(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】薬液供給装置
(51)【国際特許分類】
E03D 9/00 20060101AFI20231214BHJP
E03D 9/02 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
E03D9/00 C
E03D9/02
(21)【出願番号】P 2020063560
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】笠川 郁
(72)【発明者】
【氏名】中谷 耕治
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕司
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-517124(JP,A)
【文献】特開2008-111296(JP,A)
【文献】独国実用新案第202019101946(DE,U1)
【文献】中国実用新案第211057952(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器に供給される薬液が収容される内部空間を有する容器と、
前記便器を洗浄するための洗浄水が流れる流水空間を画定する側壁部の上部に取り付けられ、前記内部空間から送り出された前記薬液を前記流水空間まで案内する1又は複数本の溝が形成された案内面を有する案内部材と
を備
え、
前記案内部材は、前記側壁部の上部に上方から引っ掛けるための引っ掛け部を含む、
薬液供給装置。
【請求項2】
前記案内部材は、前記側壁部の上部と、前記側壁部の上部の上に載置される要素との間に挟まれるように取り付けられ、
前記側壁部の上部は、前記洗浄水を貯水する貯水タンクに含まれるタンク本体の側壁部の上部であり、かつ、前記要素は、前記貯水タンクに含まれる前記タンク本体の蓋である、或いは、前記側壁部の上部は、前記便器のリムであり、かつ、前記要素は、前記便器に取り付けられた便座である、
請求項
1に記載の薬液供給装置。
【請求項3】
前記案内部材は、前記側壁部の上部と前記要素との間に挟まれるように取り付けられたときに、前記案内面から突出し、前記要素が前記案内面に接触しないように前記要素を受け取る突出部を含む、
請求項
2に記載の薬液供給装置。
【請求項4】
前記案内面から一定の間隔を空けつつ、前記案内面を少なくとも部分的に覆うように前記案内部材に取り付けられるカバー部材
をさらに備える、
請求項1から
3のいずれかに記載の薬液供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器に薬液を供給する薬液供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、トイレの貯水タンクの上部の手洗い用の給水受け皿に設置され、洗浄、消臭及び芳香のための薬液を貯水タンク内の洗浄水に供給する薬液供給装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、便器の内面上にゲル状の薬剤を吐出し、スタンプのように付着させる吐出器具も知られている(例えば、特許文献2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-79496号公報
【文献】特開2016-124596号公報
【文献】特開2017-218234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような薬液供給装置は、手洗い用の給水受け皿が存在しない場合には、設置することができない。また、たとえ給水受け皿があったとしても、例えば、給水受け皿に装飾品が置かれている等の事情がある場合には、やはり薬液供給装置を設置することができない。一方、特許文献2及び3のような吐出器具が用いられる場合、一回のスタンプで便器の内面上に付着させておくことが可能な薬剤の量が限られるとともに、便器の内面上の薬剤がフラッシュで剥がれてしまう虞もあり、安定して薬剤を供給することができない。
【0005】
本発明は、設置場所の確保が容易であるとともに、安定して薬液を供給することが可能な薬液供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る薬液供給装置は、便器に供給される薬液が収容される内部空間を有する容器と、前記便器を洗浄するための洗浄水が流れる流水空間を画定する側壁部の上部に取り付けられ、前記内部空間から送り出された前記薬液を前記流水空間まで案内する1又は複数本の溝が形成された案内面を有する案内部材とを備える。
【0007】
本発明の第2観点に係る薬液供給装置は、第1観点に係る薬液供給装置であって、前記案内部材は、前記側壁部の上部に上方から引っ掛けるための引っ掛け部を含む。
【0008】
本発明の第3観点に係る薬液供給装置は、第1観点又は第2観点に係る薬液供給装置であって、前記案内部材は、前記側壁部の上部と、前記側壁部の上部の上に載置される要素との間に挟まれるように取り付けられる。前記側壁部の上部は、前記洗浄水を貯水する貯水タンクに含まれるタンク本体の側壁部の上部であり、かつ、前記要素は、前記貯水タンクに含まれる前記タンク本体の蓋である、或いは、前記側壁部の上部は、前記便器のリムであり、かつ、前記要素は、前記便器に取り付けられた便座である。
【0009】
本発明の第4観点に係る薬液供給装置は、第3観点に係る薬液供給装置であって、前記案内部材は、前記側壁部の上部と前記要素との間に挟まれるように取り付けられたときに、前記案内面から突出し、前記要素が前記案内面に接触しないように前記要素を受け取る突出部を含む。
【0010】
本発明の第5観点に係る薬液供給装置は、第1観点から第4観点のいずれかに係る薬液供給装置であって、前記案内面から一定の間隔を空けつつ、前記案内面を少なくとも部分的に覆うように前記案内部材に取り付けられるカバー部材をさらに備える。
【発明の効果】
【0011】
以上の観点によれば、容器に収容された薬液を便器に供給するために、1又は複数本の溝が形成された案内面を有する案内部材が使用される。この案内部材は、便器を洗浄するための洗浄水が流れる流水空間を画定する側壁部の上部に取り付けられ、1又は複数本の溝を介して、容器内から送り出された薬液を流水空間まで案内する。従って、手洗い用の給水受け皿が存在しない場合や、給水受け皿に装飾品が置かれている場合等であっても、薬液供給装置を設置することが可能である。また、案内部材を介して、容器内の薬液を流水空間まで容易に案内することができる。従って、薬液供給装置の設置場所の確保が容易であるとともに、安定して薬液を供給することできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る薬液供給装置の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る薬液供給装置について説明する。
【0014】
<1.薬液供給装置の概略>
図1は、本発明の一実施形態に係る薬液供給装置100の正面図であり、
図2は、その右側面図であり、
図3A及び
図3Bは、薬液供給装置100の典型的な設置例を示す図である。薬液供給装置100は、トイレの便器に薬液を供給する装置であり、これらの図に示す通り、便器に供給される薬液が収容される容器1と、容器1に接続される案内部材2とを備える。なお、ここでの説明においては、特に断らない限り、「上(天面)」「下(底面)」「左」「右」「前(正面)」「後(背面)」は、
図1、
図2及び
図4に示す通りに定義される。
【0015】
薬液供給装置100は、便器8内又は便器8を洗浄するための洗浄水を貯水する貯水タンク9内に薬液を供給できるように、
図3A及び
図3Bに示すように、便器8の周辺又は貯水タンク9の周辺に設置される。便器8内及び貯水タンク9内の空間は、洗浄水が流れる空間となり、以下、これらの空間を流水空間S2と呼ぶことがある。
【0016】
貯水タンク9は、上部が開口したタンク本体91と、タンク本体91の上部の開口を覆う蓋92とを含む。薬液供給装置100の典型的な設置例を挙げると、
図3Aに示すように、容器1が貯水タンク9の側方に配置され、案内部材2がタンク本体91の側壁部911の上部と、側壁部911の上部の上に載置される蓋92との間に挟まれるように取り付けられる。タンク本体91の側壁部911は、流水空間S2を画定する。以下、側壁部911の上部を、第1要素と呼ぶことがあり、その上に載置される蓋92を、第2要素と呼ぶことがある。
【0017】
また、薬液供給装置100の別の典型的な設置例を挙げると、
図3Bに示すように、容器1が便器8の側方に配置され、案内部材2が便器8のリム811と、便器8に取り付けられた便座82との間に挟まれるように取り付けられる。便器8のリム811は、便器8の側壁部81の上部に相当し、リム811の上には、便座82が載置される。便器8の側壁部81は、流水空間S2を画定する。以下、便器8のリム811についても、第1要素と呼ぶことがあり、その上に載置される便座82についても、第2要素と呼ぶことがある。以上の通り、案内部材2は、第1要素と第2要素との間に挟まれるようにして、所定の設置場所に取り付けられる。
【0018】
本実施形態の薬液供給装置100は、容器1と案内部材2との間に配置される接続部材5及び下容器6をさらに備える(
図4参照)。案内部材2は、接続部材5及び下容器6を介して、容器1に間接的に接続される。詳細は後述するが、接続部材5及び下容器6は、全体として、容器1からの薬液の供給量を制御する役割を果たす。
【0019】
薬液には、洗浄剤、除菌剤、消臭剤及び芳香剤を含む群から選択される1以上の要素が含有され、その他、着色料が含有されてもよい。薬液は、洗浄水と混合され、薬液に含有される成分の効能を便器内、又はトイレの部屋内に提供する。例えば、薬液に洗浄剤及び除菌剤が含まれる場合には、便器を洗浄し、除菌することができ、消臭剤及び芳香剤が含まれる場合には、トイレの部屋内において嫌な臭いを消臭し、良い香りを漂わせることができる。
【0020】
<2.各部の構成>
<2-1.容器>
図4は、容器1、接続部材5及び下容器6の分解図である。同図に示すように、容器1は、薬液が収容される内部空間S1を有する容器本体10と、内部空間S1を閉じるキャップ12とを有する。容器本体10の形状は、特に限定されないが、本実施形態では、左右の幅が奥行方向の幅よりも広く、左右方向にやや扁平なドーム状である。
【0021】
容器本体10は、その下部中央に、内部空間S1と外部空間とを連通させる排出口部11を有し、排出口部11は、上下方向に延びる円筒状である。キャップ12は、排出口部11を覆い、これを閉じるように、排出口部11に固定される。
図4には、排出口部11の中心軸を通り、左右方向に平行な面で切断したときの、排出口部11及びキャップ12の断面が、参考のため、部分的に点線で示されている。
【0022】
容器1を構成する材料は、特に限定されないが、典型的には、硬質の樹脂又は金属を使用することができる。例えば、容器本体10は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂から好ましく構成することができる。キャップ12についても同様である。
【0023】
<2-2.接続部材>
図4に示すように、接続部材5は、円形板状の基台50と、基台50の上面中央から起立する円筒状の穿刺部51とを有する。なお、
図4には、穿刺部51の中心軸を通り、左右方向に平行な面で切断したときの、接続部材5及び下容器6の断面が、参考のため、部分的に点線で示されている。穿刺部51は、上下方向に延びる円筒の上部が斜めに切り取られた形状を有し、その上部が先鋭である。穿刺部51は、容器1のキャップ12の底面を下方から突き破るようにして、排出口部11内に挿入される。接続部材5は、円筒状の周壁部52をさらに有し、周壁部52は、穿刺部51から間隔をあけて、穿刺部51を囲むように基台50の外周縁から上方へ起立する。穿刺部51の外面と周壁部52の内面とにより囲まれる環状の空間は、容器1のキャップ12及び排出口部11を受け取る。
【0024】
また、接続部材5は、基台50の下面中央から垂下する円筒状のポート部材53をさらに有する。基台50の中央には、微細な開口が形成されており、ポート部材53は、当該開口を囲むように配置される。従って、穿刺部51の内側の空間S21は、ポート部材53の内側の空間S22と連通している。なお、ポート部材53は、穿刺部51より径が小さい。
【0025】
接続部材5は、周壁部52の上端縁に連続し、当該上端縁から径方向外側へ延びる環状の天面部54をさらに有する。天面部54の外周縁は、矩形状である。また、接続部材5は、天面部54の外周縁から垂下する周壁部55をさらに有する。周壁部55は、角筒状である。周壁部55の左壁部及び右壁部の下部近傍からは、径方向外側へ左右一対の突起部55aが突出している。これらの突起部55aは、後述する下容器6の左右一対の爪部64に引っ掛けられることにより、下容器6と接続部材5とを接続する。
【0026】
接続部材5を構成する材料は、特に限定されないが、典型的には、硬質の樹脂又は金属を使用することができる。例えば、接続部材5は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂から好ましく構成することができる。
【0027】
<2-3.下容器>
下容器6は、排出口部11及びキャップ12を含む容器1の下部を下方から受け取り、これを収容する皿状の容器である。下容器6は、底面部61と、底面部61から外方へ向かって上方に起立する外壁部62とを有する。下容器6は、外壁部62の内側において、底面部61の上面から起立する角筒状の周壁部63をさらに有し、周壁部63の内側の空間には、接続部材5が収容される。このとき、接続部材5の周壁部52の外面と周壁部55の内面とにより囲まれる角環状の空間に、周壁部63が受け取られる。底面部61の上面において、周壁部63から左右に間隔を空けた位置からは、左右一対の爪部64が起立している。これらの爪部64は、上述した接続部材5の突起部55aに引っ掛かり、これにより、下容器6を接続部材5に固定する。従って、下容器6は、接続部材5から意図せず脱落することがない。
【0028】
下容器6は、底面部61の下面中央から垂下する板部材65をさらに有する。板部材65は、その幅方向が左右方向に広がり、その厚み方向が前後方向に広がる。板部材65の上面中央からは、円筒状の突起部66が起立する。底面部61の中央には、開口が形成されている。突起部66は、底面部61の中央の開口を貫通するように、上下方向に延びる。突起部66は、上下方向に延びる円筒の上部が斜めに切り取られた形状を有し、その上部が先鋭である。板部材65の前後の表面には、上下方向に延びる多数本の微細溝S25が形成されている。
【0029】
接続部材5が周壁部63の内側の空間に収容され、下容器6と接続部材5とが接続された状態では、ポート部材53の内側の空間S22内に、突起部66が挿入される。突起部66の外面には、突起部66の全長に亘り、上下方向に延びる微細溝S24が形成されている。従って、下容器6と接続部材5とが接続され、かつ、穿刺部51がキャップ12を突き破り、容器1と接続部材5とが接続された状態では、微細溝S24は、容器1の内部空間S1に連通する。より詳細には、微細溝S24は、穿刺部51の内側の空間S21を介して、容器1の内部空間S1に連通し、内部空間S1から送り出される薬液が流れる通路となる。
【0030】
内部空間S1から送り出された薬液は、微細溝S24を通過した後、突起部66の下方の板部材65に達し、板部材65の微細溝S25に流れ込む。このとき、薬液は、重力の他、毛細管現象の作用により、ゆっくりとした速度で内部空間S1から微細溝S24へ、さらには微細溝S25へと流れ込む。板部材65の微細溝S25に沿って流れ、その下端まで達した薬液は、その後、板部材65から落下し、案内部材2に受け取られる。微細溝S25も、内部空間S1から送り出された薬液が流れる通路となる。従って、微細溝S25が形成される板部材65の前後の表面は、容器1の内部空間S1から送り出された薬液を流水空間S2に向けて案内する案内面を構成する。
【0031】
下容器6は、角筒状の周壁部67をさらに有し、周壁部67は、板部材65から間隔をあけて、板部材65を囲むように底面部61の下面から垂下する。周壁部67の前面中央及び後面中央には、上下方向に延びる前後一対の棒体68が配置される。詳細は、後述するが、前後一対の棒体68は、案内部材2に対する下容器6の位置決めに使用される。
【0032】
また、下容器6は、外壁部62から下方へ延びる支持部69をさらに有する。本実施形態では、支持部69は、複数本の脚部から構成され、これらの脚部は、上下方向に延び、外壁部62の前面下部において左右方向に一定の間隔をあけて2つ配置され、さらに外壁部62の後面下部において左右方向に一定の間隔をあけて2つ配置される。
【0033】
図3A及び
図3Bの例では、下容器6の下方に案内部材2が配置され、案内部材2を介して、容器1が貯水タンク9又は便器8の側方に設置される。しかし、蓋92に手洗い用の給水受け皿が存在する場合には、案内部材2を使用せず、接続部材5及び下容器6のみを使用して、容器1を給水受け皿に設置することもできる。このとき、前後一対の棒体68は、板部材65とともに、貯水タンク9内へ洗浄水を流し込む、給水受け皿に形成される開口に挿入される。また、このとき、支持部69を構成する複数本の脚部は、給水受け皿上に起立するように設置される。支持部69は、容器1が給水受け皿内に安定して設置されるように、容器1を支持する。
【0034】
以上の通り、接続部材5及び下容器6は、容器1の内部空間S1から薬液を受け取り、これを案内部材2に供給する。これらの要素5及び6は、薬液が通過する微細溝S24及びS25の断面積が適宜調整されていることにより、容器1からの薬液の供給量を制御することができ、より下流の案内部材2、ひいては流水空間S2内へと、所望の流量の薬液を安定して供給する。
【0035】
下容器6を構成する材料は、特に限定されないが、典型的には、硬質の樹脂又は金属を使用することができる。例えば、下容器6は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂から好ましく構成することができる。
【0036】
<2-4.案内部材>
案内部材2は、容器1の内部空間S1から送り出された薬液を流水空間S2まで案内する部材である。案内部材2は、第1要素に取り付けられる。第1要素とは、上記の通り、流水空間S2を画定する側壁部の上部を意味し、例えば、タンク本体91の側壁部911の上部又は便器8のリム811を意味する。また、案内部材2は、第1要素と第2要素に挟まれるように設置される。第2要素とは、上記の通り、第1要素の上に載置される要素を意味し、例えば、貯水タンク9の蓋92又は便座82を意味する。
【0037】
図5は、案内部材2を斜め上方から視た斜視図である。同図に示すように、案内部材2は、連結部3と、第1案内板21と、第2案内板22と、第3案内板23と、対面板24とを有し、全体として椅子のような形状を有する。第1案内板21は、薬液供給装置100の使用状態において、前方へ延びており、前方に向かってやや下方に傾斜している。第2案内板22は、第1案内板21の前端部から下方へ延びる。第3案内板23は、第2案内板22の下端部から前方に向かって下方へ延びる。対面板24は、第2案内板22から後方へ一定の間隔をあけて、第1案内板21から下方へ延びる。連結部3は、第1案内板21の後端部から上方へ起立する枠体であり、下容器6の下部を受け取る。連結部3は、下容器6が連結される部位である。
【0038】
第1案内板21の上面21u、第2案内板22の前面22f、及び第3案内板23の上面23uは、この順に連続しており、これらの面21u、22f及び23uの上を、連結部3に連結された下容器6から受け取られる薬液が搬送される。以下、これらの面21u、22f及び23uを、案内面C1と呼ぶ。案内面C1上においては、薬液の流れに沿って、第1案内板21の上面21uが上流側に相当し、第3案内板23の上面23uが下流側に相当する。以下、上面21uから前面22f、前面22fから上面23uに向かう方向を、搬送方向と呼ぶことがある。
【0039】
案内面C1上には、容器1の内部空間S1から送り出された薬液を、搬送方向に沿って流水空間S2まで案内する多数本の微細溝S3が形成されている。微細溝S3は、案内面C1上を搬送方向に沿って連続的に延びている。
【0040】
連結部3は、左柱部31と、左壁部32と、後壁部33と、右壁部34と、右柱部35とを有する。左柱部31は、左壁部32の前端縁から右方向にやや突出している柱状の部位であり、右柱部35は、右壁部34の前端縁から左方向にやや突出している柱状の部位である。これらの部31~35は、平面視において時計周りにこの順に連続しており、全体として、前面側中央が切りかかれた角筒状となる。これらの部31~35により囲まれる空間S4は、案内部材2に下容器6が接続されるときに、下容器6の下部を受け取る。より具体的には、空間S4内には、板部材65、周壁部67及び前後一対の棒体68が収容される。このとき、下容器6の底面部61は、連結部3の上面に接触し、当該上面上に載置される。なお、
図2には、板部材65の中心軸を通り、前後方向に平行な面で切断したときの、板部材65、周壁部67及び前後一対の棒体68の断面が、参考のため、部分的に点線で示されている。
【0041】
後壁部33の前面の左右方向の中央には、上下方向に延びる凹部33aが形成されている。この凹部33a内には、案内部材2に下容器6が接続されるときに、前後一対の棒体68のうち、後方の棒体68が収容される。これにより、空間S4内で板部材65、周壁部67及び前後一対の棒体68が位置決めされ、その結果、案内部材2に対する下容器6の、ひいてはこれに収容される容器1の位置が安定する。なお、案内部材2に下容器6が接続されるとき、下容器6の支持部69を構成する複数本の脚部は、
図1及び
図2に示すように、空間S4の外部において連結部3と干渉しない位置に配置される。
【0042】
空間S4の下方には、案内面C1が配置され、案内面C1上において空間S4に面する領域が、最上流部となる。上記の通り、薬液は、容器1の内部空間S1から送り出された後、各種経路を辿り、空間S4内に収容される板部材65の微細溝S25に達する。その後、薬液は、微細溝S25に沿って下方へ流れ、微細溝S25から案内面C1上の最上流部に落下する。薬液は、この最上流部において、多数の微細溝S3内に吸い込まれ、捉えられる。その後、薬液は、重力の他、毛細管現象の作用により、微細溝S3内をゆっくりとした速度で搬送方向に沿って下流側へと流れる。
図3A及び
図3Bに示す通り、薬液供給装置100の使用状態において、第3案内板23は、流水空間S2内に収容される。従って、薬液は、案内面C1の下流端である、第3案内板23の前端縁まで流れた後、第3案内板23の上面23uから落下し、流水空間S2内の洗浄水に混合される。
【0043】
対面板24は、第2案内板22から後方に一定の間隔をあけて、第2案内板22に対面するように配置される。第2案内板22と対面板24との間の空間S5は、その上方が第1案内板21により閉じられる。一方、空間S5の下方は、開放されている。これにより、薬液供給装置100の使用時には、上述の第1要素が、空間S5内にその下方から挿入される。このとき、第1案内板21の下面が第1要素に接触し、第1要素上に載置される。
【0044】
以上の通り、薬液供給装置100の使用時には、案内部材2は、第1要素に上方から引っ掛けられる。案内部材2は、以上の通りに設置された後は、第2案内板22により後方へ脱落することがなく、対面板24より前方へ脱落することもない。すなわち、第2案内板22及び対面板24は、第1要素に案内部材2を上方から引っ掛けるための引っ掛け部を構成する。従って、薬液供給装置100の使用時には、案内部材2、ひいてはこれに下容器6を介して支持される容器1の位置が安定する。
【0045】
案内部材2は、案内面C1から上方へ突出するリブ(突出部)25L及び25Rをさらに有する。リブ25L及び25Rは、それぞれ、案内面C1の左端部及び右端部から上方へ起立する。また、リブ25L及び25Rは、それぞれ、連結部3の左柱部31及び右柱部35から搬送方向に沿って、第1案内板21の前端縁まで延びる。第1案内板21上のリブ25L及び25Rは、薬液が案内面C1上の左右から脱落しないように堰き止めるストッパーとして機能することができる。
【0046】
上記の通り、薬液供給装置100の使用時には、案内部材2は、第1要素と第2要素との間に挟まれる。このとき、第1要素と第2要素との間に挟まれるのは、第1案内板21である。第1案内板21上のリブ25L及び25Rは、第1案内板21が第1要素と第2要素との間に挟まれたときに、第2要素が案内面C1に接触しないように、第2要素を受け取る。これにより、第1案内板21上のリブ25L及び25Rは、案内面C1に第2要素の重量が作用し、微細溝S3が変形し、圧縮されることにより、案内面C1上の薬液の流れが阻害されることを防止することができる。
【0047】
本実施形態では、第1案内板21上のリブ25L及び25Rの上面は、面一であり、水平又は略水平面を構成する。これにより、リブ25L及び25Rが、第2要素の重量を均一に受けることができ、第1案内板21を含む案内部材2の強度が高められる。なお、上記の通り、第1案内板21は、前方に向かってやや下方に傾斜している。そのため、第1案内板21上においては、その上面21uと、リブ25L及び25Rの上面との距離は、搬送方向に沿って徐々に大きくなる。
【0048】
第1案内板21の上面21uからリブ25L及び25Rの上面までの距離は、5.0mm以下であることが好ましい。この場合、案内部材2が第1要素と第2要素との間に挟まれるように取り付けられたときに、第1要素と第2要素との間のガタつきを抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態では、リブ25L及び25Rは、第1案内板21上だけでなく、第2案内板22及び第3案内板23上にも延びている。
【0050】
案内部材2を構成する材料は、特に限定されないが、典型的には、硬質の樹脂又は金属を使用することができる。例えば、案内部材2は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂から好ましく構成することができる。
【0051】
また、案内部材2には、カバー部材26及び27が取り付けられる。カバー部材26及び27は、
図1及び
図5において、その他の要素が見やすいように、点線で示されている。カバー部材26は、案内面C1から一定の間隔を空けつつ、案内面C1を覆うように配置される部材である。カバー部材26は、シート状の部材であり、第1案内板21上のリブ25L及び25Rに取り付けられ、これらの間を平面的に延びる。一方、カバー部材27も、シート状の部材であり、左柱部31及び右柱部35に取り付けられ、これらの間を平面的に延びる。カバー部材26及び27は、薬液の通路となる案内板C1上に埃等が付着し、微細溝S3内の薬液の流れが阻害されることを防止する。なお、カバー部材26及び27は、このような機能を果たすことが出来る限り、様々な形状に形成することができる。
【0052】
カバー部材26及び27を構成する材料は、特に限定されないが、典型的には、樹脂や紙を使用することができる。
【0053】
以上の案内部材2によれば、貯水タンク9の蓋92に手洗い用の給水受け皿が存在しない場合や、給水受け皿に装飾品が置かれている場合等であっても、薬液供給装置100の設置場所の確保が容易になる。また、案内部材2によれば、容器1内の薬液を流水空間S2まで容易に案内することができ、安定して薬液を供給することできる。
【0054】
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0055】
<3-1>
上記実施形態では、容器1は、貯水タンク9の側方又は便器8の側方に設置された。しかしながら、案内部材2の案内面C1を適宜引き回すことにより、容器1を様々な場所に設置することができる。例えば、貯水タンク9の蓋92の平らな上面上に配置することもできる。
【0056】
<3-2>
上記実施形態において、接続部材5及び下容器6を省略し、容器1の排出口部11に案内部材2を直接接続してもよい。この場合、例えば、案内部材2の案内面C1を適宜引き回すことにより、排出口部11に案内面C1を接続すればよい。
【0057】
<3-3>
上記実施形態において、案内部材2からリブ25L及び25Rを省略してもよい。この場合、微細溝S3内の薬液の流れが阻害されることを防止するべく、案内部材2とは別体のスペーサを用意し、これを案内部材2の近傍において第1要素と第2要素との間に挟むように設置することが好ましい。
【0058】
また、リブ25L及び25Rの他に、案内面C1上に別のリブをさらに配置してもよい。例えば、案内面C1上においてその左右方向の中央部に、搬送方向に沿って延びるリブを配置してもよい。
【0059】
<3-4>
案内面C1上に形成される溝の数は、特に限定されず、上述の微細溝S3の例ように多数本あってもよいが、1本のみであってもよい。
【0060】
<3-5>
案内面C1を覆うカバー部材の取り付け位置は、上述したカバー部材26及び27の例に限られない。例えば、第1案内板21上のみを覆うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
100 薬液供給装置
1 容器
2 案内部材
21 第1案内板
22 第2案内板(引っ掛け部)
23 第3案内板
24 対面板(引っ掛け部)
25L,25R リブ(突出部)
26,27 カバー部材
8 便器
81 側壁部
811 リム
82 便座
9 貯水タンク
91 タンク本体
911 側壁部
92 蓋
S1 内部空間
S2 流体空間
S3 微細溝
C1 案内面