(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】発光装置の製造方法、および発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/62 20100101AFI20231214BHJP
H05K 1/18 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H01L33/62
H05K1/18 J
(21)【出願番号】P 2020020799
(22)【出願日】2020-02-10
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390022471
【氏名又は名称】アオイ電子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(72)【発明者】
【氏名】大西 憲貴
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 伸基
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴章
(72)【発明者】
【氏名】山下 良平
【審査官】八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-152415(JP,A)
【文献】特開2018-124743(JP,A)
【文献】特開2003-78171(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/43733(US,A1)
【文献】特開2008-283133(JP,A)
【文献】特開2016-149433(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/198490(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00
H01L 33/48-33/64
H05K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光部がその射出面をおもて面に向けて配置され、複数の前記発光部に接続される複数の電極が裏面から露出するように形成されている基板を用意すること、
前記基板の前記裏面に、前記電極の少なくとも一部に接続される、導電性ペーストを用いた配線を形成すること、
を備え
、
前記基板に形成されている前記電極の位置情報を検出し、
前記位置情報に基づいて、前記配線の少なくとも一部を相互間の位置関係を変更して形成する、発光装置の製造方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の発光装置の製造方法において、
前記電極の前記位置情報に基づいて、
前記配線の一部を相互間の位置関係を変更して形成するとともに、
前記一部以外の前記配線について相互間の位置関係を固定して形成する、
発光装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1
または請求項
2に記載の発光装置の製造方法において、
前記基板の前記裏面に前記導電性ペーストを形成し、形成した前記導電性ペーストを焼結して、前記基板の前記裏面に前記配線を形成する、
発光装置の製造方法。
【請求項4】
複数の発光部がその射出面をおもて面に向けて配置され、複数の前記発光部に接続される複数の電極が裏面から露出するように形成されている基板を用意すること、
前記基板の前記裏面に、前記電極の少なくとも一部に接続される、導電性ペーストを用いた配線を形成すること、
を備え、
仮設基板上に前記導電性ペーストを形成し、形成した前記導電性ペーストを焼結して配線を形成し、
前記仮設基板上に形成された前記配線を前記基板の前記裏面に貼り合わせ、
前記仮設基板を、前記基板の前記裏面に貼り合わされた前記配線から剥離する、発光装置の製造方法。
【請求項5】
請求項
4に記載の発光装置の製造方法において、
前記仮設基板として、ステンレス製の基板を使用する、発光装置の製造方法。
【請求項6】
請求項
4に記載の発光装置の製造方法において、
前記仮設基板として、ガラス製の基板を使用する、発光装置の製造方法。
【請求項7】
請求項
4から請求項
6までのいずれか一項に記載の発光装置の製造方法において、
前記配線を含む前記仮設基板上に、前記配線よりもエッチングレートの
高い導電材料で導電層を形成し、
前記仮設基板の前記配線からの剥離後に、前記配線をマスクとして前記導電層をエッチングする、発光装置の製造方法。
【請求項8】
請求項
3から請求項
7までのいずれか一項に記載の発光装置の製造方法において、
前記導電性ペーストの形成の少なくとも一部を、ディスペンサまたはインクジェットヘッドにより前記導電性ペーストを吐出することにより行う、発光装置の製造方法。
【請求項9】
請求項
3に記載の発光装置の製造方法において、
前記基板の前記裏面への前記導電性ペーストの形成は、
前記基板の前記裏面にレジストを形成し、
前記レジストの一部を除去して溝部を形成し、
前記レジストが除去された前記溝部に前記導電性ペーストを充填して行う、
発光装置の製造方法。
【請求項10】
請求項
4から請求項
7までのいずれか一項に記載の発光装置の製造方法において、
前記仮設基板上への前記導電性ペーストの形成は、
前記仮設基板上にレジストを形成し、
前記レジストの一部を除去して溝部を形成し、
前記レジストが除去された前記溝部に前記導電性ペーストを充填して行う、
発光装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1から請求項
10までのいずれか一項に記載の発光装置の製造方法において、
前記基板として、樹脂材料を含む基板を使用する、発光装置の製造方法。
【請求項12】
請求項1から請求項
11までのいずれか一項に記載の発光装置の製造方法において、
前記配線の少なくとも一部を覆う絶縁層を形成する、発光装置の製造方法。
【請求項13】
請求項1から請求項
12までのいずれか一項に記載の発光装置の製造方法において、
前記配線を、少なくとも一部において絶縁層を介して多層に渡って形成する、発光装置の製造方法。
【請求項14】
請求項1から請求項
13までのいずれか一項に記載の発光装置の製造方法において、
前記配線の厚さが、20μ
m以下である、発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置の製造方法、および発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂上に複数の発光体を配置し、複数の発光体のうち隣り合う2つの発光体を配線で電気的に接続した発光装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された発光装置では、隣り合う2つの発光体を電気的に接続する配線は示されているが、その配線の具体的な形成方法は示されていない。
発光装置の低コスト化が求められており、それに伴って、発光装置の配線をより低コストで製造する方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によると、発光装置の製造方法は、複数の発光部がその射出面をおもて面に向けて配置され、複数の前記発光部に接続された複数の電極が裏面から露出している基板を用意すること、前記基板の前記裏面に、前記電極の少なくとも一部に接続される、導電性ペーストを用いた配線を形成すること、を備える。
本発明の第2の態様によると、発光装置は、複数の発光部がその射出面をおもて面に向けて配置され、複数の前記発光部に接続される複数の電極が裏面から露出するように形成されている基板と、前記電極の少なくとも一部に接続されている、導電性ペーストにより形成された配線と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法によれば、複数の発光部を備える発光装置を低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1(a)~
図1(c)は、第1実施形態の発光装置を示す図。
図1(a)は発光装置の斜視図。
図1(b)は発光装置を裏面から見た図。
図1(c)は、
図1(b)の線分Aにおける断面図。
【
図2】
図2(a)~
図2(d)は、発光装置の製造方法の第1実施形態を説明する断面図。
【
図3】
図3(a)~
図3(c)は、発光装置の製造方法の変形例2を説明する図。
【
図4】
図4(a)~
図4(c)は、発光装置の製造方法の変形例3を説明する図。
【
図5】
図5(a)~
図5(d)は、発光装置の製造方法の変形例4を説明する図。
【
図6】
図6(a)~
図6(d)は、発光装置の製造方法の第2実施形態を説明する断面図。
【
図7】
図7(a)~
図7(c)は、
図6に続く発光装置の製造方法の第2実施形態を説明する断面図。
【
図8】
図8(a)~
図8(d)は、発光装置の製造方法の変形例5を説明する図。
【
図9】
図9(a)~
図9(b)は、
図8に続く発光装置の製造方法の変形例5を説明する断面図。
【
図11】
図11(a)、
図11(b)は、発光装置の製造方法の変形例7および変形例8を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(発光装置の一実施形態)
以下、
図1(a)から
図1(c)を参照しつつ、一実施形態の発光装置1について説明する。
図1(a)は発光装置1の斜視図である。
図1(a)に示した通り、発光装置1は、基板2の中に、複数の発光部3が配置されたものである。一例として、基板2は長方形の平板であり、その長方形の各辺に平行な方向をX方向、およびY方向とする。また、X方向、およびY方向と直交する方向をZ方向とする。
図1(a)および以降の各図に矢印で示したX方向、Y方向、およびZ方向は、その矢印の指し示す方向を+方向とする。また、以降の各図において、+X方向、+Y方向、および+Z方向は、
図1(a)における方向と、それぞれ同一の方向を示している。
【0009】
以下では、基板2の+Z方向の端面を「おもて面」2fと呼ぶ。また、基板2の-Z方向の端面を裏面2bと呼ぶ(
図1(b)等、参照)。
複数の発光部3は、発光部3から光が発光される面である射出面4が基板2のおもて面2fから露出するように配置されている。射出面4の形状は一例として長方形であり、発光部3は、一例としてX方向およびY方向に沿って2次元的に配列されている。
【0010】
図1(b)は、発光装置1を裏面2b側から見た平面図である。発光装置1の裏面2bには、それぞれの発光部3に電気的に接続されている電極5が露出している。なお、発光部3は裏面2b側からは見えないが、
図1(b)では理解を容易にするために、発光部3を破線で示している。
【0011】
裏面2b上には、電極5に電気的に接続され、電極5を介して発光部3に電力を供給するための配線7a、7bが形成されている。ここで、配線7aは、発光装置1の外部に設けられている電源から発光部3に電力を供給するための配線であり、配線7bは、2つまたは3つ以上の発光部3を局所的に接続するための配線である。本明細書では、配線7aと配線7bとを合せて、またはそれぞれを、配線7とも呼ぶ。
【0012】
図1(c)は、
図1(b)に示した線分Aにおける発光装置1の部分的な断面図(XZ断面図)であり、基板2、発光部3、配線7b、および配線7aの断面を示している。
基板2は、一例としてシリコン樹脂やエポキシ樹脂等の樹脂を主成分とするものであり、基板2の内部に複数の発光部3が含まれている。
【0013】
発光部3は、一例として発光ダイオード(LED)を含む発光素子10と、発光素子10に積層されているサファイア等の透明基板11と、蛍光物質を含む蛍光層12と、保護層13とを含む。一実施形態の光源装置1においては、保護層13の+Z側の面が、発光部3の射出面4となる。
【0014】
電極5は銅等の導電物質で形成されており、その-Z側の端面は、基板2の裏面2bと面一となっている。
裏面2b上には、上述のとおり、電極5に電気的に接続される配線7が形成されている。
図1(b)では図示を省略したが、裏面2b上には、配線7の少なくとも一部を覆って、絶縁性の保護膜8が形成されている。保護膜8は、配線7の絶縁性を確保するとともに、配線7のマイグレーションによる短絡を防止する。ただし、配線7のマイグレーション耐性が十分な場合には、保護膜8は省略しても良い。
【0015】
図1(b)および
図1(c)には、配線7が1層のみ示されているが、後述する製造方法において説明するように、配線7は2層以上の多層に渡って形成されていても良い。その場合には、多層の各配線7のそれぞれの層間の少なくとも一部には、絶縁層としての保護膜8が配置される。
【0016】
一実施形態の発光装置1においては、配線7は、導電性ペーストを用いて形成された配線である。導電性ペーストは、高分子バインダー中に金属やカーボンブラック等の導体からなる粉体(フィラー)を分散させたものである。配線7を形成するために使用する導電性ペーストとして、例えば、銀フィラーを含む銀ペースト、銅フィラーを含む銅ペースト、金フィラーを含む金ペースト、またはアルミニウムフィラーを含むアルミニウムペーストを使用することができる。
【0017】
一実施形態の発光装置1においては、配線7を、一例として、基板2上の所定の位置に導電性ペーストを形成し、加熱により導体であるフィラーを焼結させたものとすることができる。なお、後述する各種の配線7の形成方法により、発光装置1の各種の変形例を構成する。
【0018】
一方、従来においては、微細な配線はリソグラフィ法により形成されていた。すなわち、配線を形成すべき基板の全面に金属等の導体の膜を形成した後、導体の膜から不要な部分を除去し、必要な部分を残存させることにより配線を形成していた。従って、従来においては、最終的に配線として使用される量よりも遥かに多い量の導体が必要とされていた。また、基板2を構成する樹脂は薬品処理の影響を受けやすい為、リソグラフィ法におけるエッチング処理に際しては樹脂を保護するための処理が必要になり、さらに工程が増え、コストが増加する事となる。
【0019】
一実施形態の発光装置1においては、配線7が導電性ペーストにより形成されているので、配線7を形成するために必要な金属等の導体の量、および必要となる工程数を、従来に比べて削減することができる。従って、配線7の形成における生産コストを低減することができる。
【0020】
また、配線7が導電性ペーストにより形成されていることにより、配線7の厚さ(Z方向のサイズ)を薄くすることができる。これにより、光源装置1の全体の厚さを薄くすることもできる。
一方、従来のリソグラフィにより形成した配線層全体のZ方向の厚さは、配線層が2層構成であれば50~60μm程度となってしまい、従来においては、光源装置を十分に薄くすることは難しかった。
【0021】
一実施形態の発光装置1においては、配線7が導電性ペーストにより形成されているので、配線7の1層あたりの厚さを、10μm以下まで薄くすることができる。保護膜8の厚さを含めても20μm以下であり、配線層が2層構成であれば30μm以下となる。従って、仮に配線7を4層に渡って形成するとした場合でも、4層の配線7と保護膜8の全体としての厚さは100μm以下にすることができ、光源装置を十分に薄くすることができる。
【0022】
(一実施形態の発光装置の効果)
(1)一実施形態の発光装置は、複数の発光部3の射出面4がおもて面2fから露出するように配置され、複数の発光部3に接続された複数の電極5が裏面2bから露出している基板2と、電極5の少なくとも一部に接続されている、導電性ペーストにより形成された配線7と、を備えている。
この構成により、配線7を形成するために必要な金属等の導体の量を従来に比べて削減することができ、低コストの光源装置1を実現できる。
【0023】
(発光装置の製造方法の第1実施形態)
以下、
図2(a)~
図2(c)を参照して、第1実施形態の製造方法ついて説明する。
【0024】
(工程1)
複数の発光部3の射出面4がおもて面2fから露出するように配置され、複数の発光部3に接続される複数の電極5が裏面2bから露出するように形成されている基板2を用意する。すなわち、用意すべき基板2は、
図1(a)から
図1(c)に示した一実施形態の発光装置1に対して、配線7および保護膜8が形成されていない基板である。
【0025】
図2(a)は、用意すべき基板2についての、
図1(b)の線分AにおけるXZ断面を表す図である。なお、
図2(a)は、上述の
図1(c)とは上下方向(Z方向)を反転して示している。
図1(c)に示した一実施形態の発光装置1とは異なり、
図2(a)に示した基板2には、配線7および保護膜8は、まだ形成されていない。
なお、基板2は、例えば、電極5が形成された複数の発光部3を、射出面4を+Z方向に向けて同一面内(XY面内)に並べ、それらを一括して樹脂でモールドすることで形成することができる。
【0026】
(工程2)
図2(b)に示したように、基板2の裏面2b上の、配線7を形成するべき位置に、導電性ペースト6a、6bを形成する。導電性ペースト6aは、後述する焼結により配線7aとなる部分であり、導電性ペースト6bは配線7bとなる部分である。導電性ペースト6aと導電性ペースト6bとを合せて、またはそれぞれを、導電性ペースト6とも呼ぶ。
導電性ペーストとして、前述のとおり、金ペースト、銀ペースト、または銅ペースト等を使用することができる。
【0027】
基板2の裏面2b上への導電性ペーストの形成は、一例として、スクリーン印刷により、裏面2bの全面に渡って一度に導電性ペースト6を印刷して形成する。裏面2bの全面に渡って一度に印刷することにより、速い処理速度で導電性ペースト6を形成することができる。
【0028】
なお、導電性ペースト6は、基板2の裏面2bに形成されている複数の電極5の少なくとも一部に位置整合して形成する必要がある。従って、スクリーン印刷等による導電性ペースト6の形成に先立ち、例えば光学式の位置検出装置により複数の電極5のX方向およびY方向の位置を、パターンマッチング等の手法を用いて検出しておく。そして、検出された位置情報に基づいて、電極5の位置に合せて導電性ペースト6を形成する。光学式の位置検出装置およびパターンマッチング等の手法については、公知の技術を用いれば良いので説明を省略する。
【0029】
(工程3)
基板2の裏面2b上に形成した導電性ペースト6を焼結して、配線7とする。
図2(c)は、導電性ペースト6が焼結されることにより、裏面2b上に配線7が形成された状態を示している。焼結は、基板2および導電性ペースト6を200℃~300℃程度に加熱することにより行う。導電性ペーストとして銀ペーストを使用する場合には、焼結温度は200℃以下でも良い。
【0030】
(工程4)
配線7が形成された基板2の裏面2b上に、配線7の少なくとも一部を覆う保護膜8を形成する。
図2(d)は、保護膜8が形成された基板2を示している。保護膜8は、例えば、絶縁性の樹脂を貼り付けて、または印刷することにより形成する。
以上の工程により、一実施形態の発光装置1が完成する。
【0031】
(発光装置の製造方法の第1実施形態の効果)
(2)第1実施形態の製造方法は、複数の発光部3がその射出面4をおもて面2fに向けて配置され、複数の発光部3に接続される複数の電極5が裏面2bから露出するように形成されている基板2を用意すること、基板2の裏面2bに、電極5の少なくとも一部に接続される、導電性ペースト6を用いた配線7を形成すること、を備えている。
この構成により、配線7の形成に必要な金属等の導電材料の使用量を削減することができ、低コストで配線7を形成することができ、発光装置1を低コストで製造することができる。
(3)さらに、基板2の裏面2bに導電性ペースト6を形成し、形成した導電性ペースト6を焼結して、基板2の裏面2bに配線7を形成することにより、製造工程を簡素化しつつ、かつ低コストで発光装置1を製造することができる。
【0032】
(発光装置の製造方法の変形例1)
以下、変形例1について説明する。変形例1は、その大部分が上述の第1実施形態と共通する。従って、以下では第1実施形態と相違する構成について説明し、共通する構成については適宜説明を省略する。
【0033】
第1実施形態においては、工程2において、スクリーン印刷等の、導電性ペースト6を裏面2bの全面に渡って一度に形成する方法を用いた。
これに対し、製造方法の変形例1では、基板2に向かって導電性ペースト6を吐出するディスペンサを使用して、基板2の裏面2b上に導電性ペースト6を形成する。この場合、1つのディスペンサを基板2に対して2次元的に相対走査しつつ導電性ペースト6を吐出しても良い。または、複数のディスペンサを基板2に対して2次元的に相対走査しつつ導電性ペースト6を吐出しても良い。また、多数のディスペンサを含む、いわゆるインクジェットプリンタヘッドを基板2に対して1次元的に、または2次元的に相対走査しつつ導電性ペースト6を吐出しても良い。
【0034】
ディスペンサまたはインクジェットプリンタヘッドを使用して導電性ペースト6を形成する場合、相対走査における吐出のタイミング等を変更することにより、基板2上の導電性ペースト6の位置、すなわち配線7の位置を自由に変更することができる。換言すれば、基板2上の複数の導電性ペースト6、すなわち複数の配線7は、相互間の位置関係が設計上の位置関係に対して変更されて形成される。相互間の位置関係の設計値に対する変更は、複数の導電性ペースト6の各位置を全体として一様に伸縮するもの(スケーリング)であっても良く、複数の導電性ペースト6の各位置をランダムに変更するものであっても良い。
従って、仮に基板2が熱収縮等の理由で全体的に、または局所的に変形し、電極5が設計上の位置からずれている場合であっても、検出された電極5の位置に合わせて導電性ペースト6の吐出位置を補正することにより、電極5に正確に位置整合させて配線7を形成できる。
【0035】
配線7に対応する導電性ペースト6の相互間の位置関係の変更は、基板2上の複数の導電性ペースト6の位置(配置の間隔)を全体として一様に伸縮させるものであっても良く、複数の導電性ペースト6を個別に局所的に変位させるものであっても良い。
【0036】
局所的に変形している基板2に対しては、複数の導電性ペースト6のそれぞれを局所的に変位させて形成することにより、導電性ペースト6を基板2上の電極5のそれぞれに正確に位置整合させて形成することができる。
この場合、多数の電極5、例えば全ての電極5の2割程度以上の電極5の位置を検出し、検出結果に基づいて電極5の変位に関する情報を算出し、算出した情報に基づいてそれぞれの導電性ペースト6を局所的に変位させ、各電極5に位置整合させて形成しても良い。
【0037】
一方、上述の第1実施形態のように、スクリーン印刷等で一括して導電性ペースト6を形成する場合には、形成する導電性ペースト6の各位置が使用するスクリーンマスクにより固定されており、位置関係を変更できない。従って、スクリーン印刷等で一括して導電性ペースト6を形成する場合には、基板2が不規則に変形してしまうと、基板2上に配置されている電極5の全てに対して、配線7を正確に位置整合させて形成することが難しくなる。
【0038】
(発光装置の製造方法の変形例1の効果)
(4)変形例1は、上述の第1実施形態においてさらに、第1基板2に形成されている電極5の位置情報を検出し、位置情報に基づいて、配線7の少なくとも一部を相互間の位置関係を変更して形成する。
この構成により、基板2上の各部分で配線7を電極5に正確に位置整合させて形成することができる。
【0039】
(発光装置の製造方法の変形例2)
以下、変形例2について説明する。変形例2は、その大部分が上述の変形例1と共通する。従って、以下では変形例1と相違する構成について説明し、共通する構成については適宜説明を省略する。
【0040】
変形例2においては、配線7のうち、高い位置精度が要求される部分についてはディスペンサまたはインクジェットプリンタヘッドを使用して導電性ペースト6を形成する。一方で、配線7のうち要求される位置精度がそれほど高くない部分についてはスクリーン印刷等により一括して導電性ペースト6を形成する。
【0041】
図3(a)~
図3(c)は、発光装置の製造方法の変形例2における導電性ペースト6の形成工程を示す図であり、基板2を裏面2b側から見た図である。
製造方法の変形例2においては、上述の第1実施形態における工程2に相当する工程において、第1実施形態と同様に、
図3(a)に示したように基板2の裏面2bに形成されている電極5の、X方向およびY方向の位置を検出する。
【0042】
電極5の位置の検出結果に基づいて、
図3(b)に示したように、電極5と接続する部分等の高い位置精度が要求される部分に、ディスペンサまたはインクジェットプリンタヘッドを使用して、導電性ペースト6b、6cを電極5と位置整合させて形成する。
続いて、要求される位置精度がそれほど高くない部分に、スクリーン印刷等により一括して導電性ペースト6dを形成する。なお、導電性ペースト6dの一部は、先に形成した導電性ペースト6cと重なり、導電性ペースト6cと導電性ペースト6dとは一体となって、導電性ペースト6aを構成する。
【0043】
導電性ペースト6dの形成の後、導電性ペースト6(6a~6d)を焼結して、
図1(b)に示したものと同様の配線7を形成する。
なお、一括形成による導電性ペースト6dを先に形成し、ディスペンサまたはインクジェットプリンタヘッドによる導電性ペースト6b、6cを後に形成しても良い。
また、先に形成した導電性ペースト6b、6cまたは導電性ペースト6dを焼結した後に、後から導電性ペースト6dまたは導電性ペースト6b、6cを形成してこれを焼結しても良い。
【0044】
(発光装置の製造方法の変形例2の効果)
(5)変形例2は、上述の変形例1においてさらに、電極5の位置情報に基づいて配線7の一部(導電性ペースト6b、6cに対応する部分)を相互間の位置関係を変更して形成するとともに、一部以外の配線7(導電性ペースト6dに対応する部分)について相互間の位置関係を固定して形成する。
この構成により、高い処理能力と高い位置整合精度を併せ持った製造方法を実現できる。
【0045】
(発光装置の製造方法の変形例3)
以下、変形例3について説明する。変形例3は、その大部分が上述の第1実施形態と共通する。従って、以下では第1実施形態と相違する構成について説明し、共通する構成については適宜説明を省略する。
【0046】
図4(a)~
図4(c)は、変形例3における、導電性ペースト6の形成工程を示す図であり、基板2の断面図を示す。
変形例3においては、第1実施形態における工程2に相当する工程において、
図4(a)に示すように、始めに基板2の裏面2b上にレジスト9を形成する。レジスト9は、ドライフィルムレジストをラミネート加工等により貼り付けたものであっても良く、スピンコートまたはスプレーコートにより塗布したものであっても良い。
【0047】
続いて、レジスト9越しに裏面2b上の電極5の位置を検出し、検出した電極5の位置情報に基づいてレジスト9の一部に露光を行い、レジスト9の一部を除去する。
図4(b)は、一部が除去されたレジスト9を示す図であり、溝部9oはレジスト9が除去された部分である。溝部9oは、露光後の現像によりレジスト9が除去された部分であっても良く、露光によりレジスト9が昇華されて除去された部分であっても良い。
【0048】
図4(c)に示したように、レジスト9が除去された部分である溝部9oに、導電性ペースト6を充填する。この場合、レジスト9で覆われた基板2の裏面2bの全面に導電性ペースト6を塗布することにより、導電性ペースト6を溝部9oに充填することができる。なお、裏面2bに塗布され溝部9oに充填されなかった導電性ペースト6は、回収され、他の基板2の溝部9oへの充填に再利用される。
【0049】
続いて、上述の第1実施形態の工程3と同様に、基板2を加熱して導電性ペースト6を焼結し、配線7(
図4(c)に不図示)を形成する。その後、レジスト9を除去することにより、上述の
図2(c)と同様に、裏面2b上に配線7が形成される。
【0050】
なお、溝部9oを形成するためのレジスト9への露光においては、上述の変形例1と同様に、基板2の変形に伴う電極5の位置の変位に応じて、溝部9oの少なくとも一部について相互間の位置関係を変更して露光を行っても良い。このために、レーザービームスキャン型の露光装置や、マルチミラーデバイス等の可変整形マスクを用いた露光装置を用いて、レジスト9への露光を行っても良い。これにより、基板2が変形している場合であっても、基板2上の各部分で、溝部9oを電極5に正確に位置整合させることで、配線7を正確に形成することができる。
【0051】
また、上述の変形例2と同様に、高い位置精度が必要な配線7に対応する溝部9oについてはレーザービームスキャン型の露光装置を用い、高い位置精度が不要な配線7に対応する溝部9oについては、固定マスクを使用する露光装置を用いて露光を行っても良い。
なお、レジスト9を除去する前に、レジスト9上に残存する恐れのある導電性ペースト6を研磨により除去しても良い。
なお、レジスト9として、ABFフィルム等のいわゆる永久レジストを使用する場合には、レジスト9の除去は不要である。
【0052】
(発光装置の製造方法の変形例3の効果)
(6)変形例3は、上述の第1実施形態においてさらに、基板2の裏面2bへの導電性ペースト6の形成を、基板2の裏面2bにレジスト9を形成し、レジスト9の一部を除去して溝部9oを形成し、レジスト9が除去された溝部9oに導電性ペースト6を充填して行う。
この構成により、高速処理が可能な光露光技術を用いて、導電性ペースト6を基板2の裏面2bに直接吐出することなく、基板2上に導電性ペースト6および配線7を高い処理能力で形成することができる。
【0053】
(発光装置の製造方法の変形例4)
以下、変形例4について、
図5(a)~
図5(d)を参照して説明する。変形例4は、その大部分が上述の第1実施形態と共通する。従って、以下では第1実施形態と相違する構成について説明し、共通する構成については適宜説明を省略する。
【0054】
図5(a)~
図5(d)は、変形例4における配線7の形成工程を示す図であり、基板2の断面図を示す。
変形例4は、配線7をいわゆる多層配線とする点が、上述の第1実施形態と異なっている。
【0055】
図5(a)の保護膜8aには
図2(d)の保護膜8と異なり、配線7aの一部に対応する位置に開口15oが形成されている。上述の
図2(c)に示した基板2に対し、絶縁性の樹脂である保護膜8aを部分的に印刷することにより、
図5(a)に示した基板2を形成することができる。
【0056】
図5(b)に示したように、
図5(a)に示した基板2の保護膜8aの上に、配線7eを形成する。配線7eの一部は開口15o内に充填され、配線7aと電気的に接合するように形成する。配線7eは、上述した各種の形成方法を用いて導電性ペースト6(
図5(b)には不図示)を形成し、これを焼結することにより形成することができる。
【0057】
続いて、
図5(c)に示したように、配線7eおよび保護膜8aの上に、絶縁性の樹脂である保護膜8bを部分的に印刷する。この印刷においては、配線7eの対応する位置に開口16oを形成する。
その後、
図5(d)に示したように、開口16o内に、配線7fを形成する。配線7fの形成も、上述した各種の形成方法を用いて導電性ペースト6(
図5(d)には不図示)を形成し、これを焼結することにより形成することができる。
【0058】
開口15oは、配線7aではなく配線7bの対応する位置に形成されていても良く、配線7aおよび配線7bの対応する位置に形成されていても良い。
配線7a、7bと配線7eとの2層の配線の間に形成する保護膜8aとして、吸湿による変形等を防止するために、吸湿性の少ないエポキシ樹脂を用いても良い。
なお、
図5(a)~
図5(d)には、配線7a、7bと、配線7eからなる2層配線を示しているが、保護膜8b上に、さらに配線および保護膜を積層して形成することにより、3層以上に積層された配線を形成することもできる。
【0059】
(発光装置の製造方法の変形例4の効果)
(7)変形例4は、上述の発光装置の第1実施形態においてさらに、配線7(7a~7f)を、少なくとも一部において絶縁層(保護膜8a)を介して多層に渡って形成する。
この構成により、発光部3への配線の自由度の高い多層配線を低コストで製造することができる。
【0060】
(発光装置の製造方法の第2実施形態)
以下、
図6および
図7を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、その大部分が上述の第1実施形態と共通する。従って、以下では第1実施形態と相違する構成について説明し、共通する構成については適宜説明を省略する。
【0061】
第1実施形態においては、基板2の裏面2bに導電性ペースト6を直接形成し、形成した導電性ペースト6を焼結することにより、配線7を形成している。
これに対し、第2実施形態においては、仮設基板上に配線7および保護膜8を形成した後、仮設基板上に形成した配線7および保護膜8を、基板2の裏面2bに貼り付けることにより、基板2の配線7を形成する。
【0062】
第2実施形態においても、上述の工程1における基板2の用意については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
第2実施形態においては、第1実施形態における工程2から工程4に代えて、以下の工程2Aから工程8Aを実行する。
【0063】
(工程2A)
図6(a)は、工程8Aにおいて基板2と貼り合わせる際に、基板2における
図1(b)の線分Aの部分と貼り合わされる仮設基板20の一部分のXZ断面を表す図である。
一例としてステンレス製の仮設基板20を用意する。仮設基板20は、基板2と同様に、XY平面に沿って広がる平面を有する基板であり、そのX方向およびY方向のサイズは、基板2と概ね等しい。
【0064】
(工程3A)
図6(a)に示したように、仮設基板20上に、上述した各種の形成方法を用いて、導電性ペースト6hを形成する。そして、仮設基板20を加熱して、導電性ペースト6hを焼結し、配線7hとする。以降の配線7a、7b、7g、7fについても同様に、仮設基板20上に導電性ペーストを形成し、導電性ペーストを焼結することにより形成する。
【0065】
(工程4A)
図6(b)に示したように、仮設基板20上に保護膜8cを形成する。保護膜8cの厚さは、配線7hの上端(+Z方向の端部)が保護膜8cから露出する厚さとする。保護膜8cについても、上述の保護膜8aと同様に、樹脂を印刷することにより形成しても良い。
【0066】
(工程5A)
図6(c)に示したように、保護膜8c上および配線7h上に、不図示の導電性ペーストを用いて配線7gおよび配線7fを形成する。
【0067】
(工程6A)
図6(d)に示したように、配線7gおよび保護膜8c上に、保護膜8bを形成する。保護膜8bの厚さは、配線7fの上端(+Z方向の端部)が保護膜8bから露出する厚さとする。さらに、
図6(d)に示したように、保護膜8b上および配線7f上に、不図示の導電性ペーストを用いて配線7aおよび配線7bを形成する。
【0068】
(工程7A)
図7(a)に示したように、保護膜8b上に、保護膜8aを形成する。保護膜8aの厚さは、配線7a、7bの上端(+Z方向の端部)が保護膜8aから露出する厚さとする。
【0069】
(工程8A)
図7(b)に示したように、基板2の裏面2bに、工程7Aまでが終了した仮設基板20を貼り付ける。基板2への貼り付けに際しては、仮設基板20の配線7a、7bと、基板2上の対応する電極5とを位置を整合させて、導電性のフィルム、あるいは導電性の接着ペーストを用いて貼り合わせる。
【0070】
(工程9A)
図7(b)に示した仮設基板20が貼り合わされた基板2から、配線7a~7fおよび保護膜8a~8cを基板2に残して、仮設基板20を剥離する。仮設基板20が剥離された状態の基板2を
図7(c)に示す。
【0071】
以上の工程1、および工程2Aから工程9Aにより、
図1に示した一実施形態の発光装置1を製造することができる。
なお、第2実施形態においては、2層配線の配線7a~7hを形成するが、配線7g、7hおよび保護膜8cの形成を省略することにより、上記の製造方法の第1実施形態と同様に、配線が1層である発光装置1を製造しても良い。
あるいは、仮設基板20上に、配線および保護膜をさらに積層して形成することにより、3層以上の配線を有する発光装置1を製造しても良い。
【0072】
第2実施形態では、基板2上で導電性ペースト6h等を焼結しないため、基板2を200℃程度まで加熱する必要が無い。このため、製造工程における基板2に対しての、熱変形などの悪影響を防止できる。
【0073】
仮設基板20の剥離は、一例として、仮設基板20を配線7hおよび保護膜8fから機械的に引き剥がすことにより行う。このために、仮設基板20は、配線7hを構成する導体ペーストの焼結体、および保護膜8cを構成する樹脂等との接合力が弱く、かつ機械的強度の強い材質からなる基板を使用することが好ましい。この条件を満たす仮設基板20として、例えば、SUS304(ISO 4301-304-00-I)やSUS430(ISO 4016-430-00-I)等のステンレス製の基板を使用することができる。
【0074】
ステンレス製の仮設基板20は、基板2から剥離され、洗浄された後に、再度、仮設基板20として発光装置1の製造に使用しても良い。
なお、仮設基板20として、銅製の基板やガラス基板を使用しても良い。
【0075】
(発光装置の製造方法の変形例5)
以下、
図8および
図9を参照して、変形例5の製造方法について説明する。変形例5では、上述の第2実施形態におけるステンレス製の仮設基板20に代えて、ガラス製の仮設基板21を使用する。また、基板2および仮設基板21として、そのX方向およびY方向の大きさが、最終製品である発光装置1のX方向およびY方向の大きさより大きいものを使用する。ただし、それ以外の製造工程は、上述の第2実施形態と概ね共通する。従って、以下では第2実施形態と相違する構成について説明し、共通する構成については適宜説明を省略する。
【0076】
(工程2B)
図8(a)は、工程6Bにおいて基板2と貼り合わせる際に、基板2における
図1(b)の線分Aの部分と貼り合わされる仮設基板21の一部分のXZ断面を表す図である。ただし、上述のとおり、基板2および仮設基板21のX方向およびY方向の大きさが、最終製品である発光装置1の大きさより大きいため、
図8(a)においては、
図1(b)の線分Aの部分よりも-X方向に広がった部分のXZ断面を表している。
【0077】
図8(a)に示したように、+Z側の面に、仮設基板21側から順に、第1仮設層22と第2仮設層23とが形成されているガラス製の仮設基板21を用意する。ここで第2仮設層23は、導電性が高く、かつ化学的なエッチングが比較的容易な銅等の金属を主成分とし、第1仮設層22は、ニッケルやチタン等のガラスとの密着性の高い金属を主成分とするものである。仮設基板21の厚さは、一例として1~1.5mm程度である。第2仮設層23の厚さは、一例として1μm程度以下である。
【0078】
(工程3B)
図8(b)に示したように、仮設基板21上の第2仮設層23の上に、上述した各種の形成方法を用いて導電性ペーストを形成し、仮設基板21を加熱して導電性ペーストを焼結し、配線7gを形成する。
第2仮設層23が銅を主成分とする場合、導電性ペーストとして、銅ペーストを使用しても良い。これにより、第2仮設層23に対する配線7gの密着力を向上させることができる。
【0079】
(工程4B)
その後、
図8(c)に示したように、配線7gの一部の上に導電性ペーストを形成し、これを焼結して配線7fを形成する。さらに、配線7gの上、および仮設基板21の上に、保護膜8bを形成する。保護膜8bの厚さは、配線7fの上端(+Z方向の端部)が保護膜8bから露出する厚さとする。保護膜8bについても、樹脂を印刷することにより形成しても良い。
【0080】
(工程5B)
図8(d)に示したように、保護膜8b上および配線7f上に、導電性ペーストを用いて配線7aおよび配線7bを形成する。
なお、形成した配線7aおよび配線7bの上に、電界めっきにより銅等の金属を選択的に製膜し、配線7aおよび配線7bの厚さを増加させ、電気抵抗を低減しても良い。
その後、保護膜8b上に、保護膜8aを形成する。保護膜8aの厚さは、配線7a、7bの上端(+Z方向の端部)が保護膜8aから露出する厚さとする。
【0081】
(工程6B)
図9(a)に示したように、基板2の裏面2bに、工程5Bまでが終了した仮設基板21を貼り付ける。基板2への貼り付けに際しては、仮設基板21の配線7a、7bと、基板2上の対応する電極5とを位置を整合させて、導電性のフィルム、あるいは導電性の接着ペーストを用いて貼り合わせる。
【0082】
(工程7B)
図9(a)に示した貼り合わされた仮設基板21および基板2の周辺部のX方向の両端部、およびY方向の両端部を破線で示した切断面DCにて切断する。なお、
図9(a)には、仮設基板21および基板2の-X方向の端部の近傍の切断面DCのみが示されている。
切断面DCでの切断は、例えばダイシングソー、または基板2の周辺部を機械的にたたく等の衝撃による割断により行う。
切断面DCにおける切断により、仮設基板21の表面に形成されている第1仮設層22および第2仮設層23が切断面DCに露出する。
【0083】
(工程8B)
第1仮設層22および第2仮設層23を境界として、仮設基板21が貼り合わされた基板2から、配線7、7f、7gおよび保護膜8a、8bを基板2に残して、仮設基板21を剥離する。上述の切断により第1仮設層22および第2仮設層23が切断面DCに露出しているため、第1仮設層22および第2仮設層23を剥離層として、仮設基板21を効率的に剥離することができる。
【0084】
(工程9B)
その後、基板2の裏面2b側に残存する第1仮設層22および第2仮設層23を、エッチング処理等により除去する。
仮設基板21が剥離され、第1仮設層22および第2仮設層23が除去された状態の基板2を
図9(b)に示す。
以上の工程1、および工程2Bから工程9Bにより、
図1に示した一実施形態の発光装置1を製造することができる。
変形例5は、工程5Bの後に基板2を貼り付ける工法を用いたが、複数の発光部3を含む基板2としてではなく、発光部3を個別に実装しても良い。
【0085】
(発光装置の製造方法の変形例6)
以下、
図10を参照して、変形例6の製造方法について説明する。変形例6の製造工程は、上述の変形例5と概ね共通するので、以下では変形例5と相違する構成について説明し、共通する構成については適宜説明を省略する。
【0086】
変形例6においては、変形例5の工程3Bの終了後に、
図10(a)に示したように、配線7gおよび第2仮設層23の上(+Z側)に、導電性が高く、かつ化学的なエッチングが比較的容易な銅等の金属を主成分とする導電層24を、めっき等により形成する。なお、導電層24は、配線7gに比べてエッチングレートの高い材料で構成する。逆に言えば、変形例6においては、配線7gは導電層24に比べてエッチングレートの低い材料で構成する。一例として、配線7gを焼結した銀ペーストで形成し、導電層24を銅めっきにより形成しても良い。
【0087】
変形例6においても、その後、変形例5と同様に上述の工程4Bから工程8Bまでの処理を行う。
図10(b)は、変形例6において工程8Bの仮設基板21の剥離までが完了した基板2の状態を示す。基板2に形成されている配線7gの下側(-Z側)、および導電層24の一部の下側には、第2仮設層23の一部が残存している。
【0088】
その後、変形例6においても、変形例5と同様に上述の工程9Bの処理を行う。工程9Bにおけるエッチング処理により、残存する第2仮設層23は除去される。さらに、配線7gに比べてエッチングレートの高い材料で構成されている導電層24の一部は、配線7gをエッチングマスクとして、除去される。すなわち、導電層24のうち、複数の配線7gの間に形成され、複数の配線7gを相互に導通させている部分は、このエッチング処理により除去される。
【0089】
図10(c)は、変形例6において、工程9Bの処理が終了した基板2の状態を示す。工程9Bのエッチング処理により、配線7gの露出面を除き、配線7gの周囲を導電層24が覆う構成となる。これにより、導電性ペーストにより形成される配線7gが薄くとも、配線7gをエッチングマスクとして導電層24をパターニングすることにより、全体として配線7gと導電層24との全体として厚い、すなわち電気抵抗の小さな配線を形成することができる。
【0090】
別の観点からは、導電性ペーストにより形成される配線7gを薄くすることができ、これにより、粘度の低い導電性ペーストを用いて、より細い、またはより狭ピッチの配線7gを形成することが可能となる。
なお、変形例6における上述の導電層24の成膜、および配線7gをエッチングマスクとしたエッチングは、上述のステンレス製の仮設基板20を使用する第2実施形態の製造方法においても用いても良い。
【0091】
上述の第2実施形態、変形例5、および変形例6においても、仮設基板20上への配線7a、7b、7f、7g、7h(以下、包括的に配線7Aとも呼ぶ)の形成は、導電性ペースト6h等を、仮設基板20上にスクリーン印刷等で一括して形成しても良く、ディスペンサー等で個別に形成しても良い。
導電性ペースト6h等をディスペンサー等で個別に形成する場合、貼り合わされる基板2上に形成された電極5の位置を計測し、計測された位置情報に基づいて、導電性ペースト6h等および配線7Aの相対的な位置関係を補正しても良い。これにより、基板2が変形している場合であっても、配線7Aを電極5に対して高精度に位置整合して形成することができる。
【0092】
上述の第2実施形態、変形例5、および変形例6においても、仮設基板20上にレジスト9を形成し、レジスト9に露光を行い溝部9oを形成し、溝部9oに導電性ペースト6h等を充填して、配線7Aを形成しても良い。この場合、配線7Aのうち高い位置精度が必要な部分に対応する溝部9oについてはレーザービームスキャン型の露光装置を用い、高い位置精度が不要な部分に対応する溝部9oについては、固定マスクを使用する露光装置を用いて露光を行っても良い。
【0093】
(発光装置の製造方法の第2実施形態、変形例5および変形例6の効果)
(8)第2実施形態、変形例5および変形例6は、複数の発光部3がその射出面4をおもて面2fに向けて配置され、複数の発光部3に接続される複数の電極5が裏面2bから露出するように形成されている基板2を用意すること、基板2の裏面2bに、電極5の少なくとも一部に接続される、導電性ペースト6を用いた配線7を形成すること、を備えている。
さらに、仮設基板20、21上に導電性ペースト6h等を形成し、形成した導電性ペースト6h等を焼結して配線を形成し、仮設基板20、21上に形成された配線7を基板2の裏面2bに貼り合わせ、仮設基板20を、基板2の裏面2bに貼り合わされた配線7から剥離して、基板2の裏面2bに配線7を形成する。
この構成により、上述の第1実施形態で得られる効果に加え、さらに、製造工程における基板2の熱変形を防止でき、より高精細な光源装置1を実現できるという効果が得られる。
【0094】
(9)変形例6は、さらに、配線7gを含む仮設基板21に、配線7gよりもエッチングレートの低い導電材料で導電層24を形成し、仮設基板21の配線7gからの剥離後に、配線7gをマスクとして導電層24をエッチングする。この構成により、導電性ペーストにより形成される配線7gが薄くとも、配線7gと導電層24との全体として電気抵抗の小さな配線を形成することができる。また、導電性ペーストにより形成される配線7gを薄くすることができ、これにより、より細い、またはより狭ピッチの配線7gを形成することが可能となる。
【0095】
(発光装置の製造方法の変形例7)
図11(a)を参照して、変形例7の製造方法について説明する。変形例7の製造工程は、上述の変形例6と概ね共通するので、以下では変形例6と相違する構成について説明し、共通する構成については適宜説明を省略する。
【0096】
変形例7においては、変形例6における導電層24の形成を、配線7gを形成した直後ではなく、配線7g上に配線7fを形成した後に行う。これにより、
図11(a)に示したように、導電層24aは、配線7gの露出面を除く配線7gの周囲に加えて、配線7fの周囲も覆う。この構成により、配線7fと配線7gの密着力を一層高め、強度を向上することができる。
【0097】
(発光装置の製造方法の変形例8)
図11(b)を参照して、変形例8の製造方法について説明する。変形例8の製造工程は、上述の変形例7と概ね共通するので、以下では変形例7と相違する構成について説明し、共通する構成については適宜説明を省略する。
【0098】
変形例8においては、変形例7において配線7a、7bを形成した後に、配線7a、7b上に、電解めっきにより所定の厚さの銅等の金属層71を形成する。金属層71の厚さは、配線7a、7bがXY方向に導通しない厚さとする。この構成により、金属層71と配線7aまたは7bとを含む配線の電気抵抗をさらに小さくすることができる。
【0099】
なお、変形例8においては、導電層24aの代わりに、変形例6の導電層24を形成しても良い。すなわち、導電層24は、配線7gを形成した後、配線7g上に配線7fを形成する前に形成しても良い。
また、変形例7および変形例8における上述の導電層24aの形成、および金属層71を形成は、上述のステンレス製の仮設基板20を使用する第2実施形態の製造方法においても用いても良い。
【0100】
以上で説明した、発光装置1および発光装置1の各種の製造方法において、発光部3は、上記の構成に限られるわけではない。例えば、発光部3は、透明基板11、蛍光層12、保護層13のいずれか1つ以上を有しなくても良い。例えば、発光部3が保護層13を有しない場合、発光部3の射出面は、蛍光層12の+Z側の面となる。同様に、発光部3の射出面とは、発光部3を構成する部材のうち、最も+Z側に配置される部材の+Z側の面となり得る。
【0101】
基板2は、上述の長方形の平板に限らず、他の形状の平板、または曲面を有する板状の部材であっても良い。
発光部3の射出面4の形状は、上述の長方形に限らす、六角形等の任意の形状であっても良い。また、発光部3の基板2内の配列も、上述のX方向およびY方向に沿った配列に限らず、他の方向に沿った任意の配列であっても良い。
【0102】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
1…発光装置、2…基板、2f…おもて面、2b…裏面、3…発光部、4…射出面、5…電極、6,6a~6d,6h…導電性ペースト、7,7a、7b、7e~7h…配線、8、8a~8c…保護膜、9…レジスト、10…発光素子、11…透明基板、12…蛍光層、13…保護層、20,21…仮設基板、22…第1仮設層、23…第2仮設層