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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/20 20060101AFI20231215BHJP
【FI】
B65D47/20 111
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019219992
(22)【出願日】2019-12-05
(65)【公開番号】P2021008321
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2019122634
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004477
【氏名又は名称】キッコーマン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000175397
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】桑垣 傳美
(72)【発明者】
【氏名】西村 雄斗
(72)【発明者】
【氏名】堀 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】森 啓晃
(72)【発明者】
【氏名】平野 健
(72)【発明者】
【氏名】瀧下 虎廣
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-043644(JP,A)
【文献】特開2002-257250(JP,A)
【文献】特開2018-091276(JP,A)
【文献】国際公開第2016/153004(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/086255(WO,A1)
【文献】特開2002-019630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に装着し、内部に逆止弁を有するキャップであり、
逆止弁は、容器の口部を塞ぐ位置に配置し、容器内の内容物が流れ出る開口および開口の周囲に形成した弁座を有する中栓と、中栓の開口および弁座を覆って配置する弁部材を備え、
弁部材は、中栓の開口および弁座に対向して配置し、中栓の開口の軸心方向において開弁位置と閉弁位置とにわたって変位する弁体と、弁体と一体をなし弁体の外周縁を支持して中栓に装着する弁体支持部を有し、
弁体は、中栓の開口を囲み弁体の外周縁に沿って環状に形成したシール部と、中栓の開口の半径方向においてシール部よりも外側の位置に形成した液穴を有し、
シール部は、中栓の開口の軸心に沿った断面において、弁座に向けて突出する湾曲形状を有し、湾曲形状は、液穴側の外側湾曲部と中栓の開口側の内側湾曲部との形状が異なり、外側湾曲部は内側湾曲部の曲率半径よりも大きい曲率半径を有し、内側湾曲部の曲率半径よりも大きい曲率半径を有する外側湾曲部が内側湾曲部の曲がり剛性より小さい曲がり剛性を有し、曲がり剛性が大きい内側湾曲部と曲がり剛性が小さい外側湾曲部との曲がり剛性が異なる二つの部位が共存する構造をなし、
中栓の弁座が平面状の弁座面を有し、シール部が平面状の弁座面に圧接することを特徴とするキャップ。
【請求項2】
シール部は、弁体の無負荷状態において、湾曲形状の頂点を境として液穴側が外側湾曲部をなし、中栓の開口側が内側湾曲部をなし、外側湾曲部と内側湾曲部が非対称な形状をなすことを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
逆止弁は、シール部のシール面の一部が中栓の弁座の弁座面に圧接する閉弁状態で、シール面と弁座面の間の非圧接領域において、外側湾曲部の外側シール面と弁座面の間に外側液封用間隙を形成し、内側湾曲部の内側シール面と弁座面の間に内側液封用間隙を形成し、外側液封用間隙を内側液封用間隙よりも狭く形成することを特徴とする請求項1または2に記載のキャップ。
【請求項4】
逆止弁は、シール部のシール面が弁座の弁座面に圧接する圧接領域と、シール面と弁座面が離間する非圧接領域を形成し、圧接領域と非圧接領域との境の近傍において、外側シール面に対する接線と弁座面との成す角度θが、内側シール面に対する接線と弁座面との成す角度θよりも小さくなることを特徴とする請求項3に記載のキャップ。
【請求項5】
容器の口部に装着し、内部に逆止弁を有するキャップであり、
逆止弁は、容器の口部を塞ぐ位置に配置し、容器内の内容物が流れ出る開口および開口
の周囲に形成した弁座を有する中栓と、中栓の開口および弁座を覆って配置する弁部材を備え、
弁部材は、中栓の開口および弁座に対向して配置し、中栓の開口の軸心方向において開弁位置と閉弁位置とにわたって変位する弁体と、弁体と一体をなし弁体の外周縁を支持して中栓に装着する弁体支持部を有し、
弁体は、中栓の開口を囲み弁体の外周縁に沿って環状に形成したシール部と、中栓の開口の半径方向においてシール部よりも外側の位置に形成した液穴を有し、
シール部は、中栓の開口の軸心に沿った断面において、弁座に向けて突出する湾曲形状を有し、湾曲形状は、液穴側の外側湾曲部と中栓の開口側の内側湾曲部との形状が異なり、外側湾曲部は内側湾曲部の曲率半径よりも大きい曲率半径を有し、
中栓の弁座の弁座面は、シール部に当接する平面状弁座面と、平面状弁座面から立ち上がり、シール部の内側湾曲部の内側シール面に対向する曲面状弁座面からなり、シール部が平面状弁座面と曲面状弁座面にわたって圧接することを特徴とするキャップ。
【請求項6】
逆止弁は、シール部のシール面の一部が中栓の弁座の弁座面に圧接する閉弁状態で、シール面と弁座面の間の非圧接領域において、外側湾曲部の外側シール面と平面状弁座面の間に外側液封用間隙を形成し、内側湾曲部の内側シール面と曲面状弁座面の間に内側液封用間隙を形成し、内側液封用間隙を外側液封用間隙よりも狭く形成することを特徴とする請求項5に記載のキャップ。
【請求項7】
内側シール面と曲面状弁座面の間に形成する内側液封用間隙が上方に向けて開口することを特徴とする請求項6に記載のキャップ。
【請求項8】
逆止弁は、シール部のシール面が弁座の弁座面に圧接する圧接領域と、シール面と弁座面が離間する非圧接領域を形成し、圧接領域と非圧接領域との境の近傍において、内側シール面に対する接線と曲面状弁座面に対する接線との成す角度θが、外側シール面に対する接線と平面状弁座面との成す角度θよりも小さくなることを特徴とする請求項6または7に記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に装着するキャップに関し、キャップに内蔵する逆止弁の技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、醤油等の内容物を充填した容器において内容物の酸化を抑制する技術がある。これは、二重容器の内容器に醤油等の内容物を納め、内容器の口部にキャップを装着し、キャップの内部に配置した逆止弁の中栓の開口を弁体で封止するものである。
【0003】
このような容器およびキャップの構造を示した先行技術文献には、例えば特許文献1に記載するものがある。
【0004】
これは、二重容器の内容器の口部に中栓部材を装着し、中栓部材に設けた連通筒部内に弁体部を配置したものであり、弁体部が連通筒部内において容器軸心方向に沿って摺動する。弁体部は、容器軸心と同軸に配置された有底筒状をなし、容器軸心方向の上側端部に径方向外方に拡がる環状のフランジ部を有する。連通筒部の環状の上端面が弁座をなし、弁体部のフランジ部と当接して封止する。そして、弁体部が連通筒部内において容器軸心方向に沿って摺動することで、フランジ部と連通筒部の弁座間を開閉する。
【0005】
また、特許文献2に記載するものは、図14から図18に示すようなものである。ここでは、容器本体100が外容器101と内容器102からなる二重構造を有し、外容器101の口部にキャップ103を装着している。キャップ103は、外容器101の口部に嵌合するキャップ本体104と、キャップ本体104の上部に配置する蓋105からなる。キャップ本体104は、吐出口106を有し、蓋105に吐出口106を閉止する閉止部107を設けている。
【0006】
キャップ103の内部には逆止弁120を配置している。逆止弁120は、内容器102の口部に装着する中栓108と、中栓108を覆って配置する弁部材109を備えている。弁部材109は、内容器102の軸心方向において中栓108に対向して配置する弁体110と、弁体110と一体をなし弁体110の外周縁を支持して中栓108に外嵌装着する弁体支持部111を有している。
【0007】
中栓108は醤油等の内容物の液体が通過する開口112を有し、開口112の周囲が弁座113をなす。弁体110は中栓108の開口112を覆って弁座113に対向して配置し、開口112を囲み弁体110の周縁部に沿って形成したシール部114を有している。シール部114は、弁体110の一部をなし、弁体110の内面側において弁座113に向けて湾曲形状に突出し、弁体110の外面側において溝状に窪んだ形状をなす。シール部114は、中栓108の開口112の周囲の弁座113にシール面115が当接離間可能である。このシール部114よりも外側の位置において弁体110には複数の液穴116が開口している。
【0008】
また、キャップ103は、吸気口117を有し、吸気口117が内容器102と外容器101の間に連通している。弁部材109は、吸気口117を開閉する空気弁部118を有し、空気弁部118は弁支持部111の外周縁からキャップ103の半径方向外側へ伸びる四角形状をなす。
【0009】
このキャップ103において内容器102の内容物を吐出する際には、外容器101に圧搾力を加え、この圧搾力を外容器101と内容器102の間の空気層を介して内容器102に与えて内容器102を搾る。
【0010】
このとき、内容器102の内圧の高まりにより弁体110は、図18(a)に示す閉弁状態から図18(b)に示す中間状態へ遷移して、中栓108の開口112から離間する方向に移動する。さらに、弁体110は、図18(b)に示す中間状態から図18(c)に示す閉弁状態に遷移し、弁体110の移動に伴ってシール部114が弁座113から離間して開弁位置に移動し、図16に示すように、内容器102の内容物がシール部114と弁座113の間を通り、キャップ103の吐出口106から押し出される。
【0011】
また、外容器101に加える圧搾力を解除すると、弾性変形した外容器101が復元力により元の形状に戻ることで外容器101の内部空間が広がって負圧となる。このため、図17に示すように、空気弁部118が開いて吸気口117を通して外容器101と内容器102の間に空気が流入する。
【0012】
また、加圧力が解除された内容器102の内部が負圧となることで、容器内外の圧力差を駆動圧として、弁体110の液弁部118が中栓108の開口112に接近する方向に押圧され、弁体110の移動に伴ってシール部114が弁座113に当接する閉弁位置に移動し、シール面115と弁座113の間を封止する。
【0013】
さらに、シール部114の内周面と中栓108の弁座113との間、およびシール部114の外周面と中栓108の弁座113との間に醤油等の内容物の液体の液層を保持して液封することで、内容器102に空気が侵入することを遮断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特許第6450243号
【文献】特開2019-43644
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述した構成において、弁体110の移動に追従して生じるシール部114の稼働は、シール部114における弁体110の湾曲形状が曲率半径の大きい緩やかな曲がりであるほどに容易となり、シール部114における弁体110の湾曲形状が曲率半径の小さい急な曲がりであるほどに困難となる。
【0016】
例えば、一定の厚みを有する板材を水平方向に対して傾斜配置したときに、鉛直方向に沿った板材の断面形状は、水平方向に対する傾斜角度が大きくなるほどに鉛直方向に長くなり、傾斜角度が小さくなるほどに鉛直方向の長さが短くなる。
【0017】
このため、弁体110のシール部114の湾曲形状において、湾曲形状が曲率半径の大きい緩やかな曲がりであるほどに、中栓108の軸心方向におけるシール部114の断面の長さが短くなり、シール部114の湾曲形状が曲率半径の小さい急な曲がりであるほどに中栓108の軸心方向におけるシール部114の断面の長さが大きくなる。
【0018】
一般に、部材の曲げ剛性は、断面二次モーメントが大きくなるほどに大きくなる。したがって、シール部114は湾曲形状が曲率半径の大きい緩やかな曲がりであるほど曲げ剛性が小さく、湾曲形状が曲率半径の小さい急な曲がりであるほど曲げ剛性が大きくなる。この結果、弁体110の移動に追従して生じるシール部114の稼働は、シール部114における弁体110の湾曲形状が曲率半径の大きい緩やかな曲がりであるほどに容易となり、駆動圧に対する弁体110の応答性が良くなる。
【0019】
逆に、シール部114における弁体110の湾曲形状が曲率半径の小さい急な曲がりであるほどに、弁体110の移動に追従して生じるシール部114の稼働は困難となり、駆動圧に対する弁体110の応答性が悪くなる。
【0020】
一方、駆動圧を受ける弁体110からシール部114のシール面に伝わる力は、シール部114の湾曲形状が曲率半径の大きい緩やかな曲がりであるほどに、換言すると曲げ剛性が小さいほどに弱くなり、結果としてシール部114のシール面と弁座113との面圧が低くなる。また、シール部114のシール面に伝わる力は、シール部114の湾曲形状が曲率半径の小さい急な曲がりであるほどに、換言すると曲げ剛性が大きいほどに強くなり、結果としてシール部114のシール面と弁座113との面圧が高くなる。
【0021】
本発明は上記した課題を解決するものであり、駆動圧に対する逆止弁の開閉の応答性を向上させ、かつ優れたシール性を発揮するキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記した課題を解決するために、本発明のキャップは、容器の口部に装着し、内部に逆止弁を有するキャップであり、逆止弁は、容器の口部を塞ぐ位置に配置し、容器内の内容物が流れ出る開口および開口の周囲に形成した弁座を有する中栓と、中栓の開口および弁座を覆って配置する弁部材を備え、弁部材は、中栓の開口および弁座に対向して配置し、中栓の開口の軸心方向において開弁位置と閉弁位置とにわたって変位する弁体と、弁体と一体をなし弁体の外周縁を支持して中栓に装着する弁体支持部を有し、弁体は、中栓の開口を囲み弁体の外周縁に沿って環状に形成したシール部と、中栓の開口の半径方向においてシール部よりも外側の位置に形成した液穴を有し、シール部は、中栓の開口の軸心に沿った断面において、弁座に向けて突出する湾曲形状を有し、湾曲形状は、液穴側の外側湾曲部と中栓の開口側の内側湾曲部との形状が異なり、外側湾曲部は内側湾曲部の曲率半径よりも大きい曲率半径を有し、内側湾曲部の曲率半径よりも大きい曲率半径を有する外側湾曲部が内側湾曲部の曲がり剛性より小さい曲がり剛性を有し、曲がり剛性が大きい内側湾曲部と曲がり剛性が小さい外側湾曲部との曲がり剛性が異なる二つの部位が共存する構造をなし、中栓の弁座が平面状の弁座面を有し、シール部が平面状の弁座面に圧接することを特徴とする。
【0024】
本発明のキャップにおいて、シール部は、弁体の無負荷状態において、湾曲形状の頂点を境として液穴側が外側湾曲部をなし、中栓の開口側が内側湾曲部をなし、外側湾曲部と内側湾曲部が非対称な形状をなすことを特徴とする。
【0025】
本発明のキャップにおいて、逆止弁は、シール部のシール面の一部が中栓の弁座の弁座面に圧接する閉弁状態で、シール面と弁座面の間の非圧接領域において、外側湾曲部の外側シール面と弁座面の間に外側液封用間隙を形成し、内側湾曲部の内側シール面と弁座面の間に内側液封用間隙を形成し、外側液封用間隙を内側液封用間隙よりも狭く形成することを特徴とする。
【0026】
本発明のキャップにおいて、逆止弁は、シール部のシール面が弁座の弁座面に圧接する
圧接領域と、シール面と弁座面が離間する非圧接領域を形成し、圧接領域と非圧接領域と
の境の近傍において、外側シール面に対する接線と弁座面との成す角度θ1が、内側シー
ル面に対する接線と弁座面との成す角度θ2よりも小さくなることを特徴とする。
【0027】
上記した課題を解決するために、本発明のキャップは、容器の口部に装着し、内部に逆止弁を有するキャップであり、逆止弁は、容器の口部を塞ぐ位置に配置し、容器内の内容物が流れ出る開口および開口の周囲に形成した弁座を有する中栓と、中栓の開口および弁座を覆って配置する弁部材を備え、弁部材は、中栓の開口および弁座に対向して配置し、中栓の開口の軸心方向において開弁位置と閉弁位置とにわたって変位する弁体と、弁体と一体をなし弁体の外周縁を支持して中栓に装着する弁体支持部を有し、弁体は、中栓の開口を囲み弁体の外周縁に沿って環状に形成したシール部と、中栓の開口の半径方向においてシール部よりも外側の位置に形成した液穴を有し、シール部は、中栓の開口の軸心に沿った断面において、弁座に向けて突出する湾曲形状を有し、湾曲形状は、液穴側の外側湾曲部と中栓の開口側の内側湾曲部との形状が異なり、外側湾曲部は内側湾曲部の曲率半径よりも大きい曲率半径を有し、中栓の弁座の弁座面は、シール部に当接する平面状弁座面と、平面状弁座面から立ち上がり、シール部の内側湾曲部の内側シール面に対向する曲面状弁座面からなり、シール部が平面状弁座面と曲面状弁座面にわたって圧接することを特徴とする。
【0028】
本発明のキャップにおいて、逆止弁は、シール部のシール面の一部が中栓の弁座の弁座面に圧接する閉弁状態で、シール面と弁座面の間の非圧接領域において、外側湾曲部の外側シール面と平面状弁座面の間に外側液封用間隙を形成し、内側湾曲部の内側シール面と曲面状弁座面の間に内側液封用間隙を形成し、内側液封用間隙を外側液封用間隙よりも狭く形成することを特徴とする。
【0029】
本発明のキャップにおいて、内側シール面と曲面状弁座面の間に形成する内側液封用間隙が上方に向けて開口することを特徴とする。
【0030】
本発明のキャップにおいて、逆止弁は、シール部のシール面が弁座の弁座面に圧接する圧接領域と、シール面と弁座面が離間する非圧接領域を形成し、圧接領域と非圧接領域との境の近傍において、内側シール面に対する接線と曲面状弁座面に対する接線との成す角度θが、外側シール面に対する接線と平面状弁座面との成す角度θよりも小さくなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
上記した構成により、シール部の外側湾曲部の曲率半径を内側湾曲部の曲率半径よりも大きくすることで、シール部に曲がり剛性が異なる二つの部位、すなわち曲がり剛性の大きい内側湾曲部と曲がり剛性の小さい外側湾曲部が共存する構造を実現できる。
【0032】
このため、曲がり剛性の小さい外側湾曲部により、弁体の移動に追従してシール部が容易に稼働する優れた応答性を実現でき、曲がり剛性の大きい内側湾曲部により、駆動圧を受ける弁体からシール部に加わる力を確実にシール面に作用させて弁座面とシール面との間に内容物の漏出を防止する封止に必要な十分な面圧を確保できる。
【0033】
シール面が弁座面に圧接する閉弁状態で、シール部の内周の内側シール面と中栓の弁座面との間、およびシール部の外周の外側シール面と中栓の弁座面との間に毛管現象により内容物の液層が形成される。
【0034】
この際に、外側湾曲部の曲率半径が内側湾曲部の曲率半径よりも大きいことで、シール面と弁座面の間の非圧接領域において、外側湾曲部の外側シール面と弁座面の間に形成する外側液封用間隙は、内側湾曲部の内側シール面と弁座面の間に形成する内側液封用間隙よりも狭くなり、表面張力が強まることで毛管現象により保持する液層を確実に保持できる。このため、内容物の酸化を防止するために必要なシール部と弁座間の通気の遮断を確実に実現できる。
【0035】
また、中栓の弁座面が平面状弁座面と曲面状弁座面からなり、シール部が平面状弁座面と曲面状弁座面にわたって圧接するので、駆動圧を受ける弁体からシール部の内側湾曲部に加わる力が方向を違えて平面状弁座面と曲面状弁座面に向けて作用し、シール部のシール面を平面状弁座面と曲面状弁座面に確実に圧接させて、弁座面とシール面との間に内容物の漏出を防止する封止に必要な十分な面圧を確保できる。
【0036】
内側湾曲部の内側シール面と曲面状弁座面の間に形成する内側液封用間隙が上方に向けて開口するので、毛管現象により保持する液層が振動等よって漏出することがなくなり、液層をより確実に保持できる。このため、内容物の酸化を防止するために必要なシール部と弁座間の通気の遮断をより確実に実現できる。
【0037】
この際に、シール面と弁座面の間の非圧接領域において、内側湾曲部の内側シール面と弁座面の間に形成する内側液封用間隙は、外側湾曲部の外側シール面と弁座面の間に形成する外側液封用間隙よりも狭くなり、表面張力が強まることで毛管現象により保持する液層を確実に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の実施の形態におけるキャップを示す断面図
図2】同実施の形態における中栓を示す平面図
図3図2のA-A矢視断面図
図4】同中栓の背面図
図5】同実施の形態における弁部材を示す平面図
図6図5のB-B矢視断面図
図7】同弁部材の背面図
図8】同中栓の斜視図
図9】同弁部材の斜視図
図10】同実施の形態の逆止弁の作動を示し、(a)は閉弁状態を示す図、(b)は中間状態を示す図、(c)は開弁状態を示す図
図11】同逆止弁を示す部分拡大断面図
図12】本発明の他の実施の形態における中栓に弁部材を組み付けた逆止弁を示す断面図
図13】同中栓に弁部材を組み付けた逆止弁の部分拡大断面図
図14】従来の逆止弁を示す部分拡大断面図
図15】従来のキャップを示す断面図
図16】同キャップの液弁構造を示す部分拡大断面図
図17】同キャップの空気弁構造を示す部分拡大断面図
図18】従来の逆止弁の作動を示し、(a)は閉弁状態を示す図、(b)は中間状態を示す図、(c)は開弁状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0039】
(実施例1)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1から図11に示すように、本実施の形態では、容器本体1が外容器2と内容器3からなる二重構造を有している。容器本体1の口部にはキャップ4を装着している。キャップ4は、キャップ本体5と蓋(図示省略)からなり、キャップ本体5と蓋が一体に成型されている。ここでは、蓋の構造を開示しないが、先に図13で説明したものと同様であり、説明を省略する。
【0040】
キャップ本体5は、外容器2の口部外周に螺合装着しており、頂部に形成した注ぎ口部6に吐出口7を有している。キャップ4の内部には逆止弁8を配置している。
【0041】
逆止弁8は中栓9と弁部材10を備えており、図2から図4に示すように、内容器3の口部を塞ぐ位置に配置する中栓9は、醤油等の内容物の液体が通過する開口11を有し、開口11の周囲が弁座12をなす。中栓9は弁座12の外周に環状溝9aを有し、環状溝9aの外周に拡がる外縁部9bに複数の切欠き部9cを有している。切欠き部9cはキャップ本体5の内部に形成した突起(図示省略)と係合し、開口11の軸心廻りにおいて中栓9を位置決めする。
【0042】
また、中栓9の環状溝9aの内周面には弁部材10を位置決めする突起9dが形成されている。突起9dに対応する位置にある切欠き部9cは、両端縁がそれぞれ21度の角度θβで扇状に拡がっている。
【0043】
図5から図7に示すように、弁部材10は、中栓9の開口11および弁座12を覆って配置しており、弁体13と弁体支持部14と空気弁部15を有している。
【0044】
弁体13は、中栓9の開口11および弁座12に対向し、中栓9の開口11の軸心方向において開弁位置と閉弁位置とにわたって弾性変位する。弁体支持部14は、弁体13と一体をなし弁体13の外周縁を支持しており、中栓9の環状溝9aに嵌合装着している。弁体支持部14は内周面に中栓9の突起9dに嵌合する凹部14aを有している。
【0045】
弁体13は、中栓9の開口11を囲み弁体13の外周縁に沿って環状に形成したシール部16と、中栓9の開口11の半径方向においてシール部16よりも外側の位置に形成した液穴17を有している。
【0046】
シール部16は、図6および図11に示すように、中栓9の開口11の軸心に沿った断面において、弁座12に向けて突出しており、弁体13の一部を湾曲形状に形成したものである。すなわち、シール部16は、弁座12に対向する弁体13の内面側において弁座12に向けて湾曲形状に突出し、弁体13の外面側において溝状に窪んだ形状をなす。
【0047】
シール部16の湾曲形状は、液穴17に臨む側の外側湾曲部18と中栓9の開口11に臨む側の内側湾曲部19との形状が異なっている。すなわち、シール部16は、弁体13に強制力が作用しない自然下の無負荷状態において、湾曲形状の頂点を境とする液穴17の側の外側湾曲部18と中栓9の開口11の側の内側湾曲部19とが非対称な形状をなしている。
【0048】
そして、外側湾曲部18は、内側湾曲部19の曲率半径よりも大きい曲率半径の形状をなし、中栓9の開口11の軸心と平行な方向において外側湾曲部18の厚みが内側湾曲部19の厚みより小さい形状をなす。
【0049】
また、内側湾曲部19は、外側湾曲部18の曲率半径よりも小さい曲率半径の形状をなし、中栓9の開口11の軸心と平行な方向において内側湾曲部19の厚みが外側湾曲部18の厚みより大きい形状をなす。
【0050】
このように、シール部16の外側湾曲部18の曲率半径を内側湾曲部19の曲率半径よりも大きくすることで、シール部16に曲がり剛性が異なる二つの部位、すなわち曲がり剛性が外側湾曲部18よりも大きい内側湾曲部19と曲がり剛性が内側湾曲部19よりも小さい外側湾曲部18が共存する構造を実現できる。
【0051】
シール部16は、湾曲形状の頂点を含むシール面20の一部で、弁座12の弁座面21に当接離間可能である。そして、閉弁位置にある逆止弁8は、シール部16のシール面20が弁座12の弁座面21に圧接する圧接領域と、シール面20と弁座面21が離間する非圧接領域を形成し、圧接領域と非圧接領域との境の近傍において、外側シール面20bに対する接線と弁座面21との成す角度θが、内側シール面20aに対する接線と弁座面21との成す角度θよりも小さくなる。
【0052】
液穴17は、シール部16に沿った複数個所において、弁体13と弁体支持部14の肩部とにわたって開口しており、後述するように、従来よりも大きく開口している。
【0053】
キャップ本体5は、天部に形成した吸気部22に吸気口23が開口しており、吸気口23が外容器2と内容器3の間に連通している。
【0054】
弁部材10の空気弁部15は、弁体支持部14の外周縁からキャップ本体5の半径方向外側へ伸びる扇形状をなし、両端縁がそれぞれ5度の角度θαで広がっている。空気弁部15は吸気口23を閉塞する閉弁位置と吸気口23を開放する開弁位置とにわたって変位し、吸気口23を開閉する。空気弁部15は吸気口23に対向する表面側が平坦面をなし、背面側に格子状のリブ15aを備えている。
【0055】
弁部材10は基本的に薄膜に形成しており、弁体13および空気弁部15は0.2mmの厚みに形成している。ここで、先に説明した従来の弁体と本実施の形態における弁体13および空気弁部15の違いについて説明する。
【0056】
従来の弁体は、材質がEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)であり、弁体の厚みが0.4mmであった。このEPDMは硬度ショアA40程度の柔らかさを有しているので、弁体の応答性が良い特質を有する。一方で、柔らかさのために、薄くすると形状を維持することが困難となる場合があり、厚みは0.4mmが限界であり、これ以上に薄くするとシール部のシール性を確保することが困難となる。このため、シール部は曲率半径の小さい形状に形成しており、液穴も小さく開口せざるを得なかった。
【0057】
本実施の形態では、弁部材10の材質としてPE(ポリエチレン)を採用しており、超低密度PEに軟化剤を添加して硬度ショアA75程度の柔らかさに調整している。このため、弁部材10の弁体13および空気弁部15を0.2mmの薄膜に形成しても形状を維持することが可能となった。この結果、シール部16は、液穴17の側の外側湾曲部18と中栓9の開口11の側の内側湾曲部19とが非対称な形状をなし、外側湾曲部18が内側湾曲部19の曲率半径よりも大きい曲率半径を有する形状に形成できた。このため、応答性とシール性がともに向上した。
【0058】
また、液穴17を弁体13と弁体支持部14の肩部とにわたって大きく開口させ、肩部の肉厚を薄くしても型崩れを起こすことがないので、液穴17の拡張により液出し性が向上した。この結果、内容物の少量出しから大量出しまでの全域において圧搾力を低減することができ、液穴17からの吐出量が増加したことで大量出しもスムーズに行うことができ、特に、内容器3の残量が少なくなった状態で行う最終排液も、軽い力で出し切ることが可能となった。
【0059】
以下、上記の構成における作用について説明する。内容器3の内容物を吐出する際には、外容器2に圧搾力を加え、この圧搾力を外容器2と内容器3の間の空気層を介して内容器3に与えて内容器3を搾る。
【0060】
内容器3の内圧の高まりにより弁体13は、図10(a)に示す閉弁状態から図10(b)に示す中間状態へ遷移して、中栓9の開口11から離間する方向に移動する。本実施の形態では、駆動圧力に対する弁体13の応答性が優れているので、この過程の途中でシール部16が弁座12から離間し始める。さらに、弁体13は、図10(b)に示す中間状態から図10(c)に示す閉弁状態に遷移し、弁体13の移動に伴ってシール部16が弁座12から離間して開弁位置に移動し、内容器3の内容物がシール部16と弁座12の間を通り、キャップ4の吐出口7から押し出される。
【0061】
このとき、本実施の形態では、シール部16が曲がり剛性の大きい内側湾曲部19と曲がり剛性の小さい外側湾曲部18が共存する構造を有しているので、曲がり剛性の小さい外側湾曲部18により、弁体13の移動に追従してシール部16が容易に稼働する優れた応答性を実現できる。
【0062】
外容器2に加える圧搾力を解除すると、弾性変形した外容器2が復元力により元の形状に戻ることで外容器2の内部空間が広がって負圧となる。このため、図1に一点鎖線で示すように、空気弁部15が開いて吸気口23を通して外容器2と内容器3の間に空気が流入する。
【0063】
また、弁体13は、自身の復元力で閉弁方向に移動するとともに、加圧力が解除された内容器3の内部が負圧となることで、容器内外の圧力差を駆動圧として、中栓9の開口11に接近する方向に押圧される。弁体13の移動に伴ってシール部16が弁座12に当接する閉弁位置に移動し、シール面20と弁座面21の間を封止する。
【0064】
このとき、本実施の形態では、シール部16が曲がり剛性の大きい内側湾曲部19と曲がり剛性の小さい外側湾曲部18が共存する構造を有するので、曲がり剛性の大きい内側湾曲部19により、駆動圧を受ける弁体13からシール部16に加わる力を確実にシール面20に作用させて弁座面21とシール面20との間に内容物の漏出を防止する封止に必要な十分な面圧を確保できる。
【0065】
また、図11に示すように、シール面20が弁座面21に圧接する閉弁状態で、シール部16の内周の内側シール面20aと中栓9の弁座面21との間、およびシール部16の外周の外側シール面20bと中栓9の弁座面21との間に毛管現象により内容物の液層24が形成される。
【0066】
この際に、外側湾曲部18の曲率半径が内側湾曲部19の曲率半径よりも大きいことで、シール面20と弁座面21の間の非圧接領域において、外側湾曲部18の外側シール面20bと弁座面21の間に形成する外側液封用間隙25は、内側湾曲部19の内側シール面20aと弁座面21の間に形成する内側液封用間隙26よりも狭くなり、表面張力が強まることで、毛管現象により保持する液層24を確実に保持できる。このため、内容物の酸化を防止するために必要なシール部16と弁座12の間の通気の遮断を確実に実現できる。
(実施例2)
図12図13は、本発明の他の実施の形態を示すものである。先の実施の形態で説明したものと同様の作用を行う部材には同符号を付して説明を省略する。
【0067】
中栓9は、弁座面21の開口11に臨む側に、弁座面21の内側縁に沿って環状に隆起する隆起部27を有しており、隆起部27はシール部16の内側湾曲部19より内側の開口11の側に位置している。隆起部27は開口11の半径方向で外側に位置する外側面が弁座面21の一部をなして曲面状に窪む形状をなす。
【0068】
このため、弁座面21は、シール部16が当接する平面状弁座面21aと、平面状弁座面21aから立ち上がり、シール部16の内側シール面20aに対向する曲面状弁座面21bからなり、曲面状弁座面21bは、隆起部27の外側面からなる。
【0069】
逆止弁8は、閉弁状態でシール部16のシール面20の一部、すなわち頂点付近が平面状弁座面21aと曲面状弁座面21bにわたって圧接する。
【0070】
シール面20と弁座面21が離間する非圧接領域において、外側湾曲部18の外側シール面20bと平面状弁座面21aの間に外側液封用間隙25を形成し、内側湾曲部19の内側シール面20aと曲面状弁座面21bの間に内側液封用間隙26を形成しており、内側液封用間隙26が外側液封用間隙25よりも狭く形成されている。
【0071】
内側シール面20aと曲面状弁座面21bの間に形成する内側液封用間隙26は、内側シール面20aと曲面状弁座面21bに沿って湾曲し、上方に向けて開口している。
【0072】
そして、閉弁位置にある弁体13は、シール部16のシール面20が弁座12の弁座面21に圧接する圧接領域と、シール部16のシール面20と弁座12の弁座面21が離間sする非圧接領域を形成し、圧接領域と非圧接領域との境の近傍において、内側シール面20aに対する接線と曲面状弁座面21bに対する接線との成す角度θが、外側シール面20bに対する接線と平面状弁座面21aとの成す角度θよりも小さくなる。
【0073】
この構成によれば、弁体13は、閉弁状態において、容器内外の圧力差を駆動圧として、中栓9の開口11に接近する方向に押圧され、シール部16が弁座面21の平面状弁座面と曲面状弁座面にわたって圧接し、シール面20と弁座面21の間を封止する。
【0074】
このとき、本実施の形態では、シール部16が曲がり剛性の大きい内側湾曲部19と曲がり剛性の小さい外側湾曲部18が共存する構造を有し、駆動圧を受ける弁体13からシール部16に加わる力を、曲がり剛性の大きい内側湾曲部19により確実にシール面20に作用させることに加えて以下の作用が生じる。
【0075】
すなわち、中栓9の弁座面21が平面状弁座面21aと曲面状弁座面21bからなり、シール部16の内側湾曲部19が平面状弁座面21aと曲面状弁座面21bにわたって圧接するので、駆動圧を受ける弁体13からシール部16の内側湾曲部19に加わる力が方向を違えて平面状弁座面21aと曲面状弁座面21bに向けて作用し、シール部16のシール面20を平面状弁座面21aと曲面状弁座面21bに確実に圧接させて、弁座面21とシール面20との間に内容物の漏出を防止する封止に必要な十分な面圧を確保できる。
【0076】
この際に、シール面20と弁座面21の間の非圧接領域において、内側湾曲部19の内側シール面20aと曲面状弁座面21bの間に形成する内側液封用間隙26が、外側湾曲部18の外側シール面20bと平面状弁座面21aの間に形成する外側液封用間隙25よりも狭くなり、表面張力が強まることで、毛管現象により保持する液層24を確実に保持できる。
【0077】
さらに、内側湾曲部19の内側シール面20aと曲面状弁座面21bの間に形成する内側液封用間隙26が上方に向けて開口するので、毛管現象により保持する液層が振動等よって漏出することがなくなり、液層をより確実に保持できる。このため、内容物の酸化を防止するために必要なシール部16と弁座12の間の通気の遮断をより確実に実現できる。
【符号の説明】
【0078】
4 キャップ
5 キャップ本体
7 吐出口
8 逆止弁
9 中栓
10 弁部材
11 開口
12 弁座
13 弁体
14 弁体支持部
15 空気弁部
16 シール部
17 液穴
18 外側湾曲部
19 内側湾曲部
20 シール面
20a 内側シール面
20b 外側シール面
21 弁座面
21a 平面状弁座面
21b 曲面状弁座面
24 液層
25 外側液封用間隙
26 内側液封用間隙
27 隆起部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18