(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】偏光フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20231215BHJP
【FI】
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2022086272
(22)【出願日】2022-05-26
(62)【分割の表示】P 2018185678の分割
【原出願日】2018-09-28
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100224591
【氏名又は名称】畑 征志
(72)【発明者】
【氏名】太田 陽介
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-168690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1樹脂層、偏光子、配向膜、及び第2樹脂層がこの順に
互いに隣接して積層された偏光フィルムであって、
第1樹脂層は、(メタ)アクリル化合物を含む第1硬化性組成物の硬化物であり、
偏光子は、(メタ)アクリロイル基を有する重合性液晶化合物と二色性色素とを含む偏光子形成用組成物の硬化物であり、
配向膜は、(メタ)アクリル化合物を含む配向膜形成用組成物の硬化物であり、
第2樹脂層は、(メタ)アクリル化合物を含む第2硬化性組成物の硬化物であり、
第1硬化性組成物及び第2硬化性組成物はラジカル重合開始剤を含む、偏光フィルム。
【請求項2】
第1硬化性組成物及び第2硬化性組成物の少なくとも一方は、(メタ)アクリル化合物として、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含む、請求項1に記載の偏光フィルム。
【請求項3】
前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、単位分子量あたりの(メタ)アクリロイル基数が15×10
-4以上である、請求項2に記載の偏光フィルム。
【請求項4】
第1硬化性組成物及び第2硬化性組成物の少なくとも一方は、(メタ)アクリル化合物として、多官能(メタ)アクリレート化合物を含む、請求項1~3のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項5】
前記多官能(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリロイル基の数は、6以上である、請求項4に記載の偏光フィルム。
【請求項6】
前記多官能(メタ)アクリレート化合物は分岐構造を有し、該分岐構造中の(メタ)アクリロイル基に最も近い分岐点と、該(メタ)アクリロイル基とを連結する鎖の原子数は3以下である、請求項4又は5に記載の偏光フィルム。
【請求項7】
第2樹脂層、配向膜、及び偏光子がこの順に
互いに隣接して積層された積層体の偏光子面に、第1硬化性組成物を塗布又は重ね合わせ、該第1硬化性組成物を硬化させる工程を含む、請求項1~6のいずれかに記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項8】
離型フィルム上に形成された第1硬化性組成物と、第2樹脂層、配向膜、及び偏光子がこの順に
互いに隣接して積層された積層体の偏光子面とを重ね合わせ、離型フィルム側から活性エネルギー線を照射して第1硬化性組成物を硬化させることにより、離型フィルム、第1樹脂層、偏光子、配向膜、及び第2樹脂層がこの順に
互いに隣接して積層された積層体を得、該積層体から離型フィルムを剥離する工程を含む、請求項1~6のいずれかに記載の偏光フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1樹脂層、偏光子、配向膜、第2樹脂層がこの順に積層された偏光フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネル表示装置(FPD)には、偏光フィルム等が用いられている。このような偏光フィルムとしては、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素等の二色性色素が配向吸着された偏光子のほか、重合性液晶化合物を基材上に塗布して重合させることで得られる偏光フィルムが知られている。例えば、特許文献1には、重合性液晶化合物の重合体及び二色性色素を含む偏光子の両面に色素拡散防止層を有する偏光フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者の検討によれば、このような偏光フィルムは、疎水性である重合性液晶とは極性の異なる水溶性樹脂により色素拡散防止層(樹脂層)が形成されているため、各層界面の相溶性が十分でなく、十分な密着性を有さない場合があることがわかった。
【0005】
従って、本発明の目的は、層間の密着性に優れた偏光フィルム及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、第1樹脂層、偏光子、配向膜、及び第2樹脂層がこの順に積層された偏光フィルムにおいて、第1樹脂層、偏光子、配向膜、及び第2樹脂層をそれぞれ(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含む組成物の硬化物で形成すれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明には、以下の態様が含まれる。
【0007】
[1]第1樹脂層、偏光子、配向膜、及び第2樹脂層がこの順に積層された偏光フィルムであって、
第1樹脂層は、(メタ)アクリル化合物を含む第1硬化性組成物の硬化物であり、
偏光子は、(メタ)アクリロイル基を有する重合性液晶化合物と二色性色素とを含む偏光子形成用組成物の硬化物であり、
配向膜は、(メタ)アクリル化合物を含む配向膜形成用組成物の硬化物であり、
第2樹脂層は、(メタ)アクリル化合物を含む第2硬化性組成物の硬化物である、偏光フィルム。
[2]第1硬化性組成物及び第2硬化性組成物の少なくとも一方は、ラジカル重合開始剤を含む、[1]に記載の偏光フィルム。
[3]第1硬化性組成物及び第2硬化性組成物の少なくとも一方は、(メタ)アクリル化合物として、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含む、[1]又は[2]に記載の偏光フィルム。
[4]前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、単位分子量あたりの(メタ)アクリロイル基数が15×10-4以上である、[3]に記載の偏光フィルム。
[5]第1硬化性組成物及び第2硬化性組成物の少なくとも一方は、(メタ)アクリル化合物として、多官能(メタ)アクリレート化合物を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の偏光フィルム。
[6]前記多官能(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリロイル基の数は、6以上である、[5]に記載の偏光フィルム。
[7]前記多官能(メタ)アクリレート化合物は分岐構造を有し、該分岐構造中の(メタ)アクリロイル基に最も近い分岐点と、該(メタ)アクリロイル基とを連結する鎖の原子数は3以下である、[5]又は[6]に記載の偏光フィルム。
[8]第2樹脂層、配向膜、及び偏光子がこの順に積層された積層体の偏光子面に、第1硬化性組成物を塗布又は重ね合わせ、該第1硬化性組成物を硬化させる工程を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の偏光フィルムの製造方法。
[9]離型フィルム上に形成された第1硬化性組成物と、第2樹脂層、配向膜、及び偏光子がこの順に積層された積層体の偏光子面とを重ね合わせ、離型フィルム側から活性エネルギー線を照射して第1硬化性組成物を硬化させることにより、離型フィルム、第1樹脂層、偏光子、配向膜、及び第2樹脂層がこの順に積層された積層体を得、該積層体から離型フィルムを剥離する工程を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の偏光フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の偏光フィルムは、層間の密着性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一態様である前面板付き偏光フィルムの層構成の概略断面図である。
【
図2】本発明の一態様である前面板付き偏光板の層構成の概略断面図である。
【
図3】本発明の一態様である前面板付き偏光フィルムの層構成の概略断面図である。
【
図4】本発明の一態様である前面板付き偏光板の層構成の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[偏光フィルム]
本発明の偏光フィルムは、第1樹脂層、偏光子、配向膜、及び第2樹脂層がこの順に積層されている。第1樹脂層は(メタ)アクリル化合物を含む第1硬化性組成物の硬化物であり、偏光子は(メタ)アクリロイル基を有する重合性液晶化合物と二色性色素とを含む偏光子形成用組成物の硬化物であり、配向膜は(メタ)アクリル化合物を含む配向膜形成用組成物の硬化物であり、第2樹脂層は(メタ)アクリル化合物を含む第2硬化性組成物の硬化物である。このように本発明の偏光フィルムは、各層がそれぞれ(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含む組成物の硬化物で構成されている、すなわち、(メタ)アクリロイル基を有する化合物の重合体を含んで構成されるため、各層界面の相溶性が高く、層間の優れた密着性を発現できる。
【0011】
<偏光子>
本発明の偏光フィルムに含まれる偏光子は、配向膜の第2樹脂層とは反対側の面に形成されている。該偏光子は、(メタ)アクリロイル基を有する重合性液晶化合物と二色性色素とを含む偏光子形成用組成物の硬化物である。このような偏光子においては、二色性色素が重合性液晶化合物に包摂され、重合性液晶化合物と二色性色素が配向した状態で重合し、硬化されるが、従来広く用いられているポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させた偏光子と比較して、二色性色素が高分子成分に保持されにくく、高温環境下等において二色性色素が偏光子から第1樹脂層又は第2樹脂層へ熱拡散し、経時的に偏光性能の低下を生じやすい傾向がある。特に、偏光フィルムの層間の密着性を向上させるために、重合性液晶化合物の重合体と相溶性の良好な樹脂層を単に選択すると、偏光子に含まれる二色性色素の樹脂層への相溶性も向上するため、二色性色素の熱拡散が顕著に表れる傾向がある。本発明では、第1樹脂層及び第2樹脂層がそれぞれ(メタ)アクリル化合物を含む硬化性組成物の硬化物で構成されているため、架橋構造を形成し得る態様では密着性に加えて、優れた耐熱性を有することもでき、高温環境下に長時間曝露されても、偏光フィルムの偏光性能の低下を有効に抑制できる。なお、本明細書において、耐熱性とは、高温環境下に長時間曝露しても、偏光性能の低下、例えば偏光度や透過率等の変化を抑制できる特性を示し、耐熱性が高くなる又は向上するとは、偏光性能の低下又は変化がより少なくなることを示す。
【0012】
本発明の偏光フィルムにおいて、偏光子形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物(以下、「重合性液晶化合物(A)」ということがある)は、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する液晶化合物であり、偏光フィルムの密着性及び耐熱性向上の観点から、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する液晶化合物であることが好ましい。また、重合性液晶化合物(A)は、(メタ)アクリロイル基以外の重合性基を含んでいてもよい。重合性基とは、重合開始剤から発生する活性ラジカルや酸などによって重合反応に関与し得る基のことをいう。(メタ)アクリロイル基以外の重合性基としては、例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。本発明では、偏光フィルムの密着性及び耐熱性の観点から、重合性液晶化合物(A)の重合性基は(メタ)アクリロイル基で構成されていることが好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基で構成されていることがより好ましい。
【0013】
本発明において、重合性液晶化合物(A)はスメクチック液晶性を示す化合物であることが好ましい。スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物を用いることにより、配向秩序度の高い偏光子を形成することができる。重合性液晶化合物(A)の示す液晶状態はスメクチック相(スメクチック液晶状態)であり、より高い配向秩序度を実現し得る観点から、高次スメクチック相(高次スメクチック液晶状態)であることがより好ましい。ここで、高次スメクチック相とは、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相及びスメクチックL相を意味し、これらの中でも、スメクチックB相、スメクチックF相及びスメクチックI相がより好ましい。液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック性液晶でもよいが、緻密な膜厚制御が可能な点でサーモトロピック性液晶が好ましい。また、重合性液晶化合物(A)はモノマーであってもよいが、重合性基が重合したオリゴマーであってもポリマーであってもよい。
【0014】
重合性液晶化合物(A)としては、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する液晶化合物であれば特に限定されず、公知の重合性液晶化合物を用いることができるが、スメクチック液晶性を示す化合物が好ましい。そのような重合性液晶化合物としては、例えば、下記式(A1)で表される化合物(以下、「重合性液晶化合物(A1)」ということがある)が挙げられる。
U1-V1-W1-(X1-Y1-)n-X2-W2-V2-U2 (A1)
[式(A1)中、
X1及びX2は、互いに独立して、2価の芳香族基又は2価の脂環式炭化水素基を表し、ここで、該2価の芳香族基又は2価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基に置換されていてもよく、該2価の芳香族基又は2価の脂環式炭化水素基を構成する炭素原子が、酸素原子又は硫黄原子又は窒素原子に置換されていてもよい。ただし、X1及びX2のうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基又は置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基である。
Y1は、単結合又は二価の連結基である。
nは1~3であり、nが2以上の場合、複数のX1は互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。X2は、複数のX1のうちのいずれか又は全てと同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、nが2以上の場合、複数のY1は互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。液晶性の観点からnは2以上が好ましい。
U1は、水素原子又は(メタ)アクリロイルオキシ基を表わす。
U2は、(メタ)アクリロイルオキシ基を表わす。
W1及びW2は、互いに独立して、単結合又は二価の連結基である。
V1及びV2は、互いに独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成する-CH2-は、-O-、-CO-、-S-又はNH-に置き換わっていてもよい。]
【0015】
重合性液晶化合物(A1)において、X1及びX2は、互いに独立して、好ましくは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、又は、置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基であり、X1及びX2のうちの少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、又は、置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基であり、トランス-シクロへキサン-1,4-ジイル基であることが好ましい。置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、又は、置換基を有していてもよいシクロへキサン-1,4-ジイル基が任意に有する置換基としては、メチル基、エチル基及びブチル基などの炭素数1~4のアルキル基、シアノ基及び塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子が挙げられる。好ましくは無置換である。
【0016】
また、重合性液晶化合物(A1)は、式(A1)中、式(A1-1):
-(X1-Y1-)n-X2- (A1-1)
〔式中、X1、Y1、X2及びnはそれぞれ上記と同じ意味を示す。〕
で示される部分〔以下、部分構造(A1-1)と称する。〕が非対称構造であることが、スメクチック液晶性を発現し易い点で、好ましい。
部分構造(A1-1)が非対称構造である重合性液晶化合物(A1)としては、例えば、nが1であり、1つのX1とX2とが互いに異なる構造である重合性液晶化合物(A1)が挙げられる。また、nが2であり、2つのY1が互いに同じ構造である化合物であって、2つのX1が互いに同じ構造であり、1つのX2はこれら2つのX1とは異なる構造である重合性液晶化合物(A1)、2つのX1のうちのW1に結合するX1が、他方のX1及びX2とは異なる構造であり、他方のX1とX2とは互いに同じ構造である重合性液晶化合物(A1)も挙げられる。さらに、nが3であり、3つのY1が互いに同じ構造である化合物であって、3つのX1及び1つのX2のうちのいずれか1つが他の3つの全てと異なる構造である重合性液晶化合物(A1)が挙げられる。
【0017】
Y1は、-CH2CH2-、-CH2O-、-CH2CH2O-、-COO-、-OCOO-、単結合、-N=N-、-CRa=CRb-、-C≡C-、-CRa=N-又はCO-NRa-が好ましい。Ra及びRbは、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表わす。Y1は、-CH2CH2-、-COO-又は単結合であることがより好ましく、複数のY1が存在する場合、X2と結合するY1は、-CH2CH2-又はCH2O-であることがより好ましい。X1及びX2が全て同一構造である場合、互いに異なる結合方式である2以上のY1が存在することが好ましい。互いに異なる結合方式である複数のY1が存在する場合には、非対称構造となるため、スメクチック液晶性が発現しやすい傾向にある。
【0018】
U2は、(メタ)アクリロイルオキシ基である。U1は、水素原子又は(メタ)アクリロイルオキシ基であり、好ましくは(メタ)アクリロイルオキシ基である。偏光フィルムの層間の密着性及び耐熱性向上の観点から、U1及びU2がともに(メタ)アクリロイルオキシ基であることが好ましい。(メタ)アクリロイルオキシ基は重合している状態であってもよいし、未重合の状態であってもよいが、好ましくは未重合の状態である。
【0019】
V1及びV2で表されるアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基及びイコサン-1,20-ジイル基等が挙げられる。V1及びV2は、好ましくは炭素数2~12のアルカンジイル基であり、より好ましくは炭素数6~12のアルカンジイル基である。
【0020】
該アルカンジイル基が任意に有する置換基としては、シアノ基及びハロゲン原子等が挙げられるが、該アルカンジイル基は、無置換であることが好ましく、無置換の直鎖状アルカンジイル基であることがより好ましい。
【0021】
W1及びW2は、互いに独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-又はOCOO-が好ましく、単結合又はO-がより好ましい。
【0022】
重合性液晶化合物(A)としては、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する重合性液晶化合物であれば特に限定されず、公知の重合性液晶化合物を用いることができるが、スメクチック液晶性を示すことが好ましく、スメクチック液晶性を示しやすい構造としては、分子構造中に非対称性の分子構造を有することが好ましく、具体的には以下(A-a)~(A-i)の部分構造を有する重合性液晶化合物であってスメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物であることがより好ましい。高次スメクチック液晶性を示しやすいという観点から(A-a)、(A-b)又は(A-c)の部分構造を有することがより好ましい。なお、下記(A-a)~(A-i)において、*は結合手(単結合)を表す。
【0023】
【0024】
重合性液晶化合物(A)としては、具体的には例えば、式(A-1)~式(A-25)で表される化合物が挙げられる。重合性液晶化合物(A)がシクロヘキサン-1,4-ジイル基を有する場合、そのシクロヘキサン-1,4-ジイル基は、トランス体であることが好ましい。
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
これらの中でも、式(A-2)、式(A-3)、式(A-4)、式(A-5)、式(A-6)、式(A-7)、式(A-8)、式(A-13)、式(A-14)、式(A-15)、式(A-16)及び式(A-17)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。重合性液晶化合物(A)として、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0031】
重合性液晶化合物(A)は、例えば、Lub等、Recl.Trav.Chim.Pays-Bas、115、321-328(1996)、又は特許第4719156号などに記載の公知の方法で製造できる。
【0032】
本発明において、偏光子形成用組成物は、重合性液晶化合物(A)以外の他の重合性液晶化合物を含んでいてもよいが、配向秩序度の高い偏光子を得る観点から、偏光子形成用組成物に含まれる全重合性液晶化合物の総質量に対する重合性液晶化合物(A)の割合は、好ましくは51質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0033】
また、偏光子形成用組成物が2種以上の重合性液晶化合物(A)を含む場合、そのうちの少なくとも1種が重合性液晶化合物(A1)であってもよく、その全てが重合性液晶化合物(A1)であってもよい。複数の重合性液晶化合物を組合せることにより、液晶-結晶相転移温度以下の温度でも一時的に液晶性を保持することができる場合がある。
【0034】
偏光子形成用組成物における重合性液晶化合物の含有量は、偏光子形成用組成物の固形分に対して、好ましくは40~99.9質量%であり、より好ましくは60~99質量%であり、さらに好ましくは70~99質量%である。重合性液晶化合物の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向性が高くなる傾向がある。なお、本明細書において、固形分とは、偏光子形成用組成物から溶剤を除いた成分の合計量をいう。
【0035】
本発明において、偏光子を形成する偏光子形成用組成物は二色性色素を含んでなる。ここで、二色性色素とは、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素を意味する。本発明において用い得る二色性色素は、上記性質を有するものであれば特に制限されず、染料であっても、顔料であってもよい。また、2種以上の染料又は顔料をそれぞれ組合せて用いてもよいし、染料と顔料とを組合せて用いてもよい。また、二色性色素は、重合性を有していてもよいし、液晶性を有していてもよい。
【0036】
二色性色素としては、300~700nmの範囲に極大吸収波長(λMAX)を有するものが好ましい。このような二色性色素としては、例えば、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素及びアントラキノン色素等が挙げられる。
【0037】
アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素及びスチルベンアゾ色素等が挙げられ、ビスアゾ色素及びトリスアゾ色素が好ましく、例えば、式(I)で表される化合物(以下、「化合物(I)」ともいう。)が挙げられる。
K1(-N=N-K2)p-N=N-K3 (I)
[式(I)中、K1及びK3は、互いに独立に、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表わす。K2は、置換基を有していてもよいp-フェニレン基、置換基を有していてもよいナフタレン-1,4-ジイル基又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を表わす。pは1~4の整数を表わす。pが2以上の整数である場合、複数のK2は互いに同一でも異なっていてもよい。可視域に吸収を示す範囲で-N=N-結合が-C=C-、-COO-、-NHCO-、-N=CH-結合に置き換わっていてもよい。]
【0038】
1価の複素環基としては、例えば、キノリン、チアゾール、ベンゾチアゾール、チエノチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾールなどの複素環化合物から1個の水素原子を除いた基が挙げられる。2価の複素環基としては、前記複素環化合物から2個の水素原子を除いた基が挙げられる。
【0039】
K1及びK3におけるフェニル基、ナフチル基及び1価の複素環基、並びにK2におけるp-フェニレン基、ナフタレン-1,4-ジイル基及び2価の複素環基が任意に有する置換基としては、炭素数1~20のアルキル基、重合性基を有する炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~4のアルケニル基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などの炭素数1~20のアルコキシ基;重合性基を有する炭素数1~20のアルコキシ基;トリフルオロメチル基などの炭素数1~4のフッ化アルキル基;シアノ基;ニトロ基;ハロゲン原子;アミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジノ基などの置換又は無置換アミノ基(置換アミノ基とは、炭素数1~6のアルキル基を1つ又は2つ有するアミノ基、重合性基を有する炭素数1~6のアルキル基を1つ又は2つ有するアミノ基、あるいは2つの置換アルキル基が互いに結合して炭素数2~8のアルカンジイル基を形成しているアミノ基を意味する。無置換アミノ基は-NH2である。)等が挙げられる。なお、前記重合性基としては、アクリロイル基、メタアクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基等が挙げられる。
【0040】
化合物(I)の中でも、以下の式(I-1)~式(I-6)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【化7】
[式(I-1)~(I-8)中、
B
1~B
30は、互いに独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルケニル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換のアミノ基(置換アミノ基及び無置換アミノ基の定義は前記のとおり)、塩素原子又はトリフルオロメチル基を表わす。
n1~n4は、互いに独立に0~3の整数を表わす。
n1が2以上である場合、複数のB
2は互いに同一でも異なっていてもよく、
n2が2以上である場合、複数のB
6は互いに同一でも異なっていてもよく、
n3が2以上である場合、複数のB
9は互いに同一でも異なっていてもよく、
n4が2以上である場合、複数のB
14は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0041】
前記アントラキノン色素としては、式(I-9)で表される化合物が好ましい。
【化8】
[式(I-9)中、
R
1~R
8は、互いに独立して、水素原子、-R
x、-NH
2、-NHR
x、-NR
x
2、-SR
x又はハロゲン原子を表わす。
R
xは、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表わす。]
【0042】
前記オキサゾン色素としては、式(I-10)で表される化合物が好ましい。
【化9】
[式(I-8)中、
R
9~R
15は、互いに独立して、水素原子、-R
x、-NH
2、-NHR
x、-NR
x
2、-SR
x又はハロゲン原子を表わす。
R
xは、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表わす。]
【0043】
前記アクリジン色素としては、式(I-11)で表される化合物が好ましい。
【化10】
[式(I-11)中、
R
16~R
23は、互いに独立して、水素原子、-R
x、-NH
2、-NHR
x、-NR
x
2、-SR
x又はハロゲン原子を表わす。
R
xは、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表わす。]
式(I-9)、式(I-10)及び式(I-11)において、R
xの炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基等が挙げられ、炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基及びナフチル基等が挙げられる。
【0044】
前記シアニン色素としては、式(I-12)で表される化合物及び式(I-13)で表される化合物が好ましい。
【化11】
[式(I-12)中、
D
1及びD
2は、互いに独立に、式(I-12a)~式(I-12d)のいずれかで表される基を表わす。
【化12】
n5は1~3の整数を表わす。]
【化13】
[式(I-13)中、
D
3及びD
4は、互いに独立に、式(I-13a)~式(1-13h)のいずれかで表される基を表わす。
【化14】
n6は1~3の整数を表わす。]
【0045】
これらの二色性色素の中でも、アゾ色素は直線性が高いため偏光性能に優れる偏光子の作製に好適であるが、高性能の偏光子を含む偏光フィルムにおいてはごく少量の色素の偏光子外への拡散であってもその光学特性に対する影響が大きくなる。このような偏光子においても、本発明では、第1樹脂層及び第2樹脂層がそれぞれ(メタ)アクリル化合物を含む硬化性組成物の硬化物で構成されているため、好適な態様では二色性色素の拡散(特に熱拡散)を効果的に抑え、偏光性能の低下を有効に抑制できる。したがって、本発明の一実施態様において、偏光子を形成する偏光子形成用組成物に含まれる二色性色素は、好ましくはアゾ色素である。
【0046】
本発明において、二色性色素の重量平均分子量は、通常、300~2000であり、好ましくは400~1000である。二色性色素の重量平均分子量が上記の上限以下であると、偏光子において重合性液晶化合物に包摂された状態で存在する二色性色素が動きやすく、高温環境下等により偏光子外へと拡散しやすくなる。このような場合においても、本発明では、第1樹脂層及び第2樹脂層がそれぞれ(メタ)アクリル化合物を含む硬化性組成物の硬化物で構成されているため、好適な態様では二色性色素の拡散(特に熱拡散)を効果的に抑え、偏光性能の低下を効果的に抑制できる。
【0047】
本発明の一実施態様において、偏光子を形成する偏光子形成用組成物に含まれる二色性色素は疎水性であることが好ましい。二色性色素が疎水性であると、二色性色素と重合性液晶化合物との相溶性が向上し、二色性色素と重合性液晶化合物が均一な相状態を形成し、高い配向秩序度を有する偏光子を得ることができる。なお、本発明において、疎水性の二色性色素とは、25℃、100gの水に対する溶解度が1g以下である色素を意味する。
【0048】
偏光子形成用組成物における二色性色素の含有量は、用いる二色性色素の種類などに応じて適宜決定し得るが、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.1~50質量部であり、より好ましくは0.1~20質量部であり、さらに好ましくは0.1~12質量部である。二色性色素の含有量が、上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向を乱し難く、高い配向秩序度を有する偏光子を得ることができる。
【0049】
本発明において、偏光子を形成するための偏光子形成用組成物は、重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合反応を開始し得る化合物であり、より低温条件下で、重合反応を開始できる点で、光重合開始剤が好ましい。具体的には、光の作用により活性ラジカル又は酸を発生できる光重合開始剤が挙げられ、中でも、光の作用によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。重合開始剤は単独又は二種以上組合せて使用できる。
【0050】
光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を用いることができ、例えば、活性ラジカルを発生する光重合開始剤としては、自己開裂型の光重合開始剤、水素引き抜き型の光重合開始剤がある。
自己開裂型の光重合開始剤として、自己開裂型のベンゾイン系化合物、アセトフェノン系化合物、ヒドロキシアセトフェノン系化合物、α-アミノアセトフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物、アゾ系化合物等を使用できる。また、水素引き抜き型光重合開始剤として、水素引き抜き型のベンゾフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジルケタール系化合物、ジベンゾスベロン系化合物、アントラキノン系化合物、キサントン系化合物、チオキサントン系化合物、ハロゲノアセトフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、ハロゲノビスイミダゾール系化合物、ハロゲノトリアジン系化合物、トリアジン系化合物等を使用できる。
【0051】
酸を発生する光重合開始剤としては、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩等を使用できる。
【0052】
この中でも、色素の溶解を防ぐ観点から低温での反応が好ましく、低温での反応効率の観点から自己開裂型の光重合開始剤が好ましく、特にアセトフェノン系化合物、ヒドロキシアセトフェノン系化合物、α-アミノアセトフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物が好ましい。
【0053】
光重合開始剤としては、具体的には例えば、以下のものが挙げられる。
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル及びベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系化合物;
2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1,2-ジフェニル-2,2-ジメトキシエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパン-1-オンのオリゴマー等のヒドロキシアセトフェノン系化合物;
2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン等のα-アミノアセトフェノン系化合物;
1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系化合物;
2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系化合物;
ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン及び2,4,6-トリメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;
ジエトキシアセトフェノンなどのジアルコキシアセトフェノン系化合物;
2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチ_ル)-6-〔2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(フラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン及び2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン等のトリアジン系化合物。光重合開始剤は、例えば上記の光重合開始剤から偏光子形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物との関係において適宜選択すればよい。
【0054】
また、市販の光重合開始剤を用いてもよい。市販の重合開始剤としては、イルガキュア(Irgacure)(登録商標)907、184、651、819、250、及び369、379、127、754、OXE01、OXE02、OXE03(BASF社製);Omnirad BCIM、Esacure 1001M、Esacure KIP160(IDM Resins B.V.社製);セイクオール(登録商標)BZ、Z、及びBEE(精工化学株式会社製);カヤキュアー(kayacure)(登録商標)BP100、及びUVI-6992(ダウ・ケミカル株式会社製);アデカオプトマーSP-152、N-1717、N-1919、SP-170、アデカアークルズNCI-831、アデカアークルズNCI-930(株式会社ADEKA製);TAZ-A、及びTAZ-PP(日本シイベルヘグナー株式会社製);並びに、TAZ-104(株式会社三和ケミカル製);等が挙げられる。
【0055】
偏光子を形成するための偏光子形成用組成物における重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは1~10質量部であり、より好ましくは1~8質量部、さらに好ましくは2~8質量部、特に好ましくは4~8質量部である。重合開始剤の含有量が上記の範囲内であると、重合性液晶化合物の配向を大きく乱すことなく、重合性液晶化合物の重合反応を行うことができる。
【0056】
また、本発明中の重合性液晶化合物の重合率は、製造時のライン汚染や取扱いの観点から、60%以上であることが好ましく、65%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。
【0057】
偏光子形成用組成物は光増感剤をさらに含有していてもよい。光増感剤を用いることにより重合性液晶化合物の重合反応をより促進させることができる。光増感剤としては、キサントン、チオキサントンなどのキサントン化合物(例えば、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントンなど);アントラセン、アルコキシ基含有アントラセン(例えば、ジブトキシアントラセンなど)などのアントラセン化合物;フェノチアジン及びルブレン等が挙げられる。光増感剤は単独又は2種以上組合せて使用できる。
【0058】
偏光子形成用組成物が光増感剤を含む場合、その含有量は、重合開始剤及び重合性液晶化合物の種類及びその量に応じて適宜決定すればよいが、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。
【0059】
また、偏光子形成用組成物はレベリング剤を含んでいてもよい。レベリング剤は、偏光子形成用組成物の流動性を調整し、該偏光子形成用組成物を塗布することにより得られる塗膜をより平坦にする機能を有し、具体的には、界面活性剤が挙げられる。レベリング剤としては、ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤及びフッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。レベリング剤は単独又は2種以上組合せて使用できる。
【0060】
ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤としては、例えば、“BYK-350”、“BYK-352”、“BYK-353”、“BYK-354”、“BYK-355”、“BYK-358N”、“BYK-361N”、“BYK-380”、“BYK-381”及び“BYK-392”(BYK Chemie社)が挙げられる。
【0061】
フッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤としては、例えば、“メガファック(登録商標)R-08”、同“R-30”、同“R-90”、同“F-410”、同“F-411”、同“F-443”、同“F-445”、同“F-470”、同“F-471”、同“F-477”、同“F-479”、同“F-482”及び同“F-483”(DIC(株));“サーフロン(登録商標)S-381”、同“S-382”、同“S-383”、同“S-393”、同“SC-101”、同“SC-105”、“KH-40”及び“SA-100”(AGCセイミケミカル(株));“E1830”、“E5844”((株)ダイキンファインケミカル研究所);“エフトップEF301”、“エフトップEF303”、“エフトップEF351”及び“エフトップEF352”(三菱マテリアル電子化成(株))が挙げられる。
【0062】
偏光子形成用組成物がレベリング剤を含有する場合、その含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.05~5質量部が好ましく、0.05~3質量部がより好ましい。レベリング剤の含有量が上記の範囲内であると、重合性液晶化合物を水平配向させやすく、かつ、ムラが生じ難く、より平滑な偏光子を得られる傾向がある。
【0063】
偏光子形成用組成物は、光増感剤及びレベリング剤以外の他の添加剤を含有してよい。他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、離型剤、安定剤、ブルーイング剤等の着色剤、難燃剤及び滑剤などが挙げられる。偏光子形成用組成物が他の添加剤を含有する場合、他の添加剤の含有量は、偏光子形成用組成物の固形分に対して、0%を超えて20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0%を超えて10質量%以下である。
【0064】
偏光子形成用組成物は、従来公知の偏光子形成用組成物の調製方法により製造することができ、通常、重合性液晶化合物及び二色性色素、並びに、必要に応じて重合開始剤及び上記添加剤等を混合、撹拌することにより調製することができる。また、一般にスメクチック液晶性を示す化合物は粘度が高いため、偏光子形成用組成物の塗布性を向上させて偏光子の形成を容易にする観点から、偏光子形成用組成物に溶剤を加えることにより粘度調整を行ってもよい。
【0065】
偏光子形成用組成物に用いる溶剤は、用いる重合性液晶化合物及び二色性色素の溶解性等に応じて適宜選択することができる。具体的には例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル溶剤、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル溶剤、及び、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素化炭化水素溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は、単独又は2種以上組合せて使用できる。溶剤の含有量は、偏光子形成用組成物の固形分100質量部に対して、好ましくは100~1900質量部であり、より好ましくは150~900質量部であり、さらに好ましくは180~600質量部である。
【0066】
本発明の偏光フィルムにおいて、偏光子は配向秩序度の高い偏光子であることが好ましい。配向秩序度の高い偏光子は、X線回折測定においてヘキサチック相やクリスタル相といった高次構造由来のブラッグピークが得られる。ブラッグピークとは、分子配向の面周期構造に由来するピークを意味する。したがって、本発明の偏光フィルムを構成する偏光子はX線回折測定においてブラッグピークを示すことが好ましい。すなわち、本発明の偏光フィルムを構成する偏光子においては、重合性液晶化合物又はその重合体が、X線回折測定において該偏光子がブラッグピークを示すように配向していることが好ましく、光を吸収する方向に重合性液晶化合物の分子が配向する「水平配向」であることがより好ましい。本発明においては分子配向の面周期間隔が3.0~6.0Åである偏光子が好ましい。ブラッグピークを示すような高い配向秩序度は、用いる重合性液晶化合物の種類、二色性色素の種類やその量、及び重合開始剤の種類やその量等を制御することにより実現し得る。
【0067】
本発明の一実施態様において、偏光子は、配向膜上に偏光子形成用組成物の塗膜を形成こと、該塗膜から溶剤を除去すること、重合性液晶化合物が液体相に相転移する温度以上まで昇温した後降温して、該重合性液晶化合物をスメクチック相に相転移させること、及び、前記スメクチック相を保持したまま重合性液晶化合物を重合させることを含む方法により得ることができる。
【0068】
偏光子形成用組成物を配向膜等に塗布する方法としては、スピンコーティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法、アプリケータ法などの塗布法、フレキソ法などの印刷法などの公知の方法が挙げられる。
【0069】
次いで、偏光子形成用組成物から得られた塗膜中に含まれる重合性液晶化合物が重合しない条件で、溶剤を乾燥等により除去することにより、乾燥塗膜が形成される。乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥及び減圧乾燥法等が挙げられる。
【0070】
さらに、重合性液晶化合物を液体相に相転移させるため、重合性液晶化合物が液体相に相転移する温度以上まで昇温した後降温し、該重合性液晶化合物をスメクチック相(スメクチック液晶状態)に相転移させる。かかる相転移は、前記塗膜中の溶剤除去後に行ってもよいし、溶剤の除去と同時に行ってもよい。
【0071】
重合性液晶化合物のスメクチック液晶状態を保持したまま、重合性液晶化合物を重合させることにより、偏光子形成用組成物の硬化層として偏光子が形成される。重合方法としては光重合法が好ましい。光重合において、乾燥塗膜に照射する光としては、当該乾燥塗膜に含まれる重合性液晶化合物の種類(特に、該重合性液晶化合物が有する重合性基の種類)、重合開始剤の種類及びそれらの量等に応じて適宜選択される。その具体例としては、可視光、紫外光、赤外光、X線、α線、β線及びγ線からなる群より選択される1種以上の活性エネルギー線や活性電子線が挙げられる。中でも、重合反応の進行を制御し易い点や、光重合装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましく、紫外光によって、光重合可能なように、偏光子形成用組成物に含有される重合性液晶化合物や重合開始剤の種類を選択しておくことが好ましい。また、重合時に、適切な冷却手段により乾燥塗膜を冷却しながら、光照射することで、重合温度を制御することもできる。光重合の際、マスキングや現像を行うなどによって、パターニングされた偏光子を得ることもできる。
【0072】
前記活性エネルギー線の光源としては、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー、波長範囲380~440nmを発光するLED光源、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0073】
紫外線照射強度は、通常、10~3,000mW/cm2である。紫外線照射強度は、好ましくは重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度である。光を照射する時間は、通常0.1秒~10分であり、好ましくは1秒~5分、より好ましくは5秒~3分、さらに好ましくは10秒~1分である。このような紫外線照射強度で1回又は複数回照射すると、その積算光量は、10~3,000mJ/cm2、好ましくは50~2,000mJ/cm2、より好ましくは100~1,000mJ/cm2である。
【0074】
光重合を行うことにより、重合性液晶化合物は、スメクチック相、好ましくは高次のスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合し、偏光子が形成される。重合性液晶化合物がスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合して得られる偏光子は、前記二色性色素の作用にも伴い、従来のホストゲスト型偏光フィルム、すなわち、ネマチック相の液晶状態からなる偏光子と比較して、偏光性能が高いという利点がある。さらに、二色性色素やリオトロピック液晶のみを塗布したものと比較して、強度に優れるという利点もある。
【0075】
偏光子の厚みは、適用される表示装置に応じて適宜選択でき、好ましくは0.1~5μmの膜であり、より好ましくは0.3~4μmであり、さらに好ましくは0.5~3μmである。偏光子の膜厚が、上記の下限以上であると、必要な光吸収が得られなくなることを防止しやすく、上記の上限以下であると、配向膜による配向規則力の低下による配向欠陥の発生を抑制しやすい。なお、偏光子、偏光板、配向膜、第1樹脂層及び第2樹脂層は、それぞれレーザー顕微鏡や膜厚計により測定できる。
【0076】
<配向膜>
本発明の偏光フィルムに含まれる配向膜は、偏光子の第1樹脂層とは反対側の面に形成されている。配向膜は、重合性液晶化合物を所望の方向に液晶配向させる、配向規制力を有するものである。配向膜としては、前記偏光膜形成用組成物の塗布等により溶解しない溶剤耐性を有し、また、溶剤の除去や重合性液晶化合物の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。本発明では、配向膜は、(メタ)アクリル化合物を含む配向膜形成用組成物の硬化物であり、偏光子との界面及び第2樹脂層との界面の密着性に優れる。本発明における配向膜は、密着性及び耐熱性向上の観点から、配向膜形成用組成物が偏光(好ましくは、偏光UV)により硬化して形成される光配向膜であることが好ましい。
【0077】
(メタ)アクリル化合物は、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物を示し、(メタ)アクリル化合物は、モノマー、オリゴマー又はポリマーであってもよい。オリゴマー又はポリマーである場合、(メタ)アクリロイル基の二重結合が重合していてよい。光配向膜形成用組成物に含まれる(メタ)アクリル化合物は、(メタ)アクリロイル基の他、光反応性基を有することが好ましい。
【0078】
光反応性基とは、光照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光照射により生じる分子の配向誘起又は異性化反応、二量化反応、光架橋反応もしくは光分解反応等の液晶配向能の起源となる光反応に関与する基が挙げられる。中でも、二量化反応又は光架橋反応に関与する基が、配向性に優れる点で好ましい。光反応性基として、不飽和結合、特に二重結合を有する基が好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)及び炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する基が特に好ましい。
【0079】
C=C結合を有する光反応性基としては、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾ-ル基、スチルバゾリウム基、カルコン基及びシンナモイル基等が挙げられる。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基、芳香族ヒドラゾンなどの構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基、ホルマザン基、及び、アゾキシベンゼン構造を有する基等が挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基及びマレイミド基等が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリ-ル基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、ハロゲン化アルキル基などの置換基を有していてもよい。
【0080】
中でも、光二量化反応に関与する光反応性基が好ましく、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向膜が得られやすいという点で、シンナモイル基及びカルコン基が好ましい。光配向膜形成用組成物に含まれる(メタ)アクリルオリゴマー又はポリマーとしては、オリゴマー又はポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造となるようなシンナモイル基を有するものが特に好ましい。
【0081】
本発明の一実施態様において、光配向膜は、(メタ)アクリル化合物と溶剤とを含む光配向膜形成用組成物を第2樹脂層上に塗布し、偏光(好ましくは、偏光UV)を照射することで得られる。光配向膜形成用組成物に含まれる溶剤としては、偏光子を形成する際に用い得る溶剤として先に例示した溶剤と同様のものが挙げられ、(メタ)アクリル化合物の溶解性に応じて適宜選択することができる。
【0082】
光配向膜形成用組成物中の(メタ)アクリル化合物の含有量は、(メタ)アクリル化合物の種類や目的とする光配向膜の厚みによって適宜調節できるが、光配向膜形成用組成物の質量に対して、少なくとも0.2質量%とすることが好ましく、0.3~10質量%の範囲がより好ましい。光配向膜の特性が著しく損なわれない範囲で、光配向膜形成用組成物は、ポリビニルアルコ-ルやポリイミドなどの高分子材料や光増感剤を含んでいてもよい。
【0083】
光配向膜形成用組成物を第2樹脂層上に塗布する方法、及び、塗布された光配向膜形成用組成物から溶剤を除去する方法としては、偏光子形成用組成物を配向膜に塗布する方法及び溶剤を除去する方法として上記に例示した方法が挙げられる。
【0084】
偏光の照射は、第2樹脂層上に塗布された光配向膜形成用組成物から溶剤を除去したものに直接偏光UVを照射する形式でも、第2樹脂層側から偏光を照射し、偏光を透過させて照射する形式でもよい。また、当該偏光は、実質的に平行光であると特に好ましい。照射する偏光の波長は、(メタ)アクリル化合物の光反応性基及び/又は(メタ)アクリロイル基が、光エネルギーを吸収し得る波長領域のものがよい。具体的には、波長250~400nmの範囲のUV(紫外線)が特に好ましい。当該偏光照射に用いる光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArFなどの紫外光レーザーなどが挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ及びメタルハライドランプがより好ましい。これらの中でも、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ及びメタルハライドランプが、波長313nmの紫外線の発光強度が大きいため好ましい。前記光源からの光を、適当な偏光子を通過して照射することにより、偏光UVを照射することができる。かかる偏光子としては、偏光フィルターやグラントムソン、グランテーラーなどの偏光プリズムやワイヤーグリッドタイプの偏光子を用いることができる。
【0085】
なお、ラビング又は偏光照射を行う時に、マスキングを行えば、液晶配向の方向が異なる複数の領域(パターン)を形成することもできる。
【0086】
配向膜の厚みは、好ましくは10~5000nmであり、より好ましくは10~1000nmであり、さらに好ましくは30~300nmである。配向膜の厚みが上記範囲であると、偏光子との界面又は第2樹脂層との界面の良好な密着性を発現しつつ、配向規則力を発揮することができ、高い配向秩序で偏光子を形成できる。
【0087】
<第1樹脂層及び第2樹脂層>
本発明の偏光フィルムに含まれる第1樹脂層は、(メタ)アクリル化合物を含む第1硬化性組成物の硬化物であり、偏光子の配向膜側とは反対側の面に形成されている。本発明では、第1樹脂層も偏光子も(メタ)アクリロイル基を有する化合物から形成されているため、層間の相容性が高く、また第1硬化性組成物に含まれる(メタ)アクリル化合物と偏光子に含まれる(メタ)アクリロイル基を有する重合性液晶化合物とが架橋構造を形成し得るため、層界面の優れた密着性を発現できる。
本発明の偏光フィルムに含まれる第2樹脂層は、(メタ)アクリル化合物を含む第2硬化性組成物の硬化物であり、配向膜の偏光子側とは反対側の面に形成されている。本発明では、第2樹脂層も配向膜も(メタ)アクリロイル基を有する化合物から形成されているため、層間の相容性が高く、また第2硬化性組成物に含まれる(メタ)アクリル化合物と配向膜に含まれる(メタ)アクリル化合物とが架橋構造を形成し得るため、層界面の優れた密着性を発現できる。
【0088】
第1硬化性組成物及び第2硬化性組成物に含まれる(メタ)アクリル化合物は、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、モノマー、オリゴマー又はポリマーであってもよい。(メタ)アクリル化合物としては、例えば、単官能(メタ)アクリレート化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物などの(メタ)アクリレート化合物;多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物などのウレタン(メタ)アクリレート化合物;多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物などのエポキシ(メタ)アクリレート化合物;カルボキシル基変性エポキシ(メタ)アクリレート化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。これらは単独又は二種以上組合せて使用できる。これらの中でも、偏光フィルムの密着性、耐熱性及び屈曲性を向上しやすい観点から、多官能(メタ)アクリレート化合物又はウレタン(メタ)アクリレート化合物が好ましく、多官能(メタ)アクリレート化合物とウレタン(メタ)アクリレートとを組合せることがより好ましい。第1硬化性組成物(第1樹脂層)及び第2硬化性組成物(第2樹脂層)は、同じ組成であっても、異なる組成であってもよいが、密着性、耐熱性及び屈曲性を向上しやすい観点から、同じ組成であることが好ましい。なお、本明細書において、屈曲性とは、偏光フィルムを折り曲げた際に、クラック等の発生を抑制し得る特性を意味する。
【0089】
本発明の一実施態様において、第1硬化性組成物及び第2硬化性組成物の少なくとも一方は、(メタ)アクリル化合物として、多官能(メタ)アクリレート化合物を含む。この態様であると、偏光フィルムの密着性、耐熱性及び屈曲性の観点から有利である。
【0090】
多官能(メタ)アクリレート化合物は、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を意味し、その例としては、分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を2個有する2官能(メタ)アクリレートモノマー、分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を3個以上有する3官能以上の(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられる。なお、本明細書において、用語「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」又は「メタクリレート」を意味し、用語「(メタ)アクリロイル」も同様に、「アクリロイル」又は「メタクリロイル」を意味する。
【0091】
多官能(メタ)アクリレート化合物として、1種類又は2種類以上の多官能(メタ)アクリレート化合物を含んでいてもよい。また、2種類以上の多官能(メタ)アクリレート化合物を含む場合、それぞれの多官能(メタ)アクリレート化合物間で、(メタ)アクリロイルオキシ基の数が同一であっても、異なっていてもよい。
【0092】
2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート及びネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;テトラフルオロエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のハロゲン置換アルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族ポリオールのジ(メタ)アクリレート;水添ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の水添ジシクロペンタジエン又はトリシクロデカンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート;1,3-ジオキサン-2,5-ジイルジ(メタ)アクリレート〔別名:ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート〕等のジオキサングリコール又はジオキサンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート;ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジアクリレート物、ビスフェノールFエチレンオキサイド付加物ジアクリレート物等のビスフェノールA又はビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート;ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ビスフェノールFジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物等のビスフェノールA又はビスフェノールFのエポキシジ(メタ)アクリレート;シリコーンジ(メタ)アクリレート;ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのジ(メタ)アクリレート;2,2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン;2,2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシシクロヘキシル]プロパン;2-(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-5-エチル-5-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキサン〕のジ(メタ)アクリレート;トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0093】
3官能(メタ)アクリレートモノマーは、分子内に3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するモノマーであり、その例としては、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと酸無水物の反応物、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、プロピレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物などが挙げられる。
【0094】
4官能(メタ)アクリレートモノマーは、分子内に4個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するモノマーであり、その例としては、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0095】
5官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えばジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、プロピレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物などが挙げられる。
【0096】
6官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えばジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0097】
7官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えばトリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、エチレンオキサイド変性トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、プロピレンオキサイド変性トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物などが挙げられる。
【0098】
8官能(メタ)アクリレートモノマーは、分子内に8個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するモノマーであり、その例としては、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能(メタ)アクリレート化合物は、単独又は二種以上組合せて使用できる。
【0099】
多官能(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリロイル基の数は、好ましくは6以上、より好ましくは7以上、さらに好ましくは8以上である。多官能(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリロイル基の数が、上記の下限以上であると、第1樹脂層又は第2樹脂層の架橋密度を高め、偏光フィルムの耐熱性をより向上しやすい。また、該(メタ)アクリロイル基の数の上限は通常20以下である。
【0100】
多官能(メタ)アクリレート化合物は、該化合物の架橋点間分子量及び架橋点数を制御することにより、第1樹脂層又は第2樹脂層の架橋密度を調整できる。より詳細には、架橋点間分子量が小さくなるほど架橋密度が上がり、また架橋点数が多くなるほど架橋密度が密になり、偏光フィルムの耐熱性を高めることができる。
【0101】
本発明の一実施態様において、架橋密度を制御して耐熱性を向上させる観点から、多官能(メタ)アクリレート化合物は分岐構造を有し、該分岐構造中の(メタ)アクリロイル基に最も近い分岐点と、該(メタ)アクリロイル基とを連結する鎖(連結鎖ということがある)の原子数が3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。該原子数が上記の上限以下であると、第1樹脂層又は第2樹脂層の架橋密度が大きくなり、偏光フィルムの耐熱性を高めやすい。ここで、該連結鎖が複数ある場合、少なくとも1つの連結鎖が上記原子数の範囲を満たしていればよく、耐熱性向上の観点からは、全ての連結鎖が上記原子数の範囲を満たすことが好ましい。
【0102】
多官能(メタ)アクリレート化合物の中でも、偏光フィルムの耐熱性の観点から、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0103】
第1硬化性組成物又は第2硬化性組成物において、多官能(メタ)アクリレート化合物の含有量は、硬化性組成物の固形分100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは60質量部以上、さらに好ましくは70質量部以上であり、好ましくは100質量部以下、より好ましくは95質量部以下、さらに好ましくは90質量部以下である。多官能(メタ)アクリレート化合物の含有量が上記の範囲であると、偏光フィルムの層間の密着性、耐熱性及び屈曲性を高めやすい。なお、本明細書において、硬化性組成物の固形分とは、硬化性組成物に溶剤が含まれる場合、硬化性組成物から溶剤を除いた成分の合計量を意味する。
【0104】
本発明の一実施態様において、第1硬化性組成物及び第2硬化性組成物の少なくとも一方は、(メタ)アクリル化合物として、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。この態様であると、偏光フィルムの密着性、耐熱性及び屈曲性の観点から有利である。
【0105】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、一般に、イソシアネート化合物とポリオール化合物と(メタ)アクリレート化合物の反応物を意味し、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、架橋構造を形成できるため、偏光フィルムの耐熱性の観点から有利であるとともに、適度な靱性を付与することができる。そのため、偏光フィルムの屈曲性を高めて、折り曲げ等による変形に対する耐性を向上できる場合がある。
【0106】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、耐熱性の観点から、官能基数が3以下であることが好ましく、官能基数が2であることがより好ましい。また、耐熱性と屈曲性とを両立させる観点からは、官能基数が2~5であることが好ましい。
【0107】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物の重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で、好ましくは300以上、より好ましくは400以上であり、好ましくは10,000以下、より好ましくは7,000以下、さらに好ましくは5,000以下、特に好ましくは3,000以下である。ウレタン(メタ)アクリレート化合物のMwが上記範囲であると、密着性及び耐熱性を向上しやすい。なお、重量平均分子量(Mw)は、例えばゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定できる。
【0108】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、単位分子量あたりの(メタ)アクリロイル基数が15×10-4以上であることが好ましく、20×10-4以上であることがより好ましく、30×10-4以上であることがさらに好ましく、40×10-4以上であることが特に好ましい。単位分子量あたりの(メタ)アクリロイル基の数が上記の下限以上であると、偏光フィルムの耐熱性及び密着性をより向上しやすい。また、単位分子量あたりの(メタ)アクリロイル基数の上限は通常20以下である。なお、単位分子量あたりの(メタ)アクリロイル基の数は、式:ウレタン(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリロイル基数/重量平均分子量(Mw)で算出できる。
【0109】
第1硬化性組成物又は第2硬化性組成物がウレタン(メタ)アクリレート化合物を含む場合、ウレタン(メタ)アクリレート化合物の含有量は、硬化性組成物の固形分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上であり、好ましくは100質量部以下である。ウレタン(メタ)アクリレート化合物の含有量が上記範囲であると、偏光フィルムの密着性、耐熱性及び屈曲性を向上しやすい。
【0110】
第1硬化性組成物又は第2硬化性組成物が多官能(メタ)アクリレート化合物とウレタン(メタ)アクリレート化合物とを含む場合、多官能(メタ)アクリレート化合物とウレタン(メタ)アクリレート化合物とを、好ましくは95:5~50:50、より好ましくは90:10~70:30の比率(多官能(メタ)アクリレート化合物:ウレタン(メタ)アクリレート化合物、質量比)で含むことが好ましい。多官能(メタ)アクリレート化合物とウレタン(メタ)アクリレート化合物を上記配合比率で含むことにより、偏光フィルムの密着性、耐熱性及び屈曲性を向上しやすい。
【0111】
第1硬化性組成物又は第2硬化性組成物は、必要に応じて、単官能(メタ)アクリレート化合物を含んでいてもよい。単官能(メタ)アクリレート化合物はモノマー、オリゴマー又はポリマーであってもよく、これらの中でも単官能(メタ)アクリレートモノマーを好適に使用できる。単官能(メタ)アクリレートモノマーの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、1-[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]フタル酸、1-[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]ヘキサヒドロフタル酸、1-[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]コハク酸及び4-[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]トリメリット、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート及びジシクロペンテニル(メタ)アクリレート酸等が挙げられる。単官能(メタ)アクリレートモノマーは単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0112】
第1硬化性組成物又は第2硬化性組成物が単官能(メタ)アクリレート化合物を含む場合、単官能(メタ)アクリレート化合物の含有量は、硬化性組成物の固形分100質量部に対して、好ましくは0質量部以上、より好ましくは20質量部以上であり、好ましくは50質量部以下である。単官能(メタ)アクリレート化合物の含有量が上記範囲であると、硬化性組成物の粘度調整の観点で塗布性が向上する。
【0113】
第1硬化性組成物及び第2硬化性組成物の少なくとも一方は、硬化性を向上する観点から、ラジカル重合開始剤を含むことが好ましく、第1硬化性組成物及び第2硬化性組成物の両方がラジカル重合開始剤を含むことがより好ましい。ラジカル重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、電子線等の活性エネルギー線の照射により、硬化性化合物の硬化を開始できるものであれば特に限定されず、その具体例としては、アセトフェノン、3-メチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のアセトフェノン系開始剤;ベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン及び4,4’-ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系開始剤;2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン等のアルキルフェノン系開始剤;ベンゾインプロピルエーテル及びベンゾインエチルエーテル等のベンゾインエーテル系開始剤;4-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系開始剤;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系開始剤;その他、キサントン、フルオレノン、カンファーキノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は単独又は二種以上組合せて使用できる。
【0114】
第1硬化性組成物又は第2硬化性組成物がラジカル重合開始剤を含む場合、ラジカル重合開始剤の含有量は、硬化性化合物の固形分100質量部に対して、好ましくは1~10質量部、より好ましくは2~8質量部である。ラジカル重合開始剤の含有量が、上記の下限以上であると、重合開始能が十分に発現され、硬化性が向上される。一方、重合開始剤の含有量が上記の上限以下であると、ラジカル重合開始剤が残存しにくくなり、可視光線透過率の低下等を抑制しやすくなる。
【0115】
第1硬化性組成物又は第2硬化性組成物は、必要に応じて、ラジカル重合開始剤以外の他の添加剤、例えば紫外線吸収剤、帯電防止剤、安定化剤、酸化防止剤、着色剤、表面調整剤などを含んでよい。他の添加剤は単独又は二種以上組合せて使用できる。他の添加剤の含有量は、硬化性組成物の固形分の質量に対して、好ましくは0.1~20質量%程度である。
【0116】
第1硬化性組成物又は第2硬化性組成物は、(メタ)アクリル化合物、並びに、必要に応じて、添加剤等を混合、撹拌することにより調製することができる。また、塗布性を向上させるために、第1硬化性組成物又は第2硬化性組成物に溶剤を加えることにより粘度調整を行ってもよい。
【0117】
溶剤としては、第1硬化性組成物又は第2硬化性組成物を構成する成分を溶解し得るものであればよく、例えば、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノールなどのアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル化グリコールエーテル類などから適宜選択して用いることができる。これらの溶剤は、単独又は二種以上組合せて使用できる。溶剤の種類及び含有量は、第1硬化性組成物又は第2硬化性組成物に含まれる成分の種類や含有量、形状、塗布方法、樹脂層の厚みなどに応じて適宜選択されるが、例えば、溶剤の含有量は、硬化性組成物の固形分100質量部に対して、好ましくは3~1000質量部、より好ましくは5~100質量部、さらに好ましくは7~50質量部である。
【0118】
本発明の一実施態様において、第1樹脂層は、偏光子又は離型フィルム上に第1硬化性組成物を塗布し、該組成物を硬化させることにより得られる。第2樹脂層は、基材、離型フィルム又は配向膜上に第2硬化性組成物を塗布し、該組成物を硬化させることにより得られる。
【0119】
第1硬化性組成物又は第2硬化性組成物の塗布方法としては、<偏光子>の項に例示の塗布方法が挙げられる。また、硬化性組成物の硬化は、活性エネルギー線を照射することにより、該組成物に含まれる(メタ)アクリル化合物等の重合性成分を重合させて行うことが好ましい。活性エネルギー線は、(メタ)アクリル化合物等の重合性成分の種類、ラジカル重合開始剤の種類及びそれらの量等に応じて適宜選択される。その具体例としては、可視光、紫外光、赤外光、X線、α線、β線及びγ線からなる群より選択される1種以上の活性エネルギー線が挙げられる。中でも、重合反応の進行を制御し易い点や、光重合装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましい。活性エネルギー線の光源としては、<偏光子>の項に例示の光源が挙げられる。紫外線照射強度、照射時間及び積算光量は、<偏光子>の項に例示の紫外線照射強度、照射時間及び積算光量の範囲を適宜使用すればよい。
【0120】
第1樹脂層及び第2樹脂層の厚みはそれぞれ、好ましくは0.1~10μm、より好ましくは0.2~5μm、さらに好ましくは0.3~3μmである。第1樹脂層又は第2樹脂層の厚みが上記範囲であると、第1樹脂層と偏光子との密着性、及び第2樹脂層と配向膜との密着性を高めやすい。また、偏光子に含まれる二色性色素の拡散を有効に抑制しやすく、耐熱性を高めやすい。
【0121】
<偏光フィルム>
本発明の偏光フィルムは、上記の通り、各層間の密着性に優れる。さらに、該偏光フィルムは耐熱性にも優れるため、高温環境下においても偏光子に含まれる二色性色素の拡散を有効に抑え、偏光性能の低下を抑制することができる。さらに、好適な態様では、密着性及び耐熱性に加え、優れた屈曲性を発現できる。そのため、偏光フィルムは、有機EL表示装置やタッチパネル表示装置などの表示装置に好適に使用できる。
【0122】
本発明の偏光フィルムの製造方法は、第1樹脂層、偏光子、配向膜、第2樹脂層がこの順に積層できれば特に限定されないが、例えば、第2樹脂層を形成し、該第2樹脂層上に配向膜を形成し、該配向膜上に偏光子を形成して、第2樹脂層、配向膜、偏光子がこの順に積層された積層体を得、該積層体の偏光子面に、第1硬化性組成物を塗布又は重ね合わせ、該第1硬化性組成物を硬化させる工程を含む方法が挙げられる。
【0123】
本発明の好適な実施態様において、本発明の偏光フィルムは、離型フィルム上に第2樹脂層、配向膜、及び偏光子が積層された積層体の偏光子面に、第1硬化性組成物を塗布し、第1硬化性組成物側から活性エネルギー線を照射して第1硬化性組成物を硬化させることにより、離型フィルム、第2樹脂層、配向膜、偏光子、及び第1樹脂層をこの順に有する積層体を得、該積層体から離型フィルムを剥離する工程を含む方法により製造される。
【0124】
本発明の好適な実施態様において、本発明の偏光フィルムは、離型フィルム上に形成された第1硬化性組成物と、第2樹脂層、配向膜、偏光子がこの順に積層された積層体の偏光子面とを重ね合わせ、離型フィルム側から活性エネルギー線を照射して第1硬化性組成物を硬化させることにより、離型フィルム、第1樹脂層、偏光子、配向膜、第2樹脂層がこの順に積層された積層体を得、該積層体から離型フィルムを剥離する工程を含む方法により製造される。
【0125】
本発明の偏光フィルムは、第1樹脂層、偏光子、配向膜、第2樹脂層がこの順に積層されていればよく、本発明の効果を損なわない限りにおいて、第1樹脂層の偏光子側とは反対側の面、第2樹脂層の配向膜側とは反対側の面、又は各層間に機能層を含んでいてもよい。機能層としては、例えば、紫外線吸収層、ハードコート層、プライマー層、ガスバリア層、色相調整層、屈折率調整層、反射防止層、帯電防止層、粘着剤層、接着剤層が挙げられる。これらの機能層は単独又は2種以上組合せて使用できる。
【0126】
[偏光板]
本発明の偏光フィルムは、位相差フィルムと組合せて偏光板を形成してもよい。すなわち、本発明における偏光板は、前記偏光フィルムと、位相差フィルムとを備えてなる。位相差フィルムは、例えば偏光フィルムの第1樹脂層あるいは第2樹脂層の表面に接着剤層又は粘着剤層を介して積層されていてもよい。位相差フィルムの遅相軸(光軸)と偏光フィルム(偏光子)の吸収軸とを実質的に45°となるように積層することが好ましい。位相差フィルムの遅相軸(光軸)と偏光フィルム(偏光子)の吸収軸とを実質的に45°となるように積層することによって、楕円偏光板としての機能を得ることができる。なお、実質的に45°とは通常45±5°の範囲である。
【0127】
偏光板において位相差フィルムは、下記式(X):
100 ≦ Re(550) ≦180 (X)
〔式中、Re(550)は波長550nmにおける面内位相差値を表す〕
を満たすことが好ましい。位相差フィルムが上記(X)で表される面内位相差値を有すると、いわゆるλ/4板として機能する。前記式(X)は、好ましくは100nm≦Re(550)≦180nm、さらに好ましくは120nm≦Re(550)≦160nmである。
【0128】
さらに、位相差フィルムが下記式(Y):
Re(450)/Re(550) < 1 (Y)
〔式中、Re(450)及びRe(550)はそれぞれ波長450nm及び550nmにおける面内位相差値を表す〕
を満たすことが好ましい。上記式(Y)を満たす位相差フィルムは、いわゆる逆波長分散性を有し、優れた偏光性能を示す。Re(450)/Re(550)の値は、好ましくは0.93以下であり、より好ましくは0.88以下、さらに好ましくは0.86以下、好ましくは0.80以上、より好ましくは0.82以上である。
【0129】
前記位相差フィルムは、ポリマーを延伸することによって位相差を与える延伸フィルムであってもよいが、偏光板の薄層化の観点から、重合性液晶化合物の重合体を含む重合性液晶組成物(以下、重合性液晶組成物(B)ともいう)から構成されることが好ましい。前記位相差フィルムにおいて重合性液晶化合物は、通常、配向した状態において重合している。位相差フィルムを形成する重合性液晶化合物(以下、「重合性液晶化合物(B)」ともいう)は、重合性官能基、特に光重合性官能基を有する液晶化合物を意味する。光重合性官能基とは、光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸などによって重合反応に関与し得る基のことをいう。光重合性官能基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック性液晶でもよく、相秩序構造としてはネマチック液晶でもスメクチック液晶でもよい。重合性液晶化合物として、1種のみを用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0130】
重合性液晶化合物(B)としては、成膜の容易性及び前記式(Y)で表される位相差性を付与するという観点から、下記(ア)~(エ)を全て満たす化合物が挙げられる。
【0131】
(ア)サーモトロピック液晶性を有する化合物である;
(イ)該重合性液晶化合物の長軸方向(a)上にπ電子を有する。
(ウ)長軸方向(a)に対して交差する方向〔交差方向(b)〕上にπ電子を有する。
(エ)長軸方向(a)に存在するπ電子の合計をN(πa)、長軸方向に存在する分子量の合計をN(Aa)として下記式(i)で定義される重合性液晶化合物の長軸方向(a)のπ電子密度:
D(πa)=N(πa)/N(Aa) (i)
と、交差方向(b)に存在するπ電子の合計をN(πb)、交差方向(b)に存在する分子量の合計をN(Ab)として下記式(ii)で定義される重合性液晶化合物の交差方向(b)のπ電子密度:
D(πb)=N(πb)/N(Ab) (ii)
とが、
0≦〔D(πa)/D(πb)〕≦1
の関係にある〔すなわち、交差方向(b)のπ電子密度が、長軸方向(a)のπ電子密度よりも大きい〕。
なお、上記(ア)~(エ)を全て満たす重合性液晶化合物(B)は、例えば、ラビング処理により形成した配向膜上に塗布し、相転移温度以上に加熱することにより、ネマチック相を形成することが可能である。この重合性液晶化合物(B)が配向して形成されたネマチック相では通常、重合性液晶化合物の長軸方向が互いに平行になるように配向しており、この長軸方向がネマチック相の配向方向となる。
【0132】
上記特性を有する重合性液晶化合物(B)は、一般に逆波長分散性を示すものであることが多い。上記(ア)~(エ)の特性を満たす化合物として、具体的には、例えば、下記式(II):
【化15】
で表される化合物が挙げられる。前記式(II)で表される化合物は単独又は2種以上組合せて使用できる。
【0133】
式(II)中、Arは置換基を有していてもよい二価の芳香族基を表す。ここでいう芳香族基とは、平面性を有する環状構造の基であり、該環状構造が有するπ電子数がヒュッケル則に従い[4n+2]個であるものをいう。ここで、nは整数を表す。-N=や-S-等のヘテロ原子を含んで環構造を形成している場合、これらヘテロ原子上の非共有結合電子対を含めてヒュッケル則を満たし、芳香族性を有する場合も含む。該二価の芳香族基中には窒素原子、酸素原子、硫黄原子のうち少なくとも1つ以上が含まれることが好ましい。
【0134】
式(II)中、G1及びG2はそれぞれ独立に、二価の芳香族基又は二価の脂環式炭化水素基を表す。ここで、該二価の芳香族基又は二価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基に置換されていてもよく、該二価の芳香族基又は二価の脂環式炭化水素基を構成する炭素原子が、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子に置換されていてもよい。
【0135】
式(II)中、L1、L2、B1及びB2はそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基である。
【0136】
式(II)中、k、lは、それぞれ独立に0~3の整数を表し、1≦k+lの関係を満たす。ここで、2≦k+lである場合、B1及びB2、G1及びG2は、それぞれ互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0137】
式(II)中、E1及びE2はそれぞれ独立に、炭素数1~17のアルカンジイル基を表し、ここで、アルカンジイル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルカンジイル基に含まれる-CH2-は、-O-、-S-、-Si-で置換されていてもよい。P1及びP2は互いに独立に、重合性基又は水素原子を表し、少なくとも1つは重合性基である。
【0138】
式(II)中、G1及びG2は、それぞれ独立に、好ましくは、ハロゲン原子及び炭素数1~4のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい1,4-フェニレンジイル基、ハロゲン原子及び炭素数1~4のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい1,4-シクロヘキサンジイル基であり、より好ましくはメチル基で置換された1,4-フェニレンジイル基、無置換の1,4-フェニレンジイル基、又は無置換の1,4-trans-シクロヘキサンジイル基であり、特に好ましくは無置換の1,4-フェニレンジイル基、又は無置換の1,4-trans-シクロへキサンジイル基である。また、複数存在するG1及びG2のうち少なくとも1つは二価の脂環式炭化水素基であることが好ましく、また、L1又はL2に結合するG1及びG2のうち少なくとも1つは二価の脂環式炭化水素基であることがより好ましい。
【0139】
式(II)中、L1及びL2はそれぞれ独立に、好ましくは、単結合、炭素数1~4のアルキレン基、-O-、-S-、-Ra1ORa2-、-Ra3COORa4-、-Ra5OCORa6-、Ra7OC=OORa8-、-N=N-、-CRc=CRd-、又はC≡C-である。ここで、Ra1~Ra8はそれぞれ独立に単結合、又は炭素数1~4のアルキレン基を表し、Rc及びRdは炭素数1~4のアルキル基又は水素原子を表す。L1及びL2はそれぞれ独立に、より好ましくは単結合、-ORa2-1-、-CH2-、-CH2CH2-、-COORa4-1-、又はOCORa6-1-である。ここで、Ra2-1、Ra4-1、Ra6-1はそれぞれ独立に単結合、-CH2-、-CH2CH2-のいずれかを表す。L1及びL2はそれぞれ独立に、さらに好ましくは単結合、-O-、-CH2CH2-、-COO-、-COOCH2CH2-、又はOCO-である。
【0140】
本発明の好適な一実施態様において、式(II)中のG1及びG2のうち少なくとも1つは二価の脂環式炭化水素基であり、該二価の脂環式炭化水素基が、置換基を有していてもよい二価の芳香族基Arと-COO-であるL1及び/又はL2により結合している重合性液晶化合物が用いられる。
【0141】
式(II)中、B1及びB2はそれぞれ独立に、好ましくは、単結合、炭素数1~4のアルキレン基、-O-、-S-、-Ra9ORa10-、-Ra11COORa12-、-Ra13OCORa14-、又はRa15OC=OORa16-である。ここで、Ra9~Ra16はそれぞれ独立に単結合、又は炭素数1~4のアルキレン基を表す。B1及びB2はそれぞれ独立に、より好ましくは単結合、-ORa10-1-、-CH2-、-CH2CH2-、-COORa12-1-、又はOCORa14-1-である。ここで、Ra10-1、Ra12-1、Ra14-1はそれぞれ独立に単結合、-CH2-、-CH2CH2-のいずれかを表す。B1及びB2はそれぞれ独立に、さらに好ましくは単結合、-O-、-CH2CH2-、-COO-、-COOCH2CH2-、-OCO-、又はOCOCH2CH2-である。
【0142】
式(II)中、k及びlは、逆波長分散性発現の観点から2≦k+l≦6の範囲が好ましく、k+l=4であることが好ましく、k=2かつl=2であることがより好ましい。k=2かつl=2であると対称構造となるためさらに好ましい。
【0143】
式(II)中、E1及びE2はそれぞれ独立に、炭素数1~17のアルカンジイル基が好ましく、炭素数4~12のアルカンジイル基がより好ましい。
【0144】
式(II)中、P1又はP2で表される重合性基としては、例えばエポキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、及びオキセタニル基等が挙げられる。これらの中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0145】
式(II)中、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族複素環、及び電子吸引性基から選ばれる少なくとも1つを有することが好ましい。当該芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられ、ベンゼン環、ナフタレン環が好ましい。当該芳香族複素環としては、フラン環、ベンゾフラン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアゾール環、トリアジン環、ピロリン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チエノチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、及びフェナンスロリン環等が挙げられる。これらの中でも、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、又はベンゾフラン環を有することが好ましく、ベンゾチアゾール基を有することがさらに好ましい。また、Arに窒素原子が含まれる場合、当該窒素原子はπ電子を有することが好ましい。
【0146】
式(II)中、Arで表される2価の芳香族基に含まれるπ電子の合計数Nπは8以上が好ましく、より好ましくは10以上であり、さらに好ましくは14以上であり、特に好ましくは16以上である。また、好ましくは30以下であり、より好ましくは26以下であり、さらに好ましくは24以下である。
【0147】
Arで表される芳香族基としては、例えば以下の式(Ar-1)~式(Ar-23)の基が挙げられる。
【0148】
【0149】
式(Ar-1)~式(Ar-23)中、*印は連結部を表し、Z0、Z1及びZ2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~12のアルキルスルフィニル基、炭素数1~12のアルキルスルホニル基、カルボキシル基、炭素数1~12のフルオロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~12のアルキルチオ基、炭素数1~12のN-アルキルアミノ基、炭素数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基、炭素数1~12のN-アルキルスルファモイル基又は炭素数2~12のN,N-ジアルキルスルファモイル基を表す。
【0150】
式(Ar-1)~式(Ar-23)中、Q1及びQ2は、それぞれ独立に、-CR2’R3’-、-S-、-NH-、-NR2’-、-CO-又はO-を表し、R2’及びR3’は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0151】
式(Ar-1)~式(Ar-23)中、J1及びJ2は、それぞれ独立に、炭素原子、又は窒素原子を表す。
【0152】
式(Ar-1)~式(Ar-23)中、Y1、Y2及びY3は、それぞれ独立に、置換されていてもよい芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。
【0153】
式(Ar-1)~式(Ar-23)中、W1及びW2は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、メチル基又はハロゲン原子を表し、mは0~6の整数を表す。
【0154】
Y1、Y2及びY3における芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等の炭素数6~20の芳香族炭化水素基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。芳香族複素環基としては、フリル基、ピロリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基等の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む炭素数4~20の芳香族複素環基が挙げられ、フリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基が好ましい。
【0155】
Y1及びY2は、それぞれ独立に、置換されていてもよい多環系芳香族炭化水素基又は多環系芳香族複素環基であってもよい。多環系芳香族炭化水素基は、縮合多環系芳香族炭化水素基、又は芳香環集合に由来する基をいう。多環系芳香族複素環基は、縮合多環系芳香族複素環基、又は芳香環集合に由来する基をいう。
【0156】
式(Ar-1)~式(Ar-23)中、Z0、Z1及びZ2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~12のアルコキシ基であることが好ましく、Z0は、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基がさらに好ましく、Z1及びZ2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基、シアノ基がさらに好ましい。
【0157】
式(Ar-1)~式(Ar-23)中、Q1及びQ2は、-NH-、-S-、-NR2’-、-O-が好ましく、R2’は水素原子が好ましい。中でも-S-、-O-、-NH-が特に好ましい。
【0158】
式(Ar-1)~(Ar-23)の中でも、式(Ar-6)及び式(Ar-7)が分子の安定性の観点から好ましい。
【0159】
式(Ar-17)~(Ar-23)において、Y1は、これが結合する窒素原子及びZ0と共に、芳香族複素環基を形成していてもよい。芳香族複素環基としては、Arが有していてもよい芳香族複素環として前記したものが挙げられるが、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピロリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、インドール環、キノリン環、イソキノリン環、プリン環、ピロリジン環等が挙げられる。この芳香族複素環基は、置換基を有していてもよい。また、Y1は、これが結合する窒素原子及びZ0と共に、前述した置換されていてもよい多環系芳香族炭化水素基又は多環系芳香族複素環基であってもよい。例えば、ベンゾフラン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環等が挙げられる。なお、前記式(II)で表される化合物は、例えば、特開2010-31223号公報に記載の方法に準じて製造することができる。
【0160】
位相差フィルムを構成する重合性液晶組成物(B)中の重合性液晶化合物(B)の含有量は、重合性液晶組成物(B)の固形分100質量部に対して、例えば70~99.5質量部であり、好ましくは80~99質量部であり、より好ましくは90~98質量部である。含有量が上記範囲内であると、位相差フィルムの配向性が高くなる傾向がある。ここで、固形分とは、重合性液晶組成物(B)から溶剤等の揮発性成分を除いた成分の合計量のことをいう。
【0161】
重合性液晶組成物(B)は、重合性液晶化合物(B)の重合反応を開始するための重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤としては、当該分野で従来用いられているものから適宜選択して用いることができ、熱重合開始剤であっても、光重合開始剤であってもよいが、より低温条件下で重合反応を開始できる点で、光重合開始剤が好ましい。好適には、偏光子形成用組成物において使用し得る光重合開始剤として先に例示したものと同様のものが挙げられる。また、重合性液晶組成物(B)は、必要に応じて、光増感剤、レベリング剤、及び、偏光子形成用組成物に含まれる添加剤として例示した添加剤等を含有してもよい。光増感剤及びレベリング剤としては、偏光子形成用組成物において使用し得るものとして先に例示したものと同様のものが挙げられる。
【0162】
重合性液晶組成物(B)は、例えば、重合性液晶化合物(B)及び必要に応じて重合開始剤、添加剤等を混合及び撹拌することにより調製される。また、塗布性を向上させるために、重合性液晶組成物(B)に溶剤を添加して粘度調整を行ってもよい。溶剤としては、偏光子形成用組成物に含まれる溶剤として上記に例示した溶剤が挙げられる。
【0163】
位相差フィルムは、重合性液晶組成物(B)を、基材又は配向膜上に塗布し、乾燥により溶剤を除去し、得られた塗膜中の重合性液晶化合物(B)を加熱及び/又は活性エネルギー線によって硬化させて得ることができる。配向膜としては、本発明の偏光子を作製する際に用い得るものとして先に例示したものと同様のものが挙げられる。
【0164】
位相差フィルム形成用組成物に用いる溶剤、位相差フィルム形成用組成物の塗布方法、活性エネルギー線による硬化条件等は、いずれも、本発明の偏光子の作製方法において採用し得るものと同様のものが挙げられる。
【0165】
位相差フィルムの厚みは、適用される表示装置に応じて適宜選択できるが、薄膜化及び屈曲性等の観点から、0.1~10μmであることが好ましく、1~5μmであることがより好ましく、1~3μmであることがさらに好ましい。
【0166】
本発明における偏光板は、偏光フィルム、位相差フィルム及び粘着剤層又は接着剤層以外の他の層、例えば保護フィルム等を含んでいてもよい。好ましい態様では、本発明における偏光板は、偏光フィルムと位相差フィルムとが接着剤層又は粘着剤層を介して貼合されている。
【0167】
本発明の偏光板の厚みは、表示装置の屈曲性や視認性の観点から、好ましくは1~100μm、より好ましくは2~70μm、さらに好ましくは3~60μmである。
【0168】
本発明の偏光フィルム又は偏光板は、前面板を備えていてもよい。本発明の一実施態様における前面板付き偏光フィルムの層構成の概略断面図を
図1に示す。前面板付き偏光フィルム1は、偏光フィルム2の第1樹脂層4上に前面板3が形成されている。該偏光フィルム2は、前面板3側から第1樹脂層4、偏光子5、配向膜6及び第2樹脂層7がこの順に積層されている。前面板付き偏光フィルム1は、前面板を備えることで表面硬度及び耐光性を付与できる。なお、前面板付き偏光フィルム1は、前面板3と第1樹脂層4との間に粘着剤層又は接着剤層が形成されていてもよい。
【0169】
本発明の一実施態様における前面板付き偏光板の層構成の概略断面図を
図2に示す。前面板付き偏光板8は、偏光板9上に前面板3が形成されている。偏光板9は、前面板3側から第1樹脂層4、偏光子5、配向膜6、第2樹脂層7及び位相差フィルム10がこの順に積層されている。前面板付き偏光板8は、前面板を備えることで表面硬度及び耐光性を付与できる。なお、前面板付き偏光板8は、前面板3と第1樹脂層4との間、及び/又は、第2樹脂層7と位相差フィルム10との間に粘着剤層又は接着剤層が形成されていてもよい。なお、
図1及び
図2では、図面を見やすくするため、各層の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0170】
本発明の別の実施態様における前面板付き偏光フィルムの層構成の概略断面図を
図3に示す。前面板付き偏光フィルム11は、偏光フィルム2の第2樹脂層7上に前面板3が形成されている。該偏光フィルム2は、前面板3側から第2樹脂層7、配向膜6、偏光子5、及び第1樹脂層4がこの順に積層されている。前面板付き偏光フィルム11は、前面板を備えることで表面硬度及び耐光性を付与できる。なお、前面板付き偏光フィルム11は、前面板3と第2樹脂層7との間に粘着剤層又は接着剤層が形成されていてもよい。
【0171】
本発明の別の実施態様における前面板付き偏光板の層構成の概略断面図を
図4に示す。前面板付き偏光板12は、偏光板13上に前面板3が形成されている。偏光板13は、前面板3側から第2樹脂層7、配向膜6、偏光子5、第1樹脂層4及び位相差フィルム10がこの順に積層されている。前面板付き偏光板13は、前面板を備えることで表面硬度及び耐光性を付与できる。なお、前面板付き偏光板13は、前面板3と第2樹脂層7との間、及び/又は、第1樹脂層4と位相差フィルム10との間に粘着剤層又は接着剤層が形成されていてもよい。なお、
図3及び
図4では、図面を見やすくするため、各層の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0172】
<表示装置>
本発明の偏光フィルム又は前記偏光板は表示装置に適用できる。該表示装置は、例えば、粘着剤層又は接着剤層を介して本発明の偏光フィルム又は前記偏光板を表示装置の表面に貼合することにより得ることができる。表示装置とは、表示機構を有する装置であり、発光源として発光素子又は発光装置を含む。表示装置としては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、タッチパネル表示装置、電子放出表示装置(電場放出表示装置(FED等)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置)、プラズマ表示装置、投射型表示装置(グレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置等)及び圧電セラミックディスプレイ等が挙げられる。液晶表示装置は、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置、直視型液晶表示装置及び投写型液晶表示装置等の何れをも含む。これら表示装置は、2次元画像を表示する表示装置であってもよいし、3次元画像を表示する立体表示装置であってもよい。特に、本発明の表示装置としては、有機EL表示装置及びタッチパネル表示装置が好ましく、特に有機EL表示装置が好ましい。
【実施例】
【0173】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。以下、使用量、含有量を表す部及び%は、特に断りのない限り質量基準である。
【0174】
<密着性の評価>
実施例及び比較例で得られた偏光フィルムの第2樹脂層表面を感圧接着剤を介してガラスに貼合し、ガラス面と反対側となる第1樹脂層表面にセロハンテープを貼ってから引き剥がす試験を行い、偏光フィルムの密着性を評価した。偏光フィルム内部で剥離現象が確認できた場合を「×」、剥離現象が確認できなかった場合を「〇」とした。
【0175】
<耐熱性の評価>
以下のようにして、実施例及び比較例で得られた偏光フィルムの偏光度Py及び単体透過率Tyを測定した。波長380nm~780nmの範囲で透過軸方向の透過率(Ta)及び吸収軸方向の透過率(Tb)を、分光光度計(島津製作所株式会社製 UV-3150)に偏光子付フォルダーをセットした装置を用いてダブルビーム法で測定した。該フォルダーは、リファレンス側は光量を50%カットするメッシュを設置した。
下記式(式1)及び(式2)を用いて、各波長における単体透過率、偏光度を算出し、さらにJIS Z 8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行い、視感度補正単体透過率(Ty)及び視感度補正偏光度(Py)を算出した。
単体透過率Ty(%)= (Ta+Tb)/2 (式1)
偏光度Py(%) = (Ta-Tb)/(Ta+Tb)×100 (式2)
【0176】
実施例及び比較例で得られた偏光フィルムを85℃dryの条件で240時間加熱後、改めて偏光フィルムの偏光度Py、単体透過率Tyを測定して耐熱試験前後におけるPyの変化量ΔPy(=耐熱性試験後のPy-耐熱試験前のPy)、及び耐熱試験前後におけるTyの変化量ΔTy(=耐熱試験後のTy-耐熱試験前のTy)を算出した。
【0177】
<屈曲性の評価>
屈曲性の評価は、JIS-K-5600-5-1に記載の塗料一般試験方法―耐屈曲性(円筒形マンドレル法)の方法を用いて、以下のように行った。
実施例及び比較例で得られた偏光フィルムを25mm×200mm角に切り取り、円筒型マンドレル法耐屈曲性試験機タイプII型(TP技研株式会社製)を用いて、切り取ったフィルムを温度25℃、相対湿度55%RHの条件下で、直径が4mm(屈曲半径R=2mm)のマンドレル棒に、第1樹脂層形成用組成物の硬化層を外側にして巻きつけて屈曲性試験行った。試験後のフィルムを用いて、暗室環境下にて照明透過光で目視確認し、クラックの発生状況を観察したところ、割れが視認できたものを「×」とし、割れが視認できなかったものを「○」と判定した。
【0178】
<各層の膜厚>
偏光子、配向膜、第1樹脂層及び第2樹脂層の厚みは、レーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製 OLS3000)により測定した。
【0179】
[製造例1~9]
<樹脂層形成用組成物(A)~(I)の調製>
表1に記載の各成分を混合し、50℃で4時間攪拌することで、樹脂層形成用組成物(A)~(I)をそれぞれ得た。
【0180】
[製造例10]
<樹脂層形成用組成物(J)の調製>
下記の各成分を混合し、23℃で4時間攪拌することで、樹脂層形成用組成物(J)を得た。
(樹脂層形成用組成物(J)の成分)
・セロキサイド 2021P:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学(株)製) 70部
・2-エチルヘキシルグリシジルエーテル 30部
・CPI-100P:トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートのプロピレンカーボネート50%溶液(サンアプロ(株)製) 2.5部
・SH710:シリコーン系レベリング剤(東レ・ダウコーニング(株)製) 0.25部
【0181】
[製造例11]
<樹脂層形成用組成物(K)の調製>
下記の各成分を混合し、23℃で4時間攪拌することで、樹脂層形成用組成物(K)を得た。
(樹脂層形成用組成物(K)の成分)
・セロキサイド 2021P:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学(株)製) 32.5部
・EHPE3150:2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(ダイセル化学(株)製) 17.5部
・OXT-221:ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成(株)製) 50部
・CPI-100P:トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートのプロピレンカーボネート50%溶液(サンアプロ(株)製) 2.5部
・SH710:シリコーン系レベリング剤(東レ・ダウコーニング(株)製) 0.25部
【0182】
[製造例12]
<樹脂層形成用組成物(L)の調製>
アセトアセチル化変性ポリビニルアルコール系樹脂(ゴーセファイマーZ200、日本合成化学工業(株)製、ケン化度:98.5モル%以上)を純水に90℃で4時間攪拌することで溶解させ、5重量%濃度の水溶液を調製した。上記のポリビニルアルコール系樹脂水溶液とグリオキシル酸ナトリウムの10重量%水溶液を、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール系樹脂:グリオキシル酸ナトリウムの固形分重量比が1:0.1となるように混合し、さらに水100部に対するポリビニルアルコール系樹脂の固形分重量比が3.0部となるように純水で希釈し、樹脂層形成用組成物(L)を調製した。
【0183】
【0184】
表1における各成分を以下に示す。
多官能アクリレートモノマー(1):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学(株)製、「NKエステル A-DPH」)、分岐構造中の(メタ)アクリロイル基に最も近い分岐点と、該(メタ)アクリロイル基とを連結する鎖の原子数は2である。
【化17】
【0185】
多官能アクリレートモノマー(2):エチレンオキサイド化(6個)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学(株)製、「NKエステル A-DPH-6E」)、分岐構造中の(メタ)アクリロイル基に最も近い分岐点と、該(メタ)アクリロイル基とを連結する鎖の原子数は5である。
【化18】
【0186】
多官能アクリレートモノマー(3):エチレンオキサイド化(12個)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学(株)製、「NKエステル A-DPH-12E」)、分岐構造中の(メタ)アクリロイル基に最も近い分岐点と、該(メタ)アクリロイル基とを連結する鎖の原子数は8である。
【化19】
【0187】
多官能アクリレートモノマー(4):トリペンタエリスリトールオクタアクリレート(広栄化学(株)製、「TPEA」)、分岐構造中の(メタ)アクリロイル基に最も近い分岐点と、該(メタ)アクリロイル基とを連結する鎖の原子数は2である。
【化20】
【0188】
ウレタンアクリレートポリマー(1):ウレタンアクリレート(ダイセル・オルネクス(株)製、「エベクリル4858」)、官能基数は2、重量平均分子量Mwは450、単位分子量あたりの官能基数は、44.4×10-4である。
【0189】
ウレタンアクリレートポリマー(2):ウレタンアクリレート(日本合成化学工業(株)製、「紫光 UV-7650」)、官能基数は4~5、重量平均分子量Mwは2300、単位分子量あたりの官能基数は、19.6×10-4である。
【0190】
ラジカル重合開始剤(1):フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BASF社製、「イルガキュア819」)
ラジカル重合開始剤(2):1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製、「イルガキュア184」)
ラジカル重合開始剤(3):2-[4-(メチルチオ)ベンゾイル]-2-(4-モルホリニル)プロパン(BASF社製、「イルガキュア907」)
【0191】
溶剤(1):メチルエチルケトン
【0192】
[製造例13]
<偏光膜形成用組成物の調製>
下記の成分を混合し、80℃で1時間攪拌することで、偏光膜形成用組成物を得た。二色性色素には、特開2013-101328号公報の実施例に記載のアゾ色素を用いた。
・重合性液晶化合物:
【化21】
【化22】
・二色性色素:
アゾ色素;
【化23】
【化24】
【化25】
・光重合開始剤:
2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 6部
・レベリング剤:
ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製) 1.2部
・溶剤:
o-キシレン 400部
【0193】
[実施例1]
(1)第2樹脂層の作製
離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製SP-PLR382050)(離型フィルム)の離型処理面に、コロナ処理を施した後に、第2硬化性組成物として樹脂層形成用組成物(A)をバーコート法(#2 30mm/s)により塗布し、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、露光量500mJ/cm2(365nm基準)の紫外線を、樹脂層形成用組成物の被膜層に照射することにより、離型フィルム表面に第2樹脂層が形成された樹脂層付き離型フィルムを得た。第2樹脂層の厚みは1.5μmであった。
【0194】
(2)光配向膜の作製
(i)光配向膜形成用組成物の調製
特開2013-033249号公報記載の下記成分を混合し、得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、光配向膜形成用組成物を得た。
・光配向性ポリマー:
【化26】
・溶剤:
o-キシレン 98部
【0195】
(ii)光配向膜の形成
次いで、上記樹脂層付き離型フィルムの第2樹脂層の表面にコロナ処理を施した後に、光配向膜形成用組成物を塗布して、120℃で乾燥して乾燥被膜を得た。この乾燥被膜上に偏光UVを照射して光配向膜を形成し、離型フィルム、第2樹脂層、及び光配向膜をこの順に有する積層体Aを得た。偏光UV処理は、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、波長365nmで測定した強度が100mJの条件で行った。光配向膜の厚みは100nmであった。
【0196】
(3)偏光子の作製
前記のようにして得た積層体Aの光配向膜の表面に、偏光膜形成用組成物をバーコート法(#9 30mm/s)により塗布し、120℃の乾燥オーブンにて1分間加熱乾燥することにより重合性液晶化合物を液体相に相転移させた後、室温まで冷却して該重合性液晶化合物をスメクチック液晶状態に相転移させた。次いで、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、露光量1000mJ/cm2(365nm基準)の紫外線を、偏光膜形成用組成物から形成された層に照射することにより、該乾燥被膜に含まれる重合性液晶化合物を、前記重合性液晶化合物のスメクチック液晶状態を保持したまま重合させ、該乾燥被膜から偏光子(偏光膜)を形成した。偏光子の厚みは2.3μmであった。このようにして、離型フィルム、第2樹脂層、光配向膜及び偏光子をこの順に有する積層体Bを得た。この偏光子に対して、X線回折装置X’Pert PRO MPD(スペクトリス株式会社製)を用いて同様にX線回折測定を行った結果、2θ=20.2°付近にピーク半価幅(FWHM)=約0.17°のシャープな回折ピーク(ブラッグピーク)が得られた。ピーク位置から求めた秩序周期(d)は約4.4Åであり、高次スメクチック相を反映した構造を形成することを確認した。
【0197】
(4)第1樹脂層の作製
前記のようにして得た積層体Bの偏光子の表面に、コロナ処理を施した後に、第1硬化性組成物として樹脂層形成用組成物(A)をバーコート法(#2 30mm/s)により再度塗布し、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、露光量500mJ/cm2(365nm基準)の紫外線を、樹脂層形成用組成物の被膜層に照射することにより、離型フィルム、第2樹脂層、光配向膜、偏光子、及び第1樹脂層をこの順に有する積層体Cを得た。次いで、離型フィルムを剥離することで、第2樹脂層、光配向膜、偏光子、及び第1樹脂層をこの順に有する偏光フィルムを得た。なお、第1樹脂層の厚みは1.5μmであった。
【0198】
[実施例1~9及び比較例1、2]
表2に示されるように、樹脂層形成用組成物(A)に代えて、樹脂層形成用組成物(B)~(K)をそれぞれ用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例1~9及び比較例1、2の偏光フィルムを得た。
【0199】
[比較例3]
(1)第2樹脂層の作製
離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製SP-PLR382050)(離型フィルム)の離型処理面に、コロナ処理を施した後に、第2硬化性組成物として樹脂層形成用組成物(L)をバーコート法(#30 30mm/s)により塗布し、100℃で1分間乾燥することで、離型フィルム表面に第2樹脂層が形成された樹脂層付き離型フィルムを得た。第2樹脂層の厚みは1.5μmであった。
【0200】
(2)光配向膜の作製
次いで、上記樹脂層付き離型フィルムの第2樹脂層の表面にコロナ処理を施した後に、光配向膜形成用組成物を塗布して、120℃で乾燥して乾燥被膜を得た。この乾燥被膜上に偏光UVを照射して光配向膜を形成し、離型フィルム、第2樹脂層、及び光配向膜をこの順に有する積層体Kを得た。偏光UV処理は、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、波長365nmで測定した強度が100mJの条件で行った。光配向膜の厚みは100nmであった。
【0201】
(3)偏光子の作製
前記のようにして得た積層体Kの光配向膜の表面に、偏光膜形成用組成物をバーコート法(#9 30mm/s)により塗布し、120℃の乾燥オーブンにて1分間加熱乾燥することにより重合性液晶化合物を液体相に相転移させた後、室温まで冷却して該重合性液晶化合物をスメクチック液晶状態に相転移させた。次いで、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、露光量1000mJ/cm2(365nm基準)の紫外線を、偏光膜形成用組成物から形成された層に照射することにより、該乾燥被膜に含まれる重合性液晶化合物を、前記重合性液晶化合物のスメクチック液晶状態を保持したまま重合させ、該乾燥被膜から偏光子(偏光膜)を形成した。偏光子の厚みは2.3μmであった。このようにして、離型フィルム、第2樹脂層、光配向膜及び偏光子をこの順に有する積層体Lを得た。
【0202】
(4)第1樹脂層の作製
前記のようにして得た積層体Lの偏光子の表面に、コロナ処理を施した後に、第1硬化性組成物として樹脂層形成用組成物(L)をバーコート法(#30 30mm/s)により再度塗布し、100℃で1分間乾燥することで、離型フィルム、第2樹脂層、光配向膜、偏光子、及び第1樹脂層をこの順に有する積層体Mを得た。次いで、離型フィルムを剥離することで、第2樹脂層、光配向膜、偏光子、及び第1樹脂層をこの順に有する偏光フィルムを得た。なお、第1樹脂層の厚みは1.5μmであった。
【0203】
実施例1~9及び比較例1~3で得られた偏光フィルムについて、密着性の評価及び耐熱性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0204】
【0205】
実施例5及び実施例8で得られた偏光フィルムについて、屈曲性評価を行った。その結果、両方とも割れが生じず、評価は○であった。
【0206】
表2に示されるように、実施例1~9及び比較例1~3で得られた偏光フィルムは、密着性評価の結果が○であり、層間の密着性に優れることが確認された。また、耐熱試験前後でのTy及びPyの変化量であるΔTy及びΔPyが0に近く、耐熱性に優れていることも確認された。これに対して、比較例1~3で得られた偏光フィルムは、密着性評価の結果が×であり、密着性に劣る。
さらに、実施例5及び8で得られた偏光フィルムは、屈曲性評価が○であり、密着性及び耐熱性に加えて、優れた屈曲性も有することがわかった。
【符号の説明】
【0207】
1,11…前面板付き偏光フィルム、
2…偏光フィルム
3…前面板
4…第1樹脂層
5…偏光子
6…配向膜
7…第2樹脂層
8,12…前面板付き偏光板
9,13…偏光板
10…位相差フィルム