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特許7402439押出成形用金型、プラスチック製造装置及びプラスチック製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】押出成形用金型、プラスチック製造装置及びプラスチック製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/32 20190101AFI20231214BHJP
   B29C 48/36 20190101ALI20231214BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20231214BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20231214BHJP
【FI】
B29C48/32
B29C48/36
B29C44/00 E
B29K67:00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021069981
(22)【出願日】2021-04-16
(65)【公開番号】P2022164470
(43)【公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-08-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】小川 哲
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴司
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-251680(JP,A)
【文献】特開平9-85796(JP,A)
【文献】特開2015-155213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/32
B29C 48/36
B29C 44/00
B29K 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類のプラスチックを含むプラスチック組成物が押し出される押出口と、
供給された前記プラスチック組成物を前記押出口へ流すプラスチック流路を備えた押出成形用金型において、
前記プラスチック流路は、第一流路と、前記第一流路に接続され、前記プラスチック組成物の流れ方向下流にいくにつれて、流路断面積が徐々に減少していく第二流路と、前記第二流路に接続され、前記プラスチック組成物を前記押出口まで流す第三流路とを有し、
前記第三流路は、前記プラスチック組成物の流れ方向下流にいくにつれて、流路断面積が徐々に減少していくことを特徴とする押出成形用金型。
【請求項2】
請求項1に記載の押出成形用金型において、
前記第一流路と前記第二流路との接続部の流路断面積が、前記第二流路と前記第三流路との接続部の流路断面積の3倍以上であることを特徴とずる押出成形用金型。
【請求項3】
請求項1または2に記載の押出成形用金型において、
貫通孔を有する外側ダイと、
前記貫通孔の内周面に隙間を有して前記貫通孔内に配置される内側ダイとを有し、
前記外側ダイの前記貫通孔の内周面と、前記内側ダイの外周面とにより、押出中心軸に直交する断面形状が環状の前記プラスチック流路を形成し、
前記外側ダイの前記貫通孔の前記第二流路を形成する内周面は、前記プラスチック組成物の流れ方向下流にいくに従って内径が徐々に減少する形状であり、
前記外側ダイの前記貫通孔の前記第三流路を形成する内周面は、前記プラスチック組成物の流れ方向下流にいくに従って内径が徐々に拡径する形状であり、
前記内側ダイの前記第三流路を形成する外周面は、前記プラスチック組成物の流れ方向下流にいくに従って内径が徐々に拡径する形状であり、
前記内側ダイの前記第三流路を形成する外周面と前記外側ダイの前記貫通孔の前記第三流路を形成する内周面とのギャップが、前記プラスチック組成物の流れ方向下流にいくに従って徐々に狭まっていくことを特徴とする押出成形用金型。
【請求項4】
請求項3に記載の押出成形用金型において、
前記内側ダイの前記第一流路を形成する外周面と、前記第二流路を形成する外周面とが、前記押出中心軸と平行であることを特徴とする押出成形用金型。
【請求項5】
請求項4に記載の押出成形用金型において、
前記内側ダイの前記第一流路を形成する外周面と、前記第二流路を形成する外周面の外径が、20[mm]以下であることを特徴とする押出成形用金型。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか一項に記載の押出成形用金型において、
押出中心軸を含む前記押出中心軸に平行な断面において、
前記押出口から押し出される前記プラスチック組成物の押出方向と、前記押出中心軸とのなす角度βが、50°以上、90°以下であることを特徴とする押出成形用金型。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか一項に記載の押出成形用金型において、
押出中心軸を含む前記押出中心軸に平行な断面において、
前記第二流路の流路中心線と、前記押出中心軸とのなす角度αが、10°以上、45°以下であることを特徴とする押出成形用金型。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれか一項に記載の押出成形用金型において、
押出中心軸を含む前記押出中心軸に平行な断面において、
前記第一流路の流路中心線のプラスチック組成物の流れ方向上流側が前記押出中心軸に交差するときの角度をマイナス、前記第一流路の流路中心線のプラスチック組成物の流れ方向下流側が前記押出中心軸に交差するときの角度をプラスとしたとき、
前記第一流路の流路中心線と、前記押出中心軸とのなす角度γが、-10°以上、30°以下であることを特徴とする押出成形用金型。
【請求項9】
請求項1乃至8いずれか一項に記載の押出成形用金型において、
前記第二流路の押出中心軸方向の長さが10[mm]以上であることを特徴とする押出成形用金型。
【請求項10】
金型を有し、
前記金型に少なくとも1種類のプラスチックを含むプラスチック組成物が供給し、前記金型の押出口からプラスチック組成物を押し出して発泡プラスチックを製造するプラスチック製造装置において、
前記金型として、請求項1乃至9いずれか一項に記載の押出成形用金型を用いたことを特徴とするプラスチック製造装置。
【請求項11】
請求項10に記載のプラスチック製造装置において、
圧縮性流体の存在下において、少なくとも1種類のプラスチックを、該プラスチックの融点より低い温度で混錬してプラスチック組成物を得る混錬部を有することを特徴とするプラスチック製造装置。
【請求項12】
請求項10または11に記載のプラスチック製造装置において、
圧縮性流体の存在下において、前記プラスチックの融点より低い温度で前記金型から前記プラスチック組成物を押し出して発泡プラスチックを成形する押出成形部を有することを特徴とするプラスチック製造装置。
【請求項13】
請求項10乃至12いずれか一項に記載のプラスチック製造装置において、
前記プラスチック組成物は、ポリ乳酸を90質量パーセント以上含有していることを特徴とするプラスチック製造装置。
【請求項14】
少なくとも1種類のプラスチックを含むプラスチック組成物を、金型の押出口から押し出して発泡プラスチックを製造するプラスチック製造方法において、
前記金型として、請求項1乃至9いずれか一項に記載の押出成形用金型を用いたことを特徴とするプラスチック製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形用金型、プラスチック製造装置及びプラスチック製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、少なくとも1種類のプラスチックを含むプラスチック組成物が押し出される押出口と、供給されたプラスチック組成物を押出口へ流すプラスチック流路を備えた押出成形用金型が知られている。
【0003】
特許文献1には、プラスチック流路が、第一流路と、第一流路に接続された第二流路と、第二流路に接続され、プラスチック組成物を押出口まで流す第三流路とを有するものが記載されている。第二流路は、プラスチック組成物の流れ方向下流にいくにつれて、流路断面積が徐々に減少していくように形成されている。第三流路は、押出中心軸から離れる方向にプラスチック組成物を流すように形成されている。そして、押出中心軸を含む押出中心軸に平行な断面において、第二流路と第三流路との接続部のギャップ(GA)と、押出口のギャップ(GB)との比(GB)/(GA)を、5~20にし、第三流路が、押出口に向かうにつれて流路断面積が増加する構成が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発泡プラスチックにコルゲート状のしわが発生するおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、少なくとも1種類のプラスチックを含むプラスチック組成物が押し出される押出口と、供給された前記プラスチック組成物を前記押出口へ流すプラスチック流路を備えた押出成形用金型において、前記プラスチック流路は、第一流路と、前記第一流路に接続され、前記プラスチック組成物の流れ方向下流にいくにつれて、流路断面積が徐々に減少していく第二流路と、前記第二流路に接続され、前記プラスチック組成物を前記押出口まで流す第三流路とを有し、前記第三流路は、前記プラスチック組成物の流れ方向下流にいくにつれて、流路断面積が徐々に減少していくことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、発泡プラスチックにコルゲート状のしわが発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る発泡プラスチックを製造するプラスチック製造装置の概略構成図。
図2】マスターバッチを製造する混練装置の概略構成図。
図3】従来のダイの概略断面図。
図4】本実施形態のダイの押出中心軸に平行な断面図。
図5】実施例2のダイの押出中心軸に平行な断面図。
図6】実施例3のダイの押出中心軸に平行な断面図。
図7】実施例4のダイの押出中心軸に平行な断面図。
図8】比較例1のダイの押出中心軸に平行な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
まず、発泡プラスチックたるプラスチック発泡シートの製造方法について説明する。
(プラスチック発泡シートの製造方法)
本発明のプラスチック発泡シートの製造方法は、混錬工程と、発泡工程等を有し、更に必要に応じてその他の工程を有する。
混錬工程と、発泡工程とは、同時に行ってもよく、別々の工程として行ってもよい。
【0009】
<<混練工程>>
混錬工程は、プラスチックと、必要に応じてフィラーとを、混錬する工程である。混錬工程においては、発泡をより効率的に進めるため、発泡剤を加えても良い。成形品の用途に応じて、架橋剤、酸化防止剤、着色剤、各種光線の吸収剤、帯電防止剤、導電材を混錬しても良い。発泡をより効率的に進めるため、あるいは混錬をより効率的に進めるため、圧縮性流体の存在下において、混練工程を実施しても良い。
【0010】
なお、プラスチック、フィラー、及び最終成形品を得る過程の中間工程で発生する混合物のことをプラスチック組成物、マスターバッチと称することがある。
【0011】
<プラスチック>
上記プラスチックとしては、ポリスチレン、ポリ-p-メチルスチレン等のスチレン系単独重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体等のスチレン系共重合体、ポリスチレンとポリフェニレンオキシドとの混合物等のスチレン系樹脂、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート・3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート・3-ヒドロキシバリレート)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート・アジペート)等の脂肪族ポリエステル樹脂などを用いることができる。
【0012】
なかでも、微生物により生分解される生分解性樹脂,環境に優しい低環境負荷高分子材料である脂肪族ポリエステル樹脂が好ましく、特にカーボンニュートラルな材料であり、かつ比較的安価であるポリ乳酸が更に好ましい。ポリ乳酸を90質量パーセント以上含有させることで、生分解性を有する発泡プラスチックを得ることができる。
【0013】
<フィラー>
上記フィラー(以下、「発泡核材」と称することもある)は、発泡シートの発泡状態(泡の大きさ、及び量、配置)などを調節する目的や、低コスト化の目的、強度向上の目的で含有される。
前記フィラーとしては、無機系フィラー、有機系フィラーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
上記無機系フィラーとしては、例えば、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、層状珪酸塩、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維などが挙げられる。
【0015】
上記有機系フィラーとしては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然に存在するポリマーやこれらの変性品、またソルビトール化合物、安息香酸およびその化合物の金属塩、燐酸エステル金属塩、ロジン化合物などが挙げられる。
【0016】
これらの中でも、後述する圧縮性流体との親和性が高い点から、無機系核剤であるシリカが好ましい。また、シリカ以外のフィラーをベースとして用いる場合は、シリカで表面処理されたフィラーが好ましい。
【0017】
<発泡剤>
上記発泡剤としては、高い発泡倍率のプラスチック発泡シートを得られ易い点において、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の低級アルカン等の炭化水素類、ジメチルエーテル等のエーテル類、メチルクロライド、エチルクロライド等のハロゲン化炭化水素類、二酸化炭素、窒素等の圧縮性ガスなどの物理発泡剤などが挙げられる。
これらの中でも、臭気がない、安全に取り扱える、環境負荷が低いという観点で、二酸化炭素や窒素などの圧縮性ガスを用いることが好ましい。
【0018】
<圧縮性流体>
上記圧縮性流体として用いることができる物質としては、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化二窒素、窒素、メタン、エタン、プロパン、2,3-ジメチルブタン、エチレン、ジメチルエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、二酸化炭素は、臨界圧力が約7.4MPa、臨界温度が約31℃であって、容易に超臨界状態を作り出せること、不燃性で取扱いが容易であることなどの点で好ましい。これらの圧縮性流体は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0019】
プラスチックと圧縮性流体の組み合わせ、温度、圧力によって、圧縮性流体の溶解度が変わるため、圧縮性流体の供給量は適宜調整する必要がある。
例えば、ポリ乳酸と二酸化炭素の組み合わせであれば、2質量%以上30質量%以下が好ましい。二酸化炭素の供給量が2質量%以上であると、可塑化の効果は限定的になるという不具合を防止できる。二酸化炭素の供給量が30質量%以下であると、二酸化炭素とポリ乳酸とが相分離し、均一な厚みの発泡シートを得ることができないという不具合を防止できる。
【0020】
<混錬装置>
混練工程で使用される混錬装置としては、混錬工程と発泡工程を連続で行う連続プロセスを採用することもできるし、回分式プロセスを採用することもできるが、装置効率や製品の特性,品質等を勘案し適宜、反応プロセスを選択することが好ましい。
【0021】
混練装置としては、混練に好適な粘度に対応できる点から、一軸押出機、多軸押出機、ニーダー、無軸籠型撹拌槽、住友重機株式会社製バイボラック、三菱重工業株式会社製N-SCR、株式会社日立製作所製めがね翼、格子翼又はケニックス式、ズルツァー式SMLXタイプスタチックミキサー具備管型重合槽などを使用できる。色調の点から、セルフクリーニング式の重合装置であるフィニッシャー、N-SCR、二軸軸押し出しルーダーなどが挙げられる。これらの中でも、樹脂の色調、安定性、及び耐熱性の点では、フィニッシャー、N-SCRが好ましい。生産効率の点では、一軸押出機、多軸押出機が好ましい。
【0022】
<<発泡工程>>
発泡工程は、発泡剤を膨張させ、プラスチック組成物を発泡させる工程である。圧縮性流体の場合は、圧を開放させることで、膨張及び発泡剤を除去することができる。発泡工程の際の温度としては、プラスチックが押出可能な範囲で可塑化されるような温度に加温することが好ましい。
なお発泡工程にプラスチック組成物を流動させるための駆動力としては、前述の混錬装置からの圧力を利用してもよいし、発泡工程のために別途1軸または多軸の押出機やシリンダーなどの機械装置を用いても良い。
【0023】
<その他の工程>
その他の工程としては、通常のプラスチック発泡シートの製造において行われる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シートに加工する成形工程などが挙げられる。
成形工程としては、例えば、真空成型、圧空成形、プレス成型などが挙げられる。本実施形態では、円筒状のマスターバッチを成形し、このマスターバッチを成形工程でシート状にし、プラスチック発泡シートを得る。
【0024】
図1は、本実施形態に係る発泡プラスチックを製造するプラスチック製造装置の概略構成図である。
プラスチック製造装置20は、混練工程を実施する混練装置としての第一押出機21Aと、発泡工程を実施する第二押出機21Bとを直列に接続して備える。
【0025】
第二押出機21Bの先端(押出方向下流端)には、押出成形用金型であるダイ1が取り付けられており、このダイ1からプラスチック組成物が発泡しながら押し出されることで、発泡プラスチックが成形される。
【0026】
第一押出機21Aは、原材料混合・溶融エリア(a)と、圧縮性流体供給エリア(b)と、混練エリア(c)とを有しており、第二押出機21Bは、押出エリア(d)を有している。
【0027】
第一押出機21Aと第二押出機21Bは、2軸押出機(JSW社製、スクリュー口径42mm、L/D=48)である。
【0028】
<原材料混合・溶融エリア>
原材料混合・溶融エリアaでは、第一定量フィーダ22Aによりフィラーが供給され、第二定量フィーダ22Bによりポリ乳酸などの樹脂材が供給される。なお、フィラーに変えて、第一定量フィーダ22Aから、混練装置10(図2参照)により製造されたマスターバッチを供給するようにしてもよい。
【0029】
<圧縮性流体供給エリア>
圧縮性流体供給エリアbには、ガス導入部23が接続されている。ガス導入部23は、発泡剤を含んだ圧縮性流体が貯留されたガスタンク231と、ガスタンク231内の圧縮性流体を規定量、圧縮性流体供給エリアbに供給する計量ポンプ232とを有している。
【0030】
原材料混合・溶融エリアaにて樹脂ペレットが加温により溶融状態となりフィラーを濡らした状態の原材料混合物に発泡剤を含む圧縮性流体を計量ポンプ132にて供給し、溶融樹脂を可塑化させる。
【0031】
<混練エリア>
圧縮性流体供給エリアbにて圧縮性流体が供給されたプラスチック組成物は、混練エリアcへ押し出される。
混練エリアcでは、フィラーの混練に好適な粘度となるような温度に設定されている。設定温度は、装置の仕様や樹脂種、樹脂の構造、分子量などで変わる。そのため、特に限定するものではないが、重量平均分子量(Mw)200,000程度の市販されているポリ乳酸の場合、通常の混練は、ポリ乳酸の融点に対して10℃~20℃高い設定温度で行われる。これに対して、圧縮性流体とともに混錬することで、ポリ乳酸の融点より低い温度で混錬することができる。設定温度を樹脂の融点より低い温度とすることで、比較的高い粘度で混錬することが可能である。具体的には、設定温度は、樹脂の融点よりも20℃~80℃、より好ましくは30℃~60℃低くする。簡便的には装置の撹拌動力の電流値などを目安に温度設定することができる。
【0032】
融点よりも低い温度でプラスチック組成物を混練することで、混錬効率が上昇し、ダイ1内部での発泡速度をプラスチック組成物内で均一にできる。これにより、成形された発泡プラスチックに部分的なコルゲート状のしわの発生を抑制することができる。また、押出機11内部でのコゲやヤニなどの劣化、炭化、酸化、分解の発生を抑制する付帯効果も得ることができる。
【0033】
融点よりも低い温度でプラスチック組成物を混練することで、混錬効率が上昇し、ダイ1内部での発泡速度をプラスチック組成物内で均一にできる。これにより、成形された発泡プラスチックに部分的なコルゲート状のしわの発生を抑制することができる。また、押出機11内部でのコゲやヤニなどの劣化、炭化、酸化、分解の発生を抑制する付帯効果も得ることができる。
【0034】
<押出エリア>
第一押出機21Aの混練エリアcにて混練し、第二押出機21Bの押出エリアdに供給される。押出エリアdの先端(押出方向下流側端部)には、押出成形用金型であるダイ1が取り付けられている。ダイ1から押し出される際にプラスチック組成物が発泡し、円筒状の発泡プラスチックが生成される。
【0035】
プラスチック組成物の発泡させる発泡工程を行う押出エリアdの設定温度としては、ダイ1から押し出される際のプラスチック組成物の温度がプラスチック組成物の融点より低い温度となるように設定されるのが好ましい。ダイ1から押し出される際のプラスチック組成物の温度を、プラスチック組成物の融点より低い温度とすることでプラスチック組成物を増粘させることができるため高発泡倍率の発泡プラスチックを得ることができる。
【0036】
<成形加工エリア>
成形加工エリアeには、ダイ1から押出された筒状の発泡プラスチックを冷却するマンドレル25が配置されている。ダイ1から押出された筒状の発泡プラスチックをマンドレル25上に沿わせると共に、その外面をエアリングからエアーを吹き付けて冷却することで筒状の発泡プラスチックが成形される。その後、冷却した筒状の発泡プラスチックをカッターにより切開して、平坦シートにし、ローラ26を通過させた後、巻き取りローラ27で巻き取り、発泡シートを得る。
【0037】
次に、第一定量フィーダ22Aにより第一押出機21Aに供給されるマスターバッチの製造について説明する。
図2は、マスターバッチを製造する混練装置10の概略構成図である。
混練装置10は、2軸押出機(JSW社製、スクリュー口径42mm、L/D=48)である。混練装置10は、図1に示したプラスチック製造装置20と同様に、原材料混合・溶融エリア(a)と、圧縮性流体供給エリア(b)と、混練エリア(c)と、押出エリア(d)と、成形加工エリア(e)とを備えている。
【0038】
原材料混合・溶融エリアaにて、第一定量フィーダ12Aによりフィラーが供給され、第二定量フィーダ12Bによりポリ乳酸などの樹脂材が供給される。そして、圧縮性流体供給エリアbにて、ガス導入部13から圧縮性流体が規定量供給される。そして、混練エリアcにて混練されたのち、押出エリアdへ押し出される。
【0039】
押出エリアdには、圧力弁14が設けられている。圧力弁14を開放して、プラスチック組成物の圧縮性流体を外部に排出された後、プラスチック組成物がストランド状に押出される。このストランド状の押し出されたプラスチック組成物冷却した後、成形加工エリアeにてカッターでペレタイズし、ペレット状のマスターバッチが製造される。
【0040】
発泡プラスチックの発泡倍率は、高発泡倍率のものほどコスト面で優れている。コストの観点から、発泡プラスチックの発泡倍率は、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上、さらに好ましくは20倍以上、さらに好ましくは30倍以上、特に好ましくは40倍以上が好ましい。なお、45倍以上は強度低下の観点から一般的な発泡プラスチック部材としては価値が低下し梱包材などの用途に限定される。
【0041】
しかしながら、高発泡倍率とすると、発泡プラスチックにコルゲート状のしわが発生するおそれが高まる。梱包材用途においては、美観の観点ではコルゲート状のしわが許容される場合もあるが、スタック性の悪化を避けるためコルゲート状のしわがない方が良い。
【0042】
また、成形した発泡プラスチックシートを、使い捨て容器やブリスターパック等の2次成形に供する用途においては、発泡倍率は1倍から30倍とすることが好ましく、より好ましくは1倍から10倍、さらに好ましくは1倍から3倍である。この用途においては、低発泡倍率であるが、コルゲート状のしわが発生すると美観性が損なわれてしまい、また、コルゲート状のしわを起点とする強度低下に起因する2次成形不良が発生するおそれもある。従って、この用途においては、コルゲート状のしわは許容されない。
【0043】
所望の発泡倍率は、混錬温度、滞留時間、雰囲気温度、発泡剤濃度、発泡剤種類、発泡剤均一性、プラスチック分子量分布、ダイ1からの吐出速度等のいずれかまたは複数を組み合わせて制御することで得ることができる。
【0044】
コルゲート状のしわは、発泡倍率に関係があり、発泡倍率が高いほど、コルゲート状のしわが発生することが知られている。しかしながら、上述したように、成形した発泡プラスチックの用途により最適な発泡倍率があるため、発泡倍率を落として、コルゲート状のしわを抑制することには限界がある。
【0045】
図3は、従来のダイ100の概略断面図である。
図3に示すように従来のダイ100は、プラスチック組成物の押出方向(図中右側から左側へ向かう方向)に貫通する貫通孔を有する外側ダイ101aと、外側ダイ101aの貫通孔内に配置された内側ダイ101bとを有している。
【0046】
外側ダイ101aの貫通孔の内周面と内側ダイ101bの外周面とにより押出中心軸gに直交する断面形状が環状のプラスチック流路102が形成されている。内側ダイ101bと外側ダイ101aとの隙間であるプラスチック流路102は、上流側流路102aと下流側流路102bとを有している。
【0047】
上流側流路102aの流路断面積(流路内でのプラスチック組成物の流れ方向に対して垂直な断面)は、流路内でのプラスチック組成物の流れ方向下流側にいくほど減少している。
【0048】
下流側流路102bは、流路内でのプラスチック組成物の流れ方向下流側にいくほど、徐々に拡径するように構成されている。また、下流側流路102bの流路断面積がプラスチック組成物の流れ方向下流にいくに従って、徐々に大きくなるように構成されている。
【0049】
この従来のダイ100について、高発泡倍率の発泡プラスチックシートを得ようとすると、コルゲート状のしわが発生した。本出願人が鋭意研究したところ、下流側流路102bにおいて、プラスチック組成物にかかる圧力がプラスチック組成物が発泡を開始する圧力以下となり、下流側流路102bでプラスチック組成物の発泡が開始していることがわかった。狭い下流側流路102bでプラスチック組成物が発泡してプラスチック組成物の体積が増加しても、その発泡の逃げ場がない。その結果、プラスチック組成物が、逃げ場を求めてプラスチック組成物の上下流へ発泡し、このようなコルゲート状のしわが発生したと考えられる。
【0050】
そこで、本実施形態では、プラスチック組成物が流れるプラスチック流路の形状を工夫し、プラスチック流路内のプラスチック組成物にかかる圧力を最適化することで、コルゲート状のしわを抑えて、高発泡倍率の発泡プラスチックシートを得られるようにした。以下、図面を用いて具体的に説明する。
【0051】
図4は、本実施形態のダイの押出中心軸に平行な断面図。
図4は、ダイ1の押出中心軸gを含む押出中心軸gに平行な断面図である。
上記押出中心軸gは、内側ダイ1bの寸法上の中心と外側ダイ1aの寸法上の中心とが重なる円環状のプラスチック流路111の中心線である。なお、内側ダイ1bの寸法上の中心線と外側ダイ1aの寸法上の中心線とが一致していないときは、円環状のプラスチック流路111を流れるプラスチック流体の重心を含む直線を押出中心軸gとする。本実施形態では、円筒状の成型品を得るダイであるが四角筒状の成型品を得るダイ1においても同様である。
【0052】
ダイ1は、プラスチック組成物の押出方向(図中右側から左側へ向かう方向)に貫通する貫通孔101を有する外側ダイ1aと、外側ダイ1aの貫通孔101内に配置された内側ダイ1bとを有している。
【0053】
外側ダイ1aおよび内側ダイ1bは、S45C、S50C、SS400、SCM440、SUS316、SUS304、及びそれらと同等の材質を用いることができる。また、耐久性向上の目的でハードクロムメッキ等の各種メッキを施しても良いし、熱伝導率向上の目的でC2810、A5052、アルミナ等を選択しても良い。また、分析目的で石英ガラス等を用いても良いし、離型性向上の目的で鏡面研磨仕上げとしても良い。また、ブラスト仕上げとしても良いし、離型剤を塗工しても良い。さらには、金型の構造が可変となる金型を用いても構わない。
【0054】
外側ダイ1aの貫通孔101は、真円であり、押出方向上流側から内径が一定の第一内周面4aと、押出方向下流に行くに従って内径が減少する第二内周面4bと、押出方向下流に行くに従って内径が増加する第三内周面4cとを有している。
【0055】
内側ダイ1bの押出方向各位置の外周面5は真円であり、押出方向上流側から径が一定の第一外周面5aと、押出方向下流に行くに従って外径が増加する第二外周面5bとを有している。
【0056】
外側ダイ1aの貫通孔の内周面4は、プラスチック組成物が流れるプラスチック流路2の外側内壁面となる。内側ダイ1bの貫通孔内に配置された部分の外周面は、プラスチック流路2の内側内壁面となる。
【0057】
内側ダイ1bと外側ダイ1aとの隙間であるプラスチック流路2は、第一流路2aと、第二流路2bと、第三流路2cとを有している。第一流路2aは、流路断面積が一定である。は、第一流路2aに接続され、プラスチック組成物の流れ方向下流にいくに従って流路断面積が減少している。第三流路2cは、第二流路2bに接続され、プラスチック組成物の流れ方向の下流側端部がプラスチック組成物が押し出される円環状の押出口3となっている。
【0058】
第三流路2cの流路断面積が、プラスチック組成物流れ方向下流に行くに従って、徐々に減少する構成としている。プラスチック組成物流れ方向下流に行くに従って、徐々に減少する構成とすることで、第三流路2cの圧力がプラスチック流れ方向上流の圧力が高く、下流側にいくほど圧力損失により圧力が低下し、押出口3で最も低くなる。
【0059】
これにより、押出口3でのプラスチック組成物の圧力を所定の圧力(例えば、7MPa)を調整したとき、第三流路2c内におけるプラスチック組成物にかかる圧力は、7MPa以上にでき、第三流路2cでプラスチック組成物が発泡するのを抑制することができる。これにより、コルゲート状のしわの発生を抑制することができる。
【0060】
高発泡倍率の発泡プラスチックを得るためには、高い圧力(例えば、30MPa)がかかったプラスチック組成物が押出機から供給される。この高い圧力(例えば、30MPa)がかかったプラスチック組成物を押出口3でプラスチック組成物を所定の圧力(例えば、7Ma程度)まで減圧する必要がある。そのため、プラスチック流路2で圧力損失を生じさせて、押出口3から押し出されるプラスチック組成物の圧力を所定の圧力まで減少させる必要がある。
【0061】
プラスチック組成物の圧力損失は、なるべくプラスチック流路の下流側で生じさせるのが好ましい。これは、プラスチック流路の下流側でプラスチック組成物の圧力を損失させることで、押出口3でのプラスチック組成物の圧力を所定の圧力にコントロールしやすいからである。
【0062】
そのため、本実施形態のダイ1は、第一流路2aは、流路断面積を広くするともに、第一流路2aでは、プラスチック組成物を押出中心軸gと平行にプラスチック組成物を流し、第一流路2aでの圧力損失を抑えるようにした。
【0063】
また、押出口3に接続された第三流路2cでプラスチック組成物の流れを阻害して大きく圧力損失させてしまうと、第三流路2cでプラスチック組成物の流れが乱れてしまうおそれがある。その結果、押出口3からプラスチック組成物をスムーズに押し出すことができず、コルゲート状のしわが発生するおれがある。
【0064】
そのため、第三流路2cは、徐々に流路断面積を狭めるようにし、第三流路2cでプラスチック組成物の滞留が生じないようにしつつ、プラスチック組成物にかかる圧力を徐々に損出させるようにした。このように、第三流路2cでプラスチック組成物の滞留が生じないようにすることで、第三流路2cでプラスチック組成物の流れが乱れるのを抑制でき、スムーズにプラスチック組成物を押出口3から押し出すことができる。これにより、コルゲート状のしわの発生を良好に抑制できる。
【0065】
第三流路2cの流路断面積は、第三流路2cのプラスチック組成物の流れ方向(第三流路2cの流路中心線h3)に直交する断面である。第三流路2cは、円環状で、図4に示す断面において、プラスチック組成物の流れ方向下流にいくに従って、押出中心軸gから離れるような流路である。従って、第三流路2cの流路断面積は、円錐の面の一部を切り取ったよ3次元平面となる。このとき、流路断面積は、解析的に計算することで求めることができる。真円ではない中空金型を使った場合などにおいて、解析的な計算が困難な場合は、3次元CAD等の方法により断面積を実測して求めてもよい。
【0066】
しかし、上記第三流路2cでの圧力損失だけでは、押出機から高い圧力で供給されたプラスチック組成物を、押出口3までに所定の圧力(7MPa程度)まで低下させることができない。そのため、第二流路2bは、第一流路2aとの接続部A(第二流路2bの入口)の流路断面積D1と、第三流路2cとの接続部B(第二流路2bの出口)の流路断面積D2との比(D1/D2)を大きくしている。(D1/D2)を大きくすることで、この第二流路2bでプラスチック組成物を大きく圧力損失させることができる。これにより、押出口3から押し出されるプラスチック組成物の圧力を、所定の圧力(例えば、7MPa程度)まで減少させることができ、高い発泡倍率の発泡プラスチックシートを得ることができる。
【0067】
接続部A(第二流路の入口)の流路断面積D1と、第三流路2cとの接続部B(第二流路の出口)の流路断面積D2との比(D1/D2)を3以上、すなわち、流路断面積D1を、流路断面積D2の3倍以上にするのが好ましい。3倍以上とすることで、第二流路2bで、良好にプラスチック組成物の圧力損失を生じさせることができ、押出口3から押し出されるプラスチック組成物の圧力を、所定の圧力まで減少させることができる。これにより、高い発泡倍率の発泡プラスチックシートを得ることができる。
【0068】
なお、第一流路2aと第二流路2bとの接続部Aは、第一流路2aの流路中心線h1と、第二流路2bの流路中心線h2とが交わる交点である。また、第二流路2bと第三流路2cとの接続部Bは、第二流路2bの流路中心線h2と、第三流路2cの流路中心線h3とが交わる交点である。
【0069】
また、接続部A(第二流路の入口)の流路断面積D1は、第一流路2aの流路中心線h1と、第二流路2bの流路中心線h2とが交わる交点を含む押出中心軸gに直交する断面である。接続部B(第二流路の出口)の流路断面積D2は、第二流路2bの流路中心線h2と、第三流路2cの流路中心線h3とが交わる交点を含む押出中心軸gに直交する断面である。
【0070】
また、図4に示す断面において、第二流路2bの流路中心線h2と、押出中心軸gとのなす角度αは、10°以上、45°以下が好ましく、より好ましくは、15°以上40°以下、さらに好ましくは、20°以上、35°以下である。角度αが、10°未満だと、この第二流路2bでのプラスチック組成物の圧力損失が不十分となり、押出口3にプラスチック組成物が到達するまでの間に、プラスチック組成物の圧力をプラスチック組成物が発泡する圧力まで減少しないおそれがある。一方、角度αが45°を越えてしまうと、図4に示すように、押出中心軸gから離れる方向にプラスチック組成物を流す第三流路との接続部Bにおいて、プラスチック組成物の流れ方向が大きく変更されてしまう。その結果、接続部Bの出口の第三流路2cの上流側でプラスチック組成物の流れが乱れてしまうおそれがある。その結果、スムーズにプラスチック組成物を押出口3から押し出すことができず、コルゲート状のしわが発生するおそれがある。また、プラスチック組成物の流れの乱れにより大きく圧力損失する箇所が発生し、流路内でプラスチック組成物が発泡するおそれもある。
【0071】
第二流路2bの流路中心線h2と押出中心軸gとのなす角度αを、10°以上、45°以下とすることで、第三流路2cでのプラスチック組成物の流れの乱れを抑制し、かつ、押出口3におけるプラスチック組成物を規定の圧力に低下させることができる。これにより、コルゲート状のしわの発生を抑え、高発泡倍率の発泡プラスチックシートを得ることができる。
【0072】
また、第二流路2bの押出中心軸方向の長さは10[mm]以上とするのが好ましい。10[mm]未満だと、外側ダイ1aの内周面の第二流路2bの外側内壁面を構成する第二内周面4bの押出中心軸gに対する角度が大きくなりすぎる。そのため、第一流路内の外側を流れるプラスチック組成物は、押出中心軸gに平行に流れた後、この第二内周面4bにより急激に押出中心軸gに向かう方向に流れが変更される。その結果、第二流路2bでプラスチック組成物の流れが乱れてしまう。このように、流路内で流れが乱れると、この流れが乱れた箇所で大きな圧力損失が発生し、流路内でのプラスチック組成物が発泡するおそれがある。また、流れが乱れてしまうと、例えば、渦が発生したり、消えたりするなどして、流路内のプラスチック組成物の圧力が安定しなくなってしまう。
【0073】
一方、第二流路2bの押出中心軸方向の長さは10[mm]以上とすることで、第二内周面4bの傾斜を緩やかにでき、第二流路2bでのプラスチック組成物の流れの乱れを抑制でき、良好に流路内のプラスチック組成物の圧力をコントロールすることができる。
【0074】
また、本実施形態では、図4に示すように、第一流路2aの内側内壁面と、第二流路2bの内側内壁面を構成する内側ダイ1bの第一外周面5aが、押出中心軸gと平行となっている。これによれば、第一流路2aの内側を流れるプラスチック組成物は、流れ方向を変更されることなく、そのまま押出中心軸gと平行に第二流路2bを流れる。これにより、第二流路2bでプラスチック組成物の流れが乱れてしまうのを抑制でき、良好に流路内のプラスチック組成物の圧力をコントロールすることができる。
【0075】
また、内側ダイ1bの第一外周面5aの直径は、20[mm]以下が好ましい。第一外周面5aの直径が20[mm]を超えて、図4と同様なプラスチック流路2を形成した場合、ダイが大型化してしまう。内側ダイ1bの第一外周面5aの直径を20[mm]以下とすることで、ダイ1の大型化を抑制して、第一流路2aの流路断面積を大きくでき、第一流路2aでプラスチック組成物の圧力損失が発生するのを良好に抑制できる。
【0076】
また、図4に示す断面において、押出口3から押し出されるプラスチック組成物の押出方向(第三流路2cの流路中心線h3)と、押出中心軸gとのなす角度βが、50°以上、90°以下とするのが好ましい。角度βが50°未満だと、第二流路2bから第三流路2cへのプラスチック組成物が流れる際のプラスチック組成物の圧力損失が不十分になるおそれがあり、押出口3でのプラスチック組成物の圧力を所定の圧力まで低下できないおそれがある。その結果、高発泡倍率の発泡プラスチックシートが得られないおそれがある。
【0077】
また、角度βが90°以下だと、接続部Bにおいて、プラスチック組成物の流れ方向が大きく変更されてしまう。その結果、接続部Bの出口の第三流路2cの上流側でプラスチック組成物の流れが乱れてしまうおそれがある。その結果、スムーズにプラスチック組成物を押出口3から押し出すことができず、コルゲート状のしわが発生するおそれがある。また、プラスチック組成物の流れの乱れにより大きく圧力損失する箇所が発生し、流路内でプラスチック組成物が発泡するおそれもある。
【0078】
角度βを50°以上、90°以下とすることで、第三流路2cでのプラスチック組成物の流れの乱れを抑制でき、かつ、押出口3におけるプラスチック組成物の圧力を所定の圧力まで低下させることができる。これにより、コルゲート状のしわの発生を抑制し、高発泡倍率の発泡プラスチックシートを得ることができる。
【0079】
また、図4に示す例では、第一流路2aを押出中心軸gに平行(第一流路2aの流路中心線h1と押出中心軸とのなす角度γ=0°)としているが、第一流路2aを押出中心軸gに対して多少傾斜させてもよい。第一流路2aの流路中心線h1と押出中心軸とのなす角度γが-10°以上、30°以下であれば、第一流路2aから第二流路2bへプラスチック組成物をスムーズに流すことができる。これにより、第一流路と第二流路との接続部Aで圧力損失が発生するのを抑制することができる。また、より好ましい角度γは、―10°以上、20°以下さらに好ましくは―10°以上、10°以下である。
【0080】
なお、上記角度γは、第一流路2aの押出方向下流側が上流側よりも押出中心軸g側に位置するような傾斜のときの第一流路2aの流路中心線との押出中心軸gとの角度をプラスとする。一方、第一流路2aの押出方向上流側が下硫流側よりも押出中心軸g側に位置するような傾斜のときの第一流路2aの流路中心線との押出中心軸gとの角度をマイナスとする。
【0081】
次に、本出願人が行った評価試験について、説明する。
まず、評価に用いるプラスチック発泡シートの作成について説明する。
<プラスチック発泡シートの作成>
プラスチック発泡シートの作成は、図1に示すプラスチック製造装置20を用いた。プラスチック製造装置20の第一押出機21Aと、第二押出機21Bとしては、2軸押出機(JSW社製、スクリュー口径42mm、L/D=48)を用いた。第二押出機21Bの押出方向下流側端部に、後述する実施例1~3、比較例1のダイを取り付け、シート状の発泡プラスチックを製造し、コルゲートのしわの有無を評価した。実施例1~3、比較例1のダイは、外径70mmであり、材質は、SCM440にクロムメッキを施したものである。
【0082】
図2に示す混練装置10を用いて、フィラーが3質量%のフィラーマスターバッチ作成した。このマスターバッチを図1に示すプラスチック製造装置20の第一定量フィーダ22Aにセットした。第一定量フィーダ22Aから第一押出機21Aの原材料混合・溶融エリアaへ単位時間当たり1.67kg/hrでマスターバッチを供給する。また、第二定量フィーダ22Bからポリ乳酸樹脂(Revode110、HISUN社製、融点160℃)を単位時間当たり8.33kg/hrで原材料混合・溶融エリアaへ供給する。これにより、ポリ乳酸が90質量%以上含有されたプラスチック組成物が得られる。
【0083】
圧縮性流体供給エリアbでは、圧縮性流体として二酸化炭素を供給した。供給する圧縮性流体の供給量を変化させて、発泡倍率を調整した。
【0084】
この圧縮性流体が供給されたプラスチック組成物を第一押出機21Aの混練エリアcにて混練し、第二押出機21Bの押出エリアdに供給した。ダイ1の押出流路部111bにて、押出エリアdにおいて混錬したプラスチック組成物から圧縮性流体を除去することにより、押出発泡された発泡体を得た。ダイ1からのプラスチック組成物の吐出量は10kg/h、ダイ1から押し出されるプラスチック組成物の温度は150℃とした。
【0085】
なお、第一押出機21Aにおける原材料混合・溶融エリアa及び圧縮性流体供給エリアbの温度は、190°に設定した。また、第一押出機21Aにおける混練エリアcの温度は、150℃に設定し、ポリ乳酸の融点温度(160℃)よりも10℃低い温度に設定した。また、第二押出機21Bの押出エリアdの温度は、ダイ1から押し出されるプラスチック組成物の温度が約150℃以下となるように設定した。また、圧縮性流体供給エリアbから混練エリアc、第二押出機21Bの押出エリアd(より正確には、ダイ1の供給流路部111a)までの圧力を7.0MPa以上とした。
【0086】
<<発泡体の評価方法>>
<発泡倍率>
発泡プラスチックの発泡倍率は、下記式(*)の通り、発泡プラスチックを構成している組成物の密度(真密度ρ0)をかさ密度(ρ1)で除することで、求めることができる。
発泡倍率=真密度(ρ0)/かさ密度(ρ1)・・・(*)
【0087】
なお、ここでの真密度は、最終的なプラスチック組成物として残存するプラスチック組成物の密度であり、文献値や非発泡コンパウンドペレットを実測しても構わない。ポリ乳酸の場合は、おおよそ1.25g/cmである。
【0088】
かさ密度は測定により求める。かさ密度の測定方法は、特に限定されるものではなく適宜任意のかさ密度の測定方法を用いることができる。例えば、次のような方法でかさ密度を測定できる。温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間以上放置した発泡シートの外形寸法を測定し、かさ体積を求める。次いで、この発泡シートの重量を測定する。発泡シートの重量をかさ体積で除することにより、発泡シートのかさ密度を求める。
【0089】
<コルゲート状のしわの評価>
コルゲート状のしわの評価は、発生有無を表面や断面の目視観察で確認した。なお、前述した任意の方法にて発泡倍率を変化させたときのコルゲート状のしわが発生する発泡倍率の範囲を評価項目とした。
【0090】
<実施例1>
実施例1のダイは、第一流路2aの流路断面積が一定で、第二流路2bおよび第三流路2cの流路断面積がプラスチック組成物の流れ方向下流に行くに従って減少する図4に示すダイ1を用いた。角度βは60°、角度αは30°、角度γは0°である。
実施例1のダイを、第二押出機21Bの先端に取り付け、意図的に圧縮性流体の供給量を変化させ発泡倍率が1倍~50倍の発泡体を得た。
【0091】
その結果、発泡倍率1倍~50倍までの発泡体にはコルゲート状のしわが確認されず良好な発泡体を得た。またコルゲート部の破れや透けも発生しなかった。
【0092】
<実施例2>
図5は、実施例2のダイ1の押出中心軸gに平行な断面図である。
実施例2のダイは、図5に示すように、角度βを45°とした以外は、実施例1のダイと同構成である。この実施例2のダイを、第二押出機21Bの先端に取り付け、実施例1と同様にして発泡体を得た。
【0093】
その結果、発泡倍率1倍~30倍までの発泡体にはコルゲート状のしわが確認されなかったが、発泡倍率が30~50倍の発泡体においてはコルゲート状のしわは見られれ、40倍以上ではシートの一部で破れや透けが発生した。
【0094】
<実施例3>
図6は、実施例3のダイ1の押出中心軸gに平行な断面図である。
実施例3のダイ1は、角度αを10°とした以外は、実施例1のダイと同構成である。この実施例3のダイを、第二押出機21Bの先端に取り付け、実施例1と同様にして発泡体を得た。
【0095】
その結果、発泡倍率1倍~30倍までの発泡体にはコルゲート状のしわが確認されなかったが、発泡倍率が30~50倍の発泡体においてはコルゲート状のしわが見られ、40倍以上ではシートの一部で破れや透けが発生した。
【0096】
<実施例4>
図7は、実施例4のダイ1の押出中心軸gに平行な断面図である。
実施例4のダイ1は、角度γを30°とした以外は、実施例1のダイと同構成である。この実施例4のダイを、第二押出機21Bの先端に取り付け、実施例1と同様にして発泡体を得た。
【0097】
その結果、発泡倍率1倍~30倍までの発泡体にはコルゲート状のしわが確認されなかったが、発泡倍率が30~50倍の発泡体においてはコルゲート状のしわが見られ、40倍以上ではシートの一部で破れや透けが発生した。
【0098】
<比較例1>
図8は、比較例1のダイ1の押出中心軸gに平行な断面図である。
比較例1のダイは、図8に示すように、第三流路2cが、プラスチック組成物の流れ方向下流に行くに従って、流路断面積が徐々に大きくなる構成とした以外は、実施例1のダイと同構成である。この比較例1のダイを、第二押出機21Bの先端に取り付け、実施例1と同様にして発泡体を得た。
【0099】
その結果、発泡倍率1.5倍~50倍までの発泡体にコルゲート状のしわが観測された。特に押出方向と直交方向の周期的波打ちが顕著であり、実用に供せる発泡体とならなかった。中でも発泡倍率5倍以上の高発泡倍率でのコルゲート状のしわは、単なる厚みの偏差だけでなく、発泡体の透けや、コルゲートを欠陥とした裂けなどが顕著であった。
【0100】
比較例1は、第三流路2cが、プラスチック組成物の流れ方向下流に行くに従って、流路断面積が徐々に大きくなる構成としている。そのため、第三流路2cでプラスチック組成物が発泡してしまったと考えられる。高発泡倍率の場合、体積の増加が大きく、狭い第三流路2cで発泡すると、発泡の逃げ場が無くなってしまう。その結果、プラスチック組成物が、逃げ場を求めてプラスチック組成物の上下流へ発泡して、1.5倍以上でコルゲート状のしわが発生したと考えられる。
【0101】
これに対し、実施例1~4は、いずれも、第三流路2cが、プラスチック組成物の流れ方向下流に行くに従って、流路断面積が徐々に小さくなる構成としている。これにより、第三流路2cでプラスチック組成物の発泡が発生するのを抑制することができ、少なくとも発泡倍率1~30倍でコルゲートしわのない良好な発泡体を得ることができたと考えられる。特に、実施例1については、1~50倍でコルゲートしわのない良好な発泡体を得ることができ、コルゲートしわのない良好な高発泡倍率の発泡体を得ることができた。
【0102】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
少なくとも1種類のプラスチックを含むプラスチック組成物が押し出される押出口3と、供給されたプラスチック組成物を押出口3へ流すプラスチック流路2を備えたダイ1などの押出成形用金型において、プラスチック流路2は、第一流路2aと、第一流路2aに接続され、プラスチック組成物の流れ方向下流にいくにつれて、流路断面積が徐々に減少していく第二流路2bと、第二流路2bに接続され、プラスチック組成物を押出口3まで流す第三流路2cとを有し、第三流路2cは、プラスチック組成物の流れ方向下流にいくにつれて、流路断面積が徐々に減少していく。
これによれば、上述した評価試験で説明したように、プラスチック組成物の流れ方向下流にいくにつれて流路断面積が徐々に減少していくように第三流路を形成することで、コルゲート状のしわを抑え、高発泡倍率の発泡プラスチックを得ることができる。
【0103】
(態様2)
態様1において、第一流路2aと第二流路2bとの接続部Aの流路断面積が、第二流路2bと第三流路2cとの接続部Bの流路断面積の3倍以上である。
これによれば、実施形態で説明したように、第二流路2bでの圧力損失を高めることができ、押出口3でのプラスチック組成物の圧力を所定の圧力にまで減少させることができる。これにより、高発泡倍率の発泡体を得ることができる。
【0104】
(態様3)
態様1または2において、貫通孔を有する外側ダイ1aと、貫通孔の内周面4に隙間を有して貫通孔内に配置される内側ダイ1bとを有し、外側ダイ1aの貫通孔の内周面4と、内側ダイ1bの外周面5とにより、押出中心軸gに直交する断面形状が環状のプラスチック流路2を形成し、外側ダイ1aの貫通孔の第二流路2bを形成する第二内周面4bなどの内周面は、プラスチック組成物の流れ方向下流にいくに従って内径が徐々に減少する形状であり、外側ダイ1aの貫通孔の第三流路2cを形成する第三内周面4cなどの内周面は、プラスチック組成物の流れ方向下流にいくに従って内径が徐々に拡径する形状であり、内側ダイの第三流路2cを形成する第二外周面5bなどの外周面は、プラスチック組成物の流れ方向下流にいくに従って内径が徐々に拡径する形状であり、内側ダイの第三流路2cを形成する外周面と外側ダイ1aの貫通孔の第三流路2cを形成する内周面とのギャップが、プラスチック組成物の流れ方向下流にいくに従って徐々に狭まっていく。
これによれば、実施形態で説明したように、環状の第一流路2aと、プラスチック組成物の流れ方向下流に行くに従って流路断面積が減少する環状の第二流路2bと、上記流れ方向下流に行くに従って、拡径する環状の第三流路2cとを形成することができる。さらに、プラスチック組成物の流れ方向下流に行くに従って流路断面積が減少する第三流路2cを形成することができる。
【0105】
(態様4)
態様3において、内側ダイ1bの第一流路2aを形成する外周面と、第二流路2bを形成する外周面とが、押出中心軸gと平行である。
これによれば、実施形態で説明したように、第一流路2aの内側(押出中心軸g側)を流れるプラスチック組成物は、流れ方向を変更されることなく、そのまま押出中心軸gと平行に第二流路2bを流れる。これにより、第二流路2bでプラスチック組成物の流れが乱れてしまうのを抑制でき、良好に流路内のプラスチック組成物の圧力をコントロールすることができる。
【0106】
(態様5)
態様4において、内側ダイ1bの第一流路2aを形成する外周面と、第二流路2bを形成する外周面の外径が、20[mm]以下である。
これによれば、実施形態で説明したように、ダイ1などの押出成形用金型の大型化を抑制して、第一流路2aの流路断面積を大きくでき、第一流路2aで圧力損失が発生するのを良好に抑制できる。
【0107】
(態様6)
態様1乃至5いずれかにおいて、押出中心軸gを含む押出中心軸gに平行な断面において、押出口から押し出されるプラスチック組成物の押出方向と、押出中心軸gとのなす角度βが、50°以上、90°以下である。
これによれば、実施形態で説明したように、第三流路2cでのプラスチック組成物の流れの乱れを抑制でき、かつ、押出口3におけるプラスチック組成物の圧力を所定の圧力まで低下させることができる。これにより、コルゲート状のしわの発生を抑制し、高発泡倍率の発泡プラスチックシートを得ることができる。
【0108】
(態様7)
態様1乃至6いずれかにおいて、押出中心軸gを含む押出中心軸gに平行な断面において、第二流路2bの流路中心線h2と、前記押出中心軸gとのなす角度αが、10°以上、45°以下である。
これによれば、実施形態で説明したように、第三流路2cでのプラスチック組成物の流れの乱れを抑制し、かつ、押出口3におけるプラスチック組成物を規定の圧力に低下させることができる。これにより、コルゲート状のしわの発生を抑え、高発泡倍率の発泡プラスチックシートを得ることができる。
【0109】
(態様8)
態様1乃至7いずれかにおいて、押出中心軸gを含む押出中心軸gに平行な断面において、第一流路2aの流路中心線h1のプラスチック組成物の流れ方向上流側が前記押出中心軸に交差するときの角度をマイナス、第一流路2aの流路中心線h1のプラスチック組成物の流れ方向下流側が前記押出中心軸gに交差するときの角度をプラスとしたとき、第一流路2aの流路中心線h1と、押出中心軸gとのなす角度γが、-10°以上、30°以下である。
これによれば、実施形態で説明したように、第一流路2aから第二流路2bへプラスチック組成物をスムーズに流すことができ、第一流路と第二流路との接続部Aで圧力損失が発生するのを抑制することができる。
【0110】
(態様9)
態様1乃至8いずれかにおいて、第二流路2bの押出中心軸方向の長さが10[mm]以上である。
これによれば、実施形態で説明したように、第二流路2bでのプラスチック組成物の流れの乱れを抑制でき、良好に流路内のプラスチック組成物の圧力をコントロールすることができる。
【0111】
(態様10)
ダイ1などの金型を有し、金型に少なくとも1種類のプラスチックを含むプラスチック組成物が供給し、金型の押出口3からプラスチック組成物を押し出して発泡プラスチックを製造するプラスチック製造装置20において、金型として、態様1乃至9いずれかの発泡プラスチック押出成形用金型を用いた。
これによれば、コルゲート状のしわが発生する発泡倍率を高めることができる。
【0112】
(態様11)
態様10において、圧縮性流体の存在下において、少なくとも1種類のプラスチックを、プラスチックの融点より低い温度で混錬してプラスチック組成物を得る混練エリアcなどの混錬部を有する。
これによれば、実施形態で説明したように、混錬効率が上昇し、ダイなどの金型内部での発泡速度をプラスチック組成物内で均一にできる。これにより、部分的なコルゲート状のしわ発生を抑制することができる。また、装置内部でのコゲやヤニなどの劣化、炭化、酸化、分解の発生を抑制することができる。
【0113】
(態様12)
態様10または11において、圧縮性流体の存在下において、ポリ乳酸などのプラスチックの融点より低い温度でダイ1などの金型からプラスチック組成物を押し出して発泡プラスチックを成形する押出エリアdなどの押出成形部を有する。
これによれば、ラスチックの融点より高い温度でダイ1などの金型からプラスチック組成物を押し出して発泡プラスチックを成形する場合に比べてプラスチック組成物の粘度を高めることができる。これにより、粘度が高い状態でプラスチック組成物を押し出して発泡プラスチックを成形することができ、破泡することなく良好な発泡体を得ることができる。
【0114】
(態様13)
態様10乃至12いずれかにおいて、プラスチック組成物は、ポリ乳酸を90質量パーセント以上含有している。
これによれば、実施形態で説明したように、生分解性を有する発泡プラスチック組成物の製造装置を提供することができる。
【0115】
(態様14)
少なくとも1種類のプラスチックを含むプラスチック組成物を、ダイ1などの金型の押出口3から押し出して発泡プラスチックを製造する発泡プラスチック製造方法において、金型として、態様1乃至8いずれかの発泡プラスチック押出成形用金型を用いた。
これによれば、コルゲート状のしわがない少なくとも発泡倍率1以上、30倍以下の発泡プラスチックを製造することができる。
【符号の説明】
【0116】
1 :ダイ
1a :外側ダイ
1b :内側ダイ
2 :プラスチック流路
2a :第一流路
2b :第二流路
2c :第三流路
3 :押出口
4 :内周面
4a :第一内周面
4b :第二内周面
4c :第三内周面
5 :外周面
5a :第一外周面
5b :第二外周面
10 :混練装置
12A :第一定量フィーダ
12B :第二定量フィーダ
13 :ガス導入部
14 :圧力弁
20 :プラスチック製造装置
21A :第一押出機
21B :第二押出機
22A :第一定量フィーダ
22B :第二定量フィーダ
23 :ガス導入部
25 :マンドレル
100 :ダイ
A :接続部
B :接続部
a :溶融エリア
b :圧縮性流体供給エリア
c :混練エリア
d :押出エリア
e :成形加工エリア
g :押出中心軸
h1 :第一流路の流路中心線
h2 :第二流路の流路中心線
h3 :第三流路の流路中心線
α :第二流路の流路中心線と押出中心軸との角度
β :第三流路の流路中心線と押出中心軸との角度
γ :第一流路の流路中心線と押出中心軸との角度
【先行技術文献】
【特許文献】
【0117】
【文献】特許第4573505号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8