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特許7402708テーパー形状ワークの心水平出し調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】テーパー形状ワークの心水平出し調整方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/25 20060101AFI20231214BHJP
   G01B 5/20 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G01B5/25
G01B5/20 R
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020022659
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021128056
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】安野 円
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-096114(JP,A)
【文献】特開2018-179889(JP,A)
【文献】特許第5292564(JP,B2)
【文献】特開2012-145492(JP,A)
【文献】米国特許第10239177(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00 - 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裁頭円錐形状であるテーパー形状ワークを回転テーブルに設置し、前記テーパー形状ワークの心水平出しをするテーパー形状ワークの心水平出し調整方法であって、
前記回転テーブルの回転軸に平行な軸をZ軸とし、前記回転テーブルの回転軸に直交する軸をX軸とするとき、
当該テーパー形状ワークの心水平出し調整方法は、
前記テーパー形状ワークを前記回転テーブルに設置するワーク設置工程と、
前記テーパー形状ワークを前記回転テーブルに載せたままの状態で前記回転テーブルを回転させて、0°位置、90°位置、180°位置および270°位置のそれぞれの角度位置において、プローブを前記X軸に沿った方向から前記テーパー形状ワークの表面にアプローチするとともに、前記プローブと前記テーパー形状ワークとを前記Z軸に沿って予め設定されたZ座標の始点からZ座標の終点まで相対移動させる形状データ取得工程と、
前記0°位置、前記90°位置、前記180°位置、前記270°位置のそれぞれの角度位置において前記プローブで取得された前記テーパー形状ワークの輪郭形状データを、それぞれ、0°位置形状データ、90°位置形状データ、180°位置形状データおよび270°位置形状データとし、
前記0°位置形状データと、前記90°位置形状データと、前記180°位置形状データと、前記270°位置形状データと、に基づき、前記テーパー形状ワークの心水平出し調整を行なう調整工程と、を備える
ことを特徴とするテーパー形状ワークの心水平出し調整方法。
【請求項2】
請求項1に記載のテーパー形状ワークの心水平出し調整方法において、
前記調整工程は、
前記0°位置形状データを仮想的に延長した直線である0°仮想線を求め、前記180°位置形状データを仮想的に延長した直線である180°仮想線を求め、前記0°仮想線と180°仮想線との角の二等分線を前記回転テーブルの回転軸に一致させる第1調整工程と、
前記90°位置形状データを仮想的に延長した直線である90°仮想線を求め、前記270°位置形状データを仮想的に延長した直線である270°仮想線を求め、前記90°仮想線と270°仮想線との角の二等分線を前記回転テーブルの回転軸に一致させる第2調整工程と、を備える
ことを特徴とするテーパー形状ワークの心水平出し調整方法。
【請求項3】
請求項1に記載のテーパー形状ワークの心水平出し調整方法において、
前記調整工程は、
測定対象物であるテーパー形状ワークの設計データに基づいて、前記テーパー形状ワークを心水平出しした状態で前記回転テーブルに理想的にセットしたときの理想モデルを構築する理想モデル構築工程と、
前記理想モデルに対して0°位置、90°位置、180°位置および270°位置のそれぞれの角度位置の輪郭形状データとして、0°位置理想形状データ、90°位置理想形状データ、180°位置理想形状データ、270°位置理想形状データを算出し、前記0°位置理想形状データ、90°位置理想形状データ、180°位置理想形状データおよび270°位置理想形状データからなるデータを理想モデルデータとする理想モデルデータ算出工程と、
0°位置形状データ、90°位置形状データ、180°位置形状データおよび270°位置形状データからなる実測データを前記理想モデルデータに対比して、前記実測データと前記理想モデルデータとの誤差を少なくする回転量と平行移動量とを算出するフィッティング工程と、
算出された前記回転量および前記平行移動量に基づいて前記テーパー形状ワークの心水平出しをするように前記回転テーブルを駆動する調整駆動工程と、を備える
ことを特徴とするテーパー形状ワークの心水平出し調整方法。
【請求項4】
回転軸を回転中心として回転する回転テーブルと、
前記回転テーブルの回転軸に平行な軸をZ軸とし、前記回転テーブルの回転軸に直交する軸をX軸とするとき、プローブを前記X軸に平行な方向と前記Z軸に平行な方向に移動させる座標測定部と、
前記回転テーブルおよび前記座標測定部の動作を制御するホストコンピュータ部と、を備えた真円度測定装置において、
前記回転テーブルに設置されたテーパー形状ワークに対し、
前記ホストコンピュータ部による前記回転テーブルおよび前記座標測定部の動作制御により、
前記テーパー形状ワークを前記回転テーブルに載せたままの状態で前記回転テーブルを回転させて、0°位置、90°位置、180°位置および270°位置のそれぞれの角度位置において、前記プローブを前記X軸に沿った方向から前記テーパー形状ワークの表面にアプローチするとともに、前記プローブと前記テーパー形状ワークとを前記Z軸に沿って予め設定されたZ座標の始点からZ座標の終点まで相対移動させる形状データ取得工程と、
前記0°位置、前記90°位置、前記180°位置、前記270°位置のそれぞれの角度位置において前記プローブで取得された前記テーパー形状ワークの輪郭形状データを、それぞれ、0°位置形状データ、90°位置形状データ、180°位置形状データおよび270°位置形状データとし、
前記0°位置形状データと、前記90°位置形状データと、前記180°位置形状データと、前記270°位置形状データと、に基づき、前記テーパー形状ワークの心水平出し調整を行なう調整工程と、を実行して、テーパー形状ワークの心水平出し調整を行う
ことを特徴とする真円度測定装置。
【請求項5】
回転軸を回転中心として回転する回転テーブルと、
前記回転テーブルの回転軸に平行な軸をZ軸とし、前記回転テーブルの回転軸に直交する軸をX軸とするとき、プローブを前記X軸に平行な方向と前記Z軸に平行な方向に移動させる座標測定部と、
前記回転テーブルおよび前記座標測定部の動作を制御するホストコンピュータ部と、を備えた真円度測定装置の前記ホストコンピュータ部に、
テーパー形状ワークが前記回転テーブルに設置されたままの状態で前記回転テーブルを回転させて、0°位置、90°位置、180°位置および270°位置のそれぞれの角度位置において、前記プローブを前記X軸に沿った方向から前記テーパー形状ワークの表面にアプローチするとともに、前記プローブと前記テーパー形状ワークとを前記Z軸に沿って予め設定されたZ座標の始点からZ座標の終点まで相対移動させる形状データ取得工程と、
前記0°位置、前記90°位置、前記180°位置、前記270°位置のそれぞれの角度位置において前記プローブで取得された前記テーパー形状ワークの輪郭形状データを、それぞれ、0°位置形状データ、90°位置形状データ、180°位置形状データおよび270°位置形状データとし、
前記0°位置形状データと、前記90°位置形状データと、前記180°位置形状データと、前記270°位置形状データと、に基づき、前記テーパー形状ワークの心水平出し調整を行なう調整工程と、を実行させて、テーパー形状ワークの心水平出し調整を行う
ことを特徴とするテーパー形状ワーク用の心水平出し調整プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテーパー形状ワークの心水平出し調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
形状測定装置として真円度測定装置が知られている(特許文献1、2)。真円度測定装置は、回転機構を有し、円柱あるいは円筒形状のワークの外径あるいは内径の変化を精密に測定する機能を有する。
【0003】
真円度測定機において、ワークの真円度あるいは円筒度の測定等を行なう前には、必ずワークの心水平出しを行なわなければならない。心水平出しの調整においては、まず、円柱あるいは円筒形のワークにおいて異なる高さで真円度測定を行なう。そして、取得された各円の中心位置からワークの中心軸を求める。求まったワークの中心軸が回転テーブルの回転中心軸に重なるように(一致するように)回転テーブルの心水平出しを行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許5292564号
【文献】特開2012-145492号
【文献】US10239177
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ワークが円柱や円筒形状の場合であればワークが傾いていたとしても、異なる高さにおいて真円度測定したときに取得される測定結果は傾いている方向に両側が等しく延びた楕円形状になる。それら楕円から求まる中心位置は本来の円の中心位置と同じであり、ズレは生じない。したがって、ワークが円柱や円筒形状の場合、ワークが傾いていたとしても、正しくワークの中心軸を求めることができ、心水平出しができる。
【0006】
しかしながら、ワークが裁頭円錐形のようなテーパー形状の場合には側面に傾斜があるため、事情が違ってくる。
テーパー形状ワークが傾いた状態にあるとして、異なる高さで真円度測定をして測定結果を得るとする。このとき、取得されるデータは両側が等しく延びた楕円ではなく、傾いている方向では内側に小さく、逆方向は外側に大きくなった楕円形状になる。その楕円から求まる中心位置は本来の円の中心位置とは同じではなく、ズレが生じてしまう。そのため、異なる高さで真円度測定したときに得られる複数の楕円から中心線を求めようとしてもワークの中心線を正しく求めることができず、テーパー形状ワークの心水平出しが適切にできないという問題があった。
【0007】
なお、特許文献3には、頂部がアーチ状であるテーパー形状のワークに対し、アーチ状の頂部の形状をXZ面内とYZ面内とで測定し、得られた形状データをワークの設計値と対比することでワークの傾きおよび位置を調整する方法が開示されている。
しかし、設計上は頂部がアーチ形状だとしても、測定対象のワークの頂部のアーチが中心線に関して正確に対称(回転対称)に加工されているとは限らないはずであり、同心度/同軸度を測定したい測定対象たるワークに対して的確な心水平出しになっていない恐れがある。
【0008】
本発明の目的は、テーパー形状ワークに対して心水平出しを簡便かつ正確に行なうことができるテーパー形状ワークの心水平出し調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のテーパー形状ワークの心水平出し調整方法は、
裁頭円錐形状であるテーパー形状ワークを回転テーブルに設置し、前記テーパー形状ワークの心水平出しをするテーパー形状ワークの心水平出し調整方法であって、
前記回転テーブルの回転軸に平行な軸をZ軸とし、前記回転テーブルの回転軸に直交する軸をX軸とするとき、
当該テーパー形状ワークの心水平出し調整方法は、
前記テーパー形状ワークを前記回転テーブルに設置するワーク設置工程と、
0°位置、90°位置、180°位置および270°位置のそれぞれの角度位置において、プローブを前記X軸に沿った方向から前記テーパー形状ワークの表面にアプローチするとともに、前記プローブと前記テーパー形状ワークとを前記Z軸に沿って予め設定されたZ座標の始点からZ座標の終点まで相対移動させる形状データ取得工程と、
前記0°位置において前記プローブで取得された前記テーパー形状ワークの輪郭形状データを0°位置形状データとし、
前記90°位置において前記プローブで取得された前記テーパー形状ワークの輪郭形状データを90°位置形状データとし、
前記180°位置において前記プローブで取得された前記テーパー形状ワークの輪郭形状データを180°位置形状データとし、
前記270°位置において前記プローブで取得された前記テーパー形状ワークの輪郭形状データを270°位置形状データとするとき、
前記0°位置形状データと、前記90°位置形状データと、前記180°位置形状データと、前記270°位置形状データと、に基づき、前記テーパー形状ワークの心水平出し調整を行なう調整工程と、を備える
ことを特徴とする。
【0010】
本発明の一実施形態では、
前記調整工程は、
前記0°位置形状データを仮想的に延長した直線である0°仮想線を求め、前記180°位置形状データを仮想的に延長した直線である180°仮想線を求め、前記0°仮想線と180°仮想線との角の二等分線を前記回転テーブルの回転軸に一致させる第1調整工程と、
前記90°位置形状データを仮想的に延長した直線である90°仮想線を求め、前記270°位置形状データを仮想的に延長した直線である270°仮想線を求め、前記90°仮想線と270°仮想線との角の二等分線を前記回転テーブルの回転軸に一致させる第2調整工程と、を備える
ことが好ましい。
【0011】
本発明の一実施形態では、
前記調整工程は、
測定対象物であるテーパー形状ワークの設計データに基づいて、前記テーパー形状ワークを心水平出しした状態で前記回転テーブルに理想的にセットしたときの理想モデルを構築する理想モデル構築工程と、
前記理想モデルに対して0°位置、90°位置、180°位置および270°位置のそれぞれの角度位置の輪郭形状データとして、0°位置理想形状データ、90°位置理想形状データ、180°位置理想形状データ、270°位置理想形状データを算出し、前記0°位置理想形状データ、90°位置理想形状データ、180°位置理想形状データおよび270°位置理想形状データからなるデータを理想モデルデータとする理想モデルデータ算出工程と、
0°位置形状データ、90°位置形状データ、180°位置形状データおよび270°位置形状データからなる実測データを前記理想モデルデータに対比して、前記実測データと前記理想モデルデータとの誤差を少なくする回転量と平行移動量とを算出するフィッティング工程と、
算出された前記回転量および前記平行移動量に基づいて前記テーパー形状ワークの心水平出しをするように前記回転テーブルを駆動する調整駆動工程と、を備える
ことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】真円度測定装置の外観図である。
図2】回転テーブルを上から(Z軸の正側)から見た図である。
図3】テーパー形状ワークの心水平出し調整方法の全体手順を示すフローチャートである。
図4】形状データ取得工程の手順を示すフローチャートである。
図5】調整工程の手順を示すフローチャートである。
図6】0°位置形状データ取得工程を実行している様子を例示した図である。
図7】0°位置形状データD0、90°位置形状データD90、180°位置形状データD180、270°位置形状データD270の関係を例示した図である。
図8】テーパー形状ワークがX軸方向に傾斜した姿勢の場合に取得される位置形状データを例示した図である。
図9】テーパー形状ワークがY軸方向に傾斜した姿勢の場合に取得される位置形状データを例示した図である。
図10】テーパー形状ワークがX軸方向にもY軸方向にも傾斜した姿勢の場合に取得される位置形状データを例示した図である。
図11】第1調整工程に必要となる角の二等分線Bxzを求める様子を例示した図である。
図12】第2実施形態における調整工程の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明は、テーパー形状ワークの心水平出し調整方法に関するものであるが、その前提として、まず真円度測定装置の構成を簡単に説明しておく。
【0014】
図1は、真円度測定装置100の外観図である。
図中に、マシン座標系のX軸、Y軸、Z軸を併記した。
【0015】
真円度測定装置100は、測定機本体部200と、ホストコンピュータ110と、操作部120と、モーションコントローラ130と、を備える。
【0016】
測定機本体部200は、基台210と、回転テーブル220と、座標測定部300と、を備える。
【0017】
回転テーブル220は、回転駆動部221と、載物台223と、を備える。
回転駆動部221は基台210上に設置され、円板状の載物台223を回転させる。回転駆動部221の側面には調整用つまみ222が周方向に90度間隔で配置されている。調整用つまみ222を操作することにより載物台223の位置および姿勢を調整できるようになっており、これにより、載物台223のワークの心出しおよび水平出しができるようになっている。
【0018】
図2は、回転テーブル220を上から(Z軸の正側)から見た図である。
いま、4つの調整用つまみを0°位置から90°間隔で順に、CX調整つまみ222CX、CY調整つまみ222CY、LX調整つまみ222LX、LY調整つまみ222LY、とする。
CX調整つまみ222CXは、載物台223をX軸方向に進退させる移動軸の調整つまみである。CY調整つまみ222CYは、載物台223をY軸方向に進退させる移動軸の調整つまみである。すなわち、CX調整つまみ222CXとCY調整つまみ222CYとは心出し用の移動軸調整つまみである。
【0019】
LX調整つまみ222LXは、載物台223をX軸中心に回転させる回転軸の調整つまみである。LY調整つまみ222LYは、載物台223をY軸中心に回転させる回転軸の調整つまみである。すなわち、LX調整つまみ222LXとLY調整つまみ222LYとは水平出し用の移動軸調整つまみである。
【0020】
なお、回転駆動部221には、CX軸、CY軸、LX軸、LY軸のそれぞれに対応したモータが内蔵されており、モーションコントローラ130からの制御信号によって電動駆動されるようになっている。
【0021】
座標測定部300は、Z軸コラム310と、Zスライダ320と、Xアーム330と、プローブホルダ340と、プローブ350と、を備える。
【0022】
Z軸コラム310は、Z軸に平行に基台210上に立設されている。Zスライダ320は、Z方向(上下方向)に移動可能にZ軸コラム310に設けられている。
Xアーム330は、X方向に進退可能にZスライダ320に支持されている。
プローブホルダ340はL字型の部材であって、プローブホルダ340の基端はXアーム330の先端に取り付けられ、プローブホルダ340の先端にはプローブ350が取り付けられている。
【0023】
プローブ350は、てこ式電気マイクロメータであり、プローブホルダ340の先端に取り付けられている。プローブ350は、スタイラス360を有し、スタイラス360の先端には測定対象物に接触する測定子361が設けられている。
スタイラス360は、先端をX軸方向に変位させることができるように傾動可能に設けられている。ここでは、てこ式電気マイクロメータを用いたが、プローブ350としては平行移動式の電気マイクロメータでもよいし、その他既存のプローブを利用できる。
【0024】
なお、スタイラス360の角度、Xアーム330の進退量、および、Zスライダ320の位置(昇降量)は、それぞれエンコーダ(不図示)で検出される。
【0025】
ホストコンピュータ110は、CPU(中央処理装置)や所定プログラムを格納したROM、RAMを有するいわゆるコンピュータ端末であって、モーションコントローラ130に所定の動作指令を与えるとともに、測定機本体部200で取得されたデータに基づいて測定対象物Wの形状解析等の演算処理を実行する。また、ホストコンピュータ110には、後述する心水平出し調整方法を実行するためのプログラム(テーパー形状ワーク用の心水平出し調整プログラム)が格納されていて、このプログラムの実行によって真円度測定装置が自動的にテーパー形状ワークの心水平出しを行なう。
【0026】
ホストコンピュータに与えるプログラム(テーパー形状ワーク用の心水平出し調整プログラム)の供給方法は限定されない。プログラムを記録した(不揮発性)記録媒体をコンピュータに直接差し込んでプログラムをインストールしてもよく、記録媒体の情報を読み取る読取装置をコンピュータに外付けし、この読取装置からコンピュータにプログラムをインストールしてもよく、インターネット、LANケーブル、電話回線等の通信回線や無線によってコンピュータに供給されてもよい。
【0027】
ホストコンピュータ110は、モニタ112やキーボード、マウスを介して入出力インターフェースをユーザに提供する。操作部120は、操作レバーや操作ボタンを有し、手動操作によってモーションコントローラ130に動作指令を与える。モーションコントローラ130は、測定機本体部200の駆動制御を実行する。
【0028】
測定対象物の形状測定(例えば真円度測定)にあたっては、測定子361を測定対象物の表面に当接させた状態で回転テーブル220を回転駆動させる。すると、測定子361が測定対象物の表面を走査(トレース)する。すなわち、回転テーブル220の回転駆動で測定対象物が回転する際、測定対象物の半径変化に応じて測定子361がX軸方向に変位する。具体的には、測定対象物の半径変化に応じてXアーム330が進退し、これによって測定子361がX軸方向に変位し、測定子361が測定対象物の表面に追従する。回転テーブル220が一周したところでZスライダ320を上方または下方に移動させ、測定対象物の周方向の走査を繰り返す。スタイラス360の角度、Xアーム330の位置、および、Zスライダ320の位置をそれぞれエンコーダ(不図示)で検出し、測定子361の変位量を測定データとして得る。測定データに基づいて測定対象物の形状解析、すなわち、真円度、円筒度の解析が行われる。
【0029】
(心水平出し調整方法)
さて、実際のワークの形状測定の前に、その事前準備として、「心水平出し」が必要である。
以下、ワークが裁頭円錐形であるテーパー形状である場合に適用できる心水平出し調整方法を説明する。
図3図4図5は、本実施形態の調整方法の手順を示すフローチャートである。このフローチャートに沿って順に説明していく。
【0030】
図3は、本実施形態の調整方法の全体の手順を示すフローチャートである。
まず、形状測定の対象であるテーパー形状ワークを回転テーブル220の載物台223に載せる(ST100)。テーパー形状ワークを回転テーブル220の載物台223に載置するにあたっては、できる限り、載物台223の中央にテーパー形状ワークを置き、さらに、載物台223の回転中心とテーパー形状ワークの底面の中心とが一致するようにする。オペレータが目算で4つの調整用つまみ222を手動操作して、できるだけ、回転テーブル220の回転軸Arとテーパー形状ワークの中心軸線Acとが一致するように調整してもよい。
【0031】
テーパー形状ワークは、裁頭円錐形である。
テーパー形状ワークは、例えば工業製品の部品であって、所定の設計データ(例えばCADデータ)に基づいて工作機械で加工されたものである。テーパー形状ワークは、設計データ通りに正確に作られていれば、上面と底面とは互いに平行であり、テーパーである側面を異なる高さで真円度測定すれば、個々の円は真円であり、かつ、それらは互いに同心円となっているはずである。
ただし、加工誤差がある。
加工誤差があるので、上面と底面とが完全に平行であるとも限らないし、中心軸線Acと底面とが直交しているとも限らないし、中心軸線Acと上面とが直交しているとも限らない。
加工誤差が公差内におさまっているかを真円度測定装置で検査するわけである。
テーパー形状ワークが実際の製品のなかでどのような役割を果たすかにもよるが、本実施形態としては、テーパーである側面を異なる高さで真円度測定したときの同心度/同軸度が公差内に入っているかを検査したいとする。
上面や底面が中心軸線Acとなす角については重視しないとする。
【0032】
次に、ST200において、形状データ取得工程を行なう。
形状データ取得工程(ST200)は、図4のフローチャートに示されるように、4つの工程からなる。
すなわち、0°位置形状データ取得工程(ST210)と、90°位置形状データ取得工程(ST220)と、180°位置形状データ取得工程(ST230)と、270°位置形状データ取得工程(ST240)と、からなる。
【0033】
0°位置形状データ取得工程(ST210)は次のように実行される。
図6は、0°位置形状データ取得工程(ST210)を実行している様子を例示した図である。
0°位置形状データD0とは、回転テーブル220の0°位置において、プローブ350をテーパー形状ワークの側面に接触させながらプローブ350をZ方向に直動させたときに取得されるテーパー形状ワーク側面の輪郭形状データのことである。
まず、回転テーブル220の角度位置を0°にセットする。さらに、Zスライダ320の高さを予め設定されたZ座標の始点にセットする。そして、Xアーム330を前進させて、プローブ350の測定子361をテーパー形状ワークの側面に接触させる。続いて、測定子361とテーパー形状ワークの側面との接触を保つようにXアーム330を進退させながら、Zスライダ320を上昇させていく。Zスライダ320の高さが予め設定されたZ座標の終点にきたところで、0°位置形状データ取得工程(ST210)が終了である。この0°位置形状データ取得工程(ST210)において、Zスライダ320の位置とXアーム330の位置とにより、回転テーブル220の0°位置におけるテーパー形状ワーク側面の輪郭形状データが取得される。
【0034】
90°位置形状データ取得工程(ST220)にあたっては、回転テーブル220を0°位置から90°回転させて、回転テーブル220を90°にセットする。このあとの手順は0°位置形状データ取得工程(ST210)と同じなのであって、プローブ350をZ方向に直動させて90°位置形状データD90を取得する。
【0035】
回転テーブル220を90°ずつ回転させて、180°位置形状データ取得工程(ST230)、270°位置形状データ取得工程(ST240)、を順に実行する。これにより、180°位置形状データD180、270°位置形状データD270を順に取得していく。図7は、0°位置形状データD0、90°位置形状データD90、180°位置形状データD180、270°位置形状データD270の位置関係を示した図である。このように4つの形状データD0-D270を取得したところで、形状データ取得工程(ST200)は終了である。
【0036】
ここで、形状データ取得工程(ST200)で取得される形状データD0-D270について考えてみる。例えば、回転テーブル220の回転軸Arに対してテーパー形状ワークの中心線AcがX軸方向に倒れていたとする。
ここでは、水平方向のずれは考えないことにする。この場合、得られる4つの形状データD0-D270は図8のようになるはずである。すなわち、90°位置形状データD90と270°位置形状データD270とはほぼ一致する。
【0037】
これに対し、0°位置形状データD0と180°位置形状データD180との間にはズレが生じる。逆に考えると、0°位置形状データD0と180°位置形状データD180との間にズレが生じているということは、テーパー形状ワークの中心線AcがX軸方向に傾斜しているということがわかる。
【0038】
例えば、テーパー形状ワークの中心線AcがY軸方向に傾斜している場合、得られる4つの形状データD0-D270は図9のようになるはずである。すなわち、0°位置形状データD0と180°位置形状データD180とはほぼ一致する。これに対し、90°位置形状データD90と270°位置形状データD270との間にはズレが生じる。逆に考えると、90°位置形状データD90と270°位置形状データD270との間にズレが生じているということは、テーパー形状ワークの中心線AcがY軸方向に傾斜していることがわかる。
【0039】
もちろん、図10のように、0°位置形状データD0と、90°位置形状データD90と、180°位置形状データD180、270°位置形状データD270のすべてが互いにずれている場合には、テーパー形状ワークがX軸方向にもY軸方向にも傾斜しているということになる。
【0040】
それでは、続いて、形状データ取得工程(ST200)で取得した4つの形状データD0-D270に基づいて、テーパー形状ワークの心水平出しをする調整工程(ST300)を実行する。
図5は、調整工程(ST300)の手順を示す図である。
まず、0°位置形状データD0と180°位置形状データD180とを用いて、第1の調整工程を行なう(ST340)。第1の調整工程(ST340)により、載物台のX軸方向の位置(CX)と傾斜(LX)が調整される。
【0041】
図11は、第1調整工程に必要となる角の二等分線Bxzを求める様子を例示した図である。
まず、ST310において、0°位置形状データD0を仮想的に延長した直線である0°仮想線V0を求める。0°位置形状データD0は点列であるので、0°位置形状データD0を近似する直線(回帰直線)を求めて、それを延長すればよい。
続いて、ST320において、180°位置形状データD180を仮想的に延長した直線である180°仮想線V180を求める。そして、0°仮想線V0と180°仮想線V180とがなす角の二等分線Bxzを求める。
0°位置形状データD0と180°位置形状データD180とはXZ面内のデータであるから、0°仮想線V0と180°仮想線V180とがなす角の二等分線BxzもXZ面内になる。そして、第1調整工程(ST340)としては、角の二等分線Bxzが回転テーブル220の回転軸Arに重なるように、載物台の傾斜および位置を調整する。ここでは、載物台のX軸方向の傾斜調整(LX)とともにX軸方向の変位調整(CX)を実行する。
【0042】
次に、90°位置形状データD90と270°位置形状データD270とを用いて、第2の調整工程を行なう(ST380)。
第2の調整工程(ST380)により、載物台のY軸方向の位置(CY)と傾斜(LY)が調整される。
90°位置形状データD90を仮想的に延長した直線である90°仮想線V90を求め(ST350)、270°位置形状データD270を仮想的に延長した直線である270°仮想線V270を求める(ST360)。そして、ST370において、90°仮想線V90と270°仮想線V270とがなす角の二等分線Byzを求める。
90°位置形状データD90と270°位置形状データD270とはYZ面内のデータであるから、90°仮想線V90と270°仮想線V270とがなす角の二等分線ByzもYZ面内になる。そして、第2調整工程(ST380)としては、角の二等分線Byzが回転テーブル220の回転軸Arに重なるように、載物台の傾斜および位置を調整する。ここでは、載物台のY軸方向の傾斜調整(LY)とともにY軸方向の変位調整(CY)を実行する。
【0043】
第1調整工程(ST340)および第2調整工程(ST380)により、テーパー形状ワークの中心線Acが回転テーブル220の回転軸Arに一致し、すなわち、テーパー形状ワークの心水平出しができる。
【0044】
なお、もともとのズレが大きいと、一回の調整(第1調整工程(ST340)および第2調整工程(ST380))だけでは心水平出しが完全ではない場合がある。そこで、形状データ取得工程(ST200)と調整工程(ST300)を複数回(例えば2回とか3回とか)ループさせることを終了条件(ST400)に組み込んでおいてもよい。
【0045】
本実施形態(テーパー形状ワークの心水平出し調整方法)のアルゴリズムを自動実行するようにプログラム(テーパー形状ワークの心水平出し調整プログラム)を組んでおけば、テーパー形状ワークに対して自動心水平出しが可能となる。
【0046】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態を説明する。
第2実施形態では、テーパー形状ワークを理想的に回転テーブル220に心水平出しした理想モデルの点群データ(ポイントクラウド)と、テーパー形状ワークを実測した実測データの点群データ(ポイントクラウド)と、を対比して、フィッティングによって調整を行なう。第2実施形態においてもワーク設置工程ST100と形状データ取得工程(ST200)とは第1実施形態と同じであり、第2実施形態では調整工程に違いがある。
【0047】
第2実施形態における調整工程(ST400)のフローチャートを図12に示す。
調整工程(ST400)は、理想モデル構築工程(ST410)と、理想モデルデータ算出工程(ST420)と、フィッティング工程(ST430)と、調整駆動工程(ST440)と、を有する。理想モデル構築工程(ST410)では、測定対象物であるテーパー形状ワークの設計データをもとにして、回転テーブル220上にテーパー形状ワークを心水平出しされた状態でセットしたモデルを構築する。
【0048】
次に、理想モデルデータ算出工程(ST420)では、理想モデルに対して、仮想的に形状データ取得工程(ST200)を行なう。つまり、理想モデルから0°位置、90°位置、180°位置および270°位置の輪郭形状データを抽出する。
0°位置理想形状データID0、90°位置理想形状データID90、180°位置理想形状データID180および270°位置理想形状データID270からなるデータを理想モデルデータとする。
【0049】
次に、形状データ取得工程(ST200)で取得された実測データとしての0°位置形状データD0、90°位置形状データD90、180°位置形状データD180および270°位置形状データD270を呼び出し、この実測データを理想モデルデータに対比する。そして、実測データを理想モデルデータに位置合わせ(フィッティング)するのに最適な傾斜量と平行移動量をそれぞれ算出する(フィッティング工程ST7430)。
【0050】
このようにして求まった傾斜量と平行移動量に基づいて回転テーブル220の載物台223を平行移動方向(CX、CY)および傾斜方向(LX、LY)に駆動させる。これにより、テーパー形状ワークの位置および姿勢が理想的に心水平出しされた状態に近づき、すなわち、テーパー形状ワークの心水平出しができる。
【0051】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
100…真円度測定装置、110…ホストコンピュータ、112…モニタ、120…操作部、130…モーションコントローラ、200…測定機本体部、210…基台、220…回転テーブル、221…回転駆動部、223…載物台、300…座標測定部、310…Z軸コラム、320…Zスライダ、330…Xアーム、330…測定子、340…プローブホルダ、350…プローブ、360…スタイラス、361…測定子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12