(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】内視鏡用鉗子栓カバー
(51)【国際特許分類】
A61B 1/018 20060101AFI20231215BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
A61B1/018 512
A61B1/00 652
(21)【出願番号】P 2022519964
(86)(22)【出願日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 JP2021017377
(87)【国際公開番号】W WO2021225137
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2020082834
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001988
【氏名又は名称】弁理士法人小林国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出島 工
(72)【発明者】
【氏名】大木 友博
(72)【発明者】
【氏名】石川 諒
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-57303(JP,A)
【文献】特開平10-99258(JP,A)
【文献】特開平3-70536(JP,A)
【文献】特開平10-155735(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0220545(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置具を挿入する内視鏡の鉗子口に設けられた鉗子栓に装着されるカバー本体であり、前記処置具が挿通される貫通孔を有するカバー本体と、
前記カバー本体と一体に設けられ、前記カバー本体に対して、前記内視鏡の外部に対面する側に位置し、前記内視鏡を操作するユーザの少なくとも一部を覆うドレープと、
前記カバー本体及び前記ドレープと一体に設けられ、前記ドレープに対して、前記内視鏡の外部に対面する側に位置し、前記カバー本体が前記鉗子栓に装着された場合、前記鉗子口と対面する位置に配され、前記鉗子栓から前記内視鏡の外側へ流体が漏出することを抑制する流体抑制部材とを備える内視鏡用鉗子栓カバー。
【請求項2】
前記カバー本体は、弾性部材から形成され、前記貫通孔を前記鉗子口の位置に合わせた場合、内視鏡に向かって突出する複数の突出部を備え、前記突出部の弾性力により前記鉗子栓に装着される請求項1記載の内視鏡用鉗子栓カバー。
【請求項3】
前記カバー本体は、弾性部材から形成され、前記貫通孔を前記鉗子口の位置に合わせた場合、内視鏡に向かって突出し、切欠部を有する筒状に形成された突出部を備え、前記突出部の弾性力により前記鉗子栓に装着される請求項1記載の内視鏡用鉗子栓カバー。
【請求項4】
前記流体抑制部材は、柔軟性を有する多孔質部材から形成され、前記処置具が挿通されるスリットを有し、前記スリットに前記処置具が挿通される際、軸方向に圧縮される請求項1ないし3のいずれか1項に記載の内視鏡用鉗子栓カバー。
【請求項5】
前記流体抑制部材は、径方向の寸法よりも軸方向の寸法が長い円柱状である請求項4に記載の内視鏡用鉗子栓カバー。
【請求項6】
前記流体抑制部材は、軸方向の寸法が10mm以上20mm以下である請求項5に記載の内視鏡用鉗子栓カバー。
【請求項7】
前記スリットは、
前記処置具の挿入方向と平行な第1スリットと、
前記第1スリットと交差する第2スリットとである請求項4ないし6のいずれか1項に記載の内視鏡用鉗子栓カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の鉗子栓に装着されて使用される内視鏡用鉗子栓カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、被検者の体内に内視鏡の挿入部を挿入して、体内の観察だけではなく観察部位に対して各種の処置を行っている。具体的には、鉗子や切開具などの各種処置具を、内視鏡の操作部に設けられた鉗子口から挿入部内の鉗子チャンネルに挿通させて、挿入部先端に開口した鉗子出口から導出させることにより、観察部位の切除、採取等の各種の処置が行われる。
【0003】
内視鏡の鉗子口には、処置具が挿通可能な鉗子栓が設けられている。鉗子栓には、例えば、鉗子よりも僅かに小さい孔径の鉗子挿通孔と、鉗子が挿通されるスリットが形成されたスリット弁とが設けられている。鉗子栓に処置具を挿通させた状態では、スリット弁が押し広げられてスリットの端の方の部分では処置具の外周面との間に隙間ができ、その部分から血液等の体液及び体内の残渣等の内容物が漏出する可能性がある。
【0004】
そこで、内視鏡の鉗子栓に装着される汚液飛散防止具を使用することが知られている(特許文献1、2参照)。汚液飛散防止具は、吸水性材料からなる汚液吸収部材が設けられている。特許文献1記載の汚液飛散防止具では、鉗子栓の入口に対向して汚液吸収部材が配置されている。汚液吸収部材には、処置具を通過させる分割面を有している。鉗子栓から体液等の内容物が漏出された場合、汚液吸収部材が内容物を吸収する。
【0005】
一方、特許文献2記載の汚液飛散防止具では、鉗子口を形成する口金が差し込まれる取り付け孔が形成されている。汚液飛散防止具の取り付け孔に口金を差し込んで、その上から鉗子栓を口金の先端側に取り付けて汚液飛散防止具を押さえ付けている。口金に取り付けられた汚液飛散防止具は、U字状に折り返されて鉗子栓の入口部分を覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-57302号公報
【文献】特開平10-99258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
医療分野では、感染症に対してさらなる予防対策を講じることが望まれている。特に感染症患者の体液等の内容物が、目や口等の粘膜に接触することによる感染を防ぐ対策が重要となっている。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1,2記載の汚液飛散防止具では、鉗子栓に処置具を挿通させた状態から処置具を抜去する場合、あるいは体腔内の圧力が大きくなり、内容物が噴出した場合のことは考慮されていない。鉗子栓から処置具を抜去する際は、抜去した処置具の勢いで内容物が飛散する可能性がある。上記特許文献1記載の汚液飛散防止具では、内容物が飛散した場合、汚液吸収部材の分割面から内容物が漏出する可能性がある。
【0009】
一方、上記特許文献2記載の汚液飛散防止具では、U字状に折り返された汚液飛散防止具と鉗子栓との間に空間があり、内容物が噴出した場合、鉗子栓と汚液飛散防止具との間の空間に内容物が飛散する可能性がある。内容物が飛散又は噴出すると、飛散又は噴出した内容物が、術者や介助者といった患者の周囲にいる者の粘膜に接触する可能性がある。
【0010】
本発明は、抜去した処置具の勢いで鉗子栓から飛散又は噴出される内容物の拡散を防止することができる内視鏡用鉗子栓カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の内視鏡用鉗子栓カバーは、カバー本体と、ドレープと、流体抑制部材とを備える。カバー本体は、処置具を挿入する内視鏡の鉗子口に設けられた鉗子栓に装着されるカバー本体であり、処置具が挿通される貫通孔を有する。ドレープは、カバー本体と一体に設けられ、カバー本体に対して、内視鏡の外部に対面する側に位置し、内視鏡を操作するユーザの少なくとも一部を覆う。流体抑制部材は、カバー本体及びドレープと一体に設けられ、ドレープに対して、内視鏡の外部に対面する側に位置し、カバー本体が鉗子栓に装着された場合、鉗子口と対面する位置に配され、鉗子栓から内視鏡の外側へ流体が漏出することを抑制する。
【0012】
カバー本体は、弾性部材から形成され、貫通孔を鉗子口の位置に合わせた場合、内視鏡に向かって突出する複数の突出部を備え、突出部の弾性力により鉗子栓に装着されることが好ましい。
【0013】
カバー本体は、弾性部材から形成され、貫通孔を鉗子口の位置に合わせた場合、内視鏡に向かって突出し、切欠部を有する筒状に形成された突出部を備え、突出部の弾性力により鉗子栓に装着されることが好ましい。
【0014】
流体抑制部材は、柔軟性を有する多孔質部材から形成され、処置具が挿通されるスリットを有し、スリットに処置具が挿通される際、軸方向に圧縮されることが好ましい。流体抑制部材は、径方向の寸法よりも軸方向の寸法が長い円柱状であることが好ましい。流体抑制部材は、軸方向の寸法が10mm以上20mm以下であることがさらに好ましい。
【0015】
スリットは、処置具の挿入方向と平行な第1スリットと、第1スリットと交差する第2スリットとであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、抜去した処置具の勢いで鉗子栓から飛散又は噴出される内容物の拡散を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】内視鏡及び処置具を用いた内視鏡検査を示す概略図である。
【
図2】内視鏡及び処置具並びに内視鏡用鉗子栓カバーの斜視図である。
【
図3】使用状態の内視鏡用鉗子栓カバー及び処置具の斜視図である。
【
図4】不使用状態の内視鏡用鉗子栓カバーの斜視図である。
【
図5】内視鏡用鉗子栓カバー及び鉗子栓の斜視図である。
【
図6】内視鏡用鉗子栓カバーの構成を示す分解斜視図である。
【
図7】内視鏡用鉗子栓カバーの構成を示す断面図である。
【
図8】内視鏡用鉗子栓カバーを通して鉗子栓に処置具を挿入する状態を示す断面図である。
【
図9】流体抑制部材を通して処置具を抜去する状態を説明する説明図である。
【
図10】ドレープを前後方向に折り畳む方法を説明する説明図である。
【
図11】ドレープを長尺方向に折り畳む方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、本発明の内視鏡用鉗子栓カバー20は、内視鏡2を用いた内視鏡検査に使用される。内視鏡2は、例えば気管に挿入する気管支鏡であり、被検体である患者1の気管内に挿入される挿入部3と、挿入部3の基端部に連設された操作部4と、操作部4に接続されたユニバーサルコード5(
図2参照)とを備えている。ユニバーサルコード5は、複合タイプのコネクタ5a(
図2参照)を介して、図示しないプロセッサ装置や光源装置などの外部装置に接続される。
【0019】
図2に示すように、挿入部3は、その先端側から基端側に向かって順に、先端硬性部3aと、湾曲部3bと、可撓性を有する可撓管部3cとからなる。先端硬性部3aの先端面には、鉗子等の処置具6の出口である鉗子出口7の他に、図示は省略するが観察窓や照明窓が設けられている。観察窓の奥にはイメージセンサ(図示せず)などが配置され、照明窓の奥には光ファイバケーブル(図示せず)が配置されている。イメージセンサの信号線や光ファイバケーブルは、挿入部3、操作部4、ユニバーサルコード5、及びコネクタ5a内を通って、プロセッサ装置、光源装置にそれぞれ接続される。湾曲部3bは先端硬性部3aに連設され、湾曲自在に設けられている。
【0020】
患者1の口Mから内視鏡2の挿入部3を挿入する際、患者1の口には内視鏡用マウスピース15が装着される。内視鏡用マウスピース15は、挿入部3を挿通するための管路(図示せず)を有している。内視鏡用マウスピース15は、一部を患者1の口Mに挿入し、その挿入された部分を患者1がくわえることによって患者1の口に装着される。これにより、管路を通して挿入部3を体内に導入することが可能になるとともに、患者1の歯によって挿入部3が破損することを防ぐことができる。
【0021】
挿入部3内には、処置具6を挿通するための鉗子チャンネル8が配設されている。鉗子チャンネル8の一端は鉗子出口7に接続し、他端は操作部4に設けられた鉗子口9に接続している。また、鉗子チャンネル8は、鉗子出口7から血液等の体液や体内老廃物等の内容物を吸引するための経路としても用いられる。操作部4内には、鉗子チャンネル8から分岐した吸引チャンネル11が配設されており、この吸引チャンネル11は操作部4に設けられた吸引ボタン12に接続している。
【0022】
吸引ボタン12は、内部に設けられた吸引バルブ(図示せず)を備える。吸引バルブは、操作部4内において吸引チャンネル11と接続されるとともに、吸引ボタン12に接続された吸引チューブ13を介して、外部の吸引ポンプ(図示せず)と接続される。吸引ボタン12の押圧部を押圧操作することで、吸引バルブの軸部がスライドし、吸引チャンネル11と吸引ポンプの管路が連通する。これにより、被検体内等に挿入した挿入部3の鉗子出口7から、体液等を吸引することができる。また、押圧部の押圧操作を解除することにより、吸引チャンネル11と吸引ポンプの管路の連通が遮断され、鉗子出口7からの吸引を停止することができる。
【0023】
鉗子口9には、鉗子栓14が設けられている。鉗子栓14には、内視鏡用鉗子栓カバー20が装着されている。
【0024】
図3に示すように、内視鏡用鉗子栓カバー20は、カバー本体21と、ドレープ22と、抜け止め部材23と、流体抑制部材24と、蓋部材25と、粘着テープ26とを備える。ドレープ22は、厚みが小さく、四角形のシート状に形成されており、例えば、透明なビニールシートから形成されている。ドレープ22は、内視鏡2を操作するユーザである医師の少なくとも一部、例えば医師の手DH(
図1参照)を少なくとも覆い隠す面積を有している。
【0025】
図4に示すように、ドレープ22は、不使用状態の場合、折り畳まれ、端部に保持部材としての粘着テープ26が貼着される。粘着テープ26が貼着されることによりドレープ22は、折り畳まれた状態が保持される。なお、ドレープ22の折り畳み方法、粘着テープ26を貼着する方法については後述する。
【0026】
図5に示すように、ドレープ22は、カバー本体21の後述する嵌合部21Bの外形に合わせた開口部22Aが形成されている。開口部22Aを嵌合部21Bの位置に合わせることにより、カバー本体21に対するドレープ22の位置決めを行うことができる。なお、
図5及び
図6におけるドレープ22は、図示の都合上、開口部22Aの周囲(2点鎖線で囲む範囲)のみを切り取って図示しており、実際の大きさは、2点鎖線で囲む範囲よりも大きい。
【0027】
鉗子栓14は、例えば、円筒状の栓本体14A、栓本体14Aと嵌合するキャップ14B、及び取付アーム14Cを備える。また、キャップ14Bには外径から突出する摘み部14Dを有する。取付アーム14Cは、栓本体14Aとキャップ14Bとを連結する。栓本体14Aの内部には、処置具6が挿通されるスリットが形成されたスリット弁14E(
図7参照)が設けられている。キャップ14Bには、処置具6の外径よりも僅かに小さい孔径の鉗子挿通孔14F(
図7参照)が設けられている。
【0028】
図6に示すように、カバー本体21は、円板部21Aと、嵌合部21Bと、複数の突出部21C~21Fと、貫通孔21Gとが一体に形成されている。円板部21Aは、鉗子栓14よりも外径が大きい。嵌合部21Bは、円板部21Aと同軸、かつ円板部21Aよりも外径が小さい円筒状である。複数の突出部21C~21Fは、円板部21Aの外周面と連続し、嵌合部21Bとは反対側の面から突出する。カバー本体21は、弾性部材、例えばゴムから形成されている。貫通孔21Gは、円板部21A及び嵌合部21Bの軸方向に沿って形成されている。
【0029】
突出部21C~21Fは、貫通孔21Gを鉗子口9の位置に合わせた場合に、内視鏡2に向かって突出する方向に延在する。突出部21C~21Fは、鉗子栓14の取付アーム14C及び摘み部14Dに干渉しない位置及び大きさに形成されている。突出部21C~21Fは、内周面の曲率半径が、鉗子栓14の外径よりも若干小さく形成されている。突出部21C~21Fの弾性力により、突出部21C~21Fが鉗子栓14の外周面に密着する。これにより内視鏡用鉗子栓カバー20は、鉗子栓14に装着される。
【0030】
抜け止め部材23は、カバー本体21と外径が同じ又は若干大きい円板状に形成されている。抜け止め部材23は、例えば軟質樹脂などの軟質素材から形成されている。抜け止め部材23は、嵌合孔23A、及び開口部23Bが形成されている。嵌合孔23Aは、抜け止め部材23の中心に位置する六角形の貫通孔である。嵌合孔23Aの内接円の直径は、カバー本体21の嵌合部21Bの外径よりも若干小さく形成されている。嵌合孔23Aが嵌合部21Bと嵌合することにより、抜け止め部材23は、カバー本体21と結合する。
【0031】
図6に示すように、抜け止め部材23は、カバー本体21との間に、ドレープ22を挟み込む。この際、カバー本体21の嵌合部21Bを、ドレープ22の開口部22A、及び抜け止め
部材23の嵌合孔23Aに嵌合させることで、抜け止め部材23をカバー本体21に固着させることができる。
【0032】
ドレープ22は、抜け止め部材23と、カバー本体21との間に挟み込まれることより、カバー本体21と一体に設けられる。これにより、ドレープ22は、カバー本体21及び抜け止め部材23とともに鉗子栓14に装着された場合、カバー本体21に対して、内視鏡2の外部に対面する側に位置する。
【0033】
開口部23Bは、カバー本体21とともに抜け止め部材23が鉗子栓14に装着された場合、内視鏡2の外部に位置する側の端に設けられている。開口部23Bには、流体抑制部材24が固着される。これにより、流体抑制部材24は、カバー本体21及びドレープ22と一体に設けられる。
【0034】
流体抑制部材24は、鉗子口9と対面する位置に配され、鉗子栓14から内視鏡2の外側へ流体が漏出することを抑制する。具体的には、流体抑制部材24は、空気などの気体が通過可能とし、かつ体液等の内容物を含む液体及び固体を遮断する。流体抑制部材24は、カバー本体21が鉗子栓14に装着された場合、鉗子口9と対面し、内視鏡2の外側に配される。
【0035】
蓋部材25は、流体抑制部材24に外径を合わせた円板状に形成され、例えば樹脂から形成されている。蓋部材25は、貫通孔25Aを有する。貫通孔25Aは、流体抑制部材24の後述するスリット27を露呈させる。
【0036】
流体抑制部材24は、柔軟性を有する多孔質材料を円柱状に形成したものである。流体抑制部材24は、径方向の寸法D1よりも軸方向の寸法L1が長い。軸方向の寸法L1は、例えば10mm以上20mm以下とすることが好ましい。これにより、流体抑制部材24は、流体の通過を十分に抑制することが可能となり、かつ処置具6をスムーズに挿入することができる。
【0037】
流体抑制部材24は、処置具6が挿通される第1スリット27、及び第2スリット28を有する。第1スリット27は、処置具6の挿入方向Zと平行、かつ前後方向Yと平行に形成されている。前後方向Yは、挿入方向Zと直交する方向である。
【0038】
第2スリット28は、挿入方向Zと平行、かつ第1スリット27と交差する方向に形成されている。さらに詳しくは、第2スリット28は、挿入方向Zと平行、かつ左右方向Xと平行に形成されている。左右方向Xは、前後方向Y及び挿入方向Zと直交する方向である。第1スリット27、及び第2スリット28が交差する位置は、流体抑制部材24の軸方向及び径方向における中心であることが好ましい。
【0039】
流体抑制部材24を形成する多孔質材料は、空気などの気体が通過可能とし、かつ体液等の内容物を含む液体及び固体を遮断する孔径及び構造を有する多孔質材料であり、例えば樹脂を発泡成形した合成スポンジ、又は海綿体などの天然スポンジを用いる。
【0040】
図7に示すように、流体抑制部材24は、一方の端部が開口部23Bに固着され、他方の端部に蓋部材25が固着される。この場合、例えば、接着または圧着により抜け止め部材23及び流体抑制部材24を互いに固着し、かつ流体抑制部材24及び蓋部材25を互いに固着する。
【0041】
上記のように流体抑制部材24を抜け止め部材23に固着することにより、流体抑制部材24は、ドレープ22に対して、内視鏡2の外部に対面する側に位置する。これにより、流体抑制部材24は、カバー本体21が鉗子栓14に装着された場合、鉗子口9と対面する位置に配される。
【0042】
図8に示すように、流体抑制部材24を通して、処置具6が鉗子チャンネル8に挿入された場合、第1スリット27、及び第2スリット28に挿入部3の外周面が密着しながら、挿入部3が挿入方向Zに沿って移動する。流体抑制部材24は、上記のように柔軟性を有するため、第1スリット27、及び第2スリット28に処置具6が挿通される際、処置具6または医師の手DHから押圧を受けて軸方向に圧縮される。流体抑制部材24が圧縮した分だけ、処置具6を把持して押し込む医師の手DHが鉗子栓14と近接する位置となる。もしも、処置具6を鉗子栓14の遠くで把持してから押し込むと処置具6が座屈するが、本実施形態の内視鏡用鉗子栓カバー20では、鉗子栓14と近接する位置で把持することができるため、処置具6の座屈を防ぐことができる。
【0043】
図9に示すように、処置具6が鉗子チャンネル8に挿入された場合、第1スリット27、及び第2スリット28の両端部には隙間27G、28Gが形成されるが、上述したように第1スリット27と第2スリット28とが交差しているので、隙間27G、28Gの位置は重ならない。なお、
図9は、鉗子栓14から処置具6を抜去する際の流体抑制部材24を示しているため、流体抑制部材24は、圧縮状態からもとの寸法に復帰している。
【0044】
上述のように、カバー本体21と蓋部材25との間に挟まれたドレープ22は、カバー本体21の外周縁から突出してカバー本体21と一体に設けられている(
図3に示す状態)、一方、ドレープ22は、内視鏡用鉗子栓カバー20の不使用状態では、折り畳まれており、粘着テープ26により折り畳まれた状態が保持される(
図4に示す状態)。以下では、ドレープ22の折り畳み方法、粘着テープ26を貼着する方法について述べる。
【0045】
図10(A)に示すように、ドレープ22を折り畳む場合は、例えば、前後方向Yの一端からドレープ22を丸めていく、そして、中央に位置する流体抑制部材24の位置までドレープ22を丸めた後、前後方向Yの他端からもドレープ22を丸めていく。これにより、
図10(B)に示すように、ドレープ22は、長尺帯状となる。
【0046】
次に、
図10(A)に示すように、長尺帯状となった一端からドレープ22を丸めるように折り畳んでいく。そして、中央に位置する流体抑制部材24の位置までドレープ22を丸めた後、長尺帯状の他端からもドレープ22を丸めていく。この際、同時に流体抑制部材24をドレープ22で覆い隠す。これにより、
図10(B)に示すように、ドレープ22は、小さく折り畳まれた状態となる。そして、カバー本体21からドレープ22の端部に粘着テープ26が貼着される。粘着テープ26の端部26Aは、ドレープ22に接着せず、ドレープ22の外形から突出させる。この場合、例えば、予め端部26Aを折り返して粘着面同士を貼り付けることにより、粘着面が露呈しない部分を粘着テープ26に形成しておく。
【0047】
以上のように、粘着テープ26を貼着することで、ドレープ22が折り畳まれた状態が保持される(
図4に示す状態)。また、端部26Aをドレープ22に接着しないことで、内視鏡用鉗子栓カバー20を使用する際、端部26Aを把持して粘着テープ26を剥がしやすくなっている。
【0048】
ユーザである医師が、内視鏡2の鉗子栓14に内視鏡用鉗子栓カバー20を装着し、鉗子口9を通して処置具6を鉗子チャンネル8に挿入するときの動作について説明する。
図1に示すように、先ず、医師は、カバー本体21の突出部21C~21Fの弾性力により、内視鏡用鉗子栓カバー20を鉗子栓14に装着する。
【0049】
内視鏡用鉗子栓カバー20を鉗子栓14に装着した後、粘着テープ26が剥がされることにより、ドレープ22は、折り畳まれた状態からもとの状態、すなわち、拡げた状態にすることできる。そして、内視鏡用鉗子栓カバー20を鉗子栓14に装着し、ドレープ22を拡げた状態にすることで、内視鏡2を操作する医師の手DH、操作部4等をドレープ22で覆い隠すことができる。
【0050】
一方、医師は、内視鏡用マウスピース15を口Mに装着する。内視鏡用マウスピース15を口Mに装着した後、医師は、内視鏡用マウスピース15を通して、内視鏡2の挿入部3を口Mから患者1の体内に挿入する。さらに、内視鏡用鉗子栓カバー20のスリット27、28、鉗子栓14のスリット弁14E及び鉗子挿通孔14F、鉗子口9を通して処置具6を鉗子チャンネル8に挿入する。先端硬性部3aの鉗子出口7から処置具6の先端部6Aを突出させることにより、医師は、観察部位の切除、採取等の各種の処置を行うことができる。
【0051】
各種の処置を行うことにより、処置具6には患者1の体液等の内容物が付着する。医師は、鉗子栓14から処置具6を抜去する際は、ドレープ22で処置具6を包み込みながら内視鏡用鉗子栓カバー20とともに処置具6を鉗子栓14から抜去する。なお、内視鏡用鉗子栓カバー20は、鉗子栓14から抜去した後、ドレープ22とともに廃棄されるディスポーザブルタイプのものであることが好ましい。
【0052】
抜去した処置具6の勢いで鉗子栓14から内容物が飛散しても流体抑制部材24が吸収し、内視鏡2の外部へ通過することを遮断する。また、鉗子栓14から内容物が噴出してもドレープ22で包み込んでいるため、内容物が拡散することを防止することができる。よって、患者1の体内から排出される体液が、術者や介助者といった患者の周囲にいる者の粘膜に接触することを防止することができるため、感染を確実に防ぐことができる。
【0053】
また、処置具6は、流体抑制部材24を通して鉗子栓14に挿入されるが、流体抑制部材24は、軸方向の寸法が長く形成されているため、内容物の通過を十分に遮断することができる。また、上述したように第1スリット27と第2スリット28とが交差しているので、隙間27G、28Gの位置は重ならない。すなわち、流体抑制部材24を通して処置具6が挿入状態でも、又は未挿入でも、あるいは処置具6を抜去している途中でも流体抑制部材24から体液が漏出することを防ぐことができる。
【0054】
なお、上記実施形態では、抜け止め部材14に固着することにより、ドレープ22に対する流体抑制部材24の位置を規制しているが、本発明は、これに限らず、流体抑制部材24をドレープ22に接着するなどして固定してもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、カバー本体21は、鉗子栓14に装着するための4つの突出部21C~21Fを有しているが、これに限らず、上記実施形態のような複数の突出部を有していればよい。あるいは、鉗子栓14に装着するための突出部を1つの突出部から構成してもよく、例えば、カバー本体21の貫通孔21Gを鉗子口9の位置に合わせた場合に、内視鏡2に向かって突出し、切欠部を有する筒状に形成された突出部でもよい。この場合、突出部の切欠部は、鉗子栓14の取付アーム14C及び摘み部14Dに位置及び大きさを合わせて形成されている。突出部を以上のように構成することで、突出部の内周面が鉗子栓14の外周面に密着する。これにより内視鏡用鉗子栓カバーは、鉗子栓14に装着される。
【0056】
上記各実施形態では、ドレープ22が折り畳まれた状態を保持する保持部材として粘着テープ26を例示しているが、本発明はこれに限らず、保持部材は、係止部材、拘束部材及び被覆部材のいずれか1種でもよい。保持部材としての係止部材は、例えば、係止爪と係止孔からなる係止構造、衣服に用いるようなボタンとボタン穴、雄ボタンと雌ボタンとが嵌合する嵌合構造などにより、ドレープ22の少なくとも一部を係止する構成が好ましい。また、保持部材としての拘束部材は、折り畳まれた状態のドレープ22の周囲を拘束する紙テープや輪ゴムなどが好ましい。また、保持部材としての被覆部材は、折り畳まれた状態のドレープ22全体を覆うような袋状のものが好ましい。
【0057】
また、上記各実施形態では、ドレープ22をビニールシートから形成する例を上げているが、これに限らず、被検体の少なくとも一部を覆い隠すシート状の部材であればよく、例えば、紙、布などから形成してもよい。また、上記各実施形態では、内視鏡の一例として気管支鏡を上げているが、これに限らず、鉗子栓を備えた内視鏡であればよく、例えば上部消化管内視鏡、又は下部消化管内視鏡でもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 患者
2 内視鏡
3 挿入部
3a 先端硬性部
3b 湾曲部
3c 可撓管部
4 操作部
5 ユニバーサルコード
5a コネクタ
6 処置具
6A 先端部
7 鉗子出口
8 鉗子チャンネル
9 鉗子口
11 吸引チャンネル
12 吸引ボタン
13 吸引チューブ
14 鉗子栓
14A 栓本体
14B キャップ
14C 取付アーム
14D 摘み部
14E スリット弁
14F 鉗子挿通孔
15 内視鏡用マウスピース
20 内視鏡用鉗子栓カバー
21 カバー本体
21A 円板部
21B 嵌合部
21C、21D、21E、21F 突出部
21G 貫通孔
22 ドレープ
22A 開口部
23 抜け止め部材
23A 嵌合孔
23B 開口部
24 流体抑制部材
25 蓋部材
25A 貫通孔
26 粘着テープ
26A 端部
27 第1スリット
28 第2スリット
27G 隙間
28G 隙間
D1 径方向の寸法
L1 軸方向の寸法
DH 医師の手
H 頭部
M 口
X 左右方向
Y 前後方向
Z 挿入方向