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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20231215BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20231215BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20231215BHJP
   C08L 47/00 20060101ALI20231215BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20231215BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20231215BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L7/00
C08L9/06
C08L47/00
C08K3/04
C08K3/36
B60C1/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022185825
(22)【出願日】2022-11-21
(62)【分割の表示】P 2018128115の分割
【原出願日】2018-07-05
(65)【公開番号】P2023016857
(43)【公開日】2023-02-02
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須永 修一
(72)【発明者】
【氏名】犬伏 康貴
(72)【発明者】
【氏名】大熊 隆
【審査官】南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-016269(JP,B1)
【文献】特公昭49-016268(JP,B1)
【文献】特開2017-014373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成ゴム及び天然ゴムの少なくとも1種からなるゴム成分(A)(但し、1,3,7-オクタトリエンを除く。)、フィラー(B)、及び1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位を含有する重合体(C)を含み、
前記フィラー(B)が、カーボンブラック及びシリカの少なくとも1種であり、
前記1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位が、3,4-結合単位を含み、
前記1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位中に含まれる3,4-結合単位の含有割合が、2~40モル%であり、
前記ゴム成分(A)に対する前記重合体(C)の含有量が8~30質量部であり、
前記重合体(C)の重量平均分子量は、8,600~200,000であり、
前記重合体(C)中の1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位の割合が40モル%以上であるゴム組成物。
【請求項2】
前記1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位が、3,4-結合単位と、1,2-結合単位とを含み、当該1,2-結合単位の含有量に対する当該3,4-結合単位の含有量の比(3,4-結合単位/1,2-結合単位)が、0.04~0.7である請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分(A)が、スチレンブタジエンゴム及び天然ゴムの少なくとも1種である請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
請求項1~のいずれかに記載のゴム組成物を少なくとも一部に用いたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天然ゴムやスチレンブタジエンゴム等のゴム成分に対してカーボンブラック等のフィラーを配合し、架橋することにより機械強度を向上させたゴム組成物が、耐摩耗性や機械強度を必要とするタイヤ用途に広く使用されている。前記カーボンブラックは、その粒子表面に前記ゴム成分を物理的又は化学的に吸着することで、その補強効果を発現することが知られている。5~100nm程度の小さい平均粒子径を有し、比表面積が大きいカーボンブラックを使用した場合、カーボンブラックとゴム成分との相互作用が大きくなるため、ゴム組成物の機械強度及び耐摩耗性等の特性が向上する。また、当該ゴム組成物をタイヤとして用いた場合、硬度が高くなるため、操縦安定性が向上する。
【0003】
例えば、特許文献1には、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分、カーボンブラック、軟化点が-20~20℃の液状レジンを特定の比率で含有するタイヤ用ゴム組成物が記載されている。また、特許文献2には、変性スチレン-ブタジエン共重合体及び変性共役ジエン系重合体を含有するジエン系ゴムを含有するゴム成分と、カーボンブラック等の充填剤とを所定の割合で配合したゴム組成物が記載されている。
【0004】
また、特許文献3及び4には、1,3,7-オクタトリエンの重合方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-195804号公報
【文献】特開2010-209256号公報
【文献】特公昭49-16269号公報
【文献】特公昭49-16268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1及び2に記載のゴム組成物を用いたタイヤによれば、硬度をある程度向上させることができるものの、硬度に起因する操縦安定性を十分に高い水準で兼ね備えているとは言えず、さらなる改善が望まれている。
また、特許文献3に記載の重合体は、種々の高分子材料あるいは接着剤、潤滑剤の原料として有用であることが記載されているが、当該重合体をゴム組成物として用いることは想定されていない。さらに、特許文献4に記載の重合体は、その性質を生かして種々の化学的変性を行うことにより有用な工業材料に変換できる基材となるものであることが記載されているが、当該重合体をゴム組成物として用いることは想定されていない。
【0007】
本発明は、硬度が高く、操縦安定性に優れたゴム成形品を得ることができるゴム組成物及び当該ゴム組成物を少なくとも一部に用いたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、3,4-結合単位を含む1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位を含有する重合体を用いたゴム組成物の成形品が、硬度が高く、操縦安定性に優れることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本願開示は、以下に関する。
[1]合成ゴム及び天然ゴムの少なくとも1種からなるゴム成分(A)、フィラー(B)、及び1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位を含有する重合体(C)を含み、前記1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位が、3,4-結合単位を含むゴム組成物。
[2]前記1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位が、3,4-結合単位と、1,2-結合単位とを含み、当該1,2-結合単位の含有量に対する当該3,4-結合単位の含有量の比(3,4-結合単位/1,2-結合単位)が、0.04~0.7である上記[1]に記載のゴム組成物。
[3]前記フィラー(B)が、カーボンブラック及びシリカの少なくとも1種である上記[1]又は[2]に記載のゴム組成物。
[4]前記ゴム成分(A)が、スチレンブタジエンゴム及び天然ゴムの少なくとも1種である上記[1]~[3]のいずれかに記載のゴム組成物。
[5]前記重合体(C)の重量平均分子量(Mw)が、1,000~1,000,000である上記[1]~[4]のいずれかに記載のゴム組成物。
[6]上記[1]~[5]のいずれかに記載のゴム組成物を少なくとも一部に用いたタイヤ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、硬度が高く、操縦安定性に優れたゴム成形品を得ることができるゴム組成物及び当該ゴム組成物を少なくとも一部に用いたタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、合成ゴム及び天然ゴムの少なくとも1種からなるゴム成分(A)、フィラー(B)、及び1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位を含有する重合体(C)を含み、
前記1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位が、3,4-結合単位を含むことを特徴とする。
【0012】
<ゴム成分(A)>
ゴム成分(A)としては、合成ゴム及び天然ゴムの少なくとも1種からなるゴムを用いる。但し、1,3,7-オクタトリエンを除く。ゴム成分(A)の具体例としては、スチレンブタジエンゴム(以下、「SBR」ともいう)、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ブタジエンアクリロニトリル共重合体ゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム等のゴムを挙げることができる。中でも、SBR、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴムが好ましく、SBR、天然ゴムがより好ましい。これらのゴムは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
〔合成ゴム〕
本発明においてゴム成分(A)として合成ゴムを用いる場合、SBR、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ブタジエンアクリロニトリル共重合体ゴム、クロロプレンゴム等が好ましく、中でも、SBR、イソプレンゴム、ブタジエンゴムがより好ましく、SBRが更に好ましい。
【0014】
(SBR(A-I))
SBRとしては、タイヤ用途に用いられる一般的なものを使用できるが、具体的には、スチレン含量が0.2~81.8モル%のものが好ましく、9.2~65.8モル%のものがより好ましく、25.4~50.9モル%のものが更に好ましい。また、ビニル含量が0.1~60モル%のものが好ましく、0.1~55モル%のものがより好ましい。
なお、ここでいうビニル含量とは、SBRに含まれる全ブタジエンに由来する1,4-結合、1,2-結合からなる単量体単位に占める1,2-結合を有する単量体単位の含有量を表す。 SBRの重量平均分子量(Mw)は、100,000~2,500,000であることが好ましく、150,000~2,000,000であることがより好ましく、200,000~1,500,000であることが更に好ましい。前記の範囲である場合、加工性と機械強度を両立することができる。
【0015】
本発明において、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めた標準ポリスチレン換算の分子量である。また、分子量分布(Mw/Mn)はそれらから算出した値である。
本発明において使用するSBRの示差熱分析法により求めたガラス転移温度(Tg)は、-95~0℃の範囲内であることが好ましく、-95~-5℃の範囲内であることがより好ましい。Tgを前記範囲にすることによって、粘度が高くなるのを抑えることができ、取り扱いが容易になる。
【0016】
≪SBRの製造方法≫
本発明において用いることができるSBRは、スチレンとブタジエンとを共重合して得られる。SBRの製造方法について特に制限はなく、乳化重合法、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれも用いることができ、特に乳化重合法、溶液重合法が好ましい。
【0017】
(i)乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)
E-SBRは、通常の乳化重合法により製造でき、例えば、所定量のスチレン及びブタジエン単量体を乳化剤の存在下に乳化分散し、ラジカル重合開始剤により乳化重合する。
乳化剤としては、例えば、炭素数10以上の長鎖脂肪酸塩又はロジン酸塩が用いられる。具体例としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸のカリウム塩又はナトリウム塩が挙げられる。
分散媒としては通常、水が使用され、重合時の安定性が阻害されない範囲で、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒を含んでいてもよい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウム等の過硫酸塩、有機過酸化物、過酸化水素等が挙げられる。
得られるE-SBRの分子量を調整するため、連鎖移動剤を使用することもできる。連鎖移動剤としては、例えば、tert-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、チオグリコール酸、ジテルペン、ターピノーレン、γ-テルピネン、α-メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
【0018】
乳化重合の温度は、使用するラジカル重合開始剤の種類によって適宜選択できるが、通常、0~100℃が好ましく、0~60℃がより好ましい。重合様式は、連続重合、回分重合のいずれでもよい。重合反応は、重合停止剤の添加により停止できる。
重合停止剤としては、例えば、イソプロピルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミン等のアミン化合物;ヒドロキノンやベンゾキノン等のキノン系化合物、亜硝酸ナトリウム等が挙げられる。
重合反応停止後、必要に応じて老化防止剤を添加してもよい。重合反応停止後、得られたラテックスから必要に応じて未反応単量体を除去し、次いで、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム等の塩を凝固剤とし、必要に応じて硝酸、硫酸等の酸を添加して凝固系のpHを所定の値に調整しながら重合体を凝固させた後、分散溶媒を分離することによって重合体をクラムとして回収できる。クラムを水洗、次いで脱水後、バンドドライヤー等で乾燥することで、E-SBRが得られる。なお、凝固の際に、必要に応じて予めラテックスと乳化分散液にした伸展油とを混合し、油展ゴムとして回収してもよい。
E-SBRの市販品としては、JSR株式会社製、油展スチレンブタジエンゴム「JSR1723」等が挙げられる。
【0019】
(ii)溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)
S-SBRは、通常の溶液重合法により製造でき、例えば、溶媒中でアニオン重合可能な活性金属を使用して、所望により極性化合物の存在下、スチレン及びブタジエンを重合する。
アニオン重合可能な活性金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;ランタン、ネオジム等のランタノイド系希土類金属等が挙げられる。中でもアルカリ金属及びアルカリ土類金属が好ましく、アルカリ金属がより好ましい。更にアルカリ金属の中でも、有機アルカリ金属化合物がより好ましく用いられる。
溶媒としては、例えば、n-ブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;トルエン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの溶媒は、単量体濃度が1~50質量%となる範囲で用いることが好ましい。
【0020】
有機アルカリ金属化合物としては、例えば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム等の有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、1,4-ジリチオブタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物;ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン等が挙げられる。中でも有機リチウム化合物が好ましく、有機モノリチウム化合物がより好ましい。有機アルカリ金属化合物の使用量は、要求されるS-SBRの分子量によって適宜決められる。
有機アルカリ金属化合物は、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン等の第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミドとして使用することもできる。
極性化合物としては、アニオン重合において、反応を失活させず、ブタジエン部位のミクロ構造やスチレンの共重合体鎖中の分布を調整するために通常用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン等の3級アミン;アルカリ金属アルコキシド、ホスフィン化合物等が挙げられる。
【0021】
重合反応の温度は、通常、-80~150℃、好ましくは0~100℃、より好ましくは30~90℃の範囲である。重合様式は、回分式あるいは連続式のいずれでもよい。また、スチレン及びブタジエンのランダム共重合性を向上させるため、重合系中のスチレン及びブタジエンの組成比が特定範囲になるように、反応液中にスチレン及びブタジエンを連続的あるいは断続的に供給することが好ましい。
重合反応は、重合停止剤としてメタノール、イソプロパノール等のアルコールを添加して、反応を停止できる。重合停止剤を添加する前に、重合活性末端と反応し得る四塩化錫、テトラクロロシラン、テトラメトキシシラン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、2,4-トリレンジイソシアネート等のカップリング剤や、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、N-ビニルピロリドン等の重合末端変性剤を添加してもよい。重合反応停止後の重合溶液は、直接乾燥やスチームストリッピング等により溶媒を分離して、目的のS-SBRを回収できる。なお、溶媒を除去する前に、予め重合溶液と伸展油とを混合し、油展ゴムとして回収してもよい。
【0022】
(iii)変性スチレンブタジエンゴム(変性SBR)
本発明においては、SBRに官能基が導入された変性SBRを用いてもよい。官能基としては、例えば、アミノ基、アルコキシシリル基、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。
変性SBRの製造方法としては、例えば、重合停止剤を添加する前に、重合活性末端と反応し得る四塩化錫、テトラクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、2,4-トリレンジイソシアネート等のカップリング剤や、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、N-ビニルピロリドン等の重合末端変性剤、又は特開2011-132298号公報に記載のその他の変性剤を添加する方法が挙げられる。
この変性SBRにおいて、官能基が導入される重合体の位置については重合末端であってもよく、ポリマー鎖の側鎖であってもよい。
【0023】
(イソプレンゴム(A-II))
イソプレンゴムとしては、例えば、四ハロゲン化チタン-トリアルキルアルミニウム系、ジエチルアルミニウムクロライド-コバルト系、トリアルキルアルミニウム-三弗化ホウ素-ニッケル系、ジエチルアルミニウムクロライド-ニッケル系等のチーグラー系触媒;トリエチルアルミニウム-有機酸ネオジウム-ルイス酸系等のランタノイド系希土類金属触媒、又はS-SBRと同様に有機アルカリ金属化合物を用いて重合された、市販のイソプレンゴムを用いることができる。チーグラー系触媒により重合されたイソプレンゴムが、シス体含量が高く好ましい。また、ランタノイド系希土類金属触媒を用いて得られる超高シス体含量のイソプレンゴムを用いてもよい。
【0024】
イソプレンゴムのビニル含量は好ましくは50モル%以下、より好ましくは40モル%以下、更に好ましくは30モル%以下である。ビニル含量が50モル%以下であると転がり抵抗性能が良好となる。ビニル含量の下限は特に限定されない。
なお、ここでいうビニル含量とは、イソプレンゴム中の1,4-結合、1,2-結合および3,4-結合からなる単量体単位に占める3,4-結合と1,2-結合の含有量の割合を表す。
またガラス転移温度はビニル含量によって変化するが、-20℃以下であることが好ましく、-30℃以下であることがより好ましい。
イソプレンゴムの重量平均分子量(Mw)は90,000~2,000,000であることが好ましく、150,000~1,500,000であることがより好ましい。Mwが前記範囲にある場合、加工性と機械強度が良好となる。
前記イソプレンゴムは、その一部が多官能型変性剤、例えば、四塩化錫、四塩化珪素、エポキシ基を分子内に有するアルコキシシラン、又はアミノ基含有アルコキシシランのような変性剤を用いることにより分岐構造又は極性官能基を有していてもよい。
【0025】
(ブタジエンゴム(A-III))
ブタジエンゴムとしては、例えば、四ハロゲン化チタン-トリアルキルアルミニウム系、ジエチルアルミニウムクロライド-コバルト系、トリアルキルアルミニウム-三弗化ホウ素-ニッケル系、ジエチルアルミニウムクロライド-ニッケル系等のチーグラー系触媒;トリエチルアルミニウム-有機酸ネオジム-ルイス酸系等のランタノイド系希土類金属触媒、又はS-SBRと同様に有機アルカリ金属化合物を用いて重合された、市販のブタジエンゴムを用いることができる。チーグラー系触媒により重合されたブタジエンゴムが、シス体含量が高く好ましい。また、ランタノイド系希土類金属触媒を用いて得られる超高シス体含量のブタジエンゴムを用いてもよい。
ブタジエンゴムのビニル含量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。ビニル含量が50質量%以下であると転がり抵抗性能が良好となる。ビニル含量の下限は特に限定されない。またガラス転移温度はビニル含量によって変化するが、-40℃以下であることが好ましく、-50℃以下であることがより好ましい。
なお、ここでいうビニル含量とは、ブタジエンゴム中の1,4-結合、1,2-結合からなる単量体単位に占める1,2-結合の含有量の割合を表す。
ブタジエンゴムの重量平均分子量(Mw)は90,000~2,000,000であることが好ましく、150,000~1,500,000であることがより好ましい。Mwが前記範囲にある場合、加工性と機械強度が良好となる。
前記ブタジエンゴムは、その一部が多官能型変性剤、例えば、四塩化錫、四塩化珪素、エポキシ基を分子内に有するアルコキシシラン、又はアミノ基含有アルコキシシランのような変性剤を用いることにより分岐構造又は極性官能基を有していてもよい。
【0026】
SBR、イソプレンゴム、及びブタジエンゴムの少なくとも1種と共に、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ブタジエンアクリロニトリル共重合体ゴム、クロロプレンゴム等を1種又は2種以上を使用することができる。また、これらの製造方法は特に限定されず、市販されているものを使用できる。
【0027】
〔天然ゴム〕
ゴム成分(A)で用いる天然ゴムとしては、例えば、SMR、SIR、STR等のTSRや、RSS等のタイヤ工業において一般的に用いられる天然ゴム、高純度天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、水酸基化天然ゴム、水素添加天然ゴム、グラフト化天然ゴム等の改質天然ゴムが挙げられる。中でも、品質のばらつきが少ない点、及び入手容易性の点から、SMR20、STR20やRSS#3が好ましい。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、ゴム成分(A)に用いるゴムの製造方法に特に制限はなく、市販のものを用いてもよい。
【0028】
本発明において、ゴム組成物中のゴム成分(A)の含有量は、好ましくは20~99.9質量%、より好ましくは25~80質量%、更に好ましくは30~70質量%である。
【0029】
<フィラー(B)>
フィラー(B)は、ゴム組成物の架橋物における機械強度等の物性を改善する効果を有する。フィラー(B)としては、カーボンブラック及びシリカの少なくとも1種を用いることが好ましい。
〔カーボンブラック〕
カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、及びケッチェンブラック等のカーボンブラックを用いることができる。これらの中では、加硫速度や機械強度向上の観点から、ファーネスブラックが好ましい。
前記カーボンブラックの平均粒径としては、分散性、機械強度、及び硬度を向上させる観点から、5~100nmが好ましく、5~80nmがより好ましく、5~70nmが更に好ましい。
平均粒径が5~100nmであるカーボンブラックとして、ファーネスブラックの市販品としては、例えば、三菱化学株式会社「ダイヤブラック」、東海カーボン株式会社製「シースト」等が挙げられる。アセチレンブラックの市販品としては、例えば、電気化学工業株式会社製「デンカブラック」が挙げられる。ケッチェンブラックの市販品としては、例えば、ライオン株式会社製「ECP600JD」が挙げられる。
【0030】
前記カーボンブラックは、ゴム成分(A)及び後述する重合体(C)への濡れ性や分散性を向上させる観点から、硝酸、硫酸、塩酸又はこれらの混合酸等による酸処理や、空気存在下での熱処理による表面酸化処理を行ってもよい。また、本発明のゴム組成物の機械強度向上の観点から、黒鉛化触媒の存在下に2,000~3,000℃で熱処理を行ってもよい。なお、黒鉛化触媒としては、ホウ素、ホウ素酸化物(例えば、B、B、B、B等)、ホウ素オキソ酸(例えば、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸等)及びその塩、ホウ素炭化物(例えば、BC、BC等)、窒化ホウ素(BN)、その他のホウ素化合物が好適に用いられる。
【0031】
カーボンブラックは、粉砕等により粒度を調整することができる。カーボンブラックの粉砕には、高速回転粉砕機(ハンマーミル、ピンミル、ケージミル)や各種ボールミル(転動ミル、振動ミル、遊星ミル)、撹拌ミル(ビーズミル、アトライター、流通管型ミル、アニュラーミル)等が使用できる。
なお、カーボンブラックの平均粒径は、透過型電子顕微鏡により粒子の直径を測定してその平均値を算出することにより求めることができる。
【0032】
本発明のゴム組成物がカーボンブラックを含有する場合、その含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、好ましくは0.1~120質量部、より好ましくは5~90質量部、更に好ましくは10~80質量部である。カーボンブラックの含有量が前記範囲内であると、得られるゴム成形品の硬度を高め、操縦安定性を向上させることができる。
【0033】
〔シリカ〕
シリカとしては、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられる。中でも、機械強度及び耐摩耗性を一層向上させる観点から、湿式シリカが好ましい。これらは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シリカの平均粒径は、得られるゴム組成物の加工性、転がり抵抗性能、機械強度、及び耐摩耗性を向上させる観点から、0.5~200nmが好ましく、5~150nmがより好ましく、10~100nmが更に好ましい。
なお、シリカの平均粒径は、透過型電子顕微鏡により粒子の直径を測定して、その平均値を算出することにより求めることができる。
【0034】
本発明のゴム組成物がシリカを含有する場合、その含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、好ましくは0.1~120質量部、より好ましくは5~90質量部、更に好ましくは10~80質量部である。シリカの含有量が前記範囲内であると、得られるゴム成形品の硬度をより一層向上させることができる。
【0035】
〔その他のフィラー〕
本発明のゴム組成物は、機械強度の向上、硬度調整、増量剤を配合することによる経済性の改善等を目的として、必要に応じてシリカ及びカーボンブラック以外のフィラーを更に含有していてもよい。
【0036】
シリカ及びカーボンブラック以外のフィラーとしては、用途に応じて適宜選択されるが、例えば、有機充填剤や、クレー、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化チタン、ガラス繊維、ガラスバルーン等の無機充填剤の1種又は2種以上を使用できる。
【0037】
<3,4-結合単位を含む1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位を含有する重合体(C)>
本発明のゴム組成物は、3,4-結合単位を含む1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位を含有する重合体(C)(以下、単に重合体(C)ともいう)を含有する。本発明においては、ゴム成分(A)、フィラー(B)、及び重合体(C)を併用するため、硬度が高く、操縦安定性に優れたゴム成形品を与えることができるゴム組成物を得ることができる。
本発明の要旨及び技術的範囲を何ら制限するものではないが、重合体(C)が有する1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位中に3,4-結合単位が含まれることによるゴム組成物の硬度の向上は、次のような作用に起因することが考えられる。
すなわち、重合体(C)が有する1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位中に3,4-結合単位が含まれることにより、側鎖の末端2つに二重結合を有するため、当該重合体(C)とゴム成分(A)とが加硫しやすくなり、得られるゴム成形品の硬度を高めることができるものと考えられる。
【0038】
前記1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位は、3,4-結合単位の他に、1,2-結合単位、1,4-結合単位、及び4,1-結合単位を含む。各結合単位の結合順序に特に制限はない。なお、本発明において、1,4-結合単位と4,1-結合単位は同一とみなす。
【0039】
重合体(C)は、1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位を含有し、当該1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位が、3,4-結合単位を含めば特に限定されない。中でも、1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位中に含まれる3,4-結合単位の含有割合は、本発明の効果を発揮する観点から、好ましくは2モル%以上、より好ましくは2~40モル%、更に好ましくは2~35モル%である。
【0040】
1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位中に含まれる1,2-結合単位の含有割合は、好ましくは35~65モル%、より好ましくは40~60モル%、更に好ましくは40~50モル%である。
1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位中に含まれる1,4-結合単位の含有割合は、前記3,4-結合単位の含有割合と1,2-結合単位の含有割合とを考慮して、その残部となる。つまり、前記1,4-結合の含有割合は、「100-(3,4-結合単位の含有割合+1,2-結合単位の含有割合)」から求められる。
各結合単位の含有割合は、13C-NMR測定によって求められる。具体的には、実施例に記載の方法に従って求めることができる。
【0041】
また、前記1,2-結合単位の含有量に対する前記3,4-結合単位の含有量の比(3,4-結合単位/1,2-結合単位)は、好ましくは0.04~0.7、より好ましくは0.045~0.6、更に好ましくは0.05~0.5、より更に好ましくは0.1~0.45、特に好ましくは0.12~0.4である。前記比(3,4-結合単位/1,2-結合単位)が0.04以上であると1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位が有する3,4-結合単位の側鎖末端に存在する二重結合が増加し、ゴム成分(A)と加硫しやすくなり、得られるゴム成形品の硬度を高めることができ、0.7以下であると側鎖密度の上昇が抑えられ、Tgおよび粘度の上昇が抑制され、取り扱いやすくなる。
なお、重合温度、ルイス塩基の配合量を適宜調整することにより、前記比(3,4-結合単位/1,2-結合単位)を前記範囲内とすることができる。
【0042】
重合体(C)は、1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位のみで構成されていてもよく、1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位と、1,3,7-オクタトリエン以外の単量体に由来する構造単位とで構成されていてもよい。
重合体(C)が共重合体である場合、1,3,7-オクタトリエン以外の単量体としては、例えば、炭素数4以上の共役ジエン化合物、芳香族ビニル化合物、及びその他のビニル化合物を挙げることができる。
炭素数4以上の共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、4,5-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、2-ヘキシル-1,3-ブタジエン、2-ベンジル-1,3-ブタジエン、2-p-トルイル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、2,3-ジエチル-1,3-ヘプタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、2,3-ジメチル-1,3-オクタジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、ミルセン(7-メチル-3-メチレンオクタ-1,6-ジエン)等が挙げられる。中でも、ブタジエンおよびイソプレンからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0043】
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-4-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,4-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、4-n-プロピルスチレン、4-イソプロピルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン、4-(4-フェニル-n-ブチル)スチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、1,1-ジフェニルエチレン、N,N-ジメチル-p-アミノエチルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン、1,2-ジビニルベンゼン、1,3-ジビニルベンゼン、1,4-ジビニルベンゼン、1,2-ジビニル-3,4-ジメチルベンゼン、2,4-ジビニルビフェニル、1,3-ジビニルナフタレン、1,2,4-トリビニルベンゼン、3,5,4’-トリビニルビフェニル、1,3,5-トリビニルナフタレン、1,5,6-トリビニル-3,7-ジエチルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N-ジエチル-4-アミノエチルスチレン、ビニルピリジン、4-メトキシスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、ジビニルベンゼン、2-クロロスチレン、4-クロロスチレン、等が挙げられる。中でも、スチレン、α-メチルスチレン、4-メチルスチレンが好ましい。
【0044】
その他のビニル化合物として、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル等のα,β-不飽和ニトリル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、3-メチルクロトン酸、3-ブテン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等のα,β-不飽和カルボン酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸-sec-ブチル、アクリル酸-tert-ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸-sec-ブチル、メタクリル酸-tert-ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル等のα,β-不飽和カルボン酸エステル;N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-プロピルアクリルアミド、N-ブチルアクリルアミド、N-オクチルアクリルアミド、N-フェニルアクリルアミド、N-グリシジルアクリルアミド、N,N’-エチレンビスアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-エチル-N-メチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジプロピルアクリルアミド、N,N-ジオクチルアクリルアミド、N,N-ジフェニルアクリルアミド、N-エチル-N-グリシジルアクリルアミド、N,N-ジグリシジルアクリルアミド、N-メチル-N-(4-グリシジルオキシブチル)アクリルアミド、N-メチル-N-(5-グリシジルオキシペンチル)アクリルアミド、N-メチル-N-(6-グリシジルオキシヘキシル)アクリルアミド、N-アクリロイルピロリジン、N-アクリロイル-L-プロリンメチルエステル、N-アクリロイルピペリジン、N-アクリロイルモルホリン、1-アクリロイルイミダゾール、N,N’-ジエチル-N,N’-エチレンビスアクリルアミド、N,N’-ジメチル-N,N’-ヘキサメチレンビスアクリルアミド、ジ(N,N’-エチレン)ビスアクリルアミド等のアクリルアミドなどが挙げられる。これらは、1種を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
共重合体中における1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位、及び1,3,7-オクタトリエン以外の単量体に由来する構造単位の合計に対する1,3,7-オクタトリエン以外の単量体に由来する構造単位の割合は、1,3,7-オクタトリエンの側鎖に起因する効果を得る観点から、好ましくは10~80モル%、より好ましくは20~70モル%、更に好ましくは30~60モル%である。
【0046】
前記共重合体において、1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位、及び1,3,7-オクタトリエン以外の単量体に由来する構造単位の総量に対する1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位の含有率(モル%;1,3,7-オクタトリエン含有率αと称することがある。)は、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることが更に好ましく、40モル%以上であることが特に好ましい。1,3,7-オクタトリエン含有率αの上限値に特に制限はないが、99モル%以下であってもよいし、90モル%以下であってもよいし、80モル%以下であってもよいし、70モル%以下であってもよいし、60モル%以下であってもよい。
【0047】
前記共重合体において、前記共役ジエン化合物の結合様式に特に制限はなく、各結合様式の結合順序および含有割合に特に制限はない。例えば、ブタジエンの代表的な結合様式としては、1,2-結合、1,4-結合があり、各結合様式の結合順序および含有割合に特に制限はない。
ブタジエンの結合様式について、例えば、全結合様式に対する1,2-結合の含有割合は、5~60モル%であることが好ましく、10~50モル%であることがより好ましく、15~45モル%であることが更に好ましい。全結合様式に対する1,4-結合の含有割合は、全結合様式に対する1,2-結合の含有割合の残部である。
【0048】
また、イソプレンの代表的な結合様式としては、1,2-結合、3,4-結合、1,4-結合があり、各結合様式の結合順序および含有割合に特に制限はない。
イソプレンの結合様式について、例えば、全結合様式に対する1,4-結合の含有割合は、40~95モル%であることが好ましく、50~90モル%であることがより好ましく、50~85モル%であることが更に好ましく、60~85モル%であることがより更に好ましい。全結合様式に対する3,4-結合の含有割合は、5~60モル%であることが好ましく、5~50モル%であることがより好ましく、5~40モル%であることが更に好ましく、15~40モル%であることがより更に好ましい。全結合様式に対する1,2-結合の含有割合は、前記1,4-結合の含有割合と前記3,4-結合の含有割合を考慮して、その残部となる。
各結合様式の割合は、13C-NMR測定によって求められる。
【0049】
前記共重合体において、1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位と、1,3,7-オクタトリエン以外の単量体に由来する構造単位との結合形態は、特に制限されるものではないが、ランダム、完全交互、グラジエント、ブロック、テーパー、およびこれらの組み合わせが挙げられ、ランダムまたはブロックが好ましく、製造容易性の観点から、ランダムであることがより好ましい。
【0050】
重合体(C)の重量平均分子量(Mw)は、硬度を高め、操縦安定性を向上させる観点から、好ましくは1,000~1,000,000、より好ましくは4,000~500,000、更に好ましくは7,000~200,000、より更に好ましくは13,000~200,000、特に好ましくは50,000~180,000である。
【0051】
また、フィラー(B)として、平均粒径が小さいカーボンブラックを使用した場合、カーボンブラック同士の高い凝集力により、ゴム組成物中のカーボンブラックの分散性が低下する。分散性が低下するとゴム組成物が発熱しやすくなるため、成形品の転がり抵抗性能の悪化を招き、いわゆる低燃費タイヤの要求特性を満たすことができない場合がある。
本発明では、重合体(C)の重量平均分子量(Mw)を好ましくは50,000~180,000、より好ましくは62,000~170,000とすることで、さらに転がり抵抗性能を改善することができる。
【0052】
重合体(C)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.5以下、より更に好ましくは2.0以下である。当該分子量分布(Mw/Mn)の下限に特に制限はないが、通常、1.0以上となることが多く、1.05以上であってもよい。
【0053】
重合体(C)は、カップリング剤に由来する構造単位を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。重合体(C)がカップリング剤に由来する構造単位を含有する場合、カップリング剤に由来する構造単位の含有量は、全構成単位中、5モル%以下であることが好ましく、2モル%以下であることがより好ましい。
前記カップリング剤としては、例えば、ジビニルベンゼン; エポキシ化1,2-ポリブタジエン、エポキシ化大豆油、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等の多価エポキシ化合物; 四塩化錫、テトラクロロシラン、トリクロロシラン、トリクロロメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、ジブロモジメチルシラン等のハロゲン化物; 安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル等のエステル化合物; 炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル等の炭酸エステル化合物; ジエトキシジメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラキス(2-エチルヘキシルオキシ)シラン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン化合物;2,4-トリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0054】
重合体(C)は、後述するアニオン重合によって製造する際、重合反応後に末端停止剤を反応させた後の段階では、分子末端にリビングアニオン活性種を有さない重合体である。また、重合体(C)は、後述するアニオン重合によって製造する際、重合反応後に末端停止剤を反応させる前の段階では、分子末端にリビングアニオン活性種を有する重合体(リビングアニオン重合体と称することがある。)である。
【0055】
(水素化物)
重合体(C)は、耐熱性および耐候性の観点から、前記重合体(C)の水素化物であってもよい。重合体(C)が水素化物である場合、水素化率に特に制限はないが、重合体(C)において、炭素-炭素二重結合の80モル%以上が水素化(以下、水添とも称される。但し、ベンゼン環は除く)されていることが好ましく、85モル%以上が水素化されていることがより好ましく、90モル%以上が水素化されていることが更に好ましく、93モル%以上が水素化されていることが特に好ましく、95モル%以上が水素化されていることが最も好ましい。なお、当該値を水素化率(水添率)と称することがある。水素化率の上限値に特に制限はないが、99モル%以下であってもよい。
水添率は、炭素-炭素二重結合の含有量を水素化後のH-NMR測定によって求めることができる。
【0056】
重合体(C)の含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、好ましくは1~50質量部、より好ましくは5~40質量部、更に好ましくは8~30質量部である。重合体(C)の含有量が前記範囲内であると、得られるゴム成形品の硬度を高め、操縦安定性を向上させることができる。
【0057】
重合体(C)とゴム成分(A)の相分離構造の有無は問わないが、相分離構造を形成した場合、得られる加硫ゴムのtanδが上昇し、転がり抵抗性能を向上することが困難となる場合がある。また、重合体(C)とゴム成分(A)との相分離界面の相溶性が低下し、得られる加硫ゴムの破断強度等の力学特性が低下しやすくなるので、相分離構造を形成しないことが好ましい。
【0058】
重合体(C)とゴム成分(A)の相分離構造の有無は、示差走査型熱量計(DSC)によるTgや動的粘弾性測定によるtanδのピーク形状から判断できる。すなわち、Tgやtanδが単一を示すと、重合体(C)とゴム成分(A)がナノメートルオーダー(分子レベル)で相溶した状態にあることを意味している。特に動的粘弾性測定による判断が好ましい。
【0059】
[重合体(C)の製造方法]
重合体(C)は、原料として1,3,7-オクタトリエンを用いてアニオン重合を行うことによって製造することができる。
アニオン重合方法に特に制限はなく、公知のアニオン重合方法に準じることができる。
例えば、1,3,7-オクタトリエンと、必要に応じて使用する前記1,3,7-オクタトリエン以外の単量体(以下、重合反応させる原料を、原料モノマーと称することがある。)との混合物に対して、アニオン重合開始剤を供給することによって重合反応させ、反応系内でリビングアニオン活性種を有する重合体を形成する。次いで、重合停止剤を添加することによって、重合体(C)を製造することができる。
また、必要に応じて、ルイス塩基および溶媒を使用してもよい。
【0060】
重合反応は、重合反応を阻害する水および酸素等が反応系内へ侵入するのを抑制するために、例えば、不活性ガスで加圧した反応器内部で実施することが好ましい。不活性ガス雰囲気下とすることで、アニオン重合開始剤および成長末端アニオンが水または酸素との反応で消費されるのを抑制でき、精度良く重合反応を制御できる。ここで、成長末端アニオンとは、重合反応中に反応系内に存在する重合体が分子末端に有するアニオンのことであり、以下、同様である。
【0061】
重合体の製造に使用する、原料モノマー、後述のアニオン重合開始剤、後述のルイス塩基および後述の溶媒等は、成長末端アニオンと反応して重合反応を阻害するような物質、例えば、酸素、水、ヒドロキシ化合物、カルボニル化合物およびアルキン化合物等を実質的に含まないことが好ましく、また、遮光下で、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気下で保存されていることが好ましい。
原料モノマー、アニオン重合開始剤およびルイス塩基等は、それぞれ溶媒で希釈して使用してもよいし、溶媒で希釈せずにそのまま使用してもよい。
【0062】
(アニオン重合開始剤)
重合体(C)の製造方法はアニオン重合を利用するため、アニオン重合開始剤を使用する。当該アニオン重合開始剤は、アニオン重合を開始できる化合物であればその種類に制限はない。
アニオン重合開始剤としては、芳香族ビニル化合物および共役ジエン化合物のアニオン重合において一般的に使用される有機アルカリ金属化合物を使用できる。当該有機アルカリ金属化合物としては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、イソブチルリチウム、ペンチルリチウム、ヘキシルリチウム、ブタジエニリルリチウム、シクロヘキシルリチウム、フェニルリチウム、ベンジルリチウム、p-トルイルリチウム、スチリルリチウム、トリメチルシリルリチウム、1,4-ジリチオブタン、1,5-ジリチオペンタン、1,6-ジリチオヘキサン、1,10-ジリチオデカン、1,1-ジリチオジフェニレン、ジリチオポリブタジエン、ジリチオポリイソプレン、1,4-ジリチオベンゼン、1,2-ジリチオ-1,2-ジフェニルエタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン、1,3,5-トリリチオ-2,4,6-トリエチルベンゼン等の有機リチウム化合物;メチルナトリウム、エチルナトリウム、n-プロピルナトリウム、イソプロピルナトリウム、n-ブチルナトリウム、sec-ブチルナトリウム、tert-ブチルナトリウム、イソブチルナトリウム、フェニルナトリウム、ナトリウムナフタレン、シクロペンタジエニルナトリウム等の有機ナトリウム化合物などが挙げられる。中でも、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウムが好ましい。有機アルカリ金属化合物は、1種を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
アニオン重合開始剤の使用量は、所望とする重合体の重量平均分子量または反応液の固形分濃度に応じて適宜設定できるが、例えば、原料モノマーの使用量/アニオン重合開始剤(モル比)が10~3,000となることが好ましく、20~2,500となることがより好ましく、30~2,000となることが更に好ましく、40~1,500となることが特に好ましい。
【0064】
(ルイス塩基)
重合体(C)の製造方法では、重合反応を制御する観点、特に、1,3,7―オクタトリエンに由来する構造単位及び1,3,7―オクタトリエン以外の共役ジエンに由来する構造単位における結合単位を制御するという観点から、ルイス塩基を使用してもよく、また、使用することが好ましい。当該ルイス塩基としては、アニオン重合開始剤および成長末端アニオンと実質的に反応しない有機化合物であれば、その種類に特に制限はない。
ルイス塩基を使用する場合、ルイス塩基と、アニオン重合に用いる重合開始剤(アニオン重合開始剤)とのモル比(ルイス塩基/重合開始剤)は、0.01~1,000であることが好ましく、0.01~400であることがより好ましく、0.1~200であることがより好ましく、0.1~50であることが更に好ましく、0.1~22であることが特に好ましい。この範囲であると、特に、1,3,7―オクタトリエンに由来する構造単位における1,2-結合単位の含有量に対する3,4-結合単位の含有量の比(3,4-結合単位/1,2-結合単位)が上述の好ましい範囲となる。また、短時間で1,3,7-オクタトリエンの高い転化率を達成し易い。
【0065】
ルイス塩基としては、(i)分子内にエーテル結合および第三級アミノ基からなる群から選択される少なくとも1つを有する化合物[以下、ルイス塩基(i)と称する。]が挙げられ、ルイス塩基(i)の中でも、(i-1)非共有電子対を有する原子1つを有する化合物[以下、ルイス塩基(i-1)と称する。]および(i-2)非共有電子対を有する原子2つ以上を有する化合物[以下、ルイス塩基(i-2)と称する。]が挙げられる。
ルイス塩基としては、単座配位性を有するものであってもよいし、多座配位性を有するものであってもよい。また、ルイス塩基は、1種を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
ルイス塩基(i-1)の具体例としては、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオクチルエーテル、エチルフェニルエーテル、ジフェニルエーテル等の非環状モノエーテル;テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン等の、好ましくは合計炭素数2~40(より好ましくは合計炭素数2~20)の環状モノエーテル;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリsec-ブチルアミン、トリtert-ブチルアミン、トリtert-ヘキシルアミン、トリtert-オクチルアミン、トリtert-デシルアミン、トリtert-ドデシルアミン、トリtert-テトラデシルアミン、トリtert-ヘキサデシルアミン、トリtert-オクタデシルアミン、トリtert-テトラコサニルアミン、トリtert-オクタコサニルアミン、1-メチル-1-アミノ-シクロヘキサン、トリペンチルアミン、トリイソペンチルアミン、トリネオペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、N,N-ジメチルエチルアミン、N,N-ジメチルプロピルアミン、N,N-ジメチルイソプロピルアミン、N,N-ジメチルブチルアミン、N,N-ジメチルイソブチルアミン、N,N-ジメチルsec-ブチルアミン、N,N-ジメチルtert-ブチルアミン、N,N-ジメチルペンチルアミン、N,N-ジメチルイソペンチルアミン、N,N-ジメチルネオペンチルアミン、N,N-ジメチルヘキシルアミン、N,N-ジメチルヘプチルアミン、N,N-ジメチルオクチルアミン、N,N-ジメチルノニルアミン、N,N-ジメチルデシルアミン、N,N-ジメチルウンデシルアミン、N,N-ジメチルドデシルアミン、N,N-ジメチルフェニルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジエチルモノメチルアミン、N,N-ジプロピルモノメチルアミン、N,N-ジイソプロピルモノメチルアミン、N,N-ジブチルモノメチルアミン、N,N-ジイソブチルモノメチルアミン、N,N-ジsec-ブチルモノメチルアミン、N,N-ジtert-ブチルモノメチルアミン、N,N-ジペンチルモノメチルアミン、N,N-ジイソペンチルモノメチルアミン、N,N-ジネオペンチルモノメチルアミン、N,N-ジヘキシルモノメチルアミン、N,N-ジヘプチルモノメチルアミン、N,N-ジオクチルモノメチルアミン、N,N-ジノニルモノメチルアミン、N,N-ジデシルモノメチルアミン、N,N-ジウンデシルモノメチルアミン、N,N-ジドデシルモノメチルアミン、N,N-ジフェニルモノメチルアミン、N,N-ジベンジルモノメチルアミン、N,N-ジプロピルモノメチルアミン、N,N-ジイソプロピルモノエチルアミン、N,N-ジブチルモノエチルアミン、N,N-ジイソブチルモノエチルアミン、N,N-ジsec-ブチルモノエチルアミン、N,N-ジtert-ブチルモノエチルアミン、N,N-ジペンチルモノエチルアミン、N,N-ジイソペンチルモノエチルアミン、N,N-ジネオペンチルモノエチルアミン、N,N-ジヘキシルモノエチルアミン、N,N-ジヘプチルモノエチルアミン、N,N-ジオクチルモノエチルアミン、N,N-ジノニルモノエチルアミン、N,N-ジデシルモノエチルアミン、N,N-ジウンデシルモノエチルアミン、N,N-ジドデシルモノエチルアミン、N,N-ジフェニルモノエチルアミン、N,N-ジベンジルモノエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N-エチルピペラジン、N-メチル-N-エチルアニリン、N-メチルモルホリン等の、好ましくは合計炭素数3~60(より好ましくは合計炭素数3~15)の第三級モノアミンなどが挙げられる。
【0067】
ルイス塩基(i-1)は、アニオン重合開始剤の金属原子に対して単座配位性を有するルイス塩基である。
ルイス塩基(i-1)としては、重合反応を制御する観点、特に、1,3,7―オクタトリエンに由来する構造単位及び1,3,7―オクタトリエン以外の共役ジエンに由来する構造単位における結合単位を制御するという観点から、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルエチルアミンが好ましい。
ルイス塩基(i-1)を使用する場合、ルイス塩基(i-1)中の非共有電子対を有する原子と、前記アニオン重合に用いる重合開始剤の金属原子とのモル比(非共有電子対を有する原子/重合開始剤の金属原子)が0.01~1,000であることが好ましく、0.1~500であることがより好ましく、2~300であることが更に好ましく、2~100であることが特に好ましく、2~50であることが最も好ましい。この範囲であると、特に、1,3,7―オクタトリエンに由来する構造単位における1,2-結合単位の含有量に対する3,4-結合単位の含有量の比(3,4-結合単位/1,2-結合単位)が上述の好ましい範囲となる。また、短時間で1,3,7-オクタトリエンの高い転化率を達成し易い。
【0068】
ルイス塩基(i-2)の具体例としては、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジイソプロポキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、1,2-ジフェノキシエタン、1,2-ジメトキシプロパン、1,2-ジエトキシプロパン、1,2-ジフェノキシプロパン、1,3-ジメトキシプロパン、1,3-ジエトキシプロパン、1,3-ジイソプロポキシプロパン、1,3-ジブトキシプロパン、1,3-ジフェノキシプロパン等の、好ましくは合計炭素数4~80(より好ましくは合計炭素数4~40)の非環状ジエーテル;1,4-ジオキサン、2,2-ジ(テトラヒドロフリル)プロパン等の、好ましくは合計炭素数4~80(より好ましくは合計炭素数4~40)の環状ジエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジブチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジブチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリブチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリブチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラブチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラブチレングリコールジエチルエーテル等の、好ましくは合計炭素数6~40(より好ましくは合計炭素数6~20)の非環状ポリエーテル;N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン等の、好ましくは合計炭素数6~122(より好ましくは合計炭素数6~32、更に好ましくは合計炭素数6~15)のポリアミンなどが挙げられる。
【0069】
ルイス塩基(i-2)の中には、アニオン重合開始剤の金属原子に対して単座配位性を有するルイス塩基と、アニオン重合開始剤の金属原子に対して多座配位性を有するルイス塩基とがある。
ルイス塩基(i-2)としては、重合反応を制御する観点、特に、1,3,7―オクタトリエンに由来する構造単位及び1,3,7―オクタトリエン以外の共役ジエンに由来する構造単位における結合単位を制御するという観点から、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジイソプロポキシエタン、2,2-ジ(テトラヒドロフリル)プロパン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミンが好ましい。
【0070】
ルイス塩基(i-2)を使用する場合は、アニオン重合開始剤の金属原子に対して単座配位性を有するルイス塩基と、アニオン重合開始剤の金属原子に対して多座配位性(例えば2座配位性)を有するルイス塩基とで、好ましい使用量に違いがある。ルイス塩基(i-2)は非共有電子対を有する原子2つ以上有するが、このうちの非共有電子対を有する原子2つに着目したとき、それらを連結している最短架橋炭素数が1つである(例えば、-O-CH-O-、>N-CH-N<など)か、または3つ以上である(例えば、-O-C-O-、>N-C-N<、-O-C-N<など)場合には、各々の原子が単座配位性を有する傾向にある。一方、同じく非共有電子対を有する原子2つに着目したとき、それらを連結している最短架橋炭素数が2つである(例えば、-O-C-O-、>N-C-N<など)とき、それらの非共有電子対を有する原子2つがアニオン重合開始剤の金属原子1つに対して多座配位(2座配位)する傾向にある。
【0071】
ルイス塩基(i-2)が単座配位性を有するルイス塩基の場合、ルイス塩基(i-2)中の非共有電子対を有する原子と、前記アニオン重合に用いる重合開始剤の金属原子とのモル比(非共有電子対を有する原子/重合開始剤の金属原子)が0.01~1,000であることが好ましく、0.1~500であることがより好ましく、2~300であることが更に好ましく、2~100であることが特に好ましく、2~50であることが最も好ましい。この範囲であると、特に、1,3,7―オクタトリエンに由来する構造単位における1,2-結合単位の含有量に対する3,4-結合単位の含有量の比(3,4-結合単位/1,2-結合単位)が上述の好ましい範囲となる。また、短時間で1,3,7-オクタトリエンの高い転化率を達成し易い。
一方、ルイス塩基(i-2)が多座配位性(2座配位性)を有するルイス塩基の場合、ルイス塩基(i-2)中の非共有電子対を有する原子と、前記アニオン重合に用いる重合開始剤の金属原子とのモル比(非共有電子対を有する原子/重合開始剤の金属原子)が0.01~50であることが好ましく、0.1~10であることがより好ましく、0.1~5であることが更に好ましく、0.3~4であることが特に好ましい。この範囲であると、特に、1,3,7―オクタトリエンに由来する構造単位における1,2-結合単位の含有量に対する3,4-結合単位の含有量の比(3,4-結合単位/1,2-結合単位)が上述の好ましい範囲となる。また、短時間で1,3,7-オクタトリエンの高い転化率を達成し易い。
なお、単座配位性と多座配位性(2座配位性)を併せ持つルイス塩基の場合、単座配位性の非共有電子対を有する原子と、多座配位性(2座配位性)を有する非共有電子対を有する2つ以上の原子の組み合わせそれぞれに着目し、前記記載を参照してルイス塩基の使用量を決定することが好ましい。
【0072】
(溶媒)
重合体(C)の製造方法は、溶媒の不存在下でも実施できるが、効率的に重合熱を除去する目的で、溶媒の存在下で実施することが好ましい。
溶媒としては、アニオン重合開始剤および成長末端アニオンと実質的に反応しない溶媒であれば特にその種類に制限はないが、重合時間、1,3,7―オクタトリエンに由来する構造単位及び1,3,7―オクタトリエン以外の共役ジエンに由来する構造単位における結合単位を前記ルイス塩基によって精度良く制御する観点からは、炭化水素系溶媒が好ましい。
炭化水素系溶媒としては、例えばイソペンタン(27.9℃;1atmでの沸点であり、以下、同様である。)、ペンタン(36.1℃)、シクロペンタン(49.3℃)、ヘキサン(68.7℃)、シクロヘキサン(80.7℃)、ヘプタン(98.4℃)、イソヘプタン(90℃)、イソオクタン(99℃)、2,2,4-トリメチルペンタン(99℃)、メチルシクロヘキサン(101.1℃)、シクロヘプタン(118.1℃)、オクタン(125.7℃)、エチルシクロヘキサン(132℃)、メチルシクロヘプタン(135.8℃)、ノナン(150.8℃)、デカン(174.1℃)等の飽和脂肪族炭化水素;トルエン(110.6℃)、エチルベンゼン(136.2℃)、p-キシレン(138.4℃)、m-キシレン(139.1℃)、o-キシレン(144.4℃)、プロピルベンゼン(159.2℃)、ブチルベンゼン(183.4℃)等の芳香族炭化水素が挙げられる。
原料モノマーの1つである1,3,7-オクタトリエン(沸点125.5℃)よりも低い沸点の溶媒を使用すると、溶媒の還流凝縮冷却によって効率的に重合熱を除去でき、好ましい。この観点から、溶媒としては、イソペンタン(27.9℃)、ペンタン(36.1℃)、シクロペンタン(49.3℃)、ヘキサン(68.7℃)、シクロヘキサン(80.7℃)、ヘプタン(98.4℃)、イソヘプタン(90℃)、イソオクタン(99℃)、2,2,4-トリメチルペンタン(99℃)、メチルシクロヘキサン(101.1℃)、シクロヘプタン(118.1℃)、トルエン(110.6℃)が好ましい。同様の観点から、中でも、シクロヘキサン、n-ヘキサンがより好ましい。
溶媒は、1種を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
溶媒の使用量に特に制限はないが、アニオン重合終了後の反応液の固形分濃度が好ましくは10~80質量%、より好ましくは10~70質量%、更に好ましくは15~65質量%、特に好ましくは15~55質量%となるように調整する。また、反応系内におけるリビングアニオン重合体の濃度が5質量%以上となるように調整することが好ましく、リビングアニオン重合体の濃度が10~80質量%となるように調整することがより好ましい。このような量で溶媒を使用すれば、工業生産に適した水準で重合熱の除去を達成でき、そのため、重合時間の短縮をし易く、且つ1,3,7-オクタトリエンの高転化率を達成し易い。さらに、このような量で溶媒を使用すれば、分子量分布を狭くし易い。
なお、溶媒の除去工程を簡潔にするという観点から、アニオン重合終了後の反応液の固形分濃度が35~80質量%となるように調整することも可能であり、50~70質量%となるように調整することも可能である。
【0074】
(反応器)
反応器の形式に特段の制限はなく、完全混合型反応器、管型反応器、およびこれらを2基以上直列または並列に接続した反応装置を使用できる。高い溶液粘度で狭い分子量分布(Mw/Mn)の重合体を製造する観点から、完全混合型反応器を用いることが好適である。反応器の攪拌翼に特に制限はないが、マックスブレンド翼、フルゾーン翼、パドル翼、プロペラ翼、タービン翼、ファンタービン翼、ファウドラー翼、ブルーマージン翼等が挙げられ、これらのいずれかを2つ以上組み合わせたものでもよい。得られる重合体溶液の粘度が高い場合は、分子量分布(Mw/Mn)を狭くすることおよびジャケット除熱を促進する観点から、マックスブレンド翼、フルゾーン翼を用いることが好ましい。
撹拌方法としては、上部撹拌であってもよいし、下部撹拌であってもよい。
【0075】
重合方法に特に制限はなく、回分式、半回分式、連続式のいずれで実施してもよい。完全混合型反応器は、反応器内部の溶液の加熱冷却を目的として外部にジャケットを有していてもよく、その構造には特に制限なく、公知の方式のものが使用できる。また、所望に応じて冷却伝熱を増加させる目的で、反応器内部に冷却バッフルまたは冷却コイル等を付設してもよい。さらに、気相部分に直接式または間接式に還流凝縮器を付設してもよい。重合熱の除去量を制御する観点から、不活性ガスを用いて反応器を加圧してもよいし、大気圧以下になるように減圧してもよい。反応器の内圧を大気圧以下にする場合には、不活性ガスを排気するためのポンプを、還流凝縮器を介して設置していてもよい。還流凝縮器の構造に特に制限はないが、多管式還流凝縮器を使用することが好ましい。還流凝縮器は直列または並列で複数の還流凝縮器を連結していてもよく、各々の還流凝縮器に異なる冷媒を通じてもよい。還流凝縮器に通じる冷媒の温度は、還流する溶媒が凍結しない温度から反応液温度までの範囲であれば特に制限はないが、好ましくは-20~50℃、より好ましくは5~30℃であれば、大型冷凍機を必要とせず、経済的である。
【0076】
(重合温度)
重合温度に特に制限はないが、用いる原料及び溶媒の凝固点を超える温度以上、且つ用いる原料及び溶媒が熱分解しない温度以下の範囲で実施することが好ましい。好ましくは-50~200℃、より好ましくは-20~120℃、更に好ましくは15~100℃である。重合温度が前記範囲内であると、特に、1,3,7―オクタトリエンに由来する構造単位における1,2-結合単位の含有量に対する3,4-結合単位の含有量の比(3,4-結合単位/1,2-結合単位)が上述の好ましい範囲となる。また、重合時間の短縮と1,3,7-オクタトリエンの高転化率を維持したままで、成長末端アニオンの部分的熱劣化に起因する低分子量重合体の生成を抑制してなる力学物性に優れた重合体を製造できる。
【0077】
(重合圧力)
成長末端アニオンと反応して重合反応を阻害するような物質、例えば、酸素と水を含有する大気の混入が抑制される限りにおいて、重合は好適に実施できる。
重合温度以下の沸点を有する溶媒を使用する場合には、不活性ガスによって圧力を制御して溶媒蒸気の発生量を制御することで温度を制御してもよく、重合温度を超える沸点を有する溶媒を使用する場合には排気ポンプを用いて反応系内を減圧し、溶媒の蒸気の発生量を制御することで温度を制御してもよい。
重合圧力に特に制限はないが、0.01~10MPaG、より好ましくは0.1~1MPaGであれば、不活性ガスの使用量低減のみならず、高い耐圧の反応器および不活性ガスを系外に排気するポンプが不要となることから経済的有利に重合できる。
【0078】
(重合時間)
重合時間に特に制限はないが、好ましくは0.1~24時間、より好ましくは0.5~12時間であれば、成長末端アニオンの部分的熱劣化に起因する低分子量重合体の生成を抑制し、力学物性に優れた重合体を製造し易い。
【0079】
(重合停止剤およびカップリング剤)
重合体(C)の製造方法では、反応系へ重合停止剤又はカップリング剤を添加することによって重合反応を停止することが好ましい。重合停止剤又はカップリング剤としては、例えば、水素分子;酸素分子;水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘプタノール、シクロヘキサノール、フェノール、ベンジルアルコール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、カテコール等のアルコール;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、塩化エチル、臭化エチル、ヨウ化エチル、塩化ブチル、臭化ブチル、ヨウ化ブチル、塩化ベンジル、臭化ベンジル、ヨウ化ベンジル、弗化トリメチルシリル、塩化トリメチルシリル、臭化トリメチルシリル、ヨウ化トリメチルシリル、弗化トリエチルシリル、塩化トリエチルシリル、臭化トリエチルシリル、ヨウ化トリエチルシリル、弗化トリブチルシリル、塩化トリブチルシリル、臭化トリブチルシリル、ヨウ化トリブチルシリル、弗化トリフェニルシリル、塩化トリフェニルシリル、臭化トリフェニルシリル、ヨウ化トリフェニルシリル等のハロゲン化合物;2-ヘプタノン、4-メチル-2-ペンタノン、シクロペンタノン、2-ヘキサノン、2-ペンタノン、シクロヘキサノン、3-ペンタノン、アセトフェノン、2-ブタノン、アセトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド等のエポキシ化合物;メチルジクロロシラン、エチルジクロロシラン、プロピルジクロロシラン、ブチルジクロロシラン、ペンチルジクロロシラン、ヘキシルジクロロシラン、ヘプチルジクロロシラン、オクチルジクロロシラン、ノニルジクロロシラン、デシルジクロロシラン、フェニルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、ジエチルクロロシラン、ジプロピルクロロシラン、ジブチルクロロシラン、ジペンチルクロロシラン、ジヘキシルクロロシラン、ジヘプチルクロロシラン、ジオクチルクロロシラン、ジノニルクロロシラン、ジデシルクロロシラン、メチルプロピルクロロシラン、メチルヘキシルクロロシラン、メチルフェニルクロロシラン、ジフェニルクロロシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、ジメチルフェノキシシラン、ジメチルベンジルオキシシラン、ジエチルメトキシシラン、ジエチルエトキシシラン、ジエチルプロポキシシラン、ジエチルブトキシシラン、ジエチルフェノキシシラン、ジエチルベンジルオキシシラン、ジプロピルメトキシシラン、ジプロピルエトキシシラン、ジプロピルプロポキシシラン、ジプロピルブトキシシラン、ジプロピルフェノキシシラン、ジプロピルベンジルオキシシラン、ジブチルメトキシシラン、ジブチルエトキシシラン、ジブチルプロポキシシラン、ジブチルブトキシシラン、ジブチルフェノキシシラン、ジブチルベンジルオキシシラン、ジフェニルメトキシシラン、ジフェニルエトキシシラン、ジフェニルプロポキシシラン、ジフェニルブトキシシラン、ジフェニルフェノキシシラン、ジフェニルベンジルオキシシラン、ジメチルシラン、ジエチルシラン、ジプロピルシラン、ジブチルシラン、ジフェニルシラン、ジフェニルメチルシラン、ジフェニルエチルシラン、ジフェニルプロピルシラン、ジフェニルブチルシラン、トリメチルシラン、トリエチルシラン、トリプロピルシラン、トリブチルシラン、トリフェニルシラン、メチルシラン、エチルシラン、プロピルシラン、ブチルシラン、フェニルシラン、メチルジアセトキシシラン、ポリメチルヒドロシロキサン、ポリエチルヒドロシロキサン、ポリプロピルヒドロシロキサン、ポリブチルヒドロシロキサン、ポリペンチルヒドロシロキサン、ポリヘキシルヒドロシロキサン、ポリヘプチルヒドロシロキサン、ポリオクチルヒドロシロキサン、ポリノニルヒドロシロキサン、ポリデシルヒドロシロキサン、ポリフェニルヒドロシロキサン、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、メチルヒドロシクロシロキサン、エチルヒドロシクロシロキサン、プロピルヒドロシクロシロキサン、ブチルヒドロシクロシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン、1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、1,1,3,3-テトラエチルジシラザン、1,1,3,3-テトラプロピルジシラザン、1,1,3,3-テトラブチルジシラザン、1,1,3,3-テトラフェニルジシラザン等のシリルヒドリド化合物などが挙げられる。
重合停止剤又はカップリング剤は、1種を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合停止剤又はカップリング剤は、重合反応に使用できる溶媒で希釈して用いてもよい。重合停止剤又はカップリング剤の使用量に特に制限はないが、成長末端アニオンに対して重合停止剤又はカップリング剤が余剰量とならないようにすることが溶媒回収再使用の観点から好ましく、且つ、重合体を水素化する場合には水素化触媒の使用量を低減できる点でも好ましい。
【0080】
アニオン重合終了後のガスクロマトグラフィーによって求めた1,3,7-オクタトリエンの転化率は30.0%以上であることが好ましく、40.0%以上であることがより好ましく、50.0%以上であることが更に好ましい。
【0081】
(水素化反応)
重合体の耐熱性、耐酸化性、耐候性、耐オゾン性等の観点から、重合体が有する炭素-炭素二重結合を水素化してもよい。通常、前記重合体の製造方法において重合停止することによって得られる重合体溶液または必要に応じて前記溶媒で希釈した重合体溶液に、水素化触媒を添加して水素と作用させることで重合体の水素化物を製造できる。
水素化触媒としては、例えば、ラネーニッケル;Pt、Pd、Ru、Rh、Ni等の金属を活性炭、アルミナ、珪藻土等の単体に担持させた不均一系触媒;遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物、アルキルリチウム化合物等との組み合わせからなるチーグラー型触媒;メタロセン系触媒等が挙げられる。
【0082】
水素化反応の温度は、溶媒の凝固点以上から重合体の熱分解温度以下である-20~250℃であることが好ましく、重合体の水素化物を工業的有利に生産する観点から、30~150℃であることがより好ましい。30℃以上であれば水素化反応が進行し、150℃以下であれば水素化触媒の熱分解が併発しても、少ない水素化触媒の使用量で水素化反応を実施できる。水素化触媒の使用量を低減する観点からは、60~100℃が更に好ましい。
【0083】
水素はガス状で使用でき、その圧力は常圧以上であれば特に制限はないが、重合体の水素化物を工業的有利に生産する観点から、0.1~20MPaGであることが好ましい。20MPaG以下であれば、水素化触媒の水素分解が併発しても、少ない水素化触媒の使用量で水素化反応を実施できる。水素化触媒の使用量を低減する観点からは、0.5~10MPaGがより好ましい。
水素化反応に要する時間は条件によって適宜選択できるが、重合体の水素化物を工業的有利に生産する観点から、触媒との共存開始から10分~24時間の範囲であることが好ましい。
水素化反応を終了した後の反応混合液は、必要に応じて前記溶媒で希釈するかまたは濃縮してから、塩基性水溶液または酸性水溶液で洗浄し、水素化触媒を除去することができる。
【0084】
重合反応後に得られる重合体溶液または水素化反応後に得られる重合体溶液は、濃縮操作を施した後に押出機に供給して重合体を単離してもよいし、スチームと接触させて溶媒等を除去することによって重合体を単離してもよいし、加熱状態の不活性ガスと接触させて溶媒等を除去することによって重合体を単離してもよい。
【0085】
<加硫促進助剤>
本発明のゴム組成物は、加硫促進助剤を含有してもよい。加硫促進助剤としては、例えば、ステアリン酸等の脂肪酸、亜鉛華等の金属酸化物、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記加硫促進助剤を含有する場合、その含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、好ましくは0.1~15質量部、より好ましくは1~10質量部である。
【0086】
<加硫剤>
本発明のゴム組成物は、加硫剤を添加することが好ましい。加硫剤としては、例えば、硫黄及び硫黄化合物が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。加硫剤の含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.5~10質量部、更に好ましくは0.8~5質量部である。
【0087】
<加硫促進剤>
本発明のゴム組成物は、加硫促進剤を添加してもよい。加硫促進剤としては、例えば、グアニジン系化合物、スルフェンアミド系化合物、チアゾール系化合物、チウラム系化合物、チオウレア系化合物、ジチオカルバミン酸系化合物、アルデヒド-アミン系化合物又はアルデヒド-アンモニア系化合物、イミダゾリン系化合物、キサンテート系化合物等が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記加硫促進剤を含有する場合、その含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、好ましくは0.1~15質量部、より好ましくは0.1~10質量部である。
【0088】
<シランカップリング剤>
本発明のゴム組成物は、フィラー(B)としてシリカを含有する場合、シランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、スルフィド系化合物、メルカプト系化合物、ビニル系化合物、アミノ系化合物、グリシドキシ系化合物、ニトロ系化合物、クロロ系化合物等が挙げられる。
スルフィド系化合物としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリメトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド等が挙げられる。
メルカプト系化合物としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
ビニル系化合物としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
アミノ系化合物としては、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
グリシドキシ系化合物としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
ニトロ系化合物としては、例えば、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
クロロ系化合物としては、例えば、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、2-クロロエチルトリメトキシシラン、2-クロロエチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
これらのシランカップリング剤は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、補強効果が大きい観点から、スルフィド系化合物及びメルカプト系化合物等の硫黄を含有するシランカップリング剤が好ましく、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
【0089】
シリカ100質量部に対する前記シランカップリング剤の含有量は、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは0.5~20質量部、更に好ましくは1~15質量部である。シランカップリング剤の含有量が前記範囲内であると、分散性、補強性、耐摩耗性が向上する。
【0090】
<その他の成分>
本発明のゴム組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、加工性、流動性等の改良を目的とし、必要に応じてシリコンオイル、アロマオイル、TDAE(Treated Distilled Aromatic Extracts)、MES(Mild Extracted Solvates)、RAE(Residual Aromatic Extracts)、パラフィンオイル、ナフテンオイル等のプロセスオイル、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、C9系樹脂、ロジン系樹脂、クマロン・インデン系樹脂、フェノール系樹脂等の樹脂成分、低分子量ポリブタジエン、低分子量ポリイソプレン、低分子量スチレンブタジエン共重合体、低分子量スチレンイソプレン共重合体等の液状重合体、未変性重合体を軟化剤として含有していてもよい。なお、前記共重合体はブロック又はランダム等のいずれの重合形態であってもよい。液状重合体の重量平均分子量(Mw)は500~10万であることが加工性の観点から好ましい。本発明のゴム組成物が前記プロセスオイル、樹脂成分又は液状重合体、未変性重合体を軟化剤として含有する場合、その含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して50質量部より少ないことが好ましい。
【0091】
本発明のゴム組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、耐候性、耐熱性、耐酸化性等の向上を目的として、必要に応じて老化防止剤、酸化防止剤、ワックス、滑剤、光安定剤、スコーチ防止剤、加工助剤、顔料や色素等の着色剤、難燃剤、帯電防止剤、艶消し剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、発泡剤、抗菌剤、防カビ剤、香料等の添加剤を1種又は2種以上含有していてもよい。
老化防止剤としては、例えば、アミン-ケトン系化合物、イミダゾール系化合物、アミン系化合物、フェノール系化合物、硫黄系化合物及びリン系化合物等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物、ラクトン系化合物、ヒドロキシル系化合物等が挙げられる。
【0092】
本発明のゴム組成物は、前記加硫剤を用いて加硫する他に、架橋剤を添加して架橋して用いることもできる。架橋剤としては、例えば、酸素、有機過酸化物、フェノール樹脂及びアミノ樹脂、キノン及びキノンジオキシム誘導体、ハロゲン化合物、アルデヒド化合物、アルコール化合物、エポキシ化合物、金属ハロゲン化物及び有機金属ハロゲン化物、シラン化合物等が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。架橋剤の含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して0.1~10質量部が好ましい。
【0093】
本発明のゴム組成物の製造方法は特に限定されず、前記各成分を均一に混合すればよい。均一に混合する方法としては、例えば、ニーダールーダー、ブラベンダー、バンバリーミキサー、インターナルミキサー等の接線式もしくは噛合式の密閉式混練機、単軸押出機、二軸押出機、ミキシングロール、ローラー等が挙げられ、通常70~270℃の温度範囲で行うことができる。
【0094】
本発明のゴム組成物は、加硫することにより加硫ゴムとして利用することもできる。加硫の条件、方法に特に制限はないが、加硫金型を用いて加硫温度120~200℃及び加硫圧力0.5~2.0MPaGの加圧加熱条件で行うことが好ましい。
【0095】
[タイヤ]
本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物を少なくとも一部に用いる。そのため、硬度が高く、優れた操縦安定性を備える。
【実施例
【0096】
次に実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0097】
以下の各例において、1,3,7-オクタトリエンおよびイソプレンの転化率、重合体の収率、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)、並びに1,3,7-オクタトリエンの結合単位及び比(3,4-結合単位/1,2-結合単位)については、以下の測定方法に従って求めた。
【0098】
(1)転化率の測定方法
重合反応終了後に得た重合停止液5.00gに対してエチレングリコールジメチルエーテル1.00gを加え、この混合液を以下の測定条件でガスクロマトグラフィーにより分析した。
なお、「重合反応の開始0時間における1,3,7-オクタトリエンとエチレングリコールジメチルエーテルの面積比(S1)」と「重合反応終了後の未反応1,3,7-オクタトリエンとエチレングリコールジメチルエーテルの面積比(S2)」から、下記数式1に基づいて1,3,7-オクタトリエンの転化率(%)を算出した。
また、「重合反応の開始0時間としての反応前のイソプレンとエチレングリコールジメチルエーテルの面積比(S3)」と「反応後の未反応イソプレンとエチレングリコールジメチルエーテルの面積比(S4)」から下記数式2に基づいてイソプレンの転化率(%)を算出した。
<ガスクロマトグラフィー測定条件>
装置:株式会社島津製作所製「GC-14B」
カラム:Restek Corporation製「Rxi-5ms」(内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μm)
キャリアガス:ヘリウム(140.0kPaG)を流量1.50mL/分で流通させた。
サンプル注入量:薬液0.1μLをスプリット比50/1で注入した。
検出器:FID
検出器温度:280℃
気化室温度:280℃
昇温条件:40℃で10分保持した後、20℃/分で250℃まで昇温した後、5分保持した。
【0099】
【数1】

【数2】
【0100】
(2)重合体の収率の測定方法
原料モノマーの仕込み量を基準とし、下記数式3に基づいて、得られた重合体の収率を求めた。
【数3】
【0101】
(2)重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)の測定方法
得られた重合体0.10gにテトラヒドロフラン60.0gを加えて均一な溶液を調製し、この溶液を以下の測定条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析し、標準ポリスチレン換算で重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を求め、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定条件>
装置:東ソー株式会社製「HLC-8320GPC EcoSEC」
カラム:東ソー株式会社製「TSKgel SuperMultipore HZ-M」(内径4.6mm、長さ150mm)を2本直列に接続して使用した。
溶離液:テトラヒドロフランを流量0.35mL/分で流通させた。
サンプル注入量:10μL
検出器:RI
検出器温度:40℃
【0102】
(3)結合単位
得られた重合体150mgに重クロロホルム1.00gを加えて均一な溶液を調製し、この溶液を以下の測定条件で13C-NMR測定に供した。
13C-NMR測定条件>
装置:日本電子株式会社製「JNM-LA500」
基準物質:テトラメチルシラン
測定温度:25℃
積算回数:15,000回
【0103】
前記13C-NMR測定の結果、1,3,7-オクタトリエンの「1,2-結合単位の7位炭素原子に帰属できるピーク」をδ138.1~138.6ppmに、「1,4-結合単位の7位炭素原子および3,4-結合単位の7位炭素原子に帰属できるピーク」をδ138.8~139.4ppmに、「3,4-結合単位の2位炭素原子に帰属できるピーク」をδ140.9~141.6ppmに観測した。なお、δ138.8~139.4ppmのピーク面積からδ140.9~141.6ppmのピーク面積を差し引いた値を1,4-結合単位の7位炭素原子相当のピーク面積(1,4-結合に帰属されるピーク面積)とした。
重合体に含まれる1,3,7-オクタトリエンに由来する1,2-結合単位、1,4-結合単位および3,4-結合単位の割合は、それぞれ下記数式4~6から求めた。
【0104】
また、後述する製造例9で得られた重合体(C-9)について、イソプレンの「1,2-結合単位の3位炭素原子に帰属できるピーク」をδ140.5~141.0ppmに、「1,4-結合単位の3位炭素原子に帰属できるピーク」をδ122.0~126.9ppmに、「3,4-結合単位の1位炭素原子に帰属できるピーク」をδ110.2~112.2ppmに観測した。
共重合体に含まれるイソプレンに由来する1,2-結合単位、1,4-結合単位および3,4-結合単位の割合は、それぞれ下記数式4~6から求めた。
【0105】
【数4】

【数5】

【数6】
【0106】
(4)1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位中に含まれる1,2-結合単位の含有量に対する3,4-結合単位の含有量の比(3,4-結合単位/1,2-結合単位)
前記(3)で求めた1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位中に含まれる1,2-結合単位の割合、及び3,4-結合単位の割合から、比(3,4-結合単位/1,2-結合単位)を算出した。
【0107】
(製造例1:重合体(C-1)(1,3,7-オクタトリエン単独重合体)の製造)
温度計、電気ヒーター、電磁誘導撹拌装置、薬液仕込み口、およびサンプリング口を備えた容量1LのSUS316(登録商標)製オートクレーブの内部をアルゴンで置換した後に溶媒としてシクロヘキサン232.0gを仕込んだ。続いて、1,3,7-オクタトリエン60.89g(0.563mol)を仕込んだ。その後、アルゴンで内圧を0.3MPaGにした後、250rpmで撹拌しながら30分かけて50℃に昇温した。アルゴン気流下でテトラヒドロフラン(THF)3.76g(52.12mmol)を仕込み、続いてsec-ブチルリチウムを1.26mmol/g含有するシクロヘキサン溶液8.27g(sec-ブチルリチウムとして10.42mmol)を仕込んだ後に、アルゴンで内圧を0.3MPaGにした。この時点を重合反応の開始0時間として、液温が50℃となるように制御しながら1時間反応させた。
その後、エタノールを2.5mmol/g含有するシクロヘキサン溶液4.586g(エタノールとして11.465mmol)を加えて重合反応を停止した。
次いで、得られた重合停止液全量を1Lのナスフラスコに移し、ロータリーエバポレーターを用いて100kPaA下で40℃に加熱しながら溶媒の殆どを留去した。さらに、減圧乾燥器に前記ナスフラスコを移し、0.1kPaA下で25℃に加熱しながら12時間乾燥させ、液状の重合体(C-1)を57.85g取得した。得られた重合体(C-1)について上述の測定方法を用いて評価した。結果を表1に示す。
【0108】
(製造例2~8:重合体(C-2)~(C-8)(1,3,7-オクタトリエン単独重合体)の製造)
製造例1において、各試薬およびその使用量並びに反応条件を表1に記載の通りに変更したこと以外は同様にして重合反応を行ない、重合体(C-2)~(C-8)を得た。得られた重合体(C-2)~(C-8)について上述の測定方法を用いて評価した。結果を表1に示す。なお、表1中、空欄は配合なしを表す。
【0109】
(製造例9:重合体(C-9)(1,3,7-オクタトリエン-イソプレン共重合体)の製造)
温度計、電気ヒーター、電磁誘導撹拌装置、薬液仕込み口、およびサンプリング口を備えた容量1LのSUS316(登録商標)製オートクレーブの内部をアルゴンで置換した後に溶媒としてシクロヘキサン232.0gを仕込んだ。続いて、アルゴンで内圧を0.3MPaGにした後、250rpmで撹拌しながら30分かけて50℃に昇温した。アルゴン気流下でテトラヒドロフラン(THF)1.43g(19.78mmol)を仕込み、続いてsec-ブチルリチウムを1.26mmol/g含有するシクロヘキサン溶液3.14g(sec-ブチルリチウムとして3.96mmol)を仕込んだ後に、アルゴンで内圧を0.3MPaGにした。
一方、1,3,7-オクタトリエン87.72g(0.811mol)およびイソプレン70.30g(1.03mol)を混合してから、sec-ブチルリチウムが内在するオートクレーブへ0.5時間かけて供給した。仕込み開始の時点を重合反応の開始0時間として、液温が50℃となるように制御しながら2時間反応させた。
その後、エタノールを2.5mmol/g含有するシクロヘキサン溶液1.740g(エタノールとして4.350mmol)を加えて重合反応を停止した。
次いで、得られた重合停止液全量を1Lのナスフラスコに移し、ロータリーエバポレーターを用いて100kPaA下で40℃に加熱しながら溶媒の殆どを留去した。さらに、減圧乾燥器に前記ナスフラスコを移し、0.1kPaA下で25℃に加熱しながら12時間乾燥させ、液状の共重合体(重合体(C-9))を146.96g取得した。得られた重合体(C-9)について上述の測定方法を用いて評価した。結果を表1に示す。
【0110】
(比較製造例1及び2:重合体(I)及び(II)(1,3,7-オクタトリエン単独重合体)の製造)
製造例1において、各試薬およびその使用量並びに反応条件を表1に記載の通りに変更したこと以外は同様にして重合反応を行ない、重合体(I)及び(II)を得た。得られた重合体(I)及び(II)について上述の測定方法を用いて評価した。結果を表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
ルイス塩基(i-1)として、テトラヒドロフラン(THF)を使用して製造した製造例1~3、5~7、9では1,2-結合単位の含有量に対する3,4-結合単位の含有量の比が0.055~0.128の1,3,7-オクタトリエン単独重合体及び1,3,7-オクタトリエン-イソプレン共重合体を取得した。
ルイス塩基(i-2)として、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を使用して製造した製造例4及び8では1,2-結合単位の含有量に対する3,4-結合単位の含有量の比が0.313~0.365の1,3,7-オクタトリエン単独重合体を取得した。
ルイス塩基を使用しなかった比較製造例1及び2では3,4-結合単位を含まない1,3,7-オクタトリエン単独重合体を取得した。
【0113】
本実施例及び比較例において使用した各成分は以下のとおりである。
〔ゴム成分(A)〕
・天然ゴム :「STR20」タイ産天然ゴム
〔フィラー(B)〕
・カーボンブラック :「ダイヤブラックH」三菱化学株式会社製、平均粒径30nm
〔重合体(C)〕
・重合体(C-1)~(C-8):製造例1~8で得られた1,3,7-オクタトリエン単独重合体
・重合体(C-9):製造例9で得られた1,3,7-オクタトリエン-イソプレン共重合体
〔重合体(C)以外の重合体〕
・重合体(I)、(II):比較製造例1、2で得られた1,3,7-オクタトリエン単独重合体
〔その他の成分〕
・老化防止剤:「ノクラック6C」大内新興化学工業株式会社製
・加硫剤:硫黄(微粉硫黄200メッシュ)、鶴見化学工業株式会社製
・加硫促進剤:「サンセラーNS-G」三新化学工業株式会社製
・加硫促進助剤(1):亜鉛華、「酸化亜鉛」堺化学工業株式会社製
・加硫促進助剤(2):ステアリン酸、「ルナックS-20」花王株式会社製
【0114】
(実施例1)
表2に記載した配合割合(質量部)にしたがって、ゴム成分(A)、フィラー(B)、重合体(C)、老化防止剤及び加硫促進助剤を、それぞれブラベンダー製プラスチコーダーラボステーション W350Eに投入して樹脂温度が145℃となるように制御しながら20分間混練した後、ミキサー外に取り出して室温(25℃)まで冷却した。次いで、この混合物をミキシングロールに入れ、加硫剤及び加硫促進剤を加えて40℃で4分間混練することで約240gのゴム組成物を得た。得られたゴム組成物をプレス成形(145℃、14分)して加硫ゴムシート(厚み2mm)を作製し、下記の方法に基づき、硬度(操縦安定性)及びtanδ〔極大ピーク数(相溶性)〕を評価した。結果を表2に示す。なお、表2中、空欄は配合なしを表す。
【0115】
(実施例2~9及び比較例1,2)
表2に記載の種類及び配合量に変更したこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。得られたゴム組成物をプレス成形(145℃、14分)して加硫ゴムシート(厚み2mm)を作製し、下記の方法に基づき、硬度(操縦安定性)及びtanδ〔極大ピーク数(相溶性)〕を評価した。結果を表2に示す。
各評価の測定方法は以下のとおりである。
【0116】
(5)硬度(操縦安定性)
実施例及び比較例で作製したゴム組成物のシートを用いて、JIS K6253(2012)に準拠して、タイプA硬度計により硬度を測定し、柔軟性の指標とした。なお、数値が50より小さい場合は、当該組成物をタイヤに用いた際にタイヤの変形が大きいため、操縦安定性が悪化する。
【0117】
(6)tanδ〔極大ピーク数(相溶性)〕
実施例及び比較例で作製したゴム組成物のシートから縦40mm×横7mmの試験片を切り出し、GABO社製動的粘弾性測定装置を用いて、測定温度-100~30℃、周波数10Hz、静的歪み0.5%、動的歪み0.1%の条件で、tanδを測定し、得られたtanδの極大ピーク数を求めた。
【0118】
【表2】
【0119】
3,4-結合単位を含む1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位を含有する重合体(C)を含む実施例1~9のゴム組成物は、当該重合体(C)を含まない比較例1及び2のゴム組成物と比較して、成形品の硬度が高いことがわかる。また、tanδの極大ピークが単一であることから、ゴム成分(A)と重合体(C)とが分子レベルで相溶した状態であるといえる。
【0120】
(7)tanδの値(転がり抵抗性能)
実施例5~8及び比較例1で作製したゴム組成物のシートから縦40mm×横7mmの試験片を切り出し、GABO社製動的粘弾性測定装置を用いて、測定温度60℃、周波数10Hz、静的歪み10%、動的歪み2%の条件で、tanδの値を測定した。
60℃のtanδとタイヤの転がり性能は高い相関を示すため、この値を転がり抵抗の指標とした。実施例5~8の数値は、比較例1の値を100とした際の相対値である。結果を表3に示す。なお、数値が小さいほどゴム組成物の転がり抵抗性能が良好である。
【0121】
【表3】
【0122】
重合体(C)のMwが50,000以上である実施例5~8のゴム組成物では、さらに転がり抵抗性能が向上することがわかる。