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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】基板洗浄装置及び基板洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
H01L21/304 644G
H01L21/304 644E
H01L21/304 644A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020007677
(22)【出願日】2020-01-21
(65)【公開番号】P2021114585
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】久保 明広
(72)【発明者】
【氏名】滝口 靖史
(72)【発明者】
【氏名】小玉 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】岡本 芳樹
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-260740(JP,A)
【文献】特開2002-177911(JP,A)
【文献】特開2001-009387(JP,A)
【文献】特開平07-066117(JP,A)
【文献】特開2000-237700(JP,A)
【文献】特表2007-527606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B08B 3/00
B08B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の基板の面に対して洗浄部材を当接させて、前記基板と洗浄部材とを相対的に回転させて前記面を洗浄する基板洗浄装置であって、
前記洗浄部材における前記面との接触領域は、基板中心側から基板周辺側に向けて放射状に広がっており、
前記洗浄部材の前記接触領域は平面視で扇形である、基板洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄部材の周長率は、15%以上である、請求項に記載の基板洗浄装置。
【請求項3】
円形の基板の面に対して洗浄部材を当接させて、前記基板と洗浄部材とを相対的に回転させて前記面を洗浄する基板洗浄装置であって、
前記洗浄部材における前記面との接触領域は、基板中心側から基板周辺側に向けて放射状に広がっており、
前記洗浄部材は、前記基板の中央部と接触させる中央洗浄部材と、前記基板の周辺部と接触させる周辺洗浄部材とを有する、基板洗浄装置。
【請求項4】
円形の基板の面に対して洗浄部材を当接させて、前記基板と洗浄部材とを相対的に回転させて前記面を洗浄する基板洗浄装置であって、
前記洗浄部材における前記面との接触領域は、基板中心側から基板周辺側に向けて放射状に広がっており、
前記洗浄部材の前記接触領域には溝が形成されている、基板洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄部材は、前記基板の中央部と接触させる中央洗浄部材と、前記基板の周辺部と接触させる周辺洗浄部材とを有し、
前記中央洗浄部材と前記周辺洗浄部材における前記基板との接触領域には、各々溝部が形成され、
前記周辺洗浄部材の溝は、前記中央洗浄部材の溝よりも大きい、
請求項1または2のいずれか一項に記載の基板洗浄装置。
【請求項6】
前記中央洗浄部材と前記周辺洗浄部材における前記基板との接触領域には、各々溝部が形成され、
前記周辺洗浄部材の溝は、前記中央洗浄部材の溝よりも大きい、
請求項に記載の基板洗浄装置。
【請求項7】
円形の基板の面に対して洗浄部材を当接させて前記基板と洗浄部材とを相対的に回転させて前記面を洗浄する基板洗浄方法であって、
前記洗浄部材は、前記基板の中央部と接触させる中央洗浄部材と、前記基板の周辺部と接触させる周辺洗浄部材とを有し、
前記中央洗浄部材と前記周辺洗浄部材の各接触領域は、基板中心側から基板周辺側に向けて放射状に広がっている形状を有し、
前記基板の面に接触する前記洗浄部材を前記基板の被洗浄面に当接させながら、前記洗浄部材と前記基板とを相対的に回転すること、
前記中央洗浄部材で前記基板の中央部分を洗浄すること、
その後前記周辺洗浄部材で、前記基板の周辺部分を洗浄すること、
を含む基板洗浄方法。
【請求項8】
前記中央洗浄部材の接触領域は平面視で扇形であり、当該扇形の中心となる部分は、前記基板の中心から偏心している、請求項7に記載の基板洗浄方法。
【請求項9】
前記周辺洗浄部材の接触領域は平面視で扇形であり、当該扇形の中心となる部分は、前記基板の中心から偏心している、請求項7に記載の基板洗浄方法。
【請求項10】
円形の基板の面に対して洗浄部材を当接させて前記基板と洗浄部材とを相対的に回転させて前記面を洗浄する基板洗浄方法であって、
前記洗浄部材における前記面との接触領域は、基板中心側から基板周辺側に向けて放射状に広がっており、
前記洗浄部材の前記接触領域は平面視で扇形であり、
前記基板の面に接触する前記洗浄部材を前記基板の被洗浄面に当接させながら、前記洗浄部材と前記基板とを相対的に回転すること、
を含む基板洗浄方法。
【請求項11】
円形の基板の面に対して洗浄部材を当接させて前記基板と洗浄部材とを相対的に回転させて前記面を洗浄する基板洗浄方法であって、
前記洗浄部材における前記面との接触領域は、基板中心側から基板周辺側に向けて放射状に広がっており、
前記洗浄部材は、前記基板の中央部と接触させる中央洗浄部材と、前記基板の周辺部と接触させる周辺洗浄部材とを有し、
前記基板の面に接触する前記洗浄部材を前記基板の被洗浄面に当接させながら、前記洗浄部材と前記基板とを相対的に回転すること、
を含む基板洗浄方法。
【請求項12】
円形の基板の面に対して洗浄部材を当接させて前記基板と洗浄部材とを相対的に回転させて前記面を洗浄する基板洗浄方法であって、
前記洗浄部材における前記面との接触領域は、基板中心側から基板周辺側に向けて放射状に広がっており、
前記洗浄部材の前記接触領域には溝が形成されており、
前記基板の面に接触する前記洗浄部材を前記基板の被洗浄面に当接させながら、前記洗浄部材と前記基板とを相対的に回転すること、
を含む基板洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板洗浄装置及び基板洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ウェーハを保持して高速回転可能なスピンナーテーブルと、該ウェーハに洗浄水を供給する洗浄水供給手段と、作用位置と非作用位置とに選択的に位置付けられ、作用位置においては該スピンナーテーブルの周囲において、上面が該スピンナーテーブルの上面と略面一になるよう位置付けられる第一のブラシ手段と、該第一のブラシ手段に対面し、作用位置と非作用位置とに選択的に位置付けられ、作用位置においては表面が該ウェーハの上面に接触する第二のブラシ手段とから構成されるスピンナー洗浄装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-260740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、基板を洗浄するにあたり、基板面内の不純物、パーティクル等の除去率の均一性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、円形の基板の面に対して洗浄部材を当接させて、前記基板と洗浄部材とを相対的に回転させて前記面を洗浄する基板洗浄装置であって、前記洗浄部材における前記面との接触領域は、基板中心側から基板周辺側に向けて放射状に広がっており、前記洗浄部材の前記接触領域は平面視で扇形である。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板面内の不純物、パーティクル等の除去率の均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態にかかる基板洗浄装置の斜視図である。
図2】本実施形態にかかる基板洗浄装置の縦断面の説明図である。
図3】本実施形態にかかる基板洗浄装置における洗浄機構の斜視図である。
図4】本実施形態にかかる基板洗浄装置における中央洗浄部材とウエハとの関係を示す平面説明図である。
図5】本実施形態にかかる基板洗浄装置における周辺洗浄部材とウエハとの関係を示す平面説明図である。
図6】本実施形態にかかる基板洗浄装置における中央洗浄部材によってウエハの中央部分を洗浄する際の動作を示す縦断面説明図である。
図7】本実施形態にかかる基板洗浄装置における中央洗浄部材によってウエハの中央部分を洗浄している様子を示す縦断面説明図である。
図8】本実施形態にかかる基板洗浄装置における周辺洗浄部材によってウエハの周辺部分を洗浄する際の動作を示す縦断面説明図である。
図9】本実施形態にかかる基板洗浄装置における周辺洗浄部材によってウエハの周辺部分を洗浄している様子を示す縦断面説明図である。
図10】溝が形成された中央洗浄部材の平面図である。
図11】溝が形成された周辺洗浄部材の平面図である。
図12】扇形の中心がウエハの中心とずれている中央洗浄部材の平面図である。
図13】扇形の中心がウエハの外側に位置する周辺洗浄部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイスの製造工程においては、例えば半導体ウエハ(以下ウエハという)を清浄な状態に保つため、各々の製造プロセスや処理プロセスの前後において、必要に応じてウエハを洗浄するプロセスが行われている。
【0009】
この点に関し、特許文献1に記載の技術は、円形の基板と言えるウエハの上面に円形のブラシを押し当てて、例えばウエハ上を回転走査してウエハ上面の不純物を除去することが行われている。
【0010】
しかしながらそのように円形のブラシによってウエハ上面を回転走査して除去する手法では、ウエハの径方向の位置によって除去率にばらつきがあることが分かった。これは円形のブラシによって例えばウエハの周辺部を回転走査すると、ブラシにおけるウエハの中心に近い位置と、それより外側の位置とでは、円形のブラシの周長率(円形のブラシがカバーする領域の円弧長/ウエハの周長)が異なっていることが原因であると判明した。
【0011】
そこで本開示の技術では、そのようなブラシが有する周長率を改善して、基板面内の不純物、パーティクル等の除去率の均一性を向上させる。
【0012】
以下、本実施形態にかかる基板洗浄装置の構成について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
図1は基板洗浄装置1の斜視図、図2は同縦断面図を夫々示している。この基板洗浄装置1は、ウエハWを水平に吸着保持する吸着パッド2、2と、この吸着パッド2、2からウエハWを受け取って同じく水平に吸着保持するスピンチャック3と、ウエハWの裏面を洗浄する洗浄機構10と、を備えている。吸着パッド2、2は第1の基板保持部、スピンチャック3は第2の基板保持部を夫々なす。これら吸着パッド2、2、スピンチャック3及び洗浄機構10は、上面が開口したボックス状のアンダーカップ4に設けられている。
【0014】
アンダーカップ4は平面視で長方形であり、互いに対向する側壁を備えており、これらのうち図1に向かって手前側と奥側との対向する2側壁4a、4bが伸びる方向をX方向として説明する。
【0015】
前記した吸着パッド2、2は、ウエハWの裏面における中央部とは重ならない領域を水平に吸着保持し、水平方向に移動自在に構成されている。各吸着パッド2、2は例えば細長いブロックから構成されている。吸着パッド2、2は、ウエハW裏面の周縁部近傍部を平行に支えて保持できるように配置されている。これら吸着パッド2、2は図示しない吸引機構と接続されており、上面の吸着孔(図示せず)を介してウエハWを吸着しながら保持する真空チャックとしての機能を備えている。また各吸着パッド2、2は細長い棒状のパッド支持部5、5の各中央部に取り付けられており、これら2本のパッド支持部5、5の両端部が夫々2本の梁部6、6に取り付けられている。
【0016】
2本の梁部6、6の両端は、アンダーカップ4の対向する2つの側壁4a、4bの外側に、これらの側壁4a、4bに沿って設けられた2本のベルト7、7に夫々固定されている。各ベルト7、7は、2個1組からなるローラー8に巻き掛けられており、駆動機構9の駆動により、各ベルト7、7はX方向に移動し、これによって、梁部6、6もX方向に移動し、梁部6、6に支持されているパッド支持部5、5がX方向に移動する。
【0017】
また一側のローラー8及び駆動機構9は、側板21によって支持され。他側のローラー8は、側板22によって支持されている。これら側板21、22は昇降機構23によって上下動自在である。すなわち、昇降機構23の作動によってベルト7、7はZ方向に移動可能であり、それに伴ってパッド支持部5、5がZ方向に移動する。
【0018】
さらにパッド支持部5、5及び梁部6、6には、洗浄液の飛散を抑えるためのリング状のアッパーカップ31が設けられている。したがってアッパーカップ31は、パッド支持部5、5及び梁部6、6の動きに伴ってX方向とZ方向とに移動する。
【0019】
アッパーカップ31の上面には、ウエハWよりも直径が大きい開口部31aが形成されており、この開口部31aを介して、塗布現像装置の搬送機構と吸着パッド2、2又はスピンチャック3との間でウエハWの受け渡しを行うことができるようになっている。
【0020】
次にスピンチャック3について説明する。スピンチャック3はウエハWの裏面の中央部を水平に吸着保持し、鉛直軸周りに回転自在に構成されている。スピンチャック3は円板状に形成され、略平行に配置された2つの吸着パッド2、2の中間に設置されており、夫々の基板保持部(吸着パッド2、2、スピンチャック3)により支えられるウエハW裏面の領域は相互に重ならないようになっている。図2に示すようにスピンチャック3は回転昇降軸3bを介して駆動機構32に接続されており、スピンチャック3はこの駆動機構32によって回転及び昇降自在に構成されている。また吸着パッド2と同様にスピンチャック3も図示しない吸引管と接続されており、上面の吸着孔(図示せず)を介してウエハWを吸着しながら保持する真空チャックとしての機能を備えている。
【0021】
スピンチャック3の側方には、昇降機構33と接続された支持ピン33aがウエハWの裏面を支持して昇降可能なように設けられており、外部の搬送機構との協働作用によって搬送機構から吸着パッド2、2、またはスピンチャック3から搬送機構へとウエハWを受け渡しできるように構成されている。
【0022】
なおスピンチャック3や支持ピン33aの周囲には、これらの機器を取り囲むようにエアナイフ34が設置されている。エアナイフ34は例えば円筒状の囲み部材よりなり、その上端に周方向に沿って気体の噴射口(図示せず)が形成され、ウエハWの裏面へ向けて例えば圧縮エア等の気体を噴き出すように構成されている。例えばエアナイフ34は二重円筒より構成され、図示しない供給部から供給された気体をこの二重円筒間の中空部を介して噴射口に供給できるようになっている。このエアナイフ34は、スピンチャック3の表面と当該スピンチャック3で支持されるウエハWの裏面とを互いに乾燥した状態で接触させるために、スピンチャック3へウエハWが受け渡される際に、ウエハW裏面の洗浄液を円筒の外側へ吹き飛ばして乾燥させる役割を果たしている。
【0023】
アンダーカップ4の底部40には、基板洗浄装置1内の気流を排気するための排気管51とアンダーカップ4内に溜まった洗浄液を排出するためのドレイン管52が設けられている。なお上方から滴り落ちてきた洗浄液が排気管51に直接入らないように、エアナイフ34の周囲に取り付けられたリング状のカバーをなすインナーカップ53によって排気管51の開口部は覆われている。
【0024】
アッパーカップ31の上方には、ウエハWの洗浄終了後にウエハW外周縁近傍に上方から圧縮エア等を吹き付けて、残存する洗浄液の乾燥を補助するためのブローノズル54が配置されている。またエアナイフ34の外側には、後述の洗浄機構10に設けられた洗浄液ノズル11と共に洗浄液をウエハW裏面に供給するための洗浄液ノズル55が設けられている。
【0025】
ここでウエハWの高さ位置について説明する。後述するようにウエハWは外部の搬送機構から吸着パッド2、2に受け渡され、吸着パッド2、2に保持された状態で図2に示す右X方向に移動して、ウエハW裏面の中央部の洗浄が行われる。図2の洗浄位置では、ウエハW裏面はエアナイフ34の先端よりも上方側に位置し、ウエハWが吸着パッド2、2に保持された状態でX方向に移動するときに、ウエハW裏面がエアナイフ34に干渉しないようになっている。
【0026】
次にウエハWの裏面洗浄を行う洗浄機構10について説明する。洗浄機構10は、図3にも示したように、例えば円板からなる回転基台12を有している。回転基台12は、吸着パッド2又はスピンチャック3に保持されたウエハWと対向するように配置されている。回転基台12の上面には、図3に示したように、中央洗浄部材60と周辺洗浄部材70が設けられている。また回転基台12の上面には、既述の洗浄液ノズル11が複数設けられている。
【0027】
回転基台12は、その裏面側に設けられた旋回軸13を介して駆動機構14により鉛直軸まわりに回転自在に構成され、例えば旋回軸13は回転基台12の中心に設けられている。従って平面視では回転基台12の中心と旋回軸13の中心とは一致しており、この中心が旋回中心となる。この例では、回転基台12、旋回軸13、駆動機構14により旋回機構が形成されている。
【0028】
図3に示したように、中央洗浄部材60は下面側に支持部61を有し、支持部61は支持体62によって支持されている。支持体62は駆動機構63によって昇降可能、かつ回転可能である。中央洗浄部材60の材質は、例えばPVAからなっているが、もちろんこれに限られない。
【0029】
中央洗浄部材60のウエハとの接触領域は、図4に示したように扇形(いわゆる円弧三角形)である。より詳述すれば、洗浄時には平面視で扇形の中央洗浄部材60の頂上部が、吸着パッド2、2によって吸着保持されたウエハWの中心Pに位置するように配置されるが、扇形の中心角θは、54度となるような扇形に成形されている。これは、以下の知見に基づくものである。
【0030】
すなわち、従来の円形のブラシをウエハの中心周りに旋回させてウエハを洗浄した場合、面内の除去率にばらつきがあることは既に述べた通りであるが、その原因を調べると、円形のブラシ周長率が、円形のブラシの場所によって異なっていることに起因することが分かった。つまり円形のブラシの中心を通る旋回軌跡では、周長率が最も高く、ブラシの端部に行くほど周長率が低下し、端部付近では最も低くなる。実際に検証したところ、周長率が15%以上確保しているブラシの領域では不純物の除去率が高いことが知見できた。したがって、ブラシ全域で周長率15%以上を確保できれば、面内除去率の均一性が向上する。
【0031】
このようなことから、中央洗浄部材60のウエハとの接触領域全域にわたって周長率15%を確保するためには、扇形の中心角θを、360度×15%=54度に設定すればよいことになる。かかる観点から実施の形態にかかる扇形の中央洗浄部材60の中心角θはたとえば54度に設定されている。もちろんそれ以上の周長率を確保するには、中心角θを54度以上に設定すればよい。
【0032】
一方、周辺洗浄部材70は、図3に示したように、下面側が支持部71で支持され、この支持部71は支持体72によって支持されている。支持体72は駆動機構73によって昇降可能である。周辺洗浄部材70の材質は、例えばPVAからなっているが、もちろんこれに限られない。
【0033】
そして周辺洗浄部材70のウエハとの接触領域は、図5に示したように扇形である。この場合の扇形は、図示のように円の2つの半径とその間にある円弧によって囲まれた図形である。そしてウエハWの周辺洗浄時にはウエハWはスピンチャック3によって吸着保持されるが、その時の中心角θの中心がウエハWの中心Pと一致するように配置され、中心角θは前記した周長率15%を確保するために54度に設定されている。
【0034】
以上の基板洗浄装置1には、図2に示すように制御部100が設けられている。制御部100は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、基板洗浄装置1におけるウエハWに対する以下の洗浄処理などを制御するプログラムが格納されている。またプログラム格納部には、たとえば本基板洗浄装置1が搭載される基板処理システムにおける各種処理装置や搬送装置などの駆動系の動作を制御するプログラムも格納されていてもよい。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、当該記憶媒体から制御部100にインストールされたものであってもよい。
【0035】
実施の形態にかかる基板洗浄装置1は以上のように構成されており、次にこの基板洗浄装置1を用いてウエハWの裏面を洗浄する場合について説明する。前記したようにこの基板洗浄装置1は、ウエハWの裏面の中央部と接触して当該中央部を洗浄する中央洗浄部材60と、ウエハWの裏面の周辺部と接触して当該周辺部を洗浄する周辺洗浄部材70とを有しており、この2つの洗浄部材によってウエハWの裏面全面を洗浄するようになっている。そして通常、ウエハWの裏面の中央部を洗浄し、次いでウエハWの裏面の周辺部を洗浄する。
【0036】
すなわち、まず図6に示したように、ウエハWが吸着パッド2、2によって吸着保持された状態でスピンチャック3が下降し、次いでベルト7、7を移動させて、図7に示したように、ウエハWを中央洗浄位置までX方向に移動させる。それと共に、回転基台12を回転させて、中央洗浄部材60を、例えば図4に示した所定の位置まで移動させる。その後駆動機構63を作動させて中央洗浄部材60をウエハWの裏面に当接するまで上昇させ、同時に洗浄液ノズル11から洗浄液をウエハWの裏面に供給しつつ、中央洗浄部材60を回転させる。この時の中央洗浄部材60の回転中心は、図4に示したように、ウエハWの中心Pと一致している。
【0037】
そうすると、図4の二点鎖線の内側の中央領域が中央洗浄部材60によって洗浄され、ウエハWの裏面に付着していた不純物、パーティクル等が除去される。かかる場合、中央洗浄部材60は扇形であり、また周長率が15%であるから、二点鎖線の内側の中央領域の全域において均一な除去が達成できる。
【0038】
このようにしてウエハWの裏面の中央領域の洗浄が終わると、中央洗浄部材60が下降し、次いでベルト7、7を駆動させて図8に示したように、ウエハWを周辺洗浄位置まで図中の矢印方向に移動させる。ウエハWの周辺洗浄位置とはウエハWの中心Pをスピンチャック3の中心で吸着保持する位置である。またそれと共に回転基台12を回転させて周辺洗浄部材70を所定の周辺洗浄位置まで移動させる。
【0039】
ウエハWを周辺洗浄位置まで移動させると、図9に示したように、スピンチャック3を上昇させてウエハWを吸着保持し、所定の速度でウエハWを回転させる。そして周辺洗浄部材70を上昇させて、ウエハW裏面の周辺位置に当接して押し当てる。これによって図5の二点鎖線の外側の周辺領域が周辺洗浄部材70によって洗浄され、ウエハWの裏面に付着していた不純物、パーティクル等が除去される。かかる場合、周辺洗浄部材70は扇形であり、また周長率が15%であるから、二点鎖線の外側の周辺領域の全域において均一な除去が達成できる。
【0040】
中央洗浄部材60には、図10に示したように、溝64を形成してもよい。この例では溝64は、斜めに交差するように複数平行して形成されている。これによって、中央洗浄部材60におけるウエハWとの接触面を分割することができ、各分割された接触面を均一にウエハWに押し当てることができ、全体としてさらに均一な除去が達成できる。また形成された溝64内に洗浄液が容易に浸入するので、中央洗浄部材60の中央部分にまで洗浄液を行き亘らせることができ、結果として中央洗浄部材60の接触領域全体でくまなく洗浄液の洗浄効果を享有することができる。
【0041】
また同様な観点から、図11に示したように、周辺洗浄部材70に対しても、溝64と同様な溝74を形成してもよい。これによって、周辺洗浄部材70におけるウエハWとの接触面を分割して細分化して、周辺洗浄部材70全体としてウエハWに均一に押し当てることができ、全体としてさらに均一な除去が達成できる。また形成された溝74内に洗浄液が容易に浸入するので、周辺洗浄部材70の中央部分にまで洗浄液を行き亘らせることができ、結果として周辺洗浄部材70の接触領域全体で洗浄液の洗浄効果を均一に享有することができる。
【0042】
さらにまた図11に示した周辺洗浄部材70の溝74は、前記した中央洗浄部材60の溝64よりも大きく形成されている。これは周辺洗浄部材70の方が中央洗浄部材60よりも洗浄対象接触領域が広いため、より洗浄液を周辺洗浄部材70全体に行き亘らせる必要があるためである。なおそのように溝74自体の幅を大きくすることに代えて、形成する溝の本数を増加させてもよい。
【0043】
なおそのように中央洗浄部材60、周辺洗浄部材70に溝64、74を形成するとその分、中央洗浄部材60、周辺洗浄部材70の実際のウエハWの裏面との接触面積が減少し、それによって前記した15%の周長率が確保できない場合もある。かかる場合、扇形の中央洗浄部材60、周辺洗浄部材70の中心角θを54度から大きくすることで、15%の周長率を確保することができる。
【0044】
また前記した例では、中央洗浄部材60、周辺洗浄部材70のいずれも扇形の中心を、ウエハWの中心Pと一致するような形状としていたが、これに限らずたとえば中央洗浄部材60については、図12に示したように、ウエハWの中心Pを接触領域に含む形で、扇形の中心QをウエハWの中心Pからずらせた形状の中央洗浄部材60Aとしてもよい。これによってウエハWの中心P近傍の不純物も確実に除去することができる。かかる場合、中心角θは54度よりも大きくしてもよいし、必要な所定の周長率、すなわち15%以上の周長率を確保する範囲で中心角θを54度よりも小さくしてもよい。
【0045】
また周辺洗浄部材70についても、図13に示したように、扇形の中心RをウエハWの中心Pからずらせた位置、例えばウエハWの外側に設定した形状としてもよい。この場合は、周長率15%を確保しつつ、ウエハWの中央部側の除去率を向上させたい際に有効である。またこのような場合には、十分な不純物等の除去性能を維持しながら周辺洗浄部材70を極力小型化するために、15%以上の周長率を確保する範囲で扇形の中心角θを54度よりも小さくしてもよい。
【0046】
このようにみてくれば、中央洗浄部材60、周辺洗浄部材70はいずれもそのウエハWの面との接触領域は、ウエハW中心側からウエハW周辺側に向けて放射状に広がっている形状のものであれば、従来の円形の洗浄ブラシよりも周長率を接触領域全域で向上させさることができ、それによってウエハW面内において不純物等の除去率の均一化を向上させることが可能である。また中央洗浄部材60、周辺洗浄部材70の2つの洗浄部材をそのような形状にせずとも、少なくとも一方の洗浄部材をそのようなウエハW中心側からウエハW周辺側に向けて放射状に広がっている形状のものを使用すれば、従来の円形のブラシと組み合わせて使用しても、面内の除去率の均一性は向上する。
【0047】
また前記した実施の形態では、ウエハWの裏面を洗浄する場合を例にとって説明したが、本開示に係る技術は、例えばCMP処理後など、ウエハWの表面を洗浄する場合にも適用可能である。
【0048】
さらにまた前記した中央洗浄部材60、溝64を有する中央洗浄部材60、中央洗浄部材60Aと、周辺洗浄部材70、溝74を有する周辺洗浄部材70、周辺洗浄部材70Aは、任意に組み合わせて使用することができる。また組み合わせる場合、中央洗浄部材60、溝64を有する中央洗浄部材60、中央洗浄部材60Aの外側円弧部の長さと、周辺洗浄部材70、溝74を有する周辺洗浄部材70、周辺洗浄部材70Aの内側円弧部の長さとは一致させることが好ましいが、たとえば中央洗浄部材60、溝64を有する中央洗浄部材60、中央洗浄部材60Aの外側円弧部が、周辺洗浄部材70、溝74を有する周辺洗浄部材70、周辺洗浄部材70Aの接触領域にはみ出ている大きさ、形状であってもよい。
【0049】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
例えば前記した回転基台12については、アーム状の基台やスライドする基台として構成してもよい。要は中央洗浄部材60と周辺洗浄部材70を所定の中央洗浄位置、周辺洗浄位置に移動できる構成のものであればよい。
【符号の説明】
【0050】
1 基板洗浄装置
2 吸着パッド
3 スピンチャック
4 アンダーカップ
5 パッド支持部
6 梁部
7 ベルト
10 洗浄機構
11、54 洗浄液ノズル
12 回転基台
31 アッパーカップ
60 中央洗浄部材
70 周辺洗浄部材
100 制御部
W ウエハ
図1
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