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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/20 20060101AFI20231215BHJP
【FI】
B65D47/20 111
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020017528
(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公開番号】P2021123384
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004477
【氏名又は名称】キッコーマン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000175397
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】森 啓晃
(72)【発明者】
【氏名】平野 健
(72)【発明者】
【氏名】植田 大輝
(72)【発明者】
【氏名】瀧下 虎廣
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-037290(JP,A)
【文献】特開2019-043644(JP,A)
【文献】特開2017-193352(JP,A)
【文献】特開2018-016349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/20
B65D 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に装着し、内部に逆止弁を有するキャップであり、
逆止弁は、容器の口部を塞ぐ位置に配置し、容器内の内容物の液体が流れ出る開口を有する中栓と、中栓の開口および開口周囲の中栓上面を覆って配置し、中栓の開口の軸心方向において開弁位置と閉弁位置とにわたって変位する弁体を有し、
中栓は、開口の周囲に中栓液封部を有し、中栓液封部は、中栓の開口の開口縁に沿って環状に形成し、中栓上面から弁体に向けて隆起し、
弁体は、中栓に対向する弁体下面に弁体液封部を有し、弁体液封部は、中栓液封部の外側に沿って環状に形成し、弁体下面から中栓上面に向けて隆起し、
中栓液封部と弁体液封部の間に液封用空隙を有し、
弁体下面と中栓液封部の間、弁体液封部と中栓上面の間が隘路をなすことを特徴とするキャップ。
【請求項2】
容器の口部に装着し、内部に逆止弁を有するキャップであり、
逆止弁は、容器の口部を塞ぐ位置に配置し、容器内の内容物の液体が流れ出る開口を有する中栓と、中栓の開口および開口周囲の中栓上面を覆って配置し、中栓の開口の軸心方向において開弁位置と閉弁位置とにわたって変位する弁体を有し、
中栓は、開口の周囲に中栓液封部を有し、中栓液封部は、中栓の開口の開口縁に沿って環状に形成し、中栓上面から弁体に向けて隆起し、
弁体は、中栓に対向する弁体下面に弁体液封部を有し、弁体液封部は、中栓液封部の外側に沿って環状に形成し、弁体下面から中栓上面に向けて隆起し、
中栓液封部と弁体液封部の間に液封用空隙を有し、
中栓の開口の軸心方向において、弁体液封部の頂部が中栓液封部の頂部よりも中栓上面の近くに位置することを特徴とするキャップ。
【請求項3】
中栓液封部と弁体液封部の間の液封用空隙が隘路をなすことを特徴とする請求項1また2に記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に装着するキャップに関し、キャップに内蔵する逆止弁の技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、醤油等の内容物を充填した容器において内容物の酸化を抑制する技術がある。これは、二重容器の内容器に醤油等の内容物を納め、内容器の口部にキャップを装着し、キャップの内部に配置した逆止弁の中栓の開口を弁体で封止するものである。
【0003】
このような容器およびキャップの構造を示した先行技術文献には、例えば特許文献1に記載するものがある。
【0004】
これは、二重容器の内容器の口部に中栓部材を装着し、中栓部材に設けた連通筒部内に弁体部を配置したものであり、弁体部が連通筒部内において容器軸心方向に沿って摺動する。弁体部は、容器軸心と同軸に配置された有底筒状をなし、容器軸心方向の上側端部に径方向外方に拡がる環状のフランジ部を有する。連通筒部の環状の上端面が弁座をなし、弁体部のフランジ部と当接して封止する。そして、弁体部が連通筒部内において容器軸心方向に沿って摺動することで、フランジ部と連通筒部の弁座間を開閉する。
【0005】
また、特許文献2に記載するものは、図15から図19に示すようなものである。ここでは、容器本体100が外容器101と内容器102からなる二重構造を有し、外容器101の口部にキャップ103を装着している。キャップ103は、外容器101の口部に嵌合するキャップ本体104と、キャップ本体104の上部に配置する蓋105からなる。キャップ本体104は、吐出口106を有し、蓋105に吐出口106を閉止する閉止部107を設けている。
【0006】
キャップ103の内部には逆止弁120を配置している。逆止弁120は、内容器102の口部に装着する中栓108と、中栓108を覆って配置する弁部材109を備えている。弁部材109は、内容器102の軸心方向において中栓108に対向して配置する液弁をなす弁体110と、弁体110と一体をなし弁体110の外周縁を支持して中栓108に外嵌装着する弁体支持部111を有している。
【0007】
中栓108は醤油等の内容物の液体が通過する開口112を有し、開口112の周囲が弁座113をなす。弁体110は中栓108の開口112を覆って弁座113に対向して配置し、開口112を囲み弁体110の周縁部に沿って形成したシール部114を有している。シール部114は、弁体110の一部をなし、弁体110の内面側において弁座113に向けて湾曲形状に突出し、弁体110の外面側において溝状に窪んだ形状をなす。シール部114は、中栓108の開口112の周囲の弁座113にシール面115が当接離間可能である。このシール部114よりも外側の位置において弁体110には複数の液穴116が開口している。
【0008】
また、キャップ103は、吸気口117を有し、吸気口117が内容器102と外容器101の間に連通している。弁部材109は、吸気口117を開閉する空気弁部118を有し、空気弁部118は弁体支持部111の外周縁からキャップ103の半径方向外側へ伸びる四角形状をなす。
【0009】
このキャップ103において内容器102の内容物を吐出する際には、外容器101に圧搾力を加え、この圧搾力を外容器101と内容器102の間の空気層を介して内容器102に与えて内容器102を搾る。
【0010】
このとき、内容器102の内圧の高まりにより弁体110は、図19(a)に示す閉弁状態から図19(b)に示す中間状態へ遷移して、中栓108の開口112から離間する方向に移動する。さらに、弁体110は、図19(b)に示す中間状態から図19(c)に示す開弁状態に遷移し、弁体110の移動に伴ってシール部114が弁座113から離間して開弁位置に移動し、図17に示すように、内容器102の内容物がシール部114と弁座113の間を通り、キャップ103の吐出口106から押し出される。
【0011】
また、外容器101に加える圧搾力を解除すると、弾性変形した外容器101が復元力により元の形状に戻ることで外容器101の内部空間が広がって負圧となる。このため、図18に示すように、空気弁部118が開いて吸気口117を通して外容器101と内容器102の間に空気が流入する。
【0012】
また、加圧力が解除された内容器102の内部が負圧となることで、容器内外の圧力差を駆動圧として、弁体110が中栓108の開口112に接近する方向に押圧され、弁体110の移動に伴ってシール部114が弁座113に当接する閉弁位置に移動し、シール面115と弁座113の間を封止する。
【0013】
さらに、シール部114の内周面と中栓108の弁座113との間、およびシール部114の外周面と中栓108の弁座113との間に醤油等の内容物の液体を層状に保持して液封することで、内容器102に空気が侵入することを遮断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特許第6450243号
【文献】特開2019-43644
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述した構成において、内容器102に空気が侵入することを遮断する液封の確実性は、シール部114の内周面および外周面と中栓108の弁座113との間に保持する液量に依存している。この液量に影響を与える要素には、例えば加圧力を解除したときの内容器102の姿勢や容器本体100に加えられる振動、内容器102の内部の残量等である。
【0016】
本発明は上記した課題を解決するものであり、空気の遮断を確実に行うことができるキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記した課題を解決するために、本発明のキャップは、容器の口部に装着し、内部に逆止弁を有するキャップであり、逆止弁は、容器の口部を塞ぐ位置に配置し、容器内の内容物の液体が流れ出る開口を有する中栓と、中栓の開口および開口周囲の中栓上面を覆って配置し、中栓の開口の軸心方向において開弁位置と閉弁位置とにわたって変位する弁体を有し、中栓は、開口の周囲に中栓液封部を有し、中栓液封部は、中栓の開口の開口縁に沿って環状に形成し、中栓上面から弁体に向けて隆起し、弁体は、中栓に対向する弁体下面に弁体液封部を有し、弁体液封部は、中栓液封部の外側に沿って環状に形成し、弁体下面から中栓上面に向けて隆起し、中栓液封部と弁体液封部の間に液封用空隙を有し、弁体下面と中栓液封部の間、弁体液封部と中栓上面の間が隘路をなすことを特徴とする。
本発明のキャップは、容器の口部に装着し、内部に逆止弁を有するキャップであり、逆止弁は、容器の口部を塞ぐ位置に配置し、容器内の内容物の液体が流れ出る開口を有する中栓と、中栓の開口および開口周囲の中栓上面を覆って配置し、中栓の開口の軸心方向において開弁位置と閉弁位置とにわたって変位する弁体を有し、中栓は、開口の周囲に中栓液封部を有し、中栓液封部は、中栓の開口の開口縁に沿って環状に形成し、中栓上面から弁体に向けて隆起し、弁体は、中栓に対向する弁体下面に弁体液封部を有し、弁体液封部は、中栓液封部の外側に沿って環状に形成し、弁体下面から中栓上面に向けて隆起し、中栓液封部と弁体液封部の間に液封用空隙を有し、中栓の開口の軸心方向において、弁体液封部の頂部が中栓液封部の頂部よりも中栓上面の近くに位置することを特徴とする。
【0019】
本発明のキャップにおいて、中栓液封部と弁体液封部の間の液封用空隙が隘路をなすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
上記構成において、弁体が開弁位置にあると、中栓上面と弁体下面が離隔して両者の間の流路が広くなり、中栓の開口から流れ出る内容物の液体は中栓上面と弁体下面の間の流路を通って速やかに外部へ流れ出る。
【0022】
弁体が開弁位置から閉弁位置に戻る過程で、中栓上面と弁体下面が接近して両者の間の流路が狭くなり、液体の流れに対して中栓の中栓液封部と弁体の弁体液封部が抵抗として作用し、中栓上面と弁体下面の間に残る液体が中栓の中栓液封部と弁体の弁体液封部の間の液封用空隙に残留して液封を形成する。
【0023】
中栓液封部は液封用空隙に残留する液体が中栓の開口に流れることを阻止して液体を液封用空隙に留める。弁体液封部は少なくとも中栓液封部に対向する内周面が液封用空隙に留まる液体に接し、液封用空隙が容器の外部に通じることを遮断する。
【0024】
よって、液封によって外部の空気が容器内に侵入することを確実に遮断でき、容器の内容物の液体と外部の空気との接触を確実に防止できる。
【0025】
また、弁体下面と中栓液封部の間、弁体液封部と中栓上面の間が隘路をなすことで、液体の表面張力による液体を保持する作用が高まり、液体を液封用空隙により確実に保持することができる。
【0026】
また、中栓液封部と弁体液封部の間の液封用空隙が隘路をなすことで、液体の表面張力による液体を保持する作用が高まり、液体を液封用空隙により確実に保持することができる。
【0027】
また、中栓の開口の軸心方向において、弁体液封部の頂部が中栓液封部の頂部よりも中栓上面の近くに位置することで、液封用空隙に留まる液量が少ないときでも弁体液封部は少なくとも頂部が液封用空隙に留まる液体に接し、液封用空隙が容器の外部に通じることを遮断する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施の形態におけるキャップを示す断面図
図2】同実施の形態における中栓を示す平面図
図3図2のA-A矢視断面図
図4】同中栓の背面図
図5】同実施の形態における弁部材を示す平面図
図6図5のB-B矢視断面図
図7】同弁部材の背面図
図8】同中栓の斜視図
図9】同弁部材の斜視図
図10】同中栓に弁部材を組み付けた逆止弁を示す断面図
図11】同実施の形態の逆止弁の作動を示し、(a)は閉弁状態を示す図、(b)は中間状態を示す図、(c)は開弁状態を示す図
図12】同逆止弁を示し、液封状態の一例を示す部分拡大断面図
図13】同逆止弁を示し、液封状態の他の例を示す部分拡大断面図
図14】同逆止弁を示し、液封状態のさらに他の例を示す部分拡大断面図
図15】従来の逆止弁を示す部分拡大断面図
図16】従来のキャップを示す断面図
図17】同キャップの液弁構造を示す部分拡大断面図
図18】同キャップの空気弁構造を示す部分拡大断面図
図19】従来の逆止弁の作動を示し、(a)は閉弁状態を示す図、(b)は中間状態を示す図、(c)は開弁状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施例)
図1から図14に示すように、本実施の形態では、容器本体1が外容器2と内容器3からなる二重構造を有している。容器本体1の口部にはキャップ4を装着している。キャップ4は、キャップ本体5と蓋(図示省略)からなり、キャップ本体5と蓋が一体に成型されている。ここでは、蓋の構造を開示しないが、先に図13で説明したものと同様であり、説明を省略する。
【0030】
キャップ本体5は、外容器2の口部外周に螺合装着しており、頂部に形成した注ぎ口部6に吐出口7を有している。キャップ4の内部には逆止弁8を配置している。
(逆止弁)
逆止弁8は中栓9と弁部材10を備えており、図2から図4に示すように、内容器3の口部を塞ぐ位置に配置する中栓9は、醤油等の内容物の液体が通過する開口11を有し、開口11の周囲が弁座12をなす。中栓9は弁座12の外周に環状溝9aを有し、環状溝9aの外周に拡がる外縁部9bに複数の切欠き部9cを有している。切欠き部9cはキャップ本体5の内部に形成した突起(図示省略)と係合し、開口11の軸心廻りにおいて中栓9を位置決めする。
【0031】
また、中栓9の環状溝9aの内周面には弁部材10を位置決めする突起9dが形成されている。突起9dに対応する位置にある切欠き部9cは、両端縁がそれぞれ21度の角度θβで扇状に拡がっている。
(弁部材)
図5から図7に示すように、弁部材10は、中栓9の開口11および弁座12を覆って配置しており、弁体13と弁体支持部14と空気弁部15を有している。
【0032】
弁体13は、中栓9の開口11および弁座12に対向し、中栓9の開口11の軸心方向において開弁位置と閉弁位置とにわたって弾性変位する。弁体支持部14は、弁体13と一体をなし弁体13の外周縁を支持しており、中栓9の環状溝9aに嵌合装着している。弁体支持部14は内周面に中栓9の突起9dに嵌合する凹部14aを有している。
【0033】
弁体13は、中栓9の開口11を囲み弁体13の外周縁に沿って環状に形成したシール部16と、中栓9の開口11の半径方向においてシール部16よりも外側の位置に形成した液穴17を有している。
(シール部)
シール部16は、図6および図11に示すように、中栓9の開口11の軸心に沿った断面において、弁座12に向けて突出しており、弁体13の一部を湾曲形状に形成したものである。すなわち、シール部16は、弁座12に対向する弁体13の内面側において弁座12に向けて湾曲形状に突出し、弁体13の外面側において溝状に窪んだ形状をなす。
【0034】
シール部16の湾曲形状は、液穴17に臨む側の外側湾曲部18と中栓9の開口11に臨む側の内側湾曲部19との形状が異なっている。すなわち、シール部16は、弁体13に強制力が作用しない自然下の無負荷状態において、湾曲形状の頂点を境とする液穴17の側の外側湾曲部18と中栓9の開口11の側の内側湾曲部19とが非対称な形状をなしている。
【0035】
そして、外側湾曲部18は、内側湾曲部19の曲率半径よりも大きい曲率半径の形状をなし、中栓9の開口11の軸心と平行な方向において外側湾曲部18の厚みが内側湾曲部19の厚みより小さい形状をなす。
【0036】
また、内側湾曲部19は、外側湾曲部18の曲率半径よりも小さい曲率半径の形状をなし、中栓9の開口11の軸心と平行な方向において内側湾曲部19の厚みが外側湾曲部18の厚みより大きい形状をなす。
【0037】
このように、シール部16の外側湾曲部18の曲率半径を内側湾曲部19の曲率半径よりも大きくすることで、シール部16に曲がり剛性が異なる二つの部位、すなわち曲がり剛性が外側湾曲部18よりも大きい内側湾曲部19と曲がり剛性が内側湾曲部19よりも小さい外側湾曲部18が共存する構造を実現できる。
【0038】
シール部16は、湾曲形状の頂点を含むシール面20の一部で、弁座12の弁座面21に当接離間可能である。そして、閉弁位置にある逆止弁8は、シール部16のシール面20が弁座12の弁座面21に圧接する圧接領域と、シール面20と弁座面21が離間する非圧接領域を形成し、圧殺領域と非圧接領域との境の近傍において、非圧接領域の内側湾曲部19の内側シール面20aと弁座面21の間に形成する内側液封用間隙26と、外側湾曲部18の外側シール面20bと弁座面21の間に形成する外側液封用間隙25を有する。
【0039】
液穴17は、シール部16に沿った複数個所において、弁体13と弁体支持部14の肩部とにわたって開口している。
(液封構造)
中栓9は、開口11の周囲に中栓液封部51を有している。中栓液封部51は、中栓9の開口11に臨み、開口縁に沿って環状に形成したもので、中栓上面52から弁体下面53に向けて隆起している。ここでは、中栓液封部51を開口11に臨む位置に形成しているが、開口11の近傍のみならず、開口縁から離れた位置に形成することも可能である。
【0040】
弁体13は、中栓9に対向する弁体下面53に弁体液封部54を有している。弁体液封部54は、開口11の半径方向において中栓液封部51の外側の近傍に位置し、中栓液封部51に沿って環状に形成したもので、弁体下面53から中栓上面52に向けて隆起している。ここでは、弁体液封部54を中栓液封部51の外側の近傍に設けているが、弁体液封部54と中栓液封部51の間を広く離隔させることも可能である。
【0041】
本実施の形態では、中栓9の開口11の軸心方向において、弁体液封部54の頂部が中栓液封部51の頂部よりも中栓上面52の近くに位置する
中栓液封部51と弁体液封部54の間は、液封用空隙55をなす。液封用空隙55は、弁体下面53と中栓液封部51の間および弁体液封部54と中栓上面52の間を含むものであり、さらには、開口11の半径方向において弁体液封部54の外側に拡がる領域も踏まれる。
【0042】
本実施の形態では、液封用空隙55が、弁体下面53と中栓液封部51の間、弁体液封部54と中栓上面52の間、中栓液封部51と弁体液封部54の間において隘路をなす。
【0043】
ここで、弁部材10は基本的に薄膜からなり、弁体13は0.2mmの厚みに形成し、中栓液封部51と弁体液封部54の隆起は0.2mm以下に形成し、液封用空隙55の隘路は0.2mm以下である。このため、弁体13の弁体下面53と中栓9の中栓上面52の間で、液体の表面張力によって液体を保持する作用が、隘路すなわち弁体下面53と中栓液封部51の間、弁体液封部54と中栓上面52の間、中栓液封部51と弁体液封部54の間において強く働く構造をなす。
(空気弁部)
キャップ本体5は、天部に形成した吸気部22に吸気口23が開口しており、吸気口23が外容器2と内容器3の間に連通している。
【0044】
弁部材10の空気弁部15は、弁体支持部14の外周縁からキャップ本体5の半径方向外側へ伸びる扇形状をなし、両端縁がそれぞれ5度の角度θαで広がっている。空気弁部15は吸気口23を閉塞する閉弁位置と吸気口23を開放する開弁位置とにわたって変位し、吸気口23を開閉する。空気弁部15は吸気口23に対向する表面側が平坦面をなし、背面側に格子状のリブ15aを備えている。
【0045】
以下、上記の構成における作用について説明する。内容器3の内容物を吐出する際には、外容器2に圧搾力を加え、この圧搾力を外容器2と内容器3の間の空気層を介して内容器3に与えて内容器3を搾る。
【0046】
内容器3の内圧の高まりにより弁体13は、図11(a)に示す閉弁状態から図11(b)に示す中間状態へ遷移して、中栓9の開口11から離間する方向に移動する。本実施の形態では、駆動圧力に対する弁体13の応答性が優れているので、この過程の途中でシール部16が弁座12から離間し始める。さらに、弁体13は、図11(b)に示す中間状態から図11(c)に示す開弁状態に遷移し、弁体13の移動に伴ってシール部16が弁座12から離間して開弁位置に移動し、内容器3の内容物がシール部16と弁座12の間を通り、キャップ4の吐出口7から押し出される。
【0047】
このとき、本実施の形態では、シール部16が曲がり剛性の大きい内側湾曲部19と曲がり剛性の小さい外側湾曲部18が共存する構造を有しているので、曲がり剛性の小さい外側湾曲部18により、弁体13の移動に追従してシール部16が容易に稼働する優れた応答性を実現できる。
【0048】
外容器2に加える圧搾力を解除すると、弾性変形した外容器2が復元力により元の形状に戻ることで外容器2の内部空間が広がって負圧となる。このため、図1に一点鎖線で示すように、空気弁部15が開いて吸気口23を通して外容器2と内容器3の間に空気が流入する。
【0049】
また、弁体13は、自身の復元力で閉弁方向に移動するとともに、加圧力が解除された内容器3の内部が負圧となることで、容器内外の圧力差を駆動圧として、中栓9の開口11に接近する方向に押圧される。弁体13の移動に伴ってシール部16が弁座12に当接する閉弁位置に移動し、シール面20と弁座面21の間を封止する。
【0050】
このとき、本実施の形態では、シール部16が曲がり剛性の大きい内側湾曲部19と曲がり剛性の小さい外側湾曲部18が共存する構造を有するので、曲がり剛性の大きい内側湾曲部19により、駆動圧を受ける弁体13からシール部16に加わる力を確実にシール面20に作用させて弁座面21とシール面20との間に内容物の漏出を防止する封止に必要な十分な面圧を確保できる。
【0051】
また、図12に示すように、シール面20が弁座面21に圧接する閉弁状態で、シール部16の内周の内側シール面20aと中栓9の弁座面21との間、およびシール部16の外周の外側シール面20bと中栓9の弁座面21との間に毛管現象により内容物の液層24が形成される。
【0052】
すなわち、シール面20と弁座面21の間の非圧接領域において、内側湾曲部19の内側シール面20aと弁座面21の間に形成する内側液封用間隙26と、外側湾曲部18の外側シール面20bと弁座面21の間に形成する外側液封用間隙25に液層24を形成する。この内側シール面20aと外側シール面20bの両側に形成する液層24により内容物の酸化を防止するために必要な第1液封を形成し、シール部16と弁座12の間の通気の遮断を実現する。
【0053】
さらに、弁体13が開弁位置から閉弁位置に戻る過程で、中栓上面52と弁体下面53が接近して両者の間の流路が狭くなり、液体の流れに対して中栓9の中栓液封部51と弁体13の弁体液封部54が抵抗として作用し、中栓上面52と弁体下面53の間に残る液体が中栓9の中栓液封部51と弁体13の弁体液封部54の間の液封用空隙55に層状に保持されて第2液封を形成する。
【0054】
第2液封は、中栓液封部51と弁体液封部54の間の液封用空隙55に保持する液層によって行われるが、中栓9と弁体13の間に残留する液体の状態には、例えば図12に示すように、液体が中栓液封部51と弁体液封部54の間のみを満たして残留する場合や、図13に示すように、中栓液封部51によって留められた液体が中栓9の中栓上面52に層状に拡がり、弁体液封部54の頂部が液層に接触もしく没する状態となる場合や、図14に示すように、液体が中栓液封部51と弁体液封部54の間を満たすとともに、中栓液封部51によって留められた液体の液層が中栓9の中栓上面52に拡がり、弁体液封部54の頂部が液層に没する状態となる場合等々がある。
【0055】
中栓液封部51は液封用空隙55に残留する液体が中栓9の開口11に流れることを阻止して液体を液封用空隙55に留める。弁体液封部54は少なくとも中栓液封部51に対向する内周面の側で液封用空隙55に留まる液体に接し、液封用空隙55が容器本体1の外部に通じることを遮断する。また、図13に示すように、中栓9の開口11の軸心方向において、弁体液封部54の頂部が中栓液封部51の頂部よりも中栓上面52の近くに位置することで、液封用空隙55に留まる液量が少ないときでも弁体液封部54は少なくとも頂部が液封用空隙55に留まる液体に接し、液封用空隙55が容器の外部に通じることを遮断する。
【0056】
よって、第1液封と第2液封によって外部の空気が内容器3の内部に侵入することを確実に遮断でき、内容器3の内容物の液体と外部の空気との接触を確実に防止できる。
【0057】
また、弁体下面53と中栓液封部51の間、弁体液封部54と中栓上面52の間が隘路をなすことで、隘路において液体の表面張力により液体を保持する作用が高まり、隘路に液体を確実に保持して液封用空隙55に液層を確実に留めることができる。
【0058】
また、中栓液封部51と弁体液封部54の間の液封用空隙55が隘路をなすことで、液体の表面張力の作用が高まり、毛管現象により液体を液封用空隙55により確実に保持することができる。さらに、中栓液封部51と弁体液封部54の間の隘路が上下方向に伸びることで、毛管現象により保持する液層が振動等よって漏出することがなくなり、液層をより確実に保持できる。
【符号の説明】
【0059】
4 キャップ
5 キャップ本体
7 吐出口
8 逆止弁
9 中栓
10 弁部材
11 開口
12 弁座
13 弁体
14 弁体支持部
15 空気弁部
16 シール部
17 液穴
18 外側湾曲部
19 内側湾曲部
20 シール面
20a 内側シール面
20b 外側シール面
21 弁座面
24 液層
25 外側液封用間隙
26 内側液封用間隙
51 中栓液封部
52 中栓上面
53 弁体下面
54 弁体液封部
55 液封用空隙
図1
図2
図3
図4
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