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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20231215BHJP
【FI】
H01L21/306 R
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020000926
(22)【出願日】2020-01-07
(65)【公開番号】P2021111654
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中澤 貴士
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼松 祐助
(72)【発明者】
【氏名】橋本 佑介
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-057677(JP,A)
【文献】特開2008-183550(JP,A)
【文献】特開2015-159331(JP,A)
【文献】国際公開第2019/239970(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0319465(US,A1)
【文献】特表2013-526056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸を昇温する昇温部と、
昇温された硫酸と、水分を含む液体とを混合して混合液を生成する混合部と、
基板処理部内で基板に前記混合液を吐出する吐出部と、
を備え、
前記混合部は、
昇温された硫酸が流れる硫酸供給ラインと前記液体が流れる液体供給ラインとが合流する合流部と、
前記合流部における昇温された硫酸と前記液体との反応を抑える反応抑制機構とを有し、
前記反応抑制機構は、前記液体供給ラインに設けられるU字状の配管バッファ部で構成される
基板処理装置。
【請求項2】
前記配管バッファ部の最上部は、前記合流部よりも高い位置に設けられる
請求項に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記配管バッファ部の最上部は、前記合流部における前記液体供給ラインの口径以上に前記合流部よりも高い位置に設けられる
請求項に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記配管バッファ部は、前記合流部から前記吐出部に前記混合液を供給する混合液供給ラインに対して、前記合流部における前記混合液供給ラインの口径以上に離間する
請求項またはに記載の基板処理装置。
【請求項5】
硫酸を昇温する昇温部と、
昇温された硫酸と、水分を含む液体とを混合して混合液を生成する混合部と、
基板処理部内で基板に前記混合液を吐出する吐出部と、
を備え、
前記混合部は、
昇温された硫酸が流れる硫酸供給ラインと前記液体が流れる液体供給ラインとが合流する合流部と、
前記合流部における昇温された硫酸と前記液体との反応を抑える反応抑制機構とを有し、
前記反応抑制機構は、昇温された硫酸よりも温度の低い硫酸で前記合流部を置換する硫酸置換部で構成される
板処理装置。
【請求項6】
前記反応抑制機構は、前記液体供給ラインに設けられるオリフィスで構成される
請求項1~5のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記オリフィスの内径は、前記合流部における前記液体供給ラインの口径の1/5~1/2である
請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記反応抑制機構は、前記液体供給ラインをガスで置換するガス置換部で構成される
請求項1~7のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記反応抑制機構は、昇温された硫酸を前記硫酸供給ラインで冷却する冷却部で構成される
請求項1~8のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記液体は、前記合流部に対して下向きに流れる
請求項1~のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記液体は、純水である
請求項1~10のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記液体は、過酸化水素水を含む
請求項1~10のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記液体は、機能水を含む
請求項1~10のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハ(以下、ウェハとも呼称する。)などの基板上に形成される膜に2種類の材料(たとえば、配線材料および拡散防止膜)が含まれる場合に、一方の材料を選択的にエッチングする技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-285508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、混合液によるエッチング処理が終了する際に、混合部で突沸反応が発生することを抑制することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による基板処理装置は、昇温部と、混合部と、吐出部とを備える。昇温部は、硫酸を昇温する。混合部は、昇温された硫酸と、水分を含む液体とを混合して混合液を生成する。吐出部は、基板処理部内で基板に前記混合液を吐出する。また、前記混合部は、昇温された硫酸が流れる硫酸供給ラインと前記液体が流れる液体供給ラインとが合流する合流部と、前記合流部における昇温された硫酸と前記液体との反応を抑える反応抑制機構とを有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、混合液によるエッチング処理が終了する際に、混合部で突沸反応が発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す模式図である。
図2図2は、処理ユニットの具体的な構成例を示す模式図である。
図3図3は、実施形態におけるエッチング処理の概要を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る混合液供給部の構成を示す図である。
図5図5は、実施形態に係る反応抑制機構の構成を示す図である。
図6図6は、実施形態に係るエッチング処理における各部の挙動パターンの具体例を示すタイミングチャートである。
図7図7は、実施例および参考例の反応停止時間を示す図である。
図8図8は、実施形態の変形例1に係る反応抑制機構の構成を示す図である。
図9図9は、変形例1および参考例の反応停止時間を示す図である。
図10図10は、実施形態の変形例2に係る反応抑制機構の構成を示す図である。
図11図11は、実施形態の変形例2に係るエッチング処理における各部の挙動パターンの具体例を示すタイミングチャートである。
図12図12は、実施形態の変形例2に係る反応抑制機構の動作を説明するための図である。
図13図13は、実施形態の変形例3に係る反応抑制機構の構成を示す図である。
図14図14は、実施形態の変形例3に係るエッチング処理における各部の挙動パターンの具体例を示すタイミングチャートである。
図15図15は、実施形態の変形例4に係る反応抑制機構の構成を示す図である。
図16図16は、実施形態の変形例4に係るエッチング処理における各部の挙動パターンの具体例を示すタイミングチャートである。
図17図17は、実施形態の変形例5に係る反応抑制機構の構成を示す図である。
図18図18は、実施形態の変形例6に係る反応抑制機構の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する基板処理装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本開示が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0009】
従来、半導体ウェハ(以下、ウェハとも呼称する。)などの基板上に形成される膜に2種類の材料(たとえば、配線材料および拡散防止膜)が含まれる場合に、一方の材料を選択的にエッチングする技術が知られている。そして、一方の材料を高い選択性でエッチングするために、昇温された硫酸などを複数種類混合した混合液をエッチング液として用いる場合がある。
【0010】
一方で、硫酸などの薬液を配管内で混合させて混合液を生成する場合、混合部で薬液が反応して沸点まで温度が上昇し、混合液が突沸する場合があった。そのため、混合液の吐出を止めてエッチング処理を終了させる際には、突沸によって配管内の薬液が振動することから、混合部での突沸反応が収まるまではいずれかの薬液(たとえば、硫酸)を吐出させ続けなければならなかった。
【0011】
すなわち、従来の技術では、混合液Mによるエッチング処理が完了した後にも、突沸が収まるまでは硫酸などの薬液を吐出する処理が必要となるため、全体の処理時間が長くなるとともに、薬液の消費量が増大する恐れがあった。
【0012】
そこで、上述の問題点を克服し、混合液によるエッチング処理が終了する際に、混合部で突沸反応が発生することを抑制することができる技術が期待されている。
【0013】
<基板処理システムの概要>
最初に、図1を参照しながら、実施形態に係る基板処理システム1の概略構成について説明する。図1は、実施形態に係る基板処理システム1の概略構成を示す図である。なお、基板処理システム1は、基板処理装置の一例である。以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
【0014】
図1に示すように、基板処理システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2と処理ステーション3とは隣接して設けられる。
【0015】
搬入出ステーション2は、キャリア載置部11と、搬送部12とを備える。キャリア載置部11には、複数枚の基板、実施形態では半導体ウェハW(以下、ウェハWと呼称する。)を水平状態で収容する複数のキャリアCが載置される。
【0016】
搬送部12は、キャリア載置部11に隣接して設けられ、内部に基板搬送装置13と、受渡部14とを備える。基板搬送装置13は、ウェハWを保持するウェハ保持機構を備える。また、基板搬送装置13は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウェハ保持機構を用いてキャリアCと受渡部14との間でウェハWの搬送を行う。
【0017】
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられる。処理ステーション3は、搬送部15と、複数の処理ユニット16とを備える。複数の処理ユニット16は、搬送部15の両側に並べて設けられる。
【0018】
搬送部15は、内部に基板搬送装置17を備える。基板搬送装置17は、ウェハWを保持するウェハ保持機構を備える。また、基板搬送装置17は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウェハ保持機構を用いて受渡部14と処理ユニット16との間でウェハWの搬送を行う。
【0019】
処理ユニット16は、基板搬送装置17によって搬送されるウェハWに対して所定の基板処理を行う。
【0020】
また、基板処理システム1は、制御装置4を備える。制御装置4は、たとえばコンピュータであり、制御部18と記憶部19とを備える。記憶部19には、基板処理システム1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部18は、記憶部19に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理システム1の動作を制御する。
【0021】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置4の記憶部19にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0022】
上記のように構成された基板処理システム1では、まず、搬入出ステーション2の基板搬送装置13が、キャリア載置部11に載置されたキャリアCからウェハWを取り出し、取り出したウェハWを受渡部14に載置する。受渡部14に載置されたウェハWは、処理ステーション3の基板搬送装置17によって受渡部14から取り出されて、処理ユニット16へ搬入される。
【0023】
処理ユニット16へ搬入されたウェハWは、処理ユニット16によって処理された後、基板搬送装置17によって処理ユニット16から搬出されて、受渡部14に載置される。そして、受渡部14に載置された処理済のウェハWは、基板搬送装置13によってキャリア載置部11のキャリアCへ戻される。
【0024】
<処理ユニットの構成>
次に、処理ユニット16の構成について、図2を参照しながら説明する。図2は、処理ユニット16の具体的な構成例を示す模式図である。図2に示すように、処理ユニット16は、チャンバ20と、基板処理部30と、液供給部40と、回収カップ50とを備える。
【0025】
チャンバ20は、基板処理部30と、液供給部40と、回収カップ50とを収容する。チャンバ20の天井部には、FFU(Fan Filter Unit)21が設けられる。FFU21は、チャンバ20内にダウンフローを形成する。
【0026】
基板処理部30は、保持部31と、支柱部32と、駆動部33とを備え、載置されたウェハWに液処理を施す。保持部31は、ウェハWを水平に保持する。支柱部32は、鉛直方向に延在する部材であり、基端部が駆動部33によって回転可能に支持され、先端部において保持部31を水平に支持する。駆動部33は、支柱部32を鉛直軸まわりに回転させる。
【0027】
かかる基板処理部30は、駆動部33を用いて支柱部32を回転させることによって支柱部32に支持された保持部31を回転させ、これにより、保持部31に保持されたウェハWを回転させる。
【0028】
基板処理部30が備える保持部31の上面には、ウェハWを側面から保持する保持部材311が設けられる。ウェハWは、かかる保持部材311によって保持部31の上面からわずかに離間した状態で水平保持される。なお、ウェハWは、基板処理が行われる表面を上方に向けた状態で保持部31に保持される。
【0029】
液供給部40は、ウェハWに対して処理流体を供給する。液供給部40は、複数(ここでは2つ)のノズル41a、41bと、かかるノズル41a、41bを水平に支持するアーム42と、アーム42を旋回および昇降させる旋回昇降機構43とを備える。
【0030】
ノズル41aは、吐出部の一例であり、バルブ44aおよび流量調整器45aを介して混合液供給部60に接続される。かかる混合液供給部60の詳細については後述する。
【0031】
ノズル41bは、バルブ44bおよび流量調整器45bを介してDIW供給源46bに接続される。DIW(DeIonized Water:脱イオン水)は、たとえばリンス処理に用いられる。なお、リンス処理に用いる処理液はDIWに限られない。
【0032】
ノズル41aからは、混合液供給部60より供給される混合液M(図3参照)が吐出される。かかる混合液Mの詳細については後述する。ノズル41bからは、DIW供給源46bより供給されるDIWが吐出される。
【0033】
回収カップ50は、保持部31を取り囲むように配置され、保持部31の回転によってウェハWから飛散する処理液を捕集する。回収カップ50の底部には、排液口51が形成されており、回収カップ50によって捕集された処理液は、かかる排液口51から処理ユニット16の外部へ排出される。また、回収カップ50の底部には、FFU21から供給される気体を処理ユニット16の外部へ排出する排気口52が形成される。
【0034】
なお、実施形態の処理ユニット16では、ノズルが2つ設けられる例について示したが、処理ユニット16に設けられるノズルの数は2つに限られない。たとえば、IPA(IsoPropyl Alcohol)を供給するIPA供給源と、かかるIPA供給源に接続された第3のノズルを設けて、かかる第3のノズルからIPAが吐出されるように構成してもよい。
【0035】
<洗浄処理の詳細>
次に、処理ユニット16におけるウェハWのエッチング処理の詳細について、図3を参照しながら説明する。図3は、実施形態におけるエッチング処理の概要を示す図である。なお、かかるエッチング処理が行われるウェハWの表面上に形成される膜には、材質の異なるタングステン(W)および窒化チタン(TiN)が含まれているものとする。
【0036】
まず、基板搬送装置17により、ウェハWが処理ユニット16のチャンバ20内に搬入される。そして、ウェハWは、基板処理される表面を上方に向けた状態で基板処理部30の保持部材311に保持される。その後、駆動部33により、保持部材311がウェハWとともに所定の回転数で回転する。
【0037】
次に、処理ユニット16では、図3の(a)に示すように、混合液Mによるエッチング処理が行われる。かかるエッチング処理では、液供給部40のノズル41aがウェハWの中央上方に移動する。
【0038】
その後、バルブ44aが所定時間開放されることにより、ウェハWの表面に対して、濃硫酸を含んだ混合液Mが供給される。
【0039】
ここで、実施形態では、所定の温度以上に昇温された混合液MがウェハWに供給される。これにより、混合液M内で以下の式(1)、(2)の反応が発生する。
2HSO → HSO + HSO ・・(1)
SO → H + HSO ・・(2)
【0040】
そして、上記の反応で発生したHが、ウェハWの表面上に形成される膜に含まれるタングステンおよび窒化チタンのうち、窒化チタンと選択的に下記式(3)のように反応する。
TiN + 4H → Ti3+ + NH ・・(3)
【0041】
ここで、式(3)の反応で発生するTi3+は混合液Mに溶解することから、上記式(1)~(3)の反応に基づいて、混合液Mは窒化チタンを選択的にエッチングすることができる。したがって、実施形態によれば、ウェハWの表面上に形成される膜に含まれるタングステンおよび窒化チタンのうち、窒化チタンを高い選択性でエッチングすることができる。
【0042】
また、実施形態では、濃硫酸に純水を添加した混合液Mでエッチング処理を行うとよい。これにより、混合液M内で上記式(1)、(2)のほか、以下の式(4)、(5)の反応が発生する。
O + HSO → H + HSO ・・(4)
→ H + HO ・・(5)
【0043】
かかる式(4)、(5)の反応により、混合液M内により多くのHが供給される。これにより、実施形態では、上記式(3)の反応が促進されることから、混合液Mは窒化チタンをさらに選択的にエッチングすることができる。
【0044】
図3の説明に戻る。次に、処理ユニット16では、図3の(b)に示すように、ノズル41aから硫酸の吐出処理が行われる。この処理は、ノズル41aから混合液Mの吐出を停止させる際に、硫酸の供給とDIWの供給とを同時に止めてしまうと、配管内で硫酸とDIWとが突沸することにより、ノズル41aでの良好な液切れ処理が困難となるために実施される。
【0045】
具体的には、混合部140(図4参照)における硫酸とDIWとの突沸反応が収まるまでの間、硫酸のみをノズル41aから吐出することにより、その後にノズル41aの液切れ処理を実施した場合に問題なく液切れ処理を実施することができる。
【0046】
なお、図3の(b)に示す硫酸吐出処理では、混合部140で硫酸がDIWと反応しないため、混合液Mよりも硫酸の温度が低下するとともに、上記式(4)、(5)の反応が起こらない。すなわち、硫酸吐出処理は、ウェハWのエッチング処理にはほとんど寄与しない。なお、硫酸吐出処理の詳細については後述する。
【0047】
次に、処理ユニット16では、図3の(c)に示すように、DIWによるリンス処理が行われる。かかるリンス処理では、液供給部40のノズル41bがウェハWの中央上方に移動し、バルブ44bが所定時間開放されることにより、ウェハWの表面に対してリンス液である室温のDIWが供給される。
【0048】
このリンス処理により、ウェハW上に残存する混合液Mやエッチングされた窒化チタンなどの残渣を除去することができる。なお、リンス処理におけるDIWの温度は、室温でも室温より高い温度でもよい。
【0049】
つづいて、処理ユニット16では、ウェハWを乾燥させる乾燥処理が行われる。かかる乾燥処理では、たとえば、駆動部33により保持部材311を高速回転させることにより、保持部材311に保持されるウェハW上のDIWを振り切る。なお、DIWを振り切る代わりに、DIWをIPAに置換させた後、かかるIPAを振り切ってウェハWを乾燥させてもよい。
【0050】
その後、処理ユニット16では、搬出処理が行われる。搬出処理では、ウェハWの回転を停止させた後、基板搬送装置17により、ウェハWが処理ユニット16から搬出される。かかる搬出処理が完了すると、1枚のウェハWについての一連のエッチング処理が完了する。
【0051】
<混合液供給部の構成>
次に、基板処理システム1が備える混合液供給部60の構成について、図4を参照しながら説明する。図4は、実施形態に係る混合液供給部60の構成を示す図である。なお、以下に示す混合液供給部60の各部は、制御部18によって制御可能である。
【0052】
図4に示すように、実施形態に係る混合液供給部60は、硫酸供給部100と、純水供給部120と、混合部140とを備える。
【0053】
硫酸供給部100は、混合部140に硫酸を供給する。かかる硫酸は、たとえば、濃硫酸である。硫酸供給部100は、硫酸供給源101aと、バルブ101bと、流量調整器101cと、タンク102と、循環ライン103と、硫酸供給ライン110とを有する。
【0054】
硫酸供給源101aは、バルブ101bおよび流量調整器101cを介してタンク102に接続される。これにより、硫酸供給源101aは、バルブ101bおよび流量調整器101cを介してタンク102に硫酸を供給し、タンク102に硫酸を貯留することができる。
【0055】
循環ライン103は、タンク102から出て、かかるタンク102に戻る循環ラインである。かかる循環ライン103には、タンク102を基準として、上流側から順にポンプ104と、フィルタ105と、流量調整器106と、ヒータ107と、熱電対108と、切替部109とが設けられる。ヒータ107は、昇温部の一例である。
【0056】
ポンプ104は、タンク102から出て、循環ライン103を通り、タンク102に戻る硫酸の循環流を形成する。フィルタ105は、循環ライン103内を循環する硫酸に含まれるパーティクルなどの汚染物質を除去する。流量調整器106は、循環ライン103を通る硫酸の循環流の流量を調整する。
【0057】
ヒータ107は、循環ライン103内を循環する硫酸を加熱する。熱電対108は、循環ライン103内を循環する硫酸の温度を計測する。したがって、制御部18は、ヒータ107および熱電対108を用いることにより、循環ライン103内を循環する硫酸の温度を制御することができる。
【0058】
切替部109は、硫酸供給ライン110を介して混合液供給部60の混合部140に接続され、循環ライン103内を循環する硫酸の向きをタンク102または混合部140に切り替えることができる。
【0059】
硫酸供給ライン110には、切替部109を基準として、上流側から順に流量計111と、電動のニードルバルブ112と、バルブ113と、分岐部114とが設けられる。
【0060】
流量計111は、硫酸供給ライン110を流れる硫酸の流量を測定する。ニードルバルブ112は、硫酸供給ライン110を流れる硫酸の流量を調整する。分岐部114は、バルブ115を介してドレイン部DRに接続される。
【0061】
そして、制御部18は、流量計111で測定される値を用いてニードルバルブ112をフィードバック制御することにより、硫酸を混合部140に高精度の流量で供給することができる。
【0062】
また、タンク102には、純水供給源116aと、バルブ116bと、流量調整器116cと、バルブ116dとが設けられる。タンク102は、バルブ116dを介してドレイン部DRに接続され、純水供給源116aは、バルブ116bおよび流量調整器116cを介してタンク102とバルブ116dとの間に接続される。
【0063】
これにより、制御部18は、タンク102内の硫酸を交換する際などに、バルブ116b、流量調整器116cおよびバルブ116dを制御して、タンク102内の濃硫酸を所定の濃度に希釈してからドレイン部DRに排出することができる。
【0064】
純水供給部120は、混合部140にDIWを供給する。かかるDIWは、純水の一例であり、また、水分を含む液体の一例である。純水供給部120は、純水供給源121aと、バルブ121bと、流量調整器121cと、タンク122と、純水供給ライン123とを有する。純水供給ライン123は、液体供給ラインの一例である。
【0065】
純水供給源121aは、バルブ121bおよび流量調整器121cを介してタンク122に接続される。これにより、純水供給源121aは、バルブ121bおよび流量調整器121cを介してタンク122に純水を供給し、タンク122に純水を貯留することができる。
【0066】
純水供給ライン123には、タンク122を基準として、上流側から順にバルブ124と、流量計125と、電動のニードルバルブ126と、バルブ127と、分岐部128とが設けられる。
【0067】
流量計125は、純水供給ライン123を流れる純水の流量を測定する。ニードルバルブ126は、純水供給ライン123を流れる純水の流量を調整する。分岐部128は、バルブ129を介してドレイン部DRに接続される。
【0068】
そして、制御部18は、流量計125で測定される値を用いてニードルバルブ126をフィードバック制御することにより、純水を混合部140に高精度の流量で供給することができる。
【0069】
また、タンク122は、バルブ130を介してドレイン部DRに接続される。これにより、制御部18は、タンク122内の純水を交換する際などに、バルブ130を制御して、タンク122内の純水をドレイン部DRに排出することができる。
【0070】
混合部140は、硫酸供給部100から供給される硫酸と、純水供給部120から供給される純水とを混合して、混合液M(図3参照)を生成する。実施形態において、混合部140は、硫酸供給ライン110と、純水供給ライン123とが合流する箇所に設けられる。
【0071】
そして、混合部140は、混合液供給ライン160を介して、処理ユニット16に接続される。また、混合液供給ライン160には、上述したバルブ44aおよび流量調整器45aが設けられる。これにより、混合液供給部60は、ユーザによって設定された混合比を有する混合液Mを処理ユニット16に供給することができる。
【0072】
また、上述のように、硫酸供給部100にはヒータ107が設けられるとともに、混合部140では、硫酸と純水が反応することによって混合液Mの温度が上昇する。これにより、実施形態の混合液供給部60は、混合液Mを所望の温度に昇温して処理ユニット16に供給することができる。
【0073】
たとえば、混合液供給部60は、硫酸供給部100のヒータ107を用いて濃硫酸の温度を120℃程度まで昇温することにより、混合部140において混合液Mを150℃程度まで昇温することができる。
【0074】
また、図4には図示していないが、循環ライン103などには、別途バルブなどが設けられていてもよい。
【0075】
ここで、実施形態では、混合部140が、硫酸とDIWの反応を抑える反応抑制機構を有する。これにより、混合液MによるウェハWのエッチング処理を終了させる際に、混合部140で突沸反応が発生することを抑制することができる。
【0076】
したがって、実施形態によれば、図3の(b)に示した硫酸吐出処理の時間を短くすることができることから、ウェハWへの全体の処理時間を短くすることができるともに、硫酸の消費量を低減することができる。
【0077】
<反応抑制機構の詳細>
つづいては、混合部140に設けられる反応抑制機構の詳細について、図5図7を参照しながら説明する。図5は、実施形態に係る反応抑制機構の構成を示す図である。
【0078】
図5に示すように、実施形態に係る混合部140は、合流部141と、配管バッファ部142とを有する。合流部141は、昇温された硫酸が流れる硫酸供給ライン110と、DIWが流れる純水供給ライン123とが合流する部位である。
【0079】
なお、本開示において、合流部141は、硫酸供給ライン110と純水供給ライン123とが合流する部位そのものに限られず、かかる合流する部位の近傍も含まれる。配管バッファ部142は、純水供給ライン123における合流部141の近傍に設けられるU字状の部位である。
【0080】
図5に示す実施形態では、かかる配管バッファ部142によって、合流部141における硫酸とDIWの反応を抑制することができる。すなわち、実施形態に係る反応抑制機構は、純水供給ライン123に設けられる配管バッファ部142で構成される。
【0081】
具体的な構成について以下に説明する。実施形態において、硫酸供給ライン110および純水供給ライン123は、合流部141に対して上向きに接続され、合流部141に対して硫酸およびDIWを上向きに流す。また、混合液供給ライン160は、合流部141から混合液M(図3参照)を上向きに流す。
【0082】
合流部141の近傍に設けられる配管バッファ部142は、上流側から順に上昇部142aと、水平部142bと、下降部142cとを有する。
【0083】
上昇部142aは、純水供給ライン123における上向きの部位に接続され、合流部141よりも高い位置に設けられる部位である。水平部142bは、上昇部142aに接続され、DIWを略水平に流す部位である。下降部142cは、水平部142bに接続され、DIWを下向きに流す部位である。
【0084】
また、下降部142cは、純水供給ライン123においてDIWを略水平に流す部位である水平部123aに接続される。かかる水平部123aは、合流部141に接続される。
【0085】
すなわち、純水供給ライン123で上向きに流れるDIWは、配管バッファ部142でいったん下向きに流れが変わり、最後は略水平の向きで合流部141に到達する。
【0086】
図6は、実施形態に係るエッチング処理における各部の挙動パターンの具体例を示すタイミングチャートである。最初に、制御部18は、図3の(a)に示した混合液吐出処理を実施する。
【0087】
具体的には、制御部18は、時間T1で硫酸供給ライン110から混合部140への硫酸の供給を開始する(硫酸供給ライン:ON)とともに、純水供給ライン123から混合部140へのDIWの供給を開始する(純水供給ライン:ON)。
【0088】
これにより、混合部140で混合液Mが生成されることから、制御部18は、ノズル41a(図4参照)で混合液Mを吐出することができる。そして、所定の時間T2までの間、制御部18は、混合液吐出処理を継続する。
【0089】
次に、制御部18は、図3の(b)に示した硫酸吐出処理を実施する。具体的には、制御部18は、時間T2で純水供給ライン123から混合部140へのDIWの供給を停止する(純水供給ライン:OFF)。
【0090】
これにより、合流部141近傍におけるDIWの流れが止まることから、合流部141から純水供給ライン123に硫酸が逆流し、純水供給ライン123において硫酸とDIWとが反応する。これにより、時間T2以降、合流部141近傍の純水供給ライン123で突沸反応が発生する。
【0091】
そこで、制御部18は、かかる突沸反応が収まる時間T3までの間、硫酸吐出処理を実施する。最後に、制御部18は、時間T3で硫酸供給ライン110から混合部140への硫酸の供給を停止する(硫酸供給ライン:OFF)とともに、バルブ115(図4参照)を開状態にして、ノズル41a内に残った硫酸の液切れ処理を実施する。これにより、実施形態に係る硫酸吐出処理が完了する。
【0092】
ここで、実施形態では、混合部140が配管バッファ部142を有することから、時間T2以降において、突沸反応により生じた気泡が下降部142cに貯留される。そして、実施形態では、下降部142cに貯留された気泡によって、さらに上流への硫酸の逆流を抑制することができる。
【0093】
すなわち、実施形態では、混合部140が配管バッファ部142を備えることにより、エッチング処理が終了する際に、硫酸が純水供給ライン123へ逆流することを抑制することができる。したがって、実施形態によれば、混合液Mによるエッチング処理が終了する際に、混合部140で突沸反応が発生することを抑制することができる。
【0094】
図7は、実施例および参考例の反応停止時間を示す図である。図7に示す実施例は、混合部140に配管バッファ部142が設けられる場合であり、参考例は、混合部140に配管バッファ部142が設けられない場合である。
【0095】
図7に示すように、実施形態では、混合部140に配管バッファ部142を設けることにより、突沸反応の停止時間を短くすることができる。
【0096】
また、実施形態では、配管バッファ部142の最上部(図5の例では水平部142b)が、合流部141よりも高いとよい。これにより、DIWよりも比重の大きい硫酸が、合流部141から配管バッファ部142の最上部(水平部142b)まで逆流することを抑制することができる。
【0097】
したがって、実施形態によれば、混合液Mによるエッチング処理が終了する際に、混合部140で突沸反応が発生することをさらに抑制することができる。
【0098】
また、実施形態では、配管バッファ部142の最上部(図5の例では水平部142b)が、合流部141における純水供給ライン123の口径D以上に合流部141よりも高いとよい。すなわち、合流部141に対する水平部142bの高さをHとした場合、H≧D×1であるとよい。
【0099】
これにより、配管バッファ部142の最上部(水平部142b)を合流部141よりも確実に高い位置に設けることができることから、硫酸が配管バッファ部142の最上部まで逆流することをさらに抑制することができる。
【0100】
また、実施形態では、配管バッファ部142が、混合液供給ライン160に対して、合流部141における混合液供給ライン160の口径D以上に離間するとよい。すなわち、配管バッファ部142と混合液供給ライン160との距離をL1とした場合、L1≧D×1であるとよい。
【0101】
これにより、配管バッファ部142と混合液供給ライン160とがかぶって配置されることを抑制することができる。
【0102】
なお、配管バッファ部142と混合液供給ライン160との距離L1は可能なかぎり短いほうがよい(たとえば、L1≦D×5)。これにより、合流部141から硫酸が逆流する長さ(すなわち、水平部123aの長さ)を短くすることができることから、混合部140で突沸反応が発生することをさらに抑制することができる。
【0103】
実施形態において、合流部141における硫酸供給ライン110と純水供給ライン123との角度は特に限定されず、合流部141に対する水平部142bの高さHが規定寸法を満たす角度であればよい。
【0104】
また、実施形態において、混合液供給ライン160の口径Dは特に限定されず、ウェハWのエッチング処理に必要な混合液Mの吐出流量に合わせて適宜設定可能である。
【0105】
また、実施形態において、合流部141における硫酸供給ライン110の口径Dと、合流部141における純水供給ライン123の口径Dとは、特に限定されない。実施形態において、かかる口径Dおよび口径Dは、ウェハWのエッチング処理に必要な硫酸およびDIWの吐出流量に合わせて適宜設定可能である。
【0106】
たとえば、硫酸とDIWとの混合比が2:1の場合、D:D=4mm:2mmとしてもよい。もちろん、硫酸とDIWとの混合比に限られず、D=Dとしてもよい。
【0107】
<各種変形例>
つづいては、実施形態に係る反応抑制機構の各種変形例について、図8図18を参照しながら説明する。図8は、実施形態の変形例1に係る反応抑制機構の構成を示す図である。
【0108】
図8に示すように、変形例1に係る混合部140は、合流部141と、オリフィス143とを有する。オリフィス143は、反応抑制機構の別の一例であり、純水供給ライン123における合流部141の近傍に設けられる。
【0109】
この変形例1では、混合部140がオリフィス143を備えることにより、エッチング処理が終了する際に、硫酸が純水供給ライン123へ逆流することを抑制することができる。したがって、変形例1によれば、混合液Mによるエッチング処理が終了する際に、混合部140で突沸反応が発生することを抑制することができる。
【0110】
図9は、変形例1および参考例の反応停止時間を示す図である。図9に示す実施例は、混合部140にオリフィス143が設けられる場合であり、参考例は、混合部140にオリフィス143が設けられない場合である。
【0111】
図9に示すように、変形例1では、混合部140にオリフィス143を設けることにより、突沸反応の停止時間を短くすることができる。
【0112】
また、変形例1では、オリフィス143の内径Dが、合流部141における純水供給ライン123の口径Dの1/5~1/2であるとよい。
【0113】
もし仮に、オリフィス143の内径Dが純水供給ライン123の口径Dの1/5よりも小さい場合、純水供給ライン123から合流部141に十分な量のDIWを供給できなくなる恐れがある。一方で、オリフィス143の内径Dが純水供給ライン123の口径Dの1/2よりも大きい場合、硫酸の逆流を十分に抑制できない恐れがある。
【0114】
しかしながら、変形例1では、オリフィス143の内径Dが口径Dの1/5~1/2の範囲に設定されることにより、十分な量のDIWを合流部141に供給することができるとともに、硫酸の逆流を十分に抑制することができる。なお、図9に示した変形例1の実験結果では、オリフィス143の内径Dは口径Dの約1/4である。
【0115】
また、変形例1では、オリフィス143が、混合液供給ライン160に対して、合流部141における混合液供給ライン160の口径D以上に離間するとよい。すなわち、オリフィス143と混合液供給ライン160との距離をL2とした場合、L2≧D×1であるとよい。
【0116】
これにより、変形例1では、オリフィス143と混合液供給ライン160とがかぶって配置されることを抑制することができる。
【0117】
なお、オリフィス143と混合液供給ライン160との距離L2は可能なかぎり短いほうがよい(たとえば、L2≦D×5)。これにより、合流部141から硫酸が逆流する長さを短くすることができることから、混合部140で突沸反応が発生することをさらに抑制することができる。
【0118】
また、変形例1において、合流部141における硫酸供給ライン110と純水供給ライン123との角度は特に限定されない。変形例1では、たとえば、合流部141に対して純水供給ライン123を下向きに接続することにより、DIWよりも比重の大きい硫酸が、合流部141から純水供給ライン123へ逆流することを抑制することができる。
【0119】
したがって、変形例1によれば、混合液Mによるエッチング処理が終了する際に、混合部140で突沸反応が発生することをさらに抑制することができる。
【0120】
また、変形例1において、混合液供給ライン160の口径Dは特に限定されず、ウェハWのエッチング処理に必要な混合液Mの吐出流量に合わせて適宜設定可能である。
【0121】
また、変形例1において、合流部141における硫酸供給ライン110の口径Dと、合流部141における純水供給ライン123の口径Dとは、特に限定されない。変形例1において、かかる口径Dおよび口径Dは、ウェハWのエッチング処理に必要な硫酸およびDIWの吐出流量に合わせて適宜設定可能である。
【0122】
図10は、実施形態の変形例2に係る反応抑制機構の構成を示す図である。図10に示すように、変形例2に係る混合部140は、合流部141と、ガス置換部144とを有する。ガス置換部144は、反応抑制機構の別の一例であり、純水供給ライン123における合流部141の近傍に接続される。かかるガス置換部144の動作について、以下に説明する。
【0123】
図11は、実施形態の変形例2に係るエッチング処理における各部の挙動パターンの具体例を示すタイミングチャートである。最初に、制御部18は、図3の(a)に示した混合液吐出処理を実施する。
【0124】
具体的には、制御部18は、時間T11で硫酸供給ライン110から混合部140への硫酸の供給を開始するとともに、純水供給ライン123から混合部140へのDIWの供給を開始する。
【0125】
これにより、混合部140で混合液Mが生成されることから、制御部18は、ノズル41a(図4参照)で混合液Mを吐出することができる。そして、所定の時間T13までの間、制御部18は、混合液吐出処理を継続する。
【0126】
さらに、制御部18は、混合液吐出処理が完了する直前の時間T12から混合液吐出処理が完了した直後の時間T14までの間、ガス置換部144を動作させる(ガス置換部:ON)。
【0127】
これにより、図12に示すように、純水供給ライン123の合流部141近傍がガスで置換されることから、純水供給ライン123への硫酸の逆流をガスで阻害することができる。図12は、実施形態の変形例2に係る反応抑制機構の動作を説明するための図である。
【0128】
すなわち、変形例2では、エッチング処理が終了する際に、硫酸が純水供給ライン123へ逆流することを抑制することができる。したがって、変形例2によれば、混合液Mによるエッチング処理が終了する際に、混合部140で突沸反応が発生することを抑制することができる。
【0129】
この変形例2において、ガス置換部144から純水供給ライン123に供給されるガスは、硫酸やDIWとの反応性が低いガスであることが好ましく、たとえば窒素ガスや乾燥空気などである。
【0130】
なお、図11に示すように、制御部18は、混合液吐出処理が終わる時間T13から突沸反応が収まる時間T15までの間、硫酸吐出処理を実施する。そして、制御部18は、時間T15で硫酸供給ライン110から混合部140への硫酸の供給を停止するとともに、バルブ115(図4参照)を開状態にして、ノズル41a内に残った硫酸の液切れ処理を実施する。これにより、変形例2に係る硫酸吐出処理が完了する。
【0131】
図13は、実施形態の変形例3に係る反応抑制機構の構成を示す図である。図13に示すように、変形例3に係る混合部140は、合流部141と、冷却部145とを有する。冷却部145は、反応抑制機構の別の一例であり、硫酸供給ライン110における合流部141の近傍に設置される。かかる冷却部145の動作について、以下に説明する。
【0132】
図14は、実施形態の変形例3に係るエッチング処理における各部の挙動パターンの具体例を示すタイミングチャートである。最初に、制御部18は、図3の(a)に示した混合液吐出処理を実施する。
【0133】
具体的には、制御部18は、時間T21で硫酸供給ライン110から混合部140への硫酸の供給を開始するとともに、純水供給ライン123から混合部140へのDIWの供給を開始する。
【0134】
これにより、混合部140で混合液Mが生成されることから、制御部18は、ノズル41a(図4参照)で混合液Mを吐出することができる。そして、所定の時間T23までの間、制御部18は、混合液吐出処理を継続する。
【0135】
さらに、制御部18は、混合液吐出処理が完了する直前の時間T22から、硫酸吐出処理が完了する直前の時間T24までの間、冷却部145を動作させる(冷却部:ON)。
【0136】
これにより、図14に示すように、合流部141に供給される硫酸の温度が、所定の硫酸供給温度から突沸温度を経て冷却下限温度まで冷却される。そして、制御部18は、合流部141に供給される硫酸の温度が冷却下限温度まで下がった後に、混合液吐出処理を終了させる。
【0137】
これにより、合流部141において硫酸とDIWとが反応したとしても、反応時に突沸温度まで温度が上昇することを抑制することができる。したがって、変形例3によれば、混合液Mによるエッチング処理が終了する際に、混合部140で突沸反応が発生することを抑制することができる。
【0138】
なお、図14に示すように、制御部18は、硫酸の温度が冷却下限温度またはその近傍である時間T23から時間T24までの間、硫酸吐出処理を実施する。そして、制御部18は、時間T24で硫酸供給ライン110から混合部140への硫酸の供給を停止するとともに、冷却部145の動作を停止する(冷却部:OFF)。
【0139】
さらに、制御部18は、時間T24でバルブ115(図4参照)を開状態にして、ノズル41a内に残った硫酸の液切れ処理を実施する。これにより、変形例3に係る硫酸吐出処理が完了する。
【0140】
図15は、実施形態の変形例4に係る反応抑制機構の構成を示す図である。図15に示すように、変形例4に係る混合部140は、合流部141と、硫酸置換部146とを有する。硫酸置換部146は、反応抑制機構の別の一例であり、硫酸供給ライン110における合流部141の近傍に接続される。
【0141】
硫酸置換部146は、硫酸供給部100で昇温された硫酸(以下、高温硫酸とも呼称する。)よりも低温(たとえば、室温)の硫酸(以下、低温硫酸とも呼称する。)を合流部141に供給して、合流部141に残る高温硫酸を低温硫酸に置換する。かかる硫酸置換部146の動作について、以下に説明する。
【0142】
図16は、実施形態の変形例4に係るエッチング処理における各部の挙動パターンの具体例を示すタイミングチャートである。最初に、制御部18は、図3の(a)に示した混合液吐出処理を実施する。
【0143】
具体的には、制御部18は、時間T31で硫酸供給ライン110から混合部140への高温硫酸の供給を開始するとともに、純水供給ライン123から混合部140へのDIWの供給を開始する。
【0144】
これにより、混合部140で混合液Mが生成されることから、制御部18は、ノズル41a(図4参照)で混合液Mを吐出することができる。そして、所定の時間T32までの間、制御部18は、混合液吐出処理を継続する。
【0145】
次に、制御部18は、時間T32で硫酸供給ライン110から混合部140への高温硫酸の供給を停止するとともに、硫酸置換部146から混合部140への低温硫酸の供給を開始する(硫酸置換部:ON)。
【0146】
これにより、合流部141が低温硫酸で置換されることから、合流部141において低温硫酸とDIWとが反応したとしても、反応時に突沸温度まで温度が上昇することを抑制することができる。したがって、変形例4によれば、混合液Mによるエッチング処理が終了する際に、混合部140で突沸反応が発生することを抑制することができる。
【0147】
なお、図16に示すように、制御部18は、低温硫酸で合流部141が十分に置換された時間T33で、純水供給ライン123から混合部140へのDIWの供給を停止する。
【0148】
そして、制御部18は、所定の時間T34で硫酸置換部146から混合部140への低温硫酸の供給を停止する(硫酸置換部:OFF)とともに、バルブ115(図4参照)を開状態にして、ノズル41a内に残った硫酸の液切れ処理を実施する。これにより、変形例4に係る硫酸吐出処理が完了する。
【0149】
図17は、実施形態の変形例5に係る反応抑制機構の構成を示す図である。図17に示すように、変形例5の混合部140では、DIWが合流部141に対して下向きに流れる。
【0150】
かかる変形例5では、合流部141に対して上向きに流れる硫酸と、合流部141に対して下向きに流れるDIWとが合流部141で合流することにより、混合部140で混合液Mが生成される。
【0151】
かかる変形例5では、合流部141近傍において純水供給ライン123が合流部141よりも高い位置に設けられることから、DIWよりも比重の大きい硫酸が、合流部141から純水供給ライン123へ逆流することを抑制することができる。
【0152】
したがって、変形例5によれば、混合液Mによるエッチング処理が終了する際に、混合部140で突沸反応が発生することをさらに抑制することができる。
【0153】
なお、図17の例では、合流部141に対して下向きに流れるDIWが、合流部141に対して上向きに流れる硫酸と合流する例について示したが、下向きに流れるDIWが合流する硫酸の向きは上向きに限られない。
【0154】
たとえば、図18に示すように、合流部141に対して略水平に流れる硫酸と、合流部141に対して下向きに流れるDIWとが合流部141で合流することにより、混合部140で混合液Mが生成されてもよい。図18は、実施形態の変形例6に係る反応抑制機構の構成を示す図である。
【0155】
かかる変形例6でも、合流部141近傍において純水供給ライン123が合流部141よりも高い位置に設けられることから、DIWよりも比重の大きい硫酸が、合流部141から純水供給ライン123へ逆流することを抑制することができる。
【0156】
したがって、変形例6によれば、混合液Mによるエッチング処理が終了する際に、混合部140で突沸反応が発生することをさらに抑制することができる。
【0157】
なお、ここまで説明した各実施形態では、硫酸とともに混合液Mを構成する液体として純水(DIW)を示したが、硫酸とともに混合液Mを構成する液体は純水に限られない。
【0158】
たとえば、各実施形態では、硫酸とともに混合液Mを構成する液体として、過酸化水素水を用いてもよい。すなわち、実施形態では、硫酸および過酸化水素水(水分+過酸化水素)で混合液Mを構成してもよいし、硫酸、過酸化水素水および各種の添加剤で混合液Mを構成してもよい。
【0159】
また、各実施形態では、硫酸とともに混合液Mを構成する液体として、機能水(たとえば、オゾン水や水素水)を用いてもよい。すなわち、実施形態では、硫酸およびオゾン水(水分+オゾン)で混合液Mを構成してもよいし、硫酸および水素水(水分+水素)で混合液Mを構成してもよいし、硫酸、機能水および各種の添加剤で混合液Mを構成してもよい。
【0160】
このように、水分を含む各種液体を硫酸に混ぜた混合液Mで基板処理を実施する場合、混合液Mを生成する際に硫酸と水分とが反応して混合液Mの温度が上昇することから、エッチング処理を終了させる際に混合部140で混合液Mが突沸する恐れがある。
【0161】
しかしながら、各実施形態では、水分を含む各種液体を硫酸と混合する混合部140に反応抑制機構が設けられることから、エッチング処理が終了する際に混合部140で混合液Mが突沸することを抑制することができる。
【0162】
実施形態に係る基板処理装置(基板処理システム1)は、昇温部(ヒータ107)と、混合部140と、吐出部(ノズル41a)とを備える。昇温部(ヒータ107)は、硫酸を昇温する。混合部140は、昇温された硫酸と、水分を含む液体とを混合して混合液Mを生成する。吐出部(ノズル41a)は、基板処理部30内で基板(ウェハW)に混合液Mを吐出する。混合部140は、昇温された硫酸が流れる硫酸供給ライン110と液体(DIW)が流れる液体供給ライン(純水供給ライン123)とが合流する合流部141と、合流部141における昇温された硫酸と液体(DIW)との反応を抑える反応抑制機構とを有する。これにより、混合液Mによるエッチング処理が終了する際に、混合部140で突沸反応が発生することを抑制することができる。
【0163】
また、実施形態に係る基板処理装置(基板処理システム1)において、反応抑制機構は、液体供給ライン(純水供給ライン123)に設けられるU字状の配管バッファ部142で構成される。これにより、混合液Mによるエッチング処理が終了する際に、混合部140で突沸反応が発生することを抑制することができる。
【0164】
また、実施形態に係る基板処理装置(基板処理システム1)において、配管バッファ部142の最上部は、合流部141よりも高い位置に設けられる。これにより、混合液Mによるエッチング処理が終了する際に、混合部140で突沸反応が発生することをさらに抑制することができる。
【0165】
また、実施形態に係る基板処理装置(基板処理システム1)において、配管バッファ部142の最上部は、合流部141における液体供給ライン(純水供給ライン123)の口径D以上に合流部141よりも高い位置に設けられる。これにより、硫酸が配管バッファ部142の最上部まで逆流することをさらに抑制することができる。
【0166】
また、実施形態に係る基板処理装置(基板処理システム1)において、配管バッファ部142は、合流部141から吐出部に混合液Mを供給する混合液供給ライン160に対して、合流部141における混合液供給ライン160の口径D以上に離間する。これにより、配管バッファ部142と混合液供給ライン160とがかぶって配置されることを抑制することができる。
【0167】
また、実施形態に係る基板処理装置(基板処理システム1)において、反応抑制機構は、液体供給ライン(純水供給ライン123)に設けられるオリフィス143で構成される。これにより、混合液Mによるエッチング処理が終了する際に、混合部140で突沸反応が発生することを抑制することができる。
【0168】
また、実施形態に係る基板処理装置(基板処理システム1)において、オリフィス143の内径Dは、合流部141における液体供給ライン(純水供給ライン123)の口径Dの1/5~1/2である。これにより、十分な量のDIWを合流部141に供給することができるとともに、硫酸の逆流を十分に抑制することができる。
【0169】
また、実施形態に係る基板処理装置(基板処理システム1)において、反応抑制機構は、液体供給ライン(純水供給ライン123)をガスで置換するガス置換部144で構成される。これにより、混合液Mによるエッチング処理が終了する際に、混合部140で突沸反応が発生することを抑制することができる。
【0170】
また、実施形態に係る基板処理装置(基板処理システム1)において、反応抑制機構は、昇温された硫酸を硫酸供給ライン110で冷却する冷却部145で構成される。これにより、混合液Mによるエッチング処理が終了する際に、混合部140で突沸反応が発生することを抑制することができる。
【0171】
また、実施形態に係る基板処理装置(基板処理システム1)において、反応抑制機構は、昇温された硫酸よりも温度の低い硫酸で合流部141を置換する硫酸置換部146で構成される。これにより、混合液Mによるエッチング処理が終了する際に、混合部140で突沸反応が発生することを抑制することができる。
【0172】
また、実施形態に係る基板処理装置(基板処理システム1)において、液体(DIW)は、合流部141に対して下向きに流れる。これにより、混合液Mによるエッチング処理が終了する際に、混合部140で突沸反応が発生することを抑制することができる。
【0173】
また、実施形態に係る基板処理装置(基板処理システム1)において、液体は、純水(DIW)である。これにより、ウェハWの表面上に形成される膜に含まれるタングステンおよび窒化チタンのうち、窒化チタンを高い選択性でエッチングすることができる。
【0174】
また、実施形態に係る基板処理装置(基板処理システム1)において、液体は、過酸化水素水を含む。これにより、ウェハWを効率よくエッチング処理することができる。
【0175】
また、実施形態に係る基板処理装置(基板処理システム1)において、液体は、機能水を含む。これにより、ウェハWを効率よくエッチング処理することができる。
【0176】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。たとえば、上記の実施形態では、基板上に形成される複数の膜のうち、一方の膜をエッチングする工程だけでなく、基板上を洗浄する工程にもこの技術を適用することができる。
【0177】
たとえば、タングステンの膜が基板上に形成されている時に、ドライエッチング後の残渣除去やCMP(Chemical-Mechanical Polishing)処理後の残渣除去を行う場合などにも適用可能である。
【0178】
また、上記の実施形態では、混合液MでウェハWをエッチングした後、リンス処理する例について示したが、エッチングした後の処理はリンス処理に限られず、どのような処理を行ってもよい。
【0179】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0180】
W ウェハ
1 基板処理システム(基板処理装置の一例)
16 処理ユニット
18 制御部
30 基板処理部
41a ノズル(吐出部の一例)
60 混合液供給部
100 硫酸供給部
107 ヒータ(昇温部の一例)
110 硫酸供給ライン
120 純水供給部
123 純水供給ライン(液体供給ラインの一例)
140 混合部
141 合流部
142 配管バッファ部(反応抑制機構の一例)
143 オリフィス(反応抑制機構の一例)
144 ガス置換部(反応抑制機構の一例)
145 冷却部(反応抑制機構の一例)
146 硫酸置換部(反応抑制機構の一例)
図1
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