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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20231214BHJP
   G03F 7/30 20060101ALI20231214BHJP
   B05C 11/08 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H01L21/30 564C
H01L21/30 569C
G03F7/30 501
B05C11/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019190548
(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公開番号】P2021068739
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 翔吾
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-238838(JP,A)
【文献】特表2017-508616(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0039035(KR,A)
【文献】特開昭62-237966(JP,A)
【文献】特開2017-107919(JP,A)
【文献】登録実用新案第3193314(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
G03F 7/16-7/18、7/26-7/42
B05C 7/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容する処理室と、
前記処理室内の前記基板を保持して回転させる回転保持部と、
前記回転保持部に保持された前記基板の表面に処理液を供給する処理液供給部と、
前記回転保持部に保持された前記基板の外周よりも外に設けられた排気口から、前記処理室内のガスを排出する排気部と、
前記回転保持部に保持された前記基板の周方向の一部分において前記表面に対向し、当該基板の周方向の他の部分において前記表面に対向しないように前記処理室内に配置されるプレートと、
前記プレートが前記一部分において前記表面に対向する第1状態と、前記第1状態に比較して前記プレートが前記表面から離れて位置する第2状態とを切り替えるプレート配置部と、
制御装置と、を備え、
前記プレート配置部は、少なくとも前記表面に垂直な方向において前記プレートを変位させ、
前記第1状態において、前記基板と前記プレートとの間隔は、0.5mm~5mmであり、
前記第2状態において、前記基板と前記プレートとの間隔は、50mm~180mmであり、
前記制御装置は、
前記処理液供給部が供給する前記処理液が第1種の処理液である場合には、前記プレート配置部により前記第1状態を継続させつつ、前記回転保持部により前記基板を回転させることで、前記処理液の液膜を乾燥させ、
前記処理液供給部が供給する前記処理液が第2種の処理液である場合には、前記プレート配置部により前記第2状態を継続させつつ、前記回転保持部により前記基板を回転させることで、前記処理液の液膜を乾燥させる、基板処理装置。
【請求項2】
前記プレートは、前記第1状態において、前記基板の周方向の40%~60%において前記表面に対向する、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記プレート配置部は、前記第2状態において前記プレートが前記表面に対向する面積が、前記第1状態において前記プレートが前記表面に対向する面積よりも小さくなるように、前記表面に沿った方向においても前記プレートを変位させる、請求項1又は2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記排気口は、少なくとも、前記第1状態において前記プレートが前記表面に対向する部分に対応する位置に設けられている、請求項1~3のいずれか一項記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記排気口は、前記第1状態において、前記プレートが前記表面に対向しない部分に対応する位置にも設けられている、請求項4記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記表面に前記処理液の液膜を形成するように、前記処理液供給部により前記表面に前記処理液を供給させる液供給制御部と、
前記液膜が前記表面に形成された前記基板が回転している期間の少なくとも一部における前記プレートの配置を、少なくとも前記処理液の種類に基づいて、前記プレート配置部により前記第1状態又は前記第2状態に切り替えるプレート配置制御部と、を有する、請求項1~5のいずれか一項記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板保持部に保持された基板を回転させる回転機構と、基板の中央部に塗布液を供給する塗布液供給機構と、基板の周縁部上方を覆うために基板の周方向に沿うように環状に設けられた環状部材と、環状部材を昇降させる昇降機構と、制御部とを備える塗布膜形成装置(基板処理装置)が開示されている。この基板処理装置の制御部は、環状部材が気流を整流する処理位置に位置する状態で基板を回転させるステップと、環状部材を退避位置に退避させるステップとが行われるように制御信号を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-109306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板処理装置は、処理液を用いて処理を行う際に、上述の特許文献1に記載の環状部材のようなプレートを必要とする液処理と、プレートを必要としない液処理とを行う場合がある。本開示は、プレートを必要とする液処理とプレートを必要としない液処理とを行う装置において、プレート未使用時の液処理結果への影響を低減する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る基板処理装置は、基板を収容する処理室と、処理室内の基板を保持して回転させる回転保持部と、回転保持部に保持された基板の表面に処理液を供給する処理液供給部と、回転保持部に保持された基板の外周よりも外に設けられた排気口から、処理室内のガスを排出する排気部と、回転保持部に保持された基板の周方向の一部分において表面に対向し、当該基板の周方向の他の部分において表面に対向しないように処理室内に配置されるプレートと、プレートが一部分において表面に対向する第1状態と、第1状態に比較してプレートが表面から離れて位置する第2状態とを切り替えるプレート配置部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、プレートを必要とする液処理とプレートを必要としない液処理とを行う装置において、プレート未使用時の液処理結果への影響が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、基板処理システムの概略構成を例示する模式図である。
図2図2は、塗布現像装置の内部構成を例示する模式図である。
図3図3は、液処理ユニットの構成を例示する模式図である。
図4図4は、プレートがウェハに対向している状態を例示する模式的な平面図である。
図5図5は、プレートの変位を例示する模式的な側面図である。
図6図6は、プレートの他の例を示す模式的な平面図である。
図7図7は、プレートの他の例を示す模式的な平面図である。
図8図8は、制御装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図9図9は、液処理手順の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、プレートを必要とする液処理の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、ウェハWの回転速度制御の一例を示すグラフである。
図12図12は、プレートを必要としない液処理の一例を示すフローチャートである。
図13図13は、周方向の対向範囲に応じた乾燥時間を示すグラフである。
図14図14(a)及び図14(b)は、第2状態のプレートの影響を示すグラフである。
図15図15は、第2実施形態に係るプレートを例示する模式的な平面図である。
図16図16は、プレートの変位を例示する模式的な側面図である。
図17図17は、プレートの変位の他の例を示す模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
[基板処理システム]
まず、図1及び図2を参照して基板処理システムの概略構成を説明する。基板処理システム1は、基板に対し、感光性被膜の形成、当該感光性被膜の露光、及び当該感光性被膜の現像を施すシステムである。処理対象の基板は、例えば半導体のウェハWである。処理対象の基板に、2種以上のウェハWが含まれていてもよく、2種以上のウェハWには、表面に段差が形成されたウェハW(段差基板)が含まれていてもよい。感光性被膜は、例えばレジスト膜である。基板処理システム1は、塗布・現像装置2と露光装置3とを備える。露光装置3は、ウェハW(基板)上に形成されたレジスト膜(感光性被膜)の露光処理を行う。具体的には、露光装置3は、液浸露光等の方法によりレジスト膜の露光対象部分にエネルギー線を照射する。塗布・現像装置2は、露光装置3による露光処理の前に、ウェハW(基板)の表面にレジスト膜を形成する処理を行い、露光処理後にレジスト膜の現像処理を行う。
【0010】
[第1実施形態]
以下、第1実施形態に係る基板処理装置の一例として、塗布・現像装置2の構成を説明する。図1及び図2に示されるように、塗布・現像装置2は、キャリアブロック4と、処理ブロック5と、インタフェースブロック6と、制御装置100とを備える。
【0011】
キャリアブロック4は、塗布・現像装置2内へのウェハWの導入及び塗布・現像装置2内からのウェハWの導出を行う。例えばキャリアブロック4は、ウェハW用の複数のキャリアCを支持可能であり、受け渡しアームを含む搬送装置A1を内蔵している。キャリアCは、例えば円形の複数枚のウェハWを収容する。搬送装置A1は、キャリアCからウェハWを取り出して処理ブロック5に渡し、処理ブロック5からウェハWを受け取ってキャリアC内に戻す。
【0012】
処理ブロック5は、複数の処理モジュール11,12,13,14を有する。処理モジュール11,12,13,14は、液処理ユニットU1と、熱処理ユニットU2と、これらのユニットにウェハWを搬送する搬送アームを含む搬送装置A3とを内蔵している。液処理ユニットU1は、処理液をウェハWの表面に供給することで液処理を行う。熱処理ユニットU2は、例えば熱板及び冷却板を内蔵しており、熱板によりウェハWを加熱し、加熱後のウェハWを冷却板により冷却して熱処理を行う。
【0013】
処理モジュール11は、液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2によりウェハWの表面上に下層膜を形成する。処理モジュール11の液処理ユニットU1は、下層膜を形成するための処理液をウェハW上に塗布する。処理モジュール11の熱処理ユニットU2は、下層膜の形成に伴う各種熱処理を行う。
【0014】
処理モジュール12は、液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2により下層膜上にレジスト膜を形成する。処理モジュール12の液処理ユニットU1は、レジスト膜形成用の処理液を下層膜の上に供給して、ウェハWを回転させることで処理液の液膜を乾燥させる。処理モジュール12の熱処理ユニットU2は、レジスト膜の形成に伴う各種熱処理を行う。熱処理の具体例としては、塗布膜を硬化させてレジスト膜とするための加熱処理(PAB:Pre Applied Bake)が挙げられる。
【0015】
処理モジュール13は、液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2によりレジスト膜上に上層膜を形成する。処理モジュール13の液処理ユニットU1は、上層膜形成用の液体をレジスト膜の上に塗布する。処理モジュール13の熱処理ユニットU2は、上層膜の形成に伴う各種熱処理を行う。
【0016】
処理モジュール14は、液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2により、露光後のレジスト膜の現像処理を行う。処理モジュール14の液処理ユニットU1は、露光済みのウェハWの表面上に現像液を塗布した後、これをリンス液により洗い流すことで、レジスト膜の現像処理を行う。熱処理ユニットU2は、現像処理に伴う各種熱処理を行う。熱処理の具体例としては、現像処理前の加熱処理(PEB:Post Exposure Bake)、現像処理後の加熱処理(PB:Post Bake)等が挙げられる。
【0017】
処理ブロック5内におけるキャリアブロック4側には棚ユニットU10が設けられている。棚ユニットU10は、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。棚ユニットU10の近傍には昇降アームを含む搬送装置A7が設けられている。搬送装置A7は、棚ユニットU10のセル同士の間でウェハWを昇降させる。
【0018】
処理ブロック5内におけるインタフェースブロック6側には棚ユニットU11が設けられている。棚ユニットU11は、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。
【0019】
インタフェースブロック6は、露光装置3との間でウェハWの受け渡しを行う。例えばインタフェースブロック6は、受け渡しアームを含む搬送装置A8を内蔵しており、露光装置3に接続される。搬送装置A8は、棚ユニットU11に配置されたウェハWを露光装置3に渡し、露光装置3からウェハWを受け取って棚ユニットU11に戻す。
【0020】
[塗布・現像処理手順]
制御装置100は、例えば以下の手順で塗布・現像処理を実行するように塗布・現像装置2を制御する。まず制御装置100は、キャリアC内のウェハWを棚ユニットU10に搬送するように搬送装置A1を制御し、このウェハWを処理モジュール11用のセルに配置するように搬送装置A7を制御する。
【0021】
次に制御装置100は、棚ユニットU10のウェハWを処理モジュール11内の液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2に搬送するように搬送装置A3を制御する。また、制御装置100は、このウェハWの表面上に下層膜を形成するように、液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する。その後制御装置100は、下層膜が形成されたウェハWを棚ユニットU10に戻すように搬送装置A3を制御し、このウェハWを処理モジュール12用のセルに配置するように搬送装置A7を制御する。
【0022】
次に制御装置100は、棚ユニットU10のウェハWを処理モジュール12内の液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2に搬送するように搬送装置A3を制御する。また、制御装置100は、このウェハWの表面に対してレジスト膜を形成するように液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する。レジスト膜を形成する液処理(以下、「液処理手順」という。)の具体例については後述する。その後制御装置100は、ウェハWを棚ユニットU10に戻すように搬送装置A3を制御し、このウェハWを処理モジュール13用のセルに配置するように搬送装置A7を制御する。
【0023】
次に制御装置100は、棚ユニットU10のウェハWを処理モジュール13内の各ユニットに搬送するように搬送装置A3を制御する。また、制御装置100は、このウェハWのレジスト膜上に上層膜を形成するように液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する。その後制御装置100は、ウェハWを棚ユニットU11に搬送するように搬送装置A3を制御する。
【0024】
次に制御装置100は、棚ユニットU11のウェハWを露光装置3に送り出すように搬送装置A8を制御する。その後制御装置100は、露光処理が施されたウェハWを露光装置3から受け入れて、棚ユニットU11における処理モジュール14用のセルに配置するように搬送装置A8を制御する。
【0025】
次に制御装置100は、棚ユニットU11のウェハWを処理モジュール14内の各ユニットに搬送するように搬送装置A3を制御し、このウェハWのレジスト膜に現像処理を施すように液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する。その後制御装置100は、ウェハWを棚ユニットU10に戻すように搬送装置A3を制御し、このウェハWをキャリアC内に戻すように搬送装置A7及び搬送装置A1を制御する。以上で塗布・現像処理が完了する。
【0026】
なお、基板処理装置の具体的な構成は、以上に例示した塗布・現像装置2の構成に限られない。基板処理装置は、基板に処理液を供給して液処理を行う液処理ユニットと、このユニットを制御可能な制御装置100とを備えていればどのようなものであってもよい。
【0027】
[液処理ユニット]
続いて、図3を参照して液処理ユニットU1の一例を詳細に説明する。ここでは、レジスト膜を形成する処理モジュール12における液処理ユニットU1を例に説明する。処理モジュール12の液処理ユニットU1は、処理液の種類と、処理対象のウェハWの種類との少なくとも一方が互いに異なる複数の液処理を行う。複数の液処理は、プレートを必要とする第1液処理と、プレートを必要としない第2液処理とを含む。
【0028】
第1液処理において、液処理ユニットU1は、第1種の処理液(以下、「処理液L1」という。)を用いて第1種のウェハW(以下、「ウェハW1」という。)の表面Waにレジスト膜を形成する。第2液処理において、液処理ユニットU1は、第2種の処理液(以下、「処理液L2」という。)を用いて第2種のウェハW(以下、「ウェハW2」という。)の表面Waにレジスト膜を形成する。
【0029】
処理液L1は、中粘度以上のレジスト液である。処理液L1の粘度は、例えば、50cP~1000cPであってもよく、100cP~600cPであってもよく、200cP~500cPであってもよい。なお、処理液L1の粘度が、100cP~300cPであってもよく、あるいは、300cP~600cPであってもよい。処理液L2は、処理液L1に比較して低粘度のレジスト液である。一例として、処理液L2の粘度は、数cP~数十cP程度である。ウェハW1は、表面Waに段差を有する。表面Waに形成される段差の具体例としては、レジストパターンを用いたエッチング処理等により予め形成された凹凸パターンにおける段差が挙げられる。ウェハW2は、表面Waに段差を有してもよいし、表面Waに段差を有しなくてもよい。
【0030】
図3に示されるように、液処理ユニットU1は、回転保持部20と、処理液供給部30と、カップ40と、排気部60と、プレート70と、プレート配置部80とを備える。
【0031】
回転保持部20は、ウェハWを保持して回転させる。回転保持部20は、例えば、保持部22と、軸部24と、回転駆動部26とを有する。保持部22は、表面Waを上方に向けた状態で水平に配置されたウェハWの中心部を支持し、当該ウェハWを吸着(例えば真空吸着)により保持する。回転駆動部26は、鉛直に延びる軸部24を介して保持部22に接続されており、例えば電動モータを動力源として、鉛直な軸線まわりに保持部22を回転させる。これによりウェハWが回転する。保持部22は、ウェハWの中心CPが上記軸線に略一致するようにウェハWを保持してもよい。この場合、ウェハWは中心CPまわりに回転する。回転保持部20は、表面Waに処理液が供給されたウェハWを回転させることで、処理液の液膜を乾燥させる(塗布膜を形成する)機能を有する。
【0032】
処理液供給部30は、回転保持部20に保持されたウェハWの表面Waに第1種の処理液L1及び第2種の処理液L2のいずれか一方を供給する。処理液供給部30は、ノズル32A,32Bと、供給源34A,34Bと、ノズル移動部36A,36Bとを有する。ノズル32A,32Bは、ウェハWの表面Waに処理液L1,L2をそれぞれ吐出する。例えば、ノズル32A,32Bは、ウェハWの上方に配置され、処理液L1,L2を下方にそれぞれ吐出する。供給源34A,34Bは、ポンプ等(不図示)によりノズル32A,32Bに処理液L1,L2をそれぞれ供給する。ノズル移動部36A,36Bは、電動モータ等を動力源として、ウェハWの上方の吐出位置と、当該吐出位置から離れた待機位置との間でノズル32A,32Bをそれぞれ移動させる。
【0033】
カップ40は、回転保持部20に保持されたウェハWを収容する。カップ40は、例えば、底壁42と、外壁44と、内壁46と、ガイド部48と、蓋部材52とを有する。底壁42は、回転保持部20を囲むように円環状に形成されている。底壁42の一部は、保持部22に保持されたウェハWの裏面Wbに対向する。底壁42は、処理液L1,L2をカップ40外の排液管42bに排出する排液口42aを含む。
【0034】
外壁44は、底壁42の外縁から鉛直上方に突出しており、円筒状に形成されている。外壁44は、保持部22に保持されたウェハWの周縁Wcより外側に位置する。外壁44の上端は、保持部22に保持されたウェハWの表面Waよりも上方に位置する。外壁44の上端部は開放されており、カップ40内の空間への吸気口44aを構成する。外壁44の上側部分(例えばウェハWの表面Waよりも上の部分)は、上方へ向かうにつれて徐々に縮径するように内側に傾いていてもよい。
【0035】
内壁46は、底壁42の内縁から鉛直上方に突出しており、円筒状に形成されている。内壁46は、保持部22に保持されたウェハWの周縁Wcよりも内側に位置する。内壁46の上端は、保持部22に保持されたウェハWよりも下方に位置する。
【0036】
ガイド部48は、内壁46の上端から外壁44側に広がった円環状部分である。ガイド部48の外縁は、保持部22に保持されたウェハWの周縁Wcよりも外側に位置し、外壁44よりも内側に位置している。ガイド部48は、傘状の上面を有する。例えば、ガイド部48の上面のうち、周縁Wcよりも外側の部分の高さは、外壁44に近づくのに応じて徐々に低くなっている。これにより、カップ40内において、ウェハW上から落下した処理液L1,L2は、ガイド部48により底壁42の排液口42aに導かれ、排液口42aから排液管42bを介してカップ40外に排出される。
【0037】
蓋部材52は、内壁46に囲まれる空間の上部を塞いでいる。回転保持部20の回転駆動部26は、蓋部材52の下方に位置し、保持部22は蓋部材52の上方に位置し、軸部24は蓋部材52を貫通している。
【0038】
排気部60は、カップ40内のガスを排出する。排気部60は、底壁42に貫通するように設けられた排気管64を有する。排気管64の一端は、カップ40内の空間に開口している。排気管64の他端は、排気ポンプ(不図示)に接続されている。これにより、カップ40内のガスが、排気管64を介して排出される。ここで、カップ40内の空間のうち蓋部材52及びガイド部48よりも上方部分を「処理室S」とする。ウェハWは、回転保持部20の保持部22によって処理室S内に保持される。
【0039】
処理室S内のガスは、外壁44とガイド部48の外周縁との間を経て処理室S内からカップ40の下部に流れ、排気管64を経てカップ40外に導かれるので、ガイド部48と外壁44との間が処理室Sの排気口となっている。処理室Sの排気口(以下、「排気口62」という。)は、回転保持部20に保持された表面Waの外周よりも外に設けられている。排気口62は、保持部22に保持されたウェハWの周縁Wcを囲む1つの環状の隙間により構成されている。排気部60により処理室S内が排気される際に、カップ40外(吸気口44a)から処理室S内にガスが流入する。これにより、処理室S内(ウェハWの表面Waの上方)には、吸気口44aから排気口62に向かうガスの流れ(気流)が生成される。
【0040】
プレート70は、第1液処理において、処理室S内のガスの流れを調節するために用いられる。例えば、プレート70は、表面Wa上のガスの流速(表面Waに沿ってウェハWの中心から排気口62へと向かうガスの流速)を調節するために用いられる。プレート70は、第1液処理の実行期間の少なくとも一部において、回転保持部20に保持されたウェハW1の表面Waに所定の間隔(以下、「第1間隔」という。)を持って対向するように処理室S内に配置される。以下、この状態を「第1状態」という。
【0041】
第1状態において、プレート70は、回転保持部20に保持されたウェハW1の周方向の一部分において表面Waに対向し、ウェハW1の周方向の他の部分において表面Waに対向しないように処理室S内に配置される。なお、本明細書において、「表面Waに対向する」とは、表面Waに垂直な方向(例えば、鉛直方向)から見て、表面Waと重なっていることをいう。これにより、プレート70と表面Waとの間にガスの流路が形成され、プレート70が存在しない場合に比較して表面Wa上のガスの流速が上昇する。これにより、ウェハWの表面Waに形成された処理液L1の液膜の乾燥が促進される。一例として、第1間隔は、0.5mm~5mmである。第1間隔は、1mm~4mmであってもよく、2mm~3mmであってもよい。
【0042】
図4は、第1状態におけるプレート70とウェハWとを平面視した(上方から見た)図である。図4に示されるように、上方から見て、プレート70は略半円状に形成されている。上方から見て、プレート70の面積はウェハWの面積よりも小さい。プレート70は、ウェハWの中心を通り、プレート70の面積を2等分する線に対して対称な外形を有している。プレート70は、外周縁72と、内周縁74と、側縁76と、側縁78とを含んでもよい。
【0043】
第1状態において、外周縁72の中心と、ウェハWの中心CPとは略一致している。外周縁72は、ウェハWの半径よりも大きい半径を有する円弧であり、内周縁74は、外周縁72よりも内側に位置する円弧である。側縁76は、外周縁72の一端72aと内周縁74の一端74aとを接続する。側縁78は、外周縁72の他端72bと内周縁74の他端74bとを接続する。側縁76は、一端72aと一端74aとを最短距離で接続し、側縁78は、他端72bと他端74bとを最短距離で接続する。
【0044】
外周縁72の曲率半径と内周縁74の曲率半径とは、互いに異なっていてもよい。例えば、内周縁74の曲率半径は、外周縁72の曲率半径よりも小さい。外周縁72の中心と、内周縁74の中心とは、互いに同じ位置であってもよく、互いに異なる位置であってもよい。例えば、外周縁72から内周縁74の中心までの距離は、外周縁72の半径よりも大きい。図4では、ウェハWの周方向のうちのプレート70が表面Waに対向する一部分が「部分Ca」で示されており、ウェハWの周方向のうちのプレート70が表面Waに対向しない他の部分が「部分Cb」で示されている。部分Caでは、ウェハWの径方向の少なくとも一部において、プレート70が表面Waに対向している。部分Cbでは、ウェハWの径方向の全てにおいて、プレート70が表面Waに対向していない。プレート70においては、側縁76とウェハWの外周との交点と、側縁78とウェハWの外周との交点とが、ウェハWの周方向における部分Caの両端部となっている。
【0045】
ウェハWの表面Waに対し、部分Caが占める範囲(以下、「部分Caの範囲」という。)は、第1状態における処理液L1の液膜の乾燥促進を考慮して定められている。一例として、ウェハWの周方向における部分Caの範囲は40%(ウェハWの中心まわりの144°)以上となっている。また、部分Caの範囲は、プレート70の退避容易性(退避のさせ易さ)をも考慮して定められている。一例として、ウェハWの周方向における部分Caの範囲は60%(ウェハWの中心まわりの216°)以下となっている。すなわち、プレート70は、第1状態において、ウェハWの周方向の40%~60%においてウェハWの表面Waに対向する。
【0046】
更なる乾燥促進の観点から、ウェハWの周方向における部分Caの範囲は45%以上であってもよく、50%以上であってもよい。更に、同様の観点から、部分Caの面積は、ウェハWの表面Waの面積に対して40%以上であってもよく、45%以上であってもよく、50%以上であってもよい。
【0047】
プレート70の更なる退避容易性の観点から、ウェハWの周方向における部分Caの範囲は55%以下であってもよく、50%以下であってもよい。更に、同様の観点から、部分Caの面積は、ウェハWの表面Waの面積に対して60%以下であってもよく、55%以下であってもよく、50%以下であってもよい。
【0048】
プレート配置部80は、上記第1状態と、第1状態に比較してプレート70がウェハWから離れて位置する状態(以下、「第2状態」という。)とを切り替える。プレート70を第2状態に配置することは、プレート70を退避させることの一例である。例えば、プレート配置部80は、第1液処理の実行期間の少なくとも一部において、プレート70を第1状態に配置し、第2液処理の実行期間においてプレート70を第2状態に配置する。
【0049】
図5には、プレート70の配置の切替えの様子が示されており、第1状態でのプレート70が破線で、第2状態でのプレート70が実線で示されている。図5に例示されるように、プレート配置部80は、保持部22に保持されたウェハWの表面Waに垂直な方向(以下、「垂直方向D1」という。)においてプレート70を変位させることで、第1状態と第2状態とを切り替える。一例として、プレート配置部80は、図5に示されるように、垂直方向D1に沿ってプレート70を平行移動させることで、プレート70の配置状態を切り替える。
【0050】
第2状態におけるプレート70と表面Waとの間隔(以下、「第2間隔」という。)は、上記第1間隔よりも大きい。第2間隔は、第2液処理における液処理結果に対するプレート70の影響が無視し得るレベルに収まるように設定されている。第2間隔は、例えば50mm~180mmであってもよく、70mm~160mmであってもよく、80mm~150mmであってもよい。なお、第2間隔が、70mm~120mmであってもよく、あるいは、130mm~150mmであってもよい。プレート配置部80が、垂直方向D1においてプレート70を変位させて第1状態と第2状態とを切り替える場合、プレート70が表面Waに対向する面積は、第1状態及び第2状態において略同じである。
【0051】
プレート配置部80は、例えば、プレート70を所定の位置に保持するための保持部82と、保持部82を変位させる変位駆動部84とを有する。保持部82の一端はプレート70の上面に接続されている。変位駆動部84は、電動モータ等を動力源として、垂直方向D1に保持部82を移動させる。
【0052】
図3に戻り、排気部60の排気口62は、上述したように、保持部22に保持されたウェハWの周縁Wcを全周に亘って囲むように設けられている。このため、排気口62は、第1状態においてプレート70が表面Waに対向する部分(部分Ca)に対応する位置と、第1状態においてプレート70がウェハWに対向しない部分(部分Cb)に対応する位置とに設けられている。なお、排気口62は、部分Caに対応する位置に設けられ、部分Cbに対応する位置に設けられていなくてもよい。
【0053】
排気口62は、部分Caに対応する位置での排気流量と部分Cbに対応する位置での排気流量とが互いに異なるように構成されていてもよい。例えば排気口62は、部分Caでの排気流量が部分Cbでの排気流量よりも大きくなるように構成されていてもよい。具体的には、部分Caに対応する位置における排気口62の開口幅(ガイド部48と外壁44との隙間)が、部分Cbに対応する位置における排気口62の開口幅よりも大きくてもよい。排気口62は、ウェハWの周方向に沿った一連の隙間に代えて、ウェハWの周方向に並ぶ複数の排気孔により構成されていてもよい。この場合、排気孔の点在範囲が排気口62の形成範囲となる。また、各排気孔の大きさによって、排気口62の部分ごとの排気流量を調節することができる。
【0054】
プレート70及びプレート配置部80の構成は、上述の例に限られない。プレート70は、回転保持部20に保持されたウェハW1の周方向の一部分において表面Waに対向し、ウェハW1の周方向の他の部分において表面Waに対向しないように処理室S内に配置され得る限りいかようにも構成可能である。例えば、図6に示されるプレート70Aは、プレート70と異なる外形を有する。プレート70Aは、ウェハWの中心を通り、プレート70Aの面積を2等分する線に対して非対称な外形を有している。プレート70Aにおいては、内周縁74の一端74aと、側縁78とウェハWの外周との交点とが、ウェハWの周方向における部分Caの両端部となっている。
【0055】
図7に示されるプレート70Bも、プレート70と異なる外形を有する。プレート70Bは、内周縁74を含んでおらず、扇状に形成されている。すなわち、プレート70Bにおいては、側縁76,78がウェハWの中心において交わっている。プレート70Bにおいては、側縁76,78が、ウェハWの周方向における部分Caの両端部となっている。側縁76,78のなす角が180°である場合、プレート70Bの形状は半円となる。
【0056】
プレート配置部80は、垂直方向D1に加えて、保持部22に保持されたウェハWの表面Waに沿った方向においてもプレート70,70A,70Bを変位させるように構成されていてもよい。具体的に、プレート配置部80は、第2状態においてプレート70,70A,70Bが表面Waに対向する面積(以下、「第2状態における対向面積」という。)が、第1状態においてプレート70,70A,70Bが表面Waに対向する面積(以下、「第1状態における対向面積」という。)よりも小さくなるように、表面Waに沿った方向においてプレート70,70A,70Bを変位させてもよい。
【0057】
例えば、プレート配置部80は、第2状態における対向面積が、第1状態における対向面積に比べて10%~50%減少する程度にプレート70,70A,70Bを変位させてもよい。プレート配置部80は、第2状態における対向面積が第1状態における対向面積に比べて15%~45%減少する程度にプレート70,70A,70Bを変位させてもよく、第2状態における対向面積が第1状態における対向面積に比べて20%~40%減少する程度にプレート70,70A,70Bを変位させてもよい。
【0058】
プレート配置部80は、第2状態における対向面積が第1状態における対向面積に比べて100%減少するようにプレート70,70A,70Bを変位させてもよい。すなわち、プレート配置部80は、第2状態においてプレート70,70A,70Bが表面Waに対向しない位置までプレート70,70A,70Bを変位させてもよい。つまり、第2状態における対向面積を、第1状態における対向面積より小さくすることには、第2状態における対向面積をゼロにすることも含まれる。
【0059】
プレート配置部80は、垂直方向D1においてプレート70,70A,70Bを変位させる前後のいずれかで、プレート70,70A,70Bを表面Waに沿って変位させてもよいし、表面Waに沿う方向におけるプレート70,70A,70Bの変位期間の少なくとも一部を垂直方向D1におけるプレート70,70A,70Bの変位期間と重複させてもよい。
【0060】
プレート配置部80は、表面Waに沿った一方向にプレート70,70A,70Bを平行移動させるように構成されていてもよい。また、プレート配置部80は、中心CPとは異なる位置を通り表面Waに垂直な軸線Ax1まわりにプレート70,70A,70Bを回転させるように構成されていてもよい。図6は、外周縁72の他端72bに設定された軸線Ax1まわりにプレート70Aを回転させる場合を例示している。図7は、表面Waに沿った一方向にプレート70Bを平行移動させる場合を例示している。
【0061】
プレート配置部80は、垂直方向D1でのプレート70,70A,70Bの変位に代えて、あるいは当該変位に加えて、第1状態に比較して第2状態においてプレート70,70A,70Bが表面Waから離れるように、表面Waに対してプレート70,70A,70Bを傾けてもよい。具体的には、プレート配置部80は、回転保持部20(保持部22)に保持されているウェハWの表面Waと略平行な軸線まわりにプレート70,70A,70Bを回転させることで、表面Waに対してプレート70,70A,70Bを傾けてもよい(図16も参照)。上記軸線は、例えば、中心CPとの間にプレート70,70A,70Bを挟むように(第1状態のプレート70の外側に)設定される。このようにプレート70,70A,70Bを回転させる場合には、第1状態に比較して、第2状態においてプレート70,70A,70Bと表面Waとの最短距離が大きくなる。なお、プレート配置部80は、プレート70,70A,70Bの上記回転に加えて、表面Waに沿った一方向にプレート70,70A,70Bを平行移動させてもよく、表面Waに垂直な軸線Ax1まわりにプレート70,70A,70Bを回転させてもよい。
【0062】
プレート70,70A,70Bを、垂直方向D1と、表面Waに沿う方向とに移動させるために、変位駆動部84は、2つのアクチュエータを含んでいてもよい。変位駆動部84は、垂直方向D1に対し傾いた方向に保持部82を移動させる1つのアクチュエータを含んでいてもよい。変位駆動部84は、垂直方向D1と、表面Waに沿う方向とに変位するように保持部82を導くガイドと、当該ガイドに沿って保持部82を移動させる1つのアクチュエータとを含んでいてもよい。
【0063】
[制御装置]
制御装置100は、塗布・現像装置2に含まれる各要素を制御する。制御装置100は、表面Waに処理液L1,L2の液膜を形成するように、処理液供給部30により表面Waに処理液L1,L2を供給させることと、上記液膜が表面Waに形成されたウェハWが回転している期間の少なくとも一部におけるプレート70の配置を、少なくとも処理液の種類に基づいて、プレート配置部80により第1状態又は第2状態に切り替えることと、を実行するように構成されている。
【0064】
例えば、制御装置100は、図3に示されるように、機能上の構成(以下、「機能モジュール」という。)として、記憶部108と、液供給制御部102と、乾燥制御部104と、プレート配置制御部106とを有する。記憶部108は、複数の液処理の条件をそれぞれ示す複数の液処理条件を記憶している。複数の液処理条件のそれぞれは、処理対象のウェハWの種類、使用する処理液の種類、処理液供給条件及び処理液の乾燥条件等を含んでいる。
【0065】
液供給制御部102は、ウェハWに処理液L1,L2の液膜を形成するように、回転保持部20によりウェハWを回転させながら処理液供給部30によりウェハWの表面Waに処理液L1,L2のいずれかを供給させる。例えば第1液処理において、液供給制御部102は、記憶部108が記憶する第1液処理用の液処理条件(以下、「第1液処理条件」という。)に従って、処理液供給部30により処理液L1をウェハW1の表面Waに供給させる。例えば液供給制御部102は、ノズル移動部36Aによりノズル32Aを吐出位置に配置し、第1液処理条件に従った回転速度で回転保持部20によりウェハW1を回転させる。また、液供給制御部102は、第1液処理条件に従った吐出量・吐出時間で供給源34Aにより処理液L1をノズル32Aから吐出させる。
【0066】
第2液処理において、液供給制御部102は、記憶部108が記憶する第2液処理用の液処理条件(以下、「第2液処理条件」という。)に従って、処理液供給部30により処理液L2をウェハW2の表面Waに供給させる。例えば液供給制御部102は、ノズル移動部36Bによりノズル32Bを吐出位置に配置し、第2液処理条件に従った回転速度で回転保持部20によりウェハW2を回転させる。また、液供給制御部102は、第2液処理条件に従った吐出量・吐出時間で供給源34Bにより処理液L2をノズル32Bから吐出させる。
【0067】
乾燥制御部104は、ウェハWの表面Wa上に形成された処理液L1,L2の液膜を乾燥させるように回転保持部20によりウェハWを回転させる。例えば第1液処理において、乾燥制御部104は、第1液処理条件に従った回転速度・回転時間にて回転保持部20によりウェハW1を回転させる。第2液処理において、乾燥制御部104は、第2液処理条件に従った回転速度・回転時間にて回転保持部20によりウェハW2を回転させる。
【0068】
プレート配置制御部106は、プレート70の配置をプレート配置部80により第1状態又は第2状態に切り替える。具体的には、プレート配置制御部106は、いずれかの処理液の液膜が形成されたウェハWが回転している期間の少なくとも一部におけるプレート70の配置を、少なくとも処理液の種類に基づいて、プレート配置部80により第1状態又は第2状態に切り替える。以下、第1状態及び第2状態の切り替え対象となる期間を、単に「切替対象期間」という。
【0069】
切替対象期間は、処理液L1,L2の液膜が形成されたウェハWが液膜の乾燥のために回転する期間の少なくとも一部を含む。例えば、ウェハW1の表面Wa上に処理液L1の液膜が形成されている場合、プレート配置制御部106は、切替対象期間を第1状態とするようにプレート配置部80を制御する。一例として、ウェハW2の表面Wa上に処理液L2の液膜が形成されている場合、プレート配置制御部106は、切替対象期間を第2状態とするようにプレート配置部80を制御する。一例として、プレート配置制御部106は、液供給制御部102及び乾燥制御部104がいずれの液処理条件に従っているかに基づいて、表面Wa上に処理液L1,L2のいずれの液膜が形成されているのかを判定する。
【0070】
いずれの場合においても、切替対象期間以外の期間においては、プレート配置制御部106がプレート70の配置を第2状態とするようにプレート配置部80を制御する。すなわちプレート配置制御部106は、ウェハW2の表面Wa上に処理液L2の液膜が形成されている場合には、プレート70の配置を第2状態に維持させる。なお、プレート配置制御部106は、処理液の種類と、ウェハWの種類との両方に基づいて、切替対象期間におけるプレート70の配置を切り替えてもよい。一例として、プレート配置制御部106は、凹凸パターンを有する表面Wa上に処理液L1の液膜が形成されている場合には、切替対象期間を第1状態とし、他の場合には切替対象期間を第2状態とするようにプレート配置部80を制御してもよい。
【0071】
制御装置100は、一つ又は複数の制御用コンピュータにより構成される。例えば制御装置100は、図8に示される回路120を有する。回路120は、一つ又は複数のプロセッサ122と、メモリ124と、ストレージ126と、入出力ポート128と、タイマ132とを有する。
【0072】
プロセッサ122は、例えばハードディスク等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。記憶媒体は、液処理ユニットU1による液処理手順を制御装置100に実行させるためのプログラムを記憶している。記憶媒体は、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク及び光ディスク等の取り出し可能な媒体であってもよい。メモリ124は、ストレージ126の記憶媒体からロードしたプログラム及びプロセッサ122による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ122は、メモリ124と協働して上記プログラムを実行することで、上述した各機能モジュールを構成する。タイマ132は、例えば一定周期の基準パルスをカウントすることで経過時間を計測する。入出力ポート128は、プロセッサ122からの指令に従って、制御対象の部材との間で電気信号の入出力を行う。
【0073】
なお、制御装置100のハードウェア構成は、必ずしもプログラムにより各機能モジュールを構成するものに限られない。例えば制御装置100の各機能モジュールは、専用の論理回路又はこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成されていてもよい。
【0074】
[液処理手順]
図9は、液処理手順の一例を示すフローチャートである。図9に示されるように、制御装置100は、まずステップS01,S02を実行する。ステップS01では、例えば、液供給制御部102が、実行対象の液処理の液処理条件を記憶部108から取得する。ステップS02では、例えば、液供給制御部102が、ステップS01において取得した液処理条件において処理液の種類が処理液L1であるかどうかを判断する。
【0075】
制御装置100は、処理液の種類が処理液L1である場合(例えば、液処理条件が上記第1液処理条件である場合)、第1液処理条件に従ってステップS03の第1液処理を実行する。制御装置100は、処理液の種類が処理液L1ではない場合(例えば、液処理条件が上記第2液処理条件である場合)、第2液処理条件に従ってステップS04の第2液処理を実行する。第1液処理及び第2液処理それぞれの手順の具体例については後述する。
【0076】
次に、制御装置100は、ステップS05を実行する。ステップS05では、例えば、制御装置100が、処理液の液膜が形成されたウェハWを熱処理ユニットU2に搬送するように搬送装置A3を制御する。そして、制御装置100は、レジスト膜が形成されるように熱処理ユニットU2によりウェハWに対して熱処理を施す。以上により、液処理手順が終了する。
【0077】
(第1液処理)
図10は、ステップS03の第1液処理の手順の一例を示すフローチャートである。図10に示されるように、制御装置100は、まずステップS31を実行する。ステップS31では、例えば、液供給制御部102が、プレート70が第2状態に配置された状態で、回転保持部20によりウェハW1の回転を開始させ、ノズル32Aを吐出位置に配置するようにノズル移動部36Aを制御する。
【0078】
次に、制御装置100は、ステップS32を実行する。ステップS32では、例えば、液供給制御部102が、図11に示されるように、回転保持部20によりウェハW1を回転速度ω1で回転させつつ、処理液供給部30によりノズル32Aから処理液L1の吐出を開始させる。回転速度ω1は、比較的低い回転速度であり、一例として100rpm~300rpmである。回転速度ω1は、150rpm~250rpmであってもよく、180rpm~220rpmであってもよい。
【0079】
次に、制御装置100は、ステップS33を実行する。ステップS33では、例えば、液供給制御部102が、処理液L1の供給を処理液供給部30に継続させつつ、回転保持部20によりウェハW1の回転を回転速度ω1から回転速度ω2に上昇させる。回転速度ω2は、処理液L1が表面Waに広がる程度に設定されており、一例として1000rpm~1600rpmである。回転速度ω2は、1100rpm~1500rpmであってもよく、1200rpm~1400rpmであってもよい。
【0080】
次に、制御装置100は、ステップS34,S35を実行する。ステップS34では、液供給制御部102が、回転速度ω2でのウェハW1の回転と処理液L1の供給とを所定時間継続させる。所定時間は、処理液L1の液膜が表面Wa上に形成される程度に設定される。ステップS35では、液供給制御部102が、処理液L1の供給を処理液供給部30に停止させる。液供給制御部102は、処理液L1の供給停止後に、ノズル32Aを退避位置に移動させるようにノズル移動部36Aを制御する。
【0081】
次に、制御装置100は、ステップS36を実行する。ステップS36では、例えば、プレート配置制御部106が、第2状態に位置しているプレート70を第1状態に配置するようにプレート配置部80(変位駆動部84)を制御する。また、ステップS36では、乾燥制御部104が、回転保持部20によりウェハW1の回転を回転速度ω2から回転速度ω3に減少させる。
【0082】
次に、制御装置100は、ステップS37を実行する。ステップS37では、例えば、乾燥制御部104が、回転速度を回転速度ω3に減少させた後に所定時間経過するまで待機する。つまり、乾燥制御部104は、所定時間、回転保持部20により回転速度ω3でウェハW1を回転させて、処理液L1の液膜を乾燥させる。なお、プレート配置制御部106は、乾燥制御部104が回転保持部20により回転速度ω3でウェハWを回転されている間、プレート70の第1状態への配置を継続させる。
【0083】
回転速度ω3は、回転速度ω1よりも低くてもよい。回転速度ω3は、遠心力による処理液L1の流動に起因する膜厚の斑を低減できる程度に設定されており、一例として20rpm~200rpmである。回転速度ω3は、50rpm~150rpmであってもよく、80rpm~120rpmであってもよい。回転速度ω3で回転させる所定時間は、処理液L1の液膜が乾燥される(処理液L1の塗布膜が形成される)程度に設定され、一例として数十秒程度である。
【0084】
次に、制御装置100は、ステップS38を実行する。ステップS38では、例えば、制御装置100が、ウェハW1の回転を回転保持部20に停止させる。また、プレート配置制御部106は、プレート70の配置を第1状態から第2状態に切り替えるようにプレート配置部80を制御する。ステップS31~S38を実行する間、制御装置100は、処理室S内の排気を排気部60に継続させてもよい。以上により第1液処理が終了する。
【0085】
(第2液処理)
図12は、ステップS04の第2液処理の手順の一例を示すフローチャートである。図12に示される第2液処理の手順では、ステップS41~S45が、ステップS31~S35と同様に行われる。ステップS46では、例えば、プレート配置制御部106が、第2状態に位置しているプレート70を第2状態に維持したまま(第1状態に配置することなく)、乾燥制御部104が、回転保持部20によりウェハWの回転速度を減少させる。
【0086】
そして、ステップS47において、乾燥制御部104は、処理液L2の液膜を乾燥させるために回転速度ω3よりも高い回転速度でウェハW2を回転保持部20によって回転させる。このときの回転速度は、600rpm~1400rpmであってもよいし、700rpm~1300rpmであってもよいし、800rpm~1200rpmであってもよい。第2液処理では、乾燥制御部104が、所定時間、回転保持部20により回転速度ω3よりも高い回転速度でウェハW2を回転させて、処理液L2の液膜を乾燥させる。また、プレート配置制御部106は、乾燥制御部104が回転保持部20によりウェハW2を処理液L2の液膜の乾燥のために回転されている間、プレート70の第2状態への配置をプレート配置部80に継続させる。その後、ステップS48において、制御装置100は、ウェハW2の回転を回転保持部20に停止させる。
【0087】
[実施形態の効果]
以上説明したように、塗布・現像装置2は、ウェハWを収容する処理室Sと、処理室S内のウェハWを保持して回転させる回転保持部20と、回転保持部20に保持されたウェハWの表面Waに処理液L1,L2を供給する処理液供給部30と、回転保持部20に保持されたウェハWの外周よりも外に設けられた排気口62から、処理室S内のガスを排出する排気部60と、回転保持部20に保持されたウェハWの周方向の一の部分Caにおいて表面Waに対向し、当該ウェハWの周方向の他の部分Cbにおいて表面Waに対向しないように処理室S内に配置されるプレート70,70A,70Bと、プレート70,70A,70Bが部分Caにおいて表面Waに対向する第1状態と、第1状態に比較してプレート70,70A,70Bが表面Waから離れて位置する第2状態とを切り替えるプレート配置部80と、を備える。
【0088】
ウェハWの液処理においては、処理液が供給された後の表面Wa上のガスの流れが処理結果に影響を及ぼす場合がある。処理液の種類によっては、液処理の結果を調節するために、ウェハWの表面Waに近接した状態で対向するようにプレートを配置し、表面Wa上にガスの流路を形成することが有効な場合がある。例えば、上述した第1液処理においては、プレート70,70A,70Bにより表面Wa上にガスの流路を形成することで、処理液L1の液膜の乾燥が促進される。これにより、乾燥時間の長さを許容レベルに抑えつつ、乾燥中におけるウェハWの回転速度を低くし、乾燥中の処理液L1の流動に起因する膜厚の斑を抑制することができる。
【0089】
一方、処理液の種類によっては、プレート70,70A,70Bが不要である場合もある。例えば、上述した第2液処理においては、低粘度の処理液L2がスムーズに広がるので、ウェハWを高速回転させても膜厚の斑が生じにくい。このような場合にプレート70,70A,70Bが配置されると、気流の乱れに起因して却って膜厚の斑を拡大させてしまう可能性がある。このため、プレート70,70A,70Bが不要な液処理においては、プレート70,70A,70Bを十分に退避させる必要がある。しかしながら、装置内においては、プレート70,70A,70Bの退避スペースを確保し難い。
【0090】
これに対し、プレート70,70A,70Bが、ウェハWの周方向において表面Waに部分的に対向するように構成されている。プレート70,70A,70Bと表面Waとの対向範囲がウェハWの周方向において部分的であっても、回転保持部20によりウェハWを回転させることで、プレート70,70A,70Bによる乾燥促進効果は表面Waの全域で得られる。このため、処理液L1の乾燥促進効果を実質的に損なうことなく、プレート70,70A,70Bを小型化することができる。これにより、プレート70,70A,70Bの退避スペースを確保し易い。従って、プレートを必要とする液処理とプレートを必要としない液処理とを行う装置において、プレート未使用時の液処理結果への影響を低減するのに有効である。
【0091】
プレート70,70A,70Bは、第1状態において、ウェハWの周方向の40%~60%において表面Waに対向してもよい。この場合、プレートを必要とする液処理におけるプレートの効果と、プレートを必要としない液処理におけるプレートの退避させ易さとの両立を更に図ることができる。
【0092】
プレート配置部80は、少なくともウェハWに垂直な方向(垂直方向D1)においてプレート70,70A,70Bを変位させてもよい。この場合、プレート配置部80の構成の簡素化を図りやすい。
【0093】
プレート配置部80は、第2状態においてプレート70,70A,70BがウェハWに対向する面積が、第1状態においてプレート70,70A,70Bが表面Waに対向する面積よりも小さくなるように、表面Waに沿った方向においてもプレート70A,70Bを変位させてもよい。この場合、プレートを必要とする液処理におけるプレートの効果と、プレートを必要としない液処理におけるプレートの退避させ易さとの両立を更に図ることができる。
【0094】
プレート配置部80は、第1状態に比較して第2状態においてプレート70,70A,70Bが表面Waから離れるように、表面Waに対してプレート70,70A,70Bを傾けてもよい。この場合、プレート配置部80の構成の簡素化を図りやすい。
【0095】
排気口62は、少なくとも、第1状態においてプレート70,70A,70Bが表面Waに対向する部分Caに対応する位置に設けられていてもよい。この場合、第1状態においてプレートとウェハWの表面Waとの間に、液処理調節のためのガスの流路がより確実に形成される。従って、プレートを必要とする液処理においてプレートをより有効に活用することができる。
【0096】
排気口62は、第1状態において、プレート70,70A,70Bが表面Waに対向しない部分Cbに対応する位置にも設けられていてもよい。表面Waに供給された処理液からの昇華物、ミスト、又は液滴等を除去(回収)するために、液処理中に処理室S内を排気する必要がある。上記構成では、プレートが対向しない位置においてもガスが排気されるので、プレートが対向しない位置における昇華物、ミスト、又は液滴等の滞留を抑制できる。
【0097】
塗布・現像装置2は、表面Waに処理液L1,L2の液膜を形成するように、処理液供給部30により表面Waに処理液L1,L2を供給させる液供給制御部102と、上記液膜が表面Waに形成されたウェハWが回転している期間の少なくとも一部におけるプレート70,70A,70Bの配置を、少なくとも処理液の種類に基づいて、プレート配置部80により第1状態又は第2状態に切り替えるプレート配置制御部106と、を更に備えてもよい。この場合、プレートが必要な液処理とプレートが不要な液処理とを適切に切り替えることができる。
【0098】
図13には、ウェハWの周方向において対向する範囲を変更した場合の乾燥時間の測定結果が例示されている。図13において、「プレート無し」は、ウェハWにプレートを対向させない場合の乾燥時間の測定結果である。「40%」、「50%」、及び「60%」は、第1状態において、ウェハWの周方向において表面Waと対向する範囲を40%、50%、及び60%としたプレートを用いた場合のそれぞれの乾燥時間の測定結果である。「全周」は、ウェハWの周方向の全周に対向する環状プレートを用いた場合の乾燥時間の測定結果である。プレートの使用有無、及び第1状態における対向範囲を除き、その他の測定条件は同じである。以下では環状プレートに対して、周方向の一部において対向するプレートを「部分プレート」と称する。
【0099】
「プレート無し」の場合に比べて、「全周」の場合では乾燥時間が4割程度に減少している。このため、環状プレートにより表面Wa上の液膜の乾燥が促進されていることがわかる。一方、「50%」の場合及び「60%」の場合において、「プレート無し」の場合に比べて、乾燥時間が半分程度に減少しており、「40%」の場合において乾燥時間が6割程度に減少している。つまり、ウェハWの周方向の全周において対向させなくても、ウェハWの周方向の40%~60%の範囲において表面Waに部分プレートを対向させることで、環状プレートに近い乾燥促進効果が得られていることがわかる。
【0100】
図14(a)及び図14(b)は、退避させたプレートによる液処理への影響(膜厚変動)の程度を例示するグラフである。図14(a)及び図14(b)では、横軸がウェハWの径方向における中心CPからの距離(mm)を示し、縦軸が膜厚の測定結果を示している。図14(a)において、測定値MV1(破線)は、いずれのプレートも有しない液処理ユニットを用いて液処理を行った場合の測定結果を示している。測定値MV2(一点鎖線)は、環状プレートをウェハWの上方に退避させた場合での測定結果を示している。測定値MV1と測定値MV2とを比較することで、プレートがない場合ではウェハW内において膜厚の均一性が図られているのに対して、環状プレートを上方で退避させた場合ではウェハW内において膜厚に変動が生じている。環状プレートを上方で退避させると、ウェハWの中心付近及び周縁部においてガスの流速が速くなる気流の乱れが生じ、これにより膜厚が変動していると考えられる。
【0101】
測定値MV3(実線)は、部分プレートを、測定値MV2の測定における環状プレートと同じ位置まで退避させた場合での測定結果を示している。測定値MV2と測定値MV3を比較すると、部分プレートを用いた場合には、環状プレートを用いた場合よりも膜厚の変動が小さく、退避させたプレートによる液処理への影響が小さいことがわかる。
【0102】
以上の結果から、処理液の液膜の乾燥促進のために部分プレートを用いることで、プレートを必要とする液処理における乾燥促進と、プレートを必要としない液処理における膜厚均一性への影響の低減との両立に有効であることが確認された。また、第1状態において部分プレートがウェハWの周方向の40%~60%において表面Waに対向することで、上記両立がより確実に図られることが確認された。
【0103】
図14(b)において、測定値MV4(実線)は、測定値MV3の測定での退避位置までの変位に加えて、表面Waに対向する面積が減少するように部分プレートを退避させた場合での測定結果を示している。測定値MV4の測定では、第2状態における表面Waに対向する面積を、第1状態に比べて20%程度減少させている。この場合においても、環状プレートを用いた場合よりも膜厚の変動が小さいことがわかる。また、図14(a)に示される測定値MV3と比較すると、膜厚変動(液処理への影響)が更に低減されていることがわかる。
【0104】
[第2実施形態]
続いて、第2実施形態に係る基板処理装置(塗布・現像装置2)が備える液処理ユニットU1について説明する。第2実施形態に係る液処理ユニットU1は、プレート70に代えてプレート70Cを有する点、及びプレート配置部80によるプレート70Cの切替方法において第1実施形態に係る液処理ユニットU1と相違する。プレート70Cは、プレート70と異なる外形を有する。プレート70Cは、ウェハWの中心を通り、プレート70Cの面積を2等分する線に対して対称な外形を有するが、外周縁72及び内周縁74の中心位置が互いに略同じである。プレート配置部80は、プレート70Cが部分Caにおいて表面Waに対向する第1状態と、第1状態に比較して小さい面積でプレート70Cが表面Waに対向する第2状態とを切り替える。
【0105】
プレート配置部80は、回転保持部20に保持されたウェハWの表面Waに沿った方向に、プレート70Cを変位させることで、プレート70Cが表面Waに対向する面積を変更してもよい。あるいは、プレート配置部80は、回転保持部20に保持されたウェハWの表面Waに対してプレート70Cを傾けることで、プレート70Cが表面Waに対向する面積を変更してもよい。具体的には、図16に示されるように、プレート配置部80は、回転保持部20(保持部22)に保持されているウェハWの表面Waと略平行な軸線Ax2まわりにプレート70Cを回転させることで、表面Waに対してプレート70Cを傾ける。軸線Ax2は、例えば、中心CPとの間にプレート70Cの少なくとも一部を挟むように設定される。図15及び図16に示される例では、ウェハWの外方のうちの、第1状態においてプレート70Cが配置される側に軸線Ax2が設定されている。
【0106】
プレート配置部80は、第2状態においてもプレート70Cの少なくとも一部が表面Waに対向した状態を保つようにプレート70Cを軸線Ax2まわりに回転させてもよい。つまり、プレート配置部80による軸線Ax2まわりの回転角度が90°よりも小さくてもよい。プレート配置部80は、第2状態においてプレート70Cが表面Waに対して起立する位置までプレート70Cを軸線Ax2まわりに回転させてもよい。つまり、プレート配置部80による軸線Ax2まわりの回転角度が90°に略等しくてもよい。あるいは、当該回転角度が90°よりも大きくてもよい。このように、第1状態に比較して小さい面積でプレート70Cが表面Waに対向する第2状態に切り替えることには、第2状態においてプレート70Cが表面Waに対向する面積をゼロにすることも含まれる。
【0107】
図17に示されるように、プレート配置部80は、プレート70C(軸線Ax2)を垂直方向D1に変位させつつ、プレート70Cを軸線Ax2まわりに回転させてもよい。第1状態から第2状態に切り替える際、まず、プレート配置部80は、第1状態に配置されたプレート70Cを垂直方向D1に表面Waから離すように移動させる(上昇させる)。その後、プレート配置部80は、プレート70Cを垂直方向D1において表面Waに近づけるように移動させつつ(下降させつつ)、軸線Ax2まわりにプレート70Cを起立状態まで回転させる。第2状態から第1状態に切り替える際、まず、プレート配置部80は、第2状態に配置されたプレート70Cを上昇させつつ、軸線Ax2まわりにプレート70Cを寝かせた状態まで回転させる。その後、プレート配置部80は、プレート70Cを垂直方向D1に下降させる。
【0108】
第2実施形態に係る塗布・現像装置2は、ウェハWを収容する処理室Sと、処理室S内のウェハWを保持して回転させる回転保持部20と、回転保持部20に保持されたウェハWの表面Waに処理液L1,L2を供給する処理液供給部30と、回転保持部20に保持されたウェハWの外周よりも外に設けられた排気口62から、処理室S内のガスを排出する排気部60と、回転保持部20に保持されたウェハWの周方向の一の部分Caにおいて表面Waに対向し、当該ウェハWの周方向の他の部分Cbにおいて表面Waに対向しないように処理室S内に配置されるプレート70Cと、プレート70Cが部分Caにおいて表面Waに対向する第1状態と、第1状態に比較して小さい面積でプレート70Cが表面Waに対向する第2状態とを切り替えるプレート配置部80と、を備える。
【0109】
第2実施形態に係る塗布・現像装置2においても、プレートを必要とする液処理とプレートを必要としない液処理とを行う装置において、プレート未使用時の液処理結果への影響を低減するのに有効である。
【0110】
プレート配置部80は、表面Waに対してプレート70Cを傾けることで、プレート70Cが表面Waに対向する面積を変更してもよい。この場合、プレート配置部80の構成の簡素化を図りやすい。
【0111】
以上、第1実施形態及び第2実施形態について説明したが、本開示は必ずしもこれらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。上述の例では、プレート70が液膜の乾燥を促進させるために用いられているが、プレート70による液処理調節は、これに限られない。例えば、処理モジュール14の液処理ユニットU1が実行する現像処理において、プレート70が用いられてもよい。
【0112】
現像処理において、液処理ユニットU1は、レジスト膜が形成されたウェハWの表面Waに現像液を供給する。液処理ユニットU1は、回転保持部20によりウェハWを回転させつつ現像液を供給してもよく、ウェハWの回転を停止した状態で現像液を供給してもよい。液処理ユニットU1は、少なくとも表面Waに供給された現像液によりレジスト膜の現像が行われる間に、プレート70を表面Waに対向させ、回転保持部20によりウェハWを回転させる。この場合、ウェハWに対向させたプレート70により、ウェハWの中央部及び周縁部においてガスの流れが調節され、レジスト膜の現像中での表面Wa上の温度を調節することが可能となる。
【0113】
処理対象の基板は半導体ウェハに限られず、例えばガラス基板、マスク基板、FPD(Flat Panel Display)などであってもよい。
【符号の説明】
【0114】
2…塗布・現像装置、20…回転保持部、30…処理液供給部、60…排気部、62…排気口、70,70A,70B,70C…プレート、80…プレート配置部、S…処理室、W…ウェハ、Wa…表面。
図1
図2
図3
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