ付きウインドウガラス10の円滑な摺動動作を達成する観点からみれば、第1の曲率半径R1と第2の曲率半径R2とは同じであることが好ましいが、これに限定されるものではく、第2の曲率半径R2を有する円弧状部18Aを連結部18の一部に備えることにより、上記の円滑な摺動動作を達成できる。この点については後述する。
【0042】
また、第1の曲率半径R1と、第2の曲率半径R2とは同じであってよく、第1の曲率半径R1と、第3の曲率半径R3は同じであってもよく、第2の曲率半径R2と、第3の曲率半径R3とは同じであってもよい。また、第1の曲率半径R1と、第2の曲率半径R2と、第3の曲率半径R3とは同じであることが好ましい。これにより、上記の摺動動作がより一層円滑となる。
【0043】
次に、上記の如く構成された実施形態に係るホルダ付きウインドウガラス10の作用について説明する。
【0044】
図4は、ホルダ付きウインドウガラス10の摺動動作を示した説明図である。
【0045】
図4に示すように、ホルダ14は、第2の曲率半径R2(図3参照)を有する円弧状部18Aを介してスライダ56に連結されており、また、スライダ56は、第3の曲率半径R3(図3参照)を有する軌跡Dに沿った円弧状のガイドレール54に係合されている。この構成により、第1の曲率半径R1(図3参照)を有するウインドウガラス12が軌跡Dに沿って摺動された場合、スライダ56は、ガイドレール54に対し常に一定の摩擦抵抗が与えられた状態で摺動動作する。
【0046】
次に、比較例について図5に示すホルダ付きウインドウガラス70を参照して説明する。
【0047】
図5に示すホルダ付きウインドウガラス70のホルダ72は、平坦な板状の連結部74を有している。つまり、図5に示す連結部74は、ホルダ本体76の一方の側壁78から直線的に延設されたものであり、図3に示したような第2の曲率半径R2を有する円弧状部18Aは備えていない。
【0048】
図5に示すホルダ付きウインドウガラス70では、スライダ56に連結部74を締結すると、スライダ56は、連結部74の形状に支配されて本来の摺動姿勢(図4参照)から車外側に離間した姿勢に変化する。これにより、ガイドレール54とスライダ56との間の摩擦抵抗が図4の場合と比較して増大するので、図5のホルダ付きウインドウガラス70は、軌跡Dに沿って円滑に摺動できない。
【0049】
これに対し、図4に示した実施形態のホルダ付きウインドウガラス10によれば、ホルダ14の連結部18に第2の曲率半径R2を有する円弧状部18Aを備え、この円弧状部18Aを介してホルダ14をスライダ56に連結したので、円弧状の軌跡Dに沿って円滑に摺動できる。
【0050】
なお、実施形態のホルダ14は、連結部18の一部である長さL3の部分を円弧状部18Aとして構成したが、連結部18の全体を円弧状部として構成してもよい。また、ホルダ本体16の側壁20、20にも第2の曲率半径R2を有する円弧状部を備えてもよい。
【0051】
ところで、実施形態のホルダ14を下記のように構成した場合、ウインドウガラス12の軽量化が図られるので好ましい。
【0052】
すなわち、図3に示すように、ホルダ本体16の一対の側壁20、22の上面20A、22Aから底面26までの長さをL1とし、底面26から連結用孔30の中心30Aまでの長さをL2とした場合に、L1×2≦L2の関係式を満たすようにホルダ14を構成する。
【0053】
ここで、特許文献2及び3などで示されるウインドウガラスの突出部の下方への突出量は、概ねL1の長さの2倍以上であるので、L2の長さをL1×2以上とすることにより上記の突出部をホルダ14の連結部18によって代用できる。これにより、突出部を削減又は突出部の突出量が抑えられるので、図2の如くウインドウガラス12の下縁部12DをベルトラインCと平行に形成でき、また、下縁部12DをベルトラインCに近づけることもできる。よって、実施形態のウインドウガラス12によれば、突出部を有するウインドウガラスと比較して軽量化が図られる。
【0054】
なお、図3のホルダ本体16は、一対の側壁20、22の高さが等しいものであるが、高さが互いに異なる場合は、高さの低い側壁の上面から底面26までの距離をL1とすればよい。
【0055】
以上、本発明について説明したが、本発明は、上記の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、いくつかの改良又は変形を行ってもよい。
【0056】
例えば、実施形態のホルダ14は、図2に示したように、ウインドウガラス12の下縁部12Dに間隔を開けて一対備えられたものであるが、図6に示すホルダ80の変形例の如く、一つのホルダ本体82に一対の連結部84、84を備えたものであってもよい。ずなわち、図6に示すホルダ80の変形例では、ウインドウガラス12の下縁部12Dにホルダ80が一つだけ備えられていてもよい。また、このホルダ80によれば、一対の連結部84、84は、ホルダ本体82の下縁部82Aにおいてウインドウガラス12の下縁部12Dに沿った方向に間隔を開けて備えられる。
【0057】
例えば、ホルダ本体16は、図7(a)に示すように、側壁20と、側壁20の下部に連結される底壁24であってウインドウガラス12の下縁部12Dの端面と対向する底面26を有する底壁24を有するものでもよい。また、ホルダ本体16は、図7(b)に示すように、側壁22と、側壁22の下部に連結される底壁24であってウインドウガラス12の下縁部12Dの端面と対向する底面26を有する底壁24を有するものでもよい。すなわち、ホルダ本体16は、ウインドウガラス12の少なくとも一方の主面と対向する側壁20又は側壁22と、ウインドウガラス12の下縁部12Dの端面と対向する底面26を有する底壁24とを有していればよい。ウインドウガラス12の少なくとも一方の主面は、接着剤86によって側壁20又は側壁22に接着される。なお、図3に示したホルダ付きウインドウガラス10も同様である。
【符号の説明】
【0058】
10…ホルダ付きウインドウガラス、12…ウインドウガラス、14…ホルダ、16…ホルダ本体、18…連結部、18A…円弧状部、20…側壁、22…側壁、24…底壁、26…底面、28…下面、30…連結用孔、32…ボルト、50…昇降装置、52…モータ、54…ガイドレール、56…スライダ、58…第1ワイヤ、60…第2ワイヤ、62…ドラム、64…フロントサッシュ、66…リヤサッシュ、70…ホルダ付きウインドウガラス、72…ホルダ、74…連結部、76…ホルダ本体、78…側壁、80…ホルダ、82…ホルダ本体、84…連結部、86…接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7