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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】除去加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 55/06 20060101AFI20231215BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20231215BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20231215BHJP
   B24B 7/00 20060101ALI20231215BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20231215BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20231215BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
B24B55/06
B24B55/02 B
B24B41/06 L
B24B7/00 A
B24B7/04 A
B23Q11/00 N
B23Q11/00 Q
H01L21/304 622G
H01L21/304 631
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022509450
(86)(22)【出願日】2021-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2021007824
(87)【国際公開番号】W WO2021192837
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2020052488
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020161269
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】坂本 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】児玉 宗久
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-188813(JP,A)
【文献】特開2018-027593(JP,A)
【文献】特開2004-079749(JP,A)
【文献】特開2010-247282(JP,A)
【文献】特開2015-036162(JP,A)
【文献】特開2019-058995(JP,A)
【文献】特開2019-212838(JP,A)
【文献】特開2013-255952(JP,A)
【文献】特開2007-229904(JP,A)
【文献】特開平11-114765(JP,A)
【文献】特開平02-268432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B5/00-7/30
B24B41/00-57/04
B23Q11/00-13/00
H01L21/304;21/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直な回転中心線を中心に回転する水平なテーブルと、
前記テーブルの回転中心線の周りに間隔をおいて配置される複数のチャックと、
前記チャックで保持された基板に加工液を供給するノズルと、
前記テーブルの上方にて前記加工液を受けるテーブルカバーと、を有し、
前記テーブルカバーは、前記テーブルの回転中心線から遠いほど高さが低く且つ前記テーブルの回転方向に高さが一定である円錐形状の傾斜部を含む、除去加工装置であって、
前記除去加工装置は、前記テーブルカバーの前記傾斜部から上方に突出し、前記チャックの周囲にて前記加工液を受けるチャックカバーを更に有し、
前記チャックカバーは、前記テーブルカバーの前記傾斜部から上方に突出する筒部を含み、
前記テーブルカバーの前記傾斜部には、前記筒部が挿通される穴が形成され、
前記除去加工装置は、前記テーブルの上方であって前記テーブルカバーの下方にて前記加工液を受けるベースカバーと、前記テーブルカバーの前記傾斜部の下方にて前記チャックカバーの前記筒部が載置されるスタンドと、を有し、
前記スタンドは、前記ベースカバーの上面に突設される、除去加工装置
【請求項2】
前記チャックカバーは、前記チャックの回転中心線から遠いほど高さが低く且つ前記チャックの回転方向に高さが一定である円錐形状の環状部を有し、
前記筒部は、前記環状部の下縁から下方に延びる、請求項に記載の除去加工装置。
【請求項3】
前記チャックカバーは前記環状部と前記筒部の角を丸める曲線部と、を含む、請求項に記載の除去加工装置。
【請求項4】
前記チャックカバーは、前記筒部の外周に水平に設けられる板状部を更に含み、
前記テーブルカバーの前記傾斜部の前記穴の開口縁には、前記チャックカバーの前記板状部が通過する切り欠きが形成され、
前記チャックカバーの前記板状部は、前記スタンドの上に載置され、前記スタンドに対して取り外し可能に取り付けられる、請求項1~3のいずれか1項に記載の除去加工装置。
【請求項5】
記チャックが取り付けられる回転台と、
前記回転台の回転中心から鉛直下方に延びる回転軸と、
前記回転台の周縁から下方に延びる外筒部と、
を有し、
前記ベースカバーは、前記テーブルの上方に水平に配置される円盤部と、前記回転軸が挿通される開口部と、前記開口部の開口縁から上方に延びる内筒部と、を含み、
前記内筒部は、前記外筒部の内側に配置される、請求項1~4のいずれか1項に記載の除去加工装置。
【請求項6】
鉛直な回転中心線を中心に回転する水平なテーブルと、
前記テーブルの回転中心線の周りに間隔をおいて配置される複数のチャックと、
前記チャックで保持された基板に加工液を供給するノズルと、
前記テーブルの上方にて前記加工液を受けるテーブルカバーと、を有し、
前記テーブルカバーは、前記テーブルの回転中心線から遠いほど高さが低く且つ前記テーブルの回転方向に高さが一定である円錐形状の傾斜部を含む、除去加工装置であって、
前記除去加工装置は、前記テーブルの上方であって前記テーブルカバーの下方にて前記加工液を受けるベースカバーと、前記チャックが取り付けられる回転台と、前記回転台の回転中心から鉛直下方に延びる回転軸と、前記回転台の周縁から下方に延びる外筒部と、を有し、
前記ベースカバーは、前記テーブルの上方に水平に配置される円盤部と、前記回転軸が挿通される開口部と、前記開口部の開口縁から上方に延びる内筒部と、を含み、
前記内筒部は、前記外筒部の内側に配置される、除去加工装置。
【請求項7】
鉛直な回転中心線を中心に回転する水平なテーブルと、
前記テーブルの回転中心線の周りに間隔をおいて配置される複数のチャックと、
前記チャックで保持された基板に加工液を供給するノズルと、
前記テーブルの上方にて前記加工液を受けるテーブルカバーと、を有し、
前記テーブルカバーは、前記テーブルの回転中心線から遠いほど高さが低く且つ前記テーブルの回転方向に高さが一定である円錐形状の傾斜部を含む、除去加工装置であって、
前記チャックは、前記基板を保持する保持台と、前記保持台の下縁に設けられるフランジと、を含み、
前記除去加工装置は、前記チャックを載せる回転台と、前記チャックの前記フランジを前記回転台に対して固定する固定具と、前記チャックと共に回転するチャックカバーと、を備え、
前記チャックカバーは、中央に前記保持台の入る開口部を形成する環状の庇部を含み、
前記庇部は、前記フランジよりも上方に配置され、前記固定具を上方から覆う、除去加工装置。
【請求項8】
前記チャックカバーの前記庇部と、前記チャックの前記フランジとの間に隙間を形成するスペーサを備える、請求項に記載の除去加工装置。
【請求項9】
前記テーブルは、複数の前記回転台を介して複数の前記チャックを回転自在に支持し、前記チャックの回転中心線とは別の回転中心線を中心に回転し、
前記テーブルカバーの前記傾斜部は、頂部と裾部の間に、前記回転台の入る開口部を形成し、
前記テーブルカバーは、前記開口部の開口縁から上方に立ち上がる内筒部を含み、
前記チャックカバーは、前記庇部の周縁から前記内筒部の上端よりも下方に延び前記内筒部を囲む外筒部を含む、請求項又はに記載の除去加工装置。
【請求項10】
前記テーブルカバーの前記内筒部は、前記テーブルカバーの前記傾斜部に対して固定された第1円弧筒部と、前記第1円弧筒部に対して取り外し可能に連結される第2円弧筒部と、前記第1円弧筒部と前記第2円弧筒部を環状に連結する連結部と、を含む、請求項に記載の除去加工装置。
【請求項11】
前記第2円弧筒部は、前記第1円弧筒部よりも、前記テーブルの径方向外方に配置され、
前記第2円弧筒部の下縁の少なくとも一部は、前記回転台の上面よりも下方に配置される、請求項10に記載の除去加工装置。
【請求項12】
前記テーブルカバーは、前記傾斜部の下縁から下方に延びる直線部と、前記傾斜部と前記直線部の角を丸める曲線部と、を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の除去加工装置。
【請求項13】
前記テーブルカバーは、前記テーブルの回転方向に隣り合う前記チャックの間にて複数の分割カバーに分割され、
複数の前記分割カバーは、個別に、前記テーブルに対して取り外し可能に取り付けられる、請求項1~12のいずれか1項に記載の除去加工装置。
【請求項14】
前記テーブルカバーの前記傾斜部の裾部に対して上方から洗浄液を供給する第2ノズルを含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の除去加工装置。
【請求項15】
複数の前記チャックを収容する筐体と、前記筐体の内部を前記テーブルの前記回転中心線の周りに複数の部屋に仕切る固定仕切壁と、を備え、
複数の前記部屋は、前記基板の研削が行われる研削室と、前記基板の搬入出が行われる搬入出室と、を含み、
前記第2ノズルは、前記研削室の前記搬入出室との境界付近に位置する、請求項14に記載の除去加工装置。
【請求項16】
前記テーブルカバーの前記傾斜部の頂部と前記チャックの間にて、前記傾斜部に対して洗浄液を供給する第3ノズルを備える、請求項1~15のいずれか1項に記載の除去加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、除去加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の加工装置は、第1搬送ユニットと、位置調整機構と、第2搬送ユニットと、ターンテーブルと、チャックテーブルと、加工ユニットと、洗浄機構とを備える。第1搬送ユニットは、カセットから位置調整機構に基板を搬送する。位置調整機構は、基板の位置を調整する。第2搬送ユニットは、位置調整機構からターンテーブル上のチャックテーブルに基板を搬送する。チャックテーブルが基板を吸引保持すると、ターンテーブルが回転し、基板が加工ユニットの下方に配置される。加工ユニットは、研削ホイールで基板を研削する。第2搬送ユニットは、研削後の基板を吸引保持して旋回し、洗浄機構に搬送する。洗浄機構は、研削後の基板を洗浄する。第1搬送ユニットは、洗浄後の基板を洗浄機構からカセットに搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2019-185645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一態様は、加工屑を含む加工液がカバーの上に残るのを抑制し、カバーの上に加工屑が堆積するのを抑制する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る除去加工装置は、鉛直な回転中心線を中心に回転する水平なテーブルと、前記テーブルの回転中心線の周りに間隔をおいて配置される複数のチャックと、前記チャックで保持された基板に加工液を供給するノズルと、前記テーブルの上方にて前記加工液を受けるテーブルカバーと、を有する。前記テーブルカバーは、前記テーブルの回転中心線から遠いほど高さが低く且つ前記テーブルの回転方向に高さが一定である円錐形状の傾斜部を含む。前記除去加工装置は、前記テーブルカバーの前記傾斜部から上方に突出し、前記チャックの周囲にて前記加工液を受けるチャックカバーを更に有する。前記チャックカバーは、前記テーブルカバーの前記傾斜部から上方に突出する筒部を含む。前記テーブルカバーの前記傾斜部には、前記筒部が挿通される穴が形成される。前記除去加工装置は、前記テーブルの上方であって前記テーブルカバーの下方にて前記加工液を受けるベースカバーと、前記テーブルカバーの前記傾斜部の下方にて前記チャックカバーの前記筒部が載置されるスタンドと、を有する。前記スタンドは、前記ベースカバーの上面に突設される。

【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、加工屑を含む加工液がカバーの上に残るのを抑制でき、カバーの上に加工屑が堆積するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係る研削装置の平面図である。
図2図2は、研削ユニットの一例を示す断面図である。
図3図3は、研削位置カバーの一例を示す斜視図である。
図4図4は、テーブルカバーとチャックカバーとベースカバーとの一例を示す断面図である。
図5図5は、テーブルカバーとチャックカバーとベースカバーとの変形例を示す断面図である。
図6図6は、チャックカバーとテーブルカバーとベースカバーとの第2変形例を示す断面図である。
図7図7(A)は図6に示す内筒部の一例を示す上面図であり、図7(B)は図7(A)の内筒部の一部を取り外した状態を示す上面図である。
図8図8は、図6に示す内筒部の一部を取り外した状態の一例を示す断面図である。
図9図9は、洗浄液の流れの一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。本明細書において、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向およびY軸方向は水平方向、Z軸方向は鉛直方向である。
【0009】
先ず、図1を参照して、研削装置1について説明する。研削装置1は、基板Wを研削する。基板Wは、シリコンウェハ若しくは化合物半導体ウェハ等の半導体基板、又はガラス基板を含む。基板Wは、半導体基板又はガラス基板の表面に形成されるデバイス層を更に含んでもよい。デバイス層は、電子回路を含む。また、基板Wは、複数の基板を接合した重合基板であってもよい。研削は、研磨を含む。研削に用いる砥粒は、固定砥粒、及び遊離砥粒のいずれでもよい。研削装置1は、例えば、テーブル10と、4つのチャック20と、3つの研削ユニット30と、を有する。
【0010】
テーブル10は、回転中心線R1の周りに4つのチャック20を等間隔で保持し、回転中心線R1を中心に回転する。上方から見て、テーブル10の回転方向は、時計回り方向と、反時計回り方向とに切り替えられる。4つのチャック20のそれぞれは、テーブル10と共に回転し、搬入出位置A0と、1次研削位置A1と、2次研削位置A2と、3次研削位置A3と、搬入出位置A0とにこの順番で移動する。
【0011】
搬入出位置A0は、チャック20に対する基板Wの搬入出が行われる位置であり、基板Wの搬入が行われる位置と、基板Wの搬出が行われる位置とを兼ねる。なお、本実施形態では搬入位置と搬出位置とは同じ位置であるが、搬入位置と搬出位置とは異なる位置であってもよい。1次研削位置A1は、基板Wの1次研削が行われる位置である。2次研削位置A2は、基板Wの2次研削が行われる位置である。3次研削位置A3は、基板Wの3次研削が行われる位置である。
【0012】
4つのチャック20は、それぞれの回転中心線R2(図2参照)を中心に回転自在に、テーブル10に取り付けられる。1次研削位置A1、2次研削位置A2および3次研削位置A3において、チャック20はそれぞれの回転中心線R2を中心に回転する。
【0013】
1つの研削ユニット30は、1次研削位置A1にて、基板Wを1次研削する。別の研削ユニット30は、2次研削位置A2にて、基板Wを2次研削する。残りの研削ユニット30は、3次研削位置A3にて、基板Wを3次研削する。
【0014】
研削ユニット30は、研削工具Dを駆動する工具駆動部である。工具駆動部30は、研削工具Dを回転させたり、昇降させたりする。なお、研削ユニット30の数は、1つ以上であればよい。また、チャック20の数は、研削ユニット30の数よりも多ければよい。
【0015】
次に、図2を参照して研削ユニット30について説明する。研削ユニット30は、研削工具Dが装着される可動部31を含む。研削工具Dは、基板Wに接触させられ、基板Wを研削する。研削工具Dは、例えば円盤状の研削ホイールD1と、研削ホイールD1の下面にリング状に配列される複数の砥石D2と、を含む。
【0016】
可動部31は、研削工具Dが装着されるフランジ32と、フランジ32が下端に設けられるスピンドル軸33と、スピンドル軸33を回転させるスピンドルモータ34と、を有する。フランジ32は水平に配置され、その下面に研削工具Dが装着される。スピンドル軸33は鉛直に配置される。スピンドルモータ34は、スピンドル軸33を回転し、フランジ32に装着された研削工具Dを回転させる。研削工具Dの回転中心線R3は、スピンドル軸33の回転中心線である。
【0017】
研削ユニット30は、更に、可動部31を昇降させる昇降部35を有する。昇降部35は、例えば、鉛直なZ軸ガイド36と、Z軸ガイド36に沿って移動するZ軸スライダ37と、Z軸スライダ37を移動させるZ軸モータ38と、を有する。Z軸スライダ37には可動部31が固定され、Z軸スライダ37と共に可動部31及び研削工具Dが昇降する。昇降部35は、研削工具Dの位置を検出する位置検出器39を更に有する。位置検出器39は、例えばZ軸モータ38の回転を検出し、研削工具Dの位置を検出する。
【0018】
昇降部35は、研削工具Dを待機位置から下降させる。研削工具Dは、下降しながら回転し、回転する基板Wの上面と接触し、基板Wの上面全体を研削する。基板Wの厚みが設定値に達すると、昇降部35は研削工具Dの下降を停止する。その後、昇降部35は、研削工具Dを待機位置まで上昇させる。
【0019】
図2に示すように、研削装置1は、研削位置カバー40と、ノズル50とを有する。研削位置カバー40は、筐体である。研削位置カバー40は、例えば1次研削位置A1、2次研削位置A2及び3次研削位置A3の上方及び側方を覆う。また、研削位置カバー40は、チャック20と、研削工具Dと、ノズル50とを収容する。ノズル50は、チャック20で保持された基板Wに、研削液を供給する。
【0020】
研削位置カバー40は、研削屑等のパーティクル、及び研削液が外部に飛散するのを抑制する。研削位置カバー40は、水平に配置される上面パネル41と、鉛直に配置される側面パネル42と、を含む。上面パネル41には、可動部31の挿入口43が形成される。研削位置カバー40は、内部に、基板Wの研削が行われる研削室を形成する。研削位置カバー40の下部には、不図示の回収パンが設置される。回収パンは、パーティクル及び研削液を回収する。
【0021】
ノズル50は、研削液を供給する。研削液は、例えば、DIW(Deionized Water)等の純水である。研削液は、基板Wと研削工具Dの間に入り込み、研削抵抗を減らし、熱の発生を抑制する。
【0022】
図3に示すように、研削位置カバー40は、固定仕切壁45を含む。固定仕切壁45は、上面パネル41の下面に設けられる。固定仕切壁45は、テーブル10の回転中心線R1の周りに等間隔で複数配置され、搬入出位置A0と、1次研削位置A1と、2次研削位置A2と、3次研削位置A3とを仕切る。固定仕切壁45は、上面パネル41の下面に固定される。上方から見て、固定仕切壁45は、テーブル10の径方向(回転中心線R1に直交する方向)に延びている。
【0023】
図1に示すように、固定仕切壁45は、例えば、十字状に設けられ、筐体40の内部を、テーブル10の回転中心線R1の周りに4つの部屋B0~B3に仕切る。3つの部屋B1~B3は、基板Wの研削が行われる研削室である。B1は1次研削室であり、B2は2次研削室であり、B3は3次研削室である。残り1つの部屋B0は、基板Wの搬入出が行われる搬入出室である。基板Wの搬入出は、外部の搬送装置とチャック20とが基板Wを受け渡すことを含む。搬入出室B0は、上方に開放されている。
【0024】
上方から見て、筐体40の内部は、反時計回り方向に、搬入出室B0と、1次研削室B1と、2次研削室B2と、3次研削室B3とにこの順番で仕切られている。なお、4つの部屋B0~B3の順番は逆でもよく、上方から見て、筐体40の内部は、時計回り方向に、搬入出室B0と、1次研削室B1と、2次研削室B2と、3次研削室B3とにこの順番で仕切られていてもよい。なお、部屋の数は、4つには限定されず、2つ以上であればよい。
【0025】
図3に示すように、固定仕切壁45は、例えば、上面部46と、側面部47とを含む。上面部46は、上面パネル41の下面に取り付けられ、テーブル10との間に隙間を形成する。その隙間は、テーブル10の回転時に、チャック20及び基板Wを通過させるものである。上面部46の下縁には、基板Wとの間を塞ぐ短冊状の可撓性シート48が設けられる。側面部47は、側面パネル42の内壁面に取り付けられる。側面部47は、上面部46よりも下方に突出し、テーブル10の側面と側面パネル42との間を塞ぐ。
【0026】
一方、回転仕切壁15は、テーブル10の上面に設けられ、テーブル10と共に回転する。回転仕切壁15は、固定仕切壁45と同数設けられ、テーブル10の回転停止時に、固定仕切壁45の真下に配置される。固定仕切壁45と回転仕切壁15とによって、研削室の内部にて発生したパーティクルが研削室の外部に流出するのを抑制できる。例えば、1次研削室B1及び3次研削室B3から搬入出室B0への研削屑等の侵入を抑制し、搬入出室B0を清浄に保つ。また、粒径の大きい1次研削屑が1次研削室B1から2次研削室B2に侵入するのを抑制し、2次研削後の研削面の荒れを抑制する。更に、粒径の大きい2次研削屑が2次研削室B2から3次研削室B3に侵入するのを抑制し、3次研削後の研削面の荒れを抑制する。
【0027】
図4に示すように、研削装置1は、テーブルカバー60を有する。テーブルカバー60は、テーブル10の上方にて研削液を受ける。テーブルカバー60は、テーブル10に対して固定され、テーブル10と共に回転する。
【0028】
テーブルカバー60は、傾斜部61を有する。傾斜部61は、テーブル10の回転中心線R1から遠いほど高さが低く、且つテーブル10の回転方向に高さが一定である円錐形状を有する。円錐形状の傾斜部61は、その頂端に開口部61bを有してもよい。
【0029】
円錐形状の傾斜部61は、水平な平板部とは異なり、研削液を重力によって斜め下に排出できる。従って、研削液がテーブルカバー60上に残ることを抑制でき、研削液に含まれる研削屑の堆積を抑制できる。
【0030】
また、円錐形状の傾斜部61は、四角錘形状などの角錘形状の傾斜部とは異なり、図3に矢印で示すように研削液を放射状に排出でき、研削液をテーブル10の回転方向に均等に分散して排出できる。
【0031】
テーブルカバー60が、円錐形状の傾斜部61の代わりに、四角錘形状の傾斜部を有する場合、図3に二点鎖線で示す溝Gが形成される。溝Gの底部にチャック20が位置しており、チャック20の近傍に研削液が集まりやすく、研削屑が堆積しやすい。
【0032】
本実施形態によれば、テーブルカバー60が円錐形状の傾斜部61を有する。それゆえ、上記の通り、図3に矢印で示すように研削液を放射状に排出でき、チャック20の近傍に研削屑が堆積するのを抑制できる。
【0033】
研削屑の堆積を抑制できるので、研削装置1の汚れを低減できる。それゆえ、研削工具Dの交換、又はチャック20の交換等のメンテナンスの際に作業者、又は作業ロボットが汚れるのを抑制できる。また、堆積した研削屑が剥がれてチャック20又は基板Wに付着するのを抑制できる。
【0034】
図4に示すように、テーブルカバー60は、傾斜部61の下縁から下方に延びる直線部63を有する。直線部63は、本実施形態では傾斜部61の下縁から真下に延びるが、斜め下に延びてもよい。直線部63は、テーブル10の回転中心線R1を中心とする筒形状を有する。直線部63は、傾斜部61から流れ落ちる研削液を下方に導く。直線部63は、テーブル10よりも、テーブル10の回転中心線R1から遠くに配置され、研削液をテーブル10の外に落下させる。
【0035】
テーブルカバー60は、テーブル10の回転方向に隣り合うチャック20の間にて複数(図3には1つのみ図示)の分割カバー60Aに分割される。分割カバー60Aの数と、チャック20の数とは、同数である。テーブル10の回転方向に隣り合う分割カバー60Aの間には、回転仕切壁15が配置される。
【0036】
複数の分割カバー60Aは、個別に、テーブル10に対して取り外し可能に取り付けられる。メンテナンスの際に分割カバー60Aを個別に取り外せばよく、テーブルカバー60の全体をまとめて取り外さずに済むので、作業性を向上できる。
【0037】
図4に示すように、研削装置1は、チャックカバー70を有する。チャックカバー70は、テーブルカバー60の傾斜部61から上方に突出し、チャック20の周囲にて研削液を受ける。
【0038】
チャックカバー70は、チャック20ごとに設けられる。チャックカバー70は、チャック20の回転時にチャック20に物体が巻き込まれるのを防止する役割も有する。チャックカバー70は、テーブル10に対して固定され、テーブル10と共に回転する。
【0039】
チャックカバー70は、環状部71を有する。環状部71は、チャック20の回転中心線R2から遠いほど高さが低く、且つチャック20の回転方向に高さが一定である円錐形状を有する。
【0040】
円錐形状の環状部71は、水平な平板部とは異なり、研削液を重力によって斜め下に排出できる。従って、研削液がチャックカバー70上に残ることを抑制でき、研削液に含まれる研削屑の堆積を抑制できる。
【0041】
また、円錐形状の環状部71は、角錘形状の環状部とは異なり、研削液を放射状に排出でき、研削液をチャック20の回転方向に均等に分散して排出できる。研削液の偏りを抑制でき、研削屑の堆積を抑制できる。
【0042】
チャック20は、基板Wを保持する保持台21を含む。保持台21は、円盤状の多孔質体21aと、多孔質体21aが配置される凹部を含む基台21bと、を有する。基台21bの上面に凹部が形成され、その凹部に多孔質体21aが埋め込まれる。
【0043】
多孔質体21aの内部の気体が吸引され、多孔質体21aの気圧が大気圧よりも低い負圧になると、基板Wが多孔質体21aに吸着される。一方、気体の吸引が停止され、多孔質体21aの気圧が大気圧に戻されると、基板Wの吸着が解除される。
【0044】
チャック20は、保持台21の下縁に設けられるフランジ23を有する。フランジ23は、ボルト24などの固定具によって回転台25に対して取り外し可能に取り付けられる。ボルト24は、フランジ23の周方向に間隔をおいて複数設けられる。
【0045】
環状部71は、開口部71aを有する。開口部71aの直径は、基板Wの直径よりも大きく、且つチャック20のフランジ23の直径よりも小さい。環状部71の真下にボルト24を隠すことができ、研削液がボルト24にぶつかるのを抑制でき、研削液の飛散を抑制できる。
【0046】
チャックカバー70は、環状部71の下縁から下方に延びる筒部73を有する。筒部73は、本実施形態では環状部71の下縁から真下に延びるが、斜め下に延びてもよい。筒部73の中心線は、チャック20の回転中心線R2である。筒部73は、環状部71から流れ落ちる研削液を下方に導く。
【0047】
筒部73は、テーブルカバー60の傾斜部61の穴64に挿通される。穴64は、筒部73に沿って流れ落ちる研削液を、傾斜部61の下方に導く。穴64がなく、筒部73が傾斜部61の上に載置される場合に比べて、傾斜部61の上に研削液が溜まるのを抑制でき、研削屑の堆積を抑制できる。
【0048】
図4に示すように、研削装置1は、スタンド80と、ベースカバー90と、を有する。スタンド80は、テーブルカバー60の傾斜部61の下方にて、チャックカバー70の筒部73が載置されるものである。ベースカバー90は、テーブル10の上方であってテーブルカバー60の下方にて、傾斜部61の穴64から落ちる研削液を受ける。ベースカバー90は、テーブル10に対して固定され、テーブル10と共に回転する。
【0049】
スタンド80は、ベースカバー90の上面に突設される。スタンド80は、ベースカバー90の上方にてチャックカバー70の筒部73を支持する。筒部73がベースカバー90の上面に載置される場合に比べて、筒部73の長さを短縮できる。
【0050】
チャックカバー70は、筒部73の外周に水平に設けられる板状部74を更に含む。テーブルカバー60の傾斜部61の穴64の開口縁には、チャックカバー70の板状部74が通過する切り欠き65が形成される。チャックカバー70の板状部74は、例えば筒部73の下端に形成され、スタンド80の上に載置され、ボルト81などでスタンド80に対して取り外し可能に取り付けられる。テーブルカバー60を取り付けた状態で、切り欠き65に工具を挿入し、工具でボルト81を緩めたり締めたりでき、チャックカバー70を取り外したり、取り付けたりできる。
【0051】
ベースカバー90は、テーブル10の上方に水平に配置される円盤部91を有する。円盤部91の直径は、テーブル10の直径よりも大きい。円盤部91の上に落ちた研削液は、円盤部91と、テーブルカバー60の直線部63との隙間から排出される。
【0052】
円盤部91には、開口部91aが複数形成される。複数の開口部91aは、テーブル10の回転中心線R1の周りに等間隔で配置される。開口部91aには、回転台25を回転させる回転軸26が挿通される。
【0053】
回転軸26は、回転台25の回転中心から鉛直下方に延びている。回転台25の周縁には、下方に延びる外筒部27が設けられる。外筒部27は、本実施形態では回転台25の周縁から真下に延びるが、斜め下に延びてもよい。外筒部27の内側には、内筒部93が配置される。
【0054】
内筒部93は、円盤部91の開口部91aの開口縁から上方に延びる。内筒部93は、本実施形態では円盤部91の開口部91aの開口縁から真上に延びるが、斜め上に延びてもよい。内筒部93の上端の高さは、外筒部27の下端の高さよりも高い。内筒部93と外筒部27とによって、研削液の浸入を抑制するラビリンスを形成できる。
【0055】
開口部91aは、上記の通り、テーブル10の回転中心線R1の周りに等間隔で複数配置される。テーブル10の回転方向に隣り合う開口部91aの間に、回転仕切壁15が配置される。回転仕切壁15は、円盤部91の上に設けられる。円盤部91の上には、スタンド80も設けられる。
【0056】
ベースカバー90は、円盤部91の周縁から下方に延びる筒部94を有する。筒部94は、本実施形態では円盤部91の周縁から真下に延びるが、斜め下に延びてもよい。筒部94の中心線は、テーブル10の回転中心線R1である。筒部94は、テーブル10よりも、テーブル10の回転中心線R1から遠くに配置され、研削液をテーブル10の外に落下させる。筒部94は、テーブルカバー60の直線部63の延長線上に配置され、直線部63に沿って流れ落ちる研削液を、更に下方に導く。
【0057】
次に、図5を参照して、変形例に係るテーブルカバー及びチャックカバーについて説明する。以下、本変形例と、上記実施形態との相違点について主に説明する。
【0058】
テーブルカバー60は、傾斜部61と直線部63の角を丸める曲線部66を有する。曲線部66は、いわゆるR面取り形状を有する。曲線部66によって傾斜部61から直線部63に研削液を滑らかに導くことができ、研削液の飛散を抑制できる。
【0059】
同様に、チャックカバー70は、環状部71と筒部73の角を丸める曲線部76を有する。曲線部76は、いわゆるR面取り形状を有する。曲線部76によって環状部71から筒部73に研削液を滑らかに導くことができ、研削液の飛散を抑制できる。
【0060】
次に、図6等を参照して、第2変形例に係る研削装置1について説明する。なお、本変形例の内容は、上記実施形態等にも適用可能である。
【0061】
図6に示すように、研削装置1は、チャック20と共に回転するチャックカバー70を備える。チャック20は、基板Wを保持する保持台21と、保持台21の下縁に設けられるフランジ23とを含む。保持台21は、多孔質体21aと、基台21bと、を有する。保持台21の上面に凹部が形成され、その凹部に円盤状の多孔質体21aが埋め込まれる。
【0062】
多孔質体21aの内部の気体が吸引され、多孔質体21aの気圧が大気圧よりも低い負圧になると、基板Wが多孔質体21aに吸着される。一方、気体の吸引が停止され、多孔質体21aの気圧が大気圧に戻されると、基板Wの吸着が解除される。
【0063】
チャック20は、回転台25の上に載置され、回転台25に対して固定具で固定される。その固定具は、特に限定されないが、例えばボルト24である。ボルト24は、チャック20のフランジ23の周方向に間隔をおいて複数設けられる。ボルト24の軸部は、フランジ23の貫通穴を通り、回転台25のボルト穴にねじ込まれる。ボルト24の頭部が、フランジ23を上方から押さえる。ボルト24を緩めたり締めたりすることで、チャック20を交換できる。
【0064】
チャックカバー70は、環状の庇部71を含む。環状の庇部71は、その中央に、チャック20の保持台21が入る開口部71aを形成する。庇部71の上面は、チャック20の保持台21の上面と同じ高さか、保持台21の上面よりも下方に配置される。また、庇部71の上面は、テーブルカバー60の傾斜部61よりも上方に配置される。
【0065】
庇部71の上面は、チャック20の回転中心線R2から遠ざかるほど下方に傾斜する。なお、庇部71の上面は、水平であってもよい。但し、庇部71の上面が傾斜していれば、重力によって斜め下に研削液を排出でき、研削液に混じる研削屑の堆積を抑制できる。庇部71の上面は、例えば円錐形状を有する。
【0066】
庇部71は、チャック20のフランジ23よりも上方に配置され、固定具であるボルト24を上方から覆う。庇部71の中央に形成される開口部71aの直径は、保持台21の直径よりも大きく、且つフランジ23の直径よりも小さい。庇部71の真下にボルト24を隠すことができ、研削液がボルト24にぶつかるのを抑制でき、研削液の飛散を抑制できる。
【0067】
本変形例によれば、チャックカバー70は、チャック20と共に回転する。基板Wの研削時にチャック20を回転させると、庇部71が回転し、遠心力によって庇部71に付着した研削液を径方向外方に吹き飛ばすことができる。従って、研削液に混じる研削屑の堆積を抑制でき、研削屑がチャック20の周辺に堆積するのを抑制できる。その結果、チャック20又は研削工具Dの交換等のメンテナンスの際に作業者又は作業ロボットが汚れるのを抑制できる。また、堆積した研削屑が剥がれてチャック20又は基板Wに付着するのを抑制できる。
【0068】
チャックカバー70の庇部71と、チャック20のフランジ23との間には、スペーサ28が設けられる。スペーサ28は、フランジ23の周方向に間隔をおいて複数設けられる。複数のスペーサ28の上に、庇部71が載置される。なお、スペーサ28は庇部71と一体化されていてもよく、その場合、スペーサ28がフランジ23の上に載置され、後述するボルト29の軸部がフランジ23のボルト穴にねじ込まれる。
【0069】
スペーサ28は、庇部71とフランジ23の間に隙間を形成する。隙間が無い場合に比べて、庇部71の厚みを薄くでき、庇部71を軽量化できる。また、庇部71とフランジ23の間に、ボルト24の頭部を配置するスペースを確保できる。
【0070】
スペーサ28は、その上面にボルト穴を有する。そのボルト穴には、スペーサ28に対して庇部71を固定するボルト29の軸部がねじ込まれる。ボルト29の頭部は、庇部71を上方から押さえる。庇部71の上面には、チャック20の径方向に延びる溝71bが形成される。その溝71bがボルト29の頭部を収容し、ボルト29の頭部が溝71bの底面を上方から押さえる。
【0071】
庇部71の上面は傾斜しているのに対し、庇部71の下面は水平になっている。庇部71の下面が水平であれば、庇部71を複数のスペーサ28の上に安定的に載置できる。スペーサ28の数は、好ましくは3個以上である。
【0072】
チャックカバー70は、庇部71の周縁から下方に延びる外筒部77を含む。外筒部77は、図6では真下に延びるが、斜め下に延びてもよい。外筒部77は、テーブルカバー60の内筒部67の上端よりも下方に延び、その内筒部67を囲む。内筒部67と外筒部77とによって、研削液の浸入を抑制するラビリンスを形成できる。
【0073】
庇部71と外筒部77の境界は、例えば面取り形状を有し、曲線形状を有する。折れ線形状の境界の場合、その境界を液滴が乗り越えるのを、液滴の表面張力が阻害する。その結果、リング状の液だまりが形成されやすい。庇部71と外筒部77の境界が曲線形状を有していれば、その境界を液滴が乗り越え易く、研削液が排出されやすい。従って、研削液に混じる研削屑がリング状に固着するのを抑制できる。
【0074】
図6に示すように、研削装置1は、テーブル10と共に回転するテーブルカバー60を有する。テーブルカバー60は、テーブル10の回転中心線R1から遠ざかるほど下方に傾斜する傾斜部61を有する。
【0075】
傾斜部61は、チャック20の保持台21の上面よりも下方に配置され、且つテーブル10の上方に配置される。傾斜部61は、水平な平板部とは異なり、重力によって斜め下に研削液を排出できる。それゆえ、研削液に混じる研削屑の堆積を抑制できる。
【0076】
傾斜部61は、例えばテーブル10の周方向に高さが一定である円錐形状を有する。傾斜部61が円錐形状を有する場合、図3に矢印で示すように研削液を放射状に排出でき、チャック20の周辺に研削屑が堆積するのを抑制できる。
【0077】
傾斜部61は、頂部と裾部の間に、回転台25の入る開口部61aを形成する。開口部61aは、回転台25毎に形成され、テーブル10の回転中心線R1の周りに間隔をおいて複数形成される。複数の開口部61aは、例えば等間隔で形成される。
【0078】
テーブルカバー60は、傾斜部61の開口部61aの開口縁から上方に立ち上がる内筒部67を含む。内筒部67は、図6では真上に立ち上がるが、斜め上に立ち上がってもよい。内筒部67の上縁は、周方向全体に亘って水平である。内筒部67は、研削液が開口部61aに浸入するのを防止する。
【0079】
図7(A)に示すように、内筒部67は、第1円弧筒部67aと、第2円弧筒部67bと、連結部67cと、を含む。第1円弧筒部67aは、傾斜部61に対して固定される。第2円弧筒部67bは、第1円弧筒部67aに対して取り外し可能に連結される。連結部67cは、第1円弧筒部67aと第2円弧筒部67bを環状に連結する。
【0080】
連結部67cは、例えば、連結板67c1と、ボルト67c2と、を含む。連結板67c1は、例えば第2円弧筒部67bの内周面に固定され、第1円弧筒部67aの内周面まで延びている。ボルト67c2の軸部は、第1円弧筒部67aの貫通穴を通り、連結板67c1のボルト穴にねじ込まれる。ボルト67c2の頭部が、第1円弧筒部67aを径方向外側から押さえる。
【0081】
なお、連結部67cの構造は、特に限定されない。例えば、連結板67c1は、第1円弧筒部67aの内周面に固定され、第2円弧筒部67bの内周面まで延びていてもよい。この場合、ボルト67c2の軸部は、第2円弧筒部67bの貫通穴を通り、連結板67c1のボルト穴にねじ込まれる。ボルト67c2の頭部が、第2円弧筒部67bを径方向外側から押さえる。
【0082】
いずれにしろ、ボルト67c2を緩めたり締めたりすることで、第2円弧筒部67bを取り外したり取り付けたりできる。図7(B)から明らかなように、第2円弧筒部67bを取り外すことにより、チャック20の交換が容易になる。
【0083】
図6に示すように、第2円弧筒部67bは、第1円弧筒部67aよりも、テーブル10の径方向外方に配置される。そして、第2円弧筒部67bの下縁の少なくとも一部は、回転台25の上面よりも下方に配置される。
【0084】
その結果、第2円弧筒部67bを取り外せば、図8に示すように、回転台25の上面に載せたチャック20を横に引き摺り出せる。チャック20と回転台25との密着力が強く、チャック20を上に引き剥がせない場合に有効である。
【0085】
図6に示すように、内筒部67は、第2円弧筒部67bを載せる第3円弧筒部67dを更に含んでもよい。第3円弧筒部67dは、傾斜部61に対して固定され、第1円弧筒部67aと一体化されてもよい。
【0086】
内筒部67は、第2円弧筒部67bと第3円弧筒部67dを位置合わせする位置合わせ部67eを更に含んでもよい。位置合わせ部67eは、例えば、第2円弧筒部67bの内周面に固定され、第3円弧筒部67dの内側に差し込まれ、その内周面に接触することで、第2円弧筒部67bと第3円弧筒部67dを位置合わせする。
【0087】
テーブルカバー60は、傾斜部61の下縁から下方に延びる筒部63を有する。筒部63は、図6では真下に延びるが、斜め下に延びてもよい。筒部63は、研削液をテーブル10の外に落下させる。筒部63の外径は、テーブル10の直径よりも大きい。
【0088】
傾斜部61と筒部63の境界は、例えば面取り形状を有し、曲線形状を有する。折れ線形状の境界の場合に比べて、その境界を液滴が乗り越え易く、研削液が排出されやすい。従って、研削液に混じる研削屑がリング状に固着するのを抑制できる。
【0089】
傾斜部61は、その頂部に、固定軸11が通る開口部61bを形成する。テーブルカバー60は、傾斜部61の開口部61bの開口縁から上方に立ち上がる中央筒部69を有する。中央筒部69は、図6では真上に立ち上がるが、斜め上に立ち上がってもよい。中央筒部69は、研削液が開口部61bに浸入するのを防止する。
【0090】
テーブルカバー60は、テーブル10の周方向に複数の分割カバーに分割される。分割カバーの数と、チャック20の数とは、同数である。周方向に隣り合う分割カバーの間には、回転仕切壁15が配置される。
【0091】
複数の分割カバーは、個別に、テーブル10に対して取り外し可能に取り付けられる。メンテナンスの際に分割カバーを個別に取り外せばよく、テーブルカバー60の全体をまとめて取り外さずに済むので、作業性を向上できる。
【0092】
研削装置1は、ベースカバー90を備える。ベースカバー90は、水平な円盤部91を有する。円盤部91は、テーブルカバー60の下方であってテーブル10の上方に配置され、テーブル10と同心円状に配置される。円盤部91の直径は、テーブル10の直径よりも大きい。
【0093】
円盤部91は、テーブル10の回転中心線R1の周りに、チャック20の回転軸26が通る開口部91aを形成する。開口部91aは、テーブル10の回転中心線R1の周りに等間隔で複数形成される。
【0094】
ベースカバー90は、開口部91aの開口縁から上方に立ち上がる内筒部93を含む。内筒部93は、図6では真上に立ち上がるが、斜め上に立ち上がってもよい。内筒部93には、回転軸26が挿通される。
【0095】
回転軸26は、回転台25の回転中心から鉛直下方に延びている。回転台25の周縁には、下方に延びる外筒部27が設けられる。外筒部27は、図6では真下に延びるが、斜め下に延びてもよい。
【0096】
外筒部27は、ベースカバー90の内筒部93の上端よりも下方に延び、その内筒部93を囲む。内筒部93と外筒部27とによって、研削液の浸入を抑制するラビリンスを形成できる。
【0097】
開口部91aは、上記の通り、テーブル10の回転中心線R1の周りに等間隔で複数配置される。テーブル10の周方向に隣り合う開口部91aの間に、回転仕切壁15が配置される。回転仕切壁15は、円盤部91の上に設けられる。
【0098】
ベースカバー90は、円盤部91の周縁から下方に延びる筒部94を有する。筒部94は、図6では真下に延びるが、斜め下に延びてもよい。
【0099】
円盤部91と筒部94の境界は、例えば面取り形状を有し、曲線形状を有する。折れ線形状の場合に比べて、その境界を液滴が乗り越え易く、研削液が排出されやすい。従って、研削液に混じる研削屑がリング状に固着するのを抑制できる。
【0100】
図6に示すように、研削装置1は、テーブルカバー60の傾斜部61の頂部とチャック20の間にて、傾斜部61に対して洗浄液を供給するノズル51を備える。ノズル51は、傾斜部61に対して上方から洗浄液を供給する。ノズル51は、中央筒部69に設けられてもよい。洗浄液は、例えば純水である。洗浄液は、傾斜部61に供給された後、重力によって斜め下に流れ落ちる。洗浄液によって、傾斜部61の広い範囲を洗浄でき、チャック20の周辺に研削屑が堆積するのを抑制できる。ノズル51は、洗浄液が傾斜部61の頂部に届く位置にて、傾斜部61に対して洗浄液を供給してもよい。傾斜部61の頂部から裾部まで全体を洗浄できる。
【0101】
ノズル51は、例えば基板Wの研削時に、洗浄液を吐出し、傾斜部61に付着する研削液及び研削屑を洗い流す。ノズル51は、1次研削室B1だけではなく、2次研削室B2及び3次研削室B3にも設けられる。ノズル51は、搬入出室B0にも設けられてもよい。ノズル51は、基板Wの研削時以外の時に、洗浄液を吐出してもよい。
【0102】
テーブルカバー60の傾斜部61は、その頂部に、固定軸11が通る開口部61bを形成する。開口部61bの開口縁から中央筒部69が立ち上がり、中央筒部69の径方向外方にノズル51が配置される。中央筒部69の内側に洗浄液が浸入するのを防止できる。
【0103】
図9に示すように、ノズル51の供給口51aは、テーブルカバー60の周方向(テーブルカバー60の回転方向)に間隔をおいて複数設けられる。1つの部屋(例えば1次研削室B1)に、複数の供給口51aが設けられてもよい。複数の供給口51aによって、テーブルカバー60の傾斜部61の周方向の広い範囲を同時に洗浄できる。また、ノズル51の供給口51aは、テーブルカバー60の周方向に沿う円弧状のスリットである。テーブルカバー60の傾斜部61の頂部に近い位置で洗浄液を供給できる。なお、ノズル51の供給口51aは、直線状のスリットであってもよいし、円形の穴であってもよい。
【0104】
ところで、傾斜部61の裾部では、その裾部を液滴が乗り越えるのを、液滴の表面張力が阻害する。その結果、リング状の液だまりが形成されやすく、リング状の汚れが固着しやすい。
【0105】
そこで、研削装置1は、テーブルカバー60の傾斜部61の裾部に対して上方から洗浄液を供給するノズル52-1、52-2を備える。洗浄液は、例えば純水である。洗浄液は、研削屑で汚れた研削液を洗い流し、リング状の汚れが固着するのを抑制する。
【0106】
ノズル52-1は、例えば1次研削室B1の搬入出室B0との境界付近に位置する。その境界付近とは、その境界である固定仕切壁45から50mm以内の範囲をいう。その範囲内に、ノズル52-1の吐出口の少なくとも一部があればよい。
【0107】
一方、ノズル52-2は、3次研削室B3の搬入出室B0との境界付近に位置する。その境界付近とは、その境界である固定仕切壁45から50mm以内の範囲をいう。その範囲内に、ノズル52-2の吐出口の少なくとも一部があればよい。
【0108】
制御部16は、上方から見て時計回り方向にテーブル10を回転する間、1次研削室B1に配置したノズル52-1からテーブルカバー60の傾斜部61の裾部に対して洗浄液を供給する。傾斜部61の裾部が1次研削室B1から搬入出室B0に移動する直前に、傾斜部61の裾部を洗浄でき、搬入出室B0に汚れが持ち込まれるのを防止できる。
【0109】
一方、制御部16は、上方から見て反時計回り方向にテーブル10を回転する間、3次研削室B3に配置したノズル52-2からテーブルカバー60の傾斜部61の裾部に対して洗浄液を供給する。傾斜部61の裾部が3次研削室B3から搬入出室B0に移動する直前に、傾斜部61の裾部を洗浄でき、搬入出室B0に汚れが持ち込まれるのを防止できる。
【0110】
研削装置1は、制御部16を備える。制御部16は、例えばコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)17と、メモリ等の記憶媒体18とを備える。記憶媒体18には、研削装置1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部16は、記憶媒体18に記憶されたプログラムをCPU17に実行させることにより、研削装置1の動作を制御する。
【0111】
以上、本開示に係る研削装置について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、および組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【0112】
例えば、本開示の技術は、上記実施形態では研削装置1に適用したが、切削装置等にも適用できる。研削は研磨を含む。本開示の技術は、基板Wの一部を除去する除去加工装置であれば、適用できる。基板Wの一部を除去する加工によって、加工屑が生じるからである。なお、基板Wの一部を除去する加工では、基板Wと加工工具との摩擦抵抗を減らすべく、加工液が基板Wに供給される。
【0113】
本出願は、2020年3月24日に日本国特許庁に出願した特願2020-052488号及び2020年9月25日に日本国特許庁に出願した特願2020-161269号に基づく優先権を主張するものであり、特願2020-052488号及び特願2020-161269号の全内容を本出願に援用する。
【符号の説明】
【0114】
1 研削装置(除去加工装置)
10 テーブル
20 チャック
50 ノズル
60 テーブルカバー
61 傾斜部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9