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特許7403268感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物および電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物および電子部品
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/023 20060101AFI20231215BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20231215BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20231215BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
G03F7/023
G03F7/004 512
C08G73/10
H05K3/28 C
H05K3/28 D
H05K3/28 F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019183196
(22)【出願日】2019-10-03
(65)【公開番号】P2021060461
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100187207
【弁理士】
【氏名又は名称】末盛 崇明
(72)【発明者】
【氏名】秋元 真歩
(72)【発明者】
【氏名】國土 萌衣
(72)【発明者】
【氏名】緒方 寿幸
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-119504(JP,A)
【文献】特開2020-033277(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0216070(US,A1)
【文献】特開2014-125455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
C08G 73/10
H05K 3/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)および(2)で示される構造の少なくとも一方の構造を有するポリイミド前駆体と、
(B)感光剤と、
を含む感光性樹脂組成物であって、
前記感光性樹脂組成物をシリコン基板上に形成した厚さ2μmの乾燥塗膜を露光量200mJ/cm のi線で照射してなる露光部の25℃の2.38%のTMAH水溶液への溶解速度(式:初期膜厚(nm)/溶解時間(s))が、200~1000nm/minであることを特徴とする、感光性樹脂組成物。
【化1】
(式中、
Xは、4価の有機基であり、
Aは、単結合、Oおよび2価の有機基から選択され、
Bは、フルオロアルコール基であり、
Rは、置換または無置換のアルキル基であり、
n1は、それぞれ独立して、1以上の整数であり、
n2およびn3は、それぞれ独立して、0~4の整数であり、かつn2+n3は1以上であり、
n4は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
n5は、1~4の整数であり、
n6は、0~3の整数である。)
【請求項2】
前記一般式(1)および(2)におけるXが、以下の構造を有する4価の有機基から選択される、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化2】
(上記式中、aは、それぞれ独立して0~2の整数であり、bは、それぞれ独立して1~3の整数である。)
【請求項3】
前記一般式(1)および(2)におけるBで示されるフルオロアルコールの炭素数が、それぞれ独立して1~10であり、フッ素数が、それぞれ独立して1~10である、請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリイミド前駆体におけるカルボキシル基濃度が、300~800g/molである、請求項1~3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリイミド前駆体におけるフッ素濃度が、20~200g/molである、請求項1~4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
密着剤をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記感光剤が、ナフトキノンジアジド化合物である、請求項1~6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
フィルム上に、請求項1~7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物により形成された樹脂層を備えることを特徴とする、ドライフィルム。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物または請求項8に記載のドライフィルムの樹脂層により形成されたものであることを特徴とする、硬化物。
【請求項10】
請求項9に記載の硬化物を形成材料として有することを特徴とする、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有するポリイミド前駆体を含む感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物により形成された樹脂層を備えるドライフィルム、該感光性樹脂組成物により形成された硬化物および該硬化物を形成材料として有するプリント配線板、半導体素子等の電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド前駆体を含む感光性樹脂組成物は、絶縁性、耐熱性、機械強度等に優れた特性を発現することから、様々な分野において広く利用されている。例えば、フレキシブルプリント配線板や半導体素子のバッファーコート膜、ウエハレベルパッケージ(WLP)の再配線層用絶縁膜への適用が進められている。
【0003】
具体的には、アルカリ現像型の感光性樹脂組成物を基板上に塗工、乾燥し、塗膜を形成させた後、パターンマスクを通して露光した後、露光部と未露光部のアルカリ現像液への溶解性の差を利用するアルカリ現像を行うことにより、所望のパターンを有する膜を形成し、このパターン膜を加熱することにより、感光性樹脂組成物に含まれるポリイミド前駆体を閉環反応させ、硬化膜を得ることができる。
【0004】
最近の半導体素子においては、高機能化や小型化の要求に伴い、バッファーコート膜やウエハレベルパッケージの再配線層用絶縁膜に、より微細なパターンを有する硬化膜を形成することが求められ、感光性樹脂組成物には、優れた解像性を有することが求められている。このような要求に対し、特許文献1には、ポリイミド前駆体を含む感光性ポリイミド樹脂組成物が開示されており、特許文献2には、ポリイミド樹脂と同等の特性を有していながら、高解像性を有する感光性樹脂としてポリベンゾオキサゾール前駆体を用いた組成物が開示されている。
【0005】
このような優れた解像性を実現するためには、感光性樹脂組成物からなる塗膜において、露光部のアルカリ現像液に対する溶解速度(以下、単に、露光部溶解速度という)が高く、かつ、未露光部のアルカリ現像液に対する耐溶解性が優れることが重要となる。即ち、露光部と、未露光部とでアルカリ現像液への溶解速度の差、いわゆる溶解コントラストの大きい感光性樹脂組成物が求められている。
【0006】
一方、ポリイミド前駆体を含む感光性樹脂組成物により形成される硬化膜では、閉環反応に伴う反りの発生を抑制すべく、パターン膜の加熱温度を低下させる試みも行われている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-267800公報
【文献】特開2003-241377公報
【文献】特開2018-146964公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1および2に記載の組成物では、最近の半導体素子に要求される解像性を実現するための溶解コントラストを十分に満足し得るものとはいえず、また、特許文献3に記載の組成物では、かかる解像性の課題の他に、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)やγ-ブチロラクトン(GBL)等の高沸点溶剤を用いる必要があることから、低い加熱温度での硬化を実現させても、硬化物中に高沸点性溶剤が残留してしまうという課題があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、種々の溶剤への溶解性(以下、単に溶剤溶解性という)を有するポリイミド前駆体を含み、かつ大きい溶解コントラスト(解像性)を有する感光性樹脂組成物を提供することである。
【0010】
また、本発明の他の目的は、前記感光性樹脂組成物を用いたドライフィルムおよびプリント配線板、半導体素子等の電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、露光部溶解速度を高くすることで優れた溶解コントラストを得ることに着目し、鋭意検討した結果、感光性樹脂組成物の解像性を顕著に改善することのできる、特定の構造を有するポリイミド前駆体を新たに見出し、本発明を完成させるに至った。また、該ポリイミド前駆体は、酢酸-2-メトキシ-1-メチルエチル(PGMEA)や4-メチル-2-ペンタノン等の低沸点溶剤をはじめとする様々な溶剤に対し高い溶解性を有することを見出した。
【0012】
すなわち、本発明の感光性樹脂組成物は、(A)下記一般式(1)および(2)で示される構造の少なくとも一方を有するポリイミド前駆体と、(B)感光剤とを含むことを特徴とする。
【化1】
(式中、
Xは、4価の有機基であり、
Aは、単結合、Oおよび2価の有機基から選択され、
Bは、フルオロアルコール基であり、
Rは、置換または無置換のアルキル基であり、
n1は、それぞれ独立して、1以上の整数であり、
n2およびn3は、それぞれ独立して、0~4の整数であり、かつn2+n3は1以上であり、
n4は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
n5は、1~4の整数であり、
n6は、0~3の整数である。)
【0013】
本発明においては、一般式(1)および(2)におけるXが、以下の構造を有する4価の有機基から選択されることが好ましい。
【化2】
(上記式中、aは、それぞれ独立して0~2の整数であり、bは、それぞれ独立して1~3の整数である。)
【0014】
本発明においては、一般式(1)および(2)におけるBで示されるフルオロアルコールの炭素数が、それぞれ独立して1~10であり、フッ素数が、それぞれ独立して1~10であることが好ましい。
【0015】
本発明においては、ポリイミド前駆体におけるカルボキシル基濃度が、300~800mol/gであることが好ましい。
【0016】
本発明においては、ポリイミド前駆体におけるフッ素濃度が、20~200mol/gであることが好ましい。
【0017】
本発明においては、感光性樹脂組成物は、密着剤をさらに含むことが好ましい。
【0018】
本発明においては、感光剤が、ナフトキノンジアジド化合物であることが好ましい。
【0019】
本発明のドライフィルムは、上記感光性樹脂組成物により形成された樹脂層をフィルム上に備えることを特徴とする。
【0020】
本発明の硬化物は、上記感光性樹脂組成物または上記ドライフィルムの樹脂層により形成されたものであることを特徴とする。
【0021】
プリント配線板や半導体素子等の本発明の電子部品は、上記硬化物を形成材料として有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高い露光部溶解速度を有し、かつ優れた溶解コントラスト(解像性)を実現し得る、感光性樹脂組成物を提供することができる。また、該感光性樹脂組成物に含まれるポリイミド前駆体は、低沸点溶剤をはじめとする様々な溶剤への溶解性に優れるため、上記した残留溶剤の問題を解決することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)下記一般式(1)および(2)で示される構造の少なくとも一方の構造を有するポリイミド前駆体と、(B)感光剤と、を含むことを特徴とする。
【0024】
本発明の感光性樹脂組成物により形成した露光部の25℃の2.38%のTMAH水溶液への溶解速度は、200~1000nm/minであることが好ましく、500~900nm/minであることがより好ましい。
これにより、現像工程条件のコントロールが容易となり、微細パターンの形成が極めて容易となる。
なお、溶解速度の測定は、以下のようにして行う。
シリコン基板上に、感光性樹脂組成物を塗布乾燥し、厚さ2μmの乾燥塗膜を形成させ、この乾燥塗膜に、ブロード光を、パターンを有するフォトマスクを通して照射する。露光量は200mJ/cmとする。
露光後の乾燥塗膜を、25℃の2.38%のTMAH水溶液を用いて現像し、現像速度測定装置(リソテックジャパン(株)製のRDA-790)を用いて、露光部における乾燥塗膜の溶解速度を測定する。
【0025】
以下、本発明の感光性樹脂組成物が含有する成分について詳述する。
【0026】
[(A)ポリイミド前駆体]
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)下記一般式(1)および(2)で示される構造の少なくとも一方の構造を有する
【化3】
【0027】
上記一般式(1)および(2)において、Xは、4価の有機基である。
4価の有機基としては、以下のような構造を有する基を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
なお、構造中のaは、それぞれ独立して選択される、0~2の整数であり、溶剤溶解性という観点からは、0~1であることが好ましく、0であることが特に好ましい。また、構造中のbは、1~3の整数であり、溶剤溶解性および硬化物の透明性という観点からは、2~3であることが好ましく、3であることが特に好ましい。
【化4】
【0028】
上記した4価の有機基の中でも、溶剤溶解性という観点からは、以下の構造を有する基が好ましい。
【化5】
【0029】
上記好ましい構造を有する4価の有機基の具体例として、以下の構造を有する基を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【化6】
【0030】
上記した4価の有機基の中でも、露光部溶解速度および溶解コントラストという観点からは、特に好ましくは、以下の構造を有する基である。
【化7】
【0031】
Aは、単結合、Oおよび2価の有機基から選択される。
2価の有機基は、炭素数が、1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましく、1~3であることがさらに好ましい。
2価の有機基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基およびアルキルエーテル基、ケトン基、エステル基等が挙げられる。
【0032】
上記一般式(1)および(2)において、Bは、フルオロアルコール基である。
フルオロアルコール基の炭素数は、それぞれ独立して、1~10であることが好ましく、3~6であることがより好ましい。
フルオロアルコール基のフッ素数は、それぞれ独立して、1~10であることが好ましく、4~8であることがより好ましい。これにより、溶剤溶解性および硬化物の透明性を向上することができる。
フルオロアルコール基としては、具体的には、以下のような構造を有する基を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【化8】
【0033】
上記一般式(1)および(2)において、Rは、置換または無置換のアルキル基またはアリール基である。
アルキル基の炭素数は、1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましい。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、sec-ペンチル基、n-へキシル基、シクロへキシル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、クロロエチル基、ジクロロエチル基、トリクロロエチル基、ブロモエチル基、ジブロモエチル基、トリブロモエチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシルプロピル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、n-へキシルオキシ基、シクロへキシルオキシ基、n-へプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、トリメチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基等が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、フェナントレニル基、ビフェニル基等が挙げられる。
置換基としては、例えば、アルキル基、フルオロ基やクロロ基等のハロゲンを有するアルキル基、ハロゲン基、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、シアノ基、カルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる。
【0034】
上記一般式(1)および(2)において、n1は、それぞれ独立して、1以上の整数であり、好ましくは、1~20の整数である。
上記一般式(1)において、n2およびn3は、それぞれ独立して、0~4の整数であり、好ましくは、1~2の整数である。なお、n2+n3は1以上である。
上記一般式(1)において、n4は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、好ましくは、0~1の整数である。
上記一般式(2)において、n5は、1~4の整数であり、好ましくは、1~2の整数である。
上記一般式(2)において、n6は、0~3の整数であり、好ましくは、0~1の整数である。
【0035】
上記一般式(1)または(2)を満たす構造としては、以下の構造が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0036】
【化9】
【0037】
【化10】
【0038】
【化11】
【0039】
【化12】
【0040】
【化13】
【0041】
【化14】
【0042】
【化15】
【0043】
【化16】
【0044】
【化17】
【0045】
【化18】
【0046】
【化19】
【0047】
【化20】
【0048】
【化21】
【0049】
【化22】
【0050】
【化23】
【0051】
【化24】
【0052】
ポリイミド前駆体の数平均分子量(Mn)は、2,000~30,000であることが好ましく、5,000~10,000であることがより好ましい。これにより、感光性樹脂組成物における露光部のアルカリ現像液への溶解性と、未露光部のアルカリ現像液への耐溶解性がバランスよく得られる。
また、ポリイミド前駆体の重量平均分子量(Mw)は、4,000~80,000であることが好ましく、10,000~30,000であることがより好ましい。これにより、硬化物におけるクラックの発生をより低減することができる。
さらに、Mw/Mnは、2.0~4.0であることが好ましく、2.3~3.0であることがより好ましい。これにより、現像時に発生する残渣や膨潤が低減される。
なお、本発明において、数平均分子量および重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンで換算した数値である。
【0053】
ポリイミド前駆体を閉環反応させたポリイミドとしてのガラス転移温度(Tg)は、180℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましい。これにより、硬化物として優れた耐熱性が得られる。
本発明において、Tgは、JIS K 7121に準拠して、示査走査熱量測定(DSC)により求める値である。
【0054】
本発明のポリイミド前駆体におけるカルボキシル基濃度は、300~800mol/gであることが好ましく、300~600mol/gであることがより好ましい。これにより、露光部溶解速度および溶解コントラストをより向上することができる。
【0055】
本発明のポリイミド前駆体におけるフッ素濃度は、20~200mol/gであることが好ましく、50~100mol/gであることがより好ましい。これにより、溶剤溶解性と透明性をより向上することができる。
【0056】
本発明の特性を損なわない範囲において、本発明の感光性樹脂組成物は、その一部に、上記した
一般式(1)および(2)で示される構造が閉環した構造を有していてもよく、例えば、以下のような構造が挙げられる。
【化25】
【0057】
ポリイミド前駆体(A)における、一般式(1)および(2)で示される構造が閉環した構造の含有量、即ち、イミド化率は、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。これにより、未露光部のアルカリ現像液への耐溶解性が向上する。
【0058】
[(B)感光剤]
本発明の感光性樹脂組成物は、感光剤を含み、これにより、感光性樹脂組成物のアルカリ現像液への溶解性を調整することができる。感光剤としては、例えば、光酸発生剤および光塩基発生剤等が挙げられる。これらの中でも、溶解コントラストという観点から、光酸発生剤が好ましい。
この感光剤は、公知慣用の割合で配合することができ、例えば、光酸発生剤については、ポリイミド前駆体100質量部に対して、0.1~30質量部、好ましくは1~20質量部の割合で配合することが好ましい。
なお、感光性樹脂組成物は、感光剤を2種以上含んでいてもよい。
【0059】
光酸発生剤は、紫外線や可視光等の光照射により酸を発生する化合物であり、例えば、ナフトキノンジアジド化合物、ジアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、アリールジアゾニウム塩、芳香族テトラカルボン酸エステル、芳香族スルホン酸エステル、ニトロベンジルエステル、芳香族N-オキシイミドスルフォネート、芳香族スルファミドおよびベンゾキノンジアゾスルホン酸エステル等を挙げることができる。
上記した中でも、溶解コントラストという観点から、ナフトキノンジアジド化合物が好ましい。
ナフトキノンジアジド化合物としては、具体的には、例えば、トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼンのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のTS533、TS567、TS583、TS593)、テトラヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のBS550、BS570、BS599)、および4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]-α,α-ジメチルベンジル}フェノールのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のTKF-428、TKF-528)等が挙げられる。
【0060】
光塩基発生剤は、紫外線や可視光等の光照射により分子構造が変化することにより、または分子が開裂することにより、1種以上の塩基性物質(2級アミンおよび3級アミン等)を生成する化合物である。
光塩基発生剤としては、イオン型光塩基発生剤でもよく、非イオン型光塩基発生剤でもよいが、感光性樹脂組成物の感度という観点からは、イオン型光塩基発生剤が好ましい。
イオン型光塩基発生剤としては、例えば、芳香族成分含有カルボン酸と3級アミンとの塩等が挙げられ、この市販品としては、和光純薬社製イオン型PBGのWPBG-082、WPBG-167、WPBG-168、WPBG-266およびWPBG-300等が挙げられる。
非イオン型の光塩基発生剤としては、例えば、α-アミノアセトフェノン化合物、オキシムエステル化合物や、N-ホルミル化芳香族アミノ基、N-アシル化芳香族アミノ基、ニトロベンジルカーバメイト基およびアルコオキシベンジルカーバメート基等の置換基を有する化合物等が挙げられる。
その他の光塩基発生剤として、和光純薬社製のWPBG-018(商品名:9-anthrylmethyl N,N’-diethylcarbamate)、WPBG-027(商品名:(E)-1-[3-(2-hydroxyphenyl)-2-propenoyl]piperidine)、WPBG-140(商品名:1-(anthraquinon-2-yl)ethyl imidazolecarboxylate)およびWPBG-165等が挙げられる。
【0061】
[架橋剤]
本発明の感光性樹脂組成物は架橋剤を含有することができる。架橋剤を添加することで感光性樹脂組成物の硬化温度を低下することができる。架橋剤は、特に限定されず、公知慣用の架橋剤が挙げられる。
本明細書においてその架橋剤はポリイミド前駆体中のカルボキシル基と反応し架橋構造を形成し得る化合物であることが好ましい。
ポリイミド前駆体またはポリイミド中の水酸基と反応する化合物としては、エポキシ基等の環状エーテル基、エピスルフィド基等の環状チオエーテル基を有する架橋剤、メチロール基等の炭素数1~12のアルキレン基にヒドロキシル基が結合したアルコール性水酸基を有する架橋剤、アルコキシメチル基等のエーテル結合を有する化合物、トリアジン環構造を有する架橋剤、および尿素系架橋剤が挙げられる。
これらの中でも、環状エーテル基、特には、エポキシ基を有する架橋剤およびアルコール性水酸基、特には、ヒドロキシル基が結合したメチロール基を有する架橋剤が好ましい。
架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の感光性樹脂組成物における架橋剤の配合量は、ポリイミド前駆体の不揮発成分100質量部に対し、0.1~30質量部であることが好ましい。また、0.1~20質量部がより好ましい。
【0062】
(エポキシ基を有する架橋剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、架橋剤としてエポキシ基を有する架橋剤を含有することが好ましい。エポキシ基を有する架橋剤は、ポリイミド前駆体またはポリイミドの水酸基と熱反応し、架橋構造を形成する。エポキシ基を有する架橋剤の官能基数は、2~4であることが好ましい。感光性樹脂組成物が、エポキシ基を有する架橋剤を含有することにより、低温硬化性が得られ、形成される乾燥塗膜の溶解コントラストをより改善できる。
エポキシ基を有する架橋剤のなかでも、ナフタレン骨格を有する2官能以上のエポキシ化合物が好ましい。柔軟性および耐薬品性により優れた絶縁膜が得られるだけでなく、柔軟性と二律背反の関係にある低CTE化が可能となり、絶縁膜の反りやクラックの発生を抑制することができる。また、ビスフェノールA型エポキシ化合物も柔軟性の観点から好適に用いることができる。
【0063】
(メチロール基を有する架橋剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、架橋剤としてメチロール基を有する架橋剤を含有することが好ましい。メチロール基を有する架橋剤としては、メチロール基を2以上有することが好ましく、下記一般式(5)で表される化合物であることがさらに好ましい。
【化26】
(一般式(5)中、RA1は2~10価の有機基を示す。RA2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を示す。rは2~10の整数を示す。)
【0064】
前記一般式(5)中、RA1は、置換基を有していてもよい炭素数1~3のアルキレン基であることが好ましい。
【0065】
前記一般式(5)中、RA2は、水素原子であることが好ましい。
【0066】
前記一般式(5)中、rは、2~4の整数であることが好ましく、2であることがより好ましい。
【0067】
また、メチロール基を有する架橋剤は、フッ素原子を有することが好ましく、トリフルオロメチル基を有することがより好ましい。前記フッ素原子または前記トリフルオロメチル基は、前記一般式(5)中のRA1が示す2~10価の有機基が有することが好ましく、RA1はジ(トリフルオロメチル)メチレン基であることが好ましい。また、メチロール基を有する架橋剤は、ビスフェノール構造を有することが好ましく、ビスフェノールAF構造を有することがより好ましい。
【0068】
[可塑剤]
本発明の感光性樹脂組成物は、可塑剤を含有することが好ましい。本発明においては、可塑剤の可塑作用、すなわち、ポリマー分子鎖間の凝集作用を削減し、分子鎖間の移動性、柔軟性が向上したことによって、ポリイミド前駆体の熱分子運動が向上し、環化反応が促進されることで低温硬化性が付与されると考えられる。可塑剤としては、可塑性を向上する化合物であれば特に限定されず、2官能(メタ)アクリル化合物、スルホンアミド化合物、フタル酸エステル化合物、マレイン酸エステル化合物、脂肪族二塩基酸エステル、リン酸エステル、クラウンエーテル等のエーテル化合物等が挙げられる。中でも、2官能(メタ)アクリル化合物であることが好ましい。2官能(メタ)アクリル化合物は、組成物中の他の成分と架橋構造を形成しない化合物であることが好ましい。また、2官能(メタ)アクリル化合物は、硬化物の内部応力をより緩和する観点から、自己重合により直鎖構造を形成する化合物であることが好ましい。本発明の感光性樹脂組成物における可塑剤の配合量としては、ポリイミド前駆体の不揮発成分100質量部に対し、3~40質量部であることが好ましい。
【0069】
2官能の(メタ)アクリル化合物の中でも、ジオールの(エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等の)アルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレートや2官能のポリエステル(メタ)アクリレートが好ましく、2官能のポリエステル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0070】
ジオールのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレートとしては、具体的にはジオールをアルキレンオキシド変性した後に末端に(メタ)アクリレートを付加させたものが好ましく、ジオールに芳香環を有するものがさらに好ましい。例えば、ビスフェノールA EO(エチレンオキサイド)付加物ジアクリレート、ビスフェノールA PO(プロピレンオキサイド)付加物ジアクリレート等が挙げられる。ジオールのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレートの具体的な構造を下記一般式(6)に示すがこれに限定されるものではない。
【化27】
【0071】
一般式(6)中、p+qは2以上であり、2~40であることが好ましく、3.5~25であることがより好ましい。
【0072】
[密着剤]
本発明の感光性樹脂組成物は、密着剤を含むことが好ましく、これにより、基材等との接着性を向上することができる。密着剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤およびアルミニウムカップリング剤を使用することができる。
シランカップリング剤としては、例えば、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、3―ウレイドプロピルトリアルコキシシランおよびフェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
チタネートカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル)ビス(ジ-トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネートおよびビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。
アルミニウムカップリング剤としては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる
上記した中でも、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシランが基材への密着性を向上させ現像速度への悪影響を及ぼさないという理由から好ましい。
【0073】
本発明の感光性樹脂組成物における密着剤の配合量としては、ポリイミド前駆体の不揮発成分100質量部に対し、0.1~10質量部であることが好ましい。
【0074】
[熱酸発生剤、増感剤、その他の成分]
本発明の感光性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、更にポリイミド前駆体の環化反応を促進するために公知の熱酸発生剤や、光感度を向上させるために公知の増感剤等を配合することもできる。更に、本発明の感光性樹脂組成物に加工特性や各種機能性を付与するために、その他に様々な有機または無機の低分子または高分子化合物を配合してもよい。例えば、界面活性剤、レベリング剤、微粒子等を用いることができる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、シリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子が含まれる。また、本発明の感光性樹脂組成物に各種着色剤および繊維等を配合してもよい。
【0075】
[溶剤]
本発明の感光性樹脂組成物は、溶剤を含んでいてもよい。本発明において、溶剤は、特に限定されるものではないが、パターン膜の加熱温度を低下させた場合の残留性を考慮すると、沸点200℃以下の溶剤が好ましい。
このような融点の溶剤としては、酢酸-2-メトキシ-1-メチルエチル(PGMEA)、4-メチル-2-ペンタノン、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、へキサメチルスルホキシド、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル 、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、エチルセロソルブアセテート、シクロへキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及び2-ヘプタノンが挙げられる。
【0076】
感光性樹脂組成物における溶剤の含有量は、特に限定されるものではなく、その用途に応じ適宜変更することが好ましいが、例えば、感光性樹脂組成物に含まれるポリイミド前駆体100質量部に対し、200~2000質量部以下とすることができる。
なお、感光性樹脂組成物は、溶剤を2種以上含んでいてもよい。
【0077】
[ドライフィルム]
本発明のドライフィルムは、フィルム(例えば支持(キャリア)フィルム)と、このフィルム上に、上記感光性樹脂組成物を用いて形成された樹脂層とを備える。また、ドライフィルムは、フィルム上に形成された樹脂層上に、さらに保護(カバー)するフィルム(いわゆる保護フィルム)を備えていてもよい。
【0078】
(フィルム)
フィルムは、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ならびにポリスチレンフィルム等の熱可塑性樹脂からなるフィルムを使用することができる。
これらの中でも、耐熱性、機械的強度および取扱性等の観点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。また、これらフィルムの積層体をフィルムとして使用することもできる。
【0079】
また、上記したような熱可塑性樹脂フィルムは、機械的強度向上の観点から、一軸方向または二軸方向に延伸されたフィルムであることが好ましい。
【0080】
フィルムの厚さは、特に制限されるものではないが、例えば、10~150μmとすることができる。
【0081】
(樹脂層)
樹脂層は、上記感光性樹脂組成物を用いて形成されたものであり、その厚さは、特に限定されるものではなく、用途に応じ適宜変更することが好ましいが、例えば、1μm以上、150μm以下とすることができる。
【0082】
樹脂層は、フィルム上に、感光性樹脂組成物を、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーターおよびスプレーコーター等により、均一な厚さに塗布し、乾燥させることにより形成することができる。
また、他の実施形態においては、樹脂層は、保護フィルム上に、感光性樹脂組成物を塗布、乾燥させることにより形成することができる。
【0083】
(保護フィルム)
本発明においては、樹脂層の表面に塵が付着するのを防ぐ等の目的で、樹脂層の表面に剥離可能な保護フィルムを積層することが好ましい。
【0084】
剥離可能な保護フィルムとしては、保護フィルムを剥離するときに樹脂層とフィルムとの接着力よりも樹脂層と保護フィルムとの接着力がより小さくなるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムおよび表面処理した紙等を用いることができる。
【0085】
保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、10μm以上、150μm以下とすることができる。
【0086】
[硬化物]
本発明の硬化物は、上記感光性樹脂組成物を用いて形成されたものであることを特徴とする。また、該硬化物は、パターンが形成されているものであってもよい。
以下、本発明の硬化物の製造方法を説明する。
【0087】
[第1工程]
本発明の硬化物の製造方法は、感光性樹脂組成物を、基材上に塗布し塗膜を形成し、これを乾燥することにより、または上記ドライフィルムから樹脂層を基材上に転写することにより、乾燥塗膜を形成させる工程を含む。
【0088】
感光性樹脂組成物の基材上への塗布方法は、特に限定されず、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーターおよびスクリーン印刷機等を用いて塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法、ならびにインクジェット法等が挙げられる。
【0089】
塗膜の乾燥方法としては、風乾、オーブンまたはホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥等の方法が用いられる。
また、塗膜の乾燥は、感光性樹脂組成物中のポリイミド前駆体の閉環が起こらないような条件で行うことが望ましい。
具体的には、自然乾燥、送風乾燥、あるいは加熱乾燥を、70~140℃で1~30分の条件で行うことが好ましい。また、操作方法が簡便であるため、ホットプレートを用いて、1~20分乾燥を行うことが好ましい。
また、真空乾燥も可能であり、この場合は、室温で20分~1時間の条件で行うことができる。
【0090】
ドライフィルムの基材上への転写は、真空ラミネーター等を用いて、加圧および加熱下で行うことが好ましい。このような真空ラミネーターを使用することにより、回路形成された基板を用いた場合に、回路基板表面に凹凸があっても、ドライフィルムの樹脂層が真空条件下で回路基板の凹凸に充填するため、気泡の混入がなく、また、基板表面の凹部の穴埋め性も向上する。
【0091】
基材としては、あらかじめ銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキシド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR-4等)の銅張積層板、その他、金属基板、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0092】
[第2工程]
次に、上記塗膜を、パターンを有するフォトマスクを通して選択的に、あるいはフォトマスクを通さず非選択的に、活性エネルギー線を照射し、露光する。
【0093】
活性エネルギー線は、例えば(B)感光剤としての光酸発生剤を活性化させることができる波長のものを用いる。具体的には活性エネルギー線は、最大波長が350~410nmの範囲にあるものが好ましい。
露光量は膜厚等によって異なるが、一般には10~1000mJ/cm、好ましくは20~800mJ/cmの範囲内とすることができる。
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。
【0094】
[第3工程]
該工程は、必要に応じ行われるものであり、塗膜を短時間加熱することにより、未露光部のポリイミド前駆体の一部を閉環してもよい。ここで、閉環率は、30%程度である。加熱時間および加熱温度は、ポリイミド前駆体の種類、塗布膜厚、(B)感光剤の種類によって適宜変更する。
【0095】
[第4工程]
次いで、上記露光後の塗膜を、現像液により処理し、塗膜中の露光部分を除去することにより、パターン膜を得ることができる。
該工程においては、従来より知られているフォトレジストの現像方法、例えば回転スプレー法、パドル法、超音波処理を伴う浸せき法等の中から任意の方法を選択することができる。
【0096】
現像液としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の四級アンモニウム塩類等の水溶液を挙げることができる。
また、必要に応じて、これらにメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加してもよい。
【0097】
その後、必要に応じて塗膜をリンス液により洗浄してパターン膜を得る。
リンス液としては、蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等を単独または組み合わせて用いることができる。また、現像液として上記溶剤を使用してもよい。
【0098】
[第5工程]
次いで、パターン膜を加熱して硬化塗膜(硬化物)を得る。
該加熱工程により、感光性樹脂組成物に含まれるポリイミド前駆体は、環化反応し、ポリイミドとなる。
【0099】
加熱温度は、硬化物の反り防止という観点からは、120~250℃であることが好ましく、150~200℃であることがより好ましい。
加熱には、例えば、ホットプレート、オーブンおよび温度プログラムを設定できる昇温式オーブンを用いることができる。
加熱雰囲気(気体)、空気下であってもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガス下であってもよい。
【0100】
[用途]
本発明の感光性樹脂組成物の用途は特に限定されず、例えば、塗料、印刷インキ、接着剤、表示装置、半導体素子、電子部品、光学部品および建築材料等の形成材料として好適に用いられる。
【0101】
具体的には、表示装置の形成材料としては、カラーフィルター、フレキシブルディスプレイ用フィルム、レジスト材料および配向膜等における、層形成材料および画像形成材料が挙げられる。
半導体素子の形成材料としては、レジスト材料およびバッファーコート膜、ウエハレベルパッケージ(WLP)の再配線層用絶縁膜等における、層形成材料が挙げられる。
電子部品の形成材料としては、プリント配線板、層間絶縁膜および配線被覆膜等における、封止材料および層形成材料が挙げられる。
また、光学部品の形成材料としては、ホログラム、光導波路、光回路、光回路部品および反射防止膜等における、光学材料や層形成材料が挙げられる。
さらに、建築材料としては、塗料、コーティング剤等に用いることができる。
【0102】
本発明の感光性樹脂組成物は、主にパターン形成材料として用いられ、特に半導体装置、表示体装置および発光装置の表面保護膜、バッファーコート膜、層間絶縁膜、再配線用絶縁膜、フリップチップ装置用保護膜、バンプ構造を有する装置の保護膜、多層回路の層間絶縁膜、受動部品用絶縁材料、ソルダーレジストやカバーレイ膜等のプリント配線板の保護膜、ならびに液晶配向膜等として好適に利用できる。
【実施例
【0103】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0104】
(参考例1:ポリイミド前駆体A-1の合成)
撹拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中にN-メチルピロリドン53g仕込み、
3,3‘-ビス(1-ヒドロキシ-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル)-4,4’-メチレンジアニリン13.95g(26.30mmol)を撹拌溶解した。
モノマーが完全に溶解したことを確認した後、5,5’-[1-メチル-1,1-エタンジイルビス(1,4-フェニレン)ビスオキシ]ビス(イソベンゾフラン-1,3-ジオール)(BPADA)13.95g(26.30mmol)を固体のまま5分間かけて加え、室温で1時間撹拌を続けた。
その後、攪拌溶液に5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物0.85g(5.19mmol)を固体のまま加え、室温で16時間攪拌した。撹拌した溶液を1Lのイオン交換水(比抵抗値18.2MΩ・cm)に投入し、析出物を回収した。
回収後、減圧乾燥してノルボルネン末端を有する、下記の繰り返し構造を有するポリイミド前駆体A-1を得た。ポリイミド前駆体A-1の数平均分子量(Mn)は6,800、重量平均分子量(Mw)は16,790、Mw/Mnは2.47であった。また、得られたポリイミド前駆体A-1のカルボキシル基濃度は525g/mol、フッ素濃度は88g/molであった。
【化28】
【0105】
(参考例2:ポリイミド前駆体A-2の合成)
撹拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中にN-メチルピロリドン53g仕込み、3,3‘-ビス(1-ヒドロキシ-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル)-2,2’-ジメチルベンジジン14.40g(26.45mmol)を撹拌溶解した。
モノマーが完全に溶解したことを確認した後、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)10.46g(23.55mmol)を固体のまま10分間かけて加え、室温で1時間撹拌を続けた。
その後、攪拌溶液に5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物0.96g(5.82mmol)を固体のまま加え、室温で16時間攪拌した。
撹拌した溶液を1Lのイオン交換水(比抵抗値18.2MΩ・cm)に投入し、析出物を回収した。
回収後、減圧乾燥してノルボルネン末端を有する、下記の繰り返し構造を有するポリイミド前駆体A-2を得た。ポリイミド前駆体A-2の数平均分子量(Mn)は8,700、重量平均分子量(Mw)は22,100、Mw/Mnは2.54であった。また、得られたポリイミド前駆体A-2のカルボキシル基濃度は494g/mol、フッ素濃度は55g/molであった。
【化29】
【0106】
(参考例3:ポリイミド前駆体A-3の合成)
撹拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中にN-メチルピロリドン150g仕込み、3,3‘-ビス(1-ヒドロキシ-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル)-4,4’-メチレンジアニリン8.43g(15.91mmol)を撹拌溶解した。
モノマーが完全に溶解したことを確認した後、6FDA1.88g(4.23mmol)とBPADA5.14g(9.87mmol)を固体のまま10分間かけて加え、室温で1時間撹拌を続けた。
その後、攪拌溶液に5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物0.59g(3.62mmol)を固体のまま加え、室温で16時間攪拌した。
撹拌した溶液を1Lのイオン交換水(比抵抗値18.2MΩ・cm)に投入し、析出物を回収した。
回収後、減圧乾燥してノルボルネン基末端を有する、下記の繰り返し構造を有するポリイミド前駆体A-3を得た。ポリイミド前駆体A-3の数平均分子量(Mn)は9,500、重量平均分子量(Mw)は24,800、Mw/Mnは2.61であった。また、得られたポリイミド前駆体A-3のカルボキシル基濃度は514g/mol、フッ素濃度は73g/molであった。
【化30】
【0107】
(参考例4:ポリイミド前駆体A-4の合成)
撹拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中にN-メチルピロリドン150g仕込み、
3,3‘-ビス(1-ヒドロキシ-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル)-4,4’-メチレンジアニリン8.33g(15.71mmol)を撹拌溶解した。
モノマーが完全に溶解したことを確認した後、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)1.33g(4.29mmol)とBPADA5.21g(10.01mmol)を固体のまま10分間かけて加え、室温で1時間撹拌を続けた。
その後、攪拌溶液に5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物0.46g(2.82mmol)を固体のまま加え、室温で16時間攪拌した。撹拌した溶液を1Lのイオン交換水(比抵抗値18.2MΩ・cm)に投入し、析出物を回収した。
回収後、減圧乾燥してノルボルネン末端を有する、下記の繰り返し構造を有するポリイミド前駆体A-4を得た。ポリイミド前駆体A-4の数平均分子量(Mn)は10,200、重量平均分子量(Mw)は24,680、Mw/Mnは2.42であった。また、得られたポリイミド前駆体A-1のカルボキシル基濃度は494g/mol、フッ素濃度は82g/molであった。
【化31】
【0108】
(参考例5:ポリイミド前駆体A-5の合成)
撹拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中にN-メチルピロリドン100g仕込み、ジアミノジフェニルエーテル5.16g(25.75mmol)を撹拌溶解した。
モノマーが完全に溶解したことを確認した後、ピロメリット酸無水物(PMDA)5.29g(24.25mmol)を固体のまま5分間かけて加え、室温で1時間撹拌を続けた。
その後、攪拌溶液に5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物0.49g(2.98mmol)を固体のまま加え、室温で16時間攪拌した。
撹拌した溶液を600mLのイオン交換水(比抵抗値18.2MΩ・cm)に投入し、析出物を回収した。回収後、減圧乾燥してノルボルネン末端を有する、下記の繰り返し構造を有するポリイミド前駆体A-5を得た。ポリイミド前駆体A-5の数平均分子量(Mn)は6,800、重量平均分子量(Mw)は17,000、Mw/Mnは2.51であった。また、得られたポリイミド前駆体A-1のカルボキシル基濃度は210g/molであった。
【化32】
【0109】
(参考例6:ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成)
攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン10.0g(27.3mmol)を、N-メチルピロリドン1500g中で撹拌溶解した。
その後、フラスコを氷浴に浸し、フラスコ内を0~5℃に保ちながら、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸クロリド8.78g(29.8mmol)を固体のまま10分間かけて加え、氷浴中で30分間撹拌した。
その後、室温で18時間撹拌を続けた。撹拌した溶液を700mLのイオン交換水(比抵抗値18.2MΩ・cm)に投入し、析出物を回収した。
その後、得られた固体をアセトン420mLに溶解させ、1Lのイオン交換水に投入した。
析出した個体を回収後、減圧乾燥してカルボキシル基末端のポリベンゾオキサゾール前駆体を得た。Mwは29,500、Mnは11,600、Mw/Mnは2.54であった。
【0110】
<実施例1>
上記参考例1において得られたポリイミド前駆体A-1を100質量部、ナフトキノンジアジド化合物(三宝化学研究所社製、TKF-528)を20質量部、密着剤(信越化学工業社製、KBM-573)を5質量部およびPGMEAを400質量部となるように、遮光容器に投入、攪拌し、感光性樹脂組成物を含むワニスを得た。
【0111】
<実施例2~4および比較例1~2>
ポリイミド前駆体A-1を、表1に示すように、ポリイミド前駆体A-2~A-5、またはポリベンゾオキサゾール前駆体に変更した以外は、実施例1と同様にしてワニスを得た。
【0112】
<<溶解性評価>>
上記実施例および比較例において得られたワニスを目視により観察し、以下の評価基準に基づいて、溶解性を評価した。評価結果を表1にまとめた。
また、溶剤を、4-メチル-2-ペンタノンに変更し、上記同様溶解性の評価を行い、その結果を表1にまとめた。
(評価基準)
〇:溶け残り(沈殿物)が存在せず、またワニスの濁りが見られなかった。
△:溶け残りは存在しなかったが、ワニスの濁りが見られた。
×:溶け残りが存在した。
【0113】
<<溶解速度評価>>
上記実施例において得られたワニス、およびPGMEAをγ-ブチロラクトンに変更した比較例1~2において得られたワニスを用意した。
このワニスを、スピンコーターを用いてシリコン基板に約2μmの膜厚で塗布した。
次いで、ホットプレートを用いて110℃で3分乾燥し、乾燥塗膜を得た。塗膜に高圧水銀ランプを用い、乾燥塗膜の半分に200mJ/cmのi線を照射した。露光後2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液に浸し、溶解する時間を測定し、以下の式で溶解速度を算出し、露光部および未露光部の溶解速度を以下の評価基準に基づいて、評価した。評価結果を表1にまとめた。
また、求められた露光部の溶解速度および未露光部の溶解速度から、溶解コントラスト(未露光部の溶解速度/露光部の溶解速度)を求め、以下の評価基準に基づいて、評価した。評価結果を表1にまとめた。
溶解速度=初期膜厚(nm)/溶解時間(s)
(露光部溶解速度評価基準)
◎:溶解速度500nm/s以上、1000nm/s以下
○:溶解速度200nm/s以上、500nm/s未満
×:溶解速度200nm/s未満、または1000nm/s超
(未露光部溶解速度評価基準)
◎:溶解速度5nm/s未満、
○:溶解速度5nm/s以上、20nm/s未満
×:溶解速度20nm/s以上
(溶解コントラスト評価基準)
◎:溶解コントラストが200以上
○:溶解コントラストが100以上、200未満
×:溶解コントラストが100未満
【0114】
<<解像性評価>>
上記溶解速度評価と同様に、上記実施例において得られたワニス、およびPGMEAをγ-ブチロラクトンに変更した比較例1~2において得られたワニスを用意した。
このワニスを、スピンコーターを用いてシリコン基板に約2μmの膜厚で塗布した。
次いで、ホットプレートを用いて110℃で3分乾燥し、乾燥塗膜を得た。塗膜に高圧水銀ランプを用い、パターンが刻まれたマスクを介して200mJ/cmのブロード光を照射した。露光後2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液にて60秒現像し、水でリンスし、ポジ型パターン膜を得た。
マスクに刻まれたパターンのL/S(ライン/スペース)を、1μm/1μm~30μm/30μm(但し、L=Sであり、LおよびSは整数)まで変更していき、電子顕微鏡(SEM「JSM-6010」)により観察される
露光部をスカム(現像残渣)なくパターニングできるポリ型パターン膜を形成することのできる、最少L/Sを求め、以下の評価基準に基づいて、評価した。評価結果を表1にまとめた。
(評価基準)
◎:パターンのL/Sが2μm/2μmの場合であっても、露光部をスカム(現像残渣)なくパターニングできるポリ型パターン膜を形成することができた。
○:パターンのL/Sが2μm/2μmの場合には、露光部をスカム(現像残渣)なくパターニングできるポリ型パターン膜を形成することができなかったが、パターンのL/Sが3μm/3μmの場合には、できた。
△:パターンのL/Sが3μm/3μmの場合には、露光部をスカム(現像残渣)なくパターニングできるポリ型パターン膜を形成することができなかったが、パターンのL/Sが5μm/5μmの場合には、できた。
×:パターンのL/Sが5μm/5μmの場合に、露光部をスカム(現像残渣)なくパターニングできるポリ型パターン膜を形成することができなかった。
【0115】
<<ガラス転移温度(Tg)測定>>
上記溶解速度評価と同様に、上記実施例において得られたワニス、およびPGMEAをγ-ブチロラクトンに変更した比較例1~2において得られたワニスを用意した。
このワニスを、スピンコーターを用いてシリコン基板に塗布した。次いで、ホットプレートで110℃3分乾燥し、その後、イナートガスオーブン(光洋サーモシステム(株)製CLH-21CD-S)中、窒素雰囲気下、110℃で10分加熱した後、150℃で30分間保持、320℃で60分加熱して膜厚約10μmの硬化膜を得た。得られた硬化膜を、基板から剥がし、TAインスツルメント社のDSCでTgを測定した。測定結果を表1にまとめた。
【0116】
【表1】
【0117】
上記表1中に示す評価結果から明らかなように、一般式(1)および(2)で示される構造の少なくとも一方を有するポリイミド前駆体を含む感光性樹脂組成物は、溶解速度および溶解コントラストに優れ、高い解像性を達成することができることがわかる。また、該ポリイミド前駆体は、PGMEAおよび4-メチル-2-ペンタノン等の低沸点溶剤への溶解性が高いことがわかる。さらに、該感光性樹脂組成物により形成される硬化物は、高いTgを有しており、耐熱性にも優れることがわかる。