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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】プリコート方法及び処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20231215BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20231215BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20231215BHJP
   C23C 16/26 20060101ALI20231215BHJP
   C23C 16/50 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H01L21/302 101C
C23C16/44 J
C23C16/26
C23C16/50
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020081415
(22)【出願日】2020-05-01
(65)【公開番号】P2021176174
(43)【公開日】2021-11-04
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井福 亮太
(72)【発明者】
【氏名】松本 貴士
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 正仁
(72)【発明者】
【氏名】和田 真
【審査官】船越 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-345030(JP,A)
【文献】特開2019-009403(JP,A)
【文献】特開2021-088735(JP,A)
【文献】特開2003-017479(JP,A)
【文献】特開2001-123271(JP,A)
【文献】特開2001-247968(JP,A)
【文献】特開2012-036487(JP,A)
【文献】特開2013-093525(JP,A)
【文献】特開2016-076625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/3065
C23C 16/44
C23C 16/26
C23C 16/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマによりカーボン膜の成膜を行うための処理容器のプリコート方法であって、
第1の圧力の下で、第1の炭素含有ガスのプラズマにより、前記処理容器の内壁を第1のカーボン膜で被覆するプリコート工程と、
前記第1の圧力よりも低い第2の圧力の下で、第2の炭素含有ガスのプラズマにより、前記第1のカーボン膜上に前記第1のカーボン膜よりも広い範囲で前記処理容器の内壁を被覆する第2のカーボン膜を形成するプラズマ処理工程と、
を有
前記第1の炭素含有ガス及び前記第2の炭素含有ガスは、CH系ガスとH2ガスとを含むガスであり、
前記プリコート工程は、
前記CH系ガスに対する前記H2ガスの流量比として第1の流量比を用い、
前記プラズマ処理工程は、
前記CH系ガスに対する前記H2ガスの流量比として前記第1の流量比よりも高い第2の流量比を用いる、プリコート方法。
【請求項2】
前記第1の炭素含有ガスは、さらにN2ガスを含有し、
前記第2の炭素含有ガスは、N2ガスを含有しない、請求項に記載のプリコート方法。
【請求項3】
プラズマによりカーボン膜の成膜を行うための処理容器のプリコート方法であって、
第1の圧力の下で、第1の炭素含有ガスのプラズマにより、前記処理容器の内壁を第1のカーボン膜で被覆するプリコート工程と、
前記第1の圧力よりも低い第2の圧力の下で、改質ガスのプラズマにより、前記第1のカーボン膜の表面を改質するプラズマ処理工程と、
を有する、プリコート方法。
【請求項4】
前記改質ガスは、H2ガスと希ガスとを含むガスである、請求項に記載のプリコート方法。
【請求項5】
前記希ガスは、Arガスである、請求項に記載のプリコート方法。
【請求項6】
プラズマによりカーボン膜の成膜を行うための処理容器と、
制御部と、
を有し、
前記制御部は、
第1の圧力の下で、第1の炭素含有ガスのプラズマにより、前記処理容器の内壁を第1のカーボン膜で被覆するプリコート工程と、
前記第1の圧力よりも低い第2の圧力の下で、第2の炭素含有ガスのプラズマにより、前記第1のカーボン膜上に前記第1のカーボン膜よりも広い範囲で前記処理容器の内壁を被覆する第2のカーボン膜を形成するプラズマ処理工程と、
を実行
前記第1の炭素含有ガス及び前記第2の炭素含有ガスは、CH系ガスとH2ガスとを含むガスであり、
前記プリコート工程は、
前記CH系ガスに対する前記H2ガスの流量比として第1の流量比を用い、
前記プラズマ処理工程は、
前記CH系ガスに対する前記H2ガスの流量比として前記第1の流量比よりも高い第2の流量比を用いる、処理装置。
【請求項7】
プラズマによりカーボン膜の成膜を行うための処理容器と、
制御部と、
を有し、
前記制御部は、
プラズマによりカーボン膜の成膜を行うための処理容器のプリコート方法であって、
第1の圧力の下で、第1の炭素含有ガスのプラズマにより、前記処理容器の内壁を第1のカーボン膜で被覆するプリコート工程と、
前記第1の圧力よりも低い第2の圧力の下で、改質ガスのプラズマにより、前記第1のカーボン膜の表面を改質するプラズマ処理工程と、
を実行する、処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プリコート方法及び処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて、被処理体である基板(以下、ウエハともいう。)上にカーボン膜を成膜する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-150622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、連続成膜におけるウエハ間の膜厚の均一性を向上させることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によるプリコート方法は、プラズマによりカーボン膜の成膜を行うための処理容器のプリコート方法であって、第1の圧力の下で、第1の炭素含有ガスのプラズマにより、前記処理容器の内壁を第1のカーボン膜で被覆するプリコート工程と、第2の圧力の下で、前記第1のカーボン膜をプラズマにより処理するプラズマ処理工程と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、連続成膜におけるウエハ間の膜厚の均一性を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の第1実施形態における処理装置の一例を示す図である。
図2図2は、第1実施形態におけるマイクロ波導入装置の構成の一例を示す図である。
図3図3は、第1実施形態におけるマイクロ波放射機構の一例を模式的に示す図である。
図4図4は、第1実施形態における処理容器の天壁部の一例を模式的に示す図である。
図5図5は、第1実施形態における第1のカーボン膜の被覆位置の一例を示す図である。
図6図6は、第1実施形態における第2のカーボン膜の形成位置の一例を示す図である。
図7図7は、第1実施形態に係るプリコート方法を適用した成膜処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8図8は、第2実施形態における第1のカーボン膜の改質の一例を説明する図である。
図9図9は、第2実施形態に係るプリコート方法を適用した成膜処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10図10は、各実施形態に係るプリコート方法を適用した場合と通常のプリコート方法を適用した場合におけるウエハW上に成膜されるグラフェン膜の膜厚の変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態により開示技術が限定されるものではない。
【0009】
ところで、プラズマCVD法では、複数のウエハを連続して成膜する場合に、ウエハ間の安定性向上のために、処理容器(以下、「チャンバ」ともいう。)の内壁をカーボン膜で被覆するプリコートが行われることが知られている。しかしながら、ウエハ上にカーボン膜であるグラフェン膜を成膜する場合、グラフェン膜の成膜特性の制御のために導入される水素によってチャンバの内壁のカーボン膜がエッチングされてチャンバコンディションが変化する。このため、プリコート後に処理容器内でグラフェン膜を連続成膜する場合、チャンバコンディションの変化に応じてウエハ間の膜厚分布が不均一となる。そこで、連続成膜におけるウエハ間の膜厚の均一性を向上させることが期待されている。
【0010】
[第1実施形態]
[処理装置100の構成]
図1は、本開示の第1実施形態における処理装置100の一例を示す図である。処理装置100は、マイクロ波プラズマを用いたプラズマCVDによってウエハWにカーボン膜の成膜を行う。処理装置100は、処理容器101と、載置台102と、ガス供給機構103と、排気装置104と、マイクロ波導入装置105と、制御部106とを有する。処理容器101は、ウエハWを収容する。載置台102は、ウエハWを載置する。ガス供給機構103は、処理容器101内にガスを供給する。排気装置104は、処理容器101内を排気する。マイクロ波導入装置105は、処理容器101内にプラズマを生成させるためのマイクロ波を発生させるとともに、処理容器101内にマイクロ波を導入する。制御部106は、処理装置100の各部の動作を制御する。
【0011】
処理容器101は、例えばアルミニウムおよびその合金等の金属材料によって形成され、略円筒形状をなしており、板状の天壁部111および底壁部113と、これらを連結する側壁部112とを有している。マイクロ波導入装置105は、処理容器101の上部に設けられ、処理容器101内に電磁波(マイクロ波)を導入してプラズマを生成するプラズマ生成手段として機能する。マイクロ波導入装置105については後で詳細に説明する。
【0012】
天壁部111には、マイクロ波導入装置105の後述するマイクロ波放射機構およびガス導入部が嵌め込まれる複数の開口部を有している。側壁部112は、処理容器101に隣接する搬送室(図示せず)との間で被処理基板であるウエハWの搬入出を行うための搬入出口114を有している。搬入出口114はゲートバルブ115により開閉されるようになっている。底壁部113には排気装置104が設けられている。排気装置104は底壁部113に接続された排気管116に設けられ、真空ポンプと圧力制御バルブを備えている。排気装置104の真空ポンプにより排気管116を介して処理容器101内が排気される。処理容器101内の圧力は圧力制御バルブにより制御される。
【0013】
載置台102は、円板状をなしており、AlN等のセラミックスからなっている。載置台102は、処理容器101の底部中央から上方に延びる円筒状のAlN等のセラミックスからなる支持部材120により支持されている。載置台102の外縁部にはウエハWをガイドするためのガイドリング181が設けられている。また、載置台102の内部には、ウエハWを昇降するための昇降ピン(図示せず)が載置台102の上面に対して突没可能に設けられている。さらに、載置台102の内部には抵抗加熱型のヒータ182が埋め込まれており、このヒータ182はヒータ電源183から給電されることにより載置台102を介してその上のウエハWを加熱する。また、載置台102には、熱電対(図示せず)が挿入されており、熱電対からの信号に基づいて、ウエハWの加熱温度を、例えば300~1000℃の範囲の所定の温度に制御可能となっている。さらに、載置台102内のヒータ182の上方には、ウエハWと同程度の大きさの電極184が埋設されており、この電極184には、高周波バイアス電源122が電気的に接続されている。この高周波バイアス電源122から載置台102に、イオンを引き込むための高周波バイアスが印加される。なお、高周波バイアス電源122はプラズマ処理の特性によっては設けなくてもよい。
【0014】
ガス供給機構103は、プラズマ生成ガス、およびカーボン膜を形成するための原料ガスを処理容器101内に導入するためのものであり、複数のガス導入ノズル123を有している。ガス導入ノズル123は、処理容器101の天壁部111に形成された開口部に嵌め込まれている。ガス導入ノズル123には、ガス供給配管191が接続されている。このガス供給配管191は、分岐管191a、191b、191c、191d、191eの5つに分岐している。これら分岐管191a、191b、191c、191d、191eには、Arガス供給源192、O2ガス供給源193、N2ガス供給源194、H2ガス供給源195、C2H2ガス供給源196が接続されている。Arガス供給源192は、プラズマ生成ガスである希ガスとしてのArガスを供給する。O2ガス供給源193は、クリーニングガスである酸化ガスとしてのO2ガスを供給する。N2ガス供給源194は、パージガス等として用いられるN2ガスを供給する。H2ガス供給源195は、還元性ガスとしてのH2ガスを供給する。C2H2ガス供給源196は、成膜原料ガスである炭素含有ガスとしてのアセチレン(C2H2)ガスを供給する。なお、C2H2ガス供給源196は、エチレン(C2H4)等の他の炭素含有ガスを供給してもよい。C2H2ガス供給源196が供給する炭素含有ガスは、後述する第1の炭素含有ガスおよび第2の炭素含有ガスの一例である。つまり、第1実施形態では、第1の炭素含有ガスおよび第2の炭素含有ガスとして同一の炭素含有ガスを用いる。なお、第1の炭素含有ガスおよび第2の炭素含有ガスは、例えば、アセチレンとエチレンといったように、異なる炭素含有ガスを用いてもよい。
【0015】
なお、分岐管191a、191b、191c、191d、191eには、図示してはいないが、流量制御用のマスフローコントローラおよびその前後のバルブが設けられている。なお、シャワープレートを設けてC2H2ガスおよびH2ガスをウエハWに近い位置に供給するようにしてガスの解離を調整することもできる。また、これらのガスを供給するノズルを下方に延ばすことにより同様の効果を得ることができる。
【0016】
マイクロ波導入装置105は、前述のように、処理容器101の上方に設けられ、処理容器101内に電磁波(マイクロ波)を導入してプラズマを生成するプラズマ生成手段として機能する。
【0017】
図2は、第1実施形態におけるマイクロ波導入装置の構成の一例を示す図である。図1および図2に示すように、マイクロ波導入装置105は、処理容器101の天壁部111と、マイクロ波出力部130と、アンテナユニット140とを有する。天壁部111は、天板として機能する。マイクロ波出力部130は、マイクロ波を生成するとともに、マイクロ波を複数の経路に分配して出力する。アンテナユニット140は、マイクロ波出力部130から出力されたマイクロ波を処理容器101に導入する。
【0018】
マイクロ波出力部130は、マイクロ波電源131と、マイクロ波発振器132と、アンプ133と、分配器134とを有している。マイクロ波発振器132はソリッドステートであり、例えば、860MHzでマイクロ波を発振(例えば、PLL発振)させる。なお、マイクロ波の周波数は、860MHzに限らず、2.45GHz、8.35GHz、5.8GHz、1.98GHz等、700MHzから10GHzの範囲のものを用いることができる。アンプ133は、マイクロ波発振器132によって発振されたマイクロ波を増幅する。分配器134は、アンプ133によって増幅されたマイクロ波を複数の経路に分配する。分配器134は、入力側と出力側のインピーダンスを整合させながらマイクロ波を分配する。
【0019】
アンテナユニット140は、複数のアンテナモジュール141を含んでいる。複数のアンテナモジュール141は、それぞれ、分配器134によって分配されたマイクロ波を処理容器101内に導入する。複数のアンテナモジュール141の構成は全て同一である。各アンテナモジュール141は、分配されたマイクロ波を主に増幅して出力するアンプ部142と、アンプ部142から出力されたマイクロ波を処理容器101内に放射するマイクロ波放射機構143とを有する。
【0020】
アンプ部142は、位相器145と、可変ゲインアンプ146と、メインアンプ147と、アイソレータ148とを有する。位相器145は、マイクロ波の位相を変化させる。可変ゲインアンプ146は、メインアンプ147に入力されるマイクロ波の電力レベルを調整する。メインアンプ147は、ソリッドステートアンプとして構成されている。アイソレータ148は、後述するマイクロ波放射機構143のアンテナ部で反射されてメインアンプ147に向かう反射マイクロ波を分離する。
【0021】
ここで、図3を用いてマイクロ波放射機構143について説明する。図3は、第1実施形態におけるマイクロ波放射機構の一例を模式的に示す図である。複数のマイクロ波放射機構143は、図1に示すように、天壁部111に設けられている。また、図3に示すように、マイクロ波放射機構143は、筒状をなす外側導体152および外側導体152内に外側導体152と同軸状に設けられた内側導体153を有する。マイクロ波放射機構143は、外側導体152と内側導体153との間にマイクロ波伝送路を有する同軸管151と、チューナ154と、給電部155と、アンテナ部156とを有する。チューナ154は、負荷のインピーダンスをマイクロ波電源131の特性インピーダンスに整合させる。給電部155は、アンプ部142からの増幅されたマイクロ波をマイクロ波伝送路に給電する。アンテナ部156は、同軸管151からのマイクロ波を処理容器101内に放射する。
【0022】
給電部155は、外側導体152の上端部の側方から同軸ケーブルによりアンプ部142で増幅されたマイクロ波が導入され、例えば、給電アンテナによりマイクロ波を放射する。このマイクロ波の放射により、外側導体152と内側導体153との間のマイクロ波伝送路にマイクロ波電力が給電され、マイクロ波電力がアンテナ部156に向かって伝播する。
【0023】
アンテナ部156は、同軸管151の下端部に設けられている。アンテナ部156は、内側導体153の下端部に接続された円板状をなす平面アンテナ161と、平面アンテナ161の上面側に配置された遅波材162と、平面アンテナ161の下面側に配置されたマイクロ波透過板163とを有している。マイクロ波透過板163は天壁部111に嵌め込まれており、その下面は処理容器101の内部空間に露出している。平面アンテナ161は、貫通するように形成されたスロット161aを有している。スロット161aの形状は、マイクロ波が効率良く放射されるように適宜設定される。スロット161aには誘電体が挿入されていてもよい。
【0024】
遅波材162は、真空よりも大きい誘電率を有する材料によって形成されており、その厚さによりマイクロ波の位相を調整することができ、マイクロ波の放射エネルギーが最大となるようにすることができる。マイクロ波透過板163も誘電体で構成されマイクロ波をTEモードで効率的に放射することができるような形状をなしている。そして、マイクロ波透過板163を透過したマイクロ波は、処理容器101内の空間にプラズマを生成する。遅波材162およびマイクロ波透過板163を構成する材料としては、例えば、石英やセラミックス、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等のフッ素系樹脂、ポリイミド樹脂等を用いることができる。
【0025】
チューナ154は、スラグチューナを構成している。チューナ154は、図3に示すように、スラグ171a,171bと、アクチュエータ172と、チューナコントローラ173とを有している。スラグ171a,171bは、同軸管151のアンテナ部156よりも基端部側(上端部側)の部分に配置された2つのスラグである。アクチュエータ172は、これら2つのスラグをそれぞれ独立して駆動する。チューナコントローラ173は、アクチュエータ172を制御する。
【0026】
スラグ171a,171bは、板状かつ環状をなし、セラミックス等の誘電体材料で構成され、同軸管151の外側導体152と内側導体153の間に配置されている。また、アクチュエータ172は、例えば、内側導体153の内部に設けられた、それぞれスラグ171a,171bが螺合する2本のねじを回転させることによりスラグ171a,171bを個別に駆動する。そして、チューナコントローラ173からの指令に基づいて、アクチュエータ172によって、スラグ171a,171bを上下方向に移動させる。チューナコントローラ173は、終端部のインピーダンスが50Ωになるように、スラグ171a,171bの位置を調整する。
【0027】
メインアンプ147と、チューナ154と、平面アンテナ161とは近接配置している。そして、チューナ154と平面アンテナ161とは集中定数回路を構成し、かつ共振器として機能する。平面アンテナ161の取り付け部分には、インピーダンス不整合が存在する。しかしながら、チューナ154によりプラズマ負荷に対して直接チューニングするので、プラズマを含めて高精度でチューニングすることができ、平面アンテナ161における反射の影響を解消することができる。
【0028】
マイクロ波放射機構143は、例えば、7本設けられる。7本のマイクロ波放射機構143に対応するマイクロ波透過板163は、図4に示すように、均等に六方最密配置になるように配置されている。図4は、第1実施形態に係る処理容器101の天壁部111の一例を模式的に示す図である。すなわち、7つのマイクロ波透過板163のうち1つは、天壁部111の中央に配置されている。他の6つのマイクロ波透過板163は、中央に配置されたマイクロ波透過板163の周囲に配置されている。これら7つのマイクロ波透過板163は、隣接するマイクロ波透過板163が等間隔になるように配置されている。また、ガス供給機構103の複数のガス導入ノズル123は、中央のマイクロ波透過板163の周囲を囲むように配置されている。なお、マイクロ波放射機構143の本数は7本に限るものではない。
【0029】
図1に戻り、制御部106は、典型的にはコンピュータからなり、処理装置100の各部を制御するようになっている。制御部106は処理装置100のプロセスシーケンスおよび制御パラメータであるプロセスレシピを記憶した記憶部や、入力手段およびディスプレイ等を備えており、選択されたプロセスレシピに従って所定の制御を行うことが可能である。
【0030】
例えば、制御部106は、後述するプリコート方法を行うように、処理装置100の各部を制御する。詳細な一例を挙げると、制御部106は、第1の圧力の下で、第1の炭素含有ガスのプラズマにより、処理容器101の内壁を第1のカーボン膜で被覆するプリコート工程を実行する。制御部106は、第2の圧力の下で、第1のカーボン膜をプラズマにより処理するプラズマ処理工程を実行する。本実施形態におけるプラズマ処理工程では、制御部106は、第2の圧力の下で、第2の炭素含有ガスのプラズマにより、第1のカーボン膜上に第1のカーボン膜よりも広い範囲で処理容器101の内壁を被覆する第2のカーボン膜を形成する。ここで、第1の炭素含有ガス及び第2の炭素含有ガスは、C2H2ガス供給源196から供給されるアセチレン(C2H2)ガスと、H2ガス供給源195から供給されるH2ガスとを含む混合ガスを用いることができる。なお、第1の炭素含有ガス及び第2の炭素含有ガスは、CH系ガスと、H2ガスとを含む混合ガスであればよく、CH系ガスとしてエチレン(C2H4)ガス等が用いられてもよい。また、第2の圧力は、第1の圧力よりも低い。言い換えると、第1の圧力は、第2の圧力よりも高い。
【0031】
[第1のカーボン膜による被覆]
図5は、第1実施形態における第1のカーボン膜の被覆位置の一例を示す図である。図5に示すように、処理容器101の天壁部111には、プラズマ源であるマイクロ波透過板163が設けられている。マイクロ波透過板163の下面は、処理容器101の内部空間に露出している。処理装置100は、処理容器101の圧力を第1の圧力に減圧し、プラズマ生成ガスとして第1の炭素含有ガスをガス導入ノズル123から処理容器101内に供給してプラズマを着火する。第1の圧力は例えば2000mTorrとし、第1のカーボン膜201上に第2のカーボン膜202(図6参照)を形成する場合の第2の圧力(例えば、50mTorr)よりも高い。このため、図5に示すように、処理容器101の空間Sにおいて、プラズマ源であるマイクロ波透過板163近傍に高密度のプラズマP1が形成される。つまり、プラズマP1は、天壁部111の直下の領域に形成される。これにより、天壁部111の内壁は、第1のカーボン膜201によって被覆される。なお、プラズマP1は、処理容器101内の圧力が下がるほど、載置台102側に広がり、処理容器101内の圧力が上がるほど、天壁部111側に狭くなる。以下の説明では、第1のカーボン膜201によって処理容器101の内壁(例えば、天壁部111の内壁)を被覆する処理を、プリコート工程という。
【0032】
処理容器101内において、第1の圧力では、プラズマP1は、天壁部111の直下の領域に形成され、その結果、天壁部111の内壁に第1のカーボン膜201が選択的に形成される。このため、プラズマダメージが比較的に大きい天壁部111の内壁を第1のカーボン膜201によって保護することができ、プラズマダメージに起因したパーティクルの発生を抑制することができる。
【0033】
[第2のカーボン膜の形成]
図6は、第1実施形態における第2のカーボン膜の形成位置の一例を示す図である。図6に示すように、天壁部111の内壁は、プリコート工程によって形成された第1のカーボン膜201で被覆されている。処理装置100は、処理容器101の圧力を第2の圧力に減圧し、プラズマ生成ガスとして第2の炭素含有ガスをガス導入ノズル123から処理容器101内に供給してプラズマを着火する。第2の圧力は例えば50mTorrとし、第1のカーボン膜201で処理容器101の内壁を被覆する場合の第1の圧力(例えば、2000mTorr)よりも低い。処理容器101内の圧力が低くなるほど、着火されたプラズマが載置台102側へ広がる。このため、図6に示すように、処理容器101の空間Sにおいて、プラズマ源であるマイクロ波透過板163近傍にプラズマP1よりも広い範囲でプラズマP2が形成される。これにより、第1のカーボン膜201上に第2のカーボン膜202が形成される。第2のカーボン膜202は、第1のカーボン膜201よりも広い範囲で処理容器101の内壁を被覆する。以下の説明では、第1のカーボン膜201をプラズマにより処理して第1のカーボン膜201上に第2のカーボン膜202を形成する処理を、プラズマ処理工程という。
【0034】
処理容器101内において、第2の圧力では、プラズマP2は、天壁部111の直下及び側壁部112の上部近傍の領域に形成され、その結果、第1のカーボン膜201上及び側壁部112の上部の内壁に第2のカーボン膜202が形成される。このため、天壁部111の内壁を第1のカーボン膜201及び第2のカーボン膜202によって保護するとともに、側壁部112の上部の内壁を第2のカーボン膜202によって保護することができる。これにより、チャンバコンディションの変化を抑制することができる。結果として、プリコート工程後に処理容器101内でウエハWに対して連続成膜を行う場合であっても、チャンバコンディションの変化に応じてウエハW間の膜厚分布が不均一となることを抑制することができる。つまり、連続成膜におけるウエハW間の膜厚の均一性を向上させることができる。
【0035】
なお、プリコート工程及びプラズマ処理工程において、第1の炭素含有ガス及び第2の炭素含有ガスに水素(H2)ガスを添加すると、H2ガスは、第1のカーボン膜201及び第2のカーボン膜202を形成する際にエッチング成分として寄与する。このため、H2ガスは、結合の不安定なカーボン結合をエッチングして第1のカーボン膜201及び第2のカーボン膜202の構造を安定化させることができる。第2の炭素含有ガスにおける、C2H2ガスに対するH2ガスの流量比は、第1の炭素含有ガスにおける、C2H2ガスに対するH2ガスの流量比よりも高いことが好ましい。すなわち、プリコート工程では、C2H2ガスに対するH2ガスの流量比として第1の流量比を用い、プラズマ処理工程では、C2H2ガスに対するH2ガスの流量比として第1の流量比よりも高い第2の流量比を用いる。これにより、最表層である第2のカーボン膜202の構造をより安定化させることができる。これにより、ウエハW上にカーボン膜であるグラフェン膜を成膜する場合に成膜特性の制御のために導入されるH2ガスによって第2のカーボン膜202がエッチングされることを抑制することができ、チャンバコンディションを安定化することができる。
【0036】
また、プリコート工程において、第1の炭素含有ガスに窒素(N2)ガスを添加すると、第1のカーボン膜201中に窒素が添加され、第1のカーボン膜201のエッチング耐性を向上させることができる。このため、第1の炭素含有ガスは、さらにN2ガスを含有することが好ましい。一方で、プラズマ処理工程において、第2の炭素含有ガスに窒素(N2)ガスを添加すると、第1のカーボン膜201と同様に第2のカーボン膜202中に窒素が添加される。しかしながら、第2のカーボン膜202が最表層であるため、ウエハWに対して成膜を行う場合に第2のカーボン膜202からの窒素がウエハWに悪影響を及ぼす可能性がある。このため、第2の炭素含有ガスは、N2ガスを含有しないことが好ましい。
【0037】
[成膜処理]
次に、第1実施形態に係るプリコート方法を適用した成膜処理の流れについて説明する。図7は、第1実施形態に係るプリコート方法を適用した成膜処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0038】
図7に示すように、制御部106は、プリコート工程を実行する(ステップS1)。制御部106は、処理容器101内にウエハWが搬入されていない状態でプリコート工程を実行する。制御部106は、処理容器101内の圧力を第1の圧力(例えば、2000mTorr)に減圧する。制御部106は、ガス導入ノズル123から、プラズマ生成ガスであるArガスを処理容器101内に供給する。そして、制御部106は、マイクロ波放射機構143からマイクロ波を放射させて、処理容器101内にプラズマを生成させる。制御部106は、プラズマが生成されたタイミングでガス導入ノズル123から第1の炭素含有ガスを供給する。これにより、天壁部111の内壁は、第1のカーボン膜201によって被覆される。プリコート工程が実行されることによって、処理容器101内に存在するパーティクル源が第1のカーボン膜201によってカバーされる。
【0039】
また、プリコート工程では、第1の炭素含有ガスにH2ガスを添加すると、H2ガスは第1のカーボン膜201に対してエッチング成分として寄与する。このように、エッチング成分を添加することで、結合の不安定なカーボン結合をエッチングして第1のカーボン膜201の構造を安定化させることができる。プリコート工程では、C2H2ガスに対するH2ガスの流量比として第1の流量比が用いられる。また、プリコート工程では、第1の炭素含有ガスにN2ガスを添加すると、第1のカーボン膜201中に窒素が添加され、第1のカーボン膜201のエッチング耐性を向上させることができる。
【0040】
例えば、制御部106は、下記の処理条件でプリコート工程が実行されるように、処理装置100の各部を制御する。
(プリコート工程の処理条件)
中央に配置されたマイクロ波放射機構143のマイクロ波電力:0~550W
周囲に配置されたマイクロ波放射機構143のマイクロ波電力:0~550W
処理容器101内の圧力:20~10000mTorr(2.7~1330Pa)
処理ガス:C2H2=0.1~100sccm
H2=0~500sccm
Ar=0~3000sccm
N2=0~3000sccm
処理時間:1~3600sec
【0041】
制御部106は、プラズマ処理工程を実行する(ステップS2)。制御部106は、処理容器101内の圧力を第2の圧力(例えば、50mTorr)に減圧する。制御部106は、ガス導入ノズル123から、プラズマ生成ガスであるArガスを処理容器101内に供給する。そして、制御部106は、マイクロ波放射機構143からマイクロ波を放射させて、処理容器101内にプラズマを生成させる。制御部106は、プラズマが生成されたタイミングでガス導入ノズル123から第2の炭素含有ガスを供給する。これにより、第1のカーボン膜201上に第2のカーボン膜202が形成される。第2のカーボン膜202は、第1のカーボン膜201よりも広い範囲で処理容器101の内壁を被覆する。これにより、第1のカーボン膜201及び側壁部112上部の内壁が、第2のカーボン膜202によって被覆される。その結果、チャンバコンディションの変化を抑制することができる。
【0042】
また、プラズマ処理工程では、第2の炭素含有ガスにH2ガスを添加すると、H2ガスは第2のカーボン膜202に対してエッチング成分として寄与する。このように、エッチング成分を添加することで、結合の不安定なカーボン結合をエッチングして第2のカーボン膜202の構造を安定化させることができる。プラズマ処理工程では、C2H2ガスに対するH2ガスの流量比として第2の流量比が用いられる。第2の流量比は、第1の流量比よりも高い。すなわち、プラズマ処理工程では、C2H2ガスに対するH2ガスの流量比として第1の流量比よりも高い第2の流量比を用いる。これにより、最表層である第2のカーボン膜202の構造をより安定化させることができる。これにより、後述の成膜工程において成膜特性の制御のために導入されるH2ガスによって第2のカーボン膜202がエッチングされることを抑制することができ、チャンバコンディションを安定化することができる。また、プラズマ処理工程では、最表層の第2のカーボン膜202への窒素の添加を防止するために、第2の炭素含有ガスは、N2ガスを含有しないことが好ましい。
【0043】
例えば、制御部106は、下記の処理条件でプラズマ処理工程が実行されるように、処理装置100の各部を制御する。
(プラズマ処理工程の処理条件)
中央に配置されたマイクロ波放射機構143のマイクロ波電力:0~550W
周囲に配置されたマイクロ波放射機構143のマイクロ波電力:0~550W
処理容器101内の圧力:10~1000mTorr(1.3~130Pa)
処理ガス:C2H2=0.1~100sccm
H2=1~500sccm
Ar=0~3000sccm
N2=0~3000sccm
処理時間:1~3600sec
【0044】
制御部106は、処理容器101内の載置台102にウエハWを載置する(ステップS3)。
【0045】
制御部106は、成膜工程を実行する(ステップS4)。制御部106は、処理容器101内の圧力を例えば50mTorrに設定し、ガス導入ノズル123から、プラズマ生成ガスであるArガスを処理容器101内に供給する。そして、制御部106は、マイクロ波放射機構143からマイクロ波を放射させて、処理容器101内にプラズマを生成させる。制御部106は、プラズマが生成されたタイミングでガス導入ノズル123からC2H2/H2ガス等の炭素含有ガスを供給する。これにより、ウエハW上にカーボン膜であるグラフェン膜が成膜される。炭素含有ガスに含まれるH2ガスは、エッチング成分として寄与し、グラフェン膜の成膜特性の制御のために導入される。
【0046】
例えば、制御部106は、下記の処理条件で成膜工程が実行されるように、処理装置100の各部を制御する。
(成膜工程の処理条件)
中央に配置されたマイクロ波放射機構143のマイクロ波電力:0~550W
周囲に配置されたマイクロ波放射機構143のマイクロ波電力:0~550W
処理容器101内の圧力:10~1000mTorr(13.3~133Pa)
処理ガス:C2H2=0.1~100sccm
H2=0~500sccm
Ar=1~3000sccm
処理時間:1~3600sec
【0047】
制御部106は、グラフェン膜が成膜されたウエハWを処理容器101から搬出する(ステップS5)。制御部106は、処理容器101内をクリーニングする必要があるか否かを判定する(ステップS6)。例えば、制御部106は、クリーニングした後に処理容器101内でウエハWを処理した枚数が予め定めた値に到達したか否かで判定する。制御部106は、処理容器101内をクリーニングする必要がないと判定した場合には(ステップS6:No)、ステップS3に戻り、次のウエハWを載置して成膜工程を行う。
【0048】
制御部106は、処理容器101内をクリーニングする必要があると判定した場合には(ステップS6:Yes)、処理容器101内をクリーニングするクリーニング工程を実行する(ステップS7)。クリーニング工程では、制御部106は、クリーニングガスを処理容器101内に供給し、処理容器101内をクリーニングする。
【0049】
制御部106は、成膜処理を終了するか否かを判定する(ステップS8)。制御部106は、成膜処理を終了しないと判定した場合には(ステップS8:No)、ステップS1に戻り、プリコート工程及びプラズマ処理工程を実行する。一方、制御部106は、成膜処理を終了すると判定した場合には(ステップS8:Yes)、成膜処理を終了する。
【0050】
[第2実施形態]
第1実施形態では、プラズマ処理工程において、プラズマにより第1のカーボン膜201上に第2のカーボン膜202を形成したが、プラズマにより第1のカーボン膜201の表面を改質してもよい。
【0051】
[第1のカーボン膜の改質]
図8は、第2実施形態における第1のカーボン膜201の改質の一例を説明する図である。図8に示すように、天壁部111の内壁は、プリコート工程によって形成された第1のカーボン膜201で被覆されている。処理装置100は、処理容器101の圧力を第2の圧力に減圧し、プラズマ生成ガスとして改質ガスをガス導入ノズル123から処理容器101内に供給してプラズマを着火する。改質ガスは、例えば、H2ガスと希ガスとを含む混合ガスである。希ガスは、例えば、Arガスである。第2の圧力は例えば50mTorrとし、第1のカーボン膜201で処理容器101の内壁を被覆する場合の第1の圧力(例えば、2000mTorr)よりも低い。処理容器101内の圧力が低くなるほど、着火されたプラズマが載置台102側へ広がる。このため、図8に示すように、処理容器101の空間Sにおいて、プラズマ源であるマイクロ波透過板163近傍にプラズマP1(図5参照)よりも広い範囲でプラズマP3が形成される。また、処理容器101の空間Sにおいて、プラズマP3が載置台102側へ広がるほど、改質ガス(H2ガス)の分子、原子及び活性種等が活性化される。このため、図8に示すように、活性化された改質ガス(H2ガス)の分子、原子及び活性種等に第1のカーボン膜201が晒されることで、第1のカーボン膜201の表面が改質されて改質膜201aが形成される。改質膜201aは、改質ガス(H2ガス)の分子、原子及び活性種等に晒されることで硬化され、第1のカーボン膜201よりも水素に関するプラズマ耐性が高い膜となる。これにより、チャンバコンディションの変化を抑制することができる。結果として、プリコート工程後に処理容器101内でウエハWに対して連続成膜を行う場合であっても、チャンバコンディションの変化に応じてウエハW間の膜厚分布が不均一となることを抑制することができる。つまり、連続成膜におけるウエハW間の膜厚の均一性を向上させることができる。
【0052】
[成膜処理]
次に、第2実施形態に係るプリコート方法を適用した成膜処理の流れについて説明する。図9は、第2実施形態に係るプリコート方法を適用した成膜処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図9のステップS13~S18は、それぞれ図7のステップS3~S8と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0053】
図9に示すように、制御部109は、プリコート工程を実行する(ステップS11)。第1実施形態と同様に、制御部106は、処理容器101内にウエハWが搬入されていない状態でプリコート工程を実行する。制御部106は、処理容器101内の圧力を第1の圧力(例えば2000mTorr)に減圧し、プラズマを着火して第1の炭素含有ガスを供給する。これにより、天壁部111の内壁は、第1のカーボン膜201によって被覆される。プリコート工程が実行されることによって、処理容器101内に存在するパーティクル源が第1のカーボン膜201によってカバーされる。
【0054】
制御部109は、プラズマ処理工程を実行する(ステップS12)。制御部106は、処理容器101内の圧力を第2の圧力(例えば、50mTorr)に減圧し、プラズマを着火して改質ガスを供給する。これにより、第1のカーボン膜201の表面が改質される。
(プラズマ処理工程(改質処理工程)の処理条件)
中央に配置されたマイクロ波放射機構143のマイクロ波電力:0~550W
周囲に配置されたマイクロ波放射機構143のマイクロ波電力:0~550W
処理容器101内の圧力:10~1000mTorr(1.3~130Pa)
処理ガス:H2=1~500sccm
Ar=0~3000sccm
N2=0~3000sccm
ただし、H2/Ar=0.1%~100%とする。
処理時間:1~3600sec
【0055】
[実験結果]
上記した各実施形態に係るプリコート方法を適用してウエハWに対するグラフェン膜の連続成膜を行った場合のグラフェン膜の膜厚の変化について実験を行った。図10は、各実施形態に係るプリコート方法を適用した場合と通常のプリコート方法を適用した場合におけるウエハW上に成膜されるグラフェン膜の膜厚の変化の一例を示すグラフである。図10では、グラフ251~253を示す。グラフ251は、第1実施形態に係るプリコート方法(つまり、第1のカーボン膜201上に第2のカーボン膜202を形成するプリコート方法)を適用して12枚のウエハWに対するグラフェン成膜処理を行った場合のグラフである。グラフ252は、第2実施形態に係るプリコート方法(つまり、第1のカーボン膜201の表面を改質するプリコート方法)を適用して5枚のウエハWに対するグラフェン成膜処理を行った場合のグラフである。グラフ253は、通常のプリコート方法を適用して8枚のウエハWに対するグラフェン成膜処理を行った場合のグラフである。ここで、通常のプリコート方法とは、プリコート工程を実行した後にプラズマ処理工程を実行しないプリコート方法である。
【0056】
グラフ253に示すように、通常のプリコート方法を適用した場合、1枚目のウエハWに対して、2枚目以降のウエハWでは、グラフェン膜の膜厚が薄くなる方向に変化した。これに対して、グラフ251、252に示すように、各実施形態に係るプリコート方法を適用した場合、グラフェン膜の膜厚の変化はほぼ無く、2枚目以降のウエハWにおいて膜厚がほぼ一定となった。すなわち、各実施形態では、グラフェン膜の連続成膜におけるウエハW間の膜厚の均一性を向上させることができることが確認された。
【0057】
以上、第1実施形態によれば、処理装置100は、プラズマによりカーボン膜(グラフェン膜)の成膜を行うための処理容器101と、制御部106とを有する。制御部106は、第1の圧力の下で、第1の炭素含有ガスのプラズマにより、処理容器101の内壁を第1のカーボン膜201で被覆するプリコート工程と、第2の圧力の下で、第1のカーボン膜201をプラズマにより処理するプラズマ処理工程と、を実行する。その結果、連続成膜におけるウエハW間の膜厚の均一性を向上させることができる。
【0058】
また、第1実施形態によれば、第2の圧力は、第1の圧力よりも低い。換言すれば、第1の圧力は、第2の圧力よりも高い。第1の圧力を高圧とすることで、処理容器内で生成されるプラズマを第1のカーボン膜201の処理に適した範囲で選択的に広げることができる。
【0059】
また、第1実施形態によれば、プラズマ処理工程は、第2の圧力の下で、第2の炭素含有ガスのプラズマにより、第1のカーボン膜上に第1のカーボン膜よりも広い範囲で処理容器の内壁を被覆する第2のカーボン膜を形成する。その結果、チャンバコンディションの変化を抑制することができ、チャンバコンディションの変化に応じてウエハW間の膜厚分布が不均一となることを抑制することができる。
【0060】
また、第1実施形態によれば、第1の炭素含有ガス及び第2の炭素含有ガスは、CH系ガスとH2ガスとを含むガスである。そして、プリコート工程は、CH系ガスに対するH2ガスの流量比として第1の流量比を用い、プラズマ処理工程は、CH系ガスに対するH2ガスの流量比として第1の流量比よりも高い第2の流量比を用いる。その結果、ウエハW上にカーボン膜であるグラフェン膜を成膜する場合に成膜特性の制御のために導入されるH2ガスによって第2のカーボン膜202がエッチングされることを抑制することができ、チャンバコンディションをより安定化することができる。
【0061】
また、第1実施形態によれば、第1の炭素含有ガスは、さらにN2ガスを含有し、第2の炭素含有ガスは、N2ガスを含有しない。その結果、第1のカーボン膜201のエッチング耐性を向上させることができ、且つ第2のカーボン膜202からの窒素がウエハWに悪影響を及ぼす可能性を低減することができる。
【0062】
また、第2実施形態によれば、プラズマ処理工程は、第2の圧力の下で、改質ガスのプラズマにより、第1のカーボン膜の表面を改質する。その結果、チャンバコンディションの変化を抑制することができ、チャンバコンディションの変化に応じてウエハW間の膜厚分布が不均一となることを抑制することができる。
【0063】
また、第2実施形態によれば、改質ガスは、H2ガスと希ガスとを含むガスである。その結果、第1のカーボン膜201の表面を改質して、第1のカーボン膜201よりも水素に関するプラズマ耐性が高い改質膜201aを形成することができる。
【0064】
また、第2実施形態によれば、希ガスは、Arガスである。その結果、プラズマを容易に着火することができる。
【0065】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0066】
例えば、上記した実施形態では、載置台102上にウエハWを載置せずにプリコート工程及びプラズマ処理工程を行ったが、開示技術はこれに限定されない。例えば、載置台102上へのパーティクル落下や、載置台102表面へのカーボン膜堆積を防止するためにダミーウエハを載置してプリコート工程及びプラズマ処理工程を実行するようにしてもよい。
【0067】
また、上記した実施形態では、ウエハW上にグラフェン膜を成膜する形態を説明したが、これに限定されない。例えば、ウエハW上にアモルファスカーボン膜やダイヤモンドライクカーボン膜を成膜する場合にも適用することができる。
【0068】
また、上記した実施形態では、処理容器101にマイクロ波源であるマイクロ波放射機構143を複数設けた処理装置100を用いたが、これに限定されない。例えば、マイクロ波源として1つの平面スロットアンテナを用いてマイクロ波を放射する処理装置を用いてもよい。
【0069】
また、上記した実施形態では、天壁部111に複数のガス導入ノズル123を設けたが、これに限定されない。例えば、処理容器内の載置台の上方位置に上下を仕切るように設けられたシャワープレートを介してガスを供給するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
100 処理装置
101 処理容器
102 載置台
106 制御部
111 天壁部
112 側壁部
201 第1のカーボン膜
202 第2のカーボン膜
P1~P3 プラズマ
W ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10